説明

ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物

【課題】剛性、ウェルド強度、表面平滑性の優れた樹脂を提供する。
【解決手段】 (A)ポリアミド樹脂を95〜80質量%、(B)ポリアリレート樹脂を5〜20質量%、(C)ガラス繊維を(A)乃至(C)の合計量に対し30〜70質量%、(D)1分子中にエポキシ基、酸無水物基、オキサゾリン基、カルボン酸基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を2個以上有する有機化合物を(A)乃至(C)の合計量100質量部に対して0.05〜4.0質量部含有することを特徴とするガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた表面平滑性、剛性、ウェルド強度を有するガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド樹脂は、その優れた機械的特性と耐久性とを特徴としてあらゆる分野に使用されている。近年は、押し出し混練装置の進歩に伴いポリアミド樹脂の複合強化技術も進み、ポリアミド樹脂をガラス繊維や炭素繊維やアラミド繊維等の繊維状強化材で強化した樹脂組成物が広く知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。これらの強化材を添加することで、ポリアミド樹脂の機械的強度や耐熱性は改良される。
【0003】
一方で、機械、自動車、電気部品用の小型・軽量化にともない、より高剛性の材料が求められている。
【0004】
そこで、ガラス繊維の配合量を増やして剛性を上げようとする試みが行われてきたが、ガラス繊維の配合量の増大とともに、表面平滑性やウェルド強度が損なわれるため、剛性、表面平滑性、およびウェルド強度のすべての特性を満足するものは開発されておらず、かかる特性を同時に具備した材料の開発が強く望まれていた。
【特許文献1】特開2002−47412号公報
【特許文献2】特開平11−228814号公報
【特許文献3】特開平9−176484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表面平滑性、剛性、ウェルド強度の優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物及びそれから得られる樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の樹脂組成物が前記課題を解決することを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の第一は、(A)ポリアミド樹脂を95〜80質量%、(B)ポリアリレート樹脂を5〜20質量%、(C)ガラス繊維を(A)乃至(C)の合計量に対し30〜70質量%、(D)1分子中にエポキシ基、酸無水物基、オキサゾリン基、カルボン酸基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を2個以上有する有機化合物を(A)乃至(C)の合計量100質量部に対して0.05〜4.0質量部含有することを特徴とするガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を要旨とするものであり、好ましくは、(D)1分子中にエポキシ基、酸無水物基、オキサゾリン基、カルボン酸基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を2個以上有する有機化合物が、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート及びスチレン/無水マレイン酸共重合体からなる群から選ばれる1種以上の有機化合物であるものであり、さらに好ましくは、(A)ポリアミド樹脂が、ナイロン6、ナイロン66及びナイロン11からなる群から選ばれる1種のポリアミド樹脂であるものである。
【0008】
本発明の第二は、前記した本発明の第一のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、剛性及び表面平滑性のみならず、同時にウェルド強度も優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、具体的に本発明を説明する。
【0011】
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、アミノカルボン酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸とから形成されるアミド結合を有する溶融成形可能な重合体である。
【0012】
このようなポリアミド樹脂の好ましい例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン 610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン 612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン 116)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン 11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))及びこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミド等があり、その中でもナイロン6、ナイロン66が特に好ましい。
【0013】
本発明に用いられるポリアミド樹脂の相対粘度は特に限定されないが、溶媒として96質量%硫酸を用い、温度25℃、濃度1g/dlの条件で測定された相対粘度で、 1.5〜 5.0の範囲にあるものが好ましく、2.0〜4.0がさらに好ましい。相対粘度が 1.5未満では、樹脂組成物の機械的強度が低下する。一方、5.0を超えるものでは、成形性が急速に低下する。
【0014】
本発明に用いられるポリアリレート樹脂は、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と、二価フェノールまたはその誘導体とよりなるものであり、溶液重合、溶融重合、界面重合など各方法により製造することができる。
【0015】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸が例示されるが、溶融加工性および総合的性能の点から、両者の混合物が好ましい。この混合物の配合比は限定されないが、質量比でテレフタル酸/イソフタル酸=9/1〜1/9の割合が好ましい。溶融加工性や性能のバランスの点を考慮すれば、その配合比を7/3〜3/7とするのがより好ましく、1/1の配合比が特に好ましい。
【0016】
ポリアリレート樹脂を構成する二価フェノールとしては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、4,4' −ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4' −ジヒドロジフェニルエーテル、4,4' −ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4' −ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4' −ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4' −ジヒドロキシジフェニル、ハイドロキノンなどがあげられ、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、(ビスフェノールA)が好ましい。これらは単独でもよくまた混合物であってもよい。さらにこれらの二価フェノールにエチレングリコール、プロピレングリコールなどを少量併用してもよい。
【0017】
本発明におけるポリアミド樹脂とポリアリレート樹脂の割合は、ポリアミド樹脂95〜80質量%に対してポリアリレート樹脂5〜20質量%の範囲とすることが好ましく、ポリアミド樹脂90〜85質量%に対してポリアリレート樹10〜15質量%の範囲とすることがより好ましい。ポリアリレート樹脂の割合が5質量%未満では、優れた表面平滑性を有する樹脂組成物が得られない。また、ポリアリレート樹脂の割合が20質量%を超えると、流動性が損なわれる。
【0018】
本発明に用いられるガラス繊維は、溶融混練前の性状として、その平均直径が3〜15μmの範囲にあり、アスペクト比が250〜500の範囲にあるものが好ましい。アスペクト比が250未満のものでは、成形品としたときの機械的強度が十分でない場合があり、一方、アスペクト比が500を超えるものでは、成形性が低下する場合がある。さらに、溶融混練前のガラス繊維の平均長さは、前記したアスペクト比を満足すればよく、通常、0.75〜5.5mmの範囲である。
【0019】
本発明においては、ガラス繊維を上記したポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂及びガラス繊維の各成分の総量の30〜70質量%含有させることが必要である。30質量%以下では、強化材としての補強効果に乏しく、配合量が70質量%を超えると、樹脂溶融混練時のストランドの引取りができなくなり、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造が困難となる。
【0020】
本発明において、ガラス繊維の使用とともに、表面処理剤を使用することもできる。そのような表面処理剤としては、高級脂肪酸またはそのエステル、塩などの誘導体(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸エチルエステルなど)が挙げられる。表面処理剤はあらかじめガラス繊維と処理しておいてもよく、また乾式攪拌時に同時に添加処理することも可能である。
【0021】
本発明に用いられる1分子中にエポキシ基、酸無水物基、オキサゾリン基、カルボン酸基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を2個以上有する有機化合物としては、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル化合物、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルシアヌレート化合物のようなエポキシ基を有する化合物、スチレン/無水マレイン酸共重合体のような酸無水物基をペンダントとしてもつ化合物が好適に利用できる。
【0022】
1分子中にエポキシ基、酸無水物基、オキサゾリン基、カルボン酸基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を2個以上有する有機化合物の配合量は、上記したポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂及びガラス繊維の各成分の合計量100質量部に対して、0.05〜4.0質量部であり、好ましくは0.1〜3.0質量部、最適には0.2〜2.0質量部の範囲であることが望ましい。この配合量が0.05質量部以下の場合には熱可塑性樹脂組成物のウェルド強度の向上が不十分であるため好ましくない。一方、この配合量が4.0質量部を超えると、熱可塑性樹脂組成物の流動性が著しく低下し、成形加工性が悪化するばかりか、相対粘度測定溶媒(濃硫酸)に不溶なゲル化物が発生し、物性を低下させる傾向があるため好ましくない。
【0023】
なお、本発明の樹脂組成物中には、その特性を大きく損なわない範囲で、顔料、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤等を添加することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、部は質量部を表わす。また、以下において示した各物性値の試験方法は下記のとおりである。
【0025】
1.曲げ弾性率:ASTM D−790準拠
2.表面平滑性:表面平滑性は、直径50mm、厚み3mmの成形体表面を目視観察し、○=平滑、□=ほぼ平滑、×=粗い、を基準として評価した。
【0026】
3.荷重たわみ温度:ASTM D648に準拠して、荷重1.82MPaにて測定した。
【0027】
実施例1〜6、比較例1〜8
(樹脂塑性物の原料)
(1)ポリアミド樹脂
・ポリアミド:ナイロン6〔商品名:ユニチカナイロン6 A1030BRL、ユニチカ(株)製〕(以下、PA6という。)
(2)ポリアリレート樹脂:ビスフェノールA/テレフタル酸/イソフタル酸共重合体〔商品名:UポリマーU−100、ユニチカ(株)製〕(以下、PARという。)
(3)ガラス繊維:日本電気硝子社製T-289(以下、GFという。)
(4)有機化合物
・有機化合物A:坂本薬品社製 トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル
・有機化合物B:Herucules社製 スチレン/無水マレイン酸共重合体
・有機化合物C:坂本薬品社製 ポリグリセリンポリグリシジルエーテル
・有機化合物D:トリグリシジルイソシアヌレート
表1に示す量の各成分を予備混合したのち、スクリュー径37mmの2軸押出し機〔東芝機械(株)製、TEM−37〕を用いて250〜280℃で溶融混錬してペレット化した。その後、該ペレットを100℃で8時間乾燥したのち、東芝機械(株)製、IS−100を用いてシリンダー温度250〜280℃金型温度100℃の条件で射出成形を行ない特性評価用の試験片を作成した、この試験片を用いて評価試験を行なった結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

実施例と比較例の表から明らかなように、ポリアリレート樹脂と有機化合物を併用することで表面平滑性および剛性に加え、ウェルド部の剛性に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物が得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド樹脂を95〜80質量%、(B)ポリアリレート樹脂を5〜20質量%、(C)ガラス繊維を(A)乃至(C)の合計量に対し30〜70質量%、(D)1分子中にエポキシ基、酸無水物基、オキサゾリン基、カルボン酸基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を2個以上有する有機化合物を(A)乃至(C)の合計量100質量部に対して0.05〜4.0質量部含有することを特徴とするガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
(D)1分子中にエポキシ基、酸無水物基、オキサゾリン基、カルボン酸基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を2個以上有する有機化合物が、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート及びスチレン/無水マレイン酸共重合体からなる群から選ばれる1種以上の有機化合物である請求項1記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
(A)ポリアミド樹脂が、ナイロン6、ナイロン66及びナイロン11からなる群から選ばれる1種のポリアミド樹脂である請求項1又は2記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品。


【公開番号】特開2010−47631(P2010−47631A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210486(P2008−210486)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】