説明

ガラス部材およびその製造方法

【課題】光透過率の高い酸化ビスマスを含有するガラス部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】酸化ビスマス(Bi)を含有するガラス原料11をルツボ12の中に入れた後、溶融炉13の中にルツボ12を入れ、ガラス原料11を溶融させて融液14にする。次に、融液14を充分に攪拌することができる粘度になるまで融液14を加熱した後、融液14を保温しつつ攪拌する。次に、ルツボ12を溶融炉13から取り出して、ルツボ12中で融液14の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となるまで融液14を冷却する。最後に、融液14の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となったときに、融液14を急冷成型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ビスマスを含有するガラス部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学レンズにおける薄型化の要求に伴い、光学レンズ用のガラスとして高屈折率低分散の材料が望まれている。また、光学レンズの製造コストを下げるために、従来の機械研削加工に代わって、加熱プレスによる成形加工が用いられることが多く、加熱プレスに適した光学レンズ用ガラスとして低融点の材料が望まれている。例えば、特許文献1では、高屈折率で低融点のガラスとして、酸化ビスマス(Bi)を多く含有する材料が用いられている。
【0003】
また、磁気ヘッド等の電子部品の技術分野では、製造工程で用いられるボンディングガラスとして、低融点でかつ耐水性の良いガラスが要求されており、それをバランスよく実現させるガラスとして、酸化ビスマスを含有する材料が用いられている(例えば特許文献2参照)。さらに、ボンディングガラスには、ガラスを低融化させるために酸化鉛(PbO)が含まれているが、鉛は環境管理物質であり、環境問題や廃棄処分の問題を引き起こすことから、近年では、酸化鉛(PbO)の代わりに、酸化ビスマスをガラスに配合して、ガラスを低融化させるケースが増えてきている(例えば特許文献3、4参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−151758号公報
【特許文献2】特許2551014号公報
【特許文献3】特開2006−160599号公報
【特許文献4】特開2006−225255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般に、酸化ビスマスを含有するガラスは、ガラス作製時、特に鋳込んだり線引きしたり、冷却しながら成形を行なう際に濃く着色してしまう。そのため、そのようなガラスを光学ガラスに用いることは、光透過率の低下を招くことから現実的ではない。また、磁気ヘッドの製造工程では、磁気ギャップの深さ方向等の寸法はボンディングガラスを透過させて測定されており、ボンディングガラスの光透過率が低いと、磁気ギャップの深さ方向の寸法を測定する自動寸法測定器が正常に働かなくなるなどの支障をきたす。そのため、磁気ヘッド用のボンディングガラスについても、できるだけ透明であることが望まれている。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、酸化ビスマスを含有する、光透過率の高いガラス部材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガラス部材の製造方法は、以下の(A)〜(C)の各工程を含むものである。
(A)酸化ビスマスを含有するガラス原料を耐熱容器中で溶融させて融液にする溶融工程
(B)融液の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となるまで融液を耐熱容器中で冷却する冷却工程
(C)融液の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となったときに、融液を耐熱容器から放出させることにより急冷成型する成型工程
【0008】
本発明のガラス部材の製造方法では、耐熱容器中で溶融されたガラスの融液の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となるまで融液が冷却された時点で、融液が耐熱容器から放出されることにより急冷成型される。これにより、融液を冷ます段階で、高温時に還元されて2価に価数変化したビスマスイオン(Bi2+)が酸化されて元の3価のビスマスイオン(Bi3+)に戻る時間的な余裕を十分に持たせることができる。
【0009】
本発明のガラス部材は、組成の一部として酸化ビスマスを含有したものである。このガラス部材において、光入射面および光射出面を鏡面とした場合であって且つ光入射面と光射出面との距離を0.5mm厚にしたときの可視光波長範囲の透過率の平均値が66.7%以上となっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガラス部材の製造方法によれば、融液を冷ます段階で、高温時に還元されて2価に価数変化したビスマスイオン(Bi2+)が酸化されて元の3価のビスマスイオン(Bi3+)に戻る時間的な余裕を十分に持たせるようにしたので、ビスマスイオンの還元により褐色から灰色になった融液がビスマスイオンの酸化により薄い黄色または無色に変化し、急冷成型時の着色を薄く、もしくは無くすることができる。これにより、ビスマスイオンが酸化により元の3価に戻る時間的な余裕を持たせずに融液の粘度が1Pa・s未満であるときに融液を耐熱容器から放出させることにより急冷成型した場合と比べて、光透過率を高くすることができる。
【0011】
本発明のガラス部材によれば、組成の一部に酸化ビスマスを含ませた上で、上記条件での透過率の平均値が66.7%以上となるようにしたので、酸化ビスマスを含有する従来のガラス部材と比べて光透過率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係るガラス部材の製造方法を用いてガラス部材を製造する工程の流れを表したものである。
【0014】
(溶融工程)
まず、酸化ビスマス(Bi)を4wt%以上78wt%以下の範囲内で含有するガラス原料11を白金製のルツボ12(耐熱容器)の中に入れたのち、例えば1200℃程度に加熱された溶融炉13の中にルツボ12を入れ、ガラス原料11を溶融させて融液14にする(ステップS101、図2、図3)。
【0015】
なお、酸化ビスマスの含有量を4wt%以上とすることにより、ガラスに酸化ビスマスを含有させたことにより期待される効果(高屈折率、低融点、高耐水性)を得ることができる。また、酸化ビスマスの含有量を78wt%以下とすることにより、ガラスを安定化させることができ、ガラスの表面に析出物が発生し難くなり、析出物の発生に起因する透過率の低下をなくすることができる。
【0016】
次に、融液14を充分に攪拌することができる粘度になるまで融液14を加熱したのち、融液14を例えば30分程度、保温しつつ白金製の攪拌翼15で攪拌する(ステップS102、図4)。その後、攪拌を止め、融液14を清澄させる。
【0017】
なお、融液14を充分に攪拌することができる粘度になる温度まで融液を加熱(保温)することにより、脱泡を完全に行うことができ、泡がガラス中に残る虞をなくすることができる。さらに、攪拌を十分に行うことができ、均質なガラスを作ることができる。
【0018】
(冷却工程)
次に、ルツボ12を溶融炉13から取り出して、ルツボ12が余熱を持った状態のままで、ルツボ12中で融液14の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となるまで融液14をゆっくりと冷却する(ステップS103、図5)。なお、本冷却工程において、融液14に外部から積極的に熱を与えつつ融液14の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となるまで融液14を更にゆっくりと冷却するのが好ましい。
【0019】
融液14の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となるまで融液14をゆっくりと冷却することにより、上記溶融工程において高温下に置かれることにより還元されて2価に価数変化したビスマスイオン(Bi2+)の多くが酸化されて元の3価のビスマスイオン(Bi3+)に戻る時間的な余裕を十分に持たせることができる。また、融液14の冷却速度を遅くすればする程、2価に価数変化したビスマスイオン(Bi2+)をより多く酸化させて元の3価のビスマスイオン(Bi3+)に戻すことが可能となる。また、本冷却工程において、融液14の粘度が10Pa・sを上回ることのないようにしているのは、融液14の粘度がそれを上回ると、融液14をルツボ12から放出させて鋳型17(後述)に流し込むことが困難となるからである。また、融液14の粘度が1Pa・s以上となるようにしているのは、融液14の粘度が1Pa・s未満となっている状態で、後述の成型工程において融液14を急冷成型した場合には、ガラスが、一般の電子部品において光を透過させる部材としてガラスを用いる際に要求される光透過率(例えば66%以上)を満足することのできない程度に濃く着色されてしまい、本冷却工程における冷却方法に依らず、上記光透過率を満足することができる程度にまで透明にならないからである。つまり、上記光透過率を満足することができる程度にまでガラスを透明にするためには、本実施の形態の製造方法を用いることが必要となる。なお、本実施の形態において、光透過率とは、以下の式により得られる値を指す。
光透過率=入射面に平行に対向する射出面から射出する光量/入射面に入射する光量)×100〔%〕
【0020】
(成型工程)
次に、先の冷却工程において融液14の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となったときに、融液14を急冷成型する(ステップS104)。この急冷成型は、例えば図6に示したように、融液14をルツボ12から放出させて鋳型17に移し替えることによって行うことが可能である。なお、「放出」とは、融液14をルツボ12の中から外へ出すことを指しており、この放出によって融液14の熱を空間に逃がすことにより融液14の急冷を行っている。また、融液14をルツボ12から鋳型17に移し替える際に、急冷によってガラスが割れるのを防止するために、ガラス転移点以下の適度な熱(冷却工程で融液14に与えられる熱よりも低い熱)を、鋳型17に接するヒータ18から融液14に加えることが好ましい。このようにして、ガラス部材が形成される。
【0021】
このように、本実施の形態のガラス部材の製造方法では、ルツボ12中で溶融された融液14がルツボ12中でゆっくりと冷却され、融液14の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となった時点で、融液14がルツボ12から放出されることにより急冷成型される。これにより、融液を冷ます段階で(つまり、急冷成型を行う前の冷却工程で)、高温時に還元されて2価に価数変化したビスマスイオン(Bi2+)が酸化されて元の3価のビスマスイオン(Bi3+)に戻る時間的な余裕を十分に持たせることができる。その結果、ビスマスイオンの還元により褐色から灰色になった融液がビスマスイオンの酸化により薄い黄色または無色に変化し、急冷成型時の着色を薄く、もしくは無くすることができる。したがって、ビスマスイオンが酸化により元の3価に戻る時間的な余裕を持たせずに融液の粘度が1Pa・s未満であるときに融液を耐熱容器から放出させることにより急冷成型した場合と比べて、光透過率を高くすることができる。さらに、一般の電子部品において光を透過させる部材としてガラスを用いる際に要求される光透過率(例えば66%以上)を満足することのできる程度にまでガラス部材を透明にすることができる。
【0022】
[実施例]
以下、本発明の一実施例について説明する。
【0023】
まず、PbO 70wt%、Bi10wt%、B 10wt%、SiO 10wt%からなるガラス原料を白金製のルツボの中に入れたのち、1200℃に加熱された溶融炉の中にルツボを入れ、ガラス原料を溶融させて融液にすると共に、白金製の攪拌翼で融液を攪拌しながら溶融炉中に30分間放置した。その後、攪拌を止め、融液を清澄させた。次に、ルツボを溶融炉から取り出して、500℃に加熱したヒータ上に載せ、t分後に融液をルツボから放出させて角柱形状用の鋳型(鋳鉄製)に流し込み、融液の急冷成形を行なった。このとき、急冷をしてもガラスが割れにくいようにするために、鋳型を予めヒータで300℃程度に暖めておいた。このようにしてガラス部材を形成した。
【0024】
まず、上記製造工程において、ルツボを溶融炉から取り出した後の融液の温度を、ルツボを溶融炉から取り出してからの時間tが1分、3分、5分経過したときに計測した。その結果得られた、融液の温度の経時変化を図7に示した。なお、融液の温度を計測する際に、ルツボを500℃に加熱したヒータ上に載せておいた。図7から、融液の温度は1200℃の溶融炉から取り出してから1分後に950℃となり、取り出してから3分後に660℃となり、取り出してから5分後に540℃となっていた。
【0025】
なお、本実施例のガラスの融液の粘度を、融液の温度を所定の温度に設定した上で計測しておいた。
【0026】
融液の粘度は、以下の方法により測定した。粘度の測定には、回転式粘度計(芝浦システム株式会社製のデジタルビスメトロン)を用いた。この回転式粘度計は、例えば、図8に示したように、モータ101と、モータ101の回転部(図示せず)に接続された白金製のロータ102と、モータ101の回転を制御すると共にモータ101の回転に必要となる駆動トルクから粘度を換算する制御部(図示せず)とを備えており、ガラスの融液104の中にロータ102を差し込み、モータ101でロータ102を所定の回転数で回転させ、その際に必要となる駆動トルクから融液104の粘度を求めることができる。ただし、粘度の計測前に、あらかじめ、ルツボ103の形状、ロータ102の形状を一定に決めておき、ルツボ103内のロータ102の位置や融液104の体積も常に一定に決めておくことが必要である。また、粘度測定は瞬間的に行えるものではないので、融液104をヒータ105である温度で一定に保った状態でロータ102を回転させて、駆動トルクが安定したら、そのときの駆動トルクの値からの換算値をそのときの温度における粘度とすることが必要である。
【0027】
粘度測定を高温側(低粘度側)から開始し、徐々に融液104の温度を下げて(融液104の粘度を上げて)いきながら行なった。まず、融液104の中にロータ102を差し込み、融液104を1000℃で一定に保った状態で、ロータ102を回転させて、駆動トルクが安定したら、そのときの駆動トルクから計算した値を1000℃における粘度とし、次に、融液104の温度を900℃に下げて一定に保ち、駆動トルクが安定した時点でそのときの駆動トルクから計算した値を900℃における粘度とした。そして、これを所定の温度ごとに繰り返し、ロータ102の回転が困難になる粘度(この場合、10Pa・s程度)まで行なった。その結果得られた、融液104の粘度の温度依存性を図9に示した。
【0028】
図7、図9から、ルツボ12を溶融炉13から取り出してからの時間tが3分経過していないときに対応する融液14の温度(660℃超)では、融液14の粘度は10Pa・s=1Pa・s未満であった。また、ルツボ12を溶融炉13から取り出してからの時間tが3分経過したときに対応する融液14の温度(660℃)では、融液14の粘度が10Pa・s=1Pa・sとなった。また、ルツボ12を溶融炉13から取り出してからの時間tが5分経過したときに対応する融液14の温度(540℃)では、融液14の粘度が10Pa・s=100Pa・sとなった。さらに、融液14をルツボ12から鋳型17に流し込んで急冷できる限界に対応する温度(475℃)では、融液14の粘度が10Pa・s=10000Pa・sとなった。
【0029】
次に、上記製造工程において、ルツボ12を溶融炉13から取り出して、500℃に加熱したヒータ16上に載せ、1分、3分、5分後に融液14を角柱形状用の鋳型17に流し込み、融液14の急冷成形を行なうことにより得られた3種類のガラスのそれぞれの光透過率の波長依存性を、可視光波長範囲(400nm〜780nm)において1nmごとに計測した。そして、3種類のガラスごとに、複数回、光透過率の波長依存性を計測し、その平均値を図10に示した。また、図7、図9および図10の対応関係を図11に表した。なお、光透過率の測定に際して、鋳型17から取り出したガラスの、光が透過する方向の厚みを0.5mmで統一すると共に、光が通過するガラスの両面、すなわち光入射面と光射出面を鏡面加工しておいた。
【0030】
図10、図11から、ルツボ12を溶融炉13から取り出してからの時間tが1分経過したとき、すなわち融液14の粘度がまだ1Pa・s未満のときに鋳込んで急冷成型したガラスの400〜780nm(1nm刻み)における平均光透過率が47.1%となった。また、ルツボ12を溶融炉13から取り出してからの時間tが3分経過したとき、すなわち融液14の粘度が1Pa・sのときに鋳込んで急冷成型したガラスの400〜780nm(1nm刻み)における平均光透過率が66.7%となった。また、ルツボ12を溶融炉13から取り出してからの時間tが5分経過したとき、すなわち融液14の粘度が102Pa・sのときに鋳込んで急冷成型したガラスの400〜780nm(1nm刻み)における平均光透過率が78.0%となった。
【0031】
磁気ヘッドの製造工程において、ボンディングガラスを透過させて磁気ギャップの深さ方向の寸法を測定する自動寸法測定器を正常に働かせるためには、通常、可視光帯域におけるガラスの透過率を66%以上にする必要があり、また光学ガラスにおいては、可視光帯域におけるガラスの透過率が78%以上あることが好ましい。したがって、本実施例のガラス部材を磁気ヘッド用のボンディングガラスとして使用した際に、磁気ギャップの深さ方向の寸法測定を正常に行なわせるためには、融液14の粘度が1Pa・s以上になる時点まで冷却した後に急冷成型させなければならない。しかし、冷却しすぎて融液14の粘度が10Pa・sを越えてしまうと粘度が高くなりすぎて融液14をルツボ12から放出させて急冷成型を行なうことが困難となる。これらのことを考慮すると、一般の電子部品において酸化ビスマスを含有するガラスを用いる場合には、融液14の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となったときに、例えば上記製造工程においてルツボ12を溶融炉13から取り出してからの時間tが3分以上経過したときに急冷成型することが好ましい。また、光学ガラスとして酸化ビスマスを含有するガラスを用いる場合には、融液14の粘度が10Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となったときに、例えば上記製造工程においてルツボ12を溶融炉13から取り出してからの時間tが5分以上経過したときに急冷成型することが好ましい。
【0032】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0033】
例えば、上記実施例において、本発明によるガラスとして鉛酸化物も含有するガラスを例に挙げて説明したが、本発明を、鉛酸化物を含有しない無鉛ガラスに対して適用することはもちろん可能である。
【0034】
また、上記実施の形態等では、本発明によるガラスの製造方法として鋳型17に鋳込んで急冷成形する方法を例に挙げて説明したが、ルツボ12から融液14をロッド状に引き上げる、または引き下げるような線引きによる急冷成形など、他の方法を用いた急冷成形に対してももちろん適用することが可能である。
【0035】
また、上記実施の形態等では、耐熱容器として白金製のルツボを用いたが、高温における白金の強度改善のために、白金にロジウムやジルコニア等を配合させて強化した白金合金を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態に係るガラス製造方法を用いてガラスを製造する工程の流れを表す流れ図である。
【図2】図1の工程を模式的に表した模式図である。
【図3】図2に続く工程を模式的に表した模式図である。
【図4】図3に続く工程を模式的に表した模式図である。
【図5】図4に続く工程を模式的に表した模式図である。
【図6】図5に続く工程を模式的に表した模式図である。
【図7】ルツボを溶融炉から取り出してからの時間と、融液の温度との関係を表した関係図である。
【図8】回転式粘度計の構成の一例を表した構成図である。
【図9】融液の粘度と、融液の温度との関係を表した関係図である。
【図10】ルツボを溶融炉から取り出してからの時間が1分、3分、5分経過したときに鋳込んで急冷成型したガラスの光透過率の波長依存性を表す特性図である。
【図11】ルツボを溶融炉から取り出してからの時間と、融液の温度、融液の粘度および400〜780nm(1nm刻み)における平均光透過率の関係を表す関係図である。
【符号の説明】
【0037】
11…ガラス原料、12,103…ルツボ、13…溶融炉、14,104…融液、15…攪拌翼、16,18,105…ヒータ、17…鋳型、101…モータ、102…ロータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ビスマスを含有するガラス原料を耐熱容器中で溶融させて融液にする溶融工程と、
前記融液の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となるまで前記融液を前記耐熱容器中で冷却する冷却工程と、
前記融液の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となったときに、前記融液を前記耐熱容器から放出させることにより急冷成型する成型工程と
を含むガラス部材の製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程において、前記融液の粘度が10Pa・sを上回ることのないように前記融液に熱を与えつつ、前記融液の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となるまで前記融液を前記耐熱容器中で冷却する請求項1に記載のガラス部材の製造方法。
【請求項3】
前記成型工程において、前記融液の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となったときに、前記融液を前記耐熱容器から放出させて鋳型に移し替えることにより、前記融液を急冷成型する請求項1に記載のガラス部材の製造方法。
【請求項4】
前記成型工程において、前記冷却工程で前記融液に与えられる熱よりも低い熱を前記融液に与える請求項2に記載のガラス部材の製造方法。
【請求項5】
前記成型工程において、前記融液の粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となったときに、前記融液を前記耐熱容器からロッド状に引き上げ、または引き下げることにより急冷成型する請求項1に記載のガラス部材の製造方法。
【請求項6】
前記冷却工程において、前記融液の粘度が10Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となるまで前記融液を前記耐熱容器中で冷却し、
前記成型工程において、前記融液の粘度が10Pa・s以上10Pa・s以下の範囲内となったときに、前記融液を前記耐熱容器から放出させることにより急冷成型する請求項1に記載のガラス部材の製造方法。
【請求項7】
前記ガラス原料は、酸化ビスマスを4wt%以上78wt%以下の範囲内で含有している請求項1に記載のガラス部材の製造方法。
【請求項8】
前記耐熱容器が白金または白金合金製のルツボである請求項1に記載のガラス部材の製造方法。
【請求項9】
組成の一部として酸化ビスマスを含有し、光入射面および光射出面を鏡面とした場合であって且つ前記光入射面と前記光射出面との距離を0.5mm厚にしたときの可視光波長範囲の透過率の平均値が66.7%以上であるガラス部材。
【請求項10】
酸化ビスマスを4wt%以上78wt%以下の範囲内で含有している請求項9に記載のガラス部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−256158(P2009−256158A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110413(P2008−110413)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】