説明

ガンのための標的化治療の変異性回避の標的化アブレーションのための組成物および方法

ガン治療剤に対する変異性の回避の標的化アブレーションのための組成物および方法が本明細書で提供される。酵母ベースのビヒクルを含む組成物が、他の癌治療剤と組み合わせて用いられる。一局面では、本発明の治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、Srcキナーゼ阻害剤、Bcr−Abl安定性に影響する薬剤、およびBcr−Ablの下流であるシグナル伝達経路で作用する薬剤、および以下:i)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;ii)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープを含む酵母ビヒクルなどのうちの1つ以上を含む組成物、からなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、変異性回避(mutational escape)の標的化アブレーション(targeted ablation)を達成するための、組成物およびガン治療剤と組み合わせたその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の生物学における新規な発見により、標的特異的抗癌剤の設計の機会がもたらされ、かつ薬物開発の進歩が促されている。このような発見により、癌細胞内の特定の標的に対して高い選択性を有する分子を設計することが可能になる。非特許文献1。例えば、慢性骨髄性白血病(CML)の処置におけるBcr−Ablチロシンキナーゼ阻害剤イマチニブ(グリベック(Gleevec))での好成績は、この標的化アプローチに対する期待を大きく刺激した。非特許文献2。標的化癌治療は、重大な問題をもたらす。標的は回避変異を発現し、最終的に薬物耐性をもたらす。例えば、最初はグリベックでの処置に応答性であった患者に変異が生じているのが認められ、この患者は、これらの変異の結果、グリベックでのさらなる処置に対して抵抗性になったと報告されている。非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6。非特許文献7;および非特許文献8。同様に、上皮細胞増殖因子レセプター(EGFR)における変異が、非小細胞肺癌(NSCLC)患者において認められており、この変異によって患者は、ゲフィチニブ(イレッサ(Iressa))またはエルロチニブ(タルセバ(Tarceva))などのEGFRを特異的に標的化する治療剤の作用に対して抵抗性にされると報告された。非特許文献9。したがって、これらの抗癌薬の有効性は、回避変異の存在によって有意に制限される。
【0003】
治療剤および/または予防剤の投与に伴って出現する変異体の出現を、そういうものとして少なくとも最小限に抑えることが望まれよう。
【0004】
免疫応答を惹起するための方法は、例えば、非特許文献10および非特許文献11に開示されている。酵母系は、例えば、特許文献1、非特許文献12;非特許文献13;および非特許文献14に開示されている。
【0005】
特許、特許出願および出願公開公報を含む本明細書に引用した全ての参考文献は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,830,463号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】SegotaおよびBukowski,Cleveland Clinic J.Med.,(2004)71(7):551〜560
【非特許文献2】Capdevilleら,Nature Reviews,(2002)1:493−502
【非特許文献3】Gorreら,Science,(2001)293:876〜880
【非特許文献4】Shahら,Cancer Cell,(2002)2:117〜125
【非特許文献5】Branfordら,Blood,(2002)99(9):3742〜3745
【非特許文献6】Deiningerら,Blood,(2005)105(7):2640〜263
【非特許文献7】Walzら,Critical Reviews in Oncology/Hematology(2006)57:145〜164
【非特許文献8】Burgessら、The Scientific World JOURNAL,(2006)6:918〜930
【非特許文献9】Kobayashiら,N.Engl.J.Med,(2005)352(8):786〜792
【非特許文献10】Thyphronitisら,Anticancer Research,(2004)vol.24:2443〜2454
【非特許文献11】Plateら,Journal of Cell Biology,(2005)第94巻:1069
【非特許文献12】Stubbsら,Nature Med.(2001)5:625〜629
【非特許文献13】Luら,Cancer Research(2004)64:5084〜5088
【非特許文献14】Franzusoffら,Expert Opin.Bio.Ther.(2005)第5巻:565〜575
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
癌に関連する変異性の回避の標的化アブレーションのための組成物および方法が本明細書で提供される。一局面では、本発明は、変異性の回避のアブレーションをそれが必要な個体において標的化するための方法であって、この個体に対して有効な量の標的化治療剤を投与することによる方法を包含し、ここでこの治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、Srcキナーゼ阻害剤、Bcr−Abl安定性に影響する薬剤、およびBcr−Ablの下流であるシグナル伝達経路で作用する薬剤、および以下:i)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープ(mimetope)をコードする核酸を含む酵母ビヒクル;ii)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープを含む酵母ビヒクル;iii)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープに会合している酵母ビヒクル;iv)樹状細胞内に細胞内ロードされた、ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;またはv)樹状細胞内に細胞内ロードされた、酵母ビヒクルおよびガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープ、のうちの1つ以上を含む組成物、からなる群より選択され、ここでこの変異型ポリペプチドは、ガンのための標的化される治療剤および/または予防剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することが知られているか、または出現したものである、方法を提供する。いくつかの局面では、この標的化治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤である。一局面では、このチロシンキナーゼ阻害剤はイマチニブである。他の局面では、このチロシンキナーゼ阻害剤は、イマチニブ、ニロチニブ、PD1866326、PD180970、AP23464、BMS−354825、ON012380、VX−680、およびBIRB−796からなる群より選択される。
【0009】
別の局面では、この標的化治療剤は、Srcキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、このSrcキナーゼ阻害剤は、PD166326、PD180970、AP23464、BMS−354825、AZM475271、PP1、PP2、AP−23236、CGP76030、およびPD173955からなる群より選択される。別の局面では、この標的化治療剤は、PKC412またはSU11248である。他の局面では、この標的化治療剤は、Bcr−Ablの安定性に影響を与える。ある例としては、この薬剤は、熱ショックタンパク質またはBcr−Ablに関連する他のシャペロンタンパク質を標的する。他の実施形態では、この薬剤は、ゲルダナマイシン(Geldanamycin)/17−AAGまたはNVP−LAQ824である。
【0010】
別の局面では、この標的の治療剤は、Bcr−Ablの下流であるシグナル伝達経路で作用する。ある例ではこの薬剤は、SCH66336、BAY−439006、CI−1040、LY294002、ワートマニン、OSU−03012、CCI−779、R115777、BMS−214662、U0126、PD184352、ラパマイシン、RAD001、CCI−779、およびAP23573からなる群より選択される。
【0011】
本発明はまた、個体におけるガン(標的化治療剤および/もしくは治療剤の投与に応答して少なくとも1つの特定の変異が出現することが知られているか、または少なくとも1つの特定の変異を出現させている)に関連する変異性の回避の標的化アブレーションのキットを提供し、このキットは上記の治療剤の任意の1つの組成物を含む。
【0012】
本発明はまた、個体におけるガン(標的化治療剤および/もしくは治療剤の投与に応答して少なくとも1つの特定の変異が出現することが知られているか、または少なくとも1つの特定の変異を出現させている)に関連する変異型回避の標的化アブレーションのキットを提供し、このキットは、酵母ビヒクルおよび少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメント、またはミメトープを備える。一局面では、このキットは、標的化治療剤および/または予防剤をさらに備える。別の局面では、このキットはさらに、このキットの使用のための説明書を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】野性型BCR−ABL白血病に対する生存曲線を、コントロール接種マウス対ワクチン接種マウスで示す。
【図2】変異型白血病に対する生存曲線を、コントロール接種マウス対ワクチン接種マウスで示す。
【図3】以下の2つの異なるTarmogen構築物で免疫したマウスの生存曲線を示す:GI−10,001(3つの回避変異体(E255K、T315IおよびM351T)を含むTarmogen)およびGI−10,002(1つの回避変異体(T315I)を含むTarmogen)。
【図4】白血球細胞カウントをコントロール接種マウス対ワクチン接種マウスで示す。マウスは、T315I回避変異を含むTarmogenをワクチン接種した。y軸は、GFP陽性細胞の割合を示す。0に近い2つの白丸は、極めて少ない白血病細胞負荷を示すワクチン接種マウスを示す。
【図5】ワクチン接種なし、GI−10,001(3つの回避変異体(E255K、T315IおよびM351T)を含むTarmogen)、またはGI−10,002(1つの回避変異体(T315I)を含むTarmogen)のいずれかを投与されているマウスでの白血病細胞カウントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
腫瘍細胞に特有である経路を特異的に標的する予防薬剤および治療薬剤の必要性があるが、薬剤(単数または複数)を回避するか、および/または耐性になることを可能にする変異(単数または複数)を腫瘍細胞が受けるという点では欠点がある。本明細書において提供されるのは、予防剤または治療剤(本明細書においてはまた変異型ポリペプチドとも呼ばれる)と関連する変異型回避の標的化アブレーションのための組成物および方法である。これらの組成物および方法は、標的化薬剤に応答して出現することが知られているか、または出現している変異型ポリペプチドに対して、またはその変異型ポリペプチドを発現する細胞に対して免疫応答を惹起するために用いられ得る。いくつかの例では、この免疫応答は、細胞性免疫応答であり、いくつかの例では、この免疫応答は体液性応答であって、他の例ではこの免疫応答は細胞性および体液性の両方である。ある例としては、この細胞性免疫応答は細胞、例えば、ガン細胞、または無制御であって、薬剤によって標的されるポリペプチド中に変異を含む、腫瘍進行を支持する細胞などを排除するものとするが、細胞の排除は必要ない。ある例としては、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答は、細胞の増殖または複製を阻止する。
【0015】
したがって、本明細書においては、治療剤および/または予防剤(単数または複数)の投与に応答した特異的変異を伴って出現することが知られているか、または出現したものである、変異型ポリペプチド、またはこの変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞および/もしくはこの変異型ポリペプチドを発現する細胞に対する免疫応答を惹起するための方法が提供される。ある例としては、免疫応答は細胞性免疫応答である。ある例としては、免疫応答は体液性免疫応答である。他の例としては、この免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。ある例としては、変異型ポリペプチドは、癌遺伝子にコードされているか、および/またはガン細胞によって発現されている。ある例としては、変異型ポリペプチドは癌細胞と関連しているか、癌細胞によって発現される。ある例としては、この薬剤は、癌細胞に標的化される。ある例としては、この薬剤は、小分子または抗体である。
【0016】
この標的化治療剤としては、限定はしないが、タンパク質(その発現(または過剰発現)がガンの発達および進行に関連する)のキナーゼ活性を阻害する薬剤が挙げられる。このようなキザーゼの例としては、Bcr−Abl、Src、Src/Akt、EGFR、PDGFR、Raf、Mek、Erk、PI3K、PDK、AKT、およびmTORが挙げられる。他の例としては、この薬剤は、これらのタンパク質および他のタンパク質の一般的な阻害剤として、それらの経路において作用する。ある例としては、この薬剤は、タンパク質の活性部位に対する直接結合を介して作用し、他の場合には、この薬剤は、そのタンパク質におけるアロステリック変化をその活性への影響に応じて生じる。本明細書に記載される組成物は、これらの標的化治療剤の使用から発生する回避変異を制御および/または排除するために、これらの標的化治療剤と組み合わせて用いられる。
【0017】
一般的技術
本発明を行うには、他に特定しない限り、当業者に周知である分子生物学の従来の技術(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、および免疫学を使用するであろう。このような技術は、
【0018】
【化1】

などの文献に詳細に説明されている。
【0019】
定義
本明細書において用いる場合、単数形「1つの、ある、(a:不定冠詞)」、「1つの、ある、(an:不定冠詞)」および「この、その(the:定冠詞)」は、他に特段の言及がない限り複数の参照を包含する。
【0020】
本明細書において用いる場合、「癌、ガン(cancer)」としては、限定はしないが、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭頸部癌腫、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳腫瘍、脈管肉腫(angiosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、肥満細胞腫、原発性肝癌、肺癌、膵臓癌、消化管癌、腎細胞癌腫、造血系新生物、白血病、およびそれらの転移性癌が挙げられる。
【0021】
本明細書において用いる場合、細胞を標的化するための治療および/または予防の「剤」または「薬剤」とは、この薬剤が、細胞の形質転換またはガンの場合には腫瘍の進行を生じることに関連する分子(単数または複数)であるか、または生じるように機能することに関するということを意味する。ガン細胞などの細胞に標的化されるように設計されている治療剤および/または予防剤の例は、本明細書に開示されており、かつ当該分野で公知である。
【0022】
本明細書において用いる場合、「変異型ポリペプチド」は、ゲノム内にコードされる全長ポリペプチド、ならびに予防剤および/または治療剤などの薬剤に応答して特定の変異を出現させることが知られているか、または出現させているものである変異を含む限りはそのフラグメントを包含する。ガン細胞などの細胞に標的される予防剤および/または治療剤などの薬剤に対する応答で特定の変異を生じるこのような変異型ポリペプチドは当該分野では、「回避変異」とも一般に言及される。変異型ポリペプチドは本明細書においては、「変異型回避」および「回避変異」とも呼ばれる。変異は、全長ポリペプチドの任意の領域において見出され得、変異には、アミノ酸の置換、挿入もしくは欠失またはその組み合わせ、あるいは転位事象で見出されるような非連続配列の融合が挙げられる。ある例としては、出現することが知られているか、またはある薬剤に応答する特定の変異で出現している変異型ポリペプチドは、それ自体で、すなわち、アジュバント、または他のベクターもしくはビヒクル、例えば酵母ビヒクルと会合することもなしに免疫原性であるが、その必要もない。他の例では、出現することが知られているか、またはある薬剤に応答して出現している変異型ポリペプチドは、その抗原性を促進するアジュバントと会合して免疫原性である。
【0023】
本明細書において用いる場合、「アジュバント」としては例えば、先天性免疫のサイトカイン応答を誘発し、抗原提示細胞(APC)の成熟および活性化に関連することが報告されているToll様レセプター(TLR)のアゴニストリガンド;CpGヌクレオチド配列;一本鎖または二本鎖のRNA(TLR7アゴニスト);脂質部分、例えば、リポポリサッカライド(LPS);マンナンおよびグルカン、酵母の構成物(TLR2、4および6との相互作用を通じて機能することが報告されている);ならびに酵母ビヒクル(本明細書に記載されるものなど)が挙げられる。
【0024】
変異型ポリペプチドまたはこの変異型ポリペプチドをコードする核酸(本明細書に開示されるか、または当該分野で公知の任意の方法によって産生され得る)を、この薬剤と「組み合わせて」投与することとは、この変異型ポリペプチドおよび薬剤が同時に投与されることを意味するものとはしないが、これは本明細書に開示の方法内に包含される。変異型ポリペプチドは、この薬剤の投与の前、同時、もしくは後に、または上記の組み合わせで投与されてもよい。変異型のポリペプチドまたは変異型ポリペプチドをコードする核酸は、その薬剤の数時間後、数日後、数ヵ月後に投与されてもよい。ある例としては、変異型のポリペプチドまたはこの変異型ポリペプチドをコードする核酸(本明細書に開示されるか、または当該分野で公知である任意の方法によって産生され得る)の投与は、この薬剤の投与の前であって、詳細にはこの薬剤が、任意の細胞タイプの増殖を直接または間接的に邪魔することが公知である場合、この薬剤の投与後に、さらに投与されてもよい。
【0025】
本明細書において用いる場合、「ミメトープ」とは、ペプチドまたはポリペプチドが、標的ポリペプチドまたは標的ポリペプチドを発現する細胞に対して免疫応答、ある例では、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を惹起する能力を模倣できるペプチドエピトープをいう。本明細書において用いる場合、「ミメトープ」としては限定はしないが、治療剤および/または予防剤の投与に応答して特定の変異を出現することが知られているか、または出現しているものである変異型ポリペプチドタンパク質の1つ以上のエピトープを模倣するペプチドが挙げられる。このようなミメトープは、MHCペプチド複合体およびT細胞レセプターとの推定の結合部位のコンピュータ作製構造を用いて設計され得る。ミメトープはまた、オリゴヌクレオチド、ペプチドまたは他の有機分子などの分子のランダムなサンプルを作製することによって、ならびに免疫応答、例えば、細胞性免疫応答などを惹起する能力についてこのようなサンプルをスクリーニングすることによって、本明細書に記載されかつ当該分野で公知の方法およびアッセイによって、得ることができる。
【0026】
本明細書において用いる場合、「疾患または感染の症状を改善する」とは、臨床基準および/または無症状性の基準によって測定され得る疾患状態の任意の症状および/または進行を軽減する、安定化する、逆転する、鈍らせる、または遅らせることを包含する。
【0027】
ある例としては、変異型ポリペプチド(またはそのミメトープ)または変異型ポリペプチドをコードする核酸の「有効量」とは、哺乳動物に投与された場合免疫応答を惹起できる量をいう。ある例においては、免疫応答は細胞性免疫応答である。他の例では、免疫応答は体液性応答である。ある例では、この免疫応答は細胞性の応答および体液性の応答である。
【0028】
本明細書において用いる場合、「哺乳類」、「哺乳動物」、または「哺乳動物宿主」とは、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、チンパンジーおよび他の霊長類、およびサルの種;畜産動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマ;家庭内の哺乳動物、例えば、イヌおよびネコ;実験動物、げっ歯類、例えば、マウスおよびモルモットを含む;鳥類、例えば、家禽、野生および狩猟用の鳥類、例えば、ニワトリ、シチメンチョウおよび他の家禽鳥類、カモ、ガチョウなどが挙げられる。この用語は、特定の年齢を意味しない。従って、成体、若年および新生の個体、ならびに出生前の哺乳動物を包含するものとする。
【0029】
「抗原」とは、抗原特異的体液性応答および/または細胞性抗原特異的応答を作製する、1つ以上のエピトープ(直線状、高次構造、またはその両方)または免疫原性決定因子(哺乳動物の免疫系などの宿主の免疫系を刺激する)を含む分子をいう。抗原は、それ自体で、またはその抗原性を促進する因子と組み合わせて「免疫原」として用いられてもよい。「抗原」という用語は、タンパク質丸ごと、短縮型タンパク質、タンパク質のフラグメント、ペプチドおよびペプチドミメトープを包含する。抗原は、天然に存在してもよいし、またはタンパク質の遺伝子操作された改変体であってもよい。抗原は、天然に存在してもよいし、またはタンパク質の遺伝子操作された改変体であってもよい。「抗原」という用語は、サブユニット抗原(すなわち、抗原が天然に会合している生物体まるごととは別および離れている抗原)を包含する。抗体、例えば、抗イディオタイプ抗体、またはそのフラグメント、および合成のペプチドミメトープ(抗原または抗原性決定基を模倣し得る合成ペプチドである)はまた、本明細書において用いられるような抗原の定義のもとで捕獲される。ある例としては、抗原は、変異型ポリペプチドを包含するか、または予防剤および/もしくは治療剤に応答する特定の変異を出現するかまたは出現することが公知である変異型ポリペプチドから獲得でき、天然に存在してもよいし、または合成であってもよい。抗原は、単一のエピトープ程度の小ささであっても、それより大きくてもよく、複数のエピトープを含んでもよい。そういうものとして、抗原のサイズは、約5〜12アミノ酸(例えば、ペプチド)程度に小さくても、全長タンパク質程度に大きくてもよいし、これには、マルチマーおよび融合タンパク質、キメラタンパク質、細胞丸ごと、微生物体丸ごと、またはその一部を含む(例えば、細胞丸ごとの溶解物、または微生物の抽出物)。ある例としては(すなわち、抗原がベクター、例えば、酵母ベクター、または組み換え核酸分子由来のウイルスによって発現される場合)、抗原としては、限定はしないが、細胞または微生物全体でなく、タンパク質、そのフラグメント、融合タンパク質、キメラタンパク質、マルチマーが挙げられる。
【0030】
本明細書において用いる場合、「エピトープ」とは、免疫応答(細胞性免疫応答であっても、および/または体液性免疫応答であってもよい)を惹起するのに十分な所定の抗原内の単独の抗原部位として規定される。当業者は、T細胞エピトープがB細胞エピトープとは異なる大きさでかつ組成であること、およびクラスI主要組織適合性抗原複合体(MHC)経路を通じて提示されるエピトープが、クラスIIMHC経路を通じて提示されるエピトープとは異なるということを認識する。一般には、B細胞エピトープは、少なくとも約5アミノ酸を含むが、3〜4アミノ酸程度の小ささであってもよい。T細胞エピトープ、例えば、細胞毒性Tリンパ球(CTL)エピトープは、少なくとも約7〜10アミノ酸を含み、ヘルパーT細胞エピトープは少なくとも約12〜20アミノ酸を含む。この文脈では、抗原は、変異されたポリペプチドを発現する細胞を認識可能なT細胞を活性化および増幅するためにさらに有効であるミメトープであってもよい。通常、T細胞によって認識されて、標的細胞のアブレーションを惹起するエピトープは、約7〜15アミノ酸、例えば、8、9、10、12または15アミノ酸を含む。
【0031】
本明細書において用いる場合、変異型ポリペプチド(またはそのミメトープ)またはそのポリペプチドをコードする核酸(または変異型ポリペプチド、例えば、siRNAまたはアンチセンスRNAなどに対して結合し得る核酸)またはポリペプチドもしくは核酸を含む組成物に対する「免疫学的応答」または「免疫応答」とは、ポリペプチドを認識する細胞免疫応答の哺乳動物における発達を含む。ある例において、この免疫応答は体液性免疫応答である。ある例において、細胞性免疫応答はさらに、体液性免疫応答を包含する。この免疫応答は、変異型ポリペプチドに特異的であってもよいが、これは必須ではない。変異型ポリペプチド、またはこのポリペプチドをコードする核酸の投与によって惹起される免疫応答は、ポリペプチドまたは核酸の投与なしでの免疫応答に比較して、免疫応答のあらゆる小局面におけるあらゆる検出可能な増大であってもよい(例えば、細胞性応答、体液性応答、サイトカイン産生)。免疫応答は、変異型ポリペプチド特異的応答であってもよいが、これは必須ではない。本発明内には、変異型ポリペプチド(またはそのミメトープ)、または免疫応答を惹起する変異型ポリペプチドをコードする核酸と会合している組成物を包含する。
【0032】
本明細書において用いる場合、「体液性免疫応答」とは、抗体分子または免疫グロブリンによって媒介される免疫応答をいう。本発明の抗体分子としては、IgG(およびサブタイプ、IgG1、IgG2a、およびIgG2b)、IgM、IgA、IgDおよびIgEのクラスが挙げられる。抗体とは機能的に、一次免疫応答の抗体、および記憶抗体応答または血清中和抗体を包含する。感染性疾患に関しては、本発明の抗体は、変異型ポリペプチドをコードするウイルスの感染性を中和もしくは減弱するように、および/または変異型ポリペプチドに対する抗体−補体、もしくは抗体依存性細胞毒性(ADCC)を媒介するように機能し得るが、そうである必要はない。
【0033】
本明細書において用いる場合、「細胞性免疫応答」とは、Tリンパ球および/または他の白血球細胞(限定はしないがナチュラルキラー(NK)細胞およびマクロファージを含む)によって媒介される免疫応答である。本発明のTリンパ球としては、α/βT細胞レセプターサブユニットを発現するT細胞、またはγ/δレセプター発現T細胞が挙げられ、これはエフェクターT細胞であっても、またはサプレッサーT細胞であってもよい。
【0034】
本明細書において用いる場合、「T−リンパ球」または「T−細胞」は、免疫系の細胞媒介アームの一部を構成する、抗体を産生しないリンパ球である。T細胞は、骨髄から胸腺に遊走する未熟リンパ球から生じ、胸腺でそれらは胸腺ホルモンの指示のもとで成熟プロセスを受ける。成熟T細胞は、それが特定の抗原を認識しかつ結合する能力に基づいて免疫担当性になる。免疫担当性T細胞の活性化は、抗原がリンパ球の表面レセプターに結合する時に誘発される。T細胞応答を生成するためには、抗原は、細胞内で合成されるかまたは細胞に導入されなければならず、その後に、プロテアソーム複合体によって低分子ペプチドにプロセシングされ、主要組織適合性抗原複合体(MHC)クラスIタンパク質との最終的な会合のために小胞体/ゴルジ複合体分泌経路に転位される。あるいは、ペプチド抗原は、細胞の外側から導入されて、MHC−IまたはMHC−IIレセプターへ既に結合したペプチドを置き換えてもよい。機能的に細胞性免疫は、抗原特異的細胞毒性Tリンパ球細胞(CTL)を含む。
【0035】
本明細書において用いる場合、「抗原特異的キラーT細胞」、「CTL」、または「細胞傷害性T細胞」とは本明細書において用いる場合、MHCまたはヒト白血球抗原(HLA)のタンパク質(このタンパク質がヒトに対して言及される場合)との会合で提示されるペプチド抗原に特異性を有する細胞をいう。本発明のCTLとしては、MHCの文脈で特定の抗原によって誘発されている活性化CTL;および抗原に対する再暴露の結果として再活性化されているT細胞を指す記憶CTLまたは想起CTL、ならびに交差反応性またはクロス・クレード(cross clade)CTLが挙げられる。本発明のCTL類としては、CD4+およびCD8+T細胞が挙げられる。本発明の活性化された抗原特異的CTL類は、CTLが特異的である病原体に感染した被験体の細胞の破壊および/または溶解、限定はしないがマクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP−1α)、MIP−1βおよびRANTESを含むケモカインおよびサイトカインの分泌を介する病原体進入の阻止;ならびに感染を抑制する可溶性因子の分泌を促進する。本発明の細胞性免疫とはまた、T細胞のTヘルパーサブセットによって生じる抗原特異的応答も指す。ヘルパーT細胞は、機能を刺激することを補助するように働き、その表面上にMHC分子と会合したペプチドを提示する細胞に対して、非特異的エフェクター細胞の活性を集中させる。細胞性免疫応答とはまた、活性化T細胞および/または他の白血球(CD4およびCD8T細胞およびNK細胞に由来する細胞を含む)によって生じるサイトカイン、ケモカインおよび他のこのような分子の産生をいう。細胞免疫応答を惹起する組成物は、細胞表面でMHC分子と会合しているポリペプチドの提示により哺乳動物を感作するように機能し得る。細胞媒介性免疫応答は、抗原提示細胞に対して、またはその付近に、その表面において向けられる。さらに、抗原特異的Tリンパ球は、免疫宿主の将来的な保護を可能にするように生成され得る。
【0036】
特定のポリペプチドまたは抗原が細胞媒介性免疫応答を刺激する能力は、当該分野で公知の多数のアッセイ、例えば、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL殺傷アッセイによって、または感作された被験体における抗原に特異的なTリンパ球についてアッセイすることによって、決定され得る。このようなアッセイは当該分野で周知である。例えば、Ericksonら、J.Immunol.(1993)151:4189〜4199;Doeら、Eur.J.Immunol.(1994)24:2369〜2376を参照のこと。細胞媒介性免疫応答を測定する他の方法としては、T細胞集団による、またはエピトープ特異的T細胞の測定による(例えば、テトラマー技術による)、細胞内サイトカインまたはサイトカイン分泌の測定が挙げられる(McMichael、A.J.、およびO’Callaghan、C.A.J.Exp.Med.187(9)1367〜1371、1998;Mcheyzer−Williams、M.G.ら、Immunol.Rev.150:5〜21、1996;Lalvani、A.ら、J.Exp.Med.186:859〜865、1997によって概説される)。
【0037】
本明細書において用いる場合、「免疫学的応答」、または「免疫応答」とは、CTL類の産生、および/またはヘルパーT細胞の産生もしくは活性化、および/または抗体媒介性免疫応答を刺激するものを包含する。「Tリンパ球」または「T細胞」とは、免疫系の細胞媒介性アームの一部を構成する、抗体非産生性リンパ球である。T細胞は、骨髄から胸腺に遊走する未熟リンパ球から生じ、胸腺でそれらは胸腺ホルモンの指示のもとで成熟プロセスを受ける。ここで、この成熟リンパ球は、急速に分裂して極めて大きい数に増える。成熟T細胞は、特異的な抗原を認識して結合する能力に基づいて免疫担当性になる。MHC/HLAレセプターおよび共同レセプターによって、提示という状況では抗原がリンパ球表面レセプターに結合するとき、免疫担当性T細胞の活性化が誘発される。
【0038】
本明細書において用いる場合、「免疫原性組成物」とは、変異型ポリペプチド(またはその変異型エピトープのミメトープを含む)、または予防剤および/もしくは治療剤に応答して特定の変異を出現することが知られているかまたは出現している変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物であって、変異型ポリペプチドの抗原性を促進するアジュバントを含んでもまたは含まなくてもよく、ここで哺乳動物に対するこの組成物の投与は、細胞性免疫応答、体液性免疫応答または細胞性および体液性の免疫応答の発達を生じる。免疫原性組成物は、防御的な細胞免疫応答を惹起し得る組成物を含むが、これは必須ではない。
【0039】
本明細書において用いる場合、「予防的組成物」とは、「免疫学的にナイーブ」であるか、もしくは病原体の抗原に対して以前に暴露されていない哺乳動物被験体または宿主に対して投与される組成物、またはその病原体に対して有効な免疫応答を生じておらず疾患、例えば、ガンおよび感染もしくは再感染を予防する組成物(ただし、本発明は、感染または再感染が完全に予防される必要はない)をいう。本発明の予防的組成物は、それらが投与されている宿主または被験体において殺菌免疫を生じる必要はない。
【0040】
本明細書において用いる場合、「治療的組成物」とは、ガンに罹患しており、ある場合には疾患状態に進行している被験体または宿主に対して投与される組成物を指す。
【0041】
本明細書において用いる場合、「免疫」、「免疫する」または「免疫された」という用語は、生きた哺乳動物被験体または宿主に対して、組成物に対する免疫応答を誘導するのに有効な量で免疫原性組成物を投与するという過程を指す。ある例としては、この免疫応答としては、細胞性免疫応答、例えば、細胞毒性T細胞応答が挙げられる。ある例としては、この免疫応答としては、体液性の応答、例えば、抗体産生が挙げられる。ある例としては、この免疫応答としては、細胞性応答および体液性応答の両方が挙げられる。
【0042】
酵母ベースの組成物および方法
本明細書では、抗原に応答して特異的な変異を出現することが知られているか、または出現しているものである変異型ポリペプチドを含む酵母ベクター、酵母ビヒクル、および酵母ベースの組成物が提供される。本明細書において用いる場合、「酵母ベクター」および「酵母ビヒクル」という用語は、交換可能に用いられ、そしてこれには限定はしないが、酵母丸ごと、酵母スフェロプラスト、酵母細胞質体、酵母ゴースト、および細胞下酵母膜抽出物、またはそのフラグメントが挙げられる。ある例としては、酵母細胞または酵母スフェロプラストを用いて、酵母ビヒクルを調製し、これは、ある例としては、酵母細胞または酵母スフェロプラストによってポリペプチドが発現されるような、変異型ポリペプチドをコードする核酸分子を含む。ある例としては、この酵母ビヒクルは、非病原性の酵母から入手可能である。他の例では、この酵母ビヒクルは、以下からなる群より選択される酵母から得ることができる:Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluveromyces、Hansenula、CandidaおよびPichia。ある例としては、SaccharomycesはS.cerevisiaeである。
【0043】
一般には、酵母ビヒクルおよび変異型ポリペプチドは、本明細書に記載の任意の技術によって会合され得る。ある例としては、酵母ビヒクルは、変異型ポリペプチドを細胞内にロードされている。他の例としては、変異型ポリペプチドは酵母ビヒクルに対して共有結合されるか、または非共有結合される。なおさらなる例としては、この酵母ビヒクルおよび変異型ポリペプチドは、混合によって会合される。他の例としては、この変異型ポリペプチドは、酵母ビヒクルによって、または酵母細胞もしくは酵母スフェロプラスト(酵母ビヒクルが由来する)によって組み換え的に発現される。
【0044】
従って、本明細書に提供されるのは、任意の酵母細胞(例えば、細胞丸ごと、またはインタクトな細胞)を包含する酵母ビヒクル、または組成物中で変異型ポリペプチドと組み合わせて、またはアジュバントとして用いられ得るその誘導体である。従って、酵母ビヒクルとしては限定はしないが、生きたインタクトな酵母微生物(すなわち、細胞壁を含む全ての成分を含む酵母細胞)、殺傷された(死んだ)インタクトな酵母微生物、または以下を含むその誘導体:酵母スフェロプラスト(すなわち、細胞壁を欠いている酵母細胞)、酵母細胞質体(すなわち、細胞壁および核を欠いている酵母細胞)、酵母ゴースト(すなわち、細胞壁、核および細胞質を欠いている酵母細胞)、または細胞分画(subcellular)酵母膜抽出物またはその画分(以前には細胞分画酵母粒子とも呼ばれた)が挙げられる。
【0045】
酵母スフェロプラストは代表的には酵母細胞壁の酵素消化によって生じる。このような方法は、例えば、Franzusoffら、Meth.Enzymol.194:662〜674、(1991)に記載されている。酵母細胞質体は代表的には、酵母細胞の除核によって産生される。このような方法は、例えば、Coon、Natl.Cancer Inst.Monogr.48:45〜55(1978)に記載される。酵母ゴーストは代表的には、透過化処理されるかまたは溶解された細胞を再封することによって生じ、その細胞の少なくともいくつかのオルガネラを含み得るが、その必要はない。このような方法は、例えば、Franzusoffら、J.Biol.Chem.258:3608〜3614(1983)およびBusseyら、Biochim.Biophys.Acta 553:185〜196(1979)に記載されている。細胞分画酵母膜抽出物またはその画分とは、天然の核または細胞質を欠く酵母膜をいう。その粒子は、任意の大きさであってもよく、その大きさとしては、超音波または当業者に公知の他の膜破壊方法によって、続いて再封によって作製された天然の酵母膜のサイズからマイクロ粒子のサイズにおよぶ大きさが包含される。細胞分画酵母膜抽出物を作製する方法は、例えば、Franzusoffら、Meth.Enzymol.194:662〜674(1991)に記載されている。当業者はまた、酵母膜部分を含む酵母膜抽出物の画分を使用してもよく、抗原が酵母膜抽出物の調製の前に酵母によって組み換え発現されるとき、目的の抗原は抽出の一部である。酵母はまた、エレクトロポレーションされてもよいし、そうでなければペプチドなどの標的抗原をロードされてもよい。
【0046】
任意の酵母株を用いて、本発明の酵母ビヒクルを産生してもよい。酵母は、以下の3つの分類のうちの1つに属する単細胞微生物である:Ascomycetes、BasidiomycetesおよびFungi Imperfecti。病原性酵母株、またはその非病原性変異体を用いることができるが、ある例においては、非病原性の酵母株を用いる。本明細書に開示される組成物および方法における使用のための酵母株の属としては、Saccharomyces、Candida(病原性であってもよい)、Cryptococcus、Hansenula、Kluyveromyces、Pichia、Rhodotorula、SchizosaccharomycesおよびYarrowiaが挙げられる。ある例としては、酵母株としてはSaccharomyces、Candida、Hansenula、PichiaおよびSchizosaccharomycesが挙げられる。ある例としては、酵母株はSaccharomycesである。酵母株の種としてはSaccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Candida albicans、Candida kefyr、Candida tropicalis、Cryptococcus laurentii、Cryptococcus neoformans、Hansenula anomala、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus var.lactis、Pichia pastoris、Rhodotorula rubra、Schizosaccharomyces pombe、およびYarrowia lipolyticaが挙げられる。これらの種の多数が種々の亜種、型、亜型などを含んでおり、これは上述の種の中に含まれることを意味することが理解されるべきである。ある例としては、酵母種としてはS.cerevisiae、C.albicans、H.polymorpha、P.pastorisおよびS.pombeが挙げられる。ある例としては、S.cerevisiaeは、それが比較的容易に操作され、食品添加物としての使用のために「一般に安全と認められる(安全食品認定)(Generally Recognized As Safe)」または「GRAS」であることによって用いられる(GRAS、FDA proposed Rule 62FR18938、April 17、1997)。ある例としては、プラスミドを特に高いコピー数に複製できる酵母株、例えば、S.cerevisiae cir°株が用いられる。他の有用な株は当該分野で公知である。
【0047】
ある例としては、本発明の酵母ビヒクルは、その酵母ビヒクルおよび変異型ポリペプチドが送達される細胞型、例えば、樹状細胞またはマクロファージと融合されてもよく、それによって、酵母ビヒクル、多くの例では抗原のその細胞型への特に有効な送達が達成される。本明細書において用いる場合、標的された細胞型との酵母ビヒクルの融合とは、酵母細胞膜またはその粒子が標的細胞型(例えば、樹状細胞またはマクロファージ)の膜と融合して、合胞体形成をもたらす能力を指す。本明細書において用いる場合、合胞体とは、細胞の融合によって産生された原形質の多核集団である。しかし、酵母ビヒクルへの標的化部分または融合部分の組み込みは、ある状況下では所望される場合もあるが、必須ではないことに注意のこと。酵母ビヒクルは既に樹状細胞に取り込まれていることが示されている(マクロファージのような他の細胞と同様)。
【0048】
酵母ビヒクルは、酵母ベースの組成物に処方されてもよく、この組成物としては、投与の前に、当該分野で公知の多数の技術を用いて、樹状細胞などの担体に直接または最初にエキソビボでロードされた、ガンであるかまたは感染しているかまたはそのリスクのある個体被験体への直接投与を意図する組成物が挙げられる。
【0049】
本明細書に提供されるのは、酵母ビヒクルおよびそれを含む組成物であって、この組成物は、哺乳動物への投与のための少なくとも1つの変異型ポリペプチドを含む。また、動物への投与のための2つまたは3つの変異型ポリペプチドを含む酵母ビヒクルおよび組成物も提供される。これは、公知のまたは予想される標的化剤または予防剤に対して1、2、3またはそれ以上の回避変異を有する変異型ポリペプチドを含む酵母ベースのワクチンを含む。一局面では、酵母ビヒクルは、1つの回避変異を含む。他の局面では、この酵母ビヒクルは、2つの回避変異を含む。他の局面では、この酵母ビヒクルは3つの回避変異を含む。
【0050】
ある例としては、この組成物は以下:
i)少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;
ii)少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープを含む酵母ビヒクル;
iii)少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープに会合された酵母ビヒクル;
iv)樹状細胞内に細胞内ロードされた少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;または
v)樹状細胞内に細胞内ロードされた、酵母ビヒクルおよび少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープ、のうちの1つ以上を含み、この変異型ポリペプチドは、標的化される治療剤および/または予防剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することが知られているか、または出現したものである。
【0051】
このような組成物は、所望される場合、1つ以上の変異型ポリペプチドの1つ以上の免疫原性ドメインを含む1個、2個、2〜3個、数個、または複数個の変異型ポリペプチドを含んでもよい。本明細書において用いる場合、ポリペプチドは「抗原」を含む。本明細書において用いる場合、抗原としては、タンパク質の任意の一部(ペプチド、タンパク質フラグメント、全長タンパク質)(このタンパク質は、天然に存在するかまたは合成由来である)、細胞組成物(細胞丸ごと、細胞溶解物、または破壊された細胞)、生物体(生物体丸ごと、溶解物、または破壊された細胞)、炭水化物、脂質、または他の分子、またはそれらの一部が挙げられ、この抗原が抗原特異的な免疫応答(体液性および/または細胞性の免疫応答)を惹起する。
【0052】
酵母は、免疫刺激複合体の多くの粒子性の特徴を示し、この特徴は、アジュバント様特性を自然に保有し、かつ抗原を含む複数のポリペプチドを発現するために容易に操作可能であるという利点が追加されている。Luら、Cancer Research 64、5084〜5088(2004)では、酵母ベースの免疫療法が単一のアミノ酸変異を保有するRas腫瘍性タンパク質を発現する腫瘍に対して細胞媒介性免疫応答を惹起できたということが実証された。この結果、酵母ビヒクルおよび酵母ベースの系が、単一アミノ酸変異を保有するポリペプチドに対する免疫療法を標的する能力が実証された。従って、本明細書に提供されるのは、酵母ビヒクルおよび酵母ベースの組成物であって、これは、ある薬剤に応答して出現することが知られているか、または出現したものである変異型ポリペプチド(単数または複数)、およびこの変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するためにそれらを用いるための方法を含む。ある例では、この免疫応答は、細胞免疫応答である。ある例では、この免疫応答は体液性の応答である。他の例では、この免疫応答は細胞および体液性の両方である。さらなるいくつかの例では、酵母ビヒクルは、所望の細胞型に対して抗原を選択的に送達するように操作される。また、二塩基性アミノ酸プロセシング部位を有する異種前駆体タンパク質を作製できる酵母株を含む酵母ビヒクルも提供される。このような酵母株は、前駆体タンパク質を少なくとも1つの切断産物タンパク質へ正確にプロセシングできる。
【0053】
ある例としては、この変異型ポリペプチドは、例えば、Rasのような腫瘍遺伝子によってコードされる。ある例では、この変異ポリペプチドは、腫瘍関連抗原またはガン細胞によって発現されるタンパク質である。
【0054】
ベクターの調製
本明細書に提供されるのは、変異型ポリペプチドと会合しているベクター、例えば、酵母ビヒクルを含む組成物である。このような会合としては、ベクターによる、例えば、組み換え酵母によるポリペプチドの発現、変異型ポリペプチドのベクターへの導入、変異型ポリペプチドのベクターへの物理的結合、ならびにベクターおよび変異型ポリペプチドを一緒に、例えば、処方のための緩衝液または他の溶液中で混合することが挙げられる。このような方法は、当業者には慣用的であるとみなされる。
【0055】
実例として、酵母ベクターを下に記載する。ある例としては、酵母ビヒクルを調製するために用いられた酵母細胞を、変異型ポリペプチドをコードする異種核酸分子で形質転換して、結果としてそのポリペプチドを酵母細胞によって発現させる。このような酵母はまた、本明細書において組み換え酵母または組み換え酵母ビヒクルと呼ばれる。次いで、この酵母細胞を樹状細胞中にインタクトな細胞としてロードしてもよく、この酵母細胞を殺傷してもよいし、またはこれを、酵母スフェロプラスト、細胞質体、ゴーストまたは細胞分画粒子の形成などによって誘導体化してもよい(いずれの場合にも、その後、この誘導体は樹状細胞内にロードされる)。酵母スフェロプラストはまた、抗原を発現する組換えスフェロプラストを作製するため、組換え核酸分子で直接トランスフェクトされてもよい(例えば、スフェロプラストを完全体の酵母から作製し、次いでトランスフェクトする)。
【0056】
本発明によれば、単離された核酸分子または核酸配列とは、これが天然状態で会合している少なくとも1つの成分から取り出されている核酸分子または配列である。したがって、「単離された」は、必ずしも、この核酸分子が精製された程度を反映するものではない。ベクター(例えば酵母ビヒクルなど)のトランスフェクションに有用な単離された核酸分子としては、DNA、RNA、またはDNAもしくはRNAいずれかの誘導体が挙げられる。単離された核酸分子は、二本鎖であっても単鎖であってもよい。本発明に有用な単離された核酸分子としては、タンパク質またはそのフラグメント(本発明の組成物に有用な少なくとも1つのエピトープを含有するフラグメントでさえあれば)をコードする核酸分子が挙げられる。
【0057】
核酸分子は、酵母ビヒクルなどのベクター内に、当該分野で公知の任意の方法、例えば、限定されないが、拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、バス超音波処理(bath sonication)および遺伝子操作によって形質転換してもよい。
【0058】
酵母ビヒクル内に形質転換される核酸分子は、1つ以上の変異型ポリペプチドをコードする核酸配列を含むものであり得る。このような核酸分子は、コード領域の一部もしくは全体、調節領域または組合せを含むものであり得る。酵母株の利点の1つは、多数の核酸分子を担持するその能力および多数の異種タンパク質を産生できるという能力である。ある例としては、酵母ビヒクルによって産生される多数の抗原とは、酵母ビヒクルによって無理なく産生され得る任意の数の抗原であり、典型的には、少なくとも1つから少なくとも約5つ以上の範囲におよぶ。一例としては、約2〜約5個の抗原を酵母ビヒクルによって産生する。
【0059】
酵母ビヒクル内の核酸分子にコードされている変異型ポリペプチドは、完全長のタンパク質であってもよいし、または修飾タンパク質が天然のタンパク質のものと実質的に類似の生物学的機能(または、所望の場合、天然のタンパク質と比べて、増強または阻害された機能)を有するように、アミノ酸が欠失(例えば、このタンパク質の切断型)、挿入、逆位、置換および/または誘導体化(例えば、アセチル化、グリコシル化、リン酸化、テザーリング(tethered)(グリセロホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーによって)された機能的に等価なタンパク質であってもよい。修飾は、当該分野で公知の技術、例えば、限定されないが、タンパク質に対する直接修飾またはこのタンパク質をコードする核酸配列に対する修飾(例えば、ランダムまたは標的化変異誘発を行なうための古典的技術または組換えDNA技術を使用)によって行なわれてもよい。
【0060】
ベクターにおける変異型ポリペプチドの発現は、当業者に公知の技術を用いて達成される。要するに、少なくとも1つの所望の変異型ポリペプチドをコードする核酸分子を、宿主酵母細胞中に形質転換されるとき、この核酸分子の構成的発現または調節発現のいずれかが達成され得るようにこの核酸分子が転写制御配列に作動可能に連結されるような方式で発現ベクター内に挿入する。1つ以上の変異型ポリペプチドをコードする核酸分子は、1つ以上の転写制御配列に作動可能に連結された1つ以上の発現ベクター上に存在し得る。
【0061】
本発明の組換え分子において、核酸分子は、調節配列(例えば、転写制御配列、翻訳制御配列、複製起点、およびこのベクターと適合性であってこの核酸分子の発現を制御する他の調節配列)を含む発現ベクターに、作動可能に連結させる。特に、本発明の組換え分子は、1つ以上の転写制御配列に作動可能に連結された核酸分子を含む。「作動可能に連結された」という語句は、宿主細胞内にトランスフェクト(すなわち、形質転換、形質導入またはトランスフェクト)されるときこの分子が発現され得るような方式での転写制御配列への核酸分子の連結を指す。
【0062】
転写制御配列(これによって産生タンパク質の量が制御され得る)としては、転写の開始、伸長および停止を制御する配列が挙げられる。特に重要な転写制御配列は、転写の開始を制御する配列、例えば、プロモーターおよび上流活性化配列である。多数の上流活性化配列(UAS)(エンハンサーとも呼ばれる)が公知であり、ベクターにおいて使用され得る。
【0063】
ベクター内への核酸分子トランスフェクションは、核酸分子が細胞内に投与される任意の方法によって達成されてもよく、これには限定はしないが、拡散、能動輸送、バス超音波処理、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着およびプロトプラスト融合が挙げられる。トランスフェクト核酸分子は、当業者に公知の技術を用いて、染色体内に組み込ませてもよいし、または染色体外ベクター上に維持してもよい。酵母の場合、酵母細胞質体、酵母ゴースト、および細胞分画酵母膜抽出物またはその画分もまた、インタクトな酵母微生物または酵母スフェロプラストを所望の核酸分子でトランスフェクトし、その内部に抗原を産生させ、次いで、微生物またはスフェロプラストを当業者に公知の技術を用いてさらに操作し、所望の抗原を含有する細胞質体、ゴーストまたは細胞分画酵母膜抽出物またはその画分を産生させることによって、組換えにより作製され得る。
【0064】
組換えベクターの作製およびこのベクターによる変異型ポリペプチドの発現に有効な条件としては、このベクターが培養され得る有効培地が挙げられる。有効培地は、代表的には、同化性炭水化物、窒素およびリン酸塩源ならびに適切な塩類、無機塩類、金属ならびに他の栄養分、例えば、ビタミン類および増殖因子を含む水性培地である。培地は、複合栄養分を含むものであってもよく、規定の最少培地であってもよい。本発明のベクターは、種々の容器、例えば、限定されないが、バイオリアクター、三角フラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュおよびペトリ皿内で培養され得る。培養は、酵母株に適切な温度、pHおよび酸素含量で行なわれる。このような培養条件は、十分に当業者の技量の範囲内である(例えば、Guthrieら(編),1991,Methods in Enzymology,第194巻,Academic Press,San Diegoを参照のこと)。
【0065】
本発明のある例としては、ベクター内での変異型ポリペプチドの発現の代替法として、ベクター(例えば、酵母ビヒクルなど)に変異型ポリペプチド、またはペプチドもしくはミメトープ(変異型ポリペプチドを保有する細胞に対してT細胞媒介性免疫応答を活性化するためのエピトープとして作用する)を細胞内ロードさせる。続いて、変異型ポリペプチドに特異的なエピトープを細胞内に現在保有しているこのベクターを、患者に投与してもよいし、または樹状細胞などの担体内に負荷してもよい(後述)。酵母ビヒクルに関しては、変異型ポリペプチドは、本発明の酵母ビヒクル内に、当業者に公知の技術によって、例えば、拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、食作用、凍結解凍サイクルおよびバス超音波処理によって直接挿入してもよい。
【0066】
変異型ポリペプチドまたは変異型エピトープを標的するペプチドが直接ロードされ得る酵母ビヒクルとしては、インタクトな酵母、ならびにスフェロプラスト、ゴーストまたは細胞質体(これらには抗原が、産生後に樹状細胞内への負荷の前にロードされ得る)が挙げられる。あるいは、インタクトな酵母に抗原がロードされてもよく、次いで、これからスフェロプラスト,ゴースト、細胞質体または細胞分画粒子が調製されてもよい。多数の抗原、少なくとも1、2、3、4または数百もしくは数千までの多数の自然数の整数(例えば、微生物のロードによってもたらされ得る数)の抗原が、例えば、哺乳動物腫瘍細胞またはその部分のロードによって、酵母ビヒクル内にロードされてもよい。
【0067】
別の例では、変異型抗原をベクター、例えば、酵母ビヒクルに物理的に結合させる。ベクターへの変異型ポリペプチドの物理的結合は、当該分野において好適な任意の方法、例えば、共有および非共有結合法、例えば、限定されないが、ベクターの外側表面に対する変異型ポリペプチドの化学的架橋、またはベクターの外側表面に対する変異型ポリペプチドの生物学的連結(例えば、抗体もしくは他の結合パートナーの使用による)によって達成され得る。化学的架橋は、例えば、グルタルアルデヒド結合、光親和性標識、カルボジイミドでの処置、ジスルフィド結合で連結させ得る化学薬品での処置、および当該分野で標準的な他の架橋性化学薬品での処置などの方法によって達成され得る。あるいは、酵母の場合には、化学薬品を酵母ビヒクルと接触させてもよく、これにより、酵母膜の脂質二重層の電荷または細胞壁の組成が改変され、その結果、酵母の外側表面が、特定の電荷特性を有する抗原と、より融合または結合し易くなる。標的化因子、例えば、抗体、結合性ペプチド、可溶性のレセプターおよび他のリガンドなどもまた、ベクターへの抗原の結合のために、変異型抗原内に融合タンパク質として組み込まれてもよいし、そうでなければ抗原と会合されてもよい。
【0068】
さらに別の例としては、ベクターと変異型ポリペプチドは互いに、より受動的、非特異的または非共有結合性の機構によって、例えば、ベクターと抗原を一緒に緩衝液または他の適当な処方物中で静かに混合することなどによって会合される。
【0069】
本発明のある例としては、ベクターおよび変異型抗原を、両方とも樹状細胞またはマクロファージなどの担体内に細胞内ロードさせて免疫原性組成物を形成する。樹状細胞は、当該分野で公知の任意の樹状細胞であってもよい。樹状細胞は、単球でかつリンパ球系統の細胞であって、最も強力な抗原提示細胞(APC)であり、かつ抗原特異的T細胞応答を刺激することが公知である。成熟樹状細胞は、代表的には、以下の細胞表面マーカー表現型:MAC3、CD80、CD83、CD86、CD401°w、CD54、MHCクラスIおよびMHCクラスIIを有するものとして同定され、FITC−デキストラン取込みが可能である。本発明の組成物に用いられる樹状細胞は、一例では、この組成物が投与される患者から単離されたもの(すなわち、自己細胞)である。樹状細胞は、骨髄から単離されてものであっても、または末梢血から単離されたものであってもよい。このような細胞は、例えば末梢血単球から、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、IL−4およびTNF−αの存在下での培養によって、生成できる。樹状細胞を単離および生成させるための他の方法は、当該分野で公知である。(例えば、Wilsonら,1999,Immunol 162:3070〜8;Romaniら,1994,J.Exp Med 180:83〜93;Cauxetal.,1996,J.Exp Med 184:695〜706;およびKiertscherら,1996,J.Leukoc.Biol 59:208〜18を参照のこと)。
【0070】
樹状細胞が天然のT細胞に効率的に抗原提示するためには、未成熟樹状細胞を、活性化して成熟状態(MHCおよび共刺激分子の上方調節によって規定される)にしなければならない。酵母は樹状細胞に対し、Toll様レセプター(TLR)および食作用レセプター(例えば、D.M. UnderhillおよびB.Gantner,2004,Microbes and Infection第6巻:第1368〜1373頁;Takeda K.およびAkira S.,2005,International Immunology,第17巻:第1〜14頁を参照のこと)、マンナン、グルカンおよびデクチンレセプターを通して強力な活性化刺激を与え、共刺激免疫レセプター、MHC分子の上方調節、および免疫調節サイトカインの分泌をもたらす。さらに、樹状細胞にロードする前に酵母に抗原をプレロードした場合、これは、集中的に内在化されている別個の濃縮されたパッケージにて樹状細胞に抗原を提供し、それにより、プロセッシングに利用可能な抗原の量が効率的に増大される。当業者には認識されるように、さらなるベクターが樹状細胞をロードするために用いられ得る。
【0071】
両成分のロードが達成できる種々の形態を、以下にさらに詳細に考察する。本明細書で用いる場合、「ロードされた(loaded)」という用語およびその派生語は、成分(例えば、酵母ビヒクルおよび/または抗原)の細胞(例えば、樹状細胞)内への挿入、導入または侵入をいう。ある成分の細胞内ロードとは、細胞の細胞内区画へのこの成分の挿入または導入をいう(例えば、原形質膜を通して、かつ最低でも細胞質、ファゴソーム、リソソームまたは細胞の一部の細胞内空間内に)。細胞内へある成分をロードするとは、成分を強制的に細胞内に侵入させるもの(例えば、エレクトロポレーションによって)、または環境に配置するもの(例えば、細胞もしくはその付近と接触)のいずれかである任意の技術を指しており、このとき、この成分は、実質的には、何らかのプロセス(例えば、食作用)によって細胞内に侵入する可能性が高い。ロード技術としては、限定されないが、拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、食作用およびバス超音波処理が挙げられる。ある例では、樹状細胞に酵母ビヒクルおよび/または抗原をロードさせるための受動的機構を用い、このような受動的機構としては、樹状細胞による酵母ビヒクルおよび/または抗原の食作用が挙げられる。
【0072】
酵母の場合、酵母ビヒクルおよび変異型ポリペプチドは、樹状細胞内に、ほぼ同時(the same time)または同時(simultaneously)にロードされてもよいが、一方の成分をこの細胞内にロードした後、他方をある程度の時間後にロードすることも可能である。ある例としては、酵母ビヒクルおよび変異型ポリペプチドを、樹状細胞内へのロード前に互いに会合させる。例えば、変異型ポリペプチドを発現する組換え酵母ビヒクル、または任意の他の複合体、または酵母ビヒクルと変異型ポリペプチドの混合物を、樹状細胞内にロードしてもよい。樹状細胞には、さらに、遊離の変異型ポリペプチド、すなわち、樹状細胞内に導入(ロード)されるときに酵母ビヒクルと直接会合されていないポリペプチドがロードされてもよい。酵母ビヒクル−抗原複合体とともに遊離ポリペプチドを添加することにより、このポリペプチドに対する免疫応答のさらなる増強がもたらされ得る。樹状細胞内にロードされる遊離ポリペプチド(単数または複数)は、酵母ビヒクルによって発現されるもの、この酵母ビヒクル内にロードされるもの、そうでなければ酵母ビヒクルと会合したものと同じである必要はない。この方式で、標的細胞に対する免疫応答が増強され得る。
【0073】
ある例としては、変異型ポリペプチドまたはこれをコードする核酸を含む組成物は、1つ以上のアジュバント(例えば、本明細書に記載のものおよび/または担体を含む)を含むが、これは必須ではない。アジュバントは、代表的には、一般的に、特異的抗原に対する動物の免疫応答を増強する物質である。好適なアジュバントとしては、限定されないが、本明細書に記載のTLRアゴニスト、CpG配列(例えば、Kriegらの国際公開第WO96/02555号を参照のこと)、単鎖RNA、二本鎖RNA、フロイントアジュバント、他の細菌細胞壁成分(例えば、LPS、フラジェリン)、アルミニウム系の塩、カルシウム系の塩、シリカ、ポリヌクレオチド、トキソイド、血清タンパク質、ウイルスのコートタンパク質、他の細菌由来調製物、γ−インターフェロン、ブロックコポリマーアジュバント、例えば、ハンター(Hunter)のタイターマックス(Titermax)アジュバント(CytRx.TM.,Inc.Norcross,Ga.)、Ribiアジュバント(Ribi ImmunoChem Research,Inc.,Hamilton,Mont.から入手可能)ならびにサポニンおよびその誘導体、例えば、Quil A(Superfos Biosector A/S(デンマーク))から入手可能)が挙げられる。
【0074】
担体は、代表的には、処置動物において治療用組成物の半減期を増大させる化合物である。好適な担体としては、限定されないが、ポリマー系制御放出製剤類、生分解性インプラント類、リポソーム類、油類、エステル類およびグリコール類が挙げられる。
【0075】
本発明の免疫原性組成物はまた、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤を含むものであってもよい。本明細書で用いる場合、「薬学的に受容可能な賦形剤」とは、本発明の方法に有用な組成物を、適当なインビボまたはエキソビボ部位に送達するのに適した任意の物質をいう。ある例としては、薬学的に受容可能な賦形剤は、ベクター(またはこのベクターを含む樹状細胞)を、このベクターまたは細胞が体内の標的細胞、組織または部位に達すると、このベクター(変異型ポリペプチドと関連している)または樹状細胞(ベクターおよび変異型抗原がロードされている)が、免疫応答(例えば、細胞性免疫応答、体液性免疫応答または両方を含む)を、標的部位(標的部位は全身であってもよいことに注意)において惹起し得る形態で維持し得る。本発明の適切な賦形剤としては、組成物またはワクチンを一部位に輸送するが、特異的に標的化するものでない賦形剤または配合物が挙げられる(本明細書では、非標的化担体ともいう)。薬学的に受容可能な賦形剤の例としては、限定されないが、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液類、ハンクス溶液、他の水性の生理学的緩衝溶液類、油類、エステル類およびグリコール類が挙げられる。水性担体は、例えば、化学的安定性および等張性を向上させることによりレシピエントの生理学的状態に近づけるのに必要とされる適当な補助物質を含有するものであり得る。好適な補助物質としては、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ならびにリン酸塩緩衝液、Tris緩衝液および重炭酸塩緩衝液を作製するために用いられる他の物質が挙げられる。補助物質としてはまた、保存剤、例えば、チメロサール、m−クレゾールまたはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンゾールアルコールを挙げることができる。
【0076】

本明細書で用いる場合、癌としては、任意の型の腫瘍または新生物形成が含まれ、これには例えば、限定されないが、結腸直腸癌、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭頸部癌腫、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳腫瘍、脈管肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫、原発性肝癌、肺癌、膵臓癌、消化管癌、腎細胞癌腫、造血系新生物ならびにそれらの転移性癌が挙げられる。本発明は、「ガン」の定義内である白血病を考慮する。慢性の骨髄性白血病は、本発明がその処置および予防における用途を考慮しているガンの一タイプである。
【0077】
特異的癌抗原の例としては、限定されないが、MAGE(例えば、限定されないが、MAGE3、MAGEA6、MAGEA10)、NY−ESO−1、gp100、チロシナーゼ、EGFR、PSA、PSMA、VEG−F、PDGFR、KIT、PMSA、CEA、HER2/neu、Muc−1、hTERT、MART1、TRP−1、TRP−2、Bcr−Abl、ならびにp53の変異型発癌性形態(TP53)、p73、Ras、Raf、PTENSrc、p38、BRAF、APC(大腸腺腫性ポリポーシス)、myc、VHL(フォン・ヒッペル・リンドウタンパク質)、Rb−1(網膜芽細胞腫)、Rb−2、BRCAl、BRCA2、AR(アンドロゲンレセプター)、Smad4、MDR1およびFLT3が挙げられる。
【0078】
ある例としては、癌抗原は、治療剤および/または予防剤による標的化に適した分子(例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質または糖質)であるか、またはこの分子から入手できる。治療用および/または予防用の癌用薬剤の分子標的は当該分野で公知であり、これには限定されないが、細胞表面レセプター(例えば、受容体チロシンホスファターゼ、受容体セリン/トレオニンキナーゼ、および受容体チロシンキナーゼなど)、細胞内シグナル伝達分子(例えば、細胞内チロシンキナーゼおよび他の二次シグナル伝達分子など)、ならびに転写因子、細胞周期調節因子、プロテアソーム成分、血管新生に関与しているタンパク質、アポトーシス制御に関与しているタンパク質、およびシャペロンタンパク質が挙げられる。
【0079】
治療剤および/または予防剤の癌への標的化では、回避変異型、すなわち変異型ポリペプチドの存在をもたらすことが観察されている。例えば、Bcr−Ablチロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブ(グリベック)での処置に個体を以前に応答性にさせると報告されていたBcr−Ablにおいて変異が認められ、この処置に対して抵抗性となった。Gorreら,Science,293:876〜880(2001);Shahら,Cancer Cell,2:117〜125(2002);Branfordら,Blood,99(9):3742〜3745(2002);Deiningerら,Blood,105(7):2640〜263(2005)。同様に、EGFRにおける変異もまた、非小細胞肺癌(NSCLC)患者で認められ、それによりこの患者は、ゲフィチニブ(イレッサ)またはエルロチニブ(タルセバ)の処置に対して抵抗性となる。Kobayashiら,N.Engl.J.Med,352(8):786〜792(2005)。したがって、これらの抗癌剤の有効性は、変異型ポリペプチドの出現によって有意に制限される。
【0080】
したがって、本明細書においては、癌遺伝子によってコードされているか、および/または癌細胞によって発現されるか、または治療剤および/もしくは予防剤の投与に応答した特異的変異を伴って出現することが知られているか、もしくは出現したものである変異型ポリペプチドをコードする核酸によって発現される変異型ポリペプチドを含む免疫原性組成物、ならびにこの変異型ポリペプチドまたはこの変異型ポリペプチドを発現する細胞に対する免疫応答を惹起するための方法が提供される。ある例としては、免疫応答は細胞性免疫応答である。ある例としては、免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は、細胞性と体液性の両方の応答を包含する。
【0081】
癌抗原であるポリペプチド変異型は、哺乳動物に予め存在し得るものであり得る、すなわち、診断時に存在し得、治療剤および/または予防剤(単数または複数)の投与の結果、選択的に出現するものであり得る。あるいは、このポリペプチド変異型は、この薬剤によって与えられる圧力の結果、出現し得る。この変異は、癌抗原内のいずれのアミノ酸位置に位置してもよい。ポリペプチドの変異は、単一の変異の状況において記載しているが、変異型ポリペプチドは、1つより多く(例えば、2、3、4、5またはそれ以上)のアミノ酸変異を含むものであり得ることを理解すべきである。
【0082】
ある例としては、ポリペプチド変異型は、Bcr−Ablの接合領域の外に変異を含む。Bcr−Ablは、構成的に活性なチロシンキナーゼであり、これは第9染色体と第22染色体の間のDNA転位から生じ、従って、フィラデルフィア染色体のBcr遺伝子およびAbl遺伝子を融合する。Bcr−Ablは、慢性骨髄性白血病(CML)の病原因子であり、その構成的キナーゼ活性は、造血系細胞をインビボで形質転換するその能力に中心的であると報告されている。チロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブ(グリベック、2−フェニルアミノピリミジン)は、CMLの治療用薬剤である。タンパク質を薬物療法(例えば、グリベック処置)に対して耐性にさせる、種々の回避変異がBcr−Ablにおいて、インビボおよびインビトロで同定されている。Deiningerら,Blood,105(7):2640〜2653(2005);Azamら,Cell,112:831−43(2003)。これらの変異は、Bcr−Ablの種々のドメインに位置しており、ドメインとしては限定はしないが、キナーゼドメイン(例えば、P−ループ、A−ループ、T315、C−ヘリックス、SH3コンタクト領域、またはSH2コンタクト領域)、capドメイン、SH3ドメイン、SH2ドメインおよび他のリンカー領域が挙げられる。一実施形態では、この変異型ポリペプチドは、E255K、T315I、およびM351Tを含む。他の実施形態では、この変異型ポリペプチドは、T315Iを含む。他の実施形態では、この変異型ポリペプチドは、E255Kを含む。他の実施形態では、この変異型ポリペプチドは、M351Tを含む。さらに他の実施形態では、この変異型ポリペプチドは、以下の2つの組み合わせを含む:E255K、T315I、およびM351T(例えば、E255K/T315IまたはT315I/M351TまたはE255K/M351T)。別の実施形態では、この回避変異はV299Lである。別の実施形態では、この回避変異は、T315Aである。別の実施形態では、この回避変異はF317Vである。別の実施形態では、その回避変異は、F311Iである。イマチニブ(グリバック(Gleevac))に対する回避変異を標的化するのにおける概説については、例えば、Walzら、Critical Reviews in Oncology/Hematology 57:145〜164(2006)およびBurgessら、The Scientific World JOURNAL、6:918〜930(2006)を参照のこと。
【0083】
このガン抗原は、異なるアミノ酸位置で1つ以上の変異を含んでもよい。Bcr−Ablおよびイマチニブ(グリベック)処置に対するその応答については、種々の回避変異が当該分野で記載されている。一局面では、この変異はT315I回避変異である。別の局面では、この変異はE255K変異である。さらに別の局面では、この変異はM351T変異である。他の局面では、この変異は、E255K、T315IおよびM351Tの3つ全ての組み合わせである。他の局面では、この変異は、上記で開示された3つの変異(例えば、E255K/T315IまたはT315I/M351TまたはE255K/M351T)のうち2つの組み合わせである。ガン抗原はさらに、形質転換事象に関連する変異などの他の変異を含んでもよい。
【0084】
ある例としては、ポリペプチド変異型はガン抗原の1つ以上の変異型ポリペプチド由来の複数の免疫原性ドメインを含む融合ポリペプチドであってもよい。例えば、グリベックの投与でさえ回避変異として出現する、Bcr−Ablタンパク質におけるいくつかの異なる変異があることが公知である(例えば、E255K、T315I、M351T、V299L、T315A、F317V、またはF311I)。変異型ポリペプチドは、1つ以上のBcr−Abl変異を同じ位置および/もしくは異なる位置で含んでも、ならびに/または変異の組み合わせを2つ以上の位置で含んでもよい。
【0085】
従って、一局面では、本発明は、変異型回避のアブレーションの必要な個体においてそのアブレーションを標的するための方法であって、個体に対して有効量の標的化治療剤および組成物を投与することによる方法を提供し、この組成物は以下:i)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;ii)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープを含む酵母ビヒクル;iii)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープに会合された酵母ビヒクル;iv)樹状細胞内に細胞内ロードされた、ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;またはv)樹状細胞内に細胞内ロードされた酵母ビヒクルおよびガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープのうちの1つ以上を包含し、ここでこの変異型ポリペプチドは、ガンのための標的化治療剤および/または予防剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することが知られているか、または出現したものである。
【0086】
標的化治療剤は、ガンの予防または処置に用いられる任意のタイプのガンであってもよい。この薬剤の非限定的な例は:チロシンキナーゼ阻害剤、Srcキナーゼ阻害剤、二重Src/Abl阻害剤類、Ras/Raf/Mek経路で作用する薬剤、PI3K経路で作用する薬剤;癌遺伝子シグナル伝達経路に関与するシャペロンタンパク質に作用する薬剤である。治療剤および標的化アブレーション方法の組み合わせは、回避変異を含む細胞の排除のために有効である。既存の治療剤の多くは、回避変異を有する細胞を排除しないが、それらは、野生型表現型を排除し得る。従って、この薬剤単独、または標的化アブレーション方法単独では、それ自体で用いられる場合、お互いと組み合わせて用いられる場合ほど有効ではない。
【0087】
チロシンキナーゼ阻害剤として作用する標的化治療剤の非限定的な例は以下である:イマチニブ、ニロチニブ、PD1866326、PD180970、AP23464、BMS−354825、ON012380、VX−680、およびBIRB−796。
【0088】
Srcキナーゼ阻害剤として作用する標的化治療剤の非限定的な例は、PD166326、PD180970、AP23464、BMS−354825、AZM475271、PP1、PP2、AP−23236、CGP76030、およびPD173955である。
【0089】
ガン(例えば、Bcr−Abl)に関与するタンパク質の安定性に影響する標的化治療剤の非限定的な例としては、熱ショックタンパク質またはガンに関与するタンパク質と会合する他のシャペロンタンパク質が挙げられる。ある局面では、この薬剤は、ゲルダナマイシン/17−AAGまたはNVP−LAQ824である。
【0090】
この標的化治療剤はまた、Bcr−Ablの下流であるシグナル伝達経路で作用する。本発明の範囲内で考慮されるシグナル伝達経路の例としては、限定はしないが、Ras、Raf、Mek、Erk、Src、PI3K、PDK、ASK、mTORが挙げられる。上述のシグナル伝達経路を標的する薬剤の非限定的な例としては、以下が挙げられる:SCH66336、BAY−439006、CI−1040、LY294002、ワートマニン(wortmanin)、OSU−03012、CCI−779、R115777、BMS−214662、U0126、PD184352、ラパマイシン(rapamycin)、RAD001、CCI−779、およびAP23573。さらに、これらの経路の活性化に関連するタンパク質を標的する薬剤も、本発明の範囲内で考慮される。例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤類、例えば、SCH66336、R115777、およびBMS−214662は、本明細書に記載の標的化アブレーション方法と組み合わせて用いてもよい。
【0091】
Bcr−Ablなどのタンパク質を標的化することに加えて、他のガン治療剤は、下に詳細に考察されるような、FLT3、PDGFR、VEGR、PKC、およびc−Kitなどの他の標的に関する。ある実施形態では、D816VおよびV560Gは、本明細書に記載される方法論によって標的され得るc−Kitの回避変異である。変異型回避に対する標的化アブレーションの使用はまた、上述の標的および任意の他のガン抗原および/またはガンに関するタンパク質に対する薬剤と組み合わせて用いられ得る。例えば、PKC412およびスニチニブ(SU11248)は、FLT3、PDGFR、VEGR、PKC、およびc−Kitを標的するために用いられ得る。変異回避に対する標的化アブレーションはまた、イマチニブ−耐性好酸球減少症(hypoeosiniphilic)(HES)または消化管間質腫瘍(GIST)などの他のガンを処置するための薬剤と組み合わせて用いてもよい。
【0092】
ある例としては、変異型ポリペプチドはEGFRに変異を含む。EGFRは、正常細胞と癌細胞の両方において細胞分裂の開始に重要な役割を果たす受容体チロシンキナーゼである。多数の癌、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)およびグリア芽腫(脳腫瘍)では、EGFRは、過剰発現されるか、または変異されるかのいずれかであることが報告されており、これらの変化が、腫瘍の形成および成長と関連していると考えられている。2種類の経口アニリノキナゾリンEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブ(イレッサ)およびエルロチニブ(タルセバ)は、米国では、NSCLCの処置に認可されている。回避変異であるT790MがEGFRにおいて見出されており、これは、哺乳動物被験体をイレッサまたはタルセバ処置に対して抵抗性にすると報告されている。そういうものとして、変異型回避に対する標的化アブレーションの使用はまた、これらの薬剤に対して回避変異を発達させている個体を処置するためにイレッサ、あるいはタルセバと組み合わせて用いてもよい。
【0093】
したがって、本明細書では、EGFRの変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)またはEGFRをコードする核酸を含む組成物、および免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。ある例としては、この免疫応答は細胞性免疫応答である。ある例としては、この免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、この免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。ある例としては、変異型ポリペプチドは、変異をEGFRのキナーゼドメイン内に含む。
【0094】
ある例としては、変異型ポリペプチドは、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)内に変異を含む。PDGFRは、受容体チロシンキナーゼである。PDGFRの活性化は、種々の型の癌、例えば、グリア芽腫、隆起性皮膚線維肉腫およびCMLの進行に重要であることが報告されている。従って、本明細書では、PDGFRの変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)またはPDGFRをコードする核酸を含む組成物、および免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。ある例としては、この免疫応答は細胞性免疫応答である。ある例としては、この免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、この免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。ある例としては、変異型ポリペプチドは、PDGFRのキナーゼドメイン内に変異を含む。
【0095】
ある実施形態では、変異型ポリペプチドは、KITの変異を含む。KITは、幹細胞因子(SCF)のチロシンキナーゼレセプターである。キナーゼドメイン内の変異によるKITの活性化は、消化管間質腫瘍(GIST)および他の型の腫瘍と関連していることが報告されている。高頻度の回避変異、例えば、D816VまたはV560Gが、c−kitにおいて、グリベックで処置された患者で記載されている。例えば、Walzら、Critical Reviews in Oncology/Hematology,57:145〜164(2006)を参照のこと。従って、本明細書には、KITの変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)またはKITをコードする核酸を含む組成物、および免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。ある例としては、この免疫応答は細胞性免疫応答である。ある例としては、この免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、この免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。ある例としては、変異型ポリペプチドは、KITのキナーゼドメイン内に変異を含む。ある例としては、この変異型ポリペプチドは、野生型KITポリペプチドに関してT670I変異を含む。
【0096】
従って、本明細書では、このような変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)またはこの変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、および免疫応答の惹起におけるそれらの使用のための方法が提供される。ある例としては、この免疫応答は細胞性免疫応答である。ある例としては、この免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、この免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。ある例としては、ある薬剤に応答して特定の変異を出現することが知られているか、または出現している変異型ポリペプチドは、それ自体が、アジュバントと会合されていなくても免疫原性であるが、これは必須ではない。他の例としては、ある薬剤に応答して出現することが知られているか、または出現している変異型ポリペプチドは、Toll様レセプターリガンドもしくはアゴニスト、またはCpGヌクレオチド配列、またはその抗原性を向上させる他のベクターもしくはビヒクル(例えば、酵母ビヒクルなど)のアジュバントと会合して免疫原性である。
【0097】
従って、本明細書に記載される組成物は、哺乳動物において変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するために用いられ、これには哺乳動物にその組成物の有効量を、標的化される治療剤および/または予防剤との組合せで投与することを包含している。ある例としては、この組成物は、以下:
i)少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;
ii)少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープを含む酵母ビヒクル;
iii)少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープに会合している酵母ビヒクル;
iv)樹状細胞内に細胞内ロードされた少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;または
v)樹状細胞内に細胞内ロードされた酵母ビヒクルおよび少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープ、のうちの1つ以上を含み、ここでこの変異型ポリペプチドは、標的化される治療剤および/または予防剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することが知られているか、または出現したものである。
【0098】
さらに、この組成物は、哺乳動物において変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するための医薬の調製または製造において、標的化される治療剤および/または予防剤との組合せで用いられてもよい。ある例としては、変異型ポリペプチドは、癌遺伝子、腫瘍関連抗原または癌細胞によって発現されるポリペプチドである。ある例としては、この癌細胞は、結腸直腸癌、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭頸部癌腫、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳腫瘍、脈管肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫、原発性肝癌、肺癌、膵臓癌、消化管癌、腎細胞癌腫、造血系新生物ならびに転移性の癌からなる群より選択される。
【0099】
ある例としては、免疫応答は細胞性免疫応答である。他の例では、この免疫応答は体液性免疫応答である。さらに他の例では、この免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。
【0100】
さらに、本明細書に記載の組成物は、哺乳動物において疾患を処置するために用いられ、これには哺乳動物に有効量のこの組成物を投与することを含み、この疾患は、標的化される治療剤および/または予防剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することが知られているか、または出現したものである変異型ポリペプチドと関連している。ある例としては、この組成物は、標的化される治療剤および/または予防剤との組合せで用いられる。さらに、この組成物は、哺乳動物において疾患を処置するための医薬の調製または製造において、標的化される治療剤および/または予防剤との組合せで用いられ得る。ある例としては、この変異型ポリペプチドは、癌遺伝子、腫瘍関連抗原または癌細胞によって発現されるポリペプチドである。ある例としては、この癌細胞は、結腸直腸癌、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭頸部癌腫、甲状腺癌、軟組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳腫瘍、脈管肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫、原発性肝癌、肺癌、膵臓癌、消化管癌、腎細胞癌腫、造血系新生物ならびに転移性の癌からなる群より選択される。ある例としては、この疾患はガンである。
【0101】
癌抗原において、薬剤の投与の結果出現する新たな変異型ポリペプチドの同定方法は、当該分野で公知である。インビトロ方法によって同定された回避変異は、インビボで発現されたものとの高度の相関性を示している。例えば、Azamら、Cell,112:831〜843(2003);Coolsら、Cancer Research,64:6385〜6389(2004);Blenckeら、Chem.Biol,11:691〜701(2004))を参照のこと。例えば、Azamらにより、標的指向型抗癌剤に対する耐性の変異型ポリペプチドを同定するためのスクリーニング方法(これは、一般的に、任意の薬剤−変異型ポリペプチドの対に適用可能である)が提供される(Azamら、Biol.Proced.Online,5(1):204−210(2003))。要するに、標的変異型ポリペプチドをコードするcDNAをクローニングベクター内にクローニングし、ランダム変異誘発に供し、標的癌ポリペプチド内に変異のライブラリーをもたらす。次いで、このライブラリーを薬剤での処理に感受性の細胞内に導入する。次いで、薬剤での処理に耐性のコロニーをこの治療用薬剤の存在下で選択し、単離し、配列決定して、推定変異を明らかにする。各候補変異の耐性表現型を確認するため、変異はまた、天然のcDNA内にも部位特異的変異誘発によって新たに作製してもよい。変異型cDNAを薬物感受性細胞内に導入して、その薬物耐性表現型を確認する。薬物耐性は、細胞増殖アッセイによってさらに確認され得る。変異はまた、タンパク質結晶構造のモデル内へマッピングすることによって、その構造的結果物について解析してもよい。
【0102】
組成物および薬学的処方物およびその投与
本明細書において、変異型ポリペプチドと関連しているベクターを含む組成物、例えば、患者に直接投与される、または当業者に公知の多数の技術を用いて樹状細胞などの担体に最初にロードされる組成物が提供される。例えば、ベクターは、凍結乾燥によって乾燥されたもの、または液体窒素もしくはドライアイスへの曝露によって凍結したものであってもよい。酵母ビヒクルを含む組成物はまた、例えば、パン焼または醸造作業で使用される酵母で行なわれているように、ケーキまたは錠剤内への酵母のパッキングにより調製されてもよい。さらに、樹状細胞内へのロードまたは他の型の投与前に、ベクターは、薬学的に受容可能な賦形剤、例えば、宿主細胞に耐容性のある等張性緩衝液などと混合してもよい。このような賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、および他の水性の生理学的緩衝性塩溶液が挙げられる。非水性ビヒクル、例えば、固定油、ゴマ油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどもまた用いられてもよい。他の有用な製剤としては、粘度向上剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、グリセロールまたはデキストランを含有する懸濁剤が挙げられる。賦形剤はまた、少量の添加剤、例えば、等張性および化学安定性を向上させる物質を含有してもよい。緩衝液の例としては、リン酸塩緩衝液、重炭酸塩緩衝液およびTris緩衝液が挙げられ、一方、保存剤の例としては、チメロサール、m−またはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが挙げられる。標準的な処方物は、液状の注射用剤、または注射用の懸濁剤もしくは液剤として適当な液状物にし得る固形のいずれであってもよい。したがって、非液状製剤では、賦形剤は、例えば、デキストロース、ヒト血清アルブミンおよび/または保存剤を含んでもよく、これらには、投与前に、滅菌水または生理食塩水が添加されてもよい。
【0103】
本明細書において、癌もしくは感染のリスクがあるか、または癌もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に対して、変異型抗原と関連するベクターを含む組成物(例えば、免疫原性組成物など)を投与することを含む方法が提供される。この方法は、一般的に、哺乳動物において免疫応答(これは、一例では細胞性免疫応答である)を惹起するために有用である。このような方法は、薬剤(単数または複数)に応答して出現したか、または薬剤に応答して出現すると考えられる変異型ポリペプチドに対する細胞性免疫応答を惹起し、それにより、この薬剤に対する耐性を最小限にする、もしくは逆転するか、および/またはこの薬剤の有効性を延長させるか、および/または一部の疾患の症状もしくは感染を最小限にするか、低減もしくは逆転するのに有用であると考えられる。
【0104】
したがって、本明細書においては、哺乳動物において予防剤および/または治療剤に対する耐性を最小限にする方法であって、哺乳動物に、この薬剤に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連しているベクター、例えば、酵母ビヒクルを含む組成物の有効量を投与することを含む方法が提供される。また、本明細書において、疾患もしくは感染のリスクがある、または疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与される薬剤に対する耐性を低下させるための方法が提供され、この薬剤は、予防的および/または治療的のいずれかで投与され、これには哺乳動物に対して有効量の組成物をこの薬剤との組合せで投与することを含み、上記組成物は、
a.この変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞、ベクターもしくはウイルス;
b.この変異型ポリペプチドと関連している細胞、ベクターもしくはウイルス;
c.この変異型ポリペプチド、もしくはこの変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するペプチド(ミメトープ);あるいは
d.変異型ポリペプチドをコードする核酸、またはこの核酸に結合する核酸、例えばsiRNAもしくはアンチセンスRNAなどを含み、ここでこの組成物の有効量は、この薬剤との組合せで投与される。
【0105】
ある例としては、この組成物は、以下:
i)少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;
ii)少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープを含む酵母ビヒクル;
iii)少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープと会合している酵母ビヒクル;
iv)樹状細胞内に細胞内ロードされた、少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;または
v)樹状細胞内に細胞内ロードされた酵母ビヒクルおよび少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープの1つ以上を含み、この変異型ポリペプチドは、標的化される治療剤および/または予防剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することが知られているか、または出現したものである。
【0106】
ある例では、この組成物は、細胞性免疫応答を惹起し得る。他の例においては、免疫応答は体液性免疫応答である。他の例では、免疫応答は、細胞性および体液性両方の免疫応答を含む。
【0107】
この方法のある例では、この組成物は、アジュバントを含む。さらに他の例においては、この組成物は、Toll様レセプターもしくは食作用レセプターまたはその両方のアゴニストまたはリガンドをさらに含む。他の例においては、この組成物は酵母ビヒクルを含む。さらに他の例においては、この組成物は、CpG配列を含む。他の例においては、細胞は樹状細胞である。ある例では、哺乳動物とはヒトである。
【0108】
また、本明細書においては、この薬剤(単数または複数)が投与されたか、投与されるか、または投与されている哺乳動物において変異型ポリペプチド特異的免疫応答を惹起するための方法における使用のためのベクター、例えば、酵母ビヒクル、ウイルスおよび組成物、例えば、酵母ビヒクルを含む酵母ベースの組成物、例えば、免疫原性組成物が提供される。ある例では、この哺乳動物は、疾患のリスクがあり、変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープと会合されているベクターおよび/またはこのようなベクターを含む組成物が、この薬剤の前、同時および/またはその後に予防的に投与される。他の例においては、哺乳動物は、疾患に易罹患性であり、変異型ポリペプチドと関連しているベクターおよび/またはこのようなベクターを含む組成物は、この薬剤の前、同時および/またはその後に治療的に投与される。この変異型ポリペプチドと会合されているこのような酵母ビヒクルの投与は、例えば、治療剤および/または予防剤に対する哺乳動物の感受性を増大させるため;および/またはこのような剤の治療用有効性を増大させるため;および/またはこのような剤の有効寿命を延長させるために用いられ得る。ある例では、変異型ポリペプチドは、ベクターまたは本明細書において上記の組成物投与前に同定され、他の例においては、変異型ポリペプチドは、ある薬剤に応答して存在すると予測される。
【0109】
この変異型ポリペプチドと会合しているベクター(例えば、酵母ビヒクル)、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープを含む本明細書に記載の組成物、ならびに治療剤または予防剤は、同時または連続のいずれかで、この薬剤(単数または複数)の投与の前または後のいずれかで投与され得る。同時投与には、1つの組成物で一緒の投与、あるいは、別々の組成物としての投与が包含される。ある例では、この薬剤および変異型ポリペプチドまたはこれをコードする核酸は、異なる処方物に存在しており、同時および別々に投与される。この薬剤および変異型ポリペプチドまたはこれをコードする核酸が連続して投与されるある例では、投与は、哺乳動物に対して施術者が適切とみなす毎日、毎週または毎月で行なわれてもよいことが理解されるであろう。「同時投与」という用語は、本明細書で用いる場合、酵母ビヒクルを含む組成物および治療剤が、同じ日に投与されることを意味する。変異型ポリペプチドを含む組成物または治療剤のいずれが最初に投与されてもよい。同時に投与される場合、酵母ビヒクルを含む組成物および治療剤は、同じ投薬量(すなわち、酵母ビヒクルを含む組成物と治療剤の両方を含む単位投薬量)に含まれてもよいし、または別々の投薬量に含まれてもよい(例えば、酵母ビヒクルを含む組成物は1つの薬剤形に含まれ、治療剤は別の薬剤形に含まれる)。
【0110】
ある例では、この変異型ポリペプチドを含む組成物は、「フォローアップ処置」として、すなわち、この薬剤の処置が開始された後または疾患の症状の増大が観察された後に投与される。しかしながら、ベクター例えば、酵母ビヒクルを含む組成物はまた、治療用または予防用薬剤での処置が開始される前に投与されてもよい。
【0111】
本明細書に記載の方法はまた、ベクターおよびポリペプチドが互いに複合体形成されていない(すなわち、ポリペプチドがベクターによって組換え発現されないか、ベクター内にロードされていないか、またはベクターに物理的に結合されていない)ベクターおよび変異型ポリペプチドを哺乳動物に投与することを含むものであってもよい。このベクターおよび変異型ポリペプチドは、被験体への投与前に処方物中に混合してもよいし、または別々に投与してもよい。投与プロセスは、エキソビボで、例えば、酵母ビヒクルをロードした樹状細胞による導入などによって、またはインビボで行なわれてもよい。エキソビボ投与は、調節工程の一部を哺乳動物外で行なうこと、例えば、本発明の組成物を、哺乳動物から取り出した細胞(樹状細胞)集団に、ベクターおよび変異型ポリペプチドが細胞内にロードされるような条件下で投与し、この細胞を哺乳動物に戻すことをいう。次に、ベクターを含む組成物は、任意の適当な投与様式で哺乳動物に戻されてもよいし、または哺乳動物に投与されてもよい。
【0112】
組成物、例えば、ベクターおよび変異型ポリペプチドがロードされた樹状細胞を含む組成物の投与は、例えば、全身性であっても、または粘膜経由であってもよい。投与経路は、状態、使用される変異型ポリペプチドおよび/または標的細胞集団もしくは組織の型に応じて、当業者には自明であろう。投与方法としては、限定されないが、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、リンパ節内投与、冠動脈内投与、動脈内投与(例えば、頚動脈内)、皮下投与、経皮送達、気管内投与、皮下投与、関節内投与、脳室内投与、吸入(例えば、エアロゾル)、頭蓋内、髄腔内、眼球内、経耳、鼻腔内、経口、肺投与、カテーテルの挿入(impregnation)、および組織内への直接注射が挙げられる。投与経路としては以下が挙げられる:静脈内、腹腔内、皮下、皮内、リンパ節内、筋肉内、経皮、吸入、鼻腔内、経口、眼球内、関節内、頭蓋内および髄腔内。非経口送達としては、皮内、筋肉内、腹腔内、胸腔内、肺内、静脈内、皮下、動脈カテーテルおよび静脈(venal)カテーテル経路を挙げることができる。経耳送達としては、点耳薬が挙げられ得、鼻腔内送達としては、点鼻薬または鼻腔内注射が挙げられ得、眼球内送達としては、点眼薬を挙げることができる。エアロゾル(吸入)送達はまた、当該分野において標準的な方法を用いて行なわれ得る(例えば、Striblingら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 189:11277〜11281(1992)を参照のこと)。例えば、一例では、酵母ビヒクルを含む組成物は、適当な吸入デバイスまたはネブライザーを用いて噴霧送達するのに適した組成物に処方化され得る。経口送達は、口から摂取され得る固形および液状物を含むものであってもよく、粘膜免疫の発現に有用であり、酵母ビヒクルを含む組成物が、経口送達用に例えば錠剤またはカプセル剤として容易に調製され得、ならびに食品および飲料製品に製剤化され得るので有用である。粘膜免疫を調節する他の投与経路は、癌もしくは感染性疾患の処置に有用である。このような経路としては、気管支経由、皮内、筋肉内、鼻腔内、他の吸入系、直腸系、皮下、局所的、経皮的、経膣および経尿道経路が挙げられる。送達経路とは、酵母ビヒクルを含む組成物を呼吸器系に送達する任意の経路、例えば、限定されないが、吸入、鼻腔内、気管内などである。
【0113】
疾患のリスクがあるか、または疾患に易罹患性である哺乳動物に対する、本明細書に記載の細胞、ベクター(例えば、酵母ビヒクルなど)もしくはウイルス、またはこの細胞、ベクター、ウイルスもしくは酵母ビヒクルを含む組成物の有効な投与は、この哺乳動物がこの疾患から保護されることを必要としない。有効用量のパラメーターは、疾患の症状を最小限にするかもしくは低減するか、または疾患の進行を最小限にするのに適した当該分野で標準的な方法を用いて決定され得る。このような方法としては、例えば、生存率、副作用(すなわち、毒性)および疾患の進行または寛解の確認が挙げられる。
【0114】
酵母ビヒクルを用いる使用については、適当な単回用量サイズは、適当な時間枠にわたって1回以上投与したとき、哺乳動物における免疫応答(一例では細胞性免疫応答であり、抗原特異的免疫応答であってもよい)を惹起し得る用量である。当業者には理解されるように、免疫応答を惹起するのに必要とされる組成物の用量は、多数の要因に依存する。当業者なら、哺乳動物の体格および投与経路に基づいて、投与に適切な単回用量サイズを容易に決定し得る。
【0115】
変異型ポリペプチドと会合されているベクターを含む組成物の適当な単回用量とは、適当な時間枠にわたって1回以上投与したとき、ベクターおよび/または変異型ポリペプチドを、所与の細胞型、組織または患者の身体の一領域に、免疫応答を惹起するのに有効な量で効率的に提供し得る用量である。酵母の場合、本発明の酵母ビヒクルの単回用量は、約0.004YU(4×10細胞)〜約100YU(1×10細胞)、例えば、0.1YU(1×10細胞)〜約100YU(1×10細胞)/用量(すなわち、一生物体あたり)、例えば、0.1×10個の細胞単位の任意の暫定用量(すなわち、1.1×10、1.2×10、1.3×10など)である。一実施形態では、2YU(2×10個の酵母)が用いられる。この用量範囲は、任意の体格の任意の生物体、例えば、マウス、サル、ヒトなどに効率的に用いられ得る。この組成物が、酵母ビヒクルおよび変異型抗原を樹状細胞内にロードすることにより投与される場合、本明細書に記載の組成物の単回用量は、投与1回あたり1哺乳動物あたり約0.5×10〜約40×10個の樹状細胞である。他の例においては、単回用量は、1個体あたり約1×10〜約20×10樹状細胞であり、また他の例においては、1哺乳動物あたり約1×10〜約10×10個の樹状細胞である。酵母ビヒクルを含む「追加免疫(ブースト)」用量の本明細書に記載の組成物は、変異型抗原に対する免疫応答が減弱した場合、または特定の変異型ポリペプチドに対して免疫応答を提供するか、もしくは記憶応答を誘導するために必要に応じて投与され得る。追加免疫用量は、最初の投与の約1週間から数年後に投与され得る。一例では、投与計画は、約1×10〜約1×10酵母細胞当量の組成物が、毎週3ヶ月間から毎週1ヶ月間(5回用量)投与の後、毎月投与するものである。
【0116】
ある例では、本明細書に記載の酵母ビヒクルを含む樹状細胞の組成物は、1患者あたり単回用量あたり、約0.5×10〜約40×10個の樹状細胞を含み、別の例においては、1患者あたり単回用量あたり約1×10〜約10×10個の樹状細胞を含む。これらの用量が、典型的なヒトまたは他の霊長類に与えられる。他の動物に適した用量は、当業者によって決定され得る。例えば、マウスでは、適当な用量は、1マウスあたり単回用量あたり、約1×10〜約3×10個である。他の用量は当業者によって決定され得、十分に当業者の能力の範囲内である。哺乳動物に投与するのに有効な組成物は、1個体の哺乳動物あたり単回用量あたり、約0.5×10〜約40×10個の樹状細胞を含む。
【0117】
哺乳動物に投与される投与回数は酵母ビヒクルの性質および投与に対する哺乳動物の応答に依存することが当業者には明白であろう。従って、適当な投与回数が、所望の目的に必要とされる任意の数を含むことは本発明の範囲内である。例えば、反復投与により、標的細胞の攻撃に利用可能なT細胞の数が増大し得る。投薬量および投与頻度は、当業者には自明のように、投与過程で調整され得る。
【0118】
当業者はまた、動物モデル、例えば、白血病のマウスモデルを用いることによって投薬の効果をモニターし得る。このようなマウスモデルは、当業者には容易に公知である。投薬の効果をモニタリングする1方法は、負荷またはブーストの後にマウスの生存率(ワクチン接種およびワクチン非接種)をモニターすることである。投薬の効果をモニタリングする別の方法は、経時的に白血病細胞の割合を測定することである。いくつかのマウスモデルが存在し、ここでは白血病細胞は、緑色蛍光タンパク質(GFP)などのマーカーで標的される。GFP陽性細胞は、白血病細胞を示しており、骨髄などの身体の種々の区画でモニターされ得る。
【0119】
キット
本明細書において、本明細書に記載の任意の方法を行なうためのキットが提供される。本発明のキットは、少なくとも1つの酵母ビヒクル、ならびに標的化された治療剤および/または予防剤(単数または複数)の投与に応答した特異的変異を伴って出現することが知られているか、または出現したものであるガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチドを含むものであってもよい。このキットは、さらに、治療剤および/または予防剤を含むものであってもよい。ある例では、この薬剤は、ガン細胞に標的化される。例示的な薬剤としては限定はしないが、イマチニブ、ニロチニブ、PD166326、PD180970、AP23464、BMS−354825、ON012380、VX−680、BIRB−796、AZM475271、PP1、PP2、AP−23236、CGP76030、PD173955、ゲルダナマイシン/17−AAG、NVP−LAQ824、SCH66336、BAY−439006、CI−1040、LY294002、ワートマニン、OSU−03012、CCI−779、R115777、BMS−214662、U0126、PD184352、ラパマイシン、RAD001、CCI−779、AP23573、PKC412またはSU11248が挙げられる。このキットは、さらに、本明細書に記載の方法を行なうための使用説明書を備えていてもよい。
【0120】
単一の成分を含むキットでは、一般的に、この成分は、容器(例えば、バイアル、アンプルまたは他の適当な保存容器)内に封入されている。同様に、2つ以上の成分を含むキットも、容器内に試薬があってもよい(別々または混合物で)。
【0121】
本発明を実施するためのキットの使用に関する使用説明書には、一般的に、本発明の方法を行なうために、キットの内容物をどのように使用するかが記載される。本発明のキット内に提供される使用説明書は、代表的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キット内に含まれた紙)における書面の使用説明書であるが、機械可読の使用説明書(例えば、磁気もしくは光学保存ディスク上に担持された使用説明書)もまた許容され得る。
【0122】
前述の本発明は、ある程度詳細に実例および一例として、理解の明確化の目的で記載しているが、当業者には、一定の変更および修正が行なわれ得ることが自明であろう。したがって、詳細な説明および実施例は、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0123】
(実施例1)
回避変異を含む酵母ビヒクルの構築
本実施例の目的はグリベック(Gleevec)の投与で生じることが公知の回避変異を含む酵母構築物を説明することである。
【0124】
p210 Bcr−Abl由来のAbl部分の約400アミノ酸を発現する酵母ベースのベクターを作成した。これらのベクターは、TEF2プロモーター(転写伸張因子2)の制御下であった。以下の構築物を含む酵母を培養し、収集し、PBSで洗浄し、56度1時間で熱殺菌し、再度PBSで洗浄し、次いでマウスへの投与のためのPBSに再懸濁した。
【0125】
以下の配列を用いて、以下の種々の酵母構築物を作製した:
構築物1番 VK13−BA5M−VAX E1.E2.E3
【0126】
【化2】

この構築物は、3つの回避変異体:E255K、T315I、およびM351Tを含む。この配列は、V227IおよびN336Sで変化していた(これは、ヒト残基からマウス残基に相当する残基への変化に対応する)。MADEAP配列が開始時点で、酵母発現の安定化のためにBcr−Abl配列に付加されている。この太字の下線の文字は、回避変異(E255K、T315I、およびM351T)に相当する変異を示す。最後の6残基はヘキサヒスチジンタグである。MADEAP配列とヘキサヒスチジンタグとの間の328アミノ酸は、ヒトAblキナーゼドメイン由来である。最終アミノ酸は終止コドンである()。
【0127】
構築物2番 VK14 −VAX E2のみ
【0128】
【化3】

この構築物は、回避変異体を1つだけ含む:T315I。この配列は、V227IおよびN336Sで変化していた(これは、ヒト残基からマウス残基に相当する残基への変化に対応する)。MADEAP配列が開始時点で、酵母発現の安定化のためにBcr−Abl配列に付加されている。この太字の下線の文字は、回避変異(T315I)に相当する変異を示す。最後の6残基はヘキサヒスチジンタグである。MADEAP配列とヘキサヒスチジンタグとの間の配列は、ヒトAblキナーゼドメイン由来である。最終アミノ酸は終止コドンである()。
【0129】
構築物3番 VK15−JCN−BAM−VAX b3a2
【0130】
【化4】

この構築物は、BcrおよびAblの接合部でマウス残基を有する野生型Bcr−Ablである。この配列は、V227IおよびN336Sで変化しており、2つは対応するマウスアミノ酸で置換されたヒトBcr−Abl接合部の上流の残基に変化し、これはヒト残基からマウス残基と対応する残基への変化に相当する(これらの変化は、太字で二重下線で上記に示される)。MADEAP配列が開始時点で酵母発現の安定性のために、Bcr−Abl配列に付加されていた。最後の6残基はヘキサヒスチジンタグである。MADEAP配列とヘキサヒスチジンタグとの間の配列は、Bcr−Abl接合部の上流の97残基を含むヒトBcr−Ablキナーゼ由来である。最終アミノ酸は終止コドンである()。
【0131】
構築物4番 完全ヒトE2のみ
【0132】
【化5】

この構築物は、1つの回避変異T315Iを有する完全ヒトBcr−Abl残基を含む。MADEAP配列が開始時点で酵母発現の安定性のために、Bcr−Abl配列に付加されていた。この太字および下線の文字は、回避変異に対応する変異である(T315I)。最後の6残基はヘキサヒスチジンタグである。MADEAP配列とヘキサヒスチジンタグとの間の328アミノ酸配列は、ヒトAblキナーゼドメイン由来である。最終アミノ酸は終止コドンである()。
【0133】
構築物5番 接合部含有完全ヒトBcr−Abl WT配列
【0134】
【化6】

この構築物は、BcrおよびAblの接合部を含む野生型ヒトBcr−Abl配列である。MADEAP配列が開始時点で酵母発現の安定性のためにBcr−Abl配列に付加されていた。最後の6残基はヘキサヒスチジンタグである。MADEAP配列とヘキサヒスチジンタグとの間の配列は、Bcr−Abl接合部の上流97残基を含むヒトBcr−Abl配列由来である。最終アミノ酸は終止コドンである()。
【0135】
構築物6番 完全ヒトE1.E2.E3
【0136】
【化7】

この構築物は、3つの回避変異を含む:E255K、T315IおよびM351T。MADEAP配列が開始時点で酵母発現の安定性のために、Bcr−Abl配列に付加されていた。太字および下線の文字は回避変異に対応する変異を示す(E255K、T315IおよびM351T)。最後の6残基はヘキサヒスチジンタグである。MADEAP配列とヘキサヒスチジンタグとの間の328アミノ酸は、ヒトAblキナーゼドメイン由来である。最終アミノ酸は終止コドンである()。
【0137】
(実施例2)
白血病のマウスモデル
白血病のマウスモデルを用い、ここではマウスに種々の型のBcr−Ablを含むレトロウイルスを注射した。これらの白血病細胞は、モニタリングの目的のマーカーである緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するように操作した。
【0138】
このマウスを、2YU酵母(二千万個の酵母)を用いて2週間隔で3回免疫した。負荷は、最終のワクチン接種7日後に500,000白血病細胞で行った。マウスの研究は以下の2つの部分に分けた:
実験番号1では2群のマウスがあった:
(1)最初の群は、免疫されず、ただしGFP標識野生型CML(Bcr−Ablただし回避変異なし)で負荷された(動物5匹)。(2)マウスの第二の群は、グリベック処置によって見出された3つの回避変異を保有するAblタンパク質を含む酵母ベースのワクチン(3つのTAMEエピトープ−E255K、T315I、M351Tを有するBcr−Abl、akaGI−10,001)で免疫し、次いでGFP標識野生型CML(Bcr−AblただしTAME変異なし)で負荷された(動物5匹)。
【0139】
結果は以下のとおりであった:
図1は、カプラン・マイヤー曲線(これらの群について同一であった)を示す(10日間同じ24時間内に死んだ全てのマウス)。ワクチン接種されたマウスは、その脾臓のT細胞およびB細胞の数が増大しており、同様に酵母ベースのワクチンの投与を確認し、投与されたワクチンに対する一般的な先天性免疫活性化を示している。
【0140】
マウス研究のパート2では3つの群のマウスがあった。
【0141】
(1)最初の群は、免疫されず、ただしGFP標識T315ICML(Bcr−Ablで1つのTAME変異−T3151を有する)で負荷された(動物5匹)。
【0142】
(2)マウスの第二の群は、3つの回避変異(3つのTAMEエピトープ−E255K、T315I、M351Tを有するBcr−Abl)を保有するAblタンパク質を含有する酵母ベースのワクチンで免疫し、次いでGFP標識T315I CML(Bcr−Ablで1つのTAME変異−T315Iあり)で負荷された(動物3匹)。
【0143】
(3)マウスの第三の群は、1つの回避変異(1つのTAMEエピトープ−T315Iを有するBcr−Abl)を有するAblタンパク質を含有する酵母ベースのワクチンで免疫し、次いでGFP標識T315I CML(Bcr−Ablで1つのTAME変異−T315Iあり)で負荷された(動物4匹)。
【0144】
結果は以下のとおりである:
図2は、カプラン・マイヤー曲線を示しており、この曲線は、ワクチン接種したマウスの明らかな生存の利点を示した。コントロール群(第1群)では、全てのマウスは、10〜11日目の24時間内に死んだ(5/5が死亡)。対照的に、ワクチン接種されたマウスの群の全てが11日を越えて生存した。ワクチン接種した群の全部で7匹のマウスのうち13日以降死んだマウスはおらず、2匹のマウスが少なくとも35日を越えて生存した。
【0145】
図3は、3つの回避変異を有するワクチン(GI−10,001)を投与されたマウス、およびT315I変異を有するワクチンを投与されたマウスにさらに描写された、ワクチン接種されたマウスの同じ群についてカプラン・マイヤー曲線を示す。
【0146】
図1〜2から、標的化アブレーション方法は、回避変異(単数または複数)を有しており、野性型Bcr−Ablではない細胞を標的することが容易に明らかである。このようなものとして、これによって既存のガン治療剤の表面で回避している白血病細胞の免疫認識のための極めて有用なツールが得られる。図2および図3によって、いずれのタイプのワクチンが、回避変異を発現する細胞の破壊を標的するのに有効であるかが示される。いずれかのワクチンの使用が、白血病細胞を負荷されているマウスの生存を延長するために用いられてもよい。マルチ変異カセットまたは単一変異カセットの使用を用いて、細胞発現回避変異(単数または複数)を標的してもよい
白血病細胞の割合を、実験の第二部で測定したとき、ワクチン接種されたマウスは、ワクチン接種していないマウスに比較して10日目にその血液中に白血病細胞の割合が統計学的に有意に減少していた。これらの結果を図4に示す。0の印付近の2つの白丸によって、マウスに検出可能な白血球細胞負荷が極めて少ないかまたは全くないことが示されている。
【0147】
図5は、種々のワクチンで分布される白血病負荷を示す。GI−10,001(3つの変異)およびGI−10,002(T315I変異)の両方とも、回避変異を発現する免疫細胞を標的するために有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異性の回避のアブレーションをそれが必要な個体において標的化するための方法であって、該個体に対して有効な量の標的化治療剤を投与する工程を包含し、ここで該治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、Srcキナーゼ阻害剤、Bcr−Abl安定性に影響する薬剤、およびBcr−Ablの下流であるシグナル伝達経路で作用する薬剤、ならびに以下:
i)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;
ii)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープを含む酵母ビヒクル;
iii)ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープに会合している酵母ビヒクル;
iv)樹状細胞内に細胞内ロードされた、ガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母ビヒクル;または
v)樹状細胞内に細胞内ロードされた、酵母ビヒクルおよびガンに関連する少なくとも1つの変異型ポリペプチド、変異を含むそのフラグメントもしくはミメトープ
のうちの1つ以上を含む組成物、からなる群より選択され、
該変異型ポリペプチドは、ガンのための標的化される治療剤および/または予防剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することが知られているか、または出現したものである、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−522180(P2010−522180A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554603(P2009−554603)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/051348
【国際公開番号】WO2008/115610
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(508010905)グローブイミューン, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】