説明

ガンの診断、予測、および予後試験

本発明は、患者のガンの進行の予後を測定する方法、ガンの患者の治療プロトコルを決定する方法、または患者の治療的処置の効力を測定する方法であって、(a)被験者から採られた生物学的試料中のMcm2〜7の少なくとも1つから選択される第1バイオマーカーのレベルを評価する工程;および(b)被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3SI0phの少なくとも1つから選択される第2バイオマーカーのレベルを評価する工程を含み、所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルと所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルの組み合わせが、前記被験者のガンの進行を表し、または被験者に処方される治療法を示し、または治療的処置の効力を示す方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的にガンの分野に関する。詳細には、本発明は、ガンの予後および治療のプロトコルに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの体内の細胞の大多数は非増殖性の周期外の状態にあり、ほんのわずかな集団が活発に周期をなしている。これらの周期をなしている細胞は主に、子宮頸部、結腸または皮膚などの自己再生組織の幹−一過性増殖コンパートメントに位置する。対照的に、機能細胞(例えば肝細胞)のほとんどは休止(G0)して可逆的に停止した状態にあるか、または細胞の有糸分裂周期から不可逆的に退き、最終分化状態(例えば、ニューロン、筋細胞、または表面結腸上皮細胞)になっている。一方、ガンは制御されない細胞成長により特徴づけられ、したがって周期をなす細胞を高比率で含む。
【0003】
細胞は、制限点と呼ばれる、G1における不連続の時間にそれらの環境中でマイトジェンに応答する。細胞がG1における感受性の高い期間に戻るまで、マイトジェンがなくてもS、G2、およびM期を通る細胞周期の進行に影響はない。高い細胞密度またはマイトジェン欠乏に応答し、細胞は2N DNA内容物とともに蓄積し、G0へと出る。細胞周期の遷移はサイクリン−CDKの組の変化により進められている。サイクリンD−CDK4、サイクリンD−CDK6、およびサイクリンE−CDK2はG0/G1を制御し、完全なE2F活性のために必要とされ、S期はサイクリンA−CDK2により開始され、サイクリンB−CDK1はG2を通る進行および有糸分裂への進入を制御する。周期外の状態にある細胞と周期中にある細胞を何が区別するのかは、未だ解明されないままである。
【0004】
ガンは、遺伝子突然変異蓄積により起こされる異種疾患の複雑な集まりであり、突然変異は、細胞増殖を刺激する調節遺伝子の活性を増加させ、通常それを抑制するタンパク質の活性を低下させる。点突然変異、遺伝子増幅、過剰メチル化、転座、またはウイルス性腫瘍性タンパク質との相互作用による、優性な刺激性発ガン遺伝子の活性化または劣性な腫瘍抑制遺伝子の不活性化は、マイトジェン、マイトジェン成長因子受容体、Ras、Raf、ABL、p16INK4Aなどの分子の上流のPI3キナーゼAKt、Myc、サイクリンD、サイクリンE、pRBおよび下流のp53を含む成長シグナル伝達経路のレベルのいずれにも影響を与えうる。
【0005】
マイクロアレイ遺伝子発現プロファイリングは、腫瘍形成を特徴付け、現在ガンの診断および予後のために利用可能な独特な分子サインの特定を目的とする集中的な研究分野である、遺伝子発現の複雑な多因子的、相互的、且つ段階的な変化の分析に理想的に適している。興味深いことに、発現アレイは、増殖サイン、発現パターンが腫瘍のグレード(分化状態)と相関している遺伝子、細胞周期状態、および倍加時間を含む。この増殖サインは、誘導される元の組織にかかわらず、腫瘍データセットに見られる最も顕著な遺伝子発現パターンの1つであり、E2F1、BUB1、PLK1、サイクリンE1、D1、およびB1など細胞周期に制御される多くの遺伝子を含む。
【0006】
残念なことに、遺伝子発現を利用する予測ルールの実際の性能は、多くの腫瘍の種類について最初に示唆されたほど情報に富まないことが分かり、特定される遺伝子のリストは非常に不安定になりうる。例えば、遺伝子発現を利用する最も予測性の高いルールは、従来の臨床病理的な基準、例えば腫瘍の分化状態、拡がりの程度および増殖指数などに比べ、著しく向上した乳ガンの予後分類を与えなかった。実際に、ガンにおける遠隔転移のない生存期間を予測する発表済みの遺伝子サインの多くは、分化状態と有意に相関があるとわかっている。
【0007】
臨床的に有用な増殖サインの同定のためのグローバルマイクロアレイアプローチには潜在的に無理がある。第1に、マイクロアレイアプローチは、ある程度、単一コンパートメント腫瘍モデルを仮定しており、そのモデルにおいて腫瘍は増殖し指数成長する細胞から構成されている。しかし、新生物は、個々の腫瘍細胞の細胞周期状態に関して非常に異質である。例えば、高分化型で低グレードの腫瘍において、クローン原性腫瘍細胞のごくわずかが周期をなしているが、大部分はその分化プログラムを達成しており不可逆的に周期から退き分化状態になっている(不稔コンパートメント)。したがって良性の過剰増殖状態(例えば過形成)および生理学的修復成長、多数の有糸分裂細胞を含む反応性病的状態は、高分化型ガンより高い増殖サインを与えることがある。
【0008】
第2に、インビボの腫瘍細胞は、可逆的に周期から退き、非増殖G0状態になることがある。実際に、多くの腫瘍において、非増殖性細胞が大多数である。すなわち、成長割合(全細胞に対する増殖性細胞の比)は0.5未満である。この状態は恐らく驚くべきものでなく、なぜなら正常な組織は、増殖性と非増殖性要素から構成されており、この複雑な挙動のいくらかの名残がほとんどのガンに組み込まれているからである。汚染を起こす良性新生物細胞、腫瘍間質、リンパ球濾胞、腫瘍内および腫瘍周囲の炎症性浸潤、ならびに血管などの他の結合組織の存在もまた、追加の複雑な細胞周期速度論を持つ大量の細胞を加えることにより分析をゆがめる。したがって、個々の腫瘍内の複雑で異種の細胞周期速度論は、臨床的に有用なマイクロアレイ増殖サインの同定を妨げる可能性があり、日常の診療におけるフローサイトメトリーの使用を妨げた問題である。
【0009】
フローサイトメトリーの使用は、臨床のサンプルがそのような分析に適していないことも多いため、その影響が限定されている。これは、部分的には、固定化のアーティファクト、不十分な量の組織により、反応性間質および/または良性の因子由来の汚染を起こす集団による解釈の困難さによる。
【0010】
細胞増殖マーカーの評価は、以前は予後および予測に関する解決を何も与えず、当分野の専門家は増殖マーカーが有用な臨床情報を与えるであろうことに懐疑的であった。細胞増殖のパラメータを測定すると、腫瘍に関する客観的な情報が得られるという確信はあるが、多くの研究にもかかわらず、特定の細胞増殖マーカーの使用が、実際に、最適に利用されている従来の組織学的評価に対する改善になるという直接的な証拠はほとんどない。標準的な組織病理学的グレーディングおよびステージングに比べた増殖マーカーの相対値に関する重要な問題に取り組んでいる研究すらほとんどなかった。
【0011】
遺伝子発現はガンにおいて結果の予測に応用されてきたが、遺伝子発現を利用する予測ルールの実際の性能は、最初に示唆されたほど情報に富むとは分かっていない。例えば、遺伝子発現を利用する現在最も予測性の高いルールは、乳ガンにおける従来のNPI予後因子に比べて、予後分類を著しく向上させていない。したがって、よく見られるガンの予後評価を向上させる新しいバイオマーカーの同定が緊急に求められている。
【0012】
乳ガンはよく見られるガンの一例であり、その形態的および生物学的異質性、化学療法抵抗性を得る傾向、およびその病原の下にあるいくつかの分子メカニズムの存在により、複雑な疾患である。乳ガンの局所領域的治療を受ける女性の半分は二度と再発しないであろうが、残りの半分は最終的に転移性ガンにより死亡するであろう。したがって、これら患者の2群を明確に区別することが最適な臨床管理のために必須である。残念なことに、乳ガンの予後マーカーは現在限定されている。特に、成長制御および細胞周期遷移に関与する重要なキナーゼを標的とする新世代の小分子阻害剤の状況において、最適な抗ガン剤の選択を可能にする試験(予測試験)も不足している。例えば、乳ガンでは、現在、予測試験はHer2免疫発現プロファイリングに限定されている。
【0013】
上皮性卵巣ガン(EOC)は、もう1つのよく見られるガンであり、米国および英国の女性に4番目によく見られるガンである。患者は、診察時には進行した疾患があることが多く、薬剤療法の進歩にもかかわらず生存率は低い。現在では、腫瘍ステージが最も重要な予後因子である。術後の残存病変、組織学的なサブタイプ、および腫瘍グレードも生存率を予測するが、ステージの進行および結果の原因となる生物学的変数に関して情報をほとんど与えない。
【0014】
ガンまたは前ガン性の状態などの異常な増殖により起こされる疾患への改善された診断、予後、および予測アプローチが必要とされたままである。
【0015】
本発明は、従来技術に関連する少なくとも1つの欠点を解決することを対象とする。
【0016】
本明細書における文書、装置、動作、または知識の議論は、本発明の文脈を説明するために含まれる。どの資料も、本明細書の開示および請求項の優先日以前に関連分野の従来技術基準または共通一般知識の一部を形成すると認めるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Barkley et al., Exp Cell Res 313:3789-3799, 2007
【非特許文献2】Blow and Hodgson, Trends Cell Biol 12:72-78, 2002
【非特許文献3】Dudderidge et al. Clin Cancer Res 11 :2510-7, 2005
【非特許文献4】Dudderidge et al., Clin Cancer Res 11 :25110-2517, 2005
【非特許文献5】Dunkler et al. Eur J Cancer, 43:745-751, 2007
【非特許文献6】Eward et al., J Cell Sci 117:5875-5886, 2004
【非特許文献7】Gonzalez et al., J Pathol 204:121-130, 2004
【非特許文献8】Gritsko et al. Clin Cancer Res 9:1420-6, 2003
【非特許文献9】Haroske et al. Anal Cell Pathol 1998; 17:189-200, 1997
【非特許文献10】Kingsbury et al., Exp Cell Res 309:56-67, 2005
【非特許文献11】Krude et al. Cell; 88:109-19, 1997
【非特許文献12】Shetty et al. Br J Cancer 93:1295-300, 2005
【非特許文献13】Shetty et al., Br J Cancer 93: 1295-1300, 2005
【非特許文献14】Stoeber et al. J Cell Sci, 114:2027-41, 2001
【非特許文献15】Stoeber et al., EMBO J 17:7219-7229, 1998
【非特許文献16】Stoeber et al., J Cell Sci 114:2027-2041, 2001
【非特許文献17】Sudbo et al. N Engl J Med 344:1270-8, 2001
【非特許文献18】Wharton et al. Br J Cancer; 91:262-9, 2004
【非特許文献19】Williams and Stoeber, Curr Opin Cell Biol 19:672-679, 2007
【発明の概要】
【0018】
本発明の適応性のさらなる範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の精神および範囲内で種々の変更および修正がこの詳細な説明から当業者には明らかになるので、詳細な説明および具体的な例が、本発明の好ましい実施形態を示してはいるが、説明のためのみに与えられることを理解されたい。
【0019】
第1の実施形態において、本発明は、個体から採った生体試料(body sample)中の異常増殖細胞または細胞成長の異常の有無を測定する方法であって、試料中のバイオマーカーを検出する工程を含み、前記バイオマーカーが、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびその基質であるヒストンH3(以下、「H3S10ph」と称する)、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0020】
一実施形態において、前記バイオマーカーは、前記バイオマーカーの標的ポリペプチドに対する特異的結合因子を利用して検出される。
【0021】
第2の態様において、本発明は、組織を(i)正常または(ii)潜在的または実際に前ガンまたはガン性の異形成または新生物として分類する方法であって、バイオマーカーに対する特異的結合因子の組織試料への結合を測定する工程を含み、前記バイオマーカーが、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびH3S10ph、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0022】
一実施形態において、前記特異的結合因子は、前記バイオマーカーの標的ポリペプチドに対するものである。
【0023】
一実施形態において、結合のパターンまたは程度は、公知の正常試料および/または公知の異常試料のものと比較することができる。
【0024】
一実施形態において、あるバイオマーカー対さらなるバイオマーカーの比が測定される。
【0025】
第3の態様において、本発明は、組織試料中の異常細胞を標識する方法であって、標的ポリペプチドに対する特異的結合因子に試料を接触させる工程を含み、特異性結合因子が異常増殖細胞に結合し正常細胞には結合しない条件下で、前記標識ポリペプチドが、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびH3S10ph、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0026】
第4の態様において、本発明は、組織またはその試料における、異常細胞増殖、細胞成長の異常、腫瘍細胞周期速度論、細胞周期分布、異形成、新生物、または潜在的もしくは実際に前ガンもしくはガン性の状態の有無を測定、評価、または診断するための、標的ポリペプチドに対する特異性結合因子の使用を提供する。
【0027】
一実施形態において、前記標的ポリペプチドは、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびH3S10ph、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される2種以上のマーカーを含む。
【0028】
第5の態様において、本発明は、ガンにおける療法への応答を予測する方法または疾患の進行を予測する方法であって、個体から採った生体試料における異常増殖細胞または細胞成長の異常の有無を測定する工程を含み、前記試料中の標的ポリペプチドを検出する工程を含み、前記標的ポリペプチドが、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびH3S10ph、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0029】
第6の態様において、本発明は、療法薬剤開発研究に対する応答をモニタリングする方法であって、生体試料中でバイオマーカーを検出する工程を含み、前記バイオマーカーが、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびH3S10ph、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記バイオマーカー発現を評価して、試料中の異常細胞増殖、細胞成長の異常、腫瘍細胞周期速度論、細胞周期分布、異形成、新生物、または潜在的もしくは実際に前ガンもしくはガン性の状態の有無を測定する工程を含む方法を提供する。
【0030】
一実施形態において、前記薬剤開発研究は、前臨床薬剤開発研究である。
【0031】
一実施形態において、前記薬剤開発研究は、前臨床薬剤開発研究である。
【0032】
いくつかの実施形態において、前臨床薬剤開発研究はインビボ異種移植腫瘍モデルである。
【0033】
第7の態様において、本発明は、被験者のガンの進行の予後を測定する方法であって、(a)被験者から採られた生物学的試料(biological sample)中のMcm2〜7の少なくとも1つから選択される第1バイオマーカーのレベルを評価する工程;および
(b)被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択される第2バイオマーカーのレベルを評価する工程
を含み、
所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルと所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルの組み合わせが、前記被験者のガンの進行を表す方法を提供する。
【0034】
一実施形態において、被験者のガンの進行を測定する前記方法は、被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択され、前記第2バイオマーカーとは異なる第3バイオマーカーのレベルを評価する工程をさらに含む。
【0035】
第8の態様において、本発明は、ガンの被験者のための治療プロトコルを決定する方法であって、
(a)被験者から採られた生物学的試料中のMcm2〜7の少なくとも1つから選択される第1バイオマーカーのレベルを評価する工程;および
(b)被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択される第2バイオマーカーのレベルを評価する工程
を含み、
所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルと所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルの組み合わせが、前記被験者に処方される治療法を表す方法を提供する。
【0036】
一実施形態において、ガンの被験者のための治療プロトコルを決定する前記方法は、被験者から採られた生体学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択され、前記第2バイオマーカーとは異なる第3バイオマーカーのレベルを評価する工程をさらに含む。
【0037】
第9の態様において、本発明は、ガンの被験者の治療的処置の効力を測定する方法であって、
(a)被験者から採られた生物学的試料中のMcm2〜7の少なくとも1つから選択される第1バイオマーカーのレベルを評価する工程;および
(b)被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択される第2バイオマーカーのレベルを評価する工程
を含み、
所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルと所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルの組み合わせが、治療的処置の効力を表す方法を提供する。
【0038】
本発明のさらなる開示、目的、利点、および態様は、説明のためのみに与えられ本発明の範囲を限定するものではない添付図面と組み合わせ好ましい実施形態の以下の記載を参照すると、当業者により良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】細胞の有糸分裂周期の間のKi67、Mcm2、ジェミニン、オーロラAおよびH3S10phの存在を示す。Mcm2〜7DNA複製ライセンス化因子のレベルは、細胞周期の通過の間大きく変動せず、内因性ライセンス化抑制タンパク質ジェミニンの発現はS−G2−M期に制限されている。ジェミニン発現の増加はいくつかの悪性腫瘍に見られ、増殖と正に相関している。特に、この増加した発現は、侵襲性腫瘍においてすら、常にS−G2−M期に限定されている。オーロラA(およびPLK1;データ示さず)レベルはG1の間無視できるほどであり、S期の間に増加し、G2/Mの間に極大に達する。H3S10phの存在は、有糸分裂に限定されており、そのため有糸分裂マーカーとして使用できる。Mcm2〜7タンパク質発現を利用して、組織中の細胞周期状態を決定することができる。Mcm2〜7は、細胞周期中にある細胞を特定するが(G1−S−G2−M期)、休止(G0)、分化、および老化「周期外」状態へ退いた後で厳しくダウンレギュレートされる。Ki67は増殖細胞の細胞周期全体で発現されるので、S−G2−M期またはM期マーカーとKi67の比(例えば、ジェミニン/Ki67、オーロラA/Ki67、またはH3S10ph/Ki67)は、G1期の相対的な長さの指標として使用でき、したがって細胞周期進行の速度の指標として使用できる。
【図2】自己再生組織のDNA複製ライセンス化因子発現の概略図を示す。このモデルは、幹細胞コンパートメント、分裂−通過コンパートメント、および機能的コンパートメントを含む。これらのコンパートメントを通る細胞の流れは連続的である。新しい細胞は幹細胞コンパートメント(S)から供給され、その数は分裂−通過コンパートメント(T)で増幅される。成熟コンパートメント(M)に入ると、細胞は完全に分化し機能的に能力を持つようになる。幹細胞コンパートメントは、DNA複製ライセンス化因子Mcm2〜7の低い発現を示す。Mcm2〜7のレベルは、細胞が分裂−通過コンパートメントに入ると急速に増加する。細胞が分化し、完全に分化した機能的表現型をとると、Mcm2〜7の段階的なダウンレギュレーションがある。しかし、細胞が分裂−通過コンパートメントを出て、Mcm2〜7ローディング因子Cdc6のダウンレギュレーションに結合すると、増殖能力は、分化プログラムの達成の間に早期に失われる。明らかに、ガン、特に高グレードの腫瘍を特徴づける停止した分化は、Mcm2〜7のダウンレギュレーションの失敗に関連づけられる。
【図3】乳ガンの細胞周期進行を示す。Mcm2、Ki67、ジェミニン、オーロラAおよびH3pに関して免疫染色された2つの乳ガン生検検体を(A)および(B)に示す。両ケースは、高いMcm2タンパク質発現により特徴づけられており、腫瘍細胞の大部分が細胞分裂周期にあることを示している。両腫瘍検体はMcm2発現により定義される高い成長比率を示すが、S−G2−MマーカージェミニンおよびオーロラAならびに有糸分裂マーカーH3S10phの発現に著しい差がある。(A)この腫瘍ではジェミニンおよびオーロラAの発現が非常に低いレベルであり、少数の細胞がセリン10でのヒストンH3のリン酸化を示し(H3S10ph)、停止または長期化したG1期を示している。(B)対照的に、この腫瘍はジェミニンおよびオーロラAの高発現レベルおよび増加したH3S10リン酸化を示し、迅速な細胞周期進行を示している。したがって、(B)に示される腫瘍は、SまたはG2/M細胞周期特異的薬剤に対して、より応答性が高いと仮定できる。
【図4】予後および予測ガン試験のための、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、H3S10ph、およびこれらの組み合わせのマルチパラメータ分析を示す。マルチパラメータ分析においてこれらのマーカーの組み合わせを使用すると、腫瘍細胞が周期から退いたか(すなわち、不稔腫瘍細胞)どうかを決定することができるが、これは細胞周期に対する抗ガン剤および放射に耐性を持つであろう集団である。さらに、周期中にある腫瘍細胞では(Mcm2〜7陽性)、細胞周期進行の速度を決定することが可能である。
【図5A】バイオマーカーマルチパラメータ分析の確認を示す。(A)Mcm2、ジェミニン、オーロラA、Plk1、およびH3S10phに対する抗体を含む非同期MCF−7全細胞溶解物の免疫ブロット。
【図5B】バイオマーカーマルチパラメータ分析の確認を示す。Ki67、Mcm2、ジェミニン、オーロラA、Plk1、およびH3S10phに対する抗体により免疫組織化学的に染色されたグレード3の乳ガンのパラフィン包埋組織切片の顕微鏡写真(元の倍率400倍)。挿入写真は、正常乳房の免疫染色を示す(倍率800倍)。
【図6】乳ガンシリーズの腫瘍グレードにわたるオーロラAおよびPlk1発現を示す。
【図7】図7は、乳ガンシリーズの(A)NPI、(B)Plk1、および(C)オーロラAによる再発までの時間曲線を示す。
【図8】図8
【図9】乳ガンシリーズの(A)NPIおよびPlk1ならびに(B)NPIおよびオーロラAによる再発までの時間曲線を示す。
【図10A】Mcm2、ジェミニン、オーロラA、オーロラB、およびH3S10phに対する抗体を含む非同期Hela S3全細胞溶解物の免疫ブロットを示す。
【図10B】同期化Hela S3細胞由来の全細胞溶解物のバイオマーカーおよびアクチン(ローディングコントロール)の免疫ブロット。2時間間隔の同期化Hela S3細胞のFACSプロファイル。
【図10C】Ki67、Mcm2、ジェミニン、オーロラA、オーロラB、およびH3S10phに対する抗体により免疫組織化学的に染色された上皮性卵巣ガン(EOC)のパラフィン包埋組織切片の顕微鏡写真。元の倍率400倍;挿入写真1000倍。
【図11】腫瘍グレード(EOCシリーズ)にわたるオーロラAの発現を示す。
【図12A】EOCシリーズのオーロラA、腫瘍倍数体状態、および患者の生存期間の間の関連を示すカプラン・マイヤー曲線を示す。シリーズ全体にわたるオーロラA(最低三分位<11.3%、中央三分位11.3〜21.3%、最高三分位>21.3%)と無病生存期間;ログランク検定、p=0.01。
【図12B】EOCシリーズのオーロラA、腫瘍倍数体状態、および患者の生存期間の間の関連を示すカプラン・マイヤー曲線を示す。シリーズ全体にわたる腫瘍倍数体状態と無病生存期間;ログランク検定、p=0.03。
【図12C】EOCシリーズのオーロラA、腫瘍倍数体状態、および患者の生存期間の間の関連を示すカプラン・マイヤー曲線を示す。初期ステージサブグループのオーロラA(最低三分位<8.7%、中央三分位8.7〜19.6%、最高三分位>19.6%)と無病生存期間;ログランク検定、p=0.004。
【図12D】EOCシリーズのオーロラA、腫瘍倍数体状態、および患者の生存期間の間の関連を示すカプラン・マイヤー曲線を示す。初期ステージサブグループの腫瘍倍数体状態と無病生存期間;ログランク検定、p=0.04。
【図12E】EOCシリーズのオーロラA、腫瘍倍数体状態、および患者の生存期間の間の関連を示すカプラン・マイヤー曲線を示す。初期ステージサブグループのオーロラA(最低三分位<8.7%、中央三分位8.7〜19.6%、最高三分位>19.6%)と全生存期間;ログランク検定、p=0.01。
【図12F】EOCシリーズのオーロラA、腫瘍倍数体状態、および患者の生存期間の間の関連を示すカプラン・マイヤー曲線を示す。初期ステージサブグループの腫瘍倍数体状態と全生存期間;ログランク検定、p=0.08。
【図13】研究試料中のMcm2発現の分布を示すグラフ表示である。乳ガン患者コホートにわたるMcm2タンパク質発現の頻度(平均=64.4101、標準偏差=30.4632、N=182)。
【図14】3つの異なる細胞周期表現型を定義する細胞周期バイオマーカー発現の分布を示すグラフ表示である:(I)周期外状態;(II)周期中G1遅延/停止状態;(III)活発な周期状態。中央値(黒線)、四分位範囲(箱形)、および異常ケースを除くロバスト範囲(囲まれた線)が示される。異常ケースは、孤立した点により示される(LI:標識率)
【図15】細胞周期表現型と無病生存期間の間の関連を示すカプラン・マイヤー曲線のグラフ表示を示す。(I)周期外状態;(II)周期中G1遅延/停止状態;(III)活発な周期状態。表現型IIIを表現型IおよびIIを合わせたものと比較する単変量分析では、HR=3.90(1.81〜8.40)、p<0.001。PIについて調整された多変量分析では、HR=2.71(1.18〜6.23)、p=0.19。
【図16】細胞周期表現型と乳ガンサブタイプとの間の関係を示すグラフ表示である。パネルは、細胞周期表現型I(周期外)、II(G1遅延/停止)およびIII(活発な周期)を示す、各乳ガンサブタイプの比率を示す。特に、Her−2およびトリプルネガティブ腫瘍の大部分は、活発に周期をなす状態の表現型(III)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(詳細な説明)
臨床的有用性を含むバイオマーカーの有用性およびこれらバイオマーカーの分析が他の重要な細胞周期調節因子と組み合わされて患者の腫瘍試料中の細胞周期速度論および期の分布に関する情報を与える方法が提供される。この分析は、予後評価を改善するための診断アルゴリズムを与えることができ、細胞周期特異的薬剤に対する治療応答を予測する可能性も有する。これは、マルチパラメータ細胞周期分析が、DNA複製ライセンス化経路および有糸分裂機構のコア成分を形成するバイオマーカーを利用して、ルーチンの患者腫瘍生検材料に行われるアプローチである。このアルゴリズムは、予後ツールを与えるだけでなく、細胞周期特異的薬剤(放射を含む)または上流の成長調節経路を阻害する薬剤の予測試験としても利用できる。このアルゴリズムは、前臨床研究(インビボ異種移植腫瘍モデル)および臨床試験における新規薬剤候補の効力を評価するのにも利用できる。
【0041】
第1の態様において、本発明は、個体から採った生体試料中の異常増殖細胞または細胞成長の異常の有無を測定する方法であって、試料中のバイオマーカーを検出する工程を含み、前記バイオマーカーが、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびその基質であるヒストンH3(以下、「H3S10ph」と称する)、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0042】
一実施形態において、前記バイオマーカーは、前記バイオマーカーの標的ポリペプチドに対する特異的結合因子を利用して検出される。
【0043】
「生体試料」とは、バイオマーカーの発現が検出できる細胞、組織、または体液の採取試料を意味する。そのような生体試料の例には、血液、リンパ、尿、婦人科的液体、生検、および塗抹標本があるが、これらに限定されない。生体試料は、例えば、ある部分をひっかくかまたは綿棒で拭くことにより、或いは針を使って体液を吸引することによるなどの種々の技術により患者から得られる。種々の生体試料を回収する方法は当分野に公知である。生体試料をガラススライドに移して、倍率を上げて見ることができる。検体の保護および検査の容易化のために、ガラススライド上の細胞に固定液および染色液を塗布できる。
【0044】
一実施形態において、生体試料は、子宮頸部スメア試験を含む子宮頸部、乳房、尿路悪性腫瘍(生検組織試料および尿細胞スメアの両方を試験)、結腸、肺、膀胱、皮膚、咽頭、食道、気管支、リンパ節、および血液学的悪性腫瘍、転移性肉腫および癌腫のエビデンスには血液および血清のいずれかから誘導される。いくつかに実施形態において、本発明は、頸部腺上皮細胞(腺上皮内新生物、GIN)の前ガン状態異常または他の組織の前ガン状態異常の評価にさらに利用できる。
【0045】
いくつかの実施形態において、新生物細胞の検出、または反応性変化を示す細胞からのそれらの区別が非常に困難な場合に他の臨床検体の細胞学的または生化学的評価に使用するのが特に適切なことがある。そのような検体には、唾液、気管支肺胞洗浄検体、尿、および消化管(食道、胃、および膵臓、胆管および膵管を含む)の擦過検体がある。
【0046】
いくつかの実施形態において、本発明は、増殖の評価が、臨床結果のより正確な予測および/または療法のより合理的な選択を可能にする、組織の組織学的または生物学的評価に適用できる。検体には、腺細胞(例えば、肺、乳房、結腸、前立腺、胃)、扁平細胞(例えば、肺、皮膚、食道)または他の上皮細胞タイプ(例えば、膀胱、尿管、腎臓、卵巣)の悪性腫瘍がある。
【0047】
一実施形態において、Mcm2、Mcm3、Mcm4、Mcm5、Mcm6、Mcm7、ジェミニン、オーロラAおよびオーロラB、およびその基質ヒストンH3のマルチパラメータ分析を利用して、EOCの進行を評価し、インビトロまたはインビボでこの腫瘍タイプの細胞周期速度論を評価できる。
【0048】
第2の態様において、本発明は、組織を(i)正常または(ii)潜在的または実際に前ガンまたはガン性の異形成または新生物として分類する方法であって、バイオマーカーに対する特異的結合因子の組織試料への結合を測定する工程を含み、前記バイオマーカーが、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびH3S10ph、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0049】
一実施形態において、前記特異的結合因子は、前記バイオマーカーの標的ポリペプチドに対するものである。
【0050】
一実施形態において、結合のパターンまたは程度は、公知の正常試料および/または公知の異常試料のものと比較することができる。
【0051】
一実施形態において、あるバイオマーカー対さらなるバイオマーカーの比が測定される。
【0052】
「バイオマーカー」は、生物学的試料中のその発現レベルが、所定レベルのものに比べ変化している遺伝子またはタンパク質である。所定のレベルは、正常または健常被験者から採られた生物学的試料中に見られるレベルでよい。本発明のバイオマーカーは、異常増殖細胞または細胞成長の異常に対し選択的である。
【0053】
本発明の他の実施形態において、バイオマーカーは、生物学的試料中の所定の発現レベルに比べそのレベルが変化している遺伝子またはタンパク質である。例えば、生物学的試料中の第1バイオマーカーの所定値は、生物学的試料中の第1バイオマーカーに陽性な細胞の20%超、25%超、または30%以上である。
【0054】
関連した態様において、生物学的試料中の第2または第3のバイオマーカーの所定値は、生物学的試料中の第2または第3のバイオマーカーに陽性な細胞の20%未満、15%未満、10%未満、または7%以下である。
【0055】
本発明のバイオマーカーには、遺伝子およびタンパク質、ならびにそのバリアントおよびフラグメントがある。そのようなバイオマーカーには、前記バイオマーカーをコードする核酸配列の全体配列または部分配列或いはそのような配列の相補配列(complement)を含むDNAがある。バイオマーカー核酸には、目的とする核酸配列のいずれかの全体配列または部分配列を含むRNAがある。バイオマーカータンパク質は、本発明のDNAバイオマーカーによりコードされるか、またはそれに相当するタンパク質である。バイオマーカータンパク質は、バイオマーカータンパク質またはポリペプチドのいずれかの全体または部分的なアミノ酸配列を含む。
【0056】
本発明は、ルーチンに固定化されている手術生検材料における免疫発現プロファイリングにより、G1−S期遷移を制御するDNA複製ライセンス化経路のバイオマーカー(例えば、Mcm2、Mcm3、Mcm4、Mcm5、Mcm6、Mcm7、およびジェミニン)とG2−M遷移に関与する有糸分裂機構のバイオマーカー(例えば、オーロラAおよびその基質H3)を組み合わせて標的とすると、これらの腫瘍の細胞周期速度論への独特な洞察を与えるという意外な発見に基づいている。マルチパラメータ分析においてマーカーのこれらの組み合わせを利用して、腫瘍細胞が周期から退いたかどうか(すなわち、不稔腫瘍細胞)を決定できるが、これらは細胞周期に対する抗ガン剤および放射に耐性であろう集団である。さらに、細胞周期中の腫瘍細胞(Mcm2〜7陽性)では、細胞周期進行の速度を決定することができる。
【0057】
進行が遅く主にG1にとどまっている腫瘍は、SおよびG2期に対する薬剤(表1)に対して示す応答が低そうであり、したがってG1に対する薬剤により治療しなければならない(腫瘍表現型−Mcm2〜7のレベルは高いが、低レベルのジェミニン、オーロラA、およびH3S10phと関連し、ジェミニン/Ki67比は0に向かう)。対照的に、細胞周期進行が加速された腫瘍では、SおよびG2/Mに対する薬剤(表1)に対して良好な応答を示しそうである(腫瘍表現型−高レベルのMcm2〜7、高ジェミニン、高オーロラA、高H3S10ph、ジェミニン/Ki67比は1に向かう)。細胞周期進行が加速され、高比率のG2−Mを示す腫瘍は、放射にも最良の応答を示しそうである。DNA複製ライセンス化経路のコア成分(Mcm2〜7ファミリーのタンパク質およびジェミニン)に対する結合分子および有糸分裂機構のコア成分(オーロラA、ポロ様キナーゼ1、およびH3S10ph)に対する結合分子が特に有用である。細胞周期進行の速度を分析可能にするアルゴリズムの中で、他のバイオマーカーをさらなるパラメータとして使用できる。細胞周期進行の速度を分析可能にするバイオマーカーにはKi67がある。
【0058】
一実施形態において、本発明は、ルーチンに処理される手術生検材料における腫瘍集団の細胞周期速度論を決定する方法を提供する。マルチパラメータアルゴリズムにより、細胞周期特異的薬剤および放射に抵抗力のある非増殖性の周期外(不稔)細胞を、活発に周期をなす細胞から区別できる。マルチパラメータ分析により、正確な腫瘍細胞周期速度論が測定でき、特定の患者を治療するために最適な、細胞周期に対する薬剤が選択できる(個別化医療)(表1)。治療介入を導く潜在的に強力な予測試験を実施するほかに、このマルチパラメータ分析は、再発までの時間(無病生存期間/無再発期間)および死亡までの時間(全生存期間)を決定する強力な予後ツールを提供する。
【0059】
第3の態様において、本発明は、組織試料中の異常細胞を標識する方法であって、標的ポリペプチドに対する特異的結合因子に試料を接触させる工程を含み、特異性結合因子が異常増殖細胞に結合し正常細胞には結合しない条件下で、前記標識ポリペプチドが、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびH3S10ph、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0060】
試料中の異常増殖細胞の存在を確認するために、特異的結合因子が試料に結合するか否かを測定できる。
【0061】
第4の態様において、本発明は、組織またはその試料における、異常細胞増殖、細胞成長の異常、腫瘍細胞周期速度論、細胞周期分布、異形成、新生物、または潜在的もしくは実際に前ガンもしくはガン性の状態の有無を測定、評価、または診断するための、標的ポリペプチドに対する特異性結合因子の使用を提供する。
【0062】
一実施形態において、標的プリペプチドは、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびH3S10ph、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される2種以上のマーカーを含む。
【0063】
各細胞分裂周期の間のDNAの正確な複製はゲノム安定性のために必須であり、厳しく制御された開始事象により達成される。DNA複製開始は、有糸分裂後期およびG1期初期の間の複製開始点での複製前複合体の集合に依存する。複製前複合体の集合は、複製開始点認識複合体(ORC)、Cdc6、Cdt1、およびMcm2〜7が開始点に連続的に結合するものであり、S期の間にクロマチンがDNA合成に関して「ライセンス化」されるようにする。Mcm2〜7タンパク質レベルなどDNA複製ライセンス化因子の制御は、ヒトの組織において細胞増殖を制御する強力な下流機構を与える。Mcm2〜7の調節不全は、多段階の腫瘍形成における初期の事象である。複製前複合体の再集合の阻害は、開始点が細胞周期あたりただ一度だけ刺激されることを保証し、ゲノム完全性の維持のために重要である。
【0064】
ライセンス化抑制因子ジェミニンはS−G2−M期の間に高レベルで発現され、Cdt1との相互作用によりクロマチンへのMcm2〜7の再ローディングを阻害する。インビボのヒトの細胞集団では、ジェミニンが枯渇すると、DNAの過剰複製による甚大なゲノム不安定性が生じ、巨大な異数体核を持つ細胞が出現するが、これは侵襲性ガンの形態的/病理学的特徴である。ジェミニンの不活性化もまた中心体の過剰複製を起こし、G2−Mチェックポイント機構の抑止と共に、染色体不分離および異数性を促進するであろう多数の有糸分裂欠陥を生じる。これらの知見は、細胞周期の多数のステージでゲノム完全性を維持するにあたりジェミニンが果たす主要な役割を強調するものである。
【0065】
有糸分裂事象の厳格な制御は、姉妹染色分体分離および細胞分裂が失敗せずに完了するために必須である。CDKは有糸分裂進入の支配的な制御因子であるが、それらは単独では作用しない。ポロ様キナーゼ1(PLK1)、オーロラA、およびオーロラBは、重大な有糸分裂事象のサブセットを制御する3つの追加のプロテインキナーゼである。有糸分裂を通過する遷移は、ポロ様キナーゼ(PLK)およびオーロラキナーゼなどのプロテインキナーゼに依存している。オーロラキナーゼは、中心体成熟および分離、染色体の配向および分離、ならびに細胞分裂を含む、有糸分裂のいくつかのステージの重要な制御因子である。
【0066】
ジェミニン同様に、オーロラキナーゼの内因性レベルは、細胞周期依存的に厳密に制御されており、G1−Sでは低レベル、G2−M中に蓄積、有糸分裂の最後で迅速に分解する。
【0067】
腫瘍の細胞周期速度論は、予後のアルゴリズムに影響を与えるだけでなく、細胞周期特異的薬剤(上記参照)への応答を予測するためにも重要である。出願者らは、単純な免疫組織学的技術を利用し、ルーチンの手術生検材料に直接適用される細胞周期機構のコア成分の分析が、インビボで機能している腫瘍細胞周期速度論プロファイルへの詳細且つ独特な洞察を与えることを示した。
【0068】
先に議論のとおり、Mcm2、Mcm3、Mcm4、Mcm5、Mcm6、およびMcm7(本明細書では「Mcm2〜7」または「Mcm2から7」と称する)の発現は、周期中を通る細胞を、「周期外」状態にある細胞と区別することを可能にする。開始点ライセンス化阻害剤ジェミニンは、有糸分裂キナーゼPLK1、オーロラA、およびオーロラBと同様に、S−G2−M期の間だけ検出可能である。ヒストンH3はオーロラキナーゼの基質であり、有糸分裂の間だけリン酸化される。このように、ホスホヒストンH3(H3S10ph)はM期のマーカーである。したがって、このようなG1/SおよびG2/M制御因子のマルチパラメータ分析は、手術生検材料(ルーチンに固定化および処理される)における細胞周期状態の詳細なキャラクタリゼーションを与える。例えば、休止している閉経前の乳房では、Mcm2〜7の発現は高いが、ジェミニン、オーロラA/B、PLK1、およびH3S10phタンパク質レベルは低く、乳房内腔上皮がG1延長または停止状態にあることを示すが、これは前ガン状態の病巣および緩慢に成長する新生物にも見られる表現型である。対照的に、急速に成長する侵襲性腫瘍では、Mcm2〜7の発現レベルが高いだけでなく、S−G2−MおよびM期のマーカーの発現も増加する。このプロファイルは、腫瘍グレードの上昇(分化の進んでいない状態)、ゲノム不安定性の増加および生存期間の低下と関連がありそうな加速した細胞周期進行を示している。
【0069】
したがって、細胞周期バイオマーカー分析は、特に細胞周期特異的薬剤に関して、治療応答の予測因子として重要性がある。例えば、オーロラAおよびPLK1は、小分子阻害剤の潜在的な標的であるが、その発現レベルは卵巣ガンおよび乳ガンで大きく変動する。これらの腫瘍は、非常に異なる細胞周期速度論および細胞周期分布も示す。加速された細胞周期進行およびこれら標的タンパク質の高レベル発現を示す腫瘍は、そのような機構に基づく治療介入に最も大きな応答を示しそうである。
【0070】
細胞周期速度論の分析を利用し、異常増殖細胞および細胞成長の異常におけるチェックポイント経路の活性化により細胞周期進行に影響を与える薬剤への応答をモニターすることもできる。例えば、治療前および治療後の生検材料におけるジェミニン、オーロラA、PLK1、H3S10ph、およびジェミニン/Ki67の免疫発現分析は、UCN―01の耐容量を決める情報を与えることができ、次いでそれを利用して、シスプラチンに誘起された細胞周期停止を抑止することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、抗体を利用して、個体から採った試料中のバイオマーカーポリペプチドの過剰発現を検出する免疫細胞化学技術が提供される。本発明のこの態様において、対象とする特定のバイオマーカーに対する少なくとも1種の抗体が使用される。過剰発現は、例えば、ハイブリダイゼーションおよびRT−PCRなど核酸に基づく技術によっても検出できる。本発明の方法を実施するための試薬を含むキットもさらに提供される。
【0072】
本発明の方法は、疾患の検出のために患者の試料中の少なくとも1種のバイオマーカーの検出を必要とするが、いくつかの実施形態において、2、3、4、5、6、7、8、9、10種またはそれ以上のバイオマーカーを使用して本発明を実施できる。生体試料中の2種以上のバイオマーカーの検出を利用して疾患の事実を特定できることが認識される。したがって、いくつかの実施形態において、2種以上のバイオマーカーが使用され、より好ましくは2種以上の相補的なバイオマーカーが使用される。「相補的」とは、生体試料中のバイオマーカーの組み合わせの検出が、バイオマーカーの一方だけ使用される場合に疾患が同定されるであろう場合よりも高いパーセンテージで疾患を失敗せず同定できるものである。このように、いくつかの場合で、少なくとも2種のバイオマーカーを使用してより正確に疾患を同定できる。
【0073】
したがって、少なくとも2種のバイオマーカーが使用される場合、個々のバイオマーカーポリペプチドに対する少なくとも2種の抗体が使用され、本明細書に開示される免疫細胞化学方法が実施されるであろう。前記複数の抗体は、同時にでも、並行にでも、生体試料と接触させてよい。
【0074】
一実施形態において、第1から第5の態様のいずれかによる方法は、試料中のさらなる標的ポリペプチドを検出する工程を含むことがあるが、前記標的ポリペプチドは、G1/S期境界またはS期に特異的な細胞周期に制御される遺伝子からなる群から選択される。そのような遺伝子には、ヘリカーゼ(DDX11)、ウラシルDNAグリコラーゼ(UNG)、E2F5、サイクリンE1(CCNE1)、サイクリンE2(CCNE2)、CDC25A、CDC45L、CDC6、p21 WAF−1(CDKN1A)、CDKN3、E2F1、NPAT、PCNA、ステムループBP(SLBP)、BRCA1、BRCA2、CCNG2、CDKN2C、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ヒストンH1、ヒストンH2A、ヒストンH2B、ヒストンH3、ヒストンH4、MSH2、NASP、リボヌクレオチドレダクターゼM1(RRM1)、リボヌクレオチドレダクターゼM2(RRM2)、チミジンシンセターゼ(TYMS)、複製因子C4(RFC4)、RAD51、クロマチン因子1A(CHAF1A)、クロマチン因子1B(CHAF1B)、トポイソメラーゼIII(TOP3A)、ORC1、プライマーゼ2A(PRIM2A)、CDC27、プライマーゼ1(PRIM1)、フラップ構造エンドヌクレアーゼ(FEN1)、ファンコニ貧血相補群A(FNACA)、PKMYT1、および複製タンパク質A2(RPA2)があるが、これらに限定されない。対象となる他のS期遺伝子には、サイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)、DNAポリメラーゼIα(DNA POL1)、DNAリガーゼ1、B−Myb、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNA MET)、ペリセントリン(PER)、KIF4、DP−1、ID−3、RAN結合タンパク質(RANBP1)、ギャップ結合α6(GJA6)、アミノレブリン酸デヒドラターゼ(ALDH)、ヒストン2A Z(H2A.Z)、スペルミンシンターゼ(SpmS)、プロリフェリン2、Tリンパ球活性化タンパク質、ホスホリパーゼA2(PLA2)、およびL6抗原(L6)がある。
【0075】
いくつかの実施形態において、バイオマーカーはE2F転写因子により誘起される遺伝子を含む。そのような遺伝子には、チミジル酸シンターゼ、チミジンキナーゼ1、リボヌクレオチドレダクターゼM1、リボヌクレオチドレダクターゼM2、CDK2、サイクリンE、PCNA、DNAプライマーゼの小サブユニット、トポイソメラーゼIIA(Topo2A)、DNAリガーゼ1、フラップエンドヌクレアーゼ1、RAD51、CDC2、サイクリンA2、サイクリンB1、サイクリンB2、KIFC1、FIN16、BUB1、インポーチンα−2、HMG2、ゼスト(zeste)のエンハンサー、STK−1、ヒストンステムループBP、Rb、P18−INK4C、アネキシンVIII、c−Myb、CDC25A、サイクリンD3、サイクリンE1、デオキシシトシンキナーゼ、DP−1、エンドセリン変換酵素、エノラーゼ2、P18 INK4C、リビヌクレオチドレダクターゼ、およびウラシルDNAグリコラーゼ2があるが、これらに限定されない。特別な実施形態において、対象となるバイオマーカーは、細胞周期制御およびDNA複製に関与するE2F転写因子により誘起される遺伝子であり、例えばサイクリンE2、p57KIP2、RANBPM、および複製タンパク質A1がある。対象となるE2F誘起遺伝子のいくつかはアポトーシスに関与しており、APAF1、Bcl−2、カスパーゼ3、MAP3キナーゼ5、およびTNF受容体関連因子がある。他のE2F誘起遺伝子は転写の制御に関与しており、例えば、アシュ(ash)2様、ポリホメオティック2、胚性外胚葉タンパク質、ゼストのエンハンサー、スプリットのヘアリーエンハンサー、ホメオボックスA10、ホメオボックスA7、ホメオボックスA9、ホメオドメインTF1、前B細胞白血病FT3、YY1 TF、POUドメインTF、TAFII130、TBP−因子172、基本TF3、ブロモドメイン/ジンクフィンガー、SWI/SNF、ID4、TEA−4、NFATC1、NFATC3、BT、CNC−1、MAF、MAFF、MAFG、コア結合タンパク質、E74様因子4、c−FOS、JUNB、ジンクフィンガーDNA BP、およびCbp/p300トランス活性化因子である。シグナル伝達に関与しているE2F誘起遺伝子も対象となる潜在的なバイオマーカーであり、TGFβ、フォリスタチン、骨形成タンパク質2、BMP受容体1A型、フリズルドホモログ1、WNT10B、スフィンゴシンキナーゼ1、二重特異性ホスファターゼ7、二重特異性(Y)ホスファターゼ、FGF受容体3、プロテインチロシンホスファターゼ、二重特異性(Y)ホスファターゼD6655、インスリン受容体、成熟T細胞増殖1、FGF受容体2、TGFα、CDC42エフェクタータンパク質3、Met、CD58、CD83、TACC1、およびTEAD4がある。
【0076】
本発明による組織試料中の異常検出に基づき、組織が潜在的にまたは実際に前ガンまたはガン性であると分類された場合、適切な診断および/または臨床の経過観察が求められるであろう。
【0077】
本発明は、診断された病気の療法の方針を決定するための予測的方法も提供する。
【0078】
したがって、第5の態様において、本発明は、ガンにおける療法への応答を予測する方法または疾患の進行を予測する方法であって、個体から採った生体試料における異常増殖細胞または細胞成長の異常の有無を測定する工程を含み、前記試料中の標的ポリペプチドを検出する工程を含み、前記標的ポリペプチドが、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびH3S10ph、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0079】
細胞成長の異常には、前ガン性またはガン性細胞、他の細胞増殖障害、例えば限定はされないが、乾癬、潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性腸疾患がある。
【0080】
それ自体細胞増殖障害であることに加え、炎症性腸疾患は、全ての患者においてではないがガン状態になる前兆である場合もあるので、本発明によるそれらの検出を利用して、より徹底的な経過観察に貴重な結果を与えることができる。炎症性腸疾患では、結腸および腸の細胞の脱落があることがあり、便の試料およびそのような試料から採った細胞の組織標本の分析を実施することができる。
【0081】
本発明の異なる実施形態によれば、本発明の種々の態様による特異的結合因子と接触されるべき試料は、標的ポリペプチドへの特異的結合分子の結合、核酸レベル、酵素活性などの測定を可能にする任意の利用可能な技術を利用して調製してよい。種々な技術は、免疫組織化学のための細胞固定化に使用されるとおり(標的ポリペプチドに結合する抗体などの分子)の当分野に標準的である。
【0082】
コントロールおよび被験試料上の抗体などの特異的結合因子の検出は、任意の適切な手段により測定される。個々のレポーター分子による標識付けは1つの可能性である。レポーター分子は、検出可能で、好ましくは測定可能なシグナルを、直接的にも間接的にも生じることができる。レポーター分子の結合は、直接でも、間接でも、例えばペプチド結合など共有結合でも、非共有結合でもよい。ペプチド結合による結合は、遺伝子融合コード化結合分子(gene fusion encoding binding molecule)(例えば抗体)とレポーター分子のリコンビナント発現の結果のことがある。
【0083】
ある好ましい様式は、スペクトル的に隔離された吸収または発光特性を持つ個別の蛍光色素、蛍光体、またはレーザー色素を持つ各結合因子の共有結合による。好適な蛍光色素には、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、およびテキサスレッドがある。好適な発色色素にはジアミノベンジジンがある。
【0084】
他のレポーターには、着色され、磁性または常磁性であるラテックスビーズなどの高分子コロイド粒子または粒子材料ならびに検出可能なシグナルを、直接または間接に、視覚により観察可能に、電子的に検出可能に、または他の方法で記録するようにできる生物学的または化学的に活性な薬剤がある。これらの分子は、例えば、色を生みだし、または色を変え、或いは電気的性質を変化させる反応を触媒する酵素でもよい。それらは、エネルギー状態の間の電子遷移が特性スペクトル吸収または発光を生み出すように、分子的に励起可能である。それらは、バイオセンサーと組み合わせて使用される化学物質を含むことがある。ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンおよびアルカリホスファターゼ検出システムを利用してよい。さらなる例は、西洋わさびペルオキシダーゼと化学発光である。
【0085】
特異的結合分子はキットで提供することができ、本発明による使用の説明書を含んでよい。そのようなキットは、本発明のさらなる態様として提供される。1種以上の他の試薬、例えば標識分子を含んでよい。試薬は、密封されたバイアルなど、外的環境から試薬を守る容器内に提供できる。キットは、対象とする組織によって被験試料自体を提供するための1つ以上の物品、例えば、口腔から細胞を除去するための綿棒、血液試料を除去するための針、頸部スメアを採るためのスパチュラ、バイオプシーガンなど(そのような部品は一般的に滅菌されている)を含んでよい。
【0086】
キットは、非特異的染色を減らすブロッキング剤、保存の間の結合分子活性を保つための貯蔵緩衝液、抗体染色の間に使用すべき染色緩衝液および/または洗浄緩衝液、ポジティブコントロール、ネガティブコントロールなどの任意の組み合わせまたは全てを含んでよい。ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールを使用して、本発明により使用されキット内に提供してよい試薬の活性および正しい使用法を確認できる。コントロールは、本明細書に記載の1種以上のバイオマーカーなど、標的の存在に対して陽性または陰性になると知られている、組織切片、カバースリップに固定された細胞などの試料を含んでよい。コントロールの設計および使用は標準的であり、当業者の日常的な能力内にある。
【0087】
試料は、任意の便利な手段および技術を利用して体から除去できる。スパチュラまたは綿棒を利用して、内皮細胞を、例えば子宮頸部または口腔から除去できる。血液および他の体液試料を、シリンジまたは針を利用して除去できる。他の組織試料は、生検または組織切開により除去できる。
【0088】
第6の態様において、本発明は、療法薬剤開発研究に対する応答をモニタリングする方法であって、生体試料中でバイオマーカーを検出する工程であって、前記バイオマーカーが、DNA複製ライセンス化因子、オーロラキナーゼ、Ki67、ジェミニン、ポロ様キナーゼ、およびH3S10ph、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記バイオマーカー発現を評価して、試料中の異常細胞増殖、細胞成長の異常、腫瘍細胞周期速度論、細胞周期分布、異形成、新生物、または潜在的もしくは実際に前ガンもしくはガン性の状態の有無を測定する工程を含む方法を提供する。
【0089】
一実施形態において、前記薬剤開発研究は、前臨床薬剤開発研究である。
【0090】
一実施形態において、前記薬剤開発研究は、前臨床薬剤開発研究である。
【0091】
いくつかの実施形態において、前臨床薬剤開発研究はインビボ異種移植腫瘍モデルである。
【0092】
本発明の第7の態様は、被験者のガンの進行の予後を測定する方法であって、
(a)被験者から採られた生物学的試料中のMcm2〜7の少なくとも1つから選択される第1バイオマーカーのレベルを評価する工程;および
(b)被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択される第2バイオマーカーのレベルを評価する工程
を含み、
所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルと所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルの組み合わせが、前記被験者のガンの進行を表す方法を提供する。
【0093】
関連した実施形態において、ガンの進行の予後を測定する前記方法は、被験者の生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択され、前記第2バイオマーカーとは異なる第3のバイオマーカーのレベルを評価する工程をさらに含む。
【0094】
さらなる実施形態において、所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルが低く、所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルが低い場合、被験者の予後はガン進行の可能性が低いことを示す。
【0095】
関連した実施形態において、所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルが低く、所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルが低い場合、被験者の予後は、80%超、85%超、または89%超の5年生存率を示す。
【0096】
他の実施形態において、所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルが高く、所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルが低い場合、被験者の予後はガン進行の可能性が低いことを示す。
【0097】
関連した実施形態において、所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルが高く、所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルが低い場合、被験者の予後は、80%超、85%超、または87%超の5年生存率を示す。
【0098】
さらなる実施形態において、所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルが高く、所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルが高い場合、被験者の予後はガン進行の可能性が高いことを示す。
【0099】
関連した実施形態において、所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルが高く、所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルが高い場合、被験者の予後は、70%未満、60%未満、または56%未満の5年生存率を示す。
【0100】
本発明のバイオマーカーのレベルは、当業者に公知の任意の手段を利用して測定できる。一態様において、バイオマーカーのレベルは、ドットブロット、スロットブロット、RIA、マイクロアレイ、およびELISAなどがあるがこれらに限定されない免疫学的アッセイ方法を利用して測定できる。他の態様において、バイオマーカーのレベルは、ノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、RT−PCR、PCR、核酸配列系増幅アッセイ(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)、コンピューター化検出マトリックスなどがあるが、これらに限定されない分子生物学系アッセイ方法を利用して測定できる。
【0101】
第1、第2、第3、またはその次のバイオマーカーのレベルが測定される順序は重要でないことに留意することが重要である。例えば、バイオマーカーを全て同時に測定してよい。別法としては、第2または第3またはその次のバイオマーカーを、第1バイオマーカーのレベルの前に評価してもよい。
【0102】
第8の態様において、本発明は、ガンの被験者のための治療プロトコルを決定する方法であって、
(a)被験者から採られた生物学的試料中のMcm2から7の少なくとも1つから選択される第1バイオマーカーのレベルを評価する工程;および
(b)被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択される第2バイオマーカーのレベルを評価する工程
を含み、
所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルと所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルの組み合わせが、前記被験者に処方される治療法を表す方法を提供する。
【0103】
関連する態様において、被験者のための治療プロトコルを決定する前記方法は、前記被験者から採られた生体学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択され、前記第2バイオマーカーとは異なる第3バイオマーカーのレベルを評価する工程をさらに含む。
【0104】
さらなる実施形態において、所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルが低く、所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルが低い場合、治療法は、以下の1つ以上から選択される:
(a)モニタリング;および
(b)非細胞周期特異的化学療法薬剤による治療。
【0105】
他の実施形態において、所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルが高く、所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルが低い場合、治療法は、以下の1つ以上から選択される:
(a)モニタリング;
(b)G1または非細胞周期特異的薬剤による治療;および
(c)非SおよびG2/M細胞周期特異的化学療法薬剤による治療。
【0106】
さらなる実施形態において、所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルが高く、所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルが高い場合、治療法は、以下の1つ以上から選択される:
(a)手術;および
(b)SおよびG2/M細胞周期特異的化学療法薬剤による治療。
【0107】
非細胞周期化学療法薬剤には、マイトマイシンC(MMC)、1−(4−アミノ−2−メチルピリミジン−5−イル)−メチル−3−(2−クロロエチル)−3−ニトロソウレア塩酸塩(ACNU)、およびナイトロジェンマスタード(HN2)、シスプラチン、4−ヒドロペルオキシ−シクロ−ホスファミド、フラボピリドールがあるが、これらに限定されない。
【0108】
S期細胞周期薬剤には、5−フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、エピルビシン、エトポシド、メトトレキサート、5−フルオロラシル、5−フルオロデオキシウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、クラドリビン、チオグアニン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、トポイソメラーゼI阻害剤(イリノテカン、トポテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(エトポシド、テニポシド、アントラサイクリン、エピルビシン)があるが、これらに限定されない。
【0109】
G1細胞周期薬剤には、アスパラギナーゼ、プレドニゾロンがあるが、これらに限定されない。
【0110】
G2/M細胞周期薬剤には、エトポシド、シスプラチン、スタウロスポリン、ZM447439、ビンカアルカロイド、(ビンデシン、ビネロブリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ブレオマイシン、スタウロスポリン、ZM447439(オーロラキナーゼAおよびB阻害剤)、BI2536(ポロ様キナーゼI阻害剤)があるが、これらに限定されない。
【0111】
M細胞周期薬剤には、ドセタキセル、BI2536があるが、これらに限定されない。
【0112】
細胞周期内の多数の段階で作用する薬剤にはフラボピリドールがあるが、これに限定されない。
【0113】
本発明が具体的な実施形態と共に説明されてきたが、さらなる修飾(複数可)が可能であることが理解されるであろう。本出願は、一般に本発明の原理に従い本開示からのそのような逸脱を含む、本発明の全ての変形、使用または改造を、本発明の関する分野の公知または通例の業務内にあり本明細書にすでに述べられた基本的な特徴に適用できるものとして、網羅するものである。
【0114】
本発明は、本発明の基本的な特性の精神から逸脱せずにいくつもの形態で実施できるので、上述の実施形態は、特記されない限り、本発明を限定するものでなく、むしろ添付される請求項に定義される本発明の精神および範囲内で広く解釈すべきであると理解されたい。種々の修飾および等価な構成が、本発明および添付される請求項の精神および範囲に含まれるものとする。
【0115】
本明細書では「含む/含んでいる(comprises/comprising)」は、述べられた特徴、整数、工程、または構成成分の存在を明示するが、1つ以上の他の特徴、
整数、工程、構成成分、またはその群の存在または追加を排除しない。
【実施例】
【0116】
実施例1:DNA複製ライセンス化因子および有糸分裂キナーゼは増殖状態を規定し、乳ガンの臨床結果に関連する
研究コホート
浸潤性乳ガンと診断された182人の患者を、英国、ロンドンのUCL病院、外科に保管されている乳ガンデータベースから特定した。研究した全患者は、通常の術後臨床評価を受け、断面分析に貢献した。10人は追跡不能であり、5人はガンが再発し、そのうち2人は乳ガンで死亡した。167人の患者は生存期間および再発の前向き分析に貢献したが、そのうち24人(14%)は研究期間中にガンで死亡し、12人は他の無関係な原因で死亡し、131人は最近の経過観察時に生存していた。再発およびガンによる死亡を含む40(24%)の再発事象があった。経過観察期間中央値は47ヶ月(範囲:1〜92ヶ月)であった。再発した人の中で再発までの平均時間は26ヶ月(標準偏差(SD)=15ヶ月、範囲:2〜55ヶ月)。未だ再発していない人の平均経過観察時間は52ヶ月(SD=20ヶ月、範囲:2〜92ヶ月)であった。死亡した人の平均生存時間は21ヶ月(SD=12ヶ月、範囲:4〜44ヶ月)であった。死亡していない人の平均経過観察時間は50ヶ月(SD=21ヶ月、範囲:1〜92ヶ月)であった。これらの患者から採ったホルマリン固定パラフィン包埋手術乳房組織を、ブルームアンドリチャードソン法(Bloom and Richardson method)のノッチンガム修飾(Nottingham modification)により決定された組織学的グレード(1〜3)を3種全て含む病理保管庫から取り出した。全ての症例で、組織学的な報告およびスライドが利用可能である。それらには、142例の充実腺管ガン、26例の小葉ガン、4例の粘液ガン、1例の微小乳頭ガン、および9例の混合型があった。記録されたパラメータには、組織学的グレード、腫瘍の大きさ、腫瘍の種類、リンパ節の状態、リンパ血管浸潤(LVI)、年齢、およびNPIがあった。発明者らは、乳房縮小術を受けた21人の閉経前女性の正常な乳房細胞を無作為に選択した症例も研究した。研究に対する地方研究倫理委員会の認可が、ヒトの研究に関する倫理のUCL/UCLHジョイント委員会(joint UCL/UCLH Committees on the Ethics of Human Research)から得られた。
【0117】
抗体
ヒトのジェミニンに対するウサギのポリクローナル抗体を、記載のとおり(Wharton SB,
Hibberd S, Eward KL, et al. Br J Cancer 2004;91:262-9)発生させた。Ki67 MAb(clone MIB−1)をDAKO(グロストラップ、デンマーク)から、Mcm2 MAb(clone 46)をBD Transduction Laboratories(レキシントン、ケンタッキー州)から、エストロゲン受容体−α(ER)MAb(clone 1D5)およびプロゲステロン受容体MAb(clone PgR 636)をDAKOから、オーロラA MAb NCL−L−AK2(clone JLM28)をNovocastra Laboratories(ニューキャッスル、英国)から、ポロ様キナーゼ1(PLK1)MAb(clone 35−206)およびセリン10でリン酸化されたヒストンH3(H3S10ph) PAbをUpstate(レークプラシッド、ニューヨーク州)から入手した。
【0118】
細胞培養
ヒトMCF−7乳房上皮腺ガン細胞(ATCC HTB−22)を、2mMのグルタミン、1%非必須アミノ酸、10%FCS、100U/mlのペニシリン、および0.1mg/mlのストレプトマイシンを補ったEMEM(Gibco−BRL、Invitrogen、カールスバッド、カリフォルニア州、米国)中で培養した。
【0119】
タンパク質抽出物の調製および免疫ブロッティング
MCF7細胞をトリプシンによる処理により採取し、PBS中で洗浄し、溶解バッファ(50mMのTris−Cl pH 7.5、150mMのNaCl、20mMのEDTA、0.5%のNP40)に2×107細胞/mlで再懸濁させた。氷上で30分間インキュベーションした後、溶解物を遠心分離(13,000g、15分間、4℃)により澄ませた。溶解物を、4〜20%SDS−PAGE(75μgタンパク質/ウェル)により分離し、記載のとおり(Stoeber et al. J Cell Sci, 114:2027-41, 2001)免疫ブロットした。ブロッキング、抗体インキュベーション、および洗浄工程は、以下の条件で実施した:Mcm2、オーロラA、およびPLK1にはPBS/0.1%Tween−20/5%ミルク、ジェミニンにはPBS/1% Tween−20/10%ミルク、H3S10phにはPBS/5%ミルク。
【0120】
免疫組織化学
最初の診断時に得られた保管所のホルマリン固定パラフィン包埋組織(PWET)は全患者で利用可能であり、各検体で浸潤性腫瘍の代表的な試料を含むブロックを選択した。3μmの切片をSuperfrost Plusスライド(Visions Biosystems、英国)に切り出し、キシレンでパラフィンを除き、濃度の異なったアルコールから水へ通して再水和した。組織切片を、pH6.0の0.1Mクエン酸バッファ中で2分間加圧処理し、Bond(商標)Polymer Refine DetectionキットおよびBond(商標)−Max自動化システム(Vision Biosystems、ニューカッスル・アポン・タイン、英国)を利用して免疫染色した。一次抗体を以下の希釈率で利用した:Ki67(1/300)、Mcm2(1/2000)、ジェミニン(1/600)、ER(1/200)、PR(1/200)、オーロラA(1/70)、PLK1(1/1000)およびH3S10ph(1/300)。HER−2免疫染色は、メーカーの説明に従い、DAKO HercepTest(商標)(DAKO)を利用して実施した。カバースリップを、Pertex封入液(Cell Path Ltd、ニュータウンポーイス、英国)とともに使用した。一次抗体なしのインキュベーションをネガティブコントロールとして使用し、結腸上皮切片をポジティブコントロールとして使用した。
【0121】
タンパク質発現プロファイル分析
タンパク質発現分析を、(Shetty et al. Br J Cancer 93:1295-300, 2005, Dudderidge
et al. Clin Cancer Res 11: 2510-7, 2005)に記載されるとおり、各腫瘍中のマーカーの標識率(LI)を測定して実施した。スライドを低倍率(100倍)で評価し、染色強度の一番高い腫瘍の部分を特定した。選択されたこのような部分から、3〜5つの領域を400倍の倍率で荷電結合素子カメラおよび分析ソフトウェア(SIS、ミュンスター、ドイツ)により取り込んだ。その後、画像を定量分析のためにプリントしたが、定量分析は臨床病理変数を知らない観察者により実施された。領域中の陽性および陰性細胞の両方を数え、間質細胞または炎症細胞は除外した。陽性細胞の同定の基準は、バイオマーカーにより異なる:Ki67、Mcm2、ジェミニン、ER、PR、およびH3S10phでは、どのような程度でも核染色を示す細胞を陽性とした;オーロラAおよびPLK1では、どのような程度でも核染色または細胞質染色を示す細胞を陽性とした(Gritsko et al. Clin Cancer Res 9:1420-6, 2003)。各場合で、最低500の細胞を数えた。以下の式を利用して、LIを計算した:LI=陽性細胞数/全細胞数×100。HER−2タンパク質過剰発現の評価には、DAKOにより推薦されるFDA認可評価システムに従い、細胞膜染色を評価した。
【0122】
DNA画像サイトメトリー
各場合で、IHCにより評価されたのと同じブロックから得られた40μmのPWET切片1つを使用して細胞核を(Sudbo et al. N Engl J Med 344:1270-8, 2001. Haroske et al. Anal Cell Pathol 1998; 17: 189-200, 1997)記載のとおり調製した。Fairfield DNA Ploidy System(Fairfield Imaging
Ltd、ノッチンガム、英国)を画像処理、分析および分類に、(Sudbo et al. 2001 supra.)記載のとおり使用した。リンパ球およびプラズマ細胞を内部コントロールとして含め、高グレード膀胱腫瘍および正常な結腸組織の40μm切片を、それぞれ異数体および二倍体集団の外部コントロールとして含めた。ヒストグラムは、発表されている基準により(Sudbo et al. 2001 supra, Haroske 1998 supra)分類した。ヒストグラムは、2人の独立した評価担当者により、臨床病理変数の知識なしで高度に一致して分類された。統計分析には、四倍体および倍数体腫瘍を、異数体腫瘍と共に分類した。
【0123】
統計分析
バイオマーカーを中央値および四分位範囲によりまとめた。マン・ホイットニーのU検定を利用し、各マーカーを、正常試料に対して、リンパ節ステージ、倍数体状態、およびグレード3と比較した。ヨンクヒール・タプストラのノンパラメトリックトレンド検定を利用し、マーカーをグレードおよびHer2状態と比較した。スピアマンの順位相関係数を利用して、マーカーとNPIとの間の関連を評価した。自由度1のlinear by
linear連関カイ二乗検定を利用して、Her2と倍数体状態との間の関連を検定した。対応のないt検定を利用して、倍数体状態による平均NPIを比較した。
【0124】
線形回帰を利用して、Her2にわたる平均NPIのトレンドを評価した。ガンの再発とガン死の分析においてコックス回帰を利用し、ハザード比を与え、単変量モデルおよびNPIに関して調整する多変量モデルの両方において、中央値で2つのカテゴリーに分かれたマーカーの予測を評価した。カプラン・マイヤープロットを利用し、NPIカテゴリーを無視し、またNPIカテゴリーにより分類してマーカーの評価される予測効果を示した。分析は全て両側検定であり、SPSSソフトウェア(バーション12.0.1)を使用して、効果を、信頼区間95%を利用してまとめ、5%レベルで統計的に有意であると評価した。
【0125】
結果
バイオマーカーマルチパラメータ分析およびその生物学的意味の確認
Mcm2、ジェミニン、オーロラA、PLK1、およびH3S10phに対する抗体の単一特異性は、非同期MCF7細胞からの全細胞抽出物において、対応するヒト抗原の報告済み電気泳動移動度と一致する分子量を持つ単一のタンパク質の検出により確認した(図5A)。HeLa S3細胞およびSK−OV3卵巣ガン細胞でのこのバイオマーカーセットの別な試験において、発明者らは、Mcm2レベルは細胞周期の間に大幅に変化しないが、ジェミニンの発現はS−G2−Mに限定されていることを示した。オーロラAおよびPLK1のレベルは、G1の間は無視でき、S期の間に上昇し、G2/Mの間に極大に達し、有糸分裂停止からの開放2〜4時間後分解が起こる。H3S10phの存在は有糸分裂に限定され、有糸分裂マーカーとしてそれを使用する原理を強固にする。増殖マーカーKi67は細胞周期全体で増殖細胞中に存在するので、Ki67に対するS−G2−M期またはM期マーカーの比(例えば、ジェミニン/Ki67、オーロラA/Ki67、またはH3S10ph/Ki67)は、G1期の相対的な長さの指標として、したがって細胞周期進行の速度の指標として使用できる。特に、ジェミニン発現増大は、侵襲性腫瘍においてすら、S−G2−M期に限定されている。
【0126】
これらの細胞周期マーカーのタンパク質発現分析を、最初に、乳房縮小術の後の正常な乳房検体(n=21)で研究した。高レベルMcm2発現が、終末乳管小葉単位(TDLU)の上皮細胞で観察され、これらの細胞が、「周期中」状態にあることを示す(中央値:33.5%)。Mcm2発現のレベルは高いが、Ki67は低レベルで発現されていた(中央値:2.8%)。特に、ジェミニン、オーロラA、PLK1(S−G2−M期マーカー)およびH3S10ph(M期マーカー)は、TDLUの細胞のごく一部に(<1%)のみ発現されており、細胞周期進行の阻害が示される。全部まとめると、この細胞周期表現型は、G1停止状態と一致する。対照的に、浸潤性乳ガンは、細胞周期進行を示す高レベルのバイオマーカー発現(図5B)を示した。正常と侵襲性グレード3腫瘍を比べた場合、Ki67、Mcm2、ジェミニン、オーロラA、PLK1、およびH3S10phのタンパク質発現のレベルに大幅な増加があった(中央値:Mcm2[33.5対92.3%、p<0.001]、Ki67[2.8対40.2%、p<0.001]、ジェミニン[0.98対17.4%、p<0.001]、オーロラA[0対11.7%、p<0.001]、PLK1[0.37対14.2%、p<0.001]およびH3S10ph[0対2.5%、p<0.001])。この増加は、Mcm2/Ki67比の大幅な低下と関連づけられた(中央値:9.3対1.71%、p<0.001)。Mcm2/Ki67値の低下は、ライセンス化された非増殖G1停止状態から、活発に増殖する状態への切り替えを反映しており、細胞周期進行を示すS−G2−M期マーカーの発現と関連している。
【0127】
バイオマーカー、腫瘍DNA倍数体状態、および臨床病理変数の間の関係
本研究の臨床病理特性を表2にまとめる。第1に、発明者らは、細胞周期バイオマーカー発現と腫瘍の分化状態との間の関係を検討した。6種のバイオマーカーの発現レベルはいずれも腫瘍グレードと強く関連(表3)していたが、グレードの間でバイオマーカーレベルの分布にいくらか重複がある(例えば、オーロラAおよびPLK1レベル、図6)。これらのデータは、腫瘍退形成の増加とともに周期をなしている細胞の比率も増えることを示すが、バイオマーカーが、各グレード内の全患者に対してグレードの間を完全に区別しないことも示す。これらの知見と一致して、腫瘍グレードと倍数体状態のとの間に非常に有意な関連が見いだされた(p<0.001)。ジェミニン/Ki67、オーロラA/Ki67、オーロラB/Ki67、およびH3S10ph/Ki67の比は、グレードの上昇に伴う大幅な変化を示さず、停止した分化が、高グレード腫瘍中の加速された細胞周期進行速度と関連しないことを示している(表3)。これは、腫瘍退形成の増加と共に加速された細胞周期進行が見られた、卵巣ガンにおける発明者らの知見とは明らかに対照的である(ジェミニン/Ki67:p<0.007、オーロラA/Ki67:p<0.0002、H3S10ph/Ki67:p<0.0002)。対照的に、そして他の腫瘍タイプにおける発明者らの知見と一致して、Mcm2/Ki67比は、腫瘍グレードの上昇と共に低下し、高分化型腫瘍中のDNA複製ライセンス化されているが非増殖性の細胞から、低分化型腫瘍中の活発に周期をなす細胞への比率の変化を反映している(表3)。ジェミニン発現と腫瘍脱形成およびゲノム不安定性の増大との間の正の相関は、この開始点ライセンス化リプレッサーが、乳ガンの中で腫瘍抑制因子として振る舞っていないようであることを示す。これは、例えば末梢性B細胞リンパ腫および卵巣ガンなど他の腫瘍タイプでも観察されており、それらにおいてジェミニンを発現する細胞の数は、細胞増殖指数に比例する。
【0128】
バイオマーカーとゲノム不安定性との間の関係を研究するため、発明者らは、それらの発現プロファイルを腫瘍DNA含量に関連づけた(表4)。Ki67(p<0.001)、Mcm2(P=0.009)、ジェミニン(p<0.001)、オーロラA(p<0.001)、PLK1(p=0.002)、およびH3S10ph(p<0.001)を含む全細胞周期バイオマーカーの発現レベルとゲノム不安定性の間には非常に有意な関連があった。Mcm2/Ki67比は有意に減少した(p=0.004)。全て合わせると、これらのデータは、二倍体腫瘍に比べ異数体腫瘍において活発に周期をなしている細胞の比率が高いことを示している。興味深いことに、やはり、これらの腫瘍の分化状態の場合と同様に、異数体腫瘍における加速された細胞周期進行の証拠はなく、いくつかの細胞周期バイオマーカー/Ki67比が上昇する卵巣ガンでの発明者らの知見と対照的である。
【0129】
Ki67、Mcm2、ジェミニン、オーロラA、PLK1発現とリンパ節転移との間には有意な関連は全く見られなかった(表5)。H3S10ph発現との弱い関連が見られた(p=0.02)。ER(P=0.007)およびPR(p=0.005)発現と強い逆相関があった。これは卵巣での発明者らの知見と対照をなすが、卵巣では、オーロラA(p=0.006)、H3S10ph(p=0.002)、オーロラA/Ki67(p=0.003)、H3S10ph/Ki67(p=0.005)と腫瘍ステージとの間に有意な関連が見られ、初期上皮卵巣腫瘍形成およびさらに進んだステージの疾患への進行におけるオーロラA調節不全の役割を反映している。Ki67、Mcm2、ジェミニン、オーロラA、PLK1、H3S10phの発現レベルはNPIスコアの上昇と強い正の相関を示し、ERおよびPRは負の相関を示した(表6)。Mcm2/Ki67比の著しい低下もあり、NPIスコアの上昇と共にライセンス化された非増殖状態から活発に増殖する状態への切り替えを意味している。細胞周期バイオマーカー発現は、Her2状態と有意に関連していないが、PR発現と強い逆相関があった(p<0.001)(表7)。NPIスコアの上昇とHer2過剰発現の間にも関連があり、異数体とNPIスコアの上昇との間に弱い関連があった(表8)。Her2スコア上昇と異数体との間にも弱い関連が見られた(カイ二乗=3.03、p=0.082)。
【0130】
バイオマーカー、腫瘍DNA倍数体状態、および患者の結果との間の関係
単変量分析
NPIスコアは、この患者コホートにおける乳ガン再発および死亡の強力な予測因子であり、再発のハザードはNPIスコアの単位あたりちょうど2倍未満に増え(HR=1.81[1.47−2.23]、p<0.001)、死亡のハザードはNPIスコアの単位あたりちょうど2倍超増えた(HR=2.15[1.61−2.88]、p<0.001)。患者の年齢は予測因子ではなかった(表9)(図7A)。Ki67、Mcm2、ジェミニン、オーロラA、PLK1、およびH3S10phを乳ガン再発の強力な予測因子であると同定した(それぞれ、HR=2.77[1.44−5.30]、p=0.002;HR=3[1.56−5.76]、p<0.001;HR=3.93[1.98−7.80]、p<0.001;HR=3.31[1.67−6.57]、p<0.001;HR=4.48[2.21−9.09]、p<0.001;HR=3.49[1.76−6.92]、p<0.001)(図7Bおよび7C)。これらの関連は生存期間にも見られたが、このコホートにおける事象数が小さいためそれほど強くはなかった(Mcm2:HR=2.32[0.99−5.43]、p=0.05;ジェミニン:HR=2.43[1.04−5.68]、p=0.04;オーロラA:HR=2.18[0.93−5.12]、p=0.07;PLK1:HR=3.46[1.37−8.71]、p=0.009;H3S10ph:HR=3.29[1.31−8.30]、p=0.01)。より低い再発ハザードが二倍体群に見られたが、これは有意でなかった(HR=0.62[0.33−1.18]、p=0.14)。Her2発現のカテゴリー増加により再発ハザードおよび死亡ハザードの有意な増加傾向があった(それぞれ、HR=1.44[1.13−1.83]、p=0.003およびHR=1.40[1.02−1.94]、p=0.04)。
【0131】
NPI以上のバイオマーカーの予測値
多変量分析は、これらの細胞周期バイオマーカーの効果が、NPIに対して調整した後でも統計的に有意なままであり、ガン再発を予測するものであることを示している。Ki67、Mcm2、ジェミニン、オーロラA、PLK1、およびH3S10phを、NPI以上の、強力で独立した乳ガンの予測因子であると同定した(それぞれ、HR=2.13[1.08−4.23]、p=0.03;HR=2.22[1.12−4.41]、p=0.02;HR=2.64[1.27−5.49]、p=0.01;HR=2.82[1.37−5.80]、p=0.005;HR=3.31[1.57−6.97]、p=0.002;HR=2.07[1.02−4.20]、p=0.04)(図8および9)。1つの細胞周期バイオマーカーを使用して再発を予測することに有用性があったものの、2つ以上のマーカーを含めることにより追加される有用性はなかった。これは、部分的には、マーカーと臨床病理変数との間に相関があったためである。興味深いことに、有糸分裂キナーゼ、オーロラAおよびPLK1は、乳ガン再発の最も強力な独立した予測因子であると同定された。
【0132】
細胞周期表現型、臨床病理変数、および患者の結果の間の関係
発明者らは、個々の細胞周期特異的バイオマーカーが乳ガンにおける強力で独立した予後マーカーであることを見いだした。これにより、腫瘍の細胞周期速度論または細胞周期表現型が、この特定の腫瘍タイプの病理生物学に影響を与えるかどうかという疑問が起こる。発明者らは、インビトロDNA複製アッセイにおいて、DNAヘリカーゼの構成要素であるMcm2〜7ライセンス化因子のダウンレギュレーションが、いたるところで見られる下流機構であり、それにより、細胞が細胞分裂周期を出て、休止(G0)、分化された、または老化した周期外状態になる時に、細胞の増殖能力が低下することを既に示した(Williams and Stoeber, Curr Opin Cell Biol 19:672-679, 2007; Blow and Hodgson, Trends Cell Biol 12:72-78, 2002; Stoeber et al., EMBO J 17:7219-7229, 1998; Stoeber et al., J Cell Sci 114:2027-2041, 2001 ; Kingsbury et al., Exp Cell Res 309:56-67, 2005; Barkley et al., Exp Cell Res 313:3789-3799, 2007)。細胞周期表現型を決定するために、Mcm2タンパク質発現に30%のカットポイントを選択し、腫瘍細胞の大部分が周期外状態にある群(Mcm2<30%、表現型I)を定義した9図13、図14)。この群(表現型)は、全腫瘍の18%であり、ジェミニンレベルが7%未満であった。これは、細胞が休止(G0)および分化された周期外状態に入るとジェミニンも厳しくダウンレギュレーションされるという、インビトロアッセイおよび自己再生組織での発明者らの観察と一致する(Williams and Stoeber, 2007 supra; Eward et al., J Cell Sci 117:5875-5886, 2004; Kingsbury et al., 2005 supra; Barkley et al., 2007 supra)(図4、表1)。対照的に、ほとんどのガンではMcm2発現レベルは30%を越え(Mcm2>30%)、腫瘍細胞の大部分が周期中の状態にある(Williams and Stoeber, 2007 supra)(図13、図14、表15)。これらの腫瘍の58%(表現型III)は、周期外状態の標識率により定義されるカットポイントである7%を超えるジェミニンレベルにより示される活発な細胞周期進行を示した(図14、表15)。特に、多くの乳ガン(表現型II)、全腫瘍の24%は、周期中表現型(Mcm2>30%)を示すが、7%未満のジェミニンレベルを発現し、G1遅延または停止状態を表す(Williams and Stoeber, 2007 supra; Stoeber et al., 2001 supra; Blow and Hodgson, 2002 supra; Shetty et al., Br J Cancer 93:1295-1300, 2005; Dudderidge et al., Clin Cancer Res 11:25110-2517, 2005; Gonzalez et al., J Pathol 204:121-130, 2004)(図14、表15)。重要なことに、前記3群の中の他のS−G2−Mバイオマーカーの分布は、ジェミニンで観察されたことを正確に再現しており、3つの異なる細胞周期表現型への分離をさらに強化している(図14)。
【0133】
次に、発明者らは、細胞周期表現型が、インビボの挙動およびNPIを含む臨床病理変数とのその関連に影響を与えるかについて検討した。特に、年齢、腫瘍サイズ、リンパ節転移、ER/PR、またはHer−2受容体状態とは全く関連がなかった。しかし、より高い比率のグレード3の腫瘍、停止した分化を示しているものは、活発に周期をなしている表現型を示した。この細胞周期プロファイルは、高いNPIスコアとも関連していた(p<0.001)(表15)。単変量およびNPIに関して調整された多変量分析は、細胞周期表現型が、無病生存期間の強力な予測因子であることも示した。活発に周期をなす表現型(表現型III)は、単変量および多変量分析の両方で、表現型IおよびIIよりも、はるかに高い再発ハザードを示し、それぞれHR=3.90(1.81−8.40)、p<0.001およびHR=2.71(1.81−6.23)、p=0.019)であった(図15)。興味深いことに、高分化型周期外腫瘍とG1遅延/停止表現型(表現型IおよびII)を示す高グレード腫瘍との間にほとんど同様な低い再発ハザードが見られた(HR=1.00[0.22−4.46]、p=0.99;図15)。特に、乳ガンサブタイプと細胞周期表現型との間に、強く有意な関連が見られた(p<0.001)。活発に周期をなす表現型(表現型III)を持つ患者の比率は、Her−2サブタイプ(91%、10/11)(p=0.003)およびトリプルネガティブサブタイプ(96%、25/26)(p<0.001)において、ルミナルサブタイプ(49%、71/145)よりも有意に高かった(図16)。周期外表現型(表現型I)およびG1遅延/停止表現型(表現型II)を示すホルモン受容体陰性腫瘍の比率は、それぞれわずか4%(1/26)および9%(1/11)であった一方で、ルミナルサブタイプでは、前記比率は51%(74/145)であり、21%は(30/145)は表現型Iを、30%(44/145)は表現型IIを示した(図16)。
【0134】
考察
増殖、分化、アポトーシス、およびDNA損傷応答などの過程を制御する複雑で冗長な経路の全ゲノム的分析による分析は、乳ガンの予後ツールとして制約を受けていることが分かりつつある(Dunkler et al. Eur J Cancer, 43:745-751, 2007)。ここで、発明者らは、細胞周期進行に影響する複雑なシグナル伝達経路の下流にあり、したがってそのような経路を通って伝達される情報の統合点として見なすことのできる、進化的保存性の高い細胞周期機構に着目した。発明者らは、この新規な形態のマルチパラメータ細胞周期分析が、腫瘍の細胞周期速度論への新規な洞察を与えるだけでなく、前立腺ガン、腎ガン、および卵巣ガンを含む、ある範囲の腫瘍タイプにおいて重要な予後的意義を持つことを示した。
【0135】
発明者らのDNA複製ライセンス化因子および有糸分裂制御因子の分析は、閉経前乳房組織における普通でない細胞周期状態をさらに特徴づける。標準的な増殖マーカーKi67により確認される増殖比率は小さいが、TDLU内の多数の乳房上皮細胞がMcm2を発現し、多数の細胞がライセンス化されており、したがって「周期中」であるらしいことを示している。しかし、これらの細胞は、S−G2−Mマーカーであるジェミニン、オーロラA、PLK1、および有糸分裂マーカーH3S10phを含む細胞周期進行のマーカーを発現せず、これらの細胞がG1停止状態にあることを示している。非増殖性の乳房におけるこのプライムされライセンス化された状態は、妊娠への迅速な応答を見込んだ進化的適応であるかもしれないが、DNA複製ライセンス化経路をダウンレギュレーションしないことにより、制御されない細胞増殖への遷移をより容易に達成できるようにするかもしれない。
【0136】
発明者らの乳ガンの細胞周期分析は、腫瘍分化のレベル低下およびゲノム不安定化の増大、侵襲性の高い腫瘍の特徴が、細胞周期中にある細胞の比率上昇を示しているMcm2、ジェミニン、オーロラA、PLK1、およびH3S10phのレベル上昇と関連していることを示している。しかし、卵巣とは対照的に、腫瘍分化および異数性のレベル低下は、加速された細胞周期進行と関連がなかった。さらに、腫瘍ステージと細胞周期バイオマーカーとの間に全く関連が見られず、やはりオーロラA、H3S10ph、および腫瘍FIGOステージとの間に非常に有意な関連がある卵巣とは対照的である。これは、異なる腫瘍タイプの間で、異なるガン遺伝的背景に関連するかもしれない細胞周期機構の調節不全に根本的な違いがあることを意味する。
【0137】
発明者らの乳ガンの分析は、DNA複製ライセンス化経路(G1−S制御因子)および有糸分裂機構(G2−M制御因子)のコア成分が、乳ガンの強力な独立した予後マーカーであり、NPIスコアのみの予後値の他に重要性を加えることを示した。興味深いことに、再発および生存期間の最も強力な予後マーカーは、有糸分裂キナーゼオーロラAおよびPLK1であり、どちらも現在、小分子阻害剤抗ガン剤発見プログラムの主な中心である。これは、生検腫瘍試料のマルチパラメータ細胞周期分析が、細胞周期機構を標的とする小分子の予測試験として利用できる可能性を高める。重要なことには、PLK1およびオーロラA発現は、グレードおよびステージ間で大幅な重複を示し、従来の臨床病理変数がおそらく治療応答の予測には不十分であることを示す。発明者らのデータは、診療に新規小分子阻害剤をコスト効果よく導入するためのバイオマーカーと個別化標的療法の共進化という概念を支持する。機序に基づく治療薬に加え、マルチパラメータ細胞周期分析は、従来の化学療法剤および電離放射線への応答を予測するのにも重要性があるであろう。周期から退いた非増殖細胞は、S期および有糸分裂に関連した薬剤に反応を示さないので化学療法に特別な意義を持つ。さらに、細胞周期の期は、腫瘍細胞の相対的な放射線感受性を決定するが、細胞はG2−M期により放射線感受性が高まり、G1では感受性が低下し、S期後期の間は感受性が最低となる。
【0138】
Ki67、Mcm2、ジェミニン、オーロラA、PLK1、およびH3S10phを含む、研究された細胞周期マーカーの多くは、乳ガン再発に関連していた。重要なことに、NPIに対して調整した後も効果は統計的に有意なままであり、したがって独立な予後因子である。しかし、細胞周期機構のこのような重要な成分は、前初期遺伝子および遅延応答遺伝子の下流の有糸分裂シグナル伝達経路とE2F転写調節制御システムの集中点にある。
【0139】
まとめると、発明者らは、上流の成長調節経路の統合点である、細胞周期機構のコア成分が乳ガンの予後評価を大きく向上させることができ、標準的な臨床病理変数および統合されたNPIスコアに追加の情報を与えることを示した。オーロラAおよびPLK1には、予後に関する特別な重要性があるようであり、したがって、治験に入りつつある選択的な有糸分裂キナーゼ阻害剤の予測マーカーとしての可能性があるかもしれない。
【0140】
実施例2:DNA複製ライセンス化因子およびオーロラキナーゼは、上皮性卵巣ガンにおいて異数性および臨床結果に関連する
研究コホート
1999年1月1日から2004年12月31日の間EOCと診断された143人の患
者を、腫瘍学部(ロンドン大学付属病院婦人科ガンセンター、UCL病院、ロンドン、英国)に保管されている卵巣ガンデータベースから特定した。利用可能な組織学的資料により患者を選択した。組織検体は、診断時に婦人科腫瘍病理医により調査されており、WHO基準に従い組織サブタイプおよび核のグレードに関して評価されていた。ほとんどの患者は、治療終了後3から6ヶ月毎に2年間、その後年に1回調査されていた。以下の臨床情報を、患者の病院記録から直接得た:生年月日、診断日、残存病変の量を含む手術による知見、診療および外科診査での知見に基づく世界産婦人科連合(FIGO)ステージならびに細胞学的結果、診断時および再発時のCA125値、化学療法開始時の活動状態、再発日、最新の経過観察の日、ならびに死亡の日および原因。143人の患者のうち、67人(47%)は研究期間内に再発した。再発した人の再発までの平均時間は、16.9ヶ月であった(SD、11.0ヶ月;範囲0−47ヶ月)。未だ再発していない人の平均経過観察時間は、33.2ヶ月であった(SD、18.5ヶ月;範囲5−75ヶ月)。34人の患者(24%)が研究期間中に死亡し、107人は最近の経過観察時に生存していた。死亡した患者の平均生存期間は、21.9ヶ月(SD、15.6ヶ月;範囲0−60ヶ月)であった。未だ死亡していない患者の平均経過観察時間は、33.3ヶ月(SD、18.8ヶ月;範囲、5−75ヶ月)。2人の患者は追跡不能であった。倫理委員会の認可が、ヒトの研究に関する倫理のUCL/UCLHジョイント委員会から得られた。
【0141】
抗体
ヒトのジェミニンに対するウサギのポリクローナル抗体を、記載のとおり(Wharton et al. Br J Cancer 91:262-9, 2004)発生させた。Ki67モノクローナル抗体(clone MIB−1)をDAKOから、Mcm2モノクローナル抗体(clone 46)をBD Transduction Laboratoriesから、オーロラAモノクローナル抗体NCL−L−AK2(clone JLM28)をNovocastra Laboratoriesから、オーロラBポリクローナル抗体Ab2254をAbcam PLCから、およびセリン10でリン酸化されたヒストンH3(H3S10ph)ポリクローナル抗体をUpstateから入手した。
【0142】
細胞培養および同期化
HeLa S3細胞(European Collection of Animal
Cell Cultures 87110901)を、記載のとおり(Stoeber et al. 2001 supra)培養および同期化した。細胞周期の同期化は、先に報告されたとおり(Krude et al. Cell; 88:109-19, 1997)、単離した核のフローサイトメトリーにより確認した。タンパク質抽出物の調製および免疫ブロッティング。HeLe S3細胞をトリプシンによる処理により採取し、PBS中で洗浄し、溶解バッファ(50mmol/LのTris−Cl(pH 7.5)、150mmol/LのNaCl、20mmol/LのEDTA、0.5%のNP40)に2×107細胞/mLで再懸濁させた。氷上で30分間インキュベーションした後、溶解物を遠心分離(13,000×g、15分間、4℃)により澄ませた。溶解物を、4%から20%のSDS−PAGE(75μgタンパク質/ウェル)により分離し、記載のとおり(Stoeber et al. 2001 supra)免疫ブロットした。ブロッキング、抗体インキュベーション、および洗浄工程は、以下の条件で実施した:Mcm2およびオーロラAにはPBS/0.1%Tween20/5%ミルク、ジェミニンにはPBS/1% Tween20/10%ミルク、オーロラBおよびH3S10phにはPBS/5%ミルク。
【0143】
免疫細胞化学
最初の診断時に得られた保管所のホルマリン固定パラフィン包埋組織は全患者で利用可能であり、各検体で浸潤性腫瘍の代表的な試料を含むブロックを選択した。各パラフィン包埋組織ブロックから切り出した連続的な一連の切片を免疫細胞化学のために使用した。3マイクロメートルの切片をSuperfrost Plusスライド(Visions Biosystems)に切り出し、キシレンでパラフィンを除き、濃度の異なったアルコールから水へ通して再水和した。組織切片を、pH6の0.1mol/Lクエン酸バッファ中で2分間加圧処理し、Bond Polymer Define DetectionキットおよびBond−X自動化システム(Vision BioSystems)を利用して免疫染色した。一次抗体を以下の希釈率で利用した:Ki67(1:100)、Mcm2(1:2000)、ジェミニン(1:600)、オーロラA(1:50)、オーロラB(1:200)およびH3S10ph(1:300)。カバースリップを、Pertex封入液(Cell Path Ltd)とともに使用した。一次抗体なしのインキュベーションをネガティブコントロールとして使用し、結腸上皮切片をポジティブコントロールとして使用した。
【0144】
タンパク質発現プロファイル分析
タンパク質発現分析を、(Shetty et al. 2005 supra, Dudderidge et al. 2005 supra)に記載されるとおり、各腫瘍中のマーカーの標識率を測定して実施した。スライドを低倍率(100倍)で評価し、染色強度の一番高い腫瘍の部分を特定した。選択されたこのような部分から、3〜5つの領域を400倍の倍率で荷電結合素子カメラおよび分析ソフトウェア(SIS)により取り込んだ。その後、画像を定量分析のためにプリントしたが、定量分析は臨床病理変数を知らない観察者により実施された。領域中の陽性および陰性細胞の両方を数え、間質細胞または炎症細胞は除外した。陽性細胞の同定の基準は、バイオマーカーにより異なり、Ki67、Mcm2、ジェミニン、オーロラB、およびH3S10phでは、どのような程度でも核染色を示す細胞を陽性とした。オーロラAでは、どのような程度でも核染色または細胞質染色を示す細胞を陽性とした(Gritsko et al. 2003 supra)。各場合で、最低500の細胞を数えた。以下の式を利用して、標識率を計算した:標識率=陽性細胞数/全細胞数×100。独立した評価担当者により無作為に選択された10の症例を再評価したところ、高度の一致を示した。
【0145】
DNA画像サイトメトリー
各場合で、免疫細胞化学により評価されたのと同じブロックから得られた40μmのパラフィン包埋組織切片1つを使用して、記載のとおり細胞核を調製した(Sudbo et al. 2001 supra, Haroske et al. 1997 supra)。Fairfield DNA Ploidy System(Fairfield Imaging Ltd)を、画像処理、分析および分類に、(Sudbo et al. 2001 supra.)記載のとおり使用した。リンパ球およびプラズマ細胞を内部コントロールとして含め、高グレード膀胱腫瘍および正常な結腸組織の40μm切片を、それぞれ異数体および二倍体集団の外部コントロールとして含めた。ヒストグラムは、発表されている基準により(Sudbo et al. 2001 supra, Haroske et al. 1998 supra)分類した。ヒストグラムは、2人の独立した評価担当者により、臨床病理変数の知識なしで高度に一致して分類された。統計分析には、四倍体および倍数体腫瘍を、異数体腫瘍と共に分類した。
【0146】
統計分析
スピアマンの順位相関係数を利用して、バイオマーカー間の関連を調べた。バイオマーカー発現と腫瘍グレード、ステージ、倍数体状態との間の関係を、適宜、ノンパラメトリックヨンクヒール・タプストラ検定およびマン・ホイットニーのU検定を利用して評価した。次いで、データを、コホートにわたって観察された標識率の中央値および四分位範囲としてまとめた。無病生存期間および全生存期間データの分析を、カプラン・マイヤープロット(バイオマーカーの三分位値を使用)、ログラング検定、およびコックス回帰(特記しない限り、バイオマーカーを連続変数として処理)を利用して実施した。各バイオマーカーに対して、コホートを、標識率に基づき三分位群に分けた。各三分位群内で、無病または全生存期間に対し、それぞれ、無病または生存のいずれかのままである比率を、カプラン・マイヤー法により計算した。バイオマーカーの信頼区間95%(95%CI)のハザード比(HR)を、最初に調整せずに求め、次いで、年齢、グレード、およびステージについて調整した。不完全なデータを持つ患者は、多変量分析から除外した。候補バイオマーカーを、補足表S1に列記する。検定は全て両側であり、有意水準0.05を使用し、多重仮説検定を見込まなかった。分析は、SPSSソフトウェア12.0(SPSS,Inc.)を使用して実施した。
【0147】
結果
バイオマーカーマルチパラメータ分析およびその生物学的意味の確認
Mcm2、ジェミニン、オーロラA、オーロラB、およびH3S10phに対する抗体の単一特異性は、非同期HeLa S3細胞からの全細胞抽出物において、対応するヒト抗原の報告済み電気泳動移動度と一致する分子量を持つ単一のタンパク質の検出により確認した(図10A)。HeLa S3細胞系は、特徴がはっきりした細胞周期遷移時間および確立された同期化プロトコルを持つので、この細胞をインビトロ研究で第一に選択した。同期化細胞からの全細胞溶解物を、キャラクタリゼーションされた抗体により免疫ブロットした(図10B)。Mcm2レベルは細胞周期の通過の間に大幅に変化しなかったが、ジェミニンの発現はS−G2−Mに限定されていた。オーロラAレベルはS期の間に上昇し、有糸分裂の間に極大に達し、有糸分裂停止からの開放2〜4時間後分解が起きた。同様に、オーロラBレベルは、G1期の間に無視でき、S期の間に徐々に上昇し、G2−Mの間に極大に達し、有糸分裂後に低下した。H3S10phの存在は有糸分裂に限定され、有糸分裂マーカーとしてそれを使用する原理を強固にする。これらのバイオマーカーの全く同じ細胞周期依存的発現が、同期化SK−OV3卵巣ガン細胞に観察された(データ示さず)。Ki67は増殖細胞中で細胞周期全体にわたり発現され、ジェミニン発現はS−G2−M期に限定されているので、発明者らは、ジェミニン/Ki67比を、G1の相対的な長さの指標として、したがって細胞周期進行の速度の指標として使用できることを提案した。上述のデータは、オーロラAおよびオーロラBの細胞周期依存性発現により、Ki67に対するそれらの比を、細胞周期進行の指標として使用できることを確認する。ジェミニン発現増大は、高度に侵襲性腫瘍においてすら、常にS−G2−M期に限定されている。したがって、発明者らのインビトロの知見は、オーロラAまたはオーロラBとジェミニンとの間の相対比(比>1)の増加が、細胞周期の間のキナーゼの過剰発現を示すであろうことも示している。発明者らのインビトロの知見の予後的意義およびEOCにおけるその生物学的意味を評価するため、発明者らは、一連の143の症例におけるバイオマーカーの発現を分析した(図10C)。タンパク質発現を、正常卵巣組織の5例でも研究した。バイオマーカーの発現は、正常な卵巣表面上皮では非常に低く(<4%)、その低下した増殖能力と一致している(データ示さず)。対照的に、EOCは高レベルのバイオマーカー発現を示し、細胞周期への再進入および増殖を示している。
【0148】
次には、発明者らは、腫瘍シリーズにわたりバイオマーカーの組の間の相関を検討した。オーロラAおよびオーロラBの発現レベルは、その基質H3S10phのレベルと強い正の相関を示した(スピアマン相関、それぞれ、0.57(95%CI、0.45−0.67)および0.52(95%CI、0.39−0.63)。Mcm2、ジェミニン、およびH3S10phの発現レベルは、Ki67レベルと強い正の相関を示し(スピアマン相関、それぞれ、0.73(95%CI、0.64−0.8);0.74(95%CI、0.66−0.81);および0.52(95%CI、0.39−0.63))、その増殖マーカーとしての役割を支持している。特に、ジェミニン/Ki67およびオーロラA/Ki67比は、正に、だがあまり強くなくH3S10phと相関しており(スピアマン相関、それぞれ、0.25(95%CI、0.09−0.40)および0.42(95%CI、0.27−0.55))、S内またはG2−Mチェックポイント経路の活性化により起こるかもしれない延長したS−G2−M遷移時間に対するG1の相対的な長さの変化を反映している。
【0149】
これは、腫瘍細胞がその集団倍加の大部分、全体で40のうちおよそ30の倍加を過ぎてからでないと腫瘍量が臨床的に検知できないことと一致している。この集団倍加の数は、ほとんどの細胞周期チェックポイント機構が無効になった体性クローン進化(somatic clonal evolution)における点、生命と適合性のある最大質量を表す。
【0150】
バイオマーカー、腫瘍DNA倍数体状態、および臨床病理特性の間の関係
研究コホートの臨床病理特性を表10にまとめる。バイオマーカーとゲノム不安定性との間の関係を調査するため、発明者らは、その発現プロファイルを腫瘍DNA含量と関連づけた。バイオマーカー全ての発現レベルおよびいくつかのバイオマーカー/Ki67比とゲノム不安定性との間に非常に有意な関連があり(表11)、二倍体腫瘍と比べ異数体腫瘍中での周期をなしている細胞の比率増加および加速した細胞周期進行を反映している。
【0151】
6種のバイオマーカーは全て腫瘍グレードと強い相関があった(表12)。しかし、グレード間でバイオマーカーレベルの分布に幾分重複がある(例えばオーロラAレベル;図11)。これらのデータは、腫瘍退形成の増加に伴う周期をなしている細胞の比率増加を確かにするが、バイオマーカーが各グレード内の全患者のグレード間を完全には区別しないことも示している。
【0152】
これらの知見と一致して、腫瘍グレードと倍数体状態との間の非常に有意な関連が見いだされた(p<0.001)。ジェミニン/Ki67、オーロラA/Ki67、オーロラB/Ki67、およびH3S10ph/Ki67の間の比も腫瘍分化と有意に関連しており(表12)、高グレード腫瘍での細胞周期進行の加速を示した。対照的に、そして他の腫瘍タイプでの発明者らの知見と一致して、Mcm2/Ki67比は腫瘍グレードの増加と共に減少し(表12)、高分化型腫瘍中のDNA複製ライセンス化されているが非増殖性の細胞から、低分化型腫瘍中の活発に周期をなす細胞への比率の変化を反映している。ジェミニン発現と増加する腫瘍脱形成およびゲノム不安定性の間の正の相関(表11および12)は、このライセンス化リプレッサーが、EOCの中で腫瘍抑制因子として振る舞っていないことを示す。
【0153】
オーロラA、H3S10ph、オーロラA/Ki67、H3S10ph/Ki67と腫瘍ステージとの間に有意な相関が見いだされた(表13)。これは、オーロラA調節不全が、初期の上皮卵巣腫瘍形成および進行ステージの疾患への進行における重要な事象であるかもしれないことを示唆している。さらに、進行ステージの疾患は、オーロラA/ジェミニン比の増加(p=0.04;表13)と有意に相関しており、やはりオーロラA調節不全と腫瘍進行との間の関連を支持している。
【0154】
バイオマーカー、腫瘍DNA倍数体状態、および患者の結果との間の関係
単変量分析
オーロラA(p=0.01;図12A)、オーロラA/Ki67、オーロラB/Ki67、およびH3S10ph(表14)は、より短い無病生存期間と有意に関連していたが、全生存期間とは関連していなかった。患者年齢、腫瘍グレード、およびステージも、若い患者、高分化型腫瘍で、特に再発までの時間が著しく長い初期の疾患で無病生存期間を予測するものであった(それぞれ、HR、1.02(1.00−1.05)、p=0.05;HR、1.59(1.03−2.45)、p=0.04;HR、2.07(1.58−2.71)、p<0.0001)。患者の年齢および腫瘍のステージは全生存期間も予測したが(それぞれ、HR、1.05(1.02−1.09)、p=0.003;HR、3.21(1.33−7.79)、p=0.01)、腫瘍グレードは全生存期間を予測せず(p=0.70)、現行のグレーディングシステムの限界を強調している。腫瘍倍数体状態も、無病生存期間と有意に相関しており(HR、1.80(1.05−3.08)、p=0.03;図12B)、異数体腫瘍を持つ患者の全生存期間が短くなる傾向があったが、これは統計的な有意には達しなかった(HR、1.95(0.88−4.31)、p=0.10)。
【0155】
発明者らは、発明者らのシリーズを、初期の疾患(FIGOステージIおよびII)および進行したステージの疾患(FIGOステージIIIおよびIV)の2群に再分し、バイオマーカーが予後に関する特別な重要性を持つ特定のサブグループをより正確に定義した。オーロラAおよびオーロラA/Ki67比の両方は、初期ステージのサブグループにおいて、短い無病生存期間(それぞれ、HR、1.72(1.19−2.48)、p=0.004(図12C);HR、1.59(1.13−2.24)、p=0.008)および全生存期間(それぞれ、HR、1.81(1.14−2.87)、p=0.01(図12E);HR、1.68(1.11−2.54)、p=0.01)を強く予測した。この関連は、進行したステージのサブグループには見られなかった(それぞれ、無病生存期間には、HR、1.06(0.81−1.37)、p=0.67;HR、1.04(0.90−1.20)、p=0.58;および全生存期間には、HR、0.88(0.58−1.33)、p=0.88;HR、0.89(0.69−1.15)、p=0.36)。腫瘍倍数体状態も、初期ステージのサブグループでは、無病生存期間を予測したが(HR、4.58(1.04−20.19)、p=0.04;図12D)、異数体腫瘍を持つ患者ではより短い全生存期間の傾向がある(HR、6.34(0.82−49.18)、p=0.08;図12D)。しかし、それは、進行したステージのサブグループでは予測値を失った(無病生存期間および全生存期間に対してそれぞれ、HR、1.47(0.81−2.66)、p=0.21およびHR、1.36(0.55−3.33)、p=0.5)。
【0156】
多変量分析
コックス回帰生存分析は、腫瘍ステージが無病生存期間の有意な独立した唯一の予測因子であることを示した(HR、2.06(1.49−2.85)、p<0.0001)。患者の年齢および腫瘍ステージは、より高齢の患者およびより短い全生存期間を持つ進行したステージの腫瘍では、全生存期間の独立した予測因子であった(それぞれ、HR、1.05(1.01−1.09)、p=0.007;HR、3.19(1.31−7.75)、p=0.01)。いくつかのバイオマーカーが単変量分析において有意な予後因子であったが、年齢、グレードおよびステージに対して調整した後、どれも無病生存期間または全生存期間の有意な予測因子でなかった。これは、部分的には、バイオマーカーと腫瘍のグレードおよびステージとの間に非常に有意な関連があり、それらの独立した効果を分離するのが困難であることによる。
【0157】
考察
本研究を実施して、予後および予測に関する重要性があり、その病理学へのより深い理解をもたらすかもしれない、EOCの生物学的マーカーへのさらなる洞察を得た。発明者らの知見は、Mcm2およびジェミニン複製ライセンス化因子ならびにオーロラAおよびBキナーゼは、その基質であるH3S10phと共に、EOCにおいて予後に関する重要性があることを示す。腫瘍の分化とこのバイオマーカーの組との間に見いだされた関連は、現行のグレーディングシステムにおけるさらなる改善の可能性を持つ増殖マーカーとしての使用を意味する。発明者らのマルチパラメータ分析は、それが患者の腫瘍試料における細胞周期進行についての情報、重要な予後の情報に解釈されるデータを与えるかもしれないことを示している。
【0158】
これらの知見は、乳ガンおよび腎ガンのライセンス化因子の分析と一致する。さらに、バイオマーカーのこの組と腫瘍倍数体状態との間に見いだされた非常に有意な関連は、ライセンス化機構および有糸分裂キナーゼの調節不全がEOCにおけるゲノム不安定性の進展に複雑に関連していることを示す。オーロラAは、G2−M遷移のいくつかの重要な段階で調節的な役割を果たしている。ここで、発明者らは、オーロラAの異常な制御とEOC進行との間の興味深い関連を報告する。発明者らのデータは、オーロラA、H3S10ph、および腫瘍FIGOステージとの間の非常に有意な関連を示し、オーロラA調節不全が上皮卵巣発ガン現象の初期の事象であるかもしれないという見解を支持し、その調節不全が進行した疾患への進行に役割を果たしているかもしれないことを示唆している。
【0159】
これらの知見に一致して、オーロラA/ジェミニン比は進行したステージの腫瘍で著しく高く、オーロラAの過剰発現が、腫瘍進行に役割を果たすか、腫瘍進行の結果であるかもしれないことも示唆する。インビボでは、そのような過剰発現は、遺伝子増幅によるだけでなく、転写活性化およびタンパク質分解の抑制など他の機構によっても制御されているようである。発明者らのデータは、オーロラAおよびH3S10phのマルチパラメータ分析が、臨床ステージング法の補完に使用できるかもしれない分子ステージングを可能にすることを示唆する。FIGOステージは、EOCにおいて重要な予後に関する指標であるが、外科的および放射線医学的なステージング方法には限界がある。無作為試験は、アジュバント化学療法が、ステージI疾患のサブオプティマルにステージングされた患者において特別な利益となることを示した。しかし、最近の大規模な無作為比較試験において、ガイドラインに従い最適にステージングされていたのは、わずか34%の患者だった(Vegote I et al Curr. Op. Oncol. 2003; 15:452-5)。不適切にステージングされている患者において、これらのバイオマーカーは、真のステージIまたはより進行した疾患の支持的なエビデンスを提供するかもしれず、アジュバント化学療法の利用についての決断を支援する。ICON 1/ACTION試験の知見は、アジュバント化学療法に小さな全体的利益を示唆するが(Trimbos JB et al J Natl Cancer Inst 2003;95:105-12)、ステージI疾患を持つ適切にステージングされたどの患者が本当に化学療法を必要とするかは不明確なままである。
【0160】
オーロラA、H3S10ph、およびゲノム不安定性は、この研究コホートにおいて無病生存期間の有意な予測因子である。さらなるサブグループ分析は、初期の疾患において、オーロラAおよび腫瘍倍数体状態が無病生存期間を予測する(オーロラA発現は全生存期間も予測する)ものであることを示した。しかし、この関連は、年齢およびステージなどの予後因子を考慮に入れると低下する。対照的に、これらの変数は、進行した疾患においてその予測に関する重要性を失い(例えば、オーロラAのHRは、初期のステージ疾患での1.72(1.19−2.48)から進行したステージの疾患の1.06(0.81−1.37)へと低下した)、他の生物学的因子が、これらの患者の再発および結果に優先的に影響することを示唆している。さらに、治療法の複雑さおよび不均質性が、進行したステージでのこれらのバイオマーカーの予測値を隠すかもしれない。
【0161】
全部まとめると、発明者らのデータは、腫瘍形成の間の初期の点でオーロラA調節不全が遺伝的不安定性の原因になることがあり初期のステージの疾患を持つ患者のサブグループにおいて侵襲性の腫瘍および生存期間の短縮を生み出す生物学的機構を支持している。
【0162】
DNA複製ライセンス化因子および有糸分裂キナーゼは細胞周期進行の重要な制御因子であり、そのため現在の治療薬開発プログラムの焦点である。本明細書において、発明者らは、G1−SおよびG2−M遷移のコア制御因子のマルチパラメータ発現分析により、腫瘍の生物学的挙動に関連した変数である、個々の患者の腫瘍試料における細胞周期進行速度を評価できることを示した。この種の分析を、細胞周期機構または細胞周期進行を加速する上流の成長シグナル伝達経路を標的とする小分子の予測試験として利用できる。さらに、オーロラA発現がグレード間を完全に区別しないという観察は、従来の臨床病理変数が、治療応答の予測を常に可能にするわけでないことを示し、バイオマーカーおよび個別化標的治療の共進化の概念を支持している。特異的なオーロラキナーゼ阻害剤の最近の開発を鑑み、発明者らのデータは、バイオマーカーおよび潜在的な治療標的としてオーロラAを使用するために、予後、予測および治療に関する重要な意味を持つ。
【0163】
【表1】

【0164】
【表2】

【0165】
【表3】

【0166】
【表4】

【0167】
【表5】

【0168】
【表6】

【0169】
【表7】

【0170】
【表8】

【0171】
【表9】

【0172】
【表10】

【0173】
【表11】

【0174】
【表12】

【0175】
【表13】

【0176】
【表14】

【0177】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者のガンの進行の予後を測定する方法であって、
(a)被験者から採られた生物学的試料中のMcm2〜7の少なくとも1つから選択される第1バイオマーカーのレベルを評価する工程;および
(b)被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択される第2バイオマーカーのレベルを評価する工程
を含み、
所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルと所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルの組み合わせが、前記被験者のガンの進行を表す方法。
【請求項2】
前記被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択され、前記第2バイオマーカーとは異なる第3バイオマーカーのレベルを評価する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
所定値と比較した前記第1バイオマーカーのレベルが低く、所定値と比較した前記第2バイオマーカーのレベルが低い場合、被験者の予後がガン進行の可能性が低いことを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
所定値と比較した前記第1バイオマーカーのレベルが高く、所定値と比較した前記第2バイオマーカーのレベルが低い場合、被験者の予後がガン進行の可能性が低いことを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
所定値と比較した前記第1バイオマーカーのレベルが高く、所定値と比較した前記第2バイオマーカーのレベルが高い場合、被験者の予後がガン進行の可能性が高いことを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1バイオマーカーの所定値が、前記第1バイオマーカーに陽性な細胞の20%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1バイオマーカーの所定値が、前記第1バイオマーカーに陽性な細胞の30%である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2バイオマーカーの所定値が、前記第2バイオマーカーに陽性な細胞の20%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2バイオマーカーの所定値が、前記第2バイオマーカーに陽性な細胞の10%である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2バイオマーカーの所定値が、前記第2バイオマーカーに陽性な細胞の7%である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的試料が、腫瘍生検、組織、全血、血漿、血清、子宮頸部スメア、尿、気管支洗浄検体、唾液、および消化管擦過検体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1および第2バイオマーカーのレベルが、免疫学的アッセイ法を利用して測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫学的アッセイ法が、ドットブロット分析、スロットブロット分析、RIA、ペプチドマイクロアレイ、およびELISAからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1および第2バイオマーカーのレベルが、分子生物学系アッセイ法を利用して測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記分子生物学系アッセイ法が、ノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、RT−PCR、PCR、核酸配列系増幅アッセイ(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)、またはコンピューター化検出マトリックスからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記被験者が、乳ガン、子宮内膜ガン、卵巣ガン、上皮性卵巣ガン、肺ガン、前立腺ガン、腎ガン、膀胱ガン、口腔粘膜のガン、食道ガン、リンパ細網系のガン、脳腫瘍、尿生殖器ガン、皮膚ガン、結腸ガン、胃ガン、膀胱ガン、尿管のガン、および気道消化管のガンからなる群から選択されるガンを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1および第2バイオマーカーが、連続的にも同時にも測定できる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第1バイオマーカーのレベルが、前記第2バイオマーカーのレベル測定前に測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ガンの被験者のための治療プロトコルを決定する方法であって、
(a)被験者から採られた生物学的試料中のMcm2から7の少なくとも1つから選択される第1バイオマーカーのレベルを評価する工程;および
(b)被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択される第2バイオマーカーのレベルを評価する工程
を含み、
所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルと所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルの組み合わせが、前記被験者に処方される治療法を表す方法。
【請求項20】
前記被験者から採られた生体学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択され、前記第2バイオマーカーとは異なる第3バイオマーカーのレベルを評価する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
所定値と比較した前記第1バイオマーカーのレベルが低く、所定値と比較した前記第2バイオマーカーのレベルが低い場合、治療法が、
(a)モニタリング;および
(b)非細胞周期特異的化学療法薬剤による治療
の1つ以上から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
所定値と比較した前記第1バイオマーカーのレベルが高く、所定値と比較した前記第2バイオマーカーのレベルが高い場合、治療法が、
(a)モニタリング;
(b)G1または非細胞周期特異的薬剤による治療;および
(c)非SおよびG2/M細胞周期特異的化学療法薬剤による治療
の1つ以上から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
所定値と比較した前記第1バイオマーカーのレベルが高く、所定値と比較した前記第2バイオマーカーのレベルが高い場合、治療法が、
(a)手術;および
(b)SおよびG2/M細胞周期特異的化学療法薬剤による治療
の1つ以上から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記生物学的試料が、腫瘍生検、組織、全血、血漿、血清、子宮頸部スメア、尿、気管支洗浄検体、唾液、および消化管擦過検体からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記第1および第2バイオマーカーのレベルが、免疫学的アッセイ法を利用して測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫学的アッセイ法が、ドットブロット分析、スロットブロット分析、RIA、ペプチドマイクロアレイ、およびELISAからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1および第2バイオマーカーのレベルが、分子生物学系アッセイ法を利用して測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記分子生物学系アッセイ法が、ノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、RT−PCR、PCR、核酸配列系増幅アッセイ(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)、またはコンピューター化検出マトリックスからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記被験者が、乳ガン、子宮内膜ガン、卵巣ガン、上皮性卵巣ガン、肺ガン、前立腺ガン、腎ガン、膀胱ガン、口腔粘膜のガン、食道ガン、リンパ細網系のガン、脳腫瘍、尿生殖器ガン、皮膚ガン、結腸ガン、胃ガン、膀胱ガン、尿管のガン、および気道消化管のガンからなる群から選択されるガンを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記第1および第2バイオマーカーが、連続的にも同時にも測定できる、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記第1バイオマーカーのレベルが、前記第2バイオマーカーのレベル測定前に測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
ガンの被験者の治療的処置の効力を測定する方法であって、
(a)被験者から採られた生物学的試料中のMcm2から7の少なくとも1つから選択される第1バイオマーカーのレベルを評価する工程;および
(b)被験者から採られた生物学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択される第2バイオマーカーのレベルを評価する工程
を含み、
所定値と比較した第1バイオマーカーのレベルと所定値と比較した第2バイオマーカーのレベルの組み合わせが、治療的処置の効力を表す方法。
【請求項33】
前記被験者から採られた生体学的試料中のジェミニン、オーロラA、Plk1、Ki67、およびH3S10phの少なくとも1つから選択され、前記第2バイオマーカーとは
異なる第3バイオマーカーのレベルを評価する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記生物学的試料が、腫瘍生検、組織、全血、血漿、血清、子宮頸部スメア、尿、気管支洗浄検体、唾液、および消化管擦過検体からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記第1および第2バイオマーカーのレベルが、免疫学的アッセイ法を利用して測定される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫学的アッセイ法が、ドットブロット分析、スロットブロット分析、RIA、ペプチドマイクロアレイ、およびELISAからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1および第2バイオマーカーのレベルが、分子生物学系アッセイ法を利用して測定される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記分子生物学系アッセイ法が、ノーザンブロット分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、RT−PCR、PCR、核酸配列系増幅アッセイ(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)、またはコンピューター化検出マトリックスからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記被験者が、乳ガン、子宮内膜ガン、卵巣ガン、上皮性卵巣ガン、肺ガン、前立腺ガン、腎ガン、膀胱ガン、口腔粘膜のガン、食道ガン、リンパ細網系のガン、脳ガン、尿生殖器ガン、皮膚ガン、結腸ガン、胃ガン、膀胱ガン、尿管のガン、および気道消化管のガンからなる群から選択されるガンを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記第1および第2バイオマーカーが、連続的にも同時にも測定できる、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記第1バイオマーカーのレベルが、前記第2バイオマーカーのレベル測定前に測定される、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−501809(P2011−501809A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529444(P2010−529444)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003501
【国際公開番号】WO2009/050461
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510106186)ケンブリッジ キャンサー ダイアグノスティクス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】