ガンを処置するための抑制性ポリヌクレオチドの組成物および方法
ガンのような疾患を処置するための組成物と方法。この組成物は、遺伝子発現のRNA干渉のプロセスを刺激することによって、確認された標的遺伝子の発現をサイレンシングさせるか、ダウンレギュレートするか、または抑制し、それにより腫瘍の増殖を阻害するために有効である。本発明によってはまた、腫瘍増殖を阻害するための、中和抗体または低分子薬物を使用する、確認された標的遺伝子産物の不活化により、ガンのような疾患を処置するための方法も提供される。より具体的には、この組成物と方法は、本明細書中で同定された特定の標的遺伝子の病理学的発現に関係する、哺乳動物のガンまたは前ガンの増殖に焦点があてられている。この組成物は、哺乳動物の組織内に導入されると標的遺伝子の発現を阻害する。この方法は、本発明の組成物を必要とする被験体に対して、ガン組織または臓器中での標的遺伝子の発現を阻害するために有効な量で投与する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ガンの処置の1つの様式としてRNA干渉を誘導するために有用なポリヌクレオチドに関する。さらに具体的には、本発明は、前ガン細胞、ガン細胞、もしくは腫瘍細胞の増殖および/または転移に関与している特定の遺伝子に向けられた標的オリゴヌクレオチド配列に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンまたは前ガンの増殖は、一般的には、両性の腫瘍ではなく悪性腫瘍をいう。悪性腫瘍は両性腫瘍よりも早く増殖し、これらは局部組織に浸潤してこれを破壊する。いくつかの悪性腫瘍は血液系またはリンパ系を介する体中の至る所への転移により拡がる可能性がある。予測不可能であり、制御不可能な増殖は悪性ガンを危険なものとし、多くの場合には致命的となる。
【0003】
悪性ガンの治療的処置は、ガンの発生の初期段階で最も有効である。したがって、初期の腫瘍形成の段階で治療標的を特定し、確認すること、そして、それと関係している強力な腫瘍増殖または遺伝子発現の抑制要素または物質を決定することが極めて重要である。
【0004】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)が配列特異的様式で遺伝子発現を阻害する転写後プロセスである。RNAiプロセスは、少なくとも2工程で起こる:第1の工程においては、より長いdsRNAが内因性のリボヌクレアーゼDicerによって、「小さい干渉RNA」と呼ばれるより短いdsRNAに、または、通常は100未満、50、30、23、または21ヌクレオチド未満の長さのsiRNAに切断される。第2の工程においては、これらのsiRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC;Hammond,S.M.ら、Nature(2000)404,293−296)と呼ばれる多成分リボヌクレアーゼに組み込まれる。siRNAの一方の鎖は、RISCに会合したままとなり、RISCの中のガイダー(guider)ss−siRNAに相補的な配列を有している類似するRNAi対してこの複合体を導く。このsiRNA特異的エンドヌクレアーゼがRNAを消化し、これを不活化させる。このRNAi作用は、細胞内の標的配列に対して、より長いdsRNAまたはより短いsiRNAのいずれかを導入することによって行われ得る。RNAi作用は、標的遺伝子に相補的はdsRNAを生じるプラスミドを導入することによって行うことができることも明らかにされている。様々な生物体でのRNAiに関する開示については、特許文献1(Fireら);特許文献2(Waterhouseら);特許文献3(Heifetzら);Yang,D.ら、非特許文献1、特許文献4(Limmer);および特許文献5(Kreutzerら)を参照のこと。
【0005】
RNAiは、ショウジョウバエ(Drosophila)での(Kennerdellら(2000)Nature Biotech 18:896−898;Worbyら(2001)Sci STKE 2001年8月14日(95):PL1;Schmidら(2002)Trends Neurosci 25(2):71−74;Hammondら(2000)Nature,404:293−298)、シノラブディス・エレガンス(C.elegans)での(Tabaraら(1998)Science 282:430−431)、Kamathら(2000)Genome Biology 2:2.1−2.10;Grishokら(2000)Science 287:2494−2497))、そしてゼブラフィッシュ(Zebrafish)での(Kennerdellら(2000)Nature Biotech 18:896−898)遺伝子機能の決定にうまく使用されてきた。ヒト以外の哺乳動物およびヒトの細胞培養におけるRNAi作用については多数の報告がある(Mancheら(1992)。Mol.Cell.Biol.12:5238−5248;Minksら(1979)J.Biol.Chem.254:10180−10183;Yangら(2001)Mol.Cell.Biol.21(22):7807−7816;Paddisonら(2002).Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(3):1443−1448;Elbashirら(2001)Genes Dev 15(2):188−200;Elbashirら(2001)Nature 411:494−498;Caplenら(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:9746−9747;Holenら(2002)Nucleic Acids Research 30(8):1757−1766;Elbashirら(2001)EMBO J 20:6877−6888;Jarvisら(2001)TechNotes 8(5):3−5;Brownら(2002)TechNotes 9(1):3−5;Brummelkampら(2002)Science 296:550−553;Leeら(2002)Nature Biotechnol.20:500−505;Miyagishiら、(2002)Nature Biotechnol.20:497−500;Paddisonら(2002)Genes & Dev.16:948−958;Paulら(2002)Nature Biotechnol.20:505−508;Suiら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(6):5515−5520;Yuら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(9):6047−6052)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第99/32619号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/53050号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/61631号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/44895号パンフレット
【特許文献5】独国特許発明第10100586.5号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Curr.Biol.(2000)10:1191−1200)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、ガンのような疾患を処置するための組成物と方法が提供される。これらの組成物は、遺伝子発現のRNA干渉のプロセスを刺激することにより、確認された標的遺伝子の発現をサイレンシングさせるか、ダウンレギュレートするか、または抑制するために有効である。それにより、これらの組成物と方法は、腫瘍増殖を阻害する。本発明によってはまた、腫瘍増殖を阻害するために、中和抗体または低分子薬物を使用する確認された標的遺伝子産物の不活化により、ガンのような疾患を処置するための方法も提供される。
【0009】
さらに具体的には、これらの組成物および方法は、特に、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子から選択された標的遺伝子(本明細書中では「標的遺伝子(Target Gene)」(単数または複数))の病理学的発現と関係している、哺乳動物でのガンの増殖または前ガンの増殖が焦点となっている。これらの組成物は、哺乳動物の組織に導入されると標的遺伝子の発現を阻害する。これらの方法には、本発明の組成物をそれが必要な被験体に対して、ガン性の組織または臓器の中での標的遺伝子の発現を阻害するために有効な量で投与する工程が含まれる。
【0010】
第1の態様においては、本発明により、その長さが200ヌクレオチド以下である、単離された標的化ポリヌクレオチドが提供される。このポリヌクレオチドには、標的遺伝子またはその相補体を標的化する第1のヌクレオチド配列が含まれる。第1のヌクレオチド配列またはその相補体は、15から30までの長さの任意の数のヌクレオチドであり、いくつかの実施形態においては、その長さは21から25ヌクレオチドである。
【0011】
別の態様においては、先の段落に記載された本発明のポリヌクレオチドにはさらに、ループ配列によって第1のヌクレオチド配列とは離れて配置された第2のヌクレオチドが含まれる;第2のヌクレオチド配列は、
a)第1のヌクレオチド配列と実質的に同じ長さを有しており、そして、
b)第1のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であり、その結果、このポリヌクレオチドは、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに適している条件下でヘアピン構造を形成する。
【0012】
先の段落に記載された直鎖のポリヌクレオチドとヘアピンポリヌクレオチドの多くの実施形態においては、第1のヌクレオチド配列は、以下から構成される:
a)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択された配列を標的化する配列(本明細書中では「標的配列(Target Sequence」);
b)項目a)に提供された標的化配列よりも長く、これを含む伸張配列であって、ここでは、伸張配列は標的遺伝子を標的化し、標的化配列は標的配列を標的化する、伸張配列;
c)少なくとも15ヌクレオチドの長さの標的配列を標的化する、選択された標的配列よりも短い配列の断片;
d)5個までのヌクレオチドが選択された標的配列とは異なる、標的化配列;または
e)a)〜d)に提供された配列の相補体。
【0013】
一般的な実施形態においては、本明細書中に記載される直鎖のポリヌクレオチドは、標的配列から構成され、これには状況に応じて、選択された配列の3’末端に結合させられた2ヌクレオチドの突出が含まれる。関連する一般的な実施形態においては、本明細書中に記載されるヘアピンポリヌクレオチドは、第1の選択されたヌクレオチド標的配列、ループ配列、および標的配列に実質的に相補的な第2のヌクレオチド配列から構成される。
【0014】
さらなる実施形態においては、ポリヌクレオチドはDNAまたはRNAであるか、あるいは、ポリヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方が含まれる。
【0015】
さらに別の態様においては、本発明により、本明細書中に記載される第1の直鎖の標的化ポリヌクレオチド鎖と、この第1のポリヌクレオチドの少なくとも最初のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であり、それにハイブリダイズする第2のヌクレオチド配列を含む第2のポリヌクレオチド鎖が含まれている、二本鎖のポリヌクレオチドが提供される。
【0016】
なおさらなる態様においては、本発明により、本明細書中に記載される複数の直鎖の標的化ポリヌクレオチド、二本鎖のポリヌクレオチド、および/またはヘアピンポリヌクレオチドが含まれている、ポリヌクレオチドの組み合わせあるいは混合物が提供される。この場合、個々のポリヌクレオチドは、1つ以上の選択された標的遺伝子の中の別の選択された標的配列を標的化する。
【0017】
なおさらなる態様においては、本発明により、本明細書中に記載される直鎖の標的化ポリヌクレオチドまたはヘアピン型の標的化ポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。一般的な実施形態においては、ベクターは、プラスミド、コスミド、組み換え体ウイルス、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、トランスポゾン、またはミニ染色体である。
【0018】
ベクターのさらに一般的な実施形態においては、制御エレメントは、その発現を促進するために有効な標的化ポリヌクレオチドと動作可能であるように連結させられる。さらに別の態様によっては、本明細書中に記載される1つ以上の直鎖のポリヌクレオチドでトランスフェクトされた細胞、または本明細書中に記載される1つ以上のヘアピンポリヌクレオチドでトランスフェクトされた細胞、または上記ポリヌクレオチドの組み合わせでトランスフェクトされた細胞が提供される。
【0019】
なおさらなる態様においては、本発明により、本明細書中に記載される1つ以上の直鎖のポリヌクレオチドまたはヘアピンポリヌクレオチドまたはそれらの混合物と、薬学的に許容される担体が含まれている薬学的組成物が提供される。この場合、個々のポリヌクレオチドは、標的遺伝子の中の別の標的配列、またはそれらの任意の2つ以上を標的化する。
【0020】
なお別の態様においては、本発明により、本明細書中に記載される標的遺伝子を標的化する配列を有しているポリヌクレオチドを合成する方法が提供される。これらの方法には以下の工程が含まれ、それにより、完全なポリヌクレオチドが提供される:
a)活性のある反応性末端を含み、その配列の第1の末端にあるヌクレオチドに対応しているヌクレオチド試薬を提供する工程、
b)先の工程による活性のある反応性末端と反応させて、ポリヌクレオチド配列の長さを1ヌクレオチド伸ばすために、活性のある反応性末端を含み、標的化配列の連続している位置に対応しているさらなるヌクレオチドを付加させ、そして望ましくない生成物と過剰な試薬を除去する工程、および、
c)工程b)を、配列の第2の末端にあるヌクレオチドに対応するヌクレオチド試薬が付加されるまで繰り返す工程。
【0021】
なおさらなる態様においては、本発明により、ガン細胞の増殖を阻害する方法が提供される。この方法には、細胞と、本明細書中に記載される1つ以上の直鎖の標的化ポリヌクレオチドまたはヘアピン型の標的化ポリヌクレオチドまたはそれらの混合物が含まれている組成物とを、細胞内への1つ以上のポリヌクレオチドの取り込みを促進する条件下で接触させる工程が含まれる。
【0022】
さらに別の態様においては、本発明により、ガン細胞においてアポトーシスを促進する方法が提供される。この方法には、細胞と、本明細書中に記載される1つ以上の直鎖の標的化ポリヌクレオチドまたはヘアピン型の標的化ポリヌクレオチドまたはそれらの混合物が含まれている組成物とを、細胞内への1つ以上のポリヌクレオチドの取り込みを促進する条件下で接触させる工程が含まれる。
【0023】
なお別の態様においては、本発明により、哺乳動物組織の中でのガンまたは前ガンの増殖を阻害するための方法が提供される。ここでは、この方法には、組織と、1つ以上の標的遺伝子を含むDNAまたはRNAと相互作用する本発明の阻害性の標的化ポリヌクレオチドとを接触させる工程が含まれる。標的化ポリヌクレオチドは、組織の細胞の中での1つ以上の標的遺伝子の発現を阻害する。この方法のいくつかの実施形態においては、組織は、乳房組織、結腸組織、前立腺組織、皮膚組織、骨組織、耳下腺組織、膵臓組織、腎臓組織、子宮頸組織、リンパ節組織、または卵巣組織である。さらには、阻害性の標的化ポリヌクレオチドは、核酸分子、デコイ分子、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合体化DNA、カプセル化されたDNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、裸のRNA、カプセル化されたRNA、ウイルスRNA,二本鎖RNA、分子、またはそれらの組み合わせである。
【0024】
なおさらなる態様においては、本発明により、本明細書中に記載される直鎖の標的化ポリヌクレオチドまたはヘアピン型の標的化ポリヌクレオチド、またはそれらの2つ以上の混合物の使用が提供される。この場合、個々のポリヌクレオチドは、被験体の中でのガンまたは前ガンの増殖を処置するために有効な薬学的組成物の製造において、標的遺伝子を標的化する。この使用のいくつかの実施形態においては、ガンまたは増殖は、乳房組織、結腸組織、前立腺組織、皮膚組織、骨組織、耳下腺組織、膵臓組織、甲状腺組織、腎臓組織、子宮頸組織、肺組織、リンパ節組織、骨髄の造血組織、または卵巣組織から選択される組織の中で見られる。この使用のさらに別の一般的な実施形態においては、それぞれのポリヌクレオチドの第1のヌクレオチド配列は、以下から構成される:
a)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択された配列を標的化する配列(本明細書中では「標的配列」);
b)項目a)に提供された標的化配列よりも長く、これを含む伸張配列であって、ここでは、伸張配列は標的遺伝子を標的化し、標的化配列は標的配列を標的化する、伸張配列;
c)少なくとも15ヌクレオチドの長さの標的配列を標的化し、選択された標的配列よりも短い配列の断片;
d)5個までのヌクレオチドが選択された標的配列とは異なる、標的化配列;または
e)a)〜d)に提供された配列の相補体。
この使用のなおさらなる実施形態においては、被験体はヒトである。
【0025】
なおさらなる態様においては、本発明により、被験体の中でのガン、腫瘍、または前ガンの増殖を処置するために有効な薬学的組成物の製造における、標的遺伝子のポリペプチドの生産に対して向けられた1つ以上の抗体の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のポリヌクレオチドの様々な実施形態の模式図。パネルA、直鎖のポリヌクレオチドの実施形態。長さは200ヌクレオチド以下であり、15ヌクレオチド以上である。b)においては、特異的な標的化配列がより大きな標的化配列の中に含まれる。d)においては、黒っぽい垂直の棒状の部分は、置換されたヌクレオチドを模式的に示す。パネルB、200ヌクレオチド以下の全長のヘアピンポリヌクレオチドの1つの実施形態。
【図2】ICT−1053(PCDP)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図3】ICT−1052(cMet)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図4】ICT−1052(cMet)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、A549異種移植片の腫瘍の大きさの提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図5】ICT−1052 siRNAもしくはICT−1053 siRNA、または対照siRNAで処理した場合の、培養物中のMDA−MB−435細胞の増殖の阻害の提示。データは、平均値として示される。
【図6】ICT−1052 siRNAもしくはICT−1053 siRNA、または対照siRNAで処理した場合の、培養物中のHCT116ヒト結腸ガン細胞の増殖の阻害の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図7】ICT−1052 siRNAまたは対照siRNAで処理した場合の、培養物中のA549ヒト肺ガン細胞の増殖の阻害の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図8】ICT−1027(GRB2 BP)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図9】ICT−1027 siRNAまたは対照siRNAでの処理に反応したMDA−MB−435細胞の中でのアポトーシスの誘導の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図10】ICT−1051(A−Raf)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図11】ICT−1054(PCDP6)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図12】ICT−1020(Dicer)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図13】ICT−1021(MD2タンパク質)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図14】ICT−1022(GAGE−2)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中で特定された全ての特許、特許出願公開、および特許出願は、それらが一語一句本明細書中に示されているかのように、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。本明細書中で特定された全ての技術的な刊行物もまた、引用により本明細書中に組み入れられる。
【0028】
本明細書中では、冠詞「a」、「an」、および「the」は、単数形として、または複数形としての意味を同等に記述する。これらの冠詞の特定の意味は、それらが使用される状況から明らかである。
【0029】
本明細書中で使用される場合は、用語「腫瘍」は、悪性であるか良性であるかにかかかわらず、全ての新生物細胞の成長と増殖を、そして全ての前ガンおよびガンの細胞ならびに組織をいう。
【0030】
本明細書中で使用される場合は、用語「前ガン」は、悪性腫瘍またはガンに至る可能性がある変化に関係している特徴を有している細胞あるいは組織をいう。
【0031】
本明細書中で使用される場合は、用語「ガン」は、制御されていない増殖、特定の機能の喪失、不死性、高い転移の可能性、抗アポトーシス活性の有意な増大、迅速な成長および増殖速度、ならびに、特定の特徴的な形態学的および細胞性マーカーのような特徴を有している細胞あるいは組織をいう。いくつかの状況においては、ガン細胞は腫瘍の形態であろう。そのような細胞は、動物の中に局所に存在する場合があり、他の状況においては、これらは、独立した細胞(例えば、白血球)として血流の中を循環している場合もある。
【0032】
本明細書中で使用される場合は、用語「標的」配列と、類似する用語および表現は、本発明のポリヌクレオチドがそれに対して向けられるガン細胞の核酸の中に存在するヌクレオチド配列に関する。「標的遺伝子」は、遺伝子の発現のレベルまたは遺伝子産物の活性の調節により、疾患の進行が妨げられるおよび/または緩和される、発現させられた遺伝子をいう。具体的には、本発明においては、標的遺伝子には、本明細書中に記載されるような、内因性の遺伝子およびそれらの変異体が含まれる。
【0033】
標的化ポリヌクレオチドは、a)その構成成分が病原体のゲノムに含まれる特定のサブ配列(標的配列と呼ばれる)に相同であるかまたは同一である配列を含むことによるか、あるいは、b)それ自体が標的配列と相同であるかまたは同一である配列を含むことによるかのいずれかにより、ガン細胞の核酸配列を標的化する。細胞内で有効である標的化ポリヌクレオチドは、a)およびb)で特定されたそれぞれの鎖のうちの一方から構成される二本鎖の分子である。そのようにガン細胞の核酸配列を標的化する任意の二本鎖の標的化ポリヌクレオチドは、RNA干渉の表現形に従って標的配列とハイブリダイズし、それによりRNA干渉を開始する能力を有すると考えられる。
【0034】
被験体の中の標的遺伝子は、例えば、様々なGenBank登録された物質、および類似するデータベースの中の物質において特定された野生型配列と同じ配列を有している場合がある。通常は、そのようなデータベースは公に利用することができる。しかし、標的遺伝子の発現を抑制するために使用される干渉RNAは、その標的に対して完全には相補的ではない場合があり、また、標的は、既存のGenBank登録番号が割り当てられた野生型配列であると考えられる配列とは異なっている場合もある。例えば、標的遺伝子には、1つ以上の単一のポリヌクレオチド多形が含まれる場合があり、それにより、GenBank登録番号の中の配列とはわずかに異なる場合がある。加えて、標的遺伝子は、エキソンの別な方法でのスプライシングの産物であるmRNAを生じる場合があり、これによっては、染色体遺伝子よりも含まれているエキソンが少ない成熟mRNAが生じ得る。このような別な方法でスプライシングされたmRNAもまた、野生型遺伝子に対して向けられたRNAi種の標的であり得る。本発明の開示においては、全てのそのような偶然性が、標的遺伝子の概念に含まれ、そして野生型配列を標的化するように開発された任意のRNAi種が、そのような変化したかまたは修飾された転写物をおそらく標的化し、そして標的化配列の概念に含まれる。
【0035】
一般的には、「遺伝子」は、調節機能、触媒機能のいずれかを有しており、そして/またはタンパク質をコードするRNAに転写される能力があるゲノムの中の領域である。真核生物遺伝子は、通常は、イントロンとエキソンを有しており、これは、成熟タンパク質の別のバージョンをコードする様々なRNAスプライシング変異体を生じるように組織され得る。当業者は、本発明に、スプライシング変異体、対立遺伝子変異体、および別のプロモーター部位または別のポリアデニル化部位が原因で生じる転写物を含む、見られ得る全ての内因性遺伝子が含まれることを理解するであろう。内因性の遺伝子は、本明細書中に記載される場合は、変異した内因性の遺伝子である場合もある。この場合、変異は、コード領域の中にある場合も、また、調節領域の中にある場合もある。
【0036】
「アンチセンスRNA」:真核生物においては、RNAポリメラーゼは、構造遺伝子の転写を触媒してmRNAを生じさせる。DNA分子はRNAポリメラーゼの鋳型を含むように設計することができる。この場合、RNA転写物は好ましいmRNAの配列に相補的な配列を有する。RNA転写物は「アンチセンスRNA」と呼ばれる。アンチセンスRNA分子はmRNAの発現を阻害することができる(例えば、Rylovaら、Cancer Res,62(3):801−8,2002;Shimら、Int.J.Cancer,94(1):6−15,2001)。
【0037】
「アンチセンスDNA」または「DNAデコイ」または「デコイ分子」:第1の核酸分子に関して、第2のDNA分子または、第1の分子もしくはその一部の相補配列であるかまたは相補配列に相同である配列を用いて作製された第2のDNA分子または第2のキメラ核酸分子は、第1の分子のアンチセンスDNAまたはDNAデコイまたはデコイ分子と呼ばれる。用語「デコイ分子」にはまた、一本鎖または二本鎖であり得、DNAまたはPNA(ペプチド核酸)を含み(Mischiatiら、Int.J.Mol.Med.,9(6):633−9,2002)、そしてタンパク質結合部位(好ましくは、調節タンパク質の結合部位、より好ましくは、転写因子の結合部位)の配列を含む核酸分子も含まれる。アンチセンス核酸分子(アンチセンスDNAおよびデコイDNA分子を含む)の利用は当該で分野で公知である(例えば、Morishitaら、Ann.NY Acad.Sci.,947:294−301,2001;Andratschkeら,Anticancer Res,21:(5)3541−3550,2001)。
【0038】
「安定化させられたRNA」:安定化させられたRNAi、siRNA、またはshRNAは、本明細書中に記載される場合は、エキソヌクレアーゼ(RNaseを含む)による消化に対して、例えば、リボース糖の3’位置で修飾された(例えば、上記で定義された置換されたか未置換のアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、またはアルキニルオキシ基を含めることによる)か、または保護を得るためにその構造の中の別の場所で修飾されたヌクレオチドアナログを使用して保護される。RNAi、siRNA、またはshRNAはまた、3’−3’−連結2ヌクレオチド構造(Ortigaoら,Antisense Researcli and Development 2:129−146(1992))および/または2つの修飾されたリン結合(例えば、2つのホスホロチオエート結合)を含めることによって、エキソヌクレアーゼによる3’末端での消化に対して安定化させることもできる。
【0039】
「カプセル化された核酸」(カプセル化されたDNAまたはカプセル化されたRNAを含む)は、マイクロスフェアまたはマイクロ粒子の中にある、比較的非免疫原性の材料でコーティングされた、選択的酵素消化に供される複数の材料でコーティングされた核酸分子をいい、例えば、複数の材料(例えば、ゼラチンと硫酸コンドロイチン)の複合コアセルベーションによって合成されたマイクロスフェアまたはマイクロ粒子をいう(例えば、米国特許第6,410,517号を参照のこと)。マイクロスフェアまたはマイクロ粒子の中のカプセル化された核酸は、そのコード配列の発現を誘導するその能力を保つ方法でカプセル化される(例えば、米国特許第6,406,719号を参照のこと)。
【0040】
「阻害剤」は、特定の機能を阻害および/またはブロックする分子をいう。特定の機能を阻害および/またはブロックする能力を有している任意の分子は、本明細書中で記載される場合には、「試験分子」であり得る。例えば、標的遺伝子の腫瘍形成機能または抗アポトーシス活性について言及される場合には、そのような分子は、特定の標的遺伝子のインビトロおよびインビボアッセイを使用して同定することができる。阻害剤は、標的遺伝子の活性を部分的または完全にブロックする、それらの活性を低下させる、妨害する、または遅らせる、あるいは、その細胞性応答を脱感作させる化合物である。これは、標的遺伝子産物(すなわち、タンパク質)に対する、直接または他の中間体分子を介する結合によって行われ得る。標的遺伝子の遺伝子産物の活性をブロックする(標的遺伝子の腫瘍形成機能または抗アポトーシス活性の阻害を含む)アンタゴニストまたは抗体(例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体)は、そのような阻害剤と考えられる。本発明の阻害剤は、siRNA、RNAi、shRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、デコイ分子、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合体化DNA、カプセル化されたDNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、裸のRNA、カプセル化されたRNA、ウイルスRNA、二本鎖RNA、RNA干渉を生じることができる分子、またはそれらの組み合わせである。本発明の阻害剤のグループにはまた、標的遺伝子の遺伝子修飾されたバージョン(例えば、活性が変化したバージョン)も含まれる。したがって、このグループには、自然界に存在しているタンパク質、さらには、合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、抗体、小さい化学的分子などが含まれる。
【0041】
「阻害剤についてのアッセイ」は、例えば、インビトロで、細胞内で、標的遺伝子を発現させる工程、推定される阻害剤化合物を加える工程、その後、標的遺伝子の活性または転写に対する機能的効果を決定する工程を含む実験手順をいう。標的遺伝子を含むかまたは標的遺伝子を含むと予想される試料は、可能性のある阻害剤で処理される。これらの阻害剤には、核酸をベースとする分子(例えば、siRNA、アンチセンス、二本鎖RNA、およびDNA、二本鎖RNA/DNA、リボザイム、およびトリプレックスなど);およびタンパク質をベースとする分子(例えば、ペプチド、合成のリガンド、短縮型の部分的なタンパク質、可溶性受容体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、イントラボデイー、および単鎖抗体など);ならびに、様々な形態の小さい化学的分子が含まれる。阻害または変化の程度は、対照試料に対して目的の試料による活性の測定値を比較することによって試験される。閾値は阻害を評価するために確立される。例えば、標的遺伝子産物であるポリペプチドの阻害は、適切な対照と比較した標的遺伝子活性の値が80%以下である場合に、得られたと考えられる。
【0042】
本明細書中で使用される場合には、第1の配列またはサブ配列がその配列またはサブ配列のそれぞれの位置で第2の配列またはサブ配列と同じ塩基を有している場合に、第1の配列またはサブ配列は、第2の配列またはサブ配列に対して「同一である」、または「100%の同一性」を有する、または、100%同一の概念を含む用語もしくは表現によって記載される。同一性の決定においては、任意のT(チミジン)またはその任意の誘導体、あるいはU(ウリジン)またはその任意の誘導体は互いに等価であり、したがって、同一である。同一である第1の配列と第2の配列については、ギャップは認められない。
【0043】
標的化ポリヌクレオチドまたはその相補体の配列は、標的配列と完全に同じである場合があり、また、配列の特定の部位に適合していない塩基が含まれる場合もある。不適合の取り込みは本明細書中に十分に記載される。理論に束縛されることは望ましくないが、不適合の取り込みにより、問題の特定の標的配列についてのRNA干渉の表現形を最適化させるための生理学的条件下での意図される程度のハイブリダイゼーションの安定性が提供されると考えられる。同一性の程度により、その塩基が互いに同じである2つの配列の中の位置の割合が決定される。「配列同一性の割合」は以下に示されるように計算される:
【0044】
【化1】
互いに100%未満の同一性である配列は、互いに「類似」しているかまたは「相同」である。相同性の程度または類似性の割合(%)は、2つの配列またはサブ配列の間での同一性の割合(%)に関する同義語である。例えば、互いに少なくとも60%の同一性、または好ましくは少なくとも65%の同一性、または好ましくは少なくとも70%の同一性、または好ましくは少なくとも75%の同一性、または好ましくは少なくとも80%の同一性、またはより好ましくは少なくとも85%の同一性、またはより好ましくは少なくとも90%の同一性、またはなおさらに好ましくは少なくとも95%の同一性を示す2つの配列は、互いに「類似」しているか、または「相同」である。あるいは、siRNA分子のオリゴヌクレオチド配列に関しては、5個以下の塩基、または4個以下の塩基、または3個以下の塩基、または2個以下の塩基、または1個の塩基が異なる2つの配列は、互いに「類似」しているかまたは「相同」であると言われる。
【0045】
加えて、「同一性」および「類似性」は、以下に記載される方法を含むがこれらに限定されない公知の方法によって容易に計算することができる:Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.編,Oxford University Press,New York,1988; Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.編,Academic Press,New York,1993; Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.編,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;および、Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.編,M Stockton Press.New York,1991;およびCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J. Applied Math.,48:1073(1988)。比較のための配列のアラインメントの方法は当該分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.,2:482,1981の局所相同性アルゴリズムによって;Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443,1970の相同性整列アルゴリズムによって;Pearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:2444、1988の類似性の検索の方法によって;これらのアルゴリズムのコンピューター処理によって(Intelligenetics,Mountain View,CaliforniaによるPC/GeneプログラムのCLUSTAL;Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group(GCG),7 Science Dr.,Madison,Wisconsin,USAのGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTAを含むがこれらに限定されない;CLUSTALプログラムは、Higgins and Sharp,Gene,73;237−244,1988;Corpetら、Nucleic Acids Research,16:881−90,1988;Huangら、Computer Applications in the Biosciences,8:1−6,1992;およびPearsonら、Methods in Molecular Biology,24:7−331,1994に詳細に記載されている)を含むがこれらに限定されない)行うことができる。データベースの類似性の検索のために使用することができるプログラムのBLASTファミリーとしては、以下が挙げられる:ヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチド質問配列についてのBLASTN;タンパク質データベース配列に対するタンパク質質問配列についてのBLASTX;タンパク質データベース配列に対するタンパク質質問配列についてのBLASTP;ヌクレオチドデータベース配列に対するタンパク質質問配列についてのTBLASTN;およびヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチド質問配列についてのTBLASTX。Current Protocols in Molecular Biology,第19章,Ausubelら編、Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York,1995を参照のこと。
【0046】
他の場所に明記されない限りは、本明細書中で提供される配列同一性/類似性の値は、プログラムのBLAST 2.0 suiteまたはそれらの後継機を使用して、デフォルトパラメーターを使用して得られた値をいう。Altschulら、Nucleic Acids Res,2;3389−3402,1997。これらのパラメーターのデフォルト設定を将来の必要性に応じて容易に変更することができることが理解される。
【0047】
用語「実質的に同一」または「相同」は、それらの様々な文法上の形態で、ポリヌクレオチドに、記載されるアラインメントプログラムのうちの1つを使用して参照配列と比較して所望される同一性(例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは少なくとも70%の同一性、より好ましくは少なくとも80%の同一性、なおより好ましくは少なくとも90%の同一性、なおさらに好ましくは少なくとも95%)を有している配列が含まれることを意味する。
【0048】
本明細書中で使用される場合は、用語「単離された」および類似の用語は、核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドを記載するために使用される場合には、その天然の状態または本来の状態から取り出されている組成物をいう。したがって、自然界にそれが存在する場合には、これは、その本来の環境から取り出されている。これが合成によって調製されている場合には、これは、合成によって得られた最初の生成物の混合物からこれが取り出されている。例えば、その自然な状態において生存している生物体の中に本来存在する自然界に存在しているポリヌクレオチドは、「単離され」ていないが、その自然な状態においてそれと一緒に存在している少なくとも1つの材料とは分離された同じポリヌクレオチドは、この用語が本明細書中で使用される場合には、「単離されている」。一般的には、少なくとも1つの一緒に存在している物質の除去は、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドの「単離」を構成する。多くの場合においては、いくつかの、多くの、またはほとんどの一緒に存在している物質が、核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドを単離するために除去され得る。インビトロでの合成のプロセスまたは化学合成のプロセスの産物である、核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドは、合成プロセスの結果として、原則的に単離されている。重要な実施形態においては、そのような合成の産物は、使用された試薬および前駆体物質、そしてプロセスによって生じた副産物を除去するために処理される。
【0049】
組成物(例えば、処方物、トランスフェクション組成物、薬学的組成物、または化学反応もしくは酵素反応のための組成物もしくは溶液であり、これらは、自然界には存在しない組成物である)の中に取り込まれたポリヌクレオチドは、これが本明細書中で使用される場合は、その用語の意味において、依然、単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。
【0050】
本明細書中で使用される場合は、「核酸」または「ポリヌクレオチド」、ならびに類似する用語および表現は、自然界に存在しているヌクレオチドからなるポリマー、ならびに、合成のまたは修飾されたヌクレオチドからなるポリマーに関する。したがって、本明細書中で使用される場合は、RNAであるポリヌクレオチド、またはDNAであるポリヌクレオチド、またはデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含むポリヌクレオチドには、自然界に存在している部分(例えば、自然界に存在している塩基と、リボースもしくはデオキシリボース環)が含まれる場合があり、また、これらは、以下に記載される部分のような合成の部分または修飾された部分から構成される場合もある。本発明において使用されるポリヌクレオチドは一本鎖である場合があり、また、塩基対合した二本鎖の構造である場合も、またさらに、3本の鎖が塩基対合した構造である場合もある。
【0051】
核酸およびポリヌクレオチドは、20ヌクレオチド以上の長さ、または30ヌクレオチド以上の長さ、または50ヌクレオチド以上の長さ、または100ヌクレオチド以上の長さ、または1000ヌクレオチド以上の長さ、または何万もしくはそれ以上、または何十万もしくはそれ以上の長さである場合もある。siRNAは本明細書中で定義されるポリヌクレオチドであり得る。本明細書中で使用される場合は、「オリゴヌクレオチド」およびこれをベースとする類似する用語は、自然界に存在しているヌクレオチドからなる短いポリマー、さらには、すぐ前の段落に記載されたような、合成のヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチドからなるポリマーをいう。オリゴヌクレオチドは、10ヌクレオチド以上の長さ、または15、または16、または17、または18、または19、または20ヌクレオチド以上の長さ、または21、または22、または23、または24ヌクレオチド以上の長さ、または25、または26、または27、または28、または29、または30ヌクレオチド以上の長さ、35以上、40以上、45以上、約50ヌクレオチドまでの長さであり得る。siRNAの中で標的化配列として使用されるオリゴヌクレオチド配列は、15から30ヌクレオチドの間のヌクレオチドの任意の数を有し得る。多くの実施形態においては、siRNAは、21から25ヌクレオチドの間の任意の数のヌクレオチドを有し得る。オリゴヌクレオチドは化学合成される場合があり、そして、siRNA、PCRプライマー、もしくはプローブとして使用される場合がある。
【0052】
先の段落で提供された大きさの範囲の重複が原因で、用語「ポリヌクレオチド」と「オリゴヌクレオチド」は、本発明のsiRNAについて言及される場合には、本明細書中では同義的に使用される場合があることが理解される。
【0053】
本明細書中で使用される場合は、「ヌクレオチド配列」、「オリゴヌクレオチド配列」、または「ポリヌクレオチド配列」、および類似する用語は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが有している塩基の配列と、さらには、その配列を持つオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド構造の両方を互換的にいう。ヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列はさらに、塩基の配列が、当該分野で通常使用されているような塩基を指定する文字の特定の並びの記載または記述によって定義される、任意の天然のもしくは合成のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドをいう。
【0054】
「ヌクレオシド」は、通常、生化学、分子生物学、遺伝学のような分野、および本発明の技術分野に関係がある類似する分野の当業者によって、プリンまたはピリミジン塩基に対してグリコシド結合によって連結させられた単糖を含むと理解されている。そして「ヌクレオチド」には、糖の3’または5’位置(ペントースについて)に通常結合しているが、糖の他の位置に存在する場合もある、少なくとも1つのリン酸基を有しているヌクレオシドが含まれる。ヌクレオチド残基は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの中の連続する位置を占める。ヌクレオチドの修飾または誘導は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの中の任意の連続する位置で行われ得る。全ての修飾されたかまたは誘導されたオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが本発明に含まれ、特許請求の範囲の範囲内にある。修飾または誘導は、リン酸基、単糖、または塩基の中で行われる場合もある。
【0055】
限定ではない例として、以下の記載により、特定の修飾されたかまたは誘導されたヌクレオチドが提供される。これらは全て、本発明のポリヌクレオチドの範囲内にある。単糖は、例えば、リボースまたはデオキシリボース以外のペントースまたはヘキソースであることによって修飾される場合がある。単糖はまた、ヒドロキシル基をヒドロ基もしくはアミノ基で置換することによって、さらには、別のヒドロキシル基をアルキル化するかまたはエステル化することによって、などにより修飾される場合もある。2’位置での置換(例えば、2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−アリール、2’−O−アミノアルキル、または2’−デオキシ−2’−フルオロ基)により、オリゴヌクレオチドに対する高いハイブリダイゼーション特性が提供される。
【0056】
オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの中の塩基は、「未修飾の」塩基である場合も、また「天然の」塩基である場合もあり、これには、プリン塩基であるアデニン(A)とグアニン(G)、そしてピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)が含まれる。加えて、これらは、修飾または置換を有している塩基であり得る。修飾された塩基の限定ではない例としては、以下のような他の合成の塩基および天然の塩基が挙げられる:ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトシキウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、ウェイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリン、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよびその他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよびその他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、5−プロピルウラシル、5−プロピニル−シトシン、およびピリミジン塩基の他のアルキル誘導体、6−アゾ−ウラシル、6−アゾ−シトシン、6−アゾ−チミン、5−ウラシル(シュ−ドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ−、8−チオール−、8−チオアルキル−、8−ヒドロキシル−、およびその他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよびその他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−フルオロ−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニン。さらなる修飾された塩基としては、以下が挙げられる:三環式ピリミジン(例えば、フェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)、G−クランプ(例えば、置換されたフェノキサジンシチジン(例えば、9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン))、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[4,5−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)。修飾された塩基にはまた、プリンまたはピリミジンが他の複素環(例えば、7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジン、および2−ピリドン)で置換されたものも含まれ得る。さらなる塩基としては、米国特許第3,687,808号に開示されている塩基、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,858−859頁,Kroschwitz,J.I.編,John Wiley & Sons,1990に開示されている塩基、Englischら、Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613に開示されている塩基、ならびに、Sanghvi,Y.S.,第15章,Antisense Research and Applications,289−302頁,Crooke,S.T.and Lebleu,B.編,CRC Press,1993に開示されている塩基が挙げられる。これらの塩基のうちの特定のものは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増加させるために特に有用である。これらには、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含む、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンおよびN−2、N−6およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、および5−プロピニルシトシンを含む)が含まれる。5−メチルシトシン置換は、核酸二本鎖の安定性を0.6〜1.2℃高めることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.編,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,276−278頁)、そしてこれが現在のところ好ましい塩基置換であり、特に、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせられた場合にさらに好ましい。引用により本明細書中に組み入れられる米国特許第6,503,754号および同第6,506,735号、ならびにそれらの中で引用されている参考文献を参照のこと。修飾にはさらに、以下が含まれる:ポリアミン結合オリゴヌクレオチドが記載されている、米国特許第5,138,045号および同第5,218,105号に開示されている修飾;ホスホロチオエートを含むキラルリン結合が取り込まれているオリゴヌクレオチドが記載されている、米国特許第5,212,295号、同第5,521,302号、同第5,587,361号、および同第5,599,797号に開示されている修飾;修飾された骨格を有しているオリゴヌクレオチドが記載されている、米国特許第5,378,825号、同第5,541,307号、および同第5,386,023号;修飾されたヌクレオ塩基が記載されている、米国特許第5,457,191号および同第5,459,255号;ペプチド核酸が記載されている米国特許第5,539,082号;β−ラクタム骨格を有しているオリゴヌクレオチドが記載されている米国特許第5,554,746号;オリゴヌクレオチドの合成が開示されている米国特許第5,571,902号;アルキルチオヌクレオシドが開示されている米国特許第5,578,718号;2’−O−アルキルグアノシン、2,6−ジアミノプリン、および関連する化合物が記載されている米国特許第5,506,351号;N−2置換プリンを有しているオリゴヌクレオチドが記載されている米国特許第5,587,469号;3−デアザプリンを有しているオリゴヌクレオチドが記載されている米国特許第5,587,470号;結合させられた4’−デスメチルヌクレオシドアナログが記載されている、米国特許第5,223,168号および同第5,608,046号;骨格が修飾されたオリゴヌクレオチドアナログが記載されている、米国特許第5,602,240号および同第5,610,289号;特に、2’−フルオロ−オリゴヌクレオチドの合成方法が記載されている、米国特許第6,262,241号および同第5,459,255号。
【0057】
ヌクレオチド間の結合は、一般的には、3’−5’リン酸結合であり、これは、自然なホスホジエステル結合、ホスホチオエステル結合、およびなお他の合成の結合であり得る。ホスホロチオエート骨格を含むオリゴヌクレオチドはヌクレアーゼ安定性を高める。修飾された骨格の例としては、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル、および他のアルキルホスホネート(3’−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネート、およびキラルホスホネートを含む)、ホスフィネート、ホスホルアミデート(3’−アミノホスホルアミデート、およびアミノアルキルホスホルアミデートを含む)、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェート、およびボラノホスフェートが挙げられる。さらに別の結合としては、ホスホトリエステル、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋されたホスホルアミデート、架橋されたメチレンホスホネート、架橋されたホスホロチオエート、およびスルホンヌクレオチド間結合が挙げられる。他のポリマー架橋としては、これらの2’−5’結合アナログが挙げられる。引用により本明細書中に組み入れられる米国特許第6,503,754号および同第6,506,735号、ならびにそれらの中で引用されている参考文献を参照のこと。
【0058】
上記において説明された修飾を含む任意の修飾を、本発明の標的化ポリヌクレオチドに容易に取り込むことができ、これらは、本発明の標的化ポリヌクレオチドの範囲に含まれる。任意の修飾されたヌクレオチドの使用は、当業者に理解されるように、同じ塩基対合特性を有している自然界に存在しているヌクレオチドの使用と同等である。全ての等価な修飾されたヌクレオチドが、本明細書中に開示され、特許請求の範囲において請求される本発明の範囲に含まれる。
【0059】
本明細書中および特許請求の範囲の中で使用される場合は、用語「相補体」、「相補的」、「相補性」、および類似する用語と表現は、生化学、分子生物学、遺伝学のような分野、および本発明の分野に関係がある類似する分野の当業者によって通常理解されるように、それらの塩基が1対1で相補的な塩基対合を形成する2つの配列をいう。相補的な配列を有している2つの一本鎖(ss)ポリヌクレオチドは、二本鎖(ds)ポリヌクレオチドを形成させるための適切な緩衝液および温度条件下で、互いにハイブリダイズすることができる。限定ではない例として、自然界に存在している塩基が考えられる場合には、Aと(TまたはU)は互いに相互作用し、そしてGとCが互いに相互作用する。他の場所に明記されていない限りは、「相補的」は、「完全な相補性」を現すように意図され、これはすなわち、2つのポリヌクレオチド鎖が互いにアラインメントされた場合に、一方の鎖の中の連続する塩基の配列の中のそれぞれの塩基が、向かい合う鎖上の同じ長さの連続する塩基の配列の中の相互作用する塩基に対して相補的である部分が、鎖の中に少なくとも一部存在するであろうことを意図する。
【0060】
本明細書中で使用される場合は、「ハイブリダイズする」、「ハイブリダイゼーション」、および類似する用語と表現は、相補的な配列を有している鎖が互いに相互作用を生じることによる、核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド二本鎖を形成するプロセスをいう。この相互作用は、1つの対を形成するために特異的に相互作用するそれぞれの鎖の上の相補的な塩基によって起こる。互いにハイブリダイズする鎖の能力は、以下に記載されるように様々な条件に依存する。核酸の鎖は、それぞれの鎖の中の十分な数の対応する位置が、互いに相互作用できるヌクレオチドによって占められている場合に、互いにハイブリダイズする。互いにハイブリダイズするポリヌクレオチド鎖は、完全に相補的である場合がある。あるいは、2つのハイブリダイズしたポリヌクレオチドは、互いに「実質的に相補的」である場合もあり、これは、これらが適合していない塩基を少数有していることを示している。自然界に存在している塩基と、本明細書中に記載されたもののような修飾された塩基はいずれも、相補的な塩基対を形成することに関与している。例として生化学および分子生物学を含むがこれらに限定されない本発明の分野の当業者によっては、二本鎖を形成する鎖の配列は、特異的にハイブリダイズできるためには互いに必ずしも100%の相補性を有している必要はないことが理解される。
【0061】
本明細書中で使用される場合は、「ヌクレオチド突出」および類似する用語および表現は、二本鎖の一方の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を越えて伸びているか、または変更すべきところが変更されている場合に、二本鎖のポリヌクレオチドの二本鎖構造を超えて伸びている対合していないヌクレオチド(単数または複数)をいう。逆に、「平滑」または「平滑末端」、および類似する用語と表現は、二本鎖の末端に対合していないヌクレオチドがない、すなわち、ヌクレオチドの突出がない二本鎖をいう。
【0062】
本明細書中で使用される場合は、「アンチセンス鎖」および類似する用語と表現は、標的配列に対して実質的に相補的である領域を含む、ポリヌクレオチド二本鎖の1つの鎖をいう。本明細書中で使用される場合は、用語「相補性領域」は、配列(例えば、本明細書中で定義されるような標的配列)に対して実質的に相補的であるアンチセンス鎖上の領域をいう。相補性領域が標的配列に対して完全には相補的でない場合には、不適合は、末端領域においては一般的に寛容され、そして存在する場合には、通常、5’および/または3’末端の6、5、4、3、または2ヌクレオチド以内である。
【0063】
用語「センス鎖」および類似する用語と表現は、本明細書中で使用される場合は、標的配列のアンチセンス鎖の1つの領域に対して相補的である領域を含むポリヌクレオチド二本鎖の1つの鎖をいう。したがって、センス鎖は、標的配列と同じであるかまたは実質的に類似する領域を有する。
【0064】
本明細書中で使用される場合は、「断片」および類似する用語と表現は、参照の全長配列よりも短い、核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドの部分をいう。断片の塩基配列は、参照の対応する部分の配列から変化していない;参照の対応する部分と比較して、断片の中には挿入または欠失はない場合がある。本明細書中で意図されるように、核酸またはポリヌクレオチドの断片(例えば、オリゴヌクレオチド)は、15塩基以上の長さ、または16以上、17以上、18以上、または19以上、または20以上、または21以上、または22以上、または23以上、または24以上、または25以上、または26以上、または27以上、または28以上、または29以上、または30以上、または50以上、または75以上、または100塩基以上の長さであり、全長の配列よりも1塩基短い長さまでの長さである。
【0065】
本明細書中で使用される場合は、用語「病理学的発現」および「病原性発現」、ならびに類似する表現は、いずれも「病理学的発現」と言われ、そして病理学的状態または病理学的症状と関係がある遺伝子のディファレンシャルな発現をいう。したがって、病理学的発現は、疾患ではない症状または非病理学的症状において見られる発現レベルとは異なる遺伝子の発現をいう。本開示においては、病理学的発現は、特に、標的遺伝子(すなわち、RNAi治療の標的である遺伝子)として同定された遺伝子をいう。したがって、病理学的発現は、一般的には、遺伝子の過剰発現と遺伝子の低発現の両方をいうが、RNAi治療によって標的化される遺伝子の病理学的発現は、通常、過剰発現であり、RNAi治療は、過剰発現を阻害するかまたは低下させることを目的として行われる。
【0066】
全長の遺伝子またはRNAにはさらに、任意の自然界に存在しているスプライシング変異体、対立遺伝子変異体、他のオルタナティブ転写物、自然界に存在している全長の遺伝子と同じもしくは類似する機能を示すスプライシング変異体、ならびに、得られるRNA分子が含まれる。遺伝子の断片は遺伝子に由来する任意の部分であり得、これは、機能的ドメイン(例えば、触媒ドメイン、DNA結合ドメインなど)を提示する場合も、また提示しない場合もある。
【0067】
「相補的DNA」(cDNA)は、mRNAの配列に相補的な配列を生じる逆転写酵素によりmRNA鋳型からコピーされた一本鎖のDNA分子である。当業者はまた、この用語「cDNA」を、そのような一本鎖のDNA分子とその相補的DNA鎖を含む二本鎖のDNA分子をいうためにも使用する。
【0068】
用語「動作可能であるように連結された」および類似する用語と表現は、調節エレメントと遺伝子またはそのコード領域との間の連結部分を記載するために使用される。すなわち、遺伝子発現は、通常、構成的もしくは誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメント、およびエンハンサーを含む、特定の転写調節エレメントによって支配される。したがって、そのような遺伝子またはコード領域は、調節エレメント「に対して動作可能であるように連結させられた(operably linked to)」、または調節エレメント「に対して動作可能であるように連結させられた(operatively linked to)」、または調節エレメント「と動作可能であるように結合させられた」といわれ、この遺伝子またはコード領域が調節エレメントによって制御されるかまたは調節エレメントによる影響を受けることを意味する。
【0069】
本明細書中で使用される場合は、用語「干渉する」、「サイレンシングさせる」、および「〜の発現を阻害する」、ならびに類似する用語および表現は、これらが標的遺伝子について言及する限りにおいては、部分的、または原則として完全のいずれかである、標的の発現の抑制あるいは阻害をいう。多くの場合、このような干渉は、抑制された表現形として現れる。様々な場合において、標的遺伝子の発現は、本発明の標的化ポリヌクレオチドの投与によって、少なくとも約10%、または約20%、または約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、または約80%抑制される。好ましい実施形態においては、標的遺伝子は、標的化ポリヌクレオチドを投与することにより、少なくとも約85%、または約90%、または約95%、または実質的には完全に抑制される。そのような干渉は、細胞培養物中の細胞の中、または組織外植片の中、あるいは被験体の中でインビボで現れ得る。
【0070】
本明細書中で使用される場合は、用語「処置」および類似する用語と表現は、疾患もしくは症状、疾患の兆候、または疾患に進行する素因を有している被験体に対する治療薬の適用または投与、あるいは、被験体から単離された組織もしくは細胞株に対する治療薬の適用または投与をいう。処置は、その回復もしくは治癒を促すため、または疾患、疾患の兆候、もしくは疾患に進行する素因を寛解させる、緩和する、変化させる、矯正する、改善する、好転させる、もしくは影響を与えることを目的として行われる。
【0071】
本明細書中で使用される場合は、表現「治療有効量」および「予防有効量」は、それぞれ、疾患の処置において治療的利点を、または、疾患の予防を提供するかもしくは疾患の重篤度を下げる効果を提供する量をいう。治療上有効である特定の量は、処置された被験体における反応の評価を使用して、かかりつけの医師によって容易に決定され得、疾患の性質、被験体の病歴と年齢、疾患の病期、および他の治療薬の投与のような当該分野で公知の要因に応じて異なり得る。
【0072】
本明細書中で使用される場合は、「薬学的組成物」は、薬学的有効量の標的化ポリヌクレオチドと薬学的に許容される担体を含む組成物をいう。本明細書中で使用される場合は、「薬学的有効量」、「治療有効量」、または単に「有効量」は、意図される薬理学的、治療的、または予防的結果を得るために有効な阻害性ポリヌクレオチドの量をいう。例えば、所定の臨床的処置が、疾患または障害と関係している臨床的パラメーターの少なくとも最小の測定可能な変化が存在する場合に有効であると考えられる時は、その疾患または障害の処置のための薬剤の治療有効量は、少なくともパラメーターの変化の程度に影響を与えるために必要な量である。
【0073】
用語「薬学的に許容される担体」は、少なくとも、生理学的に許容され、かつ、監督官庁によって承認された治療薬の投与のための組成物をいう。
【0074】
ヌクレオチドはまた、標識を持つように修飾される場合もある。例えば、蛍光標識またはビオチン標識を有しているヌクレオチドを、Sigma(St.Louis,MO)から入手することができる。
【0075】
RNA干渉
本発明によれば、増殖および/または転移を促進するガン細胞中の標的の遺伝子発現が、RNA干渉によって弱められる。具体的には、本発明において標的化される遺伝子としては、ICT−1052、ICT−1053、ICT−1027、ICT−1051、ICT−1054、ICT−1020、ICT−1021、およびICT−1022と指定された遺伝子が挙げられる。標的遺伝子の転写産物は、15から30ヌクレオチドの間の任意の数のヌクレオチドを含み、または多くの場合には、21から25ヌクレオチドの間の任意の数のヌクレオチドを含む標的の少なくとも1つのセグメントに相補的な特異的な二本鎖siRNAヌクレオチド配列によって細胞内に標的化させられる。標的は、5’非翻訳(UT)領域の中に存在する場合があり、コード配列の中に存在する場合があり、また、3’UT領域の中に存在する場合もある。例えば、PCT国際公開第00/44895号、同第99/32619号、同第01/75164号、同第01/92513号、同第01/29058号、同第01/89304号、同第02/16620号、および同第02/29858号(これらはそれぞれ、本明細書中でそれらの全体が引用により組み入れられる)を参照のこと。
【0076】
本発明の方法によれば、ガン細胞遺伝子の発現、およびそれによるガン細胞の複製は、siRNAを使用して抑制される。本発明の標的化ポリヌクレオチドにはsiRNAオリゴヌクレオチドが含まれる。siRNAは、ガン細胞標的配列と同じであるかまたは類似するヌクレオチド配列の化学合成によって調製することができる。例えば、Tuschl,Zamore,Lehmann,Bartel and Sharp(1999),Genes & Dev.13:3191−3197(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと。あるいは、標的化siRNAは、標的化ポリヌクレオチド配列を使用して、例えば、細胞を含まないシステム(例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)抽出物であるがこれに限定されない)の中でガン細胞のリボポリヌクレオチド配列を消化することによるか、または、組み換え体である二本鎖のガン細胞cRNAの転写によって得ることができる。
【0077】
有効なサイレンシングは、通常、選択された標的配列に相補的な15〜30ntの鎖(すなわち、アンチセンス)と15〜30ntの同じ長さのセンス鎖からなるsiRNA二本鎖を用いて観察される。多くの実施形態においては、siRNA対合二本鎖のそれぞれの鎖はさらに、3’末端に1個、2個、3個、または4個の対合していないヌクレオチドの突出を有する。一般的な実施形態においては、突出の大きさは2ntである。3’突出の配列は、siRNA標的の認識についての特異性に、さらに小さな貢献をする。1つの実施形態においては、3’突出の中のヌクレオチドはリボヌクレオチドである。別の実施形態においては、3’突出の中のヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドである。3’突出において3’デオキシヌクレオチドを使用することにより、高い細胞内安定性が提供される。
【0078】
標的化配列を含む本発明の組み換え体発現ベクターは、細胞内に導入されると、細胞増殖および/または転移に関係しているガン細胞中の遺伝子を標的化するsiRNA配列を含むRNAを提供するように処理される。そのようなベクターは、標的化配列の発現を可能にする様式でガン細胞の標的化配列に隣接している動作可能であるように連結された調節配列を含む発現ベクターの中にクローニングされたDNA分子である。ベクターからは、ガン細胞のRNAに対してアンチセンスであるRNA分子が最初のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの3’プロモーター配列)によって転写させられ、そしてガン細胞のRNA標的のセンス鎖であるRNA分子が第2のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5’プロモーター配列)によって転写させられる。その後、センス鎖とアンチセンス鎖がインビボでハイブリダイズして、遺伝子のサイレンシングのためのガン細胞RNA分子を標的化するsiRNA構築物が生じる。あるいは、2つの別の構築物を利用して、siRNA構築物のセンス鎖とアンチセンス鎖をつくることができる。さらに、クローニングされたDNAは、ヘアピン型の二次構造を有している転写物をコードすることができ、この場合、1つの転写物は標的遺伝子(単数または複数)に由来するセンス配列と相補的なアンチセンス配列の両方を有する。この実施形態の一例においては、ヘアピン型のRNAi転写産物には、標的遺伝子全体またはその一部に類似している第1の配列と、第1の配列に相補的な第2の配列が含まれ、これらはヘアピン型の二本鎖を形成するように配置される。別の例においては、ヘアピン型のRNAi産物はsiRNAである。ベクター中のガン細胞の配列に隣接している調節配列は同じである場合があり、また、それらの発現を別々に、または時間的にもしくは空間的様式で調節することができるように異なる場合もある。
【0079】
特定の実施形態においては、siRNAは、例えば、小さい核RNA(snRNA)U6に由来するRNA polIII転写単位またはヒトRNase P RNA H1を含むベクターの中にガン細胞の標的遺伝子の鋳型をクローニングすることによって細胞内で転写される。ベクターシステムの1つの例は、GeneSuppressorTM RNA Interferenceキットである(Imgenexから市販されている)。U6およびH1プロモーターは、Pol IIIプロモーターのタイプIIIのクラスのメンバーである。U6様プロモーターの+1ヌクレオチドは常にグアノシンであるが、H1プロモーターの+1はアデノシンである。これらのプロモーターの終結シグナルは、5個の連続するチミジンによって定義される。転写物は、通常、2つ目のアデニンの後ろで切断される。この位置での切断によって、発現されたsiRNAの中に3’UU突出が生じる。これは、合成のsiRNAの3’突出と類似している。400ヌクレオチド未満の長さの任意の配列をこれらのプロモーターによって転写させることができ、したがって、これらは、例えば、およそ50ヌクレオチドのRNAヘアピン−ループ転写物の中の、およそ21ヌクレオチドのsiRNAの発現に理想的に適している。選択されたsiRNA配列についての最初のBLAST相同検索は、ガン細胞の中で優先的に発現される標的だけが同定され、標的とされていない宿主遺伝子が同定されないことを確実にするために、市販されているヌクレオチド配列ライブラリーに対して行われる。Elbashirら、2001 EMBO J.20(23):6877−88を参照のこと。
【0080】
ポリヌクレオチドの合成
標的化ヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドと、標的化配列を含むポリヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成装置を使用して、標準的な合成技術によって調製することができる。オリゴヌクレオチドを合成するための方法には周知の化学的プロセスが含まれ、これには、T.Brown and Dorcas J.S.Brown,Oligonucleotides and Analogues A Practical Approach,F.Eckstein編,Oxford University Press,Oxford,1−24頁(1991)に記載されており、引用により本明細書中に組み入れられる、表面が誘導された粒子上へのヌクレオチドホスホルアミダイトの連続的付加が含まれるがこれに限定されない。
【0081】
合成手順の一例では、Expedite RNAホスホルアミダイトとチミジンホスホルアミダイト(Proligo,Germany)が使用される。合成のオリゴヌクレオチドは脱保護され、ゲル精製され(Elbashirら、(2001)Genes & Dev.15,188−200)、その後、Sep−Pak C18カートリッジ(Waters,Milford,Mass.,USA)精製される(Tuschlら、(1993)Biochemistry,32:11658−11668)。相補的なssRNAが、アニーリング緩衝液(100mMの酢酸カリウム、30mMのHEPES−KOH、pH7.4、2mMの酢酸マグネシウム)の中で、90℃で1分間インキュベートされ、その後、37℃で1時間インキュベートされて、対応するds−siRNAにハイブリダイズさせられる。
【0082】
他のオリゴヌクレオチドの合成方法としては、ホスホトリエステルおよびホスホジエステル法(Narangら、(1979)Meth.Enzymol.68:90)にしたがう固相オリゴヌクレオチド合成、そしてH−ホスホネート法(Garegg,P.J.ら、(1985)「Formation of internucleotidic bonds via phosphonate intermediates」,Chem.Scripta 25,280−282;およびFroehler,B.C.ら(1986a)「Synthesis of DNA via deoxynucleoside H−phosphonate intermediates」,Nucleic Acid Res.,14,5399−5407など)、および支持体上での合成(Beaucageら(1981)Tetrahedron Letters 22:1859−1862)にしたがう固相オリゴヌクレオチド合成、さらには、ホスホルアミダイト技術(Caruthers,M.H.ら,「Methods in Enzymology」,第154巻,287−314頁(1988)、米国特許第5,153,319号、同第5,132,418号、同第4,500,707号、同第4,458,066号、同第4,973,679号、同第4,668,777号、および同第4,415,732号)、ならびに、「Synthesis and Applications of DNA and RNA」,S.A.Narang編,Academic Press,New York,1987、およびその中に含まれている参考文献に記載されている他の方法、ならびに非ホスホルアミダイト技術が挙げられるが、これらに限定されない。固相合成は、不純物および過剰な試薬からのオリゴヌクレオチドの単離を手助けする。一旦、固体支持体から切断されると、オリゴヌクレオチドは公知の技術によってさらに単離することができる。
【0083】
本発明の阻害性ポリヌクレオチド
本発明の標的化ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、混合DNA−RNAポリヌクレオチド鎖、またはDNA−RNAハイブリッドであり得る。後者の一例は、デオキシ2ヌクレオチド配列(例えば、d(TT)、d(UU)、d(TU)、d(UT))ならびに他の可能な2ヌクレオチドを有している3’末端で終結しているRNA配列である。さらなる実施形態においては、3’突出は、上記で特定された塩基、または他の塩基を有しているリボヌクレオチドから構成される場合がある。さらに、オリゴヌクレオチド医薬品は、一本鎖である場合も、また二本鎖である場合もある。本発明の治療用オリゴヌクレオチドのいくつかの実施形態は、オリゴリボヌクレオチドまたは3’d(TT)末端を有しているオリゴリボヌクレオチドであると考えられる。一本鎖の標的化ポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞に投与されると、細胞内に残っている内因性の酵素活性によって、侵入時に二本鎖の分子へと容易に変換させられる。得られる二本鎖のオリゴヌクレオチドはRNA干渉を引き起こす。
【0084】
標的化ポリヌクレオチドは、一本鎖のポリヌクレオチドである場合も、また二本鎖のポリヌクレオチドである場合もある。ポリヌクレオチドの中に含まれる標的化ヌクレオチド配列は、全体が自然界に存在しているヌクレオチドから構成されている場合があり、また、ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つのヌクレオチドが、修飾されたヌクレオチドであるかもしくは誘導されたヌクレオチドである場合もある。修飾または誘導は、ポリヌクレオチドの安定化、相補体との鎖のハイブリダイゼーションの最適化、またはRNAiプロセスの誘導の促進のような目的を達成できる場合がある。標的化配列を含めるための、分子生物学、細胞生物学、腫瘍学、および関連する医薬品の分野、ならびに本発明に関係している他の分野の当業者によって理解される全ての等価なポリヌクレオチドは本発明の範囲内にある。
【0085】
本発明のポリヌクレオチドには標的化配列が含まれ、疾患または病状の特徴である細胞の増殖または複製を阻害するために有効である。本発明の重要な実施形態においては、第1のヌクレオチド配列または標的化配列は、少なくとも15ヌクレオチド(nt)の長さであり、最大100ntであり得る。特定の重要な実施形態においては、長さは最大70ntであり得る。なおさらに重要な実施形態においては、第1のヌクレオチド配列は、15nt、または16nt、または17nt、または18nt、または19nt、または20nt、または21nt、または22nt、または23nt、または24nt、または25nt、または26nt、または27nt、または28nt、または29nt、または30ntの長さであり得る。
【0086】
第1の標的化ヌクレオチド配列またはその相補体は、通常、標的遺伝子の中を標的化する配列に対して少なくとも80%相補的である。したがって、標的配列が15から30ntの間の長さの範囲である先の段落において同定されたそれらの実施形態においては、3個以下、または4個以下、または5個以下のヌクレオチドが標的配列との相補性とは異なる。有意な実施形態においては、第1のヌクレオチド配列またはその相補体は、標的配列に対して少なくとも85%相補的であるか、または少なくとも90%相補的であるか、または少なくとも95%相補的であるか、または少なくとも97%相補的である。
【0087】
第1のヌクレオチド配列またはその相補体は、それがRNA干渉の表現形を誘導するその標的配列に対して十分に相補的であり、それによりRNase活性による標的核酸の切断を促進する。病原性の核酸の切断を促進する任意の等価な第1のヌクレオチド配列は本発明の範囲に含まれる。
【0088】
短いヘアピンRNA(shRNA)は、本発明の第1のポリヌクレオチドに含まれることが想定される。shRNAには、第1の標的化ヌクレオチド配列、間に存在しているループを形成するヌクレオチド配列、そして第1の標的化配列に相補的な第2の標的化ヌクレオチド配列が含まれる。理論に束縛されることは望ましくないが、第1の標的配列、ループ、そして第1のループに相補的な第2の標的配列を含むポリヌクレオチドは、第2の相補的配列が第1の標的配列とハイブリダイズする分子内二本鎖「ヘアピン」構造を形成するように周囲に存在する(around)と考えられる。重ねて、理論に束縛されることは好ましくないが、RNAiの表現形は、その標的配列とともに複合体を形成する二本鎖のRNA配列によって誘導されると考えられる。shRNAの使用により、標的化された遺伝子をサイレンシングさせるために有効な二本鎖の標的化ポリヌクレオチドを提供するための最適な手段が提供される。
【0089】
重要な実施形態においては、標的化ポリヌクレオチドにはさらに、第1のヌクレオチド配列と動作可能な関係にあるか、またはshRNAの場合には、第1のヌクレオチド配列、ループ、および相補的なヌクレオチド配列を含む完全なshRNA構築物と動作可能な関係にある、プロモーターおよび/またはエンハンサー配列が含まれる。
【0090】
ベクター。本発明により、本発明の1つ以上の第1のポリヌクレオチドを含む様々なベクターが提供される。1つ以上の第1のポリヌクレオチドを含めることにより、ベクターは1つ以上の病原性の標的配列に特異的な標的化配列を持つことになる。病原性の標的配列は同じ遺伝子に向けられる場合も、また、その病状に罹患している被験体の細胞の中の別の遺伝子に対して向けられる場合もある。本発明の有利な任意のベクターとしては、第1のヌクレオチド配列に対して、またはshRNA配列に対して動作可能であるように連結させられたプロモーター、エンハンサー、またはそれらの両方が挙げられる。
【0091】
本発明のベクターを調製するための方法は、分子生物学、細胞生物学、腫瘍学の分野、および関連する医薬品の分野、および本発明に関係がある他の分野で広く知られている。ベクターを調製するために有用な方法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版)(Sambrook,J.ら(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)およびShort protocols in molecular biology(第5版)(Ausubel FMら(2002)John Wiley & Sons,New York City)に記載されているが、これらに限定されない。
【0092】
抗体
用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合は、免疫グロブリン分子と免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的活性のある部分(すなわち、抗原に特異的に結合する(抗原と免疫反応する)抗原結合部位を含む分子)をいう。そのような抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片、ならびにFab発現ライブラリーが挙げられるがこれらに限定されない。一般的には、ヒトから得られた抗体分子は、IgG、IgM、IgA、IgE、およびIgDの任意のクラスをいい、これらは、分子の中に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。特定のクラスには、さらにサブクラスが含まれ、例えば、IgG1、IgG2などが含まれる。さらに、ヒトにおいては、軽鎖はκ鎖またはλ鎖であり得る。本明細書中での抗体との言及には、ヒト抗体種の全てのそのようなクラス、サブクラス、およびタイプについての言及が含まれる。
【0093】
抗原またはその一部もしくは断片となるように意図される本発明の単離されたタンパク質は、抗原に対して免疫特異的に結合する抗体を生じさせるために、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製のための標準的な技術を使用して免疫原として使用することができる。全長のタンパク質を使用することができ、また代わりに、本発明によっては、免疫原として使用される抗原のペプチド断片が提供される場合もある。抗原性ペプチド断片には、全長のタンパク質のアミノ酸配列のうちの少なくとも6個のアミノ酸残基が含まれ、そしてそのエピトープが含まれ、結果として、そのペプチドに対して惹起させられた抗体は、全長のタンパク質と、またはそのエピトープを含むあらゆる断片と特異的な免疫複合体を形成する。好ましくは、抗原性ペプチドには、少なくとも10個のアミノ酸残基、または少なくとも15個のアミノ酸残基、または少なくとも20個のアミノ酸残基、または少なくとも30個のアミノ酸残基が含まれる。抗原性ペプチドに含まれる好ましいエピトープは、その表面上にあるタンパク質の複数の領域であり;通常、これらは親水性領域である。
【0094】
本発明の特定の実施形態においては、抗原性ペプチドに含まれる標的遺伝子ポリペプチドの少なくとも1つのエピトープは、タンパク質の表面上に位置するポリペプチドの1つの領域(例えば、親水性領域)である。ヒトのタンパク質配列の疎水性分析は、ポリペプチドのどの領域が特に親水性であるか、したがって、標的化抗体の生産に有用な表面残基をコードすると思われるかを示すであろう。標的化抗体の生産のための手段として、親水性と疎水性の領域を示しているヒドロパシープロット(hydropathy plot)を当該分野で周知の任意の方法によって作製することができる。これらの方法としては、例えば、フーリエ変換を用いるかまたは用いないかのいずれかの、Kyte Doolittle法またはHopp Wood法が、挙げられる。HoppおよびWoods 1981,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 78:3824−3828;KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−142を参照のこと(これらはそれぞれ、本明細書中でその全体が参考として援用される)。抗原性タンパク質内の1つ以上のドメイン、またはその誘導体、その断片、そのアナログもしくはそのホモログに特異的な抗原もまた、本明細書中で提供される。
【0095】
当該分野で公知の様々な手順を、本発明のタンパク質に特異的であるか、またはそれらの誘導体、断片、アナログ、ホモログ、もしくはオルトに特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の生産のために使用することができる。(例えば、引用により本明細書中に組み入れられる、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow E,and Lane D,1988、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと)。これらの抗体のうちのいくつかは以下で議論される。
【0096】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体の産生のために、種々の適切な宿主動物(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳類)が、ネイティブタンパク質、その合成改変体、またはこれらの誘導体の1回以上の注射により、免疫され得る。適切な免疫原調製物には、例えば、自然界に存在している免疫原性タンパク質、免疫原性タンパク質を提示する化学合成されたポリペプチド、または、組換えにより発現される免疫原性タンパク質が含まれ得る。さらに、このタンパク質は、免疫化される哺乳類において免疫原性であることが公知の第2のタンパク質に結合させられる場合がある。このような免疫原性タンパク質の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシのサイログロブリン、および大豆トリプシン阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。この調製物には、アジュバントをさらに含めることができる。免疫応答を大きくするために使用される様々なアジュバントとしては、フロイントの(完全または不完全)アジュバント、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、ジニトロフェノールなど)、カルメット−ゲラン杆菌(Bacille Calmette−Guerin)および挫瘡プロピオンバクテリウム(Corynebacterium parvum)のような、ヒトにおいて使用することができるアジュバント、または同様の免疫賦活剤が挙げられるが、これらに限定されない。使用することができるアジュバントのさらなる例としては、MPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。
【0097】
モノクローナル抗体
用語「モノクローナル抗体」(MAb)または「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書中で使用される場合は、特有の軽鎖遺伝子産物と特有の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の1つの分子種のみを含む抗体分子の集団をいう。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、この集団内の全ての分子において同じである。従って、MAbは、抗原に対する特有の結合親和性を特徴とする、抗原の特定のエピトープと免疫応答できる抗原結合部位を含む。
【0098】
モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein(Nature,256:495(1975))によって記載されるハイブリドーマ法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法においては、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物が、通常は、免疫化剤で免疫化されて、免疫化剤に特異的に結合するであろう抗体が産生されるか、またはそのような抗体を産生することができるリンパ球が誘導される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫することもできる。
【0099】
免疫剤としては、通常、タンパク質抗原、その断片、またはその融合タンパク質が挙げられるであろう。一般には、末梢血リンパ球が、ヒト起源の細胞が望ましい場合には使用され、また、脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が、非ヒト哺乳類供給原が望ましい場合に使用される。リンパ球は、その後、適切な融合剤(例えば、ポリエチレングリコール)を使用して、不死化細胞株と融合させられ、ハイブリドーマ細胞が形成させられる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103)。不死化細胞株は、通常、哺乳類細胞(特に、齧歯類、ウシ、ヒトを起源とする骨髄腫細胞)に移入される。通常は、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、融合させられていない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含むことが好ましい、適切な培養培地の中で培養することができる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合は、ハイブリドーマのための培養培地には、通常、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンが含まれるであろう(「HAT培地」)。これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を阻害する。
【0100】
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されるような組換えDNA法によっても作製することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離することができ、配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源となる。一旦単離されると、DNAは、発現ベクターの中に配置され得、この発現ベクターは、その後、宿主細胞(例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別の方法では免疫グロブリンタンパク質を生産しない骨髄腫細胞)にトランスフェクトされて、組換え体である宿主細胞の中でモノクローナル抗体の合成が得られる。
【0101】
(ヒト化抗体)
本発明のタンパク質抗原に対して惹起させられた抗体にはさらに、ヒト化抗体またはヒト抗体が含まれ得る。これらの抗体はヒトへの投与に適しており、投与された免疫グロブリンに対してヒトによって免疫応答が引き起こされることはない。抗体のヒト化形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはこれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合サブ配列)であり、これらは主に、ヒト免疫グロブリンの配列から構成されており、そして非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列が含まれる。ヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法(Jonesら,Nature,321:522−525(1986);Riechmannら,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら,Science,239:1534−1536(1988))に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって行うことができる。(米国特許第5,225,539号もまた参照のこと。)ヒト化抗体にはまた、好ましくは、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常は、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部が含まれるであろう(Jonesら(1986);Riechmannら(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992))。
【0102】
(ヒト抗体)
完全なヒト抗体は、原則として、軽鎖および重鎖の両方の配列全体(CDRを含む)がヒト遺伝子から得られたものである抗体分子をいう。このような抗体は、本明細書中では、「ヒト抗体」または「完全なヒト抗体」と呼ばれる。ヒトモノクローナル抗体は、トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、1983,Immunol Today 4:72を参照のこと)、およびEBVハイブリドーマ技術により調製することができ、ヒトモノクローナル抗体を得ることができる(Coleら(1985)MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,77−96頁を参照のこと)。ヒトモノクローナル抗体は、本発明の実施において利用することができ、ヒトハイブリドーマを使用することによって(Coteら、1983.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026−2030を参照のこと)、またはインビトロでヒトB細胞をエプスタイン・バーウイルスで形質転換することによって(Coleら、1985,MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,77−96頁を参照のこと)産生することができる。
【0103】
加えて、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー(HoogenboomおよびWinter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら,J.Mol.Biol.,222:581(1991))を含むさらに別の技術を使用して産生することもできる。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、その中の内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化させられているトランスジェニック動物(例えば、マウス)に導入することにより作製することができる。チャレンジ(challenge)において、ヒト抗体の生産が観察され、これは、ヒトにおいて見られる抗体産生とあらゆる点(遺伝子の配置、アセンブリ、および抗体のレパートリーを含む)で酷似している。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、ならびにMarksら(Bio/Technology 10,779−783(1992));Longbergら(Nature 368 856−859(1994));Morrison(Nature 368,812−13(1994));Fishwildら(Nature Biotechnology 14,845−51(1996));Neuberger(Nature Biotechnology 14,826(1996))ならびにLonbergおよびHuszar(Intern.Rev.Immunol.13 65−93(1995)において記載されている。
【0104】
ヒト抗体は、抗原によるチャレンジに応答して動物の内因性抗体ではなく完全なヒト抗体を産生するように改変されるヒト以外のトランスジェニック動物を使用して、さらに産生させることができる(PCT国際公開第94/02602号を参照のこと)。ヒト以外の宿主の中の重鎖および軽鎖の免疫グロブリンをコードする内在性遺伝子は、無能化されており、そしてヒトの重鎖および軽鎖の免疫グロブリンをコードする活性な遺伝子座が、宿主のゲノムに挿入される。このヒト遺伝子は、例えば、必要なヒトDNAセグメントを含む酵母人工染色体を使用して組み込まれる。全ての望ましい改変を提供する動物が、その後、全量より少ない改変の相補体を含む中間のトランスジェニック動物を交配させることにより、子孫として得られる。好ましい実施形態においては、このようなヒト以外の動物はマウスであり、そして、Xenomouse(商標)と呼ばれる(PCT国際公開第96/33735号および同第96/34096号に開示されている)。
【0105】
Fab断片および単鎖抗体
本発明に従って、複数の技術を、本発明の抗原性タンパク質に特異的な単鎖抗体の産生に、適合させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)。加えて、複数の方法を、Fab発現ライブラリーの構築(例えば、Huseら(1989)Science 246:1275−1281を参照のこと)に適合させて、タンパク質またはその誘導体、その断片、そのアナログ、もしくはそのホモログに対して望ましい特異性を有するモノクローナルFab断片を、迅速かつ効率的に同定することができる。タンパク質抗原に対するイディオタイプを含む抗体断片は、当該分野で公知の技術によって生産することができる。この技術としては以下が挙げられるが、これらに限定はされない:(i)抗体分子のペプシン消化によって得られるF(ab’)2断片;(ii)F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生じるFab断片;(iii)パパインと還元剤での抗体分子の処理によって生じるFab断片、および(iv)Fv断片。
【0106】
抗体療法
本発明の抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、および完全なヒト抗体を含む)は治療薬として使用される場合がある。このような薬剤は、一般的には、被験体の疾患または病状を処置するかあるいは予防するために使用されるであろう。抗体調製物(好ましくは、その標的抗原に対して高い特異性と高い親和性を有しているもの)が被験体に投与され、これは一般的には、その標的とのその結合が原因で効果があるであろう。そのような効果は、投与された抗体分子と問題の標的抗原との間での相互作用の特異的な性質に応じて、2種類のうちの1つであり得る。第1の例においては、抗体の投与により、それが自然界において結合する内因性のリガンドを有している標的の結合をできなくするかまたは阻害することができる。この場合、抗体は、標的に結合して、自然界に存在しているリガンドの結合部位をマスクする。ここでは、リガンドはエフェクター分子としての役割を担う。したがって、受容体はリガンドが反応することができるシグナル伝達経路を媒介する。
【0107】
あるいは、効果は、標的分子上のエフェクター結合部位に対する結合により、抗体が生理学的結果を誘発するものであり得る。この場合、疾患または病状においては存在しないかまたは欠損している可能性がある内因性のリガンドを有している受容体が代理のエフェクターリガンドとして抗体に結合して、受容体の基礎(receptor−base)を開始させる。
【0108】
抗体の薬学的組成物
本発明のタンパク質に特異的に結合する抗体、ならびに、本明細書中に開示されるスクリーニングアッセイによって同定された他の分子は、様々な障害の処置のために薬学的組成物の形態で投与することができる。そのような組成物の調製に関する原則と考慮事項、ならびに、組成物の選択における指針は、例えば、Remington:The Science And Practice Of Pharmacy,第19版(Alfonso R.Gennaroら編)Mack Pub.Co.,Easton,Pa.:1995:Drug Absorption Enhancement:Concepts,Possibilities,Limitations,And Trends,Harwood Academic Publishers,Langhorne,Pa.,1994;およびPeptide And Protein Drug Delivery(Advances In Parenteral Sciences,第4巻),1991、M.Dekker,New Yorkに提供されている。
【0109】
本発明には、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、および他の哺乳動物によって生産させることができる、標的遺伝子のタンパク質産物に結合する抗体が含まれる。ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子のポリペプチド産物に対して惹起させられた治療用抗体としては、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化形態、およびヒトモノクローナル抗体が挙げられる。標的遺伝子のポリペプチド産物に対して惹起させられた特異的なモノクローナル抗体は、これらが抗体で処理された場合に、ガン細胞のアポトーシス活性を高めることができる。そのような特異的なモノクローナル抗体はさらに、それらが抗体で処理された場合に、ガン細胞の増殖を低下させることができる。標的遺伝子に特異的なモノクローナル抗体は、異種腫瘍移植モデルおよび同系腫瘍移植モデルのいずれを用いた場合にも、インビボで腫瘍の増殖を阻害する能力を有している。
【0110】
本発明のガン細胞を標的とするポリヌクレオチド
いくつかの標的遺伝子を、本発明のリード標的遺伝子として同定した。これらの標的遺伝子は、腫瘍増殖、疾患の進行の阻害について、ならびに、哺乳動物において(特に、ヒトにおいて)腫瘍およびガンの阻害および処置のための方法と組成物について確認された標的と考えられる。確認は、標的遺伝子が腫瘍増殖の阻害またはアポトーシスの促進のための標的であり、したがって、治療の標的として使用することができること、そしてこれらはまた、腫瘍およびガンの診断、予防、および治療に有用な化合物を同定するためにも使用できることの以下の実施例に示されている提示に一部基づく。標的遺伝子は表1にまとめられる。
【0111】
【表1】
ICT−1052:標的ICT−1052は、C−METプロトオンコジーン)として同定されている(肝細胞増殖因子(HGF)受容体;Bottaroら、Science,251:802−804;Naldiniら、Oncogene,6:501−504;Parkら、1987,Proc.Natl.Acad.USA,84:6379−83;国際公開第92/13097号;同第93/15754号;同第92/20792;Pratら、1991,Mol.Cell.Biol.,11:5954−62を参照のこと)。c−Metの発現は、様々なヒトの充実性腫瘍の中で検出されており(Pratら、1991,Int.J.cancer,49:323−328)、そして、濾胞上皮に由来する甲状腺腫瘍に関与している(DiRenzoら、1992、Oncogene,7:2549−53)。c−Metとそのスプライシング変異体は、siRNAによって媒介されたICT−1052のノックダウンによって腫瘍増殖の阻害が生じるので、腫瘍を促進する標的(tumor enhancing target)のように作用する。標的ICT−1052は腫瘍刺激因子であり、したがって、抗体、低分子、アンチセンス、siRNA、および他のアンタゴニスト試薬を使用して哺乳動物組織の中の腫瘍、ガン、および前ガン状態を処置するための標的である。
【0112】
DL−21、DN−30、DN−31、およびDO−24と呼ばれるc−Metに対するいくつかの抗体(モノクローナル抗体(mAb)を含む)は、c−Metの145kDaのβ鎖の細胞外ドメイン(国際公開第92/20792号;Pratら、1991,Mol.Cell Biol.,11:5954−62)または細胞内ドメイン(Bottaroら、Science,251:802−804)に特異的である。そのような抗体は、診断用途および治療用途において使用されている(Pratら、1991、Int.J.Cancer,49:323−328;Yamadaら、1994、Brain Research,637:308−312;Crepaldiら、1994、J.Cell Biol.,125:313−20;米国特許第5,686,292号;同第6,207,152号;Mark Kayの特許出願;米国特許出願公開番号20030118587;国際公開第2004/07877号および同第2004/072117号)。
【0113】
標的ICT−1052には、表1に記載されているGenBank登録番号に開示された配列のヌクレオチド配列と、またはそのコードされるポリペプチドに対して、(i)実質的なヌクレオチド配列相同性(例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは少なくとも70%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも80%、なおさらに好ましくは少なくとも90%、そしてなおさらに好ましくは少なくとも95%)を有する、多形変異体、対立遺伝子、突然変異体、および種間オルトログが含まれる。ICT−1052ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、通常、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウシ、ブタ、ウマ、およびヒツジを含むがこれらに限定されない哺乳動物に由来する。
【0114】
ICT−1052のヌクレオチド配列には、6641塩基対が含まれ(本明細書に添付されている配列表の配列番号1を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)、これは、1390アミノ酸のタンパク質をコードする(本明細書に添付されている配列表の配列番号2を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)。
【0115】
ICT−1053:ICT−1053と指定された標的はPDCD10(プログラムされた細胞死(programmed cell death)10(PDCD10))である。この遺伝子は、アポトーシスに関与しているタンパク質に対する類似性によって前骨髄細胞株において最初に同定されたタンパク質をコードする。PDCD10タンパク質は、培養物中の293細胞のアポトーシスを阻害することができた(Maら、1998)。ICT−1053は、早い速度で増殖している腫瘍の中でアップレギュレートされる。この標的の阻害は、様々なガンのタイプ、腫瘍、および前ガン状態の治療において重要な役割を果たすことができる。したがって、siRNA、モノクローナル抗体、およびこの標的の低分子阻害剤は、抗体、低分子、アンチセンス、siRNA、および他のアンタゴニスト物質を使用するガンの処置に有用であり得る。
【0116】
標的ICT−1053には、表1に記載されているGenBank登録番号に開示された配列のヌクレオチド配列と、またはそのコードされるポリペプチドに対して、(i)実質的なヌクレオチド配列相同性(例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは少なくとも70%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも80%、なおさらに好ましくは少なくとも90%、そしてなおさらに好ましくは少なくとも95%)を有する、多形変異体、対立遺伝子、突然変異体、および種間オルトログが含まれる。ICT−1053ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、通常、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウシ、ブタ、ウマ、およびヒツジを含むがこれらに限定されない哺乳動物に由来する。
【0117】
ICT−1053のヌクレオチド配列には、1466塩基対が含まれ(本明細書に添付されている配列表の配列番号3を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)、これは、212アミノ酸のタンパク質をコードする(本明細書に添付されている配列表の配列番号4を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)。
【0118】
ICT−1027:標的ICT−1027は、表皮成長因子受容体(EGFR)に結合する能力を有している、ヒト(Homo sapiens)の成長因子受容体結合タンパク質2(GRB2)である(Lowensteinら、(1992))。GRB2遺伝子は、SRC腫瘍遺伝子産物の非触媒領域に対して相同性を有しているタンパク質をコードし、陰門(vulva)形成の誘導を導くシグナル伝達経路に関係しているシノラブディス・エレガンス(C.elegans)のSem5遺伝子のホモログである。Drk(GRB2のショウジョウバエ(Drosophila)ホモログ)は、光受容体の発生において不可欠な役割を担っている。様々な実験により、SH2/SH3ドメイン相互作用によって媒介される哺乳動物のGRB2−Rasシグナル伝達経路についての証拠が提供されている。これは、胚発生およびガンにおいて複数の機能を有している。ICT−1027は、早い速度で増殖している腫瘍の中でアップレギュレートされる。標的ICT−1027は、抗体、低分子、アンチセンス、siRNA、および他のアンタゴニスト試薬を使用して哺乳動物組織の中の腫瘍、ガン、および前ガン状態を処置するための新規の標的であると考えられる。
【0119】
標的ICT−1027には、表1に記載されているGenBank登録番号に開示された配列のヌクレオチド配列と、またはそのコードされるポリペプチドに対して、(i)実質的なヌクレオチド配列相同性(例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは少なくとも70%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも80%、なおさらに好ましくは少なくとも90%、そしてなおさらに好ましくは少なくとも95%)を有する、多形変異体、対立遺伝子、突然変異体、および種間オルトログが含まれる。ICT−1052ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、通常、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウシ、ブタ、ウマ、およびヒツジを含むがこれらに限定されない哺乳動物に由来する。
【0120】
ICT−1027のヌクレオチド配列には、3317塩基対が含まれ(本明細書に添付されている配列表の配列番号5を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)、これは、217アミノ酸のタンパク質をコードする(本明細書に添付されている配列表の配列番号6を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)。
【0121】
標的ICT−1051。限られたApaf−1活性は、病理学的なタンパク質の凝集と、HDにおける神経細胞死の両方を緩和することができる。特異的なホスホイノシチドに結合するA−Raf残基が、おそらく、これらのリン脂質の中に多く含まれる特定の膜マイクロドメインに対して酵素を局在化させる1つの機構として同定される。ヒトの結腸直腸腺ガンにおけるARAF遺伝子の中の保存されている領域の変異分析により腫瘍形成におけるその薬剤がまとめられている。ヒト胎児の肝臓cDNAライブラリーのツーハイブリッドスクリーニングにおいては、TH1がA−Rafの新規の相互作用パートナーとして検出された。この特異的相互作用は、A−Rafの活性化において重要な役割を担っている可能性がある。A−Rafキナーゼは、MEK1とのトリヒドロホビン1およびA−Raf相互作用によってネガティブに調節され、リン酸化によりMEK1を活性化させる。
【0122】
標的ICT−1054。Raf−1は、ALG−2(PCDP6)のASK−1依存性リン酸化を中断させることによってその抗アポトーシス機能を媒介することができる。それらの先祖細胞である正常なメラニン形成細胞と比較したヒトのブドウ膜メラノーマ細胞の中でのALG−2のダウンレギュレーションにより、Ca+によって媒介されるアポトーシスシグナルの妨害、それによる細胞の生存性の増強による選択的利点を有しているメラノーマ細胞が提供され得る。データは、ALG−2が肝臓および肺の新生物の中で過剰発現されており、肺の上皮細胞の中で主に見られることを示している。ALG−2は、細胞増殖と細胞死の両方において役割を担っている。ALG−2のペンタ−EF−ハンドドメインは、Ca2+依存性様式でアネキシンVIIおよびアネキシンXIの両方のアミノ末端ドメインと相互作用する。アネキシンXIのPro/Gly/Try/Alaを多く含む疎水性領域は、ALG−2のCa(2+)に依存して露出させられる疎水性表面をマスクする。ALG−2は、その5番目のEF−ハンド領域全体を通じた二量体化によって安定化させられる。アポトーシス関連遺伝子2は、Fasの死ドメインに結合し、Jurkat細胞の中でのFas媒介性アポトーシスの間にFasから解離する。
【0123】
標的ICT−1020。突出の長さと配列組成を含む3’末端構造の様々な性質が、dsRNAと単分子である短いヘアピンRNAの両方において、Dicer切断の位置を決定することに重要な役割を担っている。Dicerは、脊椎動物細胞のヘテロクロマチン構造の形成に不可欠である。Dicerは、RNA転写後プロセシングの中心を1つ有する。脆弱性X症候群のCGGリピートは、RNAヘアピンを容易に形成し、ヒトDicer酵素により消化される。これは、遺伝子発現に影響を与えるRNA干渉の中心的な工程である。
【0124】
標的ICT−1021。Toll様受容体4シグナル伝達複合体での、大腸菌(Escherichia coli)LPSのリポ多糖(LPS)依存性アンタゴニストの主要な分子部位としてのMD−2の機能を説明する証拠が存在している。これらの結果は、Glu(24)−Pro(34)のアミノ末端TLR4領域が、MD−2の結合とLPSのシグナル伝達に重要であることを明白に示している。MD−2は、敗血症の際の臓器の炎症の重要な媒介因子である。Thr35からAlaへの変異をコードしている103位での珍しいAからGへの置換により、リポ多糖によって誘導されるシグナル伝達の低下が生じる。結果は、トル様受容体4のN末端領域がMD−2との会合に不可欠であることを示しておいる。これは、細胞表面での発現に、しいては、リポ多糖への反応性に必要である。細胞外トル様受容体4(TLR4)ドメイン−MD−2複合体は、リポ多糖(LPS)に結合することができ、野生型TLR4を発現している細胞の中でのLPSによって誘導されるNF−κBの活性化とIL−8の分泌を弱めることができる。気道上皮および肺のマクロファージの中でのMD−2発現の調節は、気道での内毒素反応性を変更するための手段となり得る。MD−2の塩基性アミノ酸のクラスターは、細胞性リポ多糖の認識に関与している。TLR4は、MD−2を伴わずに複数のグリコシル化を受けることができるが、細胞表面発現に不可欠な特異的なグリコシル化がMD−2の存在には必要である。MDの中には2つの機能的ドメインが存在している。一方は、Toll様受容体4の結合を担っており、そして他方はアゴニスト(リポ多糖)との相互作用を媒介する。MD−2はリポ多糖に結合して、Toll様受容体4の凝集とシグナル伝達を導く。いくつかのデータにより、リポ多糖結合タンパク質が、膜CD14からToll様受容体4−MD−2シグナル伝達受容体へのLPSの移動を阻害することにより、リポ多糖(LPS)に対する細胞の応答を阻害できるとの仮説がサポートされている。LBP、CD14、およびTLR−2を介するLTAの先天性免疫認識は、グラム陽性病原体によってもたらされる感染性疾患の経過の間の全身的な合併症の病因において重要な機構を示すが、TLR−4およびMD−2は関与していない。ジスルフィド結合が、このタンパク質のアセンブリと機能に関与している。リポ多糖は、toll様受容体4−MD−2−CD14複合体により、ゴルジ体へと、そしてゴルジ体から迅速に輸送される。発現は、腸上皮細胞の中の免疫によって媒介されるシグナルによって調節される。MD−2は、マウスToll様受容体4(TLR4)に対して、リピッドAに対する反応性を付与することができるが、リピッドIVaに対する反応性は付与することはできない。したがって、TLR4の細かい特異性に影響を与える。アクセサリー分子MD−2の発現は、細菌のリポ多糖に反応して脱調節された免疫シグナル伝達とプロ炎症性遺伝子の活性化を制限する機構によって、腸上皮細胞の中でダウンレギュレートされる。MD−2が腫瘍形成に関与していることを示す報告はこれまでにはない。
【0125】
標的ICT−1022。この遺伝子は、精巣を除いて、様々な腫瘍の中で発現されているが、正常な組織の中では発現されていない遺伝子のファミリーに属する。このファミリーのメンバーの配列は関係性が深いが、散在しているヌクレオチド置換によって異なる。抗原性ペプチドYRPRPRRY(これもまた、いくつかの他のファミリーのメンバーによってコードされる)は、自己の細胞傷害性Tリンパ球によって認識される。このタンパク質の機能については、現在のところ何も明らかになっていない。
【0126】
標的ICT−1052、ICT−1053、ICT−1027、ICT−1051、ICT−1054、ICT−1020、ICT−1021、およびICT−1022が、2つの特異的siRNA分子によってダウンレギュレートされれば、腫瘍増殖速度が遅くなることが以下の実施例において報告される。
【0127】
本発明により、前ガンまたはガン細胞に侵入すると、RNA干渉の表現形を引き起こすことが目的で使用されるオリゴヌクレオチドが広く提供される。本発明は、ガン細胞標的遺伝子の性質に制限されることはないが、本発明の標的遺伝子を標的化するオリゴヌクレオチドを強調する。RNA干渉は、適切な二本鎖RNAによって細胞内に生じさせられる。この二本鎖のうちの一方は、ガン細胞の標的ポリヌクレオチドの中の配列と同じであるか、類似性の高い相補体を有する。一般的には、標的遺伝子を標的化するオリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAである場合があり、また、これには、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの混合物が含まれる場合もある。最も一般的には、本発明により、15ヌクレオチドから、長くても200ヌクレオチドまでの任意の長さの範囲であるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが提供される。ポリヌクレオチドには、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的とする第1のヌクレオチド配列が含まれる。第1のヌクレオチド配列は、a)その長さが15ヌクレオチドから30ヌクレオチドまでの任意の数である標的化配列、またはb)その相補体のいずれかから構成される。そのようなポリヌクレオチドは、本明細書中では直鎖のポリヌクレオチドと呼ばれる。
【0128】
図1により、本発明のポリヌクレオチドの特定の実施形態の模式図が提供される。本発明では、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子、あるいは、特定の場合には、そのような標的配列とはわずかに一致しないsiRNA配列を標的化する配列が開示される。これらは全て、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242に提供されており、これらは実施例1に開示される。本明細書中で開示される配列は、19ヌクレオチドから25ヌクレオチドまでの長さの範囲である。標的化配列は、図1の中の薄い影がつけられた四角によって模式的に示される。図1、パネルA、a)は、「SEQ」として示される開示された配列が、状況に応じて、それらの全体の長さが200ヌクレオチドまでの範囲であり得るより長いポリヌクレオチドの中に含まれ得る実施形態を説明している。
【0129】
本発明により、さらに、標的化ポリヌクレオチドにおいては、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択された配列が、標的化ポリヌクレオチドがSEQによって示される第1のヌクレオチド配列よりも長い標的遺伝子の中の配列を標的化するように、より長い標的化配列の一部として存在する場合があることが提供される。これは、図1、パネルA、b)に示される。ここでは、完全な標的化配列が、ポリヌクレオチドの上の水平方向の線によって、そしてSEQブロックを取り囲むより濃い色の影によって示される。ポリヌクレオチドの全ての実施形態においてそうであるように、このより長い配列は、状況に応じて、200塩基またはそれ未満の長さのさらに長いポリヌクレオチドの中に含められる場合もある(図1、パネルA、b)。
【0130】
本発明によってはさらに、上記標的化配列のうちの任意のものの断片である標的化配列(結果として、この断片は、少なくとも15ヌクレオチドの長さである(そして、図1、パネルA、cに示される、最長で参照の配列番号のものよりも1塩基短い長さ)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242の中に提供される配列を標的化する)、さらには、標的化配列(ここでは、5個までのヌクレオチドが配列番号7〜76、81〜84、および89〜242(図1、パネルA、dに示される)に提供される標的配列に対する相補体とは異なっていてもよい(この実施例においては、3つの濃い色の縦方向の棒によって示される3つの変異体塩基を示している))が提供される。
【0131】
なおさらに、本発明により、上記の配列(図1、パネルA、eに示される)のうちの任意のものに対して相補的であり、「COMPL」と命名された配列が提供される。これらの配列のうちの任意のものが、本発明のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに含められる。本発明の任意の直鎖のポリヌクレオチドは、上記のa)〜e)に記載された配列だけによって構成される場合があり、また状況によっては、200ヌクレオチドの限界までのさらに別の塩基が含まれる場合もある。RNA干渉には二本鎖RNAが必要であるので、標的化ポリヌクレオチド自体が二本鎖(少なくとも配列番号7〜76、81〜84、および89〜242によって提供される配列に対して相補的である二本鎖を含む)であり、それらにハイブリダイズする場合があり、また、相補鎖を生じさせるために細胞内プロセスに頼る場合もある。
【0132】
したがって、本発明のポリヌクレオチドは、最も一般的には、一本鎖であり得、また、二本鎖である場合もある。なおさらなる実施形態においては、ポリヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチドだけが含まれるか、またはリボヌクレオチドだけが含まれるか、あるいは、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方が含まれる。本明細書中に記載されるポリヌクレオチドの重要な実施形態においては、標的配列は、15ヌクレオチド(nt)、または16nt、または17nt、または18nt、または19nt、または20nt、または21nt、または22nt、または23nt、または24nt、または25nt、または26nt、または27nt、または28nt、または29nt、または30ntのいずれかの長さであり得る配列からなる。なおさらに有利な実施形態においては、標的化配列は、ウイルス病原体ゲノムの中の標的配列に対する相補体とは5個までの塩基が異なる場合がある。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、1nt、または2nt、または3nt、または4ntの長さであり得る本明細書中に記載される3’突出を必要に応じて含む標的化配列から構成されているsiRNAである。多くの実施形態においては、3’突出は2ヌクレオチドである。
【0134】
あるいは、RNA干渉における二本鎖RNAの必要性の認識において、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、分子内ヘアピンループ二本鎖分子を形成するように調製される場合がある。そのような分子は、その後ろに短いループ配列が続く先の段落の複数の実施形態のうちのいずれかに記載された第1の配列の形状であり、これにはその後ろに、第1の配列に相補的な第2の配列が続く。そのような構造は、所望される分子内ヘアピンを形成する。さらに、このポリヌクレオチドは、最大200ヌクレオチドの長さもまた有しているとして開示される。結果として、列挙された3つの必要な構造が、200ヌクレオチドまでの任意の全長を有している任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを構成し得る。ヘアピンループポリヌクレオチドは、図1、パネルBに説明される。
【0135】
用語「複合体化DNA」には、別の分子(例えば、炭水化物、例えば、糖(糖−DNA複合体が形成させられる))と複合体を形成したかまたは別の分子と結合したDNA分子が含まれる。そのような複合体(例えば、糖と複合体化したDNA)は、受容体を介する効率的な遺伝子送達を促進するかまたはサポートすることができ、例えば、グルコースはDNAと複合体化させることができ、マンノース受容体のような受容体を介して細胞に送達され得る。
【0136】
「カプセル化された核酸」(カプセル化されたDNAまたはカプセル化されたRNAを含む)は、比較的非免疫原性であり、選択的に酵素消化に供される材料でコーティングされたマイクロスフェアまたはマイクロ粒子の中の核酸分子、例えば、複数の材料(例えば、ゼラチンと硫酸コンドロイチン)の複合コアセルベーションによって合成されたマイクロスフェアまたはマイクロ粒子をいう(例えば、米国特許第6,410,517号を参照のこと)。マイクロスフェアまたはマイクロ粒子の中のカプセル化された核酸は、そのコード配列の発現を誘導するその能力を保つ方法でカプセル化される(例えば、米国特許第6,406,719号を参照のこと)。
【0137】
標的化ポリヌクレオチドを含む薬学的組成物
治療用途のための薬学的組成物には、1つ以上の標的化ポリヌクレオチドと担体が含まれる。1つ以上の標的化ポリヌクレオチドを含む薬学的組成物は、標的遺伝子の発現または活性と関係がある疾患あるいは障害を処置するために有用である。担体としては、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。経口投与される薬物については、薬学的に許容される担体としては、薬学的に許容される賦形剤、例えば、不活性な希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
多くの実施形態においては、本発明は、様々な標的遺伝子を標的化するように設計された少なくとも2つの標的化ポリヌクレオチドと薬学的に許容される担体が含まれている薬学的組成物に関する。1つ以上の標的遺伝子のmRNAを標的化することが原因で、複数の標的化ポリヌクレオチドを含む薬学的組成物は、少なくとも、これらの複数の遺伝子を発現している腫瘍細胞の中では、1つの標的化ポリヌクレオチドを含む組成物と比較して、改善された処置効率を提供し得る。この実施形態においては、個々の標的化ポリヌクレオチドが先のセクションに記載されたように調製される。これは引用により本明細書中に組み入れられる。1つの標的化ポリヌクレオチドは、1つの標的遺伝子の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を有し得る。さらに別の標的化ポリヌクレオチドが調製され、そのそれぞれは、様々な標的遺伝子の一部に実質的に相補的であるヌクレオチド配列を有する。複数の標的化ポリヌクレオチドを同じ薬学的組成物の中で組み合わせることができ、また、別々に処方することもできる。個別に処方される場合は、別の標的化ポリヌクレオチドを含む複数の組成物に、同じ担体または異なる担体を含めることができ、そして、同じ投与経路を使用して投与することも、また、異なる投与経路を使用して投与することもできる。さらに、個々の標的化ポリヌクレオチドを含む複数の薬学的組成物は、実質的に同時に投与される場合も、連続して投与される場合も、また、1日または処置期間を通じて予め設定された間隔で投与される場合もある。
【0139】
本発明の薬学的組成物は、標的遺伝子の発現を阻害するために十分な投与量で投与される。標的化ポリヌクレオチドは、RISC複合体の一部としてこれらが触媒様式で作用することが理解されているので、阻害作用を生じることにおいて極めて有効である。したがって、本発明の1つ以上の標的化ポリヌクレオチドを含む組成物を、驚くほどの低用量で投与することができる。
【0140】
1日あたりレシピエントの体重1キログラムあたり5mgの標的化ポリヌクレオチド最大用量が、標的遺伝子の発現を阻害するかまたは完全に抑制するためには十分である。一般的には、標的化ポリヌクレオチドの適切な用量は、1日あたりレシピエントの体重1キログラムあたり0.01から5.0ミリグラムの範囲、好ましくは、1日あたり体重1キログラムあたり0.1から200マイクログラム(mcg/kg)の範囲、より好ましくは、1日あたり0.1から100mcg/kgの範囲、なおさらに好ましくは、1日あたり1.0から50mcg/kgの範囲、最も好ましくは、1日あたり1.0から25mcg/kgの範囲であろう。薬学的組成物は1日に1回投与される場合があり、また、標的化ポリヌクレオチドは、1日を通じて適切な間隔で2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上に分けられた用量で投与される場合もある。その場合、個々の分けられた用量に含まれる標的化ポリヌクレオチドは、一日量の合計が得られるように対応させられたより少ない量でなければならない。投薬単位はまた、数日間かけて投与するための徐放処方物として、例えば、数日の期間にわたり標的化ポリヌクレオチドの徐放を提供する従来の処方物を使用して、調合することもできる。徐放処方物は当該分野で周知である。この実施形態においては、投薬単位には、一日量の対応する倍数が含まれる。
【0141】
特定の要因が、被験体を効率的に処置するために必要な投与量とタイミングに影響を与える場合があり、これには、必ずしもこれらに限定されないが、疾患または障害の重篤度、これまでの処置、被験体の全体的な健康状態および/または年齢、ならびに存在している他の疾患が含まれることを当業者なら理解するであろう。さらに、治療有効量の組成物での被験体の処置には、1回の処置または一連の処置が含まれ得る。本発明に含まれる個々の標的化ポリヌクレオチドについての有効用量とインビボでの半減期の予測は、従来の方法論を使用して、または適切な動物モデルを使用するインビボでの試験に基づいて行うことができ、適切な用量応答特性を決定するための確立されている基準に従って処置の間に調整することができる。
【0142】
マウスの遺伝学の進歩により、様々なヒトの疾患の実験のための多数のマウスモデルが作製されている。例えば、マウスモデルは、造血器悪性腫瘍、例えば、白血病、リンパ腫、および急性骨髄性白血病に利用することができる。National Cancer Instituteによって支援されているMMHCC(ヒトのガンのマウスモデル・コンソーシアム(Mouse Models of Human Cancers Consortium)ウェブページ(emice.nci.nih.gov)により、公知のガンモデルの疾患部位特異的統計が提供され、検索することができるCancer Model Database(cancermodels.nci.nih.gov)、さらには、NCI−MMHCCマウスについての蓄積データ(repository)にリンクする。マウスにおいて白血病およびリンパ腫をモデル化するために現在利用することができ、そして本発明の実施において有用な遺伝的ツールの例は、以下の参考文献に記載されている:Maru,Y.,Int.J.Hematol.(2001)73:308−322;Pandolfi,P.P.,Oncogene(2001)20:5726−5735;Pollock,J.L.ら、Curr.Opin.Hematol.(2001).delta.:206−211;Rego,E.M.ら、Semin.in Hemat.(2001)38:4−70;Shannon,K.M.ら(2001)Modeling myeloid leukemia tumors suppressor gene inactivation in the mouse,Semin.Cancer Biol.11,191−200;Van Etten,R.A.,(2001)Curr.Opin.Hematol.8,224−230;Wong,S.ら(2001)Oncogene 20,5644−5659;Phillips JA.,Cancer Res.(2000)52(2):437−43;Harris,A.W.ら、J.Exp.Med.(1988)167(2):353−71;Zeng X Xら、Blood.(1988)92(10):3529−36;Eriksson,B.ら、Exp.Hematol.(1999)27(4):682−8;およびKovalchuk,A.ら、J.Exp.Med.(2000)192(8):1183−90。マウスについての蓄積データはまた、The Jackson Laboratory,Charles River Laboratories,Taconic,Harlan,Mutant Mouse Regional Resource Centers(MMRRC)National Networkでも、また、European Mouse Mutant Archiveでも見ることができる。そのようなモデルは、標的化ポリヌクレオチドのインビボでの試験のために、さらには、治療有効量の決定のために使用することができる。さらに、標的遺伝子の効果について、様々なノックアウトトランスジェニック動物モデルまたはノックイントランスジェニック動物モデルを調製することができ、標的化ポリヌクレオチドの投与を評価するために実験することができる。
【0143】
本発明に含まれる薬学的組成物は、経口経路または非経口経路を含むがこれらに限定されない当該分野で公知の任意の手段によって投与することができ、これには、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、経皮投与、気道(エアゾール)投与、直腸投与、膣投与、および局所(口腔および舌下)投与が含まれる。特定の実施形態においては、薬学的組成物は、静脈内または非経口による注入または注射によって投与され、さらに別の一般的な実施形態においては、標的化ポリヌクレオチドを含む薬学的組成物は、腹腔鏡による手順、および同様の顕微鏡を使う手順を使用して、腫瘍、ガン、または前ガンの増殖に対してインサイチュで直接送達することができる。
【0144】
筋肉内、腹腔内、皮下、および静脈内での使用については、本発明の薬学的組成物は、一般的には、適切なpHと等張性になるように緩衝化させられた、滅菌の水溶液もしくは懸濁液の中に提供されるであろう。適切な水性ビヒクルとしては、Ringer溶液および等張性の塩化ナトリウムが挙げられる。好ましい実施形態においては、担体は、水性緩衝液だけから構成される。この状況においては、「だけ」は、標的遺伝子を発現する細胞の中への標的化ポリヌクレオチドの取り込みに影響を及ぼすかまたはそれを媒介する可能性がある補助剤またはカプセル化物質が存在しないことを意味する。そのような物質としては、例えば、ミセル構造、例えば、以下に記載されるようなリポソームまたはキャプシドが挙げられる。驚くべきことに、本発明者らは、裸の標的化ポリヌクレオチドと生理学的に許容される溶媒だけが含まれている組成物が細胞に取り込まれ、ここで、標的化ポリヌクレオチドは標的遺伝子の発現を効率よく阻害することを発見した。マイクロインジェクション、リポフェクション、ウイルス、ウイロイド、キャプシド、キャプソイド、または他の補助剤が細胞培養物に標的化ポリヌクレオチドを導入するために必要であるが、驚くべきことに、これらの方法および薬剤は、インビボでの標的化ポリヌクレオチドの取り込みには必要ない。本発明の水性懸濁液には、懸濁剤(例えば、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、およびトラガカントガム)、ならびに湿潤剤(例えば、レシチン)が含まれ得る。水性懸濁剤についての適切な保存剤としては、エチルおよびn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0145】
本発明に有用な薬学的組成物にはまた、標的化ポリヌクレオチドを体からの迅速な排除から保護するためのカプセル化された処方物(例えば、徐放処方物(インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む))も含まれる。生体分解性の生体適合性ポリマー(たとえば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)を使用することができる。そのような処方物の調製のための方法は、当業者には明らかであろう。材料はまた、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染させられた細胞に対して標的化させられたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号;PCT国際公開第91/06309号;および欧州特許公開公報EP−A−43075(これらは引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0146】
特定の実施形態においては、カプセル化された処方物にはウイルス外被タンパク質が含まれる。この実施形態においては、標的化ポリヌクレオチドは、少なくとも1つのウイルス外被タンパク質に結合させられるか、または少なくとも1つのウイルス外被タンパク質と会合させられるか、または少なくとも1つのウイルス外被タンパク質に取り囲まれ得る。ウイルス外被タンパク質は、ウイルス(例えば、ポリオーマウイルス)に由来する場合もウイルスと会合している場合もあり、また、一部が人工的である場合も、完全に人工的なものである場合もある。例えば、外被タンパク質は、ポリオーマウイルスのVirus Protein 1および/またはVirus Protein 2、あるいはそれらの誘導体であり得る。
【0147】
そのような化合物の毒性と治療効力は、例えば、LD50(集団のうちの50%に対して致死的である用量)およびED50(集団の50%において治療上有効である用量)を決定するために、細胞培養物または実験用動物の中で標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果との間での用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0148】
細胞培養物でのアッセイおよび動物実験によって得られたデータは、ヒトで使用される投与量の範囲を決定することにおいて使用することができる。本発明の組成物の投与量は、ED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましく、これには、わずかに毒性が伴うか、または毒性は伴わない。投与量は、使用される投薬形態、利用される投与軽度に応じてこの範囲内で変化し得る。本発明の方法において使用される任意の化合物について、治療有効量は、細胞培養アッセイおよび動物モデルから、細胞培養物中で決定されたIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を得ることができる試験化合物の濃度)を含む、化合物の循環血漿濃度範囲が得られるように、最初に概算することができる。そのような情報は、ヒトに有効な用量をさらに正確に決定するために使用することができる。
【0149】
上記で議論されたように、それらの個々の投与、または集団としての(as a plurality)投与に加えて、本発明に有用な標的化ポリヌクレオチドは、疾患の処置に有効な他の公知の薬剤と組み合わせて投与することができる。いずれにしても、投与を行う医師は、当該分野で公知であるか、または本明細書中に記載される標準的な効力の測定を使用して観察された結果に基づいて、標的化ポリヌクレオチドの投与量とタイミングを調整することができる。
【0150】
動物モデルへの高スループットの送達のためにIntradigm Corporationの商標である遺伝子送達技術を使用することがさらに想定される。Intradigm CorporationのPolyTranTM技術(国際特許公開第0147496号を参照のこと)により、腫瘍へのプラスミドの直接の投与が可能であり、これにより、ゴールドスタンダード(gold standard)ヌクレオチド送達試薬よりも7倍大きな効率が得られる。これは、腫瘍の中での候補の標的タンパク質の強い腫瘍発現と活性を提供する。
【0151】
標的遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を処置するための方法
特定の実施形態においては、本発明は、標的遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を有しているか、またはそのような疾患を発症するリスクがある被験体を処置するための方法に関する。1つ以上の標的化ポリヌクレオチドは、腫瘍、ガン、または前ガンの増殖を含む、1つ以上の細胞増殖および/または分化の障害を制御するための新規の治療薬となり得る。この方法には、患者(例えば、ヒト)に対して標的化ポリヌクレオチドの薬学的組成物を投与する工程が含まれる。その結果、標的遺伝子の発現はサイレンシングさせられる。それらの高い特異性が原因で、本発明の標的化ポリヌクレオチドは、以下に記載されるように、そして驚くべき低用量で、異常細胞および異常組織の標的遺伝子のmRNAを特異的に標的化する。
【0152】
疾患の予防においては、標的遺伝子は、疾患の開始または維持に必要な遺伝子である場合も、また、疾患に罹患する高いリスクと関係があるとして同定されている遺伝子である場合もある。疾患の処置においては、標的化ポリヌクレオチドは、疾患を呈している細胞または組織と接触させることができる。例えば、ガンと関係があるか、または腫瘍細胞の中で高レベルで発現されている、変異した遺伝子の転写において形成されたmRNA全体またはその一部に実質的に相補的な配列を含む標的化ポリヌクレオチドは、ガン細胞または腫瘍と接触させられる場合も、またはそれらの中に導入される場合もある。
【0153】
細胞増殖性障害および/または分化障害の例としては、ガン(例えば、ガン腫、肉腫)、転移性障害、または造血性新生物障害(例えば、白血病)が挙げられる。転移性腫瘍は、多数の原発性の腫瘍のタイプ(膵臓、前立腺、結腸、肺、乳房、および肝臓を起源とするものを含むがこれらに限定されない)から生じ得る。本明細書中で使用される場合は、用語「ガン」、「過増殖」、および「新生物」は、自律的に増殖する能力(すなわち、迅速に増殖している細胞増殖を特徴とする異常な状態)を有している細胞をいう。これらの用語は、組織病理学的タイプまたは侵襲性の程度にはかかわらず、ガンの増殖または腫瘍形成性のプロセス、転移組織または悪性に転換した細胞、組織、もしくは臓器のあらゆるタイプを含むように意味される。増殖性障害にはまた、造血系を起源とする(例えば、骨髄、リンパ系、または赤血球の系統、あるいはそれらの前駆細胞から生じる)過形成/新生物細胞が関与している疾患を含む、造血系の新生物障害も含まれる。
【0154】
siRNAの組み合わせ
本発明のいくつかの実施形態によっては、2つ以上のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む薬学的組成物が提供される。これらのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドにはそれぞれ、呼吸器系ウイルスのゲノムの中の配列を標的化する遺伝子が含まれる。関連する実施形態により、組み合わせを使用することによる、細胞を処置する方法、および呼吸器系ウイルスによる感染を処置する方法、ならびに、呼吸器系ウイルスによる感染を処置することを目的とする薬学的組成物の製造におけるそのような組み合わせ組成物の使用が提供される。組み合わせの個々のポリヌクレオチド成分は、ウイルス病原体のゲノムの中の同じ遺伝子の異なる部分、または異なる遺伝子、または1つの遺伝子のいくつかの部分、さらには、1つ以上の遺伝子を標的化することができる。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組み合わせを使用することの利点は、所定の遺伝子の発現を阻害することの利点が組み合わせにおいて増幅されることである。より大きな効力は、複数の標的化配列の使用により、遺伝子をノックダウンさせること、またはウイルスゲノムをサイレンシングさせることにおいて得られる。ウイルスの複製を阻害することにおける大きな効力は、ウイルスゲノムの中の1つ以上の遺伝子を標的化することによって得られる。
【0155】
薬学的組成物
本発明の標的化ポリヌクレオチドは、本明細書中では、「活性のある化合物」または「治療薬」と呼ばれる。これらの治療薬は、被験体への投与に適している薬学的組成物の中に取り込ませることができる。
【0156】
本明細書中で使用される場合は、「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与と適合する、任意の、そして全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗生物質および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを含むように意図される。適切な担体は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Gennaro AR(編)第20版(2000)Williams & Wilkins PA,USA、およびWilson and GisvoldのTextbook of Organic Medicinal and Pharmaceutical Chemistry,Delgado and Remers,Lippincott−Raven(これらは引用により本明細書中に組み入れられる)のようなテキストに記載されている。そのような担体または希釈剤の中で使用することができる成分の好ましい例としては、水、生理食塩水、リン酸塩、炭酸塩、アミノ酸溶液、Ringer溶液、デキストロース(グルコースと同義)溶液、および5%のヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。限定ではない例として、デキストロースは、5%または10%の水溶液として使用することができる。リポソームおよび非水性の担体(例えば、不揮発性油)もまた使用される場合がある。薬学的活性のある物質についてのそのようなビヒクルおよび試薬の使用は当該分野で周知である。補助活性化合物もまた、組成物の中に取り込ませることができる。
【0157】
本発明の薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合するように処方される。投与経路の例としては、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、鼻腔投与、吸入、経皮(局所)投与、経粘膜投与、および直腸投与)が挙げられる。非経口投与、静脈内投与、皮内投与、または皮下投与に使用される溶液または懸濁液には、以下の成分を含めることができる:滅菌の希釈剤(例えば、注射用滅菌水、生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成の溶媒);抗生物質(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム);キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝液(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩)、ならびに弾力性の調整のための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。
【0158】
吸入による投与のためには、複数の化合物が、適切な推進剤(例えば、二酸化炭素のような気体)を含む加圧された容器またはディスペンサー、あるいはネブライザーからエアゾールスプレーの形態で送達される。
【0159】
1つの実施形態においては、活性のある化合物は、体内からの迅速な排除から化合物を保護するであろう担体とともに、例えば、徐放処方物(インプラントおよびマイクロカプセル化された送達システムを含む)として調製される。徐放調製物の適切な例としては、抗体を含む固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成型された製品(例えば、膜、またはマイクロカプセル)の形態である。徐放マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドからなる注射可能なマイクロスフェア)、ならびに、ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸)が挙げられる。ポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸)は、100日以上もの間分子を放出することが可能であるが、特定のヒドロゲルは、より短い期間にわたり薬学的活性のある物質を放出する。有利なポリマーは生体分解性であるか、または生体適合性である。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染させられた細胞に対して標的化させられたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製することができる。有利な形態(例えば、マイクロスフェア)を有している徐放調製物は、上記に記載されたような材料から調製することができる。
【0160】
本発明のsiRNAポリヌクレオチドはベクターに挿入することができ、遺伝子治療用ベクターとして使用することができる。遺伝子治療用ベクターは、例えば、米国特許第5,703,055号に記載されているように、任意の多数の経路によって被験体に送達することができる。したがって、送達にはまた、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号)、または定位固定注射(例えば、Chenら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:3054−3057を参照のこと)も含まれ得る。遺伝子治療用ベクターの薬学的調製物には、許容される希釈剤の中に遺伝子治療用ベクターを含めることができ、また、その中に遺伝子送達ビヒクルが組み込まれている遅延放出マトリックスを含めることもできる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターを組み換え体細胞(例えば、レトロウイルスベクター)から完全な状態で生じさせることができる場合には、薬学的調製物には、遺伝子送達システムを生じる1つ以上の細胞を含めることができる。
【0161】
薬学的組成物は、キットの中に、例えば、容器、パック、またはディスペンサーの中に、投与についての説明書とともに含めることができる。
【0162】
本発明にはまた、被験体の呼吸器系ウイルスによる感染を処置するための薬学的組成物または医薬品の製造における治療薬の使用も含まれる。
【0163】
送達
いくつかの実施形態においては、本発明のsiRNAポリヌクレオチドは、リポソームによって媒介されるトランスフェクションによって、例えば、市販されている試薬または技術(例えば、Oligofectamine(商標)、LipofectAmine(商標)試薬、LipofectAmine 2000(商標)(Invitrogen))を使用することによって、さらには、エレクトロポレーション、および同様の技術によって送達される。加えて、siRNAポリヌクレオチドは、動物モデル(例えば、齧歯類またはヒト以外の霊長類)に、呼吸管への吸入または点滴によって送達される。動物モデルで使用されるさらに別の経路としては、静脈内(IV)、皮下(SC)、および関連する投与経路が挙げられる。siRNAを含む薬学的組成物には、siRNAの安定性を保護する、siRNAの存続期間を長くする、siRNA機能を強化する、または特異的組織/細胞に対してsiRNAを標的化させるさらに別の複数の成分が含まれる。これらには、様々な生体分解性ポリマー、陽イオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン)陽イオン性コポリペプチド(例えば、ヒスチジン−リジン(HK)ポリペプチド)(例えば、MixsonらのPCT国際公開第01/47496号、Biomerieuxの同第02/096941号、およびMassachusetts Institute of Technologyの同第99/42091号を参照のこと)、PEG化された陽イオン性ポリペプチド、およびリガンドが取り込まれているポリマーなど、正電荷を有しているポリペプチド、PolyTranポリマー(天然の多糖類、スクレログルカンとしても知られている)、標的化リガンドと結合したポリマーからなるナノ粒子(TargeTran変異体)、界面活性剤(Infasurf;Forest Laboratories,Inc.;ONY Inc.)、および陽イオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン)が含まれる。Infasurf(登録商標)(カルファクタント)は、気道内注入に使用されるウシの肺から単離された天然の肺界面活性剤であり;これには、リン脂質、中性脂質、および疎水性の界面活性剤が結合したタンパク質BおよびBが含まれる。ポリマーは、一次元また多次元のいずれかであり得、20ミクロン未満、20から100ミクロンの間、または100ミクロンを越える直径を有しているマイクロ粒子またはナノ粒子でもあり得る。上記ポリマーは、特定の組織または細胞の受容体もしくは分子に特異的なリガンド分子を持つことができ、したがって、siRNAの標的化させられた送達のために使用することができる。siRNAポリヌクレオチドはまた、陽イオン性リポソームをベースとする担体(例えば、DOTAP、DOTAP/コレステロール(Qbiogene,Inc.)、および他のタイプの脂質水溶液によっても送達される。加えて、小さい割合(5〜10%)のグルコース水溶液、およびInfasurfが、siRNAの気道への投与のための有効な担体である30。
【0164】
蛍光顕微鏡によって試験された5%のグルコースとInfasurfの経口−気管送達溶液の中に懸濁させられた蛍光標識されたsiRNAを使用することにより、鼻腔経路によって、または経口−気管経路によってマウスにsiRNAが送達され、そして肺組織が洗浄された後に、siRNAが肺の中で広い範囲に分配されていたことが示されている(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる共有にかかる国際公開第2005/01940号を参照のこと)。マウスの鼻腔経路および肺(上部および深部呼吸器)へのsiRNAの送達は、指標遺伝子とsiRNA標的の融合物を有しているプラスミドの中でsiRNAと同時に送達された指標遺伝子(GFPまたはルシフェラーゼ)をうまくサイレンシングさせることが示された(共有にかかる国際公開第2005/01940号を参照のこと)。加えて、他者との共同実験によって本発明者らによって報告された実験では、SARSに感染したアカゲザルにおいて、siRNA種がSARSコロナウイルスの複製を阻害し、それにより、肺の病理を緩和することが明らかになった30。
【0165】
siRNA組み換え体ベクター
本発明の別の態様は、本発明のsiRNAポリヌクレオチドを含むベクター(好ましくは、発現ベクター)に関する。本明細書中で使用される場合は、用語「ベクター」は、それが連結させられている別の核酸を運搬することができる核酸分子いう。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、さらに別のDNAセグメントをその中に連結させることができる、環状の二本鎖DNAループをいう。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここでは、さらに別のDNAセグメントをウイルスゲノムの中に連結させることができる。特定のベクターは、それらが動作可能であるように連結させられた遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは本明細書中では「発現ベクター」と呼ばれる。一般的には、組み換えDNA技術において利用される発現ベクターは、多くの場合はプラスミドの形態である。プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書中では、「プラスミド」と「ベクター」は互換的に使用することができる。しかし、本発明は、同等の機能を担うそのような他の形態の発現ベクター(例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を含むように意図される。
【0166】
本発明の組み換え体発現ベクターには、本発明の核酸が宿主細胞の中での核酸の発現に適している形態で含まれる。これは、組み換え体発現ベクターに、発現させられる核酸配列に対して動作可能であるように連結させられた、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択された1つ以上の調節配列が含まれることを意味する。組み換え体発現ベクターの中では、「動作可能であるように連結させられた」は、目的のヌクレオチド配列がヌクレオチド配列の発現を可能にする様式(例えば、インビトロの転写/翻訳システムにおいて、あるいは、ベクターが宿主細胞の中に導入される場合には宿主細胞の中で)で調節配列(単数または複数)に対して連結させられていることを意味するように意図される。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むように意図される。そのような調節配列は、例えば、Goeddel(1990)GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.に記載されている。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞の中でヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、および特定の宿主細胞の中でのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。なお別の実施形態においては、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞の中で発現させられる。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufmanら、(1987)EMBO J 6:187−195)が挙げられる。哺乳動物細胞の中で使用される場合は、発現ベクターの制御機能は、多くの場合は、ウイルスの調節エレメントによって提供される。例えば、一般的に使用されているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40に由来する。さらに別のベクターとしては、ミニ染色体(例えば、細菌人工染色体、酵母人工染色体、または哺乳動物人工染色体)が挙げられる。原核細胞および真核細胞の両方についての他の適切な発現システムについては、例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989の第16章と第17章を参照のこと。
【0167】
別の実施形態においては、組み換え体である哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞タイプ(例えば、呼吸器の細胞)の中で核酸の発現を優先的に指示することができる。組織特異的調節エレメントは当該分野で公知である。本発明によってはさらに、発現ベクターの中にクローニングされた本発明のDNA分子が含まれている組み換え体発現ベクターが提供される。DNA分子は、ウイルスRNAを標的化するsiRNAを含むRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を可能にする様式で調節配列に動作可能であるように連結させられる。様々な細胞のタイプの中でのRNA分子の継続的な発現を指示する、核酸に動作可能であるように連結させられる調節配列を選択することができ、例えば、アンチセンスRNAの構成的、組織特異的、または細胞型特異的発現を指示するウイルスプロモーターおよび/もしくはエンハンサー、または調節配列を選択することができる。
【0168】
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術によって、原核細胞または真核細胞に導入することができる。本明細書中で使用される場合は、用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、宿主細胞に外来核酸(例えば、DNA)を導入するための様々な当該分野で理解されている技術を示すように意図され、これには、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションが含まれる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするための適切な方法は、Sambrookら(2001)、Ausubelら(2002)、および他の実験室マニュアルに見ることができる。
【0169】
処置方法
本発明は、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子の病理学的発現と関係がある哺乳動物の疾患を処置するための方法に関する。この方法には、DNAあるいはRNAレベルで、標的であるICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子のうちの少なくとも1つと相互作用する阻害性核酸組成物を哺乳動物に投与する工程が含まれる。核酸組成物は、哺乳動物の組織に導入されると、標的であるICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子のうちの1つ以上の発現を抑制することができる。この処置方法は、特に、哺乳動物の組織の中での、ガンまたは前ガンの増殖のような疾患に向けられる。多くの場合、組織は、乳房組織、結腸組織、前立腺組織、皮膚組織、骨組織、耳下腺組織、膵臓組織、腎臓組織、子宮頸部組織、リンパ節組織、または卵巣組織である。よくあるケースにおいては、阻害剤は、siRNA、RNAi、shRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、デコイ分子、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合体化DNA、カプセル化されたDNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、裸のRNA、カプセル化されたRNA、ウイルスRNA,二本鎖RNA、RNA干渉を生じることができる分子、またはそれらの組み合わせである。
【0170】
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を説明する。これらは、明細書全体に、および特許請求の範囲に示されている本発明の範囲を限定するようには見なされるべきではない。
【実施例】
【0171】
ガンの処置のためのRNA干渉に適用される新規の標的遺伝子を同定し、これらの標的に特異的なsiRNAの腫瘍阻害特性を評価するための実験を行った。具体的には、ICT−1053、ICT−1052、ICT−1027、ICT−1051、ICT−1054、ICT−1020、ICT−1021、ICT−1022、およびICT−1022を標的化することによって実験を行った。
【0172】
2つのsiRNA標的配列をそれぞれの遺伝子の中で選択し、BLASTによって確認し、そして配列をQiagen Inc(Germantown,MD)によって合成した。これらの実施例で報告される実験においては、それぞれの遺伝子についての2つの特異的siRNA配列の混合物を、異種移植片モデルに、または培養物中の細胞に繰り返し送達した。ヒトVEGF siRNAを、選択したsiRNAの効果を評価するためにそれに対するポジティブ対照として使用した。
【0173】
(実施例1)
低分子干渉RNA(siRNA)
siRNA二本鎖を、標的であるICT−1052、ICT−1053、またはICT−1027(配列番号1、3、および5)、あるいは、ICT−1051、ICT−1054、ICT−1020、ICT−1021、ICT−1022、またはICT−1022のDNA配列の選択した標的化領域に基づいて作製した。特定の実施形態においては、設計した配列は、AA−(N)m−TT(ここでは、15≦m≦21)を含み、約30%から70%のG−C含有量を有する。適切な配列が見つからない場合は、断片の大きさを29ヌクレオチドまでの配列に伸張する。特定の実施形態においては、ポリヌクレオチドの3’末端は、TTまたはUUによって表される突出を持つ(すなわち、対合していない塩基を有している)。理論に束縛されることは望ましくないが、siRNA二本鎖上の対称3’突出は、低分子干渉リボヌクレオタンパク質粒子(siRNP)が、センスとアンチセンスである標的RNAを切断するsiRNPの適切な等しい割合で形成されることを確実にすることを手助けすると考えられる(Elbashirら、Genes & Dev.15:188−200,2001)。
【0174】
ICT−1052 siRNA:21bpのセンスまたはアンチセンスsiRNAを配列番号1の標的化された領域に基づいて同定した。これらを表2に示す。
【0175】
【表2】
ICT−1053 siRNA:21bpのセンスまたはアンチセンスsiRNAを配列番号3の標的化された領域に基づいて同定した。これらを表3に示す。
【0176】
【表3】
ICT−1027 siRNA:21bpのセンスまたはアンチセンスsiRNAを配列番号5の標的化された領域に基づいて同定した。これらを表4に示す。
【0177】
【表4】
さらに別の標的化された配列を表5〜18において特定する。
【0178】
【表5】
【0179】
【表6】
【0180】
【表7】
【0181】
【表8】
【0182】
【表9】
【0183】
【表10】
【0184】
【表11】
【0185】
【表12】
【0186】
【表13】
【0187】
【表14】
【0188】
【表15】
【0189】
【表16】
【0190】
【表17】
【0191】
【表18】
。
【0192】
(実施例2)
ICT−1053 siRNAによる腫瘍増殖の阻害
MDA−MB−435ヒト乳ガン細胞(ATCC、Manassas,VA)を、10%のウシ胎児血清(FBS)を加えたRPMI 1640培地(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)(1つのT−75フラスコに対して20ml)の中で、37℃、5%のCO2で維持した。50μlのOPTI−MEM(Invitrogen,Carlsbad,CA)中の4×105個のMDA−MB−435細胞を、腫瘍を誘導するために、0日目にマウスの乳頭下の脂肪体に注射した。
【0193】
11日目と18日目に、マウスを、20μlのPBSの中の、10μgのICT−1053 siRNA(5μgのICT−1053−siRNA−bと混合した5μgのICT−1053−siRNA−b)または10μgの非特異的siRNA(NC)のネガティブ対照のいずれかで処置した。
【0194】
ICT−1053 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0195】
【化2】
ICT−1053 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0196】
【化3】
ポジティブ対照として、腫瘍を2つのVEGF siRNA阻害剤で処置した。VEGF−siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0197】
【化4】
VEGF−siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0198】
【化5】
ネガティブ対照(NC−siRNA)として、腫瘍に、いずれのヒトまたはマウスの遺伝子配列とも相同性を有していない2つの緑色蛍光タンパク質(GFP)−siRNA二本鎖を注射した。GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖配列を、実施例5の中で以下に示す(配列番号85〜88)。
【0199】
siRNA二本鎖を、エレクトロポレーションを使用して腫瘍異種移植片に直接トランスフェクトした。腫瘍の大きさを、それぞれのsiRNA送達の前と、実験の終了時まで最後のsiRNA送達後は1週間に2回、外部キャリパーを使用して長さと幅を測定することによってモニタした。腫瘍の容積は以下のように計算した:
容積=幅2×長さ×0.52
結果を図2に示す。ICT−1053 siRNAで処置した場合に得られた腫瘍の大きさは、非特異的siRNAを用いた場合に見られた大きさよりもはるかに小さく、VEGF siRNAポジティブ対照を用いた場合に得られた腫瘍の大きさと本質的に区別することができた。これは、PDCD10発現をノックダウンさせるICT−1053を標的化するsiRNAが、MDA−MB−435異種移植片によって生じた腫瘍の増殖を強く制限することを示している。
【0200】
(実施例3)
ICT−1052 siRNAによる腫瘍増殖の阻害
概ね、実施例2に記載された手順と同様の実験手順を使用した。本実施例では、対照動物を1×PBSだけで処置した(図3のビヒクル対照)。11日目と18日目に、マウスを、20μlのPBSの中の、10μgのICT−1052 siRNA(5μgのICT−1052−siRNA−bと混合した5μgのICT−1052−siRNA−a)または10μgの非特異的siRNA(NC)のいずれかで処置した。
【0201】
ICT−1052 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0202】
【化6】
ICT−1052 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0203】
【化7】
ポジティブ対照として使用したVEGF−siRNA−aおよびVEGF−siRNA−b二本鎖は、実施例2で使用したものと同じである(配列番号77〜80)。
【0204】
結果を図3に示す。本実施例で使用したICT−1052 siRNAが、ネガティブ対照であるPBSビヒクルおよび非特異的siRNA(NC−siRNA)と比較して腫瘍の大きさを小さくしたことが明らかである。ICT−1052 siRNAの有効な効果は、VEGF siRNAと同じ程度に有効ではなかった。これらの結果は、c−Met発現をノックダウンさせる本実施例で使用したICT−1052 siRNAが、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍増殖を阻害するために有効であることを示している。
【0205】
(実施例4)
ICT−1052 siRNAによる腫瘍増殖の阻害
A549ヒト肺ガン細胞(ATCC,Manassas,VA)を、10%のウシ胎児血清(FBS)を加えたDMEM培地の中で、37℃、5%のCO2で維持した。0日目に、100μlの無血清DMEM培地中の1×107個のA549細胞を、麻酔したヌードマウスの脇腹にs.c.接種した。6日目に腫瘍の大きさを測定し、動物を処置群に無作為に割り当てた。
【0206】
7日目に、それぞれの腫瘍に、エレクトロポレーションで強化したトランスフェクション手順を使用して、20μlのPBSの中の、10μgのICT−1052 siRNA(5μgのICT−1052−siRNA−bと混合した5μgのICT−1052−siRNA−a(配列番号81〜84);実施例3を参照のこと)または10μgの非特異的siRNA(NC)のいずれかを腫瘍内にトランスフェクトした。4回のさらなるsiRNAの送達を、12日目、16日目、20日目、および27日目に行った。腫瘍の大きさを、それぞれのsiRNAの送達前と、最後のsiRNA送達後は1週間に2回測定した。
【0207】
結果を図4に示す。本実施例においては、ICT−1052 siRNAでのA549腫瘍の処置により、非特異的siRNAで処置した腫瘍と比較して、A549異種移植片の増殖速度が有意に阻害されたことが観察された。これらの結果は、腫瘍の中でc−Met発現をノックダウンさせる本実施例で使用したICT−1052 siRNAが、A549肺腫瘍の増殖を効率よく阻害することを示している。
【0208】
(実施例5)
ICT−1052 siRNAとICT−1053 siRNAによる腫瘍増殖の阻害
MDA−MB−435ヒト乳ガン細胞を、10%のFBSを加えたRPMI 1640培地の中で、37℃、5%のCO2で維持した。細胞を、実施例2で使用したものと同じICT−1053 siRNA(配列番号73〜76)で、または実施例3で使用したICT−1052 siRNA(配列番号81〜84)で、2μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地、または5μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地の濃度で、エレクトロポレーション媒介トランスフェクション法を使用してトランスフェクトした。対照群においては、細胞を、エレクトロポレーション媒介トランスフェクション法を使用して、同じ濃度でsiRNA標的化緑色蛍光タンパク質レポーター遺伝子(GFP)でトランスフェクトした。GFP siRNAは、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0209】
GFP−siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0210】
【化8】
GFP−siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0211】
【化9】
トランスフェクションの48時間後に、細胞増殖活性を、Cell Proliferation Kit I(MTTに基づく、ここでは、MTTは、3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−臭化ジフェニルテトラゾリウム、またはチアゾリルブルーである)(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を使用して測定した。それぞれウェルの中の培地を吸引し、その後、2mlの無血清DMEMをそれぞれのウェルに添加した。200μLのMTTストック溶液(MTTストック溶液:10mLのPBS中の50mgのMTT)をそれぞれのウェルに添加した。プレートを、37℃のCO2インキュベーターの中で3時間インキュベートした。このインキュベーション時間の間に、生存可能な細胞は、MTTを水不溶性のホルマザン色素へと変換させる。それぞれのウェルの中の培地が除去されるが、ホルマザンの結晶は除去されない。2mLの酸性イソプロピルアルコール(500mLのイソプロピルアルコール+3.5mLの6N HCl)をそれぞれのウェルに添加し、結晶を約10分かけて完全に溶解させた。それぞれのウェルから100μlを96ウェルプレートに移し、570nmでの吸光度を、Microplate Reader(Model 680,Bio−Rad,Hercules,CA)を使用して650nmでのバックグラウンドを減算して読み取った。
【0212】
結果を図5に示す。ICT−1052 siRNAとICT−1053−siRNAにより、適用されたいずれの用量でも、MDA−MB−435細胞の25〜30%の増殖の阻害が提供されたが、対照試料によっては、わずかに5%またはそれ未満の増殖の阻害しか生じなかったことが明らかとなった。これらのデータは、この実験で使用した標的化siRNAが、培養物中のヒト乳ガン細胞の増殖を阻害するために有効であることを示している。
【0213】
(実施例6)
ICT−1052 siRNAとICT−1053 siRNAによるガン細胞の増殖の阻害
HCT116ヒト結腸直腸ガン細胞を、2.5%のFBSを加えてDMEM培地の中で、37℃および5%のCO2で維持した。HCT116細胞を、実施例2で使用したものと同じICT−1053 siRNA(配列番号73〜76)で、または実施例3で使用したICT−1052 siRNA(配列番号81〜84)で、5μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地の濃度で、エレクトロポレーション媒介トランスフェクション法を使用してトランスフェクトした。対照群においては、細胞を、NC−siRNAで、同じ濃度でトランスフェクトした。
【0214】
トランスフェクション後72時間で、トランスフェクトされたHCT116細胞の中での細胞増殖活性を、実施例5に記載したCell Proliferation Kit I(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を使用して測定した。
【0215】
結果を図6に示す。ICT−1052 siRNAまたはICT−1053 siRNAでの処理によっては、HCT116細胞の増殖の25〜30%の阻害が生じ、一方、NC−siRNAでの処理によっては、模擬処置を行った対照細胞と比較して、わずかに8%しか細胞増殖阻害が生じなかったことが観察された。これらのデータは、ICT−1052 siRNAとICT−1053 siRNAが、培養物中のヒト結腸ガン細胞の細胞増殖の有効な阻害因子であることを示している。
【0216】
(実施例7)
ICT−1052による肺ガン細胞の増殖の阻害
A549ヒト肺ガン細胞(ATCC,Manassas、VA)を、10%のウシ胎児血清(FBS)を加えたDMEM培地の中で、37℃、5%CO2で維持した。A549細胞を、実施例3で使用したものと同じICT−1052 siRNA(配列番号81〜84)で、5μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地の濃度で、エレクトロポレーション媒介トランスフェクション法を使用してトランスフェクトした。対照群においては、A549細胞を、NC−siRNAで、実施例2に記載したように(配列番号85〜88)トランスフェクトした。トランスフェクション後72時間で、トランスフェクトされた細胞の中での細胞増殖活性を、実施例5に記載したようにCell Proliferation Kit I(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を使用して測定した。
【0217】
結果を図7に示す。ICT−1052 siRNAでの処理によっては、A549細胞の約25の細胞増殖阻害が生じ、一方、NC−siRNAでの処理によっては、模擬処置を行った対照細胞と比較して、わずかに5%またはそれ未満しか細胞増殖阻害が生じなかったことが観察された。これらのデータは、ICT−1052 siRNAが、培養物中のヒト肺ガン細胞の細胞増殖を効果的に阻害できることを示している。
【0218】
(実施例8)
ICT−1027 siRNAによる腫瘍増殖の阻害
siRNAを9日目、14日目、および20日目に投与した(図8に矢印で示した)改良を加えて、実施例2および3と同様の実験手順を使用した。マウスを、20μlのPBS中の、10μgのICT−1027 siRNA(5μgのICT−1027−siRNA−bと混合した5μgのICT−1027−siRNA−a)または10μgのGFP−siRNAのいずれかで処置した。
【0219】
ICT−1027 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0220】
【化10】
ICT−1027 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0221】
【化11】
GFP−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例24に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖(配列番号85〜88)の等量の混合物である。siRNA二本鎖を、腫瘍異種移植片の中に腫瘍内注射した。
【0222】
結果を図8に示す。Grb2発現をノックダウンさせるICT−1027 siRNA混合物が、GFP siRNA対照と比較して、MDA−MB−435異種移植片の充実性腫瘍の増殖を有意に阻害することが明らかである。
【0223】
(実施例9)
ICT−1027 siRNAによる腫瘍細胞のアポトーシスの促進
MDA−MB−435ヒト乳ガン細胞を、10%のFBSを加えたRPMI 1640培地の中で、37℃、5%CO2で維持した。細胞を、実施例8に記載した配列を使用してICT−1057 siRNA(配列番号89〜92)で、2μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地または5μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地の濃度で、エレクトロポレーション媒介トランスフェクション法を使用してトランスフェクトした。対照群においては、細胞にはいずれの処置も行わなかった。模擬群においては、細胞を、同じエレクトロポレーション手順を用いて、しかし培地の中にsiRNAを含めずに処理した。トランスフェクション後48時間で、細胞の中でのアポトーシス活性を、Cell Death Detection ELISAキット(Roche Diagnostics)を使用して、細胞質ヒストン−DNA断片(これはアポトーシスの指標である)の定量的決定により測定した。このアッセイは、DNAおよびヒストンに対してそれぞれ特異的であるマウスモノクローナル抗体を使用する定量的サンドイッチ−酵素−免疫アッセイの原理に基づく。これにより、細胞溶解物の細胞質画分の中のモノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソームの特異的決定が可能である。それぞれのウェルの中の細胞を、キットとともに提供される溶解緩衝液で溶解させた。それぞれのウェルから20μlの細胞溶解物を、ストレプトアビジンでコーティングしたマイクロタイタープレートに移し、マウスモノクローナル抗ヒストン−ビオチン抗体とマウスモノクローナル抗DNA−ペルオキシダーゼとともにインキュベートした。結合していない抗体を洗い流した。ヌクレオソームの量を、基質として2,2’−アジノ−ビス−(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸;ABTS)を用いてペルオキシダーゼ活性を測光分析により測定することによって定量的に決定した。その後、プレートをプレートリーダーの上に置き、590nmでの吸光度を、Microplate Reader(Model 680,Bio−Rad,Hercules,CA)を使用して測定した。
【0224】
結果を図9に示す。対照試料および模擬試料と比較して、Grb2遺伝子発現をノックダウンさせるICT−1027 siRNAが、用量依存性の様式で有意なアポトーシスを誘導することが明らかである。結果は、ICT−1027に特異的な阻害性RNAが、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することによってMDA−MB−435異種移植片の腫瘍増殖を阻害することを示唆している(実施例8)。
【0225】
(実施例10)
ICT−1051 siRNAによる乳ガン異種移植片の増殖の阻害
実施例2に記載したものと同様の実験手順を、標的としてのICT−1051(A−Raf)を確認するための本実施例において使用した。
【0226】
11日目と18日目に、MDA−MB−435腫瘍を、10μgのICT−1051 siRNA(5μgのICT−1051−siRNA−bと混合した5μgのICT−1053−siRNA−a)または10μgのNC−siRNAのいずれかで処置した。
【0227】
ICT−1051 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0228】
【化12】
ICT−1051 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0229】
【化13】
NC−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例2に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0230】
結果を図10に示す。A−Raf発現をノックダウンさせるICT−1051 siRNA混合物は、NC−siRNAで処置した異種移植片と比較して、MDA−MB−435異種移植片の増殖速度を低下させた。
【0231】
(実施例11)
ICT−1054 siRNAによる乳ガン異種移植片の増殖の阻害
実施例2に記載したものと同様の実験手順を、ガン治療の標的としてのICT−1054(PCDP6)を確認するための本実施例において使用した。
【0232】
11日目と18日目に、MDA−MB−435腫瘍を、10μgのICT−1054 siRNA(5μgのICT−1054−siRNA−bと混合した5μgのICT−1054−siRNA−a)または10μgのNC−siRNAのいずれかで処置した。
【0233】
ICT−1054 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0234】
【化14】
ICT−1054 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0235】
【化15】
NC−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例2に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0236】
結果を図11に示す。PCDP6発現をノックダウンさせるICT−1054 siRNA混合物は、NC−siRNAで処置した異種移植片と比較して、MDA−MB−435異種移植片の増殖速度を低下させた。
【0237】
(実施例12)
ICT−1020による乳ガン異種移植片の増殖の阻害
実施例2に記載したものと同様の実験手順を、改良したsiRNA投与スケジュールを用いて、ガン治療の標的としてのICT−1020(Dicer)を確認するための本実施例において使用した。
【0238】
本実施例では、MDA−MB−435腫瘍異種移植片を、9日目と14日目に、10μgのICT−1020 siRNA(5μgのICT−1020−siRNA−bと混合した5μgのICT−1020−siRNA−a)または10μgのNC−siRNAのいずれかで処置した。
【0239】
ICT−1020 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0240】
【化16】
ICT−1020 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0241】
【化17】
NC−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例2に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0242】
結果を図12に示す。腫瘍細胞内でのDicer発現を特異的にノックダウンさせるICT−1020 siRNAでの処置により、ネガティブ対照であるNC−siRNAで処置した異種移植片と比較して、MDA−MB−435異種移植片の増殖速度が有意に低下した。
【0243】
(実施例13)
ICT−1021 siRNAによる乳ガンの異種移植片の増殖の阻害
実施例2に記載したものと同様の実験手順を、ガン治療の標的としてのICT−1021(MD2タンパク質)を確認するための本実施例において使用した。11日目と18日目に、MDA−MB−435腫瘍を、10μgのICT−1021 siRNA(5μgのICT−1021−siRNA−bと混合した5μgのICT−1021−siRNA−a)または10μgのNC−siRNAのいずれかで処置した。
【0244】
ICT−1021 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0245】
【化18】
ICT−1021 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0246】
【化19】
NC−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例2に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0247】
結果を図13に示す。腫瘍細胞内でのMD2タンパク質発現を特異的にノックダウンさせるICT−1021 siRNAでの処置により、NC−siRNAで処置した異種移植片と比較して、MDA−MB−435異種移植片の増殖速度が低下した。
【0248】
(実施例14)
ICT−1022 siRNAによる乳ガンの異種移植片の増殖の阻害
実施例2に記載したものと同様の実験手順を、ガン治療の標的としてのICT−1022(GAGE−2)を確認するための本実施例において使用した。本実施例では、MDA−MB−435異種移植片腫瘍を、10日目と15日目に、10μgのICT−1022 siRNA(5μgのICT−1022−siRNA−bと混合した5μgのICT−1022−siRNA−a)または10μgのNC−siRNAのいずれかで処置した。
【0249】
ICT−1022 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0250】
【化20】
ICT−1022 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0251】
【化21】
NC−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例2に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0252】
siRNAで処置したMDA−MB−435異種移植片の増殖曲線を図14に示す。腫瘍細胞内でのGAGE−2発現を特異的にノックダウンさせるICT−1022 siRNAでの処置により、NC−siRNAで処置した異種移植片と比較して、MDA−MB−435異種移植片の増殖速度が有意に低下した。
【0253】
本発明の他の実施形態および使用は、本明細書中に開示される発明の詳細および実施を考慮して当業者に明らかであろう。米国および外国の特許ならびに特許出願を含む、本明細書中で引用された全ての参考文献および材料は、具体的に、そして全体が引用により本明細書中に組み入れられる。明細書および実施例は例として考慮されるにすぎず、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0254】
参考文献
【0255】
【数1】
【0256】
【数2】
【0257】
【数3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ガンの処置の1つの様式としてRNA干渉を誘導するために有用なポリヌクレオチドに関する。さらに具体的には、本発明は、前ガン細胞、ガン細胞、もしくは腫瘍細胞の増殖および/または転移に関与している特定の遺伝子に向けられた標的オリゴヌクレオチド配列に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンまたは前ガンの増殖は、一般的には、両性の腫瘍ではなく悪性腫瘍をいう。悪性腫瘍は両性腫瘍よりも早く増殖し、これらは局部組織に浸潤してこれを破壊する。いくつかの悪性腫瘍は血液系またはリンパ系を介する体中の至る所への転移により拡がる可能性がある。予測不可能であり、制御不可能な増殖は悪性ガンを危険なものとし、多くの場合には致命的となる。
【0003】
悪性ガンの治療的処置は、ガンの発生の初期段階で最も有効である。したがって、初期の腫瘍形成の段階で治療標的を特定し、確認すること、そして、それと関係している強力な腫瘍増殖または遺伝子発現の抑制要素または物質を決定することが極めて重要である。
【0004】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)が配列特異的様式で遺伝子発現を阻害する転写後プロセスである。RNAiプロセスは、少なくとも2工程で起こる:第1の工程においては、より長いdsRNAが内因性のリボヌクレアーゼDicerによって、「小さい干渉RNA」と呼ばれるより短いdsRNAに、または、通常は100未満、50、30、23、または21ヌクレオチド未満の長さのsiRNAに切断される。第2の工程においては、これらのsiRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC;Hammond,S.M.ら、Nature(2000)404,293−296)と呼ばれる多成分リボヌクレアーゼに組み込まれる。siRNAの一方の鎖は、RISCに会合したままとなり、RISCの中のガイダー(guider)ss−siRNAに相補的な配列を有している類似するRNAi対してこの複合体を導く。このsiRNA特異的エンドヌクレアーゼがRNAを消化し、これを不活化させる。このRNAi作用は、細胞内の標的配列に対して、より長いdsRNAまたはより短いsiRNAのいずれかを導入することによって行われ得る。RNAi作用は、標的遺伝子に相補的はdsRNAを生じるプラスミドを導入することによって行うことができることも明らかにされている。様々な生物体でのRNAiに関する開示については、特許文献1(Fireら);特許文献2(Waterhouseら);特許文献3(Heifetzら);Yang,D.ら、非特許文献1、特許文献4(Limmer);および特許文献5(Kreutzerら)を参照のこと。
【0005】
RNAiは、ショウジョウバエ(Drosophila)での(Kennerdellら(2000)Nature Biotech 18:896−898;Worbyら(2001)Sci STKE 2001年8月14日(95):PL1;Schmidら(2002)Trends Neurosci 25(2):71−74;Hammondら(2000)Nature,404:293−298)、シノラブディス・エレガンス(C.elegans)での(Tabaraら(1998)Science 282:430−431)、Kamathら(2000)Genome Biology 2:2.1−2.10;Grishokら(2000)Science 287:2494−2497))、そしてゼブラフィッシュ(Zebrafish)での(Kennerdellら(2000)Nature Biotech 18:896−898)遺伝子機能の決定にうまく使用されてきた。ヒト以外の哺乳動物およびヒトの細胞培養におけるRNAi作用については多数の報告がある(Mancheら(1992)。Mol.Cell.Biol.12:5238−5248;Minksら(1979)J.Biol.Chem.254:10180−10183;Yangら(2001)Mol.Cell.Biol.21(22):7807−7816;Paddisonら(2002).Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(3):1443−1448;Elbashirら(2001)Genes Dev 15(2):188−200;Elbashirら(2001)Nature 411:494−498;Caplenら(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:9746−9747;Holenら(2002)Nucleic Acids Research 30(8):1757−1766;Elbashirら(2001)EMBO J 20:6877−6888;Jarvisら(2001)TechNotes 8(5):3−5;Brownら(2002)TechNotes 9(1):3−5;Brummelkampら(2002)Science 296:550−553;Leeら(2002)Nature Biotechnol.20:500−505;Miyagishiら、(2002)Nature Biotechnol.20:497−500;Paddisonら(2002)Genes & Dev.16:948−958;Paulら(2002)Nature Biotechnol.20:505−508;Suiら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(6):5515−5520;Yuら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(9):6047−6052)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第99/32619号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/53050号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/61631号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/44895号パンフレット
【特許文献5】独国特許発明第10100586.5号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Curr.Biol.(2000)10:1191−1200)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、ガンのような疾患を処置するための組成物と方法が提供される。これらの組成物は、遺伝子発現のRNA干渉のプロセスを刺激することにより、確認された標的遺伝子の発現をサイレンシングさせるか、ダウンレギュレートするか、または抑制するために有効である。それにより、これらの組成物と方法は、腫瘍増殖を阻害する。本発明によってはまた、腫瘍増殖を阻害するために、中和抗体または低分子薬物を使用する確認された標的遺伝子産物の不活化により、ガンのような疾患を処置するための方法も提供される。
【0009】
さらに具体的には、これらの組成物および方法は、特に、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子から選択された標的遺伝子(本明細書中では「標的遺伝子(Target Gene)」(単数または複数))の病理学的発現と関係している、哺乳動物でのガンの増殖または前ガンの増殖が焦点となっている。これらの組成物は、哺乳動物の組織に導入されると標的遺伝子の発現を阻害する。これらの方法には、本発明の組成物をそれが必要な被験体に対して、ガン性の組織または臓器の中での標的遺伝子の発現を阻害するために有効な量で投与する工程が含まれる。
【0010】
第1の態様においては、本発明により、その長さが200ヌクレオチド以下である、単離された標的化ポリヌクレオチドが提供される。このポリヌクレオチドには、標的遺伝子またはその相補体を標的化する第1のヌクレオチド配列が含まれる。第1のヌクレオチド配列またはその相補体は、15から30までの長さの任意の数のヌクレオチドであり、いくつかの実施形態においては、その長さは21から25ヌクレオチドである。
【0011】
別の態様においては、先の段落に記載された本発明のポリヌクレオチドにはさらに、ループ配列によって第1のヌクレオチド配列とは離れて配置された第2のヌクレオチドが含まれる;第2のヌクレオチド配列は、
a)第1のヌクレオチド配列と実質的に同じ長さを有しており、そして、
b)第1のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であり、その結果、このポリヌクレオチドは、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに適している条件下でヘアピン構造を形成する。
【0012】
先の段落に記載された直鎖のポリヌクレオチドとヘアピンポリヌクレオチドの多くの実施形態においては、第1のヌクレオチド配列は、以下から構成される:
a)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択された配列を標的化する配列(本明細書中では「標的配列(Target Sequence」);
b)項目a)に提供された標的化配列よりも長く、これを含む伸張配列であって、ここでは、伸張配列は標的遺伝子を標的化し、標的化配列は標的配列を標的化する、伸張配列;
c)少なくとも15ヌクレオチドの長さの標的配列を標的化する、選択された標的配列よりも短い配列の断片;
d)5個までのヌクレオチドが選択された標的配列とは異なる、標的化配列;または
e)a)〜d)に提供された配列の相補体。
【0013】
一般的な実施形態においては、本明細書中に記載される直鎖のポリヌクレオチドは、標的配列から構成され、これには状況に応じて、選択された配列の3’末端に結合させられた2ヌクレオチドの突出が含まれる。関連する一般的な実施形態においては、本明細書中に記載されるヘアピンポリヌクレオチドは、第1の選択されたヌクレオチド標的配列、ループ配列、および標的配列に実質的に相補的な第2のヌクレオチド配列から構成される。
【0014】
さらなる実施形態においては、ポリヌクレオチドはDNAまたはRNAであるか、あるいは、ポリヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方が含まれる。
【0015】
さらに別の態様においては、本発明により、本明細書中に記載される第1の直鎖の標的化ポリヌクレオチド鎖と、この第1のポリヌクレオチドの少なくとも最初のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であり、それにハイブリダイズする第2のヌクレオチド配列を含む第2のポリヌクレオチド鎖が含まれている、二本鎖のポリヌクレオチドが提供される。
【0016】
なおさらなる態様においては、本発明により、本明細書中に記載される複数の直鎖の標的化ポリヌクレオチド、二本鎖のポリヌクレオチド、および/またはヘアピンポリヌクレオチドが含まれている、ポリヌクレオチドの組み合わせあるいは混合物が提供される。この場合、個々のポリヌクレオチドは、1つ以上の選択された標的遺伝子の中の別の選択された標的配列を標的化する。
【0017】
なおさらなる態様においては、本発明により、本明細書中に記載される直鎖の標的化ポリヌクレオチドまたはヘアピン型の標的化ポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。一般的な実施形態においては、ベクターは、プラスミド、コスミド、組み換え体ウイルス、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、トランスポゾン、またはミニ染色体である。
【0018】
ベクターのさらに一般的な実施形態においては、制御エレメントは、その発現を促進するために有効な標的化ポリヌクレオチドと動作可能であるように連結させられる。さらに別の態様によっては、本明細書中に記載される1つ以上の直鎖のポリヌクレオチドでトランスフェクトされた細胞、または本明細書中に記載される1つ以上のヘアピンポリヌクレオチドでトランスフェクトされた細胞、または上記ポリヌクレオチドの組み合わせでトランスフェクトされた細胞が提供される。
【0019】
なおさらなる態様においては、本発明により、本明細書中に記載される1つ以上の直鎖のポリヌクレオチドまたはヘアピンポリヌクレオチドまたはそれらの混合物と、薬学的に許容される担体が含まれている薬学的組成物が提供される。この場合、個々のポリヌクレオチドは、標的遺伝子の中の別の標的配列、またはそれらの任意の2つ以上を標的化する。
【0020】
なお別の態様においては、本発明により、本明細書中に記載される標的遺伝子を標的化する配列を有しているポリヌクレオチドを合成する方法が提供される。これらの方法には以下の工程が含まれ、それにより、完全なポリヌクレオチドが提供される:
a)活性のある反応性末端を含み、その配列の第1の末端にあるヌクレオチドに対応しているヌクレオチド試薬を提供する工程、
b)先の工程による活性のある反応性末端と反応させて、ポリヌクレオチド配列の長さを1ヌクレオチド伸ばすために、活性のある反応性末端を含み、標的化配列の連続している位置に対応しているさらなるヌクレオチドを付加させ、そして望ましくない生成物と過剰な試薬を除去する工程、および、
c)工程b)を、配列の第2の末端にあるヌクレオチドに対応するヌクレオチド試薬が付加されるまで繰り返す工程。
【0021】
なおさらなる態様においては、本発明により、ガン細胞の増殖を阻害する方法が提供される。この方法には、細胞と、本明細書中に記載される1つ以上の直鎖の標的化ポリヌクレオチドまたはヘアピン型の標的化ポリヌクレオチドまたはそれらの混合物が含まれている組成物とを、細胞内への1つ以上のポリヌクレオチドの取り込みを促進する条件下で接触させる工程が含まれる。
【0022】
さらに別の態様においては、本発明により、ガン細胞においてアポトーシスを促進する方法が提供される。この方法には、細胞と、本明細書中に記載される1つ以上の直鎖の標的化ポリヌクレオチドまたはヘアピン型の標的化ポリヌクレオチドまたはそれらの混合物が含まれている組成物とを、細胞内への1つ以上のポリヌクレオチドの取り込みを促進する条件下で接触させる工程が含まれる。
【0023】
なお別の態様においては、本発明により、哺乳動物組織の中でのガンまたは前ガンの増殖を阻害するための方法が提供される。ここでは、この方法には、組織と、1つ以上の標的遺伝子を含むDNAまたはRNAと相互作用する本発明の阻害性の標的化ポリヌクレオチドとを接触させる工程が含まれる。標的化ポリヌクレオチドは、組織の細胞の中での1つ以上の標的遺伝子の発現を阻害する。この方法のいくつかの実施形態においては、組織は、乳房組織、結腸組織、前立腺組織、皮膚組織、骨組織、耳下腺組織、膵臓組織、腎臓組織、子宮頸組織、リンパ節組織、または卵巣組織である。さらには、阻害性の標的化ポリヌクレオチドは、核酸分子、デコイ分子、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合体化DNA、カプセル化されたDNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、裸のRNA、カプセル化されたRNA、ウイルスRNA,二本鎖RNA、分子、またはそれらの組み合わせである。
【0024】
なおさらなる態様においては、本発明により、本明細書中に記載される直鎖の標的化ポリヌクレオチドまたはヘアピン型の標的化ポリヌクレオチド、またはそれらの2つ以上の混合物の使用が提供される。この場合、個々のポリヌクレオチドは、被験体の中でのガンまたは前ガンの増殖を処置するために有効な薬学的組成物の製造において、標的遺伝子を標的化する。この使用のいくつかの実施形態においては、ガンまたは増殖は、乳房組織、結腸組織、前立腺組織、皮膚組織、骨組織、耳下腺組織、膵臓組織、甲状腺組織、腎臓組織、子宮頸組織、肺組織、リンパ節組織、骨髄の造血組織、または卵巣組織から選択される組織の中で見られる。この使用のさらに別の一般的な実施形態においては、それぞれのポリヌクレオチドの第1のヌクレオチド配列は、以下から構成される:
a)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択された配列を標的化する配列(本明細書中では「標的配列」);
b)項目a)に提供された標的化配列よりも長く、これを含む伸張配列であって、ここでは、伸張配列は標的遺伝子を標的化し、標的化配列は標的配列を標的化する、伸張配列;
c)少なくとも15ヌクレオチドの長さの標的配列を標的化し、選択された標的配列よりも短い配列の断片;
d)5個までのヌクレオチドが選択された標的配列とは異なる、標的化配列;または
e)a)〜d)に提供された配列の相補体。
この使用のなおさらなる実施形態においては、被験体はヒトである。
【0025】
なおさらなる態様においては、本発明により、被験体の中でのガン、腫瘍、または前ガンの増殖を処置するために有効な薬学的組成物の製造における、標的遺伝子のポリペプチドの生産に対して向けられた1つ以上の抗体の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のポリヌクレオチドの様々な実施形態の模式図。パネルA、直鎖のポリヌクレオチドの実施形態。長さは200ヌクレオチド以下であり、15ヌクレオチド以上である。b)においては、特異的な標的化配列がより大きな標的化配列の中に含まれる。d)においては、黒っぽい垂直の棒状の部分は、置換されたヌクレオチドを模式的に示す。パネルB、200ヌクレオチド以下の全長のヘアピンポリヌクレオチドの1つの実施形態。
【図2】ICT−1053(PCDP)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図3】ICT−1052(cMet)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図4】ICT−1052(cMet)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、A549異種移植片の腫瘍の大きさの提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図5】ICT−1052 siRNAもしくはICT−1053 siRNA、または対照siRNAで処理した場合の、培養物中のMDA−MB−435細胞の増殖の阻害の提示。データは、平均値として示される。
【図6】ICT−1052 siRNAもしくはICT−1053 siRNA、または対照siRNAで処理した場合の、培養物中のHCT116ヒト結腸ガン細胞の増殖の阻害の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図7】ICT−1052 siRNAまたは対照siRNAで処理した場合の、培養物中のA549ヒト肺ガン細胞の増殖の阻害の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図8】ICT−1027(GRB2 BP)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図9】ICT−1027 siRNAまたは対照siRNAでの処理に反応したMDA−MB−435細胞の中でのアポトーシスの誘導の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図10】ICT−1051(A−Raf)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図11】ICT−1054(PCDP6)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図12】ICT−1020(Dicer)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図13】ICT−1021(MD2タンパク質)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【図14】ICT−1022(GAGE−2)siRNAまたは対照siRNAでのトランスフェクションに反応する時間に対する、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍の大きさの変化の提示。データは、平均+/−SEとして示される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中で特定された全ての特許、特許出願公開、および特許出願は、それらが一語一句本明細書中に示されているかのように、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。本明細書中で特定された全ての技術的な刊行物もまた、引用により本明細書中に組み入れられる。
【0028】
本明細書中では、冠詞「a」、「an」、および「the」は、単数形として、または複数形としての意味を同等に記述する。これらの冠詞の特定の意味は、それらが使用される状況から明らかである。
【0029】
本明細書中で使用される場合は、用語「腫瘍」は、悪性であるか良性であるかにかかかわらず、全ての新生物細胞の成長と増殖を、そして全ての前ガンおよびガンの細胞ならびに組織をいう。
【0030】
本明細書中で使用される場合は、用語「前ガン」は、悪性腫瘍またはガンに至る可能性がある変化に関係している特徴を有している細胞あるいは組織をいう。
【0031】
本明細書中で使用される場合は、用語「ガン」は、制御されていない増殖、特定の機能の喪失、不死性、高い転移の可能性、抗アポトーシス活性の有意な増大、迅速な成長および増殖速度、ならびに、特定の特徴的な形態学的および細胞性マーカーのような特徴を有している細胞あるいは組織をいう。いくつかの状況においては、ガン細胞は腫瘍の形態であろう。そのような細胞は、動物の中に局所に存在する場合があり、他の状況においては、これらは、独立した細胞(例えば、白血球)として血流の中を循環している場合もある。
【0032】
本明細書中で使用される場合は、用語「標的」配列と、類似する用語および表現は、本発明のポリヌクレオチドがそれに対して向けられるガン細胞の核酸の中に存在するヌクレオチド配列に関する。「標的遺伝子」は、遺伝子の発現のレベルまたは遺伝子産物の活性の調節により、疾患の進行が妨げられるおよび/または緩和される、発現させられた遺伝子をいう。具体的には、本発明においては、標的遺伝子には、本明細書中に記載されるような、内因性の遺伝子およびそれらの変異体が含まれる。
【0033】
標的化ポリヌクレオチドは、a)その構成成分が病原体のゲノムに含まれる特定のサブ配列(標的配列と呼ばれる)に相同であるかまたは同一である配列を含むことによるか、あるいは、b)それ自体が標的配列と相同であるかまたは同一である配列を含むことによるかのいずれかにより、ガン細胞の核酸配列を標的化する。細胞内で有効である標的化ポリヌクレオチドは、a)およびb)で特定されたそれぞれの鎖のうちの一方から構成される二本鎖の分子である。そのようにガン細胞の核酸配列を標的化する任意の二本鎖の標的化ポリヌクレオチドは、RNA干渉の表現形に従って標的配列とハイブリダイズし、それによりRNA干渉を開始する能力を有すると考えられる。
【0034】
被験体の中の標的遺伝子は、例えば、様々なGenBank登録された物質、および類似するデータベースの中の物質において特定された野生型配列と同じ配列を有している場合がある。通常は、そのようなデータベースは公に利用することができる。しかし、標的遺伝子の発現を抑制するために使用される干渉RNAは、その標的に対して完全には相補的ではない場合があり、また、標的は、既存のGenBank登録番号が割り当てられた野生型配列であると考えられる配列とは異なっている場合もある。例えば、標的遺伝子には、1つ以上の単一のポリヌクレオチド多形が含まれる場合があり、それにより、GenBank登録番号の中の配列とはわずかに異なる場合がある。加えて、標的遺伝子は、エキソンの別な方法でのスプライシングの産物であるmRNAを生じる場合があり、これによっては、染色体遺伝子よりも含まれているエキソンが少ない成熟mRNAが生じ得る。このような別な方法でスプライシングされたmRNAもまた、野生型遺伝子に対して向けられたRNAi種の標的であり得る。本発明の開示においては、全てのそのような偶然性が、標的遺伝子の概念に含まれ、そして野生型配列を標的化するように開発された任意のRNAi種が、そのような変化したかまたは修飾された転写物をおそらく標的化し、そして標的化配列の概念に含まれる。
【0035】
一般的には、「遺伝子」は、調節機能、触媒機能のいずれかを有しており、そして/またはタンパク質をコードするRNAに転写される能力があるゲノムの中の領域である。真核生物遺伝子は、通常は、イントロンとエキソンを有しており、これは、成熟タンパク質の別のバージョンをコードする様々なRNAスプライシング変異体を生じるように組織され得る。当業者は、本発明に、スプライシング変異体、対立遺伝子変異体、および別のプロモーター部位または別のポリアデニル化部位が原因で生じる転写物を含む、見られ得る全ての内因性遺伝子が含まれることを理解するであろう。内因性の遺伝子は、本明細書中に記載される場合は、変異した内因性の遺伝子である場合もある。この場合、変異は、コード領域の中にある場合も、また、調節領域の中にある場合もある。
【0036】
「アンチセンスRNA」:真核生物においては、RNAポリメラーゼは、構造遺伝子の転写を触媒してmRNAを生じさせる。DNA分子はRNAポリメラーゼの鋳型を含むように設計することができる。この場合、RNA転写物は好ましいmRNAの配列に相補的な配列を有する。RNA転写物は「アンチセンスRNA」と呼ばれる。アンチセンスRNA分子はmRNAの発現を阻害することができる(例えば、Rylovaら、Cancer Res,62(3):801−8,2002;Shimら、Int.J.Cancer,94(1):6−15,2001)。
【0037】
「アンチセンスDNA」または「DNAデコイ」または「デコイ分子」:第1の核酸分子に関して、第2のDNA分子または、第1の分子もしくはその一部の相補配列であるかまたは相補配列に相同である配列を用いて作製された第2のDNA分子または第2のキメラ核酸分子は、第1の分子のアンチセンスDNAまたはDNAデコイまたはデコイ分子と呼ばれる。用語「デコイ分子」にはまた、一本鎖または二本鎖であり得、DNAまたはPNA(ペプチド核酸)を含み(Mischiatiら、Int.J.Mol.Med.,9(6):633−9,2002)、そしてタンパク質結合部位(好ましくは、調節タンパク質の結合部位、より好ましくは、転写因子の結合部位)の配列を含む核酸分子も含まれる。アンチセンス核酸分子(アンチセンスDNAおよびデコイDNA分子を含む)の利用は当該で分野で公知である(例えば、Morishitaら、Ann.NY Acad.Sci.,947:294−301,2001;Andratschkeら,Anticancer Res,21:(5)3541−3550,2001)。
【0038】
「安定化させられたRNA」:安定化させられたRNAi、siRNA、またはshRNAは、本明細書中に記載される場合は、エキソヌクレアーゼ(RNaseを含む)による消化に対して、例えば、リボース糖の3’位置で修飾された(例えば、上記で定義された置換されたか未置換のアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、またはアルキニルオキシ基を含めることによる)か、または保護を得るためにその構造の中の別の場所で修飾されたヌクレオチドアナログを使用して保護される。RNAi、siRNA、またはshRNAはまた、3’−3’−連結2ヌクレオチド構造(Ortigaoら,Antisense Researcli and Development 2:129−146(1992))および/または2つの修飾されたリン結合(例えば、2つのホスホロチオエート結合)を含めることによって、エキソヌクレアーゼによる3’末端での消化に対して安定化させることもできる。
【0039】
「カプセル化された核酸」(カプセル化されたDNAまたはカプセル化されたRNAを含む)は、マイクロスフェアまたはマイクロ粒子の中にある、比較的非免疫原性の材料でコーティングされた、選択的酵素消化に供される複数の材料でコーティングされた核酸分子をいい、例えば、複数の材料(例えば、ゼラチンと硫酸コンドロイチン)の複合コアセルベーションによって合成されたマイクロスフェアまたはマイクロ粒子をいう(例えば、米国特許第6,410,517号を参照のこと)。マイクロスフェアまたはマイクロ粒子の中のカプセル化された核酸は、そのコード配列の発現を誘導するその能力を保つ方法でカプセル化される(例えば、米国特許第6,406,719号を参照のこと)。
【0040】
「阻害剤」は、特定の機能を阻害および/またはブロックする分子をいう。特定の機能を阻害および/またはブロックする能力を有している任意の分子は、本明細書中で記載される場合には、「試験分子」であり得る。例えば、標的遺伝子の腫瘍形成機能または抗アポトーシス活性について言及される場合には、そのような分子は、特定の標的遺伝子のインビトロおよびインビボアッセイを使用して同定することができる。阻害剤は、標的遺伝子の活性を部分的または完全にブロックする、それらの活性を低下させる、妨害する、または遅らせる、あるいは、その細胞性応答を脱感作させる化合物である。これは、標的遺伝子産物(すなわち、タンパク質)に対する、直接または他の中間体分子を介する結合によって行われ得る。標的遺伝子の遺伝子産物の活性をブロックする(標的遺伝子の腫瘍形成機能または抗アポトーシス活性の阻害を含む)アンタゴニストまたは抗体(例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体)は、そのような阻害剤と考えられる。本発明の阻害剤は、siRNA、RNAi、shRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、デコイ分子、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合体化DNA、カプセル化されたDNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、裸のRNA、カプセル化されたRNA、ウイルスRNA、二本鎖RNA、RNA干渉を生じることができる分子、またはそれらの組み合わせである。本発明の阻害剤のグループにはまた、標的遺伝子の遺伝子修飾されたバージョン(例えば、活性が変化したバージョン)も含まれる。したがって、このグループには、自然界に存在しているタンパク質、さらには、合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、抗体、小さい化学的分子などが含まれる。
【0041】
「阻害剤についてのアッセイ」は、例えば、インビトロで、細胞内で、標的遺伝子を発現させる工程、推定される阻害剤化合物を加える工程、その後、標的遺伝子の活性または転写に対する機能的効果を決定する工程を含む実験手順をいう。標的遺伝子を含むかまたは標的遺伝子を含むと予想される試料は、可能性のある阻害剤で処理される。これらの阻害剤には、核酸をベースとする分子(例えば、siRNA、アンチセンス、二本鎖RNA、およびDNA、二本鎖RNA/DNA、リボザイム、およびトリプレックスなど);およびタンパク質をベースとする分子(例えば、ペプチド、合成のリガンド、短縮型の部分的なタンパク質、可溶性受容体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、イントラボデイー、および単鎖抗体など);ならびに、様々な形態の小さい化学的分子が含まれる。阻害または変化の程度は、対照試料に対して目的の試料による活性の測定値を比較することによって試験される。閾値は阻害を評価するために確立される。例えば、標的遺伝子産物であるポリペプチドの阻害は、適切な対照と比較した標的遺伝子活性の値が80%以下である場合に、得られたと考えられる。
【0042】
本明細書中で使用される場合には、第1の配列またはサブ配列がその配列またはサブ配列のそれぞれの位置で第2の配列またはサブ配列と同じ塩基を有している場合に、第1の配列またはサブ配列は、第2の配列またはサブ配列に対して「同一である」、または「100%の同一性」を有する、または、100%同一の概念を含む用語もしくは表現によって記載される。同一性の決定においては、任意のT(チミジン)またはその任意の誘導体、あるいはU(ウリジン)またはその任意の誘導体は互いに等価であり、したがって、同一である。同一である第1の配列と第2の配列については、ギャップは認められない。
【0043】
標的化ポリヌクレオチドまたはその相補体の配列は、標的配列と完全に同じである場合があり、また、配列の特定の部位に適合していない塩基が含まれる場合もある。不適合の取り込みは本明細書中に十分に記載される。理論に束縛されることは望ましくないが、不適合の取り込みにより、問題の特定の標的配列についてのRNA干渉の表現形を最適化させるための生理学的条件下での意図される程度のハイブリダイゼーションの安定性が提供されると考えられる。同一性の程度により、その塩基が互いに同じである2つの配列の中の位置の割合が決定される。「配列同一性の割合」は以下に示されるように計算される:
【0044】
【化1】
互いに100%未満の同一性である配列は、互いに「類似」しているかまたは「相同」である。相同性の程度または類似性の割合(%)は、2つの配列またはサブ配列の間での同一性の割合(%)に関する同義語である。例えば、互いに少なくとも60%の同一性、または好ましくは少なくとも65%の同一性、または好ましくは少なくとも70%の同一性、または好ましくは少なくとも75%の同一性、または好ましくは少なくとも80%の同一性、またはより好ましくは少なくとも85%の同一性、またはより好ましくは少なくとも90%の同一性、またはなおさらに好ましくは少なくとも95%の同一性を示す2つの配列は、互いに「類似」しているか、または「相同」である。あるいは、siRNA分子のオリゴヌクレオチド配列に関しては、5個以下の塩基、または4個以下の塩基、または3個以下の塩基、または2個以下の塩基、または1個の塩基が異なる2つの配列は、互いに「類似」しているかまたは「相同」であると言われる。
【0045】
加えて、「同一性」および「類似性」は、以下に記載される方法を含むがこれらに限定されない公知の方法によって容易に計算することができる:Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.編,Oxford University Press,New York,1988; Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.編,Academic Press,New York,1993; Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.編,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;および、Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.編,M Stockton Press.New York,1991;およびCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J. Applied Math.,48:1073(1988)。比較のための配列のアラインメントの方法は当該分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.,2:482,1981の局所相同性アルゴリズムによって;Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443,1970の相同性整列アルゴリズムによって;Pearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:2444、1988の類似性の検索の方法によって;これらのアルゴリズムのコンピューター処理によって(Intelligenetics,Mountain View,CaliforniaによるPC/GeneプログラムのCLUSTAL;Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group(GCG),7 Science Dr.,Madison,Wisconsin,USAのGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTAを含むがこれらに限定されない;CLUSTALプログラムは、Higgins and Sharp,Gene,73;237−244,1988;Corpetら、Nucleic Acids Research,16:881−90,1988;Huangら、Computer Applications in the Biosciences,8:1−6,1992;およびPearsonら、Methods in Molecular Biology,24:7−331,1994に詳細に記載されている)を含むがこれらに限定されない)行うことができる。データベースの類似性の検索のために使用することができるプログラムのBLASTファミリーとしては、以下が挙げられる:ヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチド質問配列についてのBLASTN;タンパク質データベース配列に対するタンパク質質問配列についてのBLASTX;タンパク質データベース配列に対するタンパク質質問配列についてのBLASTP;ヌクレオチドデータベース配列に対するタンパク質質問配列についてのTBLASTN;およびヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチド質問配列についてのTBLASTX。Current Protocols in Molecular Biology,第19章,Ausubelら編、Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York,1995を参照のこと。
【0046】
他の場所に明記されない限りは、本明細書中で提供される配列同一性/類似性の値は、プログラムのBLAST 2.0 suiteまたはそれらの後継機を使用して、デフォルトパラメーターを使用して得られた値をいう。Altschulら、Nucleic Acids Res,2;3389−3402,1997。これらのパラメーターのデフォルト設定を将来の必要性に応じて容易に変更することができることが理解される。
【0047】
用語「実質的に同一」または「相同」は、それらの様々な文法上の形態で、ポリヌクレオチドに、記載されるアラインメントプログラムのうちの1つを使用して参照配列と比較して所望される同一性(例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは少なくとも70%の同一性、より好ましくは少なくとも80%の同一性、なおより好ましくは少なくとも90%の同一性、なおさらに好ましくは少なくとも95%)を有している配列が含まれることを意味する。
【0048】
本明細書中で使用される場合は、用語「単離された」および類似の用語は、核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドを記載するために使用される場合には、その天然の状態または本来の状態から取り出されている組成物をいう。したがって、自然界にそれが存在する場合には、これは、その本来の環境から取り出されている。これが合成によって調製されている場合には、これは、合成によって得られた最初の生成物の混合物からこれが取り出されている。例えば、その自然な状態において生存している生物体の中に本来存在する自然界に存在しているポリヌクレオチドは、「単離され」ていないが、その自然な状態においてそれと一緒に存在している少なくとも1つの材料とは分離された同じポリヌクレオチドは、この用語が本明細書中で使用される場合には、「単離されている」。一般的には、少なくとも1つの一緒に存在している物質の除去は、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドの「単離」を構成する。多くの場合においては、いくつかの、多くの、またはほとんどの一緒に存在している物質が、核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドを単離するために除去され得る。インビトロでの合成のプロセスまたは化学合成のプロセスの産物である、核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドは、合成プロセスの結果として、原則的に単離されている。重要な実施形態においては、そのような合成の産物は、使用された試薬および前駆体物質、そしてプロセスによって生じた副産物を除去するために処理される。
【0049】
組成物(例えば、処方物、トランスフェクション組成物、薬学的組成物、または化学反応もしくは酵素反応のための組成物もしくは溶液であり、これらは、自然界には存在しない組成物である)の中に取り込まれたポリヌクレオチドは、これが本明細書中で使用される場合は、その用語の意味において、依然、単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。
【0050】
本明細書中で使用される場合は、「核酸」または「ポリヌクレオチド」、ならびに類似する用語および表現は、自然界に存在しているヌクレオチドからなるポリマー、ならびに、合成のまたは修飾されたヌクレオチドからなるポリマーに関する。したがって、本明細書中で使用される場合は、RNAであるポリヌクレオチド、またはDNAであるポリヌクレオチド、またはデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含むポリヌクレオチドには、自然界に存在している部分(例えば、自然界に存在している塩基と、リボースもしくはデオキシリボース環)が含まれる場合があり、また、これらは、以下に記載される部分のような合成の部分または修飾された部分から構成される場合もある。本発明において使用されるポリヌクレオチドは一本鎖である場合があり、また、塩基対合した二本鎖の構造である場合も、またさらに、3本の鎖が塩基対合した構造である場合もある。
【0051】
核酸およびポリヌクレオチドは、20ヌクレオチド以上の長さ、または30ヌクレオチド以上の長さ、または50ヌクレオチド以上の長さ、または100ヌクレオチド以上の長さ、または1000ヌクレオチド以上の長さ、または何万もしくはそれ以上、または何十万もしくはそれ以上の長さである場合もある。siRNAは本明細書中で定義されるポリヌクレオチドであり得る。本明細書中で使用される場合は、「オリゴヌクレオチド」およびこれをベースとする類似する用語は、自然界に存在しているヌクレオチドからなる短いポリマー、さらには、すぐ前の段落に記載されたような、合成のヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチドからなるポリマーをいう。オリゴヌクレオチドは、10ヌクレオチド以上の長さ、または15、または16、または17、または18、または19、または20ヌクレオチド以上の長さ、または21、または22、または23、または24ヌクレオチド以上の長さ、または25、または26、または27、または28、または29、または30ヌクレオチド以上の長さ、35以上、40以上、45以上、約50ヌクレオチドまでの長さであり得る。siRNAの中で標的化配列として使用されるオリゴヌクレオチド配列は、15から30ヌクレオチドの間のヌクレオチドの任意の数を有し得る。多くの実施形態においては、siRNAは、21から25ヌクレオチドの間の任意の数のヌクレオチドを有し得る。オリゴヌクレオチドは化学合成される場合があり、そして、siRNA、PCRプライマー、もしくはプローブとして使用される場合がある。
【0052】
先の段落で提供された大きさの範囲の重複が原因で、用語「ポリヌクレオチド」と「オリゴヌクレオチド」は、本発明のsiRNAについて言及される場合には、本明細書中では同義的に使用される場合があることが理解される。
【0053】
本明細書中で使用される場合は、「ヌクレオチド配列」、「オリゴヌクレオチド配列」、または「ポリヌクレオチド配列」、および類似する用語は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが有している塩基の配列と、さらには、その配列を持つオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド構造の両方を互換的にいう。ヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列はさらに、塩基の配列が、当該分野で通常使用されているような塩基を指定する文字の特定の並びの記載または記述によって定義される、任意の天然のもしくは合成のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドをいう。
【0054】
「ヌクレオシド」は、通常、生化学、分子生物学、遺伝学のような分野、および本発明の技術分野に関係がある類似する分野の当業者によって、プリンまたはピリミジン塩基に対してグリコシド結合によって連結させられた単糖を含むと理解されている。そして「ヌクレオチド」には、糖の3’または5’位置(ペントースについて)に通常結合しているが、糖の他の位置に存在する場合もある、少なくとも1つのリン酸基を有しているヌクレオシドが含まれる。ヌクレオチド残基は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの中の連続する位置を占める。ヌクレオチドの修飾または誘導は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの中の任意の連続する位置で行われ得る。全ての修飾されたかまたは誘導されたオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが本発明に含まれ、特許請求の範囲の範囲内にある。修飾または誘導は、リン酸基、単糖、または塩基の中で行われる場合もある。
【0055】
限定ではない例として、以下の記載により、特定の修飾されたかまたは誘導されたヌクレオチドが提供される。これらは全て、本発明のポリヌクレオチドの範囲内にある。単糖は、例えば、リボースまたはデオキシリボース以外のペントースまたはヘキソースであることによって修飾される場合がある。単糖はまた、ヒドロキシル基をヒドロ基もしくはアミノ基で置換することによって、さらには、別のヒドロキシル基をアルキル化するかまたはエステル化することによって、などにより修飾される場合もある。2’位置での置換(例えば、2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−アリール、2’−O−アミノアルキル、または2’−デオキシ−2’−フルオロ基)により、オリゴヌクレオチドに対する高いハイブリダイゼーション特性が提供される。
【0056】
オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの中の塩基は、「未修飾の」塩基である場合も、また「天然の」塩基である場合もあり、これには、プリン塩基であるアデニン(A)とグアニン(G)、そしてピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)が含まれる。加えて、これらは、修飾または置換を有している塩基であり得る。修飾された塩基の限定ではない例としては、以下のような他の合成の塩基および天然の塩基が挙げられる:ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトシキウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、ウェイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリン、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよびその他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよびその他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、5−プロピルウラシル、5−プロピニル−シトシン、およびピリミジン塩基の他のアルキル誘導体、6−アゾ−ウラシル、6−アゾ−シトシン、6−アゾ−チミン、5−ウラシル(シュ−ドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ−、8−チオール−、8−チオアルキル−、8−ヒドロキシル−、およびその他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよびその他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−フルオロ−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニン。さらなる修飾された塩基としては、以下が挙げられる:三環式ピリミジン(例えば、フェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)、G−クランプ(例えば、置換されたフェノキサジンシチジン(例えば、9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン))、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[4,5−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)。修飾された塩基にはまた、プリンまたはピリミジンが他の複素環(例えば、7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジン、および2−ピリドン)で置換されたものも含まれ得る。さらなる塩基としては、米国特許第3,687,808号に開示されている塩基、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,858−859頁,Kroschwitz,J.I.編,John Wiley & Sons,1990に開示されている塩基、Englischら、Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613に開示されている塩基、ならびに、Sanghvi,Y.S.,第15章,Antisense Research and Applications,289−302頁,Crooke,S.T.and Lebleu,B.編,CRC Press,1993に開示されている塩基が挙げられる。これらの塩基のうちの特定のものは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増加させるために特に有用である。これらには、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含む、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンおよびN−2、N−6およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、および5−プロピニルシトシンを含む)が含まれる。5−メチルシトシン置換は、核酸二本鎖の安定性を0.6〜1.2℃高めることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.編,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,276−278頁)、そしてこれが現在のところ好ましい塩基置換であり、特に、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせられた場合にさらに好ましい。引用により本明細書中に組み入れられる米国特許第6,503,754号および同第6,506,735号、ならびにそれらの中で引用されている参考文献を参照のこと。修飾にはさらに、以下が含まれる:ポリアミン結合オリゴヌクレオチドが記載されている、米国特許第5,138,045号および同第5,218,105号に開示されている修飾;ホスホロチオエートを含むキラルリン結合が取り込まれているオリゴヌクレオチドが記載されている、米国特許第5,212,295号、同第5,521,302号、同第5,587,361号、および同第5,599,797号に開示されている修飾;修飾された骨格を有しているオリゴヌクレオチドが記載されている、米国特許第5,378,825号、同第5,541,307号、および同第5,386,023号;修飾されたヌクレオ塩基が記載されている、米国特許第5,457,191号および同第5,459,255号;ペプチド核酸が記載されている米国特許第5,539,082号;β−ラクタム骨格を有しているオリゴヌクレオチドが記載されている米国特許第5,554,746号;オリゴヌクレオチドの合成が開示されている米国特許第5,571,902号;アルキルチオヌクレオシドが開示されている米国特許第5,578,718号;2’−O−アルキルグアノシン、2,6−ジアミノプリン、および関連する化合物が記載されている米国特許第5,506,351号;N−2置換プリンを有しているオリゴヌクレオチドが記載されている米国特許第5,587,469号;3−デアザプリンを有しているオリゴヌクレオチドが記載されている米国特許第5,587,470号;結合させられた4’−デスメチルヌクレオシドアナログが記載されている、米国特許第5,223,168号および同第5,608,046号;骨格が修飾されたオリゴヌクレオチドアナログが記載されている、米国特許第5,602,240号および同第5,610,289号;特に、2’−フルオロ−オリゴヌクレオチドの合成方法が記載されている、米国特許第6,262,241号および同第5,459,255号。
【0057】
ヌクレオチド間の結合は、一般的には、3’−5’リン酸結合であり、これは、自然なホスホジエステル結合、ホスホチオエステル結合、およびなお他の合成の結合であり得る。ホスホロチオエート骨格を含むオリゴヌクレオチドはヌクレアーゼ安定性を高める。修飾された骨格の例としては、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル、および他のアルキルホスホネート(3’−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネート、およびキラルホスホネートを含む)、ホスフィネート、ホスホルアミデート(3’−アミノホスホルアミデート、およびアミノアルキルホスホルアミデートを含む)、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェート、およびボラノホスフェートが挙げられる。さらに別の結合としては、ホスホトリエステル、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋されたホスホルアミデート、架橋されたメチレンホスホネート、架橋されたホスホロチオエート、およびスルホンヌクレオチド間結合が挙げられる。他のポリマー架橋としては、これらの2’−5’結合アナログが挙げられる。引用により本明細書中に組み入れられる米国特許第6,503,754号および同第6,506,735号、ならびにそれらの中で引用されている参考文献を参照のこと。
【0058】
上記において説明された修飾を含む任意の修飾を、本発明の標的化ポリヌクレオチドに容易に取り込むことができ、これらは、本発明の標的化ポリヌクレオチドの範囲に含まれる。任意の修飾されたヌクレオチドの使用は、当業者に理解されるように、同じ塩基対合特性を有している自然界に存在しているヌクレオチドの使用と同等である。全ての等価な修飾されたヌクレオチドが、本明細書中に開示され、特許請求の範囲において請求される本発明の範囲に含まれる。
【0059】
本明細書中および特許請求の範囲の中で使用される場合は、用語「相補体」、「相補的」、「相補性」、および類似する用語と表現は、生化学、分子生物学、遺伝学のような分野、および本発明の分野に関係がある類似する分野の当業者によって通常理解されるように、それらの塩基が1対1で相補的な塩基対合を形成する2つの配列をいう。相補的な配列を有している2つの一本鎖(ss)ポリヌクレオチドは、二本鎖(ds)ポリヌクレオチドを形成させるための適切な緩衝液および温度条件下で、互いにハイブリダイズすることができる。限定ではない例として、自然界に存在している塩基が考えられる場合には、Aと(TまたはU)は互いに相互作用し、そしてGとCが互いに相互作用する。他の場所に明記されていない限りは、「相補的」は、「完全な相補性」を現すように意図され、これはすなわち、2つのポリヌクレオチド鎖が互いにアラインメントされた場合に、一方の鎖の中の連続する塩基の配列の中のそれぞれの塩基が、向かい合う鎖上の同じ長さの連続する塩基の配列の中の相互作用する塩基に対して相補的である部分が、鎖の中に少なくとも一部存在するであろうことを意図する。
【0060】
本明細書中で使用される場合は、「ハイブリダイズする」、「ハイブリダイゼーション」、および類似する用語と表現は、相補的な配列を有している鎖が互いに相互作用を生じることによる、核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド二本鎖を形成するプロセスをいう。この相互作用は、1つの対を形成するために特異的に相互作用するそれぞれの鎖の上の相補的な塩基によって起こる。互いにハイブリダイズする鎖の能力は、以下に記載されるように様々な条件に依存する。核酸の鎖は、それぞれの鎖の中の十分な数の対応する位置が、互いに相互作用できるヌクレオチドによって占められている場合に、互いにハイブリダイズする。互いにハイブリダイズするポリヌクレオチド鎖は、完全に相補的である場合がある。あるいは、2つのハイブリダイズしたポリヌクレオチドは、互いに「実質的に相補的」である場合もあり、これは、これらが適合していない塩基を少数有していることを示している。自然界に存在している塩基と、本明細書中に記載されたもののような修飾された塩基はいずれも、相補的な塩基対を形成することに関与している。例として生化学および分子生物学を含むがこれらに限定されない本発明の分野の当業者によっては、二本鎖を形成する鎖の配列は、特異的にハイブリダイズできるためには互いに必ずしも100%の相補性を有している必要はないことが理解される。
【0061】
本明細書中で使用される場合は、「ヌクレオチド突出」および類似する用語および表現は、二本鎖の一方の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を越えて伸びているか、または変更すべきところが変更されている場合に、二本鎖のポリヌクレオチドの二本鎖構造を超えて伸びている対合していないヌクレオチド(単数または複数)をいう。逆に、「平滑」または「平滑末端」、および類似する用語と表現は、二本鎖の末端に対合していないヌクレオチドがない、すなわち、ヌクレオチドの突出がない二本鎖をいう。
【0062】
本明細書中で使用される場合は、「アンチセンス鎖」および類似する用語と表現は、標的配列に対して実質的に相補的である領域を含む、ポリヌクレオチド二本鎖の1つの鎖をいう。本明細書中で使用される場合は、用語「相補性領域」は、配列(例えば、本明細書中で定義されるような標的配列)に対して実質的に相補的であるアンチセンス鎖上の領域をいう。相補性領域が標的配列に対して完全には相補的でない場合には、不適合は、末端領域においては一般的に寛容され、そして存在する場合には、通常、5’および/または3’末端の6、5、4、3、または2ヌクレオチド以内である。
【0063】
用語「センス鎖」および類似する用語と表現は、本明細書中で使用される場合は、標的配列のアンチセンス鎖の1つの領域に対して相補的である領域を含むポリヌクレオチド二本鎖の1つの鎖をいう。したがって、センス鎖は、標的配列と同じであるかまたは実質的に類似する領域を有する。
【0064】
本明細書中で使用される場合は、「断片」および類似する用語と表現は、参照の全長配列よりも短い、核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドの部分をいう。断片の塩基配列は、参照の対応する部分の配列から変化していない;参照の対応する部分と比較して、断片の中には挿入または欠失はない場合がある。本明細書中で意図されるように、核酸またはポリヌクレオチドの断片(例えば、オリゴヌクレオチド)は、15塩基以上の長さ、または16以上、17以上、18以上、または19以上、または20以上、または21以上、または22以上、または23以上、または24以上、または25以上、または26以上、または27以上、または28以上、または29以上、または30以上、または50以上、または75以上、または100塩基以上の長さであり、全長の配列よりも1塩基短い長さまでの長さである。
【0065】
本明細書中で使用される場合は、用語「病理学的発現」および「病原性発現」、ならびに類似する表現は、いずれも「病理学的発現」と言われ、そして病理学的状態または病理学的症状と関係がある遺伝子のディファレンシャルな発現をいう。したがって、病理学的発現は、疾患ではない症状または非病理学的症状において見られる発現レベルとは異なる遺伝子の発現をいう。本開示においては、病理学的発現は、特に、標的遺伝子(すなわち、RNAi治療の標的である遺伝子)として同定された遺伝子をいう。したがって、病理学的発現は、一般的には、遺伝子の過剰発現と遺伝子の低発現の両方をいうが、RNAi治療によって標的化される遺伝子の病理学的発現は、通常、過剰発現であり、RNAi治療は、過剰発現を阻害するかまたは低下させることを目的として行われる。
【0066】
全長の遺伝子またはRNAにはさらに、任意の自然界に存在しているスプライシング変異体、対立遺伝子変異体、他のオルタナティブ転写物、自然界に存在している全長の遺伝子と同じもしくは類似する機能を示すスプライシング変異体、ならびに、得られるRNA分子が含まれる。遺伝子の断片は遺伝子に由来する任意の部分であり得、これは、機能的ドメイン(例えば、触媒ドメイン、DNA結合ドメインなど)を提示する場合も、また提示しない場合もある。
【0067】
「相補的DNA」(cDNA)は、mRNAの配列に相補的な配列を生じる逆転写酵素によりmRNA鋳型からコピーされた一本鎖のDNA分子である。当業者はまた、この用語「cDNA」を、そのような一本鎖のDNA分子とその相補的DNA鎖を含む二本鎖のDNA分子をいうためにも使用する。
【0068】
用語「動作可能であるように連結された」および類似する用語と表現は、調節エレメントと遺伝子またはそのコード領域との間の連結部分を記載するために使用される。すなわち、遺伝子発現は、通常、構成的もしくは誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメント、およびエンハンサーを含む、特定の転写調節エレメントによって支配される。したがって、そのような遺伝子またはコード領域は、調節エレメント「に対して動作可能であるように連結させられた(operably linked to)」、または調節エレメント「に対して動作可能であるように連結させられた(operatively linked to)」、または調節エレメント「と動作可能であるように結合させられた」といわれ、この遺伝子またはコード領域が調節エレメントによって制御されるかまたは調節エレメントによる影響を受けることを意味する。
【0069】
本明細書中で使用される場合は、用語「干渉する」、「サイレンシングさせる」、および「〜の発現を阻害する」、ならびに類似する用語および表現は、これらが標的遺伝子について言及する限りにおいては、部分的、または原則として完全のいずれかである、標的の発現の抑制あるいは阻害をいう。多くの場合、このような干渉は、抑制された表現形として現れる。様々な場合において、標的遺伝子の発現は、本発明の標的化ポリヌクレオチドの投与によって、少なくとも約10%、または約20%、または約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、または約80%抑制される。好ましい実施形態においては、標的遺伝子は、標的化ポリヌクレオチドを投与することにより、少なくとも約85%、または約90%、または約95%、または実質的には完全に抑制される。そのような干渉は、細胞培養物中の細胞の中、または組織外植片の中、あるいは被験体の中でインビボで現れ得る。
【0070】
本明細書中で使用される場合は、用語「処置」および類似する用語と表現は、疾患もしくは症状、疾患の兆候、または疾患に進行する素因を有している被験体に対する治療薬の適用または投与、あるいは、被験体から単離された組織もしくは細胞株に対する治療薬の適用または投与をいう。処置は、その回復もしくは治癒を促すため、または疾患、疾患の兆候、もしくは疾患に進行する素因を寛解させる、緩和する、変化させる、矯正する、改善する、好転させる、もしくは影響を与えることを目的として行われる。
【0071】
本明細書中で使用される場合は、表現「治療有効量」および「予防有効量」は、それぞれ、疾患の処置において治療的利点を、または、疾患の予防を提供するかもしくは疾患の重篤度を下げる効果を提供する量をいう。治療上有効である特定の量は、処置された被験体における反応の評価を使用して、かかりつけの医師によって容易に決定され得、疾患の性質、被験体の病歴と年齢、疾患の病期、および他の治療薬の投与のような当該分野で公知の要因に応じて異なり得る。
【0072】
本明細書中で使用される場合は、「薬学的組成物」は、薬学的有効量の標的化ポリヌクレオチドと薬学的に許容される担体を含む組成物をいう。本明細書中で使用される場合は、「薬学的有効量」、「治療有効量」、または単に「有効量」は、意図される薬理学的、治療的、または予防的結果を得るために有効な阻害性ポリヌクレオチドの量をいう。例えば、所定の臨床的処置が、疾患または障害と関係している臨床的パラメーターの少なくとも最小の測定可能な変化が存在する場合に有効であると考えられる時は、その疾患または障害の処置のための薬剤の治療有効量は、少なくともパラメーターの変化の程度に影響を与えるために必要な量である。
【0073】
用語「薬学的に許容される担体」は、少なくとも、生理学的に許容され、かつ、監督官庁によって承認された治療薬の投与のための組成物をいう。
【0074】
ヌクレオチドはまた、標識を持つように修飾される場合もある。例えば、蛍光標識またはビオチン標識を有しているヌクレオチドを、Sigma(St.Louis,MO)から入手することができる。
【0075】
RNA干渉
本発明によれば、増殖および/または転移を促進するガン細胞中の標的の遺伝子発現が、RNA干渉によって弱められる。具体的には、本発明において標的化される遺伝子としては、ICT−1052、ICT−1053、ICT−1027、ICT−1051、ICT−1054、ICT−1020、ICT−1021、およびICT−1022と指定された遺伝子が挙げられる。標的遺伝子の転写産物は、15から30ヌクレオチドの間の任意の数のヌクレオチドを含み、または多くの場合には、21から25ヌクレオチドの間の任意の数のヌクレオチドを含む標的の少なくとも1つのセグメントに相補的な特異的な二本鎖siRNAヌクレオチド配列によって細胞内に標的化させられる。標的は、5’非翻訳(UT)領域の中に存在する場合があり、コード配列の中に存在する場合があり、また、3’UT領域の中に存在する場合もある。例えば、PCT国際公開第00/44895号、同第99/32619号、同第01/75164号、同第01/92513号、同第01/29058号、同第01/89304号、同第02/16620号、および同第02/29858号(これらはそれぞれ、本明細書中でそれらの全体が引用により組み入れられる)を参照のこと。
【0076】
本発明の方法によれば、ガン細胞遺伝子の発現、およびそれによるガン細胞の複製は、siRNAを使用して抑制される。本発明の標的化ポリヌクレオチドにはsiRNAオリゴヌクレオチドが含まれる。siRNAは、ガン細胞標的配列と同じであるかまたは類似するヌクレオチド配列の化学合成によって調製することができる。例えば、Tuschl,Zamore,Lehmann,Bartel and Sharp(1999),Genes & Dev.13:3191−3197(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと。あるいは、標的化siRNAは、標的化ポリヌクレオチド配列を使用して、例えば、細胞を含まないシステム(例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)抽出物であるがこれに限定されない)の中でガン細胞のリボポリヌクレオチド配列を消化することによるか、または、組み換え体である二本鎖のガン細胞cRNAの転写によって得ることができる。
【0077】
有効なサイレンシングは、通常、選択された標的配列に相補的な15〜30ntの鎖(すなわち、アンチセンス)と15〜30ntの同じ長さのセンス鎖からなるsiRNA二本鎖を用いて観察される。多くの実施形態においては、siRNA対合二本鎖のそれぞれの鎖はさらに、3’末端に1個、2個、3個、または4個の対合していないヌクレオチドの突出を有する。一般的な実施形態においては、突出の大きさは2ntである。3’突出の配列は、siRNA標的の認識についての特異性に、さらに小さな貢献をする。1つの実施形態においては、3’突出の中のヌクレオチドはリボヌクレオチドである。別の実施形態においては、3’突出の中のヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドである。3’突出において3’デオキシヌクレオチドを使用することにより、高い細胞内安定性が提供される。
【0078】
標的化配列を含む本発明の組み換え体発現ベクターは、細胞内に導入されると、細胞増殖および/または転移に関係しているガン細胞中の遺伝子を標的化するsiRNA配列を含むRNAを提供するように処理される。そのようなベクターは、標的化配列の発現を可能にする様式でガン細胞の標的化配列に隣接している動作可能であるように連結された調節配列を含む発現ベクターの中にクローニングされたDNA分子である。ベクターからは、ガン細胞のRNAに対してアンチセンスであるRNA分子が最初のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの3’プロモーター配列)によって転写させられ、そしてガン細胞のRNA標的のセンス鎖であるRNA分子が第2のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5’プロモーター配列)によって転写させられる。その後、センス鎖とアンチセンス鎖がインビボでハイブリダイズして、遺伝子のサイレンシングのためのガン細胞RNA分子を標的化するsiRNA構築物が生じる。あるいは、2つの別の構築物を利用して、siRNA構築物のセンス鎖とアンチセンス鎖をつくることができる。さらに、クローニングされたDNAは、ヘアピン型の二次構造を有している転写物をコードすることができ、この場合、1つの転写物は標的遺伝子(単数または複数)に由来するセンス配列と相補的なアンチセンス配列の両方を有する。この実施形態の一例においては、ヘアピン型のRNAi転写産物には、標的遺伝子全体またはその一部に類似している第1の配列と、第1の配列に相補的な第2の配列が含まれ、これらはヘアピン型の二本鎖を形成するように配置される。別の例においては、ヘアピン型のRNAi産物はsiRNAである。ベクター中のガン細胞の配列に隣接している調節配列は同じである場合があり、また、それらの発現を別々に、または時間的にもしくは空間的様式で調節することができるように異なる場合もある。
【0079】
特定の実施形態においては、siRNAは、例えば、小さい核RNA(snRNA)U6に由来するRNA polIII転写単位またはヒトRNase P RNA H1を含むベクターの中にガン細胞の標的遺伝子の鋳型をクローニングすることによって細胞内で転写される。ベクターシステムの1つの例は、GeneSuppressorTM RNA Interferenceキットである(Imgenexから市販されている)。U6およびH1プロモーターは、Pol IIIプロモーターのタイプIIIのクラスのメンバーである。U6様プロモーターの+1ヌクレオチドは常にグアノシンであるが、H1プロモーターの+1はアデノシンである。これらのプロモーターの終結シグナルは、5個の連続するチミジンによって定義される。転写物は、通常、2つ目のアデニンの後ろで切断される。この位置での切断によって、発現されたsiRNAの中に3’UU突出が生じる。これは、合成のsiRNAの3’突出と類似している。400ヌクレオチド未満の長さの任意の配列をこれらのプロモーターによって転写させることができ、したがって、これらは、例えば、およそ50ヌクレオチドのRNAヘアピン−ループ転写物の中の、およそ21ヌクレオチドのsiRNAの発現に理想的に適している。選択されたsiRNA配列についての最初のBLAST相同検索は、ガン細胞の中で優先的に発現される標的だけが同定され、標的とされていない宿主遺伝子が同定されないことを確実にするために、市販されているヌクレオチド配列ライブラリーに対して行われる。Elbashirら、2001 EMBO J.20(23):6877−88を参照のこと。
【0080】
ポリヌクレオチドの合成
標的化ヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドと、標的化配列を含むポリヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成装置を使用して、標準的な合成技術によって調製することができる。オリゴヌクレオチドを合成するための方法には周知の化学的プロセスが含まれ、これには、T.Brown and Dorcas J.S.Brown,Oligonucleotides and Analogues A Practical Approach,F.Eckstein編,Oxford University Press,Oxford,1−24頁(1991)に記載されており、引用により本明細書中に組み入れられる、表面が誘導された粒子上へのヌクレオチドホスホルアミダイトの連続的付加が含まれるがこれに限定されない。
【0081】
合成手順の一例では、Expedite RNAホスホルアミダイトとチミジンホスホルアミダイト(Proligo,Germany)が使用される。合成のオリゴヌクレオチドは脱保護され、ゲル精製され(Elbashirら、(2001)Genes & Dev.15,188−200)、その後、Sep−Pak C18カートリッジ(Waters,Milford,Mass.,USA)精製される(Tuschlら、(1993)Biochemistry,32:11658−11668)。相補的なssRNAが、アニーリング緩衝液(100mMの酢酸カリウム、30mMのHEPES−KOH、pH7.4、2mMの酢酸マグネシウム)の中で、90℃で1分間インキュベートされ、その後、37℃で1時間インキュベートされて、対応するds−siRNAにハイブリダイズさせられる。
【0082】
他のオリゴヌクレオチドの合成方法としては、ホスホトリエステルおよびホスホジエステル法(Narangら、(1979)Meth.Enzymol.68:90)にしたがう固相オリゴヌクレオチド合成、そしてH−ホスホネート法(Garegg,P.J.ら、(1985)「Formation of internucleotidic bonds via phosphonate intermediates」,Chem.Scripta 25,280−282;およびFroehler,B.C.ら(1986a)「Synthesis of DNA via deoxynucleoside H−phosphonate intermediates」,Nucleic Acid Res.,14,5399−5407など)、および支持体上での合成(Beaucageら(1981)Tetrahedron Letters 22:1859−1862)にしたがう固相オリゴヌクレオチド合成、さらには、ホスホルアミダイト技術(Caruthers,M.H.ら,「Methods in Enzymology」,第154巻,287−314頁(1988)、米国特許第5,153,319号、同第5,132,418号、同第4,500,707号、同第4,458,066号、同第4,973,679号、同第4,668,777号、および同第4,415,732号)、ならびに、「Synthesis and Applications of DNA and RNA」,S.A.Narang編,Academic Press,New York,1987、およびその中に含まれている参考文献に記載されている他の方法、ならびに非ホスホルアミダイト技術が挙げられるが、これらに限定されない。固相合成は、不純物および過剰な試薬からのオリゴヌクレオチドの単離を手助けする。一旦、固体支持体から切断されると、オリゴヌクレオチドは公知の技術によってさらに単離することができる。
【0083】
本発明の阻害性ポリヌクレオチド
本発明の標的化ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、混合DNA−RNAポリヌクレオチド鎖、またはDNA−RNAハイブリッドであり得る。後者の一例は、デオキシ2ヌクレオチド配列(例えば、d(TT)、d(UU)、d(TU)、d(UT))ならびに他の可能な2ヌクレオチドを有している3’末端で終結しているRNA配列である。さらなる実施形態においては、3’突出は、上記で特定された塩基、または他の塩基を有しているリボヌクレオチドから構成される場合がある。さらに、オリゴヌクレオチド医薬品は、一本鎖である場合も、また二本鎖である場合もある。本発明の治療用オリゴヌクレオチドのいくつかの実施形態は、オリゴリボヌクレオチドまたは3’d(TT)末端を有しているオリゴリボヌクレオチドであると考えられる。一本鎖の標的化ポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞に投与されると、細胞内に残っている内因性の酵素活性によって、侵入時に二本鎖の分子へと容易に変換させられる。得られる二本鎖のオリゴヌクレオチドはRNA干渉を引き起こす。
【0084】
標的化ポリヌクレオチドは、一本鎖のポリヌクレオチドである場合も、また二本鎖のポリヌクレオチドである場合もある。ポリヌクレオチドの中に含まれる標的化ヌクレオチド配列は、全体が自然界に存在しているヌクレオチドから構成されている場合があり、また、ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つのヌクレオチドが、修飾されたヌクレオチドであるかもしくは誘導されたヌクレオチドである場合もある。修飾または誘導は、ポリヌクレオチドの安定化、相補体との鎖のハイブリダイゼーションの最適化、またはRNAiプロセスの誘導の促進のような目的を達成できる場合がある。標的化配列を含めるための、分子生物学、細胞生物学、腫瘍学、および関連する医薬品の分野、ならびに本発明に関係している他の分野の当業者によって理解される全ての等価なポリヌクレオチドは本発明の範囲内にある。
【0085】
本発明のポリヌクレオチドには標的化配列が含まれ、疾患または病状の特徴である細胞の増殖または複製を阻害するために有効である。本発明の重要な実施形態においては、第1のヌクレオチド配列または標的化配列は、少なくとも15ヌクレオチド(nt)の長さであり、最大100ntであり得る。特定の重要な実施形態においては、長さは最大70ntであり得る。なおさらに重要な実施形態においては、第1のヌクレオチド配列は、15nt、または16nt、または17nt、または18nt、または19nt、または20nt、または21nt、または22nt、または23nt、または24nt、または25nt、または26nt、または27nt、または28nt、または29nt、または30ntの長さであり得る。
【0086】
第1の標的化ヌクレオチド配列またはその相補体は、通常、標的遺伝子の中を標的化する配列に対して少なくとも80%相補的である。したがって、標的配列が15から30ntの間の長さの範囲である先の段落において同定されたそれらの実施形態においては、3個以下、または4個以下、または5個以下のヌクレオチドが標的配列との相補性とは異なる。有意な実施形態においては、第1のヌクレオチド配列またはその相補体は、標的配列に対して少なくとも85%相補的であるか、または少なくとも90%相補的であるか、または少なくとも95%相補的であるか、または少なくとも97%相補的である。
【0087】
第1のヌクレオチド配列またはその相補体は、それがRNA干渉の表現形を誘導するその標的配列に対して十分に相補的であり、それによりRNase活性による標的核酸の切断を促進する。病原性の核酸の切断を促進する任意の等価な第1のヌクレオチド配列は本発明の範囲に含まれる。
【0088】
短いヘアピンRNA(shRNA)は、本発明の第1のポリヌクレオチドに含まれることが想定される。shRNAには、第1の標的化ヌクレオチド配列、間に存在しているループを形成するヌクレオチド配列、そして第1の標的化配列に相補的な第2の標的化ヌクレオチド配列が含まれる。理論に束縛されることは望ましくないが、第1の標的配列、ループ、そして第1のループに相補的な第2の標的配列を含むポリヌクレオチドは、第2の相補的配列が第1の標的配列とハイブリダイズする分子内二本鎖「ヘアピン」構造を形成するように周囲に存在する(around)と考えられる。重ねて、理論に束縛されることは好ましくないが、RNAiの表現形は、その標的配列とともに複合体を形成する二本鎖のRNA配列によって誘導されると考えられる。shRNAの使用により、標的化された遺伝子をサイレンシングさせるために有効な二本鎖の標的化ポリヌクレオチドを提供するための最適な手段が提供される。
【0089】
重要な実施形態においては、標的化ポリヌクレオチドにはさらに、第1のヌクレオチド配列と動作可能な関係にあるか、またはshRNAの場合には、第1のヌクレオチド配列、ループ、および相補的なヌクレオチド配列を含む完全なshRNA構築物と動作可能な関係にある、プロモーターおよび/またはエンハンサー配列が含まれる。
【0090】
ベクター。本発明により、本発明の1つ以上の第1のポリヌクレオチドを含む様々なベクターが提供される。1つ以上の第1のポリヌクレオチドを含めることにより、ベクターは1つ以上の病原性の標的配列に特異的な標的化配列を持つことになる。病原性の標的配列は同じ遺伝子に向けられる場合も、また、その病状に罹患している被験体の細胞の中の別の遺伝子に対して向けられる場合もある。本発明の有利な任意のベクターとしては、第1のヌクレオチド配列に対して、またはshRNA配列に対して動作可能であるように連結させられたプロモーター、エンハンサー、またはそれらの両方が挙げられる。
【0091】
本発明のベクターを調製するための方法は、分子生物学、細胞生物学、腫瘍学の分野、および関連する医薬品の分野、および本発明に関係がある他の分野で広く知られている。ベクターを調製するために有用な方法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版)(Sambrook,J.ら(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)およびShort protocols in molecular biology(第5版)(Ausubel FMら(2002)John Wiley & Sons,New York City)に記載されているが、これらに限定されない。
【0092】
抗体
用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合は、免疫グロブリン分子と免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的活性のある部分(すなわち、抗原に特異的に結合する(抗原と免疫反応する)抗原結合部位を含む分子)をいう。そのような抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片、ならびにFab発現ライブラリーが挙げられるがこれらに限定されない。一般的には、ヒトから得られた抗体分子は、IgG、IgM、IgA、IgE、およびIgDの任意のクラスをいい、これらは、分子の中に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。特定のクラスには、さらにサブクラスが含まれ、例えば、IgG1、IgG2などが含まれる。さらに、ヒトにおいては、軽鎖はκ鎖またはλ鎖であり得る。本明細書中での抗体との言及には、ヒト抗体種の全てのそのようなクラス、サブクラス、およびタイプについての言及が含まれる。
【0093】
抗原またはその一部もしくは断片となるように意図される本発明の単離されたタンパク質は、抗原に対して免疫特異的に結合する抗体を生じさせるために、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製のための標準的な技術を使用して免疫原として使用することができる。全長のタンパク質を使用することができ、また代わりに、本発明によっては、免疫原として使用される抗原のペプチド断片が提供される場合もある。抗原性ペプチド断片には、全長のタンパク質のアミノ酸配列のうちの少なくとも6個のアミノ酸残基が含まれ、そしてそのエピトープが含まれ、結果として、そのペプチドに対して惹起させられた抗体は、全長のタンパク質と、またはそのエピトープを含むあらゆる断片と特異的な免疫複合体を形成する。好ましくは、抗原性ペプチドには、少なくとも10個のアミノ酸残基、または少なくとも15個のアミノ酸残基、または少なくとも20個のアミノ酸残基、または少なくとも30個のアミノ酸残基が含まれる。抗原性ペプチドに含まれる好ましいエピトープは、その表面上にあるタンパク質の複数の領域であり;通常、これらは親水性領域である。
【0094】
本発明の特定の実施形態においては、抗原性ペプチドに含まれる標的遺伝子ポリペプチドの少なくとも1つのエピトープは、タンパク質の表面上に位置するポリペプチドの1つの領域(例えば、親水性領域)である。ヒトのタンパク質配列の疎水性分析は、ポリペプチドのどの領域が特に親水性であるか、したがって、標的化抗体の生産に有用な表面残基をコードすると思われるかを示すであろう。標的化抗体の生産のための手段として、親水性と疎水性の領域を示しているヒドロパシープロット(hydropathy plot)を当該分野で周知の任意の方法によって作製することができる。これらの方法としては、例えば、フーリエ変換を用いるかまたは用いないかのいずれかの、Kyte Doolittle法またはHopp Wood法が、挙げられる。HoppおよびWoods 1981,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 78:3824−3828;KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−142を参照のこと(これらはそれぞれ、本明細書中でその全体が参考として援用される)。抗原性タンパク質内の1つ以上のドメイン、またはその誘導体、その断片、そのアナログもしくはそのホモログに特異的な抗原もまた、本明細書中で提供される。
【0095】
当該分野で公知の様々な手順を、本発明のタンパク質に特異的であるか、またはそれらの誘導体、断片、アナログ、ホモログ、もしくはオルトに特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の生産のために使用することができる。(例えば、引用により本明細書中に組み入れられる、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow E,and Lane D,1988、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと)。これらの抗体のうちのいくつかは以下で議論される。
【0096】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体の産生のために、種々の適切な宿主動物(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳類)が、ネイティブタンパク質、その合成改変体、またはこれらの誘導体の1回以上の注射により、免疫され得る。適切な免疫原調製物には、例えば、自然界に存在している免疫原性タンパク質、免疫原性タンパク質を提示する化学合成されたポリペプチド、または、組換えにより発現される免疫原性タンパク質が含まれ得る。さらに、このタンパク質は、免疫化される哺乳類において免疫原性であることが公知の第2のタンパク質に結合させられる場合がある。このような免疫原性タンパク質の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシのサイログロブリン、および大豆トリプシン阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。この調製物には、アジュバントをさらに含めることができる。免疫応答を大きくするために使用される様々なアジュバントとしては、フロイントの(完全または不完全)アジュバント、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、ジニトロフェノールなど)、カルメット−ゲラン杆菌(Bacille Calmette−Guerin)および挫瘡プロピオンバクテリウム(Corynebacterium parvum)のような、ヒトにおいて使用することができるアジュバント、または同様の免疫賦活剤が挙げられるが、これらに限定されない。使用することができるアジュバントのさらなる例としては、MPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。
【0097】
モノクローナル抗体
用語「モノクローナル抗体」(MAb)または「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書中で使用される場合は、特有の軽鎖遺伝子産物と特有の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の1つの分子種のみを含む抗体分子の集団をいう。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、この集団内の全ての分子において同じである。従って、MAbは、抗原に対する特有の結合親和性を特徴とする、抗原の特定のエピトープと免疫応答できる抗原結合部位を含む。
【0098】
モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein(Nature,256:495(1975))によって記載されるハイブリドーマ法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法においては、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物が、通常は、免疫化剤で免疫化されて、免疫化剤に特異的に結合するであろう抗体が産生されるか、またはそのような抗体を産生することができるリンパ球が誘導される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫することもできる。
【0099】
免疫剤としては、通常、タンパク質抗原、その断片、またはその融合タンパク質が挙げられるであろう。一般には、末梢血リンパ球が、ヒト起源の細胞が望ましい場合には使用され、また、脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が、非ヒト哺乳類供給原が望ましい場合に使用される。リンパ球は、その後、適切な融合剤(例えば、ポリエチレングリコール)を使用して、不死化細胞株と融合させられ、ハイブリドーマ細胞が形成させられる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103)。不死化細胞株は、通常、哺乳類細胞(特に、齧歯類、ウシ、ヒトを起源とする骨髄腫細胞)に移入される。通常は、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、融合させられていない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含むことが好ましい、適切な培養培地の中で培養することができる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合は、ハイブリドーマのための培養培地には、通常、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンが含まれるであろう(「HAT培地」)。これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を阻害する。
【0100】
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されるような組換えDNA法によっても作製することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離することができ、配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源となる。一旦単離されると、DNAは、発現ベクターの中に配置され得、この発現ベクターは、その後、宿主細胞(例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別の方法では免疫グロブリンタンパク質を生産しない骨髄腫細胞)にトランスフェクトされて、組換え体である宿主細胞の中でモノクローナル抗体の合成が得られる。
【0101】
(ヒト化抗体)
本発明のタンパク質抗原に対して惹起させられた抗体にはさらに、ヒト化抗体またはヒト抗体が含まれ得る。これらの抗体はヒトへの投与に適しており、投与された免疫グロブリンに対してヒトによって免疫応答が引き起こされることはない。抗体のヒト化形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはこれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合サブ配列)であり、これらは主に、ヒト免疫グロブリンの配列から構成されており、そして非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列が含まれる。ヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法(Jonesら,Nature,321:522−525(1986);Riechmannら,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら,Science,239:1534−1536(1988))に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって行うことができる。(米国特許第5,225,539号もまた参照のこと。)ヒト化抗体にはまた、好ましくは、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常は、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部が含まれるであろう(Jonesら(1986);Riechmannら(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992))。
【0102】
(ヒト抗体)
完全なヒト抗体は、原則として、軽鎖および重鎖の両方の配列全体(CDRを含む)がヒト遺伝子から得られたものである抗体分子をいう。このような抗体は、本明細書中では、「ヒト抗体」または「完全なヒト抗体」と呼ばれる。ヒトモノクローナル抗体は、トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、1983,Immunol Today 4:72を参照のこと)、およびEBVハイブリドーマ技術により調製することができ、ヒトモノクローナル抗体を得ることができる(Coleら(1985)MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,77−96頁を参照のこと)。ヒトモノクローナル抗体は、本発明の実施において利用することができ、ヒトハイブリドーマを使用することによって(Coteら、1983.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026−2030を参照のこと)、またはインビトロでヒトB細胞をエプスタイン・バーウイルスで形質転換することによって(Coleら、1985,MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,77−96頁を参照のこと)産生することができる。
【0103】
加えて、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー(HoogenboomおよびWinter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら,J.Mol.Biol.,222:581(1991))を含むさらに別の技術を使用して産生することもできる。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、その中の内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化させられているトランスジェニック動物(例えば、マウス)に導入することにより作製することができる。チャレンジ(challenge)において、ヒト抗体の生産が観察され、これは、ヒトにおいて見られる抗体産生とあらゆる点(遺伝子の配置、アセンブリ、および抗体のレパートリーを含む)で酷似している。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、ならびにMarksら(Bio/Technology 10,779−783(1992));Longbergら(Nature 368 856−859(1994));Morrison(Nature 368,812−13(1994));Fishwildら(Nature Biotechnology 14,845−51(1996));Neuberger(Nature Biotechnology 14,826(1996))ならびにLonbergおよびHuszar(Intern.Rev.Immunol.13 65−93(1995)において記載されている。
【0104】
ヒト抗体は、抗原によるチャレンジに応答して動物の内因性抗体ではなく完全なヒト抗体を産生するように改変されるヒト以外のトランスジェニック動物を使用して、さらに産生させることができる(PCT国際公開第94/02602号を参照のこと)。ヒト以外の宿主の中の重鎖および軽鎖の免疫グロブリンをコードする内在性遺伝子は、無能化されており、そしてヒトの重鎖および軽鎖の免疫グロブリンをコードする活性な遺伝子座が、宿主のゲノムに挿入される。このヒト遺伝子は、例えば、必要なヒトDNAセグメントを含む酵母人工染色体を使用して組み込まれる。全ての望ましい改変を提供する動物が、その後、全量より少ない改変の相補体を含む中間のトランスジェニック動物を交配させることにより、子孫として得られる。好ましい実施形態においては、このようなヒト以外の動物はマウスであり、そして、Xenomouse(商標)と呼ばれる(PCT国際公開第96/33735号および同第96/34096号に開示されている)。
【0105】
Fab断片および単鎖抗体
本発明に従って、複数の技術を、本発明の抗原性タンパク質に特異的な単鎖抗体の産生に、適合させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)。加えて、複数の方法を、Fab発現ライブラリーの構築(例えば、Huseら(1989)Science 246:1275−1281を参照のこと)に適合させて、タンパク質またはその誘導体、その断片、そのアナログ、もしくはそのホモログに対して望ましい特異性を有するモノクローナルFab断片を、迅速かつ効率的に同定することができる。タンパク質抗原に対するイディオタイプを含む抗体断片は、当該分野で公知の技術によって生産することができる。この技術としては以下が挙げられるが、これらに限定はされない:(i)抗体分子のペプシン消化によって得られるF(ab’)2断片;(ii)F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生じるFab断片;(iii)パパインと還元剤での抗体分子の処理によって生じるFab断片、および(iv)Fv断片。
【0106】
抗体療法
本発明の抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、および完全なヒト抗体を含む)は治療薬として使用される場合がある。このような薬剤は、一般的には、被験体の疾患または病状を処置するかあるいは予防するために使用されるであろう。抗体調製物(好ましくは、その標的抗原に対して高い特異性と高い親和性を有しているもの)が被験体に投与され、これは一般的には、その標的とのその結合が原因で効果があるであろう。そのような効果は、投与された抗体分子と問題の標的抗原との間での相互作用の特異的な性質に応じて、2種類のうちの1つであり得る。第1の例においては、抗体の投与により、それが自然界において結合する内因性のリガンドを有している標的の結合をできなくするかまたは阻害することができる。この場合、抗体は、標的に結合して、自然界に存在しているリガンドの結合部位をマスクする。ここでは、リガンドはエフェクター分子としての役割を担う。したがって、受容体はリガンドが反応することができるシグナル伝達経路を媒介する。
【0107】
あるいは、効果は、標的分子上のエフェクター結合部位に対する結合により、抗体が生理学的結果を誘発するものであり得る。この場合、疾患または病状においては存在しないかまたは欠損している可能性がある内因性のリガンドを有している受容体が代理のエフェクターリガンドとして抗体に結合して、受容体の基礎(receptor−base)を開始させる。
【0108】
抗体の薬学的組成物
本発明のタンパク質に特異的に結合する抗体、ならびに、本明細書中に開示されるスクリーニングアッセイによって同定された他の分子は、様々な障害の処置のために薬学的組成物の形態で投与することができる。そのような組成物の調製に関する原則と考慮事項、ならびに、組成物の選択における指針は、例えば、Remington:The Science And Practice Of Pharmacy,第19版(Alfonso R.Gennaroら編)Mack Pub.Co.,Easton,Pa.:1995:Drug Absorption Enhancement:Concepts,Possibilities,Limitations,And Trends,Harwood Academic Publishers,Langhorne,Pa.,1994;およびPeptide And Protein Drug Delivery(Advances In Parenteral Sciences,第4巻),1991、M.Dekker,New Yorkに提供されている。
【0109】
本発明には、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、および他の哺乳動物によって生産させることができる、標的遺伝子のタンパク質産物に結合する抗体が含まれる。ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子のポリペプチド産物に対して惹起させられた治療用抗体としては、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化形態、およびヒトモノクローナル抗体が挙げられる。標的遺伝子のポリペプチド産物に対して惹起させられた特異的なモノクローナル抗体は、これらが抗体で処理された場合に、ガン細胞のアポトーシス活性を高めることができる。そのような特異的なモノクローナル抗体はさらに、それらが抗体で処理された場合に、ガン細胞の増殖を低下させることができる。標的遺伝子に特異的なモノクローナル抗体は、異種腫瘍移植モデルおよび同系腫瘍移植モデルのいずれを用いた場合にも、インビボで腫瘍の増殖を阻害する能力を有している。
【0110】
本発明のガン細胞を標的とするポリヌクレオチド
いくつかの標的遺伝子を、本発明のリード標的遺伝子として同定した。これらの標的遺伝子は、腫瘍増殖、疾患の進行の阻害について、ならびに、哺乳動物において(特に、ヒトにおいて)腫瘍およびガンの阻害および処置のための方法と組成物について確認された標的と考えられる。確認は、標的遺伝子が腫瘍増殖の阻害またはアポトーシスの促進のための標的であり、したがって、治療の標的として使用することができること、そしてこれらはまた、腫瘍およびガンの診断、予防、および治療に有用な化合物を同定するためにも使用できることの以下の実施例に示されている提示に一部基づく。標的遺伝子は表1にまとめられる。
【0111】
【表1】
ICT−1052:標的ICT−1052は、C−METプロトオンコジーン)として同定されている(肝細胞増殖因子(HGF)受容体;Bottaroら、Science,251:802−804;Naldiniら、Oncogene,6:501−504;Parkら、1987,Proc.Natl.Acad.USA,84:6379−83;国際公開第92/13097号;同第93/15754号;同第92/20792;Pratら、1991,Mol.Cell.Biol.,11:5954−62を参照のこと)。c−Metの発現は、様々なヒトの充実性腫瘍の中で検出されており(Pratら、1991,Int.J.cancer,49:323−328)、そして、濾胞上皮に由来する甲状腺腫瘍に関与している(DiRenzoら、1992、Oncogene,7:2549−53)。c−Metとそのスプライシング変異体は、siRNAによって媒介されたICT−1052のノックダウンによって腫瘍増殖の阻害が生じるので、腫瘍を促進する標的(tumor enhancing target)のように作用する。標的ICT−1052は腫瘍刺激因子であり、したがって、抗体、低分子、アンチセンス、siRNA、および他のアンタゴニスト試薬を使用して哺乳動物組織の中の腫瘍、ガン、および前ガン状態を処置するための標的である。
【0112】
DL−21、DN−30、DN−31、およびDO−24と呼ばれるc−Metに対するいくつかの抗体(モノクローナル抗体(mAb)を含む)は、c−Metの145kDaのβ鎖の細胞外ドメイン(国際公開第92/20792号;Pratら、1991,Mol.Cell Biol.,11:5954−62)または細胞内ドメイン(Bottaroら、Science,251:802−804)に特異的である。そのような抗体は、診断用途および治療用途において使用されている(Pratら、1991、Int.J.Cancer,49:323−328;Yamadaら、1994、Brain Research,637:308−312;Crepaldiら、1994、J.Cell Biol.,125:313−20;米国特許第5,686,292号;同第6,207,152号;Mark Kayの特許出願;米国特許出願公開番号20030118587;国際公開第2004/07877号および同第2004/072117号)。
【0113】
標的ICT−1052には、表1に記載されているGenBank登録番号に開示された配列のヌクレオチド配列と、またはそのコードされるポリペプチドに対して、(i)実質的なヌクレオチド配列相同性(例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは少なくとも70%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも80%、なおさらに好ましくは少なくとも90%、そしてなおさらに好ましくは少なくとも95%)を有する、多形変異体、対立遺伝子、突然変異体、および種間オルトログが含まれる。ICT−1052ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、通常、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウシ、ブタ、ウマ、およびヒツジを含むがこれらに限定されない哺乳動物に由来する。
【0114】
ICT−1052のヌクレオチド配列には、6641塩基対が含まれ(本明細書に添付されている配列表の配列番号1を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)、これは、1390アミノ酸のタンパク質をコードする(本明細書に添付されている配列表の配列番号2を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)。
【0115】
ICT−1053:ICT−1053と指定された標的はPDCD10(プログラムされた細胞死(programmed cell death)10(PDCD10))である。この遺伝子は、アポトーシスに関与しているタンパク質に対する類似性によって前骨髄細胞株において最初に同定されたタンパク質をコードする。PDCD10タンパク質は、培養物中の293細胞のアポトーシスを阻害することができた(Maら、1998)。ICT−1053は、早い速度で増殖している腫瘍の中でアップレギュレートされる。この標的の阻害は、様々なガンのタイプ、腫瘍、および前ガン状態の治療において重要な役割を果たすことができる。したがって、siRNA、モノクローナル抗体、およびこの標的の低分子阻害剤は、抗体、低分子、アンチセンス、siRNA、および他のアンタゴニスト物質を使用するガンの処置に有用であり得る。
【0116】
標的ICT−1053には、表1に記載されているGenBank登録番号に開示された配列のヌクレオチド配列と、またはそのコードされるポリペプチドに対して、(i)実質的なヌクレオチド配列相同性(例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは少なくとも70%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも80%、なおさらに好ましくは少なくとも90%、そしてなおさらに好ましくは少なくとも95%)を有する、多形変異体、対立遺伝子、突然変異体、および種間オルトログが含まれる。ICT−1053ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、通常、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウシ、ブタ、ウマ、およびヒツジを含むがこれらに限定されない哺乳動物に由来する。
【0117】
ICT−1053のヌクレオチド配列には、1466塩基対が含まれ(本明細書に添付されている配列表の配列番号3を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)、これは、212アミノ酸のタンパク質をコードする(本明細書に添付されている配列表の配列番号4を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)。
【0118】
ICT−1027:標的ICT−1027は、表皮成長因子受容体(EGFR)に結合する能力を有している、ヒト(Homo sapiens)の成長因子受容体結合タンパク質2(GRB2)である(Lowensteinら、(1992))。GRB2遺伝子は、SRC腫瘍遺伝子産物の非触媒領域に対して相同性を有しているタンパク質をコードし、陰門(vulva)形成の誘導を導くシグナル伝達経路に関係しているシノラブディス・エレガンス(C.elegans)のSem5遺伝子のホモログである。Drk(GRB2のショウジョウバエ(Drosophila)ホモログ)は、光受容体の発生において不可欠な役割を担っている。様々な実験により、SH2/SH3ドメイン相互作用によって媒介される哺乳動物のGRB2−Rasシグナル伝達経路についての証拠が提供されている。これは、胚発生およびガンにおいて複数の機能を有している。ICT−1027は、早い速度で増殖している腫瘍の中でアップレギュレートされる。標的ICT−1027は、抗体、低分子、アンチセンス、siRNA、および他のアンタゴニスト試薬を使用して哺乳動物組織の中の腫瘍、ガン、および前ガン状態を処置するための新規の標的であると考えられる。
【0119】
標的ICT−1027には、表1に記載されているGenBank登録番号に開示された配列のヌクレオチド配列と、またはそのコードされるポリペプチドに対して、(i)実質的なヌクレオチド配列相同性(例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは少なくとも70%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも80%、なおさらに好ましくは少なくとも90%、そしてなおさらに好ましくは少なくとも95%)を有する、多形変異体、対立遺伝子、突然変異体、および種間オルトログが含まれる。ICT−1052ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、通常、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウシ、ブタ、ウマ、およびヒツジを含むがこれらに限定されない哺乳動物に由来する。
【0120】
ICT−1027のヌクレオチド配列には、3317塩基対が含まれ(本明細書に添付されている配列表の配列番号5を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)、これは、217アミノ酸のタンパク質をコードする(本明細書に添付されている配列表の配列番号6を参照のこと;先行技術文献US60/642,067に開示されている)。
【0121】
標的ICT−1051。限られたApaf−1活性は、病理学的なタンパク質の凝集と、HDにおける神経細胞死の両方を緩和することができる。特異的なホスホイノシチドに結合するA−Raf残基が、おそらく、これらのリン脂質の中に多く含まれる特定の膜マイクロドメインに対して酵素を局在化させる1つの機構として同定される。ヒトの結腸直腸腺ガンにおけるARAF遺伝子の中の保存されている領域の変異分析により腫瘍形成におけるその薬剤がまとめられている。ヒト胎児の肝臓cDNAライブラリーのツーハイブリッドスクリーニングにおいては、TH1がA−Rafの新規の相互作用パートナーとして検出された。この特異的相互作用は、A−Rafの活性化において重要な役割を担っている可能性がある。A−Rafキナーゼは、MEK1とのトリヒドロホビン1およびA−Raf相互作用によってネガティブに調節され、リン酸化によりMEK1を活性化させる。
【0122】
標的ICT−1054。Raf−1は、ALG−2(PCDP6)のASK−1依存性リン酸化を中断させることによってその抗アポトーシス機能を媒介することができる。それらの先祖細胞である正常なメラニン形成細胞と比較したヒトのブドウ膜メラノーマ細胞の中でのALG−2のダウンレギュレーションにより、Ca+によって媒介されるアポトーシスシグナルの妨害、それによる細胞の生存性の増強による選択的利点を有しているメラノーマ細胞が提供され得る。データは、ALG−2が肝臓および肺の新生物の中で過剰発現されており、肺の上皮細胞の中で主に見られることを示している。ALG−2は、細胞増殖と細胞死の両方において役割を担っている。ALG−2のペンタ−EF−ハンドドメインは、Ca2+依存性様式でアネキシンVIIおよびアネキシンXIの両方のアミノ末端ドメインと相互作用する。アネキシンXIのPro/Gly/Try/Alaを多く含む疎水性領域は、ALG−2のCa(2+)に依存して露出させられる疎水性表面をマスクする。ALG−2は、その5番目のEF−ハンド領域全体を通じた二量体化によって安定化させられる。アポトーシス関連遺伝子2は、Fasの死ドメインに結合し、Jurkat細胞の中でのFas媒介性アポトーシスの間にFasから解離する。
【0123】
標的ICT−1020。突出の長さと配列組成を含む3’末端構造の様々な性質が、dsRNAと単分子である短いヘアピンRNAの両方において、Dicer切断の位置を決定することに重要な役割を担っている。Dicerは、脊椎動物細胞のヘテロクロマチン構造の形成に不可欠である。Dicerは、RNA転写後プロセシングの中心を1つ有する。脆弱性X症候群のCGGリピートは、RNAヘアピンを容易に形成し、ヒトDicer酵素により消化される。これは、遺伝子発現に影響を与えるRNA干渉の中心的な工程である。
【0124】
標的ICT−1021。Toll様受容体4シグナル伝達複合体での、大腸菌(Escherichia coli)LPSのリポ多糖(LPS)依存性アンタゴニストの主要な分子部位としてのMD−2の機能を説明する証拠が存在している。これらの結果は、Glu(24)−Pro(34)のアミノ末端TLR4領域が、MD−2の結合とLPSのシグナル伝達に重要であることを明白に示している。MD−2は、敗血症の際の臓器の炎症の重要な媒介因子である。Thr35からAlaへの変異をコードしている103位での珍しいAからGへの置換により、リポ多糖によって誘導されるシグナル伝達の低下が生じる。結果は、トル様受容体4のN末端領域がMD−2との会合に不可欠であることを示しておいる。これは、細胞表面での発現に、しいては、リポ多糖への反応性に必要である。細胞外トル様受容体4(TLR4)ドメイン−MD−2複合体は、リポ多糖(LPS)に結合することができ、野生型TLR4を発現している細胞の中でのLPSによって誘導されるNF−κBの活性化とIL−8の分泌を弱めることができる。気道上皮および肺のマクロファージの中でのMD−2発現の調節は、気道での内毒素反応性を変更するための手段となり得る。MD−2の塩基性アミノ酸のクラスターは、細胞性リポ多糖の認識に関与している。TLR4は、MD−2を伴わずに複数のグリコシル化を受けることができるが、細胞表面発現に不可欠な特異的なグリコシル化がMD−2の存在には必要である。MDの中には2つの機能的ドメインが存在している。一方は、Toll様受容体4の結合を担っており、そして他方はアゴニスト(リポ多糖)との相互作用を媒介する。MD−2はリポ多糖に結合して、Toll様受容体4の凝集とシグナル伝達を導く。いくつかのデータにより、リポ多糖結合タンパク質が、膜CD14からToll様受容体4−MD−2シグナル伝達受容体へのLPSの移動を阻害することにより、リポ多糖(LPS)に対する細胞の応答を阻害できるとの仮説がサポートされている。LBP、CD14、およびTLR−2を介するLTAの先天性免疫認識は、グラム陽性病原体によってもたらされる感染性疾患の経過の間の全身的な合併症の病因において重要な機構を示すが、TLR−4およびMD−2は関与していない。ジスルフィド結合が、このタンパク質のアセンブリと機能に関与している。リポ多糖は、toll様受容体4−MD−2−CD14複合体により、ゴルジ体へと、そしてゴルジ体から迅速に輸送される。発現は、腸上皮細胞の中の免疫によって媒介されるシグナルによって調節される。MD−2は、マウスToll様受容体4(TLR4)に対して、リピッドAに対する反応性を付与することができるが、リピッドIVaに対する反応性は付与することはできない。したがって、TLR4の細かい特異性に影響を与える。アクセサリー分子MD−2の発現は、細菌のリポ多糖に反応して脱調節された免疫シグナル伝達とプロ炎症性遺伝子の活性化を制限する機構によって、腸上皮細胞の中でダウンレギュレートされる。MD−2が腫瘍形成に関与していることを示す報告はこれまでにはない。
【0125】
標的ICT−1022。この遺伝子は、精巣を除いて、様々な腫瘍の中で発現されているが、正常な組織の中では発現されていない遺伝子のファミリーに属する。このファミリーのメンバーの配列は関係性が深いが、散在しているヌクレオチド置換によって異なる。抗原性ペプチドYRPRPRRY(これもまた、いくつかの他のファミリーのメンバーによってコードされる)は、自己の細胞傷害性Tリンパ球によって認識される。このタンパク質の機能については、現在のところ何も明らかになっていない。
【0126】
標的ICT−1052、ICT−1053、ICT−1027、ICT−1051、ICT−1054、ICT−1020、ICT−1021、およびICT−1022が、2つの特異的siRNA分子によってダウンレギュレートされれば、腫瘍増殖速度が遅くなることが以下の実施例において報告される。
【0127】
本発明により、前ガンまたはガン細胞に侵入すると、RNA干渉の表現形を引き起こすことが目的で使用されるオリゴヌクレオチドが広く提供される。本発明は、ガン細胞標的遺伝子の性質に制限されることはないが、本発明の標的遺伝子を標的化するオリゴヌクレオチドを強調する。RNA干渉は、適切な二本鎖RNAによって細胞内に生じさせられる。この二本鎖のうちの一方は、ガン細胞の標的ポリヌクレオチドの中の配列と同じであるか、類似性の高い相補体を有する。一般的には、標的遺伝子を標的化するオリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAである場合があり、また、これには、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの混合物が含まれる場合もある。最も一般的には、本発明により、15ヌクレオチドから、長くても200ヌクレオチドまでの任意の長さの範囲であるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが提供される。ポリヌクレオチドには、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的とする第1のヌクレオチド配列が含まれる。第1のヌクレオチド配列は、a)その長さが15ヌクレオチドから30ヌクレオチドまでの任意の数である標的化配列、またはb)その相補体のいずれかから構成される。そのようなポリヌクレオチドは、本明細書中では直鎖のポリヌクレオチドと呼ばれる。
【0128】
図1により、本発明のポリヌクレオチドの特定の実施形態の模式図が提供される。本発明では、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子、あるいは、特定の場合には、そのような標的配列とはわずかに一致しないsiRNA配列を標的化する配列が開示される。これらは全て、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242に提供されており、これらは実施例1に開示される。本明細書中で開示される配列は、19ヌクレオチドから25ヌクレオチドまでの長さの範囲である。標的化配列は、図1の中の薄い影がつけられた四角によって模式的に示される。図1、パネルA、a)は、「SEQ」として示される開示された配列が、状況に応じて、それらの全体の長さが200ヌクレオチドまでの範囲であり得るより長いポリヌクレオチドの中に含まれ得る実施形態を説明している。
【0129】
本発明により、さらに、標的化ポリヌクレオチドにおいては、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択された配列が、標的化ポリヌクレオチドがSEQによって示される第1のヌクレオチド配列よりも長い標的遺伝子の中の配列を標的化するように、より長い標的化配列の一部として存在する場合があることが提供される。これは、図1、パネルA、b)に示される。ここでは、完全な標的化配列が、ポリヌクレオチドの上の水平方向の線によって、そしてSEQブロックを取り囲むより濃い色の影によって示される。ポリヌクレオチドの全ての実施形態においてそうであるように、このより長い配列は、状況に応じて、200塩基またはそれ未満の長さのさらに長いポリヌクレオチドの中に含められる場合もある(図1、パネルA、b)。
【0130】
本発明によってはさらに、上記標的化配列のうちの任意のものの断片である標的化配列(結果として、この断片は、少なくとも15ヌクレオチドの長さである(そして、図1、パネルA、cに示される、最長で参照の配列番号のものよりも1塩基短い長さ)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242の中に提供される配列を標的化する)、さらには、標的化配列(ここでは、5個までのヌクレオチドが配列番号7〜76、81〜84、および89〜242(図1、パネルA、dに示される)に提供される標的配列に対する相補体とは異なっていてもよい(この実施例においては、3つの濃い色の縦方向の棒によって示される3つの変異体塩基を示している))が提供される。
【0131】
なおさらに、本発明により、上記の配列(図1、パネルA、eに示される)のうちの任意のものに対して相補的であり、「COMPL」と命名された配列が提供される。これらの配列のうちの任意のものが、本発明のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに含められる。本発明の任意の直鎖のポリヌクレオチドは、上記のa)〜e)に記載された配列だけによって構成される場合があり、また状況によっては、200ヌクレオチドの限界までのさらに別の塩基が含まれる場合もある。RNA干渉には二本鎖RNAが必要であるので、標的化ポリヌクレオチド自体が二本鎖(少なくとも配列番号7〜76、81〜84、および89〜242によって提供される配列に対して相補的である二本鎖を含む)であり、それらにハイブリダイズする場合があり、また、相補鎖を生じさせるために細胞内プロセスに頼る場合もある。
【0132】
したがって、本発明のポリヌクレオチドは、最も一般的には、一本鎖であり得、また、二本鎖である場合もある。なおさらなる実施形態においては、ポリヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチドだけが含まれるか、またはリボヌクレオチドだけが含まれるか、あるいは、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方が含まれる。本明細書中に記載されるポリヌクレオチドの重要な実施形態においては、標的配列は、15ヌクレオチド(nt)、または16nt、または17nt、または18nt、または19nt、または20nt、または21nt、または22nt、または23nt、または24nt、または25nt、または26nt、または27nt、または28nt、または29nt、または30ntのいずれかの長さであり得る配列からなる。なおさらに有利な実施形態においては、標的化配列は、ウイルス病原体ゲノムの中の標的配列に対する相補体とは5個までの塩基が異なる場合がある。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、1nt、または2nt、または3nt、または4ntの長さであり得る本明細書中に記載される3’突出を必要に応じて含む標的化配列から構成されているsiRNAである。多くの実施形態においては、3’突出は2ヌクレオチドである。
【0134】
あるいは、RNA干渉における二本鎖RNAの必要性の認識において、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、分子内ヘアピンループ二本鎖分子を形成するように調製される場合がある。そのような分子は、その後ろに短いループ配列が続く先の段落の複数の実施形態のうちのいずれかに記載された第1の配列の形状であり、これにはその後ろに、第1の配列に相補的な第2の配列が続く。そのような構造は、所望される分子内ヘアピンを形成する。さらに、このポリヌクレオチドは、最大200ヌクレオチドの長さもまた有しているとして開示される。結果として、列挙された3つの必要な構造が、200ヌクレオチドまでの任意の全長を有している任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを構成し得る。ヘアピンループポリヌクレオチドは、図1、パネルBに説明される。
【0135】
用語「複合体化DNA」には、別の分子(例えば、炭水化物、例えば、糖(糖−DNA複合体が形成させられる))と複合体を形成したかまたは別の分子と結合したDNA分子が含まれる。そのような複合体(例えば、糖と複合体化したDNA)は、受容体を介する効率的な遺伝子送達を促進するかまたはサポートすることができ、例えば、グルコースはDNAと複合体化させることができ、マンノース受容体のような受容体を介して細胞に送達され得る。
【0136】
「カプセル化された核酸」(カプセル化されたDNAまたはカプセル化されたRNAを含む)は、比較的非免疫原性であり、選択的に酵素消化に供される材料でコーティングされたマイクロスフェアまたはマイクロ粒子の中の核酸分子、例えば、複数の材料(例えば、ゼラチンと硫酸コンドロイチン)の複合コアセルベーションによって合成されたマイクロスフェアまたはマイクロ粒子をいう(例えば、米国特許第6,410,517号を参照のこと)。マイクロスフェアまたはマイクロ粒子の中のカプセル化された核酸は、そのコード配列の発現を誘導するその能力を保つ方法でカプセル化される(例えば、米国特許第6,406,719号を参照のこと)。
【0137】
標的化ポリヌクレオチドを含む薬学的組成物
治療用途のための薬学的組成物には、1つ以上の標的化ポリヌクレオチドと担体が含まれる。1つ以上の標的化ポリヌクレオチドを含む薬学的組成物は、標的遺伝子の発現または活性と関係がある疾患あるいは障害を処置するために有用である。担体としては、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。経口投与される薬物については、薬学的に許容される担体としては、薬学的に許容される賦形剤、例えば、不活性な希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
多くの実施形態においては、本発明は、様々な標的遺伝子を標的化するように設計された少なくとも2つの標的化ポリヌクレオチドと薬学的に許容される担体が含まれている薬学的組成物に関する。1つ以上の標的遺伝子のmRNAを標的化することが原因で、複数の標的化ポリヌクレオチドを含む薬学的組成物は、少なくとも、これらの複数の遺伝子を発現している腫瘍細胞の中では、1つの標的化ポリヌクレオチドを含む組成物と比較して、改善された処置効率を提供し得る。この実施形態においては、個々の標的化ポリヌクレオチドが先のセクションに記載されたように調製される。これは引用により本明細書中に組み入れられる。1つの標的化ポリヌクレオチドは、1つの標的遺伝子の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を有し得る。さらに別の標的化ポリヌクレオチドが調製され、そのそれぞれは、様々な標的遺伝子の一部に実質的に相補的であるヌクレオチド配列を有する。複数の標的化ポリヌクレオチドを同じ薬学的組成物の中で組み合わせることができ、また、別々に処方することもできる。個別に処方される場合は、別の標的化ポリヌクレオチドを含む複数の組成物に、同じ担体または異なる担体を含めることができ、そして、同じ投与経路を使用して投与することも、また、異なる投与経路を使用して投与することもできる。さらに、個々の標的化ポリヌクレオチドを含む複数の薬学的組成物は、実質的に同時に投与される場合も、連続して投与される場合も、また、1日または処置期間を通じて予め設定された間隔で投与される場合もある。
【0139】
本発明の薬学的組成物は、標的遺伝子の発現を阻害するために十分な投与量で投与される。標的化ポリヌクレオチドは、RISC複合体の一部としてこれらが触媒様式で作用することが理解されているので、阻害作用を生じることにおいて極めて有効である。したがって、本発明の1つ以上の標的化ポリヌクレオチドを含む組成物を、驚くほどの低用量で投与することができる。
【0140】
1日あたりレシピエントの体重1キログラムあたり5mgの標的化ポリヌクレオチド最大用量が、標的遺伝子の発現を阻害するかまたは完全に抑制するためには十分である。一般的には、標的化ポリヌクレオチドの適切な用量は、1日あたりレシピエントの体重1キログラムあたり0.01から5.0ミリグラムの範囲、好ましくは、1日あたり体重1キログラムあたり0.1から200マイクログラム(mcg/kg)の範囲、より好ましくは、1日あたり0.1から100mcg/kgの範囲、なおさらに好ましくは、1日あたり1.0から50mcg/kgの範囲、最も好ましくは、1日あたり1.0から25mcg/kgの範囲であろう。薬学的組成物は1日に1回投与される場合があり、また、標的化ポリヌクレオチドは、1日を通じて適切な間隔で2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上に分けられた用量で投与される場合もある。その場合、個々の分けられた用量に含まれる標的化ポリヌクレオチドは、一日量の合計が得られるように対応させられたより少ない量でなければならない。投薬単位はまた、数日間かけて投与するための徐放処方物として、例えば、数日の期間にわたり標的化ポリヌクレオチドの徐放を提供する従来の処方物を使用して、調合することもできる。徐放処方物は当該分野で周知である。この実施形態においては、投薬単位には、一日量の対応する倍数が含まれる。
【0141】
特定の要因が、被験体を効率的に処置するために必要な投与量とタイミングに影響を与える場合があり、これには、必ずしもこれらに限定されないが、疾患または障害の重篤度、これまでの処置、被験体の全体的な健康状態および/または年齢、ならびに存在している他の疾患が含まれることを当業者なら理解するであろう。さらに、治療有効量の組成物での被験体の処置には、1回の処置または一連の処置が含まれ得る。本発明に含まれる個々の標的化ポリヌクレオチドについての有効用量とインビボでの半減期の予測は、従来の方法論を使用して、または適切な動物モデルを使用するインビボでの試験に基づいて行うことができ、適切な用量応答特性を決定するための確立されている基準に従って処置の間に調整することができる。
【0142】
マウスの遺伝学の進歩により、様々なヒトの疾患の実験のための多数のマウスモデルが作製されている。例えば、マウスモデルは、造血器悪性腫瘍、例えば、白血病、リンパ腫、および急性骨髄性白血病に利用することができる。National Cancer Instituteによって支援されているMMHCC(ヒトのガンのマウスモデル・コンソーシアム(Mouse Models of Human Cancers Consortium)ウェブページ(emice.nci.nih.gov)により、公知のガンモデルの疾患部位特異的統計が提供され、検索することができるCancer Model Database(cancermodels.nci.nih.gov)、さらには、NCI−MMHCCマウスについての蓄積データ(repository)にリンクする。マウスにおいて白血病およびリンパ腫をモデル化するために現在利用することができ、そして本発明の実施において有用な遺伝的ツールの例は、以下の参考文献に記載されている:Maru,Y.,Int.J.Hematol.(2001)73:308−322;Pandolfi,P.P.,Oncogene(2001)20:5726−5735;Pollock,J.L.ら、Curr.Opin.Hematol.(2001).delta.:206−211;Rego,E.M.ら、Semin.in Hemat.(2001)38:4−70;Shannon,K.M.ら(2001)Modeling myeloid leukemia tumors suppressor gene inactivation in the mouse,Semin.Cancer Biol.11,191−200;Van Etten,R.A.,(2001)Curr.Opin.Hematol.8,224−230;Wong,S.ら(2001)Oncogene 20,5644−5659;Phillips JA.,Cancer Res.(2000)52(2):437−43;Harris,A.W.ら、J.Exp.Med.(1988)167(2):353−71;Zeng X Xら、Blood.(1988)92(10):3529−36;Eriksson,B.ら、Exp.Hematol.(1999)27(4):682−8;およびKovalchuk,A.ら、J.Exp.Med.(2000)192(8):1183−90。マウスについての蓄積データはまた、The Jackson Laboratory,Charles River Laboratories,Taconic,Harlan,Mutant Mouse Regional Resource Centers(MMRRC)National Networkでも、また、European Mouse Mutant Archiveでも見ることができる。そのようなモデルは、標的化ポリヌクレオチドのインビボでの試験のために、さらには、治療有効量の決定のために使用することができる。さらに、標的遺伝子の効果について、様々なノックアウトトランスジェニック動物モデルまたはノックイントランスジェニック動物モデルを調製することができ、標的化ポリヌクレオチドの投与を評価するために実験することができる。
【0143】
本発明に含まれる薬学的組成物は、経口経路または非経口経路を含むがこれらに限定されない当該分野で公知の任意の手段によって投与することができ、これには、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、経皮投与、気道(エアゾール)投与、直腸投与、膣投与、および局所(口腔および舌下)投与が含まれる。特定の実施形態においては、薬学的組成物は、静脈内または非経口による注入または注射によって投与され、さらに別の一般的な実施形態においては、標的化ポリヌクレオチドを含む薬学的組成物は、腹腔鏡による手順、および同様の顕微鏡を使う手順を使用して、腫瘍、ガン、または前ガンの増殖に対してインサイチュで直接送達することができる。
【0144】
筋肉内、腹腔内、皮下、および静脈内での使用については、本発明の薬学的組成物は、一般的には、適切なpHと等張性になるように緩衝化させられた、滅菌の水溶液もしくは懸濁液の中に提供されるであろう。適切な水性ビヒクルとしては、Ringer溶液および等張性の塩化ナトリウムが挙げられる。好ましい実施形態においては、担体は、水性緩衝液だけから構成される。この状況においては、「だけ」は、標的遺伝子を発現する細胞の中への標的化ポリヌクレオチドの取り込みに影響を及ぼすかまたはそれを媒介する可能性がある補助剤またはカプセル化物質が存在しないことを意味する。そのような物質としては、例えば、ミセル構造、例えば、以下に記載されるようなリポソームまたはキャプシドが挙げられる。驚くべきことに、本発明者らは、裸の標的化ポリヌクレオチドと生理学的に許容される溶媒だけが含まれている組成物が細胞に取り込まれ、ここで、標的化ポリヌクレオチドは標的遺伝子の発現を効率よく阻害することを発見した。マイクロインジェクション、リポフェクション、ウイルス、ウイロイド、キャプシド、キャプソイド、または他の補助剤が細胞培養物に標的化ポリヌクレオチドを導入するために必要であるが、驚くべきことに、これらの方法および薬剤は、インビボでの標的化ポリヌクレオチドの取り込みには必要ない。本発明の水性懸濁液には、懸濁剤(例えば、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、およびトラガカントガム)、ならびに湿潤剤(例えば、レシチン)が含まれ得る。水性懸濁剤についての適切な保存剤としては、エチルおよびn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0145】
本発明に有用な薬学的組成物にはまた、標的化ポリヌクレオチドを体からの迅速な排除から保護するためのカプセル化された処方物(例えば、徐放処方物(インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む))も含まれる。生体分解性の生体適合性ポリマー(たとえば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)を使用することができる。そのような処方物の調製のための方法は、当業者には明らかであろう。材料はまた、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染させられた細胞に対して標的化させられたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号;PCT国際公開第91/06309号;および欧州特許公開公報EP−A−43075(これらは引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0146】
特定の実施形態においては、カプセル化された処方物にはウイルス外被タンパク質が含まれる。この実施形態においては、標的化ポリヌクレオチドは、少なくとも1つのウイルス外被タンパク質に結合させられるか、または少なくとも1つのウイルス外被タンパク質と会合させられるか、または少なくとも1つのウイルス外被タンパク質に取り囲まれ得る。ウイルス外被タンパク質は、ウイルス(例えば、ポリオーマウイルス)に由来する場合もウイルスと会合している場合もあり、また、一部が人工的である場合も、完全に人工的なものである場合もある。例えば、外被タンパク質は、ポリオーマウイルスのVirus Protein 1および/またはVirus Protein 2、あるいはそれらの誘導体であり得る。
【0147】
そのような化合物の毒性と治療効力は、例えば、LD50(集団のうちの50%に対して致死的である用量)およびED50(集団の50%において治療上有効である用量)を決定するために、細胞培養物または実験用動物の中で標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果との間での用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0148】
細胞培養物でのアッセイおよび動物実験によって得られたデータは、ヒトで使用される投与量の範囲を決定することにおいて使用することができる。本発明の組成物の投与量は、ED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましく、これには、わずかに毒性が伴うか、または毒性は伴わない。投与量は、使用される投薬形態、利用される投与軽度に応じてこの範囲内で変化し得る。本発明の方法において使用される任意の化合物について、治療有効量は、細胞培養アッセイおよび動物モデルから、細胞培養物中で決定されたIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を得ることができる試験化合物の濃度)を含む、化合物の循環血漿濃度範囲が得られるように、最初に概算することができる。そのような情報は、ヒトに有効な用量をさらに正確に決定するために使用することができる。
【0149】
上記で議論されたように、それらの個々の投与、または集団としての(as a plurality)投与に加えて、本発明に有用な標的化ポリヌクレオチドは、疾患の処置に有効な他の公知の薬剤と組み合わせて投与することができる。いずれにしても、投与を行う医師は、当該分野で公知であるか、または本明細書中に記載される標準的な効力の測定を使用して観察された結果に基づいて、標的化ポリヌクレオチドの投与量とタイミングを調整することができる。
【0150】
動物モデルへの高スループットの送達のためにIntradigm Corporationの商標である遺伝子送達技術を使用することがさらに想定される。Intradigm CorporationのPolyTranTM技術(国際特許公開第0147496号を参照のこと)により、腫瘍へのプラスミドの直接の投与が可能であり、これにより、ゴールドスタンダード(gold standard)ヌクレオチド送達試薬よりも7倍大きな効率が得られる。これは、腫瘍の中での候補の標的タンパク質の強い腫瘍発現と活性を提供する。
【0151】
標的遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を処置するための方法
特定の実施形態においては、本発明は、標的遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を有しているか、またはそのような疾患を発症するリスクがある被験体を処置するための方法に関する。1つ以上の標的化ポリヌクレオチドは、腫瘍、ガン、または前ガンの増殖を含む、1つ以上の細胞増殖および/または分化の障害を制御するための新規の治療薬となり得る。この方法には、患者(例えば、ヒト)に対して標的化ポリヌクレオチドの薬学的組成物を投与する工程が含まれる。その結果、標的遺伝子の発現はサイレンシングさせられる。それらの高い特異性が原因で、本発明の標的化ポリヌクレオチドは、以下に記載されるように、そして驚くべき低用量で、異常細胞および異常組織の標的遺伝子のmRNAを特異的に標的化する。
【0152】
疾患の予防においては、標的遺伝子は、疾患の開始または維持に必要な遺伝子である場合も、また、疾患に罹患する高いリスクと関係があるとして同定されている遺伝子である場合もある。疾患の処置においては、標的化ポリヌクレオチドは、疾患を呈している細胞または組織と接触させることができる。例えば、ガンと関係があるか、または腫瘍細胞の中で高レベルで発現されている、変異した遺伝子の転写において形成されたmRNA全体またはその一部に実質的に相補的な配列を含む標的化ポリヌクレオチドは、ガン細胞または腫瘍と接触させられる場合も、またはそれらの中に導入される場合もある。
【0153】
細胞増殖性障害および/または分化障害の例としては、ガン(例えば、ガン腫、肉腫)、転移性障害、または造血性新生物障害(例えば、白血病)が挙げられる。転移性腫瘍は、多数の原発性の腫瘍のタイプ(膵臓、前立腺、結腸、肺、乳房、および肝臓を起源とするものを含むがこれらに限定されない)から生じ得る。本明細書中で使用される場合は、用語「ガン」、「過増殖」、および「新生物」は、自律的に増殖する能力(すなわち、迅速に増殖している細胞増殖を特徴とする異常な状態)を有している細胞をいう。これらの用語は、組織病理学的タイプまたは侵襲性の程度にはかかわらず、ガンの増殖または腫瘍形成性のプロセス、転移組織または悪性に転換した細胞、組織、もしくは臓器のあらゆるタイプを含むように意味される。増殖性障害にはまた、造血系を起源とする(例えば、骨髄、リンパ系、または赤血球の系統、あるいはそれらの前駆細胞から生じる)過形成/新生物細胞が関与している疾患を含む、造血系の新生物障害も含まれる。
【0154】
siRNAの組み合わせ
本発明のいくつかの実施形態によっては、2つ以上のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む薬学的組成物が提供される。これらのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドにはそれぞれ、呼吸器系ウイルスのゲノムの中の配列を標的化する遺伝子が含まれる。関連する実施形態により、組み合わせを使用することによる、細胞を処置する方法、および呼吸器系ウイルスによる感染を処置する方法、ならびに、呼吸器系ウイルスによる感染を処置することを目的とする薬学的組成物の製造におけるそのような組み合わせ組成物の使用が提供される。組み合わせの個々のポリヌクレオチド成分は、ウイルス病原体のゲノムの中の同じ遺伝子の異なる部分、または異なる遺伝子、または1つの遺伝子のいくつかの部分、さらには、1つ以上の遺伝子を標的化することができる。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組み合わせを使用することの利点は、所定の遺伝子の発現を阻害することの利点が組み合わせにおいて増幅されることである。より大きな効力は、複数の標的化配列の使用により、遺伝子をノックダウンさせること、またはウイルスゲノムをサイレンシングさせることにおいて得られる。ウイルスの複製を阻害することにおける大きな効力は、ウイルスゲノムの中の1つ以上の遺伝子を標的化することによって得られる。
【0155】
薬学的組成物
本発明の標的化ポリヌクレオチドは、本明細書中では、「活性のある化合物」または「治療薬」と呼ばれる。これらの治療薬は、被験体への投与に適している薬学的組成物の中に取り込ませることができる。
【0156】
本明細書中で使用される場合は、「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与と適合する、任意の、そして全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗生物質および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを含むように意図される。適切な担体は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Gennaro AR(編)第20版(2000)Williams & Wilkins PA,USA、およびWilson and GisvoldのTextbook of Organic Medicinal and Pharmaceutical Chemistry,Delgado and Remers,Lippincott−Raven(これらは引用により本明細書中に組み入れられる)のようなテキストに記載されている。そのような担体または希釈剤の中で使用することができる成分の好ましい例としては、水、生理食塩水、リン酸塩、炭酸塩、アミノ酸溶液、Ringer溶液、デキストロース(グルコースと同義)溶液、および5%のヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。限定ではない例として、デキストロースは、5%または10%の水溶液として使用することができる。リポソームおよび非水性の担体(例えば、不揮発性油)もまた使用される場合がある。薬学的活性のある物質についてのそのようなビヒクルおよび試薬の使用は当該分野で周知である。補助活性化合物もまた、組成物の中に取り込ませることができる。
【0157】
本発明の薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合するように処方される。投与経路の例としては、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、鼻腔投与、吸入、経皮(局所)投与、経粘膜投与、および直腸投与)が挙げられる。非経口投与、静脈内投与、皮内投与、または皮下投与に使用される溶液または懸濁液には、以下の成分を含めることができる:滅菌の希釈剤(例えば、注射用滅菌水、生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成の溶媒);抗生物質(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム);キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝液(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩)、ならびに弾力性の調整のための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。
【0158】
吸入による投与のためには、複数の化合物が、適切な推進剤(例えば、二酸化炭素のような気体)を含む加圧された容器またはディスペンサー、あるいはネブライザーからエアゾールスプレーの形態で送達される。
【0159】
1つの実施形態においては、活性のある化合物は、体内からの迅速な排除から化合物を保護するであろう担体とともに、例えば、徐放処方物(インプラントおよびマイクロカプセル化された送達システムを含む)として調製される。徐放調製物の適切な例としては、抗体を含む固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成型された製品(例えば、膜、またはマイクロカプセル)の形態である。徐放マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドからなる注射可能なマイクロスフェア)、ならびに、ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸)が挙げられる。ポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸)は、100日以上もの間分子を放出することが可能であるが、特定のヒドロゲルは、より短い期間にわたり薬学的活性のある物質を放出する。有利なポリマーは生体分解性であるか、または生体適合性である。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染させられた細胞に対して標的化させられたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製することができる。有利な形態(例えば、マイクロスフェア)を有している徐放調製物は、上記に記載されたような材料から調製することができる。
【0160】
本発明のsiRNAポリヌクレオチドはベクターに挿入することができ、遺伝子治療用ベクターとして使用することができる。遺伝子治療用ベクターは、例えば、米国特許第5,703,055号に記載されているように、任意の多数の経路によって被験体に送達することができる。したがって、送達にはまた、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号)、または定位固定注射(例えば、Chenら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:3054−3057を参照のこと)も含まれ得る。遺伝子治療用ベクターの薬学的調製物には、許容される希釈剤の中に遺伝子治療用ベクターを含めることができ、また、その中に遺伝子送達ビヒクルが組み込まれている遅延放出マトリックスを含めることもできる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターを組み換え体細胞(例えば、レトロウイルスベクター)から完全な状態で生じさせることができる場合には、薬学的調製物には、遺伝子送達システムを生じる1つ以上の細胞を含めることができる。
【0161】
薬学的組成物は、キットの中に、例えば、容器、パック、またはディスペンサーの中に、投与についての説明書とともに含めることができる。
【0162】
本発明にはまた、被験体の呼吸器系ウイルスによる感染を処置するための薬学的組成物または医薬品の製造における治療薬の使用も含まれる。
【0163】
送達
いくつかの実施形態においては、本発明のsiRNAポリヌクレオチドは、リポソームによって媒介されるトランスフェクションによって、例えば、市販されている試薬または技術(例えば、Oligofectamine(商標)、LipofectAmine(商標)試薬、LipofectAmine 2000(商標)(Invitrogen))を使用することによって、さらには、エレクトロポレーション、および同様の技術によって送達される。加えて、siRNAポリヌクレオチドは、動物モデル(例えば、齧歯類またはヒト以外の霊長類)に、呼吸管への吸入または点滴によって送達される。動物モデルで使用されるさらに別の経路としては、静脈内(IV)、皮下(SC)、および関連する投与経路が挙げられる。siRNAを含む薬学的組成物には、siRNAの安定性を保護する、siRNAの存続期間を長くする、siRNA機能を強化する、または特異的組織/細胞に対してsiRNAを標的化させるさらに別の複数の成分が含まれる。これらには、様々な生体分解性ポリマー、陽イオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン)陽イオン性コポリペプチド(例えば、ヒスチジン−リジン(HK)ポリペプチド)(例えば、MixsonらのPCT国際公開第01/47496号、Biomerieuxの同第02/096941号、およびMassachusetts Institute of Technologyの同第99/42091号を参照のこと)、PEG化された陽イオン性ポリペプチド、およびリガンドが取り込まれているポリマーなど、正電荷を有しているポリペプチド、PolyTranポリマー(天然の多糖類、スクレログルカンとしても知られている)、標的化リガンドと結合したポリマーからなるナノ粒子(TargeTran変異体)、界面活性剤(Infasurf;Forest Laboratories,Inc.;ONY Inc.)、および陽イオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン)が含まれる。Infasurf(登録商標)(カルファクタント)は、気道内注入に使用されるウシの肺から単離された天然の肺界面活性剤であり;これには、リン脂質、中性脂質、および疎水性の界面活性剤が結合したタンパク質BおよびBが含まれる。ポリマーは、一次元また多次元のいずれかであり得、20ミクロン未満、20から100ミクロンの間、または100ミクロンを越える直径を有しているマイクロ粒子またはナノ粒子でもあり得る。上記ポリマーは、特定の組織または細胞の受容体もしくは分子に特異的なリガンド分子を持つことができ、したがって、siRNAの標的化させられた送達のために使用することができる。siRNAポリヌクレオチドはまた、陽イオン性リポソームをベースとする担体(例えば、DOTAP、DOTAP/コレステロール(Qbiogene,Inc.)、および他のタイプの脂質水溶液によっても送達される。加えて、小さい割合(5〜10%)のグルコース水溶液、およびInfasurfが、siRNAの気道への投与のための有効な担体である30。
【0164】
蛍光顕微鏡によって試験された5%のグルコースとInfasurfの経口−気管送達溶液の中に懸濁させられた蛍光標識されたsiRNAを使用することにより、鼻腔経路によって、または経口−気管経路によってマウスにsiRNAが送達され、そして肺組織が洗浄された後に、siRNAが肺の中で広い範囲に分配されていたことが示されている(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる共有にかかる国際公開第2005/01940号を参照のこと)。マウスの鼻腔経路および肺(上部および深部呼吸器)へのsiRNAの送達は、指標遺伝子とsiRNA標的の融合物を有しているプラスミドの中でsiRNAと同時に送達された指標遺伝子(GFPまたはルシフェラーゼ)をうまくサイレンシングさせることが示された(共有にかかる国際公開第2005/01940号を参照のこと)。加えて、他者との共同実験によって本発明者らによって報告された実験では、SARSに感染したアカゲザルにおいて、siRNA種がSARSコロナウイルスの複製を阻害し、それにより、肺の病理を緩和することが明らかになった30。
【0165】
siRNA組み換え体ベクター
本発明の別の態様は、本発明のsiRNAポリヌクレオチドを含むベクター(好ましくは、発現ベクター)に関する。本明細書中で使用される場合は、用語「ベクター」は、それが連結させられている別の核酸を運搬することができる核酸分子いう。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、さらに別のDNAセグメントをその中に連結させることができる、環状の二本鎖DNAループをいう。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここでは、さらに別のDNAセグメントをウイルスゲノムの中に連結させることができる。特定のベクターは、それらが動作可能であるように連結させられた遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは本明細書中では「発現ベクター」と呼ばれる。一般的には、組み換えDNA技術において利用される発現ベクターは、多くの場合はプラスミドの形態である。プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書中では、「プラスミド」と「ベクター」は互換的に使用することができる。しかし、本発明は、同等の機能を担うそのような他の形態の発現ベクター(例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を含むように意図される。
【0166】
本発明の組み換え体発現ベクターには、本発明の核酸が宿主細胞の中での核酸の発現に適している形態で含まれる。これは、組み換え体発現ベクターに、発現させられる核酸配列に対して動作可能であるように連結させられた、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択された1つ以上の調節配列が含まれることを意味する。組み換え体発現ベクターの中では、「動作可能であるように連結させられた」は、目的のヌクレオチド配列がヌクレオチド配列の発現を可能にする様式(例えば、インビトロの転写/翻訳システムにおいて、あるいは、ベクターが宿主細胞の中に導入される場合には宿主細胞の中で)で調節配列(単数または複数)に対して連結させられていることを意味するように意図される。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むように意図される。そのような調節配列は、例えば、Goeddel(1990)GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.に記載されている。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞の中でヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、および特定の宿主細胞の中でのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。なお別の実施形態においては、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞の中で発現させられる。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufmanら、(1987)EMBO J 6:187−195)が挙げられる。哺乳動物細胞の中で使用される場合は、発現ベクターの制御機能は、多くの場合は、ウイルスの調節エレメントによって提供される。例えば、一般的に使用されているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40に由来する。さらに別のベクターとしては、ミニ染色体(例えば、細菌人工染色体、酵母人工染色体、または哺乳動物人工染色体)が挙げられる。原核細胞および真核細胞の両方についての他の適切な発現システムについては、例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989の第16章と第17章を参照のこと。
【0167】
別の実施形態においては、組み換え体である哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞タイプ(例えば、呼吸器の細胞)の中で核酸の発現を優先的に指示することができる。組織特異的調節エレメントは当該分野で公知である。本発明によってはさらに、発現ベクターの中にクローニングされた本発明のDNA分子が含まれている組み換え体発現ベクターが提供される。DNA分子は、ウイルスRNAを標的化するsiRNAを含むRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を可能にする様式で調節配列に動作可能であるように連結させられる。様々な細胞のタイプの中でのRNA分子の継続的な発現を指示する、核酸に動作可能であるように連結させられる調節配列を選択することができ、例えば、アンチセンスRNAの構成的、組織特異的、または細胞型特異的発現を指示するウイルスプロモーターおよび/もしくはエンハンサー、または調節配列を選択することができる。
【0168】
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術によって、原核細胞または真核細胞に導入することができる。本明細書中で使用される場合は、用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、宿主細胞に外来核酸(例えば、DNA)を導入するための様々な当該分野で理解されている技術を示すように意図され、これには、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションが含まれる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするための適切な方法は、Sambrookら(2001)、Ausubelら(2002)、および他の実験室マニュアルに見ることができる。
【0169】
処置方法
本発明は、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子の病理学的発現と関係がある哺乳動物の疾患を処置するための方法に関する。この方法には、DNAあるいはRNAレベルで、標的であるICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子のうちの少なくとも1つと相互作用する阻害性核酸組成物を哺乳動物に投与する工程が含まれる。核酸組成物は、哺乳動物の組織に導入されると、標的であるICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子のうちの1つ以上の発現を抑制することができる。この処置方法は、特に、哺乳動物の組織の中での、ガンまたは前ガンの増殖のような疾患に向けられる。多くの場合、組織は、乳房組織、結腸組織、前立腺組織、皮膚組織、骨組織、耳下腺組織、膵臓組織、腎臓組織、子宮頸部組織、リンパ節組織、または卵巣組織である。よくあるケースにおいては、阻害剤は、siRNA、RNAi、shRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、デコイ分子、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合体化DNA、カプセル化されたDNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、裸のRNA、カプセル化されたRNA、ウイルスRNA,二本鎖RNA、RNA干渉を生じることができる分子、またはそれらの組み合わせである。
【0170】
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を説明する。これらは、明細書全体に、および特許請求の範囲に示されている本発明の範囲を限定するようには見なされるべきではない。
【実施例】
【0171】
ガンの処置のためのRNA干渉に適用される新規の標的遺伝子を同定し、これらの標的に特異的なsiRNAの腫瘍阻害特性を評価するための実験を行った。具体的には、ICT−1053、ICT−1052、ICT−1027、ICT−1051、ICT−1054、ICT−1020、ICT−1021、ICT−1022、およびICT−1022を標的化することによって実験を行った。
【0172】
2つのsiRNA標的配列をそれぞれの遺伝子の中で選択し、BLASTによって確認し、そして配列をQiagen Inc(Germantown,MD)によって合成した。これらの実施例で報告される実験においては、それぞれの遺伝子についての2つの特異的siRNA配列の混合物を、異種移植片モデルに、または培養物中の細胞に繰り返し送達した。ヒトVEGF siRNAを、選択したsiRNAの効果を評価するためにそれに対するポジティブ対照として使用した。
【0173】
(実施例1)
低分子干渉RNA(siRNA)
siRNA二本鎖を、標的であるICT−1052、ICT−1053、またはICT−1027(配列番号1、3、および5)、あるいは、ICT−1051、ICT−1054、ICT−1020、ICT−1021、ICT−1022、またはICT−1022のDNA配列の選択した標的化領域に基づいて作製した。特定の実施形態においては、設計した配列は、AA−(N)m−TT(ここでは、15≦m≦21)を含み、約30%から70%のG−C含有量を有する。適切な配列が見つからない場合は、断片の大きさを29ヌクレオチドまでの配列に伸張する。特定の実施形態においては、ポリヌクレオチドの3’末端は、TTまたはUUによって表される突出を持つ(すなわち、対合していない塩基を有している)。理論に束縛されることは望ましくないが、siRNA二本鎖上の対称3’突出は、低分子干渉リボヌクレオタンパク質粒子(siRNP)が、センスとアンチセンスである標的RNAを切断するsiRNPの適切な等しい割合で形成されることを確実にすることを手助けすると考えられる(Elbashirら、Genes & Dev.15:188−200,2001)。
【0174】
ICT−1052 siRNA:21bpのセンスまたはアンチセンスsiRNAを配列番号1の標的化された領域に基づいて同定した。これらを表2に示す。
【0175】
【表2】
ICT−1053 siRNA:21bpのセンスまたはアンチセンスsiRNAを配列番号3の標的化された領域に基づいて同定した。これらを表3に示す。
【0176】
【表3】
ICT−1027 siRNA:21bpのセンスまたはアンチセンスsiRNAを配列番号5の標的化された領域に基づいて同定した。これらを表4に示す。
【0177】
【表4】
さらに別の標的化された配列を表5〜18において特定する。
【0178】
【表5】
【0179】
【表6】
【0180】
【表7】
【0181】
【表8】
【0182】
【表9】
【0183】
【表10】
【0184】
【表11】
【0185】
【表12】
【0186】
【表13】
【0187】
【表14】
【0188】
【表15】
【0189】
【表16】
【0190】
【表17】
【0191】
【表18】
。
【0192】
(実施例2)
ICT−1053 siRNAによる腫瘍増殖の阻害
MDA−MB−435ヒト乳ガン細胞(ATCC、Manassas,VA)を、10%のウシ胎児血清(FBS)を加えたRPMI 1640培地(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)(1つのT−75フラスコに対して20ml)の中で、37℃、5%のCO2で維持した。50μlのOPTI−MEM(Invitrogen,Carlsbad,CA)中の4×105個のMDA−MB−435細胞を、腫瘍を誘導するために、0日目にマウスの乳頭下の脂肪体に注射した。
【0193】
11日目と18日目に、マウスを、20μlのPBSの中の、10μgのICT−1053 siRNA(5μgのICT−1053−siRNA−bと混合した5μgのICT−1053−siRNA−b)または10μgの非特異的siRNA(NC)のネガティブ対照のいずれかで処置した。
【0194】
ICT−1053 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0195】
【化2】
ICT−1053 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0196】
【化3】
ポジティブ対照として、腫瘍を2つのVEGF siRNA阻害剤で処置した。VEGF−siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0197】
【化4】
VEGF−siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0198】
【化5】
ネガティブ対照(NC−siRNA)として、腫瘍に、いずれのヒトまたはマウスの遺伝子配列とも相同性を有していない2つの緑色蛍光タンパク質(GFP)−siRNA二本鎖を注射した。GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖配列を、実施例5の中で以下に示す(配列番号85〜88)。
【0199】
siRNA二本鎖を、エレクトロポレーションを使用して腫瘍異種移植片に直接トランスフェクトした。腫瘍の大きさを、それぞれのsiRNA送達の前と、実験の終了時まで最後のsiRNA送達後は1週間に2回、外部キャリパーを使用して長さと幅を測定することによってモニタした。腫瘍の容積は以下のように計算した:
容積=幅2×長さ×0.52
結果を図2に示す。ICT−1053 siRNAで処置した場合に得られた腫瘍の大きさは、非特異的siRNAを用いた場合に見られた大きさよりもはるかに小さく、VEGF siRNAポジティブ対照を用いた場合に得られた腫瘍の大きさと本質的に区別することができた。これは、PDCD10発現をノックダウンさせるICT−1053を標的化するsiRNAが、MDA−MB−435異種移植片によって生じた腫瘍の増殖を強く制限することを示している。
【0200】
(実施例3)
ICT−1052 siRNAによる腫瘍増殖の阻害
概ね、実施例2に記載された手順と同様の実験手順を使用した。本実施例では、対照動物を1×PBSだけで処置した(図3のビヒクル対照)。11日目と18日目に、マウスを、20μlのPBSの中の、10μgのICT−1052 siRNA(5μgのICT−1052−siRNA−bと混合した5μgのICT−1052−siRNA−a)または10μgの非特異的siRNA(NC)のいずれかで処置した。
【0201】
ICT−1052 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0202】
【化6】
ICT−1052 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0203】
【化7】
ポジティブ対照として使用したVEGF−siRNA−aおよびVEGF−siRNA−b二本鎖は、実施例2で使用したものと同じである(配列番号77〜80)。
【0204】
結果を図3に示す。本実施例で使用したICT−1052 siRNAが、ネガティブ対照であるPBSビヒクルおよび非特異的siRNA(NC−siRNA)と比較して腫瘍の大きさを小さくしたことが明らかである。ICT−1052 siRNAの有効な効果は、VEGF siRNAと同じ程度に有効ではなかった。これらの結果は、c−Met発現をノックダウンさせる本実施例で使用したICT−1052 siRNAが、MDA−MB−435異種移植片の腫瘍増殖を阻害するために有効であることを示している。
【0205】
(実施例4)
ICT−1052 siRNAによる腫瘍増殖の阻害
A549ヒト肺ガン細胞(ATCC,Manassas,VA)を、10%のウシ胎児血清(FBS)を加えたDMEM培地の中で、37℃、5%のCO2で維持した。0日目に、100μlの無血清DMEM培地中の1×107個のA549細胞を、麻酔したヌードマウスの脇腹にs.c.接種した。6日目に腫瘍の大きさを測定し、動物を処置群に無作為に割り当てた。
【0206】
7日目に、それぞれの腫瘍に、エレクトロポレーションで強化したトランスフェクション手順を使用して、20μlのPBSの中の、10μgのICT−1052 siRNA(5μgのICT−1052−siRNA−bと混合した5μgのICT−1052−siRNA−a(配列番号81〜84);実施例3を参照のこと)または10μgの非特異的siRNA(NC)のいずれかを腫瘍内にトランスフェクトした。4回のさらなるsiRNAの送達を、12日目、16日目、20日目、および27日目に行った。腫瘍の大きさを、それぞれのsiRNAの送達前と、最後のsiRNA送達後は1週間に2回測定した。
【0207】
結果を図4に示す。本実施例においては、ICT−1052 siRNAでのA549腫瘍の処置により、非特異的siRNAで処置した腫瘍と比較して、A549異種移植片の増殖速度が有意に阻害されたことが観察された。これらの結果は、腫瘍の中でc−Met発現をノックダウンさせる本実施例で使用したICT−1052 siRNAが、A549肺腫瘍の増殖を効率よく阻害することを示している。
【0208】
(実施例5)
ICT−1052 siRNAとICT−1053 siRNAによる腫瘍増殖の阻害
MDA−MB−435ヒト乳ガン細胞を、10%のFBSを加えたRPMI 1640培地の中で、37℃、5%のCO2で維持した。細胞を、実施例2で使用したものと同じICT−1053 siRNA(配列番号73〜76)で、または実施例3で使用したICT−1052 siRNA(配列番号81〜84)で、2μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地、または5μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地の濃度で、エレクトロポレーション媒介トランスフェクション法を使用してトランスフェクトした。対照群においては、細胞を、エレクトロポレーション媒介トランスフェクション法を使用して、同じ濃度でsiRNA標的化緑色蛍光タンパク質レポーター遺伝子(GFP)でトランスフェクトした。GFP siRNAは、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0209】
GFP−siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0210】
【化8】
GFP−siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0211】
【化9】
トランスフェクションの48時間後に、細胞増殖活性を、Cell Proliferation Kit I(MTTに基づく、ここでは、MTTは、3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−臭化ジフェニルテトラゾリウム、またはチアゾリルブルーである)(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を使用して測定した。それぞれウェルの中の培地を吸引し、その後、2mlの無血清DMEMをそれぞれのウェルに添加した。200μLのMTTストック溶液(MTTストック溶液:10mLのPBS中の50mgのMTT)をそれぞれのウェルに添加した。プレートを、37℃のCO2インキュベーターの中で3時間インキュベートした。このインキュベーション時間の間に、生存可能な細胞は、MTTを水不溶性のホルマザン色素へと変換させる。それぞれのウェルの中の培地が除去されるが、ホルマザンの結晶は除去されない。2mLの酸性イソプロピルアルコール(500mLのイソプロピルアルコール+3.5mLの6N HCl)をそれぞれのウェルに添加し、結晶を約10分かけて完全に溶解させた。それぞれのウェルから100μlを96ウェルプレートに移し、570nmでの吸光度を、Microplate Reader(Model 680,Bio−Rad,Hercules,CA)を使用して650nmでのバックグラウンドを減算して読み取った。
【0212】
結果を図5に示す。ICT−1052 siRNAとICT−1053−siRNAにより、適用されたいずれの用量でも、MDA−MB−435細胞の25〜30%の増殖の阻害が提供されたが、対照試料によっては、わずかに5%またはそれ未満の増殖の阻害しか生じなかったことが明らかとなった。これらのデータは、この実験で使用した標的化siRNAが、培養物中のヒト乳ガン細胞の増殖を阻害するために有効であることを示している。
【0213】
(実施例6)
ICT−1052 siRNAとICT−1053 siRNAによるガン細胞の増殖の阻害
HCT116ヒト結腸直腸ガン細胞を、2.5%のFBSを加えてDMEM培地の中で、37℃および5%のCO2で維持した。HCT116細胞を、実施例2で使用したものと同じICT−1053 siRNA(配列番号73〜76)で、または実施例3で使用したICT−1052 siRNA(配列番号81〜84)で、5μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地の濃度で、エレクトロポレーション媒介トランスフェクション法を使用してトランスフェクトした。対照群においては、細胞を、NC−siRNAで、同じ濃度でトランスフェクトした。
【0214】
トランスフェクション後72時間で、トランスフェクトされたHCT116細胞の中での細胞増殖活性を、実施例5に記載したCell Proliferation Kit I(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を使用して測定した。
【0215】
結果を図6に示す。ICT−1052 siRNAまたはICT−1053 siRNAでの処理によっては、HCT116細胞の増殖の25〜30%の阻害が生じ、一方、NC−siRNAでの処理によっては、模擬処置を行った対照細胞と比較して、わずかに8%しか細胞増殖阻害が生じなかったことが観察された。これらのデータは、ICT−1052 siRNAとICT−1053 siRNAが、培養物中のヒト結腸ガン細胞の細胞増殖の有効な阻害因子であることを示している。
【0216】
(実施例7)
ICT−1052による肺ガン細胞の増殖の阻害
A549ヒト肺ガン細胞(ATCC,Manassas、VA)を、10%のウシ胎児血清(FBS)を加えたDMEM培地の中で、37℃、5%CO2で維持した。A549細胞を、実施例3で使用したものと同じICT−1052 siRNA(配列番号81〜84)で、5μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地の濃度で、エレクトロポレーション媒介トランスフェクション法を使用してトランスフェクトした。対照群においては、A549細胞を、NC−siRNAで、実施例2に記載したように(配列番号85〜88)トランスフェクトした。トランスフェクション後72時間で、トランスフェクトされた細胞の中での細胞増殖活性を、実施例5に記載したようにCell Proliferation Kit I(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を使用して測定した。
【0217】
結果を図7に示す。ICT−1052 siRNAでの処理によっては、A549細胞の約25の細胞増殖阻害が生じ、一方、NC−siRNAでの処理によっては、模擬処置を行った対照細胞と比較して、わずかに5%またはそれ未満しか細胞増殖阻害が生じなかったことが観察された。これらのデータは、ICT−1052 siRNAが、培養物中のヒト肺ガン細胞の細胞増殖を効果的に阻害できることを示している。
【0218】
(実施例8)
ICT−1027 siRNAによる腫瘍増殖の阻害
siRNAを9日目、14日目、および20日目に投与した(図8に矢印で示した)改良を加えて、実施例2および3と同様の実験手順を使用した。マウスを、20μlのPBS中の、10μgのICT−1027 siRNA(5μgのICT−1027−siRNA−bと混合した5μgのICT−1027−siRNA−a)または10μgのGFP−siRNAのいずれかで処置した。
【0219】
ICT−1027 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0220】
【化10】
ICT−1027 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチド鎖からなる:
【0221】
【化11】
GFP−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例24に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖(配列番号85〜88)の等量の混合物である。siRNA二本鎖を、腫瘍異種移植片の中に腫瘍内注射した。
【0222】
結果を図8に示す。Grb2発現をノックダウンさせるICT−1027 siRNA混合物が、GFP siRNA対照と比較して、MDA−MB−435異種移植片の充実性腫瘍の増殖を有意に阻害することが明らかである。
【0223】
(実施例9)
ICT−1027 siRNAによる腫瘍細胞のアポトーシスの促進
MDA−MB−435ヒト乳ガン細胞を、10%のFBSを加えたRPMI 1640培地の中で、37℃、5%CO2で維持した。細胞を、実施例8に記載した配列を使用してICT−1057 siRNA(配列番号89〜92)で、2μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地または5μgのsiRNA/2×106細胞/200μlのDMEM培地の濃度で、エレクトロポレーション媒介トランスフェクション法を使用してトランスフェクトした。対照群においては、細胞にはいずれの処置も行わなかった。模擬群においては、細胞を、同じエレクトロポレーション手順を用いて、しかし培地の中にsiRNAを含めずに処理した。トランスフェクション後48時間で、細胞の中でのアポトーシス活性を、Cell Death Detection ELISAキット(Roche Diagnostics)を使用して、細胞質ヒストン−DNA断片(これはアポトーシスの指標である)の定量的決定により測定した。このアッセイは、DNAおよびヒストンに対してそれぞれ特異的であるマウスモノクローナル抗体を使用する定量的サンドイッチ−酵素−免疫アッセイの原理に基づく。これにより、細胞溶解物の細胞質画分の中のモノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソームの特異的決定が可能である。それぞれのウェルの中の細胞を、キットとともに提供される溶解緩衝液で溶解させた。それぞれのウェルから20μlの細胞溶解物を、ストレプトアビジンでコーティングしたマイクロタイタープレートに移し、マウスモノクローナル抗ヒストン−ビオチン抗体とマウスモノクローナル抗DNA−ペルオキシダーゼとともにインキュベートした。結合していない抗体を洗い流した。ヌクレオソームの量を、基質として2,2’−アジノ−ビス−(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸;ABTS)を用いてペルオキシダーゼ活性を測光分析により測定することによって定量的に決定した。その後、プレートをプレートリーダーの上に置き、590nmでの吸光度を、Microplate Reader(Model 680,Bio−Rad,Hercules,CA)を使用して測定した。
【0224】
結果を図9に示す。対照試料および模擬試料と比較して、Grb2遺伝子発現をノックダウンさせるICT−1027 siRNAが、用量依存性の様式で有意なアポトーシスを誘導することが明らかである。結果は、ICT−1027に特異的な阻害性RNAが、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することによってMDA−MB−435異種移植片の腫瘍増殖を阻害することを示唆している(実施例8)。
【0225】
(実施例10)
ICT−1051 siRNAによる乳ガン異種移植片の増殖の阻害
実施例2に記載したものと同様の実験手順を、標的としてのICT−1051(A−Raf)を確認するための本実施例において使用した。
【0226】
11日目と18日目に、MDA−MB−435腫瘍を、10μgのICT−1051 siRNA(5μgのICT−1051−siRNA−bと混合した5μgのICT−1053−siRNA−a)または10μgのNC−siRNAのいずれかで処置した。
【0227】
ICT−1051 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0228】
【化12】
ICT−1051 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0229】
【化13】
NC−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例2に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0230】
結果を図10に示す。A−Raf発現をノックダウンさせるICT−1051 siRNA混合物は、NC−siRNAで処置した異種移植片と比較して、MDA−MB−435異種移植片の増殖速度を低下させた。
【0231】
(実施例11)
ICT−1054 siRNAによる乳ガン異種移植片の増殖の阻害
実施例2に記載したものと同様の実験手順を、ガン治療の標的としてのICT−1054(PCDP6)を確認するための本実施例において使用した。
【0232】
11日目と18日目に、MDA−MB−435腫瘍を、10μgのICT−1054 siRNA(5μgのICT−1054−siRNA−bと混合した5μgのICT−1054−siRNA−a)または10μgのNC−siRNAのいずれかで処置した。
【0233】
ICT−1054 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0234】
【化14】
ICT−1054 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0235】
【化15】
NC−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例2に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0236】
結果を図11に示す。PCDP6発現をノックダウンさせるICT−1054 siRNA混合物は、NC−siRNAで処置した異種移植片と比較して、MDA−MB−435異種移植片の増殖速度を低下させた。
【0237】
(実施例12)
ICT−1020による乳ガン異種移植片の増殖の阻害
実施例2に記載したものと同様の実験手順を、改良したsiRNA投与スケジュールを用いて、ガン治療の標的としてのICT−1020(Dicer)を確認するための本実施例において使用した。
【0238】
本実施例では、MDA−MB−435腫瘍異種移植片を、9日目と14日目に、10μgのICT−1020 siRNA(5μgのICT−1020−siRNA−bと混合した5μgのICT−1020−siRNA−a)または10μgのNC−siRNAのいずれかで処置した。
【0239】
ICT−1020 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0240】
【化16】
ICT−1020 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0241】
【化17】
NC−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例2に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0242】
結果を図12に示す。腫瘍細胞内でのDicer発現を特異的にノックダウンさせるICT−1020 siRNAでの処置により、ネガティブ対照であるNC−siRNAで処置した異種移植片と比較して、MDA−MB−435異種移植片の増殖速度が有意に低下した。
【0243】
(実施例13)
ICT−1021 siRNAによる乳ガンの異種移植片の増殖の阻害
実施例2に記載したものと同様の実験手順を、ガン治療の標的としてのICT−1021(MD2タンパク質)を確認するための本実施例において使用した。11日目と18日目に、MDA−MB−435腫瘍を、10μgのICT−1021 siRNA(5μgのICT−1021−siRNA−bと混合した5μgのICT−1021−siRNA−a)または10μgのNC−siRNAのいずれかで処置した。
【0244】
ICT−1021 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0245】
【化18】
ICT−1021 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0246】
【化19】
NC−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例2に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0247】
結果を図13に示す。腫瘍細胞内でのMD2タンパク質発現を特異的にノックダウンさせるICT−1021 siRNAでの処置により、NC−siRNAで処置した異種移植片と比較して、MDA−MB−435異種移植片の増殖速度が低下した。
【0248】
(実施例14)
ICT−1022 siRNAによる乳ガンの異種移植片の増殖の阻害
実施例2に記載したものと同様の実験手順を、ガン治療の標的としてのICT−1022(GAGE−2)を確認するための本実施例において使用した。本実施例では、MDA−MB−435異種移植片腫瘍を、10日目と15日目に、10μgのICT−1022 siRNA(5μgのICT−1022−siRNA−bと混合した5μgのICT−1022−siRNA−a)または10μgのNC−siRNAのいずれかで処置した。
【0249】
ICT−1022 siRNA−a二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0250】
【化20】
ICT−1022 siRNA−b二本鎖は、以下の配列を有している2つの相補的なポリヌクレオチドからなる:
【0251】
【化21】
NC−siRNAをネガティブ対照とし、これは、実施例2に記載したように、GFP−siRNA−a二本鎖とGFP−siRNA−b二本鎖の等量の混合物である。
【0252】
siRNAで処置したMDA−MB−435異種移植片の増殖曲線を図14に示す。腫瘍細胞内でのGAGE−2発現を特異的にノックダウンさせるICT−1022 siRNAでの処置により、NC−siRNAで処置した異種移植片と比較して、MDA−MB−435異種移植片の増殖速度が有意に低下した。
【0253】
本発明の他の実施形態および使用は、本明細書中に開示される発明の詳細および実施を考慮して当業者に明らかであろう。米国および外国の特許ならびに特許出願を含む、本明細書中で引用された全ての参考文献および材料は、具体的に、そして全体が引用により本明細書中に組み入れられる。明細書および実施例は例として考慮されるにすぎず、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0254】
参考文献
【0255】
【数1】
【0256】
【数2】
【0257】
【数3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その長さが200ヌクレオチド以下であり、第1のヌクレオチド配列を含む単離された標的化ポリヌクレオチドであって、前記第1のヌクレオチド配列は、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化し、任意のT(チミジン)または任意のU(ウリジン)は、状況に応じて他方で置換することができ、そして前記第1のヌクレオチド配列は、
a)その長さが15ヌクレオチドから30ヌクレオチドまでの任意の数である配列、または
b)a)に提供される配列の相補体
から構成される、単離された標的化ポリヌクレオチド。
【請求項2】
ループ配列によって前記第1のヌクレオチド配列とは間隔が隔てられている第2のヌクレオチド配列をさらに含み、前記第2のヌクレオチド配列が、
a)前記第1のヌクレオチド配列と実質的に同じ長さを有しており、そして
b)前記第1のヌクレオチド配列に実質的に相補的である、
請求項1に記載にポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記第1のヌクレオチド配列が、
a)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列;
b)項目a)に提供される標的化配列よりも長く、項目a)に提供される標的化配列を含む伸張配列であって、前記伸張配列は、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化し、そして前記標的化配列は、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する、伸張配列;
c)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列の断片であって、前記断片が、少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、最大で選択される配列よりも1塩基短い長さである、連続する塩基の配列からなる、断片;
d)5個までのヌクレオチドが、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列とは異なる、標的化配列;または
e)a)〜d)に提供される配列の相補体
からなる、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記第1のヌクレオチド配列の長さが、21ヌクレオチドから25ヌクレオチドまでの任意の数である、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
選択される配列の3’末端に結合した2ヌクレオチドの突出を状況に応じて含む、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列からなる、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される第1のヌクレオチド配列、ループ配列、および第2のヌクレオチド配列からなる、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記第1のヌクレオチド配列の3’末端にある2ヌクレオチド配列が、TT、TU、UT、またはUUであり、前記2ヌクレオチドがリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはそれらの両方を含む、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドがDNAである、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含む、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1に記載の第1の標的化ポリヌクレオチド鎖と、少なくとも前記第1のポリヌクレオチド鎖の第1のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であり、それにハイブリダイズする第2のヌクレオチド配列を含む第2のポリヌクレオチド鎖とを含む、二本鎖のポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1、請求項2、または請求項10のうち1項以上に記載された複数の標的化ポリヌクレオチドを含む組み合わせであって、個々のポリヌクレオチドは、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子の中の異なる配列、あるいはそれらの任意の2つ以上を標的化する、複数の標的化ポリヌクレオチドを含む組み合わせ。
【請求項12】
個々の標的化ポリヌクレオチドの中の前記第1のヌクレオチド配列が以下:
a)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列;
b)項目a)に提供される標的化配列よりも長く、項目a)に提供される標的化配列を含む伸張配列であって、前記伸張配列は、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化し、そして前記標的化配列は、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する、伸張配列;
c)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列の断片であって、前記断片が、少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、最大で選択される配列よりも1塩基短い長さである、連続する塩基の配列からなる、断片;
d)5個までのヌクレオチドが、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列とは異なる、標的化配列;または
e)a)〜d)に提供される配列の相補体
からなる、請求項11に記載の組み合わせ。
【請求項13】
請求項1、請求項2、または請求項10に記載の標的化ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項14】
前記ベクターが、プラスミド、コスミド、組み換え体ウイルス、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、トランスポゾン、またはミニ染色体である、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
前記制御エレメントが、その発現を促進するために有効な標的化ポリヌクレオチドと動作可能であるように連結されている、請求項13に記載のベクター。
【請求項16】
請求項1、請求項2、または請求項10に記載の1つ以上のポリヌクレオチド、あるいはそれらの組み合わせでトランスフェクトされた細胞。
【請求項17】
請求項1、請求項2、または請求項10に記載の1つ以上のポリヌクレオチド、あるいはそれらの組み合わせと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、個々のポリヌクレオチドは、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子、あるいはこれらの任意の2つ以上の中の異なる配列を標的化する、薬学的組成物。
【請求項18】
請求項13に記載の1つ以上のベクターと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、個々のベクターは、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子、あるいは、これらの任意の2つ以上の中の異なる配列を標的化するポリヌクレオチドを有している、薬学的組成物。
【請求項19】
前記担体が合成ポリマー、リポソーム、デキストロース、界面活性剤、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含む、請求項17または請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
請求項1または請求項2に記載のICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化する配列を有するポリヌクレオチドを合成する方法であって、以下の工程:
a)活性のある反応性末端を含み、前記配列の第1の末端にあるヌクレオチドに対応しているヌクレオチド試薬を提供する工程、
b)先の工程による活性のある反応性末端と反応させて、増殖するポリヌクレオチド配列の長さを1ヌクレオチド伸ばすために、活性のある反応性末端を含み、標的化配列の連続している位置に対応しているさらなるヌクレオチドを付加させ、そして望ましくない生成物と過剰な試薬を除去する工程、および、
c)工程b)を、配列の第2の末端にあるヌクレオチドに対応するヌクレオチド試薬が付加されるまで繰り返す工程
を含み、それにより完全なポリヌクレオチドを提供する、方法。
【請求項21】
ガン細胞の増殖を阻害する方法であって、細胞を、請求項1、請求項2、もしくは請求項10に記載の1つ以上の標的化ポリヌクレオチド、またはそれらの組み合わせを含む組成物と、細胞内への前記1つ以上のポリヌクレオチドの取り込みを促進する条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項22】
ガン細胞のアポトーシスを促進する方法であって、細胞を、請求項1、請求項2、もしくは請求項10に記載の1つ以上の標的化ポリヌクレオチド、またはそれらの組み合わせを含む組成物と、細胞内への前記1つ以上のポリヌクレオチドの取り込みを促進する条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項23】
請求項1、請求項2、もしくは請求項10に記載のポリヌクレオチド、またはそれらの2つ以上の組み合わせの、被験体のガン、腫瘍、または前ガンの増殖を処置するために有効な薬学的組成物の製造における使用であって、個々のポリヌクレオチドは、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化する、使用。
【請求項24】
前記ガン、腫瘍、または増殖が、乳房組織、結腸組織、前立腺組織、皮膚組織、骨組織、耳下腺組織、膵臓組織、甲状腺組織、腎臓組織、子宮頸組織、肺組織、リンパ節組織、骨髄の造血組織、または卵巣組織から選択される組織の中で見られる、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
個々のポリヌクレオチドの中の前記第1のヌクレオチド配列が以下:
a)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列;
b)項目a)に提供される標的化配列よりも長く、項目a)に提供される標的化配列を含む伸張配列であって、前記伸張配列は、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化し、前記標的化配列は、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する、伸張配列;
c)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列の断片であり、ここで、前記断片は、少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、最大で選択される配列よりも1塩基短い長さである連続する塩基の配列からなる、断片;
d)5個までのヌクレオチドが、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列とは異なる、標的化配列;または
e)a)〜d)に提供される配列の相補体
からなる、請求項23に記載の使用。
【請求項28】
前記被験体がヒトである、請求項23に記載の使用。
【請求項29】
被験体のガン、腫瘍、または前ガンの増殖を処置するために有効な薬学的組成物の製造における、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子のポリペプチド産物に対して指向される1つ以上の抗体の使用。
【請求項30】
前記ガン、腫瘍、または増殖が、乳房組織、結腸組織、前立腺組織、皮膚組織、骨組織、耳下腺組織、膵臓組織、甲状腺組織、腎臓組織、子宮頸組織、肺組織、リンパ節組織、骨髄の造血組織、または卵巣組織から選択される組織の中で見られる、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記被験体がヒトである、請求項29に記載の使用。
【請求項1】
その長さが200ヌクレオチド以下であり、第1のヌクレオチド配列を含む単離された標的化ポリヌクレオチドであって、前記第1のヌクレオチド配列は、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化し、任意のT(チミジン)または任意のU(ウリジン)は、状況に応じて他方で置換することができ、そして前記第1のヌクレオチド配列は、
a)その長さが15ヌクレオチドから30ヌクレオチドまでの任意の数である配列、または
b)a)に提供される配列の相補体
から構成される、単離された標的化ポリヌクレオチド。
【請求項2】
ループ配列によって前記第1のヌクレオチド配列とは間隔が隔てられている第2のヌクレオチド配列をさらに含み、前記第2のヌクレオチド配列が、
a)前記第1のヌクレオチド配列と実質的に同じ長さを有しており、そして
b)前記第1のヌクレオチド配列に実質的に相補的である、
請求項1に記載にポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記第1のヌクレオチド配列が、
a)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列;
b)項目a)に提供される標的化配列よりも長く、項目a)に提供される標的化配列を含む伸張配列であって、前記伸張配列は、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化し、そして前記標的化配列は、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する、伸張配列;
c)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列の断片であって、前記断片が、少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、最大で選択される配列よりも1塩基短い長さである、連続する塩基の配列からなる、断片;
d)5個までのヌクレオチドが、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列とは異なる、標的化配列;または
e)a)〜d)に提供される配列の相補体
からなる、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記第1のヌクレオチド配列の長さが、21ヌクレオチドから25ヌクレオチドまでの任意の数である、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
選択される配列の3’末端に結合した2ヌクレオチドの突出を状況に応じて含む、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列からなる、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される第1のヌクレオチド配列、ループ配列、および第2のヌクレオチド配列からなる、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記第1のヌクレオチド配列の3’末端にある2ヌクレオチド配列が、TT、TU、UT、またはUUであり、前記2ヌクレオチドがリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはそれらの両方を含む、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドがDNAである、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの両方を含む、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1に記載の第1の標的化ポリヌクレオチド鎖と、少なくとも前記第1のポリヌクレオチド鎖の第1のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であり、それにハイブリダイズする第2のヌクレオチド配列を含む第2のポリヌクレオチド鎖とを含む、二本鎖のポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1、請求項2、または請求項10のうち1項以上に記載された複数の標的化ポリヌクレオチドを含む組み合わせであって、個々のポリヌクレオチドは、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子の中の異なる配列、あるいはそれらの任意の2つ以上を標的化する、複数の標的化ポリヌクレオチドを含む組み合わせ。
【請求項12】
個々の標的化ポリヌクレオチドの中の前記第1のヌクレオチド配列が以下:
a)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列;
b)項目a)に提供される標的化配列よりも長く、項目a)に提供される標的化配列を含む伸張配列であって、前記伸張配列は、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化し、そして前記標的化配列は、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する、伸張配列;
c)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列の断片であって、前記断片が、少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、最大で選択される配列よりも1塩基短い長さである、連続する塩基の配列からなる、断片;
d)5個までのヌクレオチドが、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列とは異なる、標的化配列;または
e)a)〜d)に提供される配列の相補体
からなる、請求項11に記載の組み合わせ。
【請求項13】
請求項1、請求項2、または請求項10に記載の標的化ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項14】
前記ベクターが、プラスミド、コスミド、組み換え体ウイルス、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、トランスポゾン、またはミニ染色体である、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
前記制御エレメントが、その発現を促進するために有効な標的化ポリヌクレオチドと動作可能であるように連結されている、請求項13に記載のベクター。
【請求項16】
請求項1、請求項2、または請求項10に記載の1つ以上のポリヌクレオチド、あるいはそれらの組み合わせでトランスフェクトされた細胞。
【請求項17】
請求項1、請求項2、または請求項10に記載の1つ以上のポリヌクレオチド、あるいはそれらの組み合わせと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、個々のポリヌクレオチドは、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子、あるいはこれらの任意の2つ以上の中の異なる配列を標的化する、薬学的組成物。
【請求項18】
請求項13に記載の1つ以上のベクターと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、個々のベクターは、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子、あるいは、これらの任意の2つ以上の中の異なる配列を標的化するポリヌクレオチドを有している、薬学的組成物。
【請求項19】
前記担体が合成ポリマー、リポソーム、デキストロース、界面活性剤、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含む、請求項17または請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
請求項1または請求項2に記載のICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化する配列を有するポリヌクレオチドを合成する方法であって、以下の工程:
a)活性のある反応性末端を含み、前記配列の第1の末端にあるヌクレオチドに対応しているヌクレオチド試薬を提供する工程、
b)先の工程による活性のある反応性末端と反応させて、増殖するポリヌクレオチド配列の長さを1ヌクレオチド伸ばすために、活性のある反応性末端を含み、標的化配列の連続している位置に対応しているさらなるヌクレオチドを付加させ、そして望ましくない生成物と過剰な試薬を除去する工程、および、
c)工程b)を、配列の第2の末端にあるヌクレオチドに対応するヌクレオチド試薬が付加されるまで繰り返す工程
を含み、それにより完全なポリヌクレオチドを提供する、方法。
【請求項21】
ガン細胞の増殖を阻害する方法であって、細胞を、請求項1、請求項2、もしくは請求項10に記載の1つ以上の標的化ポリヌクレオチド、またはそれらの組み合わせを含む組成物と、細胞内への前記1つ以上のポリヌクレオチドの取り込みを促進する条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項22】
ガン細胞のアポトーシスを促進する方法であって、細胞を、請求項1、請求項2、もしくは請求項10に記載の1つ以上の標的化ポリヌクレオチド、またはそれらの組み合わせを含む組成物と、細胞内への前記1つ以上のポリヌクレオチドの取り込みを促進する条件下で接触させる工程を含む、方法。
【請求項23】
請求項1、請求項2、もしくは請求項10に記載のポリヌクレオチド、またはそれらの2つ以上の組み合わせの、被験体のガン、腫瘍、または前ガンの増殖を処置するために有効な薬学的組成物の製造における使用であって、個々のポリヌクレオチドは、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化する、使用。
【請求項24】
前記ガン、腫瘍、または増殖が、乳房組織、結腸組織、前立腺組織、皮膚組織、骨組織、耳下腺組織、膵臓組織、甲状腺組織、腎臓組織、子宮頸組織、肺組織、リンパ節組織、骨髄の造血組織、または卵巣組織から選択される組織の中で見られる、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
個々のポリヌクレオチドの中の前記第1のヌクレオチド配列が以下:
a)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列;
b)項目a)に提供される標的化配列よりも長く、項目a)に提供される標的化配列を含む伸張配列であって、前記伸張配列は、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子を標的化し、前記標的化配列は、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する、伸張配列;
c)配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列の断片であり、ここで、前記断片は、少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、最大で選択される配列よりも1塩基短い長さである連続する塩基の配列からなる、断片;
d)5個までのヌクレオチドが、配列番号7〜76、81〜84、および89〜242から選択される配列を標的化する配列とは異なる、標的化配列;または
e)a)〜d)に提供される配列の相補体
からなる、請求項23に記載の使用。
【請求項28】
前記被験体がヒトである、請求項23に記載の使用。
【請求項29】
被験体のガン、腫瘍、または前ガンの増殖を処置するために有効な薬学的組成物の製造における、ICT−1053遺伝子、またはICT−1052遺伝子、またはICT−1027遺伝子、またはICT−1051遺伝子、またはICT−1054遺伝子、またはICT−1020遺伝子、またはICT−1021遺伝子、またはICT−1022遺伝子のポリペプチド産物に対して指向される1つ以上の抗体の使用。
【請求項30】
前記ガン、腫瘍、または増殖が、乳房組織、結腸組織、前立腺組織、皮膚組織、骨組織、耳下腺組織、膵臓組織、甲状腺組織、腎臓組織、子宮頸組織、肺組織、リンパ節組織、骨髄の造血組織、または卵巣組織から選択される組織の中で見られる、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記被験体がヒトである、請求項29に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−512786(P2010−512786A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542744(P2009−542744)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/049261
【国際公開番号】WO2008/076127
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509173993)イントラダイム コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/049261
【国際公開番号】WO2008/076127
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509173993)イントラダイム コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
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