説明

キシレン類の製造方法

【課題】工業的に生産性の高いキシレン類の製造方法を提供すること。
【解決手段】ジメチルエーテルおよび/またはメタノールを触媒と接触させてキシレン類を製造するに際し、モルデナイトを種結晶として合成されたペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩を希土類元素で修飾した成分を含む触媒を用いるキシレン類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチルエーテル及び/またはメタノールを触媒と接触させてキシレン類を製造する方法に関する。さらに詳しくは、モルデナイトを種結晶として合成されたペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩を希土類元素で修飾(以下、“担持”と記載することもある)した成分を含む触媒を用いることにより、ジメチルエーテル及び/またはメタノールから高い収率で選択的にキシレン類を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キシレン類は、種々の分野における溶剤や化学工業の基礎原料として広く使われている。それらは、石油から得られるナフサ等の炭化水素の熱分解で生成するガソリン留分の改質・芳香族化、あるいは重質炭化水素の接触分解生成物からの抽出等により製造されている。一方、メタン等の天然ガスをリフォーミングして合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)とし、これを原料として製造されるメタノールやジメチルエーテルを、ゼオライト触媒を用いて縮合環化させることによってもキシレン類が合成できることも知られている。近年は、将来の石油資源枯渇等の問題から、合成ガス経由での化学品製造の重要性が高まってきている。
【0003】
メタノールやジメチルエーテルを原料としてキシレン類を製造する方法は特許文献1、特許文献2、および特許文献3等に開示されている。しかしながら、特許文献1では、特定の性状のZSM−5等のゼオライトを用いてメタノールやジメチルエーテルを反応させ、エチレン、プロピレン、キシレン類を製造する方法が開示されているが、キシレン類の収率は約10質量%以下と非常に低い。また、特許文献2および3には、ホウ素、マクネシウム、リンの酸化物を含むZSM−5等のゼオライト触媒を用いてメタノールやジメチルエーテルを反応させ、オレフィン類やキシレン類を製造する方法が開示されているが、キシレン類の収率はやはり約10質量%以下と低く、キシレン類の製造方法としては不十分である。
【0004】
また、非特許文献1および非特許文献2には、種々の性状のプロトン型ZSM−5(HZSM−5)あるいは修飾されたゼオライト触媒存在下にメタノールを反応させてオレフィン類やキシレン類を合成する方法が記載されているが、キシレン類の収率はやはり低い。また、非特許文献3には、Agイオンで修飾したZSM−5触媒を用いたメタノールの反応で、反応条件(反応温度、反応圧力、W/F等)を種々検討した結果が開示されているが、キシレン類の収率は最大で約30質量%である。このように、従来の技術には種々問題点があり、ジメチルエーテルやメタノールを原料として収率良くキシレン類を得る方法はこれまで開発されていなかった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,025,572号明細書
【特許文献2】米国特許第4,049,573号明細書
【特許文献3】米国特許第4,088,706号明細書
【非特許文献1】Studies in Surface Science and Catalyst、36巻、195ページ(1988年)
【非特許文献2】Journal of Catalyst、205巻、358ページ(2002年)
【非特許文献3】Microporous Material、4巻、379ページ(1995年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ジメチルエーテル及び/またはメタノールを原料として、触媒と接触させてキシレン類を製造する際に、副生成物の生成を抑制してキシレン類を収率よく選択的に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解消し、ジメチルエーテル及び/またはメタノールからキシレン類を収率よく選択的に製造するという課題を達成するため、鋭意研究を進めた結果、モルデナイトを種結晶として合成されたペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩を希土類元素で修飾した成分を含む触媒を使用することにより、副生成物の生成が抑制され、キシレン類の収率が向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)ジメチルエーテルおよび/またはメタノールを触媒と接触させてキシレン類を製造するに際し、モルデナイトを種結晶として合成されたペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩を希土類元素で修飾した成分を含む触媒を用いることを特徴とするキシレン類の製造方法、
(2)前記モルデナイトが下記の格子面間隔(d値:単位はオングストローム)
格子面間隔 相対強度 格子面間隔 相対強度
13.75±0.20 中程度 3.84±0.10 中程度
10.36±0.20 中程度 3.80±0.10 弱い
9.14±0.20 非常に強い 3.48±0.10 中程度
6.61±0.20 中程度 3.40±0.10 中程度
6.42±0.20 中程度 3.23±0.10 強い
6.10±0.20 弱い 3.21±0.10 強い
5.92±0.20 中程度 2.90±0.10 中程度
4.60±0.20 中程度 2.50±0.10 弱い
4.01±0.20 強い
を有する前記(1)に記載のキシレン類の製造方法、
(3)前記ペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩のSiO2/Al23(モル比)が10以上である前記(1)または(2)に記載のキシレン類の製造方法、
(4)前記ペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩がMFI構造を有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載のキシレン類の製造方法、
(5)前記触媒がさらに、触媒全量に基づき0.1〜10質量%の割合でリンを含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載のキシレン類の製造方法および
(6)反応系内にスチームを導入して反応させる前記(1)〜(5)のいずれかに記載のキシレン類の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ジメチルエーテル及び/またはメタノールを原料として、高い収率で選択的にキシレン類を合成でき、工業的に生産性の高いキシレン類の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のキシレン類の製造方法に用いられる触媒は、モルデナイトを種結晶として合成されたペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩よりなる触媒前駆体を希土類元素で修飾した成分を含むことを特徴としており、ゼオライト触媒を主成分とする。種結晶として使用するモルデナイトは、天然品、合成品のいずれでもよいが、下記の格子面間隔(d値、単位:Å)
格子面間隔 相対強度 格子面間隔 相対強度
13.75±0.20 中程度 3.84±0.10 中程度
10.36±0.20 中程度 3.80±0.10 弱い
9.14±0.20 非常に強い 3.48±0.10 中程度
6.61±0.20 中程度 3.40±0.10 中程度
6.42±0.20 中程度 3.23±0.10 強い
6.10±0.20 弱い 3.21±0.10 強い
5.92±0.20 中程度 2.90±0.10 中程度
4.60±0.20 中程度 2.50±0.10 弱い
4.01±0.20 強い
を有するものが好ましい。また、より好ましくは、細孔方向の長さが2μm以上のモルデナイトである。なお、前記相対強度は、X線回折パターンにおいて、格子面間隔d値が9.14Åにおけるピーク強度をIО、格子面間隔d値におけるピーク強度をIとした場合、100×I/IОで表わし、かつ、下記の基準で相対強度の程度を表わす。
100×I/IО 相対強度の程度
60以上 : 非常に強い
40以上60未満 : 強い
20以上40未満: 中程度
20未満 : 弱い
モルデナイトの添加量は、特に限定はされないが、通常、原料中のシリカ(SiO2)に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%である。
【0010】
本発明のキシレン類の製造方法に用いられる触媒の形状は特に限定されず、粉末や成型品等のいずれの形状のものでもよい。また、これらの触媒はゼオライトおよび希土類以外の他の成分、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貴金属、ハロゲン、リン、バインダー等が含まれていてもよい。これらの中でもリンは希土類元素との間で耐熱材料の一種であるリン酸塩を形成させることにより触媒の耐久性向上に効果がある。例えば希土類元素を担持した本触媒をリン酸水素二アンモニウム水溶液に含浸・焼成することによって、希土類リン酸塩としてリンを担持することができる。リンは本触媒に対して、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜7質量%、さらに好ましくは2〜5質量%含有させることが望ましい。本触媒は、さらにシリカ、アルミナ、マグネシアあるいは石英砂等の充填剤と混合して使用することも可能である。
【0011】
前記ペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩とは、ゼオライトであって、構成基本単位が酸素5員環のものであり、例えば、ZSM−5、ZSM−11等が該当する。また、上記ペンタシル型結晶性アルミノケイ酸塩のうち、MFI構造、MEL構造を有するものが好ましい。このMFI構造とは、ZSM−5と類似の構造を指し、例えばNu−4、Nu−5、TZ−1等の構造が該当する。またMEL構造とは、ZSM−11と類似の構造を指す。前記触媒の形状は任意であり、各種のバインダーを入れる等により、例えばペレット状、板状、柱状、格子状とすることができる。また、コージェライト、ムライト又はアルミナ等の格子状の担体及び金網等の基材上に触媒が被覆されたものとしてもよい。
【0012】
ペンタシル型結晶性アルミノケイ酸塩は、その他のゼオライトに比べて、耐水熱性が比較的高く、希土類元素を担持した後の耐久性が低くなる虞れがない。このようなペンタシル型結晶性アルミノケイ酸塩の中でも、SiO2/Al23モル比が10以上のものが好ましく、10〜200のものがより好ましい。さらに好ましくは、15〜100である。SiO2/Al23モル比10〜200のものを使用することにより、耐水熱性の低下を緩和し、希土類元素を担持した後の耐久性が低下するのを防止することができる。
【0013】
本発明のキシレン類の製造方法に用いられる触媒は、ゼオライト触媒を主成分とするものであって、このゼオライト触媒は、前記モルデナイトを種結晶としてペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩を合成した後、このペンタシル型結晶性アルミノケイ酸塩に希土類元素を各種の方法により担持させて調製する。希土類元素としてはどのようなものでも使用できるが、好ましくは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、ジスプロシウム等を挙げることができる。希土類元素は、それぞれを単独で使用しても、また、2種以上を混合して使用してもよい。触媒への希土類の修飾(担持)は、種々の塩、例えば酢酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、あるいはアルコキシド、アセチルアセトナト等を使用し、イオン交換法、含浸法あるいは水熱合成法その他の方法で行うことができる。
【0014】
このようにして得られたゼオライト触媒は、通常のゼオライトが希土類元素を担持して構成されたものとは構造的に異なるものになっていると推定される。即ち、モルデナイトを種結晶として合成されたペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩は、通常のゼオライトと比べて、粒子径が大きいという構造的な差異が生じているため、希土類元素担持後の触媒の耐久性の向上という効果が顕著に現れるものと考えられる。このような効果は、特に前記のような格子面間隔を有する大結晶モルデナイトの場合に著しい。
【0015】
本発明のキシレン類の製造方法に用いられる触媒において、希土類元素の担持量は特に限定されないが、ゼオライト構造中のアルミニウムに対し原子比で、好ましくは0.01〜20、より好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは1〜5であり、担持量を0.01以上にコントロールすることにより、コーク(カーボン)および重質分の生成を抑制し、担持量を20以下にコントロールすることにより、触媒活性が急激に低下するのを防止し、結果としてキシレン収率が向上する。希土類元素の効果は未だ明らかではないが、脱水縮合反応はゼオライトの酸点が活性点となっており[たとえば、C1ケミストリー、126ページ、触媒学会編、講談社サイエンティフィク(1984)に記載]、希土類元素(酸化物)はおそらくその塩基性の作用により、生成したキシレンのゼオライトからの脱離を促進し、その結果、副反応としての重質物やコークの生成が抑制されているものと推測される。また、本触媒の特徴として、キシレン類(異性体)の中でも特に工業的に重要なパラキシレンを高い比率で製造することができることが挙げられる。これは希土類による修飾がゼオライトの細孔径分布にも影響を与えているためと推測される。
【0016】
本発明のキシレン類の製造方法における原料であるジメチルエーテル及び/またはメタノールの縮合環化反応は、固定床、流動床等の形式の反応器を使用して行うことができる。すなわち、反応器中に設置された上記の触媒を充填した触媒層へ原料を供給することにより行われる。この際、原料は、窒素、水素、ヘリウムあるいはスチームで希釈されていてもよい。これらの希釈剤の中でも特にスチームは触媒の選択性を向上させる効果があり、低コストで好ましい希釈剤である。スチームの供給量は、原料に対し重量比で、好ましく0.1〜5、さらに好ましくは0.3〜2である。重量比を0.1以上および5以下にコントロールすることにより、選択性を向上させる効果を保持することができる。
【0017】
反応温度は通常200〜700℃、好ましくは300〜600℃、さらに好ましくは350〜550℃である。反応温度を700℃以下にコントロールすることにより、メタンおよびコークの生成が抑制され、反応温度を200℃以上にコントロールすることにより、充分な活性が得られるため、一回通過あたりのキシレン類の収量が増大する。触媒に対する原料の質量時間空間速度は、通常0.02〜20h-1、好ましくは、0.1〜10h-1の範囲で行われる。反応は常圧、減圧あるいは加圧下のいずれでも実施できるが、通常は常圧からやや加圧下で実施される。
以上のような条件下にて本発明の方法を実施すれば、副反応による軽質パラフィンやコーク(カーボン)の生成、重質化が抑制され、ジメチルエーテル及び/またはメタノールを効率よくキシレン類に変換することができる。本発明でいうキシレン類とはキシレンの3種類の異性体だけでなく、エチルベンゼンのような異性体も含む。
【実施例】
【0018】
以下に本発明の実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例1
先ず、硫酸アルミニウム13.5g、硫酸(97質量%)14.5gおよび水330gよりなる溶液(溶液1とする)、水ガラス(SiO2 28.4質量%、Na2O 9.5質量%) 211gおよび水200gよりなる溶液(溶液2とする)及び塩化ナトリウム39.5g、水92gよりなる溶液(溶液3とする)を用意した。次に、溶液1と溶液2を同時に溶液3中に徐々に滴下しながら混合することにより、反応混合物を得た。この反応混合物を硫酸でpH9.6に調整した後、種結晶としてモルデナイト[SiO2/Al23=20(モル比)]0.5gを添加した。
【0020】
次に、モルデナイト添加後の反応混合物を容量1リットルのオートクレーブ中に入れ、自己圧力下170℃、300rpmで攪拌しながら20時間放置した。冷却後、この反応混合物を濾過し、沈殿物を過剰の純水で充分洗浄した。この後、120℃で20時間乾燥させることにより、ZSM−5構造(MFI構造)のアルミノシリケートゼオライトを合成した。次に、このゼオライトをマッフル炉中、550℃で4時間焼成した。得られたアルミノシリケートゼオライト中のSiO2/Al23は37(モル比)であった。このゼオライトを、0.6モル/リットルのHCl水溶液を用いてイオン交換・焼成を行い、プロトン型とした後に、希土類化合物での修飾を行った。
【0021】
上記の方法で合成したプロトン型ゼオライト4gを、希土類元素として0.4gのランタンを含む酢酸ランタン水溶液(0.99gの酢酸ランタン1.5水和物を脱イオン水60mlに溶解させたもの)に含浸し、40℃で2時間攪拌した。生成したスラリーを減圧下、40〜60℃で攪拌しながら約2時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中、120℃で8時間乾燥した後、マッフル炉内で4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を回収し、圧縮、粉砕、篩い分けして粒径約1mmφの粒子状に成型したものをLa/ZSM−5(1)触媒とした。この触媒のLa/Al原子比は0.84であった。
【0022】
この触媒2gを内径14mm、長さ400mmのステンレス製反応管(外径3mmの熱電対用内挿管つき)に充填した(触媒層長25mm)。触媒層の上下には2mmφのアルミナボールを充填した。この反応管に空気を40ミリリットル/分(0℃、1気圧、以下同じ)で流しながら触媒層の温度を650℃まで昇温し、そのまま1時間前処理を行った。前処理終了後、触媒層の温度を500℃とし、原料としてジメチルエーテルを6.3ミリリットル/分、スチームを1.0g/時間、内部標準として窒素を60ミリリットル/分で流してジメチルエーテルの縮合環化反応を行った。反応開始1時間後に出口の生成物(水分は除く)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ジメチルエーテルの転化率は100%であり、キシレン類の収率は44.1質量%であった(パラキシレン収率:21.6質量%、メタキシレン収率:15.9質量%、オルトキシレン収率:6.6質量%)。また、その他の成分として、トルエン(18.4質量%)、ベンゼン(1.9質量%)、エチレン(11.0質量%)、プロピレン(10.2質量%)、ブテン(5.3質量%)、その他炭化水素(9.1質量%)が生成した。
なお、ジメチルエーテルの転化率および各生成物の収率はそれぞれ以下の式により算出した。
転化率(質量%)
=(1−未反応ジメチルエーテル量/供給ジメチルエーテル量)×100
各生成物の収率(質量%)
=[各生成物質量/(供給ジメチルエーテル中の炭素質量+水素質量)]×100
【0023】
実施例2
実施例1と同様にして得た溶液1〜溶液3の混合物を硫酸でpH9.6に調整した後、種結晶として下記の格子面間隔(d値、単位:オングストローム)を有する大結晶モルデナイト0.5gを添加することにより、反応混合物を得た。この後、本反応混合物を攪拌しながら実施例1と同様の条件下、オートクレーブで保持した。冷却後、実施例1と同様な処理を行ってLa修飾を行い、得られた触媒のLa/Al原子比は0.84であった。これをZSM−5(2)触媒とした。
【0024】
格子面間隔 相対強度 格子面間隔 相対強度
13.74 中程度 3.83 中程度
10.36 中程度 3.81 弱い
9.13 非常に強い 3.42 中程度
6.60 中程度 3.42 中程度
6.40 中程度 3.25 強い
6.11 弱い 3.23 強い
5.93 中程度 2.92 中程度
4.62 中程度 2.52 弱い
4.02 強い
【0025】
この触媒2gを実施例1と同様な反応管に充填し、実施例1と同じ条件でジメチルエーテルの縮合環化反応を行った。反応開始1時間後に出口の生成物(水分は除く)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ジメチルエーテルの転化率は100%であり、キシレン類の収率は46.0質量%であった(パラキシレン収率:22.5質量%、メタキシレン収率:16.6質量%、オルトキシレン収率:6.9質量%)。また、その他の成分として、トルエン19.4質量%、ベンゼン2.5質量%、エチレン11.6質量%、プロピレン9.0質量%、ブテン2.0質量%、その他炭化水素9.5質量%が生成した。
【0026】
実施例3
この例は実施例1の触媒にさらにリンを加えた触媒の調整例を示す。実施例1で調製したLa/ZSM−5触媒1の4gに対し、その2質量%に相当する0.08gのリンを含むリン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム0.34gを脱イオン水40gに溶解させたもの)に含浸し、40℃で2時間攪拌した。生成したスラリーを減圧下、40〜60℃で攪拌しながら約2時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中、120℃で8時間乾燥した後、マッフル炉内で4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた白色粉末を回収し、圧縮・粉砕・篩い分けして粒径約1mmφの粒子状に成型したものをP−La/ZSM−5(3)触媒とした。触媒のLa/Al原子比は0.84であった。
【0027】
この触媒2gを実施例1と同様な反応管に充填し、実施例1と同じ条件で前処理を行った。前処理終了後、触媒層の温度を500℃とし、原料としてジメチルエーテルを12.4ミリリットル/分、スチームを2.0g/時間、窒素を120ミリリットル/分で流してジメチルエーテルの縮合環化反応を行った。反応開始1時間後に出口の生成物(水分は除く)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ジメチルエーテルの転化率は100%であり、キシレン類の収率は46.5質量%であった(パラキシレン収率:22.8質量%、メタキシレン収率:16.7質量%、オルトキシレン収率:7.0質量%)。また、その他の成分として、トルエン19.4質量%、ベンゼン1.6質量%、エチレン6.8質量%、プロピレン4.2質量%、ブテン1.6質量%、その他炭化水素19.9質量%が生成した。
【0028】
比較例1
実施例1と同様にして得た溶液1〜溶液3の混合物を硫酸でpH9.6に調整した後、種結晶に変えて結晶化剤であるテトラプロピルアンモニウムブロミド26.6gを添加した。この後、本反応混合物を実施例1と同様の条件下、オートクレーブ中で攪拌しながら保持した。冷却後、実施例1と同様に洗浄と乾燥を行い、更にマッフル炉中、550℃で8時間焼成することにより、ZSM−5構造のアルミノシリケートゼオライトを得た。このゼオライトのSiO2/Al23モル比は38であった。次に、実施例1と同様な処理を行ってLa修飾を行い、得た触媒をLa/ZSM−5(比較1)触媒とした。触媒のLa/Al原子比は同じく0.84であった。
この触媒2gを実施例1と同様な反応管に充填し、実施例1と同じ条件でジメチルエーテルの縮合環化反応を行った。反応開始1時間後に出口の生成物(水分は除く)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ジメチルエーテルの転化率は100%であったが、キシレン類の収率は21.5質量%と低かった(パラキシレン収率:10.5質量%、メタキシレン収率:7.7質量%、オルトキシレン収率:3.2質量%)。その他の成分として、トルエン9.9質量%、ベンゼン0.9質量%、エチレン9.9質量%、プロピレン23.1質量%、ブテン11.9質量%、その他炭化水素22.8質量%が生成した。
【0029】
比較例2
実施例1と同じ条件で種結晶としてモルデナイトを用い、ZSM−5構造(MFI構造)のアルミノシリケートゼオライトを合成した。次に、このゼオライトをマッフル炉中、550℃で4時間焼成した。得られたアルミノシリケートゼオライトのSiO2/Al23モル比は37であった。このゼオライトを、0.6モル/リットルのHCl水溶液を用いてイオン交換・焼成を行い、プロトン型としたものをそのまま圧縮・粉砕・篩い分けして粒径約1mmφの粒子状に成型した。この触媒をHZSM−5(比較2)触媒として、実施例1と同じ条件でジメチルエーテルの縮合環化反応を行った。反応開始1時間後に出口の生成物(水分は除く)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ジメチルエーテルの転化率は100%であったが、キシレン類の収率は13.9質量%と低かった(パラキシレン収率:5.6質量%、メタキシレン収率:5.5質量%、オルトキシレン収率:2.8質量%)。その他の成分として、トルエン4.3質量%、ベンゼン0.3質量%、エチレン6.1質量%、プロピレン24.3質量%、ブテン20.1質量%、その他炭化水素31.0質量%が生成した。
【0030】
上記実施例1〜3および比較例1〜2の結果を表1に示した。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルエーテルおよび/またはメタノールを触媒と接触させてキシレン類を製造するに際し、モルデナイトを種結晶として合成されたペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩を希土類元素で修飾した成分を含む触媒を用いることを特徴とするキシレン類の製造方法。
【請求項2】
前記モルデナイトが下記の格子面間隔(d値:単位はÅ)
格子面間隔 相対強度 格子面間隔 相対強度
13.75±0.20 中程度 3.84±0.10 中程度
10.36±0.20 中程度 3.80±0.10 弱い
9.14±0.20 非常に強い 3.48±0.10 中程度
6.61±0.20 中程度 3.40±0.10 中程度
6.42±0.20 中程度 3.23±0.10 強い
6.10±0.20 弱い 3.21±0.10 強い
5.92±0.20 中程度 2.90±0.10 中程度
4.60±0.20 中程度 2.50±0.10 弱い
4.01±0.20 強い
を有する請求項1に記載のキシレン類の製造方法。
【請求項3】
前記ペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩のSiO2/Al23(モル比)が10以上である請求項1または2に記載のキシレン類の製造方法。
【請求項4】
前記ペンタシル型の結晶性アルミノケイ酸塩がMFI構造を有する請求項1〜3のいずれかに記載のキシレン類の製造方法。
【請求項5】
前記触媒がさらに、触媒全量に基づき0.1〜10質量%の割合でリンを含む請求項1〜4のいずれかに記載のキシレン類の製造方法。
【請求項6】
反応系内にスチームを導入して反応させる請求項1〜5のいずれかに記載のキシレン類の製造方法。

【公開番号】特開2007−137840(P2007−137840A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336063(P2005−336063)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】