説明

キックアップフレームの接続構造

【課題】
サイドフレーム及びキックアップフレームの重量、材料費及び加工費を下げることができて、製造コストの低減を図ることができるキックアップフレームの接続構造を提供する。
【解決手段】
車体の前後方向に延出する左右一対のサイドフレーム12の後端部に、クロスメンバ15を連結する。クロスメンバ15には、左右一対のキックアップフレーム16を車体幅方向の内側にオフセットして連結する。一対のサイドフレーム12の各後端部と、クロスメンバ15の左右の各端部と、一対のキックアップフレーム16の各前端部との間には、それぞれ1つの補強部材17を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両におけるキックアップフレームの接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキックアップフレームの接続構造としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、車体の前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム間にクロスメンバが連結されている。各サイドフレームの後部にはキックアップ部が、上方に湾曲するとともに車体幅方向の内側にオフセットした状態で延びるように一体に形成されている。各サイドフレームに対するキックアップ部の延長部には、補強材が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−180516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来構成においては、キックアップ部がサイドフレームに対して、上方に湾曲するとともに車体幅方向の内側にオフセットした状態で一体に延長形成されている。このため、キックアップ部に車輪からの応力が集中して、車体フレームに捩れが生じるおそれがある。これを防止するために、キックアップ部を含むサイドフレーム全体を高強度の材質及び板厚の素材により成形して、強度アップを図る必要がある。よって、車体フレームの重量が増大するとともに、材料費が高くなって製造コストの高騰を招くという問題があった。
【0005】
また、この従来構成では、キックアップ部をサイドフレームに対して、上方に湾曲するとともに車体幅方向の内側にオフセットするように一体に屈曲成形する必要がある。このため、キックアップ部の屈曲成形に際して、三次元方向への屈曲成形が可能な大型の特殊加工機械を使用する必要がある。よって、加工費が高くなって製造コストの一層の高騰を招くという問題があった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、サイドフレーム及びキックアップフレームを高強度の材質及び板厚の素材により成形する必要がなく、それらのフレームの接続部を効果的に補強することができて、重量及び材料費を低減することができるとともに、サイドフレーム及びキックアップフレームを、二次元方向への屈曲成形が可能な小型の汎用加工機械を使用して成形することができて、加工費を低減することができるキックアップフレームの接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、車体の前後方向に延出する左右一対のサイドフレームの後端部に対してクロスメンバを連結し、前記クロスメンバに対して、左右一対のキックアップフレームを車体幅方向の内側にオフセットして連結し、前記一対のサイドフレームの各後端部と、前記クロスメンバの左右の各端部と、前記一対のキックアップフレームの各前端部との間に、それぞれ1つの補強部材を連結したことを特徴としている。
【0008】
従って、この発明のキックアップフレームの接続構造においては、サイドフレームの後端部と、クロスメンバの左右端部と、キックアップフレームの前端部との接続部を、補強部材により強固に補強することができる。このため、サイドフレームにキックアップ部を一体に形成した従来構成とは異なり、キックアップ部を含むサイドフレーム全体を高強度の材質及び板厚の素材により成形する必要がなく、重量及び材料費を低減することができる。また、キックアップフレームがサイドフレームと独立して形成されているため、それらのフレームを二次元方向への屈曲成形が可能な小型の汎用加工機械を使用して成形することができて、加工費を低減することができる。
【0009】
前記の構成において、前記サイドフレーム及び前記キックアップフレームは、それぞれ上壁、下壁及び上下両壁を連結する側壁を備え、前記各補強部材は、前記各サイドフレームの後端部の上壁、下壁及び側壁に連結された第1連結部と、前記各キックアップフレームの前端部の上壁、下壁及び側壁に連結された第2連結部と、前記クロスメンバの両端部の上部及び下部に連結された第3連結部とを備えるように構成するとよい。
【0010】
このように構成した場合には、第1〜第3連結部を備えた補強部材により、サイドフレームの後端部と、クロスメンバの左右端部と、キックアップフレームの前端部との接続部を、強固に補強することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、サイドフレーム及びキックアップフレームの重量、材料費及び加工費を下げることができて、製造コストの低減を図ることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態のキックアップフレームの接続構造を示す斜視図。
【図2】図1の接続構造において補強部材を分解した状態を示す斜視図。
【図3】同接続構造において補強部材の取付部分を拡大して示す要部斜視図。
【図4】同補強部材の取付部分を車体フレームの下面側から見て示す要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
以下に、この発明を具体化したキックアップフレームの接続構造の一実施形態を、図面に従って説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、この実施形態の車体フレーム11は、鋼材からなり、前後方向へ平行に延出する左右一対のサイドフレーム12を備えている。このサイドフレーム12は、上壁12aと、下壁12bと、上下両壁12a,12bを連結する側壁12cとにより、断面ほぼコ字状をなすように形成されている。両サイドフレーム12間には、前から順に複数のクロスメンバ13,14,15が溶接により連結固定されている。クロスメンバ13,14,15は鋼材からなる。
【0015】
クロスメンバ13、14は、断面ハット状に形成されている。サイドフレーム12の後端部間に連結固定された後側クロスメンバ15は、断面略Z状に形成され、上下方向へ立つ中間部15aと、中間部15aの下端から前方へ直角に折り曲げられた下部15bと、中間部15aの上端から後方へかつ斜め上方に斜状に折り曲げられた上部15cを有する。
【0016】
後側クロスメンバ15の左右両側後部には、鋼材からなるとともに、上方に湾曲した左右一対のキックアップフレーム16が、車体フレーム11の幅方向の内側にオフセットした状態で溶接により連結固定されている。このキックアップフレーム16は、上壁16aと、下壁16bと、上下両壁16a,16bを連結する側壁16cとにより、断面ほぼコ字状の開口部16dを有するように、かつ前記開口部16dが内方に向くように開放形成されている。
【0017】
一対のキックアップフレーム16は、車体フレーム11から斜め上方に向かう斜状部18と斜状部18に対して円弧状のアール部19を介して略水平に後方へ延びる延長部20を有する。一対のキックアップフレーム16の延長部20間は、鋼材からなるクロスメンバ21,22,23により互いに連結されている。
【0018】
また、図2及び図3に示すように斜状部18の上壁16aの基端側は、斜状部18の先端側の上壁16aよりも幅広に幅広部18aが形成されるとともに後側クロスメンバ15の上部15cの下面に重ねられて、スポット溶接により後側クロスメンバ15に固定されている。図2〜図4において、×印は、スポット溶接の箇所を示している。
【0019】
また、図4に示すように斜状部18の下壁16bの基端側は、下方へ行くほど斜状部18の先端側の下壁16bよりも幅広となる幅広部18cが形成されている。さらに、幅広部18cの下部には後側クロスメンバ15の下部15bの下面に重なる連結片18bが折り曲げ形成されるとともに後側クロスメンバ15の下部15bに対してスポット溶接により連結固定されている。
【0020】
図1〜図4に示すように、前記車体フレーム11の左右両側において、サイドフレーム12の後端部と、後側クロスメンバ15の端部と、キックアップフレーム16の前端部との間には、鋼板から型成型された一対の補強部材17が連結固定されている。一対の補強部材17は、互いに車体の前後方向に延びる中心線を基準として、左右対称形状に形成されている。
【0021】
各補強部材17は、サイドフレーム12の後端部に連結された第1連結部30と、各キックアップフレーム16の前端部に連結された第2連結部40と、後側クロスメンバ15の各端部に連結された第3連結部50とを備える。
【0022】
詳説すると、各補強部材17の第1連結部30は、上壁30a,下壁30b及び上壁30aと下壁30bを連結した側壁30cにより、断面コ字状に形成されるとともに、サイドフレーム12の後端部の上壁12a、下壁12b及び側壁12cの外面に対してそれぞれ重ね合わされて、スポット溶接されている。
【0023】
各補強部材17の第3連結部50は、第1連結部30の上壁30a,下壁30b及び側壁30cにそれぞれ一体に連結形成された上壁50a,下壁50b及び側壁50cにより、断面コ字状に形成されている。そして、第3連結部50の上壁50a及び下壁50bはそれぞれ後側クロスメンバ15の上部15c上面及び下部15bの下面に対してアーク溶接により連結固定されている。図3,図4において、ハッチング状に図示した部分がアーク溶接箇所を示している。また、上壁50a、下壁50b及び側壁50cにより、後側クロスメンバ15の端部が覆われている。なお、補強部材17の第3連結部50の側壁50cには、車輪を取り付けた図示しないサスペンションを揺動自在に支持するための支持孔50dが貫通して形成されている。
【0024】
各補強部材17の第2連結部40は、上壁40a,下壁40b及び上壁40aと下壁40bを連結した側壁40cにより、断面コ字状に形成されるとともに上壁50a,下壁50b及び側壁50cに一体形成されている。
【0025】
そして、図3、図4に示すように上壁40a及び下壁40bは、各キックアップフレーム16の幅広部18aの基端上面及び幅広部18cの下面に対してアーク溶接されることにより固定されている。また、側壁40cの先端は、図4に示すようにキックアップフレーム16の側壁16cの外面に折り曲げ片40dが重ね合わされた状態でスポット溶接されている。
【0026】
(実施形態の作用)
上記のように構成されたキックアップフレームの接続構造では、第1〜第3連結部30、40、50を備えた一対の補強部材17により、車体フレーム11の左右両側において、サイドフレーム12の後端部と、クロスメンバ15の左右端部と、キックアップフレーム16の前端部との接続部が補強されている。
【0027】
具体的には、サイドフレーム12の上壁12a、下壁12b及び側壁12cの外面に対しては、補強部材17の第1連結部30の上壁30a,下壁30b及び側壁30cがそれぞれ固定されている。
【0028】
又、後側クロスメンバ15の上部15c及び下部15bには、補強部材17の中間部である第3連結部50の上壁50a及び下壁50bが固定されている。さらに、キックアップフレーム16の前端部に位置する上壁16aの幅広部18a及び下壁16bの幅広部18cには、補強部材17の上壁40a及び下壁40bが固定されている。又、キックアップフレーム16の前端部に位置する側壁16cの外面には、側壁16cの外面に折り曲げ片40dが固定されている。
【0029】
このため、これらの接続部付近に車輪からの応力が集中しても、車体フレーム11に捩れが生じるおそれはない。
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0030】
(1) このキックアップフレームの接続構造においては、車体の前後方向に延出する左右一対のサイドフレーム12の後端部に、クロスメンバ15が連結されている。クロスメンバ15には、左右一対のキックアップフレーム16が車体幅方向の内側にオフセットして連結されている。一対のサイドフレーム12の各後端部と、クロスメンバ15の左右の各端部と、一対のキックアップフレーム16の各前端部との間には、それぞれ1つの補強部材17が連結されている。
【0031】
このため、サイドフレーム12の後端部と、クロスメンバ15の左右端部と、キックアップフレーム16の前端部との接続部を、補強部材17により強固に補強することができる。よって、サイドフレームにキックアップ部を一体に形成した従来構成と異なり、キックアップ部を含むサイドフレーム全体を高強度の材質及び板厚の素材により成形する必要がなく、重量及び材料費を低減することができる。また、キックアップフレーム16がサイドフレーム12と独立して形成されているため、それらのフレーム16,12を二次元方向への屈曲成形が可能な小型の汎用加工機械を使用して成形することができて、加工費を低減することができる。その結果、車体フレーム11の製造コストを低下させることができる。
【0032】
(2) このキックアップフレームの接続構造においては、サイドフレーム12及びキックアップフレーム16が、それぞれ上壁12a,16a、下壁12b,16b及び上下両壁を連結する側壁12c,16cを備えている。そして、各補強部材17には、各サイドフレーム12の後端部の上壁12a、下壁12b及び側壁12cに連結される第1連結部30と、各キックアップフレーム16の前端部の上壁16a、下壁16b及び側壁16cに連結される第2連結部40と、クロスメンバ15の両端部の上部及び下部に連結される第3連結部50とが設けられている。このため、第1〜第3連結部30〜50備えた補強部材17により、サイドフレーム12の後端部と、クロスメンバ15の左右端部と、キックアップフレーム16の前端部との接続部を、強固に補強することができる。
【0033】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態において、補強部材17の形状構成や、サイドフレーム12、キックアップフレーム16及びクロスメンバ15に対する連結部の構成を任意に変更すること。
【0034】
・ 前記実施形態では、補強部材17を、サイドフレーム12、後側クロスメンバ15及びキックアップフレーム16に対してスポット溶接或いはアーク溶接により固定したが、固定方法は限定されるものではない。ボルト等の締め付け手段を使用してもよい。また、前記実施形態において、スポット溶接をした部位をアーク溶接に変更したり、或いはアーク溶接した部位をスポット溶接に変更することも、形状を変更したりすることにより可能である。
【符号の説明】
【0035】
11…車体フレーム、12…サイドフレーム、
12a…上壁、12b…下壁、12c…側壁、
15…クロスメンバ、16…キックアップフレーム、
16a…上壁、16b…下壁、16c…側壁、
17…補強部材、30…第1連結部、40…第2連結部、50…第3連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向に延出する左右一対のサイドフレームの後端部に対してクロスメンバを連結し、
前記クロスメンバに対して、左右一対のキックアップフレームを車体幅方向の内側にオフセットして連結し、
前記一対のサイドフレームの各後端部と、前記クロスメンバの左右の各端部と、前記一対のキックアップフレームの各前端部との間に、それぞれ1つの補強部材を連結したことを特徴とするキックアップフレームの接続構造。
【請求項2】
前記サイドフレーム及び前記キックアップフレームは、それぞれ上壁、下壁及び上下両壁を連結する側壁を備え、
前記各補強部材は、前記各サイドフレームの後端部の上壁、下壁及び側壁に連結された第1連結部と、前記各キックアップフレームの前端部の上壁、下壁及び側壁に連結された第2連結部と、前記クロスメンバの両端部の上部及び下部に連結された第3連結部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のキックアップフレームの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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