説明

キッチンキャビネット

【課題】キッチンキャビネットの前板の開放と同時にスムーズに前方に回動する収納容器を構成し、かつ収納容器内の収納物を取り出し易い傾斜角度に収納容器を維持させることができるキッチンキャビネットを提供すること。
【解決手段】前後方向に回動可能な前板11によって開放可能な収納凹部7と、収納凹部7内に固着された保持具9に軸支されて上方に開口する開口部20を有する収納容器10と、を備え、前板11の開閉に応じて収納容器10が前後方向に回動するキッチンキャビネット1であって、収納容器10の左右側部17,18には、係止部30が突設されるとともに、少なくとも収納容器10の前後方向の重心位置よりも後方位置に回動軸部29が突設されており、保持具9には、回動軸部29を軸支する軸受部34と、収納容器10の前方回動終了時に係止部30を係止する回動規制部36が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前板によって開放可能な収納凹部内に配置された収納容器を、前板の開閉に応じて前後方向に回動させるキッチンキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のキッチンキャビネットは、キャビネット本体の上部において、シンクの前面壁からキャビネット本体の前面にかけて開口する空所(収納凹部)が形成されており、この空所内に前方に開口する収納用ハウジングと、この収納用ハウジングの前方開口を開閉する蓋体(前板)を収納用ハウジングの下端に前後回動自在に枢支し、収納用ハウジングの下部から上向きに突出した軸部(回動軸部)により、上方に開口する収納容器の前後方向の略中央部分の底部から下方に突設された軸受部を軸支させている。蓋体の閉止時には、収納容器は蓋体の後面と収納用ハウジングの前面とで挟持されるようになっている。また、蓋体の開放時には、収納容器は前方に回動して底部の前端下面が収納用ハウジングの底面壁の前縁上面に載置された状態で前方に傾斜するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−334249号公報(第5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のキッチンキャビネットにあっては、収納用ハウジングの下部から上向きに突出した軸部(回動軸部)を、収納容器の前後方向の略中央部分の底部から下方に突設された軸受部に軸支させているので、蓋体(前板)の閉止時には、収納容器の前後方向の重さのバランスがとれているため、蓋体を開放させた場合にスムーズに収納容器が前方に回動しない虞があるばかりか、収納物の収納の仕方によっては、収納物を含めた収納容器の重心位置が後方側に片寄る場合があり、蓋体を開放しても収納容器が前方に回動しなくなる虞がある。また、収納容器の底部の形状及び収納用ハウジングの底面壁の形状を利用して収納容器の傾斜角度を設定しているため、キッチンキャビネットの製造時などに収納容器の傾斜角度の設計変更ができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、キッチンキャビネットの前板の開放と同時にスムーズに前方に回動する収納容器を構成し、かつ収納容器内の収納物を取り出し易い傾斜角度に収納容器を維持させることができるキッチンキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のキッチンキャビネットは、
前後方向に回動可能な前板によって開放可能な収納凹部と、該収納凹部内に固着された保持具に軸支されて上方に開口する開口部を有する収納容器と、を備え、前記前板の開閉に応じて前記収納容器が前後方向に回動するキッチンキャビネットであって、
前記収納容器の左右側部には、係止部が突設されるとともに、少なくとも前記収納容器の前後方向の重心位置よりも後方位置に回動軸部が突設されており、前記保持具には、前記回動軸部を軸支する軸受部と、前記収納容器の前方回動終了時に前記係止部を係止する回動規制部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、回動軸部が収納容器の前後方向の重心位置よりも後方位置に突設されているので、前板を開放した際に収納容器が前方に回動し易くなっており、前板の開放と同時に収納容器を前方にスムーズに回動できるばかりか、予め収納容器の係止部の配置位置、或いは保持具の回動規制部の配置位置を適宜設定しておくことで、収納容器の前方回動終了時に収納容器の係止部を保持具の回動規制部に係止させて、収納容器内の収納物を取り出し易い傾斜角度に収納容器を維持させることができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載のキッチンキャビネットは、請求項1に記載の収納容器を備えたキッチンキャビネットであって、
前記収納容器は、前記保持具から着脱可能となっているとともに、その形状が前後対称に形成されており、前後一対の前記係止部が、前記収納容器の左右側部における前後対称位置に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、収納容器を保持具から着脱して収納容器の前後を逆に取り付けて使用することができ、右利きまたは左利きのいずれの使用者であっても、収納容器の取付状態を適宜変更して使用することができる。
【0008】
本発明の請求項3に記載のキッチンキャビネットは、請求項1または2に記載のキッチンキャビネットであって、
前記収納容器は、前記保持具から着脱可能となっているとともに、前記保持具には、前記収納容器の前方回動終了時に、該収納容器が前記保持具から離脱することを防止する離脱防止部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、収納容器内の収納物の取り出し時に、収納容器が保持具から離脱することを防止できる。
【0009】
本発明の請求項4に記載のキッチンキャビネットは、請求項1ないし3のいずれかに記載のキッチンキャビネットであって、
前記回動軸部と前記係止部とが、一体的に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、回動軸部と係止部の強度を高められるとともに、回動軸部と係止部とを収納容器に形成することが容易になる。
【0010】
本発明の請求項5に記載のキッチンキャビネットは、請求項1ないし4のいずれかに記載のキッチンキャビネットであって、
前記軸受部と前記回動規制部とが、一体的に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、軸受部と回動規制部の強度を高められるとともに、軸受部と回動規制部とを保持具に形成することが容易になる。
【0011】
本発明の請求項6に記載のキッチンキャビネットは、請求項1ないし5のいずれかに記載のキッチンキャビネットであって、
前記収納容器は、包丁の柄が略水平となるように包丁を保持する包丁収納ホルダーであることを特徴としている。
この特徴によれば、包丁収納ホルダーに柄が略水平となって保持されるので、包丁を取り出しやすくすることができる。特に、請求項2を引用した発明においては、右利きまたは左利きのいずれの使用者であっても、包丁収納ホルダーの取付状態を適宜変更して包丁を取り出し易くすることができる。
【0012】
本発明の請求項7に記載のキッチンキャビネットは、請求項1ないし6のいずれかに記載のキッチンキャビネットであって、
複数の前記収納容器が、前記収納凹部内にて上下方向に連設されており、下方の収納容器の回動角度が上方の収納容器の回動角度よりも大きくなっていることを特徴としている。
この特徴によれば、収納凹部内での収納容器数が増加されるため、収納凹部内での収納物の収納量が増加するとともに、下方の収納容器が上方の収納容器よりも前方に傾斜されるので、下方の収納容器内の収納物を取り出し易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るキッチンキャビネットを実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、実施例1におけるキッチンキャビネットを示す斜視図であり、図2は、前板を開放した状態のキッチンキャビネットの内部を示す縦断側面図であり、図3は、包丁収納ホルダーを示す平面図であり、図4は、図3における包丁収納ホルダーを示すA−A断面図であり、図5は、包丁収納ホルダーを示す側面図であり、図6は、保持具を示す側面図である。以下、図2、図5、図6の紙面左側を収納容器を備えたキッチンキャビネットの正面側とし、図3の紙面下方側を収納容器を備えたキッチンキャビネットの正面側(前方側)とし、図4の紙面手前側をキッチンキャビネットの正面側(前方側)として説明する。
【0015】
図1の符号1は、本発明が適用されたキッチンキャビネット1である。このキッチンキャビネット1について説明すると、キッチンキャビネット1の上部には、使用者が食器等を洗うのに使用するシンク部2が設けられており、シンク部2の隣には、キッチンキャビネット1上での作業スペース3が設けられている。
【0016】
また、キッチンキャビネット1の正面側には、本実施例における収納物としての包丁4を収納する包丁収納部5が設けられている。更に、包丁収納部5の下方には、キッチンキャビネット1内部の空間内に前後方向に移動自在に配置されて食器や食材等を収納する引出し6が設けられている。これら包丁収納部5と引出し6は、キッチンキャビネット1の正面側で左右方向に連設されている。
【0017】
本実施例では、キッチンキャビネット1の右側とは、使用者がキッチンキャビネット1の正面に立って右側のことであり、キッチンキャビネット1の左側とは、使用者がキッチンキャビネット1の正面に立って左側のこととして以下に説明する。
【0018】
これら包丁収納部5と引出し6のうち、包丁収納部5について説明する。図1及び図2に示すように、キッチンキャビネット1の正面側には、縦断側面視でコ字形状に形成されてその内方側が収納スペース8となっている収納凹部7が形成されている。この収納凹部7には、3つ(複数)の保持具9が左右方向に離間された状態で配置されている。
【0019】
これら保持具9間には、本実施例における収納容器としての4個(複数)の包丁収納ホルダー10が着脱自在に保持されている。尚、本実施例では、1つの収納スペース8内に全ての4個(複数)の包丁収納ホルダー10が上下二段及び左右二列となって設けられている(図4参照)。
【0020】
後述するように、包丁収納ホルダー10は、包丁収納ホルダー10の側部から突出する回動軸部29によって保持具9に対して軸支される(図5参照)。また、全ての包丁収納ホルダー10は、包丁4をその柄4bが右向きとなるように保持している(図4参照)。
【0021】
図2に示すように、収納スペース8は、正面側をキッチンキャビネット1の化粧板である前板11によって隠蔽されるようになっている。これら収納スペース8における収納凹部7の左右位置には、前板11の裏面と連結される左右2つの蝶番12と、前板11の全開位置を規定する折曲自在アーム13が設けられている。使用者は、前板11の上部に設けられた把手14を把持して操作することで、前板11が収納凹部7に対して前後方向に回動して、収納スペース8を開閉できるようになっている。
【0022】
より詳しくは、使用者によって前板11が開閉されると、この前板11の開閉に応じて、収納スペース8内の保持具9に軸支されている包丁収納ホルダー10が前後に回動する。図2に示すように、前板11の開放持には、上段の包丁収納ホルダー10は鉛直方向に対して所定回動角度θで前方に向かって回動するようになっている。また、下段の包丁収納ホルダー10は鉛直方向に対して所定回動角度θで前方に向かって回動するようになっている。
【0023】
包丁収納ホルダー10の回動角度θと回動角度θは、回動角度θの方が大きく設定されている。つまり、前板11が開放された状態では、下段の包丁収納ホルダー10の方が保持具9に対して上段の包丁収納ホルダー10よりも前方に傾斜されている。
【0024】
尚、本実施例では、上段の包丁収納ホルダー10の回動角度θを45度となっているとともに、下段の包丁収納ホルダー10の回動角度θを60度となっている。尚、回動角度θと回動角度θは90度よりも小さければ何度でもよい。
【0025】
また、包丁収納ホルダー10を収納スペース8内に収納する際には、使用者が前板11を後方に回動させて前板11を閉じる。このとき、前板11の裏面側が包丁収納ホルダー10の前面側に当接するので、包丁収納ホルダー10は前板11よって後方側に回動するように押され、前板11が閉止されると包丁収納ホルダー10は収納スペース8内に略垂直状態になって収納される。
【0026】
これら包丁収納ホルダー10について説明すると、図3、図4、図5に示すように、包丁収納ホルダー10は、ポリプロピレン等の合成樹脂の材質による一体成型により形成されている。また、包丁収納ホルダー10は、包丁4の刃部4aを収納保持する略矩形状の収納部15と、収納部15の側方に延在する台座部16とにより構成されている。尚、台座部16は、包丁4の柄4bを支持できるように水平方向に延設されている。
【0027】
更に、包丁収納ホルダー10は、側面視において前後対称形状になるように形成されている(図5参照)。また、包丁収納ホルダー10の右側部17及び左側部18には、収納スペース8内に配置された保持具9に軸支される軸部19が突設されている。
【0028】
更に、包丁収納ホルダー10の収納部15には、本実施例における開口部としてのU字溝20が形成されている。このU字溝20は収納部15の左端側から台座部16の一部にかけて形成されている。このU字溝20は、前後に配置される板部21の間に形成されている。尚、両板部21同士は底部22により互いに連結されている。
【0029】
また、前後の板部21には、下方に向けてU字溝20が幅狭になるように傾斜されたテーパー面24を有する挟持部23が形成されている。この挟持部23は、包丁収納ホルダー10の左右2箇所に設けられており、包丁収納ホルダー10に収納された包丁4の刃部4aを挟持するようになっている(図4参照)。
【0030】
更に、収納部15の底部22から前後の板部21に渡って上方に延びる複数のスリット25が形成されており、このスリット25は挟持部23の左右に形成されている。また、挟持部23の底部には、切り欠き開口溝26が形成されており、この切り欠き開口溝26は隣接するスリット25と連続するように形成されている。スリット25と開口溝26とが形成されていることによって、包丁4の刃部4aによって挟持部23が押し広げられるようになり、挟持部23が有する弾性力により刃部4aを挟持することができる。
【0031】
図4に示すように、台座部16の右側部17側には、上方に凸設された凸状部27が形成されており、その上面には、包丁4の柄4bが載置される凹溝28が設けられている。包丁4は刃部4aを収納部15のU字溝20内の挟持部23で挟持され、柄4bを台座部16の凹溝28で保持される。
【0032】
次に、包丁収納ホルダー10の右側部17及び左側部18の軸部19及び収納凹部7に固着された保持具9について説明する。尚、軸部19及び保持具9は左右で同一構成となっているので、軸部19は包丁収納ホルダー10の右側部17側を用いて説明し、保持具9は包丁収納ホルダー10を左側で軸支する保持具9を用いて説明する。
【0033】
図5に示すように、包丁収納ホルダー10の軸部19は、側面視で略逆Y字形状をなす前後対称形状に形成されている。包丁収納ホルダー10は側面視で略矩形状をなす前後に対称な形状に形成されている。尚、包丁収納ホルダー10の前後方向の重心位置は、前後対称をなす包丁収納ホルダー10の前後対称線S(中心線)上に配置されている。
【0034】
包丁収納ホルダー10の軸部19の下端部には、前後一対をなす2つの回動軸部29が形成されており、この回動軸部29は、包丁収納ホルダー10の前後対称線Sを介して前後対称位置に配置されている。後方側の回動軸部29は、後述する保持具9の軸受部34に軸支され、包丁収納ホルダー10の回動の軸心となる。
【0035】
また、包丁収納ホルダー10の軸部19の上端部には、後述するように、包丁収納ホルダー10の前方回動終了時に、保持具9の回動規制部36に係止される係止部30が形成されている。この係止部30は包丁収納ホルダー10の側面視における前後対称線S上に配置されている。
【0036】
尚、これら両回動軸部29と係止部30とは一体的に形成されており、そのため回動軸部29と係止部30の強度を高められるとともに、回動軸部29と係止部30とを包丁収納ホルダー10に形成することが容易になる。
【0037】
図6に示すように、保持具9は、収納凹部7に固着される後板31と、この後板31から正面側に突設される上下2つの垂直板32とから構成されている。尚、後板31の背面には、鉤状の係止爪33が形成されている。保持具9を収納凹部7に取り付ける際には、後板31の背面側に接着剤等を塗布した後に、係止爪33を収納凹部7に形成された係止孔(図示略)に係止させることで、保持具9を収納凹部7に固着するようになっている(図2参照)。
【0038】
また、図5及び図6に示すように、保持具9の垂直板32には、包丁収納ホルダー10の後方側の回動軸部29を軸支する軸受部34が形成されている。この軸受部34内で後方側の回動軸部29が軸支されることで、包丁収納ホルダー10は前後に回動可能となっている。更に、軸受部34の前方には、包丁収納ホルダー10の前方回動終了時に、包丁収納ホルダー10の前方側の回動軸部29を収納する軸収納部35が形成されている。
【0039】
更に、保持具9の垂直板32における軸収納部35の前方側には、包丁収納ホルダー10の係止部30が係止されることによって、包丁収納ホルダー10の前方回動を終了させる回動規制部36が形成されている。
【0040】
尚、上方の垂直板32と下方の垂直板32とで、回動規制部36の配置位置が異なっており、下方の垂直板32に軸支される包丁収納ホルダー10が、上方の垂直板32に軸支される包丁収納ホルダー10よりも大きな回動角度θ(傾斜角度)で傾くようになっている。
【0041】
また、回動規制部36の前端部からは、包丁収納ホルダー10の前方回動終了後に、包丁収納ホルダー10が保持具9から離脱してしまうことを防止する離脱防止部37が形成されている。この離脱防止部37は、回動規制部36から上方に延設されて形成されている。包丁収納ホルダー10の係止部30が離脱防止部37に当接するとともに、後方側の回動軸部29が軸受部34に嵌合されることで、包丁収納ホルダー10の前後方向及び上方に移動することを防止し、包丁収納ホルダー10が保持具9から離脱することを防止する。
【0042】
そのため使用者が包丁4を包丁収納ホルダー10から取り出す際に、包丁収納ホルダー10の挟持部23に刃部4aが挟持された包丁4につられて包丁収納ホルダー10が保持具9から離脱しないようになっている。
【0043】
尚、軸受部34、軸収納部35、回動規制部36、離脱防止部37は、保持具9の垂直板32に一体的に形成されている。これら一体に形成された軸受部34、軸収納部35、回動規制部36、離脱防止部37の上方側には、上方に開放された開放口38が設けられている。包丁収納ホルダー10を後方に回動させて係止部30を離脱防止部37から離脱させることで、開放口38を介して包丁収納ホルダー10の軸部19を離脱できるようになっており、包丁収納ホルダー10は保持具9に対して着脱可能となっている。
【0044】
以上、本実施例におけるキッチンキャビネット1では、回動軸部29が包丁収納ホルダー10の前後方向の重心位置よりも後方位置に突設されているので、前板11を開放した際に包丁収納ホルダー10が前方に回動し易くなっており、前板11の開放と同時に包丁収納ホルダー10を前方にスムーズに回動できるばかりか、予め包丁収納ホルダー10の係止部30の配置位置、或いは保持具9の回動規制部36の配置位置を適宜設定しておくことで、包丁収納ホルダー10の前方回動終了時に包丁収納ホルダー10の係止部30を保持具9の回動規制部36に係止させて、包丁収納ホルダー10内の包丁4を取り出し易い傾斜角度に包丁収納ホルダー10を維持させることができる。
【0045】
尚、包丁収納ホルダー10の回動角度θを変更する際には、保持具9の設計を変更するだけでよく、キッチンキャビネット1の製造時などに包丁収納ホルダー10の傾斜角度θの設計変更が容易にできるようになる。更に尚、本実施例では、保持具9の後板31の背面側に接着剤を塗布することで、保持具9を収納凹部7に固着していたが、保持具9の後板31の背面側に接着剤を塗布せずに、保持具9を収納凹部7に対して着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
【0046】
また、包丁収納ホルダー10の右側部17及び左側部18において、回動係止部30を前後対称に配置し、係止部30を前後対称線S上に配置することで、包丁収納ホルダー10を保持具9から着脱して包丁収納ホルダー10の前後を逆に取り付けて使用することができ、右利きまたは左利きのいずれの使用者であっても、包丁収納ホルダー10の取付状態を適宜変更して使用することができる。
【0047】
また、包丁収納ホルダー10は、保持具9から着脱可能となっているとともに、保持具9には、包丁収納ホルダー10の前方回動終了時に、包丁収納ホルダー10が保持具9から離脱することを防止する離脱防止部37が設けられているので、包丁収納ホルダー10内の包丁4の取り出し時に、包丁収納ホルダー10が保持具9から離脱することを防止できる。
【0048】
また、回動軸部29と係止部30とが、一体的に形成されているので、回動軸部29と係止部30の強度を高められるとともに、回動軸部29と係止部30とを包丁収納ホルダー10に形成することが容易になる。
【0049】
また、軸受部34と回動規制部36とが、一体的に形成されているので、軸受部34と回動規制部36の強度を高められるとともに、軸受部34と回動規制部36とを保持具9に形成することが容易になる。
【0050】
また、包丁収納ホルダー10は、包丁4の柄4bが略水平となるように包丁4を保持する包丁収納ホルダー10であるで、包丁4を取り出しやすくすることができる。特に、右利きまたは左利きのいずれの使用者であっても、包丁収納ホルダー10の取付状態を適宜変更して包丁4を取り出し易くすることができる。
【0051】
また、複数の包丁収納ホルダー10が、収納凹部7内にて上下方向に連設されており、下方の包丁収納ホルダー10の回動角度が上方の包丁収納ホルダー10の回動角度よりも大きくなっているので、収納凹部7内での包丁収納ホルダー10が増加されるため、収納凹部7内での包丁4の収納量が増加するとともに、下方の包丁収納ホルダー10が上方の包丁収納ホルダー10よりも前方に傾斜されるので、下方の包丁収納ホルダー10内の包丁4を取り出し易くすることができる。
【実施例2】
【0052】
次に、実施例2に係るキッチンキャビネットにつき、図7を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。図7は、実施例2における前板を開放した状態のキッチンキャビネットの内部を示す縦断側面図である。以下、図7の紙面左側をキッチンキャビネットの正面側(前方側)として説明する。
【0053】
図7に示すように、実施例2における包丁収納ホルダー10aの側部17aには、側面視で略円形状をなる2つの回動軸部29aと1つの係止部30aが形成されている。これら回動軸部29aと係止部30aは実施例1とは異なりそれぞれ離間されて配置されている。尚、2つの回動軸部29aは前後対称線Sを介して前後対称位置に配置されており、係止部30aは前後対称線S上に配置されている。
【0054】
また、保持具9は実施例1と同様の構成となっており、包丁収納ホルダー10aの後方側の回動軸部29aは、保持具9の軸受部34に軸支されている。前板11が開閉されると、後方側の回動軸部29aは包丁収納ホルダー10aの回動の軸心となる。前板11が開放された際には、包丁収納ホルダー10aが前方に回動し、包丁収納ホルダー10aの係止部30aが、保持具9の回動規制部36に係止されることで、包丁収納ホルダー10aの回動が終了する。そして、包丁収納ホルダー10aは所定の回動角度θで前方に傾いた状態となり、使用者が包丁収納ホルダー10bから包丁4を取り出しやすくなっている。
【0055】
尚、保持具9には、包丁収納ホルダー10aの前方回動終了時に、包丁収納ホルダー10aの係止部30aが保持具9の離脱防止部37に係止されることによって、包丁収納ホルダー10aの保持具9からの離脱が防止される。そのため。包丁収納ホルダー10a内の包丁4の取り出し時に、包丁4につられて包丁収納ホルダー10aが保持具9から外れることを防止できるので、安全性を確保することができる。
【実施例3】
【0056】
次に、実施例3に係るキッチンキャビネットにつき、図8を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。図8は、実施例3における前板を開放した状態のキッチンキャビネットの内部を示す縦断側面図である。以下、図8の紙面左側をキッチンキャビネットの正面側(前方側)として説明する。
【0057】
実施例3におけるキッチンキャビネット1は、図8に示すように、収納スペース8の収納凹部7に固着される保持具9bと、この保持具9bによって軸支される包丁収納ホルダー10bを有している。包丁収納ホルダー10bの側部17bには、側面視で略棒状となる2つの軸部19bが前後に離間されて形成されている。これらの軸部19bは、互いに平行をなし、前後対称線Sを介して前後対称位置に配置されている。
【0058】
尚、実施例3では、軸部19bの下端が回動軸部29bとなっており、軸部19bの上端及び前面側が係止部30bとなっている。
【0059】
保持具9bの後板31bには、正面側に2つ上下で垂直板32bが形成されている。この垂直板32bの包丁収納ホルダー10bと対向する面には、包丁収納ホルダー10bの後方側の軸部19bを保持する軸保持部39が形成されている。
【0060】
この軸保持部39は、側面視で略コ字形状に形成されている。尚、実施例3では、軸保持部39の下端が軸受部34bとなっており、軸保持部39の上端が離脱防止部37bとなっており、軸保持部39の下端と上端の間が回動規制部36bとなっている。
【0061】
軸保持部39における回動規制部36bは、所定角度で傾斜されており、この回動規制部36bの傾斜によって包丁収納ホルダー10bが所定の回動角度θで傾くようになっている。尚、実施例3では、上段と下段の包丁収納ホルダー10bが同一の回動角度θで前方に傾くようになっている。
【0062】
また、包丁収納ホルダー10bが前方回動する際には、軸部19bにおける回動軸部29bを回動の軸心として、包丁収納ホルダー10bが前方に回動する。そして、包丁収納ホルダー10bが所定の回動角度θで前方に回動して、軸部19bの係止部30bが保持具9の回動規制部36bに係止される。包丁収納ホルダー10bが所定の回動角度θで前方に傾いているので、使用者が包丁収納ホルダー10bから包丁4を取り出しやすくなっている。
【0063】
尚、保持具9bには、包丁収納ホルダー10bの前方回動終了時に、包丁収納ホルダー10bの係止部30bが保持具9bの離脱防止部37bに係止されることによって、包丁収納ホルダー10bの保持具9bからの離脱が防止される。そのため。包丁収納ホルダー10b内の包丁4の取り出し時に、包丁4につられて包丁収納ホルダー10bが保持具9bから外れることを防止できるので、安全性を確保することができる。
【0064】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0065】
例えば、前記実施例1では、保持具9の垂直板32に軸受部34と軸収納部35と回動規制部36と離脱防止部37が、一体的に形成されていたが、それぞれが垂直板32において別個に離間された状態で配置されていてもよい。
【0066】
また、前記実施例では、収納容器を包丁収納ホルダー10として説明したが、菜箸やまな板などの調理器具、ナイフやフォークなどの食器類を収納する収納容器であってもよい。
【0067】
また、前記実施例では、収納スペース8内で保持具9によって包丁収納ホルダー10を上下2段に連設したが、包丁収納ホルダー10を3段以上の複数段で連設してもよいし、包丁収納ホルダー10を単体で設けるようにしてもよい。
【0068】
また、前記実施例では、包丁収納ホルダー10は側面視において前後対称形状になるように形成されているが、包丁収納ホルダー10は前後対称形状に形成されていなくともよく、包丁収納ホルダー10の回動軸部29が包丁収納ホルダー10の前後方向の重心位置よりも後方に設けられていればよい。
【0069】
また、前記実施例では、包丁収納ホルダー10は保持具9間に着脱自在に保持されているが、包丁収納ホルダー10は保持具9間に着脱不能に軸支されていてもよい。
【0070】
また、前記実施例では、包丁収納ホルダー10の側部に回動軸部29を設けるとともに、保持具9に軸受部34を設けることで、包丁収納ホルダー10の回動の軸心が包丁収納ホルダー10の前後方向の重心位置よりも後方に位置するようにしたが、包丁収納ホルダー10に軸受部を設けるとともに、保持具9に回動軸部を設けるようにし、軸受部を包丁収納ホルダー10の回動の軸心として、この軸心が包丁収納ホルダー10の前後方向の重心位置よりも後方に位置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例1におけるキッチンキャビネットを示す斜視図である。
【図2】前板を開放した状態のキッチンキャビネットの内部を示す縦断側面図である。
【図3】包丁収納ホルダーを示す平面図である。
【図4】図3における包丁収納ホルダーを示すA−A断面図である。
【図5】包丁収納ホルダーを示す側面図である。
【図6】保持具を示す側面図である。
【図7】実施例2における前板を開放した状態のキッチンキャビネットの内部を示す縦断側面図である。
【図8】実施例3における前板を開放した状態のキッチンキャビネットの内部を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 キッチンキャビネット
4 包丁(収納物)
4a 刃部
4b 柄
7 収納凹部
9,9b 保持具
10,10a 包丁収納ホルダー(収納容器)
10b 包丁収納ホルダー(収納容器)
11 前板
19,19b 軸部
20 U字溝(開口部)
29,29a 回動軸部
29b 回動軸部
30,30a 係止部
30b 係止部
31,31b 後板
32,32b 垂直板
33 係止爪
34,34b 軸受部
35 軸収納部
36,36b 回動規制部
37,37b 離脱防止部
38 開放口
S 前後対称線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に回動可能な前板によって開放可能な収納凹部と、該収納凹部内に固着された保持具に軸支されて上方に開口する開口部を有する収納容器と、を備え、前記前板の開閉に応じて前記収納容器が前後方向に回動するキッチンキャビネットであって、
前記収納容器の左右側部には、係止部が突設されるとともに、少なくとも前記収納容器の前後方向の重心位置よりも後方位置に回動軸部が突設されており、前記保持具には、前記回動軸部を軸支する軸受部と、前記収納容器の前方回動終了時に前記係止部を係止する回動規制部が設けられていることを特徴とするキッチンキャビネット。
【請求項2】
前記収納容器は、前記保持具から着脱可能となっているとともに、その形状が前後対称に形成されており、前後一対の前記係止部が、前記収納容器の左右側部における前後対称位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のキッチンキャビネット。
【請求項3】
前記収納容器は、前記保持具から着脱可能となっているとともに、前記保持具には、前記収納容器の前方回動終了時に、該収納容器が前記保持具から離脱することを防止する離脱防止部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のキッチンキャビネット。
【請求項4】
前記回動軸部と前記係止部とが、一体的に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のキッチンキャビネット。
【請求項5】
前記軸受部と前記回動規制部とが、一体的に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のキッチンキャビネット。
【請求項6】
前記収納容器は、包丁の柄が略水平となるように包丁を保持する包丁収納ホルダーであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のキッチンキャビネット。
【請求項7】
複数の前記収納容器が、前記収納凹部内にて上下方向に連設されており、下方の収納容器の回動角度が上方の収納容器の回動角度よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のキッチンキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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