説明

キトサン食物

【課題】
【解決手段】本発明は、栄養食品物質と、少なくとも0.25のFA値を有するキトサンとを含む食物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物に存在するか、または偶然にもしくは誤って取りこまれた望ましくない化合物の胃腸(GI)管からの摂取を抑制するためのキトサンの使用ならびに、この観点における使用のためのキトサン組成物に関する。
【0002】
多くの食物は、消費者に有害である化合物、例えば、コレステロール、アクリルアミド、脂肪、残留農薬、添加物等を含有する。同様に、多くの人は、有害化合物、例えば、薬物および毒(例えば、農薬、抗凝血剤、鎮痛剤、麻酔剤、生理学的に活性な植物化合物(例えば、キツネノテブクロに存在するジギタリス)等)を、偶然に(および時には非偶然に)取り込む。従って、摂取され、その後、これらの有害化合物のGI管からの摂取についての利用性を低下させるのに役に立つことができる製品、または、この場合もやはり、前記有害化合物を含有する食物と共に配合され、もしくは投与され、これらの有害化合物のGI管からの摂取についての利用性を低下させることができる製品に対する必要性が存在する。
【0003】
我々は、いまや、驚いたことに、あるキトサンが、この観点において、著しく有用であることを見出した。より詳細には、望ましくない化合物、特に、望ましくない親油性化合物の摂取を妨害するキトサンの能力が、前記キトサン(これは、キチンの完全な、または部分的な脱アセチル化の生成物である)のアセチル化FAの度合いに左右されることを、驚いたことに、我々は見出した。
【0004】
キチンは、式(C8135nの天然の窒素含有ムコ多糖体であり、脊椎動物、および真菌類(funghi)における外骨格において、現れる。特に、それは、甲殻類(例えば、エビ、カニ、クルマエビおよびロブスター)の外骨格の主成分である。より詳細には、キチンは、ポリN−アセチル−D−グルコサミンである。従って、キチンは、(1→4)−結合2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコース(GlcNac;A−ユニット)からなる。キチンの物理的構造は、高度に規則正しく配列されており、最も豊富な形態は、α−キチンであり、これは、甲殻類食品産業から廃棄物として入手可能である。α−キチンにおいて、その鎖は、逆平行であり、広範囲にわたって水素結合されている。別の形態は、β−キチンであり、これは、例えば、イカのヤリイカ類のペンおよび、珪藻植物タラシオシラ・フルビアテリス(Thalassiosira fluviatilis)の脊柱から、単離することができる。β-キチンにおいて、その鎖は、平行であり、その鎖は、α-キチンと比較して、水素結合が少ない。
【0005】
キチンは、酸性pH値においてさえ、水に不溶性であり、大部分の有機溶媒において不溶性である。これは、用いられる用途を限定するのに役に立っている。
【0006】
キチンにおけるN−アセチル基は、分裂されて、キトサンとして知られる生成物を生じることができる。キトサンは、多くの公知の使用(例えば、医薬組成物および化粧品組成物における使用、ならびに、充填剤、吸収剤(absorbant)、担体および支持材としての使用)がある。
【0007】
キトサンは、様々な相対存在量および順序での、(1→4)−結合 A−ユニットと2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコース(GlcN;D−ユニット)のユニットとからなる水溶性多糖類のファミリーとして見なされているであろう。
【0008】
キチンとキトサンとの間のここでの差異は、希酸溶液におけるキチンの不溶性と、同じ希酸溶液におけるキトサンの溶解度をもとにしている(G.A.F.ロバーツ(Roberts, G.A.F.)、「キチン化学(Chitin chemistry)」(1991)、6−7頁参照)。
【0009】
ロバーツ(前記)の第6頁に所定の完全に水溶性なキトサンの定義は、D−ユニットの遊離のアミノ基がプロトン化されたときに、キトサンが通常、水にのみ溶解性であるという事実に関連している。そのようなプロトン化は、制御された量の酸、例えば、酢酸の添加により、達成することができる。しかし、キトサンは、また、異なる塩の形態で製造されてもよい、すなわち、D−ユニットにおいてプロトン化されたアミノ基とマイナスに帯電した対イオン(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、塩化物または他の陰イオン)を有し、それにより、酸の添加なしに、水において溶解性にしている。そのようなキトサン塩の製造の手順は、文献に記述されている(例えば、Dragetら, Biomaterials 13:635-638 (1992), Varum ら、 Carbohydrate polymers 28:187-193 (1995)および米国特許公開公報第5,599,916参照)。
【0010】
キトサンを同定するのに用いられるあるパラメータは、FA、糖類ユニット(Dユニットよりむしろ、Aユニットである)の相対的画分(relative fraction)である。
【0011】
キトサンの構造を説明するために、AユニットおよびD−ユニットの組成が様々である3つの異なるキトサンの化学構造の略図は、以下のとおりである:
DDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDD
完全にN−脱アセチル化されたキトサン分子の一部(FA=0.00)
DDDADDADDDDDAADDADDDDDADADDDDAADDDDADDDD
部分的にN−アセチル化されたキトサン分子の一部(FA=0.25)
DAAADDADDDDAAAADADDADDADDDDADAAAADDAADAA
部分的にN−アセチル化されたキトサン分子の一部(FA=0.50)
親水性かつプロトン化可能な(protonizable)アミノ基を有する1つのモノマー残基と、疎水性アセチル基を有する別のモノマー残基の存在(前記2つのモノマーの相対量は、様々であってもよい)により、溶液中、ならびにゲル状および固体状態におけるキトサンの物理的性質ならびに、他の分子、細胞ならびに他の生物学的および非生物学的物質との相互作用に影響しうる。しかし、部分的には、大規模に他のキトサンを製造する安価な方法が欠如しているため、かつ、部分的には、より高いFAを有するキトサンの機能的性質の科学的理解が貧弱であるため、キトサンの商業的用途は、今までのところ、低い画分のアセチル化されたユニット(FA<0.15)を有するキトサンのサンプルに限定されている。
【0012】
脱アセチル化に加えて、キチンからのキトサンの製造において、解重合も起こり、広範囲の度合いのアセチル化と、広範囲の分子量を有するキトサンが、製造されうることに注目されたい。一般に、しかし、市販で入手可能なキトサンの残りの1つの問題は、生理的pH値でのその不溶性である。
【0013】
キチンからのキトサンの製造は、通常、均質反応または、不均一反応として、行われる。前記均質反応においては、キチンを、アルカリ中に懸濁させ、その懸濁液を氷で冷却して、前記キチンを溶液へ入れる;前記不均一反応においては、微粒子キチンを熱アルカリ(通常水酸化ナトリウム)溶液中に分散させる。前記均質反応の場合、得られる前記キトサンのFAは、通常、0.3から0.7である。前記不均一反応の場合、得られる前記キトサンのFAは、通常、0から0.15の範囲である。異なる度合いの脱アセチル化のキトサンが必要な場合、キトサンを再アセチル化する必要があるかもしれない。前記均質反応の場合、残りのN−アセチル基は、通常、不規則に前記キトサン生成物の高分子骨格に添って、位置している。前記不均一反応の場合、少量の画分の不溶性キチン様材料が、酸溶解性画分と共に、前記高分子骨格に添って、アセチル基の近不規則分布で、前記生成物中に最もしばしば存在する。
【0014】
先行技術の脱アセチル化手順の記載は、米国特許出願公開us−a−4195175; Varumら、127-136頁、「キチン化学における進歩(Advances in chitin chemistry)」,C.J. Brine編集、1992;Ottoyら、Carbohydrate polymers 29:17-24 (1996); Sannan ら、 Macromol. Chem. 176:1191-1195 (1975); Sannan ら、Macromol. Chem. 177:3589-3600 (1976); Kurita ら、 Chemistry Letters 1597-1598 (1989); およびカナダ特許出願公開CA−A−2101079中に、見出だすことができる。
【0015】
幾つかの適用において増強された性能が、近年、より高度にアセチル化されたキトサン画分について、見出されている(Smidsrodら、1から11頁、「キチンおよびキトサン-生命科学におけるキチンおよびキトサン(Chitin and Chitosan-Chitin and Chitosan in Life Science)」; Eds. T. Uragami ら、講談社サイエンティフィック社、日本(2001)(ISDN4−906464−13−0)参照)。重要なのは、中性pH値での増加した溶解度、リゾチームによる制御可能な分解速度、疎水性表面との強力な相互作用(例えば、脂肪粒子および細胞表面)、それにより、生じる増加した脂肪結合性質および凝集、水中油型乳剤に関して増強された不安定化効果、ならびに多数の化粧品、栄養補助食品および生物医学的な適用における拡張された有用性である。
【0016】
より高度にアセチル化されたキトサンは、また、近年、細菌性細胞をより効果的に凝集することが示されている(Strandら、Biomacromolecules 2:126-133 (2001)参照)。
【0017】
しかし、より高度にアセチル化されたキトサンを製造するための公知の手順は、工業的生産へのスケールアップには適さないという、不都合がある。
【0018】
従って、例えば、膨張させることのない不均一脱アセチル化処置については、前記水溶性キトサンから未反応キチンを分離するために、酸による生成物の抽出が必要である;これには、高度にアセチル化されたキトサン生成物の収率の低下に加えて、水の除去を必要とする。
【0019】
高度に脱アセチル化されたキトサンの再アセチル化は、前記脱アセチル化工程に加えて、前記キトサンの可溶化、有機薬品(例えば、無水酢酸およびメタノール)の使用、および最終生成物の単離を必要とする。
【0020】
前記均質脱アセチル化手順には、氷の添加による前記キチンの可溶化、および、前記溶液からの前記キトサンの単離を必要とする。さらに、あまりに高い粘度を有する前記キチン溶液を避けるため、大量の苛性アルカリ水溶液が、前記反応溶剤中で、必要である。この均質脱アセチル化手順は、したがって、不均一脱アセチル化手順の生成物と比較して、より高価な生成物を生じる。
【0021】
アドバンスト・バイオポリマー・エイエス(Advanced Biopolymers AS)は、前記不均一脱アセチル化反応において、前記キチンが、最初に、長期間の低温アルカリ膨張段階に付されれば、前記高分子鎖に沿って、よりランダムな分布の残余N−アセチル基を有し、所望の程度に低いか高くてもよい、一定の脱アセチル化を有し、所望であれば、通常の製品におけるものより低くてもよい、一定の解重合を有し、かつ、所望であれば、生理的pHにおけるより一層の水−溶解度を有していてもよいキトサン生成物が、得られることを、近年、見出した。この新規なキトサン製造処置は、国際特許出願公報WO03/011912の内容中に記述されており、これは、ここに、引例として取り込む。
【0022】
より詳細には、より高いFA値を有するキトサン(例えば、国際特許出願公報WO03/011912の処置により製造されたもの)が、望ましくない親油性化合物(例えば、コレステロール)を結合するのについて、市販で入手可能であって、FA値が0.2より低いキトサンと比較して、特に効果的であることを、我々は見出した。そのようなキトサンは、胆汁塩による脂質ミセル形成の増進を抑制することにより、作用するとも、考えられている。
【0023】
一つの観点から、本発明は、栄養食品物質(例えば、調理済みまたは、未調理材料の動物由来または植物由来)と、少なくとも0.25の、好ましくは少なくとも0.3、例えば0.9までの、より好ましくは0.7までの、FA値を有するキトサンとを含む食物を提供する。前記キトサンは、好ましくは0.1から10重量%、より好ましくは1から5重量%の前記食物からなる。
【0024】
従って、さらなる観点からは、本発明は、ヒトまたは非ヒトの脊椎動物(例えば、哺乳動物)の患者の治療方法における使用のための、食物に存在する望ましくない化合物(例えば、親油性化合物)の、前記患者の胃腸間からの摂取を抑制するための薬剤の製造のための、少なくとも0.25の、好ましくは少なくとも0.3、例えば0.9までの、より好ましくは0.7までのFA値を有するキトサンの使用を提供する。
【0025】
更なる観点からは、本発明は、望ましくない化合物の、ヒトまたは非ヒトの脊椎動物(例えば、哺乳動物)の患者の胃腸管からの摂取を抑制するための、前記ヒトまたは非ヒトの脊椎動物(例えば、哺乳動物)の患者の治療方法を提供する。前記方法は、少なくとも0.25の、好ましくは少なくとも0.3、例えば、0.9までの、より好ましくは0.7までのFA値を有するキトサンの有効量を、前記患者へ経口的投与することを含む。
【0026】
本発明の前記方法は、高い血中脂肪、高脂血症および高い血中コレステロール、高コレステロール血症またはトリグリセリド過剰血の治療に、特に適している。
【0027】
本発明に従い用いられる前記キトサンは、非常に後半な範囲(例えば、1000から5000000g/mol)内の重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。しかし、Mwは、好ましくは10000から3000000g/mol、特に20000から2000000g/molである。
【0028】
前記キトサンが、食品材料と配合されて、本発明による食物を製造する場合、これは、前記望ましくない化合物を含む食品か、または、前記望ましくない化合物を含有する食品と共に習慣的に食べられる食品であることが、好ましい。従って、前記食物は、典型的には、ソース、スプレッドもしくは調味料またはソース用前駆物質であってもよい。本発明の前記食物のさらに好ましい実施形態は、ジャガイモ粒状物(すなわち、「インスタント・マッシュ・ポテト」)およびジャガイモコロッケである。
【0029】
本発明の組成物中で用いられる前記キトサンは、完全に水溶性なキトサン、特に前記胃腸管内で遭うpHにおいて水溶性なキトサン、より詳細には、3から8、特に5から8、より詳細には6から8のpHで、水溶性なキトサンであるのが好ましい。
【0030】
ここで用いられる「完全に水溶性なキトサン」により、完全に溶解されうるキトサン、すなわち、希酸溶液中で97重量%以上溶解する、例えば、1%w/v酢酸中、前記キトサンの1%w/v溶液として、溶解することを意味する。
【0031】
用いられる前記キトサンは、国際特許出願公報WO03/011912に記載の処置を用いて製造されるのが好ましい。
【0032】
異なるFA値を有するキトサンの組み合わせ、例えば、少なくとも0.1だけ、より好ましくは少なくとも0.2だけ相違するFA値を有する少なくとも2つのキトサンを用いるのが、特に望ましい。
【0033】
用いられる前記キトサンは、0.25より多いFA値を有するのが好ましい;しかし、2またはそれ以上のキトサンが用いられる場合、1またはそれ以上は、0.25より少ない、例えば、0.2より少ない、たとえば、0.05から0.19のFA値を有していてもよい。
【0034】
約150℃を超える温度で調理された食品(例えば、ポテトチップス、クリスプブレッド、フレンチフライ等)が、毒性の化学的アクリルアミドを含有しているという発見の結果、近年、より関心事となった。我々は、驚いたことに、アクリルアミドの生物学的利用能が、本発明によるキトサンの使用により、著しく減少しうることを見出した。
【0035】
前記キトサンに加えて、または、最も好ましいのではないが、好ましくは前記キトサンの代わりに、微細に粒状化されたキチンを、本発明のさらなる観点により用いてもよい。この観点において、0.1から500μm、特に1から100μmの粒径が好ましい。
【0036】
リゾチームを含有する食物またはリゾチームから由来する食物は、キトサンを分解する能力を有し、それにより、代謝産物として、キトサン−オリゴマー、N−アセチル−グルコサミンおよびグルコサミンを供給することも我々は見出した。前記代謝産物が、髪、皮膚、関節等に有益であることを、我々は見出した。
【0037】
前記キトサンが用いられている薬剤の製造における前記薬剤は、製薬または栄養補助食品であってもよく、すなわち、キトサンのほかに、さらに活性成分を含んでもよいが、さらなる活性成分として、栄養成分(例えば、ビタミン、必須無機質、アミノ酸、タンパク質、炭水化物および脂肪酸またはトリグリセリド)のみを含有するのが好ましいであろう。
【0038】
本発明によるキトサンの使用は、薬物化合物に関して特に関連ある観点を2つ有する。
【0039】
第1に、前記キトサンは、望ましくない薬物または過量摂取の薬物の消費の後、その薬物の効果を中和するために、投与されてもよい。
【0040】
第2に、前記キトサンおよび前記薬物化合物は、薬物の摂取を引き伸ばすため、同時または順次、投与されてもよい。従って、血液中の薬物濃度をあるレベル以下に保つために、前記薬物を消費すると同時または前のいずれかに、前記キトサンおよび前記薬物化合物を取るのが望ましい。前記薬剤は、前記薬物の持続放出を可能にするのにも用いられ、したがって、前記薬物は、より長い時間の間、作用することができる。
【0041】
従って、さらなる観点から、本発明は、少なくとも0.25のFA値を有するキトサンと、薬物化合物と、任意に、少なくとも1つの生理学的に許容できる担体または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0042】
前記薬物化合物は、例えば、親油性または両親媒性、有機もしくは有機金属種またはマイナスに帯電した種であってもよく、重ねて、典型的には、有機または有機金属種であってもよい。前記薬物化合物は、例えば、ワルファリンまたはジギトキシンであってもよい。典型的には、前記組成物は、胃腸管内へ、例えば、経口的または直腸的に投与されるであろう。
【0043】
前記キトサンの投与形態は、典型的には、経口もしくは直腸投与または直接胃への投与に適するいずれの形態(例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、粉剤、液剤、分散、懸濁液およびゲル剤)であってもよい。錠剤、カプセル剤および液剤が、好ましい。これらは、通常の医薬製剤酸、例えば、溶媒(特に水)、フレーバー、着色剤、pH調整剤、粘度調整剤、充填剤、酸化防止剤、安定化剤、甘味剤等を用いて、製造されてもよい。そのような組成物の前記キトサン含有量は、溶媒または包装材の重量を除いて、5から98wt%、特に20から90wt%が好ましい。
【0044】
本発明により得られるキトサンの用量は、治療される患者の種、年齢、性別および体重および、前記化合物(その摂取は、抑制されるか、または引き伸ばされる。)の性質ならびに、前記患者が、前記化合物の効果へのよりいっそうの感受性を有するかどうかに左右されるであろう。しかし、通常、成人ヒト患者については、1日用量は、0.5から100g、特に1から10gの範囲であってもよい。
【0045】
所望な投与の場合、前記キトサン−ベースの薬剤は、食事時間の前、最中または後に、特に食事時間の始まりまたは終わりから45分以内に、投与されるのが好ましいであろう。
【0046】
本発明の組成物における前記キトサンの有利な効果は、水中油型乳剤において脂質を凝集する能力が向上したことから由来すると考えられている。また、本発明の組成物における前記キトサンの有利な効果は、水中油型または油中水型の乳剤中で、乳化剤(すなわち、SDS、胆汁塩および市販で入手可能な乳化剤)の凝集をさせ、それにより、前記乳剤を不安定にする前記組成物の能力に由来するとも考えられている。この能力は、食物および薬剤の分野を超えて、例えば、水、例えば海水から、脂質(例えば、油もしくはガソリンの流出から、または炭化水素壁からの油)を分離するための技術において、有用である。そのような使用において、前記キトサンは、前記脂質−水混合物に添加されるのが好ましく、凝集を起こさせ時間の後、前記凝集した脂質は、水から除去される、例えば、遠心分離、ろ過、サイクロン分離、デカンテーション、上澄みをすくう、または吸収性のあるパッドに吸収させる等により。
【0047】
従って、本発明の更なる観点から、水からの脂質、特に水からの炭化水素の分離における、少なくとも0.25のFA値を有するキトサン、好ましくは1000から5000000g/molの重量平均分子量を有するキトサン、より詳細には、少なくとも0.3のFA値を有するキトサン、著しくは、キトサンまたは好ましいと前記に参照されたキトサンの組み合わせの使用が、提供される。
【0048】
本発明の更なる観点から、少なくとも0.25のFA値を有するキトサン、好ましくは1000から5000000g/molの重量平均分子量を有するキトサン、より詳細には少なくとも0.3のFA値を有するキトサン、著しくは、キトサンまたは好ましいと前記されたキトサンの組み合わせが、脂質含有水(好ましくは炭化水素含有水)に添加され、前記脂質が凝集され、前記凝集した脂質が分離される、水から脂質を分離するための処置が提供される。
【0049】
典型的には、前記キトサンは、0.5から500mg/L、特に1から50mg/L、著しくは2から20mg/Lの濃度で用いられてもよい。
【0050】
本発明は、以下の非限定的な例および図面を参照して、さらに説明される。
【0051】
図面において、図1は、pH5.7および7.4におけるFA0.01および0.49のキトサンについて、キトサン濃度に対する凝集割合のプロットである。
【0052】
図2は、pH5および7におけるFA0.49の低分子量キトサンについてキトサン濃度に対する凝集割合のプロットである。
【実施例1】
【0053】
実施例1
キトサンカプセル剤
100 g キトサン FA 0.46*
ラクトース 適量
* −国際特許出願公開WO03/011912に記載されているように製造した。
【0054】
キトサンおよびラクトースを混合し、硬ゼラチンカプセル剤中に満たした。各カプセル剤は、1gキトサンを含有する。
服用量:
各食事に対して1−8のカプセル剤
中毒の疑いであれば、5−30のカプセル剤
【実施例2】
【0055】
実施例2
キトサンを含有するフライドポテト製品
250kg キトサン FA0.30*
2250kg 脱水ジャガイモ粒状物
水 適量
* − 国際特許出願公開WO03/011912に記載されているように製造した。
【0056】
キトサンおよび脱水ジャガイモ粒状物を混合した。水を添加して成形可能な塊を形成する。前記ジャガイモ塊を、通常の装置を用いて所望な形に成形する。成形された部分をその後、植物油で揚げ、100gから1kgの市販の単位に包装する。フライドポテト製品は、5%以上のキトサンFA0.30を含有する。
【実施例3】
【0057】
実施例3
脂質凝集
胃腸管からの脂肪の代謝および吸着に関して、前記脂肪が乳剤として存在し、前記脂肪小滴の表面積を増加させることが、必須である。脂肪消化を減らす一つの方法は、凝集により、例えば、コロイド粒子(例えば、乳化脂肪小滴)が凝集物を形成するとき、凝集による。実施例は、様々な化学組成物(すなわち、アセチル化ユニットの画分、FA)によるキトサンの凝集効率を示す。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)により安定化されたひまわり油乳剤のモデルシステムは、異なるキトサンにより凝集した。
【0058】
3つの異なるキトサンを用いた。キトサン1は、低アセチル化キトサンであり、一方、キトサン2およびキトサン3は、異なる固有粘度([η])の、それにより、異なる平均分子量の、より高度にアセチル化されたキトサンである。前記キトサンの特徴は、以下の表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
* Varum ら, 1991 (Carbohydr. Res. (1991)211 17-23)により測定
** Dragetら, 1992 (Biomaterials (1992) 13 635-638)により測定
*** [η]=K x Mn (Anthonsenら, 1993, Carbohydr. polym. (1993) 22 193-201)から推定

ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で安定化されたひまわり油の油中水型乳剤を、以下に示すようにして製造し、増加量のキトサンを乳剤に添加した。凝集物を、ブランクに対して、溶液の濁りの増加を測定することにより、定量化した。添付の図面の図1は、pH5および7で同等の平均分子量のキトサン1(FA=0.01)とキトサン2(FA=0.49)での凝集実験の結果を示す。加えて、pH7.4でのキトサン2の凝集を示す。2つのキトサンの間の凝集効率における明白な相違が、図1のデータから確認される。最も高いFA(0.49)を有するキトサンが、1mg/L未満のキトサン濃度においてSDSで安定化されたひまわり油乳剤を凝集する一方、より低いFA(0.01)を有するキトサンは、50mg/Lの濃度で依然として効果がなかった。前記2つのキトサンの間の凝集効率における相違においても、同じ傾向が、pH5および7において観察された。最も高いFA(0.49)を有するキトサン2は、pH5に比べてpH7でより効果的であり、この傾向は、pH7.4において、より明白であった。
【0061】
最も高いFA(0.49)を有するキトサンの凝集効率に分子量が臨界であるかどうかを評価するために、このキトサンは、解重合され、解重合キトサン(キトサン3)の前記凝集効率を、pH5およびpH7で試験した。その結果を、添付の図面の図2に示し、0.49(Mn=49000)のFAを有する解重合キトサンが、出発原料のキトサン(Mn=206000)に効率において、匹敵することを示した。
【0062】
まとめると、より高度にアセチル化されたキトサンは、低アセチル化キトサンと比べて、非常に効果のある凝集剤であることが示された。鎖長さは、凝集剤としてのそれらの効果に、臨界的因子ではなかった。
【0063】
キトサン:
キトサン1を、Anthonsenら, Carbohydr. polym. (1993) 22 193-201に記載のように製造した。キトサン2は、不均一脱アセチル化により製造し、キトサン3は、キトサン2の解重合により製造した(Anthonsenら, Carbohydr. polym (1993) 22 193-201参照)。この研究に用いた前記キトサン塩化水素塩は、先に記載のように(Anthonsenら, Carbohydr. polym (1993) 22 193-201)透析により、遊離アミン形態でキトサンから製造した。キトサンの溶液(1mg/mL)は、MQ−グレード水中で、5℃で終夜、穏やかに振ることにより製造し、NaClで0.1Mのイオン強度に調節した。それらは、さらに、0.1MのNaClで所望の濃度シリーズ(6〜1000mg/L)に希釈された。
【0064】
乳剤:
乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を有するひまわり油/水の乳剤を、2分の間、24000rpmでウルトラツラック(Ultraturrax)(IKA,ドイツ)を用いることにより、製造した。前記乳剤のひまわり油含有量は、3wt%であり、乳化剤の全量は、油相の3wt%であった。3つの異なるpH値(5、7および7.4)を有する乳剤を、50mMの酢酸塩(pH5)またはHEPES(pH7および7.4)緩衝液を水相として用いて、製造した。前記緩衝液のイオン強度は、NaClで0.1Mに調節した。
【0065】
凝集手順:
凝集アッセイを13mLのポリプロピレンチューブ(Saratedt)中で行った。5mLの乳剤を、チューブ中にピペットで入れ、1mLのキトサン溶液をボルテックス・ミキサー(Vortex mixer)(1800rpm、10s)で攪拌下に添加し、適切な混合を確実にした。対応するブランクを、1mLの0.1MのNaClで調製した。全体の濃度シリーズを調製した後、前記チューブを、再度、ボルテックス・ミキサー(1400rpm、5s)で攪拌した。120分後、光学濃度(OD)測定のサンプルをチューブの中央から取り出した。前記サンプルのODを、実際の緩衝液に対してゼロ−セットで分光光度計により620nmにおいて測定した。前記凝集は、ブランクに関する濁りの減少として表わし(凝集%として参照)、
(1−(ODサンプル/ODブランク)*100.
として計算した。
全てのサンプルは、二重に測定した。
【実施例4】
【0066】
実施例4
コレステロールの利用性に対するキトサンの効果
コレステロール(500mg)およびキトサン(様々な度合いのアセチル化)(2.0g)を、希HCl水溶液pH2(250ml)に添加した。その混合物を室温で2時間攪拌した。NaOHの水溶液をpH7になるまで滴下し、その混合物を4時間室温で攪拌した。その混合物をジエチルエーテル(100ml)で抽出し、そのエーテル溶液を乾燥させ(MgSO4)て、蒸発させた。
【0067】
キトサン無しの実験を、比較のために行った。その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【実施例5】
【0069】
実施例5
アクリルアミドの利用性に対するキトサンの効果
アクリルアミド(500mg)およびキトサン(様々な度合いのアセチル化)(2.0g)を、希HCl水溶液pH2(250ml)に添加した。その混合物を室温で2時間攪拌した。NaOHの水溶液をpH7まで滴下し、その混合物を4時間室温で攪拌した。その混合物を酢酸エチル(200ml)で抽出して、前記有機相を乾燥し(MgSO4)、蒸発させた。その結果を表3に示す。
【0070】
【表3】

【実施例6】
【0071】
実施例6
ワルファリンの利用性に対するキトサンの効果
ナイコメッド・ファルマ・エイエス(Nycomed Pharma AS)(オスロ、ノルウェー)からのマレヴァン(Marevan)(登録商標)錠剤(2.5mg)を、モーター(morter)で押しつぶし、乳棒で粉末まですりつぶした。83mgのワルファリンを含む前記粉末とキトサン(様々な度合いのアセチル化)(250mg)とを、希HCl水溶液pH2(10ml)に添加した。前記混合物を、80℃で2時間攪拌し、室温まで冷却し、Tris緩衝液pH7(100ml)に対して透析した。透析物中のワルファリンの量は、UVにより測定した。
透析物中のワルファリンの量は、最大検出量に対する割合で示す。その結果を表4に示す。
【0072】
【表4】

【実施例7】
【0073】
実施例7
ノルフロキサシンの利用性に対するキトサンの効果
ノルフロキサシン(100mg)およびキトサン(FA=0.35、η=1250)(250mg)を、希HCl水溶液pH2(10ml)に添加した。前記混合物を、2時間80℃で攪拌し、室温まで冷却し、Tris緩衝液pH7(100ml)に対して透析した。透析物中のノルフロキサシンの量は、UVにより測定した。
【0074】
キトサン無しの実験を、比較として行った。
【0075】
透析物中のノルフロキサシンの量は、最大検出量の割合で示す。その結果を表5に示す。
【0076】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、pH5.7および7.4におけるFA0.01および0.49のキトサンについて、キトサン濃度に対する凝集割合のプロットである。
【図2】図2は、pH5および7におけるFA0.49の低分子量キトサンについてキトサン濃度に対する凝集割合のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養食品物質と、少なくとも0.25のFA値を有するキトサンとを含む食物。
【請求項2】
前記栄養食品物質が、動物由来または植物由来の調理済みまたは未調理の材料である請求項1に記載の食物。
【請求項3】
1000から5000000g/molの重量平均分子量を有するキトサンを含む、請求項1および2のいずれかに記載の食物。
【請求項4】
20000から2000000g/molの重量平均分子量を有するキトサンを含む、請求項1および2のいずれかに記載の食物。
【請求項5】
pH3から8において完全に水溶性なキトサンを含む請求項1〜4のいずれか一つに記載の食物。
【請求項6】
少なくとも0.3のFA値を有するキトサンを含む請求項1〜5のいずれか一つに記載の食物。
【請求項7】
0.9までのFA値を有するキトサンを含む請求項1〜6のいずれか一つに記載の食物。
【請求項8】
0.7までのFA値を有するキトサンを含む請求項1〜7のいずれか一つに記載の食物。
【請求項9】
pH5から8において完全に水溶性なキトサンを含む請求項1〜8のいずれか一つに記載の食物。
【請求項10】
pH6から8において完全に水溶性なキトサンを含む請求項1〜9のいずれか一つに記載の食物。
【請求項11】
異なるFA値を有する少なくとも2つのキトサンの組み合わせを含む請求項1〜10のいずれか一つに記載の食物。
【請求項12】
前記キトサンのFA値が、少なくとも0.1だけ相違する請求項11に記載の食物。
【請求項13】
前記キトサンのFA値が、少なくとも0.2だけ相違する請求項11および12のいずれかに記載の食物。
【請求項14】
0.25以下のFA値を有する1またはそれ以上のキトサンを含む請求項11〜13のいずれか一つに記載の食物。
【請求項15】
ライソゾームをさらに含む請求項1〜14のいずれか一つに記載の食物。
【請求項16】
ヒトまたは非ヒトの脊椎動物患者の胃腸管からの望ましくない化合物の摂取を抑制するための前記ヒトまたは非ヒトの脊椎動物患者の治療方法において使用するための、薬剤の製造のための、少なくとも0.25のFA値を有するキトサンの使用。
【請求項17】
前記キトサンが、少なくとも0.3のFA値を有する請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記キトサンが、0.9までのFA値を有する請求項16および17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
前記キトサンが、0.7までのFA値を有する請求項16および18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
前記非ヒト脊椎動物が、哺乳動物である請求項16〜19のいずれか一つに記載の使用。
【請求項21】
少なくとも0.25のFA値を有するキトサンと、薬物化合物と、任意に、少なくとも1つの生理学的に許容できる担体または賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項22】
前記薬物化合物が、マイナスに帯電した種である請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記薬物化合物が、親油性または両親媒性の有機または有機金属の種である請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
経口投与または直腸投与用に適合させた形態の請求項21〜23のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項25】
前記薬物化合物が、ワルファリンおよびジギトキシンから選択される請求項21〜24のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項26】
ヒトまたは非ヒトの脊椎動物患者の胃腸管からの、望ましくない化合物の摂取を抑制するための前記ヒトまたは非ヒトの脊椎動物患者の治療方法であって、その方法が、少なくとも0.25のFA値を有するキトサンの有効量を、前記患者に経口的に投与することを含む方法。
【請求項27】
前記非ヒト脊椎動物が、哺乳動物である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物が、マイナスに帯電したか、または中性の毒である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物が、ワルファリンおよびジギトキシンからなる群から選択される請求項27または28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
キトサンが、胃腸管において投与される請求項26〜29のいずれか一つに記載の方法。
【請求項31】
薬物化合物のそれによる摂取を引き伸ばすための、ヒトまたは非ヒトの脊椎動物患者の治療方法であって、前記方法が、前記患者へ、前記薬物化合物の有効量と、少なくとも0.25のFA値を有するキトサンの有効量とを、同じ身体の管または窩洞または組織に、同時または順次投与することを含む方法。
【請求項32】
投与が、前記胃腸管の中へである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記薬物化合物が、マイナスに帯電し、親油性または両親媒性の種である請求項31および32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記薬物化合物での治療方法における、薬物化合物の摂取を引き伸ばすことにおける使用のための薬剤の製造のための、少なくとも0.25のFAを有するキトサンの使用。
【請求項35】
水から脂質を分離することにおける、少なくとも0.25のFA値を有するキトサンの使用。
【請求項36】
前記キトサンが、1000から5000000g/molの重量平均分子量を有する請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記キトサンが、少なくとも0.3のFA値を有する請求項35および36のいずれかに記載の使用。
【請求項38】
キトサン組み合わせが用いられる請求項35〜37のいずれかに記載の使用。
【請求項39】
前記脂質が、炭化水素である請求項37〜38のいずれか一つに記載の使用。
【請求項40】
水から脂質を分離するための処置であって、少なくとも0.25のFA値を有するキトサンが、脂質含有水に添加され、前記脂質が、凝集され、前記凝集した脂質が、分離される処置。
【請求項41】
請求項40に記載の処置であって、前記キトサンが、1000から5000000g/molの重量平均分子量を有する処置。
【請求項42】
請求項40および41のいずれかに記載の処置であって、前記キトサンが、少なくとも0.3のFA値を有する処置。
【請求項43】
請求項40〜41のいずれか一つに記載の処置であって、キトサン組み合わせが用いられる処置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−517408(P2006−517408A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502235(P2006−502235)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000437
【国際公開番号】WO2004/068971
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(504031676)アドバンスド バイオポリマーズ エーエス (2)
【Fターム(参考)】