キャステレイテッドスリーブステントグラフト送達システムおよび方法
ステントグラフトを展開する方法は、ステントグラフトの近位アンカーステントリングの近位頂点を、先端のキャステレイテッドスリーブのマーロンとスピンドルピンを有するスピンドルとの間のスペース中で半径方向に拘束することを含み、近位頂点がスピンドルピンのまわりで延びる。ステントグラフトのグラフト材は、プライマリシース内で半径方向に拘束され、グラフト材の近位端は、近位アンカーステントリングの遠位頂点に取り付けられている。近位アンカーステントリングは、近位頂点と遠位頂点との間に延びるストラットをさらに含む。プライマリシースは、近位端が半径方向に拡張するにつれて、グラフト材の近位端および近位アンカーステントリングの遠位頂点がスリーブの境界を越えて大きな角度で外側に枢動できるようにするために後退される。次いで、ストラットは、キャステレイテッドスリーブのU字開口を通って延びる。近位頂点を展開するために先端を前進させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、医療デバイスおよび処置に関し、より詳細には、血管系中にステントグラフトを展開する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体の血管またはその他の同様の器官内に埋め込むための補綴具が、医療分野では一般によく知られている。たとえば、生体適合性材料(たとえば、ダクロンまたは拡張式多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チュービング)で形成された人工血管グラフトが、損傷した、または閉塞した生来の血管との交換のため、あるいはそのような血管にバイパスするために採用されてきた。
【0003】
骨組みによって支持されたグラフト材は、ステントグラフトまたは腔内グラフトとして知られている。一般に、疾病によって細くなった、または厚くなった、血管動脈瘤および血管壁の治療または分離(腔内修復または除外)のためにステントグラフトを使用することがよく知られている。
【0004】
多くのステントグラフトが「自己拡張型」であり、すなわち、圧縮即ち収縮された状態で血管系内に挿入され、拘束を除去すると拡張できるようになる。自己拡張型ステントグラフトは、典型的には、半径方向外向きの力を提供するように構成された(たとえば、湾曲または切断された)ワイヤまたはチューブを採用し、ステンレス鋼またはニチノール(ニッケルチタン)などの好適な弾性材料を採用する。さらに、ニチノールは、形状記憶特性を採用し得る。
【0005】
自己拡張型ステントグラフトは、典型的には、ステントグラフトを使用することが企図される血管の直径よりもわずかに大きな直径を有する管状形状で構成される。一般には、外傷性および侵襲性の方法で挿入するのではなく、ステントおよびステントグラフトは、典型的には、より侵襲性の低い腔内送達によって、すなわち、便利な(および外傷性の低い)エントリーポイントで、内腔または脈管系にアクセスするために皮膚を通って、または連続した拡張を介して経皮的に切除し、内腔を通って補綴具が展開されるべき部位までステントグラフトをルーティングすることによって展開される。
【0006】
1つの例における腔内展開は、相対的に軸方向に運動するように配置された内側チューブ(プランジャ)と呼ばれることもある同軸の内側チューブと、シースと呼ばれることもある外側チューブとを備える送達カテーテルを使用して実行される。ステントグラフトは、圧縮され、内側チューブの前のシースの遠位端内に設けられる。
【0007】
次いで、カテーテルが操作され、典型的には、ステントグラフトを含んでいるカテーテルの端部が企図される治療部位の近傍に配置されるまで、血管(たとえば、内腔)を通ってルーティングされる。次いで、内側チューブは、送達カテーテルのシースを引き抜いている間、定位置に保持される。内側チューブにより、シースを引き抜いている間、ステントグラフトが動かないようになる。
【0008】
シースを引き抜いている間、ステントグラフトは、ステントグラフトの近位端から遠位端まで徐々に露出され、ステントグラフトの露出された部分は、半径方向に拡張し、それにより、拡張部分の少なくとも一部分が、血管壁の内側の一部分と実質的に共面接触となる。
【0009】
ステントグラフトの近位端は、血液流路を通って心臓に最も近い端部であり、遠位端は、展開中に心臓から最も離れた端部である。対照的に重要なことであるが、カテーテルの遠位端は、たいてい、オペレータ(ハンドル)から最も離れた端部として識別され、カテーテルの近位端は、オペレータ(ハンドル)に最も近い端部である。議論を明瞭にするために、本明細書で使用する場合、カテーテルの遠位端とは、オペレータから最も離れた端部(ハンドルから最も離れた端部)であり、ステントグラフトの遠位端とは、オペレータに最も近い端部(ハンドルに最も近い端部、またはハンドル自体)であり、すなわち、カテーテルの遠位端およびステントグラフトの近位端とは、ハンドルから最も遠い端部であり、カテーテルの近位端およびステントグラフトの遠位端とは、ハンドルに最も近い端部である。ただし、当業者には、アクセス場所に応じて、ステントグラフトおよび送達システムの遠位端および近位端という記述は、実際の使用に適合することも、反対となることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多くの自己拡張型ステントグラフト展開システムは、シースが引き戻されるにつれて、ステントグラフト展開の近位端におけるステントグラフトの各露出部分(フレアアウトまたはマッシュルーム)が増えていくように構成される。ステントグラフトの近位端は、典型的には、展開中に、ステントグラフトを血管の壁に固定および封止するために拡張するように設計される。初期の展開後にステントグラフトを再配置することは、引き下げられる後退が最小限の場合を除いて、可能だとしても、通常は難しいので、そのような構成は配置エラーの余地がほとんどないままである。ステントグラフトを正確に近位端に配置することを達成する必要性は、まず、ステントグラフトを正確に展開前に配置することを必須とする。
【0011】
この課題を克服しようとする試みは、一般に、ステントグラフトの最初の展開でも、(ステントグラフトが部分的に展開された後の)ステントグラフトの再展開でも、ステントグラフト位置決め操作の際に、適当な制御を提供することができない。
【0012】
既存のシステム、特に、ステントグラフトの遠位端が展開中に(または、シースの除覆中に)固定されるシステムで発生するその他の問題は、シースが後退するにつれて、ステントグラフトを軸方向に収縮、または結束させることがある摩擦力である。この結束は、シース内のステントグラフトの密度を増大させ、さらに、展開中に受ける摩擦抗力を増大させ得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ステントグラフトを展開する方法は、ステントグラフトの近位アンカーステントリングの近位頂点を、先端のキャステレイテッドスリーブのマーロンとスピンドルピンを有するスピンドルとの間のスペース中で半径方向に拘束することを含み、近位頂点がスピンドルピンのまわりで延びる。ステントグラフトのグラフト材は、プライマリシース内で半径方向に拘束され、グラフト材の近位端は、近位アンカーステントリングの遠位頂点に取り付けられている。近位アンカーステントリングは、近位頂点と遠位頂点との間に延びるストラットをさらに含む。
【0014】
プライマリシースは、グラフト材の近位端および近位アンカーステントリングの遠位頂点が半径方向に拡張できるようにするために後退され、ストラットが、スリーブのキャステレイテッド縁部のU字開口を通って延びる。
【0015】
近位(またはベア)スプリングストラットは、収縮されず、U字開口から開放される。これにより、グラフト材の近位端および近位スプリングの遠位頂点が半径方向に拡張し、ステントグラフトが展開されている血管の血管壁に係合できるようになる。
【0016】
グラフト材の近位端を血管壁と係合することによって、ステントグラフトの正確な配置が達成される。たとえば、ステントグラフトは、ステントグラフトの展開を完了する前に、グラフト材の近位端が血管壁に係合することが重要な胸部大動脈アプリケーションで使用される。次いで、ステントグラフトの1つまたは複数の近位頂点を展開するために、先端を前進させる。
【0017】
本発明によるこれらのおよびその他の特徴は、添付の図面とあわせると、以下に記載される詳細な説明から、より容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】1つの実施形態による、ステントグラフトおよび外側シースのないステントグラフト送達システムの概略部分断面図である。
【図2】図1のステントグラフト送達システムのテーパ状の先端の概略斜視図である。
【図3】図2のテーパ状の先端のキャステレイテッドスリーブの領域IIIの拡大斜視図である。
【図4】展開前の後退されていない位置における後退可能なプライマリシース内に配置されたステントグラフトを含む、図1のステントグラフト送達システムの概略部分断面図である。
【図5】後退可能なプライマリシースが部分的に後退している、図4のステントグラフト送達システムの概略部分断面図である。
【図6】図5のステントグラフト送達システムの領域VIの拡大斜視図である。
【図7】マーロンおよび1対のアンカーピンの、図6の矢印VIIから見た部分端面図である。
【図8】ステントグラフトの近位アンカーステントリングを展開した後の、図5のステントグラフト送達システムの概略部分断面図である。
【図9】1つの実施形態による、図6のステントグラフト送達システムの領域と同様のステントグラフト送達システムの領域の拡大斜視図である。
【図10】マーロンおよび1対のアンカーピンの、図9の矢印Xから見た部分端面図である。
【図11】1つの実施形態による、図6のステントグラフト送達システムの領域と同様のステントグラフト送達システムの領域の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明において、同一または同様の要素には、同一または同様の参照番号が付されている。
【0020】
図1は、1つの実施形態による、ステントグラフトおよび外側シースのないステントグラフト送達システム100の先端の概略部分断面図である。ステントグラフト送達システム100は、テーパ状の先端102を含み、このテーパ状の先端102は可撓性で、きつく蛇行した血管に追従することが可能となる。テーパ状の先端102は、隣接する部材に接続し、ガイドワイヤがテーパ状の先端102を通過できるようにするガイドワイヤ内腔104を含む。弾丸形状の先端など、その他の先端形状を使用してもよい。
【0021】
また、内側チューブ106は、内腔、たとえば、ガイドワイヤ内腔を内部に規定する。内側チューブ106の遠位端107は、テーパ状の先端102内に配置され、テーパ状の先端102に固定される、すなわち、テーパ状の先端102は、内側チューブ106上に装着される。図1に示されるように、内側チューブ106の内腔は、テーパ状の先端102のガイドワイヤ内腔104と流体連通し、それにより、ガイドワイヤが、内側チューブ106を通過し、テーパ状の先端102のガイドワイヤ内腔104を通って遠位端107から出て、テーパ状の先端102の遠位端103から出ることができる。
【0022】
テーパ状の先端102は、徐々に直径が大きくなるテーパ状の外側表面108を含む。より詳細には、テーパ状の外側表面108は、遠位端103において最小直径を有し、遠位端103から近位方向に、すなわち、オペレータ(または、ステントグラフト送達システム100のハンドル)の方向に、直径が徐々に増大する。
【0023】
テーパ状の外側表面108は、テーパ状の先端102のプライマリシース当接表面(ショルダ)110に向かって近位方向に延びる。プライマリシース当接表面110は、ステントグラフト送達システム100の長手軸Lに垂直な環状リング(ショルダ)である。
【0024】
テーパ状の先端102は、プライマリシース当接表面110から近位方向に延び、キャステレイテッドチップと呼ばれることもあるキャステレイテッドスリーブ112をさらに含む。一般に、キャステレイテッドスリーブ112は、テーパ状の先端102の近位端105にある。キャステレイテッドスリーブ112は、プライマリシース当接表面110から、送達システムの長手軸に沿って近位方向に延びる。キャステレイテッドスリーブ112は、以下にさらに論じるように、外側キャステレイテッド円筒表面114と、内側キャステレイテッド円筒表面116とを含む。
【0025】
ステントグラフト送達システム100は外側チューブ118をさらに含み、この外側チューブ118は、外側チューブ118の遠位端119に配置され、その遠位端119に固定されたスピンドル120を有する。スピンドル120は、円筒形の外側表面を有するスピンドル本体122と、スピンドル本体122から半径方向外向きに突出した複数のスピンドルピン124と、スピンドル本体122から半径方向外向きに突出した複数のプライマリシースガイド126とを含む。プライマリシースガイド126は、プライマリシースを、キャステレイテッドスリーブ112上の位置まで導く(たとえば、図4参照)。
【0026】
図2は、図1のステントグラフト送達システム100のテーパ状の先端102の一例の概略的な斜視図である。図3は、図2のテーパ状の先端102のキャステレイテッドスリーブ112の領域IIIの一例の拡大斜視図である。
【0027】
図1、図2および図3を一緒に参照すると、キャステレイテッドスリーブ112は、円筒壁部分302と、キャステレーション部分304とを含む。円筒壁部分302は、プライマリシース当接表面110から近位方向に延びる中空の円筒である。より詳細には、円筒壁部分302の遠位端306は、プライマリシース当接表面110に接続される。円筒壁部分302は、遠位端306から円筒壁部分302の近位端308まで、近位方向に延びる。
【0028】
キャステレーション部分304は、円筒壁部分302の近位端308に接続され、そこから近位方向に延びる。より詳細には、キャステレーション部分304の遠位端310は、円筒壁部分302の近位端308に接続される。キャステレーション部分304は、キャステレーション部分304の遠位端310から近位端312まで、近位方向に延びる。
【0029】
1つの例では、円筒壁部分302およびキャステレーション部分304は一体であり、すなわち、単一の部品であり、一緒に接続された複数の別個の部品ではない。たとえば、キャステレイテッドスリーブ112は、ハイポチューブを切断することによって形成される。
【0030】
キャステレーション部分304は、キャステレーションパターンのU字開口314と、しばしば胸壁と呼ばれる、多くの中世の城壁の頂部を形作る特徴的なパターンと同様のマーロン316を含む。フィンガーまたは凸部と呼ばれることもあるマーロン316は、クレネルと呼ばれることもあるU字開口314によって、互いに分離されている。同様に、U字開口314は、マーロン316によって互いから分離されている。U字開口314は、キャステレイテッドスリーブ112内の、マーロン316間にあるスペースと呼ばれることもある開口部である。
【0031】
各U字開口314は、キャステレイテッドスリーブ112の外周Cに沿って、隣接するマーロン316同士を分離する。説明のために、複数のU字開口314の第1のU字開口314Aは、外周Cに沿って、複数のマーロン316の第2のマーロン316Bから、複数のマーロン316の第1のマーロン316Aを分離する。
【0032】
U字開口314Aは、キャステレイテッドスリーブ112の外周縁部318Aと、キャステレイテッドスリーブ112の第1の長手方向縁部320Aと、キャステレイテッドスリーブ112の第2の長手方向縁部322Aとによって規定される。外周縁部318Aは、キャステレイテッドスリーブ112の外周Cに沿って、長手方向縁部320Aと322Aとの間に延びる。外周縁部318Aは、円筒壁部分302の近位端308かつキャステレーション部分304の遠位端310にある。長手方向縁部320A、322Aは、キャステレーション部分304の近位端312と外周縁部318Aとの間に延びる。
【0033】
さらに説明すると、マーロン316Aは、キャステレイテッドスリーブ112の外周縁部324Aと、キャステレイテッドスリーブ112の第1の長手方向縁部320Aと、キャステレイテッドスリーブ112の(長手方向縁部322Aと同様の)第3の長手方向縁部322Bとによって規定される。外周縁部324Aは、キャステレイテッドスリーブ112の外周Cに沿って、長手方向縁部320Aと322Bとの間に延びる。外周縁部324Aは、キャステレーション部分304の近位端312に、かつ一般に、テーパ状の先端102の近位端105にある。長手方向縁部320Aは、外周縁部324Aと、キャステレーション部分304の遠位端310にある外周縁部318Aとの間に延びる。長手方向縁部322Bは、外周縁部324Aと、キャステレーション部分304の遠位端310にある外周縁部318Aと同様の第2の外周縁部318Bとの間に延びる。
【0034】
1つの例によると、外側キャステレイテッド円筒表面114の直径は約0.235インチ(5.97mm)であり、したがって、外周Cは、約0.738インチ(18.8mm)である。各マーロン316は、外周Cに沿って、約0.039インチ(1.00mm)の幅W1を有する。したがって、各U字開口314は、外周Cに沿って、約0.146インチ(3.71mm)の幅W2を有する。さらに、各U字開口314およびマーロン316の長手方向の深さD1は、約0.118インチ(3.00mm)から0.394インチ(10.0mm)の範囲である。
【0035】
単一のU字開口314Aおよび単一のマーロン316Aについて詳しく上述されているが、この説明は、一般に、U字開口314とマーロン316とのキャステレーションパターンに当てはまる。さらに、4つのマーロン316が図示されているが、その他の例では、テーパ状の先端102と同様のテーパ状の先端は、マーロン316と同様の4つ超または4つ未満のマーロン、たとえば、5つから8つのマーロンで形成される。
【0036】
一般に、各U字開口の外周に沿った幅W2は、以下の関係式1によって表される。
関係式1:W2=(C−X(W1))/NE
ただし、Cは外周であり、Xはマーロンの数であり、W1は外周に沿った各マーロンの幅であり、NEはU字開口の数である。
【0037】
図1に示されるように、スピンドル120は、スピンドルピン124が、キャステレイテッドスリーブ112の内側キャステレイテッド円筒表面116に直接隣接する、または接触するように、キャステレイテッドスリーブ112の内部を滑るように構成される。スピンドルピン124は、スピンドル本体122から、キャステレイテッドスリーブ112に向かって、キャステレイテッドスリーブ112まで延びる。より詳細には、各スピンドルピン124は、それぞれ対応するマーロン316まで延びる。
【0038】
一般に、スピンドル本体122からスピンドルピン124が延びる直径は、キャステレイテッドスリーブ112の内側キャステレイテッド円筒表面116の直径とほぼ等しいか、内側キャステレイテッド円筒表面116の直径よりわずかに小さく、それにより、スピンドルピン124は、キャステレイテッドスリーブ112の内側にぴったりと嵌合できるようになる。マーロン316とスピンドル本体122との間には、スペース128が存在する。
【0039】
内側チューブ106は、外側チューブ118およびスピンドル120の中にあり、そこを通って延びる。以下に詳述するように、内側チューブ106、したがって、ステントグラフトの近位端を解放するために、テーパ状の先端102を外側チューブ118に、したがって、スピンドル120に対して、長手軸Lに沿って(長手軸方向に)移動させる。本明細書で使用される用語「ステントグラフト」は、ステントグラフトおよびその他の形態の内部補綴具を含むものとして理解されたい。
【0040】
図4は、展開前の後退されていない位置にある、後退可能なプライマリシース404内に配置されたステントグラフト402を含む、図1のステントグラフト送達システム100の概略部分断面図である。
【0041】
プライマリシース404は中空チューブであり、外側チューブ118および内側チューブ106が内部に延びる内腔406を規定する。図4では、プライマリシース404は、展開前の後退されていない位置にある。プライマリシース404は、以下にさらに論じるように、ステントグラフト402の一部分を展開するために、外側チューブ118/スピンドル120、したがってステントグラフト402に対して、長手軸Lに沿って近位方向に移動し、これは後退と呼ばれることもある。
【0042】
1つの例では、ステントグラフト402は半径方向に拘束された位置から解放されると、ステントグラフト402が自己拡張するような自己拡張型ステントグラフトである。この例によると、ステントグラフト402は、たとえば、ポリエステルまたはダクロン材料で形成されたグラフト材408と、たとえば、ニチノールなどの超弾性自己拡張記憶材料で形成された複数の弾性自己拡張型支持構造とを含む。グラフト材408は近位端408Pを含む。
【0043】
支持構造は、ステントグラフト402の近位端403にある近位アンカー(ベア)ステントリング410と、近位アンカーステントリング410の遠位にある1つまたは複数のステントリング412とを含む。近位アンカーステントリング410は、グラフト材408の近位端408Pに取り付けられる。近位アンカーステントリング410およびステントリング412は、たとえば、縫合、接着、またはその他の手段によって、グラフト材408に取り付けられる。
【0044】
図4に示されるように、ステントグラフト402は、外側チューブ118およびスピンドル120の上に半径方向に拘束された構成になっている。ステントグラフト402は、プライマリシース404内に配置され、プライマリシース404によって半径方向に圧縮されている。さらに、ステントグラフト402の近位アンカーステントリング410の、クラウンと呼ばれることもある近位頂点は半径方向に拘束され、スピンドル本体122とキャステレイテッドスリーブ112のマーロン316との間のスペース128内の定位置に保持(捕捉)される。
【0045】
一般に、ステントグラフト402のグラフト材408は、プライマリシース404によって半径方向に拘束され、近位アンカーステントリング410の近位頂点は、キャステレイテッドスリーブ112によって半径方向に拘束され、それにより、グラフト材408とステントグラフト402の近位アンカーステントリング410の近位頂点とを、連続して、別々に展開することができるようになる。
【0046】
プライマリシース404は、テーパ状の先端102のプライマリシース当接表面110に隣接する、またはそれと当接する遠位端404Dを含む。遠位端404Dは、キャステレイテッドスリーブ112のまわりにぴったりと嵌合し、1つの例では、キャステレイテッドスリーブ112の外側キャステレイテッド円筒表面114を半径方向内向きに軽く押圧する。
【0047】
図5は、後退可能なプライマリシース404が部分的に後退している、図4のステントグラフト送達システム100の部分断面図である。図6は、1つの例による、図5のステントグラフト送達システム100の領域VIの拡大斜視図である。図7は、1つの例による、マーロン316Aおよび1対のアンカーピン608の図6の矢印VIIから見た部分端面図である。
【0048】
図5、図6および図7を一緒に参照すると、プライマリシース404は、遠位端404Dがテーパ状の先端102から離隔するように、部分的に後退している。さらに、プライマリシース404の後退に起因して、ステントグラフト402の近位部分502が露出し、部分的に展開(拡張)されている。近位部分502は、ステントグラフト402の一部分であり、近位アンカーステントリング410の近位頂点604から遠位であるが、ステントグラフト402の残りの部分に近位である。
【0049】
近位アンカーステントリング410は、近位アンカーステントリング410の近位頂点(クラウン)604と遠位頂点606とが交互になっている、ジグザグパターンのストラット602を含む。遠位頂点606は、ステントグラフト402のグラフト材408に取り付けられる。
【0050】
近位アンカーステントリング410は、アンカーピン(フック)608をさらに含む。より詳細には、1対のアンカーピン608は、各近位頂点604に隣接したストラット602と一体であり、その上に配置されている。この例によると、アンカーピン608は、遠位先端610、たとえば、鋭利な点を含み、それにより、図8を参照して以下に論じるように、アンカーピン608が、ステントグラフト402が展開される血管壁中に容易に貫通できるようになる。
【0051】
図示のように、近位アンカーステントリング410の近位頂点604は、マーロン316によって半径方向に拘束されている。より詳細には、各近位頂点604は、スピンドルピン124のまわりで延び、スピンドル本体122とそれぞれ対応するマーロン316との間のスペース128内に配置され、固定される。
【0052】
さらに、アンカーピン608は、スピンドル本体122とそれぞれ対応するマーロン316との間のスペース128内に配置され、半径方向に拘束されている。より詳細には、1対のアンカーピン608は、対応するマーロン316のそれぞれを用いて、半径方向に拘束されている。
【0053】
図7に示されるように、この例によると、マーロン316の曲率半径R1は、キャステレイテッドスリーブ112の曲率半径R2と等しい。マーロン316のこの曲率により、マーロン316の下にアンカーピン608を容易に保持できるようになる。アンカーピン608をさらに容易に保持できるようにするために、1つの例によると、アンカーピン608は、図5、図6および図7に示されるように、ステントグラフト402の部分的な展開段階中にマーロン316の下にあるままとなるように熱セッティングされる。
【0054】
反対に、ストラット602は拘束されておらず、解放されたときに、スリーブ部分の境界を越えてU字開口314を通って、大きな角度で枢動する。より詳細には、1対のストラット602が、各U字開口314と整列し、そこを通って延びる。このようにすると、近位アンカーステントリング410、すなわち、その遠位端は、キャステレイテッドスリーブ112の直径よりも大きな直径まで半径方向に拡張することができるようになる。
【0055】
近位頂点604のみを拘束しながら、近位アンカーステントリング410を半径方向に拡張できるようにすることによって、グラフト材408の近位端408Pおよび遠位頂点606を半径方向に拡張させて血管壁504に接触し係合させることが容易になる。グラフト材408の近位端408Pを血管壁504と係合させることによって、ステントグラフト402の正確な配置が達成される。たとえば、ステントグラフト送達システム100は、ステントグラフト402の展開を完了する前に、グラフト材408の近位端408Pが血管壁504に係合することが重要な胸部アプリケーションで使用される。
【0056】
近位部分502が部分的にのみ展開されて、近位アンカーステントリング410の近位頂点604が半径方向に拘束され、展開されていないとき、ステントグラフトの初期の最終前の(提案された)位置が観察され、必要に応じて、ステントグラフト402の初期配置が所望の配置を満たさない場合には、ステントグラフト402を再配置することができる。より詳細には、ステントグラフト402を再配置するために、プライマリシース404の後退が中止される。次いで、ステントグラフト送達システム100を移動させて、ステントグラフト402を再配置し、たとえば、ステントグラフト402が展開されている血管壁504を損傷する実質的なリスクなしに、ステントグラフト402を近位方向または遠位方向に回転または移動させる。
【0057】
さらに、ステントグラフト402の近位端403が固定され、したがって、ステントグラフト402の近位端403を固定し、プライマリシース404が後退される際に応力を受けたままになるので、1つの例では、遠位端405はプライマリシース404内で自由に移動し、プライマリシース404の後退中のステントグラフト402の結束が回避される。結束を回避することによって、後退中のプライマリシース404に対するステントグラフト402の摩擦抗力が最小になり、したがって、プライマリシース404をスムースに簡単に後退できるようになる。
【0058】
ステントグラフト402の近位端が適切に配置されると、図8を参照して以下にさらに詳細に論じるように、近位アンカーステントリング410の近位頂点604が解放され、展開されて、血管壁504内の定位置にステントグラフト402が固定される。
【0059】
図8は、ステントグラフト402の近位アンカーステントリング410を展開した後の、図5のステントグラフト送達システム100の部分断面図である。ここで図8を参照すると、テーパ状の先端102は、近位アンカーステントリング410の近位頂点604を露出し、解放するために、スピンドル120に対して前進する。近位頂点604(一般には、近位アンカーステントリング410)は、テーパ状の先端102のキャステレイテッドスリーブ112のマーロン316から解放されると、ステントグラフト402が展開されている血管壁504中へと自己拡張する。
【0060】
アンカーピン608は血管壁504中に貫通し、したがって、近位アンカーステントリング410を血管壁504に固定する。したがって、近位アンカーステントリング410を展開し、血管壁504に固定した後、プライマリシース404が完全に後退して、ステントグラフト402は、移動なしに完全に展開される。
【0061】
しかしながら、その他の例では、プライマリシース404は、近位アンカーステントリング410の近位頂点604を解放する前に完全に後退する。説明すると、図5に示された展開段階において部分的に後退するのではなく、近位アンカーステントリング410の近位頂点604を依然として半径方向に拘束しながら、プライマリシース404を完全に後退させる。
【0062】
さらに、上述のステントグラフト402は、自己拡張型ステントとして記載されている。その他の例によると、自己拡張型ステントグラフトとするかわりに、ステントグラフト送達システム100は、ステントグラフトを拡張および展開するために拡張される拡張部材、たとえば、バルーンを含む。
【0063】
図7を参照して上述されたように、1つの例では、マーロン316の曲率半径R1は、キャステレイテッドスリーブ112の曲率半径R2と等しい。1つの例によると、スピンドル120に対してキャステレイテッドスリーブ112が回転しないように、スパイン(図示せず)などの回転係止フィーチャが提供される。図9および図10を参照して以下に論じるように、その他の例によると、アンカーピンの保持を向上し、キャステレイテッドスリーブの偶発的な回転を防止するために、マーロンの曲率はキャステレイテッドスリーブの曲率よりも大きい。
【0064】
図9は、1つの例による、図6のステントグラフト送達システム100の領域と同様のステントグラフト送達システム100−1の領域の拡大斜視図である。図10は、1つの例による、マーロン316−1および1対のアンカーピン608−1の図9の矢印Xから見た部分端面図である。
【0065】
図9および図10のステントグラフト送達システム100−1のキャステレイテッドスリーブ112−1、スピンドル120−1、スピンドル本体122−1、スピンドルピン124−1、スペース128−1、キャステレーション部分304−1、近位端312−1、U字開口314−1、マーロン316−1、ステントグラフト402−1、近位アンカーステントリング410−1、ストラット602−1、近位頂点604−1およびアンカーピン608−1は、図6および図7のステントグラフト送達システム100のキャステレイテッドスリーブ112、スピンドル120、スピンドル本体122、スピンドルピン124、スペース128、キャステレーション部分304、近位端312、U字開口314、マーロン316、ステントグラフト402、近位アンカーステントリング410、ストラット602、近位頂点604およびアンカーピン608と同様であり、ステントグラフト送達システム100−1とステントグラフト送達システム100の顕著な差異のみを以下に示す。
【0066】
ここで、図9および図10を一緒に参照し、この例によると、マーロン316−1は、それらの長さに沿って可変の曲率半径を有する。より詳細には、マーロン316−1のキャステレーション部分304−1の遠位端312−1における第1の曲率半径R3は、スピンドルピン124−1の第2の曲率半径R1−1よりも小さく、スピンドルピン124−1から遠位にある。さらに、マーロン316−1の曲率半径は、キャステレーション部分304−1の近位端312−1における第1の曲率半径R3、すなわち最小曲率半径から、スピンドルピン124−1における第2の曲率半径R1−1(最大曲率半径)まで、徐々に増大する。言い換えると、マーロン316−1の近位端902は、きつく湾曲しており(最大曲率(最小曲率半径)を有しており)、徐々に拡がっていく、すなわち、近位端902からスピンドルピン124−1におけるキャステレイテッドスリーブ112の残りの湾曲まで遠位方向に、徐々に曲率半径が増大する(徐々に曲率が小さくなる)。
【0067】
きつく湾曲した近位端902をもつマーロン316−1を形成することによって、近位端902は、アンカーピン608−1のまわりを包み込み、したがって、マーロン316−1内にアンカーピン608−1を容易に保持できるようになり、さらに、スリーブ112−1がスピンドル120−1に関して回転しないようになる。
【0068】
図11は、1つの例による、図6のステントグラフト送達システム100の領域と同様のステントグラフト送達システム100−2の領域の拡大斜視図である。図11のステントグラフト送達システム100−2のキャステレイテッドスリーブ112−2、スピンドル120−2、スピンドル本体122−2、スピンドルピン124−2、スペース128−2、キャステレーション部分304−2、近位端312−2、U字開口314−2、マーロン316−2、ステントグラフト402−2、近位アンカーステントリング410−2、ストラット602−2および近位頂点604−2は、図6のステントグラフト送達システム100のキャステレイテッドスリーブ112、スピンドル120、スピンドル本体122、スピンドルピン124、スペース128、キャステレーション部分304、近位端312、U字開口314、マーロン316、ステントグラフト402、近位アンカーステントリング410、ストラット602および近位頂点604と同様であり、ステントグラフト送達システム100−2とステントグラフト送達システム100の顕著な差異のみを以下に示す。
【0069】
この例によると、近位アンカーステントリング410−2は、アンカーピンなしに、すなわち、図6に示されたようなアンカーピン608と同様のアンカーピンなしに形成される。
【0070】
本出願は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる、2006年11月14日に出願された「DELIVERY SYSTEM FOR STENT−GRAFT WITH ANCHORING PINS」と題するMitchellらの米国特許出願公開第2008−0114442号、および2006年11月14日に出願された「STENT−GRAFT WITH ANCHORING PINS」と題するMitchellらの米国特許出願公開第2008−0114443号に関する。
【0071】
図面および上記説明は、本発明による諸実施形態の例を示すものである。本明細書に明示されているか否かにかかわらず、構造、寸法および使用材料における数多くの変形形態が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、医療デバイスおよび処置に関し、より詳細には、血管系中にステントグラフトを展開する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体の血管またはその他の同様の器官内に埋め込むための補綴具が、医療分野では一般によく知られている。たとえば、生体適合性材料(たとえば、ダクロンまたは拡張式多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チュービング)で形成された人工血管グラフトが、損傷した、または閉塞した生来の血管との交換のため、あるいはそのような血管にバイパスするために採用されてきた。
【0003】
骨組みによって支持されたグラフト材は、ステントグラフトまたは腔内グラフトとして知られている。一般に、疾病によって細くなった、または厚くなった、血管動脈瘤および血管壁の治療または分離(腔内修復または除外)のためにステントグラフトを使用することがよく知られている。
【0004】
多くのステントグラフトが「自己拡張型」であり、すなわち、圧縮即ち収縮された状態で血管系内に挿入され、拘束を除去すると拡張できるようになる。自己拡張型ステントグラフトは、典型的には、半径方向外向きの力を提供するように構成された(たとえば、湾曲または切断された)ワイヤまたはチューブを採用し、ステンレス鋼またはニチノール(ニッケルチタン)などの好適な弾性材料を採用する。さらに、ニチノールは、形状記憶特性を採用し得る。
【0005】
自己拡張型ステントグラフトは、典型的には、ステントグラフトを使用することが企図される血管の直径よりもわずかに大きな直径を有する管状形状で構成される。一般には、外傷性および侵襲性の方法で挿入するのではなく、ステントおよびステントグラフトは、典型的には、より侵襲性の低い腔内送達によって、すなわち、便利な(および外傷性の低い)エントリーポイントで、内腔または脈管系にアクセスするために皮膚を通って、または連続した拡張を介して経皮的に切除し、内腔を通って補綴具が展開されるべき部位までステントグラフトをルーティングすることによって展開される。
【0006】
1つの例における腔内展開は、相対的に軸方向に運動するように配置された内側チューブ(プランジャ)と呼ばれることもある同軸の内側チューブと、シースと呼ばれることもある外側チューブとを備える送達カテーテルを使用して実行される。ステントグラフトは、圧縮され、内側チューブの前のシースの遠位端内に設けられる。
【0007】
次いで、カテーテルが操作され、典型的には、ステントグラフトを含んでいるカテーテルの端部が企図される治療部位の近傍に配置されるまで、血管(たとえば、内腔)を通ってルーティングされる。次いで、内側チューブは、送達カテーテルのシースを引き抜いている間、定位置に保持される。内側チューブにより、シースを引き抜いている間、ステントグラフトが動かないようになる。
【0008】
シースを引き抜いている間、ステントグラフトは、ステントグラフトの近位端から遠位端まで徐々に露出され、ステントグラフトの露出された部分は、半径方向に拡張し、それにより、拡張部分の少なくとも一部分が、血管壁の内側の一部分と実質的に共面接触となる。
【0009】
ステントグラフトの近位端は、血液流路を通って心臓に最も近い端部であり、遠位端は、展開中に心臓から最も離れた端部である。対照的に重要なことであるが、カテーテルの遠位端は、たいてい、オペレータ(ハンドル)から最も離れた端部として識別され、カテーテルの近位端は、オペレータ(ハンドル)に最も近い端部である。議論を明瞭にするために、本明細書で使用する場合、カテーテルの遠位端とは、オペレータから最も離れた端部(ハンドルから最も離れた端部)であり、ステントグラフトの遠位端とは、オペレータに最も近い端部(ハンドルに最も近い端部、またはハンドル自体)であり、すなわち、カテーテルの遠位端およびステントグラフトの近位端とは、ハンドルから最も遠い端部であり、カテーテルの近位端およびステントグラフトの遠位端とは、ハンドルに最も近い端部である。ただし、当業者には、アクセス場所に応じて、ステントグラフトおよび送達システムの遠位端および近位端という記述は、実際の使用に適合することも、反対となることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多くの自己拡張型ステントグラフト展開システムは、シースが引き戻されるにつれて、ステントグラフト展開の近位端におけるステントグラフトの各露出部分(フレアアウトまたはマッシュルーム)が増えていくように構成される。ステントグラフトの近位端は、典型的には、展開中に、ステントグラフトを血管の壁に固定および封止するために拡張するように設計される。初期の展開後にステントグラフトを再配置することは、引き下げられる後退が最小限の場合を除いて、可能だとしても、通常は難しいので、そのような構成は配置エラーの余地がほとんどないままである。ステントグラフトを正確に近位端に配置することを達成する必要性は、まず、ステントグラフトを正確に展開前に配置することを必須とする。
【0011】
この課題を克服しようとする試みは、一般に、ステントグラフトの最初の展開でも、(ステントグラフトが部分的に展開された後の)ステントグラフトの再展開でも、ステントグラフト位置決め操作の際に、適当な制御を提供することができない。
【0012】
既存のシステム、特に、ステントグラフトの遠位端が展開中に(または、シースの除覆中に)固定されるシステムで発生するその他の問題は、シースが後退するにつれて、ステントグラフトを軸方向に収縮、または結束させることがある摩擦力である。この結束は、シース内のステントグラフトの密度を増大させ、さらに、展開中に受ける摩擦抗力を増大させ得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ステントグラフトを展開する方法は、ステントグラフトの近位アンカーステントリングの近位頂点を、先端のキャステレイテッドスリーブのマーロンとスピンドルピンを有するスピンドルとの間のスペース中で半径方向に拘束することを含み、近位頂点がスピンドルピンのまわりで延びる。ステントグラフトのグラフト材は、プライマリシース内で半径方向に拘束され、グラフト材の近位端は、近位アンカーステントリングの遠位頂点に取り付けられている。近位アンカーステントリングは、近位頂点と遠位頂点との間に延びるストラットをさらに含む。
【0014】
プライマリシースは、グラフト材の近位端および近位アンカーステントリングの遠位頂点が半径方向に拡張できるようにするために後退され、ストラットが、スリーブのキャステレイテッド縁部のU字開口を通って延びる。
【0015】
近位(またはベア)スプリングストラットは、収縮されず、U字開口から開放される。これにより、グラフト材の近位端および近位スプリングの遠位頂点が半径方向に拡張し、ステントグラフトが展開されている血管の血管壁に係合できるようになる。
【0016】
グラフト材の近位端を血管壁と係合することによって、ステントグラフトの正確な配置が達成される。たとえば、ステントグラフトは、ステントグラフトの展開を完了する前に、グラフト材の近位端が血管壁に係合することが重要な胸部大動脈アプリケーションで使用される。次いで、ステントグラフトの1つまたは複数の近位頂点を展開するために、先端を前進させる。
【0017】
本発明によるこれらのおよびその他の特徴は、添付の図面とあわせると、以下に記載される詳細な説明から、より容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】1つの実施形態による、ステントグラフトおよび外側シースのないステントグラフト送達システムの概略部分断面図である。
【図2】図1のステントグラフト送達システムのテーパ状の先端の概略斜視図である。
【図3】図2のテーパ状の先端のキャステレイテッドスリーブの領域IIIの拡大斜視図である。
【図4】展開前の後退されていない位置における後退可能なプライマリシース内に配置されたステントグラフトを含む、図1のステントグラフト送達システムの概略部分断面図である。
【図5】後退可能なプライマリシースが部分的に後退している、図4のステントグラフト送達システムの概略部分断面図である。
【図6】図5のステントグラフト送達システムの領域VIの拡大斜視図である。
【図7】マーロンおよび1対のアンカーピンの、図6の矢印VIIから見た部分端面図である。
【図8】ステントグラフトの近位アンカーステントリングを展開した後の、図5のステントグラフト送達システムの概略部分断面図である。
【図9】1つの実施形態による、図6のステントグラフト送達システムの領域と同様のステントグラフト送達システムの領域の拡大斜視図である。
【図10】マーロンおよび1対のアンカーピンの、図9の矢印Xから見た部分端面図である。
【図11】1つの実施形態による、図6のステントグラフト送達システムの領域と同様のステントグラフト送達システムの領域の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明において、同一または同様の要素には、同一または同様の参照番号が付されている。
【0020】
図1は、1つの実施形態による、ステントグラフトおよび外側シースのないステントグラフト送達システム100の先端の概略部分断面図である。ステントグラフト送達システム100は、テーパ状の先端102を含み、このテーパ状の先端102は可撓性で、きつく蛇行した血管に追従することが可能となる。テーパ状の先端102は、隣接する部材に接続し、ガイドワイヤがテーパ状の先端102を通過できるようにするガイドワイヤ内腔104を含む。弾丸形状の先端など、その他の先端形状を使用してもよい。
【0021】
また、内側チューブ106は、内腔、たとえば、ガイドワイヤ内腔を内部に規定する。内側チューブ106の遠位端107は、テーパ状の先端102内に配置され、テーパ状の先端102に固定される、すなわち、テーパ状の先端102は、内側チューブ106上に装着される。図1に示されるように、内側チューブ106の内腔は、テーパ状の先端102のガイドワイヤ内腔104と流体連通し、それにより、ガイドワイヤが、内側チューブ106を通過し、テーパ状の先端102のガイドワイヤ内腔104を通って遠位端107から出て、テーパ状の先端102の遠位端103から出ることができる。
【0022】
テーパ状の先端102は、徐々に直径が大きくなるテーパ状の外側表面108を含む。より詳細には、テーパ状の外側表面108は、遠位端103において最小直径を有し、遠位端103から近位方向に、すなわち、オペレータ(または、ステントグラフト送達システム100のハンドル)の方向に、直径が徐々に増大する。
【0023】
テーパ状の外側表面108は、テーパ状の先端102のプライマリシース当接表面(ショルダ)110に向かって近位方向に延びる。プライマリシース当接表面110は、ステントグラフト送達システム100の長手軸Lに垂直な環状リング(ショルダ)である。
【0024】
テーパ状の先端102は、プライマリシース当接表面110から近位方向に延び、キャステレイテッドチップと呼ばれることもあるキャステレイテッドスリーブ112をさらに含む。一般に、キャステレイテッドスリーブ112は、テーパ状の先端102の近位端105にある。キャステレイテッドスリーブ112は、プライマリシース当接表面110から、送達システムの長手軸に沿って近位方向に延びる。キャステレイテッドスリーブ112は、以下にさらに論じるように、外側キャステレイテッド円筒表面114と、内側キャステレイテッド円筒表面116とを含む。
【0025】
ステントグラフト送達システム100は外側チューブ118をさらに含み、この外側チューブ118は、外側チューブ118の遠位端119に配置され、その遠位端119に固定されたスピンドル120を有する。スピンドル120は、円筒形の外側表面を有するスピンドル本体122と、スピンドル本体122から半径方向外向きに突出した複数のスピンドルピン124と、スピンドル本体122から半径方向外向きに突出した複数のプライマリシースガイド126とを含む。プライマリシースガイド126は、プライマリシースを、キャステレイテッドスリーブ112上の位置まで導く(たとえば、図4参照)。
【0026】
図2は、図1のステントグラフト送達システム100のテーパ状の先端102の一例の概略的な斜視図である。図3は、図2のテーパ状の先端102のキャステレイテッドスリーブ112の領域IIIの一例の拡大斜視図である。
【0027】
図1、図2および図3を一緒に参照すると、キャステレイテッドスリーブ112は、円筒壁部分302と、キャステレーション部分304とを含む。円筒壁部分302は、プライマリシース当接表面110から近位方向に延びる中空の円筒である。より詳細には、円筒壁部分302の遠位端306は、プライマリシース当接表面110に接続される。円筒壁部分302は、遠位端306から円筒壁部分302の近位端308まで、近位方向に延びる。
【0028】
キャステレーション部分304は、円筒壁部分302の近位端308に接続され、そこから近位方向に延びる。より詳細には、キャステレーション部分304の遠位端310は、円筒壁部分302の近位端308に接続される。キャステレーション部分304は、キャステレーション部分304の遠位端310から近位端312まで、近位方向に延びる。
【0029】
1つの例では、円筒壁部分302およびキャステレーション部分304は一体であり、すなわち、単一の部品であり、一緒に接続された複数の別個の部品ではない。たとえば、キャステレイテッドスリーブ112は、ハイポチューブを切断することによって形成される。
【0030】
キャステレーション部分304は、キャステレーションパターンのU字開口314と、しばしば胸壁と呼ばれる、多くの中世の城壁の頂部を形作る特徴的なパターンと同様のマーロン316を含む。フィンガーまたは凸部と呼ばれることもあるマーロン316は、クレネルと呼ばれることもあるU字開口314によって、互いに分離されている。同様に、U字開口314は、マーロン316によって互いから分離されている。U字開口314は、キャステレイテッドスリーブ112内の、マーロン316間にあるスペースと呼ばれることもある開口部である。
【0031】
各U字開口314は、キャステレイテッドスリーブ112の外周Cに沿って、隣接するマーロン316同士を分離する。説明のために、複数のU字開口314の第1のU字開口314Aは、外周Cに沿って、複数のマーロン316の第2のマーロン316Bから、複数のマーロン316の第1のマーロン316Aを分離する。
【0032】
U字開口314Aは、キャステレイテッドスリーブ112の外周縁部318Aと、キャステレイテッドスリーブ112の第1の長手方向縁部320Aと、キャステレイテッドスリーブ112の第2の長手方向縁部322Aとによって規定される。外周縁部318Aは、キャステレイテッドスリーブ112の外周Cに沿って、長手方向縁部320Aと322Aとの間に延びる。外周縁部318Aは、円筒壁部分302の近位端308かつキャステレーション部分304の遠位端310にある。長手方向縁部320A、322Aは、キャステレーション部分304の近位端312と外周縁部318Aとの間に延びる。
【0033】
さらに説明すると、マーロン316Aは、キャステレイテッドスリーブ112の外周縁部324Aと、キャステレイテッドスリーブ112の第1の長手方向縁部320Aと、キャステレイテッドスリーブ112の(長手方向縁部322Aと同様の)第3の長手方向縁部322Bとによって規定される。外周縁部324Aは、キャステレイテッドスリーブ112の外周Cに沿って、長手方向縁部320Aと322Bとの間に延びる。外周縁部324Aは、キャステレーション部分304の近位端312に、かつ一般に、テーパ状の先端102の近位端105にある。長手方向縁部320Aは、外周縁部324Aと、キャステレーション部分304の遠位端310にある外周縁部318Aとの間に延びる。長手方向縁部322Bは、外周縁部324Aと、キャステレーション部分304の遠位端310にある外周縁部318Aと同様の第2の外周縁部318Bとの間に延びる。
【0034】
1つの例によると、外側キャステレイテッド円筒表面114の直径は約0.235インチ(5.97mm)であり、したがって、外周Cは、約0.738インチ(18.8mm)である。各マーロン316は、外周Cに沿って、約0.039インチ(1.00mm)の幅W1を有する。したがって、各U字開口314は、外周Cに沿って、約0.146インチ(3.71mm)の幅W2を有する。さらに、各U字開口314およびマーロン316の長手方向の深さD1は、約0.118インチ(3.00mm)から0.394インチ(10.0mm)の範囲である。
【0035】
単一のU字開口314Aおよび単一のマーロン316Aについて詳しく上述されているが、この説明は、一般に、U字開口314とマーロン316とのキャステレーションパターンに当てはまる。さらに、4つのマーロン316が図示されているが、その他の例では、テーパ状の先端102と同様のテーパ状の先端は、マーロン316と同様の4つ超または4つ未満のマーロン、たとえば、5つから8つのマーロンで形成される。
【0036】
一般に、各U字開口の外周に沿った幅W2は、以下の関係式1によって表される。
関係式1:W2=(C−X(W1))/NE
ただし、Cは外周であり、Xはマーロンの数であり、W1は外周に沿った各マーロンの幅であり、NEはU字開口の数である。
【0037】
図1に示されるように、スピンドル120は、スピンドルピン124が、キャステレイテッドスリーブ112の内側キャステレイテッド円筒表面116に直接隣接する、または接触するように、キャステレイテッドスリーブ112の内部を滑るように構成される。スピンドルピン124は、スピンドル本体122から、キャステレイテッドスリーブ112に向かって、キャステレイテッドスリーブ112まで延びる。より詳細には、各スピンドルピン124は、それぞれ対応するマーロン316まで延びる。
【0038】
一般に、スピンドル本体122からスピンドルピン124が延びる直径は、キャステレイテッドスリーブ112の内側キャステレイテッド円筒表面116の直径とほぼ等しいか、内側キャステレイテッド円筒表面116の直径よりわずかに小さく、それにより、スピンドルピン124は、キャステレイテッドスリーブ112の内側にぴったりと嵌合できるようになる。マーロン316とスピンドル本体122との間には、スペース128が存在する。
【0039】
内側チューブ106は、外側チューブ118およびスピンドル120の中にあり、そこを通って延びる。以下に詳述するように、内側チューブ106、したがって、ステントグラフトの近位端を解放するために、テーパ状の先端102を外側チューブ118に、したがって、スピンドル120に対して、長手軸Lに沿って(長手軸方向に)移動させる。本明細書で使用される用語「ステントグラフト」は、ステントグラフトおよびその他の形態の内部補綴具を含むものとして理解されたい。
【0040】
図4は、展開前の後退されていない位置にある、後退可能なプライマリシース404内に配置されたステントグラフト402を含む、図1のステントグラフト送達システム100の概略部分断面図である。
【0041】
プライマリシース404は中空チューブであり、外側チューブ118および内側チューブ106が内部に延びる内腔406を規定する。図4では、プライマリシース404は、展開前の後退されていない位置にある。プライマリシース404は、以下にさらに論じるように、ステントグラフト402の一部分を展開するために、外側チューブ118/スピンドル120、したがってステントグラフト402に対して、長手軸Lに沿って近位方向に移動し、これは後退と呼ばれることもある。
【0042】
1つの例では、ステントグラフト402は半径方向に拘束された位置から解放されると、ステントグラフト402が自己拡張するような自己拡張型ステントグラフトである。この例によると、ステントグラフト402は、たとえば、ポリエステルまたはダクロン材料で形成されたグラフト材408と、たとえば、ニチノールなどの超弾性自己拡張記憶材料で形成された複数の弾性自己拡張型支持構造とを含む。グラフト材408は近位端408Pを含む。
【0043】
支持構造は、ステントグラフト402の近位端403にある近位アンカー(ベア)ステントリング410と、近位アンカーステントリング410の遠位にある1つまたは複数のステントリング412とを含む。近位アンカーステントリング410は、グラフト材408の近位端408Pに取り付けられる。近位アンカーステントリング410およびステントリング412は、たとえば、縫合、接着、またはその他の手段によって、グラフト材408に取り付けられる。
【0044】
図4に示されるように、ステントグラフト402は、外側チューブ118およびスピンドル120の上に半径方向に拘束された構成になっている。ステントグラフト402は、プライマリシース404内に配置され、プライマリシース404によって半径方向に圧縮されている。さらに、ステントグラフト402の近位アンカーステントリング410の、クラウンと呼ばれることもある近位頂点は半径方向に拘束され、スピンドル本体122とキャステレイテッドスリーブ112のマーロン316との間のスペース128内の定位置に保持(捕捉)される。
【0045】
一般に、ステントグラフト402のグラフト材408は、プライマリシース404によって半径方向に拘束され、近位アンカーステントリング410の近位頂点は、キャステレイテッドスリーブ112によって半径方向に拘束され、それにより、グラフト材408とステントグラフト402の近位アンカーステントリング410の近位頂点とを、連続して、別々に展開することができるようになる。
【0046】
プライマリシース404は、テーパ状の先端102のプライマリシース当接表面110に隣接する、またはそれと当接する遠位端404Dを含む。遠位端404Dは、キャステレイテッドスリーブ112のまわりにぴったりと嵌合し、1つの例では、キャステレイテッドスリーブ112の外側キャステレイテッド円筒表面114を半径方向内向きに軽く押圧する。
【0047】
図5は、後退可能なプライマリシース404が部分的に後退している、図4のステントグラフト送達システム100の部分断面図である。図6は、1つの例による、図5のステントグラフト送達システム100の領域VIの拡大斜視図である。図7は、1つの例による、マーロン316Aおよび1対のアンカーピン608の図6の矢印VIIから見た部分端面図である。
【0048】
図5、図6および図7を一緒に参照すると、プライマリシース404は、遠位端404Dがテーパ状の先端102から離隔するように、部分的に後退している。さらに、プライマリシース404の後退に起因して、ステントグラフト402の近位部分502が露出し、部分的に展開(拡張)されている。近位部分502は、ステントグラフト402の一部分であり、近位アンカーステントリング410の近位頂点604から遠位であるが、ステントグラフト402の残りの部分に近位である。
【0049】
近位アンカーステントリング410は、近位アンカーステントリング410の近位頂点(クラウン)604と遠位頂点606とが交互になっている、ジグザグパターンのストラット602を含む。遠位頂点606は、ステントグラフト402のグラフト材408に取り付けられる。
【0050】
近位アンカーステントリング410は、アンカーピン(フック)608をさらに含む。より詳細には、1対のアンカーピン608は、各近位頂点604に隣接したストラット602と一体であり、その上に配置されている。この例によると、アンカーピン608は、遠位先端610、たとえば、鋭利な点を含み、それにより、図8を参照して以下に論じるように、アンカーピン608が、ステントグラフト402が展開される血管壁中に容易に貫通できるようになる。
【0051】
図示のように、近位アンカーステントリング410の近位頂点604は、マーロン316によって半径方向に拘束されている。より詳細には、各近位頂点604は、スピンドルピン124のまわりで延び、スピンドル本体122とそれぞれ対応するマーロン316との間のスペース128内に配置され、固定される。
【0052】
さらに、アンカーピン608は、スピンドル本体122とそれぞれ対応するマーロン316との間のスペース128内に配置され、半径方向に拘束されている。より詳細には、1対のアンカーピン608は、対応するマーロン316のそれぞれを用いて、半径方向に拘束されている。
【0053】
図7に示されるように、この例によると、マーロン316の曲率半径R1は、キャステレイテッドスリーブ112の曲率半径R2と等しい。マーロン316のこの曲率により、マーロン316の下にアンカーピン608を容易に保持できるようになる。アンカーピン608をさらに容易に保持できるようにするために、1つの例によると、アンカーピン608は、図5、図6および図7に示されるように、ステントグラフト402の部分的な展開段階中にマーロン316の下にあるままとなるように熱セッティングされる。
【0054】
反対に、ストラット602は拘束されておらず、解放されたときに、スリーブ部分の境界を越えてU字開口314を通って、大きな角度で枢動する。より詳細には、1対のストラット602が、各U字開口314と整列し、そこを通って延びる。このようにすると、近位アンカーステントリング410、すなわち、その遠位端は、キャステレイテッドスリーブ112の直径よりも大きな直径まで半径方向に拡張することができるようになる。
【0055】
近位頂点604のみを拘束しながら、近位アンカーステントリング410を半径方向に拡張できるようにすることによって、グラフト材408の近位端408Pおよび遠位頂点606を半径方向に拡張させて血管壁504に接触し係合させることが容易になる。グラフト材408の近位端408Pを血管壁504と係合させることによって、ステントグラフト402の正確な配置が達成される。たとえば、ステントグラフト送達システム100は、ステントグラフト402の展開を完了する前に、グラフト材408の近位端408Pが血管壁504に係合することが重要な胸部アプリケーションで使用される。
【0056】
近位部分502が部分的にのみ展開されて、近位アンカーステントリング410の近位頂点604が半径方向に拘束され、展開されていないとき、ステントグラフトの初期の最終前の(提案された)位置が観察され、必要に応じて、ステントグラフト402の初期配置が所望の配置を満たさない場合には、ステントグラフト402を再配置することができる。より詳細には、ステントグラフト402を再配置するために、プライマリシース404の後退が中止される。次いで、ステントグラフト送達システム100を移動させて、ステントグラフト402を再配置し、たとえば、ステントグラフト402が展開されている血管壁504を損傷する実質的なリスクなしに、ステントグラフト402を近位方向または遠位方向に回転または移動させる。
【0057】
さらに、ステントグラフト402の近位端403が固定され、したがって、ステントグラフト402の近位端403を固定し、プライマリシース404が後退される際に応力を受けたままになるので、1つの例では、遠位端405はプライマリシース404内で自由に移動し、プライマリシース404の後退中のステントグラフト402の結束が回避される。結束を回避することによって、後退中のプライマリシース404に対するステントグラフト402の摩擦抗力が最小になり、したがって、プライマリシース404をスムースに簡単に後退できるようになる。
【0058】
ステントグラフト402の近位端が適切に配置されると、図8を参照して以下にさらに詳細に論じるように、近位アンカーステントリング410の近位頂点604が解放され、展開されて、血管壁504内の定位置にステントグラフト402が固定される。
【0059】
図8は、ステントグラフト402の近位アンカーステントリング410を展開した後の、図5のステントグラフト送達システム100の部分断面図である。ここで図8を参照すると、テーパ状の先端102は、近位アンカーステントリング410の近位頂点604を露出し、解放するために、スピンドル120に対して前進する。近位頂点604(一般には、近位アンカーステントリング410)は、テーパ状の先端102のキャステレイテッドスリーブ112のマーロン316から解放されると、ステントグラフト402が展開されている血管壁504中へと自己拡張する。
【0060】
アンカーピン608は血管壁504中に貫通し、したがって、近位アンカーステントリング410を血管壁504に固定する。したがって、近位アンカーステントリング410を展開し、血管壁504に固定した後、プライマリシース404が完全に後退して、ステントグラフト402は、移動なしに完全に展開される。
【0061】
しかしながら、その他の例では、プライマリシース404は、近位アンカーステントリング410の近位頂点604を解放する前に完全に後退する。説明すると、図5に示された展開段階において部分的に後退するのではなく、近位アンカーステントリング410の近位頂点604を依然として半径方向に拘束しながら、プライマリシース404を完全に後退させる。
【0062】
さらに、上述のステントグラフト402は、自己拡張型ステントとして記載されている。その他の例によると、自己拡張型ステントグラフトとするかわりに、ステントグラフト送達システム100は、ステントグラフトを拡張および展開するために拡張される拡張部材、たとえば、バルーンを含む。
【0063】
図7を参照して上述されたように、1つの例では、マーロン316の曲率半径R1は、キャステレイテッドスリーブ112の曲率半径R2と等しい。1つの例によると、スピンドル120に対してキャステレイテッドスリーブ112が回転しないように、スパイン(図示せず)などの回転係止フィーチャが提供される。図9および図10を参照して以下に論じるように、その他の例によると、アンカーピンの保持を向上し、キャステレイテッドスリーブの偶発的な回転を防止するために、マーロンの曲率はキャステレイテッドスリーブの曲率よりも大きい。
【0064】
図9は、1つの例による、図6のステントグラフト送達システム100の領域と同様のステントグラフト送達システム100−1の領域の拡大斜視図である。図10は、1つの例による、マーロン316−1および1対のアンカーピン608−1の図9の矢印Xから見た部分端面図である。
【0065】
図9および図10のステントグラフト送達システム100−1のキャステレイテッドスリーブ112−1、スピンドル120−1、スピンドル本体122−1、スピンドルピン124−1、スペース128−1、キャステレーション部分304−1、近位端312−1、U字開口314−1、マーロン316−1、ステントグラフト402−1、近位アンカーステントリング410−1、ストラット602−1、近位頂点604−1およびアンカーピン608−1は、図6および図7のステントグラフト送達システム100のキャステレイテッドスリーブ112、スピンドル120、スピンドル本体122、スピンドルピン124、スペース128、キャステレーション部分304、近位端312、U字開口314、マーロン316、ステントグラフト402、近位アンカーステントリング410、ストラット602、近位頂点604およびアンカーピン608と同様であり、ステントグラフト送達システム100−1とステントグラフト送達システム100の顕著な差異のみを以下に示す。
【0066】
ここで、図9および図10を一緒に参照し、この例によると、マーロン316−1は、それらの長さに沿って可変の曲率半径を有する。より詳細には、マーロン316−1のキャステレーション部分304−1の遠位端312−1における第1の曲率半径R3は、スピンドルピン124−1の第2の曲率半径R1−1よりも小さく、スピンドルピン124−1から遠位にある。さらに、マーロン316−1の曲率半径は、キャステレーション部分304−1の近位端312−1における第1の曲率半径R3、すなわち最小曲率半径から、スピンドルピン124−1における第2の曲率半径R1−1(最大曲率半径)まで、徐々に増大する。言い換えると、マーロン316−1の近位端902は、きつく湾曲しており(最大曲率(最小曲率半径)を有しており)、徐々に拡がっていく、すなわち、近位端902からスピンドルピン124−1におけるキャステレイテッドスリーブ112の残りの湾曲まで遠位方向に、徐々に曲率半径が増大する(徐々に曲率が小さくなる)。
【0067】
きつく湾曲した近位端902をもつマーロン316−1を形成することによって、近位端902は、アンカーピン608−1のまわりを包み込み、したがって、マーロン316−1内にアンカーピン608−1を容易に保持できるようになり、さらに、スリーブ112−1がスピンドル120−1に関して回転しないようになる。
【0068】
図11は、1つの例による、図6のステントグラフト送達システム100の領域と同様のステントグラフト送達システム100−2の領域の拡大斜視図である。図11のステントグラフト送達システム100−2のキャステレイテッドスリーブ112−2、スピンドル120−2、スピンドル本体122−2、スピンドルピン124−2、スペース128−2、キャステレーション部分304−2、近位端312−2、U字開口314−2、マーロン316−2、ステントグラフト402−2、近位アンカーステントリング410−2、ストラット602−2および近位頂点604−2は、図6のステントグラフト送達システム100のキャステレイテッドスリーブ112、スピンドル120、スピンドル本体122、スピンドルピン124、スペース128、キャステレーション部分304、近位端312、U字開口314、マーロン316、ステントグラフト402、近位アンカーステントリング410、ストラット602および近位頂点604と同様であり、ステントグラフト送達システム100−2とステントグラフト送達システム100の顕著な差異のみを以下に示す。
【0069】
この例によると、近位アンカーステントリング410−2は、アンカーピンなしに、すなわち、図6に示されたようなアンカーピン608と同様のアンカーピンなしに形成される。
【0070】
本出願は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる、2006年11月14日に出願された「DELIVERY SYSTEM FOR STENT−GRAFT WITH ANCHORING PINS」と題するMitchellらの米国特許出願公開第2008−0114442号、および2006年11月14日に出願された「STENT−GRAFT WITH ANCHORING PINS」と題するMitchellらの米国特許出願公開第2008−0114443号に関する。
【0071】
図面および上記説明は、本発明による諸実施形態の例を示すものである。本明細書に明示されているか否かにかかわらず、構造、寸法および使用材料における数多くの変形形態が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントグラフト送達システムであって、
キャステレイテッドスリーブを備えるテーパ状の先端を備え、
該キャステレイテッドスリーブが、U字開口とマーロンとを有するキャステレーション部分を備えている、
ことを特徴とするステントグラフト送達システム。
【請求項2】
前記マーロンが、前記U字開口によって互いから分離されている、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項3】
前記U字開口が、前記キャステレイテッドスリーブ内に、
前記マーロン間で開口している、請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項4】
前記U字開口の第1のU字開口が、前記マーロンの第1のマーロンを前記マーロンの第2のマーロンから分離する、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項5】
前記第1のU字開口が、前記キャステレイテッドスリーブの外周縁部と、前記キャステレイテッドスリーブの第1の長手方向縁部と、前記キャステレイテッドスリーブの第2の長手方向縁部とによって規定される、
請求項4に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項6】
前記外周縁部が、前記キャステレイテッドスリーブの外周に沿って、前記第1の長手方向縁部と前記第2の長手方向縁部との間に延びる、
請求項5に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項7】
前記第1の長手方向縁部が、前記キャステレーション部分の近位端と前記外周縁部との間に延び、前記第2の長手方向縁部が、前記キャステレーション部分の前記近位端と前記外周縁部との間に延びる、
請求項6に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項8】
前記第1のマーロンが、前記キャステレイテッドスリーブの外周縁部と、前記キャステレイテッドスリーブの第1の長手方向縁部と、前記キャステレイテッドスリーブの第2の長手方向縁部とによって規定される、
請求項4に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項9】
前記外周縁部が、前記キャステレイテッドスリーブの外周に沿って、前記第1の長手方向縁部と前記第2の長手方向縁部との間に延び、前記外周縁部が、前記キャステレーション部分の近位端にある、
請求項8に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項10】
前記第1の長手方向縁部が、前記外周縁部と前記キャステレーション部分の遠位端との間に延び、前記第2の長手方向縁部が、前記外周縁部と前記キャステレーション部分の前記遠位端との間に延びる、
請求項9に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項11】
前記マーロンの曲率半径が、前記キャステレイテッドスリーブの曲率半径と等しい、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項12】
前記マーロンが、前記マーロンの近位端において最小曲率半径を有する、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項13】
前記マーロンの曲率半径が、前記近位端から遠位方向に徐々に増大する、
請求項12に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項14】
前記キャステレイテッドスリーブが、円筒壁部分をさらに備え、前記キャステレーション部分の遠位端が、前記円筒壁部分の近位端に接続される、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項15】
前記テーパ状の先端が、前記円筒壁部分の遠位端に接続されたプライマリシース当接表面をさらに備える、
請求項14に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項16】
ステントグラフト送達システムにおいて、
キャステレイテッドスリーブを備えるテーパ状の先端を備え、
前記キャステレイテッドスリーブが、U字開口とマーロンを有するキャステレーション部分と、スピンドル本体とスピンドルピン有するスピンドルとを備え、
前記スピンドルピンの各スピンドルピンが、前記スピンドル本体から前記マーロンのそれぞれ対応するマーロンまで延びる、
ことを特徴とするステントグラフト送達システム。
【請求項17】
近位頂点を備える近位アンカーステントリングを備えるテントグラフトをさらに備え、前記近位頂点が、前記マーロンによって半径方向に拘束される、
請求項16に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項18】
前記近位頂点の各近位頂点が、前記スピンドルピンのそれぞれ対応するスピンドルピンのまわりで延びる、
請求項17に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項19】
前記近位頂点が、前記スピンドル本体と前記マーロンとの間のスペース内に固定される、
請求項18に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項20】
前記近位アンカーステントリングが、
遠位頂点と、前記近位頂点と前記遠位頂点との間に延びるストラットとをさらに備え、
1対の前記ストラットが、前記U字開口のうちのそれぞれ対応するU字開口と整列する、
請求項17に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項21】
前記ステントグラフトが、前記遠位頂点に取り付けられたグラフト材をさらに備える、
請求項20に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項22】
前記ステントグラフトが、前記近位アンカーステントリングの各近位頂点に隣接する1対のアンカーピンをさらに備え、前記アンカーピンが、前記マーロンによって半径方向に拘束される、
請求項17に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項23】
前記マーロンの近位端が、前記アンカーピンを容易に保持できるようにするために、前記マーロンの最大曲率を有する、
請求項22に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項24】
ステントグラフトを展開する方法であって、
前記ステントグラフトの近位アンカーステントリングの近位頂点を、先端のキャステレイテッドスリーブのマーロンとスピンドルとの間のスペース内で半径方向に拘束することであって、前記スピンドルが、スピンドルピンを備え、前記近位頂点が、前記スピンドルピンのまわりで延びる、拘束することと、
前記ステントグラフトのグラフト材をプライマリシース内で半径方向に拘束することであって、前記グラフト材の近位端が、前記近位アンカーステントリングの遠位頂点に取り付けられ、前記近位アンカーステントリングが、前記近位頂点と前記遠位頂点との間に延びるストラットをさらに備える、拘束することと、
前記グラフト材の前記近位端および前記近位アンカーステントリングの前記遠位頂点を半径方向に拡張できるようにするために前記プライマリシースを後退することであって、前記ストラットが、前記キャステレイテッドスリーブのU字開口を通って延びる、後退することと、
前記近位頂点を展開するために前記先端を前進させることとを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記近位頂点が展開すると、前記近位アンカーステントリングのアンカーピンが血管壁中に貫通する、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記前進させることが、前記スピンドルピンを露出させるためにキャステレイテッドスリーブを移動させることを含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記スピンドルピンの露出により、前記近位アンカーステントリングの前記近位頂点が解放される、
請求項26に記載の方法。
【請求項1】
ステントグラフト送達システムであって、
キャステレイテッドスリーブを備えるテーパ状の先端を備え、
該キャステレイテッドスリーブが、U字開口とマーロンとを有するキャステレーション部分を備えている、
ことを特徴とするステントグラフト送達システム。
【請求項2】
前記マーロンが、前記U字開口によって互いから分離されている、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項3】
前記U字開口が、前記キャステレイテッドスリーブ内に、
前記マーロン間で開口している、請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項4】
前記U字開口の第1のU字開口が、前記マーロンの第1のマーロンを前記マーロンの第2のマーロンから分離する、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項5】
前記第1のU字開口が、前記キャステレイテッドスリーブの外周縁部と、前記キャステレイテッドスリーブの第1の長手方向縁部と、前記キャステレイテッドスリーブの第2の長手方向縁部とによって規定される、
請求項4に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項6】
前記外周縁部が、前記キャステレイテッドスリーブの外周に沿って、前記第1の長手方向縁部と前記第2の長手方向縁部との間に延びる、
請求項5に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項7】
前記第1の長手方向縁部が、前記キャステレーション部分の近位端と前記外周縁部との間に延び、前記第2の長手方向縁部が、前記キャステレーション部分の前記近位端と前記外周縁部との間に延びる、
請求項6に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項8】
前記第1のマーロンが、前記キャステレイテッドスリーブの外周縁部と、前記キャステレイテッドスリーブの第1の長手方向縁部と、前記キャステレイテッドスリーブの第2の長手方向縁部とによって規定される、
請求項4に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項9】
前記外周縁部が、前記キャステレイテッドスリーブの外周に沿って、前記第1の長手方向縁部と前記第2の長手方向縁部との間に延び、前記外周縁部が、前記キャステレーション部分の近位端にある、
請求項8に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項10】
前記第1の長手方向縁部が、前記外周縁部と前記キャステレーション部分の遠位端との間に延び、前記第2の長手方向縁部が、前記外周縁部と前記キャステレーション部分の前記遠位端との間に延びる、
請求項9に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項11】
前記マーロンの曲率半径が、前記キャステレイテッドスリーブの曲率半径と等しい、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項12】
前記マーロンが、前記マーロンの近位端において最小曲率半径を有する、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項13】
前記マーロンの曲率半径が、前記近位端から遠位方向に徐々に増大する、
請求項12に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項14】
前記キャステレイテッドスリーブが、円筒壁部分をさらに備え、前記キャステレーション部分の遠位端が、前記円筒壁部分の近位端に接続される、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項15】
前記テーパ状の先端が、前記円筒壁部分の遠位端に接続されたプライマリシース当接表面をさらに備える、
請求項14に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項16】
ステントグラフト送達システムにおいて、
キャステレイテッドスリーブを備えるテーパ状の先端を備え、
前記キャステレイテッドスリーブが、U字開口とマーロンを有するキャステレーション部分と、スピンドル本体とスピンドルピン有するスピンドルとを備え、
前記スピンドルピンの各スピンドルピンが、前記スピンドル本体から前記マーロンのそれぞれ対応するマーロンまで延びる、
ことを特徴とするステントグラフト送達システム。
【請求項17】
近位頂点を備える近位アンカーステントリングを備えるテントグラフトをさらに備え、前記近位頂点が、前記マーロンによって半径方向に拘束される、
請求項16に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項18】
前記近位頂点の各近位頂点が、前記スピンドルピンのそれぞれ対応するスピンドルピンのまわりで延びる、
請求項17に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項19】
前記近位頂点が、前記スピンドル本体と前記マーロンとの間のスペース内に固定される、
請求項18に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項20】
前記近位アンカーステントリングが、
遠位頂点と、前記近位頂点と前記遠位頂点との間に延びるストラットとをさらに備え、
1対の前記ストラットが、前記U字開口のうちのそれぞれ対応するU字開口と整列する、
請求項17に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項21】
前記ステントグラフトが、前記遠位頂点に取り付けられたグラフト材をさらに備える、
請求項20に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項22】
前記ステントグラフトが、前記近位アンカーステントリングの各近位頂点に隣接する1対のアンカーピンをさらに備え、前記アンカーピンが、前記マーロンによって半径方向に拘束される、
請求項17に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項23】
前記マーロンの近位端が、前記アンカーピンを容易に保持できるようにするために、前記マーロンの最大曲率を有する、
請求項22に記載のステントグラフト送達システム。
【請求項24】
ステントグラフトを展開する方法であって、
前記ステントグラフトの近位アンカーステントリングの近位頂点を、先端のキャステレイテッドスリーブのマーロンとスピンドルとの間のスペース内で半径方向に拘束することであって、前記スピンドルが、スピンドルピンを備え、前記近位頂点が、前記スピンドルピンのまわりで延びる、拘束することと、
前記ステントグラフトのグラフト材をプライマリシース内で半径方向に拘束することであって、前記グラフト材の近位端が、前記近位アンカーステントリングの遠位頂点に取り付けられ、前記近位アンカーステントリングが、前記近位頂点と前記遠位頂点との間に延びるストラットをさらに備える、拘束することと、
前記グラフト材の前記近位端および前記近位アンカーステントリングの前記遠位頂点を半径方向に拡張できるようにするために前記プライマリシースを後退することであって、前記ストラットが、前記キャステレイテッドスリーブのU字開口を通って延びる、後退することと、
前記近位頂点を展開するために前記先端を前進させることとを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記近位頂点が展開すると、前記近位アンカーステントリングのアンカーピンが血管壁中に貫通する、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記前進させることが、前記スピンドルピンを露出させるためにキャステレイテッドスリーブを移動させることを含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記スピンドルピンの露出により、前記近位アンカーステントリングの前記近位頂点が解放される、
請求項26に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−523908(P2012−523908A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506059(P2012−506059)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/029495
【国際公開番号】WO2010/120553
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511126109)メドトロニック ヴァスキュラー インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/029495
【国際公開番号】WO2010/120553
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511126109)メドトロニック ヴァスキュラー インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
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