説明

キャップ付き容器

【課題】子供にとって開蓋の方法がわかりにくく、しかも、構造が簡単で、損傷したり、破損したりしにくく、小形化を図ることとのできるキャップ付き容器を提供する。
【解決手段】容器1とキャップ11と弾性シール材21を備え、キャップ11が、閉蓋状態で上記口部4に螺着される内側キャップ12と、外側キャップ13とで構成され、これら内外両キャップ12,13の天井壁12a,13aの一方に下側リブ16が形成され、他方に上側リブ18が形成され、弾性シール材21の上面に、内側キャップ12の天井壁12aの貫通孔15を通って内側キャップ12上に突出する凸部23が突出成形され、この凸部23の上面で外側キャップ13の天井壁13aが支受され、上記閉蓋状態において上記凸部23の弾性力に抗して外側キャップ13を下降させることで上記両リブ16,18を係合させて外側キャップ13の回転に内側キャップ12をつれ回りさせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子供が誤ってキャップを開けて容器内の薬液等を飲んでしまうという事故等を防ぐようにした誤飲防止用のキャップ付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の液体,錠剤等を収容する容器と、この容器の口部にねじ止めされるキャップとからなるキャップ付き容器が多く出回っているが、このものは、容器の口部にキャップをねじ止めしているだけであるため、子供でも簡単に開蓋することができる。したがって、容器内に人体に有害な薬液等が収容されている場合にも、子供が誤って開蓋して容器内の薬液等を飲んでしまうという事故等が発生する恐れがある。
【0003】
そこで、このような事故等を防ぐため、例えば、図11に示すような容器の安全キャップが提案されている。この安全キャップは、外キャップ41と、この外キャップ41内に回転自在および上下動自在に収容される内キャップ42とを備えており、上記外キャップ41の上壁41aの外周縁部に6個の突子43を突設するとともに、内周部にラチェット機構44の一方を構成する4個の固定爪45を突設し、上記内キャップ42の円筒体42aの上端面に6個のキー46を突設するとともに、中壁42bに、ラチェット機構44の他方を構成する4個の制止爪47を突設している。また、これら各制止爪47は、下方への押圧力を与えると深く屈曲しその押圧力を解除すると元の状態に復帰する弾力を備えている。
【0004】
そして、上記の安全キャップで容器口を閉蓋する場合には、通常どおり、外キャップ41を時計回り方向に回転する。このとき、上記ラチェット機構44の固定爪45とキー46との噛み合いにより、内外両キャップ41,42が一体化されており、容器口に内キャップ42をねじ止めすることができる。一方、開蓋する場合には、単に外キャップ41を反時計回り方向に回転してもラチェット機構44により空回りするだけであるため、外キャップ41を下側に押し付けて突子43とキー46とを係合させ、この係合により内外両キャップ41,42を一体化したのち外キャップ41を反時計回り方向に回転することを行う(例えば、特許文献1参照)。図において、48は上記容器口の雄ねじ(図示せず)に螺合する雌ねじで、49はパッキングである。
【特許文献1】特開平10−152155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の安全キャップでは、外キャップ41に6個の突子43と、ラチェット機構44の一方を構成する4個の固定爪45を突設し、内キャップ42に、6個のキー46と、ラチェット機構44の他方を構成する4個の制止爪47を突設しているため、構造が複雑であり、製造コストが高価になる。しかも、上記のとおり、ラチェット機構44が複雑であるため、開蓋操作中に、ラチェット機構44を構成する固定爪45,制止爪47に押圧力が作用すると、固定爪45,制止爪47(特に、上記押圧力により深く屈曲する制止爪47)が損傷したり、破損したりしやすい。しかも、外キャップ41の上壁41aと内キャップ42の中壁42bとの間に、突子43,キー46を設けているだけでなく、上記のラチェット機構44をも設けており、このラチェット機構44が上下方向に長く形成されているため、上記の安全キャップの高さが高くなり、その分容器全体として大形化する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、子供にとって開蓋の方法がわかりにくく、しかも、構造が簡単で、損傷したり、破損したりしにくく、小形化を図ることのできるキャップ付き容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のキャップ付き容器は、容器と、この容器の口部に螺着されるキャップと、上記口部の上端開口部を塞いだ状態で上記口部とキャップとの間に配設される弾性シール材とを備え、上記キャップが、閉蓋状態で上記口部に螺着される内側キャップと、この内側キャップの外周にその周方向に相対回転自在でかつ上下動自在に取着される外側キャップとで構成され、上記外側キャップの天井壁および内側キャップの天井壁の一方に、係合部が形成され、他方に、上記係合部に係脱自在に係合しこの係合状態で両キャップがその周方向に相対回転不能となる被係合部が形成され、上記内側キャップの天井壁に貫通孔が穿設され、上記口部と内側キャップとの間に配設された弾性シール材の上面に、上記貫通孔を通って内側キャップ上に突出する凸部が一体的に突出成形され、この凸部の上面で外側キャップの天井壁が、上記両係合部の間に所定の隙間を設けた状態で支受され、この閉蓋状態において上記弾性シール材の凸部の弾性力に抗して外側キャップを下降させることにより上記両係合部を係合させて外側キャップの回転に内側キャップをつれ回りさせ開蓋可能に構成したという構成をとる。
【発明の効果】
【0008】
すなわち、本発明のキャップ付き容器は、容器と、内側キャップおよび外側キャップで構成されたキャップと、それ自体の上面から凸部が一体的に突出成形された弾性シール材とを備えている。また、上記外側キャップの天井壁および内側キャップの天井壁の一方に係合部を形成するとともに、他方に被係合部を形成し、これら両係合部を係合させた係合状態では、両キャップがその周方向に相対回転不能となるようにしている。また、上記弾性シール材の凸部は、上記内側キャップの天井壁の貫通孔を通って内側キャップ上に突出しており、閉蓋状態では、上記凸部の上面で外側キャップの天井壁は、上記両係合部の間に所定の隙間を設けた非係合状態で支受されている。このような閉蓋状態において、外側キャップを下方に押圧し、この押圧で弾性シール材の凸部の弾性力に抗して外側キャップを下降させることにより上記両係合部を係合させ、この係合状態で外側キャップを開蓋方向に回転させると、内側キャップがつれ回りして開蓋方向に回転し、これにより開蓋することができる。
【0009】
上記のように、本発明のキャップ付き容器では、開蓋する場合には、キャップを下方に押圧したのち所定の方向に回転させなければならず、子供にとって開蓋の方法がわかりにくい。しかも、キャップに両係合部を形成し、弾性シール材に凸部を形成しているだけであるため、構造が簡単であり、製造コストが安価になる。しかも、開蓋操作は、キャップを下方に押圧して弾性シール材の凸部をその弾性力に抗して押し込んだのち、キャップを回転させるだけで行えるため、弾性シール材の凸部やキャップに無理な外力が作用せず、弾性シール材の凸部やキャップが損傷したり、破損したりすることがない。しかも、上記内外両キャップの天井壁間に両係合部を形成しているだけであるため、上記両天井壁間の高さを低く抑えることができ、容器全体として小形化する。
【0010】
また、上記外側キャップの天井壁の下面に形成された係合部が、上記外側キャップの天井壁の下面外周部からその周方向に沿って所定の間隔で下向きに突設された複数の上側凸部であり、上記内側キャップの天井壁の上面に形成された被係合部が、上記内側キャップの天井壁の上面外周部の、上記各上側凸部間の隙間に対応する部分から上向きに突設された複数の下側凸部である場合には、外側キャップの天井壁を下方に押圧するだけで、上記両係合部の係脱が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0012】
図1は本発明のキャップ付き容器の一実施の形態を示している。図において、1は合成樹脂製の容器であり、内部に薬液等の内容物(図示せず)を収容する胴部2と、この胴部2の上端開口部から上方に向かって縮径状に延びる肩部3と、この肩部3の上端開口部から上方に向かって略円筒状に延びる口部4とを備えている。この口部4には、図2に示すように、その外周面に第1ねじ部5が間欠状に刻設されている。
【0013】
11はキャップ(図1参照)であり、略有天円筒状に形成された内側キャップ12および外側キャップ13(ともに合成樹脂製である)を備えた内外二重キャップ構造からなっている。上記内側キャップ12には、図3に示すように、その内周面に、上記第1ねじ部5に螺合する第2ねじ部14が間欠状に刻設されている。また、上記内側キャップ12には、図4および図5に示すように、その天井壁12aの中央部に、後述する弾性シール材21の凸部23を挿通しうる貫通孔15が穿設されており、上記天井壁12aの外周縁部上面から、その周方向に沿って所定の間隔で立設される複数個(この実施の形態では、8個)の下側リブ(係合部)16が突設されている。また、上記内側キャップ12には、その周側壁12bの下部外周面に、上記外側キャップ13の円環状凹溝19にその周方向に回動自在でかつ上下動自在に係合する円環状凸部17が突設されている。
【0014】
上記外側キャップ13には、図6および図7に示すように、その天井壁13aの外周縁部下面から、上記各下側リブ16間の隙間に対応する部分に、上記各隙間に着脱自在に係合して上記周方向に相対回動不能に係合する複数個(この実施の形態では、8個)の上側リブ(被係合部)18が垂設されている。また、上記外側キャップ13には、その周側壁13bの下部内周面に、上記円環状凸部17にその周方向に回動自在でかつ上下動自在に係合する円環状凹溝19が形成されている(図6参照)。
【0015】
21はシリコンゴム製の弾性シール材であり、図8および図9に示すように、円板部22と、この円板部22の中央部上面から一体的に突出成形される凸部23とからなっている。この凸部23は、その上半部分が円錐台形状に形成されていとともに、その下側部分が、上記内側キャップ12の貫通孔15に挿通される円筒体に形成されている。
【0016】
上記の構成において、容器1の口部4にキャップ11を閉蓋した状態では、上記両ねじ部5,14は螺合している。また、外側キャップ13の天井壁13aは弾性シート材21の凸部23の弾性力により支受されており、その状態で上記各リブ16,18は係合していない。また、内側キャップ12の円環状凸部17の下面と外側キャップ13の円環状凹溝19の下面とが当接している(図1参照)。
【0017】
この閉蓋状態からキャップ11を開蓋する場合には、まず、外側キャップ13の天井壁13aを下方に押圧し、この押圧により弾性シート材21の凸部23の弾性力に抗して外側キャップ13を押し下げて上記各リブ16,18を係合させ(図10参照)、つぎに、外側キャップ13を反時計回り方向に回転させることを行う。これにより、内側キャップ12がつれ回りして反時計回り方向に回転し、キャップ11が上昇して容器1の口部4から取り外される。このとき、内側キャップ12の円環状凸部17の上面と外側キャップ13の円環状凹溝19の上面とが当接している。この開蓋ののち、外側キャップ13の押圧を止めると、弾性シート材21の凸部23の弾性力により外側キャップ13が押し上げられ、上記各リブ16,18の係合が外れる。この状態では、外側キャップ13を時計回り方向もしくは反時計回り方向に回転させても空回りするだけである。
【0018】
一方、キャップ11を閉蓋する場合には、まず、容器1の口部4にキャップ11を外嵌状に挿入し、つきに、外側キャップ13の天井壁13aを下側に押圧して上記各リブ16,18を係合させたのち、外側キャップ13を時計回り方向に回転させることを行う。
【0019】
このように、上記実施の形態では、開蓋する場合には、外側キャップ13を下方に押圧したのち所定の方向に回転させなければならず、子供にとって開蓋の方法がわかりにくい。しかも、キャップ11に各リブ16,18を形成し、弾性シール材21に凸部23を形成しているだけであるため、構造が簡単であり、製造コストが安価になる。しかも、開蓋操作は、外側キャップ13を下方に押圧して弾性シール材21の凸部23をその弾性力に抗して押し込んだのち、外側キャップ13を回転させるだけで行えるため、弾性シール材21の凸部23やキャップ11の各リブ16,18に無理な外力が作用せず、これらが損傷したり、破損したりしない。しかも、上記内外両キャップ12,13の天井壁12a,13a間に各リブ16,18および上記凸部23の上半部分を設けているだけであるため、上記両天井壁12a,13a間の幅を小さく抑えることができ、容器1全体として小形化する。
【0020】
なお、上記実施の形態では、開蓋時に、内外両キャップ12,13を一体的に回転させるために、内側キャップ12の天井壁12aに複数個の下側リブ16を突設し、外側キャップ13の天井壁13aに複数個の上側リブ18を垂設しているが、これに限定するものではなく、内外両キャップ12,13を一体的に回転させることができる係脱自在な構造,形状であれば、どのような構造,形状でもよい。
【0021】
また、上記実施の形態では、弾性シール材21を構成する弾性材料はシリコンゴムであるが、各種の弾性材料を用いることができる。ただし、子供等が簡単に(小さな力で)押し下げることができる弾性材料は、好ましくない。また、上記弾性シール材21の凸部23の、内側キャップ12の天井壁12aから突出する突出長さは、上記各リブ16,18の寸法,弾性シール材21を構成する弾性材料の種類等により適宜設定されるが、通常は1〜5mmの範囲内に設定され、より好ましくは、2〜3mmの範囲内に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のキャップ付き容器の一実施の形態を示す要部の断面図である。
【図2】容器の口部を示す断面図である。
【図3】内側キャップの断面図である。
【図4】上記内側キャップの平面図である。
【図5】上記内側キャップの斜視図である。
【図6】外側キャップの断面図である。
【図7】上記外側キャップの平面図である。
【図8】弾性シール材の断面図である。
【図9】上記弾性シール材の斜視図である。
【図10】上記キャップ付き容器の作用を示す断面図である。
【図11】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 容器
4 口部
11 キャップ
12 内側キャップ
12a 天井壁
13 外側キャップ
13a 天井壁
15 貫通孔
16 下側リブ
18 上側リブ
21 弾性シール材
23 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、この容器の口部に螺着されるキャップと、上記口部の上端開口部を塞いだ状態で上記口部とキャップとの間に配設される弾性シール材とを備え、上記キャップが、閉蓋状態で上記口部に螺着される内側キャップと、この内側キャップの外周にその周方向に相対回転自在でかつ上下動自在に取着される外側キャップとで構成され、上記外側キャップの天井壁および内側キャップの天井壁の一方に、係合部が形成され、他方に、上記係合部に係脱自在に係合しこの係合状態で両キャップがその周方向に相対回転不能となる被係合部が形成され、上記内側キャップの天井壁に貫通孔が穿設され、上記口部と内側キャップとの間に配設された弾性シール材の上面に、上記貫通孔を通って内側キャップ上に突出する凸部が一体的に突出成形され、この凸部の上面で外側キャップの天井壁が、上記両係合部の間に所定の隙間を設けた状態で支受され、この閉蓋状態において上記弾性シール材の凸部の弾性力に抗して外側キャップを下降させることにより上記両係合部を係合させて外側キャップの回転に内側キャップをつれ回りさせ開蓋可能に構成したことを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項2】
上記外側キャップの天井壁の下面に形成された係合部が、上記外側キャップの天井壁の下面外周部からその周方向に沿って所定の間隔で下向きに突設された複数の上側凸部であり、上記内側キャップの天井壁の上面に形成された被係合部が、上記内側キャップの天井壁の上面外周部の、上記各上側凸部間の隙間に対応する部分から上向きに突設された複数の下側凸部である請求項1記載のキャップ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−30802(P2008−30802A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206322(P2006−206322)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】