説明

キャップ

【課題】 周縁の薄肉弱化部を破断して封止板を除去した後に形成される注出口周囲の破断面がケバ立たず、滑らかな注出口を形成するキャップを提供すること。
【解決手段】 容器口部に装着されるキャップであって、内容物を案内する注出筒の下部に容器内を密閉する隔壁が連設され、隔壁の注出筒より内方部位には、薄肉弱化部を介して注出口を形成する封止板が設けられ、封止板には、一方の周縁近傍に設けられた支柱を介して上方に設けられたプルリングと、支柱と反対側の他方の周縁に所定円周角範囲にわたる肉厚部とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体内容物等を充填した容器の口部に装着されるキャップ、特に周縁に薄肉弱化部が設けられた封止板が破断され除去されることによって注出口が形成されるキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内容液を充填した容器の口部に装着され、その後容器内を密閉する隔壁に薄肉弱化部を介して設けられた封止板を、抜栓時にプルリングを引き上げることで隔壁から切り離して除去し、内容液を注出する注出口を形成するキャップは、従来からよく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−261051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のプラスチックキャップのような従来のキャップにおける抜栓では、プルリングを上方に引っ張ると、まずプルリングの支柱が設けられている側の封止板が上方に引き上げられてプルリング側の薄肉弱化部に剪断力が働き破断が始まる。
薄肉弱化部の破断が進むと、切り離された封止板が次第に上方に折れ曲がっていき、封止板が完全に切り離される直前には、わずかに連結している薄肉弱化部付近まで上方に折れ曲がるとともに、プルリングを引っ張る力は破断線に対して平面視で垂直に働くようになるので、薄肉弱化部に働く力は、剪断力よりも引っ張り力が強くなる。
【0005】
その結果として、封止板が切り離された注出口の破断面に、プルリングの支柱の反対側を中心として引っ張り力によって生じたひげ状のケバ立ちが発生する。
とくに封止板の周縁が円形をなしているキャップでは、封止板が完全に切り離される直前の引っ張り力が働く周縁の長さが、切り離し方向に細長いキャップより長いため、ケバ立ちが目立って多かった。
そのため、注出口に唇をあて内容液を飲むときに、違和感を生じるという問題があった。
また、見た目にも好ましくないという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、周縁の薄肉弱化部を破断して封止板を除去した後に形成される注出口周囲の破断面がケバ立たず、滑らかな注出口を形成するキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、キャップとして、容器口部に装着されるキャップであって、内容物を案内する注出筒の下部に容器内を密閉する隔壁が連設され、隔壁の注出筒より内方部位には、薄肉弱化部を介して注出口を形成する封止板が設けられ、封止板には、一方の周縁近傍に設けられた支柱を介して上方に設けられたプルリングと、支柱と反対側の他方の周縁に所定円周角範囲にわたる肉厚部とを備えたことを特徴とする構成を採用する。
【0008】
本願発明のキャップの具体的実施形態として、肉厚部は、封止板の上面に突出して設けられていることを特徴とする構成、また、薄肉弱化部の幅は、肉厚部に隣接する部位で小さく、肉厚部と反対側のプルリングの支柱側に向けて漸次大きくなっていることを特徴とする構成、さらに、封止板の周縁は円形をなしていることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本願発明のキャップは、封止板に、プルリングの支柱と反対側の周縁の所定円周角範囲にわたって肉厚部を備えているので、抜栓時に薄肉弱化部の破断が進んで封止板が切り離される直前になっても、封止板が肉厚部によって補強されているため折れ曲がりにくく、プルリングが上方に引っ張られることによって薄肉弱化部に働く力は、最後まで剪断力が働き、引っ張り力によって材料が延びて生じるひげ状のケバ立ちを防止することができる。
【0010】
また、薄肉弱化部に隣接する封止板の周縁上面に突出する肉厚部を設ければ、封止板はより折れ曲がりにくくなりケバ立ちを防ぐことができる。
肉厚部を設けることによって、ケバ立ちが多かった封止板の周縁が円形をなすキャップにおいても、ケバ立ちを防ぐことができた。
さらに、薄肉弱化部の幅を肉厚部に隣接する部位で小さく、肉厚部と反対側のプルリング側に向けて漸次大きくすれば、プルリングの反対側、すなわち完全に切り離される寸前の封止板が連結する薄肉弱化部の幅が小さいので、薄肉弱化部の伸び変形が小さく、折れ曲がり変形が小さくなり引っ張り力が抑制され、ケバ立ちを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明のキャップの閉蓋状態を示す断面側面図である。
【図2】本願発明のキャップの開蓋状態を示す図で,(a)は上面図、(b)は断面側面図[図(a)のX−X断面図]である。
【図3】図2(b)に示すキャップの要部拡大図であり、(a)は図2(b)における要部a、(b)は図2(b)における要部bの拡大図である。
【図4】本願発明のキャップを閉蓋する過程において、上蓋が容器側に傾いた状態を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明のキャップについて、実施例を示した図面を参照して説明する。
【実施例】
【0013】
図1〜4において、Aは容器本体に打栓されるキャップ本体、Bはキャップ本体AにヒンジCを介して一体成形された上蓋、Dは容器本体である。
容器本体Dの口部1外周には、係合突条2が設けられている。
【0014】
図1、2に示すように、キャップ本体Aは、容器内を密閉する隔壁3と、隔壁3の周縁に立設される注出筒4と、注出筒4の外周に連設される上壁5と、上壁5から垂設される係合筒部6と、係合筒部6の外周に一定の間隔をおいて連設され、上端外周にヒンジCを連設する外周筒部7とからなっている。
【0015】
隔壁3には、注出筒4の内方部位に薄肉弱化部8を介して円形の封止板9が設けられ、封止板9は抜栓時に隔壁3から切り離されて除去され、注出口を開口する。
封止板9の上面には、抜栓時に引上げるプルリング10が支柱11を介してヒンジC側の周縁近傍に設けられ、ヒンジCの反対側、すなわち支柱11と反対側の周縁には肉厚部12が設けられている。
肉厚部12は、図2(a)に示すように、プルリング10の支柱11の反対側位置を中心に所定の円周角αにわたって形成されている。
【0016】
薄肉弱化部8は、図2(a)および図3(a)、図3(b)に示すように、ヒンジCと反対側の肉厚部12に隣接する部位の幅が小さく、支柱11が設けられているヒンジC側の幅が大きくなっている。
本実施例では、薄肉弱化部8の幅が、ヒンジCの反対側で最も小さいeであり、ヒンジC側に向けて漸次大きくなり、ヒンジC側の支柱11に最も近い部位で2eの最大幅となるように形成され、薄肉弱化部8の内周円が外周円に対してeだけ偏心して形成されている。
【0017】
上壁5は注出筒4の中程の高さの外周に連設し、上壁5の下部は係合筒部6の内周および注出筒4の下部外周とともに、容器本体Dの口部1を嵌合する嵌合溝を形成し、該嵌合溝に口部1が嵌合するとともに、係合突条2が係合筒部6に係合するようになっている。
上壁5の上部には、上蓋Bと係合する蓋係合部13が立設され、蓋係合部13の外周の上端には拡径した膨出部14が形成され、その下方には膨出部14より径の小さい縮径部15が連続して形成されている。
また、係合筒部6の下端外周と外周筒部7の下端内周は、ヒンジCの反対側に設けられた連結片16と、間隔をおいて複数配設された破断可能な弱化片17とを介して連設されている。
【0018】
上蓋Bは、図1、2に示すように、頂壁20と、頂壁20の周縁に垂設された側壁21とからなり、頂壁20下面には、キャップ本体Aの注出筒4の内周に挿入される内筒22が垂設されている。
側壁21には、内周下端に、キャップ本体Aの係合筒部6の蓋係合部13と係合する係合凹部23が設けられており、外周下端の所定の位置にヒンジCが連設されている。
打栓時に蓋係合部13の上端面と当接する係合凹部23の上面には、キャップの内外を連通する空気通路24が所定箇所に配設されている。
【0019】
内筒22は、外周面に注出筒4の内周面に摺接して密封する突出環25が全周にわたって形成されるとともに、ヒンジC側の略半円周にわたって突出環5よりもさらに下方に垂設され、ヒンジC側、すなわちプルリング10の支柱11の背後で最も低い下端部を形成する受け部26が設けられている。
【0020】
ヒンジCには、キャップ本体Aの外周筒部7の外周上端の所定位置と、上蓋Bの側壁21の外周下端の所定位置とを連結するヒンジ片30が両端に設けられ、ヒンジCの中央部位には、上蓋Bの側壁21の外周下部に鉤状に突出する保持爪31と、キャップ本体Aの外周筒部7の外周上部に、開蓋時に上蓋Bの所定開度で保持爪31に係合する保持突条32とが設けられている。
【0021】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例のキャップは、図1のように、閉蓋状態で、係合筒部6と外周筒部7との間に形成される嵌合溝が容器本体Dの口部1にあてがわれ、上蓋Bの上から打栓されて係合突条2に嵌合し、容器本体Dの口部1に装着される。
本実施例のキャップを抜栓するには、上蓋Bを開きプルリング10を上方に引っ張る。
プルリング10が引き上げられると、プルリング10と一体の支柱11が設けられている封止板9のヒンジC側が上方に引き上げられて、注出筒4の下部に連設する隔壁3との間の薄肉弱化部8に剪断力が働き、薄肉弱化部8の破断が始まる。
【0022】
薄肉弱化部8の破断が進み、封止板9が隔壁3から切り離された部分が所定の大きさ(長さ)を越えると、切り離された封止板9がプルリング10を引っ張る力により次第に上方に折れ曲がっていく。
さらに封止板9が大きく切り離されると、切り離された封止板9は大きく上方に折れ曲がっていくが、破断部が肉厚部12に隣接する薄肉弱化部8に到達すると、封止板9は肉厚部12により補強されているため、その後は上方への折れ曲がりが抑制される。
【0023】
そして、破断部が最終的に切り離されるヒンジCの反対側に近づいても、隣接する肉厚部12により薄肉弱化部8付近は上方への折れ曲がりが抑制され、プルリング10による引っ張り力は薄肉弱化部8に対して剪断力として働き続ける。
そのため、封止板9が最終的に切り離されるプルリング10の反対側においても、破断面には引っ張り力によって材料が延びたひげ状のケバ立ちが発生せず、滑らかな注出口周縁を得ることができる。
【0024】
本実施例では、肉厚部12を設ける範囲の円周角αを略90°としているが、円周角αは、封止板9の形状などによって適宜決定され、45°〜120°程度の範囲が好ましい。
また、本実施例では、封止板の周縁を円形形状としたが、プルリングの支柱と支柱の反対方向とに細長い形状としてもよいことはもちろんである。
【0025】
また、本実施例のキャップは、ヒンジCに保持爪31と保持突条32を設けているため、開蓋時に上蓋Bを所定開度で保持することができる。
さらに、図4に示すように、上蓋Bの内筒22に受け部26を設けているので、上蓋Bを閉める過程で、上蓋Bが垂直になった段階から受け部26の下部が注出筒4の内側に入り込み、上蓋Bの内面に付着した内容物を受け部26を介して容器内に回収することができるので、内容物をキャップ周辺にこぼして汚すことがない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本願発明のキャップは、液体内容物等を充填した容器の口部に装着されるプルトップ式のキャップに適用して好適なものであるが、容器内を密閉する隔壁に、薄肉弱化部を介して設けられた封止板を除去して注出口を形成するタイプのキャップであれば、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
A キャップ本体
B 上蓋
C ヒンジ
D 容器本体
1 口部
2 係合突条
3 隔壁
4 注出筒
5 上壁
6 係合筒部
7 外周筒部
8 薄肉弱化部
9 封止板
10 プルリング
11 支柱
12 肉厚部
13 蓋係合部
14 膨出部
15 縮径部
16 連結片
17 弱化片
20 頂壁
21 側壁
22 内筒
23 係合凹部
24 空気通路
25 突出環
26 受け部
30 ヒンジ片
31 保持爪
32 保持突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部に装着されるキャップであって、
内容物を案内する注出筒の下部に容器内を密閉する隔壁が連設され、
隔壁の注出筒より内方部位には、薄肉弱化部を介して注出口を形成する封止板が設けられ、
封止板には、一方の周縁近傍に設けられた支柱を介して上方に設けられたプルリングと、支柱と反対側の他方の周縁に所定円周角範囲にわたる肉厚部とを備えたことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
肉厚部は、封止板の上面に突出して設けられていることを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
薄肉弱化部の幅は、肉厚部に隣接する部位で小さく、肉厚部と反対側のプルリングの支柱側に向けて漸次大きくなっていることを特徴とする請求項1または2記載のキャップ。
【請求項4】
封止板の周縁は円形をなしていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキャップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−246028(P2012−246028A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120485(P2011−120485)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】