説明

キャパシタ用電極及びそれを用いたキャパシタ

【課題】カーボンの材料として、一部が利用されているとはいえ、その大部分を廃棄、焼却を必要とする穀物殻を有効利用して、従来から資源が問題であり、活性化も複雑な工程で得られる各種活性炭を用いた場合と同等かそれ以上の静電容量値、高出力特性、耐久性等のキャパシタ特性を得ることができるキャパシタ用電極及びそれを用いたキャパシタを提供する。
【解決手段】穀物の殻から得られたシリカ成分を含有するカーボン粉末を耐酸化性を有する三次元構造の金属多孔体に充填して得られることを特徴とするキャパシタ用電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ用電極及びそれを用いたキャパシタに関し、さらに詳しくは、穀物殻から得られたカーボンを用いた三次元構造キャパシタ電極及びそれを用いたキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタは良く知られているように各種の電気機器等に広く用いられている。多くの種類があるキャパシタの中でも電気二重層キャパシタは容量が大きく、近年とくに注目を集めている。古くから、キャパシタはメモリーバックアップ用として幅広く使用されているが、この分野においても電気二重層キャパシタの占める割合は飛躍的に増している.さらに燃料利用率の向上と環境へのやさしさの観点から、ハイブリッド車や電気自動車等に活用され,今後の需要拡大が期待されている。
【0003】
この電気二重層キャパシタの特性に最も大きな影響を与える分極性電極の集電体として、アルミニウム箔が主である金属箔、他にパンチングメタル、スクリーン、エキスバンドメタル等種々のものが提案されている(例えば、特許文献1及び2)。これらにカーボン粉末を塗着することによって分極性電極が製造されている。なお、集電体の構成材料としてはアルミニウム、ステンレス等があげられている。
【0004】
これらの集電体は二次元構造であり、容量密度を高めるために厚い電極を作製すると集電体とカーボンとの距離が長くなるため、集電体から離れたところは電気抵抗が高くなる。したがって、これを解決するために最近では、機械加工して凹凸を設けた箔や、発泡ウレタン樹脂にめっきした後、ウレタンを焼却除去した発泡状多孔体、或いは、不織布にめっきした多孔体等の三次元構造の集電体が提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
また、キャパシタの形状としては一般の電池と同様であり、ボタン型、円筒型、角型等が採用されている。ボタン型では、カーボン電極層を集電体上に設けた分極性電極を一対として、その電極間にセパレータを配置してキャパシタ素子を構成し、電解質とともに金属ケース内に収納し、封口板と両者を絶縁するガスケットで密封する構成が採用されている。円筒型は、一対の分極性電極とセパレータを重ね、捲回して電気二重層キャパシタ素子を構成し、この素子に電解液を含浸させて円筒構造のケース中に収納、封口材で密封した構造である。角型の基本構造はボタン型と同じように分極性電極を重ねる構造もあるが、円筒型のように分極性電極群を捲回して、押しつぶす形で角型にする方法も採られている。
【0006】
集電体とともにキャパシタの特性を左右するのは用いるカーボンである。カーボンとしては、各種手段で賦活して用いられる。一般的なカーボンの材料としては、木材パルプ、のこぎり屑、ヤシ殻、綿実殻、もみ殻等のセルロース系、粟、稗、とうもろこし等の穀物澱粉質、リグニン、竹等の植物、それに石炭やタール、石油ピッチ等の鉱物、その他にフェノール樹脂、ポリアクリロニトリル等合成樹脂等があげられる。
【0007】
これら材料を非酸化性雰囲気下で加熱して炭素化する。炭素化物の活性度を向上させるために、炭素化物を水蒸気、少量の酸素、化学薬品等により賦活する。薬品としては、塩化亜鉛、塩化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、燐酸、硫化カリウム等がある。薬品による賦活は、これらを炭素化物と混合し、非酸化性雰囲気ガス中で500〜700℃程度の温度で加熱することで行われる。通常、処理前に比べて比表面積が飛躍的に大きくなり、活性度の高いカーボンが得られることは古くから知られている(例えば、特許文献4)。
【0008】
これらのカーボン材料のうち穀物殻、特に米の籾殻は、我が国内だけでも年間約200万トン以上廃棄されている精米の副産物である。
籾殻の有効利用として、これを籾殻燻炭にして土壌改良材や保温部材等に一部用いられている。この籾殻燻炭を得る方法として、煙突を上部に備えたドラム缶内に籾殻を入れ、ドラム缶の下部から火や燃焼炭等により加熱を行って籾殻を着火させている。なお、特許文献5では、これを改良するため耐熱,保熱性部材製の籾殻供給用の開口部を備えた有底筒状容器に入れられた籾殻を電気的に着火させ、着火後加熱を停止し、容器内に空気の対流を生じさせないよう方法が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−274012号公報
【特許文献2】特開平11−150042号公報
【特許文献3】特開2009−200065号公報
【特許文献4】特開2006-062954号公報
【特許文献5】特開平05−017778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
米や小麦等の穀物は、我が国をはじめ世界各国で生産されており、それに伴い、海外を含めると前記よりもさらに莫大な量の穀物殻が発生する。その有効利用が確立されれば、国際的な資源の活用と環境への悪影響の排除が可能になる。すでに籾殻等の穀物殻を燻炭化して土壌改良材等に活用されているが、その他にも有効利用が出来れば、焼却の必要もなく,環境にもやさしい。
【0011】
その一つとしてキャパシタへの分極材料としての試みがある。しかし、穀物殻には、炭化後に多量の酸化珪素(シリカ成分)が含まれていることも原因となり、汎用の賦活した活性炭に比べてキャパシタ特性に問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、カーボンの材料として、一部が利用されているとはいえ、その大部分を廃棄、焼却を必要とする穀物殻を有効利用して、従来から資源が問題であり、活性化も複雑な工程で得られる各種活性炭を用いた場合と同等かそれ以上の静電容量値、高出力特性、耐久性等のキャパシタ特性を得ることができるキャパシタ用電極及びそれを用いたキャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、豆、麦、米等の穀物殻、とくに米穀の籾殻から得られたカーボンを耐酸化性に優れた三次元構造の金属多孔体に充填することにより得られるキャパシタの特性が、従来から用いられている活性炭と同等かそれ以上の特性とくに出力特性を発揮することを見出したものである。
【0014】
穀物殻からカーボンを得る製法としては、とくに限定はなく、基本的には穀物殻を空気を遮断した環境下で加熱する方法であれば採用可能である。このようにして得られた穀物殻炭には、多量の酸化珪素(シリカ成分)が含まれているため、例えばアルミニウム製箔等二次元構造の集電体に塗着して分極用電極にしても、複雑な工程で賦活した汎用の活性炭を用いた電極の特性よりも劣っている。そこで三次元構造の金属多孔体に充填してキャパシタ特性を評価したところ、汎用の活性炭と異なり特性が飛躍的に向上し、同等かそれ以上の特性が得られていることが見出された。
【0015】
なお、電解液として有機溶媒が用いられ、酸化電位も水溶液電解液系より遥かに高く、耐リチウム電位が4V以上になるために、本発明の集電体としては表面にクロムを形成したニッケル多孔体が最も好ましい。このように表面にクロムを形成したニッケル多孔体の多孔度は大きい方が炭素材料も充填されやすく、80〜97%程度が適当である。
【0016】
また、高出力を発揮させるためには金属の単位あたりの重量も重要であり、この表面にクロムを形成したニッケル多孔体のニッケルの目付量は150g/m〜500g/m程度、好ましくは200g/m〜450g/m程度とすればよい。また、クロムは50g/m〜100g/m程度が好ましい。
【0017】
また、このような三次元構造多孔体の製法の一例として、公知の発泡ウレタン樹脂やポリオレフィン不織布等の三次元構造の樹脂多孔体に導電性を付与したのちニッケル、電解ニッケルめっき処理及びクロムめっき処理を順次行なえばよい。またニッケルめっき後に樹脂を焼却除去し、ニッケル多孔体とし、これにクロムめっきやクロム粉末を付着焼結する等によってもよい。
【0018】
このようなクロムを形成したニッケル多孔体の他に、アルミニウムやステンレス製の三次元構造体例えば繊維状多孔体や発泡体も利用可能であるが、孔構造の均一性、製法の量産性、製造の容易性等を考慮すると、上述のクロムを形成したニッケル多孔体が最も好ましい。
【0019】
また、これら三次元構造の多孔体に充填する穀物殻炭は、増粘剤と従来から採用されているような導電助剤とくにカーボンブラック(ケッチェンブラックやアセチレンブラック等)や結着剤とくにフッ素系樹脂を混合して製造されたスラリーが好ましい。その構成比として導電助剤は、穀物殻炭100重量部に対して0.5重量部〜15重量部の範囲を選ぶ。結着剤としては、耐有機電解液性、耐酸化性に優れたフッ素系樹脂を用いる。ポリフッ化ビニリデン(PVdF)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を選ぶのがよい。樹脂分の添加量としては、カーボン粉末100重量部に対して0.5重量部〜15重量部程度が好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、カーボンの材料として、一部が利用されているとはいえ、その大部分を廃棄、焼却を必要とする穀物殻を有効利用して、従来から資源が問題であり、活性化も複雑な工程で得られる各種活性炭を用いた場合と同等かそれ以上の静電容量値、高出力特性、耐久性等のキャパシタ特性を得ることができるキャパシタ用電極及びそれを用いたキャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1で得られたキャパシタと比較例1のキャパシタを2.5Vから0Vまで0.5mA/cmの電流密度で放電したときの各キャパシタの容量を示す図である。
【図2】実施例1で得られたキャパシタと比較例1のキャパシタを2.5Vから0Vまで0.1mA/cm〜20mA/cmの電流密度で放電したときの各キャパシタの容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のキャパシタ用電極は次のようにして作製することができる。まず、分極性電極の材料となる穀物殻からカーボンを得る。一般的な穀物殻を、空気を遮断した環境下で加熱することによりカーボンを得る方法を採用する。得られたカーボンを粉砕して得たカーボン粉末を、三次元構造の金属多孔体(集電体)に充填する。
【0023】
三次元構造の金属多孔体としては、表面にクロムを形成したニッケル多孔体が最も好ましい。この多孔体の多孔度は、大きい方が炭素材料も充填されやすく、例えば、80%〜97%程度、好ましくは90%〜96%程度である。また、金属多孔体の平均孔径は、例えば、20μm〜200μm程度、好ましくは30μm〜100μm程度である。
【0024】
このような三次元構造の多孔体は、発泡状樹脂の表面にニッケル被覆層を形成したのち、基材である樹脂を除去し、次いで必要に応じて還元性雰囲気中で加熱処理してニッケルを還元して発泡状ニッケルを生成し、次いでこれをクロマイジング処理等することにより得る。更に詳しく説明すると、発泡ウレタン樹脂やポリオレフィン不織布等の三次元構造の樹脂多孔体に導電性を付与したのち電解ニッケルめっき処理及びクロムめっき処理を行う。ニッケルめっき後に樹脂を焼却除去し、ニッケル多孔体とし、これにクロムめっきやクロム粉末を付着した後にこれを焼結してクロム多孔層をニッケル骨格の表面に形成する。なお、キャパシタに高出力を発揮させつつ高容量を維持するためには金属の単位あたりの重量も重要であり、三次元構造の樹脂多孔体上へのニッケルの目付量は、150g/m〜500g/m程度、好ましくは200g/m〜450g/m程度である。また、クロムの目付量は、50g/m〜100g/m程度である。
【0025】
三次元構造の多孔体としては、その他にアルミニウムやステンレス製の三次元構造体例えば繊維状多孔体や発泡体も利用可能である。
【0026】
つぎに、これら三次元構造の多孔体に充填する穀物殻炭を主とする分極性電極材料を充填する。分極性電極材料をスラリー状にして三次元構造金属多孔体に充填する方法を採用することが最適である。導電助剤とくにカーボンブラックや結着剤とくにフッ素系樹脂を混合して製造されたスラリーが好ましい。その構成比は限定されるものではないが、導電助剤に関しては籾殻炭100重量部に対して導電助剤が0.5重量部〜15重量部の比で含まれていることが好ましい。また、三次元構造の集電体であるから、例えばアルミニウム箔のような二次元構造の集電体と異なり、結着剤をそれほどの量を必要としないが、それでも耐有機電解液性、耐酸化性に優れたフッ素系樹脂を用いることは好ましい。PVdFのNMP溶液がより適している。結着剤の添加量としては、カーボン粉末100重量部に対して0.5重量部〜15重量部程度である。
【0027】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[穀物殻炭]
穀物殻炭は公知の方法により製造されたものを粉砕して用いることができる。例えば、容器内に穀物殻を投入し、容器底部から加熱して穀物殻を着火し、その後加熱を止め、容器内の空気を対流させずに1週間程度放置して、穀物殻を炭化して得られた穀物殻炭を用いることができる。この方法では、穀物殻の量を容器内の空気中の酸素量に応じて投入することで、酸化が灰化段階へ達することを抑えている。得られた穀物殻炭を粉砕し、穀物殻炭の平均粒径が1μm〜20μmになるよう調整する。なお、本発明に係る穀物殻炭は、賦活処理を施していないため、穀物殻炭の粉末中(カーボン粉末中)に10重量%〜60重量%の酸化珪素(シリカ成分)が含有されている。
【0028】
[集電体]
発泡ウレタン樹脂やポリオレフィン不織布等の三次元構造の樹脂多孔体に導電処置、電解めっき処理及びクロム層の形成を順次施すことによって、本発明に係る三次元構造の金属多孔体(集電体)を作製する方法について説明する。まず、多孔度が、例えば80%〜97%程度、多孔体の平均孔径が、例えば20μm〜200μm程度、厚さが、300μm〜1600μm程度の樹脂多孔体を準備する。
【0029】
ついで、これに導電性を付与する導電処理として、例えば、ニッケル等の導電性材料を用いたスパッタリング処理を施す。具体的には、基板ホルダーに発泡ウレタン樹脂を取り付けた後、不活性ガスを導入しながら、ホルダーとターゲット(ニッケル等の導電性材料)との間に直流電圧を印加することにより、イオン化した不活性ガスをニッケル等の導電性材料に衝突させて、吹き飛ばした導電性材料粒子を発泡状樹脂表面に堆積させる。導電性層の目付量は限定的でなく、例えば、5mg/m〜15mg/m程度、好ましくは、7mg/m〜10mg/m程度とすればよい。なお、スパッタリングの代わりに導電性材料の無電解めっき法を採用してもよい。
【0030】
導電性を有する層を構成する材料として、ニッケルの他に、チタン、ステンレススチール、黒鉛粉末等を所要量塗着してもよい。これらの場合、最も簡単なのは、これら材料の微粉末にバインダを加えて得られる混合物を、発泡状樹脂に塗着する方法である。
【0031】
上記導電性層の形成のみでは、導電性や強度等の観点から好ましくないため、例えば、ニッケルの電解ニッケルめっき処理を行うことにより、導電性を高めると共に、強度の向上を図ることが好ましい。これは常法に従って行なう。この場合のめっき浴としては、公知のものを使用することができ、例えば、ワット浴、塩化浴、スルファミン酸浴等が挙げられる。
【0032】
上記のスパッタリングや無電解メッキにより表面に導電性層が形成された発泡ウレタン樹脂をメッキ浴に浸し、これを陰極に、たとえば対極にニッケル板を用いて陽極とし直流或いはパルス断続電流を通電させることにより、導電性層上にニッケル被覆層を形成する。
【0033】
この電解ニッケルめっき層の目付量は限定的でなく、150g/m〜500g/m程度、好ましくは200g/m〜450g/m程度とすればよい。この範囲以下では導電性と集電体の強度が問題になり、この範囲以上にすると、分極性材料の充填量の減少とコストが高くなる。
【0034】
電解ニッケルめっき層を形成後、ウレタン樹脂の除去とニッケルの還元を行う。樹脂の除去は、焼却が好ましい。例えば600℃程度以上の大気等の酸化性雰囲気下で加熱する。また、水素等の還元性雰囲気中750℃程度以上で加熱してもよい。これで樹脂を除去後、還元性雰囲気下800〜900℃程度で加熱して発泡状ニッケルを得る。
【0035】
その後、平均粒径が2〜15μmのクロム粉末を、CMC水溶液でペーストとし、目付け重量が例えば、50g/m〜100g/mになるよう付着させ、800℃還元性雰囲気中で加熱し、ニッケル層の上にクロム層を形成させる。ニッケル層とクロム層の間に両者の合金層も含まれる。この他に、クロムめっき、クロマイジング処理等によりニッケルクロム合金層、クロム層を形成してもよい。これらの方法で本発明の発泡状のニッケル上にクロム層を形成した三次元構造の集電体を得ることができる。
【0036】
ニッケル上へのクロムの含有量は、ニッケルクロム合金中も含めて25重量%〜50重量%が適当である。少ないと耐酸化性に劣り、多すぎると電気抵抗が増加して集電性が低下する。
【0037】
[分極性電極材料の組成と充填]
本発明の電極は、上記三次元構造の集電体に穀物殻炭を主とする分極性電極材料を充填することにより得られる。穀物殻炭を主とする分極性電極材料は、その他に必要に応じて導電助剤及びやバインダを含む。この場合、穀物殻炭の含有量は60重量%以上が好ましい。用いる穀物殻炭の粒径は限定的でないが、20μm以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、キャパシタの内部抵抗を小さくして、出力特性を大きくすることができる。必要に応じて用いられる導電助剤は、種類に特に制限はなく、汎用の材料が使用できる。例えば、ケッチェンブラックが最適であり、他にアセチレンブラック等のカーボンブラック、炭素繊維、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、酸化ルテニウム等が挙げられる。これらのうち炭素繊維も好ましい。これら導電助剤の含量は限定的でないが、カーボン粉末100重量部に対して0.5重量部〜15重量部程度が好ましい。あまり多くすると穀物殻炭の比率が下がり静電容量が低下する。
【0038】
三次元構造の金属多孔体(集電体)と分極性電極との結着力、分極性電極粉末間の結着力向上のためにバインダを用いることが好ましい。その種類には特に制限はなく、汎用の材料が使用できる。耐酸化性の観点から、フッ素系樹脂が好ましい。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンが代表的である。ポリオレフィンも比較的優れている。その他のポリビニルピロリドン、ポリビニルクロリド、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール等があるが、耐酸化性に問題がある。バインダの含有量についても特に制限はないが、カーボン粉末100重量部に対して好ましくは0.5重量部〜15重量部程度である。この範囲にすると電気抵抗の増加及び静電容量の低下を抑制しつつ、結着性の向上が可能になる。スラリーにするためには粘度の向上が必要であり、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)の場合は溶媒のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)がその役割を果たすが、フッ素樹脂(例えばPTFEディスバージョン)等では、公知のカルボキシメチルセルロース水溶液等を用いる。
【0039】
集電体に穀物殻炭スラリーを充填する場合の充填量(含有量)は特に制限されず、基本的には集電体を厚くすれば高容量、薄くすれば高出力になる。その他キャパシタの形状等に応じて決定すればよいが、例えば、充填量は、13〜40mg/cm程度、好ましく16〜32mg/cm程度がよい。
【0040】
穀物殻炭を本発明の集電体に充填する方法としては、例えば、穀物殻炭ペーストを圧入法等の公知の方法等を使用すればよい。圧入法としては、例えば、穀物殻炭ペースト中に集電体を浸漬し、必要に応じて減圧する方法、穀物殻炭ペーストを集電体の一方面からポンプ等で加圧しながら充填する方法等があげられる。
【0041】
穀物殻炭ペーストは、穀物殻炭及び溶媒を含有していればよく、その配合割合は限定的でない。溶媒としては限定的でなく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、水等が挙げられる。特に、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いる場合は溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いればよく、バインダとしてポリテトラフルオロエチレンディスバージョン等を用いる場合は溶蝶として水を用いればよい。また、必要に応じて、上記電導助剤、バインダ等の添加剤を含有していてもよい。
【0042】
本発明の電極は、穀物殻炭ペーストを充填した後、必要に応じて乾燥処理を施すことにより、ペースト中の溶媒が除去されてもよい。さらに必要に応じて、穀物殻炭ペーストを充填した後、ローラプレス機等により加圧することにより、圧縮成形されていてもよい。圧縮前後の厚さは限定的でないが、圧縮前の厚さは通常300μm〜1500μm、好ましくは400μm〜1200μmとすればよく、圧縮成形後の厚みは通常100μm〜700μm程度、好ましくは150μm〜600μm程度とすればよい。また、電極には、リード端子が具備されていてもよい。リード端子は、溶接を行ったり、接着剤を塗布したりすることにより、取り付ければよい。
【0043】
[キャパシタ]
本発明のキャパシタは、本発明の電極2枚を一対とし、これらの電極の間にセパレータを配置し、さらにセパレータに電解質液を含浸させたものである。
セパレータとしては、公知又は市販のものを使用できる。例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンレテフタラート、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ガラス繊維等からなる絶縁性膜が好ましい。セパレータの平均孔径は特に限定されず、通常0.01μm〜5μm程度であり、厚さは、通常10μm〜100μm程度である。
【0044】
電解液は、公知又は市販のものを使用でき、アルカリ性水溶液及び非水系電解液のいずれも使用することができる。アルカリ性電解液としては、例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液が挙げられる。非水系電解液としては、例えば、テトラアルキルホスホニウムテトラフルオロボレートを溶解したプロピレンカーボネート溶液、テトラアルキルアンモニウムテトラフルオロボレートを溶解したプロピレンカーボネート溶液又はスルホラン溶液、トリエチルメチルアンモニウム・テトラフルオロボーレイト溶解したプロピレンカーボネート溶液等が挙げられる。これらの中でも、本発明では、非水系電解液が好ましい。このような非水系電解液を用いることにより、静電容量を向上させることができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0046】
[実施例1]
(集電体の作製)
発泡状樹脂(三次元構造の樹脂多孔体)として、発泡ウレタン樹脂シート(市販品、平均孔径90μm、厚さ1.4mm、多孔度96%)を用いた。この発泡ウレタン樹脂シートにターゲットとしてニッケルを用いてスパッタリング処理を行うことにより、発泡ウレタン樹脂シートの表面に導電性層(ニッケル層)を形成させた。導電性層の目付量は10g/mであった。
【0047】
次いで、得られた導電性層を形成した発泡ウレタン樹脂シートに電解めっき処理を施した。電解ニッケルめっき浴としては、ワット浴(硫酸ニッケル330g/L、塩化ニッケル50g/L、硼酸40g/L)を用いた。対極には、ニッケル片を入れたチタンバスケットを使用した。電着条件は浴温60℃、電流密度30A/dmとした。電解ニッケルめっき層の目付量は導電性層の分も合計して400g/mとなるようにした。
【0048】
電解めっき後の発泡構造体を大気中800℃で加熱処理してウレタン樹脂を焼却除去し、次いで水素ガス雰囲気中で1000℃に加熱してニッケルを還元処理することにより発泡状ニッケルを得た。
【0049】
この発泡状ニッケルに、クロム粉末、塩化アンモニウム及びアルミナ粉末を混合して得られた浸透材(クロム:90重量%、NHCl:1重量%、Al:9重量%)を充填し、水素ガス雰囲気中で800℃に加熱してクロマイジング処理を施して発泡状のニッケルクロム合金からなる集電体を得た。
【0050】
上記クロマイズ処理において、クロマイズ処理の加熱時間を調整することによって、クロム含有量が30重量%の集電体a(実施例1)を得た。集電体の厚さは1.4mmであった。
【0051】
(電極の作製)
米の籾殻炭粉末(比表面積770m/g、平均粒径約8μm)100重量部に、導電助剤としてケッチェンブラック11重量部、バインダとしてポリフッ化ビニリデン粉末8重量部、溶媒としてN−メチルピロリドン55重量部を添加し、混合機で攪拌することにより、籾殻炭ペーストを調製した。
【0052】
籾殻炭ペーストを上記集電体aに、籾殻炭の含量が8mg/cmとなるように充填した。実際の充填量は8mg/cmであった。次に、乾燥機で100℃、1時間乾燥させて溶媒を除去した後、直径500ミリのローラプレス機(スリット:50μm)で加圧して電極Aを得た。加圧後の厚さは170μmであった。
【0053】
[比較例1]
集電体として、アルミニウム箔(市販品、厚さ20μm)を用いた。実施例1で作製した籾殻炭ペーストをドクターブレード法により、アルミニウム箔の両面に塗着し、乾燥及び加圧することにより、比較例1の電極Bを作製した。籾殻炭の塗着量は5mg/cm、電極の厚みは、80μmであった。
【0054】
[キャパシタの作製及び試験]
得られた電極A、Bを2
× 1.5mmに切り出し(2枚)、リード箔を溶接にて取り付けた後、200℃、10時間減圧下で乾燥した。その後、セルロース繊維製セパレータ(厚さ60μm、密度450mg/cm、多孔度70%)を挟み、これら電極を対向させた。その後、アルミ製ラミネート容器に収納し、非水電解液にテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを1mol/Lとなるように溶解したプロピレンカーボネート溶液を、電極及びセパレータに含浸した。さらに、封口して、ラミネート形の試験用電気二重層キャパシタAA、BB(それぞれ電極A、Bに対応)を作製した。
【0055】
[静電容量の評価]
実施例1及び比較例1で示す電極により作製したキャパシタと同様のキャパシタを4個作製し、25℃にて2.5Vを開始電圧として0.5mA/cmの電流で放電にて行い、初期静電容量及び内部抵抗を調べた。図1に放電曲線を、表1に単位面積当たりの静電容量および内部抵抗の平均値を示す。
【表1】

図1および表1から明らかなように、実施例1の電極により作製したキャパシタは、比較例1のAl箔を使用したキャパシタよりも、単位面積当たりの容量が大きく、内部抵抗を減少している。特に、静電容量を見ると、実施例1のキャパシタは、比較例1のキャパシタの2倍程度の静電容量を発揮している。
【0056】
また、本発明は、静電容量に寄与しない材料(バインダ)の添加量を減少させることができるため、エネルギー密度を向上させることができることが分かる。
【0057】
[放電特性評価]
次にキャパシタ特性として重要な高電流密度放電特性を調べた。
(高電流密度放電試験)
高電流密度での放電は、バックアップ用等の用途で重要である。実施例1及び比較例1で示す電極により作製したキャパシタを0.1mA/cm〜20mA/cmの電流密度で放電した際の静電容量変化を図2に示す。また、実施例1及び比較例1で示す電極により作製したキャパシタにおける電流密度0.1mA/cm放電時に得られた初期静電容量(実施例1;0.165F/cm、比較例1;0.086F/cm)に対する、電流密度5mA/cm放電時、及び、電流密度20mA/cm放電時の初期静電容量の比率(容量維持率)について、実施例1及び比較例1で示す電極により作製した各キャパシタに対して調べた。その結果を表2に示す。
【表2】

表2から明らかなように、5mA/cmの放電電流密度での放電において実施例1のキャパシタは比較例1のキャパシタに比べて高い利用率を保持していた。したがって、本発明の電気二重層キャパシタは、高い静電容量が得られるとともに、放電特性に優れていることが分かる。以上により、本発明のキャパシタ用電極を用いた場合、従来のキャパシタに比べて容量・放電性に優れたキャパシタを提供できることが分かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物の殻から得られたシリカ成分を含有するカーボン粉末を耐酸化性を有する三次元構造の金属多孔体に充填して得られることを特徴とするキャパシタ用電極。
【請求項2】
前記カーボン粉末中に10重量%〜60重量%のシリカ成分が含有されていることを特徴とする請求項1に記載のキャパシタ用電極。
【請求項3】
前記カーボン粉末は、空気を遮断して米の籾殻を加熱することにより製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャパシタ用電極
【請求項4】
前記カーボン粉末には、導電助剤が混合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のキャパシタ用電極。
【請求項5】
前記導電助剤は、前記カーボン粉末100重量部に対して、0.5〜15重量部の重量比で含有されていることを特徴とする請求項4に記載のキャパシタ用電極。
【請求項6】
前記カーボン粉末には、結着剤が混合されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のキャパシタ用電極。
【請求項7】
前記金属多孔体は、表面にクロムを形成したニッケル多孔体であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のキャパシタ用電極。
【請求項8】
前記ニッケル多孔体の多孔度は、80%〜97%であることを特徴とする請求項7に記載のキャパシタ用電極。
【請求項9】
前記ニッケル多孔体のニッケル目付量は、200g/m〜500g/mであることを特徴とする請求項8に記載のキャパシタ用電極。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のキャパシタ用電極を使用することを特徴とするキャパシタ。
【請求項11】
電解液として非水系の電解液を用いることを特徴とする請求項10に記載のキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−243707(P2011−243707A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113674(P2010−113674)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】