説明

キャビネット及びトイレユニット

【課題】キャビネットの配置の自由度を向上できるキャビネット及びトイレユニット提供すること。
【解決手段】キャビネット10は、扉12,13を開扉する場合に同方向にスライド移動するように構成したので、反スライド方向にトイレTのコーナー部を設けることができる。さらに、2つの扉12,13のうち、一方の扉13を、キャビネット本体11の横方向のみにスライド移動するように構成したので、扉13が開閉動作する際にその扉13がキャビネット本体11の前面側に突出しない。よって、キャビネット10を便器装置Sの側方に配置しても、便器装置Sの側方に配置される給水装置S1等に干渉しないので、キャビネット10の配置の自由度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット及びトイレユニットに関し、特に、キャビネットの配置の自由度を向上できるキャビネット及びトイレユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2006−141637号公報(以下「特許文献1」と称す)には、略箱状に形成されるキャビネット本体の開口部が、そのキャビネット本体の横方向に並設される2つの扉により覆われたキャビネットが開示されている。このキャビネットは、2つの扉のうち一方の扉を開扉する場合、その開扉する扉を他方の扉の前面側にスイングしつつ横方向にスライド移動するように構成されている。よって、特許文献1のキャビネットでは、2つの扉がスライド移動する動作範囲がキャビネット本体の横幅内に収まり、キャビネットの側方外方への干渉を考慮しなくて済むので、キャビネットの配置の自由度を増すことができる。
【特許文献1】特開2006−141637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のキャビネットでは、一方の扉が他方の扉の前面側にスイングしつつ横方向にスライド移動するので、一方の扉を開扉した状態では、その扉が他方の扉に重なった状態になり、キャビネットの前面側の領域に突出した状態になる。即ち、特許文献1のキャビネットは、各扉の前面側に扉の可動領域が必要になるので、狭い室内における配置の自由度が低下するという問題点があった。特に、狭い室内であるトイレ内の便器装置の側方には、便器装置の横から突出する水道管などに扉が干渉するので配置できなかった。
【0004】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、キャビネットの配置の自由度を向上できるキャビネット及びトイレユニット提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために請求項1記載のキャビネットは、略箱状に形成され前面側に開口部を有するキャビネット本体と、そのキャビネット本体の開口部を覆うように前記キャビネット本体の横方向に並設される第1及び第2扉とを備えており、前記第1及び第2扉は、前記キャビネット本体に対して閉扉された状態で前面側がほぼ面一に並設されており、前記第1扉は、前記第2扉から離反する方向で且つ前記キャビネット本体に対して横方向にスライド移動して開扉され、前記第2扉は、前記第1扉が開扉された状態で、その第1扉があった横方向にスライド移動して開扉される。
【0006】
請求項2記載のキャビネットは、請求項1記載のキャビネットにおいて、前記キャビネット本体の天井壁および底壁にそれぞれ設けられ、前記キャビネット本体の横方向に前記第2扉をスライド移動可能に構成するレール部材と、前記第1扉の裏側面と、前記キャビネット本体の前記第1扉側の側壁とを連結し、前記第1扉を前記キャビネット本体に対して前記前面側にスイングしつつ前記第2扉から離反する横方向にスライド移動可能に構成する連結部材と、前記キャビネット本体の上下方向において前記キャビネット本体の底壁に設けられる前記レール部材より更に下方に取り付けられ、前記第1扉が前記第2扉から離反する横方向にスライド移動する範囲を規制する規制部材とを備えている。
【0007】
請求項3記載のトイレユニットは、請求項1又は2に記載されるキャビネットと、便器装置とを備えており、前記キャビネットは、前記第1及び第2扉のスライド移動方向が前記便器装置の前奥方向とほぼ並行になるように配置され、前記便器装置の奥方に前記第2扉が位置すると共に前記便器装置の前方に前記第1扉が位置するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のキャビネットによれば、略箱状に形成されるキャビネット本体の前面側の開口部は、キャビネット本体の横方向に並設される第1及び第2扉により覆われており、第1扉は、第2扉から離反する方向で且つキャビネット本体に対して横方向にスライド移動して開扉され、第2扉は、第1扉が開扉された状態で、その第1扉があった横方向にスライド移動して第1扉が閉扉される。よって、キャビネットは、少なくとも第2扉がキャビネット本体の横方向にスライド移動して開扉されるので、第2扉の前面側に便器装置等の他の装置を配置しても、第2扉の開扉動作により第2扉が他の装置に干渉することがない。従って、狭い室内において便器装置等の他の装置の側方にキャビネットを配置可能になるので、キャビネットの配置の自由度を向上できるという効果がある。
【0009】
また、第1及び第2扉は、同方向にスライド移動して開扉されるので、反スライド方向に室内のコーナー部を設けたり、他のキャビネット等を配置することができる。よって、キャビネットの横方向に対する配置の自由度も充分に向上できるという効果がある。
【0010】
また、第1及び第2扉は、キャビネット本体に対して閉扉された状態で前面側がほぼ面一に並設されているので、キャビネットの奥行き方向の幅を扉一枚分は薄くできる。よって、キャビネットを奥行き方向に対してコンパクト設計できるので、キャビネットの奥行き方向に対する配置の自由度も充分に向上できるという効果がある。
【0011】
請求項2記載のキャビネットによれば、請求項1記載のキャビネットの奏する効果に加え、第1扉の裏側面と、キャビネット本体の第1扉側の側壁とが、第1扉をスライド移動可能に構成する連結部材により連結され、キャビネット本体の底壁のレール部材より更に下方に、第1扉のスライド移動する範囲を規制する規制部材が取り付けられている。よって、第1扉が開扉された状態では、連結部材が第1扉の裏側面およびキャビネット本体の側壁に沿った位置にあり、規制部材が底壁より更に下方に位置するので、収納物の出し入れを行う際に、連結部材や規制部材が邪魔にならない。従って、収納物の出し入れをし易くできるという効果がある。
【0012】
また、規制部材が上下のレール部材間に取り付けられていると、第2扉をスライド移動する際に、その第2扉の移動経路内に規制部材が位置して邪魔になるので、第2扉の移動範囲(即ち、キャビネット本体の開口部の開口される範囲)が狭くなるが、規制部材は、底壁のレール部材より更に下方に取り付けられているので、その規制部材が邪魔にならず、第2扉の移動範囲を広くできる。よって、第2扉が開扉された状態で、キャビネット本体の開口部の開口範囲を広くできるので、第2扉の収納物の出し入れもし易くなるという効果がある。
【0013】
また、規制部材は、キャビネット本体の底壁のレール部材より更に下方に取り付けられるので、キャビネット本体の天井壁の上方には障害物がなくなる。よって、キャビネット本体の天井壁の上面に物を載置可能になるので、キャビネット本体の天井壁を物置として利用できるという効果もある。
【0014】
請求項3記載のトイレユニットによれば、請求項1又は2に記載のキャビネットが奏する効果と同様の効果を奏することに加え、次の効果を奏する。即ち、請求項1又2に記載のキャビネットは、第1及び第2扉のスライド移動方向が便器装置の前奥方向とほぼ並行になるように配置され、便器装置の奥方に第2扉が位置すると共に便器装置の前方に第1扉が位置する。一般に、便器装置の水道管は、美的観点から使用者の視界に入り辛い場所、即ち、便器装置の奥方に配置されるが、その水道管に対向する位置に第2扉が位置し、その第2扉は横方向にのみスライド移動するので、便器装置の側方にキャビネットを配置可能になり、便器装置が配置されるトイレ内におけるキャビネットの配置の自由度を向上できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態のキャビネット10が配置されたトイレTの全体を示した斜視図である。なお、図1において、矢印Xは、キャビネット10の左右方向(便器装置Sの前奥方向)を示しており、矢印Yは、キャビネット10の奥行き方向(便器装置Sの左右方向)を示しており、矢印Zは、キャビネット10(便器装置S)の上下方向を示している。
【0016】
図1に示すように、トイレTは、床面Fと、4つの壁面W(2つの壁面Wは図示せず)と、天井面(図示せず)とにより囲まれた空間である。なお、以下の説明では、4つの壁面Wのうち、便器装置Sの奥方の壁面を壁面W1とし、便器装置Sの側方の壁面をW2として説明する。
【0017】
トイレT内には、主に、壁面W2に奥壁が隣接し且つ、壁面W1及び壁面W2により形成されるコーナー部から反壁面W1方向(矢印X方向の右手前側)に沿って収納棚Rが配設され、壁面W1に奥端が隣接し且つ、トイレTの左右方向(矢印Y方向)におけるほぼ中央に便器装置Sが配設されている。
【0018】
収納棚Rは、並設される2枚の扉(扉12,13(図2参照))により前面が覆われたキャビネット10と、トイレットペーパーの装着部を有すると共に1枚の扉で収納部の前面が覆われた中央収納部20と、上部に手洗器を有すると共に内部に水道管および配水管等が設けられた手洗い部30とを有して構成されている。
【0019】
次に、図2及び図3を参照して、キャビネット10の構造、及び、扉12,13の開閉動作について説明する。図2(a)は、キャビネット10の全体を示した斜視図であり、図2(b)は、上側レール16の一部を拡大して示した斜視図である。図3は、キャビネット10に取り付けられる扉12,13の開扉動作を示した斜視図である。
【0020】
図2(a)に示すように、キャビネット10は、主に、略箱状に形成されるキャビネット本体11と、そのキャビネット本体11の前面側(矢印Y方向の左手前側)の開口部11fを覆うと共にキャビネット本体11の横方向(矢印X方向)に並設される扉12,13と、扉12をキャビネット本体11に対して前面側にスイングしつつ横方向にスライド移動可能に連結する連結金具14と、扉12のスライド移動を規制する規制金具15と、扉13を横方向にスライド移動可能に構成する上側レール16及び下側レール17とを有して構成されている。
【0021】
キャビネット本体11は、壁面W1に隣接する側壁11aと、その側壁11aに対向配置される側壁11bと、天井壁11cと、底壁11dと、奥壁11e(図示せず)とにより略箱状に形成されている。キャビネット本体11は、側壁11a,11b、天井壁11c、底壁11d及び奥壁11eによって略箱状に形成され、前面側が開口部11fにより開口されている。なお、キャビネット本体11の底壁11dには、足部11gが取り付けられおり、その足部11gを介してキャビネット10が床面Fに配設される。
【0022】
扉12,13は、閉扉された状態(図2(a)の状態)で、前面側(矢印Y方向の左手前側)がほぼ面一になるように並設されている。よって、キャビネット10の奥行き方向(矢印Y方向)の幅を、少なくとも扉一枚分は薄くできるので、キャビネット10をコンパクト設計できる。
【0023】
また、扉12には、その上部右側に扉12を開閉動作する場合に摘まれる取っ手12aが取り付けられている。ここで、取っ手12aが扉12の上部右側以外に取り付けられている場合に、便器装置S(図1参照)に着座した使用者が取っ手12aを摘み操作する場合について説明する。例えば、取っ手12aが扉12の上下方向中段に取り付けられていると、取っ手12aが使用者の腰辺りに位置するので、使用者は前屈みになり窮屈な姿勢での操作になるし、取っ手12aが扉12の上段左側に取り付けられ使用者の肩の位置に取っ手12aが位置する場合でも、取っ手12aが使用者側に向かって動作するので腕が窮屈になり、扉12の開閉動作の操作性が低下する。しかし、本実施形態では、取っ手12aを扉12の上部右側に取り付けているので、窮屈な姿勢にならず腕も窮屈にならない状態で扉12を操作することができ、扉12の開閉動作の操作性を向上できる。
【0024】
一方、扉13には、その上部左側に取っ手13aが取り付けられている。後述するが、扉13は、扉12が横方向(矢印Z方向の右手前側)にスライド移動した状態で操作されるので、例えば、取っ手13aが扉13の右側に取り付けられていると、取っ手13aを使用者が摘み扉13を開閉動作する際に、扉12に手が当たったり、扉12が邪魔になり取っ手13aが摘み難い等の弊害が生じる。しかし、本実施形態では、取っ手13aを扉13の上部左側に取り付けているので、上記弊害の発生を抑制でき、扉13の開閉動作の操作性を向上できる。
【0025】
連結金具14は、キャビネット本体11の側壁11bの内壁に取り付けられるベース部14aと、扉12の裏面側に連結される連結部14bと、その連結部14bとベース部14aとを連結するフレーム部14cとを有して構成されている。フレーム部14cは、ベース部14aに対して回転可能に軸支されると共に、連結部14bに対して回転可能に軸支されている。
【0026】
規制金具15は、扉12の下端部に一端が取り付けられると共に、キャビネット本体11の底壁11bより下方の足部11gに他端が取り付けられている。なお、足部11gに取り付けられる規制金具15の他端は、扉12の左右方向(矢印X方向)の略中央に対応する位置に取り付けられている。この規制金具15の長さによって、扉12のスライド移動(即ち、扉12が開扉される範囲)が規制される。
【0027】
なお、図2(a)に示すように、規制金具15は、キャビネット10の上下方向(矢印Z方向)において、底壁11dより下方、即ち、底壁11dに取り付けられる下側レール17より更に下方に取り付けられている。
【0028】
また、扉12は、規制金具15によって、開扉動作する場合に必要以上に扉12が開いてしまうことが規制されるので、連結金具14のフレーム部14cとキャビネット本体11の側壁11bとが勢い良く衝突して、キャビネット本体11が破損してしまうことを抑制できる。
【0029】
上側レール16は、キャビネット本体11の天井壁11cの下側面(キャビネット本体11の内面)に設けられ、下側レール17は、底壁11dの下側面(キャビネット本体11の外面)に設けられており、各レール16,17の左右方向(矢印X方向)の横幅は、天井壁11c及び底壁11dの横幅(矢印X方向のキャビネット本体11の横幅)のほぼ全域に設けられている。よって、扉13は、各レール16,17によって滑動可能になり、キャビネット10の左右方向全域をスライド移動することができる。
【0030】
なお、各レール16,17は、天井壁11c及び底壁11dの下面側に設けられているので、使用者が視認し難くなり、特に、下側レール17は、底壁11dの下面側に設けられるので、使用者は全く視認できない。よって、各レール16,17は、使用者により視認され難い位置に設けられているので、キャビネット10の見栄えを向上できる。
【0031】
また、図2(b)に示すように、上側レール16内の端部には、ストッパ部材16aが固着されている。このストッパ部材16aは、扉13を扉12方向(矢印X方向の右手前側)にスライド移動した場合に、扉13を必要以上にスライド移動させないために設けられている。よって、扉13が必要以上にスライド移動して、連結金具14に衝突することを防止できるので、連結金具14および扉13が破損することを抑制できる。なお、図示は省略するが、下側レール17にも、上側レール16と同様に、ストッパ部材17aが設けられている。
【0032】
次に、扉12,13の開扉動作について説明する。
【0033】
図3(a)に示すように、キャビネット10の扉12を開扉する場合には、まず、取っ手12aを前面側に引きつつ横方向に引っ張ることで、扉12が前面側にスイングしつつ横方向(矢印X方向の右手前側)へスライド移動し、扉12が開扉される。扉12は、図3(a)の太矢印で示すように動作する。
【0034】
図3(a)に示すように、扉12が開扉された状態になると、連結金具14の連結部14b及びフレーム部14cは、扉12の裏側に位置すると共にベース部14aが側壁11bに沿った位置にあるので、収納物を前面側(矢印Y方向の左手前側)から取り出そうとする際に邪魔にならない。また、規制金具15は、キャビネット本体11の底壁11d(図2参照)より下方に位置しているので、収納物を前面側から取り出そうとする際に邪魔にならない。よって、扉12の奥側の収納物を出し入れする際に邪魔となるものが無いので、収納物の出し入れに対する使い勝手を向上できる。
【0035】
また、規制金具15が、キャビネット本体11の下方の足部11gに取り付けられているので、キャビネット本体11の天井壁11cの上方には障害物が存在しない。よって、キャビネット本体11の天井壁11cの上面に物を置けるので、キャビネット10(収納棚R)の上面を物置として使用することができる。
【0036】
図3(b)に示すように、扉13を開扉する場合には、取っ手13aを扉12方向に引っ張ることで、扉13が各レール16,17を滑動することによって横方向(矢印X方向の右手前側)にスライド移動し、扉12が閉扉されていた領域に移動して扉13が開扉される。扉13は、図3(b)の太矢印で示すように動作する。
【0037】
ここで、例えば、規制金具15がキャビネット10の上下方向において各レール16,17間に取り付けられていると、扉13をスライド移動する際に、その扉13の移動経路内に規制金具15が位置して邪魔になるので、キャビネット本体11の開口部11fの開口範囲が狭くなる。しかし、本実施形態では、規制金具15が下側レール17より更に下方に取り付けられるので、その規制金具15が邪魔にならない。その結果、扉12のスライド移動する範囲が広くなるので、開口部11fの開口範囲を広くできる(図3(b)の状態)。よって、扉13が開かれた状態で、前面側から収納物の出し入れがし易くなるので、収納物の出し入れに対する使い勝手を向上できる。さらに、規制金具15は、下側レール17より更に下方に取り付けられ、扉12の下端部と足部11gとを連結するものなので、その規制金具15を使用者が視認し難くなり、キャビネット10の見栄えを向上できる。
【0038】
なお、扉12,13を閉扉する場合には、開扉動作の反対の手順で行われ、扉13を反扉12方向へスライド移動させた後に、扉12を扉13方向にスイングしつつ扉13側にスライド移動させることで行われる。
【0039】
次に、図4を参照して、便器装置Sと収納棚R(特に、キャビネット10)との配置の位置関係について説明する。図4は、便器装置Sと収納棚Rとの位置関係を概略的に示した平面図である。
【0040】
図4(a)は、キャビネット10に取り付けられる扉のうち、スイングしつつスライド移動する扉12が壁面W1側に隣接して位置するように収納棚Rが配置された場合の一例であり、図4(b)は、本実施形態のように、壁面W1側には扉13が位置し、その扉13の隣りに扉12が位置するように収納棚Rが配置された場合の一例である。
【0041】
図4(a)に示すように、便器装置Sには、水を貯留したり吐水したりするので、水を供給するための水道管などからなる給水装置S1が取り付けられている。この給水装置S1は、美的観点から使用者の視界に入り辛い場所、即ち、便器装置Sの奥方(壁面W1に接する位置)で且つ下方(床面Fに接する位置)に配置されている。
【0042】
図4(a)に示すように、スイングしつつスライド移動する扉12が壁面W1に隣接する位置に配置されていると、扉12と給水装置S1との衝突を避けるために、扉12のスイング移動する揺動範囲(二点鎖線で示した経路)外に給水装置S1を位置しないといけない。つまり、便器装置S自体を壁面W2から離れた位置に配置しなければならない。よって、便器装置Sは、壁面W2に対向する壁面に隣接してしまうので、便器装置Sの使用者は圧迫感を受けたり、着座し難いので、便器装置Sに対する使い勝手が非常に悪くなってしまう。さらに、扉12は、便器装置Sの奥方から使用者側に開扉動作するので、使用者の腕が窮屈になると共に扉12の開扉動作の操作が困難になり、キャビネットの使い勝手も悪くなってしまう。
【0043】
しかしながら、図4(b)に示すように、壁面W1側には扉13が位置し、その扉13の隣りに扉12が位置する場合、給水装置S1に対向配置される扉13は横方向にスライド移動するだけであり、扉12がスイングしつつスライド移動する揺動範囲とは無関係になる。よって、便器装置Sと収納棚Rとの間を必要以上に開ける必要がないので、トイレTの領域を有効に利用できるし、便器装置Sの使用者が圧迫感を感じることもないし、着座し難くもなく、便器装置Sに対する使い勝手を向上できる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態のキャビネット10は、扉12,13を開扉する場合に同方向にスライド移動するように構成したので、反スライド方向にトイレTのコーナー部を設けることができる。さらに、2つの扉12,13のうち、一方の扉13を、キャビネット本体11の横方向のみにスライド移動するように構成したので、扉13の開閉動作の際にその扉13がキャビネット本体11の前面側に突出しない。よって、キャビネット10を便器装置Sの側方に配置しても、便器装置Sの給水装置S1に干渉しないので、キャビネット10の配置の自由度を充分に確保できるし、トイレTの狭い空間内を有効に利用できる。
【0045】
なお、扉12,13を開扉する場合に同方向にスライド移動するように構成したことで、扉12,13の反スライド方向に他のキャビネット等も設けることができるので、収納棚Rの組み合わせの自由度も増すことができる。
【0046】
また、扉12を開扉動作する場合には、便器装置Sに着座した使用者から扉12が離れる方向にスライド移動し、扉13の開扉動作は、横方向のみにスライド移動するので、扉12,13が使用者側に向かって動作しないので、扉12,13の開扉動作の操作が困難になることを抑制できる。つまり、使用者が扉12,13の開扉動作を行う場合に腕が窮屈になり操作が困難になることを抑制できる。
【0047】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0048】
例えば、上記実施形態では、キャビネット10をトイレT内に配置するものとしたが、キャビネット10を洗面台の下方に配置しても良いし、キッチンの下方および上方に配置するものとしても良い。キャビネット10は、洗面台やキッチンに使用したとしても、扉12,13のスライド移動が同方向になり、コーナー部に配置可能な構成になるので、キャビネット10の配置の自由度を確保できる。
【0049】
また、上記実施形態では、キャビネット10の扉12を、キャビネット本体11の前面側にスイングしつつ扉13から離反する方向にスライド移動するように構成したが、扉12は、スイングせずに、そのまま、扉13から離反する方向にスライド移動するように構成しても良い。この構成では、キャビネット10の前面側に扉12,13が開扉するための領域が不要になるので、キャビネット10と便器装置Sとの間の距離を更に短くでき、トイレTの空間を有効に利用できる。なお、扉12がスイングせずに横方向にスライド移動する場合には、キャビネット10の扉12側の側方に他のキャビネット等を配置しない、又は、他のキャビネットの前面が扉12の厚み分奥側に位置するように構成する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態のキャビネットが配置されたトイレの全体を示した斜視図である。
【図2】(a)は、キャビネットの全体を示した斜視図であり、(b)は、上側レールの一部を拡大して示した斜視図である。
【図3】キャビネットに取り付けられる扉の開扉動作を示した斜視図である。
【図4】便器装置と収納棚との位置関係を概略的に示した平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 キャビネット(トイレユニットの一部)
11 キャビネット本体
11f 開口部
12 扉(第1扉)
13 扉(第2扉)
14 連結金具(連結部材)
15 規制金具(規制部材)
16 上側レール(レール部材の一部)
17 下側レール部材(レール部材の一部)
R 収納棚
S 便器装置(トイレユニットの一部)
T トイレ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱状に形成され前面側に開口部を有するキャビネット本体と、そのキャビネット本体の開口部を覆うように前記キャビネット本体の横方向に並設される第1及び第2扉とを備えたキャビネットにおいて、
前記第1及び第2扉は、前記キャビネット本体に対して閉扉された状態で前面側がほぼ面一に並設されており、
前記第1扉は、前記第2扉から離反する方向で且つ前記キャビネット本体に対して横方向にスライド移動して開扉され、
前記第2扉は、前記第1扉が開扉された状態で、その第1扉があった横方向にスライド移動して開扉されることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記キャビネット本体の天井壁および底壁にそれぞれ設けられ、前記キャビネット本体の横方向に前記第2扉をスライド移動可能に構成するレール部材と、
前記第1扉の裏側面と、前記キャビネット本体の前記第1扉側の側壁とを連結し、前記第1扉を前記キャビネット本体に対して前記前面側にスイングしつつ前記第2扉から離反する横方向にスライド移動可能に構成する連結部材と、
前記キャビネット本体の上下方向において前記キャビネット本体の底壁に設けられる前記レール部材より更に下方に取り付けられ、前記第1扉が前記第2扉から離反する横方向にスライド移動する範囲を規制する規制部材とを備えていることを特徴とする請求項1記載のキャビネット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されるキャビネットと、便器装置とを備えたトイレユニットにおいて、
前記キャビネットは、前記第1及び第2扉のスライド移動方向が前記便器装置の前奥方向とほぼ並行になるように配置され、前記便器装置の奥方に前記第2扉が位置すると共に前記便器装置の前方に前記第1扉が位置するものであることを特徴とするトイレユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−125062(P2010−125062A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302976(P2008−302976)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】