キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画法を用いたタンパク質分離装置およびその方法
タンパク質試料をpIに基づいて1次分離するキャピラリー等電点電気泳動装置(2)、および前記キャピラリー等電点電気泳動装置(2)の一側に連結設置され、1次分離されたタンパク質を2次分離する中空糸フローフィールドフロー分画部(4)を含むタンパク質分離装置を開示する。本装置は、タンパク質をpIと分子量の大きさに基づいて分離することができ、タンパク質分離の際にタンパク質が変性されないうえ、タンパク質を分離回収した後、回収されたタンパク質を酵素加水分解処理する場合、ペプチドの分析にナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法を適用してタンパク質の識別を直接利用することができるという効果がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画 (capillary isoelectric focusing-hollow fiber flow field flow fractionation) 法を用いたタンパク質分離装置および方法に係り、さらに詳しくは、タンパク体(proteome)などの生体巨大分子タンパク質を等電点と分子量の差異を用いてタンパク質が変性しない状態で分離することが可能なタンパク質分離装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生命科学および医薬分野において、疾病の治療および予防に関連して疾病関連タンパク質についての体系的な分析が要求されている。
分子生物学およびゲノミクス(ゲノム科学)を含んだ薬物発見のための基礎研究の発展に伴い、最近、薬物発見の領域が急速に変化している。特に、ゲノミック薬物発見で代表される、薬物発見のための新規方法が開発されている。
このため、前述した生命科学および新規医薬品開発などの医薬分野では、特定の疾患または特定の環境で生理学的活性を持つ物質を確認しなければならない。このような生物学的活性を持つ物質は大部分タンパク質からなっており、このようなタンパク質の構造および機能の解明は前記生命科学および医薬分野における本質的な問題に該当する。
【0003】
ヒト遺伝子の種類は約35,000程度と確認されたが、ゲノム(genome)が生産するタンパク質の数は数十万〜数百万に達すると推定されている。細胞器官内で必要な全ての反応を行うことがタンパク質の役割なので、遺伝子の機能をタンパク質の水準で体系的に研究することが求められている実情である。
【0004】
一方、前述したタンパク質は、分子量、等電点(isoelectric point、pI)、親水性または疎水性基質などの様々な特性によって非常に複雑である。よって、タンパク質を分析するためには、1次的にタンパク質を分離した後、これを質量分析法と生物情報学などに連係させてタンパク質を識別する過程が必要である。このような過程において、疾病関連タンパク質の場合、他の一般なタンパク質に比べて相対的存在比が低いタンパク質なので、高性能のタンパク質分離技術によってこれを分析することが必要となる。
【0005】
タンパク質は、生命現象に非常に重要であり、タンパク質分子、DNA分子、合成化合物または光子などが含まれる他の分子との相互作用においてその機能を示す。よって、特定のタンパク質を理解するためには、このような分子の物理的および/または化学的性質を詳述することに止まらず、互いに影響を及ぼす分子を同定し、相互作用(生理学的作用)現象の様式を解明することにより、どんな相互作用がどの分子と共に発生するかを確認することが必要である。
【0006】
タンパク質を分離および分析する代表的な方法としては、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Sodium dodecylsulfate-polyacrylamide gel electrophoresis、SDS−PAGE)法がある。これは、ポリアクリルアミドゲル板に電場をかけて選択性の差異を用いてタンパク質を分離する方法である。この方法は、タンパク質を分子量の順で分離して確認する分野、および単純なタンパク質の分離・確認過程に広く用いられる1次元分離方法である。このような分離方法は、タンパク質の3次構造がSDS溶液状態で変性され、或いはタンパク質がゲルの内部に閉じ込められるという問題点がある。
【0007】
一方、ゲノムによって生成されるタンパク質集合体(タンパク体)と定義されるもので、細胞内における位置、或いは細胞または組織の生理的な状態によってタンパク質の生成および相対的存在比などが決定されるプロテオームなどの多数のタンパク質混合物を分離し、その特性を同定する場合には、前述した1次元分離技術のみでは識別自体が不可能である。
【0008】
したがって、前記タンパク質集合体を分離するためには、タンパク質の特性に応じて1次分離処理されたタンパク質を、タンパク質の別の特性である分子量の差異によって2次分離処理する2次元分離方法、すなわち2次元−ポリアクリルアミド−ゲル電気泳動法(2D−PAGE)が使用される[Zhou, F.; Johnston, M. V. Anal. Chem. 2004, 76, 2734-2740; Klose, J.; Kobalz, U. Electrophoresis, 1995, 16, 1034-1059; Righetti, P. G.l Castagna, A.; Herbert, B. Prefractionation Techniques in Proteome Analysis, Anal. Chem. 2001, 73, 320A-326A.]。
【0009】
このような2D−PAGEは、両性電解質(ampholyte)担体でpH勾配が固定形成されている狭いゲルストリップにおいてタンパク質等電電荷(pI)に応じて等電点電気泳動(isoelectric focusing、IEF)させる。この段階は約12時間かかる。
また、前記タンパク質がpIの順序に基づいて分離された後、ポリアクリルアミドゲル板の上端の横方向にゲルストリップを固定させた後、縦方向に電気泳動を行うと、タンパク質は分子量の大きさの順で縦方向に分離されるが、この際、タンパク質分子量の小さいものがゲル板の下端に多く移動する。前述した2D−PAGE分離にかかる総時間は約36時間程度である。
【0010】
一方、2次元分離が終わると、ゲル板上に現れたタンパク質スポットを染色してタンパク質の数を確認し、必要に応じて各スポットのタンパク質を回収して酵素分解処理した後、質量分析法を用いてタンパク質を識別する。
【0011】
このような2D−PAGE方法は、高い解像度を持っているためタンパク質の大略的なパターンの確認に非常に有用であり、準回収(semi-preparative)規模への分離が可能であって非常に複雑なタンパク質混合物形態を持つヒト血漿タンパク質だけでなく、小便、各種生体組織などから抽出したタンパク質の分析、疾病の検出および診断のために臨床的に使用できる[(Giddings, J. C., Unified Separation Science, John Wiley & Sons, New York 1991, pp. 126-128.)]。
【0012】
ところが、前記2D−PAGEは、労働集約的方法であり、自動化が難しいうえ、検出感度および力動的な範囲における制限による問題点などがあり、タンパク質分離の際にSDS溶液を使用するので、分離のためのタンパク質を変性されない状態で分離し難いから、タンパク質が変性された状態で分離される。また、前記2D−PAGEは、分離されたタンパク質もゲルマトリックス内に閉じ込められていて試料の回収が容易ではないため、ゲル内でタンパク質を酵素分解処理した後、ペプチド形態で回収してから分析しなければならないという問題点などがある。
【0013】
一方、キャピラリー内で等電点電気泳動を行うキャピラリー等電点電気泳動(capillary isoelectric focusing、CIEF)方法は、シリカキャピラリー内に両性電解質担体をタンパク質と共に満たした後、電場をかけてタンパク質のpIに応じて分離する方法である[Conti, M.; Gelfi, C.; Righetti, P.G. Electrophoresis 1996, 17, 1485-1491.]。
ここで、前記等電点電気泳動は、前述した2D−PAGEの等電点電気泳動(IEF)と同一の原理を持つが、ゲルストリップではなく、シリカキャピラリー内で行われる点で差異を示している。前記キャピラリー等電点電気泳動は、キャピラリー内で分離が行われるため、少量のタンパク質試料を処理することができ、高い感度を持つ場合にはpI値が0.003の小さい差異を持つタンパク質の分離も可能である[Quigley, W.C.; Dovichi, N. J. Anal. Chem. 2000, 76, 4645-4658]。
【0014】
また、前記キャピラリー等電点電気泳動は、キャピラリー内で分離が行われるため、少量のタンパク質試料を処理することができ、高い感度を持つ反面、プロテオームなどの複雑なタンパク質混合物を処理するには分離能力に限界があるから、分離効率を増大させるために単一分析技術として使用するよりは、クロマトグラフィーなどの2次分離方法とオンライン連結して使用しようとする努力が最近試みられている。
【0015】
前述したキャピラリー等電点電気泳動とオンラインで連結して2次元分離を行う技術として代表的な一例は、キャピラリー等電点電気泳動をキャピラリー逆相液体クロマトグラフィー(reversed phase liquid chromatography、RPLC)とオンライン連結したキャピラリー等電点電気泳動−逆相液体クロマトグラフィー(CIEF−RPLC)法である。これは、キャピラリー等電点電気泳動でpI領域に基づいて分離されたタンパク質、またはペプチドバンドをクロマトグラフィーカラムでペプチドの疎水性の差異によって2次的に分離する方法である[Chen, J.; Lee, C. S.; Shen, Y.; Smith, R. D.; Baehrecke, E. H. Electrophoresis 2002, 23, 3143-3148.]。このような方法を用いる場合、ショウジョウバエタンパク体から加水分解により得られたペプチド混合物に対して実験した結果、8時間程度の分離作業によってピーク容量1800以上の効率を得ることができる。
【0016】
また、キャピラリー等電点電気泳動とキャピラリーゲル電気泳動(capillary gel electrophoresis、CGE)法をオンラインで連結するキャピラリー等電点電気泳動−キャピラリーゲル電気泳動(CIEF−CGE)法は、前述したポリアクリルアミドゲル板の代わりにポリアクリルアミドゲルが満たされたキャピラリー内でタンパク質分子量の順序による分離を行うことができ、ヘモグロビンなどの簡単なタンパク質の分離に試みられた[Yang, C.l Liu, H.; Yang, Q.; Zhang, L.; Zhang, W.; Zhang Y. Anal. Chem. 2003, 75, 215-218.]。
【0017】
ここで、前記キャピラリー等電点電気泳動−逆相液体クロマトグラフィー法は、タンパク質次元における分離よりは、タンパク質酵素で加水分解した後で得られたペプチドの混合物を分離する場合に有用であるが、タンパク質がクロマトグラフィーカラムを通過するときに誘発されるタンパク質鎖の破壊、カラム内におけるタンパク質損失などによりタンパク質への適用が困難である。キャピラリー等電点電気泳動−逆相液体クロマトグラフィーを質量分析器にエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)方法でオンライン連結することは可能であるが[Tnag, Q.; Harrata, A. K.; Lee, C. S. Anal. Chem. 1996, 68, 2482-2487; Yang, L.; Lee, C. S.; Hofstadler, S. A.; Pasa-Tolic, L.; Smith, R. D. Anal. Chem. 1998, 70, 3235-3241; Martinovic, S.; Berger, S. J.; Pasa-Tolic, L.; Smith, R. D. Anal. Chem. 2000, 72, 5356-5360]、キャピラリー等電点電気泳動の分離に用いられる両性電解質が除去されないため、分離が終了した後、両性電解質を除去するために別途の精製過程を経なければならない。
【0018】
したがって、前記方法は、両性電解質の除去が先行されなければ、溶液中のイオンの妨害により試料分析が困難になるところ、これを解決するために、マイクロ透析可能な陰極セルなどのメンブレンを用いて両性電解質を相当量除去しなければならない[Zhou, F.; Johnston, M. V. Anal. Chem. 2004, 76, 2734-2740]。ところが、前述した方法を用いてタンパク質を分離するとしても、逆相液体クロマトグラフィー分離の際に有機溶媒が使用されるので、タンパク質の変性を回避することができず、分子量の大きいタンパク質の分離に適用することができないという問題点がある。
【0019】
一方、タンパク質を分離量の大きさの順序に基づいて分離する方法としては、フローフィールドフロー分画(flow field flow fractionation、FIFFF)法がある。これは、フィールドフロー分画(field flow fractionation、FFF)法の一つであって、タンパク質、細胞、水溶性高分子およびナノ粒子の大きさ別分離、および拡散係数、粒子サイズ、分子量などの特性分析に用いられる分離分析法である[J. C. Giddings, F.J.F. Yang, M. N. Myers, Science 1976, 193, 1976, 1244; M. H. Moon, P.S. Williams, H. Kwon, Anal. Chem. 1999, 71(14), 1999, 2657.]。
【0020】
ここで、前記フィールドフロー分画法による分離において、使用するチャネルは断面正方体であり、中空のチャネルであって、静止相が満たされていない。試料の分離は、チャネル軸に沿って試料を移動させる流体の流れ方向に垂直方向にかける外部場の強度に応じて行われる。よって、前記フローフィールドフロー 分画法 は、外部場として流体の交差流れを用い、前記交差流れの速度を調節してタンパク質などの巨大分子の滞留を制御する。
【0021】
前記フローフィールドフロー分画チャネル内における試料の滞留は、チャネルの底を抜け出す交差流れの速度と試料のブラウン拡散運動の均衡によって行われる。試料がチャネル内で移動する平均高さは、タンパク質の場合、分子量またはストークの直径によって異なるブラウン拡散の度合いによって決定される。したがって、分子量が小さいほど大きい拡散運動を行うことになり、チャネルの底から高い位置で交差流れの強度と平衡をなす。この際、チャネルの軸に沿って流れる分離流れは放物線型であり、タンパク質または巨大分子試料はその大きさによる分離順序を持つ。このため、分子量の小さい試料がまずチャネルから排出されることにより、タンパク質分子量の大きさの順序による分離が行われる。
【0022】
一方、タンパク質を分離および分析する別の一例は、中空糸膜を分離チャネルとして用いる分離法[W.J. Lee, B.-R.Min, M.H.Moon, Anal. Chem. 1999, 71(16), 3446; M.H.Moon, K.H. Lee, B.-R.Min, J. Microcolumn Sep., 1999, 11(9), 676; P. Reschiglian, A. Zattoni, D. Parisi, L. Cinque, B. Roda, F. D. Piaz, A. Roda, M. H. Moon, B.-R. Min, Anal. Chem. 2005, 77, 47]であって、外部場の役割は中空糸膜の外壁に排出される交差流れまたは放射流れの速度によって決定され、チャネル内の試料は、外部場と平衡を維持する場合、図1に示すように、円形の試料帯を成しながら進行し、この際、チャネルの縦軸に沿って進行する分離流れとの比率を調節して分離速度を調節する。
【0023】
ここで、図1はタンパク質の分離に適用される中空糸フローフィールドフロー分画(HF FIFFF)法の装置構成を示すものであって、流体はHPLCポンプ140から伝達され、チャネルから分離されて溶離されるタンパク質試料は紫外線/可視光線検出器130を用いて検出される。
【0024】
前述した中空糸フローフィールドフロー分画法を用いてタンパク質を分離する場合、分子量が小さいタンパク質から分子量の大きいタンパク質の順で分離することができ、分離溶液として緩衝溶液を使用するので、タンパク質を変性されていない状態で分離すると共に、チャネル内に充填物が満たされていないため、タンパク質試料の破壊または詰まり等を最小化することができるうえ、中空糸膜の内径を減少させる場合、マイクロ流れ速度でタンパク質分離を実現することができて微量のタンパク質分離に適する[I. Park, K.-J. Paeng, D. Kang, M.H.Moon, J. Separation Sci., 2005, 28, 2043; D. Kang, M. H. Moon, Anal. Chem., 2005, 77, 4207]。
【0025】
ところが、前記中空糸フローフィールドフロー分画法を用いた分離法は、分子量が小さいタンパク質のから分子量の大きいタンパク質の順で分離することができ、タンパク質試料の破壊または中空糸膜のチャネル詰まり等を最小化することができ、比較的低価の中空糸膜を使用するので、費用的な側面で利点を持っているが、分離能が所望するほど良くなく、タンパク質の多様な特性による分離を行うことが難しいという問題点などがある。
【発明の開示】
【0026】
そこで、本発明は、前述した問題点を解決するためのもので、その目的は、ポリアクリルアミドゲルを使用することにより、タンパク質の変性およびゲル内へのタンパク質の閉じ込めといった問題点などを伴う2D−PAGE、および有機溶媒を使用し、両性電解質を除去するために別途の精製処理を必要とするなどの問題点を伴うキャピラリー等電点電気泳動−逆相液体クロマトグラフィー分離方法の欠点を克服するために、ゲルを使用しない非ゲル方式のタンパク質分離過程中に両性電解質が自動的に除去されるとともに、水溶液上でタンパク質のpIと分子量の差異によってタンパク質分離が行われ得るようにした非ゲル方式の液相2次元タンパク質分離方法を提供することにある。
【0027】
この発明の前記および他の目的、特徴およびその他の利点は、添付図面を参照する次の詳細な説明によって明確に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
一つの観点において、本発明は、タンパク質試料をpIに基づいて1次分離するキャピラリー等電点電気泳動装置と、前記キャピラリー等電点電気泳動装置の一側に連結設置され、1次分離されたタンパク質を2次分離する中空糸フローフィールドフロー分画部とを含むタンパク質分離装置を提供する。
【0029】
他の観点において、本発明は、I)分離分析しようとするタンパク質試料と両性電解質溶液の混合物を第1注入ポンプに満たした後、等電点電気泳動用キャピラリーに前記混合物を供給する段階と、II)前記等電点電気泳動用キャピラリーに約10〜50分間200〜700V/cmの電場をかけて等電点電気泳動させた後、全ての分離が終了するまで200〜700V/cmの電場を維持する段階と、III)第2注入ポンプに陽電解質溶液を満たした後、これを等電点電気泳動用キャピラリーに注入し、等電点電気泳動されたタンパク質分取液を第1バルブへ移動させて試料ループに満たす段階と、IV)緩衝溶液貯留部材の一側に連結設置された供給ポンプを作動させ、緩衝溶液貯留部材に貯留された緩衝溶液を第1バルブに供給して、前記試料ループに満たされたタンパク質分取液を中空糸膜に供給すると同時に、前記第1バルブと連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側終端へ緩衝溶液を供給して平衡を維持する段階と、V)前記段階IV)の平衡が終了した後、第3バルブを閉鎖し、その後緩衝溶液貯留部材の緩衝溶液を第1バルブを介して中空糸膜に流入されるようにして、フローフィールドフロー分画法で分子量の小さいタンパク質から分子量の大きいタンパク質の順でタンパク質を分離して検出器に流入させる段階とを含む、タンパク質分離方法を提供する。
【0030】
本発明に係るタンパク質分離装置は、タンパク質を分離分析するためのものであって、タンパク質をpIに基づいて分離することが可能なキャピラリー等電点電気泳動装置に、タンパク質を分子量の大きさの順序に従って分離することが可能な中空糸フローフィールドフロー分画部を互いに連結設置して、タンパク質を2次元分離技術で分離分析するように構成される。したがって、本発明に係るタンパク質分離装置は、前記キャピラリー等電点電気泳動および中空糸フローフィールドフロー分画を全て含むので、キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画装置とも指称される。
ここで、本発明に係るキャピラリー等電点電気泳動(CIEF)装置は、キャピラリー内で等電点電気泳動を行う装置を意味するものであって、等電点電気泳動用キャピラリー、好ましくはテフロン(登録商標)キャピラリー内に両性電解質担体をタンパク質試料と共に満たした後、電場をかけてタンパク質をタンパク質のpIに基づいて分離する装置を意味する。前記中空糸フローフィールドフロー分画部は、中空糸膜を用いて、中空糸膜に流入されるタンパク質試料混合物からタンパク質を分子量の大きさによって分離する装置を意味する。
【0031】
特に、前記キャピラリー等電点電気泳動のみを単独で用いてタンパク質試料を分離するキャピラリー等電点電気泳動方法は、分離に使用された両性電解質がタンパク質試料と共に収得されることにより、前記両性電解質の除去が必須的に要求される。このような理由により、前記キャピラリー等電点電気泳動方法は、一般にタンパク質試料を分取した後、半透過膜を用いた再分析(dialysis)方法が別途に要求される。ところが、前述した再分析方法を行わない場合、タンパク質を最終的に質量分析する段階において、前記両性電解質が分析を妨害する要因として作用するので、本発明は、前記キャピラリー等電点電気泳動法で分取されたタンパク質試料を中空糸膜に注入させてフィールドフロー分画法で分離することにより、前記両性電解質を自然に除去することができるようにする。
【0032】
しかも、前記キャピラリー等電点電気泳動法は、キャピラリー内で電場による分離が終了すると、タンパク質試料をキャピラリーの外に移送しなければならないので、労働集約的であり、自動化が困難である。よって、本発明は、キャピラリーの両側にそれぞれ2つのティー(Tee)を用いて電極およびシリンジポンプを連結設置してキャピラリー等電点電気泳動法によるタンパク質試料の分析を自動化する。
【0033】
ひいては、本発明に係るタンパク質分離装置は、キャピラリー等電点電気泳動装置と中空糸フローフィールドフロー分画部を互いに連結設置して構成することにより、有機溶媒を全く使用しない。よって、タンパク質試料の分離の際にタンパク質の変性を伴わず、分析しようとするタンパク質試料をpIおよび分子量領域に基づいて分離するが、ゲル相ではなく液相でpI−分子量の方法によってタンパク質試料を分離することができ、所望のpI−分子量領域のタンパク質分取液(fraction)を分取することができる。また、本発明に係るタンパク質分離装置は、分析に必要なタンパク質試料の最小限の量も従来のタンパク質分離装置に比べて10倍程度少ない量である。
【0034】
このような本発明に係るタンパク質分離装置をより具体的に考察すると、本発明に係るキャピラリー等電点電気泳動装置は、等電点電気泳動用キャピラリーと、前記等電点電気泳動用キャピラリーの終端の一側に連結設置された第1連結部材と、前記第1連結部材の一側に連結設置され、タンパク質試料および両性電解質の混合物を注入する第1注入ポンプと、前記第1連結部材の一側に連結設置された第2連結部材と、前記第2連結部材の一側に連結設置され、陽電解質溶液を注入する第2注入ポンプと、前記第2連結部材の一側に連結設置された陽極と、前記第1連結部が連結設置されたキャピラリーの一側の終端に対向する他側の終端に連結設置された第3連結部材と、前記第3連結部材の一側に連結設置された第4連結部材と、前記第4連結部材の一側に連結設置された陰極電解質蓄積部材と、前記陰極電解質蓄積部材が連結設置された第4連結部材の一側に対向する他側に連結設置された陰極とから構成される。
【0035】
ここで、前記等電点電気泳動用キャピラリーは、タンパク質試料を等電点電気泳動してタンパク質をpIに基づいて分離するためのものであって、このような目的のために使用される通常の等電点電気泳動用キャピラリーであればいずれでも構わないが、好ましくは電気浸透流れ(Electricosmotic Flow)を除去するためにポリビニルアルコールのコートされたシリカキャピラリーなどを使用することがよく、より好ましくはテフロン(登録商標)キャピラリーがよく、推薦するには内径約75〜405μm、外径約360〜793μmのテフロン(登録商標)キャピラリーを使用することがよい。
【0036】
また、本発明に係る等電点電気泳動用キャピラリーは、その長さ方向に対して両側の終端に陰極および陽極を持つ電極と、両性電解質溶液および陽電解質溶液などを供給することが可能な手段が連結設置されなければならないところ、前記陽極が備えられる等電点電気泳動用キャピラリーの一側終端には第1連結部材および第2連結部材が順次連結され、前記第1連結部材の一側には分離しようとするタンパク質試料および両性電解質を流入させるための第1注入ポンプが備えられ、第2連結部材の一側には陽極および陽電解質溶液を注入するための第2注入ポンプが連結設置される。
【0037】
この際、前記第1連結部材は、前述した等電点電気泳動キャピラリー、第1注入ポンプおよび第2連結部材が互いに連結設置され、第2連結部材は、第1連結部材、第2注入ポンプおよび陽極が互いに連結設置されるように備えられるべきなので、好ましくは3方向に互いに連結できる「T」字型連結部材、より好ましくはマイクロ−ティー(Micro-Tee)を使用することが良い。
【0038】
一方、前記第1連結部材、第2連結部材および陽極が順次連結設置される等電点電気泳動用キャピラリー一側の対向する他側には陰極が連結設置されなければならない。よって、前記陰極は、第1連結部材が連結設置されたキャピラリーの一側終端に対向する他側終端に連結設置される第3連結部材、および前記第3連結部材の一側に連結設置される第4電極部材に連結設置されるように構成される。この際、前記第4連結部材の一側には、電極の表面に発生する気泡を捕集するための陰極電解質溶液が満たされている電解質蓄積部材が連結設置されている。前記第4連結部材に連結設置される第3連結部材は、キャピラリーでpIに基づいて分離されるタンパク質試料を中空糸フローフィールドフロー分画部へ移動させるための経路が別途に備えられている。
【0039】
したがって、本発明に係る第3連結部材および第4連結部材は、前述した第1連結部材および第2連結部材と同様に、3方向に互いに連結できる「T」字型連結部材、より好ましくはマイクロ−ティーを使用することが良い。
【0040】
本発明に係る中空糸フローフィールドフロー分画(HF FIFFF)部は、キャピラリー等電点電気泳動装置の第3連結部材の一側に連結設置され、キャピラリー等電点電気泳動装置で分離されたタンパク質試料が流入される第1バルブと、前記第1バルブの一側に連結設置された中空糸膜と、前記第1バルブが連結設置された中空糸膜の一側に対向する他側に連結設置された検出器と、前記第1バルブおよび前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の一側の終端に対向する他側の終端に連結設置され、内部に緩衝溶液を貯留する緩衝溶液貯留部材と、前記緩衝溶液貯留部材に連結設置され、貯留された緩衝溶液を前記第1バルブおよび前記中空糸膜に供給する供給ポンプ部とから構成される。
【0041】
ここで、本発明に係る第1バルブに連結設置される中空糸膜の終端の一側には必要に応じて、第5連結部材を連結設置した後、前記第5連結部材の一側に第1バルブを連結設置し、前記第5連結部材の他の一側に放射流れを可能にする放射流れの移動経路を提供するための経路が備えられてもよい。
【0042】
本発明に係る中空糸膜は、タンパク質を分子量に基づいて分離するためのものであって、このような目的のために使用される通常の中空糸膜であればいずれでも構わないが、好ましくは透過限界10〜100kDa程度の中空糸膜がよく、より好ましくは透過限界30kDa、内径300〜1000μm、外径500〜1200μmおよび長さ10〜40cmの中空糸膜がよく、その材質はポリスチレンスルホン酸、ポリ塩化ビニール、ポリアクリロニトリルまたはこれらの混合物などからなることが良い。
【0043】
特定的に、本発明に係る中空糸膜は、中空糸膜が内部に挿入できる中空を有する円筒型管、例えばガラス管に挿入されて構成されるところ、前記ガラス管は、中空糸膜が安定的に挿入できるものであればいずれでも構わないが、少なくとも、前記中空糸膜の挿入されたガラス管は、中空糸膜を通じて流れるタンパク質試料および緩衝溶液などがガラス管の外部に排出されないように完全に密封されなければならない。
【0044】
本発明に係る第1バルブは、キャピラリー等電点電気泳動装置で分離されたタンパク質試料が流入された後、これを中空糸膜に供給するためのものであって、好ましくはキャピラリー等電点電気泳動装置の第3連結部材の一側および中空糸膜の一側の終端に連結設置され、別の一側には緩衝溶液貯留部材から提供される緩衝溶液が流入される経路が連結設置されている。
また、本発明に係る第1バルブは、その内部のキャピラリー等電点電気泳動装置でpIに基づいて分離されたタンパク質試料の一側に試料ループが備えられ、キャピラリー等電点電気泳動装置でpIに基づいて分離されたタンパク質試料が満たされる。
【0045】
ここで、前記第1バルブは、前記第3連結部材、中空糸膜および緩衝溶液の流入経路が互いに連結設置されるところ、前述したタンパク質試料および緩衝溶液などの容易な流れのために、前記第1バルブは6ポートバルブを使用することがよい。
【0046】
一方、前記第1バルブに供給される緩衝溶液は緩衝溶液貯留部材に満たされており、前記緩衝溶液貯留部材の一側には、緩衝溶液を外部に供給するために駆動力を提供することが可能な供給ポンプが備えられる。
【0047】
特定的に、本発明に係る緩衝溶液の移動経路に圧力バルブを備えることにより、緩衝溶液の流速および流量などを調節することができる。このような場合、前記緩衝溶液貯留部材から排出される緩衝溶液の移動経路を2つの流れ経路に分離した後、それぞれの流れ経路に第2バルブおよび第3バルブをそれぞれ連結設置し、前記第2バルブの一側には第1圧力バルブおよび第1バルブを連結設置して構成し、前記第3バルブの一側には第1バルブが連結設置された中空糸膜の一側に対向する他側、すなわち中空糸膜の出口を連結設置する。
【0048】
特定的に、前記第3バルブを介して中空糸膜の出口に流入される緩衝溶液は、前記第3バルブおよび検出器を順次通過した後、中空糸膜の出口に流入されるように構成することもできる。
【0049】
ここで、前記中空糸膜から分離されて排出されるタンパク質が検出器に流入される過程で発生する試料の帯状拡散を最小化させるために、前記第3バルブは検出器の排出口に連結設置することが良い。
【0050】
一方、緩衝溶液を第3バルブから検出器を通過させて中空糸膜の出口に流入させることは中空糸膜におけるフローフィールドフロー分画による分離に必須的な手続きである。中空糸膜内におけるタンパク質分離が始まる前にタンパク質の拡散運動と放射流れで伝達される外部場が平衡を成さなければならないが、これを、通常、試料弛緩過程(sample relaxation)とも指称する。
【0051】
ここで、前記試料弛緩過程のために、中空糸膜の入口と出口を介してそれぞれ流体を流入させるが、中空糸膜の全長の10分の1位置で試料を集積させることが一般な方法である。このために、中空糸膜の入口と出口を介して流入される流体の速度を1:9〜5:5に調節する場合、全長の10〜50%となる位置、好ましくは10分の1位置で、試料は平衡状態を得ながら集積される。この際、前記試料の弛緩過程が完了すると、さらに緩衝溶液の流れを中空糸膜の入口にのみ伝達して分離を行い始める。
【0052】
一方、本発明に係る前記第2バルブおよび第3バルブは、緩衝溶液貯留部材から排出される緩衝溶液の流れを2つの流れ方向に分けられて流れるようにし、或いは緩衝溶液を第1バルブにのみ流れるようにするなどのように緩衝溶液の流れを容易に調節するために、少なくとも2つ以上の流れ方向を持つバルブを使用することが好ましいところ、推薦するには四方弁を使用することが良い。
【0053】
これと共に、中空糸膜の放射流れによって移動しているタンパク質試料の溶離時間および分離能などは、第2圧力バルブの操作によってタンパク質試料の移動方向と垂直的な方向の放射流れを調節することにより調節できる。
【0054】
特定的に、前記第3バルブを、少なくとも2つ以上の流れ方向を持つバルブ、好ましくは四方弁から構成する場合、前記四方弁の一側は緩衝溶液貯留部材に連結設置し、前記四方弁の他側は緩衝溶液が外部に排出できる経路として使用することができ、残り流体の移動経路を提供する一側はプラグなどで密封する。
【0055】
一方、本発明に係る第1バルブが連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側、すなわち中空糸膜の出口には、中空糸膜を通過しながら分子量の大きさによって分離されたタンパク質が流入され、分離されたタンパク質を分析する検出器が連結設置されるところ、前記検出器は、分離されたタンパク質の分析に使用される当業界の通常の検出器であれば特に限定されないが、推薦するには紫外線検出器を使用することがよい。
【0056】
また、本発明に係る各装置の構成要素において、タンパク質試料、電解質溶液および緩衝溶液などが流れる移動経路は、前述した物質と反応しない、当業界で通常使用される材質の管を使用すれば特に限定されないが、好ましくはキャピラリー、より好ましくはシリコンキャピラリーを使用することがよい。
【0057】
また、本発明に係るタンパク質分離装置を構成する注入ポンプ、供給ポンプ、バルブおよび圧力バルブなどをコンピュータに連結させて制御し得るように構成した後、最終的にタンパク質が分離されて通過する中空糸膜分離モジュールを自動分取器に連結させる場合、タンパク質をpIおよび分子量によって自動分離することができ、中空糸膜の出口をキャピラリー、好ましくはシリカキャピラリーを用いてエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)質量分析器(mass spectrometry、MS)とオンラインで連結することが可能である。
【0058】
ここで、前記エレクトロスプレーイオン化−質量分析器(ESI−MS)は、タンパク質の質量分析と共にタンデム質量分析法を使用する場合、タンパク質鎖に対する構造分析が可能であってタンパク質の識別に応用することができ、タンパク質試料が中空糸膜で分離される過程中に、等電点電気泳動用キャピラリーから流入した両性電解質は中空糸膜の放射流れと共に排出されるので、両性電解質の自動的な除去が可能になる。
【0059】
一方、前述した構成を持つ本発明に係るタンパク質分離装置は、次の段階によってタンパク質を分離する:
I)分離分析しようとするタンパク質試料と両性電解質溶液の混合物を第1注入ポンプに満たした後、等電点電気泳動用キャピラリーに前記混合物を供給する段階と、
II)前記等電点電気泳動用キャピラリーに10〜50分間200〜700V/cm、好ましくは約500V/cmの電場をかけて等電点電気泳動させた後、全ての分離が終了するまで200〜700V/cm、好ましくは300V/cmの電場を維持する段階と、
III)第2注入ポンプに陽電解質溶液を満たした後、これを等電点電気泳動用キャピラリーに注入し、等電点電気泳動されたタンパク質分取液を第1バルブに移動させて試料ループに充填させる段階と、
【0060】
IV)緩衝溶液貯留部材の一側に連結設置された供給ポンプを作動させ、緩衝溶液貯留部材に貯留された緩衝溶液を第1バルブに供給して、前記試料ループに満たされたタンパク質分取液を中空糸膜に供給すると同時に、前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端に緩衝溶液を供給して平衡を維持する段階と、
【0061】
V)前記段階IV)の平衡が終了した後、第3バルブを閉鎖し、その後緩衝溶液貯留部材の緩衝溶液を前記第1バルブを介して中空糸膜に流入されるようにして、フローフィールドフロー分画法で分子量の小さいタンパク質から分子量の大きいタンパク質の順でタンパク質を分離して検出器に流入させる段階。
ここで、前記段階III)の試料ループに満たされる等電点電気泳動されたタンパク質の体積は1〜10μL、好ましくは約2μLに調節するが、所望のpI領域の大きさだけ調節する。この際、使用された両性電解質のpH領域が3〜10の場合、1μLの体積は約pI1間隔だけに該当するところ、例えば一番目の試料注入過程で1μLを試料ループに充填すると、タンパク質のpI領域は約9〜10領域に該当する。
【0062】
また、前記段階IV)において、前記第1バルブ、および前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端に流れる緩衝溶液の流速比率は約1:9〜5:5に調節され、中空糸膜の両側終端、すなわち第1バルブに連結設置された一側(中空糸膜の入口)および第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端(中空糸膜の出口)に流入される緩衝溶液は中空糸膜の入口から全長の10〜50%となる位置で集中し、前記中空糸膜に流入された緩衝溶液は中空糸膜壁の空隙に沿って中空糸膜の外部に排出されるが、前記タンパク質分取液試料も中空糸膜の入口から全長の10〜50%となる位置で平衡に到達する。
【0063】
必要に応じて、本発明に係るタンパク質分離装置は、検出器の後方に分取液分取器を連結設置して使用することができるところ、前記分取液分取器を検出器に連結設置する場合、タンパク質を分子量領域に基づいて分取することができる。分取したタンパク質分取液は、酵素分解処理してペプチド化した後、ナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法(nanoflow LC−ESI−MS−MS、nanoflow liquid chromatography-electrospray ionization-tandem mass spectrometry)を用いてペプチドを分離し、質量スペクトルをタンパク質データベースと比較してタンパク質を識別することができる。
【0064】
以下、本発明について添付図面を参照して詳細に説明する。ところが、下記の説明は本発明を具体的に説明するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
図2は本発明に係るタンパク質分離装置を示す構成図、図3は本発明に係るキャピラリー等電点電気泳動装置の連結部材の連結様態を示す構成図、図4は本発明に係る中空糸フローフィールドフロー分画部の連結部材の連結様態を示す構成図である。
【0066】
図2〜図4に示すように、本発明に係るタンパク質分離装置は、巨視的な観点で、タンパク質試料をpIに基づいて1次分離するキャピラリー等電点電気泳動装置2と、前記キャピラリー等電点電気泳動装置2の一側に連結設置され、1次分離されたタンパク質を2次分離する中空糸フローフィールドフロー分画部4とから構成される。
【0067】
ここで、前記キャピラリー等電点電気泳動装置2は、等電点電気泳動用キャピラリー12と、前記等電点電気泳動用キャピラリー12の終端の一側に連結設置された第1連結部材6と、前記第1連結部材6の一側に連結設置され、タンパク質試料および両性電解質の混合物を注入する第1注入ポンプ10と、前記第1連結部材6の一側に連結設置された第2連結部材8と、前記第2連結部材8の一側に連結設置され、陽電解質溶液を注入する第2注入ポンプ24と、前記第2連結部材8の一側に連結設置された陽極20と、前記第1連結部材6が連結設置された等電点電気泳動用キャピラリー12の一側の終端に対向する他側の終端に連結設置された第3連結部材14と、前記第3連結部材14の一側に連結設置された第4連結部材16と、前記第4連結部材16の一側に連結設置された陰極電解質蓄積部材18と、前記陰極電解質蓄積部材18が連結設置された第4連結部材16の一側に対向する他側に連結設置された陰極22とから構成される。
【0068】
この際、前記等電点電気泳動用キャピラリー12は、タンパク質試料を等電点電気泳動してタンパク質をpIに基づいて分離するためのものであって、このような目的のために使用される通常の等電点電気泳動用キャピラリー12であればいずれでも構わないが、好ましくは電気浸透流れを除去するために、ポリビニルアルコールのコートされたシリカキャピラリーなどを使用することがよく、より好ましくはテフロン(登録商標)キャピラリー、シリカキャピラリーなどがよく、推薦するには内径75〜405μm、特定的に約310μm、外径360〜793μm、特定的に約610μmのテフロン(登録商標)キャピラリーを使用することがよい。
【0069】
また、本発明に係る等電点電気泳動用キャピラリー12は、その長さ方向に対して両側の終端に陽極20および陰極22を持つ電極と、両性電解質および陽電解質溶液などを供給することが可能な手段が連結設置されるところ、前記陽極20が備えられる等電点電気泳動用キャピラリー12の一側の終端には第1連結部材6および第2連結部材8が順次連結され、前記第1連結部材6の一側には分離しようとするタンパク質試料および両性電解質を流入させるための第1注入ポンプ10が備えられ、前記第2連結部材8の一側には陽極20および陽電解質溶液を注入するための第2注入ポンプ24が連結設置される。
【0070】
この際、前記両性電解質溶液は、等電点電気泳動のために、当業界で通常用いられる両性電解質溶液であればいずれでも構わないが、好ましくはpH3〜10の両性電解質溶液、より好ましくはpH3〜10および濃度2〜5%の両性電解質溶液を使用することがよく、前記陽電解質溶液は、当業界で通常用いられる陽電解質溶液であれもいずれでも構わないが、最も好ましくは20mM H3PO4を使用することがよい。
【0071】
また、前記第1連結部材6は前述した等電点電気泳動用キャピラリー12、第1注入ポンプ10および第2連結部材8が互いに連結設置され、第2連結部材8は第1連結部材6、第2注入ポンプ24および陽極20が互いに連結設置されるように備えられなければならないので、好ましくは3方向に互いに連結できる「T」字型連結部材、より好ましくはマイクロ−ティーを使用することがよい。
【0072】
特に、本発明に係る連結部材6、8、14、16、36としてマイクロ−ティーを使用することは、それぞれの連結部材の隙間体積を最小化させ、分離されたタンパク質試料の通過の際に帯状拡散現象を防止する。
【0073】
一方、本発明に係る第1注入ポンプ10および第2注入ポンプ24は、前記第1注入ポンプ10に満たされるタンパク質試料と、両性電解質および第2注入ポンプ24に満たされる陽電解質溶液を等電点電気泳動用キャピラリー12に注入することが可能な当業界の通常の注入ポンプであればいずれでも構わないが、好ましくはシリンジポンプを使用することがよい。
【0074】
ここで、前記第1注入ポンプ10としてシリンジポンプを使用し、第1連結部材6としてマイクロ−ティーを使用する場合、前記シリンジポンプのチュービング(tubing)がマイクロ−ティーに容易に締結できないので、これを解決するために、前記シリンジポンプである第1注入ポンプ10とマイクロ−ティーである第1連結部材6との間にユニオン54を備えて前記第1注入ポンプ10と第1連結部材6とを互いに連結設置することができる。
【0075】
一方、前記第1連結部材6、第2連結部材8および陽極20が順次連結設置される等電点電気泳動用キャピラリー12の一側の対向する他側には陰極22が連結設置されなければならないところ、前記陰極22は、第1連結部材6が連結設置された等電点電気泳動用キャピラリー12の一側の終端に対向する他側の終端に連結設置される第3連結部材14、および前記第3連結部材14の一側に連結設置される第4連結部材16に連結設置されるように構成される。この際、前記第4連結部材16の一側には電極、特定的に陰極22の表面に発生する気泡を捕集するための用途で陰極電解質溶液が充填されている電解質蓄積部材18が連結設置、好ましくは垂直に連結設置される。前記第4連結部材16に連結設置される第3連結部材14は、等電点電気泳動用キャピラリー12でpIに基づいて分離されるタンパク質試料を中空糸フローフィールドフロー分画部4に移動させるための別途の経路が備えられている。この際、前記陰極電解質溶液は、当業界で通常用いられる陰極電解質溶液であればいずれでも構わないが、最も好ましくは20mMのNaOHを使用することがよい。
【0076】
また、本発明に係る第3連結部材14および第4連結部材16は、前述した第1連結部材6および第2連結部材8と同様に、3方向に互いに連結できる「T」字型連結部材、より好ましくはマイクロ−ティーを使用することがよい。
一方、本発明に係る第3連結部材14および第4連結部材16を互いに連結設置するにおいて、前記第3連結部材14の一側に連結設置された等電点電気泳動用キャピラリー12でpIに基づいて分離されたタンパク質試料が第4連結部材16へ移動しないようにタンパク質試料が通過し得ない別途の分離膜64、好ましくは分子量透過限界30kDa以下、より好ましくは約10kDaの半透膜が備えられたキャピラリー、特定的にシリカキャピラリー38を用いて前記第3連結部材14および第4連結部材16を連結設置する。
【0077】
特定的に、本発明に係る第3連結部材14と第4連結部材16の連結様態は、図3に示すように、第3連結部材14であるマイクロ−ティーの一側はグラファイト材質のマイクロフェルール60、好ましくは約0.025インチのマイクロフェルール60を用いて等電点電気泳動用キャピラリー12に連結設置し、前記等電点電気泳動用キャピラリー12が連結されたマイクロ−ティーの一側に対向する他側にはマイクロタイトスリーブ、好ましくは約0.0155インチのマイクロタイトスリーブ66を用いてキャピラリー、好ましくはシリカキャピラリー30と連結設置してpIに基づいて分離されたタンパク質が中空糸フローフィールドフロー分画部4に移動する経路を提供し、前記マイクロ−ティーの他の一側は電圧伝達のために電極連結用Derlin−Teeとしての第4連結部材16と連結設置するが、前記マイクロ−ティーとDerlin−Teeとの間に、タンパク質試料が電極方向に移動しないように分離膜64として分子量透過限界30kDa未満の半透過膜、好ましくは約10kDaの半透過膜を挿入したシリカキャピラリー38を連結し、前記第4連結部材16であるDerlin−Teeの一側に陰極電解質蓄積部材18を備えて、陰極22の表面に発生する気泡を捕集するように構成される。
【0078】
しかも、本発明に係る陽極20および陰極22は、当業界で通常用いられる電極であれば特に限定されないが、好ましくは白金を使用することが良い。
本発明に係る中空糸フローフィールドフロー分画部4は、キャピラリー等電点電気泳動部2の第3連結部材14の一側に連結設置され、キャピラリー等電点電気泳動装置2で分離されたタンパク質試料が流入される第1バルブ26と、前記第1バルブ26の一側に連結設置された中空糸膜32と、前記第1バルブ26が連結設置された中空糸膜32の一側に対向する他側に連結設置された検出器52と、前記第1バルブ26および前記第1バルブ26に連結設置された中空糸膜32の一側の終端に対向する他側の終端に連結設置され、内部に緩衝溶液を貯留する緩衝溶液貯留部材48と、前記緩衝溶液貯留部材48に連結設置され、貯留された緩衝溶液を前記第1バルブ26および前記中空糸膜32に供給する供給ポンプ50とから構成される。
【0079】
ここで、本発明に係る第1バルブ26に連結設置される中空糸膜32の終端の一側には、必要に応じて、第5連結部材36を連結設置した後、前記第5連結部材36の一側に第1バルブ26を連結設置し、前記第5連結部材36の他の一側に放射流れ56を可能にする放射流れ56の移動経路を提供するための経路が備えられてもよい。
【0080】
特定的に、本発明に係る第5連結部材36は、図4に示すように、テフロン(登録商標)−ティー(Tee)を使用することができるところ、前記テフロン(登録商標)−ティーを第5連結部材36として使用する場合、第1バルブ26の一側に連結設置され、その内部にタンパク質試料および緩衝溶液が移動するシリカキャピラリー30をマイクロタイトスリーブ66と雄ナット62でテフロン(登録商標)−ティーの一側に連結設置し、これに対向する他側は中空糸膜32の一側の終端にマイクロタイトスリーブ66およびスリーブの内側に位置するシリカキャピラリー30が挿入された順序でテフロン(登録商標)フェルール60、好ましくは1/16インチのテフロン(登録商標)フェルール60を通過する方法で締結され、中空糸膜32とテフロン(登録商標)−ティーの内部には中空糸膜32のみが通過できるようにし、前記中空糸膜32の外壁から排出される緩衝溶液(放射流れ)はテフロン(登録商標)フェルール60、好ましくは1/16インチテフロン(登録商標)フェルール60のチュービングを介して外部に排出されるように構成される。
【0081】
また、本発明に係る中空糸フローフィールドフロー分画部4は、さらに、緩衝溶液貯留部材48から排出される緩衝溶液の移動経路を2つの流れ経路に分離した後、それぞれの流れ経路に第2バルブ40および第3バルブ42をそれぞれ連結させ、前記第2バルブ40の一側には第1圧力バルブ44および第1バルブ26を順次連結させ、前記第3バルブ42の一側には第1バルブ26が連結設置された中空糸膜32の一側に対向する他側を連結設置させるように構成することができる。
【0082】
本発明に係る中空糸膜32は、タンパク質試料を分子量に基づいて分離するためのものであって、このような目的のために使用される通常の中空糸膜32であればいずれでも構わないが、好ましくは透過限界10〜100kDaの中空糸膜がよく、より好ましくは透過限界約30kDa、内径300〜1000μm、特定的に約450μm、外径500〜1200μm、特定的に約720μmおよび長さ10〜40cm、特定的に約25cmの中空糸膜がよく、その材質はポリスチレンスルホン酸、ポリ塩化ビニール、ポリアクリロニトリルまたはこれらの混合物などからなることが良い。
【0083】
特定的に、本発明に係る中空糸膜32は、中空糸膜が内部に挿入できる中空を持つ円筒型管、例えばガラス管34に挿入されて使用できるところ、前記ガラス管34は、中空糸膜32が安定的に挿入できるものであればいずれでも構わないが、少なくとも、前記中空糸膜32の挿入されたガラス管34は、中空糸膜32を通じて流れるタンパク質試料および緩衝溶液などがガラス管34の外部に排出されないように完全に密封しなければならない。
【0084】
本発明に係る第1バルブ26は、キャピラリー等電点電気泳動装置2で分離されたタンパク質試料が流入された後、これを中空糸膜32に供給するためのものであって、好ましくはキャピラリー等電点電気泳動装置2の第3連結部材14の一側および中空糸膜32の一側の終端に連結設置され、他の一側には緩衝溶液貯留部材48から提供される緩衝溶液が流入される経路が連結設置されている。
【0085】
必要に応じて、本発明に係る第1バルブ26は、その一側に廃棄物蓄積部材28がさらに連結設置できるところ、前記廃棄物蓄積部材は、陽極20が設置された高さより少なくとも10cm以上高いところに設置し、等電点電気泳動過程で陽極20の終端のキャピラリーに発生し得る電気浸透流れを、重力によって発生する流体力学的力によって最小化させるために設置することができる。
【0086】
また、本発明に係る第1バルブ26は、その内部のキャピラリー等電点電気泳動装置2でpIに基づいて分離されたタンパク質試料の一側に試料ループ58が備えられ、キャピラリー等電点電気泳動装置2でpIに基づいて分離されたタンパク質試料が満たされる。
【0087】
ここで、前記第1バルブ26は、前記第3連結部材14、中空糸膜32および緩衝溶液の流入経路が互いに連結設置されるところ、前記タンパク質および緩衝溶液などの容易な流れのために6ポートバルブを使用することが良い。
【0088】
特定的に、本発明に係る第1バルブ26として6ポートバルブを使用する場合、前記6ポートバルブに備えられた6つのポートのうち、キャピラリー等電点電気泳動装置2から排出されるタンパク質試料の移動経路として備えられたキャピラリーに連結設置されたポートを任意に第1ポート70と指称する場合、前記第1ポート70の左側または右側に隣り合って第2ポート72、第3ポート74、第4ポート76、第5ポート78および第6ポート80が順次備えられ、前記第1ポート70と第4ポート76との間に試料ループ58が連結設置されるように構成される。
【0089】
この際、前記6ポートの流路連結は、最初、第1ポート70と第6ポート80、第2ポート72と第3ポート74、および第4ポート76と第5ポート78の排出口が互いに連結された状態で前記第6ポート80の排出口を介して、キャピラリー等電点電気泳動装置2で分離されたタンパク質試料が第2注入ポンプ24によって第1ポート70および第4ポート76の排出口に連結された試料ループ58に流入された後、前記6ポートバルブを操作して前記6ポートバルブの第1ポート70と第2ポート72、および第3ポート74と第4ポート76の排出口を互いに連結されるようにして、緩衝溶液の流れによって試料ループ58に満たされているタンパク質試料が中空糸膜32に供給されるように構成できる。
【0090】
一方、前記第1バルブ26に供給される緩衝溶液は、緩衝溶液貯留部材48に満たされている。前記緩衝溶液貯留部材48の一側には、緩衝溶液を外部に供給し得るように駆動力を提供する供給ポンプ50が備えられる。この際、前記供給ポンプ50は、前記緩衝溶液貯留部材48に満たされている緩衝溶液を外部に供給することができるものであればいずれでも構わないが、好ましくはHPLCを使用することがよい。
【0091】
特定的に、本発明に係る緩衝溶液の移動経路には、圧力バルブ44、46を備えて緩衝溶液の流速および流量などを調節することができるところ、このような場合、前記緩衝溶液貯留部材48から排出される緩衝溶液の移動経路を2つの流れ経路に分離した後、それぞれの流れ経路に第2バルブ40および第3バルブ42をそれぞれ連結させ、前記第2バルブ40の一側には第1圧力バルブ44および第1バルブ26を連結させて構成し、前記第3バルブ42の一側には第1バルブ26が連結設置された中空糸膜32の一側に対向する他側、すなわちタンパク質試料が排出される中空糸膜32の出口を連結設置し、このような構成を介して前記第1圧力バルブ44を調節することにより、第1バルブ26に流入される緩衝溶液の流速および中空糸膜32の一側、好ましくは中空糸膜32の出口に流入される緩衝溶液の流速比を1:9となるように調節することができる。
【0092】
特定的に、前記第3バルブ42を介して中空糸膜32の出口に流入される緩衝溶液は、前記第3バルブ42および検出器52を順次通過した後、中空糸膜32の出口に流入されるように構成することもできる。
【0093】
この際、前記第2バルブ40および第3バルブ42は、緩衝溶液貯留部材48から排出される緩衝溶液の流れを2つの流れ方向に分けられて流れるようにするか、或いは緩衝溶液を第1バルブ26にのみ流れるようにするなどのように緩衝溶液の流れを容易に調節するために、少なくとも2つ以上の流れ方向を持つバルブを使用することが好ましいところ、推薦するには四方弁を使用することがよい。
【0094】
特定的に、前記第3バルブ42を少なくとも2つ以上の流れ方向を持つバルブ、好ましくは四方弁から構成する場合、前記四方弁の一側は緩衝溶液貯留部材48から排出される緩衝溶液の移動経路に連結設置され、他の一側は緩衝溶液をタンパク質分離装置の外部に排出できる経路として使用することができ、残り流体の移動経路を提供する一側などはプラグ68などで密封する。
【0095】
一方、本発明に係る第1バルブ26が連結設置された中空糸膜32の終端の一側に対向する他側、すなわち中空糸膜32の出口には、中空糸膜32を通過しながら分子量の大きさによって分離されたタンパク質が流入され、分離されたタンパク質を分析する検出器52が連結設置されるところ、前記検出器52は、分離されたタンパク質の分析に使用される当業界の通常の検出器52であれば特に限定されないが、推薦するには紫外線検出器52を使用することが良い。
【0096】
また、本発明に係る各装置の構成要素において、タンパク質試料、電解質溶液および緩衝溶液などが流れる移動経路は、前述した物質と反応しない、当業界で通常用いられる材質の管を使用すれば特に限定されないが、好ましくはキャピラリー30、38、より好ましくはシリコンキャピラリーを使用することがよい。
【0097】
また、本発明に係るタンパク質分離装置は、これを構成する注入ポンプ10、24、供給ポンプ50、バルブ26、40、42、および圧力バルブ44、46などをコンピュータと連結させて制御し得るように構成した後、最終的にタンパク質が分離されて通過する中空糸膜32の分離モジュールを自動分取器(図示せず)に連結させる場合、タンパク質をpIおよび分子量によって自動分離することができ、中空糸膜32の出口をキャピラリー、好ましくはシリカキャピラリーを用いてエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)質量分析器(mass spectrometry、MS)とオンライン連結することが可能である。
【0098】
ここで、前記エレクトロスプレーイオン化−質量分析器(ESI−MS)の場合、タンパク質の質量分析と共にタンデム質量分析法を使用する場合、タンパク質鎖に対する構造分析が可能であってタンパク質の識別に応用することができ、タンパク質試料が中空糸膜32で分離される過程中に、等電点電気泳動用キャピラリー12から流入された両性電解質は中空糸膜32の放射流れと共に排出されるので、両性電解質の自動的な除去が可能になる。
【0099】
次に、前述した構成を持つ本発明に係るタンパク質分離装置の作用方法について説明する。
まず、分離分析しようとするタンパク質試料と両性電解質溶液、好ましくはpH3〜10、濃度2〜5%の両性電解質溶液混合物を第1注入ポンプ10に満たした後、等電点電気泳動用キャピラリー12、好ましくはテフロン(登録商標)キャピラリーに前記混合物を供給する。
【0100】
その後、前記等電点電気泳動用キャピラリー12に10〜50分間200〜700V/cm、好ましくは約500V/cmの電場をかけて等電点電気泳動させた後、全ての分離が終了するまで200〜700V/cm、好ましくは300V/cmの電場を維持する。
【0101】
その後、第2注入ポンプ24に陽電解質溶液、好ましくは20mM H3PO4溶液を満たした後、これを等電点電気泳動用キャピラリー12に注入し、等電点電気泳動されて分取されたタンパク質を第1バルブ12に移動させて試料ループ58に満たされるようにする。
【0102】
この際、前記試料ループ58に満たされる等電点電気泳動されたタンパク質の体積は、1〜102μL、好ましくは最大2μLに調節するが、所望のpI領域の大きさだけ調節する。ここで、使用された両性電解質のpH領域が3〜10の場合、1μLの体積は約pI1間隔だけに該当するところ、例えば一番目のタンパク質試料注入過程で1μLを試料ループ58に充填すると、タンパク質のpI領域は約9〜10領域に該当する。
【0103】
その後、緩衝溶液貯留部材48の一側に連結設置された供給ポンプ50を作動させ、緩衝溶液貯留部材48に貯留された緩衝溶液を第1バルブ26に供給し、前記試料ループ58に満たされたタンパク質分取液を中空糸膜32に供給する。
【0104】
ここで、前記緩衝溶液は、緩衝溶液貯留部材48の一側に連結設置された第2バルブ40および第3バルブ42に同時に供給されて2つの流れに分けられるところ、前記第2バルブ40に供給された緩衝溶液は、第2バルブ40を経て第1バルブ26に供給され、前記第3バルブ42に供給された緩衝溶液は、第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端、すなわち中空糸膜32の出口に、好ましくは検出器52を通過して中空糸膜32の出口に供給される。この際、前記2つの流れに分けられた緩衝溶液の流速比率は第1圧力バルブ44によって約1:9に調節され、中空糸膜32の両側の終端に流入される緩衝溶液は第1バルブ26に連結設置される中空糸膜32の入口から全長の10〜50%となる位置で集中し、前記タンパク質試料も中空糸膜32の入口から全長の10〜50%となる位置で平衡に到達する。
【0105】
また、前記中空糸膜32の両側の終端に流入される緩衝溶液は、中空糸膜32の壁の空隙に沿って中空糸膜の外部に排出されるが(放射流れ)、この過程は、試料の弛緩過程である試料弛緩過程(sample relaxation)といい、タンパク質試料は、前記放射流れ56の強度によって中空糸膜の内壁方向に移動し、同時にタンパク質試料の拡散運動によって試料が中空糸膜32の内方に移動する両方向の力が伝達される。この際、拡散の速い小さい分子量のタンパク質は、拡散の遅い大きい分子量のタンパク質より中空糸膜の内壁から相対的に遠く離れた位置で力の平衡を得る。
【0106】
その後、平衡が終了した後、第3バルブ42を閉鎖し、第2バルブ40を第1バルブ26と直接連結されるようにして、緩衝溶液貯留部材48の緩衝溶液が第1バルブ26を介して中空糸膜32に流入されるようにすることにより、フローフィールドフロー分画法によって分子量の小さいタンパク質から分子量の大きいタンパク質の順でタンパク質を分離して検出器52に流入させる。
【0107】
必要に応じて、本発明に係るタンパク質分離装置は、検出器52の後方に分取液分取器(図示せず)を連結設置して使用することができるところ、前記分取液分取器を検出器52に連結設置する場合、タンパク質を分子量領域に基づいて分取することができる。分取したタンパク質分取液は、酵素分解処理してペプチド化した後、ナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法を用いてペプチドを分離し、質量スペクトルをタンパク質データベースと比較してタンパク質を識別することができる。
【0108】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ところが、下記の実施例は本発明を具体的に説明するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0109】
<実施例1>
タンパク質分離装置の製造
図2に示すように、等電点電気泳動用キャピラリーとして、9.5cm×310μm(内径)のテフロン(登録商標)キャピラリー(Vernon Hills、Cole−Parmer社、米国)の一側終端に外径360μm、内径50μmのシリカキャピラリー(Phoenix、Polymicro Technologies社、米国)を連結管として2つのマイクロ−ティーを順次連結設置した。
【0110】
その後、前記一番目のマイクロ−ティーの一側にユニオン(Delrin Standard Uion、Upchurch Scientific、米国)およびシリンジポンプ(Harvard Apparatus 22、Harvard Apparatus、米国)を順次連結設置し、2番目のマイクロ−ティー(MicroTee、Upchurch Scientific、米国)の一側にシリンジポンプ(Harvard Apparatus 22、Harvard Apparatus、米国)を連結設置し、他の一側に陽極としての白金を連結設置し、一番目のマイクロ−ティーに連結設置されたシリンジポンプにタンパク質試料[ミオグロビン(15kDa、pI6.8)、トリプシノゲン(24kDa、pI9.3)、炭酸脱水酵素(29kDa、pI5.85)、ウシ血清アルブミン(BSA、66kDa、pI4.8)、酵母アルコール脱水素酵素(YADH、150kDa、pI6.23)]およびpH3〜10の両性電解質溶液(Ampholyte High Resolution、Fluka、スイス)を満たし、2番目のマイクロ−ティーに連結設置されたポンプには陽電解質溶液として、0.10μmの分離膜フィルターで濾過した超純水(>18MΩ)で製造された20mM H3PO4溶液を満たした。
【0111】
その後、前記一番目のマイクロ−ティーが連結されたテフロン(登録商標)キャピラリーの一側に対向する他側に連結部材として別の2つのマイクロ−ティーを順次連結設置した後、前記後端に連結設置されるマイクロ−ティーの一側に陰電極としての白金を連結設置し、これに対向する他側には陰電解質溶液として、0.10μmの分離膜フィルターで濾過した超純水(>18MΩ)で製造された20mM NaOH溶液が満たされた電解質蓄積部材(Cross、Upchurch Scientific、米国)を連結設置した。
【0112】
この際、前記2つのマイクロ−ティーは、分子量透過限界10kDaの半透過膜(PLCGC、Mllipore、米国)を挿入したシリカキャピラリー(Phoenix、Polymicro Technologies社、米国)を用いて互いに連結設置した。
【0113】
その後、テフロン(登録商標)キャピラリーに連結設置されるマイクロ−ティーの一側を試料ループ(20mLのサンプルループ、Rheodyne、米国)が備えられた6ポート試料注入バルブ(Cotati、CA、Rheodyne社、米国)に連結設置した後、前記6ポート試料注入バルブにマイクロ−ティーおよび内径450μm、外径720μm、長さ25cm、透過限界30kDaの中空糸膜[コオロン中央研究所、韓国]を順次連結設置した。
【0114】
その後、前記中空糸膜の一側を検出器(UV730D、ヨンリン機器、韓国)および四方弁(4−4 Hamilton Valve、Hamilton、米国)に順次連結させ、6ポート試料注入バルブを圧力バルブおよび別の四方弁(LabPro、Rhepdyne、米国)に連結させた。
【0115】
その後、前記2つの四方弁を緩衝溶液に満たされている緩衝溶液貯留部材(5Lの三角フラスコ、Schott Duran、ドイツ)の一側に連結させてタンパク質分離装置を製造した。
【0116】
<実施例2>
タンパク質標準物に対するキャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画装置の分離
実施例1によって製造されたタンパク質分離装置(キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画装置)の分離能を評価するために、5つのタンパク質標準物を混合してタンパク質混合物試料を準備した。ここで、前記タンパク質標準物の混合物の組成は表1の通りであった。
【0117】
【表1】
【0118】
前記表1による組成を持つタンパク質混合物と両性電解質(5%v/v)の混合溶液を、実施例1によって製造されたタンパク質分離装置の1番目のシリンジポンプに装着した後、そのシリンジポンプを作動させてテフロン(登録商標)キャピラリーに前記混合溶液を供給した後、約20分間500V/cmの電場をかけて等電点電気泳動させた後、全ての分離が終了するまで300v/cmの電場を維持した。
【0119】
その後、陽電解質溶液である20mM H3PO4溶液が満たされているシリンジポンプを作動させ、テフロン(登録商標)キャピラリー内の等電点電気泳動されたタンパク質が6ポートバルブに移動して試料ループに充填されるように伝達体積を調節した。この際、シリンジポンプが伝達する体積を正確に調節して、6ポートバルブに伝達される等電点電気泳動されたタンパク質のpI領域を正確に調節するところ、タンパク質標準物の場合、4つの分取液、すなわちpI区間3〜5、5〜6、6〜8および8から10に分けて中空糸フローフィールドフロー分画による分離に使用したので、一番目の試料注入はpI8〜10領域のタンパク質分取液であり、これは約2μLの体積に該当した。
【0120】
その後、試料ループに満たされたタンパク質分取液は、中空糸膜における分離のために6ポートバルブを開放して緩衝溶液貯留部材から緩衝溶液を試料ループを経て中空糸膜に伝達されるようにするところ、この際、図2に示すように、2つの四方弁の位置が点線連結されるようにして、緩衝溶液貯留タンクから排出される緩衝溶液が2つの流れに分離され、一つの流れは圧力バルブを経て中空糸膜の入口に伝達され、同時にもう一つの流れは他の四方弁および検出器を逆に経て中空糸膜の出口に伝達されるようにした。
【0121】
この際、前記2つの流れ流速比率は6ポートバルブに連結設置された圧力バルブによって1:9に調節され、中空糸膜の入口および出口に注入される緩衝溶液は中空糸膜の入口から全長の10%となる位置、すなわち2.5cmで集中され、タンパク質分取液の試料も前記10%となる位置で平衡を持つようにした。
【0122】
その結果は図5に示した。ここで、番号1はミオグロビン、番号2はトリプシノゲン、番号3は炭酸脱水酵素、番号4はウシ血清アルブミン、番号5は酵母アルコール脱水素酵素である。
【0123】
図5に示すように、5つのタンパク質混合物の分離の際にキャピラリー等電点電気泳動から一番目に注入されたタンパク質分取液のpIは8〜10であり、これに対する中空糸膜フローフィールドフロー分画による分離は図5の分離ピークの一番目のピークに現れている。
【0124】
流速条件600μL/min、放射流れ速度540μL/min、中空糸膜出口流速60μL/minにおける該当ピークは、タンパク質2番トリプシノゲン(pI9.3)試料であり、2番試料の分離が終了する頃に6ポートバルブの試料ループに注入されていた次のpI領域(pI6〜8)のタンパク質分取液に対する中空糸膜フローフィールドフロー分画による分離が行われたところ、1番と5番のタンパク質が分離された。
【0125】
それぞれのpI値は6.8、6.23なので、当該pI領域のタンパク質がキャピラリー等電点電気泳動によって成功的に分離されて中空糸膜フローフィールドフロー分画で分子量別分離が行われることを確認することができた。
【0126】
また、1番ピークはミオグロビンであって、2量体によるピークが1番ピークの直後に分離されたと推定することができた。
また、タンパク質試料の5番ピークは、分離された時間が、分子量領域からみるとき150kDarが検出される時間帯に現れたことからみて、タンパク質試料の変性を回避することができるものと確認された。
【0127】
<比較実施例1>
実施例2に使用されたタンパク質試料(タンパク質標準物の混合物)を2D−PAGE方法によって分離した。
【0128】
まず、タンパク質をpIに基づいて分離するために、pH3〜10の範囲を持つ固定されたpH勾配ゲル(immobilized pH gradient gel)を使用し、pIに基づいて分離されたタンパク質をさらに12%ポリアクリルアミドゲルを用いてタンパク質の大きさに基づいて分離した。
【0129】
しかも、前記タンパク質の分離のために使用された実験過程は、Richard J.Simpson執筆の「Proteins and Proteomics: a laboratory manual, CSHL PRESS, New York, 2003」に詳細に説明されている。
その結果を図6に示した。
【0130】
図6に示すように、5番タンパク質試料である酵母アルコール脱水素酵素(YADH)は、分子量が150kDaと知られているが、実際分離されて示された位置は36.5dDaと55kDaとの間に位置しているところ、これはYADHが4つのサブユニットから構成されているので、電気泳動過程でSDS(sodium dodecylasulfate)を使用する特性上、サブユニットが分離された状態(それぞれのサブユニットの分子量は37.5kDa程度である)であると推定される。したがって、前記2D−PAGEはタンパク質試料の変性を回避することができないものと確認された。
【0131】
<実施例3>
キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画装置を用いたヒト尿タンパク体の分離
実施例1によって製造されたタンパク質分離装置(キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画装置)を用いてヒトの尿から抽出したタンパク体試料の分離に適用しようとした。
収去した小便は、分子量透過限界30kDaを有する分離膜を用いてろ過することにより、分子量透過限界30kDa以上のタンパク体試料のみを使用した。
まず、実施例2と同様の方法で行うが、実施例2のタンパク質標準物の混合物の代わりに濾過された尿タンパク体試料40μgを使用し、中空糸膜における分子量分離の際には等電点電気泳動されたタンパク質試料バンドを6つのpH領域に分けて注入した。pH9〜10、8〜9、7〜8、7〜7、5〜6、および3〜5の6段階に分けられて注入されたタンパク質体試料バンドは、中空糸フローフィールドフロー分画でそれぞれ分離された。
【0132】
これについての結果を図7に示した。ここで、タンパク質の識別はナノ流速LC−MS−MS分析方法を使用した。
図7に示すように、キャピラリー等電点電気泳動による分取液のpHが減少するにつれて、分離時間5分帯で現れるピークの強度は大きく増加するものと確認された。また、5分以後には2番目のピークがpH6〜7で新しく現れ始めた。
【0133】
これは分子量の大きさ約100kDa以上のものであって、pI7より小さい値を持つ巨大分子に関することを意味する。
反面、キャピラリー等電点電気泳動による分取液Fはいずれのピークも示していないものと思われるところ、これは、キャピラリー等電点電気泳動チュービング内でフィールドフロー分画分離して待機しているタンパク質のうち、pH3〜5の分取液は最後の分離段階まで待機しなければならず、この際、電気浸透流れによる影響で一部のタンパク質が陰極方向に移動し、その結果pI3〜5に該当するタンパク質が前側の分取液に移動したものと推定される。
【0134】
実際に低いpI値を持つタンパク質の存在は、図8に示した、同一の試料400μgを注入して分離した2D−PAGEの結果より、pH領域3に大きいスポットがあるものと確認することができる。
【0135】
<比較実施例2>
実施例3に使用された尿タンパク体試料400μgを2D−PAGE方法によって分離した。
【0136】
ここで、前記尿タンパク質をpIと大きさによって分離するための実験過程は、タンパク質標準試料に使用された方法と同一であるが、広い領域におけるタンパク質大きさ別分離のために8〜12%勾配ポリアクリルアミドゲルを使用したという点が比較実施例1の実験方法と異なる。
その結果を図8に示した。
【0137】
図8に示すように、pH領域3に大きいスポットがあるものと確認することができる。
【0138】
<実施例4>
ナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法を用いた尿タンパク質分取液に対するタンパク質分析
実施例3によって分離されるタンパク質を5分間隔で収去したタンパク質分取液の総24個をそれぞれトリプシン酵素を用いて加水分解した後、ペプチド混合物に転換してそれぞれの24個の試料に対してナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法で分離分析してタンパク質識別過程を行った。
その結果を図9に示した。
【0139】
図9は、中空糸フローフィールドフロー分画によって分取した分取液E1〜E4をペプチド化した後、ナノ流速LCでそれぞれ分離し、分離の際にカラム溶離液を質量分析器でESI方法によって直接イオン化して質量分析を行う過程で得られたベースピーククロマトグラム(base peak chromatogram、BPC)である。
【0140】
図9aは分取液E1(図7の分取液E(pH5〜6領域)に対する中空糸フローフィールドフロー分画による分離の際に0〜5分の間に分離されて出たタンパク質分取液を酵素加水分解処理して得られたペプチド混合物)に対するLCピークである。
【0141】
ナノ流速LC分離に使用された分離条件によれば、勾配溶離法(gradient elution)を使用し、溶媒条件によれば、溶媒Aは3/97%水/アセトニトリル(CH3CN)/水溶液であり、溶媒Bは3/97%水/アセトニトリル溶液であって、それぞれ0.1%のギ酸(HCOOH)を添加した。
【0142】
勾配溶離条件によれば、溶媒Bが5%の条件で始めて5分後に全体溶媒の組成でBが12%となるように25分間上昇させ、さらに60分間Bの組成が60%となるように増加させた。
【0143】
その後、3分間にわたって溶媒Bが80%となるように上昇させた後、10分間維持し、さらに5%に2分間にわたって減少させて最小25分間カラムの再平衡過程を行った。
流速は勾配溶離全区間にわたって200nL/minを維持した。
【0144】
図9に示したそれぞれのクロマトグラムは、LCで溶離されたペプチドがエレクトロスプレーイオン化過程を経て質量分析器に注入されるとき、前駆体スキャンを行いながら測定されたイオンのうち毎回スキャン過程でピーク強度が大きいイオンの強度のみで描かれたクロマトグラムであり、分取液E1とE2は相当大きいペプチドイオンが分離されて出たものと確認される反面、分取液E3とE4は相対的にペプチドのピーク数が少ない。
【0145】
検出されたペプチドは、2次質量分析器で衝突誘起解離(collision induced dissociation、CID)によってタンデム質量分析を行い、断片化した分子のスペクトルからペプチドのアミノ酸配列を確認するが、この際、データ従属MS−MS分析法を使用し、詳細な説明は次の通りである。
【0146】
図9aと図9bにそれぞれ「*」と「**」で表示された位置で測定された質量分析スペクトルは、次の通りである。
【0147】
図9aに表示された「*」位置は70.9分に該当し、この時間で測定された前駆体スキャン質量スペクトルは図10aに示し、非常に多くのペプチドが同時に分離されて出ることを確認することができる。これはタンパク質分取液をペプチドで分解したときに生成されたペプチドの数が非常に多く、LC分離中に70.9分に該当する時間帯に溶離されたペプチドのみを測定したにも拘らず、多くのペプチドが同時に分離されて出ることが分かる。図10aから確認されたいろいろのピークのうち、m/z 585.00(+3がイオン)に該当するイオンを選択してデータ従属MS−MS分析を行った後、得られたタンデム質量スペクトルは図10bに示したが、ペプチドが断片化したときに生成されるイオンのうちyタイプのイオンを表示し、このスペクトルの情報と図10aから確認されたm/z値を用いてタンパク質データベース(Swiss−Prot)の情報から、タンパク質識別確認プログラムを用いてペプチドの識別および該当ペプチドの属したタンパク質に対する情報を得ることができる。
【0148】
タンパク質の識別に使用したプログラムは、Mascot(Matrix Scientific)であり、この過程を経て確認された図10aのm/z 585.00イオンはペプチドの構造式がYVGGQEHFAHLLILRであり、タンパク質はOrosomucoid1であることが確認された。図10bは、ペプチド構造式の両側にはペプチドがタンパク質から酵素分解される前段階に隣接したアミノ酸配列を共に示すことにより、トリプシンにより酵素分解されたものであることを共に示した。
【0149】
また、図9bの95.4分(**)に記録された前駆体スキャン質量スペクトルは図11aに示し、ペプチドm/z 987.06(+2)イオンに該当する開裂スペクトルは図11bに示した。タンパク質データベースの確認結果、ペプチドのアミノ酸配列はSFPALTSLDLSDNPGLGERであり、タンパク質は単球細胞分化抗原(monocyte differentiation antigen)CD14であると確認された。
【0150】
図10および図11に示した2つのタンパク質は、ヒトの肝炎症の際に現れる標識物質であることが文献上に知られている[J.X. Panf, N. Gianni, A.R.Dongre, S.A. Hefta, G.J.Opteck, J. Proteome Research, 2002, , 161-169]。
【0151】
また、全体24個の分取液(A1−F4)試料に対する分析から確認されたタンパク質を表2に示し、それぞれのタンパク質に対するpIおよび分子量値を共に表記した。それぞれのCIEF分取液から識別されたタンパク質のpI値は幾つかのタンパク質を除いては当該CIEF分取液が持つpH範囲の値とよく一致しており、一部のタンパク質は当該pH範囲よりやや高い或いは低い場合であり、一部のタンパク質は隣接したキャピラリー等電点電気泳動分取液で同時に確認されるものが分取液毎に5〜7個程度に該当する。
【0152】
各分取液で確認されたタンパク質のpI値(タンパク質データベース)と分子量を図12に示したところ、各キャピラリー等電点電気泳動分取液に基づいて確認されたタンパク質のpI平均値は実線で表示し、数値を各図面内に表記した。各CIEF分取液に基づいて確認されたタンパク質のpI平均値は、当該分取液が持つpH範囲内にあるものと確認される。また、各分取液に基づいて確認されたペプチドとタンパク質の数を表3に示し、確認された全体タンパク質の数は総114個である。
【0153】
この個数は、同一の尿タンパク試料をキャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画で前もって分離していない状態で直酵素分解処理した後、ナノLC−ESI−MS−MSのみで分析したとき、21個のタンパク質のみが確認された場合と比較すれば、約5.5倍多いタンパク質が確認された結果と解釈することができる。
【0154】
これは、2次元タンパク質分離方法を使用したとき、相対的に存在比の低いタンパク質から得られたぺプチドが相対的存在比の高いペプチドと同時に分離分析されるときに現れるイオン抑制効果を相対的に減らすことができるためである。
【0155】
【表2】
【表3】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
本発明の好適な実施形態は説明の目的で記載されたものに過ぎず、当業者であれば、特許請求の範囲に開示された本発明の精神および範囲から逸脱することなく、各種変更、追加および置換が可能であることを理解するであろう。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、タンパク質をpIと分子量の順序に基づいて分離することができ、タンパク質分離の際にタンパク質が変性されないうえ、タンパク質を分離回収した後、回収されたタンパク質を酵素加水分解処理する場合、ペプチドの分析にナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法を適用してタンパク質の識別を直接利用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】従来のタンパク質分離装置を示す構成図である。
【図2】本発明に係るタンパク質分離装置を示す構成図である。
【図3】本発明に係るキャピラリー等電点電気泳動装置の連結部材の連結様態を示す構成図である。
【図4】本発明に係る中空糸フローフィールドフロー分画部の連結部材の連結様態を示す構成図である。
【図5】本発明に係るタンパク質分離装置を用いて標準タンパク質試料の分離結果を示す図である。
【図6】標準タンパク質試料に対する2D−PAGEを用いた試料の分離結果を示す図である。
【図7】本発明に係るタンパク質分離装置を用いた尿タンパク体試料の分離結果を示す図である。
【図8】尿タンパク体試料に対する2D−PAGEを用いた試料の分離結果を示す図である。
【図9】本発明に係るタンパク質分離装置を用いて分離された4つの分取液に対するLC−MS−MSクロマトグラムを示す図である。
【図10A】図9aの70.9分に記録された質量スペクトルを示す図である。
【図10B】図9aの70.9分に記録されたm/z=585.00イオンに対するタンデム質量スペクトルを示す図である。
【図11A】図9bの95.4分に記録された質量スペクトルを示す図である。
【図11B】図9bの95.4分に記録されたm/z=987.06イオンに対するタンデム質量スペクトルを示す図である。
【図12】本発明に係る尿タンパク体試料に対する分子量値とpI値に対する図式を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画 (capillary isoelectric focusing-hollow fiber flow field flow fractionation) 法を用いたタンパク質分離装置および方法に係り、さらに詳しくは、タンパク体(proteome)などの生体巨大分子タンパク質を等電点と分子量の差異を用いてタンパク質が変性しない状態で分離することが可能なタンパク質分離装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生命科学および医薬分野において、疾病の治療および予防に関連して疾病関連タンパク質についての体系的な分析が要求されている。
分子生物学およびゲノミクス(ゲノム科学)を含んだ薬物発見のための基礎研究の発展に伴い、最近、薬物発見の領域が急速に変化している。特に、ゲノミック薬物発見で代表される、薬物発見のための新規方法が開発されている。
このため、前述した生命科学および新規医薬品開発などの医薬分野では、特定の疾患または特定の環境で生理学的活性を持つ物質を確認しなければならない。このような生物学的活性を持つ物質は大部分タンパク質からなっており、このようなタンパク質の構造および機能の解明は前記生命科学および医薬分野における本質的な問題に該当する。
【0003】
ヒト遺伝子の種類は約35,000程度と確認されたが、ゲノム(genome)が生産するタンパク質の数は数十万〜数百万に達すると推定されている。細胞器官内で必要な全ての反応を行うことがタンパク質の役割なので、遺伝子の機能をタンパク質の水準で体系的に研究することが求められている実情である。
【0004】
一方、前述したタンパク質は、分子量、等電点(isoelectric point、pI)、親水性または疎水性基質などの様々な特性によって非常に複雑である。よって、タンパク質を分析するためには、1次的にタンパク質を分離した後、これを質量分析法と生物情報学などに連係させてタンパク質を識別する過程が必要である。このような過程において、疾病関連タンパク質の場合、他の一般なタンパク質に比べて相対的存在比が低いタンパク質なので、高性能のタンパク質分離技術によってこれを分析することが必要となる。
【0005】
タンパク質は、生命現象に非常に重要であり、タンパク質分子、DNA分子、合成化合物または光子などが含まれる他の分子との相互作用においてその機能を示す。よって、特定のタンパク質を理解するためには、このような分子の物理的および/または化学的性質を詳述することに止まらず、互いに影響を及ぼす分子を同定し、相互作用(生理学的作用)現象の様式を解明することにより、どんな相互作用がどの分子と共に発生するかを確認することが必要である。
【0006】
タンパク質を分離および分析する代表的な方法としては、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Sodium dodecylsulfate-polyacrylamide gel electrophoresis、SDS−PAGE)法がある。これは、ポリアクリルアミドゲル板に電場をかけて選択性の差異を用いてタンパク質を分離する方法である。この方法は、タンパク質を分子量の順で分離して確認する分野、および単純なタンパク質の分離・確認過程に広く用いられる1次元分離方法である。このような分離方法は、タンパク質の3次構造がSDS溶液状態で変性され、或いはタンパク質がゲルの内部に閉じ込められるという問題点がある。
【0007】
一方、ゲノムによって生成されるタンパク質集合体(タンパク体)と定義されるもので、細胞内における位置、或いは細胞または組織の生理的な状態によってタンパク質の生成および相対的存在比などが決定されるプロテオームなどの多数のタンパク質混合物を分離し、その特性を同定する場合には、前述した1次元分離技術のみでは識別自体が不可能である。
【0008】
したがって、前記タンパク質集合体を分離するためには、タンパク質の特性に応じて1次分離処理されたタンパク質を、タンパク質の別の特性である分子量の差異によって2次分離処理する2次元分離方法、すなわち2次元−ポリアクリルアミド−ゲル電気泳動法(2D−PAGE)が使用される[Zhou, F.; Johnston, M. V. Anal. Chem. 2004, 76, 2734-2740; Klose, J.; Kobalz, U. Electrophoresis, 1995, 16, 1034-1059; Righetti, P. G.l Castagna, A.; Herbert, B. Prefractionation Techniques in Proteome Analysis, Anal. Chem. 2001, 73, 320A-326A.]。
【0009】
このような2D−PAGEは、両性電解質(ampholyte)担体でpH勾配が固定形成されている狭いゲルストリップにおいてタンパク質等電電荷(pI)に応じて等電点電気泳動(isoelectric focusing、IEF)させる。この段階は約12時間かかる。
また、前記タンパク質がpIの順序に基づいて分離された後、ポリアクリルアミドゲル板の上端の横方向にゲルストリップを固定させた後、縦方向に電気泳動を行うと、タンパク質は分子量の大きさの順で縦方向に分離されるが、この際、タンパク質分子量の小さいものがゲル板の下端に多く移動する。前述した2D−PAGE分離にかかる総時間は約36時間程度である。
【0010】
一方、2次元分離が終わると、ゲル板上に現れたタンパク質スポットを染色してタンパク質の数を確認し、必要に応じて各スポットのタンパク質を回収して酵素分解処理した後、質量分析法を用いてタンパク質を識別する。
【0011】
このような2D−PAGE方法は、高い解像度を持っているためタンパク質の大略的なパターンの確認に非常に有用であり、準回収(semi-preparative)規模への分離が可能であって非常に複雑なタンパク質混合物形態を持つヒト血漿タンパク質だけでなく、小便、各種生体組織などから抽出したタンパク質の分析、疾病の検出および診断のために臨床的に使用できる[(Giddings, J. C., Unified Separation Science, John Wiley & Sons, New York 1991, pp. 126-128.)]。
【0012】
ところが、前記2D−PAGEは、労働集約的方法であり、自動化が難しいうえ、検出感度および力動的な範囲における制限による問題点などがあり、タンパク質分離の際にSDS溶液を使用するので、分離のためのタンパク質を変性されない状態で分離し難いから、タンパク質が変性された状態で分離される。また、前記2D−PAGEは、分離されたタンパク質もゲルマトリックス内に閉じ込められていて試料の回収が容易ではないため、ゲル内でタンパク質を酵素分解処理した後、ペプチド形態で回収してから分析しなければならないという問題点などがある。
【0013】
一方、キャピラリー内で等電点電気泳動を行うキャピラリー等電点電気泳動(capillary isoelectric focusing、CIEF)方法は、シリカキャピラリー内に両性電解質担体をタンパク質と共に満たした後、電場をかけてタンパク質のpIに応じて分離する方法である[Conti, M.; Gelfi, C.; Righetti, P.G. Electrophoresis 1996, 17, 1485-1491.]。
ここで、前記等電点電気泳動は、前述した2D−PAGEの等電点電気泳動(IEF)と同一の原理を持つが、ゲルストリップではなく、シリカキャピラリー内で行われる点で差異を示している。前記キャピラリー等電点電気泳動は、キャピラリー内で分離が行われるため、少量のタンパク質試料を処理することができ、高い感度を持つ場合にはpI値が0.003の小さい差異を持つタンパク質の分離も可能である[Quigley, W.C.; Dovichi, N. J. Anal. Chem. 2000, 76, 4645-4658]。
【0014】
また、前記キャピラリー等電点電気泳動は、キャピラリー内で分離が行われるため、少量のタンパク質試料を処理することができ、高い感度を持つ反面、プロテオームなどの複雑なタンパク質混合物を処理するには分離能力に限界があるから、分離効率を増大させるために単一分析技術として使用するよりは、クロマトグラフィーなどの2次分離方法とオンライン連結して使用しようとする努力が最近試みられている。
【0015】
前述したキャピラリー等電点電気泳動とオンラインで連結して2次元分離を行う技術として代表的な一例は、キャピラリー等電点電気泳動をキャピラリー逆相液体クロマトグラフィー(reversed phase liquid chromatography、RPLC)とオンライン連結したキャピラリー等電点電気泳動−逆相液体クロマトグラフィー(CIEF−RPLC)法である。これは、キャピラリー等電点電気泳動でpI領域に基づいて分離されたタンパク質、またはペプチドバンドをクロマトグラフィーカラムでペプチドの疎水性の差異によって2次的に分離する方法である[Chen, J.; Lee, C. S.; Shen, Y.; Smith, R. D.; Baehrecke, E. H. Electrophoresis 2002, 23, 3143-3148.]。このような方法を用いる場合、ショウジョウバエタンパク体から加水分解により得られたペプチド混合物に対して実験した結果、8時間程度の分離作業によってピーク容量1800以上の効率を得ることができる。
【0016】
また、キャピラリー等電点電気泳動とキャピラリーゲル電気泳動(capillary gel electrophoresis、CGE)法をオンラインで連結するキャピラリー等電点電気泳動−キャピラリーゲル電気泳動(CIEF−CGE)法は、前述したポリアクリルアミドゲル板の代わりにポリアクリルアミドゲルが満たされたキャピラリー内でタンパク質分子量の順序による分離を行うことができ、ヘモグロビンなどの簡単なタンパク質の分離に試みられた[Yang, C.l Liu, H.; Yang, Q.; Zhang, L.; Zhang, W.; Zhang Y. Anal. Chem. 2003, 75, 215-218.]。
【0017】
ここで、前記キャピラリー等電点電気泳動−逆相液体クロマトグラフィー法は、タンパク質次元における分離よりは、タンパク質酵素で加水分解した後で得られたペプチドの混合物を分離する場合に有用であるが、タンパク質がクロマトグラフィーカラムを通過するときに誘発されるタンパク質鎖の破壊、カラム内におけるタンパク質損失などによりタンパク質への適用が困難である。キャピラリー等電点電気泳動−逆相液体クロマトグラフィーを質量分析器にエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)方法でオンライン連結することは可能であるが[Tnag, Q.; Harrata, A. K.; Lee, C. S. Anal. Chem. 1996, 68, 2482-2487; Yang, L.; Lee, C. S.; Hofstadler, S. A.; Pasa-Tolic, L.; Smith, R. D. Anal. Chem. 1998, 70, 3235-3241; Martinovic, S.; Berger, S. J.; Pasa-Tolic, L.; Smith, R. D. Anal. Chem. 2000, 72, 5356-5360]、キャピラリー等電点電気泳動の分離に用いられる両性電解質が除去されないため、分離が終了した後、両性電解質を除去するために別途の精製過程を経なければならない。
【0018】
したがって、前記方法は、両性電解質の除去が先行されなければ、溶液中のイオンの妨害により試料分析が困難になるところ、これを解決するために、マイクロ透析可能な陰極セルなどのメンブレンを用いて両性電解質を相当量除去しなければならない[Zhou, F.; Johnston, M. V. Anal. Chem. 2004, 76, 2734-2740]。ところが、前述した方法を用いてタンパク質を分離するとしても、逆相液体クロマトグラフィー分離の際に有機溶媒が使用されるので、タンパク質の変性を回避することができず、分子量の大きいタンパク質の分離に適用することができないという問題点がある。
【0019】
一方、タンパク質を分離量の大きさの順序に基づいて分離する方法としては、フローフィールドフロー分画(flow field flow fractionation、FIFFF)法がある。これは、フィールドフロー分画(field flow fractionation、FFF)法の一つであって、タンパク質、細胞、水溶性高分子およびナノ粒子の大きさ別分離、および拡散係数、粒子サイズ、分子量などの特性分析に用いられる分離分析法である[J. C. Giddings, F.J.F. Yang, M. N. Myers, Science 1976, 193, 1976, 1244; M. H. Moon, P.S. Williams, H. Kwon, Anal. Chem. 1999, 71(14), 1999, 2657.]。
【0020】
ここで、前記フィールドフロー分画法による分離において、使用するチャネルは断面正方体であり、中空のチャネルであって、静止相が満たされていない。試料の分離は、チャネル軸に沿って試料を移動させる流体の流れ方向に垂直方向にかける外部場の強度に応じて行われる。よって、前記フローフィールドフロー 分画法 は、外部場として流体の交差流れを用い、前記交差流れの速度を調節してタンパク質などの巨大分子の滞留を制御する。
【0021】
前記フローフィールドフロー分画チャネル内における試料の滞留は、チャネルの底を抜け出す交差流れの速度と試料のブラウン拡散運動の均衡によって行われる。試料がチャネル内で移動する平均高さは、タンパク質の場合、分子量またはストークの直径によって異なるブラウン拡散の度合いによって決定される。したがって、分子量が小さいほど大きい拡散運動を行うことになり、チャネルの底から高い位置で交差流れの強度と平衡をなす。この際、チャネルの軸に沿って流れる分離流れは放物線型であり、タンパク質または巨大分子試料はその大きさによる分離順序を持つ。このため、分子量の小さい試料がまずチャネルから排出されることにより、タンパク質分子量の大きさの順序による分離が行われる。
【0022】
一方、タンパク質を分離および分析する別の一例は、中空糸膜を分離チャネルとして用いる分離法[W.J. Lee, B.-R.Min, M.H.Moon, Anal. Chem. 1999, 71(16), 3446; M.H.Moon, K.H. Lee, B.-R.Min, J. Microcolumn Sep., 1999, 11(9), 676; P. Reschiglian, A. Zattoni, D. Parisi, L. Cinque, B. Roda, F. D. Piaz, A. Roda, M. H. Moon, B.-R. Min, Anal. Chem. 2005, 77, 47]であって、外部場の役割は中空糸膜の外壁に排出される交差流れまたは放射流れの速度によって決定され、チャネル内の試料は、外部場と平衡を維持する場合、図1に示すように、円形の試料帯を成しながら進行し、この際、チャネルの縦軸に沿って進行する分離流れとの比率を調節して分離速度を調節する。
【0023】
ここで、図1はタンパク質の分離に適用される中空糸フローフィールドフロー分画(HF FIFFF)法の装置構成を示すものであって、流体はHPLCポンプ140から伝達され、チャネルから分離されて溶離されるタンパク質試料は紫外線/可視光線検出器130を用いて検出される。
【0024】
前述した中空糸フローフィールドフロー分画法を用いてタンパク質を分離する場合、分子量が小さいタンパク質から分子量の大きいタンパク質の順で分離することができ、分離溶液として緩衝溶液を使用するので、タンパク質を変性されていない状態で分離すると共に、チャネル内に充填物が満たされていないため、タンパク質試料の破壊または詰まり等を最小化することができるうえ、中空糸膜の内径を減少させる場合、マイクロ流れ速度でタンパク質分離を実現することができて微量のタンパク質分離に適する[I. Park, K.-J. Paeng, D. Kang, M.H.Moon, J. Separation Sci., 2005, 28, 2043; D. Kang, M. H. Moon, Anal. Chem., 2005, 77, 4207]。
【0025】
ところが、前記中空糸フローフィールドフロー分画法を用いた分離法は、分子量が小さいタンパク質のから分子量の大きいタンパク質の順で分離することができ、タンパク質試料の破壊または中空糸膜のチャネル詰まり等を最小化することができ、比較的低価の中空糸膜を使用するので、費用的な側面で利点を持っているが、分離能が所望するほど良くなく、タンパク質の多様な特性による分離を行うことが難しいという問題点などがある。
【発明の開示】
【0026】
そこで、本発明は、前述した問題点を解決するためのもので、その目的は、ポリアクリルアミドゲルを使用することにより、タンパク質の変性およびゲル内へのタンパク質の閉じ込めといった問題点などを伴う2D−PAGE、および有機溶媒を使用し、両性電解質を除去するために別途の精製処理を必要とするなどの問題点を伴うキャピラリー等電点電気泳動−逆相液体クロマトグラフィー分離方法の欠点を克服するために、ゲルを使用しない非ゲル方式のタンパク質分離過程中に両性電解質が自動的に除去されるとともに、水溶液上でタンパク質のpIと分子量の差異によってタンパク質分離が行われ得るようにした非ゲル方式の液相2次元タンパク質分離方法を提供することにある。
【0027】
この発明の前記および他の目的、特徴およびその他の利点は、添付図面を参照する次の詳細な説明によって明確に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
一つの観点において、本発明は、タンパク質試料をpIに基づいて1次分離するキャピラリー等電点電気泳動装置と、前記キャピラリー等電点電気泳動装置の一側に連結設置され、1次分離されたタンパク質を2次分離する中空糸フローフィールドフロー分画部とを含むタンパク質分離装置を提供する。
【0029】
他の観点において、本発明は、I)分離分析しようとするタンパク質試料と両性電解質溶液の混合物を第1注入ポンプに満たした後、等電点電気泳動用キャピラリーに前記混合物を供給する段階と、II)前記等電点電気泳動用キャピラリーに約10〜50分間200〜700V/cmの電場をかけて等電点電気泳動させた後、全ての分離が終了するまで200〜700V/cmの電場を維持する段階と、III)第2注入ポンプに陽電解質溶液を満たした後、これを等電点電気泳動用キャピラリーに注入し、等電点電気泳動されたタンパク質分取液を第1バルブへ移動させて試料ループに満たす段階と、IV)緩衝溶液貯留部材の一側に連結設置された供給ポンプを作動させ、緩衝溶液貯留部材に貯留された緩衝溶液を第1バルブに供給して、前記試料ループに満たされたタンパク質分取液を中空糸膜に供給すると同時に、前記第1バルブと連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側終端へ緩衝溶液を供給して平衡を維持する段階と、V)前記段階IV)の平衡が終了した後、第3バルブを閉鎖し、その後緩衝溶液貯留部材の緩衝溶液を第1バルブを介して中空糸膜に流入されるようにして、フローフィールドフロー分画法で分子量の小さいタンパク質から分子量の大きいタンパク質の順でタンパク質を分離して検出器に流入させる段階とを含む、タンパク質分離方法を提供する。
【0030】
本発明に係るタンパク質分離装置は、タンパク質を分離分析するためのものであって、タンパク質をpIに基づいて分離することが可能なキャピラリー等電点電気泳動装置に、タンパク質を分子量の大きさの順序に従って分離することが可能な中空糸フローフィールドフロー分画部を互いに連結設置して、タンパク質を2次元分離技術で分離分析するように構成される。したがって、本発明に係るタンパク質分離装置は、前記キャピラリー等電点電気泳動および中空糸フローフィールドフロー分画を全て含むので、キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画装置とも指称される。
ここで、本発明に係るキャピラリー等電点電気泳動(CIEF)装置は、キャピラリー内で等電点電気泳動を行う装置を意味するものであって、等電点電気泳動用キャピラリー、好ましくはテフロン(登録商標)キャピラリー内に両性電解質担体をタンパク質試料と共に満たした後、電場をかけてタンパク質をタンパク質のpIに基づいて分離する装置を意味する。前記中空糸フローフィールドフロー分画部は、中空糸膜を用いて、中空糸膜に流入されるタンパク質試料混合物からタンパク質を分子量の大きさによって分離する装置を意味する。
【0031】
特に、前記キャピラリー等電点電気泳動のみを単独で用いてタンパク質試料を分離するキャピラリー等電点電気泳動方法は、分離に使用された両性電解質がタンパク質試料と共に収得されることにより、前記両性電解質の除去が必須的に要求される。このような理由により、前記キャピラリー等電点電気泳動方法は、一般にタンパク質試料を分取した後、半透過膜を用いた再分析(dialysis)方法が別途に要求される。ところが、前述した再分析方法を行わない場合、タンパク質を最終的に質量分析する段階において、前記両性電解質が分析を妨害する要因として作用するので、本発明は、前記キャピラリー等電点電気泳動法で分取されたタンパク質試料を中空糸膜に注入させてフィールドフロー分画法で分離することにより、前記両性電解質を自然に除去することができるようにする。
【0032】
しかも、前記キャピラリー等電点電気泳動法は、キャピラリー内で電場による分離が終了すると、タンパク質試料をキャピラリーの外に移送しなければならないので、労働集約的であり、自動化が困難である。よって、本発明は、キャピラリーの両側にそれぞれ2つのティー(Tee)を用いて電極およびシリンジポンプを連結設置してキャピラリー等電点電気泳動法によるタンパク質試料の分析を自動化する。
【0033】
ひいては、本発明に係るタンパク質分離装置は、キャピラリー等電点電気泳動装置と中空糸フローフィールドフロー分画部を互いに連結設置して構成することにより、有機溶媒を全く使用しない。よって、タンパク質試料の分離の際にタンパク質の変性を伴わず、分析しようとするタンパク質試料をpIおよび分子量領域に基づいて分離するが、ゲル相ではなく液相でpI−分子量の方法によってタンパク質試料を分離することができ、所望のpI−分子量領域のタンパク質分取液(fraction)を分取することができる。また、本発明に係るタンパク質分離装置は、分析に必要なタンパク質試料の最小限の量も従来のタンパク質分離装置に比べて10倍程度少ない量である。
【0034】
このような本発明に係るタンパク質分離装置をより具体的に考察すると、本発明に係るキャピラリー等電点電気泳動装置は、等電点電気泳動用キャピラリーと、前記等電点電気泳動用キャピラリーの終端の一側に連結設置された第1連結部材と、前記第1連結部材の一側に連結設置され、タンパク質試料および両性電解質の混合物を注入する第1注入ポンプと、前記第1連結部材の一側に連結設置された第2連結部材と、前記第2連結部材の一側に連結設置され、陽電解質溶液を注入する第2注入ポンプと、前記第2連結部材の一側に連結設置された陽極と、前記第1連結部が連結設置されたキャピラリーの一側の終端に対向する他側の終端に連結設置された第3連結部材と、前記第3連結部材の一側に連結設置された第4連結部材と、前記第4連結部材の一側に連結設置された陰極電解質蓄積部材と、前記陰極電解質蓄積部材が連結設置された第4連結部材の一側に対向する他側に連結設置された陰極とから構成される。
【0035】
ここで、前記等電点電気泳動用キャピラリーは、タンパク質試料を等電点電気泳動してタンパク質をpIに基づいて分離するためのものであって、このような目的のために使用される通常の等電点電気泳動用キャピラリーであればいずれでも構わないが、好ましくは電気浸透流れ(Electricosmotic Flow)を除去するためにポリビニルアルコールのコートされたシリカキャピラリーなどを使用することがよく、より好ましくはテフロン(登録商標)キャピラリーがよく、推薦するには内径約75〜405μm、外径約360〜793μmのテフロン(登録商標)キャピラリーを使用することがよい。
【0036】
また、本発明に係る等電点電気泳動用キャピラリーは、その長さ方向に対して両側の終端に陰極および陽極を持つ電極と、両性電解質溶液および陽電解質溶液などを供給することが可能な手段が連結設置されなければならないところ、前記陽極が備えられる等電点電気泳動用キャピラリーの一側終端には第1連結部材および第2連結部材が順次連結され、前記第1連結部材の一側には分離しようとするタンパク質試料および両性電解質を流入させるための第1注入ポンプが備えられ、第2連結部材の一側には陽極および陽電解質溶液を注入するための第2注入ポンプが連結設置される。
【0037】
この際、前記第1連結部材は、前述した等電点電気泳動キャピラリー、第1注入ポンプおよび第2連結部材が互いに連結設置され、第2連結部材は、第1連結部材、第2注入ポンプおよび陽極が互いに連結設置されるように備えられるべきなので、好ましくは3方向に互いに連結できる「T」字型連結部材、より好ましくはマイクロ−ティー(Micro-Tee)を使用することが良い。
【0038】
一方、前記第1連結部材、第2連結部材および陽極が順次連結設置される等電点電気泳動用キャピラリー一側の対向する他側には陰極が連結設置されなければならない。よって、前記陰極は、第1連結部材が連結設置されたキャピラリーの一側終端に対向する他側終端に連結設置される第3連結部材、および前記第3連結部材の一側に連結設置される第4電極部材に連結設置されるように構成される。この際、前記第4連結部材の一側には、電極の表面に発生する気泡を捕集するための陰極電解質溶液が満たされている電解質蓄積部材が連結設置されている。前記第4連結部材に連結設置される第3連結部材は、キャピラリーでpIに基づいて分離されるタンパク質試料を中空糸フローフィールドフロー分画部へ移動させるための経路が別途に備えられている。
【0039】
したがって、本発明に係る第3連結部材および第4連結部材は、前述した第1連結部材および第2連結部材と同様に、3方向に互いに連結できる「T」字型連結部材、より好ましくはマイクロ−ティーを使用することが良い。
【0040】
本発明に係る中空糸フローフィールドフロー分画(HF FIFFF)部は、キャピラリー等電点電気泳動装置の第3連結部材の一側に連結設置され、キャピラリー等電点電気泳動装置で分離されたタンパク質試料が流入される第1バルブと、前記第1バルブの一側に連結設置された中空糸膜と、前記第1バルブが連結設置された中空糸膜の一側に対向する他側に連結設置された検出器と、前記第1バルブおよび前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の一側の終端に対向する他側の終端に連結設置され、内部に緩衝溶液を貯留する緩衝溶液貯留部材と、前記緩衝溶液貯留部材に連結設置され、貯留された緩衝溶液を前記第1バルブおよび前記中空糸膜に供給する供給ポンプ部とから構成される。
【0041】
ここで、本発明に係る第1バルブに連結設置される中空糸膜の終端の一側には必要に応じて、第5連結部材を連結設置した後、前記第5連結部材の一側に第1バルブを連結設置し、前記第5連結部材の他の一側に放射流れを可能にする放射流れの移動経路を提供するための経路が備えられてもよい。
【0042】
本発明に係る中空糸膜は、タンパク質を分子量に基づいて分離するためのものであって、このような目的のために使用される通常の中空糸膜であればいずれでも構わないが、好ましくは透過限界10〜100kDa程度の中空糸膜がよく、より好ましくは透過限界30kDa、内径300〜1000μm、外径500〜1200μmおよび長さ10〜40cmの中空糸膜がよく、その材質はポリスチレンスルホン酸、ポリ塩化ビニール、ポリアクリロニトリルまたはこれらの混合物などからなることが良い。
【0043】
特定的に、本発明に係る中空糸膜は、中空糸膜が内部に挿入できる中空を有する円筒型管、例えばガラス管に挿入されて構成されるところ、前記ガラス管は、中空糸膜が安定的に挿入できるものであればいずれでも構わないが、少なくとも、前記中空糸膜の挿入されたガラス管は、中空糸膜を通じて流れるタンパク質試料および緩衝溶液などがガラス管の外部に排出されないように完全に密封されなければならない。
【0044】
本発明に係る第1バルブは、キャピラリー等電点電気泳動装置で分離されたタンパク質試料が流入された後、これを中空糸膜に供給するためのものであって、好ましくはキャピラリー等電点電気泳動装置の第3連結部材の一側および中空糸膜の一側の終端に連結設置され、別の一側には緩衝溶液貯留部材から提供される緩衝溶液が流入される経路が連結設置されている。
また、本発明に係る第1バルブは、その内部のキャピラリー等電点電気泳動装置でpIに基づいて分離されたタンパク質試料の一側に試料ループが備えられ、キャピラリー等電点電気泳動装置でpIに基づいて分離されたタンパク質試料が満たされる。
【0045】
ここで、前記第1バルブは、前記第3連結部材、中空糸膜および緩衝溶液の流入経路が互いに連結設置されるところ、前述したタンパク質試料および緩衝溶液などの容易な流れのために、前記第1バルブは6ポートバルブを使用することがよい。
【0046】
一方、前記第1バルブに供給される緩衝溶液は緩衝溶液貯留部材に満たされており、前記緩衝溶液貯留部材の一側には、緩衝溶液を外部に供給するために駆動力を提供することが可能な供給ポンプが備えられる。
【0047】
特定的に、本発明に係る緩衝溶液の移動経路に圧力バルブを備えることにより、緩衝溶液の流速および流量などを調節することができる。このような場合、前記緩衝溶液貯留部材から排出される緩衝溶液の移動経路を2つの流れ経路に分離した後、それぞれの流れ経路に第2バルブおよび第3バルブをそれぞれ連結設置し、前記第2バルブの一側には第1圧力バルブおよび第1バルブを連結設置して構成し、前記第3バルブの一側には第1バルブが連結設置された中空糸膜の一側に対向する他側、すなわち中空糸膜の出口を連結設置する。
【0048】
特定的に、前記第3バルブを介して中空糸膜の出口に流入される緩衝溶液は、前記第3バルブおよび検出器を順次通過した後、中空糸膜の出口に流入されるように構成することもできる。
【0049】
ここで、前記中空糸膜から分離されて排出されるタンパク質が検出器に流入される過程で発生する試料の帯状拡散を最小化させるために、前記第3バルブは検出器の排出口に連結設置することが良い。
【0050】
一方、緩衝溶液を第3バルブから検出器を通過させて中空糸膜の出口に流入させることは中空糸膜におけるフローフィールドフロー分画による分離に必須的な手続きである。中空糸膜内におけるタンパク質分離が始まる前にタンパク質の拡散運動と放射流れで伝達される外部場が平衡を成さなければならないが、これを、通常、試料弛緩過程(sample relaxation)とも指称する。
【0051】
ここで、前記試料弛緩過程のために、中空糸膜の入口と出口を介してそれぞれ流体を流入させるが、中空糸膜の全長の10分の1位置で試料を集積させることが一般な方法である。このために、中空糸膜の入口と出口を介して流入される流体の速度を1:9〜5:5に調節する場合、全長の10〜50%となる位置、好ましくは10分の1位置で、試料は平衡状態を得ながら集積される。この際、前記試料の弛緩過程が完了すると、さらに緩衝溶液の流れを中空糸膜の入口にのみ伝達して分離を行い始める。
【0052】
一方、本発明に係る前記第2バルブおよび第3バルブは、緩衝溶液貯留部材から排出される緩衝溶液の流れを2つの流れ方向に分けられて流れるようにし、或いは緩衝溶液を第1バルブにのみ流れるようにするなどのように緩衝溶液の流れを容易に調節するために、少なくとも2つ以上の流れ方向を持つバルブを使用することが好ましいところ、推薦するには四方弁を使用することが良い。
【0053】
これと共に、中空糸膜の放射流れによって移動しているタンパク質試料の溶離時間および分離能などは、第2圧力バルブの操作によってタンパク質試料の移動方向と垂直的な方向の放射流れを調節することにより調節できる。
【0054】
特定的に、前記第3バルブを、少なくとも2つ以上の流れ方向を持つバルブ、好ましくは四方弁から構成する場合、前記四方弁の一側は緩衝溶液貯留部材に連結設置し、前記四方弁の他側は緩衝溶液が外部に排出できる経路として使用することができ、残り流体の移動経路を提供する一側はプラグなどで密封する。
【0055】
一方、本発明に係る第1バルブが連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側、すなわち中空糸膜の出口には、中空糸膜を通過しながら分子量の大きさによって分離されたタンパク質が流入され、分離されたタンパク質を分析する検出器が連結設置されるところ、前記検出器は、分離されたタンパク質の分析に使用される当業界の通常の検出器であれば特に限定されないが、推薦するには紫外線検出器を使用することがよい。
【0056】
また、本発明に係る各装置の構成要素において、タンパク質試料、電解質溶液および緩衝溶液などが流れる移動経路は、前述した物質と反応しない、当業界で通常使用される材質の管を使用すれば特に限定されないが、好ましくはキャピラリー、より好ましくはシリコンキャピラリーを使用することがよい。
【0057】
また、本発明に係るタンパク質分離装置を構成する注入ポンプ、供給ポンプ、バルブおよび圧力バルブなどをコンピュータに連結させて制御し得るように構成した後、最終的にタンパク質が分離されて通過する中空糸膜分離モジュールを自動分取器に連結させる場合、タンパク質をpIおよび分子量によって自動分離することができ、中空糸膜の出口をキャピラリー、好ましくはシリカキャピラリーを用いてエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)質量分析器(mass spectrometry、MS)とオンラインで連結することが可能である。
【0058】
ここで、前記エレクトロスプレーイオン化−質量分析器(ESI−MS)は、タンパク質の質量分析と共にタンデム質量分析法を使用する場合、タンパク質鎖に対する構造分析が可能であってタンパク質の識別に応用することができ、タンパク質試料が中空糸膜で分離される過程中に、等電点電気泳動用キャピラリーから流入した両性電解質は中空糸膜の放射流れと共に排出されるので、両性電解質の自動的な除去が可能になる。
【0059】
一方、前述した構成を持つ本発明に係るタンパク質分離装置は、次の段階によってタンパク質を分離する:
I)分離分析しようとするタンパク質試料と両性電解質溶液の混合物を第1注入ポンプに満たした後、等電点電気泳動用キャピラリーに前記混合物を供給する段階と、
II)前記等電点電気泳動用キャピラリーに10〜50分間200〜700V/cm、好ましくは約500V/cmの電場をかけて等電点電気泳動させた後、全ての分離が終了するまで200〜700V/cm、好ましくは300V/cmの電場を維持する段階と、
III)第2注入ポンプに陽電解質溶液を満たした後、これを等電点電気泳動用キャピラリーに注入し、等電点電気泳動されたタンパク質分取液を第1バルブに移動させて試料ループに充填させる段階と、
【0060】
IV)緩衝溶液貯留部材の一側に連結設置された供給ポンプを作動させ、緩衝溶液貯留部材に貯留された緩衝溶液を第1バルブに供給して、前記試料ループに満たされたタンパク質分取液を中空糸膜に供給すると同時に、前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端に緩衝溶液を供給して平衡を維持する段階と、
【0061】
V)前記段階IV)の平衡が終了した後、第3バルブを閉鎖し、その後緩衝溶液貯留部材の緩衝溶液を前記第1バルブを介して中空糸膜に流入されるようにして、フローフィールドフロー分画法で分子量の小さいタンパク質から分子量の大きいタンパク質の順でタンパク質を分離して検出器に流入させる段階。
ここで、前記段階III)の試料ループに満たされる等電点電気泳動されたタンパク質の体積は1〜10μL、好ましくは約2μLに調節するが、所望のpI領域の大きさだけ調節する。この際、使用された両性電解質のpH領域が3〜10の場合、1μLの体積は約pI1間隔だけに該当するところ、例えば一番目の試料注入過程で1μLを試料ループに充填すると、タンパク質のpI領域は約9〜10領域に該当する。
【0062】
また、前記段階IV)において、前記第1バルブ、および前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端に流れる緩衝溶液の流速比率は約1:9〜5:5に調節され、中空糸膜の両側終端、すなわち第1バルブに連結設置された一側(中空糸膜の入口)および第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端(中空糸膜の出口)に流入される緩衝溶液は中空糸膜の入口から全長の10〜50%となる位置で集中し、前記中空糸膜に流入された緩衝溶液は中空糸膜壁の空隙に沿って中空糸膜の外部に排出されるが、前記タンパク質分取液試料も中空糸膜の入口から全長の10〜50%となる位置で平衡に到達する。
【0063】
必要に応じて、本発明に係るタンパク質分離装置は、検出器の後方に分取液分取器を連結設置して使用することができるところ、前記分取液分取器を検出器に連結設置する場合、タンパク質を分子量領域に基づいて分取することができる。分取したタンパク質分取液は、酵素分解処理してペプチド化した後、ナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法(nanoflow LC−ESI−MS−MS、nanoflow liquid chromatography-electrospray ionization-tandem mass spectrometry)を用いてペプチドを分離し、質量スペクトルをタンパク質データベースと比較してタンパク質を識別することができる。
【0064】
以下、本発明について添付図面を参照して詳細に説明する。ところが、下記の説明は本発明を具体的に説明するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
図2は本発明に係るタンパク質分離装置を示す構成図、図3は本発明に係るキャピラリー等電点電気泳動装置の連結部材の連結様態を示す構成図、図4は本発明に係る中空糸フローフィールドフロー分画部の連結部材の連結様態を示す構成図である。
【0066】
図2〜図4に示すように、本発明に係るタンパク質分離装置は、巨視的な観点で、タンパク質試料をpIに基づいて1次分離するキャピラリー等電点電気泳動装置2と、前記キャピラリー等電点電気泳動装置2の一側に連結設置され、1次分離されたタンパク質を2次分離する中空糸フローフィールドフロー分画部4とから構成される。
【0067】
ここで、前記キャピラリー等電点電気泳動装置2は、等電点電気泳動用キャピラリー12と、前記等電点電気泳動用キャピラリー12の終端の一側に連結設置された第1連結部材6と、前記第1連結部材6の一側に連結設置され、タンパク質試料および両性電解質の混合物を注入する第1注入ポンプ10と、前記第1連結部材6の一側に連結設置された第2連結部材8と、前記第2連結部材8の一側に連結設置され、陽電解質溶液を注入する第2注入ポンプ24と、前記第2連結部材8の一側に連結設置された陽極20と、前記第1連結部材6が連結設置された等電点電気泳動用キャピラリー12の一側の終端に対向する他側の終端に連結設置された第3連結部材14と、前記第3連結部材14の一側に連結設置された第4連結部材16と、前記第4連結部材16の一側に連結設置された陰極電解質蓄積部材18と、前記陰極電解質蓄積部材18が連結設置された第4連結部材16の一側に対向する他側に連結設置された陰極22とから構成される。
【0068】
この際、前記等電点電気泳動用キャピラリー12は、タンパク質試料を等電点電気泳動してタンパク質をpIに基づいて分離するためのものであって、このような目的のために使用される通常の等電点電気泳動用キャピラリー12であればいずれでも構わないが、好ましくは電気浸透流れを除去するために、ポリビニルアルコールのコートされたシリカキャピラリーなどを使用することがよく、より好ましくはテフロン(登録商標)キャピラリー、シリカキャピラリーなどがよく、推薦するには内径75〜405μm、特定的に約310μm、外径360〜793μm、特定的に約610μmのテフロン(登録商標)キャピラリーを使用することがよい。
【0069】
また、本発明に係る等電点電気泳動用キャピラリー12は、その長さ方向に対して両側の終端に陽極20および陰極22を持つ電極と、両性電解質および陽電解質溶液などを供給することが可能な手段が連結設置されるところ、前記陽極20が備えられる等電点電気泳動用キャピラリー12の一側の終端には第1連結部材6および第2連結部材8が順次連結され、前記第1連結部材6の一側には分離しようとするタンパク質試料および両性電解質を流入させるための第1注入ポンプ10が備えられ、前記第2連結部材8の一側には陽極20および陽電解質溶液を注入するための第2注入ポンプ24が連結設置される。
【0070】
この際、前記両性電解質溶液は、等電点電気泳動のために、当業界で通常用いられる両性電解質溶液であればいずれでも構わないが、好ましくはpH3〜10の両性電解質溶液、より好ましくはpH3〜10および濃度2〜5%の両性電解質溶液を使用することがよく、前記陽電解質溶液は、当業界で通常用いられる陽電解質溶液であれもいずれでも構わないが、最も好ましくは20mM H3PO4を使用することがよい。
【0071】
また、前記第1連結部材6は前述した等電点電気泳動用キャピラリー12、第1注入ポンプ10および第2連結部材8が互いに連結設置され、第2連結部材8は第1連結部材6、第2注入ポンプ24および陽極20が互いに連結設置されるように備えられなければならないので、好ましくは3方向に互いに連結できる「T」字型連結部材、より好ましくはマイクロ−ティーを使用することがよい。
【0072】
特に、本発明に係る連結部材6、8、14、16、36としてマイクロ−ティーを使用することは、それぞれの連結部材の隙間体積を最小化させ、分離されたタンパク質試料の通過の際に帯状拡散現象を防止する。
【0073】
一方、本発明に係る第1注入ポンプ10および第2注入ポンプ24は、前記第1注入ポンプ10に満たされるタンパク質試料と、両性電解質および第2注入ポンプ24に満たされる陽電解質溶液を等電点電気泳動用キャピラリー12に注入することが可能な当業界の通常の注入ポンプであればいずれでも構わないが、好ましくはシリンジポンプを使用することがよい。
【0074】
ここで、前記第1注入ポンプ10としてシリンジポンプを使用し、第1連結部材6としてマイクロ−ティーを使用する場合、前記シリンジポンプのチュービング(tubing)がマイクロ−ティーに容易に締結できないので、これを解決するために、前記シリンジポンプである第1注入ポンプ10とマイクロ−ティーである第1連結部材6との間にユニオン54を備えて前記第1注入ポンプ10と第1連結部材6とを互いに連結設置することができる。
【0075】
一方、前記第1連結部材6、第2連結部材8および陽極20が順次連結設置される等電点電気泳動用キャピラリー12の一側の対向する他側には陰極22が連結設置されなければならないところ、前記陰極22は、第1連結部材6が連結設置された等電点電気泳動用キャピラリー12の一側の終端に対向する他側の終端に連結設置される第3連結部材14、および前記第3連結部材14の一側に連結設置される第4連結部材16に連結設置されるように構成される。この際、前記第4連結部材16の一側には電極、特定的に陰極22の表面に発生する気泡を捕集するための用途で陰極電解質溶液が充填されている電解質蓄積部材18が連結設置、好ましくは垂直に連結設置される。前記第4連結部材16に連結設置される第3連結部材14は、等電点電気泳動用キャピラリー12でpIに基づいて分離されるタンパク質試料を中空糸フローフィールドフロー分画部4に移動させるための別途の経路が備えられている。この際、前記陰極電解質溶液は、当業界で通常用いられる陰極電解質溶液であればいずれでも構わないが、最も好ましくは20mMのNaOHを使用することがよい。
【0076】
また、本発明に係る第3連結部材14および第4連結部材16は、前述した第1連結部材6および第2連結部材8と同様に、3方向に互いに連結できる「T」字型連結部材、より好ましくはマイクロ−ティーを使用することがよい。
一方、本発明に係る第3連結部材14および第4連結部材16を互いに連結設置するにおいて、前記第3連結部材14の一側に連結設置された等電点電気泳動用キャピラリー12でpIに基づいて分離されたタンパク質試料が第4連結部材16へ移動しないようにタンパク質試料が通過し得ない別途の分離膜64、好ましくは分子量透過限界30kDa以下、より好ましくは約10kDaの半透膜が備えられたキャピラリー、特定的にシリカキャピラリー38を用いて前記第3連結部材14および第4連結部材16を連結設置する。
【0077】
特定的に、本発明に係る第3連結部材14と第4連結部材16の連結様態は、図3に示すように、第3連結部材14であるマイクロ−ティーの一側はグラファイト材質のマイクロフェルール60、好ましくは約0.025インチのマイクロフェルール60を用いて等電点電気泳動用キャピラリー12に連結設置し、前記等電点電気泳動用キャピラリー12が連結されたマイクロ−ティーの一側に対向する他側にはマイクロタイトスリーブ、好ましくは約0.0155インチのマイクロタイトスリーブ66を用いてキャピラリー、好ましくはシリカキャピラリー30と連結設置してpIに基づいて分離されたタンパク質が中空糸フローフィールドフロー分画部4に移動する経路を提供し、前記マイクロ−ティーの他の一側は電圧伝達のために電極連結用Derlin−Teeとしての第4連結部材16と連結設置するが、前記マイクロ−ティーとDerlin−Teeとの間に、タンパク質試料が電極方向に移動しないように分離膜64として分子量透過限界30kDa未満の半透過膜、好ましくは約10kDaの半透過膜を挿入したシリカキャピラリー38を連結し、前記第4連結部材16であるDerlin−Teeの一側に陰極電解質蓄積部材18を備えて、陰極22の表面に発生する気泡を捕集するように構成される。
【0078】
しかも、本発明に係る陽極20および陰極22は、当業界で通常用いられる電極であれば特に限定されないが、好ましくは白金を使用することが良い。
本発明に係る中空糸フローフィールドフロー分画部4は、キャピラリー等電点電気泳動部2の第3連結部材14の一側に連結設置され、キャピラリー等電点電気泳動装置2で分離されたタンパク質試料が流入される第1バルブ26と、前記第1バルブ26の一側に連結設置された中空糸膜32と、前記第1バルブ26が連結設置された中空糸膜32の一側に対向する他側に連結設置された検出器52と、前記第1バルブ26および前記第1バルブ26に連結設置された中空糸膜32の一側の終端に対向する他側の終端に連結設置され、内部に緩衝溶液を貯留する緩衝溶液貯留部材48と、前記緩衝溶液貯留部材48に連結設置され、貯留された緩衝溶液を前記第1バルブ26および前記中空糸膜32に供給する供給ポンプ50とから構成される。
【0079】
ここで、本発明に係る第1バルブ26に連結設置される中空糸膜32の終端の一側には、必要に応じて、第5連結部材36を連結設置した後、前記第5連結部材36の一側に第1バルブ26を連結設置し、前記第5連結部材36の他の一側に放射流れ56を可能にする放射流れ56の移動経路を提供するための経路が備えられてもよい。
【0080】
特定的に、本発明に係る第5連結部材36は、図4に示すように、テフロン(登録商標)−ティー(Tee)を使用することができるところ、前記テフロン(登録商標)−ティーを第5連結部材36として使用する場合、第1バルブ26の一側に連結設置され、その内部にタンパク質試料および緩衝溶液が移動するシリカキャピラリー30をマイクロタイトスリーブ66と雄ナット62でテフロン(登録商標)−ティーの一側に連結設置し、これに対向する他側は中空糸膜32の一側の終端にマイクロタイトスリーブ66およびスリーブの内側に位置するシリカキャピラリー30が挿入された順序でテフロン(登録商標)フェルール60、好ましくは1/16インチのテフロン(登録商標)フェルール60を通過する方法で締結され、中空糸膜32とテフロン(登録商標)−ティーの内部には中空糸膜32のみが通過できるようにし、前記中空糸膜32の外壁から排出される緩衝溶液(放射流れ)はテフロン(登録商標)フェルール60、好ましくは1/16インチテフロン(登録商標)フェルール60のチュービングを介して外部に排出されるように構成される。
【0081】
また、本発明に係る中空糸フローフィールドフロー分画部4は、さらに、緩衝溶液貯留部材48から排出される緩衝溶液の移動経路を2つの流れ経路に分離した後、それぞれの流れ経路に第2バルブ40および第3バルブ42をそれぞれ連結させ、前記第2バルブ40の一側には第1圧力バルブ44および第1バルブ26を順次連結させ、前記第3バルブ42の一側には第1バルブ26が連結設置された中空糸膜32の一側に対向する他側を連結設置させるように構成することができる。
【0082】
本発明に係る中空糸膜32は、タンパク質試料を分子量に基づいて分離するためのものであって、このような目的のために使用される通常の中空糸膜32であればいずれでも構わないが、好ましくは透過限界10〜100kDaの中空糸膜がよく、より好ましくは透過限界約30kDa、内径300〜1000μm、特定的に約450μm、外径500〜1200μm、特定的に約720μmおよび長さ10〜40cm、特定的に約25cmの中空糸膜がよく、その材質はポリスチレンスルホン酸、ポリ塩化ビニール、ポリアクリロニトリルまたはこれらの混合物などからなることが良い。
【0083】
特定的に、本発明に係る中空糸膜32は、中空糸膜が内部に挿入できる中空を持つ円筒型管、例えばガラス管34に挿入されて使用できるところ、前記ガラス管34は、中空糸膜32が安定的に挿入できるものであればいずれでも構わないが、少なくとも、前記中空糸膜32の挿入されたガラス管34は、中空糸膜32を通じて流れるタンパク質試料および緩衝溶液などがガラス管34の外部に排出されないように完全に密封しなければならない。
【0084】
本発明に係る第1バルブ26は、キャピラリー等電点電気泳動装置2で分離されたタンパク質試料が流入された後、これを中空糸膜32に供給するためのものであって、好ましくはキャピラリー等電点電気泳動装置2の第3連結部材14の一側および中空糸膜32の一側の終端に連結設置され、他の一側には緩衝溶液貯留部材48から提供される緩衝溶液が流入される経路が連結設置されている。
【0085】
必要に応じて、本発明に係る第1バルブ26は、その一側に廃棄物蓄積部材28がさらに連結設置できるところ、前記廃棄物蓄積部材は、陽極20が設置された高さより少なくとも10cm以上高いところに設置し、等電点電気泳動過程で陽極20の終端のキャピラリーに発生し得る電気浸透流れを、重力によって発生する流体力学的力によって最小化させるために設置することができる。
【0086】
また、本発明に係る第1バルブ26は、その内部のキャピラリー等電点電気泳動装置2でpIに基づいて分離されたタンパク質試料の一側に試料ループ58が備えられ、キャピラリー等電点電気泳動装置2でpIに基づいて分離されたタンパク質試料が満たされる。
【0087】
ここで、前記第1バルブ26は、前記第3連結部材14、中空糸膜32および緩衝溶液の流入経路が互いに連結設置されるところ、前記タンパク質および緩衝溶液などの容易な流れのために6ポートバルブを使用することが良い。
【0088】
特定的に、本発明に係る第1バルブ26として6ポートバルブを使用する場合、前記6ポートバルブに備えられた6つのポートのうち、キャピラリー等電点電気泳動装置2から排出されるタンパク質試料の移動経路として備えられたキャピラリーに連結設置されたポートを任意に第1ポート70と指称する場合、前記第1ポート70の左側または右側に隣り合って第2ポート72、第3ポート74、第4ポート76、第5ポート78および第6ポート80が順次備えられ、前記第1ポート70と第4ポート76との間に試料ループ58が連結設置されるように構成される。
【0089】
この際、前記6ポートの流路連結は、最初、第1ポート70と第6ポート80、第2ポート72と第3ポート74、および第4ポート76と第5ポート78の排出口が互いに連結された状態で前記第6ポート80の排出口を介して、キャピラリー等電点電気泳動装置2で分離されたタンパク質試料が第2注入ポンプ24によって第1ポート70および第4ポート76の排出口に連結された試料ループ58に流入された後、前記6ポートバルブを操作して前記6ポートバルブの第1ポート70と第2ポート72、および第3ポート74と第4ポート76の排出口を互いに連結されるようにして、緩衝溶液の流れによって試料ループ58に満たされているタンパク質試料が中空糸膜32に供給されるように構成できる。
【0090】
一方、前記第1バルブ26に供給される緩衝溶液は、緩衝溶液貯留部材48に満たされている。前記緩衝溶液貯留部材48の一側には、緩衝溶液を外部に供給し得るように駆動力を提供する供給ポンプ50が備えられる。この際、前記供給ポンプ50は、前記緩衝溶液貯留部材48に満たされている緩衝溶液を外部に供給することができるものであればいずれでも構わないが、好ましくはHPLCを使用することがよい。
【0091】
特定的に、本発明に係る緩衝溶液の移動経路には、圧力バルブ44、46を備えて緩衝溶液の流速および流量などを調節することができるところ、このような場合、前記緩衝溶液貯留部材48から排出される緩衝溶液の移動経路を2つの流れ経路に分離した後、それぞれの流れ経路に第2バルブ40および第3バルブ42をそれぞれ連結させ、前記第2バルブ40の一側には第1圧力バルブ44および第1バルブ26を連結させて構成し、前記第3バルブ42の一側には第1バルブ26が連結設置された中空糸膜32の一側に対向する他側、すなわちタンパク質試料が排出される中空糸膜32の出口を連結設置し、このような構成を介して前記第1圧力バルブ44を調節することにより、第1バルブ26に流入される緩衝溶液の流速および中空糸膜32の一側、好ましくは中空糸膜32の出口に流入される緩衝溶液の流速比を1:9となるように調節することができる。
【0092】
特定的に、前記第3バルブ42を介して中空糸膜32の出口に流入される緩衝溶液は、前記第3バルブ42および検出器52を順次通過した後、中空糸膜32の出口に流入されるように構成することもできる。
【0093】
この際、前記第2バルブ40および第3バルブ42は、緩衝溶液貯留部材48から排出される緩衝溶液の流れを2つの流れ方向に分けられて流れるようにするか、或いは緩衝溶液を第1バルブ26にのみ流れるようにするなどのように緩衝溶液の流れを容易に調節するために、少なくとも2つ以上の流れ方向を持つバルブを使用することが好ましいところ、推薦するには四方弁を使用することがよい。
【0094】
特定的に、前記第3バルブ42を少なくとも2つ以上の流れ方向を持つバルブ、好ましくは四方弁から構成する場合、前記四方弁の一側は緩衝溶液貯留部材48から排出される緩衝溶液の移動経路に連結設置され、他の一側は緩衝溶液をタンパク質分離装置の外部に排出できる経路として使用することができ、残り流体の移動経路を提供する一側などはプラグ68などで密封する。
【0095】
一方、本発明に係る第1バルブ26が連結設置された中空糸膜32の終端の一側に対向する他側、すなわち中空糸膜32の出口には、中空糸膜32を通過しながら分子量の大きさによって分離されたタンパク質が流入され、分離されたタンパク質を分析する検出器52が連結設置されるところ、前記検出器52は、分離されたタンパク質の分析に使用される当業界の通常の検出器52であれば特に限定されないが、推薦するには紫外線検出器52を使用することが良い。
【0096】
また、本発明に係る各装置の構成要素において、タンパク質試料、電解質溶液および緩衝溶液などが流れる移動経路は、前述した物質と反応しない、当業界で通常用いられる材質の管を使用すれば特に限定されないが、好ましくはキャピラリー30、38、より好ましくはシリコンキャピラリーを使用することがよい。
【0097】
また、本発明に係るタンパク質分離装置は、これを構成する注入ポンプ10、24、供給ポンプ50、バルブ26、40、42、および圧力バルブ44、46などをコンピュータと連結させて制御し得るように構成した後、最終的にタンパク質が分離されて通過する中空糸膜32の分離モジュールを自動分取器(図示せず)に連結させる場合、タンパク質をpIおよび分子量によって自動分離することができ、中空糸膜32の出口をキャピラリー、好ましくはシリカキャピラリーを用いてエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)質量分析器(mass spectrometry、MS)とオンライン連結することが可能である。
【0098】
ここで、前記エレクトロスプレーイオン化−質量分析器(ESI−MS)の場合、タンパク質の質量分析と共にタンデム質量分析法を使用する場合、タンパク質鎖に対する構造分析が可能であってタンパク質の識別に応用することができ、タンパク質試料が中空糸膜32で分離される過程中に、等電点電気泳動用キャピラリー12から流入された両性電解質は中空糸膜32の放射流れと共に排出されるので、両性電解質の自動的な除去が可能になる。
【0099】
次に、前述した構成を持つ本発明に係るタンパク質分離装置の作用方法について説明する。
まず、分離分析しようとするタンパク質試料と両性電解質溶液、好ましくはpH3〜10、濃度2〜5%の両性電解質溶液混合物を第1注入ポンプ10に満たした後、等電点電気泳動用キャピラリー12、好ましくはテフロン(登録商標)キャピラリーに前記混合物を供給する。
【0100】
その後、前記等電点電気泳動用キャピラリー12に10〜50分間200〜700V/cm、好ましくは約500V/cmの電場をかけて等電点電気泳動させた後、全ての分離が終了するまで200〜700V/cm、好ましくは300V/cmの電場を維持する。
【0101】
その後、第2注入ポンプ24に陽電解質溶液、好ましくは20mM H3PO4溶液を満たした後、これを等電点電気泳動用キャピラリー12に注入し、等電点電気泳動されて分取されたタンパク質を第1バルブ12に移動させて試料ループ58に満たされるようにする。
【0102】
この際、前記試料ループ58に満たされる等電点電気泳動されたタンパク質の体積は、1〜102μL、好ましくは最大2μLに調節するが、所望のpI領域の大きさだけ調節する。ここで、使用された両性電解質のpH領域が3〜10の場合、1μLの体積は約pI1間隔だけに該当するところ、例えば一番目のタンパク質試料注入過程で1μLを試料ループ58に充填すると、タンパク質のpI領域は約9〜10領域に該当する。
【0103】
その後、緩衝溶液貯留部材48の一側に連結設置された供給ポンプ50を作動させ、緩衝溶液貯留部材48に貯留された緩衝溶液を第1バルブ26に供給し、前記試料ループ58に満たされたタンパク質分取液を中空糸膜32に供給する。
【0104】
ここで、前記緩衝溶液は、緩衝溶液貯留部材48の一側に連結設置された第2バルブ40および第3バルブ42に同時に供給されて2つの流れに分けられるところ、前記第2バルブ40に供給された緩衝溶液は、第2バルブ40を経て第1バルブ26に供給され、前記第3バルブ42に供給された緩衝溶液は、第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端、すなわち中空糸膜32の出口に、好ましくは検出器52を通過して中空糸膜32の出口に供給される。この際、前記2つの流れに分けられた緩衝溶液の流速比率は第1圧力バルブ44によって約1:9に調節され、中空糸膜32の両側の終端に流入される緩衝溶液は第1バルブ26に連結設置される中空糸膜32の入口から全長の10〜50%となる位置で集中し、前記タンパク質試料も中空糸膜32の入口から全長の10〜50%となる位置で平衡に到達する。
【0105】
また、前記中空糸膜32の両側の終端に流入される緩衝溶液は、中空糸膜32の壁の空隙に沿って中空糸膜の外部に排出されるが(放射流れ)、この過程は、試料の弛緩過程である試料弛緩過程(sample relaxation)といい、タンパク質試料は、前記放射流れ56の強度によって中空糸膜の内壁方向に移動し、同時にタンパク質試料の拡散運動によって試料が中空糸膜32の内方に移動する両方向の力が伝達される。この際、拡散の速い小さい分子量のタンパク質は、拡散の遅い大きい分子量のタンパク質より中空糸膜の内壁から相対的に遠く離れた位置で力の平衡を得る。
【0106】
その後、平衡が終了した後、第3バルブ42を閉鎖し、第2バルブ40を第1バルブ26と直接連結されるようにして、緩衝溶液貯留部材48の緩衝溶液が第1バルブ26を介して中空糸膜32に流入されるようにすることにより、フローフィールドフロー分画法によって分子量の小さいタンパク質から分子量の大きいタンパク質の順でタンパク質を分離して検出器52に流入させる。
【0107】
必要に応じて、本発明に係るタンパク質分離装置は、検出器52の後方に分取液分取器(図示せず)を連結設置して使用することができるところ、前記分取液分取器を検出器52に連結設置する場合、タンパク質を分子量領域に基づいて分取することができる。分取したタンパク質分取液は、酵素分解処理してペプチド化した後、ナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法を用いてペプチドを分離し、質量スペクトルをタンパク質データベースと比較してタンパク質を識別することができる。
【0108】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ところが、下記の実施例は本発明を具体的に説明するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0109】
<実施例1>
タンパク質分離装置の製造
図2に示すように、等電点電気泳動用キャピラリーとして、9.5cm×310μm(内径)のテフロン(登録商標)キャピラリー(Vernon Hills、Cole−Parmer社、米国)の一側終端に外径360μm、内径50μmのシリカキャピラリー(Phoenix、Polymicro Technologies社、米国)を連結管として2つのマイクロ−ティーを順次連結設置した。
【0110】
その後、前記一番目のマイクロ−ティーの一側にユニオン(Delrin Standard Uion、Upchurch Scientific、米国)およびシリンジポンプ(Harvard Apparatus 22、Harvard Apparatus、米国)を順次連結設置し、2番目のマイクロ−ティー(MicroTee、Upchurch Scientific、米国)の一側にシリンジポンプ(Harvard Apparatus 22、Harvard Apparatus、米国)を連結設置し、他の一側に陽極としての白金を連結設置し、一番目のマイクロ−ティーに連結設置されたシリンジポンプにタンパク質試料[ミオグロビン(15kDa、pI6.8)、トリプシノゲン(24kDa、pI9.3)、炭酸脱水酵素(29kDa、pI5.85)、ウシ血清アルブミン(BSA、66kDa、pI4.8)、酵母アルコール脱水素酵素(YADH、150kDa、pI6.23)]およびpH3〜10の両性電解質溶液(Ampholyte High Resolution、Fluka、スイス)を満たし、2番目のマイクロ−ティーに連結設置されたポンプには陽電解質溶液として、0.10μmの分離膜フィルターで濾過した超純水(>18MΩ)で製造された20mM H3PO4溶液を満たした。
【0111】
その後、前記一番目のマイクロ−ティーが連結されたテフロン(登録商標)キャピラリーの一側に対向する他側に連結部材として別の2つのマイクロ−ティーを順次連結設置した後、前記後端に連結設置されるマイクロ−ティーの一側に陰電極としての白金を連結設置し、これに対向する他側には陰電解質溶液として、0.10μmの分離膜フィルターで濾過した超純水(>18MΩ)で製造された20mM NaOH溶液が満たされた電解質蓄積部材(Cross、Upchurch Scientific、米国)を連結設置した。
【0112】
この際、前記2つのマイクロ−ティーは、分子量透過限界10kDaの半透過膜(PLCGC、Mllipore、米国)を挿入したシリカキャピラリー(Phoenix、Polymicro Technologies社、米国)を用いて互いに連結設置した。
【0113】
その後、テフロン(登録商標)キャピラリーに連結設置されるマイクロ−ティーの一側を試料ループ(20mLのサンプルループ、Rheodyne、米国)が備えられた6ポート試料注入バルブ(Cotati、CA、Rheodyne社、米国)に連結設置した後、前記6ポート試料注入バルブにマイクロ−ティーおよび内径450μm、外径720μm、長さ25cm、透過限界30kDaの中空糸膜[コオロン中央研究所、韓国]を順次連結設置した。
【0114】
その後、前記中空糸膜の一側を検出器(UV730D、ヨンリン機器、韓国)および四方弁(4−4 Hamilton Valve、Hamilton、米国)に順次連結させ、6ポート試料注入バルブを圧力バルブおよび別の四方弁(LabPro、Rhepdyne、米国)に連結させた。
【0115】
その後、前記2つの四方弁を緩衝溶液に満たされている緩衝溶液貯留部材(5Lの三角フラスコ、Schott Duran、ドイツ)の一側に連結させてタンパク質分離装置を製造した。
【0116】
<実施例2>
タンパク質標準物に対するキャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画装置の分離
実施例1によって製造されたタンパク質分離装置(キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画装置)の分離能を評価するために、5つのタンパク質標準物を混合してタンパク質混合物試料を準備した。ここで、前記タンパク質標準物の混合物の組成は表1の通りであった。
【0117】
【表1】
【0118】
前記表1による組成を持つタンパク質混合物と両性電解質(5%v/v)の混合溶液を、実施例1によって製造されたタンパク質分離装置の1番目のシリンジポンプに装着した後、そのシリンジポンプを作動させてテフロン(登録商標)キャピラリーに前記混合溶液を供給した後、約20分間500V/cmの電場をかけて等電点電気泳動させた後、全ての分離が終了するまで300v/cmの電場を維持した。
【0119】
その後、陽電解質溶液である20mM H3PO4溶液が満たされているシリンジポンプを作動させ、テフロン(登録商標)キャピラリー内の等電点電気泳動されたタンパク質が6ポートバルブに移動して試料ループに充填されるように伝達体積を調節した。この際、シリンジポンプが伝達する体積を正確に調節して、6ポートバルブに伝達される等電点電気泳動されたタンパク質のpI領域を正確に調節するところ、タンパク質標準物の場合、4つの分取液、すなわちpI区間3〜5、5〜6、6〜8および8から10に分けて中空糸フローフィールドフロー分画による分離に使用したので、一番目の試料注入はpI8〜10領域のタンパク質分取液であり、これは約2μLの体積に該当した。
【0120】
その後、試料ループに満たされたタンパク質分取液は、中空糸膜における分離のために6ポートバルブを開放して緩衝溶液貯留部材から緩衝溶液を試料ループを経て中空糸膜に伝達されるようにするところ、この際、図2に示すように、2つの四方弁の位置が点線連結されるようにして、緩衝溶液貯留タンクから排出される緩衝溶液が2つの流れに分離され、一つの流れは圧力バルブを経て中空糸膜の入口に伝達され、同時にもう一つの流れは他の四方弁および検出器を逆に経て中空糸膜の出口に伝達されるようにした。
【0121】
この際、前記2つの流れ流速比率は6ポートバルブに連結設置された圧力バルブによって1:9に調節され、中空糸膜の入口および出口に注入される緩衝溶液は中空糸膜の入口から全長の10%となる位置、すなわち2.5cmで集中され、タンパク質分取液の試料も前記10%となる位置で平衡を持つようにした。
【0122】
その結果は図5に示した。ここで、番号1はミオグロビン、番号2はトリプシノゲン、番号3は炭酸脱水酵素、番号4はウシ血清アルブミン、番号5は酵母アルコール脱水素酵素である。
【0123】
図5に示すように、5つのタンパク質混合物の分離の際にキャピラリー等電点電気泳動から一番目に注入されたタンパク質分取液のpIは8〜10であり、これに対する中空糸膜フローフィールドフロー分画による分離は図5の分離ピークの一番目のピークに現れている。
【0124】
流速条件600μL/min、放射流れ速度540μL/min、中空糸膜出口流速60μL/minにおける該当ピークは、タンパク質2番トリプシノゲン(pI9.3)試料であり、2番試料の分離が終了する頃に6ポートバルブの試料ループに注入されていた次のpI領域(pI6〜8)のタンパク質分取液に対する中空糸膜フローフィールドフロー分画による分離が行われたところ、1番と5番のタンパク質が分離された。
【0125】
それぞれのpI値は6.8、6.23なので、当該pI領域のタンパク質がキャピラリー等電点電気泳動によって成功的に分離されて中空糸膜フローフィールドフロー分画で分子量別分離が行われることを確認することができた。
【0126】
また、1番ピークはミオグロビンであって、2量体によるピークが1番ピークの直後に分離されたと推定することができた。
また、タンパク質試料の5番ピークは、分離された時間が、分子量領域からみるとき150kDarが検出される時間帯に現れたことからみて、タンパク質試料の変性を回避することができるものと確認された。
【0127】
<比較実施例1>
実施例2に使用されたタンパク質試料(タンパク質標準物の混合物)を2D−PAGE方法によって分離した。
【0128】
まず、タンパク質をpIに基づいて分離するために、pH3〜10の範囲を持つ固定されたpH勾配ゲル(immobilized pH gradient gel)を使用し、pIに基づいて分離されたタンパク質をさらに12%ポリアクリルアミドゲルを用いてタンパク質の大きさに基づいて分離した。
【0129】
しかも、前記タンパク質の分離のために使用された実験過程は、Richard J.Simpson執筆の「Proteins and Proteomics: a laboratory manual, CSHL PRESS, New York, 2003」に詳細に説明されている。
その結果を図6に示した。
【0130】
図6に示すように、5番タンパク質試料である酵母アルコール脱水素酵素(YADH)は、分子量が150kDaと知られているが、実際分離されて示された位置は36.5dDaと55kDaとの間に位置しているところ、これはYADHが4つのサブユニットから構成されているので、電気泳動過程でSDS(sodium dodecylasulfate)を使用する特性上、サブユニットが分離された状態(それぞれのサブユニットの分子量は37.5kDa程度である)であると推定される。したがって、前記2D−PAGEはタンパク質試料の変性を回避することができないものと確認された。
【0131】
<実施例3>
キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画装置を用いたヒト尿タンパク体の分離
実施例1によって製造されたタンパク質分離装置(キャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画装置)を用いてヒトの尿から抽出したタンパク体試料の分離に適用しようとした。
収去した小便は、分子量透過限界30kDaを有する分離膜を用いてろ過することにより、分子量透過限界30kDa以上のタンパク体試料のみを使用した。
まず、実施例2と同様の方法で行うが、実施例2のタンパク質標準物の混合物の代わりに濾過された尿タンパク体試料40μgを使用し、中空糸膜における分子量分離の際には等電点電気泳動されたタンパク質試料バンドを6つのpH領域に分けて注入した。pH9〜10、8〜9、7〜8、7〜7、5〜6、および3〜5の6段階に分けられて注入されたタンパク質体試料バンドは、中空糸フローフィールドフロー分画でそれぞれ分離された。
【0132】
これについての結果を図7に示した。ここで、タンパク質の識別はナノ流速LC−MS−MS分析方法を使用した。
図7に示すように、キャピラリー等電点電気泳動による分取液のpHが減少するにつれて、分離時間5分帯で現れるピークの強度は大きく増加するものと確認された。また、5分以後には2番目のピークがpH6〜7で新しく現れ始めた。
【0133】
これは分子量の大きさ約100kDa以上のものであって、pI7より小さい値を持つ巨大分子に関することを意味する。
反面、キャピラリー等電点電気泳動による分取液Fはいずれのピークも示していないものと思われるところ、これは、キャピラリー等電点電気泳動チュービング内でフィールドフロー分画分離して待機しているタンパク質のうち、pH3〜5の分取液は最後の分離段階まで待機しなければならず、この際、電気浸透流れによる影響で一部のタンパク質が陰極方向に移動し、その結果pI3〜5に該当するタンパク質が前側の分取液に移動したものと推定される。
【0134】
実際に低いpI値を持つタンパク質の存在は、図8に示した、同一の試料400μgを注入して分離した2D−PAGEの結果より、pH領域3に大きいスポットがあるものと確認することができる。
【0135】
<比較実施例2>
実施例3に使用された尿タンパク体試料400μgを2D−PAGE方法によって分離した。
【0136】
ここで、前記尿タンパク質をpIと大きさによって分離するための実験過程は、タンパク質標準試料に使用された方法と同一であるが、広い領域におけるタンパク質大きさ別分離のために8〜12%勾配ポリアクリルアミドゲルを使用したという点が比較実施例1の実験方法と異なる。
その結果を図8に示した。
【0137】
図8に示すように、pH領域3に大きいスポットがあるものと確認することができる。
【0138】
<実施例4>
ナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法を用いた尿タンパク質分取液に対するタンパク質分析
実施例3によって分離されるタンパク質を5分間隔で収去したタンパク質分取液の総24個をそれぞれトリプシン酵素を用いて加水分解した後、ペプチド混合物に転換してそれぞれの24個の試料に対してナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法で分離分析してタンパク質識別過程を行った。
その結果を図9に示した。
【0139】
図9は、中空糸フローフィールドフロー分画によって分取した分取液E1〜E4をペプチド化した後、ナノ流速LCでそれぞれ分離し、分離の際にカラム溶離液を質量分析器でESI方法によって直接イオン化して質量分析を行う過程で得られたベースピーククロマトグラム(base peak chromatogram、BPC)である。
【0140】
図9aは分取液E1(図7の分取液E(pH5〜6領域)に対する中空糸フローフィールドフロー分画による分離の際に0〜5分の間に分離されて出たタンパク質分取液を酵素加水分解処理して得られたペプチド混合物)に対するLCピークである。
【0141】
ナノ流速LC分離に使用された分離条件によれば、勾配溶離法(gradient elution)を使用し、溶媒条件によれば、溶媒Aは3/97%水/アセトニトリル(CH3CN)/水溶液であり、溶媒Bは3/97%水/アセトニトリル溶液であって、それぞれ0.1%のギ酸(HCOOH)を添加した。
【0142】
勾配溶離条件によれば、溶媒Bが5%の条件で始めて5分後に全体溶媒の組成でBが12%となるように25分間上昇させ、さらに60分間Bの組成が60%となるように増加させた。
【0143】
その後、3分間にわたって溶媒Bが80%となるように上昇させた後、10分間維持し、さらに5%に2分間にわたって減少させて最小25分間カラムの再平衡過程を行った。
流速は勾配溶離全区間にわたって200nL/minを維持した。
【0144】
図9に示したそれぞれのクロマトグラムは、LCで溶離されたペプチドがエレクトロスプレーイオン化過程を経て質量分析器に注入されるとき、前駆体スキャンを行いながら測定されたイオンのうち毎回スキャン過程でピーク強度が大きいイオンの強度のみで描かれたクロマトグラムであり、分取液E1とE2は相当大きいペプチドイオンが分離されて出たものと確認される反面、分取液E3とE4は相対的にペプチドのピーク数が少ない。
【0145】
検出されたペプチドは、2次質量分析器で衝突誘起解離(collision induced dissociation、CID)によってタンデム質量分析を行い、断片化した分子のスペクトルからペプチドのアミノ酸配列を確認するが、この際、データ従属MS−MS分析法を使用し、詳細な説明は次の通りである。
【0146】
図9aと図9bにそれぞれ「*」と「**」で表示された位置で測定された質量分析スペクトルは、次の通りである。
【0147】
図9aに表示された「*」位置は70.9分に該当し、この時間で測定された前駆体スキャン質量スペクトルは図10aに示し、非常に多くのペプチドが同時に分離されて出ることを確認することができる。これはタンパク質分取液をペプチドで分解したときに生成されたペプチドの数が非常に多く、LC分離中に70.9分に該当する時間帯に溶離されたペプチドのみを測定したにも拘らず、多くのペプチドが同時に分離されて出ることが分かる。図10aから確認されたいろいろのピークのうち、m/z 585.00(+3がイオン)に該当するイオンを選択してデータ従属MS−MS分析を行った後、得られたタンデム質量スペクトルは図10bに示したが、ペプチドが断片化したときに生成されるイオンのうちyタイプのイオンを表示し、このスペクトルの情報と図10aから確認されたm/z値を用いてタンパク質データベース(Swiss−Prot)の情報から、タンパク質識別確認プログラムを用いてペプチドの識別および該当ペプチドの属したタンパク質に対する情報を得ることができる。
【0148】
タンパク質の識別に使用したプログラムは、Mascot(Matrix Scientific)であり、この過程を経て確認された図10aのm/z 585.00イオンはペプチドの構造式がYVGGQEHFAHLLILRであり、タンパク質はOrosomucoid1であることが確認された。図10bは、ペプチド構造式の両側にはペプチドがタンパク質から酵素分解される前段階に隣接したアミノ酸配列を共に示すことにより、トリプシンにより酵素分解されたものであることを共に示した。
【0149】
また、図9bの95.4分(**)に記録された前駆体スキャン質量スペクトルは図11aに示し、ペプチドm/z 987.06(+2)イオンに該当する開裂スペクトルは図11bに示した。タンパク質データベースの確認結果、ペプチドのアミノ酸配列はSFPALTSLDLSDNPGLGERであり、タンパク質は単球細胞分化抗原(monocyte differentiation antigen)CD14であると確認された。
【0150】
図10および図11に示した2つのタンパク質は、ヒトの肝炎症の際に現れる標識物質であることが文献上に知られている[J.X. Panf, N. Gianni, A.R.Dongre, S.A. Hefta, G.J.Opteck, J. Proteome Research, 2002, , 161-169]。
【0151】
また、全体24個の分取液(A1−F4)試料に対する分析から確認されたタンパク質を表2に示し、それぞれのタンパク質に対するpIおよび分子量値を共に表記した。それぞれのCIEF分取液から識別されたタンパク質のpI値は幾つかのタンパク質を除いては当該CIEF分取液が持つpH範囲の値とよく一致しており、一部のタンパク質は当該pH範囲よりやや高い或いは低い場合であり、一部のタンパク質は隣接したキャピラリー等電点電気泳動分取液で同時に確認されるものが分取液毎に5〜7個程度に該当する。
【0152】
各分取液で確認されたタンパク質のpI値(タンパク質データベース)と分子量を図12に示したところ、各キャピラリー等電点電気泳動分取液に基づいて確認されたタンパク質のpI平均値は実線で表示し、数値を各図面内に表記した。各CIEF分取液に基づいて確認されたタンパク質のpI平均値は、当該分取液が持つpH範囲内にあるものと確認される。また、各分取液に基づいて確認されたペプチドとタンパク質の数を表3に示し、確認された全体タンパク質の数は総114個である。
【0153】
この個数は、同一の尿タンパク試料をキャピラリー等電点電気泳動−中空糸フローフィールドフロー分画で前もって分離していない状態で直酵素分解処理した後、ナノLC−ESI−MS−MSのみで分析したとき、21個のタンパク質のみが確認された場合と比較すれば、約5.5倍多いタンパク質が確認された結果と解釈することができる。
【0154】
これは、2次元タンパク質分離方法を使用したとき、相対的に存在比の低いタンパク質から得られたぺプチドが相対的存在比の高いペプチドと同時に分離分析されるときに現れるイオン抑制効果を相対的に減らすことができるためである。
【0155】
【表2】
【表3】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
本発明の好適な実施形態は説明の目的で記載されたものに過ぎず、当業者であれば、特許請求の範囲に開示された本発明の精神および範囲から逸脱することなく、各種変更、追加および置換が可能であることを理解するであろう。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、タンパク質をpIと分子量の順序に基づいて分離することができ、タンパク質分離の際にタンパク質が変性されないうえ、タンパク質を分離回収した後、回収されたタンパク質を酵素加水分解処理する場合、ペプチドの分析にナノ流速液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−タンデム質量分析法を適用してタンパク質の識別を直接利用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】従来のタンパク質分離装置を示す構成図である。
【図2】本発明に係るタンパク質分離装置を示す構成図である。
【図3】本発明に係るキャピラリー等電点電気泳動装置の連結部材の連結様態を示す構成図である。
【図4】本発明に係る中空糸フローフィールドフロー分画部の連結部材の連結様態を示す構成図である。
【図5】本発明に係るタンパク質分離装置を用いて標準タンパク質試料の分離結果を示す図である。
【図6】標準タンパク質試料に対する2D−PAGEを用いた試料の分離結果を示す図である。
【図7】本発明に係るタンパク質分離装置を用いた尿タンパク体試料の分離結果を示す図である。
【図8】尿タンパク体試料に対する2D−PAGEを用いた試料の分離結果を示す図である。
【図9】本発明に係るタンパク質分離装置を用いて分離された4つの分取液に対するLC−MS−MSクロマトグラムを示す図である。
【図10A】図9aの70.9分に記録された質量スペクトルを示す図である。
【図10B】図9aの70.9分に記録されたm/z=585.00イオンに対するタンデム質量スペクトルを示す図である。
【図11A】図9bの95.4分に記録された質量スペクトルを示す図である。
【図11B】図9bの95.4分に記録されたm/z=987.06イオンに対するタンデム質量スペクトルを示す図である。
【図12】本発明に係る尿タンパク体試料に対する分子量値とpI値に対する図式を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質試料をpIに基づいて1次分離するキャピラリー等電点電気泳動装置、および前記キャピラリー等電点電気泳動装置の一側に連結設置され、1次分離されたタンパク質を2次分離する中空糸フローフィールドフロー分画部を含むことを特徴とする、タンパク質分離装置。
【請求項2】
前記キャピラリー等電点電気泳動装置は、等電点電気泳動用キャピラリーと、前記等電点電気泳動用キャピラリーの終端の一側に連結設置された第1連結部材と、前記第1連結部材の一側に連結設置され、タンパク質試料および両性電解質混合物を注入する第1注入ポンプと、前記第1連結部材の一側に連結設置された第2連結部材と、前記第2連結部材の一側に連結設置され、陽電解質溶液を注入する第2注入ポンプと、前記第2連結部材の一側に連結設置された陽極と、前記第1連結部材が連結設置された等電点電気泳動用キャピラリーの一側の終端に対向する他側の終端に連結設置された第3連結部材と、前記第3連結部材の一側に連結設置された第4連結部材と、前記第4連結部材の一側に連結設置された陰極電解質蓄積部材と、前記陰極電解質蓄積部材が連結設置された第4連結部材の一側に対向する他側に連結設置された陰極とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質分離装置。
【請求項3】
前記等電点電気泳動用キャピラリーがテフロン(登録商標)キャピラリーであることを特徴とする、請求項2に記載のタンパク質分離装置。
【請求項4】
前記第3連結部材および前記第4連結部材は、分子量透過限界約10kDaの半透膜が備えられたキャピラリーによって連結設置されることを特徴とする、請求項2に記載のタンパク質分離装置。
【請求項5】
前記中空糸フローフィールドフロー分画部は、キャピラリー等電点電気泳動装置の第3連結部材の一側に連結設置され、キャピラリー等電点電気泳動装置で分離されたタンパク質試料が流入される第1バルブと、前記第1バルブの一側に連結設置された中空糸膜と、前記第1バルブが連結設置された中空糸膜の一側に対向する他側に連結設置された検出器と、前記第1バルブおよび前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の一側の終端に対向する他側の終端に連結設置され、内部に緩衝溶液を貯留する緩衝溶液貯留部材と、前記緩衝溶液貯留部材に連結設置され、貯留された緩衝溶液を前記第1バルブおよび前記中空糸膜に供給する供給ポンプとを含むことを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質分離装置。
【請求項6】
前記中空糸フローフィールドフロー分画部は、緩衝溶液貯留部材から排出される緩衝溶液の移動回路を2つの流れ経路に分離した後、それぞれの流れ経路に第2バルブおよび第3バルブをそれぞれ連結させ、前記第2バルブの一側に第1圧力バルブおよび第1バルブを順次連結させ、前記第3バルブの一側を第1バルブが連結設置された中空糸膜の一側に対向する他側の終端に連結設置したことを特徴とする、請求項5に記載のタンパク質分離装置。
【請求項7】
前記第1バルブと前記中空糸膜との間に備えられ、第1バルブから流入されるタンパク質および試料を中空糸膜に移動させる経路を提供すると同時に、その一側が放射流れに連結設置された第5連結部材をさらに含むことを特徴とする、請求項5または6に記載のタンパク質分離装置。
【請求項8】
前記中空糸膜がポリスチレンスルホン酸、ポリ塩化ビニール、ポリアクリロニトリルまたはこれらの混合物からなることを特徴とする、請求項5または6に記載のタンパク質分離装置。
【請求項9】
前記第1バルブに試料ループがさらに備えられたことを特徴とする、請求項5または6に記載のタンパク質分離装置。
【請求項10】
前記第1バルブが6ポートバルブであることを特徴とする、請求項5または6に記載のタンパク質分離装置。
【請求項11】
I)分離分析しようとするタンパク質試料と両性電解質溶液の混合物を第1注入ポンプに満たした後、等電点電気泳動用キャピラリーに前記混合物を供給する段階と、
II)前記等電点電気泳動用キャピラリーに約10〜50分間200〜700V/cmの電場をかけて等電点電気泳動させた後、全ての分離が終了するまで200〜700V/cmの電場を維持する段階と、
III)第2注入ポンプに陽電解質溶液を満たした後、これを等電点電気泳動用キャピラリーに注入し、等電点電気泳動されたタンパク質分取液を第1バルブに移動させて試料ループに満たす段階と、
IV)緩衝溶液貯留部材の一側に連結設置された供給ポンプを作動させ、緩衝溶液貯留部材に貯留された緩衝溶液を第1バルブに供給して、前記試料ループに満たされたタンパク質分取液を中空糸膜に供給すると同時に、前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端へ緩衝供給を供給して平衡を維持する段階と、
V)前記段階IV)の平衡が終了した後、第3バルブを閉鎖し、その後緩衝溶液貯留部材の緩衝溶液を第1バルブを介して中空糸膜に流入されるようにして、フローフィールドフロー分画法で分子量の小さいタンパク質から分子量の大きいタンパク質の順でタンパク質を分離して検出器に流入させる段階とを含むことを特徴とする、タンパク質分離方法。
【請求項12】
前記段階V)の後、エレクトロスプレーイオン化質量分析器を直接連結して分析する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のタンパク質分離方法。
【請求項13】
前記段階V)の後、分離されたタンパク質試料を回収してプロテオームを分析する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のタンパク質分離方法。
【請求項14】
前記段階III)の試料ループに満たされる等電点電気泳動されたタンパク質の体積は、1〜10μLに調節するが、所望のpI領域の大きさだけ調節することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載のタンパク質分離方法。
【請求項15】
前記段階IV)において、前記第1バルブおよび前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端に流れる緩衝溶液の流速比率が1:9〜5:5に調節され、中空糸膜の両側の終端に流入される緩衝溶液は中空糸膜の入口から全長の約10〜50%となる位置で集中し、前記タンパク質分取液試料は中空糸膜の入口から全長の約10〜50%となる位置で平衡を成すことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載のタンパク質分離方法。
【請求項1】
タンパク質試料をpIに基づいて1次分離するキャピラリー等電点電気泳動装置、および前記キャピラリー等電点電気泳動装置の一側に連結設置され、1次分離されたタンパク質を2次分離する中空糸フローフィールドフロー分画部を含むことを特徴とする、タンパク質分離装置。
【請求項2】
前記キャピラリー等電点電気泳動装置は、等電点電気泳動用キャピラリーと、前記等電点電気泳動用キャピラリーの終端の一側に連結設置された第1連結部材と、前記第1連結部材の一側に連結設置され、タンパク質試料および両性電解質混合物を注入する第1注入ポンプと、前記第1連結部材の一側に連結設置された第2連結部材と、前記第2連結部材の一側に連結設置され、陽電解質溶液を注入する第2注入ポンプと、前記第2連結部材の一側に連結設置された陽極と、前記第1連結部材が連結設置された等電点電気泳動用キャピラリーの一側の終端に対向する他側の終端に連結設置された第3連結部材と、前記第3連結部材の一側に連結設置された第4連結部材と、前記第4連結部材の一側に連結設置された陰極電解質蓄積部材と、前記陰極電解質蓄積部材が連結設置された第4連結部材の一側に対向する他側に連結設置された陰極とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質分離装置。
【請求項3】
前記等電点電気泳動用キャピラリーがテフロン(登録商標)キャピラリーであることを特徴とする、請求項2に記載のタンパク質分離装置。
【請求項4】
前記第3連結部材および前記第4連結部材は、分子量透過限界約10kDaの半透膜が備えられたキャピラリーによって連結設置されることを特徴とする、請求項2に記載のタンパク質分離装置。
【請求項5】
前記中空糸フローフィールドフロー分画部は、キャピラリー等電点電気泳動装置の第3連結部材の一側に連結設置され、キャピラリー等電点電気泳動装置で分離されたタンパク質試料が流入される第1バルブと、前記第1バルブの一側に連結設置された中空糸膜と、前記第1バルブが連結設置された中空糸膜の一側に対向する他側に連結設置された検出器と、前記第1バルブおよび前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の一側の終端に対向する他側の終端に連結設置され、内部に緩衝溶液を貯留する緩衝溶液貯留部材と、前記緩衝溶液貯留部材に連結設置され、貯留された緩衝溶液を前記第1バルブおよび前記中空糸膜に供給する供給ポンプとを含むことを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質分離装置。
【請求項6】
前記中空糸フローフィールドフロー分画部は、緩衝溶液貯留部材から排出される緩衝溶液の移動回路を2つの流れ経路に分離した後、それぞれの流れ経路に第2バルブおよび第3バルブをそれぞれ連結させ、前記第2バルブの一側に第1圧力バルブおよび第1バルブを順次連結させ、前記第3バルブの一側を第1バルブが連結設置された中空糸膜の一側に対向する他側の終端に連結設置したことを特徴とする、請求項5に記載のタンパク質分離装置。
【請求項7】
前記第1バルブと前記中空糸膜との間に備えられ、第1バルブから流入されるタンパク質および試料を中空糸膜に移動させる経路を提供すると同時に、その一側が放射流れに連結設置された第5連結部材をさらに含むことを特徴とする、請求項5または6に記載のタンパク質分離装置。
【請求項8】
前記中空糸膜がポリスチレンスルホン酸、ポリ塩化ビニール、ポリアクリロニトリルまたはこれらの混合物からなることを特徴とする、請求項5または6に記載のタンパク質分離装置。
【請求項9】
前記第1バルブに試料ループがさらに備えられたことを特徴とする、請求項5または6に記載のタンパク質分離装置。
【請求項10】
前記第1バルブが6ポートバルブであることを特徴とする、請求項5または6に記載のタンパク質分離装置。
【請求項11】
I)分離分析しようとするタンパク質試料と両性電解質溶液の混合物を第1注入ポンプに満たした後、等電点電気泳動用キャピラリーに前記混合物を供給する段階と、
II)前記等電点電気泳動用キャピラリーに約10〜50分間200〜700V/cmの電場をかけて等電点電気泳動させた後、全ての分離が終了するまで200〜700V/cmの電場を維持する段階と、
III)第2注入ポンプに陽電解質溶液を満たした後、これを等電点電気泳動用キャピラリーに注入し、等電点電気泳動されたタンパク質分取液を第1バルブに移動させて試料ループに満たす段階と、
IV)緩衝溶液貯留部材の一側に連結設置された供給ポンプを作動させ、緩衝溶液貯留部材に貯留された緩衝溶液を第1バルブに供給して、前記試料ループに満たされたタンパク質分取液を中空糸膜に供給すると同時に、前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端へ緩衝供給を供給して平衡を維持する段階と、
V)前記段階IV)の平衡が終了した後、第3バルブを閉鎖し、その後緩衝溶液貯留部材の緩衝溶液を第1バルブを介して中空糸膜に流入されるようにして、フローフィールドフロー分画法で分子量の小さいタンパク質から分子量の大きいタンパク質の順でタンパク質を分離して検出器に流入させる段階とを含むことを特徴とする、タンパク質分離方法。
【請求項12】
前記段階V)の後、エレクトロスプレーイオン化質量分析器を直接連結して分析する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のタンパク質分離方法。
【請求項13】
前記段階V)の後、分離されたタンパク質試料を回収してプロテオームを分析する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のタンパク質分離方法。
【請求項14】
前記段階III)の試料ループに満たされる等電点電気泳動されたタンパク質の体積は、1〜10μLに調節するが、所望のpI領域の大きさだけ調節することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載のタンパク質分離方法。
【請求項15】
前記段階IV)において、前記第1バルブおよび前記第1バルブに連結設置された中空糸膜の終端の一側に対向する他側の終端に流れる緩衝溶液の流速比率が1:9〜5:5に調節され、中空糸膜の両側の終端に流入される緩衝溶液は中空糸膜の入口から全長の約10〜50%となる位置で集中し、前記タンパク質分取液試料は中空糸膜の入口から全長の約10〜50%となる位置で平衡を成すことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載のタンパク質分離方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図6】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図6】
【図8】
【公表番号】特表2009−524818(P2009−524818A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552218(P2008−552218)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000280
【国際公開番号】WO2007/129806
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(507175175)インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000280
【国際公開番号】WO2007/129806
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(507175175)インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ (18)
【Fターム(参考)】
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