説明

キャピラリ電気泳動装置及び電気泳動方法

【課題】キャピラリ交換毎の波長校正データの取得を不要にし、且つ、感度、デー取得の同時性を確保し、擬似信号を低減することができるキャピラリ電気泳動装置を提供する。
【解決手段】本発明は、検出光学系にマルチバンドパスフィルタを設けたことを特徴とするキャピラリ電気泳動装置に関する。本発明によると、2次元検出器の信号検出領域を、マルチバンドパスフィルタの波長透過領域に対応して複数の領域に分割する。複数の領域のうち分析試料の蛍光スペクトルのピークを含む領域において蛍光スペクトルの信号の積算値を求める。この積算値を用いて分析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は核酸やタンパク質等を電気泳動によって分離分析する電気泳動装置に関し、特に、キャピラリ電気泳動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャピラリ電気泳動装置では、一般に、励起用光源としてレーザ光源が用いられる。しかしながら、近年、キャピラリ電気泳動装置の低価格化を目的として、励起用光源として発光ダイオード(LED)を用いることが提案されている。特許文献1には、発光ダイオード(LED)を使用する電気泳動装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2や3には、キャピラリ軸と垂直にレーザ光を照射する方法ではなく、キャピラリ軸方向に励起光を照射する電気泳動装置が提案されている。励起光は、キャピラリ内を伝播し、キャピラリ中を移動する検出目的物質をその位置に関係なく励起する。広範囲の励起領域つまり検出領域を得るので、装置の高感度化が可能となる。その線状の発光部からの検出光を回折格子によって分光し、2次元検出器によって検出する。
【0004】
また、特許文献4及び5には、従来の波長校正データの取得方法の例が記載されている。
【0005】
また、非特許文献1には、回折格子の代わりに複数のフィルタを用いる方法が開示されている。
【特許文献1】US20030178312
【特許文献2】特開平5−52810
【特許文献3】特許第2833119号
【特許文献4】US6821402
【特許文献5】US6863791
【非特許文献1】シー・コーネル他;バイオテクニクス 5巻、648頁(1987年)(C.Connell et.al.;BioTechniques5,342(1987))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者が鋭意検討した結果、次のような課題が判明した。特許文献2や3に開示の技術においては、キャピラリ自身が励起部兼検出部となるので、キャピラリの交換により検出位置がずれるといった問題が生じる。従って、キャピラリ交換毎に、波長校正データの取得が必要である。波長校正データが不正確であると、分析処理において、波長ずれに起因した擬似信号が生じる。波長ずれが大きくなると、擬似信号も大きくなり、分析結果の信頼性が低下する。
【0007】
また、特許文献4や5に開示された波長校正データの取得方法は、既知のサンプルを実際に電気泳動させる必要があるため、操作者にとっては、大変な手間となっている。
【0008】
また、非特許文献1に開示された方法では、複数のフィルタを回転させるため、感度及びデータ取得の同時性を確保することが困難である。
【0009】
つまり、回折格子を用いる方法では、感度及びデータ取得の同時性を確保することができるが、キャピラリ交換毎の波長校正データの取得が必要である。一方、複数のフィルタを用いる方法では、キャピラリ交換毎の波長校正データの取得は不要であるが、感度及びデータ取得の同時性を確保することができない。
【0010】
本発明の目的は、電気泳動路交換毎の波長校正データの取得を不要にし、且つ、感度、データ取得の同時性を確保し、擬似信号を低減することができる電気泳動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、検出光学系にマルチバンドパスフィルタを設けたことを特徴とする電気泳動装置に関する。
【0012】
本発明によると、2次元検出器の信号検出領域を、マルチバンドパスフィルタの波長透過領域に対応して複数の領域に分割する。複数の領域のうち分析試料の蛍光スペクトルのピークを含む領域において蛍光スペクトルの信号の積算値を求める。この積算値を用いて分析を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、電気泳動路交換毎に波長校正データの取得を行う必要がなく、また、信号強度及び信号取得の同時性も損なわず、擬似信号を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、上記及びその他の本発明の新規な特徴と利益を、図面を参酌して説明する。ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0015】
図1Aに示すように、本例のキャピラリ電気泳動装置は、キャピラリアレイ101、照射光学ユニット121、検出光学ユニット131、オートサンプラユニット141、泳動媒体充填ユニット150、電源ユニット110、及び、温度制御ユニット161を有する。本例のキャピラリ電気泳動装置は、泳動媒体が充填された複数本のキャピラリを用い、各キャピラリに試料を導入し、試料中の試料成分を電気泳動分離し、分析する。例えば、DNA含有試料を有する複数のサンプルを同時に分析し、塩基配列を解析する。
【0016】
キャピラリアレイ101は、複数のキャピラリ102から構成されている。図1の例では、2本のキャピラリ102から構成されているが、1本であってもよく、4本、8本等であってもよい。キャピラリ102は、内径が数十〜数百ミクロン、外径が数百ミクロンの石英製の細管であり、強度を向上させるために表面がポリイミドによってコーティングされている。光を伝播させる部分では、フッ素コーティングでもよい。
【0017】
キャピラリアレイ101は、着脱可能な交換部材であり、所定回数の分析によって品質が劣化し、分離能が低下したとき、新品に交換される。また、測定手法を変更し、キャピラリ102の長さを変更する必要がある場合には、長さが異なるキャピラリアレイ101に交換する。それによって、キャピラリ102の長さを任意に調節することができる。
【0018】
キャピラリアレイ101は、励起光が照射される照射部103、試料を導入するための試料導入端105、及び、複数本のキャピラリを束ねて形成されたキャピラリヘッド108を有する。試料導入端105は試料導入部104によって保持される。
【0019】
図1Bに示すように、キャピラリ102の先端には中空電極106が挿入され、その先端は中空電極106から少し突出している。中空電極106は、例えば、ステンレス製パイプである。キャピラリヘッド108は泳動媒体充填ユニット150に接続されている。
【0020】
照射光学ユニット121は、光源123、第1の集光レンズ124、照射用フィルタ125、及び、第2の集光レンズ126を有する。
【0021】
照射部103では、キャピラリ102はガラス基板107上に支持されている。照射光学ユニット121からの励起光はキャピラリ102に照射される。光源123は、キャピラリアレイ101の照射部103に照射する励起光122を発生する。光源123として、通常、レーザ光源が用いられるが、本例では、発光ダイオード(LED)を用いる。
【0022】
第1の集光レンズ124は光源123からの励起光122を集光する。照射用フィルタ125は、励起光122より不要な波長成分をカットする。第2の集光レンズ126は、励起光122を集光する。第2の集光レンズ126によって集光された光はキャピラリ102に照射される。本例によると、励起光はキャピラリの軸線に沿って、又は、キャピラリの軸線に対して所定の角度にて傾斜して照射される。この所定の角度は45度以下である。
【0023】
キャピラリ102内にて電気泳動によって分離された試料成分に励起光122を照射する。試料成分に標識された蛍光体は、試料成分毎に異なる波長の光を放出する。この光は、検出光学ユニット131によって検出される。
【0024】
検出光学ユニット131は、第1カメラレンズ132、マルチバンドパスフィルタ133、回折格子134、第2カメラレンズ135、及び、2次元検出器136を有する。検出光学ユニット131の詳細に後に図3を参照して説明する。
【0025】
オートサンプラユニット141は、サンプル容器143、バッファ容器144、洗浄容器145、及び、廃液容器146を、試料導入部104の直下に搬送する。
【0026】
サンプル容器143は、複数の微量試料を保持する容器であり、試料導入時に試料導入部104の直下に搬送される。試料は、例えば、4種類のヌクレオシド塩基分子が蛍光標識された、多数の適当な長さ(大きさ)の核酸を含む溶液である。
【0027】
サンプル容器143は、例えば、数10μLの試料を保持することができるウェルを24行16列備えたサンプルプレートに、樹脂製のシートであるセプタを乗せ、それをホルダとクリップで挟むように構成されている。セプタは、ウェルに対応する位置に通常は密閉状態の貫通孔を有し、ウェル中の試料の蒸発を防止する。試料導入時には貫通孔を介して試料導入端105が試料に接触することができる。また、セプタの上面に保護フィルムを貼り付け、試料蒸発を防止することもできる。
【0028】
バッファ容器144は、試料導入端105を浸す緩衝液を保持する容器であり、泳動分析時、試料導入部104の直下に搬送される。また、装置の待機中にも、泳動分析時と同様に試料導入部104の直下に搬送され、試料導入端105を緩衝液に浸し、キャピラリ102内の泳動媒体の乾燥を防止する。
【0029】
洗浄容器145は、試料導入端105を洗浄する洗浄液を保持する容器であり、泳動媒体充填時、予備泳動時、及び試料導入の後に、試料導入部104の直下に搬送される。試料導入端105を、洗浄容器中の洗浄液に浸すことによって、試料導入端105を洗浄し、コンタミネーションを回避することができる。
【0030】
廃液容器146は、使用済の泳動媒体を保持する容器であり、泳動媒体充填時に試料導入部104の直下に搬送される。泳動媒体充填時に、試料導入端105から排出される使用済の泳動媒体を受け入れる。
【0031】
泳動媒体充填ユニット150は、ポリマ充填ブロック151、シリンジ152、チューブ153、電磁弁154、及び、陽極バッファ容器112を有し、分析開始前に新しい泳動媒体をキャピラリ102内に自動的に充填する。
【0032】
ポリマ充填ブロック151は、ポリマ流路155を有する。ポリマ流路155は、泳動媒体によって満たされたシリンジ152と、電磁弁154を備えたチューブ153に連通している。チューブ153の他端は、陽極バッファ容器112に保持された緩衝液に浸されている。キャピラリヘッド108は、耐圧気密を維持しながらポリマ充填ブロック151に装着される。
【0033】
電源ユニット110は、15kV前後の高電圧を発生する高圧電源111を含む。高圧電源111の負極は中空電極106に接続され、正極は電流計114を介して接地されている。尚、陽極電極113の一端は陽極バッファ容器112内の緩衝液に浸けられており、他端は接地されている。
【0034】
泳動媒体充填ユニット150を用いてキャピラリ102内に泳動媒体を充填する方法を簡単に説明する。試料導入部104の直下に廃液容器146を配置し、電磁弁154を閉じ、シリンジ152のプランジャを押す。それによって、シリンジ152内の泳動媒体が、ポリマ流路155を経由して、キャピラリヘッド108からキャピラリ102内に流入する。キャピラリ102内の使用済泳動媒体は、試料導入端105から排出され、廃液容器146にて受け入れられる。
【0035】
キャピラリ102内に試料を導入する方法を簡単に説明する。キャピラリ102、ポリマ流路155及びチューブ153の内部を泳動媒体で満たす。試料導入部104の直下にサンプル容器143を配置し、サンプル容器143のウェルに保持された試料に試料導入端105を浸し、電磁弁154を開く。これによって、高圧電源111の正極と負極の間に、中空電極106、サンプル容器143中の試料、キャピラリ102内の泳動路、ポリマ充填ブロック151のポリマ流路155、チューブ153、陽極バッファ容器112内の緩衝液、及び、陽極電極113からなる通電路が形成される。そして、中空電極106を負電位、陽極電極113を正電位として、この通電路にパルス電圧を印加する。これによって、ウェル内に存在する負に帯電する試料成分、例えばDNAが、試料導入端105から泳動路に導入される。尚、試料の導入方法は、電気泳動に限定されず、圧力や分注によって試料を泳動路に導入してもよい。
【0036】
泳動分析時は、試料導入部104の直下にバッファ容器144を配置し、バッファ容器144に保持された緩衝液に試料導入端105を浸す。これによって、高圧電源111の正極と負極の間に、中空電極106、バッファ容器144中の緩衝液、キャピラリ102内の泳動路、ポリマ充填ブロック151のポリマ流路155、チューブ153、陽極バッファ容器112内の緩衝液、及び、陽極電極113からなる通電路が形成される。中空電極106を負電位、陽極電極113を正電位として、この通電路に、15kV前後の高電圧を印加する。これによって、照射部103から試料導入部104の方向に電界が生じ、泳動路に導入された負に帯電する試料成分が、照射部103の方向に電気泳動する。
【0037】
温度制御ユニット161は、試料成分の泳動速度に影響を与える泳動路の温度を制御する。本例の温度制御ユニットは、図示しない恒温槽内にキャピラリ102を収容する。そして、ペルチェ等の温度制御機構によって一定温度に保たれた空気を、ファン等の送風機構によって恒温槽内を循環させ、キャピラリ102を所定温度に保持する。
【0038】
上述のように、本例のキャピラリ電気泳動装置の検出光学ユニット131には、マルチバンドパスフィルタ133が設けられている。マルチバンドパスフィルタ133を設けることによって、2次元検出器136によって得られる蛍光スペクトルが、キャピラリ102の位置ずれ又は傾斜の影響を受けることがない。こうして本例では、キャピラリ交換時にキャピラリ102の位置ずれ又は傾斜が生じても、新たな波長校正データの取得は不要となる。
【0039】
図2を参照して、照射部103を詳細に説明する。図2Aに示すように、キャピラリヘッド108に近い位置にて、ガラス基板107が設けられている。図2Bに示すように、複数のキャピラリ102は、ガラス基板107上に配列されている。各キャピラリ102は、ガラス基板107上にて、互いにある程度平行に、且つ、ガラス基板に対して実質的に平行に配列されている。ある程度とは、数度の傾斜があってもよいことを意味し、実質的にとは、精度誤差に収まる程度であることを意味する。また、ガラス基板107は、ある程度の平面精度を有する基板であればよい。
【0040】
照射光学ユニット121からの励起光は、キャピラリ102の軸方向に沿って、又は、キャピラリ102の軸方向に対して所定の角度にて傾斜した方向に沿って照射される。照射部103では、キャピラリ102のポリイミド皮膜は除去されている。従って、励起光は、複数のキャピラリ102の外面を全反射してキャピラリ102内をそれぞれ伝播し、各キャピラリ102内の試料を同時に励起する。キャピラリ102内を伝播する励起光によって、キャピラリ102内の試料は、数mmから数十mmの範囲にて、蛍光を発生する。こうして本例では、線状の発光部位を形成するため、励起光源として、発光ダイオード(LED)を用いることができる。
【0041】
キャピラリ102内の試料から発生した蛍光は、図1に示したように、キャピラリ102の軸方向に対して垂直な方向に沿って配置された検出光学ユニット131によって検出される。
【0042】
図3を参照して検出光学ユニット131を説明する。図3Aに示すように、検出光学ユニット131は、第1カメラレンズ132、マルチバンドパスフィルタ133、回折格子134、第2カメラレンズ135、及び、2次元検出器136を含む。本例では、波長分散方法として、回折格子134を用いる。キャピラリ102の発光部位から放出された蛍光は、第1カメラレンズ132によって、平行光束になる。この平行光束は、マルチバンドパスフィルタ133に導かれる。マルチバンドパスフィルタ133は、非連続な波長透過特性を有する。マルチバンドパスフィルタ133の波長透過特性及び機能は後に図4〜図7を参照して説明する。マルチバンドパスフィルタ133を透過した蛍光は、回折格子134によって波長分散され、第2カメラレンズ135によって、2次元検出器136上に結像される。2次元検出器136は、例えば、CCDカメラである。2次元検出器136からの画像信号は、コンピュータによって処理され、試料の分析がなされる。
【0043】
図3Bは、2次元検出器136によって得られた画像を示す。本例では、2本のキャピラリに対応して2つの画像が得られる。この画像の横軸は波長分散方向、縦軸はキャピラリの軸方向である。
【0044】
尚、回折格子134の代わりに、プリズムを適宜組み合わせた波長分散手段を用いてもよい。2次元検出器136は、CCDカメラの代わりに、1次元検出器、フォトマル、フォトダイオード等、及び、光学機構を適宜組み合わせて構成したものであってもよい。
【0045】
図4はマルチバンドパスフィルタ133の波長透過特性を示す。本例のマルチバンドパスフィルタ133は、所定の長波長端より長い波長の光と所定の短波長端より短い波長の光を遮断する。短波長端と長波長端の間に、6個の非連続的な透過領域51と、この6個の透過領域の間に、5個の非連続的な遮断領域52を有する。透過領域では、光の透過率は略100%であるが、遮断領域52では、光の透過率は5%以下である。遮断領域52における光の透過率は小さければ小さいほど良い。
【0046】
図5を参照してマルチバンドパスフィルタ133の機能を説明する。図5Aは、キャピラリが基準位置にあるときの基準蛍光スペクトルを示す。基準位置とは、波長校正データ取得時におけるキャピラリの位置である。ここでは、4色の蛍光色素、E2、E6、E10、E16を用いる。4色の蛍光色素からの蛍光は回折格子134によって波長分散され連続スペクトルとなる。実際の分析では、これらの基準蛍光スペクトルを用いる。こうして、DNAサンプルの検出光から4色の蛍光スペクトルを分離し、4種類のDNAを正確に同定することができる。
【0047】
図5Bは、マルチバンドパスフィルタ133を透過した4色の蛍光色素のスペクトルを示す。図4のマルチバンドパスフィルタ133の波長透過特性と比較すると判るように、透過領域51以外の領域では、蛍光スペクトルは削除されている。
【0048】
図6を参照して、キャピラリの交換による位置ずれが生じたとき、2次元検出器136の画像上のキャピラリの像の変化を説明する。2次元検出器136に結像された蛍光スペクトルの像の位置は、キャピラリ102と2次元検出器136の相対的な位置によって決まる。2次元検出器136は固定されているものとする。キャピラリの交換によってキャピラリ102の位置が変わると、2次元検出器136の画像上の蛍光スペクトル像の形状は変化しないが、その位置は、波長分散方向又はキャピラリ軸方向に平行移動する。これは、本例のようにマルチバンドパスフィルタ133を用いている場合でも同様である。
【0049】
図6Aは基準位置における2本のキャピラリ102とキャピラリの像を示す。基準位置は、波長校正データ取得時におけるキャピラリの位置であり、キャピラリ102は、位置ずれ、傾斜がない。
【0050】
図6Bは、キャピラリの交換によって、一方のキャピラリ102の位置が、基準位置より、波長分散方向にずれた場合を示す。キャピラリの交換によってキャピラリ102の位置が変わると、2次元検出器136の画像上の蛍光スペクトル像の形状は変化しないが、その位置は、波長分散方向に平行移動する。
【0051】
図6Cは、キャピラリの交換によって、一方のキャピラリ102が、基準位置より、キャピラリ軸に対して傾斜した場合を示す。キャピラリ102がキャピラリ軸に対して傾斜した場合は、キャピラリ102が複数の短い部分からなると考え、各部分が順に波長分散方向にずれた場合を想定すればよい。
【0052】
図7を参照してマルチバンドパスフィルタ133を使用することによりキャピラリの交換毎の波長校正データの取得が不要である理由を説明する。図7A、図7B及び図7Cは、マルチバンドパスフィルタ133を使用しないで通常の検出フィルタを用いた従来の場合である。図7Aは、2次元検出器136によって検出された波長領域を示す。検出フィルタは、分析に使用する全ての波長領域の蛍光を透過させる。従って、2次元検出器136によって全ての波長領域が検出される。
【0053】
図7Bは、2次元検出器136によって検出された基準蛍光スペクトルを示す。通常、波長校正には、蛍光スペクトルのピークを含む所定の波長領域の信号を積算した値を使用する。例えば、2次元検出器136の撮像領域を波長方向に6つの領域に分割する。蛍光スペクトルのピークが存在する領域において、蛍光スペクトル信号を積算する。例えば、全ての領域において蛍光スペクトル信号を積算し、積算値が最大となる領域に蛍光スペクトルのピークがあると判定してよい。本例では、左から2番目の領域に蛍光スペクトルのピークがある。従って、左から2番目の領域における蛍光スペクトル信号の積算値を波長校正に用いる。1つの撮像領域は、2次元検出器136の画素の数ピクセルに相当する。
【0054】
図7Cは、キャピラリ交換後の、ある場合の2次元検出器136によって検出された分析試料の蛍光スペクトルを示す。キャピラリの交換によってキャピラリの位置が基準位置よりずれている。従って、図7Bの基準蛍光スペクトルと図7Cの蛍光スペクトルを比較すると、図7Cの蛍光スペクトルは、波長分散方向にずれている。2次元検出器136の撮像領域に設定した6つの領域は、図7Bの場合と同一である。本例では、左から2番目の領域に蛍光スペクトルのピークがある。しかしながら、図7Cの蛍光スペクトルの位置はずれているから、左から2番目の領域における蛍光スペクトル信号の積算値は、図7Bの左から2番目の領域の蛍光スペクトル信号の積算値とは異なる。従って、左から2番目の領域の蛍光スペクトル信号の積算値を波長校正に使用すると、擬似信号が発生し、誤差が生じる。従って、この場合には、キャピラリ交換の際に波長校正データを取得する必要がある。
【0055】
図7D、図7E及び図7Fは、マルチバンドパスフィルタ133を使用する本発明の場合である。図7Dは、2次元検出器136によって検出された波長領域を示す。マルチバンドパスフィルタ133は、透過領域の蛍光のみを透過させる。従って、2次元検出器136によって不連続な波長領域が検出される。即ち、マルチバンドパスフィルタ133の遮断領域に対応する波長領域において検出信号は無い。
【0056】
図7Eは、2次元検出器136によって検出された基準蛍光スペクトルを示す。2次元検出器136の撮像領域は、波長方向に6つの領域に分割されている。6つの領域は、図4に示したマルチバンドパスフィルタ133の波長透過領域の周期に対応している。本例では、左から2番目の領域に蛍光スペクトルのピークがある。従って、左から2番目の領域における蛍光スペクトル信号の積算値を波長校正に用いる。
【0057】
図7Fは、キャピラリ交換後の、ある場合の2次元検出器136によって検出された分析試料の蛍光スペクトルを示す。2次元検出器136の撮像領域に設定した6つの領域は、図7Eの場合と同一である。本例では、左から2番目の領域に蛍光スペクトルのピークがある。
【0058】
キャピラリの交換によってキャピラリの位置が基準位置よりずれている。従って、図7Eの基準蛍光スペクトルと図7Fの蛍光スペクトルを比較すると、図7Fの蛍光スペクトルは、波長分散方向にずれている。しかしながら、各領域における蛍光スペクトル信号の両端は、マルチバンドパスフィルタ133の遮断領域に対応して削除されている。
【0059】
図7Fの左から2番目の領域の蛍光スペクトル信号の積算値は、図7Eの左から2番目の領域の蛍光スペクトル信号の積算値と略同一である。従って、図7Fの左から2番目の領域の蛍光スペクトル信号の積算値を波長校正に使用しても、擬似信号は発生しない。従って、誤差は生じない。こうして本例では、キャピラリ交換の際に波長校正データを取得する必要がない。
【0060】
マルチバンドパスフィルタ133の遮断領域の波長範囲が大きければ大きいほど、キャピラリ102の位置ずれ裕度を確保することができる。
【0061】
図8は、キャピラリ位置ずれによって生じる蛍光スペクトルのずれ量と擬似信号との間の関係を示す。蛍光色素としてdR110を用いた。横軸はキャピラリの位置ずれ量(nm)、縦軸は擬似信号の割合(%)である。図8Aは、マルチバンドパスフィルタ133を使用しないで通常の検出フィルタを用いた従来の場合である。擬似信号を1%以下に抑えるためには、2次元検出器の撮像領域においてずれ量は波長0.2nm以下にする必要がある。これは、キャピラリの取り付け位置の誤差が1μm以下でなければならないことを意味する。この仕様を満たす構造の実現は困難であるため、キャピラリの取り付け毎に波長校正データの取得が必要である。
【0062】
図8Bは、マルチバンドパスフィルタ133を使用する本発明の場合である。擬似信号を1%以下に抑えるためには、2次元検出器の撮像領域においてずれ量は波長5.0nm以下にすればよい。これは、キャピラリの取り付け位置の誤差が数十μm以下でよいことを意味する。この仕様を満たす構造の実現は可能であるため、キャピラリの交換毎の波長校正データの取得は不要である。
【0063】
図9を参照して、本発明によるキャピラリ電気泳動装置を使用した分析方法の操作の詳細手順を説明する。ステップ200にて、波長校正データの取得を行う。波長校正データの取得は通常出荷前に製造工場にて行う。例えば4色の蛍光色素によって標識された波長校正済みのDNAサンプルを電気泳動させ、基準蛍光スペクトルを取得する。こうして波長校正データとして基準蛍光スペクトルが得られると、以下のように電気泳動分析を行う。
【0064】
電気泳動分析の基本的手順は、ステップ201の分析前準備、ステップ202の分析開始、ステップ203の泳動媒体充填、ステップ204の予備泳動、ステップ205の試料導入、ステップ206の電気泳動、及び、ステップ207の分析を含み、ユーザ側にて行う。
【0065】
オペレータは、ステップ201の分析前準備を行う。キャピラリ102が劣化している場合、又は、キャピラリ102の長さを変更する必要がある場合、キャピラリアレイ101を交換する。ここではキャピラリの交換を行ったものとする。先ず、バッファ容器144と陽極バッファ容器112に、緩衝液を満たす。緩衝液は、例えば、電気泳動用として市販されている電解質液である。次に、サンプル容器143のウェル内に、分析対象である試料を分注する。試料は、例えば、DNAのPCR産物である。また、洗浄容器145に洗浄液を分注する。洗浄液は、例えば、純水である。また、シリンジ152内に、泳動媒体を注入する。泳動媒体は、例えば、電気泳動用として市販されているポリアクリルアミド系分離ゲルである。
【0066】
オペレータは、ステップ202の分析開始を行う。ステップ203の泳動媒体充填では、キャピラリ102内に新しい泳動媒体を充填し、泳動路を形成する。先ず、オートサンプラユニットによって、廃液容器146を試料導入部104の直下に搬送する。次に、シリンジ152を駆動して、キャピラリ102内に新しい泳動媒体を充填し、使用済の泳動媒体を廃液容器146に廃棄する。最後に、オートサンプラユニットによって、洗浄容器145を試料導入部104の直下に搬送し、洗浄液に試料導入端105を浸し、泳動媒体によって汚れた試料導入端105を洗浄する。
【0067】
ステップ204の予備泳動では、泳動媒体に所定の電圧を印加し、泳動媒体を電気泳動に適した状態にする。先ず、オートサンプラユニットによって、バッファ容器144を試料導入部104の直下に搬送し、緩衝液に試料導入端105を浸し、通電路を形成する。次に、電源ユニットによって、泳動媒体に数〜数十キロボルト程度の電圧を数〜数十分間印加する。それによって、泳動媒体は電気泳動に適した状態となる。最後に、オートサンプラユニットによって、洗浄容器145を試料導入部104の直下に搬送し、洗浄液に試料導入端105を浸し、緩衝液によって汚れた試料導入端105を洗浄液によって洗浄する。
【0068】
ステップ205の試料導入では、試料成分を泳動路に導入する。先ず、オートサンプラユニットによって、サンプル容器143を試料導入部104の直下に搬送し、サンプル容器143のウェル内に保持された試料に試料導入端105を浸す。これによって、通電路が形成され、泳動路に試料成分を導入することができる状態となる。電源ユニットによって、パルス電圧を通電路に印加し、泳動路に試料成分を導入する。最後に、オートサンプラユニットによって、洗浄容器145を試料導入部104の直下に搬送し、洗浄液に試料導入端105を浸し、試料によって汚れた試料導入端105を洗浄液によって洗浄する。
【0069】
ステップ206の電気泳動では、電気泳動によって、試料中に含まれる各試料成分を分離分析する。まず、オートサンプラユニットによって、バッファ容器144を試料導入部104の直下に搬送し、緩衝液に試料導入端105を浸し、通電路を形成する。次に、電源ユニットによって、通電路に15kV前後の高電圧を印加し、泳動路に電界を発生させる。
【0070】
発生した電界によって、泳動路内の試料成分は、各試料成分の性質に依存した速度で照射部103へ移動する。つまり、試料成分は、その移動速度の差によって分離される。そして、照射部103に到達した試料成分から順番に検出される。例えば、試料が、塩基長の異なるDNAを多数含む場合は、その塩基長によって移動速度に差が生じ、塩基長の短いDNAから順に照射部103に到達する。照射部103にて励起光を照射する。蛍光標識された各DNAの末端塩基配列は照射部103に到達した順に蛍光を発生する。
【0071】
2次元検出器136によって蛍光スペクトルが検出される。蛍光スペクトルの検出は、図7を参照して説明した。
【0072】
ステップ207の分析では、ステップ200にて得られた波長校正データを利用して、電気泳動によって得られたデータを正規化し、目的とする波長分散データを得る。波長校正データが不正確であると、擬似信号が生じ、分析結果の信頼性が低下する。
【0073】
予定していたデータを取り終えたら処理を終了する。電圧印加を停止し、泳動分析を終了する。以上が、一連の分析手順である。更に分析を実施したい場合には、ステップ203の泳動媒体充填から分析手順を繰り返す。他の分析を実施する場合には、ステップ201の分析前準備から分析手順を繰り返す。いずれにしても、ステップ200の波長校正データの取得は繰り返さない。
【0074】
図10はマルチバンドパスフィルタの他の例を示す。図10Aに示すように、本例のマルチバンドパスフィルタは、3個のノッチフィルタ1001と1個のバンドパスフィルタ1002を含む。図10Bは、第1のノッチフィルタ1001の波長透過特性を示し、図10Cは第2のノッチフィルタ1001の波長透過特性を示す。図示のように、所定の狭い波長領域における光の透過率は5%以下であるが、それ以外の波長領域では、光を完全に遮断する。但し、狭い波長領域は、ノッチフィルタ毎に異なり、順にずれている。第3のノッチフィルタ1001では、狭い波長特性は更にずれている。
【0075】
図10Dは、バンドパスフィルタ1002の波長透過特性を示す。バンドパスフィルタは、所定の波長領域の光を透過させるが、それ以外の光は完全に遮断する。
【0076】
図10Eは、本例のマルチバンドパスフィルタの波長特性を示す。この波長特性は、3個のノッチフィルタ1001の波長透過特性と1個のバンドパスフィルタ1002の波長透過特性を重ね合わせたものである。本例によると図4に示したマルチバンドパスフィルタの波長透過特性と同様な波長透過特性が得られる。ここでは3個のノッチフィルタ1001を用いたが、4個以上のノッチフィルタを用いてもよい。
【0077】
図11を参照して、本発明のキャピラリ電気泳動装置の他の例を説明する。本例のキャピラリ電気泳動装置では、キャピラリ102の発光部位からの蛍光は、キャピラリの末端から放出される。検出光学ユニット131は、キャピラリの末端からの蛍光を検出することができるように、キャピラリの軸線方向に沿って配置されている。
【0078】
光源123からの励起光122は、キャピラリ102を照射し、検出光は、キャピラリの末端から放出される。この検出光は、泳動媒体充填ユニット150の検出窓181を経由して検出光学ユニット131に達する。
【0079】
本例の検出光学ユニット131は、第1カメラレンズ132、マルチバンドパスフィルタ133、プリズム182、第2カメラレンズ135、及び、2次元検出器136を含む。本例では、波長分散素子として、回折格子の代わりにプリズム182を用いる。キャピラリ102の末端から放出された蛍光は、第1カメラレンズ132によって、平行光束になる。この平行光束は、マルチバンドパスフィルタ133に導かれる。マルチバンドパスフィルタ133は、複数の非連続な波長透過特性を有する。マルチバンドパスフィルタ133を透過した蛍光は、プリズム182によって波長分散され、第2カメラレンズ135によって、2次元検出器136上に結像される。2次元検出器136は、例えば、CCDカメラである。2次元検出器136からの画像信号は、コンピュータによって処理され、試料の分析がなされる。
【0080】
本例のキャピラリ電気泳動装置においても、キャピラリの交換によってキャピラリの位置がずれることがある。しかしながら、上述のようにマルチバンドパスフィルタ133を用いるため、2次元検出器によって検出した蛍光スペクトル信号は、キャピラリの位置ずれ又は傾斜の影響を受けない。従って、キャピラリの位置ずれ又は傾斜に起因した擬似信号の発生を防止することができる。
【0081】
本発明は、キャピラリ電気泳動装置に限定されず、電気泳動路を2枚の板で形成するスラブ式電気泳動装置をはじめ、樹脂もしくはガラス板上に流路を有するマイクロチップ型電気泳動装置にも適用可能である。また、試料の蛍光を回折格子もしくはプリズムなどで波長を分散させる分光光度計にも適用可能である。
【0082】
以上、本発明の例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に理解される。各実施例を適宜組み合わせることも、本発明の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明によるキャピラリ電気泳動装置の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明によるキャピラリ電気泳動装置のキャピラリの照射部の概略を示す斜視図である。
【図3】本発明によるキャピラリ電気泳動装置の検出光学ユニットの概略を示す斜視図である。
【図4】本発明によるキャピラリ電気泳動装置のマルチバンドパスフィルタの波長透過特性を示す図である。
【図5】本発明によるキャピラリ電気泳動装置における基準蛍光スペクトルとマルチバンドパスフィルタを透過した蛍光スペクトルを示す図である。
【図6】本発明によるキャピラリ電気泳動装置において、キャピラリの位置ずれに起因した蛍光スペクトルのシフトを説明するための説明図である。
【図7】本発明によるキャピラリ電気泳動装置において、マルチバンドパスフィルタを使用することによりキャピラリの交換毎の波長校正データの取得が不要である理由を説明するための説明図である。
【図8】本発明によるキャピラリ電気泳動装置において、キャピラリ位置ずれによって生じる蛍光スペクトルのずれ量と擬似信号との間の関係を示す図である。
【図9】本発明によるキャピラリ電気泳動装置を使用した分析方法の操作の手順を説明するための説明図である。
【図10】本発明によるキャピラリ電気泳動装置のマルチバンドパスフィルタの構成例を示す図である。
【図11】本発明によるキャピラリ電気泳動装置の他の例の概略を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
101…キャピラリアレイ、102…キャピラリ、103…照射部、104…試料導入部、105…試料導入端、106…中空電極、107…ガラス基板、108…キャピラリヘッド、110…電源ユニット、111…高圧電源、112…陽極バッファ容器、113…陽極電極、114…電流計、121…照射光学ユニット、122…励起光、123…光源、124…集光レンズ、125…照明用フィルタ、126…集光レンズ、131…検出光学ユニット、132…第1カメラレンズ、133…マルチバンドパスフィルタ、134…回折格子、135…第2カメラレンズ、136…2次元検出器、141…オートサンプラユニット、143…サンプル容器、144…バッファ容器、145…洗浄容器、146…廃液容器、150…泳動媒体充填ユニット、151…ポリマ充填ブロック、152…シリンジ、153…チューブ、154…電磁弁、155…ポリマ流路、161…温度制御ユニット、181…検出窓、182…プリズム、1001…ノッチフィルタ、1002…バンドパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能なキャピラリと;
該キャピラリに励起光を照射する照射光学系と;
上記キャピラリからの蛍光を分光させる波長分散素子と、該波長分散素子から得られる蛍光スペクトル像を検出する2次元検出器と、を有する検出光学系と;
を有するキャピラリ電気泳動装置において、
上記検出光学系は、非連続な複数の波長透過領域を有するマルチバンドパスフィルタを有することを特徴とするキャピラリ電気泳動装置。
【請求項2】
請求項1記載のキャピラリ電気泳動装置において、上記2次元検出器の信号検出領域は、上記マルチバンドパスフィルタの波長透過領域に対応して複数の領域に分割されていることを特徴とするキャピラリ電気泳動装置。
【請求項3】
請求項2記載のキャピラリ電気泳動装置において、上記複数の領域のうち試料の蛍光スペクトルのピークを含む領域において上記蛍光スペクトルの信号の積算値を求めることを特徴とするキャピラリ電気泳動装置。
【請求項4】
請求項2記載のキャピラリ電気泳動装置において、上記複数の領域毎に上記蛍光スペクトルの信号の積算値を求め、該積算値が最大である領域を上記蛍光スペクトルのピークが存在する領域であると判定することを特徴とするキャピラリ電気泳動装置。
【請求項5】
請求項1記載の電気泳動装置において、上記マルチバンドパスフィルタは複数のノッチフィルタと1つのバンドパスフィルタを含むことを特徴とするキャピラリ電気泳動装置。
【請求項6】
請求項1記載のキャピラリ電気泳動装置において、上記照射光学系は上記キャピラリの軸線に沿った方向から又は上記キャピラリの軸線に対して所定の角度傾斜した方向から上記キャピラリに励起光を照射することを特徴とするキャピラリ電気泳動装置。
【請求項7】
請求項1記載のキャピラリ電気泳動装置において、上記照射光学系は励起光源として発光ダイオードを有することを特徴とするキャピラリ電気泳動装置。
【請求項8】
交換可能なキャピラリと;
該キャピラリに励起光を照射する照射光学部と;
上記キャピラリからの蛍光を分光させる波長分散素子と、該波長分散素子から得られる蛍光スペクトルのうち所定の非連続な複数の波長透過領域のみを透過させるマルチバンドパスフィルタと、該マルチバンドパスフィルタを透過した上記蛍光スペクトル像を検出する2次元検出器と、を有する検出光学部と;
を有し、上記検出光学部によって検出された試料の蛍光スペクトルより試料を分析する分析装置。
【請求項9】
請求項8記載の分析装置において、上記2次元検出器の信号検出領域は、上記マルチバンドパスフィルタの波長透過領域に対応して複数の領域に分割されていることを特徴とする分析装置。
【請求項10】
請求項8記載の分析装置において、上記複数の領域のうち試料の蛍光スペクトルのピークを含む領域において上記蛍光スペクトルの信号の積算値を求めることを特徴とする分析装置。
【請求項11】
試料をキャピラリ内に電気泳動させ、上記キャピラリに励起光を照射し、上記キャピラリからの蛍光を分光させて蛍光スペクトルを生成し、該蛍光スペクトル像を2次元検出器によって検出し、該検出結果に基づいて試料を分析するキャピラリ電気泳動方法において、
上記蛍光スペクトルを、非連続な複数の波長透過領域を有するマルチバンドパスフィルタを透過させてから上記2次元検出器によって蛍光スペクトル像を検出することを特徴とするキャピラリ電気泳動方法。
【請求項12】
請求項11記載のキャピラリ電気泳動方法において、
上記2次元検出器の信号検出領域を上記マルチバンドパスフィルタの波長透過領域に対応して複数の領域に分割することを特徴とするキャピラリ電気泳動方法。
【請求項13】
請求項11記載のキャピラリ電気泳動方法において、
上記複数の領域のうち分析試料の蛍光スペクトルのピークを含む領域において上記蛍光スペクトルの信号の積算値を求めることを特徴とするキャピラリ電気泳動方法。
【請求項14】
請求項11記載のキャピラリ電気泳動方法において、上記複数の領域毎に上記蛍光スペクトルの信号の積算値を求め、該積算値が最大である領域を上記蛍光スペクトルのピークが存在する領域であると判定することを特徴とするキャピラリ電気泳動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−198845(P2007−198845A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16552(P2006−16552)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】