説明

キャブ

【課題】ウォッシャタンクを設置するに当たって他の装置スペースを犠牲にすることなく、ウォッシャ液補給時の作業性に優れ、キャブ搭載前にウォッシャホースを接続できるキャブを提供する。
【解決手段】キャブ本体21に、このキャブ本体21内に対する外部からのアクセスを可能とする開口部28を設け、この開口部28にサイドカバー29を開閉可能に設ける。このサイドカバー29に、ウォッシャ液を貯留する偏平形のウォッシャタンク35を合成樹脂により一体成形し、このウォッシャタンク35からキャブ本体21の前部にウォッシャ液を供給するウォッシャホース46を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォッシャタンクを備えたキャブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルにおいては、図6および図7に示されるように、キャブ1の後方にウォッシャタンク2を配置することが一般的であった。
【0003】
しかし、近年、電装品装置の増加、排ガス対策装置の追加、燃料タンクの大型化などにより、その設置スペースは少なくなっている。特に図8に示されるような下部走行体5の上方で上部旋回体6および作業装置7を旋回可能とした小旋回型油圧ショベルにおいては、その傾向が顕著である。
【0004】
また、図6および図7に示されるキャブ1の後方はバッテリ、リレーなどの電装品が配置されることが多く、ウォッシャタンク2ヘのウォッシャ液補給時に、ウォッシャ液をこぼさないように注意する必要があった。
【0005】
そこで、先行技術には、キャブとは反対側のストレージボックス内にウォッシャタンクを設置したものがあるが、この場合、ストレージボックスのスペースを減少させることになり、さらにキャブまでのウォッシャホースが複雑な場所を通らなければならず、組立性も悪い(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、先行技術には、キャブの下側のスペースにウォッシャタンクを収納したものもあるが、これも、キャブ下のツールボックスのスペースを減少させている。また、ウォッシャ液の補給はフェンダに開けた開口部の中で行わなければならず、作業性が悪い(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11-321577号公報(第2−3頁、図1)
【特許文献2】特開2003-268802号公報(第3−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来技術では、ウォッシャタンクが他の装置スペースの減少を招く結果となっている。また、ウォッシャ液補給時の作業スペースが少なく、さらにウォッシャ液を周囲の装置にかからないように補給することが困難であり、作業性が悪い。さらに、キャブの外部にウォッシャタンクを設置しているので、ウォッシャホースはキャブの内と外を繋ぐ形となり、キャブ搭載後にしかその接続作業ができない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ウォッシャタンクを設置するに当たって他の装置スペースを犠牲にすることなく、ウォッシャ液補給時の作業性に優れ、キャブ搭載前にウォッシャホースを接続できるキャブを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、キャブ本体と、このキャブ本体に設けられキャブ本体内に対する外部からのアクセスを可能とする開口部と、この開口部に開閉可能に設けられたカバー部材と、このカバー部材に一体に設けられウォッシャ液を貯留する偏平形のウォッシャタンクと、このウォッシャタンクからキャブ本体の前部にウォッシャ液を供給するウォッシャホースとを具備したキャブであり、そして、キャブ本体内に対する外部からのアクセスを可能とする開口部のカバー部材に偏平形のウォッシャタンクを一体に設けたので、他の装置スペースを減少させることなくウォッシャタンクを設置でき、また、ウォッシャタンクに対するウォッシャ液の補給は、開口部のカバー部材を開けた状況で行なうので、作業の邪魔になるものがないとともに、ウォッシャ液をこぼしてもそのウォッシャ液がキャブ本体内の収納品にかかるおそれもないので、ウォッシャ液を補給する際の作業性が良く、さらに、キャブ本体の一部のカバー部材にウォッシャタンクを一体に設けたので、キャブ本体の前部にウォッシャ液を供給するウォッシャホースの組付けがキャブ搭載前にも可能となる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のキャブにおいて、カバー部材およびウォッシャタンクが、合成樹脂により一体成形されたものであり、そして、合成樹脂によってカバー部材およびウォッシャタンクを一体成形することで、カバー部材がウォッシャタンクを兼ねる構造であるから、カバー部材の十分な剛性を得られるとともに、部品点数の削減とコストダウンが可能である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、キャブ本体内に対する外部からのアクセスを可能とする開口部のカバー部材に偏平形のウォッシャタンクを一体に設けたので、他の装置スペースを減少させることなくウォッシャタンクを設置でき、また、ウォッシャタンクに対するウォッシャ液の補給は、開口部のカバー部材を開けた状況で行なうので、作業の邪魔になるものがないとともに、ウォッシャ液をこぼしてもそのウォッシャ液がキャブ本体内の収納品にかかるおそれもないので、ウォッシャ液を補給する際の作業性を向上でき、さらに、キャブ本体の一部のカバー部材にウォッシャタンクを一体に設けたので、キャブ本体の前部にウォッシャ液を供給するウォッシャホースの組付けをキャブ搭載前にも完了させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、合成樹脂によってカバー部材およびウォッシャタンクを一体成形することで、カバー部材がウォッシャタンクを兼ねる構造であるから、カバー部材の十分な剛性を確保できるとともに、部品点数の削減とコストダウンとを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、図1乃至図5に示された一実施の形態を参照して詳細に説明する。
【0014】
図5は、建設機械または作業機械としての油圧ショベルを示し、下部走行体11に旋回軸受部12を介して上部旋回体13が旋回可能に設けられ、この上部旋回体13上に運転室を形成するキャブ14および掘削作業などをする作業装置15が搭載され、これらの後部にエンジンおよび油圧ポンプなどの動力装置16が搭載されている。
【0015】
キャブ14は、箱形のキャブ本体21がフロントピラー22および後背部材23などにより形成され、フロントピラー22の前部間には前窓が設けられ、また、フロントピラー22の一側には、前窓清掃用のワイパ24とともにウォッシャ液噴射用のウォッシャノズル(図示せず)が設けられている。キャブ本体21の一側面にはヒンジ25によりドア26が開閉自在に取付けられている。
【0016】
図1および図2に示されるように、キャブ本体21のドア後方下部に位置する後部の側面には、キャブ本体21内に収納された電装品などの収納品27に外部からアクセス可能な開口部28が設けられ、この開口部28にカバー部材としてのサイドカバー29が開閉可能に設けられている。
【0017】
すなわち、キャブ本体21のドア後方下部にサイドカバー29を設け、このサイドカバー29を開放することによって、開口部28からキャブ本体21内に設置した電装品などの収納品27にアクセスできるようになっている。
【0018】
キャブ本体21は、サイドカバー29の外形に合わせて凹状部31を形成し、この凹状部31にて開口部28の周囲にシール部材32が嵌着され、サイドカバー29は、凹状部31に閉じると、キャブ本体21と面一になるとともに、シール部材32に密着して水密を保つことができる。
【0019】
このサイドカバー29は、後側の1辺をヒンジ33にてキャブ本体21に回動自在に取付け、そのヒンジ33を中心に開方向に回転して開口部28を開放するようになっている。
【0020】
図3および図4に示されるように、サイドカバー29の前側には、キーなどにより回動可能な係合板34が設けられ、この係合板34を回動することで、閉じたサイドカバー29の施錠または施錠解除をすることができる。
【0021】
このサイドカバー29には、キャブ本体21の開口部28よりやや小さな範囲内でこの開口部28に嵌入可能な偏平形のウォッシャタンク35が、ポリエチレンなどの合成樹脂材料により一体に膨出成形され、相対的に、そのウォッシャタンク35の周囲に前記シール部材32に密着されるフランジ状部36が成形されている。
【0022】
樹脂成形方法としてはブロー成形法が望ましく、溶解した着色樹脂を袋状または筒状に押し出し、その押し出す際に着色樹脂の一部に透明または半透明の透明性樹脂を注入し、それを一側および他側から金型で挟み込み、樹脂内部に圧縮空気を送り込んで金型内部の形状に樹脂を膨らますことで、着色樹脂製のサイドカバー29およびウォッシャタンク35と、透明性樹脂製の液面透視窓37とを一体成形する。
【0023】
このように、サイドカバー29にウォッシャタンク35を一体に樹脂成形することで、平板と凹型板とを組合わせて中空構造とした高剛性構造物と構造的には等価な成形品となっており、サイドカバー29としても十分な剛性を確保している。
【0024】
図3に示されるように、サイドカバー29およびウォッシャタンク35の一部には、透明の樹脂材料により上下方向に細長い液面透視窓37が一体に成形されている。この液面透視窓37を通してウォッシャタンク35内に貯留されたウォッシャ液の液面38を監視する。
【0025】
また、図3および図4に示されるように、ウォッシャタンク35の上部にはウォッシャ液補給口部41が成形され、このウォッシャ液補給口部41の開口は栓42により閉じられている。ウォッシャタンク35の下部には凹溝部43が成形され、この凹溝部43の内部にはポンプ駆動モータが一体化されたウォッシャポンプ44が嵌着され、このウォッシャポンプ44のウォッシャ液吸込口はウォッシャタンク35内に連通され、ウォッシャポンプ44のウォッシャ液吐出口45には、図1に示されるようにウォッシャホース46が接続されている。
【0026】
このウォッシャホース46は、キャブ本体21内に引込まれ、前窓清掃用のワイパ24とともにキャブ本体21の前部に設けられたウォッシャ液噴射用のウォッシャノズル(図示せず)に接続され、ウォッシャタンク35からこのウォッシャノズルにウォッシャ液を供給する。
【0027】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0028】
キャブ本体21内に収納された電装品などの収納品27に対して外部からのアクセスを可能とする開口部28に設けられたサイドカバー29に偏平形のウォッシャタンク35を一体成形して、サイドカバー29そのものをウォッシャタンク35とすることで、他の装置スペースに全く影響なくウォッシャタンク35を設置できる。
【0029】
また、合成樹脂によってサイドカバー29およびウォッシャタンク35を一体成形することで、サイドカバー29がウォッシャタンク35を兼ねる構造としたので、サイドカバー29の十分な剛性を確保できるとともに、部品点数の削減とコストダウンとを図れる。
【0030】
また、ウォッシャタンク35はキャブ本体21側に組付けられるので、キャブ本体21を上部旋回体13に搭載する前に、キャブ単体の段階でウォッシャホース46の組付けが可能である。
【0031】
ウォッシャ液の補給は、サイドカバー29を開けた状況でウォッシャ液補給口部41より行なうので、その作業の邪魔になるものがなく、また、液をこぼしてもキャブ本体21内の電装品などにかかるおそれもない。
【0032】
なお、本発明は、油圧ショベル以外の作業機械に搭載されたキャブにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るキャブの一実施の形態を示すサイドカバー開き状態を示す斜視図である。
【図2】同上キャブのサイドカバー閉じ状態を示す斜視図である。
【図3】同上キャブのサイドカバーを内側から見た斜視図である。
【図4】同上キャブのサイドカバーの正面図である。
【図5】同上キャブを搭載した油圧ショベルの側面図である。
【図6】従来のキャブおよびウォッシャタンクの配置を示す平面図である。
【図7】従来のキャブおよびウォッシャタンクの配置を示す側面図である。
【図8】小旋回型油圧ショベルの側面図である。
【符号の説明】
【0034】
21 キャブ本体
28 開口部
29 カバー部材としてのサイドカバー
35 ウォッシャタンク
46 ウォッシャホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブ本体と、
このキャブ本体に設けられキャブ本体内に対する外部からのアクセスを可能とする開口部と、
この開口部に開閉可能に設けられたカバー部材と、
このカバー部材に一体に設けられウォッシャ液を貯留する偏平形のウォッシャタンクと、
このウォッシャタンクからキャブ本体の前部にウォッシャ液を供給するウォッシャホースと
を具備したことを特徴とするキャブ。
【請求項2】
カバー部材およびウォッシャタンクは、合成樹脂により一体成形された
ことを特徴とする請求項1記載のキャブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−28829(P2006−28829A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207466(P2004−207466)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】