説明

キャプスタン、長尺物の製造方法及びゴムホースの製造方法

【課題】複数のロールに環状に巻き掛けられた線状の長尺物の干渉を抑制する。
【解決手段】第1ロール12は、第2ロール14の回転軸14Aと平行な仮想線Sに対して、回転軸12Aが角度を有している。これにより、ゴムホースが第1ロール12、第2ロール14を移っていくに従い、無理な力を与えることなく、自然に軸方向へ移動していく。すなわち、第1ロール12及び第2ロール14上で隣り合うゴムホース(n列目のゴムホースとn+1列目のゴムホース)が、一定間隔を維持したまま、同じ経路を移動していく。このため、第1ロール及び第2ロール14上で隣り合うゴムホースの干渉を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャプスタン、長尺物の製造方法及びゴムホースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ゴムホースの製造方法が開示されている。特許文献1のゴムホースの製造方法では、まず、マンドレル1の外周にゴム材料を押出成形機2から押し出して、内面ゴム層3を形成する。次に、内面ゴム層3を加硫装置で加硫又は半加硫する。次に、内面ゴム層3の外周にゴム材料を押出成形機5から押し出して、中間ゴム層6を形成する。
次に、中間ゴム層6の外周には、編組機7から補強糸8を編組して、繊維補強層9が形成される。
【0003】
繊維補強層9が形成されたゴムホースを一旦受容器10に収容してから、熱風式の予熱炉に供給する。ゴムホースは、2つの駆動ローラ12に環状に複数回巻き掛けられ、駆動ローラ12に送られながら予熱される。そして、繊維補強層9の外周にゴム材料を押出成形機15から押し出して、外面ゴム層を形成し、巻取ドラム16で巻き取る。最後に、巻き取ったゴムホースをオープン加硫し、マンドレル1を抜いて、ゴムホースが製造される。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−87333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の製造方法では、予熱工程においてゴムホースが環状に複数回巻き掛けられる2つの駆動ローラ12は、回転軸が平行とされている。このため、駆動ローラ12に巻き掛けられたゴムホースが、駆動ローラ12の軸方向にずれにくく、ゴムホースが駆動ローラ12の軸方向にずれない場合には、ゴムホースが干渉して外皮が傷つくことがある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、複数のロールに環状に巻き掛けられた線状の長尺物の干渉を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るキャプスタンは、線状に形成された長尺物が環状に巻き掛け可能とされ、一方のロールの回転軸と平行な仮想線に対して他方のロールの回転軸が角度を有する回転可能な複数のロール、を備えている。
【0008】
この構成によれば、一方のロールの回転軸と平行な仮想線に対して、他方のロールの回転軸が角度を有しているので、ロールに巻き掛けられた長尺物が、ロールの軸方向にずれやすい。このため、ロール上で隣り合う長尺物の干渉を抑制できる。
【0009】
本発明の請求項2に係る長尺物の製造方法は、請求項1に記載のキャプスタンを用いて前記長尺物を送り出す送り出し工程、又は、請求項1に記載のキャプスタンを用いて前記長尺物を巻き取る巻き取り工程、を備えている。
【0010】
この構成によれば、一方のロールの回転軸と平行な仮想線に対して、他方のロールの回転軸が角度を有しているので、ロールに巻き掛けられた長尺物が、ロールの軸方向にずれやすい。このため、ロール上で隣り合う長尺物の干渉を抑制しつつ、長尺物を巻き取ったり、送り出したりすることができる。
【0011】
本発明の請求項3に係るゴムホースの製造方法は、請求項1に記載のキャプスタンを用いて、前記長尺物としてのゴムホース又は前記長尺物としてのマンドレルを送り出す送り出し工程、又は、請求項1に記載のキャプスタンを用いて、前記長尺物としてのゴムホース又は前記長尺物としてのマンドレルを巻き取る巻き取り工程、を備えている。
【0012】
この構成によれば、一方のロールの回転軸と平行な仮想線に対して、他方のロールの回転軸が角度を有しているので、ロールに巻き掛けられたゴムホース又はマンドレルが、ロールの軸方向にずれやすい。このため、ロール上で隣り合うゴムホース又はマンドレルの干渉を抑制しつつ、ゴムホース又はマンドレルを巻き取ったり、送り出したりすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記構成としたので、複数のロールに環状に巻き掛けられた線状の長尺物の干渉を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(本実施形態に係るキャプスタン10の構成)
まず、本実施形態に係るキャプスタン10の構成を説明する。図1、図2、図3、図4及び図5は、本実施形態に係るキャプスタン10の構成を示す概略図である。
【0015】
本実施形態に係るキャプスタン10は、図1、図2、図3及び図4に示すように、円柱状(円筒状)に形成された第1ロール12と、円柱状(円筒状)に形成された第2ロール14とを備えている。
第1ロール12及び第2ロール14は、回転可能に支持され、図示しない駆動装置により、所定方向(図1におけるA方向)回転駆動するようになっている。
【0016】
第1ロール12は、第2ロール14の回転軸14Aと平行な仮想線Sに対して、回転軸12Aが傾いており、仮想線Sに対して第1ロール12の回転軸12Aは、角度を有している。この角度θは、ゴムホースの径、許容曲げ半径により決定される。
【0017】
第1ロール12及び第2ロール14の外周には、図5に示すように、線状に形成された長尺物としてのゴムホースが環状に複数回巻き掛けられる。
長尺物としては、ゴムホースに限られず、例えば、ゴムホースの製造に用いられるマンドレル、光ケーブル、電線であってよく、線状に形成された長尺物であれば良い。
【0018】
なお、ゴムホースは、第1ロール12及び第2ロール14に1週以上巻き掛けられればよく、複数回巻き掛けられる必要はないが、複数回巻き掛けられるほうが良い。
ゴムホースは、その中間部が巻き掛けられており、一端部及び他端部が第1ロール12及び第2ロール14から引き出されている。
【0019】
第1ロール12及び第2ロール14が回転駆動することにより、巻き掛けられたゴムホースと第1ロール12及び第2ロール14との間に摩擦力が発生し、この摩擦力よりゴムホースが下流側へ送られる。
第1ロール12及び第2ロール14の回転速度を制御することにより、巻き掛けられたゴムホースの送り速度を制御することができる。
【0020】
これにより、例えば、キャプスタン10を用いて、ゴムホースを処理する処理装置にゴムホースを送ったり、その処理装置からゴムホースを送り出したりすることが可能となる。
また、ゴムホースが巻き付けられた巻付ロール等の巻付部材の下流側にキャプスタン10を配置し、巻付部材に巻き付けられたゴムホースを下流側に送ることにより、巻付部材からゴムホースを送り出すことが可能となる。
【0021】
また、例えば、ゴムホースが巻き取られる巻取ロール等の巻取部材の上流側にキャプスタン10を配置し、ゴムホースを巻取部材に送ることにより、巻取部材にゴムホースを巻き取らせることが可能となる。
【0022】
なお、第1ロール12及び第2ロール14自体に巻き付けられたゴムホースを送り出す構成としても良い。
また、第1ロール12及び第2ロール14自体でゴムホースを巻き取る構成としても良い。
【0023】
以上の構成によれば、図5に示すように、第1ロール12及び第2ロール14に環状に巻き掛けられたゴムホースは、第1ロール12及び第2ロール14の回転に伴って、第1ロール12、第2ロール14、第1ロール12、第2ロール14、第1ロール12、第2ロール14の順に移っていく。
【0024】
ここで、本実施形態では、第1ロール12が傾けられていることにより、ゴムホースが第1ロール12、第2ロール14を移っていくに従い、無理な力を与えることなく、自然に軸方向へ移動していく。すなわち、第1ロール12及び第2ロール14上で隣り合うゴムホース(n列目のゴムホースとn+1列目のゴムホース)が、一定間隔を維持したまま、同じ経路を移動していく。
【0025】
このため、ゴムホースが軸方向に自然移動し、第1ロール12及び第2ロール14上で隣り合うゴムホースの干渉を抑制できる。
また、第1ロール12及び第2ロール14に巻き掛けられたゴムホースに当接して、ゴムホースの移動方向を規制するガイドロール等のガイド部材を用いる必要がなくなり、部品点数が増加せず、簡易な構成でゴムホースの干渉を抑制することができる。
【0026】
また、ゴムホースに当接するガイド部材を用いなくてよいので、ゴムホースを傷付けることも抑制できる。
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【0027】
(ゴムホースの製造方法)
次に、長尺物の製造方法の一例として、ゴムホースの製造方法を説明する。
本実施形態の製造方法は、例えば、内面ゴム層形成工程と、繊維補強層形成工程と、外面ゴム層形成工程と、加硫工程と、マンドレル引き抜き工程と、検査工程とを備えて構成されている。
【0028】
まず、内面ゴム層形成工程では、マンドレルの外周にゴム材料を押出成形機から押し出して、内面ゴム層を形成する。次に、繊維補強層形成工程では、内面ゴム層の外周に、編組機から補強糸を編組して、繊維補強層が形成する。
【0029】
次に、外面ゴム層形成工程では、繊維補強層の外周にゴム材料を押出成形機から押し出して、外面ゴム層を形成する。次に、加硫工程では、内面ゴム層及び外面ゴム層を加硫装置によって加硫する。次に、マンドレル引き抜き工程では、環状に形成された内面ゴム層、繊維補強層及び外面ゴム層からマンドレルを引き抜いて、ゴムホースが製造される。次に、検査工程では、製造されたゴムホースの品質検査が検査装置によってなされる。
【0030】
ここで、上記の各工程中、各工程の開始前又は各工程の終了後において、上記のキャプスタン10を用いてマンドレル又はゴムホースの送り速度を制御しながら、マンドレル又はゴムホースを各機器や各装置へ送る送り工程を行うことが可能である。
【0031】
また、上記の各工程中、各工程の開始前又は各工程の終了後において、上記のキャプスタン10を用いてマンドレル又はゴムホースの送り速度を制御しながら、マンドレル又はゴムホースを各機器や各装置から送り出す送り出し工程を行うことが可能である。
【0032】
また、上記の各工程中、各工程の開始前又は各工程の終了後において、上記のキャプスタン10を用いて、マンドレル又はゴムホースを巻取部材へ送り、マンドレル又はゴムホースを巻き取る巻き取り工程を行うことができる。なお、キャプスタン10の第1ロール12及び第2ロール14自体でマンドレル又はゴムホースを巻き取るようにしても良い。
【0033】
また、上記の各工程中、各工程の開始前又は各工程の終了後において、上記のキャプスタン10を用いて、巻付部材に巻き付けられたマンドレル又はゴムホースを送り出す送り出し工程を行うことができる。なお、キャプスタン10の第1ロール12及び第2ロール14自体に巻き付けられたマンドレル又はゴムホースを送り出すようにしても良い。
【0034】
本実施形態に係るキャプスタン10では、ゴムホースを送る際に、ゴムホースに傷つきにくいので、未加硫状態のゴムホースを送る際に特に有効である。
なお、上記のゴムホースの製造方法は一例であって、種々の製造方法を用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本実施形態に係るキャプスタンの構成を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るキャプスタンの構成を示す概略正面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るキャプスタンの構成を示す概略側面図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るキャプスタンの構成を示す概略平面図である。
【図5】図5は、本実施形態に係るキャプスタンの構成において、長尺物が巻き掛けられた状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10 キャプスタン
12 第1ロール
12A 回転軸
14 第2ロール
14A 回転軸
S 仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状に形成された長尺物が環状に巻き掛け可能とされ、一方のロールの回転軸と平行な仮想線に対して他方のロールの回転軸が角度を有する回転可能な複数のロール、
を備えたキャプスタン。
【請求項2】
請求項1に記載のキャプスタンを用いて前記長尺物を送り出す送り出し工程、又は、
請求項1に記載のキャプスタンを用いて前記長尺物を巻き取る巻き取り工程、
を備えた長尺物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のキャプスタンを用いて、前記長尺物としてのゴムホース又は前記長尺物としてのマンドレルを送り出す送り出し工程、又は、
請求項1に記載のキャプスタンを用いて、前記長尺物としてのゴムホース又は前記長尺物としてのマンドレルを巻き取る巻き取り工程、
を備えたゴムホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−131845(P2010−131845A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309485(P2008−309485)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】