説明

キャリアテープ用カバーテープ及びテープ状搬送体

【課題】良好な帯電影響抑制効果が得られるとともにキャリアテープとの接合性やキャリアテープに収容された電子部品への影響が少ないキャリアテープ用カバーテープ及びこれを備えたテープ状搬送体を提供する。
【解決手段】キャリアテープ2の上に貼り付けられるキャリアテープ用カバーテープ4であって、帯状のカバーテープ本体10と、キャリアテープ2と接合するヒートシール層12とを備え、これらカバーテープ本体10とヒートシール層12との間に、金属蒸着層14が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型電子部品などを搬送するのに適したテープ状搬送体に用いられるキャリアテープ用カバーテープ及びテープ状搬送体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路基板への電子部品の実装効率を高めるために、電子部品をテープ状搬送体に一定ピッチで収容しておき、部品実装装置では、このテープ状搬送体から電子部品を自動的に取り出して実装に供する技術が広く使用されている。
【0003】
このようなテープ状搬送体は、長手方向に一定ピッチで部品収容用の凹部(ポケット)が形成されたキャリアテープと、前記ポケットに部品を納めた後にキャリアテープに貼り付けられて前記ポケットを塞ぐカバーテープとから構成されている。実装装置へ搬入する際には部品を各ポケットに一つずつ収容した状態でリールに巻き取っておき、実装装置では、リールからテープ状搬送体を繰り出しつつ、キャリアテープからカバーテープを剥がし、キャリアテープのポケットから部品を自動的に取り出す形態で使用される。
【0004】
ここで、キャリアテープからカバーテープを剥がす際には、両者に帯電が生じることは避けられず、実装速度が向上するほど、その帯電量は大きくなる傾向がある。これらが帯電すると、本来、キャリアテープのポケットに残って実装装置へ搬送されるべき電子部品が、カバーテープに付着して実装装置へ搬送されなかったり、帯電が激しい場合には、キャリアテープとカバーテープ間で放電が生じて電子部品が電気的に損傷するおそれがある。そこで、従来より帯電防止策として、例えば、カバーテープのキャリアテープへの接着面に、界面活性剤を練り混んだ層を設け、空気中の水分による除電を図ったものや、ヒートシール型のカバーテープにおいて、ヒートシール層に酸化錫系、酸化亜鉛系、酸化インジウム系などの導電性微粒子を混入したもの(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
ところで、前述のようにカバーテープの貼り付け面を構成する層(ヒートシール層)に界面活性剤を添加したものでは、カバーテープを剥がす場所での湿度が低い場合に十分な除電効果が得られず、湿度依存性が高いという問題があった。
また、カバーテープの貼り付け面を構成する層に導電性微粒子を添加したものでは、カバーテープを通して部品が確認できるようにカバーテープの透明性を維持するために導電性微粒子の添加量を大きくできず、十分な帯電影響抑制効果が得られないといった問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するために、特許文献2及び特許文献3には、帯電防止層として導電性が高い金属蒸着層を形成したものが提案されている。この場合、湿度による除電効果の低下がなく確実に帯電を防止できる。また、厚さが薄くても充分に除電効果を得られるため、視認性を確保することができる。
【特許文献1】特開平09−267450号公報
【特許文献2】特開2000−281983号公報
【特許文献3】特開2000−309761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近は、電子部品の小型化が進んでおり、従来よりも除電効果が高く、かつ、電子部品への影響が少ないキャリアテープ用カバーテープが要求されている。
ここで、特許文献2に示すように、キャリアテープのポケットと対向する面に金属蒸着層を設けたものでは、金属蒸着層とキャリアテープで搬送される電子部品とが接触して電子部品に影響を与えるおそれがある。また、金属蒸着層を構成する金属粉が電子部品に付着するおそれがある。
【0008】
また、特許文献3のようにカバーテープのヒートシール層の上に金属蒸着層を設けた場合には、キャリアテープとの接合性を確保するために金属蒸着層を薄くすると除電効果が不十分となってしまい、一方、金属蒸着層の厚さを厚くするとキャリアテープとの接合性が低下してしまう。よって接合性と除電効果とを両立させることは困難であった。さらに、接合強度を確保するために高温で接合した場合、接合時の熱影響によって、カバーテープがダメージを受けるため、引き剥がすとき、ダメージを受けた部位から破断するおそれがあった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、良好な帯電影響抑制効果が得られるとともにキャリアテープとの接合性やキャリアテープに収容された電子部品への影響が少ないキャリアテープ用カバーテープ及びこれを備えたテープ状搬送体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明に係るキャリアテープ用カバーテープは、キャリアテープの上に貼り付けられるキャリアテープ用カバーテープであって、帯状のカバーテープ本体と、前記キャリアテープと接合するヒートシール層とを備え、これらカバーテープ本体とヒートシール層との間に、金属蒸着層が設けられていることを特徴としている。
【0011】
この構成のキャリアテープ用カバーテープによれば、ヒートシール層とカバーテープ本体との間に金属蒸着層が設けられているので、金属蒸着層がキャリアテープのポケットに収容された電子部品と直接接触することがなく、金属粉の接触等による電子部品への影響を抑えることができる。
【0012】
また、シートシール層が直接キャリアテープに接合されることになるため、低い温度条件でもキャリアテープとカバーテープとの接合強度を確保することが可能となる。これにより、接合時の熱によるカバーテープのダメージを抑えることができる。
【0013】
さらに、金属蒸着層の厚さを比較的自由に設定することが可能となり、キャリアテープ用カバーテープの視認性を確保しつつ、高い帯電影響抑制効果を得ることができる。
また、金属蒸着層が外部に露出されていないので、金属蒸着層の酸化による劣化を防止することができる。
【0014】
ここで、前記カバーテープ本体と前記ヒートシール層との間に、合成樹脂で構成された中間層を前記金属蒸着層とともに設けてもよい。
この場合、カバーテープ本体及びヒートシール層の厚さのばらつきを中間層によって吸収することができ、キャリアテープ用カバーテープ全体の厚さを均一にすることができる。また、この中間層の厚さを変化させることでキャリアテープ用カバーテープの熱伝導を調整でき、様々なヒートシール温度に対応したキャリアテープ用カバーテープを提供することが可能となる。
【0015】
また、前記金属蒸着層を、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成してもよい。
この場合、高い導電性を有するアルミニウム又はアルミニウム合金によって金属蒸着層が構成されているので、良好でスムーズな電荷の移動による中和効果を得ることができる。
さらに、アルミニウム又はアルミニウム合金を蒸着したポリエチレンテレフタレート等は空気等に対して高いバリア性を備えているので、キャリアテープに収容された電子部品等の劣化を確実に防止できる。
【0016】
さらに、前記金属蒸着層の厚さを20Å〜150Åの範囲内に設定してもよい。
この場合、金属蒸着層の厚さが20Å以上とされているので、良好でスムーズな電荷の移動による中和効果を確実に奏功せしめることができる。また、金属蒸着層の厚さが150Å以下とされているので、このキャリアテープ用カバーテープの透明度を確保でき、視認性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係るテープ状搬送体は、部品収容用のポケットが長手方向に間隔をあけて一面に形成された帯状のキャリアテープと、前記ポケットを塞ぐように前記キャリアテープに貼り付けられる帯状のカバーテープとを具備するテープ状搬送体であって、前記カバーテープは、帯状のカバーテープ本体と、前記キャリアテープと接合するヒートシール層とを備え、これらカバーテープ本体とヒートシール層との間に、金属蒸着層が設けられており、前記ヒートシール層が前記キャリアテープに加熱接着可能な構成とされていることを特徴としている。
【0018】
この構成のテープ状搬送体によれば、カバーテープ本体とヒートシール層との間に金属蒸着層が形成されているから、キャリアテープからカバーテープを剥離する際に、カバーテープおよびキャリアテープが帯電したとしても、金属蒸着層を接地して帯電電荷と逆極性の電荷を導き中和したり、金属蒸着層が静電気シールドとして作用して帯電の影響を抑えたりすることができ、カバーテープの剥離面に電子部品が吸い付けられてしまう現象が防止できる。また、カバーテープに溜まった電荷がキャリアテープとの間で放電して電子部品を損傷することも防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な帯電影響抑制効果が得られるとともにキャリアテープとの接合性やキャリアテープに収容された電子部品への影響が少ないキャリアテープ用カバーテープ及びこれを備えたテープ状搬送体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の第1実施形態であるキャリアテープ用カバーテープ及びテープ状搬送体について、添付した図面を参照して説明する。
テープ状搬送体1は、部品収容用のポケット(凹部)6が長手方向に間隔をあけて多数形成された帯状のキャリアテープ2と、ポケット6を塞ぐようにキャリアテープ2に貼り付けられる帯状のカバーテープ4(キャリアテープ用カバーテープ)とを備えており、ポケット6に電子部品Wを一つずつ入れた後、カバーテープ4をヒートシールしてポケット6を塞ぐことにより、使用に供される。
【0021】
キャリアテープ2は、一定幅の帯状をなし、その上面(図2における上下を言う。以下同様)の幅方向中央部に矩形状のポケット6が一定間隔をあけて形成され、下面ではポケットに対応する部分が突出している。また、キャリアテープ2の幅方向両端部には、それぞれ送り穴8が形成され、これら送り穴8に送り機構が係合することにより、正確な搬送が可能となっている。
【0022】
本実施形態では、カバーテープ4の幅は、キャリアテープ2の幅よりも小さく、かつ、ポケット6の幅よりも大きくされている。これにより、ポケット6は開口部を気密的に封止される一方、送り穴8は塞がれないようになっている。
【0023】
キャリアテープ2の材質は限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ABS樹脂の単層または積層フィルムが使用可能である。キャリアテープ2の寸法やポケット6の大きさは何ら限定されないが、一般的に使用されている寸法を例示すれば、テープ幅が5〜120mm程度、テープ厚さが12〜50μm程度、ポケット6の寸法が1〜90mm×1〜90mm×0.5〜3mm程度である。
キャリアテープ2のヒートシールされるべき面16は、平滑面であってもよいが、粗面加工されていてもよい。
【0024】
カバーテープ4は、図3に示すように、一定幅の帯状をなすカバーテープ本体10と、カバーテープ本体10の下面側(キャリアテープ2との対向面側)に形成されたヒートシール層12との間に、金属蒸着層14及び中間層15が設けられた構成とされている。本実施形態では、金属蒸着層14、中間層15、ヒートシール層12がカバーテープ本体10の下面全面に亘ってそれぞれ配置されている。
【0025】
本発明に使用されるカバーテープ本体10の材質は限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド系合成繊維などのポリアミド、ポリカーボネートなどで形成された一軸または二軸延伸フィルム等が使用でき、これらを単層または複数種積層した状態で使用できる。カバーテープ本体10の厚さは限定されないが、好ましくは12〜50μmとされ、より好ましくは12〜25μmとされる。あまり厚いと製造コストがかかり、薄すぎると強度が不足したり腰が弱くて取り扱いに不便を生じるためである。
【0026】
ヒートシール層12は、加熱により一旦軟化した後、固化して粘着力を発揮するヒートシール剤を含んだものであればよく、この種のヒートシール剤としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系ブロックポリマー、合成ゴムや天然ゴムなどのジエンポリマーなどから選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0027】
ヒートシール層12の厚さは限定されないが、5〜60μm程度であることが好ましい。薄すぎると接着力が不足し、あまり厚いと接着部からはみ出すおそれがあるからである。より好ましいヒートシール層12の厚さは10〜50μm程度であり、さらに好ましくは25〜35μm程度である。
【0028】
金属蒸着層14の種類は限定されないが、アルミニウム、金、銀、銅、亜鉛またはこれらの合金などから選択される金属を、ヒートシール層12上に蒸着することにより得られたものが好ましい。これらの内でも、特にアルミニウムは安価でありながら、電気伝導性及び耐食性が高いために、視認性を阻害しない程度まで薄くすることが可能となる。さらに、アルミニウムを蒸着したポリエチレンフタレート等は、空気等に対する高いバリア性も有している。
なお、金属蒸着層14の厚さは、20Å〜150Åの範囲内に設定されている。
【0029】
中間層15の材質は限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高ポリマー合成樹脂等が使用でき、加熱溶融してカバーテープ本体10とヒートシール層12の間に流し込まれ、これらカバーテープ本体10とヒートシール層12とを接合する役割を有している。中間層15の厚さは限定されないが、好ましくは10〜30μmとされる。
【0030】
本実施形態であるカバーテープ4は、以下のようにして製造される。
まず、カバーテープ本体10の下面側(キャリアテープ2との対向面側)にアルミニウム及びアルミニウム合金を蒸着して、金属蒸着層14を形成する。金属蒸着層14が形成されたカバーテープ本体10とヒートシール層12との間に、中間層15を構成する合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高ポリマー合成樹脂)を加熱溶融した状態で流し込み、カバーテープ本体10とヒートシール層12とを圧着する。このように、いわゆる押し出しラミネート法によってキャリアテープ用カバーテープ(カバーテープ4)が製造される。
【0031】
本実施形態であるキャリアテープ用カバーテープ(カバーテープ4)及びこれを備えたテープ状搬送体1によれば、カバーテープ本体10とヒートシール層12との間に金属蒸着層14が形成されているから、図4に示すようにキャリアテープ2からカバーテープ4を剥離する際に、カバーテープ4およびキャリアテープ2が帯電したとしても金属蒸着層14を通じて帯電電荷の逆極性の電荷が導かれることによってその静電気を中和することができ、図4に示すようなカバーテープ4の剥離面に電子部品Wが吸い付けられてしまう現象が防止できる。また、カバーテープ4に溜まった電荷がキャリアテープ2との間で放電して電子部品Wを損傷することも防止できる。
また、金属蒸着層14を接地しなくても、金属蒸着膜14自体が静電シールドとして働いて帯電の影響を抑えることができる。
【0032】
ヒートシール層12とカバーテープ本体10との間に金属蒸着層14が設けられているので、金属蒸着層14がキャリアテープ2のポケット6に収容された電子部品Wと直接接触することがなく、金属粉等の付着による電子部品への影響を抑えることができる。
また、シートシール層12が直接キャリアテープ2に接合されることになるため、低い温度条件においてもキャリアテープ2とカバーテープ4との接合強度を確保できる。よって、接合時の温度条件を低く設定することで、カバーテープ4自体に加わる熱ダメージを著しく軽減させることができる。
【0033】
さらに、金属蒸着層14の厚さを、接合性を考慮することなく比較的自由に設定することが可能となり、カバーテープ4の視認性を確保しつつ、高い帯電影響抑制効果を得ることができる。本実施形態では、金属蒸着層14の厚さが20Å〜150Åの範囲内に設定されているので、良好でスムーズな電荷の移動による中和効果を確実に奏功せしめることができるとともに、カバーテープ4の透明度を確保して視認性を向上させることができる。
また、金属蒸着層14が外部に露出されていないので、金属蒸着層14の酸化による劣化を防止することができる。
【0034】
また、金属蒸着層14がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されているので、良好でスムーズな電荷の移動による中和効果を得ることができる。また、アルミニウム又はアルミニウム合金が蒸着されたポリエチレンテレフタレート等は空気等に対して高いバリア性を備えているので、キャリアテープに収容された電子部品等の劣化を確実に防止できる。
【0035】
本実施形態では、カバーテープ本体10とヒートシール層12との間に合成樹脂で構成された中間層15が設けてられているので、カバーテープ本体10及びヒートシール層12の厚さのばらつきをこの中間層15によって吸収することができ、カバーテープ4全体の厚さを均一にすることができる。また、この中間層15の厚さを変化させることでカバーテープ4の熱伝導を調整でき、様々なヒートシール温度に対応したカバーテープ4を提供することが可能となる。
また、本実施形態であるカバーテープ4は、金属蒸着層14が形成されたカバーテープ本体10とヒートシール層12との間に中間層15を構成する合成樹脂を加熱溶融して流し込み接合する、いわゆる押し出しラミネート法によって成形されているので、成形時においても帯電の影響を受けにくくなり、帯電による皺の発生が抑えられ、作業効率が飛躍的に向上する。
【0036】
さらに、本実施形態では、カバーテープ本体10の裏面の全面、すなわちキャリアテープ2に対する接着部にさえも金属蒸着層14が形成されているから、除電されない局部領域が生じにくく、電子部品Wが小さい場合であっても、カバーテープ4の局部的な帯電領域に吸い寄せられるおそれが小さい。
【0037】
また、本実施形態では、カバーテープ本体10の裏面の全面に金属蒸着層14が形成されているから、キャリアテープ2への接着部において金属蒸着層を省く場合に比べて、蒸着時に非蒸着部分のマスクなどを行う必要が無く、カバーテープ4の歩留まりも高められる利点を有する。
【0038】
なお、金属蒸着層14に生じた電荷を除去する方法としては、テープ状搬送体1を巻き取っているリール側で金属蒸着層14をアースに接続してもよいし、剥がしたカバーテープ4を巻き取る側で金属蒸着層14を除電ロールを介してアースに接続してもよいし、いずれかの箇所で除電針などを金属蒸着層14に接続してもよいし、いずれかの箇所で交流コロナ放電を利用した除電器を用いて金属蒸着層14に異極性のイオンを供給してこれを中和する方法を採ってもよい。
また、金属蒸着層14を接地しない場合でも、金属蒸着膜14自体が静電シールドとして働くため、帯電の影響を抑えることができる。
【0039】
カバーテープ4が帯電するメカニズムとしては、キャリアテープ2からの剥離時に生じる剥離帯電のほかに、テープ状搬送体1がリールに巻き取られて回転されている間に電子部品Wがポケット6の内壁面を摩擦することによって生じる摩擦帯電も含まれると考えられている。本発明は、このような帯電に対しても効果的に影響を抑制することができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態について図5を参照して説明する。この第2の実施形態では、カバーテープ4の幅方向中央部で金属蒸着層14を厚くし、幅方向両端部で金属蒸着層14を薄くしたことを特徴とする。このように金属蒸着層14の中央部に厚肉部14Aを形成すると、電子部品Wと対向配置される中央部での良好でスムーズな電荷の移動による中和効果が高められる。薄肉部14Bと厚肉部14Aのそれぞれの厚さは限定されないが、具体的には厚肉部14Aを70〜150Å、薄肉部14Bを20〜100Å程度にすることが好ましい。
【0041】
次に、本発明の第3の実施形態について図6を参照して説明する。この第3の実施形態では、第2の実施形態とは逆に、カバーテープ4の幅方向中央部で金属蒸着層14を薄くし、幅方向両端部で金属蒸着層14を厚くしたことを特徴とする。このように金属蒸着層14の中央部に薄肉部14Bを形成すると、カバーテープ4の長手方向に流れる電流が、電子部品Wから離れた厚肉部14Aを主に流れるため、電子部品Wが異常電流の影響を受ける可能性を低下できるという利点が得られる。厚肉部14Aと薄肉部14Bのそれぞれの厚さは限定されないが、具体的には厚肉部14Aを70〜150Å、薄肉部14Bを20〜100Å程度にすることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の第4の実施形態について図7を参照して説明する。この第4の実施形態では、カバーテープ4に設けられた金属蒸着層14が、カバーテープ4の長手方向に複数の領域14Cに区画されており、隣接する各領域14Cは、同じ金属蒸着層14からなるヒューズ部14Dにより相互に導通されていることを特徴とする。具体的には、この実施形態では、テープ長手方向の一定間隔ごとに、金属蒸着層14の幅方向に延びて向かい合う複数対のマージン20を形成し、各対のマージン20の間にヒューズ部14Dを残した構成となっている。
【0043】
このようなヒューズ部14Dを形成すると、金属蒸着層14に電荷が異常に蓄積され、テープ長手方向に大電流が瞬間的に流れた場合に、いずれかのヒューズ部14Dが溶断して損害の発生を局部に限定することができる。また、金属蒸着層14に外部(例えばリール側、もしくは実装装置側)から何らかの異常な高電流が流れ込んだ場合にも、ヒューズ部14Dが溶断して損害発生を抑制することができる。
【0044】
領域14Cの長さは限定されないが、一般には30mm程度から1m程度が好ましい。あまり領域14Cが長すぎるとヒューズ部14Dを形成した効果が薄れる一方、短すぎると製造コストがかかるばかりで、効果はそれ以上向上しないためである。
【0045】
ヒューズ部14Dの長さ(テープ長さ方向)は限定されないが、一般には0.2〜3mm程度であるとよい。より好ましくは0.4〜0.8mmである。ヒューズ部14Dがあまり長いとマージン20の面積が増えて良好でスムーズな電荷の移動による中和効果に影響を与えるおそれがあり、あまり短いと形成が難しいためである。また、ヒューズ部14Dの幅(テープ幅方向)は限定されないが、一般には0.2〜3mm程度が好ましく、より好ましくは0.3〜0.7mm程度である。あまり幅が大きいと異常電流が流れた場合にも溶断しにくくなり、幅が小さすぎると悪影響を起こさない程度の微弱電流でも溶断するからである。
【0046】
なお、マージン20を形成する方法としては、レーザー法、オイルマージン法、テープマージン法などが考えられる。レーザー法は、中間層15に金属蒸着層14を帯状に蒸着した後、この金属蒸着層14にレーザー光を走査しながら照射し、照射部分の金属蒸着層14を蒸発させてマージン20とする方法である。ヒューズ部14Dに対応する部分は、あらかじめ遮光体でマスクしておけばよい。オイルマージン法は、中間層15のマージン20を形成すべき部分にフッ素系オイルを微量付着させたうえ、金属蒸着層14を蒸着することにより、フッ素系オイルで蒸着が妨げられる現象を利用した方法である。テープマージン法は、中間層15のマージン20を形成すべき部分に細いテープを当ててマスクしつつ蒸着を行う方法である。
【0047】
次に、本発明の第5の実施形態について図8を参照して説明する。この第5の実施形態では、カバーテープ4の幅方向中央部で金属蒸着層14を厚くし、幅方向両端部で金属蒸着層14を薄くし、さらに幅方向中央部にヒューズ部14Dを形成したことを特徴とする。このように金属蒸着層14の中央部に厚肉部14Aおよびヒューズ部14Dを形成すると、電子部品Wと対向配置される中央部での良好でスムーズな電荷の移動による中和効果が高められるうえ、万一金属蒸着層14に沿って異常電流が流れた場合にも、ヒューズ部14Dが溶断して損害を低減できる。
【0048】
第5の実施形態の変形例として、図8中括弧内に示すように、カバーテープ4の幅方向中央部で金属蒸着層14を薄くし、幅方向両端部で金属蒸着層14を厚くし、さらに幅方向中央部にヒューズ部14Dを形成してもよい。このように金属蒸着層14の中央部に薄肉部18Cおよびヒューズ部14Dを形成すると、ヒューズ部14Dを異常電流に対して鋭敏にすることができる。
【0049】
次に、本発明の第6の実施形態について図9を参照して説明する。この第6の実施形態では、ヒューズ部14Dをカバーテープ4の一側縁に沿って形成したことを特徴としている。このような構成によれば、電子部品Wと対向配置されない領域14Cの縁部に沿って電流が流れる利点を有する。
【0050】
次に、本発明の第7の実施形態について図10を参照して説明する。この第7の実施形態は、カバーテープ4の一側縁部に沿う狭い帯状の部分で金属蒸着層14を薄くし、ポケット6をカバーする他側縁部側の領域では金属蒸着層14を厚くし、さらに薄肉部14Bにヒューズ部14Dを形成したことを特徴とする。この構成によれば、厚肉部14Aによって電子部品Wの良好でスムーズな電荷の移動による中和効果を高めつつ、ヒューズ部14Dは薄肉部14B内にあるからヒューズ効果を鋭敏にすることができる。
【0051】
第7の実施形態の変形例として、カバーテープ4の一側縁部に沿う狭い帯状の部分で金属蒸着層14を厚くし、ポケット6をカバーする他側縁部側の領域では金属蒸着層14を薄くし、さらに厚肉部14Aにヒューズ部14Dを形成した構成も実施可能である。この構成によれば、電子部品Wと対向配置されない厚肉部14Aに集中的に電流を流すことができ、しかも、ヒューズ効果が得られる利点を有する。
【0052】
以上、本発明の実施形態であるキャリアテープ用カバーテープ及びテープ状搬送体について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
たとえば、キャリアテープに設けられたポケットの形状や大きさ、配置は本実施形態に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に第1の実施形態であるキャリアテープ用カバーテープを備えたテープ状搬送体を示す平面図である。
【図2】図1に示すテープ状搬送体の側面図である。
【図3】図1に示すテープ状搬送体の断面拡大図である。
【図4】図1に示すテープ状搬送体のキャリアテープ用カバーテープとキャリアテープとを剥離した状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態であるキャリアテープ用カバーテープの平面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態であるキャリアテープ用カバーテープの平面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態であるキャリアテープ用カバーテープの平面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態であるキャリアテープ用カバーテープの平面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態であるキャリアテープ用カバーテープの平面図である。
【図10】本発明の第7の実施形態であるキャリアテープ用カバーテープの平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 テープ状搬送体
2 キャリアテープ
4 カバーテープ(キャリアテープ用カバーテープ)
6 ポケット
10 カバーテープ本体
12 ヒートシール層
14 金属蒸着層
14A 厚肉部
14B 薄肉部
14C 領域
14D ヒューズ部
15 中間層
16 ヒートシール面
W 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアテープの上に貼り付けられるキャリアテープ用カバーテープであって、
帯状のカバーテープ本体と、前記キャリアテープと接合するヒートシール層とを備え、
これらカバーテープ本体とヒートシール層との間に、金属蒸着層が設けられていることを特徴とするキャリアテープ用カバーテープ。
【請求項2】
前記カバーテープ本体と前記ヒートシール層との間に、合成樹脂で構成された中間層が前記金属蒸着層とともに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープ用カバーテープ。
【請求項3】
前記金属蒸着層は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャリアテープ用カバーテープ。
【請求項4】
前記金属蒸着層の厚さが20Å〜150Åの範囲内に設定されていることを特徴とする
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキャリアテープ用カバーテープ。
【請求項5】
部品収容用のポケットが長手方向に間隔をあけて一面に形成された帯状のキャリアテープと、前記ポケットを塞ぐように前記キャリアテープに貼り付けられる帯状のカバーテープとを具備するテープ状搬送体であって、
前記カバーテープは、帯状のカバーテープ本体と、前記キャリアテープと接合するヒートシール層とを備え、これらカバーテープ本体とヒートシール層との間に、金属蒸着層が設けられており、
前記ヒートシール層が前記キャリアテープに加熱接着可能な構成とされていることを特徴とするテープ状搬送体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−23680(P2009−23680A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188099(P2007−188099)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000176822)三菱伸銅株式会社 (116)
【Fターム(参考)】