説明

キーシート及びキーシートの取付構造

【課題】複数のキートップを狭間配置したキーシートの歪みを可及的に抑制する。
【解決手段】ベースシート12と、ベースシート12に配置されて機器の筐体に形成した仕切桟の無い操作開口から露出させる複数のキートップと、を備えるキーシート11について、ベースシート12を、キートップを固着するゴム状弾性体でなる複数の浮動支持部15と、浮動支持部15を押圧変位可能に支持する硬質樹脂でなる薄板状の補強部材13と、を備えるものとして構成し、ベースシート12をその外側縁部分で筐体内に圧接保持し、その内側の浮動支持部どうしを隔てる桟部では筐体と回路基板に対して拘束されないものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話機、PDA、カーナビゲーション装置、カーオーディオ装置など各種機器の操作部に用いる押釦スイッチ用のキーシートに関し、特に機器の筐体に形成した仕切桟の無い操作開口から複数のキートップを露出させて使用するのに好適なキーシートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図19で示す携帯電話機1のように、装置全体や操作部の小型化の要請、またデザイン性の要請などから、筐体1aに形成した仕切桟の無い操作開口1bから、キーシート2の複数のキートップ3が狭間配置で露出する押釦スイッチが要求されている。この背景技術によるキーシート2は、図20で示すように、シリコーンゴムでなるベースシート4に、複数すなわち計17個のキートップ3を固着したものである。即ち、中央上部にある大型で上下左右の方向入力を行う1個のキートップ3aと、その左右にある小型で4個のキートップ3bと、それらの下側にある12個の中型のキートップ3cとで構成される。隣り合うキートップ3a,3b,3cどうしの間隔は大変狭く、例えば0.15mm〜0.2mm程度の狭間で配置してあり、操作開口1bとの隙間も同程度で大変狭くなっている。こうした狭間配置のキーシート2の関連技術については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2003−114833
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなキーシート2の取付構造は、図21で示すように、筐体1aの内部の構造要素、この背景技術では、筐体1aの裏面1cにおける操作開口1bの開口縁側部分と筐体1aに内蔵する回路基板1dとで、ベースシート4の外縁側部分を、全周にわたって圧接して保持した構造であり、圧接部分の内側では筐体1aや回路基板1dに対して拘束しない取付構造となっている。このため携帯電話機1の使用時にキーシート2を、例えば図22のように直立させたり、図23のように下向きに倒すと、柔軟なシリコーンゴム等のゴム状弾性体でなるベースシート4が、キートップ3の重量負荷によって、全体的に延びて歪んでしまうことがある。このようにキーシート2が全体的に歪んでしまうと、ベースシート4の押し子4aと、回路基板1dの金属皿ばねと接点回路でなる接点スイッチ1eと、の間に位置ずれが生じて、キートップ3を押圧しても入力出来なかったり、なかなか入力出来ない、という操作不良が生じることがある。また、ベースシート4の歪みの態様に応じてキートップ3ごとに入力時の押圧ストローク量が異なって、操作性に悪影響を及ぼすことがある。更に、携帯電話機1の見栄えを損ねてしまう、という問題もある。また、隣接する一方のキートップ3が横滑りして他方のキートップ3の下に潜り込んでしまうことがある。
【0005】
以上のような柔軟なゴム状弾性体でなるベースシート4の歪みに起因する問題は、図示のような操作開口1bからすべてのキートップ3を狭間配置で露出させるキーシート2について、特に解決すべき問題である。しかしながら、こうした諸問題は、例えば、筐体1aに、上下に位置するキートップ3bについて一つの操作開口を設けるような場合、つまり単一の操作開口あたりに配置するキートップが2つ以上であれば起こりうる。また、携帯電話機1のごとく使用時に直立させたり傾倒させることが想定されない機器に、複数のキートップを狭間配置したキーシートを取付けた場合であっても、柔軟性あるゴム状弾性体でなるベースシートの歪みを起因として、キートップどうしの潜り込み等の問題が起こりうるため、これらのキーシートについても同様に、その対応策が要請されている。
以上のような技術を背景になされたのが本発明である。その目的は、複数のキートップを狭間配置したキーシートの歪みを可及的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明は、ベースシートと、ベースシートに配置されて機器の筐体に形成した仕切桟の無い操作開口から露出させる複数のキートップと、を備えるキーシートについて、ベースシートを、キートップを固着するゴム状弾性体でなる複数の浮動支持部と、浮動支持部を押圧変位可能に支持する硬質樹脂でなる薄板状の補強部材と、を備えるものとして構成した。
【0007】
本発明のキーシートによれば、キートップを浮動支持部にて支持し、浮動支持部を硬質樹脂でなる薄板状の補強部材によって支持してベースシートの剛性を向上したため、ベースシートの歪みが、補強部材によって、殆ど無くなるか皆無にすることができる。よって、ベースシートの歪みに起因する諸問題、すなわち、キートップと接点スイッチとの位置ずれによる操作不良、キートップごとに押圧ストローク量が相違することによる操作性の悪化、機器のデザイン性への悪影響、キートップどうしの潜り込み、を殆ど無くすことができるか皆無にすることができる。
【0008】
前記本発明のキーシートについては、その補強部材に、JIS K 7191に基づき測定した荷重たわみ温度が170℃以上の耐熱性硬質樹脂を用いて構成することができる。
【0009】
JIS K 7191に基づき測定した荷重たわみ温度が170℃以上の耐熱性硬質樹脂で補強部材を製造したため、ベースシートの剛性が向上し、また、熱変形を受けにくく、そりなどのない寸法精度の良いキーシートが得られる。なお、JIS K 7191は、荷重たわみ温度の試験方法について記載されており、以下特に断らない限り、「荷重たわみ温度」とは、JIS K 7191に基づき測定した荷重たわみ温度をいうものとする。
【0010】
この硬質樹脂には、ポリアリレート樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂から選択される耐熱性硬質樹脂を用いることができる。
【0011】
これらの樹脂を用いれば、剛性があり、耐熱性が優れているため、例えば、補強部材とゴム状弾性体でなる浮動支持部を、型成形により一体形成するような場合に、成形時や脱型時に起こりやすい熱変形を抑制することができ、寸法精度の高いキーシートが得られる。また、照光式キーシートとする場合には、これらの樹脂として透明なものを用いれば、素材そのものの透明度が高いので、内部光源からの光の透過性が良い照光性に優れる照光式キーシートとすることができる。
【0012】
また、この硬質樹脂には、下記一般式(1)で表される構成単位を含む耐熱性のポリカーボネート樹脂を用いることができる。
【0013】
【化1】

(式中、Xは炭素、mは4〜7の整数を表す。R及びRは、各Xに対して個々に選択することができ、かつ相互に独立して水素または炭素数1〜6のアルキルを表す。また、nは40〜100の整数を表す。)
【0014】
この樹脂を用いれば、剛性があり、耐熱性が優れているため、例えば、補強部材とゴム状弾性体でなる浮動支持部を、型成形により一体形成するような場合に、整形時や脱型時に起こりやすい熱変形を抑制することができ、寸法精度の高いキーシートが得られる。また、照光式キーシートとする場合には、これらの樹脂として透明なものを用いれば、素材そのものの透明度が高いので、内部光源からの光の透過性が良い照光性に優れる照光式キーシートとすることができる。
【0015】
前記本発明のキーシートについては、補強部材を成す硬質樹脂が樹脂強化材を含有するものとして構成することができる。
【0016】
これによれば、硬質樹脂の剛性が大幅に向上されるため、ベースシートの歪みを皆無にできる。
【0017】
前記本発明の樹脂強化材としては、鱗片状の樹脂強化材、土塊状の樹脂強化材、繊維状の樹脂強化材、球状の樹脂強化材にて構成される。
【0018】
これらの樹脂強化材であれば、硬質樹脂に充填しやすく、成形後の硬質樹脂の加工性が良く、また高い補強効果も得られる。鱗片状の樹脂強化材としては、マイカ粉、グラファイト粉等を使用でき、土塊状の樹脂強化材としては、グラファイト粉等を使用でき、球状の樹脂強化材としては、ガラス球、シリカ球等を使用できる。そして、繊維状の樹脂強化材としては、以下のものを使用できる。
【0019】
すなわち前記本発明の樹脂強化材としては、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、アラミド繊維又はセラミックス繊維の少なくとも何れかを含有するものとして構成される。
【0020】
これらの繊維材は、優れた剛性向上効果を発揮できることに加え、耐熱性にも優れており、例えば、補強部材にゴム状弾性体でなる浮動支持部を、型成形により一体形成するような場合に、成形時や脱型時に起こりやすい補強部材を成す硬質樹脂の熱変形を抑制することが可能であり、精度の高いキーシートが得られる。
【0021】
以上のキーシートの具体的構成としては、ベースシート全体が硬質樹脂でなる補強部材を基体とし、この補強部材に浮動支持部を備える形態や、ベースシート全体がシリコーンゴムや熱可塑性エラストマーなどのゴム状弾性体でなる弾性シートを基体とし、この弾性シートに補強部材を部分的に備える構成として実現できる。本願ではその具体的構成として以下の発明を提供するものである。
【0022】
すなわち以上の本発明のキーシートについては、補強部材が、浮動支持部を架け渡して固着させる貫通孔を有する一枚板にて構成される。
【0023】
本発明によれば、補強部材が一枚板であるため、全面的な剛性向上によって、キーシートの全体的な歪みの発生を確実に抑えることができる。この場合に、補強部材の貫通孔と浮動支持部との固着は、型成形による一体成形や接着剤を用いた接着などで実現することができる。なお、型成形による一体成形であれば、特に固着強度と生産性を高めることができる。
【0024】
また、以上の本発明のキーシートについては、ベースシートを、浮動支持部を有するゴム状弾性体でなる弾性シートにて形成し、補強部材を隣接する浮動支持部の間に部分的に設けたものとして構成される。
【0025】
本発明によれば、ベースシートを弾性シートで形成しつつも、隣接する浮動支持部の間に設けた補強部材の剛性向上によって、キーシートの歪みの発生を確実に抑えることができる。この場合の補強部材は、例えば型成形による弾性シートとの一体成形、弾性シートへの接着、補強部材をなす液状樹脂を弾性シートに塗布して硬化させるなどの形態により設けることができる。
【0026】
以上の本発明のキーシートについては、ベースシートを、浮動支持部を有するゴム状弾性体でなる弾性シートにて形成し、補強部材を該弾性シートの外縁側に設けたものとして構成される。
【0027】
本発明によれば、ベースシートを弾性シートで形成しつつも、補強部材による弾性シートの外縁での剛性向上によって、キーシートの歪みの発生を確実に抑えることができる。この場合の補強部材は、例えば型成形による弾性シートとの一体成形、弾性シートへの接着、補強部材をなす液状樹脂を弾性シートに塗布して硬化させるなどの形態により設けることができる。
【0028】
以上の本発明のキーシートについては、ベースシートに、ゴム状弾性体でなる圧接受け部を設けたものとして構成される。
【0029】
本発明によれば、圧接受け部を圧縮させて保持することによって、ゴム状弾性体でなる圧接受け部の反発弾性によりキーシートを確実に機器に保持することができる。
【0030】
また、本発明は、機器の筐体に形成した仕切桟の無い操作開口から露出させる複数のキートップをベースシートに固着してなるキーシートの製造方法について、JIS K 7191に基づき測定した荷重たわみ温度が170℃以上の耐熱性硬質樹脂を用いて補強部材を製造し、該補強部材を、ベースシート成形金型のキャビティに移載し、該キャビティ内にゴム状弾性体を入れ、前記耐熱性硬質樹脂の荷重たわみ温度未満の温度で該ゴム状弾性体と補強部材を一体化してベースシートを製造するキーシートの製造方法として構成した。
【0031】
本発明によれば、JIS K 7191に基づき測定した過剰たわみ温度が170℃以上の耐熱性硬質樹脂を用いて補強部材を製造し、該補強部材をベースシート成形金型のキャビティに移載し、該キャビティ内にゴム状弾性体を入れ、前記耐熱性硬質樹脂の荷重たわみ温度未満の温度で該ゴム状弾性体と補強部材を一体化してベースシートを製造したため、ゴム状弾性体と補強部材との一体成形時や、脱型時に補強部材の熱変形が生じにくく、寸法精度が高いキーシートを得ることができる。そして、所定の荷重たわみ温度以上の樹脂を選択すれば、樹脂の種類に応じて“そり”の程度を予め考慮した補強部材製造用金型を、樹脂の種類に対応させて複数準備する必要がなく、また、“そり”の程度を考慮した複雑な設計が不要となり、補強部材製造用金型の作製が容易になるため、製造コストを低減させることができる。
【0032】
ゴム状弾性体に熱硬化性エラストマーを用いれば、該熱硬化性エラストマーの硬化温度以上であって補強部材に用いる耐熱性硬質樹脂の荷重たわみ温度未満の温度で該熱硬化性エラストマーと補強部材を一体化してベースシートを製造することができる。
【0033】
熱硬化性エラストマーの硬化温度以上であって補強部材に用いる耐熱性硬質樹脂の荷重たわみ温度未満の温度で熱硬化性エラストマーと補強部材を一体化させたため、熱硬化性エラストマーを成形金型内で架橋(加硫)硬化させる温度まで加熱しても耐熱性硬質樹脂の荷重たわみ温度未満であるため、補強部材が熱変形を起こすことがない。そのため、熱硬化性エラストマーの硬化温度に影響せず、そりなどの熱変形のないキーシートを得ることができる。
【0034】
ゴム状弾性体がシリコーンゴムであれば、160℃以上であって補強部材に用いる耐熱性硬化樹脂の荷重たわみ温度未満の温度でシリコーンゴムと補強部材を一体化してベースシートを製造することができる。
【0035】
160℃以上であって補強部材に用いる耐熱性硬化樹脂の荷重たわみ温度未満の温度でシリコーンゴムと補強部材を一体化させたため、シリコーンゴムを架橋硬化させる160℃以上に上げても、耐熱性硬化樹脂の荷重たわみ温度未満であるため、補強部材が熱変形を起こすことがない。そのため、シリコーンゴムの硬化温度に影響せず、そりなどの熱変形のないキーシートを得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明のキーシートによれば、硬質樹脂でなる補強部材の前記構成によって、ベースシートの剛性が高まり、ベースシートの歪みの発生が殆ど無くなるか皆無となる。このため、ベースシートの歪みに起因する諸問題、すなわち、キートップと接点スイッチとの位置ずれによる操作不良、キートップごとに押圧ストローク量が相違することによる操作性の悪化、機器のデザイン性への悪影響、キートップどうしの潜り込みが殆ど無くなるか皆無にできるキーシートとなる。
【0037】
特に、補強部材をなす硬質樹脂に樹脂強化材を含有する場合には、硬質樹脂の剛性が格段に向上して、ベースシートの歪みを皆無にできる。更に、樹脂強化材として、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、アラミド繊維又はセラミックス繊維の少なくとも何れかを含有する場合には、優れた剛性向上効果に加えて、成形時や脱型時に起こりやすい補強部材を成す硬質樹脂の熱変形を抑制可能であり精度の高いキーシートが得られるため、複雑なデザイン形態のキーシートであっても歩留まり良く量産可能である。
【0038】
また、補強部材をなる硬質樹脂に、荷重たわみ温度が170℃以上の耐熱性硬質樹脂を用いる場合には、キーシート製造過程において、熱変形することがなく、寸法精度の高いキーシートが得られるため、製造コストを低減することが可能である。
【0039】
以上のように本発明のキーシートであれば、ベースシートの歪みに起因する諸問題を解決できるため、操作性に悪影響を及ぼすような方法、つまりキートップ自体のサイズを小型化することに依存すること無く、機器全体の小型化と操作部の小型化の要請に応えることが可能である。
また、本発明のキーシートの製造方法によれば、キーシートのそりなどの熱変形を問題にすることなく、寸法精度の高いキーシートを得ることができ、高品質で安価なキーシートを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態によるキーシート底面の外観図。
【図2】図1のSB−SB線断面図。
【図3】図1のSC−SC線断面図。
【図4】第2実施形態によるキーシート底面の外観図。
【図5】図5のSD−SD線断面図。
【図6】図5のSE−SE線拡大要部断面図。
【図7】第3実施形態によるキーシート底面の外観図。
【図8】図7のSF−SF線断面図。
【図9】第4実施形態によるキーシート底面の外観図。
【図10】図9のSG−SG線断面図。
【図11】第5実施形態によるキーシート底面の外観図。
【図12】図11のSH−SH線断面図。
【図13】第5実施形態によるキーシート上面の外観図。
【図14】図13のSI−SI線断面図。
【図15】第1,第2,第3実施形態の変形例を示す拡大要部断面図。
【図16】第5実施形態の変形例を示す拡大要部断面図。
【図17】第5実施形態の変形例を示す拡大要部断面図。
【図18】第5実施形態の変形例を示す拡大要部断面図。
【図19】一従来例による携帯電話機の外観斜視図。
【図20】図19の携帯電話機に備えるキーシートの外観図。
【図21】図19のSA−SA線に沿う携帯電話機の概略断面図。
【図22】携帯電話機を直立させた状態を示す図21相当の概略断面図。
【図23】携帯電話機を傾倒させた状態を示す図21相当の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、従来技術と共通する構成、各実施形態で共通する構成については、重複説明を省略する。なお、以下の説明では、「機器」として従来技術の説明と同様に携帯電話機1に適用する押釦スイッチ用のキーシートを一例として説明する。
【0042】
第1実施形態〔図1〜図3〕; 本形態のキーシート11は、ベースシート12とベースシート12に固着したキートップ3とで構成される。
【0043】
ベースシート12は、上部に矩形状の舌片部を有する角丸長方形状で一枚板の硬質樹脂板13を“補強部材”として備える。硬質樹脂板13には、格子状とした桟部13aによって各キートップ3を設ける部分に矩形状の貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、ゴム状弾性体でなる浮動支持部15にて閉塞されている。浮動支持部15には、図2,図3でその拡大断面を示すように、その上面にキートップ3が図外の接着剤で固着されており、その底面に下向きに突出する円柱形状の押し子16が形成されている。また、浮動支持部15には可撓部17が形成されており、図中下方向への押圧により変位可能としてキートップ3を浮動支持している。
【0044】
ここでベースシート12を構成する各部の材質につき説明する。まず、硬質樹脂板13としては、キーシート11の歪みを抑制すべく、剛性の高い材質のものを使用する。このような硬質樹脂板13の材質としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系共重合樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などを含むポリアミド樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂、アリル樹脂、フラン樹脂、フェノール系樹脂、フッ素樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂などを使用することができる。
【0045】
これらの樹脂の中でも、荷重たわみ温度が170℃の耐熱性硬質樹脂を用いることが好ましい。ベースシート12製造時に加熱されて硬質樹脂板13にそりなどの変形が生じることを防ぐためである。これらの樹脂には、例えば、180℃のアミノ樹脂、180℃のメラミン樹脂、200℃のアリル樹脂、230℃のエポキシ樹脂、170℃のフラン樹脂、200℃のフェノール樹脂、300℃のシリコーン樹脂、200℃のフッ素樹脂、270℃のポリアミドイミド樹脂、175℃のポリアリレート樹脂、204℃のポリアリルスルホン樹脂、200℃のポリエーテルスルホン樹脂、240℃のポリイミド樹脂、172℃のポリフェニレンエーテル樹脂、260℃のポリフェニレンスルフィド樹脂、175℃のポリスルホン樹脂、180℃のポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。さらに、これらの樹脂の中でも、例えば、下記一般式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂や、ポリアリレート樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂であることがより好ましい。下記一般式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂などをより好ましいとしたのは、これらの樹脂の荷重たわみ温度が170℃以上であって、シリコーンゴムを含む多くの樹脂の架橋温度に対して熱変形せず、また樹脂とゴム状弾性体との固着力が高いからである。また、透明性が高いため、内部光源によって照光するいわゆる照光式キーシートとした場合に、光源からの光を効率良く照光することもできるからである。
【0046】
【化2】

(式中、Xは炭素、mは4〜7の整数を表す。R及びRは、各Xに対して個々に選択することができ、かつ相互に独立して水素または炭素数1〜6のアルキルを表す。また、nは40〜100の整数を表す。)
【0047】
一般式(1)で表される構成単位には、次の式(2)〜式(4)で表される構成単位が含まれる。
【0048】
【化3】

(各式中、nは相互に独立して40〜100の整数を表す。)
【0049】
上記一般式(1)、式(1)〜式(4)で表される構成単位は、ポリカーボネート樹脂全体に対して40〜100モル%であり、また、上記一般式(1)、式(1)〜式(4)末端は、原料の種類に応じて、H、OH、OR、COOR(Rは水素又は炭素数1〜3のアルカン)等が結合している。
【0050】
硬質樹脂板13の母材となる硬質樹脂には、樹脂強化材を混合することができる。樹脂強化材は、硬化後の硬質樹脂板13中に、実質的に均一に分散した状態となっており、硬質樹脂板13の全面で剛性が向上される。
【0051】
このような樹脂強化材としては、マイカ粉、グラファイト粉等の鱗片状の樹脂強化材、グラファイト粉等の土塊状の樹脂強化材、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミックス繊維、金属繊維等の繊維状の樹脂強化材、ガラス球、シリカ球等の球状の樹脂強化材が使用される。これらの樹脂強化材を使用すると、未硬化の液状硬質樹脂に充填しやすく、硬化後の硬質樹脂成形体の加工性が良く、高い補強効果を発揮できる。
【0052】
そして、以上の樹脂強化材の中でも、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、アラミド繊維又はセラミックス繊維の少なくとも何れかを含有するものが好ましい。これらの繊維材は、優れた剛性向上効果を発揮できることに加え、耐熱性にも優れており、例えば、硬質樹脂板13に、ゴム状弾性体でなる浮動支持部15を、型成形により一体形成するような場合に、成形時や脱型時に起こりやすい硬質樹脂板13の熱変形を抑制することが可能であり、精度の高いキーシート11が得られるからである。
【0053】
以上のような樹脂強化材の充填量については、選択した樹脂強化材の形状及び素材で異なる。例えば、鱗片状、土塊状、球状等の樹脂強化材では、硬質樹脂100重量部に対して、15重量部ないし60重量部の範囲が好適である。また、繊維状の樹脂強化材では、硬質樹脂100重量部に対して、10重量部ないし40重量部の範囲が好適である。これらのように規定されるのは、各充填量が前記数値の下限値未満では、高い補強効果が得られず、母材となる硬質樹脂の剛性不足により僅かに歪みが生じる可能性があるためである。また、各充填量が前記数値の上限値を超えると、母材となる硬質樹脂への充填が極めて困難となって、混合加工時間が長くなるため、生産効率を阻害してしまう。しかも、硬質樹脂板13の成形時には、上限値を超えて樹脂補強材が充填された硬質樹脂組成物は流動性が悪く、所望の形状に成形加工できなくなってしまう。
【0054】
浮動支持部15をなすゴム状弾性体としては、反発弾性が良く柔軟性のある、シリコーンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等の熱硬化性エラストマーを使用できる。また、スチレン系、エステル系、ウレタン系、オレフィン系、アミド系、ブタジエン系、エチレン−酢酸ビニル系、フッ素ゴム系、イソプレン系、塩素化ポリエチレン系などの熱可塑性エラストマーも使用できる。これらのうち、シリコーンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマーであれば、反発弾性に優れ、高い耐久性をもつ浮動支持部15が得られる。
【0055】
以上のようなベースシート12を製造するには、予め、射出成形などの型成形によって硬質樹脂板13を得る。そして、浮動支持部15を成すゴム状弾性体として熱硬化性エラストマーを選択した場合には、その成形金型のキャビティに移載し、熱可塑性エラストマーを選択した場合には、その射出成形金型のキャビティに移載して、それぞれ型成形を行う。こうして浮動支持部15を硬質樹脂板13に一体成形したベースシート12が得られることとなる。また、この製法ではなく、硬質樹脂板13と浮動支持部15を二色成形によって成形することもできる。
【0056】
ゴム状弾性体成形金型のキャビティ内で硬質樹脂板13とゴム状弾性体とを一体化して成形する際に、シリコーンゴムなどのゴム状弾性体を用いる場合は、架橋(加硫)させるためにキャビティ内でゴム状弾性体を150℃以上、場合によっては、160℃以上に加熱する必要がある。その際、硬質樹脂板13の荷重たわみ温度が低いと熱変形を起こし、いわゆる“そり”が入った歪んだベースシート12となってしまうことがある。そのため、硬質樹脂板13に用いる樹脂は、荷重たわみ温度がゴム状弾性体の架橋温度以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましい。170℃以上であれば、多くの種類のゴム状弾性体の架橋温度より高く、製造工程において温度設定の自由度が高まるからである。ベースシート12製造時の成形温度は、硬質樹脂とゴム状弾性体の種類に応じた組合せを考慮した温度とするが、ゴム状弾性体に熱硬化性エラストマーを用いる場合は、熱硬化性エラストマーの硬化温度以上であって、硬質樹脂板13に用いられる硬質樹脂の荷重たわみ温度未満であることが好ましい。また、ゴム状弾性体にシリコーンゴムを用いる場合は、160℃以上であって硬質樹脂板13に用いられる硬質樹脂の荷重たわみ温度未満であることが好ましい。
【0057】
ベースシート12を製造した後、各浮動支持部15に所定のキートップ3を接着することで、本形態のキーシート11が得られることとなる。
【0058】
以上のようにして得たキーシート11は、樹脂強化材を含有する硬質樹脂板13を基体とし、その貫通孔14にキートップ3を浮動支持する浮動支持部15を形成したため、ベースシート12に歪みが生じない。したがって、キーシート11を直立させたり傾倒させてキートップ3の重量を硬質樹脂板13に持たせても、硬質樹脂板13の剛性によって、キーシート11の全体的な歪みが抑制される。したがって、押し子16と回路基板1dの接点スイッチ1eとの位置ずれによる操作不良、押圧ストローク量の相違による操作感の悪化、携帯電話機1のデザイン性への悪影響、キートップどうしの潜り込みを無くすことができる。
【0059】
第2実施形態〔図4〜図6〕; 本形態のキーシート21が第1実施形態と異なるのは、ベースシート22の硬質樹脂板13に、熱可塑性エラストマーでなる“補強部材”及び“圧接受け部”としての補強外枠23が一体成形されている点である。このように硬質樹脂板13の外縁を被覆する補強外枠23を形成することで、ベースシート21の全体剛性が第1実施形態よりも更に向上される。また、熱可塑性エラストマーでなる補強外枠23は、携帯電話機1の筐体1aの裏面1cにおける操作開口1bの開口縁側部分と、筐体1aに内蔵する回路基板1dと、で圧接して保持する際に、反発弾性によって、圧接を与える面に対する形状追従性に優れている。したがって、強い保持力が発揮されるとともに、操作開口1bから筐体1a内部へ侵入しようとする液体や塵埃に対する優れたシール性も発揮することができる。
【0060】
第2実施形態のキーシート21には、第1実施形態で示したキーシート11で用いた材料を用いることができ、キーシート11と同様に型成形や二色成形にて製造することができる。
【0061】
第3実施形態〔図7,図8〕; 本形態のキーシート31におけるベースシート32では、貫通孔14どうしを隔てる硬質樹脂板13の桟部13aの表裏について、浮動支持部15と一体成形した熱可塑性エラストマーでなる“補強部材”としての補強層33を形成したことを特徴としている。この補強層33により細くて薄い桟部13aを破損や裂損から保護しつつ剛性を高めるようにし、第1実施形態よりもベースシート32の全体剛性を向上させて、キーシート31の歪みの発生をより確実に抑制できるようにしている。
【0062】
第3実施形態のキーシート31も第1実施形態で示したキーシート11と同様の材料、同様の方法にて製造することができる。
【0063】
第4実施形態〔図9,図10〕; 本形態のキーシート41は、ベースシート42をゴム状弾性体としての熱可塑性エラストマーでなる弾性シート43から形成した点で、前述の各実施形態と相違している。そして、弾性シート43に形成した浮動支持部44どうしを隔てる可撓部17の裏面には、薄板状の硬質樹脂成形体でなる“補強部材”としての補強内枠46が固着されている。したがって、本形態では、補強内枠46によって可撓部17における剛性が向上される結果、ベースシート42の全体剛性が向上され、キーシート41の歪みの発生をより確実に抑制できる。
【0064】
このようなベースシート42を製造するには、射出成形などの型成形によって補強内枠46を製造する。そして、補強内枠46を熱可塑性エラストマーの射出成形金型のキャビティ内に移載し、浮動支持部44を射出成形すれば、ベースシート42が得られる。この製法ではなく二色成形によって製造することもできる。この後は、各浮動支持部44に所定のキートップ3を接着することで、本形態のキーシート41が得られることとなる。
【0065】
したがって、ベースシート42の製造には、第1実施形態のキーシート11で用いた材料を用いることができ、キーシート11と同様に製造することができる。
【0066】
第5実施形態〔図11,図12〕; 本形態のキーシート51は、第4実施形態に変更を加えたものである。本形態ではベースシート52をゴム状弾性体としての弾性シート53から構成している。弾性シート53の上面53aは、図12で示すように、凹凸のない平坦面であり、重量軽減と、キートップ3の固着部分における薄肉化による薄型化と、が達成できるようになっている。また、弾性シート53の底面53bには、押し子53cを突設した複数の凹部53dが形成されている。凹部53dの形成部分におけるゴム状弾性体の肉厚は薄く、この薄肉部分が、各キートップ3を押圧変位可能に支持する浮動支持部53eとなっている。
【0067】
各キートップ3は、高さのある接着部54によって、その底面3dを上面53aから浮かせた状態として、薄肉の浮動支持部53eに固着される。接着部54は、薄肉の浮動支持部53eの全面ではなく、その面内に部分的に塗布されて硬化する。このように接着部54の硬化領域53f(図11参照)を、薄肉の浮動支持部53eよりも小さな面積として設定することで、浮動支持部53eは、硬化領域53fの外側領域で弾性変形して、キートップ3を押圧変位できるようになっている。したがって、前述の各実施形態の浮動支持部15,44のように、弾性シート53の上面53aに、キートップ3を固着する凸部を形成する必要がなく、その凸部が不要な分、弾性シート53の薄肉化と重量軽減を図ることができる。よって、キーシート51を薄型化できる。
【0068】
凹部53dと浮動支持部53eの外側には、これらを取り囲む厚肉部53gが形成されている。厚肉部53gの肉厚は、浮動支持部53eよりも厚く、押し子53cと浮動支持部53eを浮動支持している。この厚肉部53gには、薄板状の硬質樹脂成形体でなる“補強部材”としての補強内枠53hが設けてある。本実施形態の補強内枠53hには、図1で示すように、凹部53d及び浮動支持部53eと干渉しないように開口53iを設けた枠状に形成されている。
【0069】
以上のようなベースシート52を製造する方法の一つは、型成形による一体成形である。この場合には、予め、用意した補強内枠53hを、弾性シート53の成形金型のキャビティの内部に移載し、ゴム状弾性体、すなわち熱硬化性エラストマーや熱可塑性エラストマーの成形を行う。これによって、補強内枠53hがゴム状弾性体に埋設状態で一体成形された成形体、つまりベースシート52が得られることとなる。この後は、成形金型からベースシート52を脱型し、接着剤(接着部54)でキートップ3を固着すると、キーシート51が得られる。この製法によれば、弾性シート53が補強内枠53hに対して強固に固着するので、ゴム状弾性体の破断が無ければ補強内枠53hの脱離が生じることが無く、一体性に優れるベースシート52が得られる。
【0070】
したがって、ベースシート52の製造には、第1実施形態のキーシート11で用いた材料を用いることができ、キーシート11と同様に製造することができる。
【0071】
また、ベースシート52を製造する他の方法では、ゴム状弾性体の型成形によって、図12で示す厚肉部53gにおける補強内枠53hの埋設部分を、下向き凹状に開口する補強内枠53hの取付溝として成形した成形体を得る。そして、成形金型から脱型した後に、別途製造した補強内枠53hを、その取付溝に対して図示しない接着剤によって固着する。これによって、補強内枠53hを埋設状態で固着したベースシート52が得られる。この後は、接着剤(接着部54)でキートップ3を固着すると、キーシート51が得られる。この製法によれば、ゴム状弾性体の型成形の過程で補強内枠53hを使用しないため、補強内枠53hとして、耐熱性が低く、熱変形が起こりやすく、型成形には馴染まないが、剛性や耐久性や透明性等のキーシート51に求められる他の要求特性には優れる材質のものであっても使用できる。
【0072】
第6実施形態〔図13,図14〕; 第6実施形態のキーシート61は第5実施形態の変形例である。第5実施形態と異なる構成は、図13で示すように、外周に位置する浮動支持部63eを取り囲むような“補強部材”としての補強枠63hを形成した点である。したがって、ベースシート52の外縁周りについても補強効果が得られるため、全面的な剛性を更に向上することが可能である。
【0073】
また、本形態のキーシート61では、図14で示すように、補強枠61hをベースシート62を成す弾性シート63の上面63aに露出させている。これによれば、例えばキートップ3として透明材質のものを使用し、補強枠63hの色彩をベースシート62のデザインの一部として構成することが可能で、これまでにないデザイン効果を視認できるキーシート61が得られる。また、キーシート61を照光式とした場合、具体的には、キートップ3に抜き文字状に照光可能な印刷を施し、ベースシート62を透光性とし、更に補強枠63hに遮光性の着色を施した場合には、補強枠63hが隣り合うキートップ3どうしの間隙と接近するため、光漏れを抑制することができる。
【0074】
第6実施形態のキーシート61も第5実施形態で示したキーシート51と同様の材料を用い、同様の方法にて製造することができる。
【0075】
実施形態の変更例; 各実施形態の変更例を列挙して説明する。
【0076】
以上の各実施形態については、キートップ3として熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、シリコーンゴムや熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性体を材質とするものを利用できる。また、ベースシート12,22,32,42,52,62の剛性が高いため、重量のある金属材質のものも利用できる。また、キートップ3については、文字、数字、記号等を、インキや鍍金等で表す表示部を形成できる。更に、キートップ3については、抜き文字照光式キートップ、文字照光式キートップとして構成することもできる。また、キートップ3の立体形状としても他の立体形状であってもよい。もちろんベースシート12,22,32,42,52,62も他の形状であってもよい。
【0077】
前記実施形態では、浮動支持部15,44,53e,63eについて、平面視長方形としたが、丸形でも楕円形でも、その他の多角形でもよい。また、ベースシート12,22,32,42,52,62の形状も、前記実施形態の例に拘わらず他の形状でもよい。
【0078】
第3実施形態のキーシート31では、硬質樹脂板13の桟部13aの表裏を被覆する熱可塑性エラストマーでなる補強層33を例示したが、何れかの面だけを被覆するものとしてもよい。また、補強層33は、すべての桟部13aを被覆するものではなく、部分的に被覆するものとしてもよい。
【0079】
第4実施形態のキーシート41では、補強内枠46を型成形により硬質樹脂板13と一体成形したものを例示したが、接着剤を利用して接着するようにしてもよい。また、補強内枠46に対応するように例えば液状のUV硬化型樹脂を塗布して硬化させることによって、補強内枠46に対応する補強層を形成してもよい。
【0080】
第4実施形態のキーシート41では、硬質樹脂板13の桟部13aの形状に対応する単一の成形体とした補強内枠46を例示したが、これを複数の成形体に分割構成してもよい。また、第2実施形態の補強外枠23を含めて単一の成形体として構成してもよいし、逆に部分的に桟部13aを補強しないものであってもよい。
【0081】
第4実施形態のキーシート41では弾性シート43として熱可塑性エラストマーを例示したが、シリコーンゴムでなる弾性シートとしてもよい。この場合には、補強内枠46や補強外枠23を接着剤などで接着すれば固着することができる。
【0082】
更に、第1,第2実施形態については、例えば図15(A)で示すように桟部13aに段部13bを形成し、ここに熱可塑性エラストマーを固着させることで、固着面積を大きくし硬質樹脂板13に対する固着力を高めることができる。また、第3実施形態については、例えば図15(B)で示すように、桟部13aに貫通孔13cを形成し、ここに熱可塑性エラストマーを流し込んで固着させることで、固着面積を大きくするとともに表裏を繋げた連結構造によって、硬質樹脂板13に対する固着力を高めることができる。
【0083】
第5実施形態では補強内枠53hを弾性シート53の底面53bに露出させており、第6実施形態ではその反対側の上面63aに露出させているが、図16のように、厚肉部53gに完全に埋め込むようにしてもよい。また、図17のように、隣り合う浮動支持部53eの間に厚肉部53gを形成せずに、浮動支持部53eの境界部分に補強内枠53hを形成してもよい。更には、図18のように、ベースシート53のシート面となる底面53bに、補強内枠53hを図示しない接着剤や両面テープ等により貼り付けて、厚肉部53gの代わりに浮動支持部53eを支持させてもよい。また上面53aに固着してもよい。
【0084】
ベースシート52,62における補強内枠53h,63hの形成箇所についても、キートップ3の配置形態に応じて変更することが可能である。要するに、狭間配置で隣り合う少なくとも2つのキートップが存在すれば、補強内枠53h等の“補強部材”で補強する必要性がある。したがって、それらを固着する少なくとも2つの浮動支持部どうしの間に、“補強部材”を設けるようにすればよい。
【0085】
以上の実施形態では、携帯電話機1に使用するキーシート11,14を例示したが、それ以外の機器、例えばPDAやリモートコントローラなどにも使用できる。
【実施例】
【0086】
図12で示した形態のキーシート(51)を製造した。予め補強部材としての補強内枠(53h)を、上述の式(2)で表される構成単位を含む荷重たわみ温度が180℃であるポリカーボネート樹脂にて成形し、次に、ゴム状弾性体でなる弾性シート(53)を形成する金型のキャビティ内に補強内枠(53h)を移載した。その後、ゴム状弾性体としてのシリコーンゴムをキャビティ内に注入し、160℃、5分間の条件でシリコーンゴムの架橋(加硫)を行うと共に、シリコーンゴムがポリカーボネート樹脂でなる補強内枠(53h)と一体化したベースシート(52)を得た。これを別途成形したポリカーボネート樹脂でなるキートップ(3)とウレタンアクリレート系接着剤(54)を用いて、紫外線照射して接着し、本発明のキーシート(51)を得た。得られたキーシート(51)は、ベースシート(52)に“そり”などの変形は見られず、寸法精度が良好なキーシート(51)であった。
【0087】
また、補強内枠(53h)用の材料として、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂に代えて、下記式(5)で表される構成単位を含む荷重たわみ温度が135℃のポリカーボネート樹脂を用いて上記と同じ条件でシリコーンゴムと一体化したベースシート(52)を製造した。得られたベースシート(52)はやや“そり”が入ったものとなった。このため、この樹脂を用いる場合には、この樹脂専用に別途用意した補強内枠(53h)製造用金型を用い、そりの発生を考慮して予め変形した補強内枠(53h)を製造する必要があった。
【0088】
【化4】

(式中、nは、40〜150の範囲内にある整数)
【符号の説明】
【0089】
1 携帯電話機(機器)
1a 筐体
1b 操作開口
1c 裏面
1d 回路基板
1e 接点スイッチ
11 キーシート(第1実施形態)
12 ベースシート
13 硬質樹脂板(補強部材)
13a 桟部
13b 段部
13c 貫通孔
14 貫通孔
15 浮動支持部
16 押し子
17 可撓部
21 キーシート(第2実施形態)
22 ベースシート
23 補強外枠(補強部材,圧接受け部)
31 キーシート(第3実施形態)
32 ベースシート
33 補強層(補強部材)
41 キーシート(第4実施形態)
42 ベースシート
43 弾性シート
44 浮動支持部
46 補強内枠(補強部材)
51 キーシート(第5実施形態)
52 ベースシート
53 弾性シート
53a 上面
53b 底面
53c 押し子
53d 凹部
53e 浮動支持部
53f 硬化領域
53g 厚肉部
53h 補強内枠(補強部材)
53i 開口
54 接着剤
61 キーシート(第6実施形態)
62 ベースシート
63 弾性シート
63a 上面
63e 浮動支持部
63h 補強枠(補強部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外縁側部分で機器の筐体内に圧接保持されるベースシートと、そのベースシートに配置されて該筐体に形成した仕切桟の無い操作開口から露出させる複数のキートップと、を備えるキーシートにおいて、
ベースシートを、キートップを固着するゴム状弾性体でなる複数の浮動支持部と、浮動支持部を押圧変位可能に支持する硬質樹脂でなる薄板状の補強部材と、を備えるものとし、
補強部材を、前記外縁側部分の内側で、前記浮動支持部どうしを隔てる桟部に設け、該桟部では筐体と回路基板に対して拘束されないものとして構成したことを特徴とするキーシート。
【請求項2】
補強部材を、隣接する浮動支持部間のみを仕切る格子状に形成した請求項1記載のキーシート。
【請求項3】
ベースシートの外縁側部分にゴム状弾性体でなる圧接受け部を設け、該圧接受け部で筐体内に圧接保持する請求項1または請求項2記載のキーシート。
【請求項4】
機器の筐体と、
回路基板と、
外縁側部分で機器の筐体内に圧接保持されるベースシートと、そのベースシートに配置されて該筐体に形成した仕切桟の無い操作開口から露出させる複数のキートップとを有するキーシートと、を備えるキーシートの取付構造において、
ベースシートを、キートップを固着するゴム状弾性体でなる複数の浮動支持部と、浮動支持部を押圧変位可能に支持する硬質樹脂でなる薄板状の補強部材と、を備えるものとし、
補強部材を、前記外縁側部分の内側で、前記浮動支持部どうしを隔てる桟部に設け、該桟部では筐体と回路基板に対して拘束されないものとして構成したことを特徴とするキーシートの取付構造。
【請求項5】
補強部材を、隣接する浮動支持部間のみを仕切る格子状に形成した請求項4記載のキーシートの取付構造。
【請求項6】
ベースシートの外縁側部分にゴム状弾性体でなる圧接受け部を設け、該圧接受け部で筐体内に圧接保持する請求項4または請求項5記載のキーシートの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−177202(P2010−177202A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75752(P2010−75752)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【分割の表示】特願2003−375581(P2003−375581)の分割
【原出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】