説明

キースイッチ構造体

【課題】光漏れの減少を図ることができ、意匠性、審美性、操作性を向上させることのできるキースイッチ構造体を提供する。
【解決手段】携帯電話1に内蔵されるメタルドーム層2に弾性のローゴム層10を対向させ、このローゴム層10に、メタルドーム層2の複数のメタルドーム3をそれぞれ動作させるクリック部11を形成してその表面には透過性のキートップ13を接着したものであって、ローゴム層10を導光性のシリコーンゴムにより成形してその周面の一部を紫外線LED20と対向させる。そして、ローゴム層10の各クリック部11の表面に、紫外線LED20からクリック部11への近紫外線の伝送により、キートップ13に向けて可視光を拡散照射する蛍光拡散発光模様30をスクリーン印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やゲーム機等に使用されるキースイッチ構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に使用される従来のキースイッチ構造体は、図示しないが、携帯電話に内蔵される接点層と、この接点層の表面に積層される光透過性のローゴム層と、これら接点層とローゴム層との間に介在される複数のLEDとを備えている。
【0003】
ローゴム層は、所定の成形材料を使用して厚肉に成形され、接点層の複数の接点部をそれぞれON−OFF動作させる複数のクリック部が一体形成されており、各クリック部の表面には、LEDからの光線を透過する光透過性のキートップが接着されている。また、複数のLEDは、キートップの数に対応する数とされ、クリック部の近傍に配置されて可視光線を照射する(特許文献1、2、3、4、5、6、7参照)。
【特許文献1】特開2001−67973号公報
【特許文献2】特開2003−7161号公報
【特許文献3】特開2007−27115号公報
【特許文献4】特開2006−318905号公報
【特許文献5】特開2008−60058号公報
【特許文献6】特開2007−280810号公報
【特許文献7】特開2005−268165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来におけるキースイッチ構造体は、以上のように構成され、接点層と光透過性のローゴム層との間に、可視光線を照射する複数のLEDが単に介在されているだけなので、キートップ以外からの光漏れが多く、携帯電話等の意匠性、審美性、操作性を損なうという問題がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、光漏れの減少を図ることができ、意匠性、審美性、操作性を向上させることのできるキースイッチ構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、接点層と弾性のキーマット層とを対向させ、このキーマット層に、接点層の接点部を動作させるクリック部を形成してその表面には透過性のキートップを重ね設けたものであって、
キーマット層を導光性のシリコーンゴムにより形成してその周面を紫外線LEDと対向させ、キーマット層のクリック部とキートップとの間に、紫外線LEDからクリック部への紫外線の伝送により、キートップに向けて可視光を拡散照射する蛍光拡散発光模様を形成したことを特徴としている。
【0007】
なお、キーマット層に複数のクリック部を配列形成するとともに、隣接するクリック部とクリック部との間に位置する干渉規制壁を形成し、この干渉規制壁にクリック部を包囲させて隣接する他のクリック部に対する誤操作を防ぐことができる。
また、キーマット層のクリック部を略中空錐台形に形成してその内部から接点層の接点部に接離可能に対向するプッシャを突出させることができる。
また、蛍光拡散発光模様を、クリック部の表面に蛍光塗料をスクリーン印刷することにより形成することができる。
【0008】
ここで、特許請求の範囲における紫外線LEDは、単数複数を特に問うものではない。蛍光拡散発光模様は、クリック部の表面とキートップの裏面のいずれかに形成することができる。さらに、本発明に係るキースイッチ構造体は、少なくとも各種の電子機器、具体的には携帯電話、PDA、ノートパソコン、ゲーム機、ビデオカメラ、オーディオ機器、リモコン等の部品として使用される。
【0009】
本発明によれば、紫外線LEDが発光すると、紫外線LEDの不可視光線である紫外線は、シリコーンゴム製のキーマット層の周面から内部方向に入射して導光・伝送され、クリック部の蛍光拡散発光模様を励起して可視光を発光させ、この可視光が各種電子機器のキートップを照明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光漏れの減少を図ることができ、意匠性、審美性、操作性を向上させることができるという効果がある。
【0011】
また、蛍光拡散発光模様を、クリック部の表面に蛍光塗料をスクリーン印刷により形成するようにすれば、クリック部の表面が平坦面の他、凹凸等からなる複雑な面でも容易に蛍光拡散発光模様を形成することができ、製造作業の円滑化や迅速化を図ることができる。また、蛍光塗料の層を厚くして蛍光拡散発光模様の隠蔽力を増大させることもできるし、スクリーン印刷時の印刷圧も小さいので、クリック部の損傷防止が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるキースイッチ構造体は、図1や図2に示すように、携帯電話1に内蔵されるメタルドーム層2と、このメタルドーム層2に対向するローゴム層10とを備え、このローゴム層10をシリコーンゴムにより成形してその周面の一部を長寿命の複数の紫外線LED20と対向させ、ローゴム層10の複数のクリック部11とキートップ13の間に蛍光拡散発光模様30をスクリーン印刷しており、携帯電話1のキースイッチとして利用される。
【0013】
メタルドーム層2は、図2に示すように、プリント配線板上に搭載される基板表面のXY方向に、上方から押圧操作される複数のメタルドーム3が所定の間隔をおいて配列形成され、図示しない回路基板やその回路素子等に電気的に接続されており、複数のメタルドーム3が選択的に押圧操作されて電子回路をON、OFFすることにより、携帯電話1の所定の機能、例えば送受信機能やメール機能等を実現する。各メタルドーム3は、特に限定されるものではないが、例えばローゴム層10方向に変形可能に膨らむ半球形に形成される。
【0014】
ローゴム層10は、図2に示すように、例えば紫外線の導光性、透明性、温度特性、環境特性、電気特性等に優れるシリコーンゴムを含む成形材料を使用してメタルドーム層2を被覆する弾性変形可能な薄いシートに成形され、メタルドーム層2の周縁部に接着シートや接着剤を介し接着されており、メタルドーム層2の表面に僅かな隙間をおいて積層される。
【0015】
ローゴム層10には、複数のメタルドーム3に対向する複数のクリック部11が配列形成されるとともに、隣接するクリック部11とクリック部11との間に位置する複数の干渉規制壁12が上方向に向けて突出形成され、この複数の干渉規制壁12が各クリック部11を包囲して隣接する他のクリック部11に対する誤操作を防止するよう機能する。
【0016】
各クリック部11は、キートップ13方向に膨らむ中空錐台形に膨出形成され、平坦な表面には、押圧操作される光透過性のキートップ13が接着される。このクリック部11の平坦な内部裏面からは、メタルドーム3の表面に接離可能に対向する先細りのプッシャ14が下方向に向けて突出形成され、このプッシャ14がメタルドーム3を直接ON−OFF動作させる。
【0017】
キートップ13は、必要に応じ、図示しない可撓性のキートップ層の一部として形成されたり、あるいは小さな断面板形に形成され、干渉規制壁12により誤操作が防止される。このキートップ13は、所定の樹脂や金属を用いて形成され、表面に電話用の数字、文字、記号等からなる模様がスクリーン印刷される。
【0018】
複数の紫外線LED20は、図2に示すように、メタルドーム層2とローゴム層10との周縁隅部に少数個(例えば2、3個)配置され、ローゴム層10の周面に近接してその内部XY方向に可視光に近い不可視光の近紫外線(波長380〜200nm)を照射するよう機能する。
【0019】
蛍光拡散発光模様30は、同図に示すように、ローゴム層10の各クリック部11とキートップ13の間、換言すれば、各クリック部11の表面に紫外線感度の高い蛍光塗料を用いたスクリーン印刷法によりドット印刷され、複数の紫外線LED20から各クリック部11に近紫外線が入射・伝送されることにより蛍光励起・発光し、キートップ13の表面に向けて顕現作用の可視光を拡散照射するよう機能する。
【0020】
上記構成において、携帯電話1の送受信機能を利用する場合に複数の紫外線LED20が発光すると、紫外線LED20の近紫外線は、ローゴム層10の周面から内部XY方向に入射して導光・伝送され、各クリック部11の蛍光拡散発光模様30を励起して可視光を拡散発光させ、キートップ13を照明する。こうしてキートップ13が発光し、押圧操作されると、ローゴム層10のクリック部11が下降して対向するメタルドーム層2のメタルドーム3を直接押圧操作し、このメタルドーム3の押圧操作により、携帯電話1の所定の機能が実行される。
【0021】
上記構成によれば、紫外線光の透過率に優れるシリコーンゴム製のローゴム層10と紫外線とを組み合わせ、蛍光拡散発光模様30を励起してクリック部11から可視光を発光させるので、クリック部11やキートップ13以外からの光漏れをきわめて有効に抑制防止することができ、携帯電話1等の意匠性、審美性、演色性、操作性を著しく向上させることができる。また、ローゴム層10の周縁隅部に紫外線LED20が位置するので、キースイッチ構造体の薄化を図ることができる。したがって、近年の携帯電話1等に対する薄型化、小型化、軽量化の要求実現に資することができる。
【0022】
また、クリック部11のプッシャ14がメタルドーム3をシート等を介し間接的にON−OFF動作させるのではなく、直接的にON−OFF動作させるので、違和感のない良好なクリック感を得ることが可能になる。さらに、クリック部11の表面に蛍光拡散発光模様30をスクリーン印刷法により印刷するので、様々な種類の蛍光塗料を用いることが可能となる。
【0023】
なお、上記実施形態における紫外線LED20の近紫外線には、UV‐A、UV‐B、UV‐Cの種類があるが、特に問題が生じなければ、いずれを選択しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るキースイッチ構造体の実施形態における携帯電話とそのキースイッチを模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係るキースイッチ構造体の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 携帯電話
2 メタルドーム層(接点層)
3 メタルドーム(接点部)
10 ローゴム層(キーマット層)
11 クリック部
13 キートップ
20 紫外線LED
30 蛍光拡散発光模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点層と弾性のキーマット層とを対向させ、このキーマット層に、接点層の接点部を動作させるクリック部を形成してその表面には透過性のキートップを重ね設けたキースイッチ構造体であって、
キーマット層を導光性のシリコーンゴムにより形成してその周面を紫外線LEDと対向させ、キーマット層のクリック部とキートップとの間に、紫外線LEDからクリック部への紫外線の伝送により、キートップに向けて可視光を拡散照射する蛍光拡散発光模様を形成したことを特徴とするキースイッチ構造体。
【請求項2】
蛍光拡散発光模様を、クリック部の表面に蛍光塗料をスクリーン印刷することにより形成した請求項1記載のキースイッチ構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−49812(P2010−49812A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210364(P2008−210364)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】