説明

キースイッチ装置

【課題】リンク部材等の内部構造体が操作者の視認性に影響を及ぼさない構造を備えたキースイッチ装置を提供する。
【解決手段】保持パネル12及びメンブレンシート20は、キースイッチ装置10が組み立てられたときに各LED32がキートップ14を照明できるようにするために、少なくとも1つの抜き穴34、36をそれぞれ有する。キーキャップ16はキートップ14の上面40を覆うように構成され、さらにキーキャップ16の下面42はキートップ14の上面40に密着せずに互いに離れており、キーキャップ16の下面42とキートップ14の上面40との間に空間44が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキースイッチ装置に関し、特には各種の電子機器への入力操作に使用される、照光機能付きのキースイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照光機能を備えたキースイッチ装置(いわゆる照光スイッチ)では、その上にラバーシートを被せた構造が用いられており、この構造においてはキースイッチ装置のキートップのぐらつきや、キートップの隅を押下した際の操作性に対する改善が望まれている。
【0003】
キートップを押下したときに得られる感触等の、キースイッチ装置の操作性を高める1つの手段として、ギヤリンク方式のキースイッチ装置が挙げられる。例えば特許文献1には、一対のリンク部材16を備えたギヤリンク形式のキースイッチ装置80において、キートップ86の記号領域84を透過する光Lを放射する発光部88を設けた構成が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、表面に凹凸を形成した光透過性のメンブレンシート16及びバックプレート17の下部にLED20を設けた構造が開示されており、ここでは「バックプレート17およびメンブレンシート16を光が通過する際に拡散され、キートップ11の下部に配設されたリンク部材等をすり抜けてキートップ11の抜き文字部11cを照光する」とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−21427号公報
【特許文献2】特開2007−280810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LED等の光源をキースイッチ装置の下部に設けてキートップを照明する構造では、キートップを支持するリンク部材等の内部構造体の影がキートップに投影されてしまい、キートップに印刷された文字等が読み難くなる等、照明されたキートップの視認性を損ねる場合がある。特許文献2のようにメンブレンシートによって光を拡散させることによりある程度の改善は見込まれるが、内部構造体の影が操作者に視認されることを確実に防止することは難しい。
【0007】
一方、内部構造体を全て透光性の部材で構成すれば、該内部構造体の影がキートップに投影されることはかなり改善されるが、リンク部材等の機能上、金属等の非透光性部材の使用が必要とされる場合もあり、そのような場合に従来の構造でキートップへの内部構造体の影の投影を防止することは困難であった。
【0008】
そこで本発明は、リンク部材等の内部構造体が操作者の視認性に影響を及ぼさない構造を備えたキースイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、保持パネルと、該保持パネルの上方に配置された透明又は半透明のキートップと、該キートップを該保持パネルの上方で昇降方向へ案内支持する支持部材と、前記キートップの昇降動作に応じて接点が開閉する電気回路を備えたメンブレンシートと、前記キートップに押されて前記メンブレンシートの電気回路の接点を閉じるように作用する作動部材とを有するキースイッチ装置であって、前記保持パネルの下面に配置された基板と、該基板に配置された少なくとも1つの発光体と、前記キートップの上方に配置された透明又は半透明のキーキャップとをさらに有し、前記保持パネル及び前記メンブレンシートは、前記発光体の各々が前記キートップを照明できるようにするために少なくとも1つの抜き穴又は切り欠きをそれぞれ有し、前記キーキャップは前記キートップの上面を覆うように構成され、かつ前記キーキャップの下面と前記キートップの上面との間に空間が形成される、キースイッチ装置を提供する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキースイッチ装置において、前記キーキャップの上面が乳白色を呈する、キースイッチ装置を提供する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のキースイッチ装置において、前記キートップの上面が乳白色を呈するキースイッチ装置を提供する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキースイッチ装置において、前記支持部材が透明又は半透明の部材から構成される、キースイッチ装置を提供する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキースイッチ装置において、前記少なくとも1つの発光体の各々は、その側面が発光するように構成されるとともに、該側面が前記キースイッチ装置の略中心に向かうように前記基板上に配置される、キースイッチ装置を提供する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキースイッチ装置において、前記基板に開口部が形成され、前記少なくとも1つの発光体は該開口部から前記キースイッチ装置内を照明できるように前記基板の下面側に設けられる、キースイッチ装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、キーキャップとキートップとの間に空間を設けることにより、発光体からの光を該空間内で拡散させて、キーキャップ上面への内部構造体の投影を防止することができる。
【0016】
キートップの上面及びキーキャップの上面の少なくとも一方を乳白色とすることにより、発光体からの光の直接的な導光を抑制し、キーキャップ上面への内部構造体の投影をさらに効率的に防止できる。
【0017】
支持部材等の内部構造体を透明又は半透明の部材から構成することにより、キーキャップ上面への内部構造体の投影をさらに効率的に防止できる。
【0018】
側面が発光するいわゆるサイドビュータイプの発光体を、キースイッチ装置の略中心すなわち内部構造体が存在する領域を照光するように構成することにより、該内部構造体の影がキートップにさらに形成され難くなる。
【0019】
発光体を基板の下面側に設けることにより、該発光体への電気配線等の他の電気部品も全て、制限の少ない基板の下面側に設けることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るキースイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】図1のキースイッチ装置の側断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るキースイッチ装置の側断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るキースイッチ装置の側断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るキースイッチ装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るキースイッチ装置10の分解斜視図である。キースイッチ装置10は、保持パネル12と、保持パネル12の上方に配置される透明又は半透明のキートップ14と、キートップ14の上方に配置された透明又は半透明のキーキャップ16と、互いに連動してキートップ14を保持パネル12の上方で昇降自在に支持する一対のリンク部材18と、キートップ14の昇降動作に応じて接点が開閉する電気回路を備えたメンブレンシート20と、キートップ14に押されてメンブレンシート20の電気回路の接点を閉じるように作用する作動部材22とを有する。本実施形態では、メンブレンシート20及び作動部材22が協働して、キートップ14の昇降動作に対応して電気回路の接点部を開閉するスイッチ機構を構成する。また保持パネル12は、例えば板金材料からなる独立した金属薄板のような平板状の剛性部材であり、メンブレンシート20を静止支持する上面24と、一対のリンク部材18を摺動自在に支持するスライド案内部26を有する。
【0022】
なお本実施形態では、キースイッチ装置の各構成要素について図1の上方向に面する側を上面側と称し、図1の下方向に面する側を下面側と称するものとする。
【0023】
本実施形態では、一対のリンク部材18としてギヤリンク形式のリンク部材が使用され、作動部材22としてメンブレンシート20とは別部品であるラバードームが使用されている。一対のリンク部材18は、互いに同一の形状及び寸法を有し、それらの一端で互いに歯車状に連結されて側面視逆V字形態を呈するように組み合わされる。一対のリンク部材18により、キートップ14は水平姿勢を維持しつつ上下動可能となる。またラバードーム22は、その下端が接着剤によりメンブレンシート20の表面に接着される。但し、リンク部材18はギヤリンク形式に限定されるものではなく、例えばパンタグラフ形式でもよい。また作動部材22も上述のものに限定されるものではなく、例えばメンブレンシート20の略中央に開口部を形成し、該開口部を画定する開口端に係合する構成のものとしてもよい。
【0024】
またキースイッチ装置10は、保持パネル12の下面(キートップ14と反対側の面)28に対向配置される基板30を備え、基板30には少なくとも1つ(図示例では8つ)の発光体(図示例ではLED)32が配置される。保持パネル12及びメンブレンシート20は、キースイッチ装置10が組み立てられたときに各LED32がキートップ14を照明できるようにするために、少なくとも1つ(図示例では4つ)の抜き穴又は切り欠き34、36をそれぞれ有する。或いは抜き穴又は切り欠きの代わりに、光を透過する材料を該抜き穴又は切り欠きの箇所に設けてもよい。各LED32は、その上面(キートップ14に面する側)が発光するように構成されており、LED32からの光はキートップ14を照明し、さらにキーキャップ16を照明する。
【0025】
図2は、図1のキースイッチ装置10の側断面図であるが、キースイッチ装置10が収容される筐体38の一部をさらに図示している。図2に示すように、キーキャップ16はキートップ14の上面(天面)40を覆うように構成され、さらにキーキャップ16の内面(下面)42はキートップ14の上面40に密着せずに互いに離れており、キーキャップ16の下面42とキートップ14の上面40との間に空間44が形成される。空間44を形成することにより、LED32からの光によってギヤリンク18等の構成要素の影がキートップ14の上面40に映っていても、空間44内で光が拡散され、キーキャップ16の上面46にはその影は映らず、結果として作業者等にはその影は視認されない。従って本発明によれば、キーキャップ16上に文字や図形が印刷されている場合であっても、視認性に優れたキースイッチ装置が提供される。
【0026】
空間44の上下方向距離(キーキャップ16の内面42とキートップ14の上面40との離間距離)は、キースイッチ装置10の高さを抑制しつつ、LED32の光を好適に拡散できる距離に設定され、具体的には2.0mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm〜2.0mmであり、さらに好ましくは0.5mm〜1.0mmである。
【0027】
キーキャップ16の上面46での影の形成をより確実に防止するために、キーキャップ16の上面46を乳白色に着色するか、或いはキーキャップ16を乳白色の部材から構成し、キーキャップ16の上面46が乳白色を呈するようにすることが好ましいが、キーキャップ16の色彩はこれに限定されず、例えば透光性の有彩色としてもよい。しかし近年はLED自体に赤色、青色、黄色又は白色等の種々のものがあり、キーキャップ16の上面46が乳白色のような無彩色であれば、LEDの発光色をそのままキートップ(キーキャップ)の色彩として利用できる。付加的又は代替的に、キートップ14の上面40が乳白色を呈するようにしてもよい。付加的又は代替的に、キートップ14及びキーキャップ16の一方又は双方の上面を梨地状に加工してもよい。
【0028】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るキースイッチ装置10aの側断面図である。なお第1の実施形態と同等の構成要素については第1の実施形態と同じ参照符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0029】
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、基板30aにLED用の開口部48aが形成され、該開口部48aからキースイッチ装置10a内を照明できるようにLED32aが基板30aの下面50a側に設けられている点である。LED32aは、第1の実施形態におけるLED32のように上面が発光するタイプではなく、裏面(下面)が発光するいわゆるリバースタイプとして構成されている。基板30aの上面側は、ラバードーム22やリンク部材18等の他の構成要素の存在によって、基板30aへの電子部品の実装が制限される場合があるが、LED32aを基板30aの下面側に設けることにより、LED32aへの電気配線等の他の電気部品も全て、制限の少ない基板30aの下面50a側に設けることができる。
【0030】
図4は、本発明の第3の実施形態に係るキースイッチ装置10bの側断面図である。なお第1の実施形態と同等の構成要素については第1の実施形態と同じ参照符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0031】
第3の実施形態は、組立時における保持パネル12b及びメンブレンシート20の位置関係が、図3の第2の実施形態とは逆になっている。すなわち第3の実施形態では、図4に示すように、基板30の上にメンブレンシート20が配置され、メンブレンシート20の上に保持パネル12bが配置される。従って保持パネル12bは、ラバードーム22を挿通させるための開口部52bを略中央に有する。第3の実施形態では、開口部52bの大きさをラバードーム22の外形と略一致させることにより、保持パネル12bとメンブレンシート20との組立て(位置決め)精度を向上させることができる。なお第3の実施形態におけるLED32aは、第1の実施形態におけるLED32のように基板上に配置するタイプのものでもよい。
【0032】
図5は、本発明の第4の実施形態に係るキースイッチ装置10cの上面図であり、キートップ及びキーキャップは図示を省略している。なお第1の実施形態と同等の構成要素については第1の実施形態と同じ参照符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0033】
第4の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、基板30の上面側に配置されたLED32cの各々が、第1の実施形態におけるLED32のように上面が発光するタイプではなく、側面が発光するいわゆるサイドビュータイプとして構成されている点である。詳細には、図5に示すように、各LED32cは、その発光面54cがキースイッチ装置の略中心すなわちリンク部材18やラバードーム22等の構成要素が存在している領域に向かうように配置される。このようにLEDを配置すると、各LEDからの光は直接リンク部材18等の構成要素を横方向に照らすことになり、該構成要素の影がキートップに形成され難くなる。
【0034】
なお上記実施形態のいずれにおいても、キーキャップ上での影等の発生をより効率的に防止するために、リンク部材やラバードームを透明又は半透明の材料から形成してもよい。また上記実施形態では一対のリンク部材は側面視逆V字状に構成されているが、逆V字をV字に変更できる等、本発明の範囲内で種々の変更又は修正が可能であることは明らかであある。
【符号の説明】
【0035】
10 キースイッチ装置
12 保持パネル
14 キートップ
16 キーキャップ
18 リンク部材
20 メンブレンシート
22 作動部材/ラバードーム
30 基板
32 LED
34、36 抜き穴
44 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持パネルと、該保持パネルの上方に配置された透明又は半透明のキートップと、該キートップを該保持パネルの上方で昇降方向へ案内支持する支持部材と、前記キートップの昇降動作に応じて接点が開閉する電気回路を備えたメンブレンシートと、前記キートップに押されて前記メンブレンシートの電気回路の接点を閉じるように作用する作動部材とを有するキースイッチ装置であって、
前記保持パネルの下面に配置された基板と、該基板に配置された少なくとも1つの発光体と、前記キートップの上方に配置された透明又は半透明のキーキャップとをさらに有し、
前記保持パネル及び前記メンブレンシートは、前記発光体の各々が前記キートップを照明できるようにするために少なくとも1つの抜き穴又は切り欠きをそれぞれ有し、
前記キーキャップは前記キートップの上面を覆うように構成され、かつ前記キーキャップの下面と前記キートップの上面との間に空間が形成される、キースイッチ装置。
【請求項2】
前記キーキャップの上面が乳白色を呈する、請求項1に記載のキースイッチ装置。
【請求項3】
前記キートップの上面が乳白色を呈する、請求項1又は2に記載のキースイッチ装置。
【請求項4】
前記支持部材が透明又は半透明の部材から構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキースイッチ装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの発光体の各々は、その側面が発光するように構成されるとともに、該側面が前記キースイッチ装置の略中心に向かうように前記基板上に配置される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキースイッチ装置。
【請求項6】
前記基板に開口部が形成され、前記少なくとも1つの発光体は該開口部から前記キースイッチ装置内を照明できるように前記基板の下面側に設けられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキースイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−142230(P2012−142230A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−698(P2011−698)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】