説明

キーベース及びキーシート

【課題】本発明の目的は、キーベース本体が柔軟性及び弾性を有するシートを有する場合、かつ、押し子層を電磁波硬化性樹脂でこのキーベース本体の裏面にこのキーベース本体と一体的に形成した場合でも、製品として成り立つキーベース及びキーシートを提供する。
【解決手段】本発明に係るキーベースは、キーベース本体と、前記キーベース本体の裏面に形成した押し子層とを有するキーベースであって、前記キーベース本体は、柔軟性及び弾性を有する第一シートと、前記第一シートよりも硬質で、表面を前記第一シートの裏面に直接的に又は間接的に固着した第二シートとを有し前記押し子層は、電磁波硬化性樹脂で前記第二シートの裏面に前記第二シートと一体的に形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機(所謂PHSも含む)、携帯情報端末(PDA:personal digital assistance等)、携帯オーディオ、家電製品用リモートコントローラ、キーボードなどの電子機器に使用されるキーベース及びキーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、キーベース本体をウレタンシート又はPETフィルム(PETシート)で形成し、このキーベース本体にUV(紫外線)硬化性樹脂で突起部(押し子)を設ける技術が開示されている(特許文献1の明細書[0012]及び図5参照)。前記の押し子は、UV硬化性樹脂でキーベース本体の裏面にキーベース本体と一体的に形成したものである。
【0003】
【特許文献1】特開平6−5151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キーの押圧操作時の操作感の良さ等の観点から、キーベース本体は、弾性を有するシート、例えばポリウレタンシートで形成することが望ましい。しかし、キーベース本体をポリウレタンシートで形成し、押し子を有する押し子層をUV硬化性樹脂等の電磁波硬化性樹脂でこのポリウレタンシートの裏面にこのポリウレタンシートと一体的に形成してキーベースを形成すると、電磁波硬化性樹脂の硬化による収縮等の理由によって、このポリウレタンシートが大きく変形(例えばカール)してしまう。このため、キーベース及びキーシートの製品化が困難であった。これは、ポリウレタンシートが、柔軟性及び弾性を有するシートであることに起因する。なお、特許文献1のように、ポリウレタンシートの代わりにキーベース本体をPETシートで形成することも考えられる。しかし、PETシートは非弾性であり、キーベース本体をPETシートで形成した場合、ポリウレタンシートでキーベース本体を形成した場合に比べて、キーの押圧操作時の操作感等の点で劣る。このため、キーベース本体には、ポリウレタンシート等の柔軟性及び弾性を有するシートを用いたい。
【0005】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、キーベース本体が柔軟性及び弾性を有するシートを有する場合、かつ、押し子層を電磁波硬化性樹脂でこのキーベース本体の裏面にこのキーベース本体と一体的に形成した場合でも、製品として成り立つキーベース及びキーシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係るキーベースは、
キーベース本体と、前記キーベース本体の裏面に形成した押し子層とを有するキーベースであって、
前記キーベース本体は、柔軟性及び弾性を有する第一シートと、前記第一シートよりも硬質で、表面を前記第一シートの裏面に直接的に又は間接的に固着した第二シートとを有し、
前記押し子層は、電磁波硬化性樹脂で前記第二シートの裏面に前記第二シートと一体的に形成することを特徴とする。
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係るキーシートは、
キーベース本体と前記キーベース本体の裏面に形成した押し子層とを有するキーベースと、前記押し子層が有する押し子に対応して前記キーベースの表面に固着したキートップとを有するキーシートであって、
前記キーベース本体は、柔軟性及び弾性を有する第一シートと、前記第一シートよりも硬質で、表面を前記第一シートの裏面に直接的に又は間接的に固着した第二シートとを有し、
前記キートップは、前記第一シートの表面に固着し、
前記押し子層は、電磁波硬化性樹脂で前記第二シートの裏面に前記第二シートと一体的に形成することを特徴とする。
【0008】
また、上記キーベース又はキーシートにおいて、
前記第一シートは、前記押し子層の形成の際に、この第一シートが加熱される温度におけるこの第一シートの熱収縮率が前記押し子層の形成の際の電磁波硬化性樹脂の硬化における電磁波硬化性樹脂の収縮率と異なるシートであり、
前記第二シートは、前記加熱される温度で熱収縮しないシートであることを特徴とする。
【0009】
また、上記キーベース又はキーシートにおいて、
前記第二シートは、非弾性シートである。
【0010】
また、上記キーベース又はキーシートにおいて、
前記第一シートは、ポリウレタンシートであり、
前記第二シートは、PETシートである。
【0011】
また、上記キーベース又はキーシートにおいて、
前記電磁波硬化性樹脂は、UV硬化性樹脂である。
【0012】
また、上記キーベース又はキーシートにおいて、
前記第一シートは、キートップを固着するためのホットメルト層を略全面に有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るキーベース又はキーシートは、キーベース本体が柔軟性及び弾性を有するシートである第一シートを有していても、第二シートは第一シートよりも硬質であり、その第二シートに押し子層を形成するので、第一シートに押し子層を形成した場合に比べてキーベース本体の変形を軽減できる。つまり、上記キーシート又はキーベースは、第一シートと押し子層との間に第二シートを介在させることにより、キーベース本体が柔軟性及び弾性を有するシートを有する場合、かつ、押し子層を電磁波硬化性樹脂でこのキーベース本体の裏面にこのキーベース本体と一体的に形成した場合でも、製品として成り立つキーベース及びキーシートとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。なお、図面において同様のものや対応するもの、総称できるものについては同じ符号を付して説明する。また、図面において同様のものや対応するもの、総称できるものが複数ある場合、その一部についてのみ符号を付した。
【0015】
図1は、本発明の一例に係るキーシートを分解した各部材と、このキーシートを配置する基板とを示す斜視図である。図2は、本発明の一例に係るキーシートの表面側の斜視図である。図3は、本発明の一例に係るキーシートの裏面側の斜視図である。図4は、本発明の一例に係るキーシートを基板に配置した状態におけるこのキーシート及び基板の拡大断面図である。
【0016】
キーシート1は、キートップ3と、カバー部材4と、キーベース10とを有する。キーシート1は基板6上に配置される。
【0017】
複数のキートップ3は、それぞれ、多方向(カーソル)キー、テンキー及び機能キー等のキーを構成する。キートップ3は、一以上あればよいが通常は複数となる。
【0018】
カバー部材4は、キーシート1全体を補強する、又は携帯電話機等の筐体を構成する等のために設ける。携帯電話機の筐体に設けた貫通孔からキートップ3を露出させる等の場合にはカバー部材4が不要の場合がある。キートップ3同士が非常に近接している所謂狭ピッチキーの場合にはカバー部材4が不要の場合がある。
【0019】
また、キートップ3と、カバー部材4とが、一体的になり一枚の板状部材として形成されることもある。この場合、板状部材の、数字、文字、記号又は絵柄等が表現された領域や、押し子21に対応する領域等をキートップとし、その他の領域をカバー部材とする。
【0020】
キートップ3及びカバー部材4は、各種合成樹脂(例えば硬質樹脂)、各種ガラス、又は金属等の適宜の材料によりそれぞれ形成される。各種合成樹脂又は各種ガラスは、基本的に透光性を有する材質によって形成される。硬質樹脂としては、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリカーボネイト系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等がある。また、キートップ3の表面及び又は裏面には、印刷、塗装等の適宜な方法により数字、文字、記号又は絵柄等が1以上表現される。
【0021】
キートップ3及びカバー部材4は、キーベース10とは別に予め形成し、キーベース10の表面に固着する。キートップ3は、押し子層20が有する押し子21に対応してキーベース10の表面(キーベース本体11の表面(第一シート12の表面))に固着する。
【0022】
キーベース10は、キーベース本体11と押し子層20とを有する。キーベース本体11は、第一シート12と第二シート13とを有する。押し子層20は、押し子21と薄肉部22とを有する。
【0023】
第一シート12は、変形可能な弾性シートであり、柔軟性及び弾性を有するシート(例えば柔軟性を有する弾性フィルムシート)である。第二シート13は、第一シート12よりも硬質なシート(例えば第一シート12よりも硬質なフィルムシート)である。第二シート13は、第一シート12よりも硬質であれば、変形可能であったり、弾性を有していてもよい。
【0024】
第一シート12は、適宜、押し子層20の形成の際にこの第一シート12が加熱される温度におけるこの第一シート12の熱収縮率が、押し子層20の形成の際の電磁波硬化性樹脂の硬化における電磁波硬化性樹脂の収縮率と異なるシートであってもよい。第二シート13は、適宜、前記の加熱される温度で熱収縮しないシートであってもよい。
【0025】
第二シート13は、適宜、弾性を有さない非弾性シートであってもよい。
【0026】
第一シート12は、例えば、熱可塑性のポリウレタンシート(厚さの例:0.05mm程度)、シリコーンシート(厚さの例:0.05mm程度)等の一枚の弾性フィルムシートで形成する。第二シート13は、PETシート(厚さの例:0.025mm程度)等の一枚の非弾性フィルムシートで形成する。
【0027】
第一シート12は、仮に押し子層20を第一シート12の裏面にこの第一シート12と一体的に形成するために未硬化の電磁波硬化樹脂を第一シート12と接触させたまま硬化させた場合、変形してしまうシートである。また、第二シート13は、押し子層20を第二シート13の裏面にこの第二シート13と一体的に形成するために未硬化の電磁波硬化樹脂を第二シート13と接触させたまま硬化させた場合、上記第一シート12よりも変形しないシートである。
【0028】
第一シート12及び第二シート13は、それぞれ単一のシート(ここではフィルムシート)により構成されるが、それぞれ二以上のシート(特にフィルムシート)を積層した構造等の複数の部材により構成される構造でも良い。第一シート12及び第二シート13をそれぞれ単一のフィルムシートで構成することにより薄型化が実現される。
【0029】
第二シート13の表面と第一シート12の裏面とは、接着剤、粘着材等により形成される固着層40を用いて固着され、第二シート13と第一シート12とが貼り合わせられている。すなわち、第二シート13の表面と第一シート12の裏面との間に何らかの部材等を介在させないで、固着層40を用いて固着することにより、第二シート13の表面を第一シート12の裏面に直接的に固着している。この構造により、キーベース本体11の薄型化が可能になる。キーベース本体11は、固着層40を有する。また、第二シート13の表面と第一シート12の裏面との間に何らかの部材等を介在させないで、両者を熱融着等の適宜な手段によって直接的に固着してもよい。この場合、キーベース本体11をより薄くすることが可能になる。また、第二シート13の表面と第一シート12の裏面との間に何らかの部材、層等を介在させて固着層等により、第二シート13と第一シート12とを固着しても良い。すなわち、第二シート13の表面を第一シート12の裏面に間接的に固着してもよい。第二シート13の表面と第一シート12の裏面との直接的又は間接的な固着は、押し子層20の形成前に行われる。
【0030】
なお、第一シート12及び又は第二シート13を構成するシート(特にポリウレタンシート)等の部材は、適宜加工される。例えば、この部材には塗装や印刷等により加飾層(例えば遮光層等)が形成される。この場合、この部材は形成された加飾層等を適宜有することになる。また、第一シート12及び又は第二シート13を構成するシート(特にPETシート)等の部材に、各種処理(プライマー処理)等を適宜行う。特に、第一シート12をポリウレタンシートで形成し、第二シート13をPETシートで形成し、第二シート13の表面と第一シート12の裏面とを貼り合わす場合には、PETシートの表面にプライマー処理を施すと良い。
【0031】
第一シート12は、キートップ3及びカバー部材4を固着するためのホットメルト層41を略全面(全面を含む表現である)、特に表面側略全面に有する。例えば、第一シート12を構成する後述のポリウレタンシートは、その表面全面にホットメルト層41を有し、このホットメルト層41の上に遮光層をさらに有する。このホットメルト層41によりキートップ3やカバー部材4が固着される。
【0032】
押し子層20をキーベース本体11の裏面に形成する。具体的には、押し子層20は、電磁波硬化性樹脂で第二シート13の裏面に第二シート13と一体的に形成する。押し子層20の材料は電磁波硬化性樹脂である。電磁波硬化性樹脂で第二シート13の裏面に第二シート13と一体的に形成するとは、押し子21を形成する際の電磁波硬化性樹脂の硬化で押し子21を形成しつつ、この硬化による融着で第二シートの裏面に押し子層20を固着することを意味する。すなわち、一体的に形成するとは、押し子層20を接着剤や粘着材等の固着材料を用いずに第二シート13等の部材に固着して形成することをいう。
【0033】
電磁波硬化性樹脂としては、例えば可視光硬化性樹脂又はUV硬化性樹脂等がある。電磁波硬化性樹脂は、特に押し子21の硬度等の観点からUV硬化性樹脂が望ましい。電磁波硬化性樹脂をUV硬化性樹脂としたキーベース又はキーシートは優れたものとなる。UV硬化性樹脂としては、アクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系等がある。
【0034】
従来は、キーベース本体をポリウレタンシートで形成した場合、押し子を備えかつシリコーンゴムで形成したシート状部材をポリウレタンシートの裏面に固着して、キーベースを形成していた。しかし、シリコーンゴムで形成したシート状部材は、シリコーンゴムの流動性、強度等の理由から薄型化には限界があった。しかし、キーベース10及びキーシート1では、電磁波硬化性樹脂で押し子21を形成するために、このような限界が無くなる。
【0035】
薄肉部22は押し子層20の形成の際に押し子21と一緒に形成されるものである。なお、押し子21の高さ(薄肉部22の下面から押し子21の頂部までの高さ)又は後述のスペーサ75の高さ(薄肉部22の下面から後述する基板6の表面までの高さ)は、押し子21が後述するスイッチ部を押圧して作動させるための最低限の高さ(押し子21の高さで例えば0.2mm)をそれぞれ必要とする。このため、押し子層20の薄型化は、薄肉部22をどれだけ薄く出来るかに依存する。
【0036】
ここで、図5は、本発明の他の一例に係るキーシートを基板に配置した状態におけるこのキーシート及び基板の拡大断面図である。
【0037】
図5では、薄肉部22が形成されていない。このように、押し子層20が薄肉部22を有さない場合もある。この場合に、最も押し子層20を薄く出来、キーシート1やキーベース10を薄く出来る。なお、薄肉部22が形成されない場合、一以上の押し子21のみを「押し子層」20と表現する。
【0038】
図1乃至図4に戻る。押し子層20の形成は、成形型や治具等を用いた方法、又はポッティング(特に図5の場合)等の適宜の方法で行う。例えば後述の方法により、押し子層20を電磁波硬化性樹脂で第二シート13の裏面に第二シート13と一体的に形成する。
【0039】
基板6は、基材61に実装した電子素子(図示せず)、回路(図示せず)、及びスイッチ部62等の構成要素を有する。
【0040】
スイッチ部62は、メタルドーム又はポリドーム等の変形体と、基材61に形成された二つの短絡用接点(図示せず)とにより構成される。また、フィルム63(図1の点線で示したもので、図4及び図5では図示せず。)等の固定部材により変形体は固定される。フィルム63はPETやポリカーボネイト系樹脂等により形成される。
【0041】
キートップ3と、押し子21と、スイッチ部62とはそれぞれ対応して位置する。キートップ3の押下に伴い押し子21が下方に移動し、この押し子21が変形体を押圧する。押圧された変形体は、変形してクリック感を発生させるとともに、二つの短絡用接点に接触して二つの短絡用接点を短絡させる。
【0042】
なお、押し子21の周囲にキートップ3の移動による周囲のキートップ3への影響を防止するためのスペーサ75をキーシート1及び基板6の間に適宜配置する。スペーサ75は、押し子層20と同様にキーベース本体11と一体に形成しても良いし、又は、別部材として形成されたものをキーシート1と基板6との間に配置しても良い。スペーサ75をキーベース本体11と一体に形成する場合、例えば押し子層20と同一の材料で同時に形成する。この場合、押し子層20はスペーサ75を備える。
【0043】
なお、第一シート12及び又は第二シート13の厚さを厚くして第一シート12及び又は第二シート13を所定の光源からの光の導光体(所謂ライトガイド)として利用しても良い。
【0044】
第一シート12を一のポリウレタンシート(厚さ0.05mm)で形成し、第二シート13を一のPETシート(厚さ0.025mm)で形成し、固着層40の厚さを0.025mmとし、押し子層20の厚さを0.22mm(薄肉部22の厚さは0.02mmで、押し子21の高さは0.2mmである。)とした場合、キーベース10の総厚は、0.32mmとなる。
【0045】
図6は、本発明の一例に係るキーシートを携帯電話機に組み込んだ際の携帯電話の図である。
【0046】
図6のようにカバー部材4は携帯電話150の筐体と一体的になる。
【0047】
図7は、本発明の一例に係るキーベースの形成方法の手順及び各手順の概略を説明する説明図である。
【0048】
所望の位置に凹部101aaを有する成形型101aに電磁波硬化性樹脂80を供給する(S701)。
【0049】
電磁波硬化性樹脂80を供給するのは、例えばディスペンサ(液体供給装置)を用い、その吐出ノズル110から電磁波硬化性樹脂80を吐出させて供給する。
【0050】
成形型101aは、所望の位置に押し子21を設けるための所定形状の凹部101aaを一以上(通常は複数)有する。また、スペーサ75も一体的に形成するとすると、成形型101aは、所望の位置にスペーサを設けるための所定形状の図示しない凹部を一以上(通常は複数)有する。
【0051】
凹部101aaや図示しない凹部のみを満たすように、ディスペンサ等により電磁波硬化性樹脂80を凹部101aaや図示しない凹部個々に滴下しても良い。この場合、薄肉部22が形成されなくなる。
【0052】
成形型101aに供給された電磁波硬化性樹脂80を平坦化する(S702)。
【0053】
図7のように、スキージ111を電磁波硬化性樹脂80上で走らせる。なお、この時点で、凹部101aaや図示しない凹部に溜まった電磁波硬化性樹脂80以外の電磁波硬化性樹脂80をスキージ111で全て取り除けば、薄肉部22が形成されなくなる。また、全て取り除かなくても、この時点で余分な電磁波硬化性樹脂80を取り除くことが出来、薄肉部22を薄くできる。なお、スキージ111はドクターブレード又はローラー等の電磁波硬化性樹脂80を平らにするものに適宜変更可能である。
【0054】
電磁波硬化性樹脂80を供給した成形型101aにキーベース本体11をキーベース本体11の裏面が下になるように供給する(S703)。
【0055】
電磁波硬化性樹脂80を硬化させる前又は間において電磁波硬化性樹脂80及びキーベース本体11をキーベース本体11の厚さ方向から加圧するとともに電磁波硬化性樹脂80を硬化させる(S704)。
【0056】
また、電磁波硬化性樹脂80を硬化させる前に、未硬化の電磁波硬化性樹脂80の粘性を下げて、電磁波硬化性樹脂80の硬化における気泡の発生を防止するために、電磁波硬化性樹脂80を低温(電磁波硬化性樹脂がUV硬化性樹脂の場合は例えば約80℃)で加熱してもよい。この場合、加熱した電磁波硬化性樹脂に接触するキーベース本体11も加熱される。さらに、キーベース本体11の供給時には、キーベース本体11のたわみを防止して、押し子層20を形成しやすくするためにキーベース本体11を両側から引っ張ることもある。
【0057】
成形型101a及び成形型101bにより、電磁波硬化性樹脂80及びキーベース本体11を厚さ方向から加圧する。この加圧により、余計な電磁波硬化性樹脂80を成形型101aと成形型101bの間からあふれさせることが出来、薄肉部22を薄くできる。加圧の圧力が高ければ、より薄肉部22を薄くできる。
【0058】
さらに、加圧後に、電磁波硬化性樹脂80を硬化させる。例えば成形型101aの上面及び又は成形型101bの下面をガラス等にし、このガラスの下側又は上側に電磁波発生装置(電磁波硬化性樹脂80がUV硬化性樹脂の場合はUVランプ)を設け、電磁波硬化性樹脂80に電磁波(電磁波硬化性樹脂80がUV硬化性樹脂の場合は紫外線)を照射し、この電磁波硬化性樹脂80を硬化させる。加圧中に、電磁波硬化性樹脂80に電磁波を照射し、この電磁波硬化性樹脂80を硬化させてもよい。なお、電磁波硬化性樹脂80の種類によっては加圧することにより材料の硬化(硬化反応)が阻害される恐れがあるので、材料によっては、加圧後に材料を硬化させる場合がある。
【0059】
電磁波硬化性樹脂80が硬化すると、凹部101aa内の電磁波硬化性樹脂80が押し子21となる。また、その他の電磁波硬化性樹脂80が薄肉部22となる。また、電磁波硬化性樹脂80が硬化する際に電磁波硬化性樹脂80はキーベース本体11(第二シート13)と一体化する。電磁波硬化性樹脂の硬化の際には、電磁波硬化性樹脂の硬化による収縮がおこる。この収縮に伴ってキーベース本体11が影響を受ける場合がある。キーベース本体11が第一シート12のみで形成された場合には、この収縮に伴ってキーベース本体11が大きく変形してしまう場合もある。
【0060】
電磁波硬化性樹脂80が硬化後、キーベース1を取り出してキーベース1が完成する(S705)
【0061】
電磁波硬化性樹脂80が硬化すると、押し子層20は、電磁波硬化性樹脂80で第二シート13の裏面に第二シート13と一体的に形成される。
【0062】
押し子層20に電磁波硬化性樹脂80を用いると、押し子層20の形成において、加熱が不要になる又は加熱しても低温の加熱でよいため、キーベース本体11の第一シート12(特にポリウレタンシート)及び又は第二シート13に悪影響を及ぼさなくなる。また、第一シート12にホットメルト層40が予め設けてある場合、ホットメルト層40の変質を防ぐことが出来る。
【0063】
なお、第一シート12は柔軟性及び弾性を有するシートであり、第二シート13は第一シート12よりも硬質なシートである。キーシート1又はキーベース10では、第一シート12よりも硬質である第二シート13に押し子層20を形成するので、第一シート12に押し子層20を一体的に形成した場合に比べ、押し子層20の形成の際の電磁波硬化性樹脂の硬化による収縮に伴うキーベース本体11の変形を軽減できる。つまり、第一シート12と押し子層20との間に第二シート13を介在させることにより、キーベース本体11が柔軟性及び弾性を有するシートを有する場合、かつ、押し子層20を電磁波硬化性樹脂でこのキーベース本体11の裏面にこのキーベース本体11と一体的に形成した場合でも、キーシート1又はキーベース10は、製品として成り立つキーベース及びキーシートとなる。
【0064】
また、押し子層20を電磁波硬化性樹脂でこのキーベース本体11の裏面にこのキーベース本体11と一体的に形成するときに、未硬化の電磁波硬化性樹脂の粘性を下げて、電磁波硬化性樹脂の硬化の際の気泡の発生を防止するために、電磁波硬化性樹脂を低温(電磁波硬化性樹脂がUV硬化樹脂の場合は例えば約80℃)で加熱する場合、加熱した電磁波硬化性樹脂に接触するキーベース本体11も加熱される。この押し子層20の形成の際に、第一シート12のみでキーベース本体11を構成すると第一シート12は加熱され熱収縮する。また、この押し子層20の形成の際に、電磁波硬化性樹脂も硬化によって収縮する。このとき、第一シート12の熱収縮率(押し子層20の形成の際にこの第一シート12が加熱される温度におけるこの第一シート12の熱収縮率)と、電磁波硬化性樹脂の硬化の際の収縮率(押し子層20の形成の際の電磁波硬化性樹脂の硬化における電磁波硬化性樹脂の収縮率)とが異なるのでキーベース10が変形してしまう。第二シート13が前記の加熱される温度で熱収縮しないシートである場合、この第二シート13は前記加熱される温度では変形しないので、この第二シートの存在により、キーシート1又はキーベース10は、製品として成り立つキーベース及びキーシートとなる。
【0065】
なお、「熱収縮しない」とは、全く熱収縮しない場合はもちろんのこと、収縮の度合いが無視できるほど微量に収縮する場合も含む表現である。
【0066】
また、押し子層20を電磁波硬化性樹脂でこのキーベース本体11の裏面にこのキーベース本体11と一体的に形成するときに、キーベース本体11のたわみを防止して、押し子層20を形成しやすくするためにキーベース本体11を両側から引っ張ることもある。この場合、第一シート12のみでキーベース本体11を構成すると、第一シート12が弾性を有する場合に、キーベース本体11が引っ張られることによりキーベース本体11は伸張し、押し子層20の形成後にキーベース本体11は収縮する。このキーベース本体11の収縮によりキーベース10の変形が起こる場合も考えられる。第一シート12が弾性シートであっても、第二シート13が非弾性シートである場合には、この伸張及び収縮を抑えられるので、キーシート1又はキーベース10は、製品として成り立つキーベース及びキーシートとなる。また、第一シート12は弾性を有し、第二シート13が非弾性である場合、非弾性シートでキーベース本体11を形成した場合の操作感の悪さを第一シート12の有する弾性で補うことが出来る。
【0067】
これまで説明した通り、キーベース本体11が第一シート12及び第二シート13を有するキーベース10及びキーシート1では、第一シート12の欠点を第二シート13で補うことが出来、第二シート13の欠点を第一シート12で補うことが出来る。
【0068】
また、第一シート12は、ポリウレタンシートで形成し、第二シート13は、PETシートで形成し、電磁波硬化性樹脂をUV硬化性樹脂にすることが望ましい。
【0069】
ポリウレタンシートは、相性の良い(固着し易い)接着剤、粘着材等の固着材料が多い。このため、第一シート12がポリウレタンシートであると、この相性のよい固着材料を用いたホットメルト層等の固着層を用いてキートップ3及びカバー部材4をこのポリウレタンシートに固着できるのでキートップ3(特にポリカーボネイト系樹脂製)及びカバー部材4(特にポリカーボネイト系樹脂製)をキーベースの表面に強固に固着することができる。また、ポリウレタンシートは、相性がよいインク等の材料も多く、印刷等でこのポリウレタンシートの表面に加飾層(例えば遮光層等)を形成する等の加工がし易い。このように、ポリウレタンシートはキーベース10の構成要素とした場合に多くの利点を有する。このため、ポリウレタンシートは第一シート12として好ましいと考えられる。
【0070】
PETシートは、ポリウレタンシートに比べて上記のような加工がしにくい。また、PETシートは、PETシートと相性のよい固着材料が無いか少ないことや、PETシート自体の性質等により、PETシートとキートップとの固着強度は、ポリウレタンシートとキートップとの固着強度に比べて劣る。しかし、PETシートは、ポリウレタンシートよりも硬質である、押し子層20の形成の際に加熱される温度で熱収縮しない(収縮率が小さい)、及び非弾性等の性質を有するので、押し子層20をUV硬化性樹脂でPETシートの裏面にPETシートと一体的に形成した場合でも、ウレタンシートに形成した場合に比べて、キーベース10の変形を軽減することができる。このため、第二シート13としてPETシートは好ましい。
【0071】
上記のように、第一シート12は、ポリウレタンシートで形成し、第二シート13は、PETシートで形成し、電磁波硬化性樹脂をUV硬化性樹脂にするキーベース10又はキーシート1は、ポリウレタンシートの欠点をPETシートで補い、PETシートの欠点をポリウレタンシートで補うことが出来る。すなわち、このキーベース10又はキーシート1は、キーベース本体11がポリウレタンシートを有する場合、かつ、押し子層20をUV硬化性樹脂でこのキーベース本体11の裏面にこのキーベース本体11と一体的に形成した場合でも、製品として成り立ち、キートップ3をキーベースの表面に強固に固着することが出来、キーベース本体の表面の加工がし易く、薄型化が可能で、さらに硬度等の好ましい押し子21を得られる等の利点を備えた極めて優れたキーベース10又はキーシート1となる。
【0072】
また、第一シート12は、キートップ3やカバー部材4を固着するためのホットメルト層41を略全面に有することにより、キートップ3やカバー部材4の裏面全面を第一シートの表面に固着することが出来、キートップ3やカバー部材4と第一シート12の間に隙間が生じない(キートップ3やカバー部材4の裏面全体を第一シート12に接着することができる)ため、この隙間からキートップ3やカバー部材4が剥がれてしまう事を防ぐことが出来る。また、表面全面にホットメルト層41が形成された柔軟性を有するシート(例えば、ホットメルト層41が設けられた後述のポリウレタンシート)が市販されており、これを用いればホットメルト層41の形成行程を省略することが出来る。また、第一シート12側にホットメルト層41を形成することにより、カバー部材4の固着を粘着材などを用いてする必要がないので、キーシート1の形成が容易になる。また、キートップ3やカバー部材4の裏面にホットメルト層を形成する場合、キートップ3やカバー部材4各々にホットメルト層を形成する必要があるので、ホットメルト層の形成工程が煩雑化する。しかし、第一シート12側にホットメルト層41を形成することにより、又は表面全面にホットメルト層41が形成された柔軟性を有するシートを用いることにより、ホットメルト層の形成工程を簡易化又は省略ができる。
【0073】
本発明に係るキーシートは、上記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記の実施形態に適宜変更を加えることが出来るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明の一例に係るキーシートを分解した各部材と、このキーシートを配置する基板とを示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一例に係るキーシートの表面側の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一例に係るキーシートの裏面側の斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一例に係るキーシートを基板に配置した状態におけるこのキーシート及び基板の拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の一例に係るキーシートを基板に配置した状態におけるこのキーシート及び基板の拡大断面図である。
【図6】図6は、本発明の一例に係るキーシートを携帯電話機に組み込んだ際の携帯電話の図である。
【図7】図7は、本発明の一例に係るキーベースの形成方法の手順及び各手順の概略を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1 キーシート
3 キートップ
10 キーベース
11 キーベース本体
12 第一シート
13 第二シート
20 押し子層
21 押し子
41 ホットメルト層
80 電磁波硬化性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーベース本体と、前記キーベース本体の裏面に形成した押し子層とを有するキーベースであって、
前記キーベース本体は、柔軟性及び弾性を有する第一シートと、前記第一シートよりも硬質で、表面を前記第一シートの裏面に直接的に又は間接的に固着した第二シートとを有し、
前記押し子層は、電磁波硬化性樹脂で前記第二シートの裏面に前記第二シートと一体的に形成することを特徴とするキーベース。
【請求項2】
キーベース本体と前記キーベース本体の裏面に形成した押し子層とを有するキーベースと、前記押し子層が有する押し子に対応して前記キーベースの表面に固着したキートップとを有するキーシートであって、
前記キーベース本体は、柔軟性及び弾性を有する第一シートと、前記第一シートよりも硬質で、表面を前記第一シートの裏面に直接的に又は間接的に固着した第二シートとを有し、
前記キートップは、前記第一シートの表面に固着し、
前記押し子層は、電磁波硬化性樹脂で前記第二シートの裏面に前記第二シートと一体的に形成することを特徴とするキーシート。
【請求項3】
請求項1記載のキーベース又は請求項2記載のキーシートにおいて、
前記第一シートは、前記押し子層の形成の際にこの第一シートが加熱される温度におけるこの第一シートの熱収縮率が前記押し子層の形成の際の電磁波硬化性樹脂の硬化における電磁波硬化性樹脂の収縮率と異なるシートであり、
前記第二シートは、前記加熱される温度で熱収縮しないシートであることを特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか1項記載のキーベース又はキーシートにおいて、
前記第二シートは、非弾性シートであることを特徴とするもの。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項記載のキーベース又はキーシートにおいて、
前記第一シートは、ポリウレタンシートであり、
前記第二シートは、PETシートであることを特徴とするもの。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項記載のキーベース又はキーシートにおいて、
前記電磁波硬化性樹脂は、UV硬化性樹脂であることを特徴とするもの。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか1項記載のキーベース又はキーシートにおいて、
前記第一シートは、キートップを固着するためのホットメルト層を略全面に有することを特徴とするもの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−300153(P2008−300153A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144196(P2007−144196)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(390001487)サンアロー株式会社 (58)
【Fターム(参考)】