説明

キーボード装置及び該キーボード装置に用いられるキースイッチ装置

【課題】オペレータの操作によるキートップの動き方が人間の手の構造に対して自然なキーボード装置を提供する。
【解決手段】キーボード装置1は、キーボード本体部11と、所定数のメインキー12と、所定数のサブキー13とを有している。メインキー12は、キートップ文字又は記号が表示されている。サブキー13は、テンキー、シフト制御用キーなど、各メインキー12以外のキーである。各メインキー12及び各サブキー13がキーボード本体部11上に所定のキーボード配列に基づいて配置されている。各メインキー12は、右手及び左手の人差し指、中指、薬指、小指により操作されるため、操作者がメインキー12のキートップ12aを同操作者に対して奥から手前の限界位置まで引くことにより、ノンアクティブモードからアクティブモードとなるスライド型キースイッチ装置で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キーボード装置及び該キーボード装置に用いられるキースイッチ装置に係り、特に、操作者が手指で操作することによりコンピュータに文字や数字などを入力するための装置として用いられるキーボード装置及び該キーボード装置に用いられるキースイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
企業などでは、近年、オフィス・オートメーション化が進み、コンピュータを使用する機会が増え、キーボード装置を用いた入力処理時間が増大する傾向にある。これに起因して、コンピュータの操作者の腱鞘炎の増加が問題となっている。この問題を解決するために、操作者が長時間使用しても疲れにくく、腱鞘炎などを起こさないように、体への負担の軽減を目的としたキーボード装置が製作されている。その代表的なものとして、たとえば、マイクロソフト社のナチュラルキーボードや、アップル社のアジャスタブルキーボードなどがあるが、いずれも、キーの配置の工夫だけで問題を解決しようとするものであり、操作者の操作によるキートップの動き方が人間の手の構造に対して自然か否かということについては考慮されていない。
【0003】
すなわち、通常のキーボード装置の全てのキーは、キートップが押下されることでコンピュータにデータを入力するキースイッチで構成され、操作者は所要のキースイッチのキートップを押下してデータを入力する。ところが、人間の手の構造上、人差し指、中指、薬指、及び小指に関しては、キートップを指先で押下する動作よりも、指先で奥から手前へスライドさせる動作のほうが自然である。
【0004】
この種の関連技術としては、たとえば、特許文献1に記載された入力キーボードがある。
この入力キーボードでは、操作者側が高く、奥(コンピュータ側)が低くなるように傾斜が設定され、操作者がキーを押下することにより、入力操作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−304249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記関連技術では、次のような課題があった。
すなわち、人間の手の構造上、人差し指、中指、薬指、及び小指に関しては、キートップを指先で押下する動作よりも、指先で奥から手前へスライドさせる動作のほうが自然である。ところが、通常キーボード装置の全てのキーは、キートップを押下することでコンピュータにデータを入力するキースイッチ装置で構成され、操作者は所要のキースイッチ装置のキートップを押下してデータを入力しなければならない。このため、操作者の腱鞘炎が増加する状態が改善されないという課題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載された入力キーボードでは、入力操作の際、操作者の手首及び手先の負担が軽減されるが、押下されるキーが用いられているものであり、この発明とは構成が異なる。
【0008】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、操作者の操作によるキートップの動き方が人間の手の構造に対して自然なキーボード装置及び該キーボード装置に用いられるキースイッチ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、キーボード本体部と、キートップに文字又は記号が表示され、前記文字又は記号を入力するための所定数のメインキーと、前記各メインキー以外の所定数のサブキーとを有し、前記各メインキー及び各サブキーが前記キーボード本体部上に所定のキーボード配列に基づいて配置されているキーボード装置に係り、前記各メインキーは、操作者が前記キートップを奥から手前の限界位置まで引くことにより、ノンアクティブモードからアクティブモードとなるスライド型キースイッチ装置で構成されていることを特徴としている。
【0010】
この発明の第2の構成は、キーボード本体部と、キートップに文字又は記号が表示され、前記文字又は記号を入力するための所定数のメインキーと、前記各メインキー以外の所定数のサブキーとを有し、前記各メインキー及び各サブキーが前記キーボード本体部上に所定のキーボード配列に基づいて配置されているキーボード装置に用いられるキースイッチ装置に係り、前記各メインキーとして用いられ、前記操作者が前記キートップを奥から手前の限界位置まで引くことにより、ノンアクティブモードからアクティブモードとなるスライド型で構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明の構成によれば、操作者がコンピュータにデータを迅速に入力することができると共に、操作の際の手首への負担が軽減されるキーボード装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態であるキーボード装置の要部の構成を示す斜視図である。
【図2】図1中のメインキー12の例を示す斜視図である。
【図3】図2のA方向矢視断面、メインキー12の内部及び電気的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記各メインキーが、上記キートップに、文字及び記号、複数の文字、又は複数の記号が表示され、上記文字又は記号を、設定されているシフト制御モードに基づいて選択的に入力する構成とされ、上記各サブキーは、上記各メインキーに対して上記シフト制御モードを設定するためのシフト制御用キーを含む構成とされているキーボード装置を実現する。
【0014】
また、上記各メインキーは、上記キートップの奥から手前の方向の断面がほぼ鉤型(L字型)の形状とされ、かつ、手前から奥に向かって傾斜した形状とされている。また、上記各メインキーは、上記操作者が奥から手前の限界位置まで引いてから操作を解除したとき、当該メインキーを奥の位置に戻す付勢手段が設けられている。また、上記各メインキーは、当該メインキーの位置に応じてオン/オフ制御されるスイッチ手段が設けられている。
【実施形態】
【0015】
図1は、この発明の一実施形態であるキーボード装置の要部の構成を示す斜視図である。
この形態のキーボード装置1は、操作者が手指で操作することによりコンピュータに所要のデータを入力するためのものであり、同図に示すように、キーボード本体部11と、所定数のメインキー12と、所定数のサブキー13とを有している。メインキー12は、キートップ(キーの上面)に図示しない文字又は記号が表示され、表示されている文字又は記号を入力するためのものである。サブキー13は、テンキー、シフト制御用キーなど、各メインキー12以外のキーである。そして、各メインキー12及び各サブキー13がキーボード本体部11上に所定のキーボード配列(たとえば、標準的なJIS配列など)に基づいて配置されている。
【0016】
上記各メインキー12は、右手及び左手の人差し指、中指、薬指、小指により操作されるため、特に、この実施形態では、操作者がメインキー12のキートップ12aを同操作者に対して奥から手前の限界位置まで引くことにより、ノンアクティブモードからアクティブモード(すなわち、コンピュータにデータ入力するモード)となるスライド型キースイッチ装置で構成されている。また、サブキー13は、キートップを押下することによりコンピュータにデータを入力するキースイッチ装置で構成されている。
【0017】
図2は、図1中のメインキー12の例を示す斜視図である。
このメインキー12は、図2に示すように、キートップ12aの奥から手前の方向の断面がほぼ鉤型(L字型)の形状とされ、かつ、手前から奥に向かって傾斜した形状とされている。また、メインキー12は、キートップ12aに、複数の文字(たとえば、“T”及び“か”)が表示され、操作者がキートップ12aを奥から手前の限界位置まで引くことにより、表示されている文字を、設定されているシフト制御モードに基づいて選択的に入力する。また、図示しない他のメインキー12でも、同様に、キートップ12aに、文字及び記号、複数の文字、又は複数の記号が表示され、操作者がキートップ12aを引くことにより、表示されている文字又は記号を、設定されているシフト制御モードに基づいて選択的に入力する。この場合、各サブキー13には、各メインキー12に対して上記シフト制御モードを設定するためのシフト制御用キーが含まれている。
【0018】
図3は、図2のA方向矢視断面、メインキー12の内部及び電気的構成を示す図である。
このメインキー12は、図3に示すように、キートップ12aと、バネ12bと、磁性体12cと、リードスイッチ14と、抵抗15と、バッファ16とを有している。このメインキー12では、キートップ12aがバネ12bを介してキーボード本体部11に対向するように配置されている。バネ12bは、操作者がメインキー12を奥から手前のm方向の限界位置まで引いてから操作を解除したとき、同メインキー12を奥のn方向の初期の位置に戻す機能を有している。磁性体12cは、キートップ12aの底部に設けられている。
【0019】
リードスイッチ14は、接点14aと、接点14bと、磁性体14cとを有し、同磁性体14cが同接点14aと一体化されている。このため、リードスイッチ14は、メインキー12の位置に応じてオン/オフ制御される。すなわち、操作者がメインキー12を引いたとき、磁性体12cが磁性体14cの上に移動し、同磁性体12cと同磁性体14cとの引力により、接点14aと接点14bとがオン状態となる一方、メインキー12の操作を解除したとき、接点14aと接点14bとがオフ状態となる。また、接点14aは、電源電圧Vccに接続されている。抵抗15は、接点14bとグラウンドとの間に接続されている。また、接点14bにはバッファ16の入力側が接続され、同バッファ16の出力側には図示しない内部回路が接続されている。
【0020】
このキーボード装置では、操作者がメインキー12のキートップ12aを奥から手前の限界位置まで引くことにより、ノンアクティブモードからアクティブモードとなる。この場合、磁性体12cが磁性体14cに接近してリードスイッチ14の接点14aと接点14bとがオフ状態からオン状態となり、バッファ16の入力側が低レベル(“L”)から高レベル(“H”)に遷移し、同バッファ16の出力側が“L”から“H”に遷移する。また、操作者がメインキー12の操作を解除したとき、接点14aと接点14bとがオフ状態となり、バッファ16の入力側が“L”から“H”に遷移し、同バッファ16の出力側が“H”から“L”に遷移する。
【0021】
これにより、操作者は、指先でキートップを押下する操作よりも、人間の手の構造に対して自然な、指先でキートップ12aを奥から手前へスライドさせる操作を行うことにより、コンピュータにデータを迅速に入力することができると共に、操作の際の手首への負担が軽減される。また、キートップ12aの奥から手前の方向の断面がほぼL字型の形状とされ、かつ、手前から奥に向かって傾斜した形状とされているので、操作者は、視線を落とさずにキートップ12aの印字を目視することができ、印字の視認性が向上する。
【0022】
以上、この発明の実施形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、メインキー12の内部構成は、図3に示す構成に限定されず、操作者がキートップ12aをスライドすることが可能な構成であれば良い。また、バネ12b(付勢手段)の形状も、図3に示す構成に限定されない。また、リードスイッチ14(スイッチ手段)は、図3に示す構成に限定されず、メインキー12がノンアクティブモードのときに接点14aと接点14bとがオン状態となる一方、同メインキー12がアクティブモードになって磁性体12cが磁性体14cに接近したときに、接点14aと接点14bとがオフ状態に遷移する構成でも良い。また、スイッチ手段は、リードスイッチ14に限らず、メインキー12がノンアクティブモードからアクティブモードに遷移する動作を電気的に検出する機能を有するものであれば良く、たとえば、ホール素子、磁気抵抗素子、圧電素子、静電容量素子などでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、操作者が手指で操作することによりコンピュータに文字や数字などを入力するためのキーボード装置全般に適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 キーボード装置
11 キーボード本体部
12 メインキー
12a キートップ
12b バネ(付勢手段)
13 サブキー
14 リードスイッチ(スイッチ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーボード本体部と、
キートップに文字又は記号が表示され、前記文字又は記号を入力するための所定数のメインキーと、
前記各メインキー以外の所定数のサブキーとを有し、
前記各メインキー及び各サブキーが前記キーボード本体部上に所定のキーボード配列に基づいて配置されているキーボード装置であって、
前記各メインキーは、
操作者が前記キートップを奥から手前の限界位置まで引くことにより、ノンアクティブモードからアクティブモードとなるスライド型キースイッチ装置で構成されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項2】
前記各メインキーは、
前記キートップに、文字及び記号、複数の文字、又は複数の記号が表示され、前記文字又は記号を、設定されているシフト制御モードに基づいて選択的に入力する構成とされ、
前記各サブキーは、
前記各メインキーに対して前記シフト制御モードを設定するためのシフト制御用キーを含む構成とされていることを特徴とする請求項1記載のキーボード装置。
【請求項3】
前記各メインキーは、
前記キートップの奥から手前の方向の断面がほぼ鉤型の形状とされ、かつ、手前から奥に向かって傾斜した形状とされていることを特徴とする請求項1又は2記載のキーボード装置。
【請求項4】
前記各メインキーは、
前記操作者が奥から手前の限界位置まで引いてから操作を解除したとき、当該メインキーを奥の位置に戻す付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のキーボード装置。
【請求項5】
前記各メインキーは、
当該メインキーの位置に応じてオン/オフ制御されるスイッチ手段が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のキーボード装置。
【請求項6】
キーボード本体部と、
キートップに文字又は記号が表示され、前記文字又は記号を入力するための所定数のメインキーと、
前記各メインキー以外の所定数のサブキーとを有し、
前記各メインキー及び各サブキーが前記キーボード本体部上に所定のキーボード配列に基づいて配置されているキーボード装置に用いられるキースイッチ装置であって、
前記各メインキーとして用いられ、前記操作者が前記キートップを奥から手前の限界位置まで引くことにより、ノンアクティブモードからアクティブモードとなるスライド型で構成されていることを特徴とするキースイッチ装置。
【請求項7】
前記各メインキーは、
前記キートップに、文字及び記号、複数の文字、又は複数の記号が表示され、前記文字又は記号を、設定されているシフト制御モードに基づいて選択的に入力する構成とされ、
前記各サブキーは、
前記各メインキーに対して前記シフト制御モードを設定するためのシフト制御用キーを含む構成とされていることを特徴とする請求項6記載のキースイッチ装置。
【請求項8】
前記各メインキーは、
前記キートップの奥から手前の方向の断面がほぼ鉤型の形状とされ、かつ、手前から奥に向かって傾斜した形状とされていることを特徴とする請求項6又は7記載のキースイッチ装置。
【請求項9】
前記各メインキーは、
前記操作者が奥から手前の限界位置まで引いてから操作を解除したとき、当該メインキーを奥の位置に戻す付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項6、7又は8記載のキースイッチ装置。
【請求項10】
前記各メインキーは、
当該メインキーの位置に応じてオン/オフ制御されるスイッチ手段が設けられていることを特徴とする請求項6、7、8又は9記載のキースイッチ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−3562(P2012−3562A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138774(P2010−138774)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】