説明

ギヤおよびそのギヤを用いた画像形成装置

【課題】簡単な構成で,寸法精度の問題を生じることなく,ギヤを強化して回転ムラを排除したギヤおよびそのギヤを用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明のギヤは,円形のフランジ部13と,その外縁に環状に形成された歯元部10とを有しており,フランジ部13の側面には,歯元部15より内側に歯元部15に対して間隔を置いて環状に離散的に配置された第1凸部16の列と,第1凸部16の列より内側に第1凸部16の列に対して間隔を置いて環状に離散的に配置された第2凸部19の列とが形成されており,フランジ部13および歯元部15の材質よりも高硬度または高密度の材質の補強部材2が,第1凸部16の列と第2凸部19の列との間に,それらの列と列との間隔を押し広げながら保持されているものである。これを像担持体の駆動系等に用いたのが本発明の画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ギヤ歯により回転駆動の伝達を行うギヤに関する。さらに詳細には,高精度な回転速度の伝達が求められる画像形成装置等の精密機器に用いて好適なギヤに関する。さらには,そのギヤを駆動系に用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,種々の機械装置では回転駆動の伝達のためにギヤを用いている。画像形成装置のような精密機器もその例外ではない。画像形成装置の駆動系においては,回転ムラがあると画像の品質を著しく劣化させてしまうことになる。特に感光体等の像を担持する要素の駆動系においてこのことが重要である。このため駆動系のギヤにおいても,ギヤが回転ムラの原因となることがないように,種々の工夫がなされている。
【0003】
例えば特許文献1の技術では,ギヤに補強部材をネジ止めしている。これは,はす歯ギヤのスラスト力に起因する捩れを防止しようとするものである。捩れによる偏摩耗が回転ムラの一因となるからである。また,特許文献2の技術では,補強部材を駆動軸に圧入している。むろんこれは駆動軸部分を強化しようとするものである。これも,はす歯ギヤにおけるスラスト力に起因する捩れの弊害を防止するためのものである。
【特許文献1】特開平8−74971号公報
【特許文献2】特開2007−40399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の技術には,以下に述べるような問題点があった。まず特許文献1の技術では,補強部材をネジ止めしているので,熱膨張時に歪みが出てしまう。補強部材以外の部分は合成樹脂でできているので,補強部材との間で熱膨張率が違うからである。この歪みにより合成樹脂のギヤ本体が変形し,寸法にも狂いが生じてしまうのである。画像形成装置の場合には,定着器のような発熱体が機内に存在するので,この問題は無視できない。次に特許文献2の技術では,歯元部分は強化されない。駆動軸部分しか強化されないからである。このため,歯元部分は変形しやすい。よって寸法公差が厳しく,ギヤ全体を高精度に成形する必要がある。このためギヤの加工が大変である。
【0005】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,簡単な構成で,寸法精度の問題を生じることなく,ギヤを強化して回転ムラを排除したギヤおよびそのギヤを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた本発明のギヤは,円形のフランジ部と,フランジ部の外縁に環状に形成された歯元部とを有し,歯元部のギヤ歯により回転駆動の伝達を行うギヤであって,フランジ部は,その側面に,歯元部より内側に歯元部に対して間隔を置いて環状に離散的に配置された凸部の列が形成されているものであり,フランジ部および歯元部の材質よりも高硬度または高密度の材質の補強部材が,凸部を変形させながら保持されているものである。
【0007】
本発明のギヤでは,フランジ部の側面に保持されている補強部材により,全体が補強されている。また,慣性モーメントも補強部材により大きくなっている。この補強部材は,フランジ部の側面に形成された凸部の列により保持されている。そしてそれらの凸部は,補強部材により変形させられている。すなわち補強部材は,凸部が変形することにより,その復元力で保持されている。よって,温度変化によりフランジ部と補強部材との寸法の関係が少々変化したとしても,凸部の変形の程度が少し変化するだけである。ここで,凸部の変形状況が多少変化したとしても,歯元部の形状には影響しない。凸部の列が,歯元部に対して間隔を置いて配置されているからである。これにより,簡単な構成で,寸法精度の問題を生じることなく,強化されたギヤとなっている。むろん回転ムラは排除されている。
【0008】
本発明のギヤにおいては,補強部材が環状のものであり,凸部の列として,補強部材の外側に位置する第1の列と,補強部材の内側に位置する第2の列とがあることが望ましい。この場合に補強部材は,第1の列と第2の列との間に,それらの列と列との間隔を押し広げながら保持されることになる。このため,外周と内周との両側から確実に保持される。なお,補強部材を保持することにより変形する凸部は,第1の列に属する第1凸部と,第2の列に属する第2凸部とのうち,いずれか一方でも両方でもよい。
【0009】
本発明のギヤにおいては,フランジ部の側面に,歯元部より内側に間隔を置いて環状の円形リブが形成されており,各第1凸部が,円形リブの内側に連続して形成されているとよりよい。この場合,円形リブにより,第1凸部が外向きに変位したときの復元力が強化されている。このため,各第1凸部が,補強部材を保持することにより外向きに変位させられるものである場合には,補強部材の保持がより確実である。
【0010】
本発明のギヤにおいては,フランジ部の側面にさらに,歯元部と円形リブとを結ぶ連結リブが,円形リブにおける第1凸部と繋がる位置と異なる位置に形成されているとよりよい。このようにすると,フランジ部における歯元部と円形リブとの間の領域が,連結リブにより補強されることになる。それでいて,第1凸部の補強部材による変位が,歯元部にまで影響することがない。連結リブと第1凸部とが,円形リブに対して異なる位置で接続されているからである。
【0011】
本発明のギヤにおいては,複数枚の補強部材を重ねて保持することもまた好ましい。これにより,組み付け時における慣性モーメントの調整の自由度がさらに確保される。この場合にさらに,凸部の少なくとも一部を,段差を有する形状のものとするとよい。その場合には,複数の補強部材の一部が段差よりも下の部分に保持され,複数の補強部材の残部が段差よりも上の部分に保持されることになる。第1凸部と第2凸部とがある場合には,その少なくとも一方が,段差を有する形状であればよい。
【0012】
本発明は,表面にトナー像の形成をうけるトナー像担持体と,トナー像担持体から媒体にトナー像を転写する転写部とを有する画像形成装置であって,トナー像担持体の駆動系のギヤとして本発明のものを用いたものにも及ぶ。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば,簡単な構成で,寸法精度の問題を生じることなく,ギヤを強化して回転ムラを排除したギヤおよびそのギヤを用いた画像形成装置が提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の形態]
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。第1の形態に係るギヤは,図1に示すように,ギヤ本体1と,補強部材2とを有している。ギヤ本体1は,合成樹脂製であり,ある程度の柔軟性を有している。補強部材2は,金属製である。このため補強部材2は,硬度および密度に関して,ギヤ本体1を上回っている。
【0015】
まず,ギヤ本体1について説明する。ギヤ本体1は,全体としてほぼ円板形状である。その外縁には,歯元部10が形成されている。歯元部10の外周面11には,図示は省略するがギヤ歯が形成されている。ギヤ本体1の中心部分には,回転軸に取り付けるためのボス部12が形成されている。歯元部10とボス部12との間の平板状の部分をフランジ部13という。
【0016】
ギヤ本体1におけるフランジ部13の一方の側面には,種々のリブが形成されている。まず,歯元部10より少し内側には,外郭円形リブ14が形成されている。外郭円形リブ14と歯元部10との間には間隔がある。そして,外郭円形リブ14と歯元部10との間には,連結リブ15が離散的に形成されている。連結リブ15により,外郭円形リブ14と歯元部10とが連結されている。
【0017】
また,外郭円形リブ14の内側には,第1凸部16が離散的に形成されている。各第1凸部16は,外郭円形リブ14の内面に繋がっている。多数の第1凸部16は,全体として環状の列をなしている。第1凸部16の列と歯元部10との間には間隔がある。外郭円形リブ14と歯元部10との間に間隔があるからである。また,連結リブ15と第1凸部16とは,外郭円形リブ14に対して交互に配置されている。すなわち,連結リブ15と第1凸部16とは,外郭円形リブ14に対して互い違いに配置され,異なる位置で繋がっている。
【0018】
また,ボス部12の少し外側には,内郭円形リブ17が形成されている。内郭円形リブ17とボス部12との間には間隔がある。そして,内郭円形リブ17とボス部12との間には,連結リブ18が離散的に形成されている。連結リブ18により,内郭円形リブ17とボス部12とが連結されている。また,内郭円形リブ17の外側には,第2凸部19が離散的に形成されている。各第2凸部19は,内郭円形リブ17の外面に繋がっている。多数の第2凸部19は,全体として環状の列をなしている。第2凸部19の列とボス部12との間には間隔がある。内郭円形リブ17とボス部12との間に間隔があるからである。
【0019】
ここで,第1凸部16の列と第2凸部19の列との間には間隔がある。この,第1凸部16の列と第2凸部19の列との間のドーナツ形のスペースが,補強部材2を取り付けるためのスペースである。補強部材2は,ドーナツ板状の部材である。その外周縁21の径は,第1凸部16の列の径とほぼ同じくらいである。内周縁22の径は,第2凸部19の列の径とほぼ同じくらいである。
【0020】
補強部材2は,ギヤ本体1における,第1凸部16の列と第2凸部19の列との間のドーナツ形のスペースに取り付けられるものである。ここでギヤ本体1の各第1凸部16は,補強部材2を当該スペースに取り付けることにより,補強部材2の外周縁21により少し外向きに押し出されるようになっている。すなわち,各第1凸部16の内側の先端がなす円の径は,補強部材2を取り付ける前においては,補強部材2の外径よりわずかに小さいのである。
【0021】
言い替えると,補強部材2を取り付けることにより,第1凸部16の列と第2凸部19の列との間隔が,取り付け前の状態に比して少し押し広げられている。このため,補強部材2を取り付けた状態では,各第1凸部16は若干変形している。この,変形した第1凸部16が復元しようとする反力により,補強部材2がしっかりと保持されているのである。また,このことから,ギヤ本体1に補強部材2を取り付ける際には,各第1凸部16を変形させるために十分な力をもって圧入する必要がある。
【0022】
なお,補強部材2を当該スペースに取り付けることにより,各第1凸部16が外向きに押し出されるばかりでなく,各第2凸部19も内向きに押し込められるようにしてもよい。すなわち,各第2凸部19の外側の先端がなす円の径を,補強部材2を取り付ける前においては補強部材2の内径よりわずかに大きいこととしてもよい。さらには,補強部材2の取付による変形が,主として第2凸部19にて起こり,第1凸部16はあまり変形しないこととしてもよい。また,補強部材2を複数枚の重ね合わせ構成にしてもよい。その場合,第1凸部16と第2凸部19との間隔の押し広げは,最上の部材のみで行えば十分である。また,材質は異なっていてもよい。
【0023】
ギヤ本体1に補強部材2を取り付けてなる本形態のギヤにおいて補強部材2は,次のような役割を果たしている。補強部材2はまず,全体の強度を担っている。すなわち,ギヤ本体1は柔軟な合成樹脂製なので,それだけでは撓みやすいのである。そこで金属製の補強部材2を取り付けることにより,ギヤ全体としての強度を確保しているのである。この補強効果はむろん,補強部材2の硬度が高いほど大きい。ここで,連結リブ15が外郭円形リブ14と歯元部10とを繋いでいることにより,補強部材2の外周縁21より外側の部分にも補強の効果が及んでいる。
【0024】
ここで,補強部材2が取り付けられている状態における,補強部材2の外周縁21と歯元部10との間のリブの変形状況を説明する。前述のように取り付け状態では,各第1凸部16が補強部材2の外周縁21により外向きに押し出されている。このため,図2の平面図に示すように外郭円形リブ14も,各第1凸部16との連結位置においては,第1凸部16に押し出されて外向きに変位している。なお,補強部材2を取り付ける前の状態におけるギヤ本体1では,図3に示すように,外郭円形リブ14がほぼ真円状となる。
【0025】
しかしながら,その外郭円形リブ14の変位は,各第1凸部16との連結箇所のみに止まる。そして前述のように,外郭円形リブ14に対して,連結リブ15が繋がる位置と第1凸部16が繋がる位置とは異なる。このため外郭円形リブ14の変位は,連結リブ15には影響しない。よって,ギヤ本体1に補強部材2を取り付けても,歯元部10は変形しない。このため歯元部10の形状の精度は,補強部材2が取り付けられている状態においても高い。なお,外郭円形リブ14も,変位した状態から戻ろうとする反力を発生させている。この反力は,各第1凸部16の変形の反力を加勢しており,補強部材2の確実な保持に貢献している。
【0026】
また,補強部材2は,ギヤにある程度の慣性モーメントを付与する役割をも果たしている。回転物であるギヤは,ある程度の慣性モーメントを有している方が安定した回転速度で回転するからである。つまり,ギヤ本体1よりも高密度な材質でできている補強部材2は,ギヤ全体の慣性モーメントのうち大部分を占めているのである。補強部材2を有することにより,ギヤはある程度の慣性モーメントを有するのである。このため回転しているときのイナーシャが大きく,安定した回転速度で回転するのである。
【0027】
そして本発明のギヤは前述のように,合成樹脂製のギヤ本体1と金属製の補強部材2との組み合わせである。これにより,ギヤ全体を金属製とすることなく,必要な強度や慣性モーメントを得ている。このため,ギヤ全体を金属製とする場合と比較して,まずコスト面で有利である。
【0028】
また,慣性モーメントの大きさに関して,設計上の自由度が大きい。補強部材2のサイズや材質の選択により,慣性モーメントを調整できるからである。例えば,補強部材2のサイズをそのままにして材質をより高密度のものに変更すれば(例えば,アルミから鉄に変更する等),慣性モーメントをより大きくできる。この場合にギヤ本体1はそのままでよい。あるいは,補強部材2の材質をそのままにして厚さを変更することも考えられる。ただし,補強部材2が強度不足に陥るほど薄くしたり,ギヤ本体1で保持しきれないほど厚くしたりするのでない範囲内に限られる。この場合にもギヤ本体1はそのままでよい。なお,補強部材2の材質や厚さについては,設計時ばかりでなく組み付け時にも選択が可能である。ギヤ本体1をそのまま使えるからである。
【0029】
また,補強部材2のサイズについては,厚さばかりでなく外径や内径の変更も可能である。外径を小さくすることは,慣性モーメントを小さくする方向に働く。内径を大きくすることも,外径がそのままであれば,慣性モーメントを小さくする方向に働く。逆に,外径を大きくすることは,慣性モーメントを大きくする方向に働く。内径を小さくすることも,外径がそのままであれば,慣性モーメントを大きくする方向に働く。
【0030】
ここで,外径を小さくしすぎると,補強部材2の補強効果が薄れてしまう。補強部材2の外周縁21から歯元部10までの距離が長くなってしまうからである。一方,内径を大きくすることについては,極端でない限り,補強効果をあまり妨げない。むろん,このように外径や内径を変更する場合には,ギヤ本体1の形状もそれに合わせて変更する必要がある。具体的には,第1凸部16の列の径や第2凸部19の列の径を変更することになる。よって,補強部材2の外径や内径の選択は,組み付け時にはできず,設計段階で行うことである。
【0031】
本形態のギヤは,例えば図4に示すような画像形成装置に用いて好適である。図4の画像形成装置は,タンデム式のフルカラー画像形成装置である。この画像形成装置は,4色の画像形成ユニット3Y,3M,3C,3Kを有している。各画像形成ユニットは,感光体ドラム4Y,4M,4C,4Kを有している。この画像形成装置はまた,各感光体ドラムからトナー像の1次転写を受けるとともに,トナー像を用紙へ2次転写する転写ベルト32を有している。この画像形成装置はさらに,各感光体ドラムに潜像を書き込む露光ユニット34や,用紙上のトナー像を定着する定着装置33,排紙ローラ35などを有している。
【0032】
かかる画像形成装置において,特に回転速度の安定が要求される回転要素として,感光体ドラム4Y,4M,4C,4Kが挙げられる。これらの回転速度にふらつきがあると,画像の品質が大きく損なわれるからである。そこで,本形態の画像形成装置では,これらの感光体ドラムへの駆動伝達系に本形態のギヤを用いている。本形態のギヤは前述のように歯元部10の精度に優れており,また,ある程度の慣性モーメントも有している。このため,各感光体ドラムを安定した回転速度で回転させることができる。むろん,感光体ドラムの駆動伝達系に限らず,転写ベルト32への駆動伝達系や,紙送りの駆動伝達系などにもギヤを用いることができる。
【0033】
以上詳細に説明したように,本形態のギヤにおいては,金属製の補強部材2を有することとしている。そして,補強部材2を取り付けることによる第1凸部16の変形が歯元部10には影響しないようにしている。これにより,安定した回転速度での駆動伝達ができるギヤが,低コストで実現されている。また,慣性モーメントの大小に関する設計上の自由度も増大している。さらに,このギヤを画像形成装置の感光体等の駆動伝達系に用いることにより,安定した回転により高品質な画像を形成できる画像形成装置が実現されている。
【0034】
なお,本形態のギヤにおいては,内周側の連結リブ18も,外周側のように第2凸部19に対して互い違いの配置としてもよい。特に,補強部材2の取付により第2凸部19が変形する構成の場合には,連結リブ18と第2凸部19とを互い違いにすることが望ましい。また,補強部材2の内側にはリブを有さず,第1凸部16により外側のみから補強部材2を保持する構成も可能である。逆に,補強部材2の外側にはリブを有さず,第2凸部19により内側のみから補強部材2を保持する構成も可能である。内側のみから補強部材2を保持する場合には,補強効果はあまり多くを期待することはできないが,慣性モーメントの増大効果は得られる。また,補強部材2の保持に関して,第1凸部16等の復元力によるばかりでなく,ネジ止め等の固定具を追加してもよい。その場合のネジとネジ穴との間のクリアランスは,多少大きめに取っておくとよい。
【0035】
[第2の形態]
第2の形態に係るギヤは,図5に示すギヤ本体101と,2枚の補強部材102,103とを有している。本形態の第1の形態との相違点は,2枚の補強部材102,103を重ねて使用することである。そしてこれに伴い,第1凸部116および第2凸部119の形状を変更していることである。これら以外には特段の相違点はない。
【0036】
まず,ギヤ本体101について説明する。ギヤ本体101は,第1の形態におけるギヤ本体1と同様に,外郭円形リブ14,連結リブ15,内郭円形リブ17,連結リブ18を有している。これらの各リブについては,第1の形態におけるものと違いはない。
【0037】
しかしながら,本形態における第1凸部116および第2凸部119は,第1の形態におけるものとやや異なっている。具体的には,第1凸部116,第2凸部119とも,段差のある形状とされている。すなわち,第1凸部116には,低段部114と高段部115とが設けられている。外郭円形リブ14から内側へ向かっての突出の程度は,低段部114の方が高段部115より大きい。第2凸部119にも,低段部117と高段部118とが設けられている。内郭円形リブ17から外側へ向かっての突出の程度は,低段部117の方が高段部115より大きい。
【0038】
次に,補強部材102,103について説明する。補強部材102,103はいずれも,第1の形態の補強部材2と同様の部材である。ただし,図5中ではこれらを厚めに描いているが,実際には,2枚の補強部材102,103の厚さの合計が第1の形態の補強部材2の厚さと同じくらいになるようにされる。また,上側となる補強部材102については,その外径,内径とも,第1の形態の場合の外径,内径と同じである。一方,下側となる補強部材103については,その外径は第1の形態の場合の外径より小さく,その内径は第1の形態の場合の内径より大きい。
【0039】
本形態においては,2枚の補強部材102,103が,重ね合わせられてギヤ本体101に取り付けられている。補強部材103が下側であり,低段部114と低段部117との間のスペースに取り付けられる。補強部材102は,補強部材103の上に,高段部115と高段部118との間のスペースに取り付けられる。なお,補強部材102,103は,必ずしも同じ材質でなくてもよい。
【0040】
ここにおいて,上側の補強部材102は,必ず,高段部115と高段部118との間隔を押し広げながら圧入されるようになっていなければならない。しかし下側の補強部材103については,そのようなことは必須ではない。すなわち補強部材103は,低段部114と低段部117との間のスペースに対してジャストサイズであってもよい。上側の補強部材102がリブの変形の反力で保持されることにより,その下の補強部材103も結果的に保持されるからである。
【0041】
本形態のギヤは,第1の形態のギヤの利点をすべて有している。その上で,慣性モーメントや強度についての設計上の自由度がさらに大きい。補強部材102と補強部材103とで独立してサイズや材質を選択できるからである。
【0042】
本形態のギヤは,2枚の補強部材102,103のうち一方のみをギヤ本体101に取り付けた状態で使用することもできる。ただし,下側の補強部材103のみ取り付ける場合には,補強部材103が低段部114と低段部117との間隔を押し広げることが必須である。また,補強部材102,103のそれぞれをさらに複数枚の重ね合わせ構成とすることもできる。これらのことは,組み付け時における選択も可能である。
【0043】
なお,本形態においては,第1凸部116,第2凸部119のうち一方のみに段差を設けることも可能である。また,段差の段数は「2」に限らない。第1の形態で説明した補強部材の内外径の設計時における変更は,むろん本形態でも可能である。本形態のギヤも,第1の形態のギヤと同様,図4のような画像形成装置の感光体ドラム等への駆動伝達系に好適に用いることができる。
【0044】
[第3の形態]
第3の形態に係るギヤは,図6に示すギヤ本体201と,補強部材2とを有している。本形態の第1の形態との相違点は,ギヤ本体201において,外郭円形リブ14と歯元部10との間の連結リブ15が設けられていないことである。このこと以外には特段の相違点はない。本形態のギヤも,第1の形態のギヤの利点をほぼすべて有している。ただし,外郭円形リブ14と歯元部10との間の部分の強度については,第1または第2の形態のギヤに比してやや劣る。
【0045】
本形態においてはさらに,外郭円形リブ14をも省略した構成とすることも可能である。また,補強部材2の内周側においても,連結リブ18や内郭円形リブ17を省略することが可能である。また,本形態においても第2の形態のように,段付き形状の第1凸部116,第2凸部119を採用した構成とすることも可能である。
【0046】
なお,前記各形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,ギヤ本体が両面に前記の各リブ構造を有し,両面に補強部材を取り付けるようになっていてもよい。また,タンデム式以外の画像形成装置にも適用可能である。また,カラー機に限らず,モノクロ機にも使用できる。また,補強部材2,102,103は,必ずしもドーナツ形の1枚板に限らず,分割形等であってもよい。また,ギヤ歯が歯元部の外周面に形成される外ギヤに限らず,内ギヤやベベルギヤ等への適用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の形態に係るギヤを示す分解斜視図である。
【図2】第1の形態に係るギヤにおける,補強部材と歯元部との間のリブの変形状況を示す平面図である。
【図3】第1の形態に係るギヤにおける,補強部材を取り付ける前の状態におけるリブの形状を示す平面図である。
【図4】第1の形態に係る画像形成装置の構造を示す断面図である。
【図5】第2の形態に係るギヤを示す分解斜視図である。
【図6】第3の形態に係るギヤを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1,101 ギヤ本体
2,102,103 補強部材
4Y等 感光体ドラム
10 歯元部
13 フランジ部
14 外郭円形リブ
15 連結リブ
16,116 第1凸部
19,119 第2凸部
32 転写ベルト
114,117 低段部
115,118 高段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形のフランジ部と,前記フランジ部の外縁に環状に形成された歯元部とを有し,前記歯元部のギヤ歯により回転駆動の伝達を行うギヤにおいて,
前記フランジ部は,その側面に,前記歯元部より内側に前記歯元部に対して間隔を置いて環状に離散的に配置された凸部の列が形成されているものであり,
前記フランジ部および前記歯元部の材質よりも高硬度または高密度の材質の補強部材が,前記凸部を変形させながら保持されていることを特徴とするギヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のギヤにおいて,
前記補強部材が環状のものであり,
前記凸部の列として,
前記補強部材の外側に位置する第1の列と,
前記補強部材の内側に位置する第2の列とがあり,
前記補強部材は,前記第1の列と前記第2の列との間に,それらの列と列との間隔を押し広げながら保持されていることを特徴とするギヤ。
【請求項3】
請求項2に記載のギヤにおいて,
前記フランジ部は,その側面に,前記歯元部より内側に間隔を置いて環状の円形リブが形成されたものであり,
前記第1の列に属する各凸部(以下,「第1凸部」という)は,前記円形リブの内側に連続して形成されており,
各前記第1凸部は,前記補強部材により外向きに変位させられていることを特徴とするギヤ。
【請求項4】
請求項3に記載のギヤにおいて,
前記フランジ部は,その側面に,前記歯元部と前記円形リブとを結ぶ連結リブが形成されたものであり,
前記連結リブは,前記円形リブにおける前記第1凸部と繋がる位置と異なる位置に配置されていることを特徴とするギヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のギヤにおいて,
複数枚の補強部材が重ねられて保持されていることを特徴とするギヤ。
【請求項6】
請求項5に記載のギヤにおいて,
前記凸部の少なくとも一部が段差を有する形状のものであり,
前記複数の補強部材の一部が前記段差よりも下の部分に保持されており,
前記複数の補強部材の残部が前記段差よりも上の部分に保持されていることを特徴とするギヤ。
【請求項7】
表面にトナー像の形成をうけるトナー像担持体と,前記トナー像担持体から媒体にトナー像を転写する転写部とを有し,前記トナー像担持体の駆動系にギヤを有する画像形成装置において,
前記ギヤは,円形のフランジ部と,前記フランジ部の外縁に環状に形成されるとともにギヤ歯を有する歯元部とを有し,
前記フランジ部は,その側面に,前記歯元部より内側に間隔を置いて環状に離散的に配置された凸部の列が形成されているものであり,
前記フランジ部および前記歯元部の材質よりも高硬度または高密度の材質の補強部材が,前記凸部を変形させながら保持されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−103205(P2009−103205A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274856(P2007−274856)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】