説明

クプレドキシンおよびシトクロムでマラリアを治療するための組成物および方法

本発明は、マラリア原虫によって感染した哺乳類赤血球および他の組織における寄生虫血症の拡大を阻害するための、特に、熱帯熱マラリア原虫によるヒト赤血球の寄生虫血症を阻害するための、クプレドキシンおよびシトクロム、およびこれらの使用(別々にまたは一緒に)に関する。本発明は、クプレドキシンまたはシトクロムcの変異体、誘導体または構造的等価物である単離ペプチド、およびクプレドキシンおよび/またはシトクロムcを含む組成物、または哺乳動物のマラリア感染を治療または予防するのに有用である、これらの変異体、誘導体または構造的等価物を提供する。さらに、本発明は、哺乳動物におけるマラリア感染の拡大を予防または阻害するために哺乳動物を治療する方法を提供する。本発明はまた、媒介昆虫におけるマラリア感染の拡大を予防する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【米国特許商標庁における米国特許出願】
【0001】
【表1−1】

【関連出願】
【0002】
本出願は、( )に出願された「クプレドキシンおよびシトクロムcでHIV感染症を治療するための組成物および方法」と題する共同出願された米国仮特許出願第( )号、2006年3月10日に出願された米国仮特許出願第60/780,868号、2005年5月20日に出願された米国仮特許出願第60/682,813号、2005年10月6日に出願された米国特許出願第11/244,105号[これは、2004年10月7日に出願された米国仮特許出願第60/616,782号、および2005年5月13日に出願された米国仮特許出願第60/680,500号に対する優先権を主張し、かつ2003年11月11日に出願された米国特許出願第10/720,603号{これは、2003年8月15日に出願された米国仮特許出願第60/414,550号に対する優先権を主張し、かつ2002年1月15日に出願された米国特許出願第10/047,710号(これは、2001年2月15日に出願された米国仮特許出願第60/269,133号に対する優先権を主張する。)の一部継続出願である。}の一部継続出願である。]に対する優先権を主張する。これらの先出願の全内容が、参照によって本明細書中に完全に組み込まれる。
【政府権益の声明】
【0003】
本出願の内容は、アメリカ合衆国メリーランド州ベテスダ所在の国立衛生研究所(NIH)からの研究助成金によって支援されている(グラント番号AI 16790-21、ES 04050-16、AI 45541、CA09432およびN01-CM97567)。合衆国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【発明の分野】
【0004】
本発明は、マラリア原虫の寄生虫血症を阻害する、特に、哺乳類赤血球における熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の寄生虫血症を阻害する、クプレドキシン(cupredoxin)およびシトクロムならびにこれらの使用(別々または組み合わせて)に関する。本発明はまた、マラリア原虫による寄生虫血症を阻害する能力を保持するクプレドキシンおよびシトクロムの変異体および誘導体に関する。最後に、本発明は、媒介昆虫におけるマラリア感染の拡大を阻害する方法を提供する。
【背景】
【0005】
世界人口の約4分の1がマラリアのリスクにさらされ、100万人以上が毎年マラリアで死亡している。ヒトに感染するマラリア原虫の4つの種のうち、2つの主要な種は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)および三日熱マラリア原虫(P.vivax)である。
【0006】
熱帯熱マラリア原虫の血液段階のメロゾイトは、様々な表面タンパクを使用して赤血球と結合し寄生する(Cowman et al., FEBS Lett. 476:84-88 (2000); Baum et al., J. Biol. Chem. 281:5197-5208 (2006))。表面タンパク質の主要な抗原メンバーは、メロゾイト表面タンパク質1(MSP1)(195kDaのタンパク質)と呼ばれる。MSP1は、全ての赤血球侵襲性のマラリア原虫の生物種に存在し、グリコシル-ホスファチジルイノシトール結合によってメロゾイト表面に固定されている。赤血球侵襲プロセスの初期段階、感染した赤血球からの放出後すぐに、メロゾイトMSP1タンパク質はタンパク質分解性の切断を受け、C-末端切断生成物MSP1-42を生成する。これは、続けて第二の切断を受け、11kDaのペプチドMSP1-19を生成する。これは、赤血球に入るときに寄生表面への付着を維持する。切断生成物MSP1-19の形成は、寄生による十分な侵襲のために非常に重要である。モノクローナル抗体によるそのタンパク質分解性の形成の阻害またはその中和が、赤血球に対する寄生の開始を妨げる(Blackman et al., J. Exptl., Med. 180:389-393 (1994))。
【0007】
MSP1-19ペプチドは、利用可能な最も重要なマラリア・ワクチン候補のうちの一つである。マラリア耐性ヒト血清からのMSP1-19 特異的抗体は抗原と反応し、主要な赤血球侵襲の阻害成分を含む(Holder & Riley, Parasitol. Today, 12: 173-174 (1996); O’Donnell et al., J. Expt. Med. 193: 1403-1412 (2001))。マラリア固有の地域におけるドナーからの血清は通常、Pf MSP1-19に対する強い抗体反応性を実証する(Nwuba et al., Infect. Immun. 70: 5328-5331 (2002))。
【0008】
モノクローナル抗体(mAb)G17.12は、組換え体Pf MSP1-19に対して生じ、かつ寄生表面上のそのエピトープを認識する。抗原のこの領域が天然のMSP1ポリペプチド複合体上でアクセス可能であることが実証されている(Pizarro et al., J. Mol. Biol. 328:1091-1103 (2003))。興味深いことに、インビトロにおける赤血球侵襲試験は、G17.12の存在中において200μg/ml濃度でさえ感染は阻害されず、G17.12が、MSP1のインビトロでの第2のプロセシングを阻害しないことを示した。侵襲の結合を遮断する抗体 − 阻害抗体の存在は、それゆえ寄生の存続を容易にし、これがまた実証されており(Guevara Patino et al., J. Expt. Med. 186: 1689-1699(1997))、M.falciparumによる赤血球侵襲を阻害するG17.12 mAbの不足が原因かもしれない。
【0009】
大部分の薬剤は、脳毛細管に到達するための血液脳関門を通過することができないので、脳マラリア(寄生された赤血球の隔離のために脳毛細管の熱帯熱マラリア原虫の侵襲に限定された稀で致命的な感染病)は、多くの場合治療することができない。熱帯熱マラリア原虫 − 感染した赤血球の脳毛細管に対する付着は、感染した赤血球の表面上に発現した寄生リガンドPf Emp-1ファミリーのタンパク質と、大脳血管における毛細管内皮細胞の表面上に発現したICAM-1およびCD36との相互作用によって媒介される(Smith et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:1766-1771 (2000); Franke-Fayard et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102, 11468-11473 (2005))。
【0010】
ヘム解毒経路をターゲットとするクロロキンのような少数の薬剤がマラリアを治療するために使用されるが、薬剤に対する寄生耐性および殺虫剤に対する媒介蚊の抵抗性の増加現象が生じている。クロロキンは、ヘムモノマーがマラリア原虫に強い毒性を示すように、寄生誘導HRP(ヒスチジン富タンパク質)によって媒介されたヘム重合に拮抗する。ヘムの重合は、解毒を可能にする(これらはクロロキンによって逆転される)。他の薬剤(アルテミシニン)は、脳マラリアにおけるクロロキン耐性の熱帯熱マラリア原虫に対して有効である。アルテミシニンは、ヘモグロビン内のグロビン結合ヘムと付加体を形成する。これはHRPと結合し、ヘム重合を妨げる。ここには、アフリカおよびアジアにおいて特に流行しているこの恐ろしい疾病のための新しい薬剤を開発する緊急の要請が存在する。薬剤開発での現時点の試みは、完全な寄生ゲノム配列の解読、マラリア原虫タンパク質の分子モデリングおよび新規な薬剤ターゲットの探求に向けられている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、マラリア原虫によって感染した哺乳類赤血球および他の組織における寄生虫血症の蔓延、特に、熱帯熱マラリア原虫によるヒト赤血球の寄生虫血症の蔓延を阻害する、クプレドキシン(cupredoxin)およびシトクロムならびにこれらの使用(別々または組み合わせて)に関する。
【0012】
本発明の1つの態様は、クプレドキシンまたはシトクロムの変異体、誘導体または構造的等価物である単離ペプチドであり;かつマラリアに感染したヒト赤血球におけるマラリア原虫の細胞内の複製を阻害することができる単離ペプチドである。
【0013】
本発明の他の態様は、クプレドキシンの変異体、誘導体または構造的等価物である単離ペプチドであり;かつPfMSP1-19およびPfMSP1-42からなる群から選択されたタンパク質と結合することができる単離ペプチドである。
【0014】
本発明の他の態様は、クプレドキシンまたはシトクロムの変異体、誘導体または構造的等価物である単離ペプチドであり、かつマラリアに感染した赤血球においてマラリアによる寄生虫血症を阻害することができる単離ペプチドである。具体的には、単離ペプチドは、熱帯熱マラリア原虫に感染したヒト赤血球においてマラリアによる寄生虫血症を阻害することができる。いくつかの実施態様において、クプレドキシンは、アズリン、偽性アズリン、プラストシアニン、ルスチシアニン、Lazまたはアウラシアニンである。具体的には、クプレドキシンは、ルスチシアニン、アズリンまたはLazであってもよい。いくつかの実施態様において、クプレドキシンは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アルカリゲネス フェカーリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター キシロソキシダン(Achromobacter xylosoxidan)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス エスピー(Methylomonas sp)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhea)、シュードモナス フルオリセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ ファスティディオサ(Xylella fastidiosa)または腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)由来である。具体的には、クプレドキシンは、チオバシラス フェルロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans)、緑膿菌、淋菌または髄膜炎菌由来であってもよい。
【0015】
この側面の他の実施態様において、シトクロムは、シトクロムcまたはシトクロムfである。特に、シトクロムcは、ヒトまたは緑膿菌由来であってもよい。シトクロムfは、シアノバクテリア由来であってもよい。
【0016】
この側面の他の実施態様において、単離ペプチドは、配列番号:1-20および22からなる群から選択されるペプチドの切断である。いくつかの実施態様において、配列番号1-20または22は、単離ペプチドの配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0017】
この側面のいくつかの実施態様において、単離ペプチドは、クプレドキシンまたはシトクロムの切断である。いくつかの実施態様において、単離ペプチドは、約10〜100残基である。単離ペプチドは、アズリン残基36-89を含んでいてもよい。代わりに、単離ペプチドは、アズリン残基36-89からなるものであってもよい。代わりに、単離ペプチドは、アズリン36-89と等価なクプレドキシンの残基を含んでいてもよい。
【0018】
この側面の他の実施態様において、単離ペプチドは、LazのH.8領域と融合される。他の実施態様において、単離ペプチドは、モノクローナル抗体G17.12の構造的等価物である。
【0019】
本発明の他の態様は、少なくとも1つのクプレドキシン、シトクロムを含む組成物であるか、あるいは薬学的組成物中における、マラリアに感染した赤血球においてマラリアによる寄生虫血症を阻害することができるクプレドキシンまたはシトクロムの変異体、誘導体または構造的等価物である単離ペプチドである。具体的には、薬学的組成物は、静脈内投与のために処方されてもよい。本組成物は、他の抗マラリア熱の薬剤または抗HIV薬剤を含んでいてもよい。
【0020】
本組成物のいくつかの実施態様において、クプレドキシンは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アルカリゲネス フェカーリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター キシロソキシダン(Achromobacter xylosoxidan)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス エスピー(Methylomonas sp)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhea)、シュードモナス フルオリセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ ファスティディオサ(Xylella fastidiosa)または腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)由来である。具体的には、クプレドキシンは、チオバシラス フェルロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans)、緑膿菌、淋菌または髄膜炎菌由来であってもよい。
【0021】
本組成物のいくつかの実施態様において、シトクロムは、シトクロムcまたはシトクロムfである。具体的には、シトクロムcは、ヒトまたは緑膿菌由来であってもよい。シトクロムfは、シアノバクテリア由来であってもよい。いくつかの実施態様において、クプレドキシンまたはシトクロムcは、配列番号:1-20または22である。
【0022】
本発明の他の態様は、本発明の有効量の組成物を投与することによって、マラリア原虫による感染症に罹患した患者を治療する方法である。特定の実施態様において、ペプチドは、患者のマラリアに感染したヒト赤血球においてマラリアによる寄生虫血症を阻害する。いくつかの実施態様において、マラリア原虫は、三日熱マラリア原虫または熱帯熱マラリア原虫である。いくつかの実施態様において、患者は、さらにHIV感染症に罹患している。いくつかの実施態様において、本組成物は、抗マラリア熱の薬剤および/または抗HIV薬剤を含んでいてもよい第2の組成物で投与される。いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、第2の組成物の0分〜12時間の投与内で投与される。いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、患者に経口で、吸入によって、静脈内、筋肉内または皮下に投与され;具体的には、本組成物は、患者に静脈内投与されてもよい。
【0023】
本発明の他の態様は、本発明の有効量の組成物を患者に投与することを含む、マラリア原虫との接触が疑われる患者を治療する方法である。
【0024】
本発明の他の態様は、マラリア原虫を保護する媒介昆虫の集団における、ある媒介昆虫に対して一定量の本発明の組成物を投与することを含む、哺乳動物のマラリアを予防する方法である。この方法のいくつかの実施態様において、本組成物は、媒介昆虫に経口で投与される。
【0025】
これらおよび他の側面、利点および本発明の特徴は、特定の実施態様についての以下の図および詳細な説明から明らかになるだろう。
【配列番号の簡単な説明】
【0026】
配列番号1は、緑膿菌由来のアズリンのアミノ酸配列である。
【0027】
配列番号2は、緑膿菌由来のシトクロムc551のアミノ酸配列である。
【0028】
配列番号3は、髄膜炎菌 MC58由来のLazのアミノ酸配列である。
【0029】
配列番号4は、ホルミディウム ラミノサム(Phormidium laminosum)由来のプラストシアニンのアミノ酸配列である。
【0030】
配列番号5は、チオバシラス フェルロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans)(アシディチオバシラス フェルロオキシダンス)(Acidithiobacillus ferrooxidans)由来のルスチシアニンのアミノ酸配列である。
【0031】
配列番号6は、アクロモバクター シクロクラステス(Achromobacter cycloclastes)由来の偽性アズリンのアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号7は、アルカリゲネス フェカーリス(Alcaligenes faecalis)由来のアズリンのアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号8は、アクロモバクター キシロソキシダン エスエスピー デニトリフィカンスI(Achromobacter xylosoxidans ssp.denitrificans I)由来のアズリンのアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号9は、気管支敗血症菌由来のアズリンのアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号10は、メチロモナス エスピー ジェー(Methylomonas sp. J)由来のアズリンのアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号11は、髄膜炎菌Z2491由来のアズリンのアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号12は、シュードモナス フルオリセンス(Pseudomonas fluorescens)由来のアズリンのアミノ酸配列である。
【0038】
配列番号13は、シュードモナス クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)由来のアズリンのアミノ酸配列である。
【0039】
配列番号14は、キシレラ ファスティディオサ9a5c(Xylella fastidiosa 9a5c)由来のアズリンのアミノ酸配列である。
【0040】
配列番号15は、ククミス サティブス(Cucumis sativus)由来のステラシアニン(stellacyanin)のアミノ酸配列である。
【0041】
配列番号16は、クロロフレクス アウランティアクス(Chloroflexus aurantiacus)由来のアウラシアニン Aのアミノ酸配列である。
【0042】
配列番号17は、クロロフレクス アウランティアクス(Chloroflexus aurantiacus)由来のアウラシアニン Bのアミノ酸配列である。
【0043】
配列番号18は、ククミス サティブス(Cucumis sativus)由来のキュウリ塩基性タンパクのアミノ酸配列である。
【0044】
配列番号19は、ヒト由来のシトクロムcのアミノ酸配列である。
【0045】
配列番号20は、ホルミディウム ラミノサム(Phormidium laminosum)由来のシトクロムfのアミノ酸配列である。
【0046】
配列番号21は、淋菌F62由来のLazのH.8領域のアミノ酸配列である。
【0047】
配列番号22は、淋菌F62由来のLazのアミノ酸配列である。
【0048】
配列番号23は、PCR増幅する淋菌のLazコーディング遺伝子(laz)に対するフォワードプライマーである。
【0049】
配列番号24は、PCR増幅する淋菌のLazコーディング遺伝子(laz) に対するリバースプライマーである。
【0050】
配列番号25は、PCR増幅する3.1kb断片のpUC18-lazに対するフォワードプライマーである。
【0051】
配列番号26は、PCR増幅する3.1kb断片のpuc18-lazに対するリバースプライマーである。
【0052】
配列番号27は、PCR増幅する0.4kb断片pUC19-pazに対するフォワードプライマーである。
【0053】
配列番号28は、PCR増幅する0.4kb断片のpUC19-pazに対するリバースプライマーである。
【0054】
配列番号29は、pGST-azu 36-128のフォワードプライマーである。
【0055】
配列番号30は、pGST-azu 36-128のリバースプライマーである。
【0056】
配列番号31は、pGST-azu 36-89のフォワードプライマーである。
【0057】
配列番号32は、pGST-azu 36-89のリバースプライマーである。
【0058】
配列番号33は、pGST-azu 88-113のフォワードプライマーである。
【0059】
配列番号34は、pGST-azu 88-113のリバースプライマーである。
【0060】
配列番号35は、pGST-azu 88-113の調製のための部位特異的変異のためのオリゴヌクレオチドである。
【0061】
配列番号36は、pGST-azu 88-113の調製のための部位特異的変異のためのオリゴヌクレオチドである。
【発明の詳細な説明】
【0062】
定義
本明細書中で使用されたとき、用語「細胞」は、特に「単細胞」として記載されない限り、単数または複数の両方の用語を含む。
【0063】
本明細書中で使用されたとき、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーをいうために交換可能に使用される。該用語は、一以上のアミノ酸残基が対応する天然に生じるアミノ酸の人工的な化学的類似体であるアミノ酸ポリマーに適用される。該用語はまた、天然に生じるアミノ酸ポリマーにも適用される。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」はまた、これらに限定されないが、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADP-リボシル化を含む修飾の包含体である。ポリペプチドが必ずしも完全に直鎖であると限らないことが認識されるだろう。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として枝分かれしてもよいし、また、環状であってもよい(枝分かれの有無にかかわらず)。これらは、一般的には翻訳後修飾の結果として生じ、天然に生じる反応および天然には生じない人間の操作によってもたらされる反応を含む。環状、枝分かれしたおよび枝分かれした環状ポリペプチドはまた、非翻訳の天然プロセスおよび完全な合成法によって合成されてもよい。
【0064】
本明細書中で使用されたとき、用語「生理学的状態」は、生きている動物またはその部分のうちの1つの標準状態の機能障害を構成する標準からの解剖学的および生理学的偏差を含む。これは、身体の機能の実行を妨害または修飾し、様々な要因(栄養失調、工業災害または気候など)、特定の感染体(虫、寄生原虫類、細菌またはウイルスなど)、生物体の固有の欠陥(遺伝子異常など)、またはこれらの要因の組み合わせに対する反応である。
本明細書中で使用されたとき、用語「状態」は、生きている動物またはその部分のうちの1つの標準状態の機能障害を構成する標準からの解剖学的および生理学的偏差を含む。これは、身体の機能の実行を妨害または修飾する。
【0065】
本明細書中で使用されたとき、用語「罹患」は、病理学的状態の症状を現実に示すことを含む。病理学的状態には、観察可能な症状のない病理学的状態、病理学的状態からの回復中、あるいは病理学的状態からの回復時も含まれる。
【0066】
本明細書中で使用されたとき、用語「寄生虫血症」は、寄生生物が血液および他の組織中に存在する状態、特に、臨床的症状の有無にかかわらず寄生生物の存在を示すために使用される。
【0067】
本明細書中で使用されたとき、用語「寄生虫血症の阻害」は、哺乳動物の血液中の寄生生物の存在の増加の割合の減少を意味する。阻害は、対照治療と比較したときに統計的に顕著である増加の割合の任意の減少である。
【0068】
本明細書中で使用されたとき、用語「治療」は、治療されている状態に関連した状態または症状の進行または重症度を予防、低下、停止、または逆向させることを含む。例えば、用語「治療」には、適切には、医学的、治療学的および/または予防的投与が含まれる。
【0069】
本明細書中で使用されたとき、「抗マラリア熱の活性」は、感染力、再生産を減少させ、あるいはマラリア原虫のライフサイクルの進行を阻害するあらゆる活性を含む。「抗マラリア熱の活性」は、抗マラリア熱の薬剤で観察される、全ての手段によるマラリア感染の拡大の阻害を含む。
【0070】
本明細書中で使用されたとき、用語「抗マラリア熱の薬剤」は、感染力、再生産を減少させ、あるいはマラリア原虫のライフサイクルの進行を阻害するために使用されてもよい、抗マラリア熱の活性を有する薬剤をいう。
【0071】
本明細書中で使用されたとき、用語「抗HIV薬剤」は、任意の手段によって、哺乳動物のHIV感染症を減少させるかまたは人体中で増加することを妨げる抗HIV活性を備えた薬剤をいう。任意の手段には、これらに限定されないが、HIVゲノムの複製の阻害、HIV外殻タンパク質の合成および/または構築の阻害、および未感染細胞へのHIV進入の阻害が含まれる。
【0072】
用語「実質的に純粋な」は、本明細書中で使用された、用語ポリペプチドまたは他の化合物を修飾するために使用されたとき、ポリペプチドまたは化合物、例えば、実質的に遊離の形態において、あるいは活性阻害剤による混ぜもののない、増殖培地から単離されたポリペプチドをいう。用語「実質的に純粋な」は、単離された画分の、乾燥重量で少なくとも約75%の量における化合物または75%の実質的に純粋な化合物をいう。より具体的には、用語「実質的に純粋な」は、乾燥重量で少なくとも約85%の化合物、活性化合物または「85%の実質的に純粋な」化合物をいう。さらに具体的には、用語「実質的に純粋な」は、乾燥重量で少なくとも約95%の化合物、活性化合物、または「95%の実質的に純粋な」化合物をいう。実質的に純粋なクプレドキシンまたはシトクロムc551、またはこれらの変異体または誘導体は、一以上の他の実質的に純粋な化合物または他の単離したクプレドキシンまたはシトクロムと組み合わせて使用することができる。
【0073】
用語「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」は、それがその天然の状態において見出されるときに、通常は物質に付随する成分から実質的または本質的に遊離状態である物質をいう。従って、本発明に基づいた単離ペプチドは、好ましくは、そのin situ環境下においてペプチドと関連した物質を通常は含まない。「単離された」領域は、その領域が誘導されたポリペプチドの全配列を含まない領域をいう。「単離された」核酸、タンパク質、またはそのそれぞれの断片は、それが当業者によって操作できるように、実質的にはそのインビボ環境から取り出される。例えば、これらに限定されないが、ヌクレオチドの配列決定、制限消化、部位特異的変異、および核酸断片のための発現ベクターへのサブクローニングなど、実質的に純粋な量においてタンパク質またはタンパク質断片を得る。
【0074】
用語「変異体」は、ペプチドに関して本明細書中において使用されたとき、野生型のポリペプチドと比較したときに置換、欠失、または挿入されたアミノ酸を有するアミノ酸配列変異体をいう。変異体は野生型ペプチドの切断であってもよい。従って、変異体ペプチドは、ポリペプチドをコードする遺伝子の操作によって調製されてもよい。変異体は、ポリペプチドの基礎的組成物または特徴を変化させることによって調製されてもよいが、その必須の活性の少なくともいくつかは変化させない。例えば、アズリンの「変異体」は、マラリアに感染したヒト赤血球において寄生虫血症を阻害するその能力を保持する、変異アズリンとすることができる。幾つかの場合において、変異体ペプチドは、非天然のアミノ酸、例えばε- (3, 5- ジニトロベンゾイル)-Lys残基で合成される (Ghadiri & Fernholz, J. Am. Chem. Soc., 112:9633-9635 (1990))。いくつかの実施態様において、変異体は、野生型ペプチドと比較して20以下のアミノ酸が置換、欠失または挿入されている。いくつかの実施態様において、変異体は、野生型ペプチドと比較して15、14、13、12または11以下のアミノ酸が置換、欠失または挿入されている。いくつかの実施態様において、変異体は、野生型ペプチドと比較して10、9、8または7以下のアミノ酸が置換、欠失または挿入されている。いくつかの実施態様において、変異体は、野生型ペプチドと比較して6以下のアミノ酸が置換、欠失または挿入されている。いくつかの実施態様において、変異体は、野生型ペプチドと比較して5または4以下のアミノ酸が置換、欠失または挿入されている。いくつかの実施態様において、変異体は、野生型ペプチドと比較して3、2または1以下のアミノ酸が置換、欠失または挿入されている。
【0075】
用語「アミノ酸」は、本明細書中において使用されたとき、任意の天然に生じるまたは天然には生じないまたは合成アミノ酸残基を含むアミノ酸成分、すなわち、1、2、3またはそれ以上の炭素原子、典型的には1つの(α)炭素原子によって直接的に連結された少なくとも1つのカルボキシル残基および少なくとも1つのアミノ残基を含む任意の成分を意味する。
用語「誘導体」は、ペプチドに関して本明細書中で使用されたとき、対象ペプチドから誘導されたペプチドをいう。誘導体は、ペプチドがその必須の活性のいくつかを依然として維持するようなペプチドの化学的修飾体を含む。例えば、アズリンの「誘導体」は、マラリアに感染した赤血球における寄生虫血症を阻害する能力を保持する化学的に修飾されたアズリンとすることができる。対象の化学的修飾体には、これらに限定されないが、アミド化、アセチル化、硫酸化、ポリエチレングリコール(PEG)修飾、ペプチドのリン酸化またはグリコシル化が含まれる。さらに、誘導体ペプチドは、ポリペプチドまたはその断片の化学的化合物との融合、例えば、これらに限定されないが、他のペプチド、薬剤分子または他の治療学的または薬学的薬剤または検出可能なプローブとの融合であってもよい。
【0076】
用語「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、2つの配列を整列させたときに候補配列におけるアミノ酸残基と同一であるポリペプチド中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。%アミノ酸同一性を決定するために、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入し、最大の%配列同一性を達成する;保存的置換は、配列の同一性の一部とみなされない。パーセント同一性を決定するアミノ酸配列の整列手順は、当業者に周知である。しばしば、例えば、BLAST、BLAST2、ALIGN2またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に利用可能なコンピューターソフトウェアが、ペプチド配列を整列させるために使用される。特定の実施態様において、Blastp (the National Center for Biotechnology Information, Bethesda MDから入手可能)は、ロング コンプレクシティ フィルター、エクスペクト10(expect 10)、ワードサイズ3(word size 3)、イグジステンス11(existence 11)およびイクステンション1(extension 1)のデフォルトパラメーターを用いて使用される。
アミノ酸配列を整列させるとき、所与のアミノ酸配列Aと所与のアミノ酸配列B(代わりに、所与のアミノ酸配列Bと一定の%アミノ酸配列同一性を有する所与のアミノ酸配列Aということもできる)との%アミノ酸配列同一性は、以下のように計算することができる。
【0077】
%アミノ酸配列同一性 = X/Y×100
式中、
Xは、AおよびBの配列アラインメントプログラムまたはアルゴリズムのアライメントによる同一マッチ (identical matches) としてスコアされたアミノ酸残基の数である。
【0078】
Yは、Bのアミノ酸残基の総数である。
【0079】
アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくないとき、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性は、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性と等しくないであろう。より長い配列をより短い配列と比較するとき、他に言及がない限り、より短い配列は「B」配列になるであろう。例えば、切断されたペプチドを、対応する野生型のポリペプチドと比較するとき、切断されたペプチドは「B」配列になるであろう。
【0080】
「治療学的有効量」は、進行の予防または遅延化、あるいは特定の状態、患者が治療を受けるための病理学的状態または他の状態において存在する症状を部分的または全体的に緩和するのに有効な量である。治療学的に有効な量の決定は、当業者の能力の範囲において十分可能である。
【0081】
概略
本発明は、マラリアに感染した哺乳類赤血球細胞および身体組織、例えば脳組織および骨組織の寄生虫血症を阻害する、クプレドキシンおよび/またはシトクロムを使用する組成物および方法を提供する。
【0082】
以前から、藍銅鉱含有タンパク質と呼ばれるクプレドキシン、または鉄(ヘム)含有タンパク質と呼ばれるシトクロムのファミリーに属するいくつかの細菌性酸化還元タンパク質が、ガン細胞を含む哺乳類細胞に入り、アポトーシス性細胞死を誘導するかまたは細胞周期のG1拘束を通して増殖阻害を引き起こすことが知られていた (Yamada et al., Cell Cycle 3:752-755 (2004); Yamada et al., Cell Cycle 3:1182-1187 (2004))。緑膿菌によって合成されたクプレドキシン アズリンまたはシトクロムc551のような単一の細菌タンパク質は、その疎水性に基づいた活性を実証することができる。従って、野生体(wt)アズリンが、マウスJ774細胞におけるアポトーシスを誘導する一方(Yamada et al., Infection and Immunity 70:7054-7062 (2002))、突然変異体M44KM64E アズリンは、J774細胞におけるG1期で細胞周期の阻害を引き起こす(Yamada et al., PNAS 101:4770-4775 (2004))。対照的に、wtシトクロムc551が、J774細胞におけるG1期で細胞周期の阻害を引き起こす一方、突然変異体V23DI59Eシトクロムc551がアポトーシスを誘導する(Hiraoka et al., PNAS 101:6427-6432 (2004))。
【0083】
本発明によって、驚くべきことに、クプレドキシンおよびシトクロムが、マラリア原虫(熱帯熱マラリア原虫)によるヒト赤血球におけるインビトロ寄生虫血症を阻害するであろうことが明らかになった。特に、クプレドキシン アズリンおよびLazは、それぞれ約50%および約75%だけ熱帯熱マラリア原虫における寄生虫血症を阻害する。例6を参照されたい。さらに、ルスチシアニンおよびシトクロムcおよびfは、20〜30%だけ寄生虫血症を阻害した。例1を参照されたい。さらに、アズリンは、熱帯熱マラリア原虫のMSP1表面タンパク質のPf MSP1-19断片に複合化されたとき、G17.12マウスモノクローナル抗体のFab断片に対して識別可能な構造的相同性を有することが明らかになった。例2を参照されたい。阻害の態様にかかわらず、アズリンは、寄生生物の表面上のMSP1タンパク質との相互作用によって熱帯熱マラリア原虫の寄生虫血症を阻害することが考えられる。
【0084】
驚くべきことに、アズリンおよびLazが、PfMSP1-19およびPfMSP1-42熱帯熱マラリア原虫表面タンパクの両方とインビトロで結合することが明らかになった。さらに、アズリンアミノ酸残基36-89が、PfMSP1-19およびPfMSP1-42に結合するために必要とされる。さらに、淋菌由来のLazのH.8ドメインが、融合アズリンのPfMSP1-19への結合と熱帯熱マラリア原虫による寄生虫血症の阻害の両方を増加させることが明らかになった。例5および6を参照されたい。
【0085】
クプレドキシン間の高い構造的相同性のために、他のクプレドキシンは、アズリン、ルスチシアニンまたはLazと同じ抗マラリア熱の活性を有するであろうことが予想される。いくつかの実施態様において、クプレドキシンは、これらに限定されないが、アズリン、偽性アズリン、プラストシアニン、アウラシアニン、Lazまたはルスチシアニンである。特定の実施態様において、クプレドキシンは、Laz、アズリンまたはルスチシアニンである。他の実施態様において、クプレドキシンは病原菌由来である。より特定の実施態様において、クプレドキシンは、アズリンである。特に特定の実施態様において、アズリンは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アルカリゲネス フェカーリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター キシロソキシダン エスエスピー デニトリフィカンスI(Achromobacter xylosoxidans ssp.denitrificans I)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス エスピー(Methylomonas sp)、髄膜炎菌Z2491(Neisseria meningitidis Z2491)、シュードモナス フルオリセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ ファスティディオサ9a5(Xylella fastidiosa 9a5)または腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)由来である。最も特定の実施態様において、アズリンは、緑膿菌由来である。他の特定の実施態様において、クプレドキシンは、配列番号1、2〜18または21であるアミノ酸配列を含む。
【0086】
本発明によって、緑膿菌 シトクロムc551、ヒト シトクロムcおよびシアノバクテリア シトクロムf が、マラリアに感染したヒト赤血球において寄生虫血症を阻害するであろうことが明らかになった。特定の実施態様において、シトクロムは、緑膿菌由来のシトクロムc551、ヒト シトクロムcまたはシトクロムfである。他の特定の実施態様において、シトクロムは、配列番号2、19または20であるアミノ酸配列を含む。
【0087】
シトクロムc間の構造的相同性のために、他のシトクロムが、緑膿菌 シトクロムc551およびヒト シトクロムcと同じ抗マラリア熱の活性を有するであろうことが予想される。いくつかの実施態様において、シトクロムは病原菌由来である。他の特定の実施態様において、シトクロムは、マラリアに感染した赤血球、より具体的にはヒト赤血球において寄生虫血症を阻害する。他の特定の実施態様において、シトクロムは、哺乳類ガン細胞、およびより特異的にはJ774細胞において細胞周期の進行を阻害する。
【0088】
本発明の組成物
本発明は、クプレドキシンまたはシトクロムの変異体、誘導体または構造的等価物であるペプチドを提供する。いくつかの実施態様において、ペプチドは、実質的に純粋である。他の実施態様において、ペプチドは単離される。いくつかの実施態様において、ペプチドは、全長未満のクプレドキシンまたはシトクロムであり、また、クプレドキシンまたはシトクロムのいくつかの機能的特徴を保持する。いくつかの実施態様において、ペプチドは、マラリアに感染した赤血球において寄生虫血症を阻害する能力を保持し、より具体的には、ヒト赤血球において熱帯熱マラリア原虫感染を阻害する能力を保持する。特定の実施態様において、シトクロムは、緑膿菌 シトクロムc551、ヒト シトクロムc、またはシアノバクテリア シトクロムf、および具体的には、配列番号:2、19および20である。他の特定の実施態様において、ペプチドは、哺乳動物、およびより具体的にはヒトにおいて免疫反応を生じさせない。
【0089】
本発明はまた、クプレドキシン、シトクロムまたはこれらの変異体、誘導体または構造的等価物である少なくとも一つのペプチドを含む組成物を提供する。本発明はまた、クプレドキシンまたはその変異体、誘導体または構造的等価物である少なくとも1つのペプチドを含む組成物を提供する。本発明はまた、シトクロムまたはその変異体、誘導体または構造的等価物である少なくとも1つのペプチドを含む組成物を提供する。他の実施態様において、組成物は、主としてペプチドからなる。本発明はまた、薬学的組成物中において、クプレドキシン、シトクロム、またはこれらの変異体、誘導体または構造的等価物である少なくとも1つのペプチドを含む組成物を提供する。
【0090】
クプレドキシン間の高い構造的相同性のために、他のクプレドキシンは、マラリアに感染した赤血球において寄生虫血症を阻害することに関して、緑膿菌 アズリンと同じ抗マラリア熱の活性を有するであろうことが予想される。いくつかの実施態様において、クプレドキシンは、これらに限定されないが、アズリン、偽性アズリン、プラストシアニン、ルスチシアニン、Lazまたはアウラシアニンである。特に特定の実施態様において、クプレドキシンは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アルカリゲネス フェカーリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター キシロソキシダン エスエスピー デニトリフィカンスI(Achromobacter xylosoxidans ssp.denitrificans I)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス エスピー(Methylomonas sp)、髄膜炎菌Z2491(Neisseria meningitidis Z2491)、淋菌(Neisseria gonorrhea)、シュードモナス フルオリセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ ファスティディオサ9a5(Xylella fastidiosa 9a5)または腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)由来である。最も特定の実施態様において、クプレドキシンは、緑膿菌由来のアズリンである。他の特定の実施態様において、クプレドキシンは、配列番号1、3〜18または22であるアミノ酸配列を含む。他の特定の実施態様において、クプレドキシンは、髄膜炎菌または淋菌由来のLazタンパク質である。
【0091】
本発明は、野生型ポリペプチドと比較してアミノ酸が置換、欠失または挿入されているクプレドキシンまたはシトクロムのアミノ酸配列変異体を提供する。本発明の変異体は、野生型ポリペプチドの切断体であってもよい。いくつかの実施態様において、組成物は、全長野生型ポリペプチドよりも短いクプレドキシンまたはシトクロムの領域からなるペプチドを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、約10残基以上、約15残基以上または約20残基以上の切断クプレドキシンまたはシトクロムからなるペプチドを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、約100残基以下、約50残基以下、約40残基以下または約30残基以下の切断クプレドキシンまたはシトクロムからなるペプチドを含む。いくつかの実施態様において、組成物には、クプレドキシンまたはシトクロム、およびより具体的には配列番号:1-20または22に対して少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドが含まれる。
【0092】
特定の実施態様において、クプレドキシンの変異体は、緑膿菌 アズリン残基36-89を含む。他の実施態様において、クプレドキシンの変異体は、緑膿菌 アズリン残基36-89からなる。他の特定の実施態様において、変異体は、アズリン以外のクプレドキシンの等価な残基からなる。
他のクプレドキシンの変異体を、アズリン残基36-89と同様の活性を有するように設計することができると予想される。これを行うために、対象のクプレドキシンアミノ酸配列を、BLAST、BLAST2、ALIGN2またはMegalign(DNASTAR)を使用して緑膿菌 アズリン配列に整列させる。ここで、関連のある残基が緑膿菌 アズリンアミノ酸配列上に置かれ、等価な残基が対象のクプレドキシンの配列上で見出され、結果としてクプレドキシンの等価な残基が同定される。
【0093】
変異体はまた、天然には生じない合成アミノ酸で作製されたペプチドを含む。例えば、天然には生じないアミノ酸が変異体ペプチド内に統合され、血流中における組成物の半減期を延長または最適化してもよい。このような変異体には、これらに限定されないが、D, L-ペプチド(ジアステレオマー) (Futaki et al., J. Biol. Chem. 276(8):5836-40 (2001); Papo et al., Cancer Res. 64(16):5779-86 (2004); Miller et al, Biochem. Pharmacol. 36(1):169-76, (1987)); 異常アミノ酸を含むペプチド(Lee et al., J. Pept. Res. 63(2):69-84 (2004)), および炭化水素連接によるオレフィン含有非天然のアミノ酸の挿入(Schafmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122:5891-5892 (2000); Walenski et al., Science 305:1466-1470 (2004)) および ε-(3,5-ジニトロベンゾイル)-Lys残基を含むペプチドが含まれる。
【0094】
他の実施態様において、本発明のペプチドは、クプレドキシンまたはシトクロムの誘導体である。クプレドキシンまたはシトクロムの誘導体は、ペプチドがその必須の活性のうちのいくつかを依然として保持するペプチドの化学的修飾体である。例えば、アズリンの「誘導体」は、哺乳類細胞におけるマラリア寄生虫血症を阻害するその能力を保持する化学的に修飾されたアズリンとすることができる。関心対象の化学的修飾体には、これらに限定されないが、アミド化、アセチル化、硫酸化、ポリエチレングリコール(PEG)修飾付加、ペプチドのリン酸化およびグリコシル化が含まれる。さらに、誘導体ペプチドは、クプレドキシンもしくはシトクロムの融合体、またはこれらの変異体、誘導体または構造的等価物と化学的化合物(例えば、他のペプチド、薬剤分子または他の治療学的もしくは薬学的薬剤または検出可能なプローブ)との融合体であってもよい。関心対象の誘導体には、本発明のペプチドおよび組成物の血流における半減期を延長または最適化することができる化学的修飾体が含まれる。これは、例えば、循環ペプチド (Monk et al., BioDrugs 19(4):261-78, (2005); DeFreest et al., J. Pept. Res. 63(5):409-19 (2004)), N- および C- 末端修飾 (Labrie et al., Clin. Invest. Med. 13(5):275-8, (1990))、および炭化水素連接によるオレフィン含有非天然のアミノ酸の挿入(Schafmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122:5891-5892 (2000); Walenski et al., Science 305:1466-1470 (2004)). を含むがこれらに限定されない当業者に周知のいくつかの方法による。
【0095】
一実施態様において、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物は、髄膜炎菌または淋菌由来のLazのH.8領域に融合される。このようなペプチドの一例が、例4に記載されたH.8-Paz 融合タンパク質である。特定の実施態様において、H.8は、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物のC末端と融合する。他の特定の実施態様において、H.8領域は、配列番号21またはその変異体、誘導体もしくは構造的等価物である。
【0096】
本発明の組成物のペプチドは、一以上のクプレドキシンまたはシトクロムの変異体、誘導体もしくは構造的等価物であってもよいことが予想される。例えば、ペプチドは、PEG化されているアズリンの切断であってもよく、その結果、変異体および誘導体の両方になる。一実施態様において、本発明のペプチドは、オレフィン支持つなぎ鎖を含むα,α-二置換の非天然のアミノ酸で合成され、ルテニウムで触媒されたオレフィン転移による全炭化水素の「連接」によって追従される(Scharmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122:5891-5892 (2000); Walensky et al., Science 305:1466-1470 (2004))。さらに、アズリンの構造的等価物であるペプチドは、他のペプチドに融合されてもよく、構造的等価物および誘導体の両方であるペプチドを作製することができる。これらの例は単なる例示に過ぎず、本発明を制限しない。クプレドキシンまたはシトクロムの変異体、誘導体または構造的等価物は、銅を結合してもしなくてもよい。
【0097】
他の実施態様において、ペプチドは、クプレドキシンまたはシトクロムの構造的等価物であってもよい。クプレドキシンおよびシトクロムならびに他のタンパク質相互間の顕著な構造的相同性を決定する研究の例は、Toth et al. (Developmental Cell 1:82-92 (2001))を含む。
具体的には、クプレドキシンまたはシトクロムおよびその構造的等価物の間の顕著な構造的相同性は、VASTアルゴリズムを使用して決定される(Gibrat et al., Curr Opin Struct Biol 6:377-385 (1996); .Madej et al., Proteins 23:356-3690 (1995))。特定の実施態様において、クプレドキシンまたはシトクロムの構造的類似物から構造的等価物までのVAST p値は、約10-3未満、約10-5未満、または約10-7未満である。他の実施態様において、クプレドキシンまたはシトクロムおよびその構造的等価物の間の顕著な構造的相同性は、DALIアルゴリズム(Holm & Sander, J. Mol. Biol. 233:123-138 (1993)) を使用することによって決定される。特定の実施態様において、対になる構造的類似物のためのDALI Zスコアは、少なくとも約3.5、少なくとも約7.0、または少なくとも約10.0である。
【0098】
他の実施態様において、クプレドキシンの変異体または誘導体は、G17.12マウスモノクローナル抗体のFabフラグメントに対して顕著な構造的相同性を有している。この構造的類似性をどのように決定することができるかについての一例を、例3において見出すことができる。具体的には、クプレドキシンとG17.12マウスモノクローナル抗体のFabフラグメントの間の顕著な構造的相同性を、VASTアルゴリズムを使用することによって決定することができる (Gibrat et al., id.; Madej et al., id.)。特定の実施態様において、クプレドキシンとG17.12マウスモノクローナル抗体のFabフラグメントの構造的比較からのVAST p-値は、約10-4未満、約10-5未満、約10-6未満、または約10-7未満である。他の特定の実施態様において、クプレドキシンとG17.12マウスモノクローナル抗体のFab断片の構造的比較からのVASTスコアは、約9以上、約10以上、約11以上、または約12以上とすることができる。
いくつかの実施態様において、その変異体、誘導体または構造的等価物は、緑膿菌アズリン、緑膿菌シトクロムc551、ヒトシトクロムcまたはシアノバクテリア シトクロムfのいくつかの機能的特徴を有している。特定の実施態様において、本発明のペプチドは、マラリアに感染した赤血球におけるマラリアによる寄生虫血症を阻害し、より具体的には、熱帯熱マラリア原虫に感染したヒト赤血球における熱帯熱マラリア原虫による寄生虫血症を阻害する。本発明はまた、マラリアに感染した赤血球における寄生虫血症、より具体的には、熱帯熱マラリア原虫に感染したヒト赤血球における熱帯熱マラリア原虫による寄生虫血症を阻害する能力を保持するクプレドキシンおよびシトクロムc551の変異体、誘導体および構造的等価物を提供する。熱帯熱マラリア原虫に感染したヒト赤血球における熱帯熱マラリア原虫による寄生虫血症の阻害は、例6において記載された方法によって決定されてもよい。
【0099】
クプレドキシンおよびシトクロムがマラリアに感染した赤血球における寄生虫血症を阻害することができることが明らかになったので、抗マラリア熱の活性を保持するクプレドキシンおよびシトクロムの変異体、誘導体および構造的等価物を設計することができる。このような変異体および誘導体は、例えば、クプレドキシンおよびシトクロムの様々な変異体および誘導体の「ライブラリー」を創ることによって調製することができる。その後、それぞれについて、当該技術分野において知られた多くの方法の一つ(例えば、例6における例示的方法)を使用して抗マラリア活性について試験を行う。結果として得られた抗マラリア活性をもつクプレドキシンおよびシトクロムの変異体、誘導体および構造的等価物は、本明細書中において言及されたクプレドキシンおよびシトクロムの代わりまたはこれに加えて、本発明の方法において使用することができると予想される。変異体および誘導体を選択するこの方法は、本明細書中に開示された緑膿菌アズリン、緑膿菌シトクロムc551、ヒトシトクロムcまたはシアノバクテリア シトクロムfのいずれの活性に適合されてもよい。
【0100】
他の実施態様において、本発明のペプチドは、ヒト赤血球におけるマラリア原虫の細胞内複製を阻害する。マラリア原虫の細胞内の応答を決定する方法は、当該技術分野において周知であり、このような方法の一つは、例2において記載されている。
【0101】
いくつかの実施態様において、本発明のペプチドは、統計的により大きな非結合性の対照タンパク質である相対的な結合親和性をもつPfMSP1-19および/またはPfMSP1-42熱帯熱マラリア原虫表面タンパクと結合する。ペプチドは、例5において記載されるような表面プラズモン共鳴分析を使用することによってこの活性について試験することができる。1つのタンパク質が別のものに結合するかどうかを決定する他の方法は、当該技術分野において周知であり、かつ同様に使用されてもよい。
【0102】
他の実施態様において、本発明のペプチドは、統計的により大きな非結合性の対照タンパク質である相対的な結合親和性をもつICAM-3またはNCAMと結合する。ペプチドは、例7および5において記載されるような表面プラズモン共鳴分析を使用することによってこの活性について試験することができる。1つのタンパク質が別のものに結合するかどうかを決定する他の方法は、当該技術分野において周知であり、かつ同様に使用されてもよい。
【0103】
いくつかの特定の実施態様において、本発明のペプチドは、哺乳類癌細胞、より具体的にはJ774細胞においてアポトーシスを誘導する。ペプチドがアポトーシスを誘導する能力は、マイトセンサーApoAlert(商標)共焦点顕微鏡によって観察されてもよく、MITOSENSOR(商標)APOLERT(商標)ミトコンドリア膜センサーキット(Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, California, U.S.A.) を使用し、Zou et al. (J. Biol. Chem. 274: 11549-11556 (1999)) に記載された方法を使用してカスパーゼ-8、カスパーゼ-9およびカスパーゼ-3活性を測定し、例えば、APOLERT(商標)DNA断片化キット (Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, California, U.S.A.) を使用してアポトーシス誘導された核DNA断片化を検出する。
他の特定の実施態様において、本発明のペプチドは、哺乳類癌細胞、より具体的にはJ774細胞における細胞増殖の停止を誘導する。細胞増殖の停止は、例えば、Yamada et al. (PNAS 101:4770-4775 (2004)) において見出された方法によって細胞周期進行の阻害の程度を測定することによって決定することができる。他の特定の実施態様において、本発明のペプチドは、哺乳類癌細胞、より具体的にはJ774細胞における細胞周期の進行を阻害する。
【0104】
クプレドキシン
これらの小さな藍銅鉱タンパク質 (クプレドキシン) は、細菌の電子伝達鎖に関与し、あるいは未知の機能を有する電子伝達タンパク質(10-20 kDa)である。銅イオンは、タンパク質基質によってもっぱら結合される。特異的な歪んだ三角平面の配置にある銅周囲の2つのヒスチジンおよび1つのシステインリガンドは、非常に独特な電子的性質の電子配置を生み出し、強い青色を発する。多数のクプレドキシンは、高解像度で媒質中で結晶学的に特徴づけられた。
【0105】
クプレドキシンは、一般的には低い配列相同性を示すが、高い構造的相同性を示す (Gough & Clothia, Structure 12:917-925 (2004); De Rienzo et al., Protein Science 9:1439-1454 (2000).)。例えば、アズリンのアミノ酸配列は、アウラシアニン Bの配列と31%の同一性、ルスチシアニンの配列と16.3%の同一性、プラストシアニンの配列と20.3%の同一性、および偽性アズリンの配列と17.3%の同一性を示す。表1を参照されたい。しかしながら、これらのタンパク質の構造的類似性はより明白である。アズリンとアウラシアニン Bの構造の比較についてのVAST p値は10-7.4、アズリンとルスチシアニンについては10-5、アズリンとプラストシアニンについては10-5.6、およびアズリンと偽性アズリンについては10-4.1である。
【0106】
全てのクプレドキシンは、8本鎖のグリーク キー β-バレルまたはβ-サンドイッチフォールドを有し、高度に保存された位置構造を有する (De Rienzo et al., Protein Science 9:1439-1454 (2000).)。顕著な疎水性部位は、メチオニンおよびロイシンのような多くの長鎖脂肪残基の存在のために、アズリン、アミシアニン、シアノバクテリア プラストシアニン、キュウリ塩基性タンパク質中の銅原子の位置周辺に存在し、偽性アズリンおよび真核生物のプラストシアニンについてはより近い範囲に存在する。疎水性部位はまた、ステラシアニン(stellacyanin)およびルスチシアニンの銅原子の位置により近い範囲で見出されるが、異なる特徴を有する。
【表1−2】

1アライメント長:2つの構造物間で重ね合わされたC-α原子の等価対の数、すなわち、どれだけの残基が3D重ね合わせを計算するために使用されるかである。
【0107】
2P-VAL:VAST p値は、確立として表わされる類似の顕著性の測定である。例えば、p値が0.001である場合、純粋な機会によるこの質の合致に合うことに対して1000〜1である。VASTからのp値は、MMDBデータベースにおいて500の独立して無関係な型のドメインがMMDBデータベースにおいてあるという仮定を使用して、多重比較の影響のために調節される。このように示されたp価値は、500で割られて、各ドメイン対のペアの比較に対するp価値に相当する。
【0108】
3スコア:VAST構造類似性スコア。この番号は、重ね合わされた第2の構造的要素の数およびその重ね合せの質と関係する。より高いVASTスコアは、より高い類似性と相関する。
【0109】
4RMSD: オングストロームにおける2乗平均平方根重ね合わせ残余。この数は、等価なC-α原子間の平均平方距離の平方根として2つの構築物の最適な重ね合せの後に計算される。RMSD値は構造的アライメントの範囲に対応し、このサイズが全体構造の類似性の指標としてRMSDを使用するときに考慮されなければならないことに留意する。
【0110】
5C.elegansの主要な精子タンパク質は卵成熟におけるエフリンアンタゴニストであることが明らかになった (Kuwabara, 2003 “The multifaceted C. elegans major sperm protein: an ephrin signalling antagonist in oocyte maturation” Genes and Development, 17:155-161。
【0111】
アズリン
アズリンは、植物およびある細菌における電子伝達に関与するクプレドキシンのファミリーに所属する128のアミノ酸残基の銅含有タンパク質である。アズリンは、緑膿菌(PA)(配列番号1)、アクロモバクター キシロソキシダン(A.xylosoxidans)およびアクロモバクター デニトリフィカンス (A.denitrificans) (配列番号8) 由来のものを含む (Murphy et al., J. Mol. Biol. 315:859-871 (2002))。アズリン間のアミノ酸配列の同一性は、60〜90%間で変化し、これらのタンパク質は、強い構造的相同性を示した。全てのアズリンは、グリーク キー モチーフを含む特徴的なβ-サンドイッチを有する。単一の銅原子は常に、タンパク質の同じ領域に配置される。さらに、アズリンは、銅部位を囲む実質的に中性の疎水性部位を有する。
【0112】
プラストシアニン
プラストシアニンは、1分子当たり1分子の銅を含むシアノバクテリア、藻類および植物の可溶性タンパク質であり、その酸化された形態において青色を呈する。これらは葉緑体中に生じ、電子伝達体として機能する。1978年のポプラのプラストシアニンの構造の決定以来、藻類(Scenedesmus、Enteromorpha、Chlamydomonas)および植物(サヤエンドウ)のプラストシアニンの構造は、結晶学的方法またはNMR方法によって決定され、ポプラの構造は1.33Å分解能まで洗練された。配列番号4は、ホルミディウム ラミノサム(Phormidium laminosum)、好熱性シアノバクテリア由来のプラストシアニンのアミノ酸配列を示す。
【0113】
藻類および維管束植物のプラストシアニン間の配列多様性(例えば、Chlamydomonasとポプラのタンパク質間の62%の配列同一性)にも関わらず、三次元構造は保存される (例えばChlamydomonasとポプラのタンパク質間のCα位置における0.76Årms偏差)。構造的特徴は、8本鎖の逆平行のβバレル、はっきりしたネガティブ部位、および平らな疎水性表面の一終端に歪んだ四面体銅結合部位を含む。銅部位は、その電子移行機能のために最適化され、ネガティブ部位および疎水性部位は、生理学的反応パターンの認識において関与していると考えられる。化学的修飾、架橋結合、および特定部位の突然変異誘発試験は、シトクロムfとの結合相互作用におけるネガティブおよび疎水性部位の重要性を確認し、かつプラストシアニンを含む2つの機能的に顕著な電子伝達部位のモデルを確証した。一つの推定上の電子伝達部位は比較的短く(約4Å)、疎水性部位における溶媒曝露銅リガンドHis-87に関与する一方、他方はより長く(約12〜15Å)、ネガティブ部位においてほぼ保存された残基Tyr-83に関与するRedinbo et al., J. Bioenerg. Biomembr. 26:49-66 (1994)。
【0114】
ルスチシアニン
ルスチシアニンは、チオバシラス(Thiobacillus)(アシディチオバシラス(Acidithiobacillus)とも呼ばれる)から得られた藍銅鉱含有一本鎖ポリペプチドである。チオバシラス フェルロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans)(配列番号5)由来の非常に安定した高度に酸化するクプレドキシン ルスチシアニンの酸化された形態のX線の結晶構造は、多重波長の変則回析によって決定され、1.9Å分解能にまで洗練された。ルスチシアニンは、6および7本鎖のβシートで構成された核βサンドイッチ折り畳み構造で構成される。他のクプレドキシンのように、銅イオンは、歪んだ四面体において整列された4つの保存された残基 (His85、Cys138、His143、Met148) の塊によって調整されるWalter, R.L. et al., J. Mol. Biol., vol. 263, pp-730-51 (1996)。
【0115】
偽性アズリン
偽性アズリンは、藍銅鉱含有一本鎖ポリペプチドのファミリーである。アクロモバクター シクロクラステス(Achromobacter cycloclastes)から得られた偽性アズリンのアミノ酸配列は、配列番号6において示される。偽性アズリンのX線構造分析は、これらのタンパク質間の低い配列相同性にもかかわらず、アズリンに対して類似の構造を有することを示す。2つの主要な差異が、偽性アズリンとアズリンとの全体的構造の間に存在する。2つのαヘリックスからなるアズリンと比較して、偽性アズリン中にはカルボキシ末端の伸長が存在する。中央のペプチド領域において、アズリンは、偽性アズリン中では短縮化された伸長したループを含み、短いα-ヘリックスを含むフラップを形成する。銅の原子部位での唯一の主要な差異は、MET側鎖およびMet-S銅結合長の構造である。これらはアズリンよりも偽性アズリンにおいて著しく短い。
【0116】
フィトシアニン
フィトシアニンとして同定可能なタンパク質は、これらに制限されないが、キュウリ塩基性タンパク、ステラシアニン(stellacyanin)、マビシアニン(mavicyanin)、ウメシアニン(umecyanin)、キュウリ剥皮クプレドキシン、エンドウ鞘の推定上の藍銅鉱タンパク質、およびシロイヌナズナからの藍銅鉱タンパク質が含まれる。キュウリ塩基性タンパクおよびエンドウ鞘タンパク質以外の全てにおいて、藍銅鉱部位で通常見出されるアキシアルのメチオニン リガンドは、グルタミンによって置換される。
【0117】
アウラシアニン
3つの小さな藍銅鉱タンパク質で指定されたアウラシアニン A、アウラシアニン B-1およびアウラシアニン B-2は、好熱性緑色滑走光合成細菌クロロフレクス アウランティアクス(Chloroflexus aurantiacus)から単離された。2つのBは糖タンパク質であり、互いにほとんど同一の性質を有するが、Aの形態とは異なる。ナトリウムドデシル硫酸塩-ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、14(A)、18(B-2)および22(B-1)kDaとして明白なモノマー分子量を実証する。
【0118】
アウラシアニン Aのアミノ酸配列は、139残基のポリペプチドであるアウラシアニン A (Van Dreissche et al., Protein Science 8:947-957 (1999).) His58、Cys123、His128およびMet132は、これらが既知の小さな銅タンパク質プラストシアニンおよびアズリンにおいて進化上保存された金属リガンドである場合、予想される態様において間隔が置かれる。第二の構造予測はまた、アウラシアニンが緑膿菌由来のアズリンの構造とポプラ葉由来のプラストシアニンの構造と類似する一般的なβバレル構造を有することを示す。しかしながら、アウラシアニンは、両方の小さな銅タンパク質配列クラスの配列特徴を有するように見える。アズリンのコンセンサス配列との全体的類似性は、ほぼプラストシアニンのコンセンサス配列のそれと同じである。アウラシアニンのN-末端配列領域1-18は、グリシンおよびヒドロキシアミノ酸において著しく富んでいる。クロロフレクス アウランティアクス(Chloroflexus aurantiacus)(NCBIプロテインデータバンク受託番号AAM12874)由来のアウラシアニンのA鎖については典型的なアミノ酸配列である配列番号16を参照されたい。
【0119】
アウラシアニン B分子は、標準のクプレドキシンの折り畳み構造を有する。クロロフレクス アウランティアクス(Chloroflexus aurantiacus)由来のアウラシアニン Bの結晶構造が研究された (Bond et al., J. Mol. Biol. 306:47-67 (2001).)。追加のN-末端鎖を除いて、分子は、細菌のクプレドキシン、アズリンのそれと非常に類似している。他のクプレドキシンにおいて、Cuリガンドのうちの1つがポリペプチドの鎖4上に存在し、他の3つが鎖7と8との間の大きなループにそって存在する。Cu部位の幾何学は、後者の3つのリガンド間のアミノ酸スペーシングに関連して議論される。アウラシアニンBの結晶学的に特徴づけられたCu結合ドメインが、いくつかの他の膜関連電子伝達タンパク質において既知のつなぎ鎖と顕著な配列同一性を示すN末端テールによって細胞質膜の周辺質側におそらくつなぎとめられる。B形態のアミノ酸配列は、McManus et al. (J. Biol Chem. 267:6531-6540 (1992).)において示されている。クロロフレクス アウランティアクス(Chloroflexus aurantiacus)(NCBIプロテインデータバンク受託番号1QHQA)由来のアウラシアニンの鎖Bについての典型的なアミノ酸配列である配列番号17を参照されたい。
【0120】
ステラシアニン
ステラシアニンは、フィトシアニンのサブクラス、植物クプレドキシンの遍在性のファミリーである。ステラシアニンの典型的配列は、配列番号15として本明細書中に含まれる。ホースラディッシュ根 (Koch et al., J. Am. Chem. Soc. 127:158-166 (2005)) およびキュウリステラシアニン (Hart el al., Protein Science 5:2175-2183 (1996).) 由来のウメシアニン(umecyanin)、ステラシアニンの結晶構造。タンパク質は、他のフォトシアニンと類似の全体的折り畳み構造を有する。エフリンB2タンパク質外部ドメイン3次構造は、ステラシアニンとの顕著な類似性を有する (Toth et al., Developmental Cell 1:83-92 (2001).)。ステラシアニンの典型的なアミノ酸配列は、National Center for Biotechnology Information Protein Data Bankの受託番号1JER、配列番号15において見出される。
【0121】
キュウリ塩基性タンパク
キュウリ塩基性タンパク由来の典型的なアミノ酸配列は、配列番号18として本明細書中において含まれる。キュウリ塩基性タンパク(CBP)、1型藍銅鉱タンパク質の結晶構造は、1.8Å分解能で洗練された。分子は、グリークキーβバレル構造を有する他の藍銅鉱タンパク質に類似する。バレルは一方側に開いており、「ベータ-サンドイッチ」または「ベータ-タコ」として十分に記載されている (Guss et al., J. Mol. Biol. 262:686-705 (1996).)。エファリンB2タンパク質外部ドメイン三次構造は、キュウリ塩基性タンパク(Toth et al., Developmental Cell 1:83-92 (2001).)と高い類似性(50α 炭素についてrms 偏差 1.5Å)を有する。
【0122】
Cu原子は、結合長Cu-N(His39)=1.93 A、Cu-S(Cys79)=2.16 A、Cu-N(His84)=1.95 A、Cu-S(Met89)=2.61 Aを有する正常な藍銅鉱NNSS'配位を有する。ジスルフィド結合、(Cys52)-S-S-(Cys85) は、分子構造を安定させるのに重要な役割を果たすように見える。ポリペプチドの折り畳み構造は、CBPが高度の配列同一性を有する非メタロプロテイン(ブタクサ・アレルゲンRa3)と同様に、藍銅鉱タンパク質(フィトシアニン)のサブファミリーの典型である。フィトシアニンとして現在識別可能なタンパク質は、CBP、ステラシアニン(stellacyanin)、マビシアニン(mavicyanin)、ウメシアニン(umecyanin)、キュウリ剥皮クプレドキシン、エンドウ鞘における推定上の藍銅鉱タンパク質、およびシロイヌナズナ由来の藍銅鉱タンパク質である。CBPおよびエンドウ鞘タンパク質以外の全てにおいて、藍銅鉱部位で通常見出されたアキシャルなメチオニン リガンドは、グルタミンによって置換される。キュウリ塩基性タンパクのための典型的な配列は、NCBIプロテインデータバンク受託番号2CBP、配列番号18において見出される。
【0123】
シトクロム
シトクロムc551
緑膿菌(Pa-C551)由来のシトクロムc551は、亜硝酸還元酵素の生理学的電子供与体としての異化脱窒素作用に関与する、82のアミノ酸残基(配列番号2)の単量体レドックスタンパク質である。Pa-C551の機能的性質は、広範囲にわたって調査されてきた。非生理学的な小さな無機的レドックス反応物および藍銅鉱タンパク質のような他の高分子、真核生物のシトクロムcおよび生理学的パートナー亜硝酸還元酵素との反応は、タンパク質-タンパク質の電子伝達のための試験を提供した。
【0124】
細菌クラスIシトクロムの一員であるPa-C551の3次元構造は、His-Metライゲーションを含む単一の低スピンのヘムおよび典型的な、しかしながら露出したヘムのピロール環IIおよびIIIのエッジを残すポリペプチドの折り畳みを示す(Cutruzzola et al., J. Inorgan. Chem. 88:353-61 (2002))。哺乳類クラスIシトクロム中に存在する20残基オメガループの欠失は、プロピオン酸塩のレベル13のヘムのエッジのさらなる露出を引き起こす。Pa-C551の表面上の荷電残基の分布は、強い異方性を示す:一方では、酸性残基に富み、他方では、ヘムの間隙を取り囲む疎水性パッチの境界に位置する正の側鎖の環を示す。このパッチは、残基Gly11、Val13、Ala14、Met22、Val23、Pro58、Ile59、Pro60、Pro62、Pro63およびAla65を含む。異方性の荷電分布は、電子伝達複合形態にとって重要な大きな二極性モーメントを導く。
【0125】
Pa-C551について上記に記載された荷電分布は、他の電子伝達タンパク質およびこれらの電子受容体について報告されてきた。さらに、疎水性または荷電パッチ内の残基の特定部位の突然変異誘発による修飾は、結合および電子伝達のための表面相補性の重要性を異なるタンパク質について示した。例として、緑膿菌由来のアズリンの電子伝達性質についての疎水性パッチの関連性の証拠は、正および負に帯電したアミノ酸に変化した残基Met44およびMet64の変異体で行われた研究からもたらされた。
【0126】
シトクロムc型ドメインは、疎水性ポケット内で共有結合したヘムを包むのに役立つ一連のαヘリックスおよび逆ターンからなる折りたたみ構造を有する。このドメインは、単ドメインのシトクロムcタンパク質、例えばシトクロムc6、シトクロムc552、シトクロムc459およびミトコンドリア シトクロムcにおいて見出すことができる。シトクロムc型ドメインは、多数の他のタンパク質、例えばN-末端ヘムcドメインとしてシトクロムcd1-亜硝酸還元酵素において、C末端ドメインとしてキノタンパク質アルコールデヒドロゲナーゼにおいて、ドメイン1および2としてキノヘモタンパク質アミンデヒドロゲナーゼA鎖において、ならびにシトクロムbc1ドメインとしてシトクロムbc1複合体において存在する。VASTアルゴリズムでの構造的分析(照会として緑膿菌由来のシトクロムc551)は、シトクロムについてのみ顕著な構造的近接性(10-10.3〜10-4.5の間のP値)を示した。
【0127】
使用の方法
本発明は、マラリア熱の感染病の患者またはそれを獲得する危険性のある患者を治療する方法、またはマラリア原虫の拡大を阻害する方法を提供する。これらの方法は、患者または媒介昆虫に対して、マラリアに感染した哺乳類細胞の寄生虫血症を阻害するクプレドキシンもしくはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的等価物を投与することを含む。寄生虫血症の阻害は、当業者に周知の多くの方法によって決定することができる。1つの方法は、例6において記載され、マラリアに感染したヒト赤血球において寄生虫血症の阻害を決定する。他の実施態様において、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的等価物は、ヒト赤血球においてマラリア原虫の細胞内応答を阻害し、かつこれらは患者または媒介昆虫に投与される。マラリア原虫の細胞内の応答を決定する方法は、当該技術分野において周知であり、1つのこのような方法は、例2において記載されている。本発明の態様は、任意の特定の機構に制限されず、また、寄生虫血症の阻害は、これらに限定されないが、感染した赤血球における寄生生物の複製の阻害、未感染赤血球を感染させる寄生生物の阻害、寄生生物の増殖周期における阻害、および哺乳類細胞への寄生生物の進入の阻害を含む多くの態様をもたらす。
【0128】
本発明はまた、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的等価物である効果的量の少なくとも一つのタンパク質を投与することによってマラリア原虫による感染に罹患した患者を治療する方法を提供する。この方法によって治療されうる対象は、マラリア原虫によって感染されうる全ての哺乳類動物、および具体的にはヒト患者である。哺乳類動物を感染させる公知のマラリア原虫には、これらに制限されないが、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、P. berghei (齧歯目-特異的)、P. yoelli (マウス-特異的)、P. cynomolgi および P. knowlesi (サル-特異的) が含まれる。
【0129】
クプレドキシンおよびシトクロムc551はまた、共にファイルされた出願において開示されたように、HIV-1感染症に対して有効である。その出願は、「クプレドキシンおよびシトクロムcでHIV感染症を治療するための組成物および方法」米国仮特許出願番号( )であり、これらの開示内容は参照によって明らかに本明細書中に組込まれる。さらに、HIVとマラリアの同時感染は、世界中の多くの地域、特にサハラ以南のアフリカにおいてごく一般的である。いくつかの実施態様において、マラリア原虫による感染に罹患した患者はまた、HIVによる感染に苦しんでいる。いくつかの実施態様において、本発明の治療の方法はまた、抗HIV薬剤を投与することを含む。いくつかの実施態様において、抗HIV薬剤はまた、同時投与される。
【0130】
本発明はまた、クプレドキシンおよび/またはシトクロム、またはクプレドキシンもしくはシトクロムの変異体、誘導体もしくは構造的等価物である有効量の少なくとも1つのペプチドを投与することによって、マラリア原虫と接触すると疑われる患者を治療する方法を提供する。例えば、ある患者が、患者の生物種の他のもののマラリア感染が一般的である世界の地域において居住または旅行した場合、その患者がマラリア原虫と接触した疑いがある。この方法による治療は、患者がマラリア原虫と接触しそうになる、あるいは既に接触したときに推奨される。マラリア原虫との接触はしばしば、蚊のような媒介昆虫との接触によって生じる。その結果、これらの昆虫およびマラリア原虫が大量に発生する領域は、患者がマラリア原虫に接触する可能性が高い地域にあると考えられる。世界のこのような地域には、これらに制限されないが、アフリカ、アジアおよびラテンアメリカの一部が含まれる。さらに、患者は、マラリア原虫に感染した血液と接触した場合、意図的にマラリア原虫にさらされた場合、寄生生物で汚染された血液または薬剤を偶然に注入された場合、マラリア原虫との接触が疑われうる。
【0131】
クプレドキシンまたはシトクロム、またはクプレドキシンもしくはシトクロムの変異体、誘導体もしくは構造的等価物は、当業者に周知の多くの経路および多くの療法によって患者に投与されうる。特定の実施態様において、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはクプレドキシンもしくはシトクロムの変異体、誘導体もしくは構造的等価物は、経口的、局所的、吸入、注入、より具体的には、静脈内、筋肉内にまたは皮下内に投与される。
【0132】
一実施態様において、この方法は、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはその変異体、誘導体もしくは構造的等価物を含む1単位の投与量の組成物と、抗マラリア熱の薬剤および/または抗HIV薬剤を含む組成物の1単位の投与量の組成物を患者に共投与することを含む。これらの組成物は、おおよそ同時に投与されても、あるいは他の投与後の所定の時間内、例えば、約1分〜約60分、または約1時間〜約12時間後に投与されてもよい。
【0133】
本発明はまた、共に存在する哺乳類集団中における寄生虫の感染力を減少させるのに効果的な量で、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはクプレドキシンもしくはシトクロムの変異体、誘導体もしくは構造的等価物の少なくとも1つを集団中のある媒介昆虫に投与することによって、マラリア原虫をもつ媒介昆虫集団におけるマラリア原虫の拡散を阻害する方法を提供する。特定の実施態様において、媒介昆虫は蚊であり、より具体的には、ハマダラカ(Anopheles gambiae)である。この方法において、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはクプレドキシンもしくはシトクロムの変異体、誘導体もしくは構造的等価物の投与は、媒介昆虫によって消費されるであろう組成物中にこのペプチドを入れることによって遂行することができるが、媒介昆虫の腸内のマラリア原虫とペプチドを接触させる任意の方法が熟考されるている。このような消費をもたらす昆虫集団へ化学物質を投与する多くの方法が、当該技術分野において知られている。
【0134】
他の実施態様において、ある蚊から他の蚊まで伝わる伝達可能な遺伝的要素は、恒常的プロモーターに作動可能に接続されたクプレドキシンをコードする配列に作動可能に連結されているであろう。クプレドキシンもしくはシトクロム、またはクプレドキシンもしくはシトクロムの変異体、誘導体もしくは構造的等価物が熱帯熱マラリア原虫に感染したハマダラカ内部で産生され、蚊内における複製/生存に干渉するであろう。
ペプチドの媒介昆虫への投与の他の手法は、これに限定されないが、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはクプレドキシンもしくはシトクロム遺伝子の変異体、誘導体もしくは構造的等価物を、昆虫によって通常消費される他のタンパク質由来の遺伝子と融合させることを含む。媒介昆虫に投与されるペプチドの量は、媒介昆虫が哺乳動物と接触したときに哺乳動物においてマラリア原虫の感染力を軽減するのに有効な量であるべきである。特定の実施態様において、投与量は、媒介昆虫がヒトと接触したときにマラリア原虫の感染力を軽減するのに有効な量であるべきである。
【0135】
蚊の幼虫は、本発明における使用に適しており、好ましくは、使用されるプロモーターは、強力なプロモーターである。プロモーターの次の2つの代替のカテゴリーが使用のために利用可能である:誘導性プロモーターおよび恒常的プロモーター。誘導性プロモーターには、例えば、熱ショックプロモーターが含まれる。好ましくは、熱ショックプロモーターは、昆虫の熱ショックプロモーター、例えば、キイロショウジョウバエhsp70プロモーターである。これは、チチュウカイミバエ(medfly)を含む異種起源の生物種における遺伝子の発現を誘導することができる。本発明はまた、チチュウカイミバエhsp70プロモーターの使用を包含する(Papadimitriou et al., Insect Mol Biol 7:279-90(1998) )。代替の系は、抗生物質テトラサイクリンでの誘導に基づいてもよい(Heinrich and Scott, PNAS 97:8229-8232, (2000))。
【0136】
熱ショックプロモーターは、チチュウカイミバエが培養されている条件の温度を上昇させることによって誘導される。例えば、23〜25℃で、hsp70プロモーターは、低レベルで活性を示すかまたは全く活性を示さない。これは異種起源のタンパク質の産生によって誘導されるストレスなしで昆虫の幼虫が生育することを可能にする。より高温度で、しかしながら、例えば37〜42℃で、hsp70プロモーターは誘導され、高レベルで異種起源のタンパク質を発現する。
【0137】
誘導性プロモーターは、既知の誘導性遺伝子制御要素に基づいて構築されてもよい。例えば、誘導性プロモーターは、食事において投与されてもよい薬剤またはホルモンに対する反応要素を組み合わせることによって構築されてもよい。好ましい実施態様において、ヒト エストロゲン反応性要素(ERE)は、昆虫がヒト エストロゲン受容体を発現する第二のコード配列で形質転換される限り、対象のタンパク質の発現を制御するために使用されてもよい。
恒常的プロモーターはまた、昆虫の幼虫において必要とされるタンパク質および/または他のタンパク質を発現するために使用されてもよい。例えば、恒常的プロモーターは、細胞質アクチンプロモーターであってもよい。キイロショウジョウバエの細胞質アクチンプロモーターは、クローンされ(Act5C)、蚊の内部において高度な活性を示す(Huynh and Zieler, J. Mol. Biol. 288:13-20(1999) )。細胞質アクチン遺伝子およびこれらのプロモーターもまた、チュウカイミバエを含む他の昆虫から単離されてもよい。他の例は、細胞質チューブリン プロモーター、例えばチュウカイミバエの細胞質チューブリン プロモーターを含む。
【0138】
分泌されたポリペプチドを制御するプロモーターは、血リンパへのタンパク質の直接的な分泌のために、任意的には適切なシグナル配列と一緒に使用され得る。例えば、幼虫の血清タンパク質プロモーターが使用されてもよい (Benes et al., Mol. Gen. Genet 249(5):545-556 (1995))。
【0139】
蚊のためのMass rearing技術が、高度に開発されている。タンパク質の産生のために、異なる時間に開始された幼虫の培養を、適切な温度シフト措置によって同期させることができる。これは、生育速度が環境の温度に依存するために可能であり;18℃での幼虫の生育速度はおおよそ50%まで減少する。
【0140】
クプレドキシンおよび/またはシトクロムおよびその変異体および誘導体を含む薬学的組成物
クプレドキシンもしくはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的等価物を含む薬学的組成物は、任意の従来手法、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠化、乳化、カプセル化、包括化、または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。実質的に純粋なクプレドキシンおよび/またはシトクロムおよびこれらの変異体、誘導体およびその構造的等価物は、当業者に周知の薬学的に許容可能なキャリアと容易に組み合わせることができる。このようなキャリアは、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方される製剤を可能にする。適切なキャリアまたは賦形剤はまた、例えば、フィラーおよびセルロース製剤を含むことができる。他の賦形剤は、例えば、香料添加剤、着色剤、粘着防止剤、増粘剤、および他の許容可能な添加物、アジュバント、またはバインダーを含むことができる。いくつかの実施態様において、薬学的製剤は、防腐剤を実質的に含まない。他の実施態様において、薬学的製剤は、少なくとも1つの防腐剤を含む。薬学的投与形態についての一般的方法論は、Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (Lippencott Williams & Wilkins, Baltimore MD (1999))において見出される。
【0141】
クプレドキシンもしくはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的等価物を含む組成物は、注入(例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内など)、吸入、局所性投与、坐薬、経皮貼布の使用または経口を含む様々な方法において投与され得る。ドラッグ デリバリー・システムについての一般的な情報は、Ansel et al., Idにおいて見出されうる。いくつかの実施態様において、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的等価物を含む組成物は、特に、皮下および静脈注射のための注入剤として処方して直接的に使用することができる。注射可能な処方は、特に、マラリア感染のリスクのある、マラリアへの感染が予想される、あるいはマラリアに感染した患者を治療するために優位に使用され得る。また、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的等価物を含む組成物を、保護剤、例えばポリプロピレン グリコールまたは同様のコーティング剤と混合した後に経口的に取り込むことができる。
【0142】
投与が注入によるとき、クプレドキシンもしくはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体もしくは構造的等価物を、水溶液中、具体的には、生理学的に適合可能なバッファー、例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的食塩バッファーにおいて処方してもよい。前記溶液は、処方剤、例えば懸濁液、安定剤および/または分散剤を含んでもよい。代わりに、クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物は、使用前に、適切なビヒクル、例えば無菌のパイロジェンフリー水を含む組成について粉末形態中に存在してもよい。いくつかの実施態様において、薬学的組成物は、ペプチドによって刺激された免疫反応を増強するために加えられたアジュバントまたは任意の他の物質を含まない。いくつかの実施態様において、薬学的組成物は、ペプチドに対する免疫反応を阻害する物質を含む。
【0143】
投与が静脈内輸液によるとき、クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物を投与する使用のための静脈内輸液はまた、晶質またはコロイドで構成されてもよい。本明細書中で使用される晶質は、ミネラル塩または他の水溶性分子の水溶液である。本明細書中に使用されるコロイドは、ゼラチンのようなより大きな不溶性分子を含む。静脈内輸液は無菌であってもよい。
【0144】
静脈内投与に使用することができる晶質液体には、これらに制限されないが、表2に記載されたように、通常の生理食塩液(0.9%濃度の塩化ナトリウム溶液)、リンガー乳酸塩またはリンガー溶液、およびD5Wとも呼ばれる水中5%デキストロース溶液が含まれる。
【表2】

【0145】
投与が吸入によるとき、クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物は、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、二酸化炭素、他の適切なガスの使用を含む加圧パックまたは噴霧器からエアロゾルスプレーの形態において送達されてもよい。加圧されたエアロゾルの場合において、投与単位は、測定量を送達するバルブを提供することによって決定されてもよい。例えば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、吸入器または通気器において使用するために、タンパク質の粉末混合物および適切な粉末ベース、例えばラクトースまたはスターチを含むように処方される。
【0146】
投与が局所的投与によるとき、クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物は、当業者に周知であるとき、水溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして処方することができる。いくつかの実施態様において、投与は経皮貼布によって行われる。投与が坐薬(例えば、直腸または膣)によるとき、クプレドキシンおよび/またはシトクロムcならびにこれらの変異体および誘導体の組成物はまた、従来の坐薬ベースを含む組成物中において処方することができる。
【0147】
投与が経口によるとき、クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物を、当業者に周知の薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせることによって容易に処方することができる。固体キャリア、例えばマンニトール、ラクトース、マグネシウム ステアリン酸塩などを使用してもよく、このようなキャリアは、クプレドキシンおよび/またはシトクロム、およびこれらの変異体および誘導体を、治療される患者による経口摂取のために、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方することができる。経口固体処方、例えば、粉末、カプセルおよび錠剤のために、適切な賦形剤には、フィラー、例えば糖、セルロース製剤、顆粒剤、および結合剤が含まれる。
【0148】
当業者に周知の他の簡便なキャリアにはまた、多価キャリア、例えば、細菌性被膜多糖類、デキストランまたは遺伝子的操作ベクターが含まれる。さらに、クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物を含む徐放性処方は、延長された期間にわたって、クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物の放出を可能にする。徐放性処方を含まない場合、クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物は、治療学的効果を誘発または増強する前に患者の体内から除去され、および/または、例えばプロテアーゼおよび単純な加水分解によって分解されてしまう。
【0149】
本発明の組成物の血流における半減期は、当業者に周知のいくつかの方法、例えば、これらに限定されないが、循環ペプチド(Monk et al., BioDrugs 19(4):261-78, (2005); DeFreest et al., J. Pept. Res. 63(5):409-19 (2004)), D,L-ペプチド (ジアステレオマー), (Futaki et al., J. Biol. Chem. Feb 23;276(8):5836-40 (2001); Papo et al., Cancer Res. 64(16):5779-86 (2004); Miller et al., Biochem. Pharmacol. 36(1):169-76, (1987)); ペプチド含有特殊アミノ酸 (Lee et al., J. Pept. Res. 63(2):69-84 (2004)), N- および C- 末端修飾体 (Labrie et al., Clin. Invest. Med. 13(5):275-8, (1990)), および炭化水素による連結 (Schafmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122:5891-5892 (2000); Walenski et al., Science 305:1466-1470 (2004)) を含む方法によって延長または最適化することができる。特定の対象は、d-異性化(置換)およびD-置換またはL-アミノ酸置換を介したペプチド安定性の修飾および炭化水素による連結である。
【0150】
様々な実施態様において、薬学的組成物には、キャリアおよび賦形剤(緩衝液、炭水化物、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸、例えばグリシン、酸化防止剤、静菌剤、キレート剤、懸濁剤、増粘剤および/または防腐剤を含むがこれらに限定されない)、水、油、生理食塩溶液、水性デキストロースおよびグリセロール溶液、適切な生理学的条件に必要とされる他の薬学的に許容可能な補助物質、例えば、緩衝化剤、張度調節剤、湿潤剤などが含まれる。当業者に周知の任意の適切なキャリアが本発明の組成物を投与するために使用される間、キャリアのタイプが投与の形態に依存して変化することが認識されるであろう。化合物は、周知の技術を使用してリポソーム内に被包されるであろう。生分解性ミクロスフェアはまた、本発明の薬学的組成物のためのキャリアとして使用され得る。適切な生分解性ミクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号;第5,075,109号;第5,928,647号;第5,811,128号;第5,820,883号;第5,853,763号;第5,814,344号および第5,942,252号において開示されている。
【0151】
薬学的組成物は、従来の周知の殺菌技術によって殺菌されてもよいし、あるいは無菌ろ過されてもよい。得られた水溶液は使用のためにパッケージされるか、あるいは凍結乾燥された製剤が投与前に無菌溶液と組み合わされる。
【0152】
クプレドキシンおよび/またはシトクロムおよびこれらの変異体および誘導体の投与
クプレドキシンまたはシトクロム、またはその変異体、誘導体、構造的等価物は、薬学的組成物として処方して投与することができ、任意の適切な経路、例えば、経口、バッカル、吸入、舌下腺、直腸、膣、経尿道、鼻、局所、経皮(percutaneous)、すなわち経皮的(transdermal)、非経口的(parenteral)(静脈内、筋肉内、皮下内および冠内を含む)経路によって投与することができる。これらの薬学的処方は、その意図された目的を達成するのに任意の効果的量において投与することができる。より具体的には、組成物は、治療学的有効量において投与される。特定の実施態様において、治療学的有効量は、一般には約0.01〜20mg/日/kg体重である。
【0153】
クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物を含む化合物は、単独でまたは他の活性薬剤と組み合わせて、マラリア感染の治療および/または予防処置に有用である。適切な投薬量は、当然ながら、例えば、使用されるクプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物の化合物、宿主、投与の態様および治療する状態の性質および重症度に依存して変化するであろう。しかしながら、一般的には、ヒトにおいて満足な結果は、約0.01〜20mg/kg体重の毎日の投与で得られることが示されている。ヒトにおいて示された毎日の投薬量は、例えば、日投与、週投与、月投与、および/または連続的投与において簡便に投与される、約0.7mg〜約1400mgのクプレドキシンまたはシトクロムc551、またはこれらの変異体、誘導体または構造的等価物の化合物の範囲内である。日投与は、1〜12回/日の分散投与とすることができる。代わりに、1日おき、3日おき、4日おき、5日おき、6日おき、1週間おき、および同様に31日までの各日おきに投与することができる。代わりに、パッチ、静脈内投与などを使用して連続的に投与することができる。
【0154】
クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物を患者に導入する方法は、いくつかの実施態様において、クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物と、マラリア療法のために使用される他の薬剤との共投与を通して行われる。このような方法は、当該技術において周知である。特定の実施態様において、クプレドキシンおよび/またはシトクロムcは、カクテルの一部であるかまたは他のマラリア治療薬と共投与される。対象のマラリア治療薬には、これらに限定されないが、プログアニル、クロルプログアニル、トリメトプリム、クロロキン、メフロキン、ルメファントリン、アトバクオン、ピリメタミン-スルファドキシン、ピリメタミン-ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、キニジン、アモジアキン、アモピロキン、スルホンアミド、アルテミシニン、アルテフレン、アルテムエーテル、アルテスナート、プリマキン、ピロナリジン、プログアニル、クロロキン、メフロキン、ピリメタミン-スルファドキシン、ピリメタミン-ダプソーン、ハロファントリン、キニーネ、プログアニル、クロロキン、メフロキン、1,16-ヘキサデカメチレンビス(N-メチルピロリジニウム)ジブロミード、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0155】
クプレドキシンまたはシトクロムc551、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物を患者に導入する方法は、いくつかの実施態様において、抗HIV薬剤、例えば、プロテアーゼ阻害剤含有カクテルを導入するために現在使用されている方法と同じである。このような方法は、当業者において周知である。特定の実施態様において、クプレドキシンまたはシトクロムc551、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物は、カクテルの一部または抗HIV治療薬と共投与される。抗HIV薬剤にはまた、これらに限定されないが、逆転写酵素阻害剤:AZT(ジドブジン[Retrovir])、ddC(ザルシタビン[Hivid], ジデオキシイノシン)、d4T(スタブジン[Zerit])、および3TC(ラミブジン[Epivir])、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIS):デラビルジン(Rescriptor)およびネビラピン(Viramune)、プロテアーゼ阻害剤:リトナビル(Norvir)、ロピナビルおよびリトナビルの組み合わせ(Kaletra)、サキナビル(Invirase)、インジナビル硫酸塩(Crixivan)、アンプレナビル(Agenerase)、およびネルフィナビル(Viracept) が含まれる。いくつかの実施態様において、抗活性抗レトロウイルス療法(HAART)と呼ばれるいくつかの薬剤の組み合わせが、患者を治療するために使用される。
【0156】
正確な処方、投与の経路および投薬は、患者の状態を考慮して医師を出席させることによって決定される。投薬量および間隔は、治療学的効果を維持するのに十分である血漿値の活性なクプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体または構造的等価物を与えるために個別に調節することができる。一般的には、所望のクプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物は、意図した経路の投与および標準的な薬学的プラクティスに関して選択された薬学的キャリアとの混合において投与される。
【0157】
1つの側面において、クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体、構造的等価物は、ポリペプチドがin situにおいて生成されるようにDNAとして送達される。1つの実施態様において、DNAは、例えばUlmer et al., (Science 259:1745-1749 (1993))に記載され、Cohen (Science 259:1691-1692 (1993)) によってレビューされたように「裸」にされる。裸のDNAの取り込みは、DNAをキャリア(例えば、分解後に細胞内に効果的に輸送される、生物分解性ビーズ)上にコーティングすることによって増加させてもよい。このような方法において、DNAは、核酸発現系、細菌およびウイルス発現系を含む、当業者に周知の任意の様々な送達系内に存在してもよい。このような発現系にDNAを挿入するための技術は、当業者に周知である。例えば、WO90/11092、WO93/24640、WO 93/17706、および米国特許第5,736,524号を参照されたい。
【0158】
生物から生物まで遺伝物質を送り込みために使用されるベクターは、2つの一般的分類に分けることができる:クローニングベクターは、外来DNAを挿入することができる適切な宿主細胞内の増殖のために不可欠である領域でプラスミドまたはファージを複製する。外来DNAは、それがベクターの成分であるかのように複製および増殖する。発現ベクター(例えば、プラスミド、酵母、または動物性ウイルスゲノム)は、外来DNA(例えば、クプレドキシンおよび/またはシトクロムのDNA)を転写および翻訳するために、外来遺伝子物質を宿主細胞または組織に導入するために使用される。発現ベクターにおいて、導入されたDNAは、要素(例えば、挿入されたDNAを高度に転写するために宿主細胞にシグナルを送るプロモーター)に発現可能に連結される。いくつかのプロモーターは、例外的に有用な、例えば、特定の因子に応じて遺伝産物を制御する誘導性プロモーターである。誘導性プロモーターに発現可能に機能するクプレドキシンまたはシトクロムおよびこれらの変異体および誘導体のポリヌクレオチドは、特定の因子に応じてクプレドキシンまたはシトクロムおよびこれらの変異体および誘導体を制御することができる。古典的な誘導性プロモーターの例には、α-インターフェロン、熱ショック、重金属イオン、およびステロイド、例えばグルココルチコイド(Kaufman, Methods Enzymol. 185:487-511 (1990))およびテトラサイクリンに応答性であるものが含まれる。他の望ましい誘導性プロモーターには、構築物が導入される細胞内に内在しないが、しかしながら、誘導物質が外因的に供給されるこれらの細胞内において応答性であるものが含まれる。一般的には、有用な発現ベクターはプラスミドであることが多い。しかしながら、他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)が考えられる。
【0159】
ベクターの選択は、使用される生物または細胞およびベクターの所望の結末によって指示される。一般的には、ベクターは、シグナル配列、複製起点、マーカー遺伝子、ポリリンカー部位、エンハンサー要素、プロモーターおよび転写終結配列が含まれる。例として、一つはマラリア寄生中の住処である蚊において送達可能なベクターにクプレドキシンまたはシトクロム遺伝子をクローニングし、寄生中が蚊内部で複製することを防ぐ。ベクターの送達可能性は、同様にマラリア寄生虫に感染する他の周りの蚊へのクプレドキシン/シトクロムの拡大を可能にするであろう。
正確な処方、投与の経路、および投与量は、患者の状態を考慮して主治医によって決定される。投与量およびその間隔は、活性なクプレドキシンおよび/または、患者を治療および/または治療学的効果を維持するのに十分な、シトクロムおよびこれらの変異体および誘導体の血漿値を提供するために個別に調節することができる。一般的には、所望のクプレドキシンおよび/またはシトクロム、およびこれらの変異体および誘導体は、投与の意図した経路および標準的な薬学的プラクティスに従って選択された薬学的なキャリアと混合して投与することができる。本発明に従って使用される薬学的組成物は、治療学的に使用することができる製剤に、クプレドキシンおよび/またはシトクロムおよびこれらの変異体および誘導体のプロセスを容易にする賦形剤および補助剤、クプレドキシンおよび/またはシトクロムおよびこれらの変異体および誘導体の分泌を阻害または刺激する活性剤、またはこれらの混合物を含む一以上の生理学的に許容可能なキャリアを使用して従来手法において処方することができる。
【0160】
クプレドキシンおよび/またはシトクロムCおよびこれらの変異体および誘導体を含むキット
一側面において、本発明は、パッケージまたは容器内において一以上の以下のものを含むキットを提供する: (1) クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体または構造的等価物を含む生物学的活性組成物; (2) 薬学的に許容可能なアジュバントまたは賦形剤; (3) 注射器のような投与のための媒体; (4)投与のための説明書。2以上の成分(1)〜(4)が同じ容器内に見出される実施態様もまた考慮される。
【0161】
他の側面において、本発明は、パッケージまたは容器内において一以上の以下のものを含むキットを提供する: (1) クプレドキシンまたはシトクロム、またはこれらの変異体、誘導体または構造的等価物を含む生物学的活性組成物;(2) マラリア治療剤、これらに限定されないが、プログアニル、クロルプログアニル、トリメトプリム、クロロキン、メフロキン、ルメファントリン、アトバクオン、ピリメタミン-スルファドキシン、ピリメタミン-ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、キニジン、アモジアキン、アモピロキン、スルホンアミド、アルテミシニン、アルテフレン、アルテムエーテル、アルテスナート、プリマキン、ピロナリジン、プログアニル、クロロキン、メフロキン、ピリメタミン-スルファドキシン、ピリメタミン-ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、プログアニル、クロロキン、メフロキン、1,16-ヘキサデカメチレンビス(N-メチルピロリジニウム)ジブロミド; (3) 薬学的に許容可能なアジュバントまたは賦形剤; (4) 注射器のような投与のための媒体; (5) 投与のための説明書。2以上の成分(1)〜(5)が同じパッケージまたは容器内に見出される実施態様もまた考慮される。
【0162】
いくつかの実施態様において、キットにはまた、パッケージまたは容器内に抗HIV治療剤が含まれる。対象の抗HIV治療剤には、これらに制限されないが、逆転写酵素阻害剤: AZT(ジブドジン[Retrovir])、ddC(ザルシタビン[Hivid]、ジデオキシイノシン)、d4T(スタブジン[Zerit])、および3TC(ラミブジン[Epivir])、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIS):デラビルジン(Rescriptor)およびネビラピン(Viramune)、プロテアーゼ阻害剤:リトナビル(Norvir)、ロピナビルとリトナビルの組み合わせ(Kaletra)、サキナビル(Invirase)、インジナビル硫酸塩(Crixivan)、アンプレナビル(Agenerase)およびネルフィナビル(Viracept) が含まれる。いくつかの実施態様において、強力な活性抗レトロウイルス療法(HAART)と呼ばれるいくつかの薬剤の組み合わせが、キット内に含まれる。
【0163】
キットが提供される場合、組成物の異なる成分が、別々の容器内にパッケージングされ、使用前に直ちに混合されてもよい。成分のこのようなパッケージングは、活性成分の機能を失わずに長期間にわたす貯蔵を可能にする。
キット内に含まれる試薬は、異なる成分の活性を保存し、かつその材質によって吸着または変更を加えない全ての種類の容器内に供給される。例えば、密封ガラスアンプル容器には、クプレドキシンおよび/またはシトクロムcおよびこれらの変異体および誘導体の凍結乾燥されたポリペプチドまたはポリヌクレオチド、または中性で非反応性のガス、例えば窒素下でパッケージングされたバッファーが含まれる。アンプル容器は、任意の適切な材料、例えばガラス、有機ポリマー(例えばポリカーボネート、ポリスチレンなど)、セラミック、金属または類似の試薬を保持するために典型的に使用される任意の他の材料からなってもよい。適切な容器の他の例には、ホイルラインインテリア(foil-lined interiors)、例えばアルミニウムまたは合金を含むアンプル容器およびエンベロープ容器と類似の物質から作製することができる単純なボトル容器が含まれる。他の容器には、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジなどが含まれる。容器には、皮下注射針によって貫通することができる栓を有するボトルのような、無菌アクセスポートがあってもよい。他の容器には、それが除去されたときに成分が混合されることを可能にする容易に除去可能な膜によって分離される2つの区画があってもよい。除去可能な膜は、ガラス、プラスチック、ゴムなどとすることができる。
【0164】
キットはまた、説明書類とともに提供することができる。説明書は、紙または他の媒体に印刷され、および/または電子的に読み取り可能な媒体、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROMとDVD-ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープ、フラッシュメモリデバイスなどとして提供されてもよい。詳細な説明書は、キットに物理的に付随していなくともよく、代わりに、ユーザーは、キットの製造業者または販売業者によって作成されたインターネットウェブサイトにアクセスしてもよいし、あるいは電子メールで入手してもよい。
【0165】
クプレドキシンおよび/またはシトクロムの修飾
クプレドキシンまたはシトクロムは、化学的に修飾または遺伝的に変化し、上述したような変異体および誘導体を生成する。このような変異体および誘導体は、標準的な技術によって合成することができる。
【0166】
クプレドキシンおよびシトクロムの天然に生じる対立遺伝子の変異に加えて、クプレドキシンまたはシトクロムをコードする配列内の変異によって変化を導入することができる。ここでは、マラリア感染赤血球における寄生虫血症を阻害するクプレドキシンまたはシトクロムの能力をそれほど変化させない程度にクプレドキシンまたはシトクロムのアミノ酸配列が変化する。「非必須な」アミノ酸残基とは、生物学的活性を変更せずに野性型配列のクプレドキシンから変更することができる残基である。一方、「必須な」アミノ酸残基は、このような生物学的活性に必要とされる。例えば、クプレドキシンの中に保存されたアミノ酸残基は、特に変更を受け入れることができないと予想され、従って「必須」である。
【0167】
ポリペプチドの活性を変化させない保存的置換を行うことができるアミノ酸は当業者に周知である。有用な保存的置換が「好ましい置換」として表3において示されている。一つのクラスのアミノ酸が同じタイプの他のアミノ酸と置換されることによる保存的置換は、その置換が化合物の生物学的活性を実質的に変化させない限りにおいて本発明の範囲内にある。
【表3】

【0168】
(1)ポリペプチド骨格の構造、例えばβ-シートまたはα-へリックス高次構造、(2)電荷、(3)疎水性、または(4)標的部位の側鎖の塊に影響を与える非保存的置換は、細胞毒性因子の機能を修飾することができる。残基は、表4に示されたように共通の側鎖特性に基づいた群に分けられる。非保存的置換には、これらの分類の一つの群を他の分類に交換したものが含まれる。置換は、保存的な置換部位またはより具体的には非保存的部位に導入されてもよい。
【表4】

【0169】
変異体ポリペプチドは、オリゴヌクレオチド媒介(特定部位の)突然変異誘発、アラニン走査、およびPCR突然変異誘発のような当該技術分野において周知の方法を使用して作製することができる。特定部位の突然変異誘発 (Carter, Biochem J. 237:1-7 (1986); Zoller and Smith, Methods Enzymol. 154:329-350 (1987)、カセット式変異誘発、制限部位選択の突然変異誘発(Wells et al., Gene 34:315-323 (1985))または他の既知の技術は、クプレドキシンまたはシトクロムc551変異体DNAを生成するためにクローン化されたDNA上で行なうことができる。
【0170】
クプレドキシンおよびシトクロムc551の既知の変異はまた、本発明の方法において使用される変異体クプレドキシンおよびシトクロムc551を作製するために使用することができる。例えば、アズリンのC112DおよびM44KM64E変異体は、在来のアズリンとは異なる細胞毒素および成長拘束活性を有することが知られており、このような変化した活性はまた、本発明の治療方法において有用である。本発明の方法の1つの実施態様は、クプレドキシンおよび/またはシトクロムならびに哺乳理細胞においてマラリア感染の増殖を阻害する能力を保持するこれらの変異体および誘導体を利用する。他の実施態様において、本発明の方法は、細胞増殖を停止させる能力を有するクプレドキシン変異体、例えばM44KM64E突然変異体を利用する。
【0171】
本発明のより完全な理解は、次の特定の例の参照によって得ることができる。これらの例は、もっぱら例証の目的のために記載され、本発明の範囲を制限することを意味しない。形態の変化および等価物の置換は、環境が便宜を示唆または提示するものとして考慮される。特定の用語が本明細書中において使用されるば、これらの用語は、記述的意味を意図し、本発明を制限するものではない。前述した本発明の修飾および変異は、本発明の精神および範囲から外れずに得られる。従って、これらの制限は、与えられた実施態様のみに課されるべきである。
【例】
【0172】
例1:クプレドキシンおよびシトクロムによる熱帯熱マラリア原虫による寄生虫血症のインビトロ阻害
クプレドキシン細菌wtアズリン、M44KM64Eアズリン、ルスチシアニンおよびシアノバクテリア プラストシアニン、ならびに緑膿菌シトクロムc551、ヒト シトクロムcおよびホルミディウム ラミノサム(Phormidium laminosum)シトクロムfを、200μg/ml 濃度、30時間後接種で正常な赤血球(RBC)アッセイにおいて試験した。これらの試験において、正常なRBCを、無血清培地中で2度洗浄し、完全RPMI中の10%ヘマトクリットに再懸濁した。200μlの10% Hct RBCを24ウェルの各々に加え(1 mlで最終2%Hct)、200μMの最終濃度のために666μMで組み換え体クプレドキシンまたはシトクロム タンパク質を含む30μlの完全RPMIを加えた。シゾント段階の寄生生物は、Percollクッションを通して3200 rpmで10分間にわたって後期培養物を遠心分離することによって調製した。感染については、4×106寄生生物/500μl容積中ウェルを、t=0時間で加えた。プレートを30時間にわたってインキュベートし、血液塗抹標本およびギムザ染色によってスコア化した。
【0173】
対照は9.5%寄生虫血症(標準誤差1.3%)を示し、その他、wt アズリン 6.9%(標準誤差1.4%)、M44KM64E アズリン 9.1%(標準誤差1.0%)、ルスチシアニン7.2%(標準誤差0.7%)、シトクロムc5517.5%(標準誤差1.5%)、ヒト シトクロムc 8.4%(標準誤差0.4%)、プラストシアニン8.1%(標準誤差1.3%)およびシトクロムf 6.6%(標準誤差1.0%)となった。これは、クプレドキシン、例えばwt アズリンおよびルスチシアニンおよびシトクロム(例えば、シトクロムfまたはシトクロムc551)による、寄生虫血症の20〜30%阻害を実証したことを示している。
【0174】
クプレドキシンを、寄生生物のライフサイクル(0〜24時間、環形態;24〜36時間、トロフォゾイト;36〜48時間、シゾント)の各段階でのその効果について試験した。対照は、平均0.1%の環形態および9.4%のトロフォゾイト形態を示した。一方、wt アズリンは、環形態には効果がなかったものの、6.9%のトロフォゾイト形態を示した。シトクロムfは、0.2%の環形態を示したが、著しく低い(6.3%)トロフォゾイト形態を示した。とりわけ、ルスチシアニンは、非常に高い(2.0%)環形態と、著しく軽減された(5.2%)トロフォゾイト形態を示した。他のものには顕著な効果はなかった。ルスチシアニン-処理サンプル中の寄生生物は、残りのサンプルと比較して衰弱して死に至り、寄生生物発育上でのルスチシアニンの顕著な阻害および毒性効果を示した。
【0175】
例2:ルスチシアニンによる熱帯熱マラリア原虫の細胞内応答のインビトロ阻害
細菌の酸化還元タンパク質がマラリア原虫の細胞内応答を阻害することができるかどうかを判断するために、赤血球を、低張性形骸製剤を使用して200μg/mlの細胞内組換えタンパク質濃縮液に添加した。血球細胞をその後に洗浄、再懸濁し、例1に記載されたようにシゾント段階の寄生生物(P. falciparum)に感染させた。赤血球形骸を、19時間〜40時間にわたってインキュベートし、ギムザ塗抹標本を作製した。
【0176】
例1における正常な赤血球の感染と比較して、ルスチシアニンのみが、添加された細胞形骸培養液において寄生虫血症の総数を減少させた。19時間の時点で、5.0±0.4%での空の形骸および4.5±1.0%でのルスチシアニン添加形骸で、浸潤および環形態における顕著な差異はみられなかった。しかしながら、40時間の時点で、ルスチシアニンを添加した形骸はより低いレベルの感染を示した。主要な結果は、全ての細菌タンパク質で19時間の時点では見られなかった。しかしながら、40時間の時点で、対照の未処理の形骸が4.6±0.3%寄生虫血症を示したのに対し、ルスチシアニン処理形骸は2.7±0.8%寄生虫血症(ほとんど50%の減少)を示した。表5を参照されたい。Wt アズリン、M44KM64E突然変異体アズリン、プラストシアニン、シトクロムc551、ヒトシトクロムcおよびシアノバクテリア シトクロムfタンパク質は、4.2〜5.4%の異なる寄生虫血症を示した。
【表5】

【0177】
例3:アズリンとPf MSP1-19と複合化されたG17.12モノクローナル抗体のFab断片との間の構造的相同性
先の研究は、クプレドキシンが免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーの可変ドメインと構造的類似性を示すことを示した (Gough & Chothia, Structure 12:917-925 (2004); Stevens et al., J. Mol. Recognit. 18:150-157 (2005))。DALIアルゴリズム(Holm & Park, Bioinformatics 16:566-567 (2000)) は、緑膿菌由来のアズリン(1JZG)の構造的相同性について3Dデータベースを探索するために使用された。アズリンは、熱帯熱マラリア原虫のMSP1メロゾイト表面タンパク質のPf MSP1-19断片と複合された、G17.12モノクローナル抗体のFab断片と構造的類似性を示す(Pizarro et al., J. Mol. Biol. 328:1091-1103 (2003).)。(表6) アズリンはまた、ICAM-1との構造的類似性を示す(表6)。これは、脳マラリアに関与し、熱帯熱マラリア原虫に感染した赤血球の隔離のために脳および他の組織の毛細血管内の内皮細胞上で受容体と関係づけられる(Smith et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:1766-1771 (2000); Franke-Fayard et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:11468-11473 (2005))。
【0178】
この例は、アズリンを含むクプレドキシンが、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーの可変ドメインならびに細胞間接着分子(ICAM)およびこれらのリガンドの細胞外ドメインとジスルフィド結合によって向かい合ってパックされ、かつ連結された2つのアンチパラレルなβシートを有する構造的類似性を実証することを示している。
【表6】

【0179】
例4:LazおよびH.8-アズリン融合遺伝子のクローニングおよび発現
淋菌由来のlaz遺伝子を、その既知の配列(配列番号22)に基づいてクローニングした。緑膿菌のアズリン遺伝子(配列番号1)(pazと命名)と、淋菌由来のlazのH.8エピトープの配列(配列番号21)を使用して、H.8エピトープ遺伝子を枠内においてクローニングし、pazの5'末端においてH.8-pazを生成するかまたはpazの3'末端においてpaz-H.8を生成する。
【表7】

【0180】
Pazおよびlaz遺伝子のクローニングおよび発現
アズリン遺伝子のクローニングおよび過剰発現が記載されている (Yamada, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:14098-14103 (2002); Punj, et al., Oncogene 23:2367-2378 (2004))。淋菌のLazコード遺伝子(laz)を、鋳型DNAとして淋菌株F62のゲノムDNAでPCRによって増幅した。使用されるフォワードおよびリバースプライマーは、5'-CCGGAATTCCGGCAGGGATGTTGTAAATATCCG-3'(配列番号23) および5'-GGGGTACCGCCGTGGCAGGCATACAGCATTTCAATCGG'(配列番号24)とした。付加的に導入された制限部位のEcoRIおよびKpnI部位にはそれぞれ下線を引いた。EcoRIおよびKpnIで消化された1.0kbの増幅されたDNA断片を、pUC18ベクターの対応する部位に挿入した(Yanisch-Perron, et al., Gene 33:103-119 (1985))。そして、laz遺伝子を、lacプロモーターの下流に配置し、発現プラスミドpUC18-lazを得た(表7)。
【0181】
淋菌 Lazと緑膿菌のアズリン(Paz)の融合H.8を発現するプラスミドを、鋳型としてpUC19-pazおよびpUC18-lazでPCRによって構築した。H.8-Paz融合については、3.1kb断片を、鋳型およびプライマーとしてpUC18-lazで増幅し、5'-(リン酸化)GGCAGCAGGGGCTTCGGCAGCATCTGC-3'(配列番号25)および5'-CTGCAGGTCGACTCTAGAGGATCCCG-3'(配列番号26)。SalI部位に下線を引いた。PCR増幅された0.4kbの断片は、鋳型およびプライマーとしてpUC19-pazから得られた。5'-(リン酸化)GCCGAGTGCTCGGTGGACATCCAGG-3'(配列番号27)および5'-TACTCGAGTCACTTCAGGGTCAGGGTG-3'(配列番号28)。XhoI部位に下線を引いた。pUC18-laz由来のSalI消化PCR断片およびpUC19-paz 由来のXhoI消化PCR断片をクローニングして発現プラスミドpUC18-H.8-pazを得た(表7)。
【0182】
大腸菌JM109は、アズリンおよびその誘導体遺伝子の発現のために宿主株として使用された。組み換え型の大腸菌株を、37℃で16時間にわたって100μg/mlアンピシリン、0.1mM IPTGおよび0.5mM CuSO4を含む2×YT培地中において培養し、アズリンタンパク質を産生した。
【0183】
これらのプラスミドを包含する大腸菌がIPTGの存在下において増殖したとき、溶解した細胞およびアズリンについて記載されたように精製されたタンパク質(Yamada, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:14098-14103 (2002); Punj, et al., Oncogene 23:2367-2378 (2004);Yamada, et al., Cell. Microbiol. 7:1418-1431 (2005))、様々なアズリン誘導体が、単一成分としてSDS-PAGE上で移動した。但し、H.8含有タンパク質(約17kDa)は、前に示したように、異例の移動を示した (Cannon, Clin. Microbiol. Rev. 2:S1-S4 (1989); Fisette, et al., J. Biol. Chem. 278:46252-46260 (2003))。
【0184】
融合GSTタンパク質のためのプラスミド構築。
融合グルタチオンS転移酵素(GST)を発現するプラスミド - 切断されたwt-アズリン(azu)誘導体は、校正DNAポリメラーゼを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって構築された。pGST-azu 36-128については、増幅されたPCR断片は、商業的なGST発現ベクターpGEX-5XのBamHlおよびEcoRl 部位に導入した(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)。断片を、鋳型およびプライマーとしてpUC19-azuで増幅した。5’-CGGGATCC CCG GCA ACC TGC CGA AGA ACG TCA TGG GC-3’(配列番号:29) および 5’-CGGAATTC GCA TCA CTT CAG GGT CAG GG-3’ (配列番号:30)。付加的に導入されたBamHlおよびEcoRI部位にそれぞれ下線を引いた。azu遺伝子のカルボキシル末端切断を、QuickChange特定部位の突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA)を使用して終止コドンを導入することによって累積的に行った。
【0185】
pGST-azu 36-89については、終止コドンをGly90に導入した。 pGST-azu 36-128を運ぶプラスミドを、鋳型DNAとして使用した。特定部位の突然変異誘発についての3セットのオリゴヌクレオチドは、以下のように示される。pGST-azu 36-89については:5’-CCA AGC TGA TCG GCT CGT GAG AGAAGG ACT CGG TGA CC-3’ (配列番号:31)、および 5’-GGT CAC CGA GTC CTT CTC TCA CGA GCC GAT CAG CTT GG-3 (配列番号:32)。
【0186】
pGST-azu 88-113については、azu遺伝子のカルボキシル末端切断を、QuickChange特定部位の突然変異誘発キットを使用してストップコドンを導入することによって累積的に行った。pGST-azu 88-113については、終止コドンを、Phe114に導入した。pGST-azu 88-128を保有するプラスミドを、鋳型として使用した。pGST-azu 88-128については、増幅されたPCR断片を、市販のGST発現ベクターpGEX-5X(Amersham Biosciences)のBamH1およびEcoR1部位に導入した。断片を、鋳型およびプライマー、5’-CGGGGATCC CCG GCT CGG GCG AGA AGG AC-3’ (配列番号:33) および 5’-CGGGAATTC TCC ACT TCA GGG TCA GGG TG-3’ (配列番号:34)としてpUC19-azuで増幅した。追加的に導入されたBamH1およびEcoR1部位にはそれぞれ下線を引いた。
【0187】
部位特異的な突然変異誘発についての一セットのオリゴヌクレオチドは、pGST-azu 88-113の調製のために以下のように示される: 5’-GTT CTT CTG CAC CTA GCC GGG CCA CTC CG-3’ (配列番号:35) および 5’-CGG AGT GGC CCG GCT AGG TGC AGA AGA AC-3’ (配列番号:36)。pGST-azu 88-113は、大腸菌XL-1青色株を形質転換するために使用される。プラスミド抽出物は、商業的なキットを使用して行われ(Qiagen, Venlo, The Netherlands)、かつPCRによる配列決定を、プラスミドの挿入および形質移入を評価するために行った。
【0188】
大腸菌BL21(DE3)を、gstおよびその融合誘導体の発現のために宿主株として使用した。pGST-azuプラスミドで形質転換された大腸菌株XL-1-Blueを、アンピシリンを含むLB培地中において37℃で3時間にわたって増殖させた。IPTG誘導(0.4mM)は、37℃で2〜4時間にわたって後のインキュベーションを行い、発現レベルを最大にした。細胞を遠心分離によって単離し、25mLの1×PBSバッファーにおいて再懸濁した。後の細胞溶解液について、超音波処理を介した細胞懸濁(氷上20分)およびアセトン乾燥冷却バス中における熱冷却ショック(適切なプロテアーゼ阻害剤を使用)の2つの経時的な処理を施した。細胞溶解混合液の上清を単離し、新たにパックされた、PBSで平衡化された1 mLグルタチオン-セファロース 4B (Amersham Biosciences)カラムを通過させた。カラム洗浄後、20mM Tris-HCl pH 8中の10mMグルタチオンを使用してGST-azu生成物の溶出を行った。GST-Azu 88-113の純度を、クーマシーブリリアントブルーR試薬で染色された10%SDS-PAGEトリス-Glyゲルを使用する電気泳動を介して試験した。タンパク濃度は、ブラッドフォード法を使用して決定された。
【0189】
例5:アズリンは、熱帯熱マラリア原虫メロゾイト表面タンパク質MSP1のC-末端断片MSP1-19およびMSP1-42と結合する。
アズリンとPf MSP1-19と複合化したモノクローナル抗体G17.12のfab断片との間に構造的類似性を付与し(Pizarro et al., id)、Pf MSP1-42またはPf MSP1-19と複合体を形成するアズリンの能力を決定した。ゴンノコッシ(gonnococci)およびメニンゴコッシ(meningococci)、例えばH.8エピトープと呼ばれるさらなる39のアミノ酸エピトープを備えた髄膜炎菌由来のアズリンの2つの誘導体、Laz、アズリン様タンパク質 (Gotschlich & Seiff, FEMS Microbiol. Lett. 43:253-255 (1987);Kawula et al., Mol. Microbiol. 1:179-185 (1987)) およびH.8-アズリン(LazのH.8エピトープが枠内において緑膿菌アズリンのN-末端部に融合されている(例4において記載されたように))について試験を行った。
【0190】
インビトロでのタンパク質−タンパク質相互作用を、Biacore AB International製のBiacore X分光計を使用して評価した。すべての試験を、Au-CM5センサーチップ(Biacore)を使用してHBS-EPランニングバッファー(0.01M HEPES、pH 7.4、0.15 M NaCl、3mM EDTA、0.005%v/v界面活性剤P20)において25℃で行った。CM5チップ上でのタンパク質の固定を、アミンカップリング処理によって行った。タンパク質を、CM5表面のNHS/EDC前活性化の後に固定した(510μM):50μlのアズリンの注入(510μM)。エタノールアミン(1M、pH 8.8)でのCM5表面の後処理によって、非架橋タンパク質を除去した。結合研究は、注入終了から120秒間遅れで30μl/分の流量でタンパク質-CM5表面にわたってタンパク質溶離剤(50μl)を注入することにより行った。タンパク質溶離剤には、GST-アズリン融合タンパク質(例4に記載されたようなGST、GST-Azu 36-128、GST-Azu 36-89、およびGST-Azu 88-113)を含ませた。センサーチップ表面を、100 mM NaOH(10μl注入パルス)を使用してタンパク質注入間で再生成した。全ての結合研究を、露出したAu-CM5センサー表面を備えたネガティブフローチャネルに対して並行して行い、チップに対する非特異的な結合を修正した。結合定数データを得るために、滴定試験を、増加する濃度のタンパク質溶離剤(0.05〜2000 nM)の注入を介して設計した。SPRデータを、結合定数(Kd)が外挿されたBiacoreソフトウェアにおいて特定されるようにLangmuir(1:1)の平衡結合モデル [Req=Rmax/(1 + Kd/C]に適合させた。
【0191】
アズリン、H.8-アズリンおよびLazとPf MSP1-19およびPf MSP1-42タンパク質の特異的相互作用を、表面プラズモン共鳴(SPR)分析によって決定し、データは図1において示す。アズリンおよびその誘導体と固定化されたPf MSP1-19およびPf MSP1-42の結合のためのSPR センサグラムは、これらのタンパク質の間で選択的認識を示した。ナノモル濃度のアズリンが、固定化されたMSP1-19(図1A)またはMSP1-42(図1B)との顕著な結合を可能にし、H.8-アズリンおよびLazの両方は、アズリンとMSP1-19の間の32.2 nMおよびアズリンとMSP1-42の間の54.3 nMの特徴的Kd値で、メロゾイト表面タンパク質MSP1切断産物と結合するより高い親和性を実証した。H.8-アズリンとMSP1-19およびMSP1-42との間のKd値は、11.8 nMおよび14.3 nMであったのに対し、LazとMSP1-19およびMSP1-42との間の値は、それぞれ26.2 nMおよび45.6 nMであった。
【0192】
H.8エピトープがPfMSP1-19またはPfMSP1-42部位に対するH.8-アズリンまたはLazの結合を容易にするであろうか否かを評価するために、MSP1-19またはMSP1-42と結合する、H.8エピトープがGSTのN末端に融合した場合の(例4を参照)、グルタチオンS転移酵素(GST)および融合誘導体H.8-GSTの能力について試験を行った。H.8-GSTはMSP1-42と弱い結合を示したが、GSTまたはH.8-GSTはいずれもPfMSP1-19(図1A)またはMSP1-42(図1B)と結合しなかった。
【0193】
アズリンの一部がGSTと融合した場合のグルタチオンS転移酵素(GST)およびいくつかの融合タンパク質(Yamada et al., Cell. Microbiol. 7:1418-1431 (2005)、および例4)を、MSP-19と結合するその能力について試験した。GST単独、またはGST-Azu 88-113は、アズリンの128アミノ酸のうちアズリンアミノ酸配列88〜113が、枠内のGSTと融合した場合、あらゆる結合を示さなかったが(図1C)、一方、アミノ酸配列36〜89を含むGST-Azu36-89およびアミノ酸配列36〜128を含むGST-Azu36-128は、それぞれ20.9nMおよび24.5nMのKd値を示すMSP-19との顕著な結合を示した。
【0194】
例6:アズリン、H.8-アズリンおよびLazによる熱帯熱マラリア原虫による寄生虫血症の阻害。
寄生虫血症の程度を、シゾント段階の寄生生物および正常な赤血球(RBC)を用いて決定した。正常な赤血球(RBC)を、無血清培地において2度洗浄し、完全RPMI中において10%ヘマトクリットに再懸濁した。200μlの10% ヘマトクリットRBCを24ウェルの各々に加え、アズリン、H.8-アズリンまたはLazを含まないかまたは様々な濃度で含む300μl完全RPMIを加えた。シゾント段階の熱帯熱マラリア原虫寄生生物は、後期培養物をPercollクッションを通して3200rpmで10分間にわたって遠心分離することによって調製した。感染のために、500μl容積中のウェル当たり4×106の寄生生物を時間0で加えた。プレートを終夜(約16時間)インキュベートし、その後に薄い血液塗抹標本およびギムザ染色によってスコアリングした。
【0195】
アズリン、H.8-アズリンまたはLazのすべてにおいて、比較的高濃度(約50μM)ではあるが、投与量に依存した寄生虫血症の顕著な阻害が実証され(図2)、このような高濃度は、おそらくマラリア原虫が赤血球に浸潤する多数の方法を反映し(Cowman et al., FEBS Lett. 476:84-88 (2000); Baum et al., J. Biol. Chem. 281:5197-5208 (2006))、高濃度のアズリンまたはLazは、侵入プロセスに干渉するために必要である。MSP1-19に対するその増強された結合親和性によって示されるように、H.8-アズリンおよびNeisserial Lazタンパク質の両方は、アズリンと比較したときに熱帯熱マラリア原虫による寄生虫血症のより高いレベルの阻害を示した。
【0196】
アズリンを赤色蛍光色素Alexa fluor 568でラベルし、浸潤アッセイに用いると、微量な赤色蛍光がRBC内部で検出可能となった。これは、アズリンがMSP1-19に結合し、その一部としてRBCに入らないことを示唆している。より具体的には、シゾントの存在を示したRBCは、アズリンがMSP1-19と結合できなかったものであったことを示唆している。これらのデータは、我々の以前の観察と完全に一致し(Yamada et al., Cell. Microbiol. 7:1418-1431 (2005))、アズリンは通常の細胞、例えばマクロファージ、マスト細胞などに入らず、アズリン、H.8-アズリンまたはLazの効果は、寄生生物の細胞内複製段階ではなく、浸潤の段階にある。総合すれば、図2におけるデータは、寄生生物によるRBCの浸潤における干渉を通じたアズリン、H.8-アズリンおよびLazの潜在的な抗マラリア作用を実証している。
【0197】
例7.アズリンはICAMと結合する。
熱帯熱マラリア原虫に感染した赤血球の受容体として関与することが知られているICAMとアズリンとの間の興味深い構造的類似性(表6)(Wassmer et al., PloS Med. 2:885-890 (2005); Dormeyer et al., Antimicrob. Agents Chemotherap. 50:724-730 (2006))は、アズリンとICAM、例えばICAM-1、ICAM-2、ICAM-3およびNCAMとの間のSPRによって測定されたタンパク質-タンパク質相互作用の試験分析を促進した。CM5チップ上に固定されたアズリンと、ICAM-3(図3、Kd=19.5+5.4nM)およびNCAM(図3、挿入図)(しかし、興味深いことにICAM-1およびICAM-2ではない)は、強い結合を示した。発明がもたらす手法を制限するものではないが、熱帯熱マラリア原虫寄生虫血症の阻害についてのアズリンの効果の一部は、ICAM-3またはNCAMとのその相互作用を介して媒介される可能性がある。
【0198】
例8.マラリアにさらされた可能性のある、あるいは実際にさらされた患者の治療
マラリア予防のための臨床的使用、一以上のクプレドキシンおよび/またはシトクロムを含む薬剤を患者に投与する。
【0199】
免疫蛍光アッセイによって決定されたときに血液段階の熱帯熱マラリア原虫寄生生物に対する抗体の先在の履歴のない、マラリアが風土病である地域において居住している15人の健康な男性ボランティア(22〜50歳)に、精製されたクプレドキシンおよび精製されたシトクロムの薬学的製剤を注入する。このうち二人の男性は非処理の対照として位置づける。
【0200】
無菌の薬学的製剤は、当業者に周知である静脈内投与のために設計された薬学的製剤中における無菌のシュードモナス アエルギノサ(P.aerugninosa)アズリンの0.5mlの単投与アンプルの形態にある。薬学的製剤は4℃で貯蔵し、投与前に光から保護した。1つの臨床試験において、アズリンを、5つの異なる濃度: 10μg、30μg、100μg、300μgおよび800μgアズリン/0.5ml投与量で調製する。
【0201】
薬学的製剤を各々10投与量分13人のボランティアに静脈内投与した。ボランティアは0日目に最初の治療を受け、続いて、同一の投与を3週間にわたって一日おきに行う。ボランティアには、注入後の20分間にわたって直ちに毒性効果が観察される。24時間および48時間後、彼らには、熱、局所的な圧痛、紅斑、ほてり、硬化およびリンパ節腫脹の徴候について検査がなされ、頭痛、熱、寒気、倦怠感、局所的痛み、吐き気および関節痛の有無について尋ねる。各投与の前に、血液および尿のサンプルについて全臨床検査を行なう。完全な血球算定および血清化学プロファイルは、各投与の2日後に再検査する。マラリア原虫の存在は、汚染された血液塗抹標本の光顕微鏡検査(ME)、またはICTマラリアP.f./P.v.試験キット( Binax, Inc., Portland, ME)によって決定する。結果は、治療の有効性を実証する。
【0202】
例9:昆虫のマラリア感染の制御
ある蚊から他の蚊に伝わる伝染性の遺伝的要素は、恒常的プロモーターに機能的に接続されたクプレドキシンコード配列に機能的に接続されるであろう。従って、緑膿菌アズリンは、熱帯熱マラリア原虫に感染したハマダラカ内部において産生されるであろう。これは、蚊内部におけるその複製/生存について干渉する。この蚊は風土病地域に生存し、アズリン包含遺伝的要素が、緑膿菌増殖または生存を阻害する、他の緑膿菌感染ハマダラカに広がるであろう。
【0203】
例10:マラリアによって感染した患者の治療
ヒトのマラリア感染の治療のための、1以上のクプレドキシンおよび/またはシトクロムを含む、マラリア治療の臨床的使用。
【0204】
免疫蛍光アッセイによって決定されたときに血液段階の熱帯熱マラリア原虫寄生生物に対する抗体の先在の履歴のある、年齢22〜50歳の15人の健康な男性のボランティアについて、精製された緑膿菌アズリンの薬学的製剤を注射する。このうち二人の男性は、処理の対照として位置づける。
【0205】
無菌の薬学的製剤は、当業者に周知である静脈内投与のために設計された薬学的製剤中における無菌のシュードモナス アエルギノサ(P.aerugninosa)アズリンの0.5mlの単投与アンプルの形態にある。薬学的製剤は4℃で貯蔵し、投与前に光から保護する。1つの臨床試験において、シュードモナス アエルギノサ アズリンを、0.5ml投与当り5つの異なる濃度: 10μg、30μg、100μg、300μgおよび800μgアズリン/シトクロムc551(分子基準で1:1)で調製する。
【0206】
薬学的製剤を各々10投与量分13人のボランティアに静脈内投与する。ボランティアは0日目に最初の治療を受け、続いて、同一の投与を3週間にわたって一日おきに行なう。ボランティアには、注入後の20分間にわたって直ちに毒性効果が観察される。24時間および48時間後、彼らには、熱、局所的な圧痛、紅斑、ほてり、硬化およびリンパ節腫脹の徴候について検査がなされ、頭痛、熱、寒気、倦怠感、局所的痛み、吐き気および関節痛の有無について尋ねる。各投与の前に、血液および尿のサンプルについて全臨床検査を行なう。完全な血球算定および血清化学プロファイルについて、各投与の2日後に再検査する。マラリア原虫の存在は、汚染された血液塗抹標本の光顕微鏡検査(ME)、またはICTマラリアP.f./P.v.試験キット( Binax, Inc., Portland, ME)によって決定する。結果は、治療の有効性を実証する。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】図1は、アズリン、H.8-アズリン(H.8-Az)、LazおよびGST-アズリン(GST-Azu)構築物の、MSP1-19およびMSP1-42との相互作用を示す表面プラズモン共鳴結合性滴定である。(A)カルボキシメチルデキストラン被覆金センサーチップ上に固定化されたMSP1-19(MSP1-19-CM5)とのアズリンおよびその類似体の相互作用を実証する結合曲線。MSP1-19へのアズリンタンパク質の濃度依存的結合が、センサー表面にわたる様々な濃度(0.05-300 nM)の注入によって決定され、結合の程度は、共鳴単位(RU)において測定された平衡共鳴反応値の関数として評価された。H.8-AzおよびLazはアズリンよりもいくぶん強く結合したが、GSTまたはH.8-GSTでは結合は認められなかった。(B)固定化されたMSP1-42とアズリンおよびその類似体についてのインビトロでの結合滴定が、(A)に示されるようなMSP1-19に対する結合性と同様のやり方において行われた。相対的な結合親和力は、Req=Rmax/(1+(Kd/C))にデータをあてはめ、グラフ内のデータポイントを結び付けて曲線をあてはめることによって決定された。MSP1-19結合Kd値は、32.2±2.4 nM(アズリン)、26.2±2.4 nM(Laz)、11.8±0.3 nM(H.8-Az)であり、MSP1-42結合Kd値は、54.3±7.6 nM(アズリン)、45.6±2.4 nM(Laz)および14.3±1.7 nM(H.8-Az)である。(C)MSP1-19-CM5センサー表面に関するGST-Azu融合タンパク質の相互作用についての結合滴定は、MSP1-19でのGST-Azu 36-128およびGST-Azu 36-89の認識を実証する。GSTまたはGST-Azu 88-113では結合は認められなかった。
【図2】図2は、図に示された異なる濃度のアズリン、H.8-アズリン(H.8-Az)およびLazによる熱帯熱マラリア原虫血症(RBC内での寄生増殖)の阻害を示す。これらの試験において、終夜培養された正常な赤血球は、これらのタンパク質の欠損中または存在中(異なる濃度)においてシゾントに感染した。また、細胞内の寄生生物の個体数は、薄い血液塗抹標本およびギムザ染色によってスコア化された。
【図3】図3は、ICAM(ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3およびNCAM、挿入図)と固定化されたアズリンとの結合についての表面プラズモン共鳴結合曲線である。裸のAU-CM5チップに対する大きな非特異的結合のために、CM5を、ランニングバッファーに溶離剤として加えた(HBS-EPバッファーに1mg/ml CM5)。ICAM-1またはICAM-2ではなくICAM-3でのアズリンの選択的認識が顕著であり、結合力は19.5±5.4 NMであった。アズリンと結合するNCAMについてのKDは、挿入図に示されるように、20±5.0 NMであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クプレドキシンまたはシトクロムの変異体、誘導体または構造的等価物であり、かつマラリアに感染した赤血球におけるマラリアによる寄生虫血症を阻害することができる、単離ペプチド。
【請求項2】
熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)に感染したヒト赤血球におけるマラリアによる寄生虫血症を阻害することができる、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項3】
クプレドキシンまたはシトクロムの変異体、誘導体または構造的等価物であり、かつマラリアに感染したヒト赤血球におけるマラリア原虫の細胞内複製を阻害することができる、単離ペプチド。
【請求項4】
クプレドキシンの変異体、誘導体または構造的等価物であり、かつPfMSP1-19およびPfMSP1-42からなる群から選択されたタンパク質と結合することができる、単離ペプチド。
【請求項5】
前記クプレドキシンが、アズリン、偽性アズリン、プラストシアニン、ルスチシアニン、Lazおよびアウラシアニンからなる群から選択される、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項6】
前記クプレドキシンが、ルスチシアニン、アズリンおよびLazからなる群から選択される、請求項5に記載の単離ペプチド。
【請求項7】
前記クプレドキシンが、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アルカリゲネス フェカーリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター キシロソキシダン(Achromobacter xylosoxidan)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス エスピー(Methylomonas sp)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhea)、シュードモナス フルオリセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ ファスティディオサ(Xylella fastidiosa)および腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)からなる群から選択された生物由来である、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項8】
前記クプレドキシンが、チオバシラス フェルロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、淋菌(Neisseria gonorrhea)および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)からなる群から選択された生物由来である、請求項6に記載の単離ペプチド。
【請求項9】
前記シトクロムが、シトクロムcおよびシトクロムfからなる群から選択される、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項10】
前記シトクロムcが、ヒトおよび緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からなる群から選択された生物由来である、請求項9の単離ペプチド。
【請求項11】
前記シトクロムfが、シアノバクテリア由来である請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項12】
配列番号1〜20および22からなる群から選択されたペプチドの切断体である、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項13】
配列番号1〜20および22からなる群に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を示す、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項14】
クプレドキシンまたはシトクロムの切断体である請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項15】
前記ペプチドが、約10残基以上かつ約100残基以下である請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項16】
前記ペプチドが、アズリン残基36〜89を含む請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項17】
前記ペプチドが、アズリン残基36〜89からなる請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項18】
前記ペプチドが、アズリン36〜89と等価なクプレドキシンの残基を含む請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項19】
LazのH.8領域に融合された、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項20】
モノクローナル抗体G17.12の構造的等価物である、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項21】
薬学的組成物において請求項1に記載の少なくとも1つのクプレドキシン、シトクロムまたは単離ペプチドを含む組成物。
【請求項22】
前記薬学的組成物が、静脈内投与のために処方される請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
他の抗マラリア薬剤をさらに含む請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
抗HIV薬剤をさらに含む請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記クプレドキシンが、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アルカリゲネス フェカーリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター キシロソキシダン(Achromobacter xylosoxidan)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス エスピー(Methylomonas sp)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhea)、シュードモナス フルオリセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ ファスティディオサ(Xylella fastidiosa)および腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)からなる群から選択された生物由来である、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
前記クプレドキシンが、チオバシラス フェルロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans)、淋菌(Neisseria gonorrhea)および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)からなる群から選択された生物由来である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記シトクロムが、シトクロムcおよびシトクロムfからなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
前記シトクロムcが、ヒトおよび緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からなる群から選択された生物由来である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記シトクロムfが、シアノバクテリア由来である請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記クプレドキシンまたはシトクロムcが、配列番号1〜20および22からなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項31】
請求項21に記載の有効量の組成物を患者に投与することを含む、マラリア原虫による感染症に罹患した患者を治療するための方法。
【請求項32】
請求項21に記載の有効量の組成物を患者に投与することを含む、マラリア原虫と接触した疑いのある患者を治療するための方法。
【請求項33】
マラリア原虫を内包する媒介昆虫の集団内における媒介昆虫に、請求項21に記載の有効量の組成物を投与することを含む、哺乳動物におけるマラリアを防ぐための方法。
【請求項34】
前記ペプチドが、患者のマラリアに感染したヒト赤血球におけるマラリアによる寄生虫血症を阻害する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記マラリア原虫が、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)および熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が、HIV感染症にさらに罹患している請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、抗マラリア薬剤および抗HIV薬剤からなる群から選択された活性成分を含む第2の組成物とともに投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
請求項21に記載の組成物が、前記第2の組成物の投与の0分〜12時間以内に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が、経口、吸入、静脈内、筋肉内および皮下内投与からなる群から選択された方法によって患者に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物が、患者に対して静脈内投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が、媒介昆虫に対して経口投与される、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−504567(P2009−504567A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512549(P2008−512549)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/019492
【国際公開番号】WO2006/127477
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(500106802)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (15)
【Fターム(参考)】