説明

クメン生産プロセス

アセトンおよびベンゼンからクメンを生産するためのプロセスにおいて、アセトンを含む第一供給流と水素とを、第一反応ゾーンにおいて、水素化触媒の存在下、前記アセトンの少なくとも一部をイソプロパノールに転化させてイソプロパノールが豊富な第一液体排出流と未反応水素が豊富な第一蒸気流とを生産するのに十分な水素化条件下で、接触させる。次に、前記第一液体排出流の少なくとも一部に(該第一液体排出流の中間精製なしで)、および場合により前記第一蒸気流の少なくとも一部に、ベンゼンを追加して、第二供給流を形成する。次に、前記第一反応ゾーンとは別の第二反応ゾーンにおいて、前記第二供給流とアルキル化触媒とを、前記第二供給流の少なくとも一部を液相状態で維持するために十分な、ならびに前記第二供給流中のイソプロパノールの少なくとも一部を前記ベンゼンと反応させてクメンおよび水を形成し、少なくともクメン、水および未反応ベンゼンを含む第二排出流を生産するために十分なアルキル化条件下で、接触させる。前記第一蒸気流および/または前記第二排出流から水素を分離する。前記水素の少なくとも一部を、前記第一反応ゾーンに再循環させる、および/またはこのシステムからパージする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クメンを生産するためのプロセスに関し、詳細には、排他的にではないが、クメンを生産するためのおよびクメンをフェノールに転化させるための一貫プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
クメンは、一般に、酸性触媒の存在下でのベンゼンのプロピレンでのアルキル化によって生産される。初期のクメンプラントは、触媒として固体リン酸を使用したが、最近では殆どのクメン製造業者がリン酸の代わりにゼオライト系触媒を用いている。ベンゼンのアルキル化プロセスを触媒するゼオライトの例は、例えば、米国特許第4,185,040号、米国特許第4,992,606号および米国特許第5,073,653号において見つけることができる。
【0003】
クメン製造業者が直面している1つの問題は、プロピレンの費用の増大およびプロピレンの供給不足の拡大であり、それにより代替Cアルキル化剤を見つけることが望ましくなっている。例えば、イソプロパノールでベンゼンをアルキル化することによってクメンを生産することは公知であるが、大部分の酸性触媒に関して、このプロセスにおいて併産される水はクメン選択性および触媒寿命に悪影響を及ぼす。
【0004】
世界中で生産されているクメンの大部分はフェノールに転化される。フェノールは、フェノール系樹脂およびパラ,パラ−ビスフェノールAを生産するために、潤滑油を精製するための選択溶剤として使用できるからであり、また、シクロヘキサノン、サリチル酸、フェノールフタレイン、ペンタクロロフェノール、アセトフェンチジン、ピクリン酸、殺菌塗料、および医薬の製造に広く応用でき、ならびに研究室用試薬として使用できるからである。
【0005】
クメンのフェノールへの転化は、一般に、ホック(Hock)プロセスによって果たされ、このプロセスでは、最初にクメンを酸化してクメンヒドロキシペルオキシドを形成し、次にそれを分解または開裂させて当モル量のフェノールとアセトンを生産する。1950年代のAllied Chemical and Hercules Chemical Co.の特許にさかのぼる従来のホックプロセスは、アセトン併産物に対する妥当な需要があるならば経済的である。しかし、世界市場では、フェノールに対する需要は依然として高いが、アセトンは長年にわたって余剰がある。
【0006】
プロピレン不足の拡大およびアセトンの供給過剰にかんがみて、その過剰アセトンをクメン生産用の供給原料として使用するためのプロセスの開発に、暫くの間、関心が寄せられた。
【0007】
例えば、参照により本明細書に援用する米国特許第5,015,786号(Araki‘786)は、フェノールと併産されるアセトンをイソプロパノールに転化させ、その後、プロトン交換Y型ゼオライト触媒を使用して該イソプロパノールでおよび場合によりプロピレンでベンゼンをアルキル化してクメンを生産する工程を含み、その結果、通常のアセトン併産物を伴わずにフェノールが形成されるクメンプロセスによる、フェノール調製プロセスを教示している。
【0008】
Araki‘786に多少類似しているのが米国特許第5,017,729号(‘729 Fukuhara)であり、これも参照により本明細書に援用し、ならびにこれは、(a)塩化アルミニウム錯体の存在下でベンゼンとプロピレンを反応させてクメンを合成することと、(b)工程(a)のクメンをクメンヒドロキシペルオキシドに酸化することと、(c)クメンヒドロキシペルオキシドをフェノールおよびアセトンに酸開裂させることと、(d)工程(c)のアセトンをイソプロパノールに水素化することと、(e)工程(d)のイソプロパノールをプロピレンに脱水することと、(f)工程(e)のプロピレンを工程(a)に再循環させることとを含む、多工程フェノール生産プロセスを教示している。工程(e)からプロピレン製産品を取ることもできる。
【0009】
同じく参照により本明細書に援用する米国特許第5,160,497号(Juguin‘497)は、あまり望ましくないアセトン併産物の処理に特に対処するフェノール生産プロセスのさらにもう1つの変型を教示している。例えば、Juguin‘497特許には、「現今のこの[クメンからフェノール]プロセスの主な不利益は、フェノールに対する需要がアセトンに対する需要よりはるかに急速に拡大しているため、フェノール1トンあたり0.61トンのアセトンの不可避的併産に存する」と述べられている(第1欄、58〜61行目)。Juguin‘497特許の改良点は、「生産されたアセトンをイソプロピルアルコールに部分水素化または完全水素化する点、および後述のものを少なくとも一部はベンゼンのアルキル化段階に再循環させ、そこで、プロピレンへの脱水後、それを再びクメンに変える点」であると述べられている(第1欄、66行目〜第2欄、2行目)。
【0010】
しかし、Juguin‘497特許には、従来のアルキル化触媒は「水に非常に敏感であるためイソプロピルアルコールの存在下でのベンゼンのアルキル化反応には適さない」(第2欄、8〜12行目)ので、この発明の実施成功は、非常に触媒に依存するとさらに述べられている。従来の塩化アルミニウムまたはリン酸触媒を使用するのではなく、Juguin‘497は、イソプロピルアルコールの脱水によって生成される水蒸気の存在下で安定であると言われている特定のクラスのゼオライト触媒である脱アルミニウムY型ゼオライトに方向転換している。
【0011】
同じく参照により本明細書に援用する、Cappellazzo et al.の米国特許第6,512,153号には、イソプロパノール単独でのまたはプロピレンと混合されたイソプロパノールとの反応による芳香族化合物のアルキル化のためのプロセスであって、前記反応が大細孔型ゼオライト、例えばベータ、Y、ZSM−12およびモルデン沸石、の存在下で行われるプロセスが開示されている(第4欄、1〜3行目)。Cappellazzo et al.によると、反応器の液相中の水の濃度は、決して8,000ppm w/wを超えてはならない。
【0012】
同じく参照により本明細書に援用する、Sakuth et al.の米国特許第6,841,704号は、イソプロパノール、またはイソプロパノールとプロピレンの混合物を、10:1より大きいSiO/Alモル比を有するβ型ゼオライト触媒の存在下でベンゼンと反応させる、クメンを調製するためのプロセスであって、フェノール調製のためのプロセスと一体化させることができるプロセスが開示されている。
【0013】
同じく参照により本明細書に援用する、Fallon et al.の米国特許第6,888,035号には、クメンヒドロキシペルオキシドを形成するためのクメンの酸化と、クメン、フェノール、アセトンおよび様々な副産物(アルファメチルスチレンを含む)を形成するための酸開裂、続いて、前記アセトンの少なくとも一部および前記アルファメチルスチレンの実質的に全部のその後の水素化とを含む、フェノールを生産するための方法が開示されている。得られたイソプロパノールを蒸留によって分離し、クメンを生産するためのアルキル化反応器にベンゼンおよびプロピレンと共に供給することができる。
【0014】
Girotti et al.の米国特許出願公開第2005/0075239号には、固体酸性材料および銅を含む触媒組成物の存在下で、ケトンおよび水素と芳香族化合物を反応させることを含む、アルキル化芳香族化合物を調製するためのプロセスが開示されている。この出願は、そのような二元機能触媒の組成に主として焦点をあて、どのように反応器システムを運転して高性能を達成するかを詳細に教示していない。従って、米国特許出願公開第2005/0075239号は、1つの反応ゾーンにおいてアセトンをイソプロパノールに水素化するために1つの触媒組成物を使用し、別の反応ゾーンにおいてイソプロパノールとベンゼンを反応させてクメンを生産するために別の触媒組成物を使用し、高性能を達成するための前記2つの反応ゾーンの運転操作を詳細に教示している本発明とは異なる。
【0015】
欧州特許第1,069,099号には、ゼオライトベータの存在下、ならびに反応混合物が完全に気相状態であるような温度および圧力条件下、単独でのまたはプロピレンとの混合物でのイソプロパノールでのベンゼンのアルキル化による、クメンを生産するためのプロセスが開示されている。前記イソプロパノールは、クメンをフェノールに変える際に併産されるアセトンの水素化によって生産される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、これらの最近の進歩にもかかわらず、クメンとフェノールの一貫生産プラントに容易に組み込むことができる、アセトンをクメンに転化させるための単純で費用効率の良いプロセスをさらに開発しなければならない。本発明は、この問題に対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1つの態様において、本発明は、アセトンおよびベンゼンからクメンを生産するためのプロセスに存し、このプロセスは、
(a)第一反応ゾーンにおいて、水素化触媒の存在下、アセトンを含む第一供給流と水素とを、前記アセトンの少なくとも一部をイソプロパノールに転化させてイソプロパノールが豊富な第一液体排出流と未反応水素が豊富な第一蒸気流とを生産するために十分な水素化条件下で、接触させることと、
(b)前記第一液体排出流の少なくとも一部に(該第一液体排出流の中間精製なしで)、および場合により前記第一蒸気流の少なくとも一部に、ベンゼンを追加して、第二供給流を形成することと、
(c)前記第一反応ゾーンとは別の第二反応ゾーンにおいて、前記第二供給流とアルキル化触媒とを、前記第二供給流の少なくとも一部を液相状態で維持するために十分な、ならびに前記第二供給流中のイソプロパノールの少なくとも一部を前記ベンゼンと反応させて、クメンおよび水を形成し、少なくともクメン、水および未反応ベンゼンを含む第二排出流を生産するために十分なアルキル化条件下で、接触させることと、
(d)前記第一蒸気流および/または前記第二排出流から水素を分離することと、
(e)前記(d)において分離した前記水素の少なくとも一部を前記第一反応ゾーンに再循環させる、および/または前記(d)において分離した前記水素の少なくとも一部をパージすることと
を含む。
【0018】
便利には、前記水素化触媒は、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、白金、パラジウム、ルテニウムおよびロジウムから成る群より選択される少なくとも1つの金属またはその化合物を含む。
【0019】
便利には、前記接触工程(a)における前記条件は、20℃〜350℃の温度、100kPa〜20,000kPaの圧力、および0.1:1〜100:1の水素のアセトンに対するモル比を含む。
【0020】
便利には、前記アルキル化触媒は、ZSM−3、ZSM−4、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−14、ZSM−18、ZSM−20、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ゼオライトベータ、ゼオライトY、超安定Y(Ultrastable Y:USY)、脱アルミニウムY(Dealuminized Y:Deal Y)、モルデン沸石、MCM−22、PSH−3、SSZ−25、ERB−1、ITQ−1、ITQ−2、MCM−36、MCM−49、MCM−56、およびUZM−8から成る群より選択される少なくとも1つのゼオライト触媒を含む。
【0021】
1つの実施形態において、前記アルキル化触媒は、少なくとも1つのMCM−22ファミリーのモレキュラーシーブを含む。便利には、前記MCM−22ファミリーの前記モレキュラーシーブは、12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07および3.42±0.07オングストロームの面間隔d最大値を含むX線回折パターンを有し、概して、MCM−22、PSH−3、SSZ−25、ERB−1、ITQ−1、ITQ−2、MCM−36、MCM−49、MCM−56、UZM−8、およびそれらの混合物から選択される。
【0022】
便利には、前記接触工程(c)における前記条件は、20℃〜350℃の温度、100kPa〜20,000kPaの圧力、および0.1:1〜100:1の前記第二反応ゾーンに供給されるベンゼンのCアルキル化剤(イソプロパノール+任意の追加プロピレン)に対するモル比を含む。
【0023】
1つの実施形態において、前記プロセスは、前記第一液体排出流の少なくとも一部を前記第一反応ゾーンに再循環させることをさらに含む。
【0024】
さらなる実施形態において、前記プロセスは、前記第二液体排出流の少なくとも一部を前記第二反応ゾーンに再循環させることをさらに含む。
【0025】
さらなる実施形態において、前記プロセスは、
(i)前記第二排出流を、水素が豊富な第二蒸気流と、水が豊富な水性流と、クメンおよび未反応ベンゼンから主として成る芳香族流とに分けることと、
(ii)前記芳香族流の少なくとも一部を前記第二反応ゾーンに再循環させることと、
(iii)前記水素が豊富な蒸気流中の水素の少なくとも一部を前記第一および第二反応ゾーンに再循環させる、および/または前記水素が豊富な蒸気流中の水素の少なくとも一部をパージすることと
をさらに含む。
【0026】
1つの実施形態において、前記第一反応ゾーンおよび第二反応ゾーンは、単一反応器内に収容される。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、フェノールを生産するための一貫プロセスに存し、このプロセスは、
(a)第一反応ゾーンにおいて、水素化触媒の存在下、アセトンを含む第一供給流と水素とを、前記アセトンの少なくとも一部をイソプロパノールに転化させてイソプロパノールが豊富な第一液体排出流と未反応水素が豊富な第一蒸気流とを生産するために十分な水素化条件下で、接触させることと、
(b)前記第一液体排出流の少なくとも一部に(該第一液体排出流の中間精製なしで)、および場合により前記第一蒸気流の少なくとも一部に、ベンゼンを追加して、第二供給流を形成することと、
(c)前記第一反応ゾーンとは別の第二反応ゾーンにおいて、前記第二供給流とアルキル化触媒とを、前記第二供給流の少なくとも一部を液相状態で維持するために十分な、ならびに前記第二供給流中のイソプロパノールの少なくとも一部を前記ベンゼンと反応させて、クメンおよび水を形成し、少なくともクメン、水および未反応ベンゼンを含む第二排出流を生産するために十分なアルキル化条件下で、接触させることと、
(d)前記第一蒸気流および/または前記第二排出流から水素を分離することと、
(e)前記(d)からの前記水素の少なくとも一部を前記第一反応ゾーンに再循環させる、および/または前記(d)からの前記水素の少なくとも一部をパージすることと、
(f)前記第二排出流からのクメンを分離し、該クメンの少なくとも一部を酸化してクメンヒドロキシペルオキシドを形成することと、
(g)前記クメンヒドロキシペルオキシドの少なくとも一部を開裂させて、フェノールおよびアセトンを含有する開裂排出流を形成することと、
(h)前記開裂排出流からアセトンを分離し、アセトンの少なくとも一部を前記接触工程(a)に再循環させることと
を含む。
【0028】
1つの実施形態では、前記第二供給流にプロピレンを追加する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態に従って、アセトンからクメンを生産するためのプロセスの作業工程図である。
【図2】図2は、本発明のもう1つの実施形態に従って、アセトンからクメンを生産するためのプロセスの作業工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
アセトンからクメンを生産するためのプロセスであって、好ましくは実質的にベンゼンがないアセトン供給材料を、第一反応ゾーンにおいて、アセトンをイソプロパノールに転化させるために十分な水素化条件下、水素化触媒の存在下で水素と接触させるプロセスを、本明細書に記載する。前記第一反応ゾーンからの排出物は、イソプロパノールが豊富な第一液体流と未反応水素が豊富な第一蒸気流とを含む。前記第一蒸気流中の未反応水素の少なくとも一部を、一般に、前記第一蒸気流から分離し、その後、前記第一反応ゾーンに再循環させる、および/またはそのシステムからパージする。
【0031】
中間精製していないが場合によりプロピレンを追加した、前記第一液体流中のイソプロパノールの一部を、その後、第一反応ゾーンとは別の第二反応ゾーンにおいて、しかし一般には同じ反応容器において、ベンゼンとおよび場合により前記第一蒸気流の一部と接触させる。前記第二反応ゾーンにおける接触は、アルキル化触媒の存在下で、ならびに前記第二供給流の少なくとも一部を液相状態で維持するために十分なおよびイソプロパノールをベンゼンと反応させてクメンと水を形成するために十分なアルキル化条件下で行う。存在する場合にはプロピレンもベンゼンと反応してクメンを形成する。
【0032】
前記第二反応ゾーンからの排出物は、少なくともクメン、水、未反応ベンゼンおよび場合により第一蒸気流からの未反応水素を含む。存在する場合には前記未反応水素を第二反応器排出物から除去し、少なくとも一部は第一反応ゾーンに再循環させる、および/またはパージすることができる。前記第二反応ゾーンからの残りの液体流を水性相(これは、一般にはバージされる)と、クメンおよび未反応ベンゼンを含有する芳香族相とに分ける。前記芳香族相からクメンを回収し、残りの未反応ベンゼンの少なくとも一部を前記第二反応ゾーンに再循環させる。
【0033】
一般に、本プロセスは、フェノールを生産するための一貫計画の一部を構成することとなり、この場合、クメン生産物をクメンヒドロキシペルオキシドに酸化し、該ヒドロキシペルオキシドを開裂させてフェノールおよびアセトンを生産し、該アセトンを前記第一反応ゾーンに再循環させる。
【0034】
アセトン水素化:
本プロセスのアセトン水素化工程は、アセトン含有供給材料、例えば併設されているフェノールプラントからのアセトン含有流、併設されているフェノールプラントから生産された精製アセトン、または他の源から獲得したアセトン、を水素化触媒と接触させることによって果たされる。一般に、前記触媒はラネーニッケルであるが、他の有用な触媒としては、ニッケル、銅−クロム、ラネーニッケル−銅、銅−亜鉛および白金族金属、例えば白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ならびに活性炭、アルミニウムおよび他の担体上の同様の金属が挙げられる。反応温度は、20℃〜350℃にわたり得るが、より一般には、40℃〜250℃の間、例えば60℃〜200℃の間である。液相反応、気相反応、または気相−液相混合反応のいずれによっても水素化を行うことができる。圧力は、100kPa〜20,000kPa、例えば500〜10,000kPaにわたり得る。水素ガスは、一般に、アセトン反応体に対して0.1:1〜100:1、例えば1:1〜10:1のモル比で存在する。
【0035】
前記水素化を反応媒体の存在下で行うことができ、または反応媒体の不存在下で行うこともできる。適する溶剤の例としては、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールが挙げられる。アセトンの水素化生成物であるイソプロパノールも有用である。グリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール;ならびにエーテル、例えばジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)およびトリグリム、も有用である。非プロトン性極性溶剤、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシド、も有用である。飽和炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサン、も有用である。水も前記水素化反応における溶剤として使用することができる。
【0036】
前記アルキル化工程を回分式で行うこともでき、または連続的に行うこともできる。使用する特定の触媒の形状に依存して、前記反応を、粉末触媒を使用して流動層で行うこともあり、または顆粒触媒を使用して固定層で行うこともある。反応混合物からの触媒の分離の容易さおよび反応系の単純性にかんがみて、固定層操作のほうが好ましい。
【0037】
前記水素化反応は発熱性であるので、過剰な温度上昇を避けるために、イソプロパノールから主として成る前記液相反応排出物の一部を冷却し、水素化反応器の入口に再循環させることができる。1つの実施形態において、液体再循環材料のアセトン供給材料に対する重量比は、1:1〜100:1の間である。
【0038】
前記水素化反応排出物は、未反応水素が豊富であるが、他の軽質副産物も一般に含有する蒸気相成分も含む。この蒸気相成分を前記液相排出物から分離し、その中の未反応水素の量に依存して、該蒸気相成分を、前記アルキル化工程へのイソプロパノール含有供給材料中の水素レベルを低減するために前記水素化反応器の入口に再循環させることができ、および/または部分的にもしくは完全にパージすることができる。
【0039】
イソプロパノールでのベンゼンのアルキル化:
本プロセスのアルキル化工程は、前記反応器の第一反応ゾーンとは別の、該反応器の第二反応ゾーンにおいて、アルキル化触媒の存在下で、場合により追加プロピレンと共に、前記水素化反応工程からのイソプロパノール含有排出物をベンゼンと接触させることによって果たされる。概して、前記第二反応ゾーンに追加するベンゼンの、該第二反応ゾーンに追加するCアルキル化剤(イソプロパノール+任意の追加プロピレン)に対するモル比を、0.1:1〜100:1、例えば1:1〜10:1、の範囲内に維持する。
【0040】
前記アルキル化反応は、このプロセスの間、反応混合物の少なくとも一部を液相状態で維持するために、20℃〜350℃、例えば60℃〜300℃の温度、および100kPa〜20,000kPa、例えば500kPa〜10,000kPaの圧力で行う。加えて、前記アルキル化は、水素の存在下で行うことができ、または水素の不存在下で行うこともできる。水素が存在する場合、水素は、前記アルキル化ゾーンに直接追加されることもあり、または水素化反応ゾーン排出物中に存在することもある。水素は、前記アルキル化工程においてクメンと共に併産された水の液相反応媒体からの除去を助長し、その結果、触媒と水との接触およびこの接触により、水が触媒を失活させる一切の傾向が減少されることが認められる。より多くの水を液相から蒸気相に移動させるように前記アルキル化ゾーンの温度および/または圧力を調整することによって、またはアルキル化排出物の、該排出流を冷却し、水を除去した後の、アルキル化工程への再循環を増加させ、そのようにして前記アルキル化ゾーンにおける水の濃度を低下させることによって、同様の効果を達成することもできる。一部の触媒については、前記アルキル化工程における水素の存在が、該触媒上でのコークス形成に起因する失活も減少させる。しかし、過剰な水素は、シクロヘキサンへのベンゼンの望ましくない損失をもたらすことがあるので、避けるべきである。
【0041】
本プロセスの代替実施形態では、前記水素化ゾーンに存在する第一排出流中の水素の実質的にすべてを除去した後、該第一排出物がアルキル化触媒層に入る。
【0042】
前記アルキル化工程において用いる触媒は、(米国特許第4,016,218号において定義されているような)2〜12の拘束係数(Constraint Index)を有する少なくとも1つの中細孔モレキュラーシーブを含むことがある。適する中細孔モレキュラーシーブとしては、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、およびZSM−48が挙げられる。ZSM−5は、米国特許第3,702,886号および米国特許再発行番号第29,948号に詳細に記載されている。ZSM−11は、米国特許第3,709,979号に詳細に記載されている。ZSM−12は、米国特許第3,832,449号に記載されている。ZSM−22は、米国特許第4,556,477号に記載されている。ZSM−23は、米国特許第4,076,842号に記載されている。ZSM−35は、米国特許第4,016,245号に記載されている。ZSM−48は、米国特許第4,234,231号により詳細に記載されている。
【0043】
あるいは、前記アルキル化触媒は、2未満の拘束係数を有する1つより多くの大細孔モレキュラーシーブを含むことがある。適する大細孔モレキュラーシーブとしては、ゼオライトベータ、ゼオライトY、超安定Y(Ultrastable Y:USY)、脱アルミニウムY(Dealuminized Y:Deal Y)、モルデン沸石、ZSM−3、ZSM−4、ZSM−18、およびZSM−20が挙げられる。ゼオライトZSM−14は、米国特許第3,923,636号に記載されている。ゼオライトZSM−20は、米国特許第3,972,983号に記載されている。ゼオライトベータは、米国特許第3,308,069号および米国特許再発行番号第28,341号に記載されている。低ナトリウム超安定Y型モレキュラーシーブ(USY)は、米国特許第3,293,192号および同第3,449,070号に記載されている。脱アルミニウムY型ゼオライト(Deal Y)は、米国特許第3,442,795号において見つけられる方法によって調製することができる。ゼオライトUHP−Yは、米国特許第4,401,556号に記載されている。モルデン沸石は、自然に存在する材料であるが、合成形態、例えばTEA−モルデン沸石(すなわち、テトラエチルアンモニウム指向剤を含む反応混合物から調製された合成モルデン沸石)、で利用することもできる。TEA−モルデン沸石は、米国特許第3,766,093号および同第3,894,104号に記載されている。
【0044】
しかし、好ましくは、前記アルキル化触媒は、MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブを少なくとも1つ含む。本明細書において用いる場合、用語「MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブ」(または「MCM−22ファミリーの材料」または「MCM−22ファミリー材料」または「MCM−22ファミリーゼオライト」)は、
●MWW骨格トポロジーを有する単位格子である、共通の一次結晶構成単位・単位結晶から構成されたモレキュラーシーブ(単位格子は、三次元空間にタイリングすると結晶構造を表す、原子の立体配列である。そのような結晶構造は、「Atlas of Zeolite Framework Types」,Fifth edition,2001において論じられている(その全内容を参照として援用する));
●1単位格子厚、好ましくは1C単位格子厚、の単層を形成する、そのようなMWW骨格トポロジー単位格子の2次元タイリングである、共通の二次構成単位から構成されたモレキュラーシーブ;
●1単位格子以上の厚さの層である、共通の二次構成単位から構成されたモレキュラーシーブ(この場合の1単位格子より厚い厚さの層は、1単位格子厚の単層少なくとも2層の積層、充填または成形から作られる)。そのような二次構成単位の積層は、規則様式、不規則様式、ランダム様式、またはそれらの任意の組み合わせのものであり得る;および
●MWW骨格トポロジーを有する単位格子の任意の規則的なまたはランダムな2次元または3次元の組み合わせによって作られるモレキュラーシーブ;
のうちの1つ以上を含む。
【0045】
MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブは、12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07および3.42±0.07オングストロームの面間隔d最大値を含むX線回折パターンを有するモレキュラーシーブを含む。前記材料を特性づけするために用いるX線回折データは、入射放射線として銅のK−アルファ二重線を用い、収集システムとしてシンチレーションカウンタおよび付属コンピュータを装備した回折計を用いる標準的な技術によって得られる。
【0046】
MCM−22ファミリーの材料としては、MCM−22(米国特許第4,954,325号に記載されている)、PSH−3(米国特許第4,439,409号に記載されている)、SSZ−25(米国特許第4,826,667号に記載されている)、ERB−1(欧州特許第0293032号に記載されている)、ITQ−1(米国特許第6,077,498号に記載されている)、ITQ−2(国際特許公開第97/17290号に記載されている)、MCM−36(米国特許第5,250,227号に記載されている)、MCM−49(米国特許第5,236,575号に記載されている)、MCM−56(米国特許第5,362,697号に記載されている)、UZM−8(米国特許第6,756,030号に記載されている)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
上記のモレキュラーシーブを、任意の結合剤またはマトリックスを伴わずに、すなわちいわゆる自己結合形態で、アルキル化剤として使用することができる。あるいは、前記モレキュラーシーブを、前記アルキル化反応において用いられる温度および他の条件に対して耐性である別の材料と複合させることができる。そのような材料としては、活性材料および不活性材料ならびに合成ゼオライトまたは自然に存在するゼオライト、ならびに無機材料、例えば、クレーおよび/または酸化物、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チアニア、マグネシアもしくはこれらの混合物ならびに他の酸化物が挙げられる。後述のものは、自然に発生するものである場合もあり、またはシリカと金属酸化物の混合物を含むゼラチン状沈殿物もしくはゲルの形態のものである場合もある。触媒の機械的特性を変性させるためにまたはその製造を助長するために、酸化物型結合剤と共にクレーを含めることもできる。モレキュラーシーブと併用での、すなわち、それと組み合わせたまたはその合成中に存在する、それ自体触媒活性である材料の使用は、前記触媒の転化および/または選択性を変化させることがある。不活性材料は、転化量を制御するための希釈剤として適切に役立つので、反応速度を制御するための他の手段を用いずに製品を経済的に規則正しく得ることができる。これらの材料を、工業運転条件下での前記触媒の破砕強度を向上させるためにおよび前記触媒のための結合剤またはマトリックスとして機能するように、自然に存在するクレー、例えばベントナイトおよびカオリン、に組み込むことができる。モレキュラーシーブと無機酸化物マトリックスの相対比率には大きな幅があり、シーブの含有率は、約1重量パーセントから約90重量パーセントにわたり、より通例的には、特に、その複合材がビーズの形態で調製されるときには、その複合材の約2重量パーセントから約80重量パーセントの範囲内で様々である。
【0048】
前記アルキル化工程を回分式で行うことができ、または連続的に行うこともできる。さらに、前記反応を固定層で行うこともでき、または移動層で行うこともできる。しかし、固定層操作のほうが好ましく、概して、前記アルキル化反応ゾーンはアルキル化触媒の1つ層または多数の直列接続層を含む。さらに、前記アルキル化反応ゾーンは前記水素化ゾーンとは別であるが、両方のゾーンが単一反応容器内に収容される。
【0049】
前記アルキル化工程は、一般に、Cアルキル化剤(イソプロパノール+任意の追加プロピレン)の実質的に完全な転化を達成するように操作されるので、前記第二反応ゾーンからの排出物は、クメン、併産水(coproduced water)、未反応ベンゼン、および他の反応生成物から主として成る。水素が供給材料中に存在する場合には、前記排出物中に水素が存在することとなる。概して、前記排出物の一部を前記アルキル化ゾーンに再循環させて、反応温度を制御する。しかし、アルキル化反応器内の水の蓄積を避けることが重要であるので、アルキル化排出物を脱水した後、その排出物を再循環させる。前記排出物中に水素が存在する場合、これは、概して、該排出物を蒸気/液体分離装置に通して、該排出物を水素が豊富な蒸気流と水素が枯渇された液体流とに分割することによって達成される。その後、前記水素が豊富な蒸気流をパージすることができる。あるいは、前記水素が豊富な蒸気流を、一般には圧縮し、冷却して、一切の同伴水および芳香族化合物を分離した後、前記第一反応ゾーンおよび第二反応ゾーンに再循環させることができる。前記水素が枯渇された液体流は、水が豊富な水性流と、クメン、未反応ベンゼンおよび他の反応生成物を含む水枯渇芳香族流とに分ける。前記芳香族流の一部を前記アルキル化反応ゾーンに再循環させる。排出物中に水素が存在しない場合、該排出流を冷却し、水が豊富な水性流と、クメン、未反応ベンゼンおよび他の反応生成物を含む水枯渇芳香族流とに分けることができる。前記芳香族流の一部を前記アルキル化反応ゾーンに再循環させる。
【0050】
フェノールを生産するための一貫プロセス:
1つの実施形態において、アセトンをクメンに転化させるための本プロセスは、フェノールを生産するための一貫プロセスの一部を構成する。そのような一貫プロセスでは、本プロセスのアルキル化工程において生産されたクメンを酸化してクメンヒドロペルオキシドを形成し、該クメンヒドロペルオキシドを開裂させて、フェノールおよびアセトンを含有する開裂排出流を形成する。その後、そのアセトン含有流を前記開裂排出流から分離し、再循環させて本プロセスの水素化工程に戻す。クメン酸化および開裂工程の詳細は、例えば、参照により本明細書に援用する米国特許第5,017,729号において見つけることができる。
【0051】
図を参照して、単一反応器11が、直列に連結された水素化触媒の単一固定層12とアルキル化触媒の2つの固定層13、14とを収容している、アセトンをクメンに転化させるための本プロセスの1つの実施形態を、図1に示す。アセトン供給材料15および水素供給材料10、16を水素化触媒層12の入口端に供給し、イソプロパノール含有排出流17をその層12の反対の端から取り出す。排出流17中の液体の一部を、熱交換器18に通すことによって冷却し、その後、ポンプ19によって再循環させてその水素化触媒層12の入口に戻す。
【0052】
排出流17の残部をベンゼン供給材料21および水素供給材料20と併せ、アルキル化触媒層13、14に逐次的に供給し、そこでイソプロパノールがそのベンゼンと反応してクメンおよび水を生成する。下流のアルキル化触媒層14からの排出物22を、熱交換器23に通すことによって冷却し、その後、蒸気/液体分離装置24に通す。その分離装置24が、排出物22を、クメン、未反応ベンゼンおよび水から主として成る液体流25と、水素から主として成る蒸気流26とに分割する。液体流25をデカンタ27に送り、そこでそれを水が豊富な水性相28とクメンおよび未反応ベンゼンから主としてなる芳香族相29とに分ける。前記水が豊富な水性相28、および前記芳香族相29の一部を、デカンタの底部から正味の反応器排出物(28)として吐き出させる一方で、前記芳香族相の一部(29)をポンプ30によってアルキル化段階に再循環させる。芳香族相27からクメンを一般には蒸留によって回収する(図示せず)。
【0053】
水素から主として成る蒸気流26を圧縮機31に供給し、その後、熱交換器32を通すことによって冷却する。蒸気流26の圧縮および冷却は、水および任意の同伴炭化水素を凝縮させるので、それらをノックアウトドラム33において除去することができ、その後、水素を再循環させてアルキル化および/または水素化工程に戻す。
【0054】
単一反応器41が、水素触媒の単一固定層42とアルキル化触媒の1つの固定層43とを収容している、アセトンをクメンに転化させるための本プロセスのもう1つの実施形態を、図2に示す。アセトン供給材料45および水素供給材料40、46を水素化触媒層42の入口端に供給し、イソプロパノール含有排出流47をその層42の反対の端から取り出す。排出流47の液体の一部を熱交換器48に通すことによって冷却し、その後、ポンプ49によって再循環させて水素化触媒層42に戻す。
【0055】
水素を含有する、排出流47の気体部分を、熱交換器71を通すことによって冷却し、その後、蒸気/液体分離装置72に供給し、そこでそれを液体流73と蒸気流74とに分ける。その液体流73をポンプ49の入口に送り、再循環させて水素化触媒層42の入口に戻す。蒸気流74を圧縮機61に送り、その後、熱交換器62を通すことによって冷却する。蒸気流74の圧縮および冷却は、水および任意の同伴炭化水素を凝縮させるので、それらをノックアウトドラム63において除去することができ、その後、水素を再循環させて水素化工程に戻す。
【0056】
実質的に気体水素がない、排出流47の残部を、ベンゼン供給材料51と併せ、アルキル化触媒層43に供給し、そこでイソプロパノールがベンゼンと反応してクメンおよび水を生成する。レベル制御装置44を用いてアルキル化触媒層43より上に液体レベルを維持するので、アルキル化触媒は本質的に完全液相状態である。アルキル化触媒層43からの排出物を、熱交換器53に通すことによって冷却し、その後、デカンタ57に送り、そこでそれを、水が豊富な水性相とクメンおよび未反応ベンゼンから主として成る芳香族相とに分ける。前記水が豊富な水性相、および前記芳香族相の一部を、デカンタの底部から正味の反応器排出物(58)として吐き出させる一方で、前記芳香族相の一部(59)をポンプ60によってアルキル化段階に再循環させる。
【0057】
以下の実施例を参照して、図1に示す実施形態で、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0058】
[実施例1]
Grace Davisonによって提供されたラネーニッケル触媒3110を水素化触媒として試験した。35重量%アセトンおよび65重量%イソプロパノールを含有するアセトン供給材料を使用した。水素化反応は、0.6hr−1の(アセトン+イソプロパノール)WHSV、6:1モルの水素対(アセトン+イソプロパノール)供給モル比、108℃の入口温度、11:1の排出物循環対供給比、および約3,600kPaの反応器圧で行った。ExxonMobilによって提供されたMCM−22触媒をそれぞれが含有する2つのアルキル化ゾーンを使用した。アルキル化反応は、0.6hr−1の(アセトン+イソプロパノール)WHSV、3:1のベンゼン対(アセトン+イソプロパノール)供給モル比、2:1の反応器循環対供給比、約3,600kPaの反応器出口圧、および入口温度=142℃および195℃で行った。上で述べた水素化ゾーンとアルキル化ゾーンの両方を部分液相状態で運転し、同じ反応器内に収容した。アセトンおよびイソプロパノール転化率は、両方とも100%であった。芳香族化合物選択性は、99%であった。
【0059】
[実施例2〜6]
表1に示すように、純粋なアセトン供給材料を用いて、ならびに水素化およびアルキル化工程における条件を変えて、実施例1のプロセスを繰り返した。結果も表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
特定の実施形態への参照により本発明を説明し、例証したが、本明細書中で必ずしも例証していない変形に本発明を容易に適用できることは、当業者には理解される。この理由から、本発明の真の範囲を決定するには添付の特許請求の範囲のみを参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第一反応ゾーンにおいて、水素化触媒の存在下、アセトンを含む第一供給流と水素とを、前記アセトンの少なくとも一部をイソプロパノールに転化させてイソプロパノールが豊富な第一液体排出流と未反応水素が豊富な第一蒸気流とを生産するために十分な条件下で、接触させることと、
(b)前記第一液体排出流の少なくとも一部に該第一液体排出流の中間精製なしで、および場合により前記第一蒸気流の少なくとも一部に、ベンゼンを追加して、第二供給流を形成することと、
(c)前記第一反応ゾーンとは別の第二反応ゾーンにおいて、前記第二供給流とアルキル化触媒とを、前記第二供給流の少なくとも一部を液相状態で維持するために十分な、ならびに前記第二供給流中のイソプロパノールの少なくとも一部を前記ベンゼンと反応させて、クメンおよび水を形成し、少なくともクメン、水および未反応ベンゼンを含む第二排出流を生産するために十分なアルキル化条件下で、接触させることと、
(d)前記第一蒸気流および/または前記第二排出流から水素を分離することと;および
(e)前記(d)において分離した前記水素の少なくとも一部を前記第一反応ゾーンに再循環させる、および/または前記(d)において分離した前記水素の少なくとも一部をパージすることと
を含む、アセトンおよびベンゼンからクメンを生産するためのプロセス。
【請求項2】
前記水素化触媒が、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、白金、パラジウム、ルテニウムおよびロジウムから成る群より選択される少なくとも1つの金属またはその化合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記(a)の条件が、20℃〜350℃の温度、100kPa〜20,000kPaの圧力、および0.1:1〜100:1の水素のアセトンに対するモル比を含む、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記(c)の条件が、20℃〜350℃の温度、100kPa〜20,000kPaの圧力、および0.1:1〜100:1の前記第二反応ゾーンに供給されるベンゼンのCアルキル化剤(イソプロパノール+任意の追加プロピレン)に対するモル比を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルキル化触媒が、ZSM−3、ZSM−4、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−14、ZSM−18、ZSM−20、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ゼオライトベータ、ゼオライトY、超安定Y(Ultrastable Y:USY)、脱アルミニウムY(Dealuminized Y:Deal Y)、モルデン沸石、MCM−22、PSH−3、SSZ−25、ERB−1、ITQ−1、ITQ−2、MCM−36、MCM−49、MCM−56、およびUZM−8から成る群より選択される少なくとも1つのゼオライト触媒を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルキル化触媒が、MCM−22ファミリーのモレキュラーシーブを含む、請求項1〜5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記第一液体排出流の少なくとも一部を前記第一反応ゾーンに再循環させることをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
(i)豊富な前記第一蒸気流を水素が豊富なガス流と炭化水素含有液体流とに分けること、および
(ii)前記水素が豊富なガス流中の該水素の少なくとも一部を前記第一反応ゾーンに再循環させる、および/または前記水素が豊富なガス流中の該水素の少なくとも一部をパージすること
をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記炭化水素含有液体流の少なくとも一部を前記第一反応ゾーンに再循環させることをさらに含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第二排出流の少なくとも一部を前記第二反応ゾーンに再循環させることをさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
(i)前記第二排出流を水が豊富な水性流とクメンおよび未反応ベンゼンから主として成る芳香族流とに分けること、および
(ii)前記芳香族流の少なくとも一部を前記第二反応ゾーンに再循環させること
を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
(i)前記第二排出流を水素が豊富な蒸気流と液体流とに分けること、および
(ii)前記液体流の少なくとも一部を前記第二反応ゾーンに再循環させること
をさらに含む、請求項1〜11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
(i)前記第二排出流を、水素が豊富な蒸気流と、水が豊富な水性流と、クメンおよび未反応ベンゼンから主として成る芳香族流とに分けること、および
(ii)前記水素が豊富な蒸気流中の該水素の少なくとも一部を前記第一および第二反応ゾーンに再循環させる、および/または前記水素が豊富な蒸気流中の該水素の少なくとも一部をパージすること
をさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
(i)前記第二排出流を、水素が豊富な蒸気流と、水が豊富な水性流と、クメンおよび未反応ベンゼンから主として成る芳香族流とに分けることと、
(ii)前記芳香族流の少なくとも一部を前記第二反応ゾーンに再循環させることと、
(iii)前記水素が豊富な蒸気流中の該水素の少なくとも一部を前記第一および第二反応ゾーンに再循環させる、および/または前記水素が豊富な蒸気流中の該水素の少なくとも一部をパージすることと
をさらに含む、請求項1〜13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
(f)前記第二排出流からのクメンを分離し、該クメンの少なくとも一部を酸化してクメンヒドロキシペルオキシドを形成することと、
(g)前記クメンヒドロキシペルオキシドの少なくとも一部を開裂させて、フェノールおよびアセトンを含有する開裂排出流を形成することと、
(h)前記開裂排出流からアセトンを分離し、アセトンの少なくとも一部を前記接触工程(a)に再循環させることと
をさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
プロピレンが、前記第二供給流に追加される、請求項1〜15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
前記第一反応ゾーンおよび第二反応ゾーンが、単一反応器内に収容される、請求項1〜16のいずれかに記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−504622(P2012−504622A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530112(P2011−530112)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/057949
【国際公開番号】WO2010/042315
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(508328604)バジャー・ライセンシング・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (4)
【Fターム(参考)】