クライミングクレーンの反力受け構造
【課題】反力受部を建造物の柱に押付けるための拡縮機構の駆動装置の強度を高める。
【解決手段】頂部にクレーンを有するマスト1の下端に本体支持架台3を有するクレーン本体と、マストに沿って別個に盛り換えが可能な上部架台及びガイドマストと、上部架台とガイドマストとの間を連結する昇降シリンダとを有し、本体支持架台3と上部架台の夫々に設けた拡縮機構20aにより反力受部37を建造物10の柱10bに押付けてクレーン本体に作用するモーメントを柱10bで受けるクライミングクレーンの反力受け構造であって、拡縮機構20aの拡縮を駆動する駆動装置25,36が、ウォーム29により回転するネジ軸31とネジ軸31に螺合するナット32で構成され、拡縮機構20aの拡張時に、駆動装置25,36のネジ軸31の引っ張り力によりナット32を介し反力受部37を柱10bに押付けるようにする。
【解決手段】頂部にクレーンを有するマスト1の下端に本体支持架台3を有するクレーン本体と、マストに沿って別個に盛り換えが可能な上部架台及びガイドマストと、上部架台とガイドマストとの間を連結する昇降シリンダとを有し、本体支持架台3と上部架台の夫々に設けた拡縮機構20aにより反力受部37を建造物10の柱10bに押付けてクレーン本体に作用するモーメントを柱10bで受けるクライミングクレーンの反力受け構造であって、拡縮機構20aの拡縮を駆動する駆動装置25,36が、ウォーム29により回転するネジ軸31とネジ軸31に螺合するナット32で構成され、拡縮機構20aの拡張時に、駆動装置25,36のネジ軸31の引っ張り力によりナット32を介し反力受部37を柱10bに押付けるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライミングクレーンの反力受け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低層のビルなどの建造物を建設する場合は、地上にマストを支持する架台を固定したクレーン本体が用いられるが、高層の建造物を建設する場合には、建設の進行に合わせてクレーン本体を建造物の上層階に順次盛り換えるようにしたクライミングクレーンが使用される。
【0003】
図10は従来の鉄骨構造の高層建築の建設に採用されているクライミングクレーンの一例を示すもので、このクライミングクレーンは、マスト1の頂部にクレーン2を備え且つマスト1の下端に本体支持架台3が固定されたクレーン本体4を有している。更に、前記本体支持架台3の上部におけるマスト1の外周には、ロックピン5の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えが可能な上部架台6を設けており、更に、ロックピン7の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えが可能なガイドマスト8を設けており、前記上部架台6とガイドマスト8の間を昇降シリンダ9により連結している。
【0004】
前記本体支持架台3と上部架台6の夫々には、水平且つ十字方向(前後左右)の外側に伸縮する伸縮ビーム12,14が備えられており、伸長した伸縮ビーム12,14は、建造物10を構成する鉄骨の上下の梁10a(横材)上にアンカーボルト11,13を介して固定されるようになっている。図中、10bは建造物10を構成する上下方向に延びた柱である。前記本体支持架台3及び上部架台6に備えられる伸縮ビーム12,14は、一般に図11に示すように油圧シリンダ15の伸縮によって伸縮ビーム12,14を伸縮させる方式、或いは図12に示すように駆動モータ16にて回転されるネジ軸17に伸縮ビーム12,14に備えたナット18を螺合し、ネジ軸17の回転によりナット18を介して伸縮ビーム12,14を伸縮させるネジ式ジャッキによる方式が採用されている。
【0005】
従って、前記図10のクライミングクレーンでは、本体支持架台3の伸縮ビーム12をアンカーボルト11により下層の梁10aに固定し、且つロックピン5にてマスト1に固定した上部架台6の伸縮ビーム14をアンカーボルト13により上層の梁10aに固定し、これにより、クレーン本体4に作用する重力WとモーメントMを建造物10の下層と上層の梁10aによって支持している。
【0006】
一般のクライミングクレーンでは、前記クレーン2もマスト1に対して盛り換えできるようになっており、作業の開始時には、先ず本体支持架台3に固定したマスト1にクレーン1を装着し、前記マスト1の上部に追加のマスト1を継ぎ足しながらクレーン2をクライミングさせる作業によって所要高さとしたマスト1の上端にクレーン2を固定することによりクレーン本体4を組立てている。
【0007】
図10のクライミングクレーンにおいて、建造物10の上層の建造が終了して、クレーン本体4を上方へ盛り換えるには、クレーン2に吊り荷が無い無負荷の状態において先ず上部架台6の盛り換え作業を行う。上部架台6の盛り換えには、先ずガイドマスト8のロックピン7をマスト1から引き抜き、昇降シリンダ9を伸長してガイドマスト8を上昇させた位置でロックピン7を再びマスト1に差込んで固定する。次に上部架台6の伸縮ビーム14を梁10aに固定しているアンカーボルト11の固定を解除した後、上部架台6のロックピン5を引き抜き、昇降シリンダ9を縮小することにより上部架台6を所定高さまで引き上げた後、ロックピン5を差込んで上部架台6をマスト1に固定する。これにより上部架台6は所定ストローク分だけ上昇する。再び、上記と同様にして上部架台6を所定ストローク分上昇させる操作を繰返すことにより、前記上部架台6の伸縮ビーム14が上層の梁10aより上側位置になるまで上昇させた後、上部架台6の伸縮ビーム14を梁10a上に伸長し、且つ昇降シリンダ9を伸長して伸縮ビーム14を梁10a上に載置した後、アンカーボルト13により伸縮ビーム14を梁10aに固定する。これにより上部架台6の盛り換えは終了する。
【0008】
次に、クレーン本体4を盛り換えるには、前記した如く上層の梁10aに盛り換えた上部架台6によってクレーン本体4を支持した状態において、先ず本体支持架台3の伸縮ビーム12を梁10aに固定しているアンカーボルト11の固定を解除した後、伸縮ビーム12を縮小させる。
【0009】
次に、昇降シリンダ9を縮小してガイドマスト8を下降させた位置でガイドマスト8のロックピン7をマスト1に差込んで固定し、続いて昇降シリンダ9を僅かに伸長して上部架台6のロックピン5を引き抜き、これによりクレーン本体4の重量をロックピン7、ガイドマスト8、昇降シリンダ9を介して上部架台6により支持する。この状態で昇降シリンダ9を伸長してクレーン本体4を上昇させた位置で上部架台6のロックピン5をマスト1に差込んで固定する。これによりクレーン本体4は所定ストローク分だけ上昇する。再び、上記と同様にしてクレーン本体4を所定ストローク分上昇させる操作を繰返すことにより、前記本体支持架台3の伸縮ビーム12が上層の梁10aの上側位置になるまで上昇させた後、本体支持架台3の伸縮ビーム12を梁10a上に伸長し、且つ昇降シリンダ9を伸長して伸縮ビーム12を梁10a上に載置した後、アンカーボルト11により伸縮ビーム12を梁10aに固定する。これによりクレーン本体4の盛り換えが終了する。
【0010】
上記クライミングクレーンにおいては、本体支持架台3及び上部架台6に備えた伸縮ビーム12,14を水平方向外側に張出し、該伸縮ビーム12,14をアンカーボルト11,13を用いて梁10aに固定することにより、クレーン本体4に作用する重力WとモーメントMを梁10aで受けるようにしているために、伸縮ビーム12,14は梁10aに対して強固に固定する必要がある。従って、前記伸縮ビーム12,14を梁10aに強固に固定するための構造が面倒であり、且つ梁10aに対する伸縮ビーム12,14の固定・解除に時間と手数を要する問題がある。又、前記伸縮ビーム12,14の固定・解除を自動で行うことも提案されているが、このように固定・解除を自動で行うためには装置の構成が非常に複雑且つ大掛かりとなり、このために本体支持架台3及び上部架台6の重量が増加するという問題がある。
【0011】
更に、クレーン本体4に作用する垂直方向の重力Wは比較的容易に梁10aで受けることができるが、特にクレーン作業時にクレーン本体4に作用するモーメントMは梁10aに対して部分的に集中して掛ることになり、このとき梁10aは柱10bに比して強度が低いために荷重が集中することによって梁10aが変形する問題がある。このため、従来では図10に示す如く梁10aを補強部材19で補強することを行っており、この補強部材19の取り付け・取り外しにも多大の手数と時間を要するという問題を有していた。
【0012】
又、クライミングクレーンとしては特許文献1に示したものがある。このクライミングクレーンでは、マストの頂部にクレーンを備え且つマストの下端に本体支持架台を固定したクレーン本体を備えており、前記本体支持架台は、十字状ビームと、このビームの各先端に着脱可能に備えた延長ビームとによって建造物の梁上に支持するようにしている。又、前記マストには夫々ロッドを着脱して盛り換えできるようにした上部架台と昇降装置が備えてあり、且つ上部架台と昇降装置との間は昇降シリンダで連結されている。そして、上部架台には、水平方向外側に張出して建造物の梁の上面或いは内面、又は柱の内面に支持するようにした延長ビームを備えている。
【特許文献1】特開2000−203788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上記特許文献1に示されたクライミングクレーンは、本体支持架台の十字状ビームの各先端に着脱可能に設けた延長ビームによって本体支持架台を梁上に固定する構造を基本構成としているために、十字状ビームの各先端に延長ビームを着脱する作業、及び前記図10の従来例と同様に本体支持架台を梁に対して固定・解除するための作業に手数と時間を要し、このために能率的なクライミングができない問題がある。又、延長ビームを梁に固定するための装置が複雑・大掛かりになる問題があり、更に、クレーン作業時にクレーン本体に作用するモーメントによって梁が変形するのを防止するために梁を補強する必要があるといった問題がある。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、クレーン本体の本体支持架台と上部架台に備えた拡縮機構により反力受部を建造物の柱に押付けてクレーン本体に作用するモーメントを建造物の柱で受けることによりクライミングのための装置構成と取扱い操作性の簡略化を可能にしたクライミングクレーンの反力受け構造において、拡縮機構の拡縮を行う駆動装置の強度を高めて駆動装置を小型化できるようにしたクライミングクレーンの反力受け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
クライミングクレーンの反力受け構造は、マストの頂部にクレーンを有しマストの下端に本体支持架台を有するクレーン本体と、前記マストに沿って盛り換えが可能な上部架台と、マストに沿って盛り換えが可能なガイドマストと、前記上部架台とガイドマストとの間を連結する昇降シリンダとを有するクレーン本体の前記本体支持架台と上部架台の夫々に拡縮機構を設け、該拡縮機構により反力受部を建造物の柱に押付けてクレーン本体に作用するモーメントを建造物の柱で受けるようにしたクライミングクレーンの反力受け構造であって、前記拡縮機構の拡縮を駆動する駆動装置が、ウォームにより回転するネジ軸と該ネジ軸に螺合したナットで構成され、前記拡縮機構の拡張時に、駆動装置のネジ軸の引っ張り力によりナットを介して反力受部を建造物の柱に押付けるようにしたことを特徴とする。
【0016】
上記手段において、前記拡縮機構に、クレーン本体に作用する重力を建造物の梁に負荷する重力載置部を備えることは好ましい。
【0017】
又、前記拡縮機構が、前記本体支持架台及び上部架台に備えられ第1の駆動装置によって水平方向に拡縮可能な第1段拡縮部材と、該第1段拡縮部材の先端部に備えられ第2の駆動装置によって第1段拡縮部材の拡縮方向と直交する水平方向に拡縮可能な第2段拡縮部材とからなり、前記第2段拡縮部材に前記反力受部を備えることは好ましい。
【発明の効果】
【0018】
クレーン本体の本体支持架台と上部架台に備えた拡縮機構の反力受部を建造物の柱に押付けてレーン本体に作用するモーメントを建造物の柱で受けるようにしたクライミングクレーンの反力受け構造において、駆動装置のネジ軸の引っ張り力によって反力受部を建造物の柱に押付けるようにしたことにより、細径のネジ軸にて強大な押付け力を付与することができ、よって駆動装置の強度を高めて駆動装置の小型化が図れるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1〜図9は本発明のクライミングクレーンの反力受け構造を実施する形態の一例を示すもので、図1は本発明の反力受け構造を適用するクライミングクレーンの概略側面図、図2は図1をII−II方向から見た平面図、図3は図1、図2の拡縮機構を縮小した状態を示す平面図、図4は図1の本体支持架台の拡大平面図、図5は図4のV−V方向矢視図、図6は図4のVI−VI方向矢視図、図7は第1の駆動装置の側面図、図8図7のVIII方向矢視図、図9は第2の駆動装置の側面図であり、図1〜9中、図10に示したものと同一のものには同一の符号を付してある。
【0021】
図1ではマスト1の頂部にクレーン2を有しマスト1の下端に本体支持架台3を固定したクレーン本体が示してあり、クレーン本体4のマスト1には、マスト1に対するロックピン5の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えを可能にした上部架台6が設けてあり、更に、上部架台6とは別に、マスト1に対するロックピン7の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えを可能にしたガイドマスト8が設けてあり、前記上部架台6とガイドマスト8は昇降シリンダ9によって連結されている。
【0022】
前記本体支持架台3及び上部架台6は、図3に示す如く建造物10の4本の柱10bと梁10aで囲まれ矩形空間を昇降できる大きさに形成されており、且つ前記本体支持架台3と上部架台6の夫々には、図1、図2に示すように水平方向外側に伸縮可能な拡縮機構20a,20bを備えている。
【0023】
前記本体支持架台3と上部架台6に備える拡縮機構20a,20bは同一の構成を有しており、従って、本体支持架台3に備えられる拡縮機構20aを示す図4〜図6の場合を例にとって説明する。拡縮機構20aは、前記本体支持架台3及び上部架台6の前後に水平且つ平行に設けたガイド部21に沿って図4、図5の左右幅方向Aに伸縮可能なビーム22と、該ビーム22の左側端部同士及び右側端部同士を固定する前後(図4では上下)に延びた連結ビーム23とからなる左右の第1段拡縮部材24を有しており、該第1段拡縮部材24は、前記本体支持架台3に設けた第1の駆動装置25により左右幅方向Aに拡縮するようになっている。
【0024】
第1の駆動装置25は、図7、図8に示す如く本体支持架台3のガイド部21に揺動軸26により取り付けた装置台27に、駆動モータ28で駆動されるウォーム29及びウォームホイール30により回転されるネジ軸31を取り付け、前記第1段拡縮部材24のビーム22に備えたナット32を前記ネジ軸31に螺合した構成を有している。このとき、前記第1の駆動装置25は、図7に示す如く前記第1段拡縮部材24を左右幅方向AのA’方向に拡張する際に、ネジ軸31の引っ張り力Fで第1段拡縮部材24をA’方向に拡張するように、本体支持架台3のガイド部21の端部にウォーム29を介してネジ軸31を回転する駆動モータ28を取り付け、前記ガイド部21に挿入されている第1段拡縮部材24の挿入側端部に形成した連結部33にナット32を設けて該ナット32を前記ネジ軸31に螺合している。
【0025】
そして、前記第1段拡縮部材24の連結ビーム23の下部には、図4〜図6に示す如く第1段拡縮部材24の拡張時にクレーン本体4に作用する重力Wを建造物10の梁10aに負荷するための重力載置部34を設けている。
【0026】
更に、前記第1段拡縮部材24のビーム22に固定されている連結ビーム23の各両端部には、図4〜図6、図9に示す如く前後方向B(図4では上下方向)に伸縮可能な第2段拡縮部材35が設けてあり、該第2段拡縮部材35は、前記第1段拡縮部材24の拡縮を駆動する第1の駆動装置25と同様の構成を有する第2の駆動装置36によって前記左右幅方向Aと直交する前後方向Bに拡縮されるようになっている。
【0027】
第2の駆動装置36は、図9に示すように、前記第1段拡縮部材24の連結ビーム23に揺動軸26を介して取り付けた装置台27に、駆動モータ28で駆動されるウォーム29及びウォームホイール30により回転されるネジ軸31を取り付け、前記第2段拡縮部材35に備えたナット32を前記ネジ軸31に螺合した構成を有している。このとき、前記第2の駆動装置36は、図9に示す如く前記第2段拡縮部材35を前後方向BのB’方向に拡張する際に、ネジ軸31の引っ張り力Fで第2段拡縮部材35をB’方向に拡張するように、第1段拡縮部材24の連結ビーム23の端部にウォーム29を介してネジ軸31を回転する駆動モータ28を取り付け、前記連結ビーム23に挿入されている第2段拡縮部材35の挿入側端部に形成した連結部33にナット32を設けて該ナット32を前記ネジ軸31に螺合している。
【0028】
前記第2段拡縮部材35の夫々の外側端部には、図4に示す如く建造物10の4本の柱10bの各内側コーナ部に押圧するように平面形状が略L字形に形成された反力受部37を固定している。
【0029】
従って、前記第1の駆動装置25により第1段拡縮部材24をA’方向に拡張し、更に、第2の駆動装置36により第2段拡縮部材35をB’方向に拡張して、前記本体支持架台3と上部架台6に設けた各拡縮機構20a,20bの反力受部37を建造物10の四隅の柱10bのコーナ部に押付けると、クレーン本体4に作用するモーメントMを上下の反力受部37を介して柱10bに負荷することができる。
【0030】
尚、図中38は前記第1段拡縮部材24の連結ビーム23に取り付けた浮上防止部材であり、該浮上防止部材38は建造物10の梁10aの下面に入り込んでクレーン本体4の浮き上がりを防止するためのものであり、該浮上防止部材38はピン39によって折り畳み可能に構成されている。
【0031】
次に、上記した実施の形態の作動を説明する。
【0032】
図1〜図9に示した構成において、図1、図4〜図6に示す如く、本体支持架台3に備えた拡縮機構20aの第1の駆動装置25を駆動して、第1段拡縮部材24をA’方向に拡張することにより重力載置部34を所要の高さの梁10a上に載置し、更に第2の駆動装置36を駆動して、第2段拡縮部材35をB’方向に拡張することにより反力受部37を四隅の柱10bの内側コーナ部に押付ける。このとき、第1段拡縮部材24の拡張を調節してL字形の反力受部37の一側面を柱10bのコーナ部の一面に押付け、第2段拡縮部材35の拡張を調節してL字形の反力受部37の他側面を柱10bのコーナ部の他面に押付けるようにする。更に、上部架台6に備えた拡縮機構20bの第1の駆動装置25を駆動して、第1段拡縮部材24をA’方向に拡張することにより重力載置部34を前記本体支持架台3を支持させた梁10aより高い位置の梁10a上に載置し、更に第2の駆動装置36を駆動して、第2段拡縮部材35をB’方向に拡張することにより前記と同様に反力受部37を四隅の柱10bに押付けるようにする。
【0033】
これにより、図1に示す如く、クレーン本体4に作用する重力Wは重力載置部34により建造物10の梁10aで受けられ、又、クレーン本体4に作用するモーメントMは上下の反力受部37が建造物10の柱10bを横方向に押付ける力Sによって柱10bで受けられるので、このようにして建造物10に支持されたクレーン2によりクレーン作業が行われる。このとき、浮上防止部材38を予め下方に回動させて建造物10の梁10aの下面に入り込むようにしておくことにより、クレーン本体4の浮き上がりを防止してクレーン本体4を更に確実に支持することができる。
【0034】
又、図1のクレーン本体4を上方へ盛り換える際に、先ず上部架台6を盛り換え、その後本体支持架台3を盛り換えてクレーン本体4をクライミングするという方法は前記図10で説明した場合と同様であるが、前記した如く、クレーン本体4に作用する重力Wは本体支持架台3と上部架台6に設けた拡縮機構20a,20bの重力載置部34を建造物10の梁10aに載置することで梁10aによって受け、又、クレーン本体4に作用するモーメントMは本体支持架台3と上部架台6に設けた拡縮機構20a,20bの反力受部37を建造物10の柱10bに押付けることで柱10bによって受けるようにしたので、拡縮機構20a,20bを拡縮させるという簡単な操作でクレーン本体4を建造物10に支持させてクライミングすることができ、よって従来のクライミングクレーンに比して迅速なクライミングを行って、クライミングクレーンの作業能率を高めることができる。
【0035】
このとき、クレーン本体4に作用する重力Wは重力載置部34を建造物10の梁10aに載置することで梁10aで受け、又、クレーン本体4に作用するモーメントMは上下の反力受部37を建造物10の柱10bに押付けることで柱10bで受けるようにしたので、従来のような伸縮ビームを梁に固定するための固定構造が不要になると共に、固定・解除に要する手数と時間を削減することができ、更に、建造物10の梁10aにはクレーン本体4に作用する重力Wが作用するのみであるため、梁10aが変形する問題を無くして従来必要としていた梁10aを補強するための資材及びその取り付け、取り外しのための手数を省略することができる。
【0036】
上記したように、第1の駆動装置25により第1段拡縮部材24をA’方向に拡張し、更に、第2の駆動装置36により第2段拡縮部材35をB’方向に拡張して、前記本体支持架台3と上部架台6に設けた各拡縮機構20a,20bの反力受部37を建造物10の四隅の柱10bのコーナ部に押付けるようにしており、このときの前記第1と第2の駆動装置25,36が、図7、図9に示したように、第1段拡縮部材24と第2段拡縮部材35をネジ軸31の引っ張り力Fによって拡張させるように構成したので、細径のネジ軸31によって大きな押付け力を発揮することができる。
【0037】
即ち、図11、図12に示した従来の油圧シリンダ或いはネジ式ジャッキを用いて反力受部の押付けを行おうとした場合には、通常では油圧シリンダ或いはネジ式ジャッキの押出し力で反力受部の押付け力を得るようにしているために、大きな押付け力を得ようとした場合に油圧シリンダのシリンダ軸或いはネジ式ジャッキのネジ軸が座屈してしまう問題があり、この問題のために通常では軸径を大きく設計しているが、駆動装置が大型化して重量が増加する問題がある。これに対し、前記したようにネジ軸31の引っ張り力Fによって反力受部37の押付け力を得るようにしているので、細径のネジ軸31で強大な押付け力を付与することができ、よって駆動装置25,36を小型化することが可能になる。
【0038】
更に、図8に示したように、駆動装置25,36は、ネジ軸31の回転を、駆動モータ28で駆動するウォーム29及びウォームホイール30によって駆動するようにしているので、反力受部37の反力によってウォームホイール30が回転して押付け力が緩むのをウォーム29で防止することができ、よってクレーン本体4の押付け支持を更に確実に行うことができる。
【0039】
なお、本発明のクライミングクレーンの反力受け構造は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、鉄骨の建造物の建設以外にコンクリートによる建造物の建設にも適用できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の反力受け構造を適用するクライミングクレーンの一例を示す概略側面図である。
【図2】図1をII−II方向から見た平面図である。
【図3】図1、図2の拡縮機構を縮小した状態を示す平面図である。
【図4】本体支持架台の拡大平面図である。
【図5】図4のV−V方向矢視図である。
【図6】図4のVI−VI方向矢視図である。
【図7】第1の駆動装置の詳細を示す側面図である。
【図8】図7のVIII方向矢視図である。
【図9】第2の駆動装置の詳細を示す側面図である。
【図10】従来のクライミングクレーンの一例を示す概略側面図である。
【図11】伸縮ビームを伸縮させる油圧シリンダの説明図である。
【図12】伸縮ビームを伸縮させるネジ式ジャッキの説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 マスト
2 クレーン
3 本体支持架台
4 クレーン本体
6 上部架台
8 ガイドマスト
9 昇降シリンダ
10 建造物
10a 梁
10b 柱
20a 拡縮機構
20b 拡縮機構
24 第1段拡縮部材
25 第1の駆動装置(駆動装置)
28 ウォーム
31 ネジ軸
32 ナット
34 重力載置部
35 第2段拡縮部材
36 第2の駆動装置(駆動装置)
37 反力受部
A 左右幅方向
B 前後方向
A’ 拡張方向
B’ 拡張方向
M モーメント
W 重力
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライミングクレーンの反力受け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低層のビルなどの建造物を建設する場合は、地上にマストを支持する架台を固定したクレーン本体が用いられるが、高層の建造物を建設する場合には、建設の進行に合わせてクレーン本体を建造物の上層階に順次盛り換えるようにしたクライミングクレーンが使用される。
【0003】
図10は従来の鉄骨構造の高層建築の建設に採用されているクライミングクレーンの一例を示すもので、このクライミングクレーンは、マスト1の頂部にクレーン2を備え且つマスト1の下端に本体支持架台3が固定されたクレーン本体4を有している。更に、前記本体支持架台3の上部におけるマスト1の外周には、ロックピン5の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えが可能な上部架台6を設けており、更に、ロックピン7の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えが可能なガイドマスト8を設けており、前記上部架台6とガイドマスト8の間を昇降シリンダ9により連結している。
【0004】
前記本体支持架台3と上部架台6の夫々には、水平且つ十字方向(前後左右)の外側に伸縮する伸縮ビーム12,14が備えられており、伸長した伸縮ビーム12,14は、建造物10を構成する鉄骨の上下の梁10a(横材)上にアンカーボルト11,13を介して固定されるようになっている。図中、10bは建造物10を構成する上下方向に延びた柱である。前記本体支持架台3及び上部架台6に備えられる伸縮ビーム12,14は、一般に図11に示すように油圧シリンダ15の伸縮によって伸縮ビーム12,14を伸縮させる方式、或いは図12に示すように駆動モータ16にて回転されるネジ軸17に伸縮ビーム12,14に備えたナット18を螺合し、ネジ軸17の回転によりナット18を介して伸縮ビーム12,14を伸縮させるネジ式ジャッキによる方式が採用されている。
【0005】
従って、前記図10のクライミングクレーンでは、本体支持架台3の伸縮ビーム12をアンカーボルト11により下層の梁10aに固定し、且つロックピン5にてマスト1に固定した上部架台6の伸縮ビーム14をアンカーボルト13により上層の梁10aに固定し、これにより、クレーン本体4に作用する重力WとモーメントMを建造物10の下層と上層の梁10aによって支持している。
【0006】
一般のクライミングクレーンでは、前記クレーン2もマスト1に対して盛り換えできるようになっており、作業の開始時には、先ず本体支持架台3に固定したマスト1にクレーン1を装着し、前記マスト1の上部に追加のマスト1を継ぎ足しながらクレーン2をクライミングさせる作業によって所要高さとしたマスト1の上端にクレーン2を固定することによりクレーン本体4を組立てている。
【0007】
図10のクライミングクレーンにおいて、建造物10の上層の建造が終了して、クレーン本体4を上方へ盛り換えるには、クレーン2に吊り荷が無い無負荷の状態において先ず上部架台6の盛り換え作業を行う。上部架台6の盛り換えには、先ずガイドマスト8のロックピン7をマスト1から引き抜き、昇降シリンダ9を伸長してガイドマスト8を上昇させた位置でロックピン7を再びマスト1に差込んで固定する。次に上部架台6の伸縮ビーム14を梁10aに固定しているアンカーボルト11の固定を解除した後、上部架台6のロックピン5を引き抜き、昇降シリンダ9を縮小することにより上部架台6を所定高さまで引き上げた後、ロックピン5を差込んで上部架台6をマスト1に固定する。これにより上部架台6は所定ストローク分だけ上昇する。再び、上記と同様にして上部架台6を所定ストローク分上昇させる操作を繰返すことにより、前記上部架台6の伸縮ビーム14が上層の梁10aより上側位置になるまで上昇させた後、上部架台6の伸縮ビーム14を梁10a上に伸長し、且つ昇降シリンダ9を伸長して伸縮ビーム14を梁10a上に載置した後、アンカーボルト13により伸縮ビーム14を梁10aに固定する。これにより上部架台6の盛り換えは終了する。
【0008】
次に、クレーン本体4を盛り換えるには、前記した如く上層の梁10aに盛り換えた上部架台6によってクレーン本体4を支持した状態において、先ず本体支持架台3の伸縮ビーム12を梁10aに固定しているアンカーボルト11の固定を解除した後、伸縮ビーム12を縮小させる。
【0009】
次に、昇降シリンダ9を縮小してガイドマスト8を下降させた位置でガイドマスト8のロックピン7をマスト1に差込んで固定し、続いて昇降シリンダ9を僅かに伸長して上部架台6のロックピン5を引き抜き、これによりクレーン本体4の重量をロックピン7、ガイドマスト8、昇降シリンダ9を介して上部架台6により支持する。この状態で昇降シリンダ9を伸長してクレーン本体4を上昇させた位置で上部架台6のロックピン5をマスト1に差込んで固定する。これによりクレーン本体4は所定ストローク分だけ上昇する。再び、上記と同様にしてクレーン本体4を所定ストローク分上昇させる操作を繰返すことにより、前記本体支持架台3の伸縮ビーム12が上層の梁10aの上側位置になるまで上昇させた後、本体支持架台3の伸縮ビーム12を梁10a上に伸長し、且つ昇降シリンダ9を伸長して伸縮ビーム12を梁10a上に載置した後、アンカーボルト11により伸縮ビーム12を梁10aに固定する。これによりクレーン本体4の盛り換えが終了する。
【0010】
上記クライミングクレーンにおいては、本体支持架台3及び上部架台6に備えた伸縮ビーム12,14を水平方向外側に張出し、該伸縮ビーム12,14をアンカーボルト11,13を用いて梁10aに固定することにより、クレーン本体4に作用する重力WとモーメントMを梁10aで受けるようにしているために、伸縮ビーム12,14は梁10aに対して強固に固定する必要がある。従って、前記伸縮ビーム12,14を梁10aに強固に固定するための構造が面倒であり、且つ梁10aに対する伸縮ビーム12,14の固定・解除に時間と手数を要する問題がある。又、前記伸縮ビーム12,14の固定・解除を自動で行うことも提案されているが、このように固定・解除を自動で行うためには装置の構成が非常に複雑且つ大掛かりとなり、このために本体支持架台3及び上部架台6の重量が増加するという問題がある。
【0011】
更に、クレーン本体4に作用する垂直方向の重力Wは比較的容易に梁10aで受けることができるが、特にクレーン作業時にクレーン本体4に作用するモーメントMは梁10aに対して部分的に集中して掛ることになり、このとき梁10aは柱10bに比して強度が低いために荷重が集中することによって梁10aが変形する問題がある。このため、従来では図10に示す如く梁10aを補強部材19で補強することを行っており、この補強部材19の取り付け・取り外しにも多大の手数と時間を要するという問題を有していた。
【0012】
又、クライミングクレーンとしては特許文献1に示したものがある。このクライミングクレーンでは、マストの頂部にクレーンを備え且つマストの下端に本体支持架台を固定したクレーン本体を備えており、前記本体支持架台は、十字状ビームと、このビームの各先端に着脱可能に備えた延長ビームとによって建造物の梁上に支持するようにしている。又、前記マストには夫々ロッドを着脱して盛り換えできるようにした上部架台と昇降装置が備えてあり、且つ上部架台と昇降装置との間は昇降シリンダで連結されている。そして、上部架台には、水平方向外側に張出して建造物の梁の上面或いは内面、又は柱の内面に支持するようにした延長ビームを備えている。
【特許文献1】特開2000−203788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上記特許文献1に示されたクライミングクレーンは、本体支持架台の十字状ビームの各先端に着脱可能に設けた延長ビームによって本体支持架台を梁上に固定する構造を基本構成としているために、十字状ビームの各先端に延長ビームを着脱する作業、及び前記図10の従来例と同様に本体支持架台を梁に対して固定・解除するための作業に手数と時間を要し、このために能率的なクライミングができない問題がある。又、延長ビームを梁に固定するための装置が複雑・大掛かりになる問題があり、更に、クレーン作業時にクレーン本体に作用するモーメントによって梁が変形するのを防止するために梁を補強する必要があるといった問題がある。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、クレーン本体の本体支持架台と上部架台に備えた拡縮機構により反力受部を建造物の柱に押付けてクレーン本体に作用するモーメントを建造物の柱で受けることによりクライミングのための装置構成と取扱い操作性の簡略化を可能にしたクライミングクレーンの反力受け構造において、拡縮機構の拡縮を行う駆動装置の強度を高めて駆動装置を小型化できるようにしたクライミングクレーンの反力受け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
クライミングクレーンの反力受け構造は、マストの頂部にクレーンを有しマストの下端に本体支持架台を有するクレーン本体と、前記マストに沿って盛り換えが可能な上部架台と、マストに沿って盛り換えが可能なガイドマストと、前記上部架台とガイドマストとの間を連結する昇降シリンダとを有するクレーン本体の前記本体支持架台と上部架台の夫々に拡縮機構を設け、該拡縮機構により反力受部を建造物の柱に押付けてクレーン本体に作用するモーメントを建造物の柱で受けるようにしたクライミングクレーンの反力受け構造であって、前記拡縮機構の拡縮を駆動する駆動装置が、ウォームにより回転するネジ軸と該ネジ軸に螺合したナットで構成され、前記拡縮機構の拡張時に、駆動装置のネジ軸の引っ張り力によりナットを介して反力受部を建造物の柱に押付けるようにしたことを特徴とする。
【0016】
上記手段において、前記拡縮機構に、クレーン本体に作用する重力を建造物の梁に負荷する重力載置部を備えることは好ましい。
【0017】
又、前記拡縮機構が、前記本体支持架台及び上部架台に備えられ第1の駆動装置によって水平方向に拡縮可能な第1段拡縮部材と、該第1段拡縮部材の先端部に備えられ第2の駆動装置によって第1段拡縮部材の拡縮方向と直交する水平方向に拡縮可能な第2段拡縮部材とからなり、前記第2段拡縮部材に前記反力受部を備えることは好ましい。
【発明の効果】
【0018】
クレーン本体の本体支持架台と上部架台に備えた拡縮機構の反力受部を建造物の柱に押付けてレーン本体に作用するモーメントを建造物の柱で受けるようにしたクライミングクレーンの反力受け構造において、駆動装置のネジ軸の引っ張り力によって反力受部を建造物の柱に押付けるようにしたことにより、細径のネジ軸にて強大な押付け力を付与することができ、よって駆動装置の強度を高めて駆動装置の小型化が図れるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1〜図9は本発明のクライミングクレーンの反力受け構造を実施する形態の一例を示すもので、図1は本発明の反力受け構造を適用するクライミングクレーンの概略側面図、図2は図1をII−II方向から見た平面図、図3は図1、図2の拡縮機構を縮小した状態を示す平面図、図4は図1の本体支持架台の拡大平面図、図5は図4のV−V方向矢視図、図6は図4のVI−VI方向矢視図、図7は第1の駆動装置の側面図、図8図7のVIII方向矢視図、図9は第2の駆動装置の側面図であり、図1〜9中、図10に示したものと同一のものには同一の符号を付してある。
【0021】
図1ではマスト1の頂部にクレーン2を有しマスト1の下端に本体支持架台3を固定したクレーン本体が示してあり、クレーン本体4のマスト1には、マスト1に対するロックピン5の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えを可能にした上部架台6が設けてあり、更に、上部架台6とは別に、マスト1に対するロックピン7の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えを可能にしたガイドマスト8が設けてあり、前記上部架台6とガイドマスト8は昇降シリンダ9によって連結されている。
【0022】
前記本体支持架台3及び上部架台6は、図3に示す如く建造物10の4本の柱10bと梁10aで囲まれ矩形空間を昇降できる大きさに形成されており、且つ前記本体支持架台3と上部架台6の夫々には、図1、図2に示すように水平方向外側に伸縮可能な拡縮機構20a,20bを備えている。
【0023】
前記本体支持架台3と上部架台6に備える拡縮機構20a,20bは同一の構成を有しており、従って、本体支持架台3に備えられる拡縮機構20aを示す図4〜図6の場合を例にとって説明する。拡縮機構20aは、前記本体支持架台3及び上部架台6の前後に水平且つ平行に設けたガイド部21に沿って図4、図5の左右幅方向Aに伸縮可能なビーム22と、該ビーム22の左側端部同士及び右側端部同士を固定する前後(図4では上下)に延びた連結ビーム23とからなる左右の第1段拡縮部材24を有しており、該第1段拡縮部材24は、前記本体支持架台3に設けた第1の駆動装置25により左右幅方向Aに拡縮するようになっている。
【0024】
第1の駆動装置25は、図7、図8に示す如く本体支持架台3のガイド部21に揺動軸26により取り付けた装置台27に、駆動モータ28で駆動されるウォーム29及びウォームホイール30により回転されるネジ軸31を取り付け、前記第1段拡縮部材24のビーム22に備えたナット32を前記ネジ軸31に螺合した構成を有している。このとき、前記第1の駆動装置25は、図7に示す如く前記第1段拡縮部材24を左右幅方向AのA’方向に拡張する際に、ネジ軸31の引っ張り力Fで第1段拡縮部材24をA’方向に拡張するように、本体支持架台3のガイド部21の端部にウォーム29を介してネジ軸31を回転する駆動モータ28を取り付け、前記ガイド部21に挿入されている第1段拡縮部材24の挿入側端部に形成した連結部33にナット32を設けて該ナット32を前記ネジ軸31に螺合している。
【0025】
そして、前記第1段拡縮部材24の連結ビーム23の下部には、図4〜図6に示す如く第1段拡縮部材24の拡張時にクレーン本体4に作用する重力Wを建造物10の梁10aに負荷するための重力載置部34を設けている。
【0026】
更に、前記第1段拡縮部材24のビーム22に固定されている連結ビーム23の各両端部には、図4〜図6、図9に示す如く前後方向B(図4では上下方向)に伸縮可能な第2段拡縮部材35が設けてあり、該第2段拡縮部材35は、前記第1段拡縮部材24の拡縮を駆動する第1の駆動装置25と同様の構成を有する第2の駆動装置36によって前記左右幅方向Aと直交する前後方向Bに拡縮されるようになっている。
【0027】
第2の駆動装置36は、図9に示すように、前記第1段拡縮部材24の連結ビーム23に揺動軸26を介して取り付けた装置台27に、駆動モータ28で駆動されるウォーム29及びウォームホイール30により回転されるネジ軸31を取り付け、前記第2段拡縮部材35に備えたナット32を前記ネジ軸31に螺合した構成を有している。このとき、前記第2の駆動装置36は、図9に示す如く前記第2段拡縮部材35を前後方向BのB’方向に拡張する際に、ネジ軸31の引っ張り力Fで第2段拡縮部材35をB’方向に拡張するように、第1段拡縮部材24の連結ビーム23の端部にウォーム29を介してネジ軸31を回転する駆動モータ28を取り付け、前記連結ビーム23に挿入されている第2段拡縮部材35の挿入側端部に形成した連結部33にナット32を設けて該ナット32を前記ネジ軸31に螺合している。
【0028】
前記第2段拡縮部材35の夫々の外側端部には、図4に示す如く建造物10の4本の柱10bの各内側コーナ部に押圧するように平面形状が略L字形に形成された反力受部37を固定している。
【0029】
従って、前記第1の駆動装置25により第1段拡縮部材24をA’方向に拡張し、更に、第2の駆動装置36により第2段拡縮部材35をB’方向に拡張して、前記本体支持架台3と上部架台6に設けた各拡縮機構20a,20bの反力受部37を建造物10の四隅の柱10bのコーナ部に押付けると、クレーン本体4に作用するモーメントMを上下の反力受部37を介して柱10bに負荷することができる。
【0030】
尚、図中38は前記第1段拡縮部材24の連結ビーム23に取り付けた浮上防止部材であり、該浮上防止部材38は建造物10の梁10aの下面に入り込んでクレーン本体4の浮き上がりを防止するためのものであり、該浮上防止部材38はピン39によって折り畳み可能に構成されている。
【0031】
次に、上記した実施の形態の作動を説明する。
【0032】
図1〜図9に示した構成において、図1、図4〜図6に示す如く、本体支持架台3に備えた拡縮機構20aの第1の駆動装置25を駆動して、第1段拡縮部材24をA’方向に拡張することにより重力載置部34を所要の高さの梁10a上に載置し、更に第2の駆動装置36を駆動して、第2段拡縮部材35をB’方向に拡張することにより反力受部37を四隅の柱10bの内側コーナ部に押付ける。このとき、第1段拡縮部材24の拡張を調節してL字形の反力受部37の一側面を柱10bのコーナ部の一面に押付け、第2段拡縮部材35の拡張を調節してL字形の反力受部37の他側面を柱10bのコーナ部の他面に押付けるようにする。更に、上部架台6に備えた拡縮機構20bの第1の駆動装置25を駆動して、第1段拡縮部材24をA’方向に拡張することにより重力載置部34を前記本体支持架台3を支持させた梁10aより高い位置の梁10a上に載置し、更に第2の駆動装置36を駆動して、第2段拡縮部材35をB’方向に拡張することにより前記と同様に反力受部37を四隅の柱10bに押付けるようにする。
【0033】
これにより、図1に示す如く、クレーン本体4に作用する重力Wは重力載置部34により建造物10の梁10aで受けられ、又、クレーン本体4に作用するモーメントMは上下の反力受部37が建造物10の柱10bを横方向に押付ける力Sによって柱10bで受けられるので、このようにして建造物10に支持されたクレーン2によりクレーン作業が行われる。このとき、浮上防止部材38を予め下方に回動させて建造物10の梁10aの下面に入り込むようにしておくことにより、クレーン本体4の浮き上がりを防止してクレーン本体4を更に確実に支持することができる。
【0034】
又、図1のクレーン本体4を上方へ盛り換える際に、先ず上部架台6を盛り換え、その後本体支持架台3を盛り換えてクレーン本体4をクライミングするという方法は前記図10で説明した場合と同様であるが、前記した如く、クレーン本体4に作用する重力Wは本体支持架台3と上部架台6に設けた拡縮機構20a,20bの重力載置部34を建造物10の梁10aに載置することで梁10aによって受け、又、クレーン本体4に作用するモーメントMは本体支持架台3と上部架台6に設けた拡縮機構20a,20bの反力受部37を建造物10の柱10bに押付けることで柱10bによって受けるようにしたので、拡縮機構20a,20bを拡縮させるという簡単な操作でクレーン本体4を建造物10に支持させてクライミングすることができ、よって従来のクライミングクレーンに比して迅速なクライミングを行って、クライミングクレーンの作業能率を高めることができる。
【0035】
このとき、クレーン本体4に作用する重力Wは重力載置部34を建造物10の梁10aに載置することで梁10aで受け、又、クレーン本体4に作用するモーメントMは上下の反力受部37を建造物10の柱10bに押付けることで柱10bで受けるようにしたので、従来のような伸縮ビームを梁に固定するための固定構造が不要になると共に、固定・解除に要する手数と時間を削減することができ、更に、建造物10の梁10aにはクレーン本体4に作用する重力Wが作用するのみであるため、梁10aが変形する問題を無くして従来必要としていた梁10aを補強するための資材及びその取り付け、取り外しのための手数を省略することができる。
【0036】
上記したように、第1の駆動装置25により第1段拡縮部材24をA’方向に拡張し、更に、第2の駆動装置36により第2段拡縮部材35をB’方向に拡張して、前記本体支持架台3と上部架台6に設けた各拡縮機構20a,20bの反力受部37を建造物10の四隅の柱10bのコーナ部に押付けるようにしており、このときの前記第1と第2の駆動装置25,36が、図7、図9に示したように、第1段拡縮部材24と第2段拡縮部材35をネジ軸31の引っ張り力Fによって拡張させるように構成したので、細径のネジ軸31によって大きな押付け力を発揮することができる。
【0037】
即ち、図11、図12に示した従来の油圧シリンダ或いはネジ式ジャッキを用いて反力受部の押付けを行おうとした場合には、通常では油圧シリンダ或いはネジ式ジャッキの押出し力で反力受部の押付け力を得るようにしているために、大きな押付け力を得ようとした場合に油圧シリンダのシリンダ軸或いはネジ式ジャッキのネジ軸が座屈してしまう問題があり、この問題のために通常では軸径を大きく設計しているが、駆動装置が大型化して重量が増加する問題がある。これに対し、前記したようにネジ軸31の引っ張り力Fによって反力受部37の押付け力を得るようにしているので、細径のネジ軸31で強大な押付け力を付与することができ、よって駆動装置25,36を小型化することが可能になる。
【0038】
更に、図8に示したように、駆動装置25,36は、ネジ軸31の回転を、駆動モータ28で駆動するウォーム29及びウォームホイール30によって駆動するようにしているので、反力受部37の反力によってウォームホイール30が回転して押付け力が緩むのをウォーム29で防止することができ、よってクレーン本体4の押付け支持を更に確実に行うことができる。
【0039】
なお、本発明のクライミングクレーンの反力受け構造は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、鉄骨の建造物の建設以外にコンクリートによる建造物の建設にも適用できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の反力受け構造を適用するクライミングクレーンの一例を示す概略側面図である。
【図2】図1をII−II方向から見た平面図である。
【図3】図1、図2の拡縮機構を縮小した状態を示す平面図である。
【図4】本体支持架台の拡大平面図である。
【図5】図4のV−V方向矢視図である。
【図6】図4のVI−VI方向矢視図である。
【図7】第1の駆動装置の詳細を示す側面図である。
【図8】図7のVIII方向矢視図である。
【図9】第2の駆動装置の詳細を示す側面図である。
【図10】従来のクライミングクレーンの一例を示す概略側面図である。
【図11】伸縮ビームを伸縮させる油圧シリンダの説明図である。
【図12】伸縮ビームを伸縮させるネジ式ジャッキの説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 マスト
2 クレーン
3 本体支持架台
4 クレーン本体
6 上部架台
8 ガイドマスト
9 昇降シリンダ
10 建造物
10a 梁
10b 柱
20a 拡縮機構
20b 拡縮機構
24 第1段拡縮部材
25 第1の駆動装置(駆動装置)
28 ウォーム
31 ネジ軸
32 ナット
34 重力載置部
35 第2段拡縮部材
36 第2の駆動装置(駆動装置)
37 反力受部
A 左右幅方向
B 前後方向
A’ 拡張方向
B’ 拡張方向
M モーメント
W 重力
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マストの頂部にクレーンを有しマストの下端に本体支持架台を有するクレーン本体と、前記マストに沿って盛り換えが可能な上部架台と、マストに沿って盛り換えが可能なガイドマストと、前記上部架台とガイドマストとの間を連結する昇降シリンダとを有するクレーン本体の前記本体支持架台と上部架台の夫々に拡縮機構を設け、該拡縮機構により反力受部を建造物の柱に押付けてクレーン本体に作用するモーメントを建造物の柱で受けるようにしたクライミングクレーンの反力受け構造であって、前記拡縮機構の拡縮を駆動する駆動装置が、ウォームにより回転するネジ軸と該ネジ軸に螺合したナットで構成され、前記拡縮機構の拡張時に、駆動装置のネジ軸の引っ張り力によりナットを介して反力受部を建造物の柱に押付けるようにしたことを特徴とするクライミングクレーンの反力受け構造。
【請求項2】
前記拡縮機構に、クレーン本体に作用する重力を建造物の梁に負荷する重力載置部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のクライミングクレーンの反力受け構造。
【請求項3】
前記拡縮機構が、前記本体支持架台及び上部架台に備えられ第1の駆動装置によって水平方向に拡縮可能な第1段拡縮部材と、該第1段拡縮部材の先端部に備えられ第2の駆動装置によって第1段拡縮部材の拡縮方向と直交する水平方向に拡縮可能な第2段拡縮部材とからなり、前記第2段拡縮部材に前記反力受部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクライミングクレーンの反力受け構造。
【請求項1】
マストの頂部にクレーンを有しマストの下端に本体支持架台を有するクレーン本体と、前記マストに沿って盛り換えが可能な上部架台と、マストに沿って盛り換えが可能なガイドマストと、前記上部架台とガイドマストとの間を連結する昇降シリンダとを有するクレーン本体の前記本体支持架台と上部架台の夫々に拡縮機構を設け、該拡縮機構により反力受部を建造物の柱に押付けてクレーン本体に作用するモーメントを建造物の柱で受けるようにしたクライミングクレーンの反力受け構造であって、前記拡縮機構の拡縮を駆動する駆動装置が、ウォームにより回転するネジ軸と該ネジ軸に螺合したナットで構成され、前記拡縮機構の拡張時に、駆動装置のネジ軸の引っ張り力によりナットを介して反力受部を建造物の柱に押付けるようにしたことを特徴とするクライミングクレーンの反力受け構造。
【請求項2】
前記拡縮機構に、クレーン本体に作用する重力を建造物の梁に負荷する重力載置部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のクライミングクレーンの反力受け構造。
【請求項3】
前記拡縮機構が、前記本体支持架台及び上部架台に備えられ第1の駆動装置によって水平方向に拡縮可能な第1段拡縮部材と、該第1段拡縮部材の先端部に備えられ第2の駆動装置によって第1段拡縮部材の拡縮方向と直交する水平方向に拡縮可能な第2段拡縮部材とからなり、前記第2段拡縮部材に前記反力受部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクライミングクレーンの反力受け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−103831(P2006−103831A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290262(P2004−290262)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】
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