説明

クラックの回復および偏向のためのマトリックス相を含むセラミックスマトリックス複合材料から部品を製造する方法

多孔質の繊維強化構造を形成する工程、前記繊維構造の細孔中に、複合材料マトリックスを構成するための元素を含有する粉体を導入する工程、および前記粉体同士の間、あるいは前記粉体の少なくとも一部と加えられた補足的な少なくとも一種の元素との間で反応を起こすことにより、前記粉体から少なくとも前記マトリックスの主要部分を形成する工程を具備し、前記繊維構造内に導入された前記粉体、および前記加えられた補足的な元素は、ホウ素化合物を含む少なくとも一つの回復不連続マトリックス相、およびラメラ構造の化合物を含む少なくとも1種のクラック偏向不連続マトリックス相を形成する元素を含有する方法である。マトリックスの少なくとも主要部分は、繊維構造内に導入された粉体と少なくとも一種の加えられた補足的な元素との間の反応により、または粉体同士の焼結により形成される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の背景
本発明は、セラミックスマトリックス複合(CMC)材料部品の製造に関する。
【0002】
CMCは、炭素またはセラミックス繊維製の高融点繊維強化材を、セラミックスマトリックスに加えて形成される。CMC部品の製造は、一般的には、複合材料の繊維強化材となる繊維構造またはプレフォームを作製すること、およびマトリックスのセラミック材料でプレフォームを緻密化することを含む。
【0003】
CMCは、構造部品を構成するのに適切な機械的特性を示し、それらは酸化環境中の高温においてもこうした特性を保つ能力を示す。
【0004】
それにもかかわらず、製造中またはその後に熱機械的応力に曝されると、CMCはセラミック材料クラック化に供される。クラックが伝播すること、特に繊維に関する限り、伝播することを避けるのが望まれる。なぜならクラックは繊維を切断し、それによって複合材料の機械的強度を弱めるおそれがあるからである。繊維マトリックス相間コーティング内の繊維を被覆することが知られており、それはマトリックス中を伝播して相間コーティングに達するクラックを逸らす能力を有し、それと同時に、繊維とマトリックスとの間に、複合材料に所望の機械的特性を与えるのに適切な接合を確実にする。クラックを逸らす相間コーティングは、米国特許第452503号に記載されているように、典型的には熱分解された炭素(PyC)または窒化ホウ素(BN)で作製される。米国特許第5079039号に記載されているように、PyCまたはBNのクラックを偏向する連続した相をセラミックスマトリックス相の間に介在させることも知られている。
【0005】
クラックの出現が、酸化雰囲気が材料の中心部に接近するのを容易とすべきでないこともまた望まれる。そのような接近は繊維に、炭素繊維の場合には相間コーティングにもダメージを与えるおそれがある。この目的のために、マトリックス内に一つ以上の回復相、すなわちマトリックス内に生じたクラックを治めることが可能な相を与えることが知られている。そのような回復マトリックス相は、典型的には化合物、特にホウ素化合物で作製され、それは酸素存在下でガラス質の組成物を形成するのに適切である。組成物はペースト状を呈し、ある種の温度範囲内で回復作用を果たす。その他の中では、米国特許第5965266号を参照することができ、これにおいては連続した自己回復相のマトリックス中への形成が記載されている。
【0006】
上述の文献において、クラックを逸らす特性または抑える特性を有する相間またはマトリックス相を形成することは、化学的蒸気浸透(chemical vapor infiltration:CVI)技術による。その技術はよく知られているが、非常に長い持続期間を必要とし、それゆえ極めて高価である。さらに、異なる種類のマトリックス相を形成するためにCVIを用いることは、用いられる反応ガスおよびCVIプロセスのパラメータ(温度、圧力、ガス流量・・・)の種類に変更を必要とする。
【0007】
米国特許第5094901号は、CVIにより繊維マトリックス相間を作製する前、およびセラミックスマトリックスを形成する前に、繊維構造中に回復効果を生じさせるのに適切なフィラーを導入することを提案する。フィラーは、典型的には一つ以上の、特に酸素の存在下ではB23を形成し得る材料とすることができ、場合によってはSiO2である。B4C、SiB6,またはBNの粉体を用いることができ、粉体は、溶媒に溶解された樹脂溶液中に分散された状態で、繊維構造の中に導入され、繊維構造はその後、得られた懸濁液が含浸される。樹脂は、相間を形成する前にカルボナイズされる。B23の前駆体を構成する粉体、場合によってはSiO2は、強化繊維構造および繊維マトリックス相間の繊維上にもっぱら配置され、マトリックスは次いでCVIにより形成される。
【0008】
米国特許第5962103号において、SiC−Siセラミックスマトリックスを有する複合体を得る方法は、繊維構造の繊維上に繊維マトリックス相間コーティングを形成すること、CまたはSiまたはC+SiCとホウ素化合物とを粉体状で導入すること、および溶融シリコンを浸透させることを含む。こうして得られた複合材料は、自己回復特性を有する。
【0009】
発明の目的および概要
本発明の目的は、CMCを簡便かつ迅速に得ることが可能な方法を提供することにあり、前記CMCは、少なくとも一つの回復マトリックス相と少なくとも一つのクラック偏向マトリックス相とを含む。
【0010】
この目的は、
多孔質の繊強化構造を形成する工程、
前記繊維構造の細孔内に、複合材料マトリックスを構成するための元素を含む粉体を導入する工程、および
前記粉体同士の間、または前記粉体の少なくとも一部と加えられた補足的な少なくとも一種の元素との間の反応を生じさせることにより、前記粉体から前記マトリックスの少なくとも主要部分を形成する工程を具備し、
前記繊維構造内に導入された前記粉体、および前記加えられた補足的な元素は、ホウ素化合物を含む少なくとも一つの不連続回復マトリックス相、およびラメラ構造の化合物を含む少なくとも一つのクラック偏向不連続マトリックス相を形成する元素を含む方法により達成される。
【0011】
“反応”という用語は、ここでは
・繊維構造内に導入された一種以上の粉体と、その後加えられた補足的な少なくとも一種の元素との間の化学反応、例えば溶融シリコン、溶融チタン、またはシリコンまたはチタンを含む溶融した合金、または溶融したジルコニウムのような少なくとも一種の補足的な元素との反応;
・繊維構造内に導入された粉体の焼結、例えば、スパークプラズマ焼結(SPS)として知られているようなパルス化された電界を伴なうホット焼結
を包含するために用いられる。
【0012】
“不連続マトリックス相”という用語は、マトリックス内に分散された個々の要素または“グレイン”から作られたマトリックス相を意味するためにここで用いられ、それは、CVIにより得られるマトリックス相の場合のように、マトリックス内に連続的に広がる相を形成しない。
【0013】
“ラメラ構造のクラック偏向化合物”という用語は、薄片から作られる構造を有し、構造の薄片の分離を引き起こしてクラック化のエネルギーを消散させることにより、クラックの直接伝播を妨害できる化合物を意味するためにここで用いられる。
【0014】
マトリックスは繊維構造内に導入された粉体を用いた反応により主として形成され、こうしてCVI緻密化プロセスが行なわれる場合より迅速な点、および、そのまたは各々の回復マトリックス相およびそのまたは各々のクラック偏向マトリックス相は、セラミックスマトリックス内に分散された不連続な相である点で、本発明の方法は注目に値する。不連続マトリックス相の別個の要素によって、回復作用のみならず、より顕著なクラック偏向作用が効果的に行なわれること、およびCVIプロセスにより得られるような連続マトリックス相が必要とされないことが、出願人により見出された。
【0015】
回復およびクラック偏向の不連続マトリックス相を形成する前記元素は、元素BおよびCと、SiおよびTiの少なくとも一種とを含むことが有利である。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、マトリックスの少なくとも主要部分は、繊維構造内に導入された前記粉体の少なくとも一部と加えられた補足的な少なくとも一種の元素との間の化学反応により形成される。
【0017】
加えられた補足的な元素は、シリコン、チタン、およびジルコニウムの少なくとも一種とすることができ、それ自体でまたは化合物または合金の状態で加えられる。
【0018】
繊維構造内に導入された前記粉体および加えられる補足的な元素は、少なくともB,C,SiおよびTiを含み、ホウ素化合物を含む少なくとも一つの回復不連続マトリックス相と、化学反応により得られる化合物Ti3SiC2を含む少なくとも一つのクラック偏向不連続マトリックス相とを形成することが有利である。
【0019】
第一の変形において、繊維構造内に導入される前記粉体は、少なくともB,CおよびTiを含み、少なくとも元素Siは溶融シリコンの状態で加えられる。また、元素Si、次いで元素Tiを、それぞれ溶融シリコン、および溶融したチタンまたはチタン合金の状態で加えることも可能である。元素B,CおよびTiは、炭化チタンおよび炭化ホウ素の状態とすることができる。
【0020】
第二の変形において、繊維構造内に導入される前記粉体は、B,CおよびSiとすることができ、少なくとも元素Tiは溶融チタンまたはチタンを含有する溶融合金の状態で加えられる。また、元素Ti、次いで元素Siを、それぞれ溶融したチタンまたはチタン合金、および溶融シリコンの状態で加えることも可能である。元素B,CおよびSiは、炭化ケイ素および炭化ホウ素の状態とすることができる。
【0021】
第三の変形において、繊維構造内に導入される前記粉体は、少なくとも元素BおよびCを含み、少なくとも元素SiおよびTiは溶融シリコンおよび溶融したチタンまたはチタン合金の状態で同時に加えられる。
【0022】
本発明のもう一つの実施形態において、マトリックスの少なくとも主要部分は、繊維構造内に導入された前記粉体を焼結させることにより形成される。
【0023】
焼結は、SPS焼結プロセスにより行なうことができる。
【0024】
繊維構造内に導入された粉体は、その後、チタンシリコンカーバイド(Ti3SiC2)(クラックを逸らす化合物)の粉体および/または窒化ホウ素(BN)(クラックを逸らす化合物)の粉体を含むことができる。
【0025】
繊維構造中に粉体を導入する前に、相間コーティング、例えばPyCまたはBNのコーティングをその繊維上に形成することができる。相間コーティングはCVIにより形成することができる。相間コーティングは、特に炭素繊維の場合には繊維構造の繊維を保護するのに寄与することができ、マトリックスの少なくとも部分が化学反応により形成される場合には、相間コーティングの一部が消費されるかもしれない。例えばSiCの保護コーティング、任意に相間コーティング上に例えばCVIにより形成することができ、反応バリアを構成して、化学反応によるマトリックスの少なくとも部分の形成の間に相間コーティングが消費されるのを避ける。
【0026】
それ自体で知られている種々の技術を、繊維構造内へ粉体を導入するために用いることができ、電気泳動、減圧下での粉体の吸引、および液体中の粉体の懸濁液による含浸のようなものである。
【0027】
好ましくは、粉体は1マイクロメーター(μm)未満、典型的には20ナノメーター(nm)から100nmの範囲内の平均寸法を示す。
【0028】
また本発明は、上述の方法により得られるようなセラミックスマトリックス複合材料の部品を提供し、その部品において、マトリックスは、粉体に基づく反応プロセスにより得られる主要部分を含み、マトリックス中に分散されたホウ素化合物を含む少なくとも一つの回復不連続マトリックス相と、マトリックス中に分散されたラメラ構造のクラック偏向化合物を含む少なくとも一つの不連続マトリックス相とを含む。
【0029】
ラメラ構造の化合物は、Ti3SiC2および/またはBNとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の詳細な説明では添付した図面が参照され、それにおいては、
【図1】特定の実施形態において本発明の方法で行なわれる工程を示す簡略化された図。
【図2】特定の実施形態において本発明の方法で行なわれる工程を示す簡略化された図。
【図3】電気泳動により多孔質繊維構造内に粉体を導入する装置の模式図。
【図4】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図5】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図6】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図7】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図8】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図9】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図10】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図11】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図12】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図13】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図14】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図15】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【図16】本発明にしたがって得られたCMC材料中の不連続マトリックス相の形成およびクラックの偏向を示す顕微鏡写真。
【0031】
発明の実施形態の詳細な説明
図1および図2の実施形態において、方法の第1工程10は、製造されるCMC材料部品の繊維強化材を構成するための適切な多孔質の繊維構造を形成することにある。強化繊維は、炭素繊維、またはSiC繊維のようなセラミックス繊維とすることができ、場合によっては炭素に被覆される。
【0032】
強化繊維構造体または繊維プレフォームのような形成の操作は、それ自体よく知られている。三次元繊維構造体は、巻きつけ(ワインディング)プロセス、または三次元の編み込み(ウィービング)、よりあわせ(ブレーディング)、または表編み(ニッティング)プロセスによって、ヤーン、トウ、またはテープのような単一方向の繊維要素から形成することができる。二次元の繊維パイルから三次元繊維構造を形成することも可能であり、それは重ね合わされ、例えば針で縫うこと(ニードリング)により、またはヤーンの埋め込み(インプランティング)、またはパイルに関して横切る他の単一方向の要素により、互いに結合されるのが有利である。二次元の繊維パイルは、織られたファブリック、または単一方向のシート、または単一方向のシートを異なる向きで重ねて互いに結合することにより形成された真の多方向シートとすることができる。
【0033】
強化繊維構造体の繊維の上に相間コーティングを形成することは有利である。知られている方法において、そうした相間コーティングは、上述したようにPyCまたはBNで作製することができる。相間コーティングは、繊維構造を製造する前または後に、CVIによって繊維上に形成することができる。その厚さは、0.1μm〜2μmの範囲内にあることが好ましい。
【0034】
CMC材料マトリックスを製造することが溶融したシリコンまたはチタニウムのような加えられる補足的な元素との化学反応を含む場合、起こり得る化学的な攻撃に対して相間コーティングおよび下層の繊維を保護するために、相間コーティングの上に保護コーティングを形成することができる。保護バリアを形成するそのようなコーティングは、例えばSiC製とすることができる。保護コーティングは、繊維構造を形成する前または後に、CVIにより相間コーティングの上に形成することができる。その厚さは、0.1μm〜2μmの範囲内にあることが好ましい。
【0035】
本発明の方法の引き続く工程12において、繊維を有する多孔質の繊維構造は、相間コーティングを備えること、場合によっては保護コーティングを備えることが都合よく、粉体を導入することにより少なくとも部分的に充填された細孔を有する。
【0036】
用いられる粉体は、セラミックスマトリックスの少なくとも主要部分を形成するために必要とされる元素の少なくともいくつかを与え、そのセラミックスマトリックスは、ホウ素化合物を含む少なくとも一つの回復不連続マトリックス相と、ラメラ構造のクラック偏向化合物を含む少なくとも一つの不連続マトリックスとを含む。
【0037】
繊維構造内に導入される粉体は、その中心部への途中ずっと繊維構造の細孔内へ浸透するのを可能とするために、小さい粒径のものとする。したがって、粉体の平均寸法は、1μm未満に選択されることが都合よく、20nm〜100nmの範囲内にあることが好ましい。
【0038】
繊維構造の細孔中に粉体を導入するために、種々の既知の方法を用いることができる。
【0039】
第1の方法は、粉体を含む懸濁液を繊維構造に浸み込ませることにある。浸み込みは、圧力の下、懸濁液を収容した浴中に繊維構造を沈めて形成することができる。
【0040】
第2の方法は、粉体の減圧吸引を行なうことにあり、多孔質基板中に炭素粉末を導入するために米国特許第5352484号に記載されているのと同様の方法で進める。粉体を含む懸濁液は繊維構造の一方の側にもたらされ、圧力差を与えて繊維構造に懸濁液を通過させ、構造内に粉体をとどめるために、構造の他方の側でフィルタリングを行なう。
【0041】
第3の方法は電気泳動を用いることにある。図3に極めて模式的に示されるように、多孔質の繊維構造20は、図示する例においては板状であるが、繊維構造の中に導入されるべき粉体の懸濁液24を含む容器22内に沈められる。繊維構造20は、例えばグラファイト製の2つの電極26と28との間に配置される。電気泳動プロセスは、導電性の繊維構造を用いて行なうことができ、それは、炭素繊維からなる繊維構造、または熱分解技術により特に得られるような炭素でコートされる場合は、セラミックス繊維、例えばSiC繊維からなる繊維構造などである。直流(DC)電力供給回路30は、電極26および28に並列に接続された1つの端子と、繊維構造体20に接続されたもう1つの端子とを有する。その結果、粉体の帯電した粒子は、繊維構造体20に向けて移動して、連続的にその細孔を満たす。
【0042】
粉体が導入された後、乾燥が行なわれる。
【0043】
図1および2の実施形態において、セラミックス化合物の粉体は、一つ以上の不連続なセラミックスマトリックス相の形成に直接寄与することができ、そのマトリックス相は必ずしも回復またはクラック偏向ではない。例示のために、そのような粉体は、炭化ケイ素SiCおよび/または炭化チタンTiCの粉体とすることができる。
【0044】
さらに、図1および2の実施形態においては、少なくとも一つの回復不連続マトリックス相の形成に寄与するために、特に炭化ホウ素B4Cのようなホウ素含有化合物;シリコンヘキサボライドSiB6;チタンジボライドTiB2;および/またはアルミニウムボライドAlB2、AlB12を用いることができる。
【0045】
図1の実施形態においては、工程14は、粉体が繊維多孔質内に導入された後に得られるプレフォーム上で行なわれ、その工程の間、溶融されて加えられる少なくとも1つの付加的な元素との化学反応により緻密化が行なわれ、不連続なマトリックス相の形成を伴なう。
【0046】
特に、加えられる補足的な元素は、シリコン、チタン、および/またはジルコニウムとすることができ、化合物または合金というほどのものでもない。
【0047】
都合のよいことに、クラック偏向化合物Ti3SiC2を含む不連続なマトリックス相は、SiCの粉体および/またはTiCの粉体のような繊維構造に導入される粉体と、溶融状態で加えられるチタンまたはシリコンとの間の化学反応により得られる。SiCおよびTiC粉体は、その後、SiCおよび/またはTiCのセラミックマトリックス相とクラック偏向不連続マトリックス相との両方の形成に寄与する。
【0048】
繊維構造に導入される粉体がTiC粉体を含む場合、溶融シリコンとシリサイド化化学反応が行なわれて、SiC、場合によってはTiSi2とともにTi3SiC2が得られる:
3TiC+2Si→Ti3SiC2+SiC
TiC+3Si→TiSi2+SiC
またSiCは、シリコンと炭素との間の反応によって生成することもでき、炭素は、相間コーティングの上に保護バリアを形成するコーティングのない場合には繊維上に存在するPyC相間から得ることができ、あるいは、繊維構造の中に導入される炭素粉末に起因する。
【0049】
溶融チタンは、その後、SiCと炭素との反応によるTi3SiC2の量を高めるために加えることができ、炭素はSiCに起因し、または繊維構造内に導入される粉体内に存在し、または繊維上に形成されるPyC相間に起因する:
SiC+C+3Ti→Ti3SiC2
化合物Ti5Si3およびTiCもまた生じることができる。
【0050】
繊維構造内に導入される粉体がSiC粉体を含む場合、チタナイズ化の化学反応が溶融チタンとの間で起こってTi3SiC2を与える:
SiC+C+3Ti→Ti3SiC2
Cは繊維構造の中に導入された粉体中に存在し、またはPyC相間上の反応バリアを形成するコーティングがない場合には、PyC相間からのSiCに起因する。化合物Ti5Si3およびTiSi2もまた生じる。
【0051】
溶融シリコンは、その後、TiCとの反応によりTi3SiC2の量を増やすために加えることができ、それによって、TiCの量が減少する。
【0052】
溶融したシリコンまたはチタンとの化学反応は、チタンまたはシリコンが溶融状態で繊維構造に進入することにより生じ、構造の中には粉体が予め導入されている。チタンの金属合金、例えばTi8Al4Vを溶融状態で用いることもできる。
【0053】
この目的のために、繊維プレフォームは、シリコン製、チタン製、またはチタン合金製の塊とともに容器または坩堝内に常法により設置することができる。アセンブリーはオーブン内に設置して、シリコンまたはチタンまたはチタン合金の融点を越えて、その温度を高める。プレフォームは、完全に浸漬する必要はない。繊維構造の一部が、溶融したシリコンまたはチタンに接触すれば十分であり、その後、毛管現象によりプレフォーム内に順次引き込まれる。浸透は、オーブンを真空源に接続して、その内部の減圧を確立することにより促進することができる。
【0054】
常法と同様に、溶融したシリコンまたはチタンまたはチタン合金を毛管現象でプレフォームにもたらすドレインによって、溶融したシリコンまたはチタンまたはチタン合金の浴にプレフォームを接続することも可能である。ドレインは、高融点金属で作製することができ、例えば、SiC繊維または(少なくとも初期状態は)炭素繊維、ウィック状、テープ状などである。そのようなプロセスは、特に文献WO2004/076381に記載されている。
【0055】
シリコンまたはチタンが高められる温度は、その融点より高く選択され、例えばシリコンについては1450℃から1500℃の範囲内であり、チタンについては1700℃から1750℃の範囲内である。Ti6Al4Vのようなチタン合金については、融点はチタンより低く、1650℃から1700℃の間の温度を採用することができる。
【0056】
上述のことは、シリサイド化および引き続くチタナイズ化、あるいはその逆に関連する。変形において、シリコンおよびチタンまたはチタン合金を溶融状態で同時に加えることによりシリサイド化およびチタナイズ化を同時に行なうことも可能である。繊維構造に予め導入された粉体は、その後、少なくとも元素BおよびC、例えばホウ素含有化合物の粉体と、炭素および/またはSiCおよび/またはTiCのような炭化物の粉体とを含む。SiおよびTiを同時に加えることは、SiおよびTiの粉体、またはSiおよびTi合金の粉体、またはSiおよびTiSi2のようなTi化合物の粉体を用いて行なうことができる。
【0057】
溶融したジルコニウムを加えることによりジルコナイズ化が行なわれる場合、繊維構造に予め粉体を加えることによって少なくとも一つの回復不連続マトリックス相を形成することができ、粉体はBNのようなラメラ構造のクラック偏向化合物を含む。
【0058】
図2の実施形態において、繊維構造への粉体導入の工程12の後に、焼結工程16が行なわれる。
【0059】
こうして、繊維構造に導入された粉体は、次を含む必要がある。少なくとも一つの回復不連続マトリックス相を形成するために必要なホウ素含有化合物;場合によっては少なくとも一つの非回復不連続セラミックスマトリックス相を形成するTiCおよび/またはSiCのような化合物であり、それはクラックを偏向しないが、そのようなセラミックス相が望まれるであろう;およびクラックを偏向する不連続マトリックス相の形成に直接関与するラメラ構造の化合物である。これらの化合物は、特にTi3SiC2および/またはBNである。
【0060】
応力なしの自然の焼結または応力下の焼結、例えばホットプレスを用いることができる。あるいは、電界および応力を適用しつつのホットプレスまたはSPS焼結が好ましい。
【0061】
そういうSPS焼結は、それ自体知られている。粉体が充填された繊維構造は、導電材料、典型的にはグラファイトからなる容器内に設置され、圧力(典型的には10メガパスカル(MPa)〜100MPaの範囲)を同時に印加しつつ、連続したまたはパルス化された電界が適用される。焼結は温度の上昇の結果であり、粉体の隣接する粒子の間にプラズマが発生することにより起こるようである。作製されるべきCMC材料部品のための繊維強化材に合う形状の繊維構造を作ることによって、本発明の方法でセラミックスマトリックスを得ることができ、それは、マトリックス中に分散したホウ素化合物を含む少なくとも一つの不連続な回復相と、クラックを偏向するラメラ構造の化合物を含み、マトリックス中に分散された少なくとも一つの不連続相とを含み、ラメラ化合物は、特にTi3SiC2および/またはBNから構成される。
【0062】
本発明の方法は、繊維構造を緻密化することによりCMC材料マトリックスの全てを形成するために用いることができ、繊維構造においては、繊維は相間コーティングを具備し、保護プロセスのための付加的なコーティングを具備するかもしれない。あるいは、それは主要部分、すなわちセラミックスマトリクスの大部分を形成するために用いることができる。そのような環境の下、マトリックスの少量の部分は、通常のCVIプロセスにより、または通常の液体プロセスにより形成することができる。すなわち樹脂のようなマトリックス前駆体を含む液体組成物での含浸、それに引き続く熱分解による前駆体の変形である。
【0063】
そのような少量の部分は、初期的強化マトリックス相により特に構成することができ、そのマトリックス相は繊維構造の繊維が互いに十分に結合して、その形状を保ちつつ取り扱われるのに十分に強く作製するのに役立ち、繊維構造内で充填された空孔の空間の少量部分のみをともなう。そうした少量部分についても、残留細孔を低減する目的で、主マトリックスが行なわれた後に反応により形成される終端マトリックス相により特に構成することができる
以下は、本発明の方法の実施形態の例の説明である。
【0064】
例1
連続した炭素繊維ヤーンを三次元的に編むことにより、3ミリメートル(mm)の厚さを有する板状の多孔質繊維構造を作製した。繊維構造は約70%の空孔体積率を示した。
【0065】
繊維構造が常法により作製された後、約1μmに等しい厚さのPyC相間コーティングを、繊維上にCVIプロセスで形成した。
【0066】
約150nmの平均サイズを有するB4C粉体と、約30nmの平均サイズを有するTiC粉体とを、エタノール中の懸濁液に加え、攪拌により懸濁液を均一にした。体積分率は、TiCについて11%であり、B4Cについて2%である。
【0067】
懸濁液は、図3に示される種類の電気泳動装置の容器内に導入され、繊維構造は電極の間の容器内に浸漬された。電極は、1センチメートル当たり約40ボルト(V/cm)の電界を約2分(min)の間、与えられる。粉体で充填された繊維構造が容器から取り出されて乾燥された後、その相対重量増加を調べたところ、約406%であった。この増加は、100(m1−m0)/m0を計算することにより決定され、m1は粉体充填された乾燥繊維構造の重量であり、m0は粉体が導入される前の乾燥繊維構造の重量である。
【0068】
その後、繊維構造の中に導入された粉体と溶融状態で加えられたシリコンとの間の化学反応により、シリサイド化が行なわれる。この目的のために、粉体充填された繊維構造は、シリコンとともに坩堝の中に設置されて、オーブンの中に挿入される。オーブン内を真空源に接続しつつ、その内部の温度を約1450℃まで高めて、繊維構造の中心への溶融シリコンの浸透を促進した。シリコンの量は、繊維構造内に存在するTiC粉体の量の関数として以下の反応が完全に行なわれるのに十分となるように選択されるが、かなり過剰ではない:
3TiC+2Si→Ti3SiC2+SiC
シリサイド化の後、残留空孔の体積分率は約17%であり、相対密度は約2.9に達した。
【0069】
X線回折(XRD)相図は、特にマトリックスがTi3SiC2およびSiC相のみならず、TiC、TiSi2、およびTiB2相もまた含むことを示した。Ti3SiC2およびSiCを与える上述の反応に加えて、次の反応も生じると推測される:
C+Si→SiC(PyC相間からのC)
TiC+3Si→TiSi2+SiC
4C+2TiC+3Si→2TiB2+3SiC
図4および5の電子顕微鏡写真は、得られた緻密なセラミックスマトリックス、および、より小さな縮尺で特徴的なラメラ構造のTi3SiC2グレインをそれぞれ示す。図4、5、およびその後の記載において、用語“EPD”および“RMI”は、電気泳動による粉体の導入または堆積(“電気泳動堆積:electrophoresis deposition”)についてのプロセス、および溶融元素の浸透(“反応性溶融浸透reactive melt infiltration”)の反応プロセスをそれぞれ示す。
【0070】
例2
手順は例1と同様であるが、シリサイド化は一回で完了するように制限した。残留空孔の堆積分率は約21%であり、相対密度は約2.5であった。
【0071】
その後、チタナイズ化操作は、まず繊維構造内に導入された粉体とシリサイド化の間に形成された相との間の化学反応、次いで、溶融状態で加えられたチタンとの化学反応により行なわれた。この目的のために、シリサイド化の後に得られた部品は、チタンの塊とともに坩堝内に設置され、オーブン内に挿入される。オーブン内では約1725℃の温度まで高められ、オーブン容器は真空源に接続される。チタナイズ化の後、残留空孔の体積分率は、約8%であり、相対密度は約3.6に高められた。
【0072】
XRD相図は、特に次の相のマトリックス中の存在を示した。Ti3SiC2,SiC,TiC,TiB2,Ti5Si3,およびTiである。シリサイド化の後のチタナイズ化の効果は、マトリックス中における不連続なTi3SiC2相の増加、およびSiCマトリックスの量の減少であり、以下の反応による。
【0073】
SiC+C+3Ti→Ti3SiC2
CはPyC相間および/またはシリサイド化の間に形成される炭化物相に由来する。
【0074】
図7および8の顕微鏡写真は、得られたマトリックス中のTi3SiC2グレインの存在を示す。より縮尺の小さい図8は、マトリックス内で発生したクラックを偏向するTi3SiC2のグレインの効果を示す。
【0075】
例3
手順は例1と同様であるが、約2μmの厚さを有するPyC相間を繊維構造の繊維の上に形成し、TiC粉体は約50nmの平均サイズを有するSiC粉体(粉体懸濁液中で同じ体積分率)で置き換え、シリサイド化はチタナイズ化で置き換えた。
【0076】
SiCおよびB4Cの粉体で充填された繊維構造は、例2と同様の手法により、溶融状態で加えられたチタンとの化学反応によりチタナイズ化した。CMC材料部品は、約10%の残留空孔分率、および約3.5の相対密度をもって得られた。
【0077】
XRD状態図は、特にマトリックス中に次の相Ti3SiC2,SiC,TiC,TiB2,およびTi5Si3が存在することを示し、Ti3SiC2化合物は例2と同様の反応により得られる。
【0078】
SiC+C+3Ti→Ti3SiC2
CはPyC相間に由来する。
【0079】
繊維上のPyC相間の比較的大きな厚さは、繊維に達することなしに犠牲になる相間の部分を与えた。
【0080】
図9の顕微鏡写真は、得られた緻密なマトリックスを示す。
【0081】
例4
手順は例3と同様であるが、チタナイズ化はチタン、アルミニウム、およびバナジウムの溶融した合金Ti6Al4Vを1675℃で反応させることにより行なった。チタナイズ化の後、残留空孔の体積分率は約5%であり、相対密度は約3.3であった。
【0082】
XRD相図は、特に次の相Ti3SiC2,SiC,TiC,Ti,TiB2,およびTi5Si3がマトリックス中に存在することを示した。
【0083】
図10の顕微鏡写真は、得られた緻密なマトリックスを示す。
【0084】
Ti6Al4V合金の利点は、チタンをそれ自体で用いたチタナイズ化に必要とされるより低い温度でチタナイズ化を行なうことができる点である。
【0085】
例5
手順は例3と同様であるが、チタナイズ化は、それが行なわれた後に、残留空孔体積分率が約11%で相対密度が約3.5になるように制限した。
【0086】
その後、シリサイド化は、例1で述べたのと同様の条件のもとで行なった。シリサイド化の後、残留空孔体積は約8%に減少し、相対密度は約3.4に達した。
【0087】
XRD相図は、特に次の相Ti3SiC2,SiC,TiC,TiB2,およびTiSi2のマトリックス中の存在を示した。チタナイズ化の後に行なわれたシリサイド化は、以下の反応によるTi3SiC2不連続マトリックス相の量の増加、およびTiCマトリックス相の量の減少の効果を有した。
【0088】
3TiC+2Si→Ti3SiC2+SiC
図11および12に顕微鏡写真は、得られた緻密なマトリックスを示し、より小さな縮尺において、ラメラ構造のTi3SiC2グレインを示す。
【0089】
例6
連続した炭素繊維ヤーンの三次元編みにより作製された繊維板から切り出すことにより、約50nmの直径および約2mmの厚さを有する円柱状サンプルの繊維構造を得た。
【0090】
サンプルが得られた後、約0.1μmの厚さを有するPyC相間コーティングを、CVIプロセスにより繊維上に形成した。
【0091】
約50nmの平均サイズを有するSiC粉体および約140nmの平均サイズを有するBN粉体を、エタノール中の懸濁液に加え、懸濁液を攪拌により均一にした。SiCおよびBNの体積分率は、それぞれ約11%および約3%であった。
【0092】
SiCおよびBNの粉体は、例1と同様の電気泳動プロセスを用いることにより繊維構造サンプル内に導入した。粉体で充填され乾燥されると、約330%の相対重量の増加がサンプルに測定された。
【0093】
その後、粉体充填されたサンプルについてSPS焼結を行なった。約1600℃のSPS焼結温度で、約22%の残留体積分率および約2.35の相対密度を有する部品を得ることができた。約1650℃の温度での焼結が行なわれた場合には、約16%の残留体積分率および約2.36の相対密度を有する部品を得ることができた。
【0094】
図13および14の顕微鏡写真は、それぞれ約1600℃および1650℃のSPS焼結温度について得られた緻密なマトリックスを示し、図15は、1650℃でのSPS焼結について、不連続マトリックスグレインの平均サイズおよび形状をより小さな縮尺で示す。
【0095】
比較のために、この例で用いたものと同様であるが、約0.3μmの厚さの相間コーティングを有する繊維構造サンプルをCVIプロセスによりSiCで緻密化した。約2.3の相対密度をもって約15%の残留細孔体積を得ることが可能であった。繊維の導入および1650℃でのSPS焼結は、極めて類似した値を得ることを可能とし、一方で、より迅速に行ないつつ、BNの不連続マトリックス相が形成されるのを可能とする。そのマトリックス相はクラックを偏向するラメラ構造の化合物、および回復不連続マトリックス相を構成するホウ素含有化合物の両方を含む。
【0096】
1650℃でのSPS焼結の後、得られた部品に衝撃試験(ヴィッカース硬度試験)を行なった。図16は、衝撃により発生したクラック、およびラメラ構造BN化合物の存在により得られたクラック偏向の効果を示す顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスマトリックス複合材料の部品を製造する方法であって、
多孔質の繊維強化構造を形成する工程、
前記繊維構造の細孔内に、複合材料マトリックスを構成するための元素を含む粉体を導入する工程、および
前記粉体同士の間、または前記粉体の少なくとも一部と加えられた補足的な少なくとも一種の元素との間で反応を生じさせることにより、前記粉体から前記マトリックスの少なくとも主要部分を形成する工程を具備し、
前記繊維構造内に導入された前記粉体、および前記加えられた補足的な元素は、ホウ素化合物を含む少なくとも一つの回復不連続マトリックス相、およびラメラ構造の化合物を含む少なくとも一種のクラック偏向不連続マトリックス相を形成する元素を含む方法。
【請求項2】
前記クラック偏向および不連続マトリックス相を形成する前記元素は、元素BおよびCと、元素SiおよびTiの少なくとも一種とを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項3】
前記マトリックスの少なくとも主要部分は、繊維構造内に導入された前記粉体の少なくとも一部と前記加えられた補足的な少なくとも一種の元素との間の化学反応により形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加えられた補足的な元素は、シリコン、チタン、およびジルコニウムからなる群から選択される少なくとも一種の元素であることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維構造に導入される前記粉体および前記加えられた補足的な元素は、少なくとも元素B,C,Si,およびTiを含み、ホウ素化合物を含有する少なくとも一つの回復不連続マトリックス相と、化学反応により得られた化合物Ti3SiC2を含む少なくとも一つのクラック偏向不連続マトリックス相とを形成することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維構造に導入される前記粉体は、少なくともB,CおよびTiを含み、少なくとも元素Siは溶融シリコンの状態で加えられる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記繊維構造に導入される前記粉体は、少なくともB,CおよびTiを含み、元素Si次いで元素Tiは、溶融シリコンおよび溶融チタンまたはチタン含有合金の状態で、それぞれ順次加えられる請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維構造に導入される前記粉体は、炭化チタンおよび炭化ホウ素を含む請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記繊維構造に導入される前記粉体は、少なくともB,CおよびSiを含み、少なくとも元素Tiは溶融チタンまたはチタンを含有する溶融合金の状態で加えられる請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記繊維構造に導入される前記粉体は、少なくともB,CおよびSiを含み、元素Ti次いで元素Siは、溶融チタンまたはチタンを含有する溶融合金の状態で、および溶融シリコンの状態でそれぞれ順次加えられる請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維構造に導入される前記粉体は、炭化ケイ素および炭化ホウ素を含む請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
繊維構造に導入される前記粉体は、少なくともBおよびCを含み、元素SiおよびTiの少なくとも一種は、溶融したシリコンおよびチタンまたはチタン合金または化合物の状態で同時に加えられる請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記マトリックスの少なくとも主要部分は、前記繊維構造内に導入された前記粉体を焼結することにより形成される請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維構造内に導入された前記元素は、クラック偏向化合物Ti3SiC2の粉体を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記繊維構造に導入される前記粉体は、クラック偏向化合物BNの粉体を含む請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記焼結は、フラッシュまたはSPS焼結プロセスにより行なわれる請求項13乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記繊維シリコン内に前記粉体を導入する前に、前記繊維構造の前記繊維上に相間コーティングを形成する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
反応バリアを形成する保護コーティングを、前記相間コーティング上に形成する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維構造内に導入される前記粉体は、1μm未満の平均サイズを有する請求項1乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記粉体は、20nm〜100nmの範囲内の平均サイズを有する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
セラミックスマトリックス複合材料製の部品であって、前記マトリックスは、粉体に基づく反応プロセスにより得られ、前記マトリックス中に分散したホウ素化合物を含む少なくとも一つの回復不連続マトリックス相と、前記マトリックス中に分散したラメラ構造のクラック偏向化合物を含む少なくとも一つの不連続マトリックス相とを含む方法。
【請求項22】
前記マトリックスは、クラック偏向化合物Ti3SiC2を含む不連続相を含む請求項21に記載の部品。
【請求項23】
前記マトリックスは、クラック偏向化合物BNを含む不連続マトリックス相を含む請求項21または22に記載の部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−506816(P2010−506816A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532864(P2009−532864)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052166
【国際公開番号】WO2008/047038
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【Fターム(参考)】