説明

クラミジア感染に対する免疫

本発明は、クラミジア菌株、具体的にはクラミジア・トラコマティスによる感染によって生じる疾患に対する、ヒトを含む宿主の、DNAを含む核酸免疫の方法のための核酸、タンパク質およびベクターを提供する。本方法は、宿主において遺伝子産物の発現をもたらすプロモーターに調節可能に結合しているクラミジア菌株のMgp002ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを用いる。完全長Mgp002遺伝子の切断型は、クラミジア感染によって引き起こされる疾患に対する防御に有用な免疫原である。本発明はさらに、クラミジア感染によって引き起こされる疾患に対する防御に有用な組み換えMgp002タンパク質を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学に関するものであり、より詳細には、クラミジアによる感染に対する防御を提供する核酸および分子を用いた宿主の免疫に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸免疫は、感染症に対する防御免疫を誘導する手法である(非特許文献1)−本明細書の全体にわたって、本発明が関係する最新技術をより完全に説明するためにさまざまな参考文献が括弧内に引用される。(各引用についての完全な書誌情報は本明細書の末尾、請求項の直前に示す。これらの参考文献の開示は参照により本開示に含まれる)。タンパク質またはペプチドを基礎とするサブユニットワクチンとは異なり、核酸またはDNA免疫は、宿主細胞による外来タンパク質の発現を通じて防御免疫を提供し、従って、ウイルスまたは細胞内病原体による感染中に生じる態様とより似た態様での、免疫系への抗原の提示を可能にする(非特許文献2)。この技術によって相当な関心が生じているが、免疫の成功はウイルス疾患のためのDNA免疫によってほとんど確実に誘導されている(非特許文献3)。結果は、病原体の性質、選択された免疫抗原および免疫経路における違いを反映しうる非ウイルス性病原体ではより変動しやすい(非特許文献4)。DNAワクチン接種のさらなる開発は、基礎となる免疫学的機構を解明すること、およびその用途をワクチン開発の既存戦略が失敗している他の感染症へ拡大することに依存する。
【0003】
クラミジア属はクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、肺炎クラミジア(C.pneumoniae)、クラミジア・シッタシイ(C.psittaci)およびクラミジア・ペコルム(C.pecorum)の4種を含む。クラミジア・トラコマティスは偏性細胞内細菌病原体であり、通常は宿主ヒトの粘膜上皮表面に局在化して留まる。クラミジアは二形性細菌であり、基本小体 (EB) と呼ばれる細胞外の胞子様伝達細胞および網様体と呼ばれる細胞内の増殖細胞を有する(非特許文献5)。世界的にクラミジア・トラコマティスは最も多い性行為感染病原体の1つであり、および予防可能な失明の主な原因である(非特許文献6)。公衆衛生の観点から、クラミジア感染は不妊、失明の重大な原因でありおよびヒト免疫不全ウイルス1型の感染を促進する蔓延した補助因子であるため、非常に重要である(非特許文献7)。トラコーマ、性器感染、呼吸器感染および眼感染を生じる、クラミジア・トラコマティスの複数の血清型が存在する。クラミジア・トラコマティスに対する防御免疫は、T細胞媒介性免疫を介してTh1様CD4リンパ球反応によって放出されたサイトカインによっておよび粘膜分泌中の局所抗体によって達成されると考えられており、さらに、クラミジア細菌細胞の量的に主要な表面タンパク質でありかつ約40kDaの分子量を有する主要外膜タンパク質(MOMP)に向けられると考えられている(非特許文献11)。CD8+T細胞の役割は二次的であるように思われる。
【0004】
クラミジアワクチンの開発における最初の試みは、全細菌細胞を用いた非経口免疫を基礎とした。この手法はヒト試験である程度成功したが、防御が短期間で部分的であり、さらにおそらく一部のクラミジア抗原に対する病的反応が原因でワクチン接種が以後の感染発症中に疾患を悪化させ得るため限定的であった(非特許文献8)。クラミジアワクチン設計についてのより近年の試みは、MOMPタンパク質またはペプチドを用いたサブユニット設計を基礎としている(非特許文献9)。これらのサブユニットワクチンもまた、クラミジア上の天然エピトープによって呼び起こされる防御的な細胞性および体液性免疫反応を免疫原が誘導しないことがおそらく原因で、全般的に失敗している(非特許文献10)。
【0005】
1997年7月11日に出願され、マニトバ大学に譲渡され、参照によって開示に含まれる特許文献1には、プラスミド中のクラミジア・トラコマティスのMOMPをコード化するDNA配列を用いてDNA免疫によって、防御免疫反応を生じることが開示されている。
【0006】
近年では、クラミジア・トラコマティス(非特許文献14)およびC.muridium(非特許文献15)両方のマウス肺炎菌株(MoPn)の全ゲノムが配列決定された。肺炎クラミジアに由来するmgp002遺伝子が、2001年3月29日に公開された特許文献2に開示されている。
【0007】
クラミジア感染は、テトラサイクリン誘導体、特に、ドキシサイクリン、ならびに、エンスロマイシンおよびアジスロマイシンといったマクロライドまたはアザライドといった抗生物質で治療してもよい;しかしながら、感染は無症候性であることが多く、通常は、感染の最初の症状として重篤な合併症を呈する(非特許文献6)。抗生物質の使用の増加が抗生物質耐性微生物につながるため、化学療法または抗生物質療法は長期的戦略とはならない可能性がある。このため、クラミジア感染を予防および治療するための有効な治療法に対する必要性は依然として残っている。
【特許文献1】米国特許第6,235,290号明細書
【特許文献2】国際公開第01/21803号パンフレット
【非特許文献1】M. A. Liu, M. R. Hilleman, R. Kurth, Ann. N. Y.Acad. Sci. 772 (1995)
【非特許文献2】D. M. Pardoll and A.M.Beckerieg, Immunity 3,165 (1995)
【非特許文献3】W. M. McDonnell and F.Askari, N. Engl. J. Med. 334, 42 (1996)
【非特許文献4】J. B. Ulmer et al., Science 259, 1745 (1993)
【非特許文献5】B. Wanget al., ProC. Natl. Acad. Sci. USA90, 4156 (1993)
【非特許文献6】Schachter J. In: Chlamydia: Intracellular Biology, Pathogenesis and Immunology, Stephens R (Ed), 139-169 (1999)
【非特許文献7】G. J. M. Cox, T. J. Zamb, L. A. Babiuk, J. Virol. 67, 5664 (1993)
【非特許文献8】Z. Q. Xiang et al., Virology 199, 132 (1994)
【非特許文献9】Igietseme JU and Murdin A. Infect Immun 68:6798-6806 (2000)
【非特許文献10】J. J. Donnelly et al., J. Infect. Dis. 713, 314 (1996)
【非特許文献11】H. D. Caldwell and Judd R. C. Infect Immun 38: 960-968 (1982)
【非特許文献12】Altschul et al., Nucleic Acids Res.; 25: 3389-3402 (1997)
【非特許文献13】Taylor et al., Vaccine 13: 539 (1995)
【非特許文献14】Stephens RS et al., Science 282: 754-759 (1998)
【非特許文献15】Read TD et al., Nucleic Acids Res. 28: 1397-1406 (2000)
【非特許文献16】Liljestrom P, Garoff H.Biotechnology9(12):1356-61(1991)
【非特許文献17】Dubensky TW et al. J Virol. 70(1):508-19(1996)
【非特許文献18】Pushko P et al. Virology 239(2):389-401(1997)
【非特許文献19】Tang et al., Nature 356:152-154(1992)
【非特許文献20】Zang D-Jet al., J Infec Dis 176: 1035-1040 (1997)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、クラミジアの菌株のMgp002遺伝子またはその切断型に対する防御免疫反応を宿主において生じるための、核酸免疫、特にDNA免疫に関する。
【0009】
従って、一態様では、本発明は、(a)配列番号2;(b)配列番号4;(c)配列番号6(d)配列番号8;(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも12連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および(f)前記(a)から(d)の何れか1のポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換により修飾され、かつ前記(a)から(d)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも75%同一であるポリペプチド;から選択されるポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。
【0010】
本発明の別の態様では、(a)配列番号2;(b)配列番号4;(c)配列番号6(d)配列番号8;(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも12連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および(f)前記(a)から(d)の何れか1のポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換により修飾され、かつ前記(a)から(d)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも75%同一であるポリペプチド;から選択されるポリペプチドをコードする核酸配列であって、投与された宿主内で該核酸分子を発現させるための配列に調節可能に結合している核酸分子を提供する。
【0011】
発現のための配列は、サイトメガロウイルスプロモーターでもよく、および、ヒトサイトメガロウイルス主要最初期(major immediate-early)プロモーター−エンハンサー領域内に含まれていてもよい。他の適切なプロモーターは、標的真核細胞における発現を促進可能なウイルスプロモーターまたは他の哺乳類プロモーターであってもよい。ベクターはプラスミドベクターであってよく、さらにヌクレオチド配列は配列番号1、3、5または7の配列であろう。
【0012】
クラミジアの菌株は、クラミジア・トラコマティスまたは肺炎クラミジアを含むクラミジア菌株または血清型であってもよい。非複製ベクターは、ヌクレオチド配列が挿入されるプラスミドpcDNA3.1、またはその誘導体または修飾であってもよい。
【0013】
本発明の別の実施態様では、本明細書中で提供される非複製ベクターおよび医薬的に許容可能なキャリアを含む、宿主においてクラミジアの菌株のMgp002遺伝子またはその断片に対する防御免疫反応を生じさせるために宿主にin vivoで投与するための免疫原性組成物を提供する。
【0014】
本発明の別の態様では、配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;配列番号3のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;配列番号5のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;配列番号7のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;配列番号1、3、5または7のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%相同であるポリヌクレオチド;および、50%ホルムアミドを含む6×SSCの42℃でのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1、3、5または7のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチド;より成る群から選択されるクラミジア菌株由来の単離ポリペプチドであって、免疫学的有効量の該単離ポリペプチドの哺乳動物への投与が、該哺乳動物において該クラミジア菌株の感染に対する免疫反応を誘導する単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0015】
本発明の別の態様では、(a)配列番号2のポリペプチド;(b)配列番号4のポリペプチド;(c)配列番号6のポリペプチド;(d)配列番号8のポリペプチド;(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および(f)前記(a)から(e)のいずれか1つのポリペプチドから保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(e)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド;より成る群から選択されるポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターを含有し、前記核酸分子が哺乳細胞または細菌細胞における該ポリペプチドの発現のための1以上の調節配列に調節可能に結合しており;クラミジアによって引き起こされる疾患に対して防御的な免疫反応をもたらすワクチンを提供する。
【0016】
本発明の別の態様では、ワクチンにおける使用に適した医薬的に許容可能なキャリアまたは希釈剤、および、(a)配列番号2のポリペプチド;(b)配列番号4のポリペプチド;(c)配列番号6のポリペプチド;(d)配列番号8のポリペプチド;(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および(f)前記(a)から(e)のいずれか1つのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(e)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド;より成る群から選択されるポリペプチドをコードする核酸分子を含み、該核酸分子が哺乳細胞におけるポリペプチドの発現のための1以上の調節配列に調節可能に結合している医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明の別態様では、本明細書で提供される有効量の非複製ベクターを該宿主に投与することを含む、クラミジアの菌株の感染によって生じる疾患に対して宿主を免疫する方法を提供する。
【0018】
筋肉内または鼻腔内といった任意の便利な方法で、ヒト宿主を含む宿主に核酸分子を投与することができる。
【0019】
本発明の別態様では、(a)配列番号2のポリペプチド;(b)配列番号4のポリペプチド;;(c)前記(a)または(b)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および(f)前記(a)から(c)のいずれか1つのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(c)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド;より成る群から選択されるポリペプチドをコードする核酸分子の有効量を投与する;工程を含み、該核酸分子がポリペプチドの発現のための1以上の調節配列に調節可能に結合していることを特徴とするクラミジア感染を予防または治療する方法を提供する。
【0020】
上述したさまざまな選択肢および代替を、本発明のこの態様において用いてもよい。
【0021】
当業者は、クラミジアポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供した本発明が、そのようなポリペプチドから誘導される断片をコードするポリヌクレオチドも提供することを容易に理解する。さらに、本発明は、本明細書に記載の非必須アミノ酸の付加、欠失または置換の結果生じる、そのようなポリペプチドおよび該ポリペプチドから誘導される断片の変異体および誘導体を提供することが理解される。当業者はまた、クラミジアポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供した本発明が、さらに、そのようなポリペプチドに特異的に結合する単一特異的抗体を提供することを容易に理解するであろう。
【0022】
本発明は、広範な用途を有し、発現カセット、ベクター、および本発明のポリヌクレオチドによって形質転換または導入された細胞を含む。
【0023】
本発明は添付の図面を参照して下記の説明からさらに理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を説明するために、天然のマウス病原体であるクラミジア・トラコマティスマウス肺炎菌株(MoPn)に由来するMgp002遺伝子をコードする核酸分子を含むプラスミドDNAが構築され、実験をマウスで実施するのを可能にした。本マウスモデルにおける初感染は再感染に対する強い防御免疫を誘導することが知られている。ヒト免疫のためには、クラミジア・トラコマティス のMgp002遺伝子またはその切断型をコードする核酸分子を使用できる。
【0025】
pCAMycHisといった、ヒトサイトメガロウイルス主要最初期プロモーター−エンハンサー領域またはその誘導体を含む真核II−選択可能発現ベクターであるpcDNA3.1(Invitrogen,San Diego,CA,USA)のような、任意の便利なプラスミドベクターを使用できる。Mgp002遺伝子またはその断片をコードする核酸分子は、任意の便利な方法でベクターに挿入できる。クラミジア・トラコマティスゲノムDNAから、適当なプライマーを用いるPCRによって遺伝子を増幅でき、さらもPCR産物をベクターにクローニングできる。Mgp002遺伝子またはその断片をコードする核酸分子遺伝子を有するプラスミドは、例えばエレクトロポレーションによって、大腸菌(E.coli)または複製に適した任意の宿主へ導入できる。プラスミドは任意の便利な方法で大腸菌(E.coli)から抽出できる。
【0026】
本発明の最初の一態様によると、そのアミノ酸配列が配列番号2、4、6および8で示されるクラミジアポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0027】
「単離ポリヌクレオチド」の語は、天然に存在する環境から取り出されたポリヌクレオチドと定義される。例えば、生きた細菌のゲノム中にまたは遺伝子バンクの一部として存在する、天然に存在するDNA分子は単離されていないが、しかし、例えば、クローニング事象(増幅)の結果として細菌ゲノムの残りの部分から分離されたその同じ分子は単離されている。通常、単離DNA分子は、天然に存在するゲノム中で5'または3’末端にて直接隣接するDNA領域(例えばコード領域)を含まない。そのような単離ポリヌクレオチドは、ベクターまたは組成物の一部であってよく、さらにそのようなベクターまたは組成物はそのようなポリヌクレオチドの天然の環境の一部ではないという点で、単離されているとなお定義できる。
【0028】
本発明のポリヌクレオチドは、RNAまたはDNA(cDNA、ゲノムDNA、または合成DNA)、またはその修飾、変異体、ホモログまたは断片である。DNAは二本鎖または一本鎖であり、および一本鎖の場合はコード鎖または非コード(アンチセンス)鎖である。配列番号1、3、5および7に示される本発明のポリペプチドをコードする任意の配列は、(a)コード配列、(b)(a)の転写に由来するリボヌクレオチド配列、または(c)同一のポリペプチドをコードする、遺伝コードの重複性すなわち縮重を用いるコード配列である。「ポリペプチド」または「タンパク質」は、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)にかかわらずアミノ酸の任意の鎖を意味する。本明細書では両方の語は互換的に用いられる。
【0029】
本発明の最初の態様に呼応して、配列番号2、4、6または8に相同であるアミノ酸配列が提供される。ここで用いられる「相同アミノ酸配列」とは、臨界融点(Tm)の25〜35℃下で配列番号1、3、5または7の核酸配列の任意の部分とハイブリダイズする核酸配列によって全体または一部がコードされる任意のポリペプチドである。相同アミノ酸配列とは、1以上の保存的アミノ酸置換によって配列番号2、4、6または8に示されるアミノ酸配列と異なるものである。そのような配列はまた、血清型変異体(下記で定義)および、免疫原性といったポリペプチドの固有の特徴を保持する欠失または挿入を含む配列を包含する。好ましくは、そのような配列は、配列番号2、4、6または8と少なくとも75%、より好ましくは80%、および非常に好ましくは90%から95%同一である。
【0030】
相同アミノ酸配列は、配列番号2、4、6または8と同一であるか、または実質的に同一である配列を含む。「実質的に同一のアミノ酸配列」とは、参照のアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは97%、および非常に好ましくは99%同一であり、好ましくは大部分の保存的アミノ酸置換によって参照の配列と異なる配列を意味する。
【0031】
保存的アミノ酸置換は、同一等級のアミノ酸の間での置換である。これら等級は、例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、およびチロシンといった非荷電極性側鎖を有するアミノ酸;リジン、アルギニン、およびヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸;アスパラギン酸およびグルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸;および、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、およびシステインといった非極性側鎖を有するアミノ酸を含む。
【0032】
相同性は、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター遺伝学コンピュータグループ(53753、ウィスコンシン州、マディソン、1710 ユニバーシティアベニュー)のAnalysis Software Packageといった、といった配列分析ソフトを用いて測定する。アミノ酸配列は同一性を最大にするよう配列される。適切な配列を得るために、ギャップを人工的に配列に導入してもよい。ひとたび最適な配列が設定されると、相同性の程度は、総位置数に対して、両配列のアミノ酸が同一である位置をすべて記録することによって設定される。
【0033】
相同性ポリヌクレオチド配列は、同様の方法で定義される。好ましくは、相同性配列は、配列番号1、3、5または7のコード配列と少なくとも45%、より好ましくは60%、および非常に好ましくは85%同一の配列である。
【0034】
本発明の最初の態様に呼応して、配列番号2、4、6または8に相同な配列を有するポリペプチドは、天然に存在する対立遺伝子変異体、および、配列番号2、4、6または8のポリペプチドの固有の特徴を保持する変異体または任意の他の天然に存在しない変異体を含む。
【0035】
本分野で知られているように、対立遺伝子変異体は、ポリペプチドの生物学的機能を変更しない1以上のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有する、ポリペプチドの代替的な形態である。「生物学的機能」とは、たとえ機能が細胞の増殖または生存に必要でない場合でも、ポリペプチドが天然に存在する細胞中における機能を意味する。例えば、ポーリンの生物学的機能によって、細胞外培地に存在する化合物が細胞に進入することができる。生物学的機能は、抗原特性とは明確に異なる。ポリペプチドは、2つ以上の生物学的機能を持ち得る。異なる対立遺伝子変異体は、同様の抗原特性を有していてよい。
【0036】
対立遺伝子変異体は、天然には非常に一般的である。例えば、クラミジア・トラコマティスといった細菌種は、通常、小さな対立遺伝子変異がたがいに異なるさまざまな血清型によって表される。実際のところ、異なる菌株において同一の生物学的機能を達成するポリペプチドは、各菌株内で同一でないアミノ酸配列(およびポリヌクレオチド配列)を持つであろう。この変異にもかかわらず、通常、多くの対立遺伝子変異体に対して免疫反応が示されてきた。クラミジアMOMP抗原の検討では、菌株ごとのMOMPのアミノ酸配列変異にかかわらず、交差菌株の抗体結合および感染性の中和が発生し、これは、MOMPが免疫原として使用される場合、アミノ酸変異に耐性を有することを示唆する。
【0037】
相同ポリペプチドまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドは、従来の方法で抽出されたゲノム細菌DNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって検索される。これには、コードドメインの5’および3’末端の上流および下流と合致する合成プライマーの使用を伴う。適当なプライマーは、配列番号1、3、5または7に提供されるヌクレオチド配列情報によって設計される。手順は下記の通りである:10から40個、好ましくは15から25個のヌクレオチドから成るプライマーが選択される。効率的なハイブリダイゼーションを確保するのに十分な比率で、すなわち、総ヌクレオチド含有量の、少なくとも40%、好ましくは50%のCおよびGヌクレオチドの量の、CおよびGヌクレオチドを含むプライマーを選択することが有利である。標準的なPCR反応は通常、100μLあたり0.5から5単位のTaqDNAポリメラーゼ、好ましくはそれぞれが等価濃度である20から200μMのデオキシヌクレオチド、総デオキシヌクレオチド濃度に対して0.5から2.5mMのマグネシウム、10〜10個の標的分子、および約20pmolの各プライマーを含む。アニーリング温度をプライマーの真のTmよりも15℃から5℃低い温度として、約25から50サイクルのPCRサイクルを実行する。よりストリンジェントなアニーリング温度によって、不正確にアニーリングされたプライマーとの判別を改善し、および、プライマーの3’末端での不正確なヌクレオチドの取り込みを減少させる。温度が高いほうがG+Cの多い標的の非成熟化により適している可能性があるが、95℃から97℃の変性温度が一般的である。実行されるサイクル数は、標準分子の開始条件に依存するが、通常、非特異的バックグラウンド産物が蓄積する傾向にあるため、40サイクルを上回ることは推奨されない。
【0038】
相同ポリペプチドまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを検索するための代替方法は、DNAまたはRNAライブラリのハイブリダイゼーションスクリーニングによる。ハイブリダイゼーション手順は、本分野でよく知られている。ハイブリダイゼーション条件を最適化するための重要なパラメーターは、それを上回ると2本の相補的DNA鎖が互いに分離する臨界融点を取得するのに使用される公式に反映される。約600個またはそれより多いヌクレオチドから成るポリヌクレオチドの場合、公式は下記の通りである:Tm81.5+0.41x(%G+C)+16.6log(陽イオン濃度)−0.63x(%ホルムアミド)−600/アルカリ価。適切なストリンジェントな条件下では、ハイブリダイゼーション温度(Th)は、算出されたTmよりも約20から40℃、20から25℃、または、好ましくは30から40℃低い。当業者は、最適温度および塩条件が容易に決定できることを理解する。
【0039】
本発明のポリヌクレオチドの場合、(i)50%ホルムアミドを含む6xSSC溶液中、42℃で4から16時間以内、または(ii)水性6xSSC溶液中、65℃で4から16時間以内(NaCJを1M、クエン酸ナトリウムを0.1M(pH7.0))のプレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイズインキュベーションの両方に対して、ストリンジェントな条件が達成される。通常、ハイブリダイゼーション実験は、60から68℃、例えば、65℃で実施される。そのような温度では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6xSSC中で、好ましくは2xSSCまたは1xSSC中で、より好ましくは0.5xSSC、0.3xSSCまたは0.1xSSC中で(ホルムアミドの不在下で)達成できる。1xSSCは、NaClを0.15Mおよびクエン酸ナトリウムを0.015M含む。当業者は、プローブ核酸配列が相補的標的核酸配列とハイブリダイズすることを理解する。
【0040】
天然に存在しない有用なホモログおよびその断片は、アミノ酸配列の変化および/または欠失に耐性を持つ可能性の高い抗原の領域を同定するための公知の方法を用いて設計される。例として、異なる種に由来する相同ポリペプチドが比較され;保存配列が同定される。より分岐した配列のほうが、配列変化に最も耐性が強い。配列間の相同性は、例として、Altschulら(非特許文献12: Altschul et al., Nucleic Acids Res.; 25: 3389−3402 (1997))によるBLAST相同性検索アルゴリズムを使用して分析してもよい。または、配列は、探索可能なT−および/またはB−細胞エピトープに基づくコンピュータ支援解析を使用して、T−および/またはB−細胞とより反応するよう修飾される。さらに別の代替例は、in vitroのポリペプチド内で、特定のアミノ酸残基または配列を変異し、次に、下記に概説する方法によってクラミジア感染を予防または治療する能力について、変異体ポリペプチドをスクリーニングする。
【0041】
本発明のスクリーニング過程に従うことによって、必要以上の実験なしに、配列番号2、4、6または8の特定のホモログまたは免疫原性断片がクラミジア感染の予防または治療に有用であり得るか否かが特定されることを当業者は容易に理解する。スクリーニング手順は下記の工程を含む:
(i)動物、好ましくはマウスを、被験ホモログまたは断片を用いて免疫し;
(ii)免疫動物に感染性クラミジアを接種し;さらに
(iii)クラミジアに対する防御を与えるホモログまたは断片を選択する。
【0042】
「防御を与える」とは、被験ホモログまたは断片を用いて免疫されていない対照動物と比較して、クラミジア感染の作用のいずれかの重症度に軽減があることを意味する。
【0043】
本発明の最初の態様に呼応して、配列番号1、3、5または7の部分核酸配列、配列番号2、4、6または8に相同なポリペプチド配列の部分配列、内部欠失による完全長ポリペプチドから誘導されるポリペプチド、および融合タンパク質である、ポリペプチド誘導体が提供される。タンパク質免疫源の断片および変異体をワクチンとして使用することは、免疫学分野では受け入れられた慣行である。その理由は、タンパク質との免疫反応を誘導するために必要なものは、タンパク質の小さい免疫原性領域(例えば、8から10個のアミノ酸)であるからである。クラミジア以外の病原体の表面接種抗原に対応するさまざまな短い合成ペプチドが、それぞれの病原体、例えば、マウス哺乳動物腫瘍ウイルスの11残基ペプチド(Casey & Davidson, Nucl. Acid Res.(1977) 4: 1539)、セムリスキ森林ウイルスの16残基ペプチド(Snijders et. al., 1991,J.Gen.Virol.72:557−565)、およびそれぞれがイヌパルボウイルスに由来する15残基の2個の重複ペプチド(Langeveld et. al., Vaccine 12(15): 1473−1480, 1994)に対して有効なワクチン抗原であることが示されてきた。
【0044】
従って、本明細書を読んだ当業者には、配列番号2、4、6または8またはそれらの相同アミノ酸配列の部分配列は、完全長配列に本質的なものであり、本発明により教示されることが容易に明らかとなる。そのようなポリペプチド断片は、好ましくは少なくとも12アミノ酸長を有する。有利にはポリペプチド断片は、少なくとも20個のアミノ酸、好ましくは少なくとも50個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも75個のアミノ酸、および非常に好ましくは少なくとも100個のアミノ酸の長さを有する。
【0045】
配列番号2、4、6または8に相同な配列の部分配列をコードする、30から600個のヌクレオチドから成るポリヌクレオチドは、上記に概説したパラメーターを用い、および増幅される断片の5’末端および3’末端の上流または下流の配列と合致するプライマーを用いて、PCR増幅によって検索される。そのような増幅のためのテンプレートポリヌクレオチドは、配列番号1、3、5もしくは7に相同の完全長ポリヌクレオチド、または、DNAもしくはRNAライブラリといったポリヌクレオチドの混合物に含まれるポリヌクレオチドである。部分配列を検索するための代替方法として、スクリーニングハイブリダイゼーションが、上記の条件下で、およびTmを算出するための公式を用いて、実施される。
【0046】
30から600個のヌクレオチドから成る断片を検索する場合、算出されたTmは、減算によって修正され(600/塩基対中のポリヌクレオチドの大きさ)、およびストリンジェントな条件が、Tmよりも5から10℃低いハイブリダイゼーション温度によって定義される。20から30個の塩基よりも短いオリゴヌクレオチドを得る場合、Tmを算出するための公式は下記の通りである:Tm=4x(G+C)+2(A+T)。例えば、50%G+Cの18個のヌクレオチド断片は、約54℃のTmを有するであろう。配列番号2、4、6または8またはその相同配列の断片である短ペプチドは、化学合成によって直接取得される。
【0047】
防御的なT細胞依存性免疫反応を誘導するエピトープは、ポリペプチドの長さの全体にわたって存在する。しかしながら、いくつかのエピトープは、ポリペプチドの二次的および三次的構造によってマスクされてもよい。そのようなマスクされたエピトープを明らかにするため、元来のタンパク質構造の大部分を除去し、およびマスクされたエピトープを接種させる大きな内部欠失が形成される。そのような内部欠失は、菌株の間でばらつきの高い免疫優勢領域を除去するという追加の利点を達成することがある。
【0048】
ポリペプチド断片および大きな内部欠失を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当分野で知られている標準的な方法を用いて構築される。そのような方法は、標準的PCR法、逆PCR法、クローンされたDNA分子の制限酵素処理を含む。これら方法のための成分および取扱説明は、Stratageneといったさまざまな商業的供給源から容易に入手可能である。ひとたび欠失変異体が構築されると、上記のクラミジア感染を予防または治療する能力に対して欠失変異体を試験する。
【0049】
ここで用いられる、融合ポリペプチドは、N−またはC−末端で任意の他のポリペプチドと融合される、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド誘導体を含むポリペプチドをいう(以下ペプチドテールという)。そのような融合ペプチドを得る簡便な方法は、ポリヌクレオチド配列、すなわち、ハイブリッド遺伝子のインフレーム融合の翻訳による。融合ポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子は、宿主細胞を形質転換または導入するのに用いられる発現ベクターに挿入される。または、ポリペプチドまたはポリペプチド誘導体をコードするポリヌクレオチド配列は、ペプチドテールをコードするポリヌクレオチドがすでに存在する発現ベクターに挿入される。そのようなベクターおよびその取扱説明は、商業的に利用可能であり、例えば、ペプチドテールが麦芽糖結合タンパク質であるpMal−c2またはpMal−p2系はNew England Biolabsから、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ系はPharmaciaから、またはHisタグ系はNovagenから入手可能である。これらおよび他の発現系は、本発明のポリペプチドおよび誘導体の追加の精製のための便利な手段を提供する。
【0050】
融合ポリペプチドの有利な例は、本発明のポリペプチドまたはホモログまたは断片が、コレラ毒素またはE.Coli易熱性毒素のサブユニットBといったアジュバント活性を有するポリペプチドと融合したものである。他の有利な融合は、ポリペプチド、ホモログまたは断片が、強力なT−細胞エピトープまたはB−細胞エピトープに融合したものである。そのようなエピトープは、当分野で知られているもの(例えば、B型肝炎ウイルスコア抗原、D. R. Millich et al., 「ヌクレオカプシドに対する抗体産生、および、単一の合成T細胞部位によってプライム刺激されたB型肝炎ウイルスのエンベロープ」, Nature, 1987. 329: 547−549)であってよく、または探索可能なT−またはB−細胞エピトープのコンピュータ支援解析にもとづく本発明の他のポリペプチド中に同定されたエピトープであってもよい。本発明の本態様に呼応して、配列番号2、4、6または8またはそのホモログまたは断片に由来するT−またはB−細胞エピトープを含む融合ポリペプチドがあり、エピトープが、該ポリペプチドまたはホモログまたは断片の複数の変異体より誘導され、各変異体が他の変異体とポリペプチド内のエピトープの位置および配列が異なることを特徴とする。そのような融合は、ポリペプチド、ホモログまたは断片全体に対するT−およびB−細胞の反応を最適化するため、クラミジア感染予防および治療に有効である。
【0051】
融合を達成するため、本発明のポリペプチドは、アジュバント活性を有するポリペプチドまたはT−またはB−細胞エピトープのN−、または好ましくは、C−末端に融合される。または、本発明のポリペプチド断片は、アジュバント活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列の内部に挿入される。T−またはB−細胞エピトープはまた、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の内部に挿入されてもよい。
【0052】
最初の態様に呼応して、本発明のポリヌクレオチドはまた、異種のシグナルペプチドを含み、本発明のポリペプチドへと成熟するハイブリッド前駆体ポリペプチドもコードする。「異種シグナルペプチド」は、本発明のポリペプチドの天然に存在する前駆体にはみとめられからグナルペプチドを意味する。
【0053】
本発明によるポリヌクレオチド分子は、RNA、DNA、またはその修飾または組み合わせを含み、さまざまな用途を有する。DNA分子は例えば、(i)コードされたポリペプチドを組み換え宿主系において産生するための過程において、(ii)クラミジア感染を予防および/または治療するための方法および組成物にも使用されるポックスウイルスのようなワクチンベクターの構築において、(iii)裸のまたは輸送媒体とともに処方されたワクチン剤(およびRNA分子)として、さらに(iv)本発明のポリヌクレオチドを過剰発現しまたは非毒性の変異形態で発現できる弱毒化したクラミジア菌株の構築において、用いられる。
【0054】
従って、本発明の第2の態様は、(i)発現に必要な要素(発現調節配列とも称され、特に、適切なプロモーター)の調節下に配置されるかまたはそのような要素に調節可能に結合した本発明のDNA分子を含む発現カセット;(ii)本発明の発現カセットを含む発現ベクター;(iii)本発明の発現カセットおよび/またはベクターで形質転換されたまたはそれを導入された原核または真核細胞;および(iv)本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドまたはポリペプチド誘導体を作製する方法であって、本発明の発現カセットおよび/またはベクターで形質転換されまたはそれを導入された原核または真核細胞を、本発明のDNA分子を発現させる条件下で培養し、さらにその細胞培養物からコードされるポリペプチドまたはポリペプチド誘導体を回収することを含む。
【0055】
組み換え発現系は、原核および真核宿主から選択される。真核宿主は、酵母細胞(例えば、Saccharomyces cervisiaeまたはPichia pastoris)、哺乳細胞(例えば、COS1、NIH3T3、またはJEG3細胞)、節足動物細胞(例えば、Spodoptera fruglperda(SF9)細胞)、および植物細胞を含む。好ましい発現系は、E.coliといった原核宿主である。細菌および真核細胞は、商業的供給源、例えば、American Type Culture Collection(ATCC;メリーランド州、ロックビル)を含む多数の異なる供給源から、当業者は入手可能である。組み換えタンパク質発現のために使用される細胞の商業的供給源は、細胞の取扱説明も提供する。
【0056】
発現系の選択は、発現されるポリペプチドに望ましい特徴に依存する。例えば、特定の脂質化形態または任意の他の形態で本発明のポリペプチドを産生することは有用であろう。
【0057】
当業者は、すべてのベクターおよび発現調節配列および宿主が本発明のポリヌクレオチドを同等に発現すると期待されるわけではないことを容易に理解するであろう。しかしながら、下記に示す指針を用いて、必要以上の実験なしにおよび本発明の範囲から逸脱することなく、ベクター、発現調節配列および宿主の選択を行うことができる。
【0058】
ベクターを選択するにあたり、宿主は、その中で生存しかつおそらく複製するそのベクターと適合するものを選択しなければならない。ベクターの複製数、複製数の調節能力、抗生物質抵抗性のような他のタンパク質の発現についても考慮がなされる。発現調節配列の選択において、いくつかの変数が考慮される。うち重要な変数は、配列の相対的強度(例えば、さまざまな条件下でする発現を推進する能力)、配列の機能を調節する能力、および、発現するポリヌクレオチドと調節配列との適合性(例えば、効率的な転写を阻害するヘアピン構造を回避するために、二次的構造が考慮される)である。宿主の選択にあたっては、選択されたベクターと適合し、発現される産物の可能な任意の毒性作用にも耐性であり、望まれる場合には、発現産物を効率的に分泌でき、目的の立体構造で産物を発現でき、容易に拡大でき、さらに最終産物の精製が簡単である、単細胞宿主が選択される。
【0059】
発現カセットの選択は、選択された宿主系、および発現されるポリペプチドに望ましい特徴に依存する。通常、発現カセットは:選択された宿主系において機能的であり、かつ構成性または誘導性であるプロモーター;リボソーム結合部位;必要であれば開始コドン(ATG);シグナルペプチドをコードする領域、例えば、脂質化シグナルペプチド;本発明のDNA分子;終止コドン;および必要に応じて、3’末端領域(翻訳および/または転写ターミネーター)を含む。シグナルペプチドコード領域は、本発明のポリヌクレオチドと隣接し、さらに適切なリーディングフレームに配置される。シグナルペプチドコード領域は、成熟ポリペプチドをコードするDNA分子に対して同種または異種であり、さらに発現のために使用される宿主の分泌機構に適合する。本発明のDNA分子により構成されるオープンリーディングフレームは、単独でまたはシグナルペプチドと共に、転写および翻訳が宿主系で発生するように、プロモーターの調節下に配置される。プロモーターおよびシグナルペプチドコード領域は、当業者に広範に知られておりかつ入手可能であり、例えば、アラビノース(プロモーターaraB)によって誘導可能でありかつ大腸菌(E.coli)のようなグラム陰性菌において機能的であるネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)(および誘導体)のプロモーター(米国特許第5,028,530号に記載);T7ポリメラーゼを発現する多数のE.coli菌株において機能的である、RNAポリメラーゼをコードするバクテリオファージT7の遺伝子のプロモーター(米国特許第4,952,496号に記載);OspA脂質化シグナルペプチド;およびRlpB脂質化シグナルペプチド(Takase et al., J. Bact. (1987) 169: 5692)を含む。
【0060】
発現カセットは通常、発現ベクターの一部であり、選択された発現系において複製する能力に関して選択される。発現ベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクター)は、例えば、Pouwelsらにおいて記載されているものから選択できる(Cloning Vectors: A Laboratory Manual 1985, Supp. 1987)。適切な発現ベクターは、さまざまな商業的供給源から購入できる。
【0061】
発現ベクターによって宿主細胞を形質転換/導入するための方法は、本分野でよく知られており、選択された宿主系に依存する。
【0062】
発現されると、本発明の組み換えポリペプチド(またはポリペプチド誘導体)が産生され、さらに細胞内区画内に残存し、細胞外培地またはペリプラズム種中に分泌/抽出され、あるいは細胞膜中に埋め込まれる。ポリペプチドは、細胞抽出物からまたは組み換え細胞培養の遠心分離後の上清から、実質的に精製された形態で回収される。通常、組み換えポリペプチドは、抗体ベースのアフィニティ精製、あるいは、ポリペプチドまたはその誘導体をコードするポリヌクレオチドの小さな親和性結合ドメインへの融合のような当業者が容易に適合させることができる他の周知の方法によって精製される。本発明のポリペプチドを免疫親和性によって精製するために有用な抗体は、下記のとおり取得される。
【0063】
本発明のポリヌクレオチドはまた、ワクチンとしても有用であろう。2つの主要な経路、ウイルスまたは細菌または合成の輸送媒体(すなわち、生ワクチンベクターまたは微小粒子)を使用するか、または、遊離形態の、例えば、核酸ベクターに挿入された遺伝子を投与することである。本発明のポリヌクレオチドの治療的または予防的有効性は下記のとおりである。
【0064】
従って、本発明の別の態様は、(i)発現に必要な要素の調節下に配置された本発明のDNA分子を含む、ポックスウイルスのようなワクチンベクター;(ii)本発明のワクチンベクターを希釈剤またはキャリアと共に含む内容の組成物;特に、(iii)本発明のワクチンベクターの治療的または予防的有効量を含む医薬組成物;(iv)防御的または治療的免疫反応を誘起するために本発明のワクチンベクターの有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物(例えば、ヒト;あるいは、動物、例えばネコまたは鳥類のクラミジア感染を治療または予防するための動物適用にも使用できる)においてクラミジアに対する免疫反応を誘導する方法;および特に、(v)本発明のワクチンベクターの予防的または治療的用量を感染した個体に投与することを含む、クラミジア(例えば、クラミジア・トラコマティス、クラミジア・シッタシイ、肺炎クラミジアおよびクラミジア・ペコルム)感染を予防および/または治療する方法:を提供する。
【0065】
さらに、本発明の別の態様は、クラミジア感染を予防および/または治療するための薬剤の調製における本発明のワクチンベクターの使用を包含する。
【0066】
ここで用いられるワクチンベクターは、1またはいくつかの本発明のポリペプチドまたは誘導体を発現する。ワクチンベクターはさらに、免疫反応(アジュバント作用)を増強するインターロイキン−2(IL−2)またはインターロイキン−12(IL−12)のようなサイトカインを発現してもよい。発現される成分のそれぞれが、哺乳細胞における発現に必要な要素の調節下に置かれていることが理解される。
【0067】
本発明の別の態様に呼応して、それぞれのベクターが本発明のポリペプチドまたは誘導体を発現できるいくつかのワクチンベクターを含む組成物を提供する。その組成物はまた、追加のクラミジア抗原、あるいはそのサブユニット、断片、ホモログ、変異体または誘導体を、必要に応じてIL−2またはIL−12サイトカインのようなサイトカインと共に発現できるワクチンベクターを含んでいてもよい。
【0068】
哺乳動物における感染の治療または予防のためのワクチン接種方法は、任意の従来の投与経路によって、特に、粘膜(例えば、眼球、鼻腔内、経口、胃、肺、腸、直腸、膣、または尿路)の表面に、または、非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または腹腔内)経路で、投与される本発明のワクチンベクターの使用を含む。好ましい経路は、ワクチンベクターの選択に依存する。治療は、単回投与でも、または間隔をおいて繰り返して投与してもよい。適切な用量は、ワクチンベクター自体、投与の経路またはワクチン接種する哺乳動物の条件(体重、年齢、等)といった、当業者によって理解されるさまざまなパラメーターに依存する。
【0069】
本分野において入手可能な生ワクチンベクターは、アデノウイルス、ポックスウイルスおよびアルファウイルスといったウイルスベクター、および、細菌ベクター、例えば、Shigella、Salmonella、Vibrio cholerae、Lactobacillus、Bacille bilie de Calmette-Guerin(BCG)、およびStreptococcusを含む。
【0070】
アデノウイルスベクター、および本発明のDNA分子を発現できるアデノウイルスベクターを構築するための方法の例が、米国特許第4,920,209号に記載されている。ポックスウイルスベクターは、それぞれ、米国特許第4,722,848号および米国許第5,364、773号に記載の、ワクシニアおよびカナリアポックスウイルスを含む。ワクシニアウイルスベクター(カナリアポックス)の詳細は、Taylorら(非特許文献13:Taylor et al., Vaccine 13: 539 (1995))を参照。カナリアポックスベクターは制限的であり、哺乳細胞において複製しない。
【0071】
一般に、治療的または予防的使用のためのワクチンウイルスベクターの用量は、約1x10から約1x1011、有利には、約lx10から約lx1010、好ましくは約1x10から約1x10の1キログラムあたりのプラーク−形成単位でありうる。好ましくは、ウイルスベクターは、非経口で投与され;例えば、4週間の間隔をあけて、3回の投与にわけられる。本発明のウイルスベクターを含む組成物への化学アジュバントの付加を回避することが望ましく、および、それによってウイルスベクター自体への免疫反応を最小化する。
【0072】
アルファウイルスベクターとして、セムリスキ森林ウイルスベクター(非特許文献16:Liljestrom P, Garoff H.Biotechnology9(12):1356−61(1991))、シンドビスウイルスベクター(非特許文献17:Dubensky TWら、J Virol.70(1):508−19(1996)、またはベネズエラウマ脳炎ウイルスベクター(非特許文献18:Pushko Pら、Virology239(2):389−401(1997))が挙げられる。裸RNAまたはプラスミドDNA、ならびに複製欠損アルファウイルスを含む組み換え粒子を、免疫のために効果的に使用できる。
【0073】
経口生ワクチンとして有用である毒性を生じないコレラ菌(Vibrio cholerae)変異体菌株が公知である。米国特許第4,882,278号は、機能的コレラ毒素が産生されないように2つのctxA対立遺伝子のそれぞれのコード配列の十分な量が欠失された菌株を記載している。本発明のDNA分子によってコードされるポリペプチドまたはポリペプチド誘導体を発現できるコレラ菌(Vibrio cholerae)の菌株の有効なワクチン用量は、選択された投与経路に適した容積中に、約lx10から約1x10、好ましくは約1x10から約1x10の生菌を含む。好ましい投与経路は、すべての粘膜経路を含み;最も好ましくは、これらベクターは、鼻腔内または経口的に投与される。
【0074】
異種抗原の組み換え発現のために遺伝子操作されたまたは遺伝子操作されていない、弱毒化したネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)の菌株、および、それらの経口ワクチンとしての使用は、1998年12月22日に発行された米国特許第5,851,519号に記載されている。好ましい投与経路は、すべての粘膜経路を含み;最も好ましくは、これらベクターは鼻腔内または経口で投与される。
【0075】
本発明の文脈においてワクチンベクターとして用いられる他の弱毒化された細菌菌株は、1997年7月1日に発行された米国特許第5,643,771号に記載されている。
【0076】
細菌ベクターにおいて、本発明のポリヌクレオチドは、細菌ゲノムに挿入されるか、またはプラスミドの一部として遊離状態を続ける。細菌ベクターは、クラミジアワクチン抗原を発現し、または、引き続き宿主細胞中に発現され、さらに、クラミジア抗原への免疫反応を誘起するプラスミドDNAといった発現ベクターを宿主細胞に輸送するのに使用できる。
【0077】
本発明のワクチン細菌ベクターを含む組成物は、アジュバントをさらに含んでいてよい。多くのアジュバントが、当業者に公知である。好ましいアジュバントは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムといった、アルミニウム塩(ミョウバン)、水中油型エマルジョン製剤、ISCOMといったサポニンアジュバント、インターロイキン、インターフェロン、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子といったサイトカインを含むが、これらに限定されない。
【0078】
本発明によるワクチンまたは免疫原性組成物は、予防的(すなわち、疾患を予防するため)または治療的(すなわち、感染後の疾患を治療するため)であってよい。ワクチンとして用いられる免疫原性組成物は、抗原または抗原の免疫原性断片の免疫学的有効量を含む。免疫学的有効量とは、単回投与としてまたは一連投与の一部としてのその量の個体への投与が、予防または治療に有効であることを意味する。治療的有効量とは、目的の疾患または状態を治療、改善、予防する、または検出可能な治療的または予防的効果を呈する治療剤の量のことをいう。本発明の目的での有効用量は、1μg/kgから100μg/kgまたは10μg/kgから50μg/kgである。
【0079】
免疫原性組成物およびワクチンは、皮下、皮内または筋肉内注射によって、非経口的に投与してもよい。または、本発明によって処方される免疫原性組成物は、粘膜表面で免疫反応を引き起こす態様で、製剤化および輸送されてもよい。従って、免疫原性組成物は、例えば、経鼻または経口(胃内)経路で投与されてもよい。あるいは、坐薬および経口製剤を含む他の投与形態が望ましい場合もある。坐薬の場合、結合剤およびキャリアは、例えば、ポリアルカレングリコイスまたはトリグリセリドを含んでいてもよい。そのような坐薬は、約10%、好ましくは約1から2%の活性免疫原性成分(または複数の成分)を含む混合物から作成することができる。経口製剤は、医薬品グレードのサッカリン、セルロースおよび炭酸マグネシウムといった、通常用いられるキャリアを含んでいてよい。これら組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放剤型または粉末の形態をとることができ、さらに、活性成分を約1から95%、好ましくは約20から75%含む。
【0080】
従って、本発明の別の態様は、(i)本発明のポリヌクレオチドを、希釈剤またはキャリアと共に含む内容の組成物;(ii)治療的または予防的有効量の本発明のポリヌクレオチドを含む医薬組成物;(iii)免疫学的有効量の本発明のポリヌクレオチドを投与して、クラミジアに対して防御免疫反応を誘導することによって、哺乳動物においてクラミジアに対する免疫反応を誘起する方法;および(iv)予防的または治療的有効量の本発明のポリヌクレオチドを、感染した個体に投与することによって、クラミジア(例えば、クラミジア・トラコマティス、クラミジア・シッタシイ、肺炎クラミジア、またはクラミジア・ペコラム)感染を予防および/または治療する方法を提供する。さらに、本発明の第4の態様は、クラミジア感染の予防および/または治療のための薬剤の調製における、本発明のポリヌクレオチドの使用を包含する。好ましい使用は、特に、哺乳細胞中で複製することができずさらに実質的に哺乳類ゲノムに一体化することができないプラスミド中において哺乳細胞での発現のための条件下に置かれたDNA分子の使用を含む。
【0081】
本発明のポリヌクレオチドの使用は、ワクチンとしての治療または予防目的のための哺乳動物への投与を含む。そのようなポリヌクレオチドは、哺乳細胞中で複製することができずさらに哺乳類ゲノムに一体化することができないプラスミドの一部としてのDNAの形態での使用を含む。通常、そのようなDNA分子は、哺乳細胞中での発現のために適したプロモーターの調節下に置かれている。プロモーター機能は、遍在的にまたは組織特異的に機能する。非組織特異的プロモーターの例は、早期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第4,168,062号に記載)およびラウス肉腫ウイルスプロモーター(Norton & Coffin, Molec. Cell Biol. (1985) 5:28 1に記載)を含む。組織特異的プロモーターの例は、筋肉細胞中での発現を促進するデスミンプロモーター(Li & Paulin, J. Biol. Chem. (1993) 268:10403)である。プロモーターの使用は、当業者によく知られている。有用なベクターは、多数の刊行物、具体的には国際公開第94/21797号に記載されている。
【0082】
ワクチンとして用いられる本発明のポリヌクレオチドは、対応するポリペプチドの前駆体または成熟形態をコードする。前駆体の形態において、シグナルペプチドは同種のものでも異種のものでもよい。後者の場合、真核リーダー配列を使用できる。
【0083】
ここで用いられる本発明の組成物は、1またはいくつかのポリヌクレオチドを、必要に応じて、他のクラミジア抗原、またはその断片、誘導体、変異体またはアナログをコードする1以上の追加のポリヌクレオチドと共に含む。組成物はまた、免疫反応を増強させるように、インターロイキン−2(IL−2)またはインターロイキン−12(IL−12)といったサイトカインをコードする追加のポリヌクレオチドを含んでいてもよい。これら追加のポリヌクレオチドは、適切な発現のための調節下に置かれる。好ましくは、本発明のDNA分子および/または同一の組成物に含まれる追加のDNA分子が、同一のプラスミド中に存在する。
【0084】
ポリヌクレオチドを調製および精製するための標準的な分子生物学の技術が、本発明のポリヌクレオチド治療剤の調製において使用される。ワクチンとしての使用には、本発明のポリヌクレオチドは、下記に概説するさまざまな方法によって製剤化される。
【0085】
1つの方法は、いずれの輸送媒体からも含まない裸のポリヌクレオチドを利用する。そのようなポリヌクレオチドは、キャリアと共にまたはキャリア無しで、無菌食塩水または無菌緩衝食塩水といった生理学的に許容可能な溶液中に単に希釈される。キャリアが存在する場合、キャリアは、好ましくは、等張性、低張性、または弱い高張性であり、さらに、蔗糖溶液、例えば、20%蔗糖を含む溶液によって提供されるような相対的に低いイオン強度を有する。
【0086】
別の方法は、細胞取り込みを助ける薬剤と共にポリヌクレオチドを利用する。そのような薬剤の例は(i)ブピバカインといった細胞透過性を修飾する化学物質(例えば、国際公開第94/16737号を参照、)、(ii)ポリヌクレオチドのカプセル化のためのリポソーム、または(iii)それ自体がポリヌクレオチドと結合する陽イオン性脂質またはシリカ、金、またはタングステン微小粒子である。
【0087】
陰イオン性および中性のリポソームは本分野でよく知られており(リポソームを作製するための方法の詳細な説明は、例えば、Liposomes: A Practical Approach, RPC New Ed, IRL press(1990)を参照)、さらに、ポリヌクレオチドを含む広範な範囲の産物を輸送するのに有用である。
【0088】
陽イオン性脂質もまた当分野で知られており、遺伝子輸送のために一般に使用されている。そのような脂質は、DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイロキシ)プロピル]−N,N,N−塩化トリメチルアンモニウム)としても知られるリポフェクチン(登録商標)、DOTAP(1,2−ビス(オレイロキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン)、DDAB(臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、DOGS(ジオクタデシルアミドログリシルスペルミン)、および、DC−Chol(3ベータ−(N−(N〜N‘−ジメチルアミノメタン)−カルバモイル)コレステロール)といったコレステロール誘導体を含む。これら陽イオン性脂質の詳細は、欧州特許第187,702号、国際公開第90/11092号、米国特許第5,283、185号、国際公開第91/1 5501号、国際公開第95/26456号、および米国特許第5,527,978号に見ることができる。遺伝子輸送のための陽イオン性脂質は、例えば国際公開第90/11092号に記載のDOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)といった中性脂質と組み合わせて使用される。
【0089】
陽性リポソームを含む処方は、必要に応じて他の形質変換促進化合物を含んでいてもよい。
【0090】
国際公開第91/0 0359号、国際公開第93/1 7706号、およびTangら(非特許文献19:Tang et al., Nature 356:152−154(1992))のとおり、金またはタングステン微小粒子は、遺伝子輸送のために使用される。微小粒子でコートされたポリヌクレオチドが、米国特許第4,945,050号、米国特許第5,015,580号、および国際公開第94/24263号に記載されたものといった、無針注射器具(「遺伝子銃」)を使用して、皮内または表皮内経路を介して注射される。
【0091】
ワクチン受容体内で使用されるDNAの量は、例えば、DNA構造内で使用されるプロモーターの強さ、発現される遺伝子産物の免疫原性、投与される哺乳動物の条件(例えば、哺乳動物の体重、年齢、および全般的健康状態)、投与方法、および製剤の種類)に依存する。一般に、約1μgから約1mg、好ましくは、約10μgから約800μg、さらに好ましくは、約25μgから約250μgの治療的または予防的有効量が、ヒトの成人に投与される。投与は、単回投与または間隔を置いて繰り返して投与できる。
【0092】
投与経路は、ワクチン分野における任意の従来の経路である。一般的な指針として、本発明のポリヌクレオチドは、粘膜の表面、例えば、眼球、鼻腔内、肺、経口、腸、直腸、膣、および尿路表面、または、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、表皮内、または筋肉内経路を介した非経口経路で投与される。投与経路の選択は、選択された製剤に依存する。ブピバカインと関連して製剤化されたポリヌクレオチドは、有利には、筋肉に投与される。DOTMAまたはDC−Cholといった、中性もしくは陰イオン性リポソームまたは陽イオン性脂質が使用される場合、製剤は、有利には、静脈内、鼻腔内(エアロゾル化)、筋肉内、皮内、および皮下経路を介して注射される。裸のポリヌクレオチドは、好ましくは、筋肉内、または皮下経路を介して投与される。
【0093】
必ずしも要求されないが、そのような組成物はまたアジュバントを含んでいてよい。その場合、アジュバント作用を呈するのに同時投与を必要としない全身性アジュバントが好ましく、例えば、米国特許第5,057,546号に記載されるQS21といったものである。
【0094】
本明細書で提供される配列情報によって、診断目的に使用される特異的なヌクレオチドプローブおよびプライマーの設計が可能になる。従って、本発明の第5の態様は、配列番号1または3に示される配列に由来する遺伝子コードの縮重によって認められまたは誘導される配列を有するヌクレオチドプローブまたはプライマーを提供する。
【0095】
本明細書で使用される用語「プローブ」は、上記に定義されるストリンジェントな条件下で、配列番号1を有する核酸分子、または配列番号1または3に相同である核酸分子、またはその相補配列またはアンチセンス配列に、ハイブリダイズするDNA(好ましくは一本鎖)またはRNA分子(またはその修飾物または組み合わせ)を称する。一般にプローブは、完全長配列よりも顕著に短い。そのようなプローブは、約5から約100、好ましくは約10から約80のヌクレオチドを含む。特に、プローブは、配列番号1の部分と、少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは95%相同であるか、あるいはそのような配列と相補的な配列を有する。プローブは、イノシン、メチル−5−デオキシシチジン、デオキシウリジン、ジメチルアミノ−5−デオキシウリジン、またはジアミノ−2,6−プリンといった修飾塩基を含んでいてもよい。糖またはリン酸残基も修飾または置換されていてよい。例えば、デオキシリボース残基は、ポリアミドによって置換され、さらにリン酸残基は二リン酸、アルキル、アリルリン酸およびホスホロチオアートエステルといったエステル基によって置換されていてよい。さらに、リボヌクレオチドに関する2'−ヒドロキシ基を、アルキル基のような基を含めることによって修飾してもよい。
【0096】
本発明のプローブは、捕獲(キャプチャー)プローブまたは検出プローブとして診断試験に使用される。そのようなキャプチャープローブは通常、直接的または間接的に、共有結合手段または受動吸着によって固相担体上に固定されている。検出プローブは:放射性活性同位体、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼといった酵素、ならびに、色原体、蛍光性、または発光性の化合物、ヌクレオチド塩基アナログおよびビオチンを加水分解できる酵素:から選択される検出マーカーによって標識される。
【0097】
本発明のプローブは、ドットブロット、サザンブロット(Southern, J. Mol. Biol. (1975) 98: 503)、(RNAが標的サザンブロットとして用いられることを除いて、サザンブロットと同一の)ノーザンブロット、またはサンドイッチ技術(Dunn et al., Cell (1977) 12: 23)といった任意の従来のハイブリダイゼーション技術に使用されている。後者の技術は、少なくとも部分的に互いに異なるヌクレオチド遺伝子配列と共に、特異的なキャプチャープローブおよび/または特異的な検出プローブを使用することを含む。
【0098】
プライマーは、増幅処理(例えば、PCR)、伸長処理、または逆転写法において、DNAの酵素的重合を開始するために使用される約10から約40のヌクレオチドのプローブである。PCRを含む診断方法において使用されるプライマーは、当分野で知られている方法によって標識される。
【0099】
本明細書に記載のように、本発明はまた(i)生物物質中におけるクラミジアの存在を検出および/または同定するための本発明のプローブを含む試薬;(ii)(a)試料を生物物質から回収または誘導し、(b)DNAまたはRNAを生物物質から抽出し、さらに変性させ、さらに(c)ハイブリダイゼーションが検出されるように、本発明のプローブ、例えば、キャプチャープローブ、検出プローブまたはその両方に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でさらすことによって、生物物質中のクラミジアの存在を検出および/または同定する方法;および(iii)(a)試料を生物物質から回収または誘導し、(b)DNAをそこから抽出し、(c)抽出されたDNAに、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの本発明のプライマーを加え、さらにポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し、さらに(d)増幅されたDNA断片を生じさせることによって、生物物質中のクラミジアの存在を検出および/または同定する方法も包含する。
【0100】
配列番号1、3、5または7のポリヌクレオチド配列、そのホモログおよび部分配列の開示によって、対応するアミノ酸配列が利用可能となることは明らかである。従って、本発明の第6の態様は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされたアミノ酸配列を有する実質的に精製されたポリペプチド、またはポリペプチド誘導体に関する。
【0101】
ここで用いられる「実質的に精製されたポリペプチド」は、ポリペプチドが天然に存在する環境から分離されおよび/またはポリペプチドが合成される環境中に存在する大部分のポリペプチドが存在しないポリペプチドとして定義される。例えば、実質的に精製されたポリペプチドは、細胞質ポリペプチドを含まない。当業者は、本発明のポリペプチドが、自然源、すなわちクラミジア菌株より精製され、または組み換え手段によって産生されてもよいことを容易に理解するであろう。
【0102】
本発明の第6の態様に呼応しているのは、ポリペプチド、ホモログまたは断片がクラミジアに対して防御を与えることが意図されている標的動物において免疫原性を増強させるために修飾または処理されたポリペプチド、ホモログまたは断片である。そのような修飾または処理は:3−メチルヒスチジン、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン等といった、アミノ酸誘導体によるアミノ酸置換、遊離アミノ、カルボキシルまたはヒドロキシル側鎖基の修飾といったポリペプチドの、ホモログまたは断片の調製後に実施される修飾または欠失を含む。
【0103】
特異的抗原性を有する本発明のポリヌクレオチドによってコードされる相同ポリペプチドまたはポリペプチド誘導体の同定は、配列番号1、3、5または7のアミノ酸配列を有する参照ポリペプチドに対して産生された抗血清との交差反応性についてスクリーニングすることによって達成される。手順は下記の通りである:
精製された参照ポリペプチド、融合ポリペプチド(例えば、MBP、GST、またはHisタグ系の発現産物、系の詳細および取扱説明はpcDNA3.1/Myc−His(+)A、B、およびCについて、およびXpress(登録商標)System Protein PurificationについてのInvitrogen製品マニュアルに含まれる)、または抗原性であることが予測される合成ペプチドに対して単一特異的な超免疫抗血清が作製される。抗血清が融合ポリペプチドに対して作製される場合は、2つの異なる融合系が用いられる。特異的抗原性は、ウェスタンブロット、ドットブロット、およびELISAを含むいくつかの方法に従って、下記の通り特定できる。
【0104】
ウェスタンブロットアッセイでは、精製調製物または総E.coli抽出物としてスクリーニングすべき産物について、Laemmli(Nature(1970)227:680)によって記載されているようにSDS−Page電気泳動を行う。ニトロセルロース膜への転写後、約1:5から約1:5000、好ましくは約1:100から約1:500に希釈した単一特異的過免疫抗血清と材料とをさらにインキュベートする。産物に対応するバンドが上記の範囲の希釈のどれかで反応性を示せば、特異的抗原性が示唆される。
【0105】
ELISAアッセイでは、スクリーニングすべき産物は、好ましくはコーティング抗原として用いられる。全細胞抽出物も使用できるが、精製調製物が好ましい。簡単に説明すると、約10μgタンパク質/mlの調製物約100μlを96ウェルポリカーボネートELISAプレートに分注する。プレートを37℃で2時間、次いで4℃で一晩インキュベートする。0.05%Tween20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBS/Tween緩衝液)でプレートを洗浄する。非特異的抗体結合を防ぐため、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBS250μlでウェルを飽和させる。37℃で1時間インキュベート後、PBS/Tween緩衝液でプレートを洗浄する。0.5%BSA含有PBS/Tween緩衝液で抗血清を連続希釈する。ウェル当たり100μlの希釈液を加える。プレートを37℃で90分間インキュベートし、洗浄し、さらに標準的手順に従って評価する。例えば、特異的抗体がウサギで作製された場合は、ヤギ抗ウサギペルオキシダーゼ結合物をウェルに加える。インキュベートを90分間37℃にて実施し、さらにプレートを洗浄する。反応を適当な基質で発色させ、さらに反応を比色法(分光光度法で測定した吸光度)によって測定する。上記の実験条件下で、陽性反応は、非免疫対照血清よりも高いOD値によって示される。
【0106】
ドットブロットアッセイでは、全細胞抽出物も使用できるが、精製産物が好ましい。簡単に説明すると、産物の約100μg/mlの溶液を50mMトリス−HCl(pH7.5)中で1/2倍ずつ連続希釈する。それぞれ100μlの希釈液を、96ウェルのドットブロット装置(Biorad)に設置した0.45μmのニトロセルロース膜上に添加する。システムに負圧を加えることによって緩衝液を除去する。50mM(pH7.5)トリス−HClを添加することによってウェルを洗浄し、膜を空気乾燥する。膜は、ブロッキング緩衝液(50mMトリス−HCl(pH7.5)、0.15MNaCl、10g/L脱脂粉乳)で飽和させ、さらに、約1:50から約1:5000、好ましくは、約1:500希釈した抗血清希釈液とインキュベートする。反応は、標準的手順によって示される。例えば、ウサギ抗体を使用する場合、ヤギ抗ウサギペルオキシダーゼ結合物をウェルに添加する。37℃で90分間インキュベートし、さらにブロットを洗浄する。反応を適当な基質で発色させ、さらに停止させる。反応は、有色点の外観を目視で、例えば、比色分析で測定する。上記の実験条件下で、少なくとも約1:5、好ましくは少なくとも約1:500の希釈で有色点が認められると陽性反応が示唆される。
【0107】
本発明のポリペプチドまたは誘導体の治療的または予防的有効性は、下記のとおり評価することができる。本発明の第7の態様は、(i)本発明のポリペプチドを希釈剤またはキャリアと共に含む内容の組成物;具体的には(ii)本発明のポリペプチドの治療的または予防的有効量を含む医薬組成物;(iii)免疫学的有効量の本発明のポリペプチドを哺乳動物に投与して、クラミジアに対する防御免疫反応を誘導することによって、哺乳動物中においてクラミジアに対する免疫反応を誘起する方法;および特に(iv)治療的または予防的有効量の本発明のポリペプチドを感染した個体に投与することによって、クラミジア(例えば、クラミジア・トラコマティス、クラミジア・シッタシイ、肺炎クラミジア、またはクラミジア・ペコラム)感染を予防および/または治療する方法を提供する。さらに、本発明の第7の態様は、クラミジア感染の予防および/または治療のための薬剤の調製における、本発明のポリペプチドの使用を包含する。
【0108】
ここで用いられる、本発明の免疫原性組成物は、ワクチン分野において知られている従来の経路、特に、粘膜の(例えば、眼球、鼻腔内、肺、経口、胃、腸、直腸、膣,または尿路)表面、または、非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内,または腹腔内)経路で投与される。投与経路の選択は、ポリペプチドと関連するアジュバントといった多数のパラメーターに依存する。粘膜のアジュバントが使用される場合、鼻腔内または経口経路が好ましい。脂質製剤またアルミニウム化合物が使用される場合、非経口経路が好ましく、皮下または筋肉内経路が非常に好ましい。選択はまた、ワクチン剤の性質にも依存する。例えば、CTBまたはLTBと融合した本発明のポリペプチドは、粘膜表面に投与するのが最も好ましい。
【0109】
ここで用いられる本発明の組成物は、本発明の1またはいくつかのポリペプチドまたは誘導体を含む。組成物は、必要に応じて、1以上の追加のクラミジア抗原、またはそのサブユニット、断片、ホモログ、変異体、誘導体を含む。
【0110】
本発明の組成物の使用のために、輸送を円滑にしおよび/または免疫反応を増強させるために、ポリペプチドまたはその誘導体は、リポソーム、好ましくは中性または陰イオン性リポソーム、ミクロスフェア、ISCOMS、ウイルス様粒子(VLP)または細菌幽霊細胞(欧州特許第1158966号B1)中にまたはそれらと共に製剤化される。これら化合物は、当業者に容易に入手可能である。
【0111】
治療は、当業者によって容易に決定できるように、単回投与、または必要に応じて間隔をおいて繰り返して投与することによって達成される。例えば、初回投与の後に、1週間または1ヶ月の間隔をあけて3回の追加抗原投与が続く。当業者によって決定できるように、適切な用量は、受容体(例えば、成人または胎児)、特定のワクチン抗原、投与の経路および頻度、アジュバントの存在/不在または種類、および目的の効果(例えば、防御および/または治療)を含む、さまざまなパラメーターに依存する。一般に、本発明のワクチン抗原は、粘膜経路で、約10μgから約500μg、好ましくは約1μgから約200μgの量が投与される。非経口投与経路の場合、用量は通常約1mg、好ましくは約100μgを超えない。
【0112】
ワクチン剤として用いられる場合、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、多段階の免疫工程の一部として連続的に使用してもよい。例えば、哺乳動物に、最初にポックスウイルスといった本発明のワクチンベクターで、例えば非経口経路で初回刺激し、次にワクチンベクターでコードされるポリペプチドで、例えば粘膜経路で2回追加抗原投与する。他の例では、本発明のポリペプチドまたは誘導体を含むリポソームをプライミングのために使用し、本発明の水溶性のポリペプチドまたは誘導体を使用して、粘膜のアジュバント(例えば、LT)と併用して粘膜を介して追加抗原投与を行う。
【0113】
本発明のポリペプチド誘導体はまた、第7の態様に従って、例えば血中試料中の抗クラミジア抗体の存在を検出するための診断試薬としても使用される。そのようなポリペプチドは、約5から約80、好ましくは約10から約50のアミノ酸長である。それらは、診断方法に依存して、標識されるかまたは標識されない。そのような試薬を伴う診断方法は、下記に記載されている。
【0114】
本発明のDNA分子が発現されると、ポリペプチドまたはポリペプチド誘導体が公知の実験室技術を用いて産生および精製される。上記の通り、ポリペプチドまたはポリペプチド誘導体は、精製を円滑にする融合テイルを含む融合タンパク質として産生されてもよい。融合産物は、ポリペプチドまたはポリペプチド誘導体に対する抗体(単一特異的抗体)を惹起するために、小さな哺乳動物、例えばマウスまたはウサギ、を免疫するのに使用される。従って、本発明の第8の態様は、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド誘導体に結合する単一特異的抗体を提供する。
【0115】
「単一特異的抗体」とは、固有に天然に存在するクラミジアポリペプチドと反応できる抗体を意味する。本発明の抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであってもよい。単一特異的抗体は、組み換え、例えば、キメラ(例えば、ヒト定常領域と関連するマウスに由来する可変領域によって構成される)、ヒト化(ヒト免疫グロブリン定常骨格、および、動物、例えば、マウスに由来する超可変領域)、および/または単鎖であってもよい。ポリクローナルおよび単一特異的抗体の両方が、免疫グロブリン断片、例えば、F(ab)またはFab断片の形態でありうる。本発明の抗体は、任意のアイソタイプ、例えば、IgGまたはIgAであり、およびポリクローナル抗体は、単一のアイソタイプまたはアイソタイプの混合物である。
【0116】
本発明のポリペプチド、ホモログまたは断片に対する抗体は、該ポリペプチド、ホモログまたは断片を含む組成物による、哺乳動物の免疫によって生じる。そのような抗体は、ポリクローナルでもまたはモノクローナルでもよい。ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を生じる方法は、本分野でよく知られている。
【0117】
本発明のポリペプチドまたはポリペプチド誘導体へと惹起される本発明の抗体は、作製され、および、標準的な免疫学的アッセイ、例えば、ウェスタンブロット分析、ドットブロットアッセイ、またはELISAを用いて同定される。抗体は、生物試料といった、試料中のクラミジア抗原の存在を検出するための診断方法において使用される。抗体はまた、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド誘導体を精製するためのアフィニティクロマトグラフィにも使用される。下記にさらに論じるように、そのような抗体は、予防的および治療的受動免疫方法にも使用しうる。
【0118】
従って、本発明の別の態様は(i)本発明の抗体、ポリペプチド、またはポリペプチド誘導体を含む生物試料中のクラミジアの存在を検出するための試薬;および(ii)生物試料に、本発明の抗体、ポリペプチド、またはポリペプチド誘導体を接触させることによって免疫複合体を形成し、さらにそのような複合体を検出して試料またはその試料が由来する生物中のクラミジアの存在を示すことによって、生物試料中のクラミジアの存在を検出する診断方法を提供する。
【0119】
当業者は、免疫複合体が、試料の成分と、使用されるいずれかの抗体、ポリペプチド、またはポリペプチド誘導体との間で形成されること、および、複合体を検出する前に未結合の物質がすべて除去されることを容易に理解する。ポリペプチド試薬が、試料、例えば、血液検体中の抗クラミジア抗体の存在を検出するために有用であることが理解されているが、一方、本発明の抗体は、クラミジアポリペプチドの存在について、胃抽出物または生検といった、試料のスクリーニングのために使用される。
【0120】
診断用途の場合、試薬(すなわち、本発明の抗体、ポリペプチド、またはポリペプチド誘導体)は遊離状態にあっても、または、試験管、ビード、または本分野で使用される任意の他の従来の担体といった固相担体上に固定されていてもよい。固定は、直接的または間接的手段を用いて達成される。直接的手段は、担体および試薬の間の受動吸着(非共有結合)または共有結合を含む。「間接的手段」は、試薬と相互作用する抗試薬化合物が最初に固相担体に付着することを意味する。例えば、ポリペプチド試薬が使用される場合、生物試料中の抗体の認識に関与しないエピトープに結合することを条件として、試薬に結合する抗体は抗試薬としての役割を果たす。間接的手段はまた、例えば、ビタミンといった分子をポリペプチド試薬上に組み込み、さらに、対応する受容体を固相上に固定させる場合に、リガンド−受容体系を採用してもよい。これは、ビオチン−ストレプトアビジン系によって説明される。または、ペプチドテールを化学的にまたは遺伝子工学によって試薬に添加し、さらに、挿入されまたは融合された産物を、ペプチドテールの受動吸着または共有架橋によって固定化させる。
【0121】
そのような診断剤は、キット中に含まれていてもよく、キットは取扱説明も含むであろう。試薬は、標的に試薬が結合されている場合に試薬を検出できる検出手段によって標識されている。検出手段は、イソシアン酸フルオレセインまたはイソチオシアン酸フルオレセインといった蛍光剤、または、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはルシフェラーゼまたはアルカリフォスファターゼといった酵素、または125Iまたは51Crといった放射性元素でもよい。
【0122】
従って本発明の他の態様は、抗体(本発明の単一特異的抗体)に基づくアフィニティクロマトグラフィを生物試料に施すことを含む、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド誘導体を生物試料から精製する方法を提供する。
【0123】
本発明の精製法における使用の場合、抗体は、ポリクローナルまたは単一特異的であり、好ましくはIgG型である。精製されたIgGは、標準的な方法を用いて抗血清から調製される。従来のクロマトグラフィ担体および抗体を結合させるための標準的な方法は、例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, D. Lane, E. Harlow., Eds.(1988)に記載され、および下記に概説される。
【0124】
簡単に説明すると、好ましくは緩衝液中のクラミジア・トラコマティス抽出物といった生物試料を、好ましくは生物試料を希釈するのに使用される緩衝液で平衡化されたクロマトグラフィ材料に、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド誘導体(すなわち、抗原)がその材料に吸着できるように装填する。本発明の抗体に結合したゲルまたは樹脂といったクロマトグラフィ材料は、バッチ形態であるかまたはカラム内にある。非結合成分を洗浄して除き、次に、グリシン緩衝液、またはカオトロピック剤含有緩衝液といった、適切な溶出緩衝液、例えば、グアニジンまたは高い濃縮液(例えば、3M MgCl)で抗原を溶出する。溶出された画分を回収し、例えば吸光度を280nmで測定することによって抗原の存在を検出する。
【0125】
本発明の別の態様は、(i)本発明の単一特異的抗体を、希釈剤またはキャリアと共に含む内容の組成物;(ii)本発明の単一特異的抗体の治療的または予防的な有効量を含む医薬組成物、および(iii)治療的または予防的用量の本発明の単一特異的抗体を感染した個体に投与することによって、クラミジア(例えば、クラミジア・トラコマティス、クラミジア・シッタシイ、肺炎クラミジア、またはクラミジア・ペコラム)感染を治療または予防するための方法を提供する。さらに、本発明の第11の態様は、クラミジア感染の治療または予防のための薬剤の調製における、本発明の単一特異的抗体の使用を含む。
【0126】
単一特異的抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり、好ましくは(大部分は)IgAアイソタイプである。受動免疫法において、抗体は、哺乳動物の粘膜表面、例えば胃粘膜に、例えば経口または胃内に、有利には、重炭酸緩衝液の存在下で投与される。または、重炭酸緩衝液を必要としない全身投与が実施される。本発明の単一特異的抗体は、単一の活性成分として、または、異なるクラミジアポリペプチドに対して特異的な1以上の単一特異的抗体との混合物として、投与される。使用される抗体の量および特定の投薬計画は、当業者によって容易に決定される。例えば、約100から1,000μgの抗体が、1週間連日投与される。
【0127】
治療的または予防的有効性は、本分野において標準的な方法を用いて、例えば、粘膜の免疫反応の誘導、または、防御的および/または治療的免疫の誘導を、例えば本明細書中で開示されるクラミジアマウスモデルを使用して測定することによって評価される。当業者は、モデルにおいて使用されるクラミジアの菌株が、他のクラミジア菌株または血清型で置換してもよいことを簡単に認識する。例えば、クラミジア・トラコマティスに由来するDNA分子およびポリペプチドの有効性は、好ましくは、クラミジア・トラコマティス菌株を用いてマウスモデルで評価される。防御は、クラミジア感染の程度を、対照群の程度と比較するによって決定される。防御は、対照群と比較して感染が軽減されている場合に示唆される。対照群との差を示すために統計的分析を用いてもよい。そのような評価は、本発明のポリヌクレオチド、ワクチンベクター、ポリペプチドおよびその誘導体、ならびに抗体に対して行われる。
【0128】
上記の任意のワクチン組成物に有用なアジュバントは、下記のとおりである。
【0129】
非経口投与のためのアジュバントは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、およびヒドロキシリン酸アルミニウムといった、アルミニウム化合物を含む。抗原は、標準的なプロトコールによって、アルミニウム化合物とともに沈降し、またはアルミニウム化合物上に吸着する。RIBI(ImmunoChem社、モンタナ州、ハミルトン)といった他のアジュバントが、非経口投与において使用される。
【0130】
粘膜投与のためのアジュバントは、細菌毒素、例えば、コレラ毒素(CT)、大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)毒素Aおよび百日咳毒素(PT)、または、未処理のコレラ毒サブユニットB(CTB)の精製済調製物といったそれらの組み合わせ、サブユニット、トキソイド、変異体を含む。これら任意の毒素との断片、ホモログ、誘導体、および融合もまた、アジュバント活性を保持する限りは、適切である。好ましくは、毒性を減じた変異体が使用される。例えば、大腸菌(E.Coli)、サルモネラ菌(Salmonella minnesota)、ネズミチフス菌、またはフレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)の細菌モノホスホリルリピドA(MPLA);サポニン、またはポリラクチドグリコリド(PLGA)ミクロスフェアといった他のアジュバントもまた、粘膜の投与に使用される。
【0131】
粘膜および非経口投与の両方に有用なアジュバントは、ポリホスファゼン(国際公開第95/02415号)、DC−chol(3b−(N−(N’,N’−ジメチルアミノメタン)カルバモイル)コレステロール;米国特許第5,283,185号および国際公開第96/14831号)およびQS−21(国際公開第88/09336号)を含む。
【0132】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、ポリペプチド誘導体、または抗体を含む、本発明の任意の医薬組成物は、従来の方法で製造される。特に、医薬組成物は、医薬的に許容可能な希釈剤またはキャリア、例えば、水またはリン酸緩衝生理食塩水といった生理食塩水で形成されている。一般的に、希釈剤またはキャリアは、投与の方法および経路、および標準的な薬務に基づき選択される。
【0133】
本明細書中で提示され、および、下記に詳細を記載するデータは、Mgp002遺伝子をコードするクラミジア核酸分子による核酸免疫が、免疫反応を誘導しさらにクラミジア・トラコマティス MoPnによる肺接種感染に対する有意な防御免疫をもたらすことを示す。
【0134】
本発明のさまざまな実施形態が、クラミジア感染のワクチン接種、診断および治療の分野における多くの用途を有することは、当業者にとって明らかである。そのような使用の別の非限定的な議論が、さらに下記に提示されるであろう。
【実施例】
【0135】
上記の開示は、本発明を一般的に説明している。下記の具体的な実施例を参照することによってより完全な理解を得ることができる。これら実施例は、説明目的のみで記載され、および、本発明の範囲を制限することを意図していない。状況によって示唆されるかまたは都合がよければ、形態の変化および等価物の置換が考えられる。本明細書中では具体的な用語を用いてきたが、そのような用語は、記述的な意味を意図し、および限定の目的を意図していない。
【0136】
実施例1:
この実施例は、免疫用のプラスミドベクターの調製を説明する。
【0137】
クラミジア・トラコマティスマウス肺炎(MoPn)単離物を、10%ウシ胎仔血清およびL−グルタミン2mMを含むイーグルMEM中のHeLa229細胞において増殖させた。段階勾配密度遠心分離によって43,000gで4℃にて60分間、MoPnEBを回収および精製した。精製されたEBをPBSで2回洗浄し、30,000gにて30分間遠心分離し、ショ糖−リン酸−グルタミン酸(SPG)緩衝液中に再懸濁させ、さらに使用まで−70℃で凍結した。
【0138】
Mgp002遺伝子をコードする核酸分子を、プラスミド中に存在するMyc−Hisタグとインフレーム(in frame)で真核発現プラスミドpCAMycHisにクローニングした。このベクターは、pcDNA3.1(−)Myc−HisC(Invitrogen,San Diego)およびプラスミドVR1012(Vical)から構築した。その構築の詳細は、2000年9月21日公開のPCT国際公開第00/55326号パンフレットに開示される。要約すると、プラスミドpcDNA3.1(−)Myc−HisC(Invitrogen)をSpeIおよびBamHIで制限酵素切断してCMVプロモーターを除去し、さらに残りのベクター断片を単離した。プラスミドVR−1012(Vical)由来のCMVプロモーターおよびイントロンAがSpeI/BamHI断片上に単離された。断片をライゲーションで繋ぎ合わせ、プラスミドpCA/Myc−Hisを生じた。
【0139】
NotI部位(下線)、開始コドン(太字)、およびMoPnの成熟Mgp002遺伝子産物のN末端配列を含む5'プライマー(5'ATAAGAATGCGGCCGCCACC ATG GGA TTA TCT CGC CTA ATT 3'−配列番号9)およびKpnI部位(下線)を含む3'逆方向プライマー(5'GTTGGTACCGAGCTCGCTCCACTATTCTCATTAATAATCC 3'−配列番号10)を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、完全長mgp002遺伝子をMoPnゲノムDNAから増幅した。逆方向プライマーはMgp002遺伝子の3’末端と相補的であるが、しかし終止コドンを含まない。代わりに、追加のヌクレオチドが挿入され、pCAMycHisのMyc−およびHis−tagsとのインフレーム遺伝子融合をもたらした。PCR産物をアガロースゲル電気泳動後に単離し、 Kpn I および NotIで制限酵素切断し、およびベクターpCAMycHisのKpn I およびNotI部位へライゲーションした。ライゲーション混合物をアンピシリン選択下において大腸菌(E.coli)DH10bに導入した。正しい増幅およびクローニングを確認するため、挿入部全体のDNAを配列決定した。結果として生じたプラスミドをpCACTMgp002と名付けた。PCR産物は、完全長Mgp002遺伝子を表す図1(配列番号1)に示す核酸配列および推定アミノ酸配列(配列番号2)を有していた。
【0140】
順方向プライマー5'ATAAGAATGCGGCCGCCACC ATGTGCGACTTCCCCCCCAGT 3'−配列番号11およびmgp002逆方向プライマー5' GTTGGTACCGAGCTCGCTCCACTATTCTCATTAATAATCC 3'配列番号12を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、シグナル配列を欠くmgp002遺伝子もMoPnゲノムDNAから上記の通り増幅した。pCAMycHis中にクローン化して得られたプラスミドは、pCACTMgp002deltaとして同定された。欠失した推定シグナル配列は図1で下線として示され、さらにシグナル配列を欠くMgp002遺伝子は、図1において矢印で開始することが示唆されている核酸配列(配列番号5)および推定アミノ酸配列(配列番号6)を有していた。
【0141】
同様に、図2に示されるクラミジア・トラコマティス血清型D核酸配列に由来するMgp002遺伝子(配列番号3)および完全長Mgp002遺伝子の推定アミノ酸質配列(配列番号4)、または核酸配列が図2において矢印で示されるシグナル配列欠失遺伝子(配列番号7)および推定アミノ酸配列(配列番号8)。当業者は、任意の他の血清型に由来する任意の他の配列を上記で概説したのと類似の方法を用いて得ることができることを理解するであろう。
【0142】
実施例2:
本実施例は、核酸ベクターを用いた免疫試験の結果を示す。
【0143】
核酸免疫によって誘起された免疫反応が機能的に有意か否かを評価するために、in vivoの防御効果を前述のように評価した(非特許文献20:Zang D−Jet al., J Infec Dis 176: 1035−1040 (1997))。要約すると、メスBalb/cマウス(4から5週齢)をCharles River Canada(カナダ、サンコンスタン)より購入し、実施例1に記載のように調製されたプラスミドDNAを用いて、筋肉内および鼻腔内投与で、0、2および4週目の3回、マウスを免疫した(図3を参照)。各免疫において、200μl中のDNA合計200μgを、2つの大腿四頭筋(DNA100μg/注射部位)に、27ゲージ針を用いて注射した。同時に、50μl中のDNA50μgをマイクロピペットでマウスの鼻孔に輸送した。引き続き、液滴をマウスに吸入させた。
【0144】
最後の免疫から14日後に、2×10IFUのクラミジア・トラコマティス MoPn EBをマウスの鼻腔内に攻撃接種した。簡単に説明すると、エーテル麻酔の後、2×10IFUのMoPnを含む接種材料を含むSPG25μlを、マイクロピペットでマウスの鼻孔に輸送した。液滴を引き続き、マウスに吸入させた。クラミジア菌により生じた病的状態の尺度として、攻撃接種感染の後10日間体重を毎日測定した(図4を参照)。生理食塩水(未処理)またはブランクベクター(pCAMycHis)を注射したマウスを陰性対照として使用した。感染後3日目に、Mgp002遺伝子産物または切断型で免疫したマウスでは、陰性対照群よりも有意に体重減少が少なかった(図4)。
【0145】
感染後10日目に、マウスを屠殺し、肺を無菌で単離し、さらにSPG緩衝液中でグラインダーによってホモジナイズした。組織懸濁液を、500g、4℃で10分間遠心分離し、粗い組織および破片を除去した。上清は、生物の量的増殖に関する組織培養試験まで、−70℃で凍結した。
【0146】
DNAワクチン接種の有効性をより直接的に測定するために、亜致死肺感染の後、クラミジアのin vivo増殖を制限する能力を評価した。この感染モデルシステムでは、攻撃接種後10日目が増殖のピーク時点であり、各マウス群の中で肺力価(titer)を比較するためにこの時点を選択した。Mgp002完全長遺伝子産物DNAで免疫したマウスは、図5に示すように、陰性対照群(pCAMyc−His単独および未処理生理食塩水群)よりも、有意に低い(p<0.001)肺力価(200倍視野中のIFU)を有していた。驚くことに、Mgp002遺伝子の切断型(図5パネルB)で免疫したマウスは、完全長遺伝子よりもさらに低いIFUを示した。
【0147】
これらデータは、Mgp002およびさらには遺伝子の切断型による核酸免疫が、クラミジア・トラコマティス MoPnによる肺攻撃接種感染に対する防御免疫反応を誘起することを示す。これらデータはまた、遺伝子の切断型におけるMgp002遺伝子残基内の防御的配列を示す。
【0148】
実施例3:
本実施例はE.coliにおける組み換えmgp002発現のための核酸ベクターの調製を説明する。
【0149】
PCR増幅、DNAのクローニング用の目的の末端を生じるためのエンドおよびエキソヌクレアーゼによるDNA修飾、ライゲーション、および細菌形質転換に必要な手順は本分野でよく知られている。それに使用した標準的な分子クローニング法は本分野でよく知られており、さらにSambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory: Cold Spring Harbo,New Yorkによって、およびAusubel etal.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley-Interscience; 1987に記載されている。
クラミジアゲノムDNAはクラミジア・トラコマティスマウス肺炎株(MoPn、別名Chlamydia muridarum)から、McCoy細胞での細菌の継代後に調製した。
【0150】
発現用に、mgp002コード配列が自身の天然シグナルペプチド(最初の18コドンでコードされる)と共に、クラミジア・トラコマティスMoPn感染McCoy細胞から採取された総DNAから、順方向プライマーMoPnmgp002−F/+SP(5'−GAATTCGGATCCGATGGGATTATCTCGCCTA−3')配列番号13、および逆方向プライマーMoPnmgp002−R(5'−ATTAAGAATGCGGCCGCTTTATCACTCCACTATTCT−3')配列番号14およびAdvantage−HF2ポリメラーゼミックス(Clontech)を用いて増幅した。順方向プライマーは、BamHI制限部位(斜体)をコードする配列を導入した。逆方向プライマーは、NotI制限部位(斜体)および二個の終止コドン(相補鎖に下線)をコードする配列を導入した。結果として生じたPCR産物を、BamHIおよびNotIを順番に用いて制限酵素処理し、さらに、同じくBamHIおよびNotIで切断されているpET30b(+)プラスミドに挿入した。新しいプラスミドは、pET30b(+)mgp002+SPと表した。この構築物において、mgp002+SPは、pET30b(+)ベクター内の上流コード配列に由来するN末端Hisタグ(登録商標)と共に発現される。図6は、上記のクローニング手順を図示した。同様の手順を、クラミジア・トラコマティス血清型Dまたは任意の他の血清型株からのMgp002の調製に用いることができる。アミノ酸配列は、精製を円滑にするためのN末端Hisタグの付加以外は、図1(配列番号2)に示したものと同一の配列を有する。
【0151】
組み換えmgp002タンパク質の発現のため、発現ベクターpET30b(+)mgp002+SP#1を包含するE.coliBL21(DE3)の一晩培養物(85ml)を用いて、500mlのLuria−Bertani液体培地を入れた各フラスコに播種し、0.8のA595が得られるまで37℃で培養した。His−タグ化タンパク質としてのmgp002の発現は、IPTGの終濃度1mMでの添加によって誘導され、培養物をさらに4時間インキュベートした。過剰発現された組み換えタンパク質をその後、クマシーブルー染色SDS−PAGEによって、および抗Hisタグモノクローナル抗体を用いた免疫染色によって分析し、標準的条件を用いて発現を確認した。
【0152】
実施例4:
本実施例は、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)を用いて、E.coliに由来するHisタグ化組み換えタンパク質の精製を説明する。
【0153】
実施例3による組み換えMgp002を発現する細菌細胞培養を遠心分離して細胞を沈殿させ、さらに、約1g湿重量/mL(通常、20〜30g/30mL)の比率で、0.5%v/v TritonX−100含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS;10mMリン酸緩衝液、pH7.5、150mM NaCl)と混合した。混合物を含む試験管を氷上で冷却し、さらに、Branson Sonifierを用いて、冷却時間を1〜2分入れて、1分間隔で3回、出力20〜30%で、超音波分解した。結果として生じる溶液を、40mLBeckman遠心分離試験管に移し、さらに、Beckman Avanti J30i遠心分離上で、10,000rpm、4Cで15分間遠心分離した。上清を静かに移し、さらに、6M塩酸グアニジンを含む様々な容積の同一緩衝液中に遠心分離した沈殿物を再懸濁させた。記載のように混合物を超音波処理および遠心分離し、さらに可溶化mgp002タンパク質を含む上清を供給材料として保持した。
【0154】
IMAC精製のために使用されたカラムは、半径2.5cmの、Amersham XK 50/20型であった。カラム容積(CV)200mLに対して、カラムに、Amersham Pharmaciaキレート用Separose Fast Flowで、10cmの高さまで充填した。過去に使用された場合、製造業者の取扱説明に従って、カラムを再生しさらに浄化した;7CVの脱イオン水を通過させた後、カラムに1CVの0.1M NiClを負荷し、pH6.8の4CV PBSで平衡化した。
【0155】
上記に記載の4CVのグアニジン含有緩衝液で、25mL/分の流速でカラムを平衡化した。試料供給物500mLを25mL/分で装填し、続いて、50mMイミダゾール含有PBSを用いて3CVの洗浄工程を行った。mgp002タンパク質の溶出は、300mMのイミダゾールを含有するPBSの3CVをカラムに通過させることによって達成した。溶出液分画を、ダイアフィルトレーションのために保持した。
【0156】
最後に溶出液を、Pall Minum接線流濾過装置器具で、10kDaの公称分子量のカットオフフィルターを用いて約6倍に濃縮した。産物の溶解性を確保するために、濃縮物を、10mM トリス−HCL、pH8.5、150mM NaCl、0.8M L−アルギニン、および10mM ジチオスレイトールを含有する約10倍の容積の緩衝液で、同一装置において、Diafilterで濾過した。その結果、アジュバントを含むまたは含まない免疫原性組成物またはワクチンへの製剤化に適した精製組み換えタンパク質をもたらした。
【0157】
実施例5:
本実施例は、免疫CH3マウスにおける、クラミジア血清型Dでの性器攻撃接種からの防御を説明する。
【0158】
実施例4により精製された組み換えMgp002タンパク質(20μg/用量)を、2.5μg/免疫用量のISCOMアジュバントISCOMATRIX(IMX)と共に製剤化した。防御は、クラミジア・トラコマティス血清型Dを膣内に攻撃接種した後、性器洗浄液中の細菌負荷(bacterial load)を決定することによって測定した。
【0159】
簡単に説明すると、CH3メスマウスを、IMX中のそれぞれの被験抗原で2回免疫した。次に動物を、プロゲステロン(デポプロベラ)を用いて発情様状態に誘導し、さらに、クラミジア・トラコマティス血清型Dを膣内に攻撃接種した。感染後、洗浄液および綿球を採取し、培養して封入体形成単位(IFU)について評価した。任意の時点からの陽性培養は、対象動物が感染したと考えられることを示唆した。5つの時点を評価して、どのレベルの感染が生じたかを決定した。免疫プロトコールを下記の表1に示す。
【表1】

【0160】
第3、5、7、11および14日目に、膣腔を2x50μlのSPG緩衝液および次いで綿棒で洗浄した。洗浄液および綿球を、SPG 400μlを含む試験管に入れて、氷上に載せ、後の試験のために凍結するかまたは即座に試験を行った。第34日目に、全群のマウスから採血し、血清試料をAusra Raudonikiene/Kiristin Boehlke(Bld17、rm124)に送付し、ここで試料を遠沈させ、血清を除去し、試験まで凍結した。
【0161】
図7は、タンパク質免疫が、期間の3日目に生殖管における細菌負荷を大幅に減少させ、さらには、5日目にさらに減少させることを示す。これらの結果は、mgp002の組み換え形態が、接種後の細菌負荷を減らすことのよって防御を提供することを示唆する。基本小体(EB)は陽性対照であり、およびこれも生殖管での細菌負荷を減少させることができた。これらの結果は、アジュバントおよびプラセボのみを得た対照群と比較した場合、統計的に有意(ウィルコクスンp<0.05)であった。
【0162】
実施例6:
本実施例は、Mgp002免疫Balb/cマウスにおける、クラミジア・トラコマティス MoPnでの肺攻撃接種からの防御を説明する。
【0163】
肺への攻撃接種は、上記実施例2に記載のとおり実施した。マウスを免疫するのに使用したMgp002タンパク質は、実施例4に記載のものと同一であった。簡単に説明すると、DC−Cholアジュバント(用量200μg/免疫)を用いて製剤化した実施例4からの精製組み換えMgp002タンパク質(25μg/用量)で、筋肉投与(i.m.)でマウスを3回免疫した(図3を参照)。実施例2に記載のように、最後の免疫から14日後に、2×10IFUのクラミジア・トラコマティス MoPn EBをマウスの鼻腔内(i.n.)に接種した。
【0164】
感染後10日目に、マウスを屠殺し、マウスの肺を無菌で単離し、さらにSPG緩衝液中でグラインダーを用いてホモジナイズした。組織懸濁液を、500g、4℃で10分間遠心分離し、粗い組織および破片を除去した。上清は、生物の量的増殖に関する組織培養試験まで、−70℃で凍結した。図8は、別のアジュバントDC−Choiを用いて製剤化したMgp002組み換えタンパク質で免疫したマウスも、免疫されていないマウスと比較して、肺におけるクラミジア負荷を有意に減少させたことを示す。これらの結果は、p<0.05で統計的に有意であった。
【0165】
開示の概要
本開示を要約すると、本発明は、クラミジアの菌株のMgp002遺伝子産物の完全長または切断型をコードするヌクレオチド配列と、Mgp002遺伝子および切断型の宿主での発現をもたらすプロモーターとを含む核酸ベクター、具体的にはプラスミドベクターを用いて、クラミジア菌株、具体的にはクラミジア・トラコマティスの菌株の感染によって生じる疾患に対して、ヒトを含む宿主を、DNAを含む核酸で免疫する方法を提供する。Mpg002遺伝子の完全長および切断型の両方が、生きたクラミジア菌の攻撃接種に対して、防御免疫反応を誘起した。切断型は、完全長形態よりもさらに大きな防御反応を誘起した。本発明の範囲内で修飾が可能である。
【参考文献】
【0166】

【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1−1】図1は、Chlamydia muridium(Nigg株)に由来するMgp002遺伝子の完全長ヌクレオチド配列(配列番号1)および完全長Mgp002遺伝子産物の推定アミノ酸配列(配列番号2)、ならびにシグナル配列を欠くヌクレオチド配列(矢印で開始)(配列番号5)およびその推論アミノ酸配列(配列番号6)を示す。
【図1−2】図1−1の続きである。
【図1−3】図1−2の続きである。
【図2−1】図2は、クラミジア・トラコマティス(血清型D)に由来するMgp002遺伝子の完全長ヌクレオチド配列(配列番号3)および完全長Mgp002遺伝子産物の推定アミノ酸配列(配列番号4)、ならびにシグナル配列を欠くヌクレオチド配列(矢印で開始)(配列番号7)および推定アミノ酸配列(配列番号8)を示す。
【図2−2】図2−1の続きである。
【図2−3】図2−2の続きである。
【図3】図3は、Mgp002遺伝子またはその切断型をコードする核酸分子を用いてクラミジア感染を治療するための免疫プロトコールの一実施形態の概略図を示す。IMとは筋肉内免疫を称し、一方、INとは鼻腔内免疫を称する。
【図4】図4はパネルAおよびBから成り、プラスミドpcDNA3.1中にクローニングされた、完全長Mgp002遺伝子(パネルA)およびシグナル配列を欠くMgp002遺伝子(図B)をコードする核酸分子を用いた免疫の結果を、感染性クラミジアを攻撃接種された免疫Balb/cマウスにおける体重減少について示す。図注:EB=宿主を破壊した基本小体、PCACTmgp002=完全長Mgp002遺伝子が挿入されたpcDNA3、PCACTmgp002delta=シグナル配列を欠くMgp002遺伝子、未処理=免疫無し、pAMycHis=空ベクター。
【図5】図5はパネルAおよびBから成り、完全長Mgp002遺伝子(パネルA)およびシグナル配列を欠くMgp002遺伝子(パネルB)で免疫し、さらに感染性クラミジアを攻撃接種されたBalb/cマウスの肺からのクラミジア菌の排除の増進の結果を示す。図注:EB=宿主を破壊した基本小体、PCACTmgp002=完全長Mgp002遺伝子が挿入されたpcDNA3、PCACTmgp002delta=シグナル配列を欠くMgp002遺伝子、未処理=免疫無し、pAMycHis=空ベクター。
【図6】図6は、N末端His−Tag(登録商標)を含む組み換えMgp002タンパク質の発現のためのプラスミド、pET30b(+)mgp002+SPの構造を図式的に表示する。
【図7】図7は、ISCOMアジュバントと共に精製組み換えMgp002タンパク質で免疫したCH3マウスにおける、クラミジア・トラコマティス血清型Dでの性器攻撃接種からの防御をグラフに示す。生理食塩水(未処理)、Mgp002タンパク質(mgp002)またはクラミジア基本小体(EB)で皮下投与によりマウスを免疫し、次に生きたクラミジア・トラコマティス血清型Dを膣内に攻撃接種した。感染後3日目および5日目の洗浄液から、クラミジアの感染単位を特定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離および精製された核酸分子:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも12連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および
(f)前記(a)から(d)の何れかのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換により修飾され、かつ前記(a)から(d)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも75%同一であるポリペプチド。
【請求項2】
下記より選択される核酸配列を含む単離および精製された核酸分子:
(a)配列番号1の核酸配列;
(b)配列番号3の核酸配列;
(c)配列番号5の核酸配列;
(d)配列番号7の核酸配列;
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つの核酸配列の少なくとも38連続ヌクレオチドを含む核酸配列;および
(f)配列番号1、3、5または7の核酸配列によってコードされるポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換により修飾されかつ前記ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも75%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列。
【請求項3】
請求項1記載の核酸分子に相補的である核酸配列を含む単離および精製された核酸分子。
【請求項4】
請求項1記載の核酸分子によってコードされるポリペプチドおよび追加のポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする核酸配列を含む核酸分子。
【請求項5】
前記追加のポリペプチドが異種シグナルペプチドであることを特徴とする請求項4記載の核酸分子。
【請求項6】
前記追加のポリペプチドがアジュバント活性を有することを特徴とする請求項4記載の核酸分子。
【請求項7】
1以上の発現調節配列に調節可能に結合していることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の核酸分子。
【請求項8】
下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターを含有し、該核酸分子が哺乳細胞または細菌細胞における前記ポリペプチドの発現のための1以上の調節配列に調節可能に結合しており、クラミジアによって引き起こされる疾患に対して防御的な免疫反応をもたらすことを特徴とするワクチン:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および
(f)前記(a)から(e)のいずれか1つのポリペプチドから保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(e)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド。
【請求項9】
前記(a)から(f)のいずれか1つから選択されるポリペプチドに対する免疫反応を増強する追加のポリペプチドをコードする追加の核酸を必要に応じて含むことを特徴とする請求項8記載のワクチン。
【請求項10】
ワクチンでの使用に適した医薬的に許容可能なキャリアまたは希釈剤と、下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子とを含み、該核酸分子が、哺乳細胞におけるポリペプチドの発現のための1以上の調節配列に調節可能に結合していることを特徴とする医薬組成物:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および
(f)前記(a)から(e)のいずれか1つのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(e)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド。
【請求項11】
ワクチンでの使用に適した医薬的に許容可能なキャリアまたは希釈剤と、下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子とを含むことを特徴とする請求項10記載の医薬組成物:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;および
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片。
【請求項12】
ワクチンでの使用に適した医薬的に許容可能なキャリアまたは希釈剤と、下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子とを含むことを特徴とする請求項10記載の医薬組成物:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;
(f)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(d)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド。
【請求項13】
前記ベクターが、下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子を含むことを特徴とする請求項8記載のワクチン:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;および
(d)配列番号8のポリペプチド。
【請求項14】
前記ベクターが、下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子を含むことを特徴とする請求項8記載のワクチン:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;および
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片。
【請求項15】
前記ベクターが、下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子を含むことを特徴とする請求項8記載のワクチン:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;および
(f)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(d)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド。
【請求項16】
下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子の有効量を投与する工程を含み、該核酸分子がポリペプチドの発現のための1以上の調節配列に調節可能に結合していることを特徴とする、クラミジア感染を予防または治療する方法:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および
(f)前記(a)から(e)のいずれか1つのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(e)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド。
【請求項17】
下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子の有効量を投与する工程を含むことを特徴とする請求項17記載のクラミジア感染を予防または治療する方法:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;および
(d)配列番号8のポリペプチド;
【請求項18】
下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子の有効量を投与する工程を含むことを特徴とする請求項17記載のクラミジア感染を予防または治療する方法:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;および
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および
【請求項19】
下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子の有効量を投与する工程を含むことを特徴とする請求項17記載のクラミジア感染を予防または治療する方法:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;
(f)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドから保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(d)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド。
【請求項20】
請求項7記載の核酸分子で形質転換した単細胞宿主。
【請求項21】
配列番号1、3、5または7の核酸分子あるいは該核酸分子のホモログまたは相補配列またはアンチセンス配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする5から100ヌクレオチド長の核酸プローブ。
【請求項22】
配列番号1または3の核酸分子あるいは該核酸分子のホモログまたは相補配列またはアンチセンス配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする10から40ヌクレオチド長のプライマー。
【請求項23】
請求項1、2および4から7いずれか1項記載の核酸配列によってコードされるポリペプチド。
【請求項24】
請求項21記載の単細胞宿主を培養する工程を含む、請求項7記載のポリペプチドを作製する方法。
【請求項25】
請求項24記載のポリペプチドに対する抗体。
【請求項26】
請求項1、2および4から7いずれか1項記載の少なくとも1つの第1のポリペプチド、および医薬的に許容可能なキャリア、さらに必要に応じて前記第1のポリペプチドに対する免疫反応を増強する第2のポリペプチドを含むことを特徴とするワクチン。
【請求項27】
前記第2のポリペプチドが、追加のクラミジアポリペプチドを含むことを特徴とする請求項26記載のワクチン。
【請求項28】
請求項1、4から7いずれか1項記載のポリペプチド、および医薬的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物。
【請求項29】
請求項26または27記載のワクチン、および医薬的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物。
【請求項30】
下記より選択されるクラミジア菌株由来の単離ポリヌクレオチドであって、哺乳動物への該単離ポリヌクレオチドの免疫学的有効量の投与が、該哺乳動物において前記クラミジア菌株の感染に対する免疫反応を誘導することを特徴とする単離ポリヌクレオチド:
(a)配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号3のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号5のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号7のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号1、3、5または7のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%相同であるポリヌクレオチド;および
(f)50%ホルムアミドを含む6×SSCの42℃でのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1、3、5または7のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項31】
下記より選択されるポリペプチドを含む単離および精製されたポリペプチド分子:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも12連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および
(f)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(d)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも75%同一であるポリペプチド。
【請求項32】
異種シグナルペプチドをさらに含むことを特徴とする請求項31記載のポリペプチド分子。
【請求項33】
下記より選択されるポリペプチドを含み、クラミジアによって引き起こされる疾患に対して防御的な免疫反応をもたらすことを特徴とするワクチン:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および
(f)前記(a)から(e)のいずれか1つのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(e)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド。
【請求項34】
ワクチンでの使用に適した医薬的に許容可能なキャリアまたは希釈剤、および下記より選択されるポリペプチドを含む医薬組成物:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および
(f)前記(a)から(e)のいずれか1つのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(e)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド。
【請求項35】
アジュバントをさらに含むことを特徴とする請求項33記載のワクチン。
【請求項36】
前記アジュバントがISCOMアジュバントであることを特徴とする請求項35記載のワクチン。
【請求項37】
ワクチンでの使用に適した医薬的に許容可能なキャリアまたは希釈剤、および下記より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子を含むことを特徴とする請求項34記載の医薬組成物:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;および
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片。
【請求項38】
下記より選択されるポリペプチドの有効量を投与する工程を含むことを特徴とするクラミジア感染を予防または治療する方法:
(a)配列番号2のポリペプチド;
(b)配列番号4のポリペプチド;
(c)配列番号6のポリペプチド;
(d)配列番号8のポリペプチド;
(e)前記(a)から(d)のいずれか1つのポリペプチドの少なくとも100連続アミノ酸を含む免疫原性断片;および
(f)前記(a)から(e)のいずれか1つのポリペプチドから免疫原性を損なうことなく保存的アミノ酸置換によって修飾され、かつ前記(a)から(e)の対応ポリペプチドに対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であるポリペプチド。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図1−3】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2007−511227(P2007−511227A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540117(P2006−540117)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002001
【国際公開番号】WO2005/049836
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(506076695)サノフィ パストゥール リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR LIMITED
【Fターム(参考)】