クランプ製作方向調整支援装置、クランプ製作方向調整支援方法、及び、クランプ製作方向調整支援プログラム
【課題】ワイヤハーネスに対するクランプの製作方向の調整を支援する。
【解決手段】製造情報取得手段M1によって製造情報、物性情報取得手段M2によって物性情報、装着要求枝分岐角度取得手段M3によって装着要求枝分岐角度がそれぞれ取得されると、枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度が、実装着枝分岐角度算出手段M4によってそれらの情報に基づいて算出される。そして、取得した装着要求枝分岐角度と算出した実装着枝分岐角度との枝装着角度差が枝装着角度差算出手段M5によって算出されると、該枝装着角度差に基づいてクランプのクランプ製作方向の調整を支援するための支援情報が支援情報生成手段M6によって生成されて、調整を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に出力される。
【解決手段】製造情報取得手段M1によって製造情報、物性情報取得手段M2によって物性情報、装着要求枝分岐角度取得手段M3によって装着要求枝分岐角度がそれぞれ取得されると、枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度が、実装着枝分岐角度算出手段M4によってそれらの情報に基づいて算出される。そして、取得した装着要求枝分岐角度と算出した実装着枝分岐角度との枝装着角度差が枝装着角度差算出手段M5によって算出されると、該枝装着角度差に基づいてクランプのクランプ製作方向の調整を支援するための支援情報が支援情報生成手段M6によって生成されて、調整を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に出力される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置、クランプ製作方向調整支援方法、及び、クランプ製作方向調整支援プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車などには、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車などは、前記電子機器に電源などからの電力やコンピュータなどからの制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、該電線の端部などに取り付けられたコネクタなどを備えている。
【0003】
電線は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを備えている。電線は、所謂被覆電線である。コネクタは、導電性の端子金具と絶縁性のコネクタハウジングとを備えている。端子金具は、電線の端部などに取りつけられかつ該電線の芯線と電気的に接続する。コネクタハウジングは、箱状に形成されかつ端子金具を収容する。
【0004】
前記ワイヤハーネスを組み立てる際には、まず電線を所定の長さに切断した後、該電線の端部などに端子金具を取り付ける。必要に応じて電線同士を接続する。その後、端子金具をコネクタハウジング内に挿入する。こうして、前述したワイヤハーネスを組み立てる。
【0005】
ワイヤハーネスの設計は、該ワイヤハーネスが配索される車両等の設計進行と平行して準備される。通常、ワイヤハーネスの経路レイアウトは車両等のメーカ(単に、カーメーカとよぶ)から要望が出され、これを受けた部品メーカがその要望を満たすワイヤハーネスを製造治具を用いて製造する。そして、頻繁に発生する設計変更に的確に対応し、布線板レイアウト及びこれにともなう経路レイアウト案の設計効率を向上させるワイヤハーネスの設計支援システム等が特許文献1に記載されている。
【0006】
また、図13は、従来のワイヤハーネスの製造治具の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0007】
この製造治具41は、長方形の幅広の基板42と、基板42上に立設された複数の布線治具43と、基板42に隣接して配置された部品棚44と、部品棚44上の部品ケース45とを少なくとも備えたものである。基板42と複数の布線治具43とで布線板46が構成されている。
【0008】
布線板46は脚部47で傾斜状に支持されている。これは、作業者が奥行きの広い布線板46に対して電線48の布線作業を容易に且つ効率良く行えるようにするためである。布線板46を傾斜させない場合には奥側の布線治具43まで手が届かず、布線作業性が悪い。なお、奥行きの狭い布線板については傾斜状でなく水平に配置する。
【0009】
布線とは電線48を一本づつ各布線治具43に沿って所要形状に配線することである。布線された複数本の電線48には保護チューブ49やプロテクタ等の部品が装着される。各電線48の端末には端子(図示せず)が圧着されており、各端子はコネクタハウジング内に挿入され、コネクタハウジングと端子とでコネクタ50が構成される。さらに、複数本の電線48がビニルテープ51で集束されて、ワイヤハーネス52が完成する。
【0010】
このように完成したワイヤハーネス52は、自動車等に実装する場合、特許文献2等に示すクランプを用いて自動車等のパネルに取り付けることが知られている。詳細には、ワイヤハーネスの複数箇所にクランプを装着し、各クランプをパネルの配索経路に設けられた取り付け孔に取り付けることで、ワイヤハーネスをパネルに取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−46815号公報
【特許文献2】特開2006−191755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ワイヤハーネスを製造する場合、カーメーカー等からの製造条件のもとで製造している。そして、ワイヤハーネスの幹線をクランプで固定する場合、その近くで幹線から枝線が分岐していると、クランプの装着方向によっては、製造条件として要求された装着要求枝分岐角度と枝線を実装したときの実装着枝分岐角度とが一致しないために、要求された枝線の要求経路と実際の装着経路とが異なってしまうという問題が生じていた。そして、このような問題が生じた状態で幹線をクランプで固定すると、幹線に過剰な捻れが生じるとともに、クランプに多大な負荷がかかってしまうという問題が生じてしまうため、ワイヤハーネスを実装するのが困難となり、生産性を低下させてしまう。
【0013】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、ワイヤハーネスに対するクランプの製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置、クランプ製作方向調整支援方法、及び、クランプ製作方向調整支援プログラムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載のクランプ製作方向調整支援装置は、図1の基本構成図に示すように、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置であって、前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段M1と、前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段M2と、前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得手段M3と、前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出手段M4と、前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出手段M5と、前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成手段M6と、を有することを特徴とする。
【0015】
上記請求項1に記載した本発明のクランプ製作方向調整支援装置によれば、製造情報取得手段M1によって製造情報、物性情報取得手段M2によって物性情報、装着要求枝分岐角度取得手段M3によって装着要求枝分岐角度がそれぞれ取得されると、枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度が、実装着枝分岐角度算出手段M4によってそれらの情報に基づいて算出される。そして、取得した装着要求枝分岐角度と算出した実装着枝分岐角度との枝装着角度差が枝装着角度差算出手段M5によって算出されると、該枝装着角度差に基づいてクランプのクランプ製作方向の調整を支援するための支援情報が支援情報生成手段M6によって生成されて、調整を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に出力される。なお、本発明のクランプ製作方向とは、クランプをワイヤハーネスに取り付ける(装着する)クランプ方向である。そして、クランプ製作方向は、クランプを車体等に装着する装着方向とは異なる方向となっている。
【0016】
請求項2記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1に記載のクランプ製作方向調整支援装置において、前記装着位置から前記分岐位置までの間の前記幹線の距離と前記幹線の直径と前記枝装着角度差とに基づいて、前記クランプ製作方向の調整角度を算出する調整角度算出手段M7を有し、前記支援情報生成手段M6が、前記算出した調整角度に基づいて前記支援情報を生成して出力する手段であることを特徴とする。
【0017】
上記請求項2に記載した本発明のクランプ製作方向調整支援装置によれば、クランプの装着位置から枝線の分岐位置までの間の幹線の距離と幹線の直径と枝装着角度差とに基づいて、クランプ製作方向の調整角度が調整角度算出手段M7によって算出されると、該算出した調整角度に基づいた支援情報が支援情報生成手段M6によって生成されて出力される。
【0018】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項3記載のクランプ製作方向調整支援方法は、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援方法であって、前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得工程と、前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得工程と、前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得工程と、前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出工程と、前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出工程と、前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
上記請求項3に記載した本発明のクランプ製作方向調整支援方法によれば、製造情報、物性情報、装着要求枝分岐角度をそれぞれ取得すると、枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を、それらの情報に基づいて算出する。そして、取得した装着要求枝分岐角度と算出した実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出すると、該枝装着角度差に基づいてクランプのクランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成し、クランプ製作方向の調整を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に支援情報を出力する。
【0020】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項4記載のクランプ製作方向設計支援プログラムは、図1の基本構成図に示すように、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置のコンピュータを、前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段M1と、前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段M2と、前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得手段M3と、前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出手段M4と、前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出手段M5と、前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成手段M6として機能させるためのクランプ製作方向調整支援プログラムである。
【0021】
上記請求項4に記載した本発明のクランプ製作方向設計支援プログラムを実行したコンピュータは、製造情報、物性情報、装着要求枝分岐角度をそれぞれ取得すると、枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を、それらの情報に基づいて算出する。そして、取得した装着要求枝分岐角度と算出した実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出すると、該枝装着角度差に基づいてクランプのクランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成し、クランプ製作方向の調整を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に支援情報を出力する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した本発明によれば、枝線を枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度と装着要求枝分岐角度との枝装着角度差を算出し、該枝装着角度差に基づいてクランプ製作方向の調整を支援するようにしたことから、装着要求枝分岐角度と実装着枝分岐角度との枝装着角度差を設計者等に認識させて、クランプ製作方向の調整を支援することができる。従って、設計者等はその枝装着角度差を小さくするようにクランプ製作方向を調整することができることから、要求された枝線の要求経路と実際の装着経路とが異なって、幹線に過剰な捻れが生じることを防止でき、且つ、クランプに多大な負荷がかかってしまうことを防止できるため、ワイヤハーネスを実装するのが容易となり、ワイヤハーネスの生産性(実装効率)の低下防止に貢献することができる。
【0023】
また、クランプの装着位置から枝線の分岐位置までの間の幹線の距離と幹線の直径と枝装着角度差とに基づいてクランプ製作方向の調整角度を算出し、該調整角度に基づいた支援情報を生成するようにしたことから、設計者等は支援情報を参照することで、クランプの製作方向をどの方向にどれだけずらせば良いのかを、容易且つ正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るクランプ製作方向調整支援装置の基本構成を示す構成図である。
【図2】ワイヤハーネスの3次元形状の一例を示すで図であり、(a)は全体図、(b)は(a)中の部分Aの拡大図をそれぞれ示している。
【図3】本発明に係る幹線、枝線、曲げポイントを説明するための図である。
【図4】クランプ製作方向調整支援装置の概略構成の一例を示す構成図である。
【図5】クランプ製作方向調整支援プログラムと各種情報の一例を説明するための図である。
【図6】ワイヤハーネスを布線板に展開したときの布線平面形を示す布線レイアウトの一例を示す図である。
【図7】幹線におけるクランプの装着位置と枝線に分岐位置との関係を説明するための図であり、(a)は分岐位置の左側にのみ装着位置がある場合、(b)は分岐位置の右側にのみ装着位置がある場合、(c)は分岐位置の両側に装着位置がある場合をそれぞれ示している。
【図8】分岐位置と装着位置の本発明にかかる状態を説明するための図である。
【図9】枝線の装着要求枝分岐角度と実装着枝分岐角度とを説明するための図である。
【図10】装着要求枝分岐角度と実装着枝分岐角度との測定例を説明するためのグラフである。
【図11】クランプの製作方向の調整を説明するための図である。
【図12】図4中のCPUが実行する製作方向調整支援処理の一例を示すフローチャートである。
【図13】従来の布線治具を用いた布線装置の一形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るクランプ製作方向調整支援装置を用いてワイヤハーネス(W/H)を布線板に展開したときの布線平面形を示す布線レイアウトの設計を支援する場合の一実施の形態を、図2〜図12の図面を参照して説明する。
【0026】
ワイヤハーネスWは、図2(a)に示すように、3次元形状(立体形状)で車両等に配索される。ワイヤハーネスWは、複数の電線(電線束)W1と、該電線W1の端部などに取り付けられるコネクタW2と、を有している。電線W1は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを備えている。コネクタW2は、導電性の端子金具と絶縁性のコネクタハウジングとを備えている。
【0027】
ワイヤハーネスWは、図2(b)及び図3に示すように、幹線Wmと、該幹線Wmから分岐する枝線Wbと、を有している。そして、本最良の形態では、幹線Wmから枝線Wbが分岐する分岐点P11〜P15と、幹線Wmを折り曲げる折り曲げ点P16を曲げポイントP1とする場合について説明する。つまり、分岐点P11〜P15に対する曲げポイントP1では、幹線Wmが基準電線、枝線Wbが曲げ対象電線にそれぞれ相当し、また、折り曲げ点P16に対応する曲げポイントP1では、幹線Wmが基準線及び曲げ対象電線に相当している。
【0028】
枝線Wbは、幹線Wm(装着経路)に対して装着角度θbeで分岐(交叉)している。つまり、3次元形状のワイヤハーネスWにおいて、各枝線Wbに対して装着角度θbeがそれぞれ設定されている。装着角度θbeは、カーメーカー等から指示されたワイヤハーネスWの経路に基づいて設計されている。
【0029】
なお、曲げポイントP1については、布線板30(図6参照)内に収まるように折り曲げる折り曲げ点、枝線Wbから孫線が分岐する分岐点P13,14などの種々異なる曲げ対象電線の基準点と設定することができる。そして、支援対象とする曲げポイントP1の設定は、設計者に選択させる、自動的に算出するなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0030】
図4において、クランプ製作方向調整支援装置10は、周知であるパーソナル・コンピュータ(パソコン)を用いており、予め定めたプログラムに従って装置全体の動作の制御などを行う中央演算処理装置(CPU)11を有している。このCPU11には、バスBを介してCPU11のためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM12、CPU11の処理作業に必要な各種データを格納する作業エリア等を有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM13が接続されている。
【0031】
CPU11には、記憶装置14がバスBを介して接続されており、この記憶装置14にはハードディスク装置、大容量のメモリなどが用いられる。記憶装置14は、図5に示すように、クランプ製作方向調整支援プログラムP、経路情報D1、製造情報D2、物性情報D3、クランプ情報D4、等の各種情報を記憶する記憶領域を有している。クランプ製作方向設計支援プログラムPは、CD−ROM等からインストールされたり、ネットワークを介してダウンロードされて記憶装置14に記憶される。
【0032】
クランプ製作方向設計支援プログラムPは、幹線Wmと該幹線Wmから分岐する枝線Wbを有するワイヤハーネスWを相手部材に組み付ける時に用いるクランプC(例えば図7参照)を、前記ワイヤハーネスWに装着するときのクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置10のCPU(コンピュータ)11を、前記幹線Wmにおける前記クランプCの装着位置、該装着位置に隣接する前記枝線Wbの分岐位置、前記枝線Wbの枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段M1と、前記ワイヤハーネスW及び前記クランプCの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段M2と、前記枝線Wbの装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得手段M3と、前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線Wbを前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出手段M4と、前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出手段M5と、前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成手段M6と、して機能させるためのプログラムとなっている。
【0033】
経路情報D1は、図2に示すワイヤハーネスWを示すCAD(computer aided design)などの3次元形状データと、ワイヤハーネスWの回路図データと、前記クランプCのクランプ位置データと、を有している。経路情報D1は、ワイヤハーネスWの品番等に対応して設けられており、布線レイアウトの設計に応じて予め定められたデータベースから取得して記憶したり、記憶装置14に記憶しておくなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0034】
製造情報D2は、製造に用いる布線板30の種類等を示す識別データと、幹線Wm、枝線Wb、クランプC、等の位置を示す位置データと、布線板30の大きさ示す寸法データ(例えば、縦900mm×横1400mmなど)と、布線可能領域データと、を有している。そして、製造情報D2は、ワイヤハーネスWの品番等に対応して設けられている。
製造情報D2は、枝線Wbの装着位置Pb(Xb,Yb,Zb)、幹線Wmの装着位置装着位置Pt(Xt,Yt,Zt)、クランプCの装着位置、装着位置Pc(Xc,Yc,Zc)、等の各種データを有している。
【0035】
物性情報D3は、ワイヤハーネスW及びクランプの品番、サイズ、物性、形状、等の各種データを有している。なお、物性データは、ワイヤハーネスWにおける幹線Wm、枝線Wbの曲げ特性、強度、等を示すデータとなっている。物性情報D3は、経路情報D1に関連付けられている。より詳細には、物性情報D3は、幹線Wmに対応したデータとして、長さLt、直径Dt、ヤング率Et、ポアソン比γt、等のデータを有している。物性情報D3は、枝線Wbに対応したデータとして、長さLb、直径Db、ヤング率Eb、ポアソン比γb、等のデータを有している。物性情報D3は、クランプCに対応したデータとして、サイズDc、形状、強度、等のデータを有している。
【0036】
クランプ情報D4は、ワイヤハーネスWに対するクランプCの製作方向H(図8参照)を示すデータを有している。そして、クランプ情報D4は、例えば、前記クランプCが相手部材に装着されたときに何kgまで耐えることができるかの保持力(クランプにかかる最大の反力)等の最大許容反力Mを示すデータを有している。クランプ情報D4は、物性情報D3に関連付けられている。なお、前記クランプCは、公知であるように、ワイヤハーネスWに装着する装着部と、該装着部の外周面に一体に設けられて車体等の相手部材の挿入口に挿入される挿入部と、を有し、合成樹脂等によって形成されている。
【0037】
また、CPU11には、入力装置15、通信装置16、表示装置17等がバスBを介して接続されている。そして、入力装置15は、キーボード、マウス等を有しており、設計者等の操作に応じた入力データをCPU11に出力する。通信装置16は、LANカード、携帯電話用モデム等の通信機器を用いている。そして、通信装置16は、受信した情報をCPU11に出力するとともに、CPU11から入力された情報を指示された送信先に送信する。
【0038】
表示装置17は、周知である液晶ディスプレイ、CRT等の各種表示器が用いられる。そして、表示装置17は、CPU11の制御によって各種情報を表示する。つまり、表示装置17は、それらの各種情報に基づいて分岐レイアウトの設計を支援する各種画面を表示して、設計者の設計を支援する。
【0039】
次に、幹線Wmに設けたクランプCの近傍で枝線Wbが分岐している構成における製作方向調整の一例を、図7〜8の図面を参照して以下に説明する。
【0040】
図7において、ワイヤハーネスWは、幹線Wmの分岐位置P21で枝線Wbが分岐している。なお、本実施形態では、説明を簡単化するために、複数の中から分岐位置P21についてのみ説明する。そして、幹線Wmにおいて、分岐位置P21の近傍に、クランプCを固定する位置がクランプ位置P31,P32となっている。クランプ製作方向調整支援装置10は、分岐位置P21を中心に、予め定められた調整対象範囲内に収まっているクランプ位置P31,P32を、分岐位置P21に影響を及ぼす位置と判定する。即ち、調整対象範囲とは、枝線Wbの分岐位置に、例えば幹線Wmの捻れ等による影響を及ぼす範囲であり、ワイヤハーネスWの種類等に応じて定められている。
【0041】
図7(a)は、前記調整対象範囲内にクランプ位置P31のみが収まっている場合を示している。図7(b)は、前記調整対象範囲内にクランプ位置P32のみが収まっている場合を示している。そして、図7(c)は、前記調整対象範囲内にクランプ位置P31,P32の双方が収まっていることを示している。なお、本実施形態では、説明を簡単化するために、図7(a)に示す分岐位置P21の近傍にクランプ位置P31のみが存在する場合、つまり、クランプ位置P31のクランプCのクランプ製作方向を調整する場合について以下に説明する。
【0042】
また、図7において、分岐位置P21からクランプ位置P31までの間の幹線Wmの長さは第1距離Lt1、分岐位置P21からクランプ位置P32までの間の幹線Wmの長さは第2距離Lt2となっている。なお、第1距離Lt1と第2距離Lt2とは、等しい距離でも、異なる距離でもよい。さらに、分岐位置P21に対する同一方向(図7中の右方向又は左方向)の分岐位置P21寄りに、複数のクランプCが装着されてもよい。
【0043】
図8及び図9において、分岐位置P21から延びる一点破線が枝製造方向R1を示している。そして、該枝製造方向R1からカーメーカ等から要求された装着位置P41に向けて枝線Wbを曲げた場合、その枝線Wbの配索された経路は略直線状の要求経路Ldとなっており、その分岐角度は装着要求枝分岐角度θedとなっている。そして、該装着要求枝分岐角度θedで分岐位置P21を通る直線が、図8中の二点破線で示す装着要求枝分岐方向R2となっている。
【0044】
しかしながら、分岐位置P21付近の幹線Wmに捻れが生じていたり、枝線Wbの材質等によっては、枝線Wbを装着位置P41に向けて曲げても要求経路Ldのようにはならず、枝線Wbは弓状に曲がった実装着経路Wbとなり、枝製造方向R1からの分岐角度は実装着枝分岐角度θerとなっている。そして、分岐位置P21を通り且つ枝製造方向R1に対して実装着枝分岐角度θerの三点破線が枝線Wbの実装着枝分岐方向R3となっている。
【0045】
このように装着要求枝分岐角度θedと実装着枝分岐角度θerとがずれている場合、クランプ位置P31,P32における各クランプCの製作方向Hを調整することで、装着要求枝分岐角度θedと実装着枝分岐角度θerとのずれを解消することができる。従って、本発明では、装着要求枝分岐角度θedと実装着枝分岐角度θerとの差を、枝装着角度差δとして算出し、該枝装着角度差δに基づいたクランプCのクランプ製作方向H(図8参照)の調整を支援する。
【0046】
次に、実装着枝分岐角度θerの算出方法の一例を説明する。そして、該算出方法として、試験測定方法と公知である有限要素法(FEM)解析とを用いることができる。
【0047】
まず、複数種類(例えば、ワイヤハーネスの種類、材質、構成、等)のワイヤハーネスWに対して、枝製造方向R1から装着位置P41までの装着要求枝分岐角度θedを図10に示すように、例えば0〜80[゜]の角度範囲で段階的に変化させる。そして、変化させた各角度で、実際に枝線Wbを曲げて装着した場合の実装着枝分岐角度θerを測定して、その測定結果を装着要求枝分岐角度θedに関連付けて収集する。なお、図10において、縦軸は装着要求枝分岐角度θed[゜]、横軸は実装着枝分岐角度θer[゜]をそれぞれ示している。
【0048】
このように測定した測定結果を、表1に示すように、ワイヤハーネスWの種類、品番、等に対応し且つ枝線Wbの分岐位置P21とクランプ位置P31,P32(少なくとも一方)との位置関係と装着要求枝分岐角度θedに関連付けられ、データベース化された測定情報DB1として記憶装置14等に記憶される。即ち、該測定情報DB1は、表1に示すように、枝属性と幹属性とクランプ属性とに分類されており、それらに実装着枝分岐角度θerを関連付けている。
【0049】
【表1】
【0050】
該測定情報DB1の各属性は、上述したパラメータによって構成している。よって、該測定情報DB1から実装着枝分岐角度θerを抽出する場合は、各属性の中から検出対象となるワイヤハーネスW及びクランプCに類似した属性の項目(No)を選択し、その中から装着要求枝分岐角度θedに対応した実装着枝分岐角度θerを抽出する。
【0051】
なお、本実施形態では、測定情報DB1を用いて実装着枝分岐角度θerを求める場合について説明するが、上述したパラメータから実装着枝分岐角度θerを算出するソフトウェアを用いるなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0052】
例えば、FEM解析ソフトウェアを用いて、実装着枝分岐角度θerを算出することができる。該FEM解析は、設計対象物を数学的にモデル化し、その数学モデルに関する挙動を解析するシミュレーションである。そして、FEM解析を用いて計算された線状物体の形状は、解析の過程で線状物体の捻れや曲げなどの力学的影響が考慮されるので、実際の線状物体が取り付けられたときの形状に非常に近い形状を再現できることが知られている。そして、FEM解析ソフトウェアは、FEM大変形解析によって実装着枝分岐角度θerを求めるように変更することで対応する。
【0053】
クランプ製作方向調整支援装置10は、装着要求枝分岐角度θedとワイヤハーネスWの各種パラメータを取得すると、実装着枝分岐角度θerを算出し、装着要求枝分岐角度θedから実装着枝分岐角度θerを差し引いて枝装着角度差δ(=θed−θer)を算出する。そして、該枝装着角度差δが、予め定められた許容範囲(例えば、|δ|≦10[゜]など)内に収まっていない場合、クランプCの製作方向Hを調整するのが望ましい。なお、幹線Wmの分岐位置P21付近に捻れが生じているのは理想的ではないが、許容範囲内で取り付ける場合は、多少の捻れが生じていてもよい。
【0054】
そこで、クランプCの製作方向Hの調整を支援する一例を以下に説明する。
まず、支援方法の1つとしては、算出した枝装着角度差δと前記許容範囲を表示することで、設計者等にクランプCの製作方向Hを調整させる方法があり、この場合は設計者等の経験と調整時間等の依存度が高くなってしまう。
【0055】
この方法に対し、クランプ製作方向調整支援装置10が図11に示す調整角度dθを算出し、該調整角度dθに基づいてクランプCの製作方向Hの調整を支援する方法がある。この支援方法の一例を以下に説明する。
【0056】
クランプ製作方向調整支援装置10は、上述したように算出した枝装着角度差δが前記許容範囲内に収まっていない場合、クランプCの製作方向Hをずらして幹線Wmの分岐位置P21付近の捻れ量等をFEM解析ソフトウェアによってシミュレート(模擬)し、分岐位置P21からクランプ位置P31,P32までの幹線Wmにおけるモーメントを考慮して、上述したように枝線Wbを曲げて実装着枝分岐角度θerを算出する。そして、クランプ製作方向調整支援装置10は、該算出した実装着枝分岐角度θerから枝装着角度差δを算出し、該枝装着角度差δが前記許容範囲内に収まったか否かを判定する。クランプ製作方向調整支援装置10は、クランプCの製作方向Hをずらしながら、上述した処理を繰り返すことで、前記許容範囲内に収まった枝装着角度差δから調整角度dθを求める。なお、調整角度dθは、前記許容範囲内に収まった角度範囲とすることもできる。
【0057】
次に、上述したCPU11がクランプ製作方向調整支援プログラムPを実行したときの製作方向調整支援処理の一例を、図12のフローチャートを参照して以下に説明する。なお、説明を簡単化するために、図8に示すように、枝線Wbの一方の近傍にクランプ装着位置P21がある場合について説明する。
【0058】
CPU11は、記憶装置14に記憶しているクランプ製作方向調整支援プログラムPを実行すると、ステップS11(製造情報取得手段に相当)において、設計支援対象のワイヤハーネスWに対応した経路情報D1及び製造情報D2を記憶装置14等から取得してRAM13に記憶し、その後ステップS12の処理に進む。なお、設計支援対象のワイヤハーネスWは、表示装置17に入力画面、選択画面、等を表示させて、設計者等に入力、選択させる。
【0059】
CPU11は、ステップS12(物性情報取得手段に相当)において、前記取得した製造情報D2に関連付けられた物性情報D3を記憶装置14等から取得してRAM13に記憶し、ステップS13(装着要求枝分岐角度取得手段に相当)において、前記取得した物性情報D3に関連付けられたクランプ情報D4を記憶装置14等から取得し、該クランプ情報D4に対応した装着要求枝分岐角度θedを取得してRAM13に記憶し、その後ステップS14の処理に進む。なお、装着要求枝分岐角度θedは、入力画面等を表示装置17に表示させて、設計者等に入力させることを前提としている。
【0060】
CPU11は、ステップS14(実装着枝分岐角度算出手段に相当)において、上述した実装着枝分岐角度θerの算出方法により、取得した装着要求枝分岐角度θedに対応した実装着枝分岐角度θerを算出してRAM13に記憶し、その後ステップS15の処理に進む。
【0061】
CPU11は、ステップS15(枝装着角度差算出手段に相当)において、装着要求枝分岐角度θedから実装着枝分岐角度θerを差し引いて枝装着角度差δを算出してRAM13に記憶し、ステップS16において、該枝装着角度差δが前記許容範囲内であるか否かを判定する。CPU11は、前記許容範囲内であると判定した場合(S16でYes)、ステップS19の処理に進む。一方、CPU11は、前記許容範囲内ではないと判定した場合(S16でNo)、ステップS17の処理に進む。
【0062】
CPU11は、ステップS17において、製造方向Hを予め定められた変更法則で変更して1又は複数の装着方向Vを求め、その後ステップS18の処理に進む。なお、以下の説明では、複数の装着方向Vを用いて製作方向Vの調整を行う場合について説明する。また、複数の変更法則の一例としては、製造方向Hを所定の方向に向かって予め定められた単位角度だけずらして装着方向Vを求め、その次は、この装着方向Vに前記単位角度を加算して新たな装着方向Vを求める。このような変更を予め定められた所定の範囲にわたって行う。なお、1つの装着方向Vを求める場合は、例えば製造方向Hに前記単位角度を加算して装着方向Vを求める。
【0063】
CPU11は、ステップS18(調整角度算出手段に相当)において、調整角度算出処理を実行することで、複数の装着方向Vの各々に対して、幹線Wmの分岐位置P21付近の捻れ量等をFEM解析ソフトウェアによってシミュレート(模擬)し、その模擬状態で上述したように枝線Wbを曲げたときの実装着枝分岐角度θerを算出し、それらの実装着枝分岐角度θerの各々が前記許容範囲内に収まっているか否かを判定すると共に、製作方向Hと装着方向Vとの差を調整角度dθとして算出する。そして、CPU11は、複数の装着方向Vと判定結果と調整角度dθとを関連付けてRAM13に記憶し、その後ステップS19の処理に進む。
【0064】
CPU11は、ステップS19(支援情報生成手段に相当)において、ステップS18の判定結果とその調整角度dθと調整前の枝装着角度差δとに基づいて、クランプCの製作方向Hの調整を支援するための支援情報をRAM13に生成し、該支援情報の表示要求を表示装置17に出力することで、表示装置17によって支援情報が表示され、その後本フローチャートの処理を終了する。なお、支援情報の一例としては、図11に示すように、クランプCの製作方向Cに対する調整可能範囲として調整角度dθを表示する、複数の調整角度dθと判定結果を一覧表として表示する、等の種々異なる表示形態で製作方向Hの調整を支援するための情報となっている。
【0065】
以上の説明からも明らかなように、CPU11がクランプ製作方向調整支援プログラムPを実行することで、図1に示す請求項中の製造情報取得手段M1、物性情報取得手段M2、装着要求枝分岐角度取得手段M3、実装着枝分岐角度算出手段M4、枝装着角度差算出手段M5、支援情報生成手段M6、調整角度支援算出手段M7、等の各種手段としてCPU11(コンピュータ)が機能することになる。
【0066】
次に、上述したクランプ製作方向調整支援装置10の動作(作用)の一例を以下に説明する。
【0067】
クランプ製作方向調整支援装置10は、設計者等に起動されると、設計者に設計支援対象のワイヤハーネスWを識別するための識別情報等を入力させる。そして、クランプ製作方向調整支援装置10は、ワイヤハーネスWにおける複数の枝線Wbの中から、調整対象の枝線Wbを特定し、該特定した枝線Wbに対したクランプCの製作方向H、枝線Wbの装着位置P41、等の各種データを取得するために、経路情報D1、製造情報D2、物性情報D3、クランプ情報D4、等を収集する。
【0068】
クランプ製作方向調整支援装置10は、経路情報D1に基づいて、幹線Wmにおける枝線Wbの分岐位置P21とその近辺に装着されるクランプCのクランプ位置P31,P32から、それらの相対位置関係等を特定する。そして、クランプ製作方向調整支援装置10は、対象となる枝線Wbに対して実装着枝分岐角度θerを算出し、装着要求枝分岐角度θedと実装着枝分岐角度θerとの枝装着角度差δを算出し、該枝装着角度差δが前記許容範囲内に収まっているか否かを判定する。
【0069】
クランプ製作方向調整支援装置10は、枝装着角度差δが前記許容範囲内に収まっていると判定した場合、その判定結果を示す支援情報を生成して表示装置17から設計者等に対して出力する。これにより、設計者等はその支援情報を参照することで、幹線Wmにおける分岐位置P21の近傍に位置するクランプCの製作方向Hを調整する必要がないことを確認できるため、この製作方向Hをそのまま装着方向Vとすることができる。
【0070】
また、クランプ製作方向調整支援装置10は、枝装着角度差δが前記許容範囲内に収まっていないと判定した場合、上述したように現状の製作方向Hを変更して調整角度dθを算出する。そして、クランプ製作方向調整支援装置10は、算出した調整角度dθと判定結果と調整前の枝装着角度差δとに基づいて、クランプCの製作方向Hの調整を支援するための支援情報を生成し、該支援情報を表示装置17から設計者等に対して出力する。これにより、設計者等はその支援情報を参照することで、クランプCの製作方向Hを変更する必要があることを認識できる。そして、設計者等は調整角度dθに基づいてクランプCの製作方向Hを変更して装着方向Vとする。このような処理を幹線Wmにおける他の複数の分岐位置の各々に対しても前記枝装着角度差δを算出して支援を行う。
【0071】
以上説明したクランプ製作方向調整支援装置10によれば、枝線Wbを装着位置(枝装着位置)P41に実装したときの実装着枝分岐角度θerと装着要求枝分岐角度θedとの枝装着角度差δを算出し、該枝装着角度差δに基づいてクランプCの製作方向Hの調整を支援するようにしたことから、装着要求枝分岐角度θedと実装着枝分岐角度θerとの枝装着角度差δを設計者等に認識させて、クランプ製作方向Hの調整を支援することができる。従って、設計者等はその枝装着角度差δを小さくするようにクランプ製作方向Hを調整することができることから、要求された枝線Wbの要求経路Ldと実際の装着経路Lrとが異なって、幹線Wmに過剰な捻れが生じることを防止でき、且つ、クランプCに多大な負荷がかかってしまうことを防止できるため、ワイヤハーネスWを実装するのが容易となり、ワイヤハーネスWの生産性(実装効率)の低下防止に貢献することができる。
【0072】
また、クランプ製作方向調整支援装置10によれば、クランプCの装着位置P31,P32から枝線Wbの分岐位置P21までの間の幹線Wmの距離と幹線Wbの直径と枝装着角度差δとに基づいてクランプ製作方向Hの調整角度dθを算出し、該調整角度dθに基づいた支援情報を生成するようにしたことから、設計者等は支援情報を参照することで、クランプの製作方向Hをどの方向にどれだけずらせば良いのかを、容易且つ正確に判断することができる。
【0073】
なお、上述した本実施形態では、幹線Wmにおける分岐位置P21の一方側の近傍にのみクランプ位置P31が存在する場合について説明した。これに対し、分岐位置P21の両側にクランプ位置P31,P32が存在する場合、幹線Wmにおける分岐位置P21からクランプ位置P31,P32の各々に対する幹モーメント等を考慮して、実装着枝分岐角度θerを算出し、そして、前記枝装着角度差δを算出して支援を行う。
【0074】
また、上述したクランプ製作方向調整支援装置10では、枝装着角度差δから調整角度dθを算出し、この調整角度dθに基づいて製造方向Hの調整を支援する場合について説明した。これに代えて、設計者の経験が豊富な場合、等では、クランプ製作方向調整支援装置10が算出した枝装着角度差δに基づいて前記調整を支援することもできる。
【0075】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 クランプ製作方向調整支援装置
M1 製造情報取得手段
M2 物性情報取得手段
M3 装着要求枝分岐角度取得手段
M4 実装着枝分岐角度算出手段
M5 枝装着角度差算出手段
M6 支援情報生成手段
M7 調整角度算出手段
C クランプ
W ワイヤハーネス
Wm 幹線
Wb 枝線
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置、クランプ製作方向調整支援方法、及び、クランプ製作方向調整支援プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車などには、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車などは、前記電子機器に電源などからの電力やコンピュータなどからの制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、該電線の端部などに取り付けられたコネクタなどを備えている。
【0003】
電線は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを備えている。電線は、所謂被覆電線である。コネクタは、導電性の端子金具と絶縁性のコネクタハウジングとを備えている。端子金具は、電線の端部などに取りつけられかつ該電線の芯線と電気的に接続する。コネクタハウジングは、箱状に形成されかつ端子金具を収容する。
【0004】
前記ワイヤハーネスを組み立てる際には、まず電線を所定の長さに切断した後、該電線の端部などに端子金具を取り付ける。必要に応じて電線同士を接続する。その後、端子金具をコネクタハウジング内に挿入する。こうして、前述したワイヤハーネスを組み立てる。
【0005】
ワイヤハーネスの設計は、該ワイヤハーネスが配索される車両等の設計進行と平行して準備される。通常、ワイヤハーネスの経路レイアウトは車両等のメーカ(単に、カーメーカとよぶ)から要望が出され、これを受けた部品メーカがその要望を満たすワイヤハーネスを製造治具を用いて製造する。そして、頻繁に発生する設計変更に的確に対応し、布線板レイアウト及びこれにともなう経路レイアウト案の設計効率を向上させるワイヤハーネスの設計支援システム等が特許文献1に記載されている。
【0006】
また、図13は、従来のワイヤハーネスの製造治具の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0007】
この製造治具41は、長方形の幅広の基板42と、基板42上に立設された複数の布線治具43と、基板42に隣接して配置された部品棚44と、部品棚44上の部品ケース45とを少なくとも備えたものである。基板42と複数の布線治具43とで布線板46が構成されている。
【0008】
布線板46は脚部47で傾斜状に支持されている。これは、作業者が奥行きの広い布線板46に対して電線48の布線作業を容易に且つ効率良く行えるようにするためである。布線板46を傾斜させない場合には奥側の布線治具43まで手が届かず、布線作業性が悪い。なお、奥行きの狭い布線板については傾斜状でなく水平に配置する。
【0009】
布線とは電線48を一本づつ各布線治具43に沿って所要形状に配線することである。布線された複数本の電線48には保護チューブ49やプロテクタ等の部品が装着される。各電線48の端末には端子(図示せず)が圧着されており、各端子はコネクタハウジング内に挿入され、コネクタハウジングと端子とでコネクタ50が構成される。さらに、複数本の電線48がビニルテープ51で集束されて、ワイヤハーネス52が完成する。
【0010】
このように完成したワイヤハーネス52は、自動車等に実装する場合、特許文献2等に示すクランプを用いて自動車等のパネルに取り付けることが知られている。詳細には、ワイヤハーネスの複数箇所にクランプを装着し、各クランプをパネルの配索経路に設けられた取り付け孔に取り付けることで、ワイヤハーネスをパネルに取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−46815号公報
【特許文献2】特開2006−191755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ワイヤハーネスを製造する場合、カーメーカー等からの製造条件のもとで製造している。そして、ワイヤハーネスの幹線をクランプで固定する場合、その近くで幹線から枝線が分岐していると、クランプの装着方向によっては、製造条件として要求された装着要求枝分岐角度と枝線を実装したときの実装着枝分岐角度とが一致しないために、要求された枝線の要求経路と実際の装着経路とが異なってしまうという問題が生じていた。そして、このような問題が生じた状態で幹線をクランプで固定すると、幹線に過剰な捻れが生じるとともに、クランプに多大な負荷がかかってしまうという問題が生じてしまうため、ワイヤハーネスを実装するのが困難となり、生産性を低下させてしまう。
【0013】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、ワイヤハーネスに対するクランプの製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置、クランプ製作方向調整支援方法、及び、クランプ製作方向調整支援プログラムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載のクランプ製作方向調整支援装置は、図1の基本構成図に示すように、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置であって、前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段M1と、前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段M2と、前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得手段M3と、前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出手段M4と、前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出手段M5と、前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成手段M6と、を有することを特徴とする。
【0015】
上記請求項1に記載した本発明のクランプ製作方向調整支援装置によれば、製造情報取得手段M1によって製造情報、物性情報取得手段M2によって物性情報、装着要求枝分岐角度取得手段M3によって装着要求枝分岐角度がそれぞれ取得されると、枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度が、実装着枝分岐角度算出手段M4によってそれらの情報に基づいて算出される。そして、取得した装着要求枝分岐角度と算出した実装着枝分岐角度との枝装着角度差が枝装着角度差算出手段M5によって算出されると、該枝装着角度差に基づいてクランプのクランプ製作方向の調整を支援するための支援情報が支援情報生成手段M6によって生成されて、調整を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に出力される。なお、本発明のクランプ製作方向とは、クランプをワイヤハーネスに取り付ける(装着する)クランプ方向である。そして、クランプ製作方向は、クランプを車体等に装着する装着方向とは異なる方向となっている。
【0016】
請求項2記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1に記載のクランプ製作方向調整支援装置において、前記装着位置から前記分岐位置までの間の前記幹線の距離と前記幹線の直径と前記枝装着角度差とに基づいて、前記クランプ製作方向の調整角度を算出する調整角度算出手段M7を有し、前記支援情報生成手段M6が、前記算出した調整角度に基づいて前記支援情報を生成して出力する手段であることを特徴とする。
【0017】
上記請求項2に記載した本発明のクランプ製作方向調整支援装置によれば、クランプの装着位置から枝線の分岐位置までの間の幹線の距離と幹線の直径と枝装着角度差とに基づいて、クランプ製作方向の調整角度が調整角度算出手段M7によって算出されると、該算出した調整角度に基づいた支援情報が支援情報生成手段M6によって生成されて出力される。
【0018】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項3記載のクランプ製作方向調整支援方法は、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援方法であって、前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得工程と、前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得工程と、前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得工程と、前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出工程と、前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出工程と、前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
上記請求項3に記載した本発明のクランプ製作方向調整支援方法によれば、製造情報、物性情報、装着要求枝分岐角度をそれぞれ取得すると、枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を、それらの情報に基づいて算出する。そして、取得した装着要求枝分岐角度と算出した実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出すると、該枝装着角度差に基づいてクランプのクランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成し、クランプ製作方向の調整を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に支援情報を出力する。
【0020】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項4記載のクランプ製作方向設計支援プログラムは、図1の基本構成図に示すように、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置のコンピュータを、前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段M1と、前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段M2と、前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得手段M3と、前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出手段M4と、前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出手段M5と、前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成手段M6として機能させるためのクランプ製作方向調整支援プログラムである。
【0021】
上記請求項4に記載した本発明のクランプ製作方向設計支援プログラムを実行したコンピュータは、製造情報、物性情報、装着要求枝分岐角度をそれぞれ取得すると、枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を、それらの情報に基づいて算出する。そして、取得した装着要求枝分岐角度と算出した実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出すると、該枝装着角度差に基づいてクランプのクランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成し、クランプ製作方向の調整を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に支援情報を出力する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した本発明によれば、枝線を枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度と装着要求枝分岐角度との枝装着角度差を算出し、該枝装着角度差に基づいてクランプ製作方向の調整を支援するようにしたことから、装着要求枝分岐角度と実装着枝分岐角度との枝装着角度差を設計者等に認識させて、クランプ製作方向の調整を支援することができる。従って、設計者等はその枝装着角度差を小さくするようにクランプ製作方向を調整することができることから、要求された枝線の要求経路と実際の装着経路とが異なって、幹線に過剰な捻れが生じることを防止でき、且つ、クランプに多大な負荷がかかってしまうことを防止できるため、ワイヤハーネスを実装するのが容易となり、ワイヤハーネスの生産性(実装効率)の低下防止に貢献することができる。
【0023】
また、クランプの装着位置から枝線の分岐位置までの間の幹線の距離と幹線の直径と枝装着角度差とに基づいてクランプ製作方向の調整角度を算出し、該調整角度に基づいた支援情報を生成するようにしたことから、設計者等は支援情報を参照することで、クランプの製作方向をどの方向にどれだけずらせば良いのかを、容易且つ正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るクランプ製作方向調整支援装置の基本構成を示す構成図である。
【図2】ワイヤハーネスの3次元形状の一例を示すで図であり、(a)は全体図、(b)は(a)中の部分Aの拡大図をそれぞれ示している。
【図3】本発明に係る幹線、枝線、曲げポイントを説明するための図である。
【図4】クランプ製作方向調整支援装置の概略構成の一例を示す構成図である。
【図5】クランプ製作方向調整支援プログラムと各種情報の一例を説明するための図である。
【図6】ワイヤハーネスを布線板に展開したときの布線平面形を示す布線レイアウトの一例を示す図である。
【図7】幹線におけるクランプの装着位置と枝線に分岐位置との関係を説明するための図であり、(a)は分岐位置の左側にのみ装着位置がある場合、(b)は分岐位置の右側にのみ装着位置がある場合、(c)は分岐位置の両側に装着位置がある場合をそれぞれ示している。
【図8】分岐位置と装着位置の本発明にかかる状態を説明するための図である。
【図9】枝線の装着要求枝分岐角度と実装着枝分岐角度とを説明するための図である。
【図10】装着要求枝分岐角度と実装着枝分岐角度との測定例を説明するためのグラフである。
【図11】クランプの製作方向の調整を説明するための図である。
【図12】図4中のCPUが実行する製作方向調整支援処理の一例を示すフローチャートである。
【図13】従来の布線治具を用いた布線装置の一形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るクランプ製作方向調整支援装置を用いてワイヤハーネス(W/H)を布線板に展開したときの布線平面形を示す布線レイアウトの設計を支援する場合の一実施の形態を、図2〜図12の図面を参照して説明する。
【0026】
ワイヤハーネスWは、図2(a)に示すように、3次元形状(立体形状)で車両等に配索される。ワイヤハーネスWは、複数の電線(電線束)W1と、該電線W1の端部などに取り付けられるコネクタW2と、を有している。電線W1は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを備えている。コネクタW2は、導電性の端子金具と絶縁性のコネクタハウジングとを備えている。
【0027】
ワイヤハーネスWは、図2(b)及び図3に示すように、幹線Wmと、該幹線Wmから分岐する枝線Wbと、を有している。そして、本最良の形態では、幹線Wmから枝線Wbが分岐する分岐点P11〜P15と、幹線Wmを折り曲げる折り曲げ点P16を曲げポイントP1とする場合について説明する。つまり、分岐点P11〜P15に対する曲げポイントP1では、幹線Wmが基準電線、枝線Wbが曲げ対象電線にそれぞれ相当し、また、折り曲げ点P16に対応する曲げポイントP1では、幹線Wmが基準線及び曲げ対象電線に相当している。
【0028】
枝線Wbは、幹線Wm(装着経路)に対して装着角度θbeで分岐(交叉)している。つまり、3次元形状のワイヤハーネスWにおいて、各枝線Wbに対して装着角度θbeがそれぞれ設定されている。装着角度θbeは、カーメーカー等から指示されたワイヤハーネスWの経路に基づいて設計されている。
【0029】
なお、曲げポイントP1については、布線板30(図6参照)内に収まるように折り曲げる折り曲げ点、枝線Wbから孫線が分岐する分岐点P13,14などの種々異なる曲げ対象電線の基準点と設定することができる。そして、支援対象とする曲げポイントP1の設定は、設計者に選択させる、自動的に算出するなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0030】
図4において、クランプ製作方向調整支援装置10は、周知であるパーソナル・コンピュータ(パソコン)を用いており、予め定めたプログラムに従って装置全体の動作の制御などを行う中央演算処理装置(CPU)11を有している。このCPU11には、バスBを介してCPU11のためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM12、CPU11の処理作業に必要な各種データを格納する作業エリア等を有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM13が接続されている。
【0031】
CPU11には、記憶装置14がバスBを介して接続されており、この記憶装置14にはハードディスク装置、大容量のメモリなどが用いられる。記憶装置14は、図5に示すように、クランプ製作方向調整支援プログラムP、経路情報D1、製造情報D2、物性情報D3、クランプ情報D4、等の各種情報を記憶する記憶領域を有している。クランプ製作方向設計支援プログラムPは、CD−ROM等からインストールされたり、ネットワークを介してダウンロードされて記憶装置14に記憶される。
【0032】
クランプ製作方向設計支援プログラムPは、幹線Wmと該幹線Wmから分岐する枝線Wbを有するワイヤハーネスWを相手部材に組み付ける時に用いるクランプC(例えば図7参照)を、前記ワイヤハーネスWに装着するときのクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置10のCPU(コンピュータ)11を、前記幹線Wmにおける前記クランプCの装着位置、該装着位置に隣接する前記枝線Wbの分岐位置、前記枝線Wbの枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段M1と、前記ワイヤハーネスW及び前記クランプCの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段M2と、前記枝線Wbの装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得手段M3と、前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線Wbを前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出手段M4と、前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出手段M5と、前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成手段M6と、して機能させるためのプログラムとなっている。
【0033】
経路情報D1は、図2に示すワイヤハーネスWを示すCAD(computer aided design)などの3次元形状データと、ワイヤハーネスWの回路図データと、前記クランプCのクランプ位置データと、を有している。経路情報D1は、ワイヤハーネスWの品番等に対応して設けられており、布線レイアウトの設計に応じて予め定められたデータベースから取得して記憶したり、記憶装置14に記憶しておくなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0034】
製造情報D2は、製造に用いる布線板30の種類等を示す識別データと、幹線Wm、枝線Wb、クランプC、等の位置を示す位置データと、布線板30の大きさ示す寸法データ(例えば、縦900mm×横1400mmなど)と、布線可能領域データと、を有している。そして、製造情報D2は、ワイヤハーネスWの品番等に対応して設けられている。
製造情報D2は、枝線Wbの装着位置Pb(Xb,Yb,Zb)、幹線Wmの装着位置装着位置Pt(Xt,Yt,Zt)、クランプCの装着位置、装着位置Pc(Xc,Yc,Zc)、等の各種データを有している。
【0035】
物性情報D3は、ワイヤハーネスW及びクランプの品番、サイズ、物性、形状、等の各種データを有している。なお、物性データは、ワイヤハーネスWにおける幹線Wm、枝線Wbの曲げ特性、強度、等を示すデータとなっている。物性情報D3は、経路情報D1に関連付けられている。より詳細には、物性情報D3は、幹線Wmに対応したデータとして、長さLt、直径Dt、ヤング率Et、ポアソン比γt、等のデータを有している。物性情報D3は、枝線Wbに対応したデータとして、長さLb、直径Db、ヤング率Eb、ポアソン比γb、等のデータを有している。物性情報D3は、クランプCに対応したデータとして、サイズDc、形状、強度、等のデータを有している。
【0036】
クランプ情報D4は、ワイヤハーネスWに対するクランプCの製作方向H(図8参照)を示すデータを有している。そして、クランプ情報D4は、例えば、前記クランプCが相手部材に装着されたときに何kgまで耐えることができるかの保持力(クランプにかかる最大の反力)等の最大許容反力Mを示すデータを有している。クランプ情報D4は、物性情報D3に関連付けられている。なお、前記クランプCは、公知であるように、ワイヤハーネスWに装着する装着部と、該装着部の外周面に一体に設けられて車体等の相手部材の挿入口に挿入される挿入部と、を有し、合成樹脂等によって形成されている。
【0037】
また、CPU11には、入力装置15、通信装置16、表示装置17等がバスBを介して接続されている。そして、入力装置15は、キーボード、マウス等を有しており、設計者等の操作に応じた入力データをCPU11に出力する。通信装置16は、LANカード、携帯電話用モデム等の通信機器を用いている。そして、通信装置16は、受信した情報をCPU11に出力するとともに、CPU11から入力された情報を指示された送信先に送信する。
【0038】
表示装置17は、周知である液晶ディスプレイ、CRT等の各種表示器が用いられる。そして、表示装置17は、CPU11の制御によって各種情報を表示する。つまり、表示装置17は、それらの各種情報に基づいて分岐レイアウトの設計を支援する各種画面を表示して、設計者の設計を支援する。
【0039】
次に、幹線Wmに設けたクランプCの近傍で枝線Wbが分岐している構成における製作方向調整の一例を、図7〜8の図面を参照して以下に説明する。
【0040】
図7において、ワイヤハーネスWは、幹線Wmの分岐位置P21で枝線Wbが分岐している。なお、本実施形態では、説明を簡単化するために、複数の中から分岐位置P21についてのみ説明する。そして、幹線Wmにおいて、分岐位置P21の近傍に、クランプCを固定する位置がクランプ位置P31,P32となっている。クランプ製作方向調整支援装置10は、分岐位置P21を中心に、予め定められた調整対象範囲内に収まっているクランプ位置P31,P32を、分岐位置P21に影響を及ぼす位置と判定する。即ち、調整対象範囲とは、枝線Wbの分岐位置に、例えば幹線Wmの捻れ等による影響を及ぼす範囲であり、ワイヤハーネスWの種類等に応じて定められている。
【0041】
図7(a)は、前記調整対象範囲内にクランプ位置P31のみが収まっている場合を示している。図7(b)は、前記調整対象範囲内にクランプ位置P32のみが収まっている場合を示している。そして、図7(c)は、前記調整対象範囲内にクランプ位置P31,P32の双方が収まっていることを示している。なお、本実施形態では、説明を簡単化するために、図7(a)に示す分岐位置P21の近傍にクランプ位置P31のみが存在する場合、つまり、クランプ位置P31のクランプCのクランプ製作方向を調整する場合について以下に説明する。
【0042】
また、図7において、分岐位置P21からクランプ位置P31までの間の幹線Wmの長さは第1距離Lt1、分岐位置P21からクランプ位置P32までの間の幹線Wmの長さは第2距離Lt2となっている。なお、第1距離Lt1と第2距離Lt2とは、等しい距離でも、異なる距離でもよい。さらに、分岐位置P21に対する同一方向(図7中の右方向又は左方向)の分岐位置P21寄りに、複数のクランプCが装着されてもよい。
【0043】
図8及び図9において、分岐位置P21から延びる一点破線が枝製造方向R1を示している。そして、該枝製造方向R1からカーメーカ等から要求された装着位置P41に向けて枝線Wbを曲げた場合、その枝線Wbの配索された経路は略直線状の要求経路Ldとなっており、その分岐角度は装着要求枝分岐角度θedとなっている。そして、該装着要求枝分岐角度θedで分岐位置P21を通る直線が、図8中の二点破線で示す装着要求枝分岐方向R2となっている。
【0044】
しかしながら、分岐位置P21付近の幹線Wmに捻れが生じていたり、枝線Wbの材質等によっては、枝線Wbを装着位置P41に向けて曲げても要求経路Ldのようにはならず、枝線Wbは弓状に曲がった実装着経路Wbとなり、枝製造方向R1からの分岐角度は実装着枝分岐角度θerとなっている。そして、分岐位置P21を通り且つ枝製造方向R1に対して実装着枝分岐角度θerの三点破線が枝線Wbの実装着枝分岐方向R3となっている。
【0045】
このように装着要求枝分岐角度θedと実装着枝分岐角度θerとがずれている場合、クランプ位置P31,P32における各クランプCの製作方向Hを調整することで、装着要求枝分岐角度θedと実装着枝分岐角度θerとのずれを解消することができる。従って、本発明では、装着要求枝分岐角度θedと実装着枝分岐角度θerとの差を、枝装着角度差δとして算出し、該枝装着角度差δに基づいたクランプCのクランプ製作方向H(図8参照)の調整を支援する。
【0046】
次に、実装着枝分岐角度θerの算出方法の一例を説明する。そして、該算出方法として、試験測定方法と公知である有限要素法(FEM)解析とを用いることができる。
【0047】
まず、複数種類(例えば、ワイヤハーネスの種類、材質、構成、等)のワイヤハーネスWに対して、枝製造方向R1から装着位置P41までの装着要求枝分岐角度θedを図10に示すように、例えば0〜80[゜]の角度範囲で段階的に変化させる。そして、変化させた各角度で、実際に枝線Wbを曲げて装着した場合の実装着枝分岐角度θerを測定して、その測定結果を装着要求枝分岐角度θedに関連付けて収集する。なお、図10において、縦軸は装着要求枝分岐角度θed[゜]、横軸は実装着枝分岐角度θer[゜]をそれぞれ示している。
【0048】
このように測定した測定結果を、表1に示すように、ワイヤハーネスWの種類、品番、等に対応し且つ枝線Wbの分岐位置P21とクランプ位置P31,P32(少なくとも一方)との位置関係と装着要求枝分岐角度θedに関連付けられ、データベース化された測定情報DB1として記憶装置14等に記憶される。即ち、該測定情報DB1は、表1に示すように、枝属性と幹属性とクランプ属性とに分類されており、それらに実装着枝分岐角度θerを関連付けている。
【0049】
【表1】
【0050】
該測定情報DB1の各属性は、上述したパラメータによって構成している。よって、該測定情報DB1から実装着枝分岐角度θerを抽出する場合は、各属性の中から検出対象となるワイヤハーネスW及びクランプCに類似した属性の項目(No)を選択し、その中から装着要求枝分岐角度θedに対応した実装着枝分岐角度θerを抽出する。
【0051】
なお、本実施形態では、測定情報DB1を用いて実装着枝分岐角度θerを求める場合について説明するが、上述したパラメータから実装着枝分岐角度θerを算出するソフトウェアを用いるなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0052】
例えば、FEM解析ソフトウェアを用いて、実装着枝分岐角度θerを算出することができる。該FEM解析は、設計対象物を数学的にモデル化し、その数学モデルに関する挙動を解析するシミュレーションである。そして、FEM解析を用いて計算された線状物体の形状は、解析の過程で線状物体の捻れや曲げなどの力学的影響が考慮されるので、実際の線状物体が取り付けられたときの形状に非常に近い形状を再現できることが知られている。そして、FEM解析ソフトウェアは、FEM大変形解析によって実装着枝分岐角度θerを求めるように変更することで対応する。
【0053】
クランプ製作方向調整支援装置10は、装着要求枝分岐角度θedとワイヤハーネスWの各種パラメータを取得すると、実装着枝分岐角度θerを算出し、装着要求枝分岐角度θedから実装着枝分岐角度θerを差し引いて枝装着角度差δ(=θed−θer)を算出する。そして、該枝装着角度差δが、予め定められた許容範囲(例えば、|δ|≦10[゜]など)内に収まっていない場合、クランプCの製作方向Hを調整するのが望ましい。なお、幹線Wmの分岐位置P21付近に捻れが生じているのは理想的ではないが、許容範囲内で取り付ける場合は、多少の捻れが生じていてもよい。
【0054】
そこで、クランプCの製作方向Hの調整を支援する一例を以下に説明する。
まず、支援方法の1つとしては、算出した枝装着角度差δと前記許容範囲を表示することで、設計者等にクランプCの製作方向Hを調整させる方法があり、この場合は設計者等の経験と調整時間等の依存度が高くなってしまう。
【0055】
この方法に対し、クランプ製作方向調整支援装置10が図11に示す調整角度dθを算出し、該調整角度dθに基づいてクランプCの製作方向Hの調整を支援する方法がある。この支援方法の一例を以下に説明する。
【0056】
クランプ製作方向調整支援装置10は、上述したように算出した枝装着角度差δが前記許容範囲内に収まっていない場合、クランプCの製作方向Hをずらして幹線Wmの分岐位置P21付近の捻れ量等をFEM解析ソフトウェアによってシミュレート(模擬)し、分岐位置P21からクランプ位置P31,P32までの幹線Wmにおけるモーメントを考慮して、上述したように枝線Wbを曲げて実装着枝分岐角度θerを算出する。そして、クランプ製作方向調整支援装置10は、該算出した実装着枝分岐角度θerから枝装着角度差δを算出し、該枝装着角度差δが前記許容範囲内に収まったか否かを判定する。クランプ製作方向調整支援装置10は、クランプCの製作方向Hをずらしながら、上述した処理を繰り返すことで、前記許容範囲内に収まった枝装着角度差δから調整角度dθを求める。なお、調整角度dθは、前記許容範囲内に収まった角度範囲とすることもできる。
【0057】
次に、上述したCPU11がクランプ製作方向調整支援プログラムPを実行したときの製作方向調整支援処理の一例を、図12のフローチャートを参照して以下に説明する。なお、説明を簡単化するために、図8に示すように、枝線Wbの一方の近傍にクランプ装着位置P21がある場合について説明する。
【0058】
CPU11は、記憶装置14に記憶しているクランプ製作方向調整支援プログラムPを実行すると、ステップS11(製造情報取得手段に相当)において、設計支援対象のワイヤハーネスWに対応した経路情報D1及び製造情報D2を記憶装置14等から取得してRAM13に記憶し、その後ステップS12の処理に進む。なお、設計支援対象のワイヤハーネスWは、表示装置17に入力画面、選択画面、等を表示させて、設計者等に入力、選択させる。
【0059】
CPU11は、ステップS12(物性情報取得手段に相当)において、前記取得した製造情報D2に関連付けられた物性情報D3を記憶装置14等から取得してRAM13に記憶し、ステップS13(装着要求枝分岐角度取得手段に相当)において、前記取得した物性情報D3に関連付けられたクランプ情報D4を記憶装置14等から取得し、該クランプ情報D4に対応した装着要求枝分岐角度θedを取得してRAM13に記憶し、その後ステップS14の処理に進む。なお、装着要求枝分岐角度θedは、入力画面等を表示装置17に表示させて、設計者等に入力させることを前提としている。
【0060】
CPU11は、ステップS14(実装着枝分岐角度算出手段に相当)において、上述した実装着枝分岐角度θerの算出方法により、取得した装着要求枝分岐角度θedに対応した実装着枝分岐角度θerを算出してRAM13に記憶し、その後ステップS15の処理に進む。
【0061】
CPU11は、ステップS15(枝装着角度差算出手段に相当)において、装着要求枝分岐角度θedから実装着枝分岐角度θerを差し引いて枝装着角度差δを算出してRAM13に記憶し、ステップS16において、該枝装着角度差δが前記許容範囲内であるか否かを判定する。CPU11は、前記許容範囲内であると判定した場合(S16でYes)、ステップS19の処理に進む。一方、CPU11は、前記許容範囲内ではないと判定した場合(S16でNo)、ステップS17の処理に進む。
【0062】
CPU11は、ステップS17において、製造方向Hを予め定められた変更法則で変更して1又は複数の装着方向Vを求め、その後ステップS18の処理に進む。なお、以下の説明では、複数の装着方向Vを用いて製作方向Vの調整を行う場合について説明する。また、複数の変更法則の一例としては、製造方向Hを所定の方向に向かって予め定められた単位角度だけずらして装着方向Vを求め、その次は、この装着方向Vに前記単位角度を加算して新たな装着方向Vを求める。このような変更を予め定められた所定の範囲にわたって行う。なお、1つの装着方向Vを求める場合は、例えば製造方向Hに前記単位角度を加算して装着方向Vを求める。
【0063】
CPU11は、ステップS18(調整角度算出手段に相当)において、調整角度算出処理を実行することで、複数の装着方向Vの各々に対して、幹線Wmの分岐位置P21付近の捻れ量等をFEM解析ソフトウェアによってシミュレート(模擬)し、その模擬状態で上述したように枝線Wbを曲げたときの実装着枝分岐角度θerを算出し、それらの実装着枝分岐角度θerの各々が前記許容範囲内に収まっているか否かを判定すると共に、製作方向Hと装着方向Vとの差を調整角度dθとして算出する。そして、CPU11は、複数の装着方向Vと判定結果と調整角度dθとを関連付けてRAM13に記憶し、その後ステップS19の処理に進む。
【0064】
CPU11は、ステップS19(支援情報生成手段に相当)において、ステップS18の判定結果とその調整角度dθと調整前の枝装着角度差δとに基づいて、クランプCの製作方向Hの調整を支援するための支援情報をRAM13に生成し、該支援情報の表示要求を表示装置17に出力することで、表示装置17によって支援情報が表示され、その後本フローチャートの処理を終了する。なお、支援情報の一例としては、図11に示すように、クランプCの製作方向Cに対する調整可能範囲として調整角度dθを表示する、複数の調整角度dθと判定結果を一覧表として表示する、等の種々異なる表示形態で製作方向Hの調整を支援するための情報となっている。
【0065】
以上の説明からも明らかなように、CPU11がクランプ製作方向調整支援プログラムPを実行することで、図1に示す請求項中の製造情報取得手段M1、物性情報取得手段M2、装着要求枝分岐角度取得手段M3、実装着枝分岐角度算出手段M4、枝装着角度差算出手段M5、支援情報生成手段M6、調整角度支援算出手段M7、等の各種手段としてCPU11(コンピュータ)が機能することになる。
【0066】
次に、上述したクランプ製作方向調整支援装置10の動作(作用)の一例を以下に説明する。
【0067】
クランプ製作方向調整支援装置10は、設計者等に起動されると、設計者に設計支援対象のワイヤハーネスWを識別するための識別情報等を入力させる。そして、クランプ製作方向調整支援装置10は、ワイヤハーネスWにおける複数の枝線Wbの中から、調整対象の枝線Wbを特定し、該特定した枝線Wbに対したクランプCの製作方向H、枝線Wbの装着位置P41、等の各種データを取得するために、経路情報D1、製造情報D2、物性情報D3、クランプ情報D4、等を収集する。
【0068】
クランプ製作方向調整支援装置10は、経路情報D1に基づいて、幹線Wmにおける枝線Wbの分岐位置P21とその近辺に装着されるクランプCのクランプ位置P31,P32から、それらの相対位置関係等を特定する。そして、クランプ製作方向調整支援装置10は、対象となる枝線Wbに対して実装着枝分岐角度θerを算出し、装着要求枝分岐角度θedと実装着枝分岐角度θerとの枝装着角度差δを算出し、該枝装着角度差δが前記許容範囲内に収まっているか否かを判定する。
【0069】
クランプ製作方向調整支援装置10は、枝装着角度差δが前記許容範囲内に収まっていると判定した場合、その判定結果を示す支援情報を生成して表示装置17から設計者等に対して出力する。これにより、設計者等はその支援情報を参照することで、幹線Wmにおける分岐位置P21の近傍に位置するクランプCの製作方向Hを調整する必要がないことを確認できるため、この製作方向Hをそのまま装着方向Vとすることができる。
【0070】
また、クランプ製作方向調整支援装置10は、枝装着角度差δが前記許容範囲内に収まっていないと判定した場合、上述したように現状の製作方向Hを変更して調整角度dθを算出する。そして、クランプ製作方向調整支援装置10は、算出した調整角度dθと判定結果と調整前の枝装着角度差δとに基づいて、クランプCの製作方向Hの調整を支援するための支援情報を生成し、該支援情報を表示装置17から設計者等に対して出力する。これにより、設計者等はその支援情報を参照することで、クランプCの製作方向Hを変更する必要があることを認識できる。そして、設計者等は調整角度dθに基づいてクランプCの製作方向Hを変更して装着方向Vとする。このような処理を幹線Wmにおける他の複数の分岐位置の各々に対しても前記枝装着角度差δを算出して支援を行う。
【0071】
以上説明したクランプ製作方向調整支援装置10によれば、枝線Wbを装着位置(枝装着位置)P41に実装したときの実装着枝分岐角度θerと装着要求枝分岐角度θedとの枝装着角度差δを算出し、該枝装着角度差δに基づいてクランプCの製作方向Hの調整を支援するようにしたことから、装着要求枝分岐角度θedと実装着枝分岐角度θerとの枝装着角度差δを設計者等に認識させて、クランプ製作方向Hの調整を支援することができる。従って、設計者等はその枝装着角度差δを小さくするようにクランプ製作方向Hを調整することができることから、要求された枝線Wbの要求経路Ldと実際の装着経路Lrとが異なって、幹線Wmに過剰な捻れが生じることを防止でき、且つ、クランプCに多大な負荷がかかってしまうことを防止できるため、ワイヤハーネスWを実装するのが容易となり、ワイヤハーネスWの生産性(実装効率)の低下防止に貢献することができる。
【0072】
また、クランプ製作方向調整支援装置10によれば、クランプCの装着位置P31,P32から枝線Wbの分岐位置P21までの間の幹線Wmの距離と幹線Wbの直径と枝装着角度差δとに基づいてクランプ製作方向Hの調整角度dθを算出し、該調整角度dθに基づいた支援情報を生成するようにしたことから、設計者等は支援情報を参照することで、クランプの製作方向Hをどの方向にどれだけずらせば良いのかを、容易且つ正確に判断することができる。
【0073】
なお、上述した本実施形態では、幹線Wmにおける分岐位置P21の一方側の近傍にのみクランプ位置P31が存在する場合について説明した。これに対し、分岐位置P21の両側にクランプ位置P31,P32が存在する場合、幹線Wmにおける分岐位置P21からクランプ位置P31,P32の各々に対する幹モーメント等を考慮して、実装着枝分岐角度θerを算出し、そして、前記枝装着角度差δを算出して支援を行う。
【0074】
また、上述したクランプ製作方向調整支援装置10では、枝装着角度差δから調整角度dθを算出し、この調整角度dθに基づいて製造方向Hの調整を支援する場合について説明した。これに代えて、設計者の経験が豊富な場合、等では、クランプ製作方向調整支援装置10が算出した枝装着角度差δに基づいて前記調整を支援することもできる。
【0075】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 クランプ製作方向調整支援装置
M1 製造情報取得手段
M2 物性情報取得手段
M3 装着要求枝分岐角度取得手段
M4 実装着枝分岐角度算出手段
M5 枝装着角度差算出手段
M6 支援情報生成手段
M7 調整角度算出手段
C クランプ
W ワイヤハーネス
Wm 幹線
Wb 枝線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置であって、
前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段と、
前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段と、
前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得手段と、
前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出手段と、
前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出手段と、
前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成手段と、
を有することを特徴とするクランプ製作方向調整支援装置。
【請求項2】
前記装着位置から前記分岐位置までの間の前記幹線の距離と前記幹線の直径と前記枝装着角度差とに基づいて、前記クランプ製作方向の調整角度を算出する調整角度算出手段を有し、
前記支援情報生成手段が、前記算出した調整角度に基づいて前記支援情報を生成して出力する手段であることを特徴とする請求項1に記載のクランプ製作方向調整支援装置。
【請求項3】
幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援方法であって、
前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得工程と、
前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得工程と、
前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得工程と、
前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出工程と、
前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出工程と、
前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成工程と、
を有することを特徴とするクランプ製作方向調整支援方法。
【請求項4】
幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置のコンピュータを、
前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段と、
前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段と、
前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得手段と、
前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出手段と、
前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出手段と、
前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成手段と、
して機能させるためのクランプ製作方向調整支援プログラム。
【請求項1】
幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置であって、
前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段と、
前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段と、
前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得手段と、
前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出手段と、
前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出手段と、
前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成手段と、
を有することを特徴とするクランプ製作方向調整支援装置。
【請求項2】
前記装着位置から前記分岐位置までの間の前記幹線の距離と前記幹線の直径と前記枝装着角度差とに基づいて、前記クランプ製作方向の調整角度を算出する調整角度算出手段を有し、
前記支援情報生成手段が、前記算出した調整角度に基づいて前記支援情報を生成して出力する手段であることを特徴とする請求項1に記載のクランプ製作方向調整支援装置。
【請求項3】
幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援方法であって、
前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得工程と、
前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得工程と、
前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得工程と、
前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出工程と、
前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出工程と、
前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成工程と、
を有することを特徴とするクランプ製作方向調整支援方法。
【請求項4】
幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するクランプ製作方向の調整を支援するクランプ製作方向調整支援装置のコンピュータを、
前記幹線における前記クランプの装着位置及び前記クランプ製作方向、前記装着位置に隣接する前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段と、
前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段と、
前記枝線の装着要求枝分岐角度を取得する装着要求枝分岐角度取得手段と、
前記製造情報と前記装着要求枝分岐角度と前記物性情報とに基づいて、前記枝線を前記枝装着位置に実装したときの実装着枝分岐角度を算出する実装着枝分岐角度算出手段と、
前記装着要求枝分岐角度と前記実装着枝分岐角度との枝装着角度差を算出する枝装着角度差算出手段と、
前記枝装着角度差に基づいて前記クランプ製作方向の調整を支援するための支援情報を生成して出力する支援情報生成手段と、
して機能させるためのクランプ製作方向調整支援プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−118714(P2011−118714A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276029(P2009−276029)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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