説明

クリックケミストリーを介したポリマー材料

銅触媒による1,3−双極性付加環化によって多価アジドおよびアルキンが架橋ポリマー網目構造中に組み込まれる場合に、接着性ポリマーが形成される。金属表面から浸出するか、モノマー混合物に加えられるかのいずれかであるCuイオンによって、この縮合重合が効率的に促進され、複数のトリアゾール結合要素が生成されることによって金属表面との強い相互作用が得られる。この接着性ポリマーは、接着性ポリマーコーティングとして、または接着性ポリマー接合剤として形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性ポリマーコーティングおよび接合剤(cement)に関する。より詳細には、本発明は、接着性ポリマーコーティングおよび接合剤を製造するためのクリックケミストリーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
用語「クリックケミストリー」は、非常に信頼性が高い自己決定的な一連の有機反応に使用される(Kolb,H.C.;Finn,M.G.;Sharpless,K.B.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2004−2021)。たとえば、水中での非常に信頼性の高い分子結合としての銅触媒によるアジド−アルキン[3+2]付加環化の同定(Rostovtsev,V.V.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2002,41,2596−2599)が、種々の生体分子相互作用の研究の促進のために使用されている(Wang,Q.et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,3192−3193;Speers,A.E.et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,4686−4687;Link,A.J.;Tirrell,D.A.J.Am.Chem.Soc.2003、125,11164−11165;Deiters,A.;et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,11782−11783)。さらに、有機合成(Lee,L.V.et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,9588−9589)、薬物送達(Kolb,H.C.;Sharpless,K.B.Drug Disc.Today 2003,8,1128−1137;Lewis,W.G.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2002、41,1053−1057)、および表面の官能化(Meng,J.−C.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2004,43,1255−1260;Fazio,F.et al.,J.Am.Chem.Soc.2002,124,14397−14402;Collman,J.P.et al.,Langmuir2004,ASAP(近刊);Lummerstorfer),T.;Hoffmann,H.J.Phys.Chem.B 2004(近刊))における応用も試みられている。
【0003】
選択的反応性および「防弾(bullet-proof)」目的の独特の組み合わせとして銅触媒によるアジド−アルキン連結法が行われるようになった(Rostovtsev,V.V.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2002,41,2596−2599;Tornoe,C.W.et al.,J.Org.Chem.2002,67,3057−3062)。Cu(I)触媒を使用することによって、この方法は107倍まで加速するが、アジドおよびアルキンの両方が、大部分の官能基、および陸環境(terrestrial environment)において典型的な条件に対して不活性であることは維持される(Rostovtsev,V.V.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2002,41,2596−2599;Wang,Q.et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,3192−3193)。最近になって、クリックケミストリーは、トリアゾール含有デンドリマーのクリーン合成に使用されている(Wu,P.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2004(近刊))。
【0004】
ポリマー合成は、クリック反応性の多くの最良の例を含む限定された数の反応に依存する。しかし、最も優れた「クリック」法である、銅触媒によるアジド−アルキン付加環化は、まだそのようには使用されていない(特に、触媒なしのアジド付加環化から形成された縮合ポリマーの例として、N.G.Rogov,E.P.Kabanova,I.G.Gruzdeva,Ross.Khim.Zh.1997、41,115−119が参照される)。
【0005】
接着性ポリマーコーティングおよび接合剤などのポリマー材料を構成するためにクリックケミストリーを使用する方法が必要とされている。接着性ポリマーコーティングとして金属、ガラス、プラスチック、およびその他の表面に接合される、またはそのような複数の表面を互いに接合させる接着性ポリマー接合剤として使用できる、1,2,3−トリアゾールの堅牢な架橋ポリマーを形成するための、二価、三価、および四価のアジドおよびアルキンを使用するクリックケミストリー方法が必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
本明細書においては、アジドとアルキンとの間の銅(I)触媒による付加環化反応が、接着材料、すなわち、接着性ポリマーコーティングおよび接着性ポリマー接合剤を製造するために使用される。好ましい形態においては、本発明の方法は、銅塩を含まないモノマー混合物を使用して銅含有表面で行われる。この場合、銅含有表面は、必要な触媒銅(I)イオンを供給し、それによって銅含有表面上で選択的に重合プロセスが開始する。別の形態においては、本発明の方法は、銅塩を含むモノマー混合物を使用して還元性金属表面上で行われる。この場合、触媒銅(I)は、還元性金属表面によって混合物中の銅塩が還元されることによって供給される。これによって得られる材料は、標準的な市販の接着剤と同等以上の接着強度を有することが分かり、構造と活性との相関から、関連するモノマーのいくつかの重要な性質が明らかとなった。
【0007】
本発明の一態様は、固体表面上に接着性ポリマーコーティングを形成する方法に関する。この方法は二つのステップを含む。一方のステップにおいては、多価モノマー混合物が固体表面上に適用される。この多価モノマー混合物は、複数のアジド官能基を有するモノマーと、複数の末端アルキン官能基を有するモノマーとの両方を含む。他方のステップにおいては、多価アジド官能基を有するモノマーと、多価末端アルキン官能基を有するモノマーとの間の重合が触媒される。この触媒された重合反応によって、固体表面上に接着性ポリマーコーティングが形成される。好ましい形態においては、モノマーの重合がCu+によって触媒される。この好ましい形態の一態様においては、固体表面が銅を含み、上記触媒反応ステップにおいて、Cu+は固体表面に由来する。この固体表面は、銅であってもよいし、銅が合金中の金属の過半量を構成する真鍮などの銅含有合金であってもよい。固体表面は、単に銅めっきを有するものであってもよい。この好ましい形態の別の態様においては、固体表面が還元剤を含み、上記混合物は、Cu++を潜在的に含む銅塩源も含み、触媒反応ステップにおいて、Cu+の少なくとも一部は、固体表面の還元剤によって混合物中のCu++が還元されることに由来する。たとえば、固体表面の還元剤は、Cu++をCu+に還元できる金属であってよい。好ましい金属としては、銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびマグネシウム、あるいは銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびマグネシウムの合金が挙げられる。好ましい形態のこの態様内において、混合物中の銅塩は、少なくとも1種類の多価モノマーに対して10mol%である。好ましい多価モノマーは、それぞれ独立に式Iで表すことができる。
【化1】

式I中、「コア」は、多価基のコアであり、脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アミン、アルケニル、エーテル、カーボネート、カルバメート、スルホニル、サルフェート、チオエーテル、セレニルエーテル、および尿素からなる多価基の群から選択され、Rは、金属イオンまたは金属表面と結合する官能基であり、Rは、存在しないか、あるいは、アミン、ヘテロアリール、カルボキシレート、サルフェート、チオール、およびヒドロキシルからなる基の群から選択されるかであり、RGは官能基であり、アジドおよび末端アルキンからなる群より選択され、Xは、RGを「コア」に結合させるリンカーであり、任意選択的に存在しないか、あるいは、アルキル(C1〜C20)、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミン、アリール、ヘテロアリール、および複素環式芳香族からなる二価基(diradical)の群から選択され、「n」は2以上である。好ましいモノマーは、以下の構造で表すことができる。
【化2】

あるいは、好ましいモノマーは、以下の構造で表すことができる。
【化3】

あるいは、好ましいモノマーは、以下の構造で表すことができる。
【化4】

この方法の適用ステップは、多価モノマーを、銅塩を有するまたは有さない有機溶媒中に溶解させることによって混合物を形成するサブステップと、清浄な固体上に均一に混合物を分布させる(distributing)サブステップと、分布させた混合物から有機溶媒を蒸発させるサブステップとを含むことができる。
【0008】
本発明の別の態様は、前述のいずれかの方法により固体表面上に形成された接着性ポリマーコーティングに関する。
【0009】
本発明の別の態様は、二つ以上の固体表面の間に接着性ポリマー接合剤を形成する方法に関する。この方法は二つのステップを含む。一方のステップにおいては、多価モノマー混合物が固体表面の間に適用される。この多価モノマー混合物は、複数のアジド官能基を有するモノマーと、複数の末端アルキン官能基を有するモノマーとの両方を含む。他方のステップにおいては、多価アジド官能基を有するモノマーと、多価末端アルキン官能基を有するモノマーとの間の重合が触媒されて、固体表面の間に接着性ポリマー接合剤が形成される。好ましい形態においては、モノマーの重合がCu+によって触媒される。好ましい形態においては、モノマーの重合がCu+によって触媒される。この好ましい形態の一態様においては、固体表面が銅を含み、上記触媒反応ステップにおいて、Cu+は固体表面に由来する。この固体表面は、銅であってもよいし、銅が合金中の金属の過半量を構成する真鍮などの銅含有合金であってもよい。固体表面は、単に銅めっきを有するものであってもよい。この好ましい形態の別の態様においては、固体表面が還元剤を含み、上記混合物は、Cu++を潜在的に含む銅塩源も含み、触媒反応ステップにおいて、Cu+の少なくとも一部は、固体表面の還元剤によって混合物中のCu++が還元されることに由来する。たとえば、固体表面の還元剤は、Cu++をCu+に還元できる金属であってよい。好ましい金属としては、銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびマグネシウム、あるいは銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびマグネシウムの合金が挙げられる。好ましい形態のこの態様内において、混合物中の銅塩は、少なくとも1種類の多価モノマーに対して10mol%である。好ましい多価モノマーは、それぞれ独立に式Iで表すことができる。
【化5】

式I中、「コア」は、多価基のコアであり、脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アミン、アルケニル、エーテル、カーボネート、カルバメート、スルホニル、サルフェート、チオエーテル、セレニルエーテル、および尿素からなる多価基の群から選択され、Rは、金属イオンまたは金属表面と結合する官能基であり、Rは存在しないか、あるいは、アミン、ヘテロアリール、カルボキシレート、サルフェート、チオール、およびヒドロキシルからなる基の群から選択されるかであり、RGは官能基であり、アジドおよび末端アルキンからなる群より選択され、Xは、RGを「コア」に結合させるリンカーであり、任意選択的に存在しないか、あるいは、アルキル(C1〜C20)、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミン、アリール、ヘテロアリール、および複素環式芳香族からなる二価基の群から選択され、「n」は2以上である。好ましいモノマーは、以下の構造で表すことができる。
【化6】

あるいは、好ましいモノマーは、以下の構造で表すことができる。
【化7】

あるいは、好ましいモノマーは、以下の構造で表すことができる。
【化8】

この方法の適用ステップは、多価モノマーを、銅塩を有するまたは有さない有機溶媒中に溶解させることによって混合物を形成するサブステップと、清浄な固体上に均一に混合物を分布させるサブステップと、分布させた混合物から有機溶媒を蒸発させるサブステップとを含むことができる。この方法の触媒反応ステップは、モノマーの重合を触媒する間に、一定圧力を加えることで、前記固体表面を互いに物理的に接触させるサブステップを含むことができる。
【0010】
本発明の別の態様は、前述の方法により二つ以上の固体表面の間に形成された接着性ポリマー接合剤に関する。
【0011】
銅により促進されるアジド−アルキン付加環化は、接着性を有するバルクポリマーを合成するのに好都合な方法である。バルクポリマーを合成するために使用される同じモノマーの一部が、接着性コーティングおよび接合剤を形成するためのガラス、プラスチック、金属、およびその他の固体表面に対して接着結合も形成し、これらの材料を互いに融着(fusion)できることを本明細書において開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
銅触媒による[3+2]付加環化でポリマーが得られることを、ジアジド1とジアルキン2との縮合によって示した(図1)。これによって得られる線状ポリマー3は、最大で、(1)23(2)22(m/z=12,565)までの広い分子量分布を有するDMSO可溶性材料であることが分かった(実験の詳細は、要求すれば著者から入手できる)。A−Bモノマーを使用する他の例(1+2で表されるA−A+B−Bの組み合わせ以外)の調製も既に行っており、別に報告する予定である。
【0013】
銅表面上に接着剤を首尾良く形成するためには、図2に示される少なくとも二つの重要な方法における金属の作用が必要となる。この金属は、金属表面と成長する有機マトリックス中の両方において、トリアゾール形成反応の重要な中間体である銅アセチリドを形成するためのCu(I)源として機能することが必要である。バルク金属は、表面の相互作用によって、成長するポリマーを、複数のトリアゾール(および任意選択的に、σまたはπ相互作用におけるダングリングアルキンなどの他の基)と結合させることも必要である。このポリマー形成過程は、銅イオンの抽出によって表面を「エッチング」して、種々の銅種と、トリアゾール主鎖との間に曖昧な境界を有する表面結合領域を形成することもできる。
【0014】
上記の銅金属の必要な機能のそれぞれについては、十分に先行技術が存在する。金属銅は、有効なアジド−アルキン付加環化のためのCu(I)イオンの好都合な供給源であることが分かっている(Rostovtsev,V.V.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2002,41,2596−2599;Wang,Q.et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,3192−3193)。この方法は、Cu(II)(表面金属の酸化によって発生させるか、溶液に添加される)とCu(0)表面とのコンプロポーショネーション(comproportionation)反応によって進行すると思われる。このようにして生成した活性Cu(I)は、溶液中の空気酸化によってクエンチすると、金属表面に再生することがある。この方法では、tert−ブタノール/水中の反応の場合には、Cu(I)が約200〜700μMの低濃度に維持される(フォーキン(Fokin),V.V.,未発表結果)。さらに、1,2,4−トリアゾールおよび1,2,3−トリアゾールは、金属イオンおよび金属表面に対する強い親和性を有することが以前から知られており、これらの単位を含有する小分子およびポリマーの両方が防食剤として使用されている(Trachli,B.et al.,Corros.Sci.2002,44,997−1008;Cao,P.G.;Yao,J.L;Zheng,J.W.;Gu,R.A.;Tian,Z.Q.Langmuir 2002,18,100−104:El−Naggar,M.M.J.Mat.Sci.2000,35,6189−6195:Qafsaoui,W.et al.,J.Appl.Electrochem.2000,30,959−966;Lilyquist,M.R.;米国モンサント・コーポレーション(Monsanto Corp.:USA),1967;Korpics,C.J.Anti−Corrosion Methods and Materials 1974,21,11−13)。したがって、ポリマーの1,2,3−トリアゾールは金属接着性を示し得ると考えられており、実際、ポリマー構造中にトリアゾールを組み込むと、銅への結合性が向上することが分かっている(Seo,J.et al.,J.Adhes.Sci.Tech.2002,16,1839−1851;Song,S.M.;Cho,K.;Park,C.E.;Yun,H.K.;Oh,S.Y.J.Appl.Polym.Sci.2002,85,2202−2210;Kent,M.S.,R.;Hurst,M.:Small,J.;Emerson,J.;Zamora.D.サンディア・ナショナル・ラボラトリーズ(Sandia National Laboratories)[技術報告書(Technical Report)]1997,SAND97−1030,1−60)。本明細書において、三官能性(およびそれを超える官能性)のモノマーを使用すると、銅含有材料に適用した場合に架橋網目が形成されることを開示する。
【0015】
選択した二価、三価、および四価のアルキンおよびアジド(1,2,4〜15)について、接着性ポリマー形成能力を試験した(必要最小量の有機溶媒(通常THF、各モノマー中0.5M)を使用して濃縮ストック溶液中にモノマーを混合した。次に、必要量のストック混合物を、各プレートの中央に付着させ、その混合物をプレートの適切な領域(あらかじめ鉛筆で印をしておいた)上に手作業で広げながら、溶媒を蒸発させた。次に、2枚のプレートを直角に交差させて、処理した表面を互いに接触させ、制御された条件下でアニールした)。この実験手順は、最小量の溶媒中に溶解させたモノマー混合物を2枚の金属プレートの表面上に塗り広げ、溶媒蒸発後に、圧力、温度、および時間が明確な条件下で、互いに交差させたプレートを押し付けることからなった。形成された各材料のおおよその接着力を、接着したプレートを分離するために必要となる、表面に対して垂直方向の力を測定することによって求めた(簡略化した「剥離」試験)。支持される最大荷重を図2に示す。これらの平均の測定誤差(1つの実験当たり独立して3回繰り返す)は比較的小さく±1kgであることが分かった(この実験で最もよく試験される市販の接着剤での測定は、再現性が低く誤差は±3kgであった)。側鎖アジドを含有するポリマー(「グリシジルアジドポリマー」、GAP、塩化グリシジルの開環ポリマー上でアジド置換した市販品)の使用についても、金属表面をこのポリマーであらかじめ処理し、次に前述のようにさらにモノマーを付着させることによって試験した。これは、金属表面をアジド含有ポリマーであらかじめコーティングすることによって、金属界面においてトリアゾールがより高密度となり、それによって接着力が高まることを調べるために行った。これらの試験結果も図4に示す。全般的に観察された傾向は、より良好な接着性に向かっていたが、GAPの効果は顕著ではなく、その使用による構造−活性の傾向に変化はなかった。多くのサンプルが銅に対して強い結合を形成したが、トリプロパギルアミン(14)と、より少量のトリアルキン10とを含む混合物は、市販の接着剤よりはるかに優れた性能を示した。
【0016】
アジド/アルキン接着剤混合物の能力の決定に最も重要であると思われる二つの要因は、モノマー単位の「腕」の数、およびアミン基の存在である。前者の要因は、得られるポリマーの架橋度に関連すると思われる。したがって、ジアジドとジアルキンとの組み合わせ(たとえば1+8)の場合、このような反応では、3と同様に、共有結合的な架橋ではなく線状のポリマーが生成されるため、不十分な結果が得られた。閉環によって連結構造が十分形成されないと考えられるが、このような可能性は別々に調べられる。アミン含有モノマーの効果は、9と8との比較、および14と他の三脚アルキン(10〜13)との比較によって示された。Cu−アセチリド中間体の生成を促進し、金属中心との生産的キレート化相互作用に寄与するため、銅触媒方法においては、アミンは有益となる。実際、14から誘導されるトリス(トリアゾリルアミン)化合物のCu+錯体は、有機合成およびバイオコンジュゲーションにおける溶液相トリアゾール形成反応において高活性触媒となる(Wang,Q.et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,3192−3193;Chan,T.R.et al.,Org.Lett.2004、提出済み)。
【0017】
縮合ポリマーの長さおよび分子量分布は、官能基比に非常に敏感であり、この比が1に近づくほど長い鎖が生成される(Flory,P.J.ポリマー化学の原理(In Principles of Polymer Chemistry);コーネル・ユニバーシティー・プレス(Cornell University Press):ニューヨーク州イサカ(Ithaca,NY),1953、第III章)。したがって、本発明により製造された架橋接着剤の性質もこの要因を反映すると考えられる。実際、[4+14]から形成された材料は、官能基の化学量論に対して非常に敏感となり、アジド対アルキンの比が1:1であると、官能基比が1:1.5の場合よりもはるかに良好な強度を示した。対照的に、[1+10]の混合物は、モノマー比の変化に対して比較的影響が少なかった(図4)。
【0018】
接着表面の被覆率が特定の値で一定である場合、弾性接着剤の使用量が増加すると、全体的な接着強度は低下することが多い。比較試験として使用した市販の接着剤の場合にこのようなことが起こった(図4)。対照的に、図5に示されるように、5つすべてのモノマーの組み合わせでは、使用量を増加させると性能が改善された。最も顕著な例は7+14によって得られ、これは、銅上に0.10mmolの各モノマーを含有する混合物では、5.6kgを支持しており、一方、50%多く材料を使用すると(0.15mmolの各モノマー)、約3倍の強度(17.8kg)が得られた。後者の値は、この実験で観察された最良の性能であり、市販の金属用接着剤で測定された強度の2〜3倍の間となった(非常に大きな銅プレート(表面接触面積が2×2インチ=2581mm2)および100mgのモノマー混合物を使用した予備実験も行った。少なくとも10時間の間、剥離試験において少なくとも25kgを支持した最も有効な系は、4および14の1.5:1混合物(アジド:アルキン比=1:1)で構成された)。荷重試験によって分離した後のプレートを目視観察すると、ポリトリアゾール接着剤によって全体的に十分に被覆されていることが分かったが、少量を使用する場合に小さな未被覆部分(金属表面から接着剤が剥離することによって形成されたのではない)が観察されることがあった。
【0019】
少なくとも1種類のモノマー中にアミン基が存在すると有益であることが多い。最も顕著な例は、トリアセチレン14を使用する場合、6に対する7の性能の大きな向上によって示された(図5)。アミン類は、少なくとも部分的には、動力学的および熱力学的の両方で銅アセチリド形成に好ましい塩基性環境によって、1,3−双極性付加環化プロセスを向上させる。これらは、Cu(I)のトリアゾリルアミンリガンドの重要成分を提供することもでき、その少なくとも1つの例で、溶液相反応における触媒効率が向上することが示されている(Wang,Q.et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,3192−3193;Speers,A.E.et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,4686−4687)。
【0020】
可溶性Cu(I)種を使用して溶液中で形成されるポリマーは、その材料の大部分において実質的な量の銅が維持されることを本明細書において開示する(未発表結果)。3つの代表的な接着剤サンプル([1+8]、[1+10]、および[4+14])を、荷重試験のプレートの分離後に銅表面から除去し、そのポリマーを硫酸中に溶解した後に銅について分析を行った。それらの結果から、各マトリックス(接着剤混合物の2〜5重量%)中に潜在的に形成されたトリアゾール単位数の約5〜15%の量で銅が存在することが分かった。バルクポリマーの研究からは、金属キレート剤を使用した激しい処理により銅を除去する前後で溶融特性の変化はわずかであることが示されている(データは示していない)。
【0021】
アニーリング圧力、アニーリング時間、加えた銅塩、およびデンドリマーのポリ(アルキン)の添加などの変量についても、調べており、それぞれの結果に対する影響はわずかであった(実験の詳細は、要求すれば著者から入手できる)。単座配位のアジド16及びトリアルキン10、ならびに多座アジドまたはアルキン単独の場合には、接着性が得られないことが、対照実験から分かった。銅を電気めっきした亜鉛は固体銅と同様の性能を示したが、表面粗さの差によって接着性能がより大きくばらついた(約±20%)。約70%が銅である真鍮では、純銅の場合に本明細書で報告される値の約60〜90%の強度を有する接着性ポリマーが形成されることが分かった。
【0022】
亜鉛金属表面は、付加環化反応を媒介せず、そのため銅を加えない場合はこれらの化合物によって互いに接着することはない。しかし、ポリトリアゾールは種々の金属に接着するので、亜鉛上のモノマー混合物への銅イオンの添加について調べた。Cu(I)またはCu(II)塩の添加によって接着材料の形成が促進され、Zn金属は還元剤として混合物中にCu(I)を生成させて維持する。観察される耐荷重性は、市販の接着剤と同等であり、銅に関して試験した多くの混合物の範囲内であった(実験の詳細は、要求すれば著者から入手できる)。10mol%(アジド基またはアルキン基の総数に対して)でCuを添加すると、1+10を使用した一連の実験において強度が最大となり、これは、全体の付加環化の速度(Cu濃度に比例する)と、ポリマー鎖の長さ(Cu濃度に反比例する)とのバランスによるものと考えられる。最も注目すべきことは、[4+10]を除けば、銅金属に対して十分な性能を示す、ペンタエリスリトールから誘導されるモノマー(4、6、および7)を使用しても接着性ポリマーが形成されなかったことである。この理由はまだ明確ではないが、これらの観察から、構造−活性の関係が、表面の種類、および/または触媒Cu(I)の中心が導入される方法に依存すると考えられる。
【0023】
[実験]
概要。固体銅プレート(1インチ×2インチ)は、酸素非含有合金101Cuバー(2インチ×48インチ×0.125インチ、マクマスター・カー・インコーポレイテッド(McMaster−Carr,Inc.)より購入)から切断し、真鍮プレートは、合金260(68.5〜71.5%Cu、28.38〜31.38%Zn、0.07%Pb、0.05%Fe;1インチ×12インチ×0.125インチ、マクマスター・カー)から切断した。亜鉛プレートは、地元の金物店から入手した1インチ×6インチの大きさの市販の木工品補修用プレートから切断した。NMRスペクトルは、200MHz(1H)においてバリアン・マーキュリー(Varian Mercury)200装置によって求め、IRスペクトルは、水平減衰全反射法(HATR)アクセサリー(パイク・インストルメンツ(Pike Instruments))を使用したMIDAC FTIR装置によって求めた。元素分析は、ミッドウエスト・マオクロラボズ・インコーポレイテッド(Midwest Microlabs,Inc.)によって行った。合成したすべてのモノマーについて、十分に特性決定を行い、これらは分析的には純粋であった。比較のため使用した市販の接着剤は、Weld−It(商標)、Devcon(登録商標)、ITWパフォーマンス・ポリマーズ・コンシューマー・ディビジョン(ITW Performance Polymers Consumer Division)製造)、Super Glue(商標)、およびGorilla Glue(商標)であり、最初の製品が最良であったので、大部分の試験でこれを使用した。「GAP」は、MACH I(登録商標)Inc.製造のGAP Polyol 5527であり、酢酸エチル中の40%(w/w)溶液として入手しそのまま使用した。
【0024】
[電気めっき]
酸性の硫酸銅溶液からの電気めっきにより作製した銅コーティングした亜鉛を使用して、初期接着の研究を行った。使用した金属プレートは、幅0.5インチおよび長さ1インチであり、直角に交差させた場合に161mm2の接触面積が得られた。これらを「小型」プレートと呼び、これらの材料を使用した結果を以下に示す。主論文には、固体銅プレート(1×2インチ)を使用して得られた類似の結果を記載している。これらの「大型」プレートでは、直角に交差させた場合に645mm2の接触面積が得られる。
【0025】
[モノマーの合成]
化合物8、化合物9、および化合物14は市販されており、化合物16はジュンカイ・メン博士(Dr.Jun−cai Meng)の好意により提供された。以下の化合物は既知のものであり、わずかに調整するだけで報告した手順によって調製した。化合物2(Trost,B.M.;Rudd,M.T.J.Am.Chem.Soc.2002,124,4178−4179;Kang,S.−K.et al.,J.Am.Chem.Soc.2000,122,11529−11530;Greau,S.et al.,J.Am.Chem.Soc.2000,122,8579−8580;Yamamoto,Y.et al.,J.Org.Chem.1998,63,9610−9611)、化合物10(Jarman,M.et al.,J.Med.Chem.1993,36,4195−4200)、化合物11、化合物12(殺真菌剤としての(プロパルギルオキシ)ベンゼン誘導体の調製:Place,P.;Pepin,R.(1987)、仏国特許出願公開第2598408号明細書(FR 2598408 A1 1987113)、CAN 108:182220)、化合物13(Calvo−Flores,F.G.et al.,Org.Lett.2000,2,2499−2502)、および化合物15(Korostova,S.E.et al.,Zhumal Prikladnoki Khimii 1990,63,234−237)。モノマーの合成は図6、7、および8にまとめており、新規化合物の特性決定データは以下の通りである。
【0026】
・N,N−ビス−(2−アジドエチル)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド(1)
ビス(2−クロロエチル)アミン塩酸塩(4.68g、26.2mmol)の乾燥THF(50mL)中の懸濁液に、0℃においてEt3N(18.3mL、131mmol)を加え、その混合物を15分間撹拌した。p−トルエンスルホニルクロリド(5.00g、26.25mmol)およびDMAP(スパチュラ1杯)を加えた。この反応混合物を室温まで温め、終夜撹拌した。TLC分析で転化の完了を確認してから、混合物を濾過してEt3N・HClを除去し、EtOAcで抽出した。その有機相を合わせたものをブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。その残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、N,N−ビス(2’−クロロエチル)−4−メチルベンゼンスルホンアミド(6.22g、収率80%)を得た。
【0027】
上記スルホンアミド(6.00g、20.3mmol)のEtOH:H2O(1:1)(110mL)中の溶液を撹拌しながら、これに、室温において、NaN3(13.3g、203mmol)、および少量の18−クラウン−6エーテルを加えた。この混合物を12時間還流した後、EtOHを減圧除去し、その水層をEtOAcで抽出し、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。その残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、1(4.08g、収率65%)を白色固体として得た。Mp47〜48℃:1H NMR(CDCl3)δ2.51(s、3H)、3.37(t、J=6.5Hz、4H)、3.61(t、J=6.0Hz、4H)、7.40(d、J=8.0Hz、2H)、7.77(d、J=8.0Hz、2H);13C NMR(CDCl3)δ30.0、49.4、51.2、127.6、130.4、136.1、144.5;IR(薄膜、cm-1)2102、1344、1302、1163;MS m/z(相対強度)432(M+Na)+(100)。HRMS:C111672Sとしての計算値310.1086、測定値310.1089。
【0028】
・2,2−ビス−アジドメチル−プロパン−1,3−ジオール(4)
撹拌子および冷却器を取り付けた1L丸底フラスコに、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール(100g、0.38mol)、アジ化ナトリウム(60g、0.92mol)、およびDMSO(200mL)を加えた。この混合物を100℃で36時間加熱し、冷却し、水(300mL)およびブライン(100mL)を加えた。この混合物をEtOAcで5回抽出し、その有機相を合わせたものをブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。最後に残留した溶媒を減圧除去して、淡黄色油として4(64g、収率90%)を得た。1H NMR(CDCl3)δ2.65(br s、2H)、3.48(s、4H)、3.68(s、4H);13C NMR(CDCl3)δ45.2、52.1、63.9;IR(薄膜、cm-1)3369、2934、2088、1292、930;MS m/z(相対強度)209(M+Na)+(100)。HRMS:C51162としての計算値187.0943、測定値187.0946。
【0029】
・N,N’,N”−トリス−(3’−アジドプロピル)−[1,3,5]トリアジン−2,4,6−トリアミン(5)
3−クロロプロピルアミン塩酸塩(40g、0.31mol)のH2O(280mL)中の室温における溶液に、NaN3(100g、1.54mol)および少量のKIを加えた。この反応混合物を90℃で72時間撹拌した。この反応物を室温まで冷却し、pHが約11になるまでNaOH(ペレット)を加えた。次に、固体のNaClを加え、その混合物をトルエンで5回抽出した。その有機層を合わせたものを乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧下のロータリーエバポレーター中、低温で溶媒を部分的にゆっくり注意深く蒸発させた。得られたトルエン溶液中の3−アジドプロピルアミンの濃度を、1H NMRスペクトルの積算によって測定した(約0.6〜1,4M)。注意!低分子の有機アジドは決して乾燥するまで蒸留してはならない。
【0030】
0℃の塩化シアヌル(10g、54.2mmol)のTHF(150mL)中の溶液に、THF(50mL)中のジイソプロピルエチルアミン(31mL、176.18mmol)および3−アジドプロピルアミン(128mL、トルエン中1.4M、178.86mmol)を加えた。この反応混合物を還流下で50時間撹拌した。次に、残留物が最小限になるまで溶媒を注意深く蒸発させ、EtOAcで抽出した。この有機層を合わせたものをブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、5(16.68g、収率82%)を淡黄色ゴム状シロップとして得た。1H NMR(CDCl3)δ1.31(m、6H)、1.89(m、6H)、3.43(m、6H)、3.51(br s、3H);13C NMR(CDCl3)δ30.0、38.3、49.5,171.6;IR(薄膜、cm-1)2137、2061、1288、869;MS m/z(相対強度)377(M+2)+(20)、376(M+1)+(100)、130(100)。HRMS:C122215としての計算値376.2177、測定値376.2179。
【0031】
・2,2,2−トリス(アジドメチル)エタノール(6)
文献の手順によってペンタエリスリトールを三塩化物に転化させた(Lynch,K.M.;Dailey,W.P.J.Org.Chem.1995,60,4666−4668)。この中間体は、94%の粗反応混合物(ガスクロマトグラフィーで分析)で構成され、ヘキサンからの再結晶によって精製した。この三塩化物をDMF中に溶解させ、3.3当量のNaN3で処理し、120℃で17時間加熱した。この粗反応混合物を冷却し、同体積の水を加え、有機生成物をトルエン中に抽出し、DMFを水中に逆抽出した。この有機溶液を乾燥させ(MgSO4)、得られたままの状態で使用した。6の濃度はNMRによって求めた。注意!低分子の有機アジドは決して乾燥するまで蒸留してはならない。
【0032】
・トリス(アジドメチル)アミノメタン(7)
従来文献に記載されるようにしてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを三塩化物アンモニウム塩に転化させた(Martinu,T.;Dailey,W.P.J.Org.Chem.2000,65,6784−6786)。この中間体(8.4g、40mmol)を水に溶解させ、4当量のNaN3で処理し、加熱還流した。形成され得る微量のHN3を除去するために、固体NaOHを充填したトラップに冷却器を取り付けた。17時間後、混合物を少量の1MのNaOH水溶液で処理して酸をクエンチし、次にトルエンで抽出した。この有機溶液を乾燥させ(MgSO4)、得られたままの状態で使用した。7の濃度はNMRによって求めた。注意!低分子の有機アジドは決して乾燥するまで蒸留してはならない。
【0033】
・5−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸ビス−(2’−アジドエチル)−アミド(17)
塩化トシルから1を得るために上記で使用した手順と同じ手順を、塩化ダンシルに使用して、全体の収率52%で黄色固体として17を得た。この化合物の使用については後述する。Mp45〜46℃;1H NMR(CDCl3)δ2.25(s、4H)、2.97(s、6H)、3.55(dd、J=13.7,5.2Hz、4H)、7.28(d、J=7.4Hz 1H)、7.51〜7.71(m、2H)、8.27(d、J=7.3Hz、1H)、8.35(d、J=8.7Hz、1H)、8.65(d、J=8.5Hz、1H);13C NMR(CDCl3)δ45.8、48.3、50.9、115.9、119.4、123.5、128.9、130.2、130.4、130.6、131.4、134.5、152.4;IR(薄膜、cm-1)2173、2057、1243、905;MS m/z(相対強度)411(M+Na)+(10)、390(M+2)+(9)、389(M+1)+(58)、130(100)。HRMS:C162182Sとしての計算値389.1503、測定値389.1510。
【0034】
[銅接着剤の実験手順]
荷重試験のおもりをつり下げやすくするために、各端部上にドリルで孔を開けた各銅プレートを作製した。銅プレートは、使用直前に、H2SO4に短時間暴露した後、水、エタノール、およびアセトンで十分に洗浄することで清浄にし、亜鉛は有機溶媒で清浄にした。前述したように、必要最小量のTHF(通常各モノマー中0.5M)を使用して濃縮ストック溶液中にモノマーを混合した。次に、必要量のストック混合物を、各プレートの中央に付着させ、その混合物をプレートの適切な領域上に手作業で広げながら、溶媒を蒸発させた。次に、2枚のプレートを直角に交差させて、処理した表面を互いに接触させ、25ポンドのおもりの下の平坦面に記載の時間静置した。したがって接触面積は1平方インチ(約650mm2)であった。GAPを使用する場合(以下参照)、酢酸エチル中のこのポリマーを二つの表面に最初に適用し、これらの金属片を乾燥させ、次に選択したモノマーで上記手順を行った。
【0035】
支柱まで延びる鎖に一方のプレートを取り付け、おもりをつり下げることができる鎖に他方のプレートを取り付けることによって、荷重試験を行った。おもりは1ポンドずつの増分で加え、上記組立品に1分間つり下げ、その後おもりを増加させた。各増分で荷重を導入するときに、装置に急激な応力が加わらないよう注意した。接着破壊への到達は、荷重を与えてから1分以内にプレートが分離した場合とした。これは簡単な「剥離」型試験と見なすことができ、再現性の高い結果が得られるため、これを選択した。剪断型試験は、見かけの強度がはるかに大きくなるが、再現性は低くなる。たとえば、1+10の混合物における剪断試験では、最大荷重31kgを支持するが、これと比較して剥離試験では4.8kgである。図4に示す結果を図9にまとめている。この表には、接着強度の「規格化」された値(接着剤1g当たりの維持される最大荷重)も示している。前述していないが、これは接着剤混合物を互いに比較するための別の方法となる。
【0036】
[ポリマーアジド添加剤の使用]
側鎖アジドを含有するポリマー(「グリシジルアジドポリマー」、GAP、塩化グリシジルの開環ポリマー上でアジド置換した市販品)で金属表面を予備処理することによって、類似の一連の実験を行った。この目的は、金属界面において架橋を増加させ、おそらくは接着力を増加させることであった。全般的に観察された傾向は、より良好な接着性に向かっていたが(図4、図9)、GAPの効果は顕著ではなく、その使用による構造−活性の傾向に変化はなかった。
【0037】
ダンシルジアジド17(図8)を1とともに使用して、標準的な対の組成物と比較した場合の、モノマー混合物(すなわち、2種類以上のアジドまたはアルキン)の相対的有効性を試験した。エントリー23〜24から、接着性能に差がなかったことが示された。アルキン10をGAPと併用し、追加のアジドを使用しない場合には、中程度の強度の接着剤が生成され(エントリー27)、側鎖アジドポリマーは多価アルキンとのみ網目構造に互いに組み込まれ得ることを示している。二つの標準的な実験を、室温の代わりに60℃でアニールすると、得られる材料の強度の差はわずかであった(データは示していない)。
【0038】
[溶液中で生成した線状ポリマー]
二官能性モノマー1および2を、5%のCuSO4および10%のアスコルビン酸ナトリウムの存在下、1:1のt−BuOH:H2O(各モノマー中0.3M)中、室温で10時間かけて縮合させた。溶媒を排出し、残ったゴム状固体を水、メタノール、クロロホルム、THF(3回)で順次洗浄し、減圧乾燥した。少量をこすり取って取り出した(3aとした)。残りを熱DMSO中に溶解させ、メタノールを加えて沈殿させた。得られた固体を回収し、再び水、メタノール、クロロホルム、およびTHFで洗浄した(3bとした)。この後者の材料は、混合物の約70%となる主成分であり、熱DMSO以外の広範囲で選択した溶媒に対して不溶性であった。分光分析データ(IRおよびNMR)は、比較的短い鎖の存在を示していたが(未反応のアジドおよびアルキンは、赤外において約2100cm-1において重なりあるシグネチャーによって敏感に検出される)、GPC分析に十分な可溶性とはならなかった。
【0039】
(図面の詳細な説明)
図1は、ジアジド1とジアルキン2との銅触媒による[3+2]付加環化によって、構造3で示される線状ポリマーが得られることを示している。このポリマーは、最高で(1)23(2)22(m/z=12,565)までの広い分子量分布にわたってDMSO可溶性であった。
【0040】
図2は、網目構造のトリアゾールの形成によって銅に接着する一連の現象を示しており、(A)銅(0)表面によって生成および/または安定化したCu(I)イオンの存在下でのアジドおよびアルキンモノマー、(B)Cu(I)濃度が最高であると思われる金属表面付近でのCuの媒介する付加環化、(C)ポリマーのバルクを通過してトリアゾールが形成されることによる架橋の完了を示しており、可能性のある銅−アセチリドおよび銅−トリアゾール相互作用も示している。
【0041】
図3は、接着性ポリマーを形成する能力を試験した、選択されたアルキンおよびアジドの構造を示している。
【0042】
図4は、試験を行った異なるポリマーの組み合わせの結果をまとめた三次元チャートである。記載のモノマー混合物から作製した接着剤により支持された最大荷重を、アルキンの0.1mmol目盛においてグラフのz軸上に示している。観察された傾向は、GAPポリマーのプレコーティングを使用した場合と使用しなかった場合で作製した接着剤で非常に類似していた。四角で囲まれた列のアルキン(10および14)は、混合物中の全アジド基対アルキン基の比に1:1.5を使用したことを示している。この三次元プロットの下には、アルキン軸およびアジド軸に沿った投影を示している。
【0043】
図5は、使用モノマー量の関数としての最大荷重(kg)を示すグラフである。各点の横の値は、組み合わせたモノマーの全mmol数であり、各反応は等モル比のアジド基およびアルキン基を含んでいる。接着剤層の厚さは約20〜100ミクロンであった。
【0044】
図6は、接着試験に使用したモノマーの合成を示す一連の図式である。1を作製するための第1の反応で、ナイトロジェンマスタードのN、N−ジ(2−クロロエチル)アミンのN−スルホニル化の後、塩化物のSN2置換反応によって、ジアジド1が得られる。第2の反応では、穏やかな条件下での4−メチル−ベンゼンスルホンアミドのN−プロパルギル化によってジアセチレン2が得られる。最後の反応では、塩化シアヌルの塩化物を3−アジドプロピルアミンで置換することによって、トリアミノ−1,3,5−トリアジンである5が得られる。
【0045】
図7は、接着試験に使用したモノマーの合成を示す一連の反応である。6の形成は、ペンタエリスリトールの3つのヒドロキシル基を置換して、トリクロロ中間体を得ることから開始する。求核性アジドアニオンによる塩化物のSN2置換によってトリアジド6が得られる。類似の一連の反応が7の合成に使用される。トリアセチレン10は、穏やかな条件下でシアヌル酸の3つの塩化物をプロパルギルアミンで置換することによって得られる。
【0046】
図8は、接着試験に使用したモノマーの合成を示す一連の反応である。これらの反応は、ウィリアムソンエーテル合成を使用して、穏やかな条件下で1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ピロガロール、またはペンタエリスリトールのいずれかを使用してプロパルギルエーテルを形成している。
【0047】
図9は、出発モノマー、試薬の比率、および得られた接着剤について測定した強度の表である。条件:0.1mmolのアルキン含有モノマーと、0.1または0.15mmolのいずれかのアジド成分との最小量のTHF中の混合物を、2枚の「大型」銅プレートの交差する領域上にピペットでできるだけ均一に分布させた。溶媒を蒸発させた後、室温において11.4kgの力で2日間、これらのプレートを互いに押し付けた。報告されるすべての値は、それぞれ3回繰り返した少なくとも二つの独立した実験の平均であり、実験間の誤差は±1kgであった。Weld−It(登録商標)接着剤を伴う実験は再現性が低く、誤差が±3kgとなった。(a)アジド基対アルキン基の比。(b)1分間プレートによって支持された最大荷重。(c)括弧内の値は前述のようにGAPを使用して得た。(d)「Weld−It(登録商標)」はデブコン・インコーポレイテッド製造。
【0048】
ジアジドとジアルキンとから製造した材料の性能が比較的低いことは前述している。これはダンシルジアジド17を使用することで強化された(図9、エントリー3)。このジアルキンをトリアルキンで置き換えると、より強い接着剤が得られる(エントリー5〜11対2)。たとえば、1を当モル量で使用すると(アジド基対アルキン基の比を1:1.5にする)と、10〜12を使用する場合に、強力であるがあまり顕著ではない接着剤が得られ、10を使用すると幾分弱くなった(エントリー5、7、8)。可撓性トリ(アルキン)13からは、不十分な接着剤(エントリー9)が得られたが、残留ヒドロキシルをキャップしてテトラアルキン15を得ると、所望の機能を回復した(エントリー12)。構造12は、異性体11よりも多くの環を形成し、したがって鎖が短くなると予測されるが、これらのモノマーが類似の性能を示すことから、構造的剛性の考慮(13を他のトリ(アルキン)と比較することによって強調される)ほど環形成は重要でないといえる。トリプロパギルアミン(14)とペンタエリスリトールから誘導されるジアジド4との組み合わせは、アジド:アルキン比が1:1.5において同程度の接着強度を示したが、この比を1:1に調整した場合に顕著に改善された(エントリー10,11)。
【0049】
トリアルキンとの反応において、ジアジド1の代わりにトリアジド5を使用しても、材料の接着力の改善はほとんどまたはまったく見られなかった。アルキン成分の構造に関して同様の全般的傾向が見られ、5との組の場合:ジアルキン8は不良(エントリー14;しかしより剛性の高い2はより良好(エントリー13))であり、10〜12は良好(エントリー15〜17)であった。一部の相違としては、たとえば、13は10〜12よりもあまり悪化せず(エントリー18)、テトラアルキン15は実質的に良くならなかった(エントリー22)ことを挙げることができる。この場合もトリアルキン14は、(エントリー19対15〜18)は優れていたが、トリアジド5と併用する場合は、ジアジド4の場合ほど良くなかった(エントリー19対11)。これは、モノマー分岐以外の要因が重要となり得ることを示しており、おそらくは、5と4で重合反応自体の性質の相違が存在し、これについてはまだ分かっていない。5と比較してトリアジド6および7を使用した場合に観察された顕著な改善については、本明細書中で説明している。
【0050】
ジアジド4とジアルキン9との組み合わせによって、他の「線状」系に対して接着力が4倍に増加し、1gあたりの基準では5倍の改善が得られている(エントリー4対2〜3)ことに留意する。モノマー9中にアミノ基が存在することが、少なくとも一部の原因となっていると考えられる。ビス(トリアゾリル)アミン18などの構造は、鎖を架橋する手段と、より活性な銅触媒中心との両方を提供することによって貢献することができる。本発明者らは、以前に、標準的な(すなわち、非ポリマー)反応において、中心に配位窒素原子がないビス(トリアゾリル)構造は、銅のリガンドとして不十分であり、ビス(トリアゾリル)アミンおよびトリス(トリアゾリル)アミン構造よりも付加環化触媒反応が不十分となることを観察している。
【化9】

【0051】
エントリー23および24は、モノマー混合物によって、対応するモノマー対以下の強さの接着剤が得られたことを示している。対照実験(エントリー25〜28)は、大部分は明細書中で説明した。アルキン10をGAPと併用し、追加のアジドは使用しない場合には、中程度の強度の接着剤が生成され(エントリー27)、側鎖アジドポリマーは多価アルキンとのみ網目構造に互いに組み込まれ得ることを示している。二つの標準的な実験を、室温の代わりに60℃でアニールすると、得られる材料の強度の差はわずかであった(データは示していない)。
【0052】
図10は、図9に示したkg荷重/g接着剤の値の計算を示す表である。GAPを使用して行った実験は、ここには示していない。
【0053】
図11は、亜鉛プレートの場合の接着強度の予備測定をまとめた表である。(a)Cu(I)はアセトニトリル中に溶解させ、CuSO4・5H2Oおよびヒドロキノンは水中に溶解させた後、モノマーと混合した。(b)3つの独立した繰り返し実験により求めた。±3kgであるエントリー1a〜dを除けば±1kgであった。0の値は、接着が形成されなかったことを示している。(c)図9と同様にして求めた。
【0054】
図12は、亜鉛プレートの場合の接着剤gあたりの荷重kg(荷重kg/接着剤g)の結果をまとめた表である。(a)Cu(I)(ヨウ化第一銅)はアセトニトリル中に溶解させ、CuSO4・5H2Oおよびヒドロキノンは水中に溶解させた後、モノマーと混合した。(b)3つの独立した繰り返し実験により求めた。±3kgであるエントリー1a〜dを除けば±1kgであった。0の値は、接着剤が形成されなかったことを示している。(c)図10と同様にして求めた。
【0055】
図13は、使用モノマー量の関数としての最大荷重を示す表である。(a)「モノマー(mmol)」は、混合物中の両方のモノマーの合計であり、「比」は全アルキン基対アジド基の比である。したがって、この第1列は0.10mmolのジアジド1と0.10mmolのトリアルキン10との混合物を示している。(b)図10と同様にして求めた。GAPを使用した実験については計算しなかった。
【0056】
図14は、添加剤を含む場合の実験を示す表である。条件および表の表記は、図9に記載のものと同じである。(a)アステリスクを有するエントリーは、図9からのものであり、便宜上ここに再掲した。(b)塩は、モノマー混合物の導入前に予備混合した。(c)24の末端アルキン基を周囲に有する第3世代ベンジルエーテル(フレシェ(Frechet)型)デンドリマーであり、IBMのクレイグ・ホーカー博士(Dr.Craig Hawker)の好意によって提供されたものであり、全アルキン基の5%となるように使用した。
【0057】
図15は、記載の変量に関する接着強度の依存性を示す二つのチャートである。(a)モノマー1+10(各0.05mmol)を前述のようにGAPと併用し、荷重試験前に2日間にわたり、記載の圧力でインキュベーションした。(c)THF中の1+10(各0.1mmol)にGAP、大型Cuプレートを使用し;荷重試験前に記載の時間で11.4kgの圧力下でインキュベーションした。
【0058】
アニーリング圧力およびアニーリング時間を変動させる簡単な実験を行った。アニーリングを行う二つの金属プレートへの圧力が増加すると、網目構造ポリマー接着剤の形成がわずかに促進される(a)。図15bは、4日のインキュベーションの後に試験混合物の性能が最高になり、その時間を超えると徐々に低下することを示している。比較のために使用した市販の接着剤では、8日間の実験にわたって徐々に強度の低下を示した(データは示していない)。最適な数を超える架橋が形成されると、有効な接着剤として機能するにはもろすぎる網目構造が形成され得る。良好な接着は、圧力を加えずにホットプレート上100℃で銅プレートを加熱した場合にも得ることができる(データは示していない)。
【0059】
図16は、接着剤混合物の銅含有量を比較した表である。以下の実験の被着体プレートについて以下の手順を実施した。(A)0.1mmolの1+0.1mmolの8(表S1、エントリー2);(B)0.15mmolの1+0.1mmolの10(表S1、エントリー6);(C)0.15mmolの4+0.1mmolの14(表S1、エントリー11);(D)モノマーを付着させなかった2枚の銅プレート。重合および接着強度測定の後、各サンプルの2枚の銅プレートを、ポリマーが溶解することがあらかじめ分かっている量を測定した濃H2SO4中に15分間完全に浸漬した。この処理の後、銅プレートを取り出し、得られた溶液を水で希釈し、同じ媒体中で調製した標準物質を使用してバリアン・ビスタ・プロICP−AES(Varian Vista Pro ICP−AES)装置で銅含有量を分析した。以下の値が得られた。(A)0.037±0.004mmolのCu:(B)0.031±0.003mmol;(C)0.021±0.003mmol;(D)0.0060±0.0006mmol。プレート自体から浸出した外来性の銅[サンプル(D)]を引くと、各ポリマー中に取り込まれた銅の量を、アジド−アルキン付加環化が完了した場合に形成され得るトリアゾール基の総数に対する比として表すことができる。
【0060】
図17は、接着性ポリマー中に含まれる銅の量に対する、接着強度(左)と単位重量の接着剤当たりの接着強度(右)とを示す二つのグラフである。
【0061】
図18は、自己反応性の1種類のモノマーからの線状ポリマーの合成を示す反応である。rac−1−アジド−3−プロプ−2−イニルオキシ−プロパン−2−オール(rac-1-azido-3-prop-2-ynyloxy-propan-2-ol)(19)の合成。1.00g(8.9mmol、1.0当量)のrac−グリシジルプロパルギルエーテル、1.16g(17.8mmol、2.0当量)のアジ化ナトリウム、および0.95(17.8mmol、2.0当量)の塩化アンモニウムを、4.5mLのメタノール中に溶解させ、この反応混合物を加熱還流した。2時間後、薄層クロマトグラフィーによって反応終了を確認した。この混合物を室温まで冷却し、溶媒を減圧除去した。その残留物を、水と酢酸エチルとの間で分配し、その水相を酢酸エチルでさらに2回抽出した。有機相を合わせたものを水およびブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、蒸発させた。その粗生成物を、短いシリカゲルカラム上、ヘキサンおよび酢酸エチル(1/1)で溶出させるクロマトグラフィーによって精製した。複数の分画を合わせて、溶媒を除去して277mg(20%)の19を無色油として得た。1H−NMR(500MHz、CDCl3)δ4.18(d、J=2.2Hz、2H、CC−CH2−O)、3.97〜3.93(m、1H、−CH(OH)−)、3.60〜3.53(m、2H、−CH2−N3)、3.39〜3.35(m、2H、−O−CH2−CH)、2.45(t、br、J=2.2Hz、2H、HCC−、CH(OH)−)。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ジアジド1とジアルキン2との銅触媒による[3+2]付加環化によって、構造3で示される線状ポリマーが得られることを示している。
【図2】網目構造のトリアゾールの形成によって銅に接着することにつながる一連の現象を示している。
【図3】接着性ポリマーを形成する能力を試験した、選択されたアルキンおよびアジドの構造を示している。
【図4】試験を行った異なるポリマーの組み合わせの結果をまとめた三次元チャートである。
【図5】使用モノマー量の関数としての最大荷重(kg)を示すグラフである。
【図6】接着試験に使用したモノマーの合成を示す一連のスキームである。
【図7】接着試験に使用したモノマーの合成を示す一連の反応である。
【図8】接着試験に使用したモノマーの合成を示す一連の反応である。
【図9】出発モノマー、試薬の比率、および得られた接着剤について測定した強度の表である。
【図10】、図9に示したkg荷重/g接着剤の値の計算を示す表である。GAPを使用して行った実験は、ここには示していない。
【図11】亜鉛プレートの場合の接着強度の予備測定をまとめた表である。
【図12】亜鉛プレートの場合のkg荷重/g接着剤の結果をまとめた表である。
【図13】使用モノマー量の関数としての最大荷重を示す表である。
【図14】添加剤を含む場合の実験を示す表である。
【図15】記載の変量に関する接着強度の依存性を示す二つのチャートである。
【図16】接着剤混合物の銅含有量を比較した表である。
【図17】接着性ポリマー中に含まれる銅の量に対する、接着強度(左)と単位重量の接着剤当たりの接着強度(右)とを示す二つのグラフである。
【図18】自己反応性の1種類のモノマーからの線状ポリマーの合成を示す反応である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体表面上に接着性ポリマーコーティングを形成する方法であって、
多価モノマー混合物を前記固体表面上に適用するステップAであって、前記多価モノマー混合物が、複数のアジド官能基を有するモノマーと複数の末端アルキン官能基を有するモノマーとの両方を含むステップAと、
前記接着性ポリマーコーティングを前記固体表面上に形成するために、多価アジド官能基を有する前記モノマーと多価末端アルキン官能基を有する前記モノマーとの重合を触媒するステップBと
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップBにおいて、前記モノマーの前記重合がCu+によって触媒される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体表面が銅を含み、
前記ステップBにおいて、前記Cu+が、前記固体表面に由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体表面が銅である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記固体表面が、銅を含有する合金であり、銅が、前記合金中の過半量の金属を構成する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記銅合金が真鍮である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記固体表面が銅めっきを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記固体表面が還元剤を含み、
前記ステップAにおいて、前記混合物が、Cu++を潜在的に含む銅塩源も含み、
前記ステップBにおいて、Cu+の少なくとも一部は、前記固体表面の前記還元剤によって前記ステップAの前記Cu++が還元されることに由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップAにおいて、前記固体表面の前記還元剤が、Cu++をCu+に還元できる金属である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップAにおいて、前記金属が、銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびマグネシウム、あるいは銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびマグネシウムの合金からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップAにおいて、前記銅塩が、少なくとも1種類の前記多価モノマーに対して10mol%である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップAにおいて、前記多価モノマーがそれぞれ独立に式I
【化1】

(式中、「コア」は、多価基のコアであり、脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アミン、アルケニル、エーテル、カーボネート、カルバメート、スルホニル、サルフェート、チオエーテル、セレニルエーテル、および尿素からなる多価基の群から選択され、
Rは、金属イオンまたは金属表面と結合する官能基であり、存在しないか、あるいは、アミン、ヘテロアリール、カルボキシレート、サルフェート、チオール、およびヒドロキシルからなる基の群から選択されるかであり、
RGは官能基であり、アジドおよび末端アルキンからなる群より選択され、
Xは、RGを「コア」に結合させるリンカーであり、任意選択的に存在しないか、あるいは、アルキル(C1〜C20)、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミン、アリール、ヘテロアリール、および複素環式芳香族からなる二価基の群から選択され、
「n」は2以上である)で表される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記モノマーが以下の構造
【化2】

を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記好ましいモノマーが以下の構造
【化3】

を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記好ましいモノマーが以下の構造
【化4】

を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップAにおいて、
前記多価モノマーを有機溶媒中に溶解させることによって前記混合物を形成するサブステップA(1)と、
清浄な固体上に均一に前記混合物を分布させるサブステップA(2)と、
前記分布させた混合物から前記有機溶媒を蒸発させるサブステップA(3)と
によって、前記多価モノマー混合物を前記固体表面上に適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップAにおいて、
前記多価モノマーを、銅塩とともに有機溶媒中に溶解させることによって前記混合物を形成するサブステップA(1)と、
清浄な固体上に均一に前記混合物を分布させるサブステップA(2)と、
前記分布させた混合物から前記有機溶媒を蒸発させるサブステップA(3)と
によって、前記多価モノマー混合物を前記固体表面上に適用する、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の方法によって固体表面上に形成された、接着性ポリマーコーティング。
【請求項19】
二つ以上の固体表面の間に接着性ポリマー接合剤を形成する方法であって、
多価モノマー混合物を前記固体表面の間に適用するステップAであって、前記多価モノマー混合物が、複数のアジド官能基を有するモノマーと複数の末端アルキン官能基を有するモノマーとの両方を含むステップAと、
前記固体表面の間に前記接着性ポリマー接合剤を形成するために、多価アジド官能基を有する前記モノマーと多価末端アルキン官能基を有する前記モノマーとの重合を触媒するステップBと
を含む方法。
【請求項20】
前記ステップBにおいて、前記モノマーの前記重合がCu+によって触媒される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記固体表面の少なくとも1つが銅を含み、
前記ステップBにおいて、前記Cu+の少なくとも一部が前記銅固体表面に由来する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記固体表面の両方が銅である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記固体表面が、銅を含有する合金であり、銅が、前記合金中の過半量の金属を構成する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記銅合金が真鍮である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記固体表面が銅めっきを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記固体表面が還元剤を含み、
前記ステップAにおいて、前記混合物が、Cu++を潜在的に含む銅塩源も含み;
前記ステップBにおいて、Cu+の少なくとも一部は、前記固体表面の前記還元剤によって前記ステップAの前記Cu++が還元されることに由来する、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記ステップAにおいて、前記固体表面の前記還元剤が、Cu++をCu+に還元できる金属である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ステップAにおいて、前記金属が、銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびマグネシウム、あるいは銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびマグネシウムの合金からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ステップAにおいて、前記銅塩が、少なくとも1種類の前記多価モノマーに対して10mol%である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ステップAにおいて、前記多価モノマーがそれぞれ独立に式I
【化5】

(式中、「コア」は、多価基のコアであり、脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アミン、アルケニル、エーテル、カーボネート、カルバメート、スルホニル、サルフェート、チオエーテル、セレニルエーテル、および尿素からなる多価基の群から選択され、
Rは、金属イオンまたは金属表面と結合する官能基であり、存在しないか、あるいは、アミン、ヘテロアリール、カルボキシレート、サルフェート、チオール、およびヒドロキシルからなる基の群から選択されるかであり、
RGは官能基であり、アジドおよび末端アルキンからなる群より選択され、
Xは、RGを「コア」に結合させるリンカーであり、任意選択的に存在しないか、あるいは、アルキル(C1〜C20)、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミン、アリール、ヘテロアリール、および複素環式芳香族からなる二価基の群から選択され、
「n」は2以上である)で表される、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記モノマーが以下の構造
【化6】

を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記好ましいモノマーが以下の構造
【化7】

を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記好ましいモノマーが以下の構造
【化8】

を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ステップAにおいて、
前記多価モノマーを有機溶媒中に溶解させることによって前記混合物を形成するサブステップA(1)と、
清浄な固体上に均一に前記混合物を分布させるサブステップA(2)と、
前記分布させた混合物から前記有機溶媒を蒸発させるサブステップA(3)と
によって、前記多価モノマー混合物を前記固体表面上に適用する、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
前記ステップBにおいて、前記モノマーの前記重合を触媒するあいだに、一定圧力を加えることで、前記固体表面を互いに物理的に接触させる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ステップAにおいて、
前記多価モノマーを、銅塩とともに有機溶媒中に溶解させることによって前記混合物を形成するサブステップA(1)と、
清浄な固体上に均一に前記混合物を分布させるサブステップA(2)と、
前記分布させた混合物から前記有機溶媒を蒸発させるサブステップA(3)と
によって、前記多価モノマー混合物を前記固体表面上に適用する、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記ステップBにおいて、前記モノマーの前記重合を触媒するあいだに、一定圧力を加えることで、前記固体表面を互いに物理的に接触させる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項19〜37のいずれかに記載の方法によって二つ以上の固体表面の間に形成された接着性ポリマー接合剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−507404(P2008−507404A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522824(P2007−522824)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/026177
【国際公開番号】WO2006/012569
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(501244222)ザ スクリプス リサーチ インスティテュート (33)
【Fターム(参考)】