説明

クリップ

【課題】 繰り返し使用でもクリップの保持力を維持することができ、また、抜去力が大きいクリップを得る。
【解決手段】 グロメット18の螺合部48を容易に縮径させることで、クリップ12の挿入力を低減させることができると共に、クリップ12をウェルドナット56内へ挿入するときに、グロメット18の雄ねじ部48Aのねじ山がなめられることを防止することができ、繰り返し使用しても、クリップ12の保持力を維持することができる。また、ピン16の張出部30の下フランジ部24側に楔面38を形成し、中央部を下フランジ部24側へ向かって突出させると共に、螺合部48の根元部に、螺合部48の先端部へ向かって互いに近接する方向へ傾斜する係止面50を形成することで、ピン16に抜去力が加わると、螺合部48を押広げる方向へ力が加わるようにして、クリップ12の抜去力を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアトリムをボディパネルに固定するとき等に用いられるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアトリムをボディパネルに固定するとき、グロメットとピンで構成されたクリップが用いられる場合がある。例えば、特許文献1では、略円柱状のピンの外周面には雄ねじ部が形成されている。一方、略円筒状のグロメットの円筒部の内面には、雄ねじ部が係合可能な螺旋状の突条が形成されている。
【0003】
ピンをグロメットに挿入し仮止めさせた状態で、2枚の板材にそれぞれ形成された取付穴内へピン及びグロメットを挿入し、グロメットの頭部に設けられた鍔部の下面が上部の板材の上面に当接した状態で、ピンの頭部をグロメットの円筒部の奥方へさらに押込む。
【0004】
これにより、雄ねじ部のねじ山が突条のねじ山を乗り越えながら、挿入孔内を進行する。一方、グロメットの円筒部の奥方にはテーパ面が設けられており、内径寸法が小さくなっている。
【0005】
また、円筒部には軸方向に沿ってスリットが形成されており、雄ねじ部のねじ山が該テーパ面に当接した状態で、さらに、ピンを押し込むと、テーパ面を有する拡径部が拡径する。拡径部が拡径した状態で、拡径部とグロメットの鍔部とで板材を挟持することで、クリップを介して板材同士を締結させることができる。
【0006】
また、クリップを板材から取外すときは、ピンを回転させて、グロメットから抜け上がらせることで、拡径部が元の径に復元する。これにより、グロメットを板材から抜き取ることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の場合、円筒部の鍔部側(基部側)にはスリットが形成されておらず、円筒部の基部側が拡径することはない。このため、クリップを繰り返し使用すると、ピンのねじ山がなめられ、ピンとグロメットの係合力が低くなってしまい、2枚の板材を固定させた状態での保持力やグロメットをピンから外すときの抜去力が小さくなってしまう。
【特許文献1】特公平7−76568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事実を考慮して、繰り返し使用でもクリップの保持力を維持することができ、また、抜去力が大きいクリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ピンとグロメットとからなり、雌ねじ部が設けられた取付部材へ装着され、前記ピンに取付けられた被取付部材を前記取付部材へ固定するクリップであって、前記グロメットが、前記雌ねじ部へ挿入される基部と、前記基部から互いに斜め方向へ延出して弾性変形して接近する分岐片と、前記分岐片の内面に形成され分岐片の先端に向かい互いに接近する方向へ傾斜する係止面と、前記分岐片の先端部の外面に形成され該分岐片が接近した状態で前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部と、で構成され、前記ピンが、前記基部と前記係止面の間に収納される張出部と、前記張出部に形成され、抜去力が作用すると、前記係止面と当接して、前記分岐片を押し広げる楔面と、前記張出部に連結され前記張出部より小径で、張出部へ抜去力、挿入力、回転力を与えることができる柱部と、で構成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明では、グロメットが、雌ねじ部へ挿入される基部を備えている。該基部からは互いに斜め方向へ向かう分岐片が延出しており、弾性変形して互いに接近する。また、分岐片の先端部の外面には雄ねじ部を形成しており、分岐片が互いに接近した状態で取付部材の雌ねじ部と螺合する。
【0011】
クリップを雌ねじ部内へ挿入すると分岐片が互いに接近するため、雌ねじ部内を容易に通過させることができる。このため、クリップの雌ねじ部への挿入力を低減させることができると共に、クリップを雌ねじ部へ挿入するときに、分岐片の雄ねじ部のねじ山がなめられることを防止することができ、繰り返し使用でも、クリップの保持力を維持することができる。
【0012】
一方、分岐片の雄ねじ部が雌ねじ部と螺合した状態で、分岐片は復元するものの、完全に復元するわけではなく、互いに接近した状態である。つまり、分岐片は雌ねじ部側へ突っ張った状態となり、雄ねじ部の雌ねじ部への食い付きが強くなる。これにより、クリップの保持力を高くすることができると共に、クリップの抜去力を大きくすることができる。
【0013】
ここで、ピンをグロメットから抜去する抜去力が加わったとき、分岐片が互いに接近すると、ピンは簡単にグロメットから外れてしまうこととなるが、本発明では、ピンに楔面を設け、グロメットには楔面と当接する係止面を設けて、該抜去力が加わったとき、楔面が係合面に当接して、分岐片を押し広げるようにする。これにより、挿入し易いクリップであるにも拘わらず、抜去力を大きくすることができる。
【0014】
このため、ピンをグロメットから取外すときはピンを回転させなければならないが、基部と係止面の間に張出部が収納されるため、該張出部を介してグロメットを回転させるようにすることで、ピンとグロメットとが一体に回転することとなり、雌ねじ部からクリップを取外すときに、ピンとグロメットを一緒に取外すことができ、作業性が良い。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項2に記載のクリップにおいて、前記係止面と前記楔面の傾斜角度が同じであることを特徴とする。請求項2に記載の発明では、係止面と楔面の傾斜角度を同じにすることで、係止面と楔面とが面接触することとなり、分岐片を確実に押し広げることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のクリップにおいて、前記柱部の先端部に設けられたフランジ部の上面に係合溝を形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明では、フランジ部の上面に係合溝を設けることで、コインやドライバーなどを用いてクリップを回転させることができ、雌ねじ部からクリップを取外すときに便利である。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のクリップにおいて、前記張出部の先端に被係合部が設けられ、前記基部に前記被係合部と係合可能な係合部が設けられて、前記被係合部に前記係合部が係合された状態で、前記グロメットが前記ピンに仮止めされることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明では、張出部に被係合部を設け、基部に係合部を設けて、被係合部に係合部が係合された状態で、グロメットがピンに仮止めされるため、グロメット或いはピンが紛失したりする恐れがない。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載のクリップにおいて、前記張出部の先端部には、前記分岐片の根元部と前記係合部の間に挿入されたとき、根元部と当接する傾斜面があることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明では、張出部の先端部には、分岐片の根元部と係合部の間に挿入される傾斜面を設けており、該傾斜面を根元部と当接させることで、ピンとグロメットが係合した状態で、ピンの先端部の外形を保持することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載のクリップにおいて、前記分岐片の先端部の内面は前記柱部に沿う円弧状に凹設されていることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明では、分岐片の先端部の内面を柱部に沿う円弧状に凹設することで、分岐片の先端部の肉厚を一定にして、雄ねじ部の保持力が周方向に置いて、均一となるようにしている。
【0024】
請求項7に記載の発明は、請求項3〜6の何れか1項に記載のクリップにおいて、前記フランジ部の下部にフランジ部と平行に下部フランジ部が設けられ、前記被取付部材に形成された切欠き部に前記柱部が挿入され、前記フランジ部と前記下部フランジ部で前記被取付部材が挟まれることを特徴とする。
【0025】
請求項7に記載の発明では、フランジ部の下部に下部フランジ部を設け、被取付部材に形成された切欠き部に柱部を挿入し、フランジ部と下部フランジ部で被取付部材を挟むようにすることで、クリップを被取付部材に先付け(仮止め)することができる。このため、取付部材に対してはフランジ部を押圧するだけでワンタッチで被取付部材を取り付けることができるため、インパクトが不要となり、作業性が良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記構成としたので、請求項1に記載の発明では、クリップを雌ねじ部内へ挿入すると分岐片が互いに接近するため、雌ねじ部内を容易に通過させることができる。このため、クリップの雌ねじ部への挿入力を低減させることができると共に、クリップを雌ねじ部へ挿入するときに、分岐片の雄ねじ部のねじ山がなめられることを防止することができ、繰り返し使用でも、クリップの保持力を維持することができる。
【0027】
また、分岐片の雄ねじ部が雌ねじ部と螺合した状態で、分岐片は互いに接近した状態であるため、分岐片は雌ねじ部側へ突っ張った状態となり、雄ねじ部の雌ねじ部への食い付きが強くなる。これにより、クリップの保持力を高くすることができると共に、クリップの抜去力を大きくすることができる。
【0028】
さらに、ピンに楔面を設け、グロメットには楔面と当接する係止面を設けて、該抜去力が加わったとき、楔面が係合面に当接して、分岐片を押し広げるようにすることで、挿入し易いクリップであるにも拘わらず、抜去力を大きくすることができる。
【0029】
請求項2に記載の発明では、係止面と楔面とが面接触することとなり、分岐片を確実に押し広げることができる。
【0030】
請求項3に記載の発明では、コインやドライバーなどを用いてクリップを回転させることができ、雌ねじ部からクリップを取外すときに便利である。
【0031】
請求項4に記載の発明では、被係合部に係合部が係合された状態で、グロメットがピンに仮止めされるため、グロメット或いはピンが紛失したりする恐れがない。
【0032】
請求項5に記載の発明では、張出部の先端部に設けた傾斜面を分岐片の根元部と当接させることで、ピンとグロメットが係合した状態で、ピンの先端部の外形を保持することができる。
【0033】
請求項6に記載の発明では、分岐片の先端部の肉厚を一定にして、雄ねじ部の保持力が周方向に置いて、均一となるようにしている。
【0034】
請求項7に記載の発明では、クリップを被取付部材に先付け(仮止め)することができるため、取付部材に対してはフランジ部を押圧するだけでワンタッチで被取付部材を取り付けることができるため、インパクトが不要となり、作業性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るクリップについて説明する。
【0036】
図5に示すように、車両用のドアトリム10がクリップ12を介してボディパネル14に固定される。クリップ12は、図2に示すように、略円柱状のピン16と、ピン16と係合する略V字状のグロメット18と、で構成されている。
【0037】
ピン16は柱部としての軸部20を備えており、軸部20の一端側には、円板状の上フランジ部22及び下フランジ部24が所定の間隔を空けて配置されており、上フランジ部22と下フランジ部24の間には、軸部20の外径寸法よりも大きい円柱状の首部26が設けられている。また、上フランジ部22の上面には、1本の係合溝28(図1参照)が直径方向に形成されている。
【0038】
一方、軸部20の他端側には、軸部20の外径寸法よりも大きく、横断面が弓形形状の一対の張出部30が対面して設けられており、先端側が先細形状となっている。張出部30の下フランジ部24側には楔面38を形成しており、中央部が下フランジ部24側へ向かって一番高くなるように突出している。
【0039】
また、張出部30と張出部30の間には、張出部30よりも先端側が短い係合凹部32が凹設されている。係合凹部32の先端側には、それぞれ傾斜面34が突出しており、先端部へ行くに従って外面が互いに近接している。また、係合凹部32の先端部には、被係合部としての矩形穴36が形成されている。
【0040】
一方、グロメット18は、基部40を備えており、基部40の内面中央部には、係合部としての直方体状の係合リブ42が設けられている。この係合リブ42が矩形穴36に係合し、グロメット18がピン16に対して回り止めされた状態で仮止めされるようになっている。
【0041】
また、係合リブ42の根元部からは、外側へ向かって広がる、横断面が円弧状の一対の第1アーム(分岐片)44が形成されている。第1アーム44には第2アーム(分岐片)46が連続して設けられており、第1アーム44よりも小さい角度で外側へ向かって広がっている。
【0042】
この第1アーム44及び第2アーム46の幅は、係合凹部32と略同一となっており、係合リブ42が矩形穴36に係合された状態で、第1アーム44及び第2アーム46が係合凹部32と係合し、張出部30と共にピン16の先端側の外周面の一部を構成する(図1参照)。このとき、係合凹部32の傾斜面34には、第1アーム44の内面が当接し(図4及び図5参照)、第1アーム44の位置を保持するようにしている。
【0043】
また、第2アーム46の先端部には、第2アーム46よりも拡幅された円弧状の螺合部(分岐片)48が周方向で約115°に渡って設けられており、螺合部48の外面には約60°に渡って雄ねじ部48Aが形成されている。
【0044】
螺合部48は第2アーム46よりもやや大きい角度で外側へ向かって広がっている。この螺合部48及び第2アーム46が、第2アーム46の第1アーム44側を支点として容易に縮径可能となっている(図4及び図5参照)。
【0045】
また、螺合部48の根元部には、螺合部48の先端部へ向かって互いに近接する方向へ傾斜する係止面50を形成している(図3参照)。この係止面50はピン16に設けられた楔面38に当接可能となっており、係止面50の傾斜角度は、楔面38の傾斜角度と略同一としている。
【0046】
また、螺合部48の雄ねじ部48Aの外径は、自然状態でボディパネル14に設けられたウェルドナット56の雌ねじ部56Aの谷の径よりも大きくなるようにしており、螺合部48の雄ねじ部48Aとウェルドナット56の雌ねじ部56Aが螺合した状態で、螺合部48互いに近接し弾性変形した状態である。
【0047】
さらに、図4に示すように、螺合部48は縮径した状態で、ウェルドナット56の雌ねじ部56Aの内径寸法よりも小さくなるようにしており、グロメット18をピン16に係合させた状態のクリップ12をウェルドナット56内へ挿入するとき、ウェルドナット56の雌ねじ部56Aによってグロメット18の螺合部48が縮径する。
【0048】
次に、本発明の実施の形態に係るクリップ12の作用について説明する。
【0049】
図4及び図5に示すように、螺合部48及び第2アーム46を容易に縮径可能とし、螺合部48が縮径した状態で、ウェルドナット56の雌ねじ部56Aの内径寸法よりも小さくなるようにすることで、クリップ12を取付穴52内に挿入するとき、取付穴52内をスムーズに通過させることができるようにしている。
【0050】
また、クリップ12をウェルドナット56内へ挿入するとき、グロメット18の螺合部48を容易に縮径させることで、クリップ12のウェルドナット56内への挿入力を低減させることができると共に、グロメット18の雄ねじ部48Aのねじ山がなめられることを防止することができ、繰り返し使用しても、クリップ12の保持力を維持することができる。
【0051】
また、螺合部48の雄ねじ部48Aの外径は、自然状態でボディパネル14に設けられたウェルドナット56の雌ねじ部56Aの谷の径よりも大きくなるようにしているため、螺合部48の雄ねじ部48Aとウェルドナット56の雌ねじ部56Aが螺合した状態で、螺合部48及び第2アーム46は復元するものの、完全に復元するわけではなく、互いに接近した状態(弾性変形した状態)である。 つまり、螺合部48は雌ねじ部56A側へ突っ張った状態となり、雄ねじ部48Aの雌ねじ部56Aへの食い付きが強くなる。これにより、クリップ12の保持力を高くすることができると共に、クリップ12の抜去力を大きくすることができる。
【0052】
また、張出部30の上面(下フランジ部24側)に楔面38を形成し、中央部を下フランジ部24側へ向かって突出させると共に、螺合部48の根元部に、螺合部48の先端部へ向かって互いに近接する方向へ傾斜する係止面50を形成している。
【0053】
螺合部48は縮径方向へ弾性変形可能としているため、ピン16をグロメット18から引き抜く方向へ力が加わったときに、螺合部48が縮径すると、螺合部48は雌ねじ部56Aから外れ易くなってしまう。
【0054】
このため、本発明では、ピン16に抜去力が加わると、ピン16の係止面50とグロメット18の楔面38とが当接し、係止面50を介して楔面38を押圧することとなるが、このとき、螺合部48を押広げる方向へ力が加わるようにしている。
【0055】
これにより、螺合部48の雄ねじ部48Aとウェルドナット56の雌ねじ部56Aの食い付きが増大し、クリップ12の抜去力が大きくなる。つまり、挿入し易いクリップ12であるにも拘わらず、抜去力を大きくすることができる。ここで、楔面38と係止面50の傾斜角度を同じにすることで、楔面38と係止面50とが面接触することとなり、螺合部48をさらに確実に押し広げることができる。
【0056】
一方、クリップ12をウェルドナット56から取外すときはピン16を回転させなければならないが、上フランジ部22の上面に係合溝28を設けているため、コインやドライバーなどを用いてピン16を回転させることができ、クリップ12をウェルドナット56から取外すときに便利である。
【0057】
ここで、ピン16の先端部に矩形穴36を形成し、グロメット18の側には、該矩形穴36に係合可能な略直方体状の係合リブ42を設けて、矩形穴36に係合リブ42が係合した状態で、グロメット18がピン16に対して回り止めされるようにすることで、ピン16を回転させると、グロメット18も一緒に回転することとなる。このため、ウェルドナット56からクリップ12を取外すときに、グロメット18とピン16を一緒に取外すことができるため、作業性が良い。
【0058】
また、係合リブ42が矩形穴36に係合した状態で、ピン16とグロメット18とは一体となり仮止めされるため、グロメット18或いはピン16が紛失したりする恐れがない。
【0059】
次に、本発明の実施の形態に係るクリップを用いて、被取付部材を取付部材へ固定する固定方法について説明する。
【0060】
図1及び図4に示すように、被取付部材としてのドアトリム10には首部26が挿通可能な切欠き部54が形成されており、ピン16の首部26を該切欠き部54内へ挿入する。
【0061】
首部26の長さは、ドアトリム10の肉厚と略同一となっており、首部26を切欠き部54へ挿入した状態で、上フランジ部22と下フランジ部24とでドアトリム10が挟まれ、グロメット18がピン16に係合された状態のクリップ12がドアトリム10に仮止めされる。
【0062】
一方、図1、図2及び図4に示すように、取付部材としてのボディパネル14には取付穴52が形成されており、該取付穴52の周縁部にはウェルドナット56が取り付けられている。
【0063】
図4及び図5に示すように、クリップ12がドアトリム10に仮止めされた状態で、ボディパネル14に形成された取付穴52及びウェルドナット56の雌ねじ部56Aにピン16の先端部を挿入し、ウェルドナット56の雌ねじ部56Aを螺合部48の雄ねじ部48Aに螺合させる。そして、下フランジ部24の下面がボディパネル14に当接するまで上フランジ部22を押圧する。
【0064】
ここで、螺合部48の雄ねじ部48Aがウェルドナット56のねじ山を乗り越える際、螺合部48は容易に縮径しウェルドナット56内をスムーズに通過可能となる。このため、ウェルドナット56内へクリップ12を容易に挿入することができる。
【0065】
下フランジ部24の下面がボディパネル14に当接し、ウェルドナット56の雌ねじ部56Aの螺合部48の雄ねじ部48Aが螺合した状態で、螺合部48は雌ねじ部56A側へ突っ張った状態となり、螺合部48の雄ねじ部48Aがウェルドナット56の雌ねじ部56Aに確実に食い付き、クリップ12がボディパネル14に保持され、クリップ12を介してドアトリム10がボディパネル14に固定される。
【0066】
このように、クリップ12をドアトリム10に先付け(仮止め)することで、ボディパネル14に対してクリップ12を押圧するだけでワンタッチでドアトリム10を取り付けることができ、インパクトが不要となり、作業性が良い。
【0067】
一方、ボディパネル14からクリップ12を取外す等するときは、上フランジ部22の係合溝28内にコイン或いはドライバーを係合させ、ピン16を回転させる。このとき、ピン16とグロメット18は一体となって回転するため、ピン16と共にグロメット18が回転し、螺合部48の雄ねじ部48Aがウェルドナット56の雌ねじ部56Aから外れ、クリップ12がボディパネル14から外れる。
【0068】
なお、本形態はあくまでも一実施例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。例えば、ここでは、分岐片を2本としたが、4本設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態に係るクリップを用いてドアトリムをボディパネルに固定する方法を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るクリップを示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るクリップを示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るクリップを示す断面図であり、ドアトリムをボディパネルに固定させる状態を示している。
【図5】本発明の実施の形態に係るクリップを示す断面図であり、ドアトリムをボディパネルに固定した状態を示している。
【符号の説明】
【0070】
10 ドアトリム(被取付部材)
12 クリップ
14 ボディパネル(取付部材)
16 ピン(クリップ)
18 グロメット(クリップ)
20 軸部(柱部)
22 上フランジ部(フランジ部)
24 下フランジ部
28 係合溝
30 張出部
32 係合凹部
34 傾斜面
36 矩形穴(被係合部)
38 楔面
40 基部
42 係合リブ(係合部)
44 第1アーム(分岐片)
46 第2アーム(分岐片)
48A 雄ねじ部
48 螺合部(分岐変)
50 係止面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンとグロメットとからなり、雌ねじ部が設けられた取付部材へ装着され、前記ピンに取付けられた被取付部材を前記取付部材へ固定するクリップであって、
前記グロメットが、前記雌ねじ部へ挿入される基部と、前記基部から互いに斜め方向へ延出して弾性変形して接近する分岐片と、前記分岐片の内面に形成され分岐片の先端に向かい互いに接近する方向へ傾斜する係止面と、前記分岐片の先端部の外面に形成され該分岐片が接近した状態で前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部と、で構成され、
前記ピンが、前記基部と前記係止面の間に収納される張出部と、前記張出部に形成され、抜去力が作用すると、前記係止面と当接して、前記分岐片を押し広げる楔面と、前記張出部に連結され前記張出部より小径で、張出部へ抜去力、挿入力、回転力を与えることができる柱部と、で構成されていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記係止面と前記楔面の傾斜角度が同じであることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記柱部の先端部に設けられたフランジ部の上面に係合溝を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記張出部の先端に被係合部が設けられ、前記基部に前記被係合部と係合可能な係合部が設けられて、前記被係合部に前記係合部が係合された状態で、前記グロメットが前記ピンに仮止めされることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のクリップ。
【請求項5】
前記張出部の先端部には、前記分岐片の根元部と前記係合部の間に挿入されたとき、根元部と当接する傾斜面があることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のクリップ。
【請求項6】
前記分岐片の先端部の内面は前記柱部に沿う円弧状に凹設されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のクリップ。
【請求項7】
前記フランジ部の下部にフランジ部と平行に下部フランジ部が設けられ、前記被取付部材に形成された切欠き部に前記柱部が挿入され、前記フランジ部と前記下部フランジ部で前記被取付部材が挟まれることを特徴とする請求項3〜6の何れか1項に記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−226471(P2006−226471A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43157(P2005−43157)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】