説明

クリヤー塗料組成物

【課題】加熱硬化しても黄変が極めて少ないクリヤー塗料組成物を提供する。
【解決手段】エステル部が炭素数9〜15の長鎖炭化水素基である長鎖(メタ)アクリル酸エステルモノマーをモノマー全量に対して10〜15質量%含み、かつ、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーおよび水酸基含有(メタ)アクリルモノマーを含むモノマー混合物から得られ、数平均分子量が4000〜6000、固形分酸価が1〜5mgKOH/gであるアクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、ヒンダードフェノール系抗酸化剤およびリン系抗酸化剤を含有することを特徴とするクリヤー塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリヤー塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体等の塗装においては、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を含有する上塗り塗膜を形成することが広く行われている。特にクリヤー塗膜は、自動車車体等の塗膜における最外層を構成するものであることから、意匠性、耐酸性、耐擦り傷性等の諸物性が求められている。
【0003】
従来、自動車塗装用のクリヤー塗料として、アクリル/メラミン樹脂熱硬化型塗料が使用されていた。しかし、このようなメラミン樹脂を硬化剤として用いることにより得られる塗膜は、耐酸性に劣るため、酸性雨により劣化され易く、外観上の不具合を生じるおそれがあった。
【0004】
このようなアクリル/メラミン樹脂系硬化型塗料の問題点を解決できるクリヤー塗料として、酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料がある。しかしながら、酸/エポキシ硬化型塗料は、従来のアクリル/メラミン樹脂系硬化型と比べて、加熱硬化時のクリヤー塗膜の黄変が著しく、ホワイトマイカ色等の淡彩色の設計が困難であるという不具合があった。そのため、抗酸化剤としてリン系抗酸化剤にラクトン系抗酸化剤を併用することにより、得られるクリヤー塗膜の加熱硬化時における黄変を低減することができる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、アクリル/メラミン樹脂系硬化型の問題点を解決できるクリヤー塗料として、ウレタン系塗料が知られている。ウレタン系塗料は一般に熱に弱い基材の塗装に用いられ、その多くは常温硬化型であるため、酸/エポキシ硬化型塗料のような加熱時の黄変は顕在化していなかった。
【0006】
しかし、近年、さらなる耐擦り傷性を得るためにウレタン系塗料を加熱硬化する試みがなされている。すなわち高い架橋密度の塗膜を得るために加熱硬化されている。この場合、酸/エポキシ硬化型塗料と同様に黄変することが懸念される。この問題点に対して、金属不活性化剤に加えて、ホスファイト系抗酸化剤あるいは脱塩素キャッチャー剤いずれか1つを含有する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これは、下層からブリードする物質に対しての効果であり、クリヤー塗料組成物単独での加熱硬化時の黄変の低減に対する効果は不充分であった。
【特許文献1】特開2002−241675号公報
【特許文献2】特開平10−28924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の現状に鑑み、加熱硬化しても黄変が極めて少ないクリヤー塗料組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エステル部が炭素数9〜15の長鎖炭化水素基である長鎖(メタ)アクリル酸エステルモノマーをモノマー全量に対して10〜15質量%含み、かつ、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーおよび水酸基含有(メタ)アクリルモノマーを含むモノマー混合物から得られ、数平均分子量が4000〜6000、固形分が1〜5mgKOH/gであるアクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、ヒンダードフェノール系抗酸化剤およびリン系抗酸化剤を含有することを特徴とするクリヤー塗料組成物である。
【0009】
上記ヒンダードフェノール系抗酸化剤およびリン系抗酸化剤の含有量は、各々、塗料組成物中の固形分に対して、0.5〜5質量%であることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明のクリヤー塗料組成物は、エステル部が炭素数9〜15の直鎖炭化水素基である長鎖(メタ)アクリル酸エステルモノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー、及び、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーを含んだモノマー混合物から得られるアクリル樹脂を含むものである。一般に、ポリイソシアネート化合物を用いた塗料を用いた場合であっても、加熱硬化による塗膜の黄変は避けられないものであった。しかしながら、本発明のクリヤー塗料組成物によれば、加熱硬化による黄変を極力少なくし、かつ、耐酸性および耐擦り傷性を有する塗膜を得ることができる。これは、ヒンダードフェノール系抗酸化剤およびリン系抗酸化剤により、加熱硬化時に発生する着色物質と考えられる過酸化物ラジカル物質の発生を抑制することができることによると考えられる。
【0011】
上記長鎖(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、例えば、下記一般式(A)
【化1】

(Rは水素又はメチル基、nは8〜14の自然数を表す)で表されるものである。
【0012】
上記長鎖(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、エステル部が炭素数9〜15の直鎖炭化水素基であれば、特に限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ノニルを挙げることができる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記モノマー混合物中の長鎖(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量は、モノマー固形分全量に対して10〜15質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、クリヤー塗膜のベース塗膜側への影響を充分に抑制することが困難であるおそれがある。一方、15質量%を超えると、再塗装の際の密着性が低下するおそれがある。
【0014】
上記カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸を挙げることができる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーを用いることにより、優れた意匠性の塗膜を形成することができる。このような効果は、カルボキシル基の会合によって上記アクリル樹脂の見かけの分子量を高めることができるため、上記アクリル樹脂のベース塗膜への浸透を防止することができるからであると推測される。
【0015】
上記水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、特に限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、メタクリルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物等を挙げることができる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上述した長鎖(メタ)アクリル酸エステルモノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー及び水酸基含有(メタ)アクリルモノマーを含むモノマー混合物から、上記アクリル樹脂を得ることができる。また、上記モノマー混合物は、その他の不飽和モノマーを含有してもよい。
【0017】
上記その他の不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等のエステル部の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸環状炭化水素エステル;(メタ)アクリル酸イソボロニル;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、重合度2〜10のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル;及び、炭素数1〜3のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート等のほか、(メタ)アクリルアミド;スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルトルエン、アクリロニトリル等のビニル化合物;並びに、クロトン酸エステル類;マレイン酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類等の不飽和二塩基酸のジエステルを挙げることができる。上記その他の不飽和モノマーは、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記アクリル樹脂を得るための重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合、分散重合、乳化重合等の公知の方法を使用することができる。
【0019】
上記アクリル樹脂は、固形分酸価が1〜5mgKOH/gである。
固形分を上記範囲内とすることにより、カルボキシル基の会合によって見かけの分子量を高めることができるため、上記アクリル樹脂のベース塗膜への浸透を防止することができ、優れた意匠性の塗膜を形成することができる。
固形分酸価が1mgKOH/g未満であると、会合する点が少なくなり、見かけの分子量を上昇させることが困難になるため、優れた意匠性を有する塗膜の形成が困難になるおそれがある。固形分酸価が5mgKOH/gを超えると、粘度が高くなりすぎ、高固形分の塗料組成物になりにくい場合がある。
【0020】
上記アクリル樹脂は、固形分水酸基価が50〜140mgKOH/gであることが好ましい。固形分水酸基価が50mgKOH/g未満であると、硬化性が低下するおそれがある。固形分水酸基価が140mgKOH/gを超えると、塗膜の耐水性が低下するおそれがある。固形分水酸基価は80〜140mgKOH/gであることがより好ましい。なお、上記固形分及び水酸基価は、原料モノマーの配合比によって調整することができる。
【0021】
上記アクリル樹脂は、数平均分子量(Mn)が4000〜6000のものである。数平均分子量(Mn)が4000未満であると、塗料の硬化性が充分でないおそれがあり、6000を超えると、粘度が高くなり、高固形分の塗料組成物になりにくい場合がある。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0022】
上記アクリル樹脂は、ガラス転移点温度(Tg値)が−30〜50℃であることが好ましい。Tg値が−30℃未満であると、塗膜硬度が低下するおそれがあり、また、塗料液温度の変動によって形成される塗膜の膜厚にばらつきが生じるおそれがある。一方、50℃を超えると、粘度が高くなりすぎ、高固形分の塗料組成物になりにくい場合がある。上記アクリル樹脂のTg値は、−10〜30℃であることがより好ましい。
【0023】
上記アクリル樹脂のTg値は、例えば、構成するモノマー又はホモポリマーの既知のTg値と組成比とから計算することによって算出することができる。
【0024】
上記クリヤー塗料組成物は、カルボキシル基及および水酸基と硬化可能な硬化剤であるポリイソシアネート化合物を含有するものである。
【0025】
上記ポリイソシアネート化合物としては、2以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族環式イソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル等の脂環族イソシアネート、これらのヌレート体、ビューレット体、アダクト体等の多量体及び混合物等を挙げることができる。なかでも、耐候性の点から、ヌレート体が好ましい。
【0026】
上記硬化剤は、上記アクリル樹脂が有するカルボキシル基及び/又は水酸基と硬化可能な官能基を有するものである。上記アクリル樹脂が有するカルボキシル基及び/又は水酸基と硬化可能な官能基の官能基量比は、1/1.5〜1.5/1であることが好ましい。上記官能基量比が1/1.5未満であると、硬化性が不十分となり、1.5/1であると、硬化膜が固くなりすぎ脆くなる。上記官能基量比は、1.4/1〜1/1.4であることがより好ましい。
【0027】
本発明において使用するクリヤー塗料組成物は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤と、リン系抗酸化剤を含有するものである。これらを含有することにより、加熱硬化時に発生する着色物質と考えられる過酸化物ラジカル物質の発生を抑制することができ、加熱硬化による黄変を極力少なくすることができると考えられる。
【0028】
上記ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレネーテットフェノール、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アセテート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
好ましいヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。
また、市販のヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、例えば、IRGANOX1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0029】
上記リン系抗酸化剤としては、例えば、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4−イソプロピリデン−ジフェノールアルキルホスファイト、トリス(モノ及びジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−ビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、テトラトリデシル−4,4 −ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)−ジ−ホスファイト、ヘキサトリデシル1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等が挙げられる。
【0030】
好ましいリン系抗酸化剤は、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−ビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、テトラトリデシル−4,4−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)−ジ−ホスファイトである。
【0031】
市販のリン系抗酸化剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のIRGAFOS 126、IRGAFOS 38、IRGAFOS P−EPQ、IRGAFOS P−EPQ FF、IRGAFOS P−EPQ FD;住友化学社製のスミライザーTNP、スミライザーTPP−R、スミライザーP−16;旭電化社製のアデカスタブPEP−2、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−8F、アデカスタブPEP−8W、アデカスタブPEP−11C、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブP、アデカスタブQL、アデカスタブ522A、アデカスタブ329K、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ517、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP、三光社製のHCA等が挙げられる。
【0032】
上記ヒンダードフェノール系抗酸化剤およびリン系抗酸化剤は、それぞれ塗料組成物中の全固形分の重量に対して0.5〜5重量%であることが好ましい。より好ましくは0.8〜3重量%、更に好ましくは1〜2重量%の量で配合することができる。0.5重量%を下回ると焼き付け時の黄変が顕著に認められるおそれがあり、5重量%を超えると塗膜の硬化性が低下するおそれがある。
【0033】
上記クリヤー塗料組成物中には、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、架橋樹脂粒子、表面調整剤等を配合しても良い。上記架橋樹脂粒子を用いる場合は、本発明の硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対して、下限0.01質量%、上限10質量%の割合で配合することが好ましい。上記下限は、0.1質量%であることがより好ましく、上記上限は、5質量%であることがより好ましい。上記架橋樹脂粒子の添加量が10質量%を超えると得られる塗膜の外観が悪化するおそれがあり、0.01質量%未満であるとレオロジーコントロール効果が得られないおそれがある。
【0034】
上記クリヤー塗料組成物は、上記アクリル樹脂を含有する組成物と、上記ポリイソシアネート化合物との2液硬化型の塗料組成物であることが好ましい。
【0035】
本発明のクリヤー塗料組成物は、基材上に塗布してクリヤー塗膜を形成することができる。上記基材としては、例えば金属成型品、プラスチック成型品、発泡体等を挙げることができるが、自動車用の複層塗膜を形成させる基材としては、鉄、アルミニウム、亜鉛系基材及びこれらの合金等の金属成型品やプラスチック成型品等を挙げることができる。なかでも、カチオン電着塗装可能な金属成型品に対して適用することが好ましい。上記基材は、表面が化成処理されていることが好ましい。更に、基材は電着塗膜が形成されていてもよい。上記電着塗料としては、上記カチオン型及びアニオン型を使用することができるが、防食性の観点から、カチオン型電着塗料であることが好ましい。さらに、この電着塗膜上に中塗り塗膜、ベース塗膜および/または別のクリヤー塗膜が形成されていてもよい。
上記中塗り塗膜、ベース塗膜および別のクリヤー塗膜としては特に限定されず、各々、中塗り塗料、ベース塗料、および、別のクリヤー塗料を塗布して得られるものである。上記中塗り塗料、ベース塗料、および、別のクリヤー塗料は、当業者にとって自明のものを挙げることができる。形態としては特に限定されず、有機溶剤型塗料、水性塗料、粉体塗料等が挙げられる。
【0036】
上記中塗り塗料、ベース塗料、および、別のクリヤー塗料の塗布方法は特に限定されず、例えば、上記クリヤー塗料組成物のところで述べた方法の他、「リアクトガン」と呼ばれる静電スプレー塗装方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、加熱硬化させても、耐黄変性に極めて優れたクリヤー塗料組成物を得ることができ、かつ、複層塗膜とした際に外観に優れた複層塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0039】
[合成例a]
温度計、撹拌羽根、窒素導入管、冷却コンデンサー及び滴下ロートを備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート448部を加え、窒素雰囲気下120℃に加温した。その容器に、滴下ロートを用いてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート105部、スチレン200部、アクリル酸−n−ブチル67.0部、メタクリル酸アルキル100部、メタクリル酸イソボロニル270部、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル360部、メタクリル酸3部を3時間かけて等速滴下した。その後120℃で0.5時間保持し、50部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解したtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート10部を30分で等速滴下した。更に、120℃で1時間加温を続けることによって、目的のアクリルポリオールを得た。エステル部が炭素数9〜15の長鎖炭化水素である長鎖(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、メタクリル酸アルキルからなり、モノマー全量に対して10質量%であった。合成したアクリルポリオールについて、ゲルパーミェーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算の分子量の値は数平均分子量(Mn)は4600、重量平均分子量(Mw)は11300であった。また、固形分酸価2mgKOH/g、水酸基価は140mgKOH/g、計算Tgは5.3℃、樹脂固形分は62.6%、であった。
なお、メタクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸トリデシルの混合比(質量基準)が4/6であるアクリエステルSL(三菱レイヨン社製)を用いた。
【0040】
[実施例1]
合成例aで得たアクリルポリオール68.68部(固形分)、N3300(住化バイエルウレタンスミジュール社製ポリイソシアネート化合物、固形分)31.32部、チヌビン928(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製紫外線吸収剤)2部、光安定剤「チヌビン292」1部、さらにモダフロー(モンサント社製表面調整剤)0.1部を混合撹拌した後、更に抗酸化剤としてIRGANOX1010(ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製ヒンダートフェノール系抗酸化剤)を塗料樹脂固形分100質量部に対して1部及びIRGAFOS126(ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製リン系抗酸化剤)1部をさらに混合し、ディスパーで攪拌することによってクリヤー塗料組成物を得た。
上記クリヤー塗料組成物をプルピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/3−エトキシプロピオン酸エチル=1/2(質量比)からなるシンナーによってNo.4フォードカップで25秒/20℃となるように希釈した。
【0041】
[実施例2]
IRGAFOS126の代わりにHCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、三光社製リン系抗酸化剤)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、希釈したクリヤー塗料組成物を得た。
【0042】
[比較例1]
IRGANOX1010及びIRGAFOS126を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、希釈したクリヤー塗料組成物を得た。
【0043】
[比較例2]
IRGAFOS126を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、希釈したクリヤー塗料組成物を得た。
【0044】
[比較例3]
IRGAFOS126を用いなかったこと、かつ、IRGANOX1010を塗料樹脂固形分100質量部に対して2部としたこと以外は、実施例1と同様にして、希釈したクリヤー塗料組成物を得た。
【0045】
[比較例4および5]
各々、IRGANOX1010を用いなかったこと以外は実施例1および2と同様にして、希釈したクリヤー塗料組成物を得た。
【0046】
試験板の作成と評価
電着塗膜、中塗り塗膜およびL値が84、a値が−1.1、及び、b値が1.4の白色上塗りソリッド塗膜を順次形成した、150×75mm、厚さ0.8mmの鋼板の半分の面をマスクして、実施例1および比較例1で得られたクリヤー塗料組成物を乾燥膜厚が40μmとなるように塗装した後、マスクを剥離して160℃で60分間加熱硬化させ、1枚の鋼板のうち半分は白色上塗りソリッド塗膜のまま、もう半分がクリヤー塗膜を形成した試験板を作成した。得られた試験板の白色上塗りソリッド塗膜の部分とクリヤー塗膜の部分とのb値を、SMカラーコンピューター型式SM−T45(スガ試験機社製)で測定し、色差Δb値(クリヤー塗膜部分のb値−白色上塗りソリッド塗膜部分のb値)を求めた。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のクリヤー塗料組成物は、加熱硬化時の黄変を低減することができるので高い意匠性が要求される自動車用のクリヤー塗料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル部が炭素数9〜15の長鎖炭化水素基である長鎖(メタ)アクリル酸エステルモノマーをモノマー全量に対して10〜15質量%含み、かつ、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーおよび水酸基含有(メタ)アクリルモノマーを含むモノマー混合物から得られ、数平均分子量が4000〜6000、固形分酸価が1〜5mgKOH/gであるアクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、ヒンダードフェノール系抗酸化剤およびリン系抗酸化剤を含有することを特徴とするクリヤー塗料組成物。
【請求項2】
前記ヒンダードフェノール系抗酸化剤およびリン系抗酸化剤の含有量は、各々、塗料組成物中の固形分に対して、0.5〜5質量%である請求項1に記載のクリヤー塗料組成物。

【公開番号】特開2009−155397(P2009−155397A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332810(P2007−332810)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】