説明

クリーニングブレード及びその製造方法

【課題】ブレードのみの簡単な形状変更で両端部の跳ね上がりを効果的に低減する。
【解決手段】クリーニングブレード1の両面において、ブレード3における板状ホルダ2との接着領域5には、ブレード3をその厚み方向に貫通して板状ホルダ2の表面に達する小孔6,6・・が夫々穿設されている。この小孔6は、10mmピッチの等間隔で接着領域5に直線状に配置されており、長手方向の両端に位置する小孔6,6は、板状ホルダ2の端部から孔中心までの距離が夫々10mmとなるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機等の感光ドラムの外周面に残留するトナーを除去するために用いられるクリーニングブレードとその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機等においては、複写後に感光ドラムの外周面上に残留するトナーを除去するためにクリーニングブレードを備えている。このクリーニングブレードは、断面L字状の金属製の板状ホルダと、その板状ホルダの長手方向の一端側に固着される例えばウレタン製のブレードとからなり、製造方法としては、一対の平行な板状ホルダの間に2つ分連続したブレードを一体成型した後、ブレードの中央を長手方向に切断して分離させることで、各板状ホルダに帯状のブレードが接着された一対のクリーニングブレードを同時に製造する方法がよく用いられている。
【0003】
このようにクリーニングブレードを製造する場合、ブレードの自由端(板状ホルダと反対側)においては、残留応力の加わり方が長手方向の前後両端と中央部とで異なり、両端部が跳ね上がる凹曲線状となりやすい。この結果、ブレードによるクリーニング性にばらつきが生じ、画質精度の低下に繋がる。
そこで、このようなブレードの変形を防止するために、本件出願人は、特許文献1に示すように、板状ホルダにおけるブレード接着側の端縁両端に切欠部やテーパ部を設けることで、板状ホルダからのブレードの突出長さを中央部よりも長くして、ブレード両端部の跳ね上がりを小さくしようとする発明を提供している。また、特許文献2に示すように、予め金型に形成した凸部によってブレードの表面に多数個の溝状凹部を形成して中央部への応力集中の分散を図る発明も提供している。
【0004】
【特許文献1】特開平11−194689号公報
【特許文献2】特開昭60−175073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前者のものでは、ブレードの両端部の跳ね上がり低減を板状ホルダの形状変更に頼る趣旨であるため、板状ホルダに精度の高い平面度が要求される。特に、板状ホルダの両端にはネジ止め用の取付孔が穿設されるため、この付近に加工されると平面度に悪影響を及ぼし、クリーニング性の低下に繋がる。
また、後者のものでは、ブレードのみへの加工ではあるが、溝状凹部によってブレードの厚みが部分的に薄くなってしまうため、ブレード自体に必要な強度が低下して感光ドラムへの十分な押し当て力が得られなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ブレードのみの簡単な加工であって、而もブレード自体の強度を損なうことなく、両端部の跳ね上がりを効果的に低減できるクリーニングブレードとその製造方法とを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、クリーニングブレードであって、ブレードの少なくとも片面側における板状ホルダとの接着領域で、少なくとも板状ホルダの長手方向の前後両端から夫々10mm内側の位置に、ブレードをその厚み方向に貫通して板状ホルダの表面に達する貫通部が、その合計面積が接着領域の1%未満となるように形成される一方、ブレードの自由端における長手方向の前後両端と中央部とのエッジ寸法差が100μm未満であることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、ブレード全長に亘ってエッジ寸法差をより効果的に小さくするために、貫通部は、接着領域の略全長に亘って所定間隔で複数配置されている構成としたものである。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、クリーニングブレードの製造方法であって、ブレードの切断前に、ブレードの少なくとも片面側における板状ホルダとの接着領域で、少なくとも板状ホルダの長手方向の前後両端から夫々10mm内側の位置に、ブレードをその厚み方向に貫通して板状ホルダの表面に達する貫通部を、その合計面積が接着領域の1%未満となるように設けることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3の目的に加えて、ブレード全長に亘ってエッジ寸法差をより効果的に小さくするために、貫通部は、接着領域の略全長に亘って所定間隔で複数設ける構成としたものである。
なお、本発明でいう「エッジ寸法」は、ブレードのエッジからその直交方向で板状ホルダに設定される長手方向の基準線までの寸法を指す。
【発明の効果】
【0009】
請求項1及び3に記載の発明によれば、ブレードのみに対する簡単な加工で両端部の跳ね上がりを効果的に低減でき、良好なクリーニング性が維持可能となる。而も、ブレードにおける板状ホルダとの接着領域に小孔が設けられるため、ブレード自体の強度が損なわれることもない。また、貫通部の合計面積の設定により、押し当て力の低下が生じない範囲で貫通部を設けることができる。
請求項2及び4に記載の発明によれば、ブレード全長に亘ってエッジ寸法差をより効果的に小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、クリーニングブレードの一例を示す説明図で、クリーニングブレード1は、金属製で断面L字状の板状ホルダ2と、その板状ホルダ2の長手端縁に沿って取着されるウレタン製で帯状のブレード3とからなる。4,4は、板状ホルダ2の両端に穿設されたネジ止め用の取付孔である。
このクリーニングブレード1は、ブレード2つ分のキャビティを有する金型の両サイドに一対の板状ホルダをセットして、キャビティ内にイソシアネートとポリオールとの混合物を射出し、2つ分が連続したウレタン製のブレードを板状ホルダと一体成型し、脱型後、ブレードの中央を長手方向に切断して分離させることで、各板状ホルダ2にブレード3が接着された一対のクリーニングブレード1,1を同時に得る方法で製造されるものである。
【0011】
また、クリーニングブレード1の両面において、ブレード3における板状ホルダ2との接着領域5には、ブレード3をその厚み方向に貫通して板状ホルダ2の表面に達する貫通部としての小孔6,6・・が夫々穿設されている。この小孔6は、所定間隔(例えば10mmピッチ)で接着領域5に直線状に配置されており、長手方向の両端に位置する小孔6,6は、板状ホルダ2の端部から孔中心までの距離Lが夫々10mmとなるように設けられている。さらに、小孔6は、合計面積が接着領域5の面積の1%未満となるように設定されている。これを超えると板状ホルダ2とブレード3との接着部分の剛性が低下し、感光ドラムへの押し付け力が弱くなるおそれがあるからである。
【0012】
小孔6は、ブレードの成型後に穿孔具によって形成してもよいし、成型金型に予め小孔に該当する位置にピンを設けておいて形成してもよいが、何れにしても成型後のブレードを切断する前に形成する必要がある。切断前に形成することで、ブレード3の応力が緩和され、切断後のブレード両端部の跳ね上がりを効果的に低減可能となる。具体的には、ブレード3のエッジ寸法(ここではエッジからその直交方向で取付孔4,4の中心を結ぶ基準線Sまでの寸法)において端部と中央部との寸法a,bの差を100μm未満に抑えることができる。
【0013】
このように、上記形態のクリーニングブレード1及びその製造方法によれば、ブレード3のみの簡単な加工で両端部の跳ね上がりを効果的に低減でき、良好なクリーニング性が維持可能となる。而も、ブレード3における板状ホルダ2との接着領域5に小孔6が設けられるため、ブレード3自体の強度が損なわれることもない。
特にここでは、小孔6を合計面積が接着領域5の面積の1%未満となるように設定したことで、押し当て力の低下が生じない最適な範囲で小孔6が形成可能となっている。
また、接着領域の略全長に亘って小孔を設けたことで、ブレード3の全長に亘ってエッジ寸法差をより効果的に小さくすることができる。
【0014】
なお、貫通部は、上記形態のような小孔に限らず、切り込みや切欠であっても差し支えないし、ピッチも任意に変更可能である。また、接着領域の全長に亘って設けるのに限らず、エッジ寸法が大きくなる両端部のみに貫通部を設けたり、両端部と中央部とでピッチを変えたり(両端部を密、中央部を疎とする)することも考えられる。
さらに、クリーニングブレードの両面でなく、片面側の接着領域にのみ貫通部を形成してもよい。
【実施例】
【0015】
ブレード2つ分のキャビティを有する金型の両サイドに一対の板状ホルダを平行にセットして、キャビティ内にイソシアネートとポリオールとの混合物を射出し、加硫、脱型後、ブレードにおける板状ホルダとの接着領域に、ブレードの長手方向の前後両端から夫々内側へ10mmの位置から等間隔で切り込みを、表1に示す実施例1〜3のように接着領域における占有率を変えて形成した。その後ブレードの中央を長手方向に切断して一対のクリーニングブレード(ブレード寸法はW:328mm、H1:10.5mm、H2:2mm、t:2mm)を得た。
一方、同じ製造方法で、ブレードにおける板状ホルダとの接着領域に切り込みを設けないもの、切り込みを占有率1%で設けたものを夫々比較例1,2とした。
【0016】
【表1】

【0017】
表1におけるエッジ寸法差は、投影機(×50)により、図1で示したようにブレード3の端部での寸法aと、ブレード3の中央部での寸法bとの差を計測したものである。なお、図2に、実施例1と比較例1との夫々エッジ寸法データを、図3にそのグラフを夫々示す。
また、押し付け力は、室温環境でW/a計測機を用いて、板状ホルダを支持してブレードを感光ドラムへ当接させるのと同じ状態でブレードを押圧し、切り込みのない状態(比較例1)での測定値と比較して、変化量3%以内を○(良)、3%を超えるものを×(不良)とした。
【0018】
画像評価は、室温環境で各クリーニングブレードを市販のプリンタにセットして印刷を行い、画像にクリーニングブレードに起因するスジ・メクレ・トナーすり抜け・トナー融着が生じなければ○(良)、これらの何れかが生じれば×(不良)とした。なお、比較例1ではエッジ寸法の差が100μmを超えても初期の場合では画像に不具合が見られないが、1万枚後には×となる。これは、板状ホルダがネジによる取付のため、取付孔の基準線Sから直交方向に±0.2mm程度の調節が可能であるが、この調節幅において基準線Sから−0.2mm側になると、クリーニングブレードが感光ドラムから離れて侵入量が小さくなるためで、これによりクリーニング性が低下して1万枚後には画像評価が×になる。
【0019】
上記実施例により、ブレードの切断前に貫通部として切り込みを設ければ、ブレードの端部と中央部とでのエッジ寸法差がクリーニング性に影響のない100μm未満となり、押し付け力や画像評価も良好となることがわかる。但し、切り込みの占有率が1パーセントを超えると、エッジ寸法の差は小さくても押し付け力が低下してクリーニング性は悪くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】クリーニングブレードの説明図である。
【図2】実施例1と比較例1とのエッジ寸法データである。
【図3】エッジ寸法データのグラフである。
【符号の説明】
【0021】
1・・クリーニングブレード、2・・板状ホルダ、3・・ブレード、4・・取付孔、5・・接着領域、6・・小孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の平行な板状ホルダの間に2つ分連続した合成樹脂のブレードを一体成型した後、前記ブレードの中央を長手方向に切断することで形成され、1つの前記板状ホルダに1つの帯状のブレードが接着されてなるクリーニングブレードであって、
前記ブレードの少なくとも片面側における前記板状ホルダとの接着領域で、少なくとも前記板状ホルダの長手方向の前後両端から夫々10mm内側の位置に、前記ブレードをその厚み方向に貫通して前記板状ホルダの表面に達する貫通部が、その合計面積が前記接着領域の1%未満となるように形成される一方、前記ブレードの自由端における長手方向の前後両端と中央部とのエッジ寸法差が100μm未満であることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項2】
貫通部は、接着領域の略全長に亘って所定間隔で複数配置されている請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項3】
一対の平行な板状ホルダの間に2つ分連続した合成樹脂のブレードを一体成型した後、前記ブレードの中央を長手方向に切断することで、各前記板状ホルダに夫々帯状のブレードが接着された一対のクリーニングブレードを得るクリーニングブレードの製造方法であって、
前記ブレードの切断前に、前記ブレードの少なくとも片面側における前記板状ホルダとの接着領域で、少なくとも前記板状ホルダの長手方向の前後両端から夫々10mm内側の位置に、前記ブレードをその厚み方向に貫通して前記板状ホルダの表面に達する貫通部を、その合計面積が接着領域の1%未満となるように設けることを特徴とするクリーニングブレードの製造方法。
【請求項4】
貫通部は、接着領域の略全長に亘って所定間隔で複数設ける請求項3に記載のクリーニングブレードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−33048(P2008−33048A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206815(P2006−206815)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】