説明

クリーニング装置、液体噴射装置、及び液体噴射装置のクリーニング方法

【課題】液体供給源から液体噴射ヘッドのノズルに至る液体流路への液体の充填速度を確保しつつ、液体流路内に発生した気泡を確実に除去することができるクリーニング装置、液体噴射装置、及び液体噴射装置のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】ノズル47を囲うようにノズル形成面48に当接して密封空間を形成可能なキャップ50と、空間域を吸引する吸引ポンプ52と、キャップ内に配置されてインクの透過は規制する一方で空気の透過は許容する気体透過性フィルター51と、キャップをノズル形成面に当接する当接位置とノズル形成面から離間する退避位置との間で移動させる昇降機構53と、を備え、昇降機構は、気体透過性フィルターがノズル形成面から離間した状態でノズル形成面に当接する第1の当接位置と、気体透過性フィルターがノズル形成面に接触してノズルを封止する状態でノズル形成面に当接する第2の当接位置との間でキャップを移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給源から供給される液体をノズル形成面に形成されたノズルから噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に設けられるクリーニング装置、該クリーニング装置を備えた液体噴射装置、及び該クリーニング装置を用いた液体噴射装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射ヘッドからターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、「プリンター」と言う)が広く知られている。このプリンターでは、液体噴射ヘッドから噴射されるインク中に気泡が混入すると、印刷不良を引き起こす虞があった。そこで、通常、プリンターには、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されるように、ノズル開口を介して液体噴射ヘッド内のインクから気泡を強制的に吸引して除去するための機構が設けられている。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載されたインク噴射装置は、その内部に複数のチャンネルが隔壁を介して隔離された状態で並列形成された構成をしている。また、インク噴射装置には、これらのチャンネルの開口を覆うようにノズルプレートが接着されている。なお、ノズルプレートには、インク滴を吐出するためのノズルがチャンネルの並列方向に沿って複数形成されている。そして、このノズルと連通するチャンネルは、インクが充填されるインク液室として構成される一方、このインク液室に隣接して設けられたチャンネルは、インクが充填されない非噴射室として構成される。また、各チャンネルを隔離する隔壁は、ノズルプレートに近接する領域の一部が多孔性材料からなる通気部材により構成されている。
【0004】
そして、上記のように構成されたインク噴射装置では、非噴射室内の空気の圧力を常に低圧に保つことにより、インク液室内のインク中に混入した気泡が、非噴射室内の負圧に従って、通気部材を介して低圧側となる非噴射室に取り込まれる。なお、通気部材は、気体の通過は許容するものの液体の通過は規制するという極めて細かな細孔を有しているため、インク液室内のインクから気泡を吸引して除去する際に、インク液室内のインクが通気部材を介して非噴射室側に漏出することはほとんどない。
【0005】
また、特許文献2に記載されたインクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドのノズル形成面に対してノズルを囲うように当接する吸引キャップを有している。また、その吸引キャップにおける環状側壁の先端面には、インクなどの液体の透過は規制する一方で空気などの気体の透過は許容する気体透過性フィルターが接着されている。
【0006】
そして、上記のように構成されたインクジェット印刷装置では、気体透過性フィルターをインクジェットヘッドのノズル形成面に押し付けてノズルを封止すると共に吸引キャップをノズル形成面にノズルを囲うように当接させた状態で、吸引キャップとノズル形成面との間の密封状の空間域内に負圧を発生させるようにしている。すると、この負圧の作用でインクカートリッジ内からインクが吸引され、インクジェットヘッドの各ノズルの先端までインクが充填されるようになる。また、気体透過性フィルターは、気体のみを透過させる性質を有するため、インクカートリッジ内からインクジェットヘッドのノズルに至るインク流路内に気泡が発生している場合、インク流路内のインクがノズルから排出することは規制する一方で、インク流路内の気泡についてはこれを透過させてノズルから排出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−76513号公報
【特許文献2】特許第4168693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載されたインク噴射装置では、インク液室内のインク中に混入した気泡を確実に除去するためには、非噴射室内から通気部材を介してインク液室内のインクに負圧を大きく作用させる必要がある。しかしながら、インク液室内のインクの内圧が大きく低下した場合、インク液室内のインクの内圧と大気圧との間に大きな圧力差を生じる。すると、大気がノズルを介してインク液室内に進入して、インク液室内に新たに気泡が発生してしまう虞があった。
【0009】
また、特許文献2に記載されたインクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドの各ノズルの先端までインクを充填する際には、気体透過性フィルターをインクジェットヘッドのノズル形成面に押し付けて密着させた状態で、吸引キャップとノズル形成面との間に形成された密封状態の空間域に負圧を発生させている。そして、この場合における空間域内の負圧は、気体透過性フィルターでの圧力損失によって減衰された状態で、ノズルを介してインク流路内のインクに作用することになる。そのため、インク流路内のインクに対して十分な吸引力を作用させることができず、インクジェットヘッドの各ノズルに至るまでのインク流路内にインクを充填する際に過大な時間を要するという問題があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体供給源から液体噴射ヘッドのノズルに至る液体流路への液体の充填速度を確保しつつ、該液体流路内の液体中から気泡を確実に除去することができるクリーニング装置、液体噴射装置、及び液体噴射装置のクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のクリーニング装置は、液体供給源から供給される液体をノズル形成面に形成されたノズルから噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に設けられ、前記液体供給源から前記ノズルに至る液体流路内から気泡を除去するクリーニング装置であって、前記ノズルを囲うように前記ノズル形成面に当接して空間域を形成可能なキャップと、前記空間域を吸引するために駆動される吸引手段と、前記キャップ内に配置されて前記液体の透過は規制する一方で前記気泡の透過は許容する濾材と、前記キャップを前記ノズル形成面に対して当接する当接位置と前記ノズル形成面から離間する退避位置との間で移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記濾材が前記ノズル形成面から離間した状態で前記キャップを前記ノズル形成面に当接させる第1の当接位置、及び、前記濾材が前記ノズル形成面に接触して前記ノズルを封止する状態で前記キャップを前記ノズル形成面に当接させる第2の当接位置の間で前記キャップを移動可能に構成されている。
【0012】
上記構成によれば、キャップが第1の当接位置に配置された状態では、キャップとノズル形成面との間の空間域が吸引手段によって吸引されると、この空間域に生じる負圧は濾材がノズル形成面から離間した状態にあってノズルを封止していないので、液体流路内の液体に直接作用する。そのため、濾材がノズル形成面に接触してノズルが濾材によって封止された状態でこの空間域に負圧を作用させる場合とは異なり、この空間域に生じる負圧が濾材によって減衰されることはなく、液体供給源から液体流路内に液体を充填する際の所要時間を低減できる。一方、キャップが第2の当接位置に配置された状態では、キャップとノズル形成面との間の密封状態の空間域が吸引手段によって吸引されると、この空間域に生じる負圧は濾材を介して液体流路内の液体に作用する。ここで、濾材は、液体を透過させることなく気体を透過させる、すなわち、気体透過性を有している。そのため、濾材は、ノズルを介して液体流路内から液体を漏出させることなく、液体流路内の液体に混入した気泡のみを選択的に透過させてノズルから排出することができる。したがって、液体供給源から液体噴射ヘッドのノズルに至る液体流路への液体の充填速度を確保しつつ、該液体流路内に発生した気泡を確実に除去することができる。
【0013】
また、本発明のクリーニング装置において、前記キャップは、前記ノズル形成面に対する当接部が、前記第1の当接位置から前記第2の当接位置に向けての前記キャップの移動方向に収縮可能に構成されている。
【0014】
上記構成によれば、キャップは、第1の当接位置に配置される場合には、濾材がノズルから離間した状態となっているが、第2の当接位置への移動に伴ってノズル形成面に対する当接部が収縮すると、濾材がノズルに接近する方向に変位する。そのため、キャップが第1の当接位置から第2の当接位置に移動した場合に、濾材がノズル形成面に接触してノズルを封止可能とする構成を簡便に実現することができる。
【0015】
また、本発明のクリーニング装置は、前記吸引手段を制御する制御手段を更に備え、前記制御手段は、前記キャップが前記第2の当接位置に配置される場合には、前記キャップが前記第1の当接位置に配置される場合よりも、前記空間域を吸引する吸引力が大きくなるように前記吸引手段を制御する。
【0016】
上記構成によれば、キャップが第2の当接位置に配置された状態では、キャップとノズル形成面との間に密封された空間域には、吸引手段からの吸引力が大きく作用する。このとき、ノズルは、濾材によって封止された状態にあるため、この空間域に大きな負圧が生じると、液体流路内の液体には濾材を介して大きな吸引力が作用する。したがって、液体流路内の液体に気泡が混入している場合であっても、そのような気泡は濾材を介して確実に除去される。また、この空間域に大きな負圧が生じたとしても、ノズルは、濾材によって封止された状態にあるため、液体流路内の液体が濾材を介して排出されることはほとんどない。したがって、液体流路内の液体が消費されることを抑制しつつ、液体流路内の液体に含まれる気泡を確実に除去することができる。
【0017】
また、本発明の液体噴射装置は、液体供給源から供給される液体をノズル形成面に形成されたノズルから噴射する液体噴射ヘッドと、上記構成のクリーニング装置と、を備えた。
【0018】
上記構成によれば、上記クリーニング装置の発明と同様の効果が得られる。
また、本発明の液体噴射装置のクリーニング方法は、上記構成のクリーニング装置を用いた液体噴射装置のクリーニング方法であって、前記第1の当接位置及び前記第2の当接位置のうち、一方の当接位置に前記キャップを配置する第1の当接段階と、前記一方の当接位置に前記キャップが配置された状態で第1のクリーニング動作を実行する第1のクリーニング動作実行段階と、前記一方の当接位置から他方の当接位置に前記キャップを移動させる第2の当接段階と、前記他方の当接位置に前記キャップが配置された状態で第2のクリーニング動作を実行する第2のクリーニング動作実行段階と、を備えた。
【0019】
上記構成によれば、まず、キャップが、第1の当接位置及び第2の当接位置のうち、一方の当接位置に位置した状態で第1のクリーニング動作が実行され、その後、キャップが一方の当接位置から他方の当接位置に変位した状態で第2のクリーニング動作が実行される。すなわち、キャップを一方の当接位置から他方の当接位置に変位させることにより、これらのクリーニング動作を連続して実行することができ、結果として、クリーニング動作に際した装置全体のスループットを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態のプリンターの平面図。
【図2】記録ヘッド及びクリーニング装置の断面図。
【図3】(a)はキャップが第1の当接位置に位置した状態の記録ヘッド及びクリーニング装置の断面図、(b)はキャップが第2の当接位置に位置した状態の記録ヘッド及びクリーニング装置の断面図、(c)は(b)に示す状態で第2のクリーニング動作が実行された後の記録ヘッド及びクリーニング装置の断面図。
【図4】(a)はインクの初期充填を実行している途中の記録ヘッド及びクリーニング装置の断面図、(b)は(a)に示す状態から更にインクを充填した状態の記録ヘッド及びクリーニング装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をインクジェット式記録装置(以下、「プリンター」という。)に具体化した一実施形態を図1〜図4に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置としてのプリンター10は、略矩形箱状をなす本体ケース11を備えるとともに、この本体ケース11内の前方下部には、プラテン12が主走査方向となる本体ケース11の長手方向(図1において左右方向)に沿って架設されている。また、本体ケース11内においてプラテン12の後部上方には、主走査方向に沿って棒状のガイド軸13が架設され、このガイド軸13にはキャリッジ14が移動可能に支持されている。また、本体ケース11内の後方側面においてガイド軸13の両端部と対応する位置には、駆動プーリー15及び従動プーリー16が回転自在に支持されている。駆動プーリー15にはキャリッジモーター17が連結されるとともに、一対のプーリー15,16間にはキャリッジ14を支持した無端状のタイミングベルト18が掛装されている。したがって、キャリッジ14は、キャリッジモーター17の駆動により、ガイド軸13に沿って主走査方向に往復移動可能となっている。
【0022】
本体ケース11内の一端側(図1では右端側)には箱形のカートリッジホルダー19が設けられている。カートリッジホルダー19には、液体供給源としてのインクカートリッジ20が液体としてのインクの色毎に複数個(本実施形態においては4個)が着脱可能に装着されている。
【0023】
各インクカートリッジ20はカートリッジホルダー19に装着された場合にインク供給チューブ21の上流端に接続されるようになっている。また、各インク供給チューブ21の下流端は、キャリッジ14上に搭載されたバルブユニット22の上流側と接続されるとともに、バルブユニット22の下流側はキャリッジ14の下面側に設けられた液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド23に接続されている。
【0024】
カートリッジホルダー19とプラテン12との間は、プリンター10の電源オフ時や記録ヘッド23をメンテナンスする場合にキャリッジ14の待機場所となるホームポジションHPになっている。また、キャリッジ14がホームポジションHPに配置されたときの下方となる位置には、記録ヘッド23のクリーニングを行うためのクリーニング装置26が設けられている。
【0025】
カートリッジホルダー19の上側には、加圧ユニット34が載置されている。加圧ユニット34は加圧ポンプ35を備え、加圧ポンプ35の駆動によって生成された加圧空気は空気供給路36を介してインクカートリッジ20内に圧送されるようになっている。なお、加圧ユニット34において、加圧ポンプ35の下流側の空気供給路36には圧力検出器37及び大気開放弁装置38が接続されている。空気供給路36は、大気開放弁装置38の下流側に配設された分配器39を境にインクカートリッジ20の個数と同数に分岐されている。そして、分岐された各空気供給路36は、それぞれの下流端が各々対応するインクカートリッジ20に接続されている。
【0026】
各インクカートリッジ20は、内部が加圧室(図示略)となっており、この加圧室内に空気供給路36の下流端が加圧空気を導入可能に接続されている。また、各インクカートリッジ20の加圧室内には可撓性のフィルムによって袋状に形成されたインクパック(図示略)が収容されている。したがって、加圧ポンプ35が駆動された場合には、加圧ポンプ35から圧送された加圧空気が空気供給路36を介してインクカートリッジ20内に導入され、加圧空気の空気圧によってインクパックが押し潰されることにより、インクパック内に収容されたインクがインク供給チューブ21を介して記録ヘッド23側に供給されるようになっている。
【0027】
次に、記録ヘッド23の構成について図2に従って説明する。なお、図2では、インク供給チューブ21と記録ヘッド23との間に介設されるバルブユニット22(図1参照)の図示を省略しているものとする。
【0028】
図2に示すように、本実施形態の記録ヘッド23は、ヘッドケース40、流路形成板41、及びノズルプレート42等を構成要素として備えている。
まず、ヘッドケース40は、下側が開口した有底略四角箱状をなしており、その下面側には図2における左右方向に沿って延びる溝部43がインクカートリッジ20の個数と対応した溝数だけ並列状に形成されている。また、ヘッドケース40における溝部43の底面の略中央部には、ヘッドケース40の上面と溝部43の底面との間を上下方向に貫通する開口部44が形成されており、該開口部44に対してヘッドケース40の上面側からインク供給チューブ21の下流端が接続されている。
【0029】
次に、流路形成板41は、平面視形状がヘッドケース40と対応した平板状をなしており、その上面がヘッドケース40の下端面に接合されることにより、その上面とヘッドケース40の溝部43の内面とでインク貯留室43aを囲み形成している。そして、このインク貯留室43a内にヘッドケース40の開口部44を介してインク供給チューブ21からインクが流入可能とされている。また、流路形成板41は、その下面に多数(図2では15個を例示的に図示)の圧力室となる凹部45が図2における左右方向に沿って等間隔おきに連続するように形成されている。そして、凹部45毎に流路形成板41の上面と各凹部45の底面との間を上下方向(流路形成板41の厚み方向)に貫通して凹部45内とヘッドケース40の溝部43内(インク貯留室43a内)とを連通する連通孔46が設けられている。
【0030】
さらに、ノズルプレート42は、平面視形状がヘッドケース40及び流路形成板41と対応した平板状をなしており、その上面が流路形成板41の下面に接合されている。また、ノズルプレート42には、流路形成板41に形成された各凹部45と個別に連通する多数(図2では15個を例示的に図示)のノズル47がノズルプレート42を上下方向(ノズルプレート42の厚み方向)に貫通するように形成されている。そして、ノズルプレート42の下面は、こうした多数のノズル47により複数列(本実施形態の場合は、インクカートリッジ20の個数と対応した4列)のノズル列が形成されたノズル形成面48となっている。
【0031】
すなわち、本実施形態では、インク供給チューブ21、ヘッドケース40のインク貯留室43aとなる溝部43、連通孔46、及び圧力室となる凹部45によって、インクカートリッジ20からノズル47に至る液体流路としてのインク供給流路49が構成されている。
【0032】
次に、クリーニング装置26の構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態のクリーニング装置26は、キャップ50、濾材としての気体透過性フィルター51、及び吸引手段としての吸引ポンプ52等を構成要素として備えている。
【0033】
キャップ50は、上側が開口した有底略四角箱状をなしており、移動機構としての昇降機構53の駆動に基づき、記録ヘッド23のノズル形成面48に対して当接することによりノズル形成面48との間に密封状の空間域61を形成する当接位置と、記録ヘッド23のノズル形成面48から離間する退避位置との間を移動可能に構成されている。また、キャップ50は、環状側壁54の先端部54aが当接位置において記録ヘッド23のノズル形成面48に当接する当接部となっており、該先端部54aがノズル形成面48に対して圧接された状態で上下方向に収縮可能なゴム等の弾性体から構成されている。
【0034】
気体透過性フィルター51は、例えば、フッ素樹脂を延伸加工して得られる多孔質膜であり、インクなどの液体を透過させることなく空気などの気体を選択的に透過させる性状(いわゆる、防水透湿性)を有する。気体透過性フィルター51は、記録ヘッド23のノズル形成面48に対して上下方向で対向するように、キャップ50の底壁55の内壁面上にコイルスプリング56を介して支持されている。また、気体透過性フィルター51は、記録ヘッド23のノズル形成面48に対して当接(接触)した状態では、記録ヘッド23のノズル形成面48に形成されている全てのノズル47の開口を封止可能な濾材として機能する。そして、本実施形態では、キャップ50の環状側壁54の先端部54aが記録ヘッド23のノズル形成面48から離間した状態では、気体透過性フィルター51の上面がキャップ50の先端部54aよりも低い(キャップ50の底壁55に近い)位置に配置されるように、コイルスプリング56の非収縮状態時の長さが設定されている。
【0035】
また、キャップ50は、その底壁55の略中央部から突部55aが下方に向かって突設されており、該突部55a内には、キャップ50内からインクを排出するための排出路57が上下方向に貫通形成されている。そして、該突部55aには、可撓性材料からなる排出チューブ58の上流端が接続されるとともに、この排出チューブ58の下流端は廃液容器59に挿入されている。また、キャップ50と廃液容器59との間における排出チューブ58の中間部には、キャップ50側から廃液容器59側へ向かってインクを強制的に吸引して排出するためにキャップ50内(すなわち、当接位置にあるキャップ50とノズル形成面48との間に形成される密封状の空間域61)を吸引する吸引ポンプ52が配設されている。
【0036】
すなわち、記録ヘッド23のクリーニング時には、キャップ50の環状側壁54の先端部54aが記録ヘッド23のノズル形成面48に対してノズル47を囲うように当接し、その当接状態において制御手段としての制御部60からの制御信号に基づいて吸引ポンプ52が駆動されることにより、各インクカートリッジ20から各ノズル47に至るインク供給流路49内からインクが粉塵等の異物や気泡と共に吸引され、キャップ50及び排出チューブ58を介して廃液容器59に排出されるようになっている。
【0037】
次に、上記のように構成されたプリンター10の作用のうち、特に、インク供給流路49から異物や気泡を除去する場合の作用に着目して以下説明する。
さて、プリンター10においては、図3(a)に示すように、ノズル47の開口を通じてインク供給流路49に異物Aや気泡Bが進入したり、クリーニング時にインク供給流路49に気泡Bが析出して生じたりすることがあり得る。こうした異物Aや気泡Bは、印刷時にインクと共に記録ヘッド23のノズル47から噴射されると、所謂ドット抜け等を生じる原因となるので除去されることが望ましいが、これをインク供給流路49から従来のクリーニング方法によりインクと共に強制吸引するのではインクが無駄に消費されてしまう。
【0038】
そこで、本実施形態のプリンター10における異物Aや気泡Bの除去を目的としたクリーニング方法では、次のようにして異物Aや気泡Bをインク供給流路49から除去するようにしている。
【0039】
すなわち、まず、図3(a)に示すように、第1の当接段階として、昇降機構53がキャップ50を上昇させる。そして、そのキャップ50を記録ヘッド23のノズル形成面48に対して環状側壁54の先端部54aがノズル47の開口を囲うように当接させる。なお、この場合、記録ヘッド23のノズル形成面48と気体透過性フィルター51との間には上下方向に若干の隙間が確保される。すなわち、キャップ50は、気体透過性フィルター51が記録ヘッド23のノズル形成面48に形成されたノズル47の開口を封止しない状態で、記録ヘッド23のノズル形成面48に対して環状側壁54の先端部54aを当接させる第1の当接位置(一方の当接位置)に配置されることとなる。
【0040】
そして次に、第1のクリーニング動作実行段階として、クリーニング装置26は、記録ヘッド23のノズル形成面48とキャップ50との間に密封状の空間域61が形成された状態で、制御部60の制御により吸引ポンプ52を駆動させる。すると、インク供給流路49がノズル47を介して空間域61に連通した状態で該空間域61が負圧状態になる。その結果、インク供給流路49において、ノズル47に近接する圧力室としての凹部45内に存在する異物Aや気泡Bは、第1のクリーニング動作によって強制的に除去される。すなわち、第1のクリーニング動作では、異物Aや気泡Bは、空間域61から作用する吸引力に従って、インク供給流路49においてノズル47に近接する凹部45内に存在しているインクと共に吸引され、排出チューブ58を介して廃液容器59に排出される。
【0041】
なお、この場合において、制御部60は、インク供給流路49において、ノズル47の近傍領域に存在するインクを吸引して排出するに足りる吸引力で空間域61を吸引させるように相対的に弱い駆動力で吸引ポンプ52を駆動する。そのため、吸引ポンプ52の駆動に伴って、インク供給流路49内に存在するインクに対してノズル47を介して過大な吸引力が作用することはなく、インク供給流路49からノズル47を介してインクが無駄に消費されることが抑制される。
【0042】
続いて、昇降機構53がキャップ50を更に上昇させると、キャップ50の環状側壁54の先端部54aがノズル形成面48に対して強く圧接するようになる。すると、キャップ50の環状側壁54の先端部54aが記録ヘッド23のノズル形成面48によって押し潰されるように上下方向に圧縮されるため、キャップ50の底壁55が記録ヘッド23のノズル形成面48に対して接近する。その結果、気体透過性フィルター51が、キャップ50の底壁55上にコイルスプリング56を介して支持された状態で、記録ヘッド23のノズル形成面48に対して当接する。
【0043】
そして次に、第2の当接段階として、気体透過性フィルター51が記録ヘッド23のノズル形成面48に当接した状態で、昇降機構53がキャップ50を更に上昇させると、気体透過性フィルター51がコイルスプリング56と記録ヘッド23のノズル形成面48との間でより強く挟圧される。すると、気体透過性フィルター51は、記録ヘッド23のノズル形成面48から作用する抗力が増大することに伴って、コイルスプリング56が収縮させるようになる。その結果、気体透過性フィルター51は、コイルスプリング56からの付勢力が増強されるため、記録ヘッド23のノズル形成面48に対してノズル47の開口を封止するように強固に密着する(図3(b)参照)。すなわち、キャップ50は、気体透過性フィルター51が記録ヘッド23のノズル形成面48に形成されたノズル47を封止した状態で、記録ヘッド23のノズル形成面48に対して環状側壁54の先端部54aを当接させる第2の当接位置(他方の当接位置)に配置されることとなる。
【0044】
続いて、第2のクリーニング動作実行段階として、クリーニング装置26は、記録ヘッド23のノズル形成面48と気体透過性フィルター51とが密着した状態で、制御部60の制御により吸引ポンプ52を駆動させる。すると、空間域61内に負圧が生じ、その負圧が気体透過性フィルター51及びノズル47を介してインク供給流路49内に存在するインクに作用する。
【0045】
なお、この場合において、制御部60は、インク供給流路49において、ノズル47から離間したヘッドケース40内の溝部43にて構成されるインク貯留室43a内に存在しているインクを吸引して排出するに足りる吸引力で空間域61を吸引させるように吸引ポンプ52を駆動する。すなわち、制御部60は、気体透過性フィルター51が記録ヘッド23のノズル形成面48から離間した状態での吸引動作時と比較して、相対的に強い駆動力でもって、より大きな吸引力で空間域61を吸引させるように吸引ポンプ52を駆動する。
【0046】
また、この場合、気体透過性フィルター51は、インク供給流路49内からのインクの透過は規制する一方で、そのインク中に含まれる気泡Bに対して透過性を有する。そのため、インク供給流路49において、ノズル47から離間したヘッドケース40内のインク貯留室43aに気泡Bが存在する場合であっても、そのような気泡Bは第2のクリーニング動作によって強制的に除去される。すなわち、第2のクリーニング動作では、気泡Bは、空間域61から気体透過性フィルター51を介して作用する吸引力に従って、インク貯留室43aから連通孔46及び凹部45を介してノズル47に至るようにインク供給流路49内を流動した後、気体透過性フィルター51を介して記録ヘッド23から排出される(図3(c)参照)。
【0047】
一方、気体透過性フィルター51は、同圧力条件下では、インク供給流路49内のインクに対して非透過性を有する。そのため、インク供給流路49内のインクが気体透過性フィルター51を介して漏出することはほとんどない。したがって、記録ヘッド23の第2のクリーニング動作に際して、インク供給流路49からノズル47を介してインクが無駄に消費されることはほとんどない。
【0048】
次に、上記のように構成されたプリンター10の作用のうち、特に、インクカートリッジ20からインク供給流路49内にインクを初期充填する場合の作用に着目して以下説明する。
【0049】
すなわち、本実施形態のプリンター10においては、まず、図4(a)に示すように、昇降機構53がキャップ50を上昇させて、記録ヘッド23のノズル形成面48に対してノズル47を囲うように当接させる。なお、この場合、記録ヘッド23のノズル形成面48と気体透過性フィルター51との間には上下方向に若干の隙間が確保される。
【0050】
そして次に、クリーニング装置26は、記録ヘッド23とキャップ50との間に密封状の空間域61が形成された状態で、制御部60の制御により吸引ポンプ52を駆動させる。すると、インク供給流路49がノズル47を介して空間域61に連通した状態で、該空間域61が負圧状態になる。その結果、空間域61の負圧が、インク供給流路49及びインク供給チューブ21を介してインクカートリッジ20内に作用する。そのため、インク供給流路49内には、インクカートリッジ20からインク供給チューブ21を介してインクが次第に充填されることとなる。
【0051】
なお、この場合、キャップ50は、気体透過性フィルター51が記録ヘッド23のノズル形成面48に形成されたノズル47の開口を封止しない状態で、記録ヘッド23のノズル形成面48に対して環状側壁54の先端部54aを当接させる。そのため、気体透過性フィルター51が記録ヘッド23のノズル形成面48に形成されたノズル47の開口を封止した状態で、キャップ50の環状側壁54の先端部54aが記録ヘッド23のノズル形成面48に対して当接する場合とは以下の点で相違する。
【0052】
すなわち、ノズル47の開口が気体透過性フィルター51によって封止されることなく開放された状態では、記録ヘッド23とキャップ50との間の密封状の空間域61に負圧が生じた場合に、その負圧が気体透過性フィルター51での圧力損失によって減衰されることはない。そのため、空間域61からノズル47の開口を介してインク供給流路49内に吸引力が大きく作用することにより、インク供給流路49内へのインクの初期充填が迅速に実行される。
【0053】
そして、インク供給流路49のうち、ヘッドケース40内の溝部43からなるインク貯留室43aに対するインクの充填がほぼ完了した時点で、制御部60の制御により吸引ポンプ52の駆動が一旦停止される。なお、この時点では、記録ヘッド23のノズル形成面48に形成された何れのノズル47においても、該ノズル47の開口に至るまでインクは充填されておらず、記録ヘッド23のノズル形成面48からノズル47を介してインクが吐出されることはない。
【0054】
続いて、図4(b)に示すように、昇降機構53がキャップ50を更に上昇させて、気体透過性フィルター51を記録ヘッド23のノズル形成面48に対してノズル47の開口を封止するように密着させる。そして、クリーニング装置26は、記録ヘッド23のノズル形成面48と気体透過性フィルター51とが密着した状態で、制御部60の制御により吸引ポンプ52を再び駆動させる。すると、空間域61内に負圧が生じ、その負圧が気体透過性フィルター51及びノズル47を介してインク供給流路49内に作用する。その結果、インク供給流路49のうち、記録ヘッド23のノズル形成面48に形成されたノズル47の開口に至るまでインクが次第に充填されるようになる。
【0055】
なお、この場合、気体透過性フィルター51は、インク供給流路49内のインクに対して非透過性を有する。そのため、インク供給流路49内のインクが気体透過性フィルター51を介して漏出することはほとんどない。したがって、インク供給流路49内へのインクの初期充填動作に際して、インク供給流路49からノズル47を介してインクが無駄に消費されることはほとんどない。
【0056】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、キャップ50が第1の当接位置に配置された状態では、キャップ50とノズル形成面48との間の密封状の空間域61が吸引ポンプ52によって吸引されると、この空間域61に生じる負圧はインク供給流路49内のインクに直接作用する。そのため、ノズル47の開口が気体透過性フィルター51によって封止された状態でこの空間域61に負圧を作用させる場合とは異なり、この空間域61に生じる負圧が気体透過性フィルター51によって減衰されることはなく、インクカートリッジ20からインク供給流路49内にインクを充填する際の所要時間を低減できる。一方、キャップ50が第2の当接位置に配置された状態では、キャップ50とノズル形成面48との間の密封状の空間域61が吸引ポンプ52によって吸引されると、この空間域61に生じる負圧は気体透過性フィルター51を介してインク供給流路49内のインクに作用する。ここで、気体透過性フィルター51は、インク供給流路49内のインクを透過させることなく気体のみを透過させる気体透過性を有している。そのため、気体透過性フィルター51は、ノズル47からインクを漏出させることなく、インク供給流路49内のインクに混入した気泡Bのみを選択的に透過させてノズル47から排出することができる。したがって、インクカートリッジ20から記録ヘッド23のノズル47に至るインク供給流路49へのインクの充填速度を確保しつつ、該インク供給流路49内に発生した気泡Bを確実に除去することができる。
【0057】
(2)上記実施形態では、キャップ50は、第1の当接位置に配置される場合には、気体透過性フィルター51がノズル47の開口から離間した状態となっているが、第2の当接位置への移動に伴ってノズル形成面48に対して当接する環状側壁54の先端部54aが収縮すると、気体透過性フィルター51がノズル形成面48に接近する方向に変位する。そのため、キャップ50が第1の当接位置から第2の当接位置に移動した場合に、気体透過性フィルター51がノズル47の開口を封止可能とする構成を簡便に実現することができる。
【0058】
(3)上記実施形態では、キャップ50が第2の当接位置に配置された状態では、キャップ50とノズル形成面48との間に密封された空間域61には、吸引ポンプ52からの吸引力が大きく作用する。このとき、ノズル47は、気体透過性フィルター51によって開口が封止された状態にあるため、この空間域61に大きな負圧が生じると、インク供給流路49内のインクには気体透過性フィルター51を介して大きな吸引力が作用する。したがって、インク供給流路49内のインクに気泡Bが混入している場合であっても、そのような気泡Bは気体透過性フィルター51を介して確実に除去される。また、この空間域61に大きな負圧が生じたとしても、ノズル47は、気体透過性フィルター51によって封止された状態にあるため、インク供給流路49内のインクが気体透過性フィルター51を介して排出されることはほとんどない。したがって、インク供給流路49内のインクが消費されることを抑制しつつ、インク供給流路49内のインクに含まれる気泡Bを確実に除去することができる。
【0059】
(4)上記実施形態では、まず、キャップ50が第1の当接位置に位置した状態で第1のクリーニング動作が実行され、その後、キャップ50が第1の当接位置から第2の当接位置に変位した状態で第2のクリーニング動作が実行される。すなわち、キャップ50を第1の当接位置から第2の当接位置に段階的に変位させることにより、これらのクリーニング動作を連続して実行することができ、結果として、クリーニング動作に際した装置全体のスループットを低減することができる。
【0060】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、プリンター10の電源オフ時に、気体透過性フィルター51が記録ヘッド23のノズル形成面48に形成されたノズル47の開口を封止した状態で、キャップ50の環状側壁54の先端部54aが記録ヘッド23のノズル形成面48に対して当接する第2の当接位置にキャップ50を配置する構成としてもよい。この場合、プリンター10の使用時にインク供給流路49内に気泡Bが発生した状態で、プリンター10の電源がオフになった場合であっても、インク供給流路49内の気泡Bは以下のように除去することができる。すなわち、プリンター10の電源オフ時に、キャップ50とノズル形成面48との間に密封された空間域61の負圧状態を維持する構成とすることにより、インク供給流路49内の気泡Bは、空間域61から気体透過性フィルター51を介して作用する吸引力に従って、気体透過性フィルター51を介してインク供給流路49内から徐々に排出されることとなる。
【0061】
・上記実施形態において、まず、キャップ50が第2の当接位置に位置した状態で、インク供給流路49内からノズル47及び気体透過性フィルター51を介して気泡Bを除去するクリーニング動作を実行した後、キャップ50を第2の当接位置から第1の当接位置に変位させた状態で、インク供給流路49内からノズル47を介して異物Aや気泡Bを除去するクリーニング動作を実行する構成としてもよい。この場合、キャップ50が第2の当接位置に位置した状態での先のクリーニング動作が第1のクリーニング動作となり、キャップ50が第1の当接位置に位置した状態での後のクリーニング動作が第2のクリーニング動作となる。
【0062】
・上記実施形態において、制御部60は、キャップ50が第2の当接位置に配置される場合には、キャップ50が第1の当接位置に配置される場合よりも、キャップ50とノズル形成面48との間に密封された空間域61を吸引する吸引力が大きくなるように吸引ポンプ52を駆動制御してもよい。
【0063】
・上記実施形態において、キャップ50は、ノズル形成面48に対する当接部となる環状側壁54の先端部54aをキャップ50の昇降方向となる上下方向に伸縮自在な蛇腹構造をなすように構成してもよい。すなわち、キャップ50の環状側壁54の先端部54aは、キャップ50の昇降方向に伸縮可能な構成であれば、任意の構成を採用することができる。
【0064】
・上記実施形態において、キャップ50の底壁55上に気体透過性フィルター51を支持するための機構として、コイルスプリング56の代わりに、多孔質材からなるインク吸収材を設けてもよい。すなわち、インク吸収材におけるノズル形成面48に対して上下方向で対向する上面に、気体透過性フィルター51を貼着する構成としてもよい。この場合、インク吸収材は、キャップ50がノズル形成面48に対して近接する方向に上昇した場合に、ノズル形成面48の面形状に応じて変形しながら密接するように柔軟性を有する材質により構成することが望ましい。
【0065】
・上記実施形態において、気体透過性フィルター51として、ポリスチレン樹脂を延伸加工して得られるOPSフィルム等を採用してもよい。すなわち、インクを透過させることなく、インクに含まれる気泡を選択的に透過させる気体透過性を有する構成であれば、任意の構成を採用することができる。ただし、気体透過性フィルター51として、インクに対して親和性(吸水性)を有する構成を採用した場合、気体透過性フィルター51がインクに対して接触した状態を長期間に亘って放置すると、気体透過性フィルター51のインク非透過性が損なわれる虞がある。そのため、気体透過性フィルター51は、インクに対して非親和性(撥水性)を有する材質により構成することが望ましい。
【0066】
・なお、本明細書における「液体」には、インク以外の他の液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体も含むものとする。そして、こうした「液体」を噴射したり吐出したりする液体噴射装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…液体噴射装置としてのプリンター、20…液体供給源としてのインクカートリッジ、23…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、26…クリーニング装置、47…ノズル、48…ノズル形成面、49…液体流路としてのインク供給流路、50…キャップ手段としてのキャップ、51…封止部としての気体透過性フィルター、52…吸引手段としての吸引ポンプ、53…移動機構としての昇降機構、54a…当接部としての先端部、60…制御手段としての制御部、61…空間域、B…気泡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給源から供給される液体をノズル形成面に形成されたノズルから噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に設けられ、前記液体供給源から前記ノズルに至る液体流路内から気泡を除去するクリーニング装置であって、
前記ノズルを囲うように前記ノズル形成面に当接して空間域を形成可能なキャップと、
前記空間域を吸引するために駆動される吸引手段と、
前記キャップ内に配置されて前記液体の透過は規制する一方で前記気泡の透過は許容する濾材と、
前記キャップを前記ノズル形成面に対して当接する当接位置と前記ノズル形成面から離間する退避位置との間で移動させる移動機構と、
を備え、
前記移動機構は、前記濾材が前記ノズル形成面から離間した状態で前記キャップを前記ノズル形成面に当接させる第1の当接位置、及び、前記濾材が前記ノズル形成面に接触して前記ノズルを封止する状態で前記キャップを前記ノズル形成面に当接させる第2の当接位置の間で前記キャップを移動可能に構成されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーニング装置において、
前記キャップは、前記ノズル形成面に対する当接部が、前記第1の当接位置から前記第2の当接位置に向けての前記キャップの移動方向に収縮可能に構成されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のクリーニング装置において、
前記吸引手段を制御する制御手段を更に備え、
前記制御手段は、前記キャップが前記第2の当接位置に配置される場合には、前記キャップが前記第1の当接位置に配置される場合よりも、前記空間域を吸引する吸引力が大きくなるように前記吸引手段を制御することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
液体供給源から供給される液体をノズル形成面に形成されたノズルから噴射する液体噴射ヘッドと、
請求項1〜3のうち何れか一項に記載のクリーニング装置と、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のクリーニング装置を用いた液体噴射装置のクリーニング方法であって、
前記第1の当接位置及び前記第2の当接位置のうち、一方の当接位置に前記キャップを配置する第1の当接段階と、
前記一方の当接位置に前記キャップが配置された状態で第1のクリーニング動作を実行する第1のクリーニング動作実行段階と、
前記一方の当接位置から他方の当接位置に前記キャップを移動させる第2の当接段階と、
前記他方の当接位置に前記キャップが配置された状態で第2のクリーニング動作を実行する第2のクリーニング動作実行段階と、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−793(P2011−793A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145440(P2009−145440)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】