説明

クリーニング装置およびクリーニング方法

【課題】搬送路上を移動する対象物の上面をクリーニングする工程を比較的簡易な機構で自動化し、生産性の向上を図る。
【解決手段】ガイド部4a,4bは、搬送路2上の幅方向における湿式充填品3の変位を規制する。クリーニングベルト5cは、主動ローラ5aと、従動ローラ5bとの間に巻回され、搬送路2の幅方向に延在している。クリーニングベルト5cは、搬送路2上を移動する湿式充填品3の上面と当接する凹凸状のクリーニング面5dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置およびクリーニング方法に係り、特に、搬送路上を移動する対象物の上面に付着した付着物の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションやアイシャドウといった固形粉末化粧品の一つとして、例えば、特許文献1に開示されているような湿式成型化粧品が存在する。湿式成型化粧品は、スラリーと呼ばれる化粧料の流動物を容器内に充填し、これをプレスして固化したものである。
【特許文献1】特開平5−201832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、容器内に充填された流動物をプレスする際、プレス体と容器との間に存在する微少な隙間から漏れ出した流動物が、容器の外枠上、或いは、多色化粧料を互いに区画する内枠上に付着してしまうことがある。このままの状態では、見栄えがよくないので、容器の上面に付着した付着物を除去する工程が必要になる。しかしながら、このクリーニング工程を手作業で行うと、生産性の低下を招くといった問題がある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、搬送路上を移動する対象物の上面をクリーニングする工程を比較的簡易な機構で自動化し、生産性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、ガイド部と、主動ローラと、従動ローラと、クリーニングベルトとを有し、搬送路上を移動する対象物の上面に付着した付着物を除去するクリーニング装置を提供する。ガイド部は、搬送路上の幅方向における対象物の変位を規制する。主動ローラは、搬送路の一方の側方に配置され、駆動源の駆動力によって回転する。従動ローラは、搬送路の他方の側方に配置される。クリーニングベルトは、主動ローラと、従動ローラとの間に巻回され、搬送路の幅方向に延在している。また、クリーニングベルトは、搬送路上を移動する対象物の上面と当接する凹凸状のクリーニング面を有する。
【0006】
ここで、第1の発明において、クリーニングベルトは、搬送路の上流から下流にわたって、複数配置されていてもよい。この場合、搬送路の下流側に位置するクリーニングベルトは、搬送路の上流側のクリーニングベルトよりも、クリーニング面の凹凸が細かいことが好ましい。
【0007】
第1の発明において、クリーニングベルトと当接して、クリーニング面に付着したダストを除去するダスト除去部と、ダスト除去部の下に設けられ、落下したダストを受ける受け皿とをさらに設けてもよい。
【0008】
第2の発明は、搬送路上を移動する対象物の上面に付着した付着物を除去するクリーニング方法を提供する。このクリーニング方法は、搬送路の幅方向における対象物の変位を規制する搬送路に、対象物を供給する第1のステップと、搬送路の幅方向に延在するとともに、凹凸状のクリーニング面を有するクリーニングベルトを変位させ、搬送路上を移動する対象物の上面と当接したクリーニング面の摺動によって、対象物の上面に付着した付着物を除去する第2のステップとを有する。
【0009】
ここで、第2の発明において、対象物の上面に残存する付着物のダストを飛散または吸引する第3のステップをさらに設けてもよい。
【0010】
さらに、上述した第1または第2の発明において、搬送路上における前後の対象物は、互いに当接しながら移動することが好ましい。また、対象物は、容器内に充填された流動物をプレスして固化した湿式充填品であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象物の上面と当接したクリーニング面の摺動によって、この上面に付着した不要な付着物を除去する。このクリーニング面の摺動によって、対象物を搬送路の幅方向に変位させようとする力が作用する。しかしながら、搬送路の幅方向における対象物の変位を規制することで、この力が作用しても、搬送路上の対象物がズレてしまうのを有効に防止できる。その結果、対象物のクリーニング工程を比較的簡易な機構で自動化でき、生産性の向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、クリーニング処理を施す対象物として、容器内に充填された化粧料の流動物(スラリー)をプレスして固化した湿式打型化粧品(湿式充填品)を例に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るクリーニング装置の外観斜視図である。このクリーニング装置1は、搬送路2上に設置されており、搬送路2上を移動する湿式充填品3の上面に付着した付着物を除去する。搬送路2は、図示した矢印Xの搬送方向に一定速度で常時変位する。これにより、搬送路2上において、前後が当接した状態で置かれた複数の湿式充填品3も、この速度でX方向に移動することになる。
【0014】
クリーニング装置1は、ガイド部4a,4bと、前後のクリーニング機構5,6と、モータ7とを主体に構成されている。ガイド部4a,4bは、搬送路2上において、所定の間隔を空けて配置されており、搬送路2の搬送方向Xに延在している。ガイド部4a,4bの間隔は、湿式充填品3の幅に若干のクリアランスを加えた長さに相当する。これによって、搬送路2上を移動する湿式充填品3の変位は、搬送方向Xに限定され、搬送路2の幅方向については規制される。
【0015】
搬送路2の上流側に設けられた前段のクリーニング機構5は、主動ローラ5aと、従動ローラ5bと、クリーニングベルト5cによって構成されている。主動ローラ5aは、搬送路2の一方の側方(同図の左側)における所定の高さに配置されており、回転軸8aに取り付けられている。この主動ローラ5aには、駆動源であるモータ7の駆動力が回転軸8aを介して伝達され、これによって、主動ローラ5aが回転する。一方、従動ローラ5bは、搬送路2の他方の側方(同図の右側)において、主動ローラ5aと同じ高さで、かつ、主動ローラ5aと対向して配置されている。この従動ローラ5bは、回転自在な状態で、回転軸8bに取り付けられている。これらのローラ5a,5bの高さは、クリーニングベルト5cが有するクリーニング面5dが湿式充填品3の上面と当接し、かつ、この上面を下方に押圧するように、湿式充填品3の高さやローラ5a,5bの径を考慮した上で、適切に設定されている。クリーニングベルト5cは、主動ローラ5aと、従動ローラ5bとの間に巻回されている。このクリーニングベルト5cは、一対のローラ5a,5bの配置関係に起因して、搬送路2の幅方向に延在しており、主動ローラ5aの回転にともない、図示したY方向に変位する。クリーニングベルト5cは、例えばゴムのように、適度な弾力性を有する弾性材によって形成されている。
【0016】
一方、搬送路2の下流側に設けられた後段のクリーニング機構6は、主動ローラ6aと、従動ローラ6bと、クリーニングベルト6cとを有し、上述した前段のクリーニング機構5と同様の構成を有する。このように、複数段のクリーニング機構5,6を設ける理由、換言すれば、クリーニングベルト5c,6cを搬送路2の上流から下流にわたって複数配置する理由は、湿式充填品3上の付着物を除去する能力を高めるためである。したがって、単一のクリーニング機構のみで十分な除去能力を確保できる場合には、これを複数設ける必要は必ずしもない。
【0017】
なお、本実施形態では、前後の主動ローラ5a,6aが同一の回転軸8aに取り付けられているので、両者の回転速度が同一となるが、例えば、前段の主動ローラ5aを低速で回転させ、後段の主動ローラ6bを低速で回転させるといった如く、両者の回転速度が異なるようにしてもよい。この場合、前後の主動ローラ5a,6aを異なる回転軸に取り付けるとともに、どちらか一方の動力伝達経路中にギヤやプーリを介在させることによって、主動ローラ5a,6aの一方の回転数を変速(低回転数化)させればよい。
【0018】
図2は、クリーニングベルト5c,6cに設けられたクリーニング面5d,6dを示す図である。これらのクリーニング面5d,6dは、主面に対して上方に突出した円柱状の凸部を多数設けることで、凹凸状に形成されている。後述するように、この凹凸は、湿式充填品3の上面を研磨して、そこに付着した不要な付着物を除去するために設けられている。なお、クリーニング面5d,6dの凹凸の細かさは、付着物の除去能力に直接関係するので、実験やシミュレーション等を通じて適切に設定すべきである。本実施形態では、クリーニング面5d,6dの凹凸の粗さは同じである。
【0019】
つぎに、上述したクリーニング装置1を用いて、湿式充填品3の上面に付着した付着物を除去する工程を、図3から図5を参照しつつ説明する。なお、クリーニングベルト5c,6cの機能は同様なので、以下、クリーニングベルト5cにのみ着目して説明する。
【0020】
まず、図3に示すように、容器3aにおける区画された収容スペースのそれぞれに流動物3b,3cを充填し、その後、プレス体9を用いて、これらを下方にプレスする。このプレスによって、プレス体9と容器3aとの間に存在する微少な隙間から流動物3b,3cが漏れ出し、容器3aの外枠や内枠の上部にこれが付着する。このような状態の湿式充填品3は、上述したクリーニング装置1へと導くガイド部4a,4b付の搬送路2に供給される。なお、この搬送路2への供給に先立ち、プレス後の湿式充填品3に対して、加熱処理等を適宜施してもよい。
【0021】
つぎに、図4に示すように、搬送路2上をX方向に移動する湿式充填品3がクリーニングベルト5cの下に位置している間、クリーニングベルト5cによって、湿式充填品3の上面に付着した付着物の除去が行われる。このクリーニング工程において、Y方向に変位するクリーニングベルト5cは、自己の弾性力に起因して、下方に向かう力Fを発生するとともに、この力Fを押圧力として、湿式充填品3の上面と当接したクリーニング面5dが水平方向に摺動する。これによって、クリーニング面5dと、湿式充填品3の上面との間に生じた摩擦力と、クリーニング面5dの凹凸形状とが相俟って、湿式充填品3の上面が研磨される。その結果、湿式充填品3の正面に付着している付着物が取り除かれる。
【0022】
その際、クリーニングベルト5cのY方向への変位に伴い、これと当接した湿式充填品3にもY方向へ変位しようと力が作用する。しかしながら、その方向にはガイド部4aが存在するので、ガイド部4aと当接した湿式充填品3は、Y方向への変位することなく、そこに留まる。
【0023】
なお、搬送路2と湿式充填品3との間に生じる摩擦力が非常に小さい場合には、クリーニングベルト5cの直下に位置した湿式充填品3が、X方向に移動することなく、その位置に留まってしまうケースが考えられる。しかしながら、本実施形態では、搬送路2上における前後の湿式充填品3が互いに当接しながらX方向に移動しているため、搬送路2との間の上記摩擦力以外にも、湿式充填品3をX方向に押し出そうとする力が作用する。したがって、クリーニングベルト5cの直下で湿式充填品3が留まってしまうといった事態を有効に回避できる。
【0024】
そして、上述したクリーニング工程に続いて、図5に示したように、エアクリーナ10より圧縮空気(エア)を吹き出して、湿式充填品3の上面に残存する付着物のダストを飛散させる。また、これに代えて、エアクリーナ10によって、付着物のダストを吸引してもよい。これによって、外観上良好な湿式充填品3を得ることができる。
【0025】
このように、本実施形態によれば、湿式充填品3の上面と当接したクリーニング面5d,6dの摺動によって、湿式充填品3の上面を研磨し、そこに付着した不要な付着物を除去する。クリーニング面5d,6dの摺動・研磨によって、湿式充填品3を搬送路2の幅方向に変位させようとする力が作用する。しかしながら、搬送路2の幅方向における湿式充填品3の変位は、ガイド部4a(または4b)によって規制されている。したがって、この力が作用しても、搬送路2上の湿式充填品3がズレてしまうことを防止できる。本実施形態によれば、湿式充填品3の上面に付着した付着物を除去するクリーニング工程を比較的簡易な機構で自動化でき、生産性の向上を図ることが可能になる。
【0026】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係るクリーニング面5d,6dを示す図である。これらのクリーニング面5d,6dは、上述した第1の実施形態と同様に、主面に対して上方に突出した円柱状の凸部を多数設けることで、凹凸状に形成されている。ただし、クリーニング面5d,6dの凹凸の粗さが異なっている。前段のクリーニング面5dは、主面から突出した凸部の断面を大径にすることで、凹凸が粗く形成されている。これに対して、後段のクリーニング面6dは、主面から突出した凸部の断面を小径かつ高密度にすることで、凹凸が細かく形成されている。
【0027】
本実施形態によれば、後段のクリーニング面6dの凹凸を前段のクリーニング面5dのそれよりも細かく形成することで、ラフ研磨と、ファイン研磨とを段階的に行うことが可能になる。その結果、クリーニング工程を経た湿式充填品3の見栄えが一層良好になる。
【0028】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係るクリーニング装置1の外観斜視図である。このクリーニング装置1は、上述した第1の実施形態に係るクリーニング装置1をベースとし、ダスト除去部11と、受け皿12とを追加したものである。なお、第1の実施形態で説明した部材と同一の部材については、同一の符号を付して、ここでの説明を書略する。
【0029】
ダスト除去部11は、クリーニングベルト5cと当接して、クリーニング面5dに付着したダストを除去する。ダスト除去部11としては、例えば、ダストを拭き取るための弾性体(スポンジ等)や布(水を含んだものでも可)を用いることができる。また、それ以外に、高周波で振動するアクチュエータを用いて、ダストをふるい落としてもよい。また、ダスト除去部11は、クリーニングベルト5cと常時当接している必要はなく、一定の間隔、或いは、オペレータの操作に応じて、当接するようにしてもよい。また、受け皿12は、ダスト除去部11の下に設けられ、クリーニングベルト5cより落下したダストを受け、これを収容する。
【0030】
本実施形態によれば、ダスト除去部11によって、クリーニング面5dに付着したダストを除去するので、クリーニング面5dの目詰まりを有効に抑制することができる。
【0031】
なお、上述した各実施形態では、クリーニング装置1のクリーニング対象として、湿式打型化粧品を一例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種の湿式充填品に適用可能である他、上面に付着した付着物を除去する必要がある各種の対象物(必ずしも湿式充填品に限定されない)に対しても、広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態に係るクリーニング装置の外観斜視図
【図2】クリーニング面を示す図
【図3】プレス工程の説明図
【図4】クリーニング工程の説明図
【図5】ダスト除去工程の説明図
【図6】第2の実施形態に係るクリーニング面を示す図
【図7】第3の実施形態に係るクリーニング装置の外観斜視図
【符号の説明】
【0033】
1 クリーニング装置
2 搬送路
3 湿式充填品
4a,4b ガイド部
5,6 クリーニング機構
5a,6b 主動ローラ
5b,6b 従動ローラ
5c,6c クリーニングベルト
5d,6d クリーニング面
7 モータ
8a,8b 回転軸
9 プレス体
10 エアクリーナ
11 ダスト除去部
12 受け皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路上を移動する対象物の上面に付着した付着物を除去するクリーニング装置において、
前記搬送路上の幅方向における前記対象物の変位を規制するガイド部と、
前記搬送路の一方の側方に配置され、駆動源の駆動力によって回転する主動ローラと、
前記搬送路の他方の側方に配置された従動ローラと、
前記主動ローラと、前記従動ローラとの間に巻回され、前記搬送路の幅方向に延在しているとともに、前記搬送路上を移動する前記対象物の上面と当接する凹凸状のクリーニング面を有するクリーニングベルトと
を有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記クリーニングベルトは、前記搬送路の上流から下流にわたって、複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載されたクリーニング装置。
【請求項3】
前記搬送路の下流側に位置する前記クリーニングベルトは、前記搬送路の上流側の前記クリーニングベルトよりも、前記クリーニング面の凹凸が細かいことを特徴とする請求項2に記載されたクリーニング装置。
【請求項4】
前記クリーニングベルトと当接して、前記クリーニング面に付着したダストを除去するダスト除去部と、
前記ダスト除去部の下に設けられ、落下したダストを受ける受け皿と
をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載されたクリーニング装置。
【請求項5】
前記搬送路上における前後の前記対象物は、互いに当接しながら移動することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載されたクリーニング装置。
【請求項6】
前記対象物は、容器内に充填された流動物をプレスして固化した湿式充填品であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載されたクリーニング装置。
【請求項7】
搬送路上を移動する対象物の上面に付着した付着物を除去するクリーニング方法において、
搬送路の幅方向における前記対象物の変位を規制する搬送路に、前記対象物を供給する第1のステップと、
前記搬送路の幅方向に延在するとともに、凹凸状のクリーニング面を有するクリーニングベルトを変位させ、前記搬送路上を移動する前記対象物の上面と当接した前記クリーニング面の摺動によって、前記対象物の上面に付着した付着物を除去する第2のステップと
を有することを特徴とするクリーニング方法。
【請求項8】
前記対象物の上面に残存する前記付着物のダストを飛散または吸引する第3のステップをさらに有することを特徴とする請求項7に記載されたクリーニング方法。
【請求項9】
前記搬送路上における前後の前記対象物は、互いに当接しながら移動することを特徴とする請求項7または8に記載されたクリーニング方法。
【請求項10】
前記対象物は、容器内に充填された流動物をプレスして固化した湿式充填品であることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載されたクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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