説明

クリープ強さを向上させたプラスチック製燃料タンクの製造方法

【課題】本発明は、クリープ強さを向上させたプラスチック製燃料タンクの製造方法に関する。
【解決手段】2つの部分(1,2)を有するプラスチック製のパリソンを、開いた2つのキャビティ付きの型内に挿入し、パリソンの2つの部分(1,2)を固定する補強要素(3)の少なくとも一部分を支持するコアを、パリソンの内側に挿入し、パリソンをコアを介してブロー成形することによって、パリソンをキャビティにしっかりと押し付け、コアを用いて、補強要素(3)の一部分をパリソンの2つの部分(1,2)のうちの少なくとも一方に固定し、コアを引出し、型を再び閉じ、それらの2つのキャビティを互いに合わせ、パリソンの2つの部分(1,2)をキャビティの周囲に沿って把持して2つの部分を互いに溶着させ、加圧流体を型内に注入することによってパリソンを型のキャビティにしっかりと押し付け、型を開いて燃料タンクを取出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリープ強さを向上させたプラスチック製燃料タンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両又は自動車用のプラスチック製燃料タンクは、これらの下側スキン層に関する最大許容撓み度を規定する仕様を満たさなければならない。かかる仕様に記載された撓み度は、通常、老化試験の際に満足されなければならず、かかる老化試験では、燃料タンクは、所与の期間(典型的には数週間)、所定の温度(通常、40℃)で一定量の燃料を収容する。上記仕様の目的は、車両がそのロードクリアランス(最低地上高)を維持するようにすると共に、燃料タンクのスキン層が車両の高温箇所に接触するのを防止することにある。
【0003】
現時点では、プラスチック製燃料タンクは、一般に、プラスチック製の突出部を介して車両のシャーシに固定され、金属製ストラップによって支持されている。金属製ストラップは、特に、最大許容撓みを遵守することが困難なより容量の多いタンクについて用いられている。しかしながら、金属製ストラップに頼るには、追加の取り付け工程が必要であり、したがって、あまり経済性がよくない。
【0004】
先行技術において、燃料タンクの機械的強度(クリープ強さを含む)を高めることを目的とした解決策が提案された。
【0005】
かくして、特に、米国特許第3,919,373号明細書(特許文献1)及び米国特許第4,891,000号明細書(特許文献2)において、円筒形パリソンから燃料タンクをブロー成形するとき、インサートを燃料タンク内部に固定することが提案された。しかしながら、この技術を用いてインサートを正確に位置決めすることは容易ではない。
【0006】
また、米国特許出願公開第2002/0100759号明細書(特許文献3)において、燃料タンクの2つの壁を溶着によって直接互いに固定することが提案された。しかしながら、溶着シームのところでの2つの壁の湾曲の結果、有用なタンク容量が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,919,373号明細書
【特許文献2】米国特許第4,891,000号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0100759号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、燃料タンクを強化し、具体的に言えば、そのクリープ強さを増大させると共に、かかるクリープ強さの増大を、有用な容量を減少させることなしに容易且つ確実に行うことができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明は、クリープ強さを向上させたプラスチック製燃料タンクの製造方法であって、(a)2つの別々の部分を有するプラスチック製のパリソンを、開いた2つのキャビティ(凹部)付きの型内に挿入する工程と、(b)パリソンの2つの部分を固定する、又は、2つの部分の間のリンクを形成することができる補強要素の少なくとも一部分を支持するコアを、パリソンの内側に挿入する工程と、(c)パリソンをコアを介してブロー成形することによって且つ/又は型のキャビティの後方に吸引力を生じさせることによって、パリソンをキャビティにしっかりと押し付ける工程と、(d)コアを用いて、補強要素の一部分をパリソンの2つの部分のうちの少なくとも一方に固定する工程と、(e)コアを引出す工程と、(f)型を再び閉じ、それらの2つのキャビティを互いに合わせ、パリソンの2つの部分をキャビティの周囲に沿って把持して2つの部分を互いに溶着させる工程と、(g)加圧流体を型内に注入し、且つ/又は、真空を型のキャビティの後方に生じさせてパリソンを型のキャビティにしっかりと押し付ける工程と、(h)型を開いて燃料タンクを取出す工程と、を有する方法に関する。
【0010】
「燃料タンク」という用語は、燃料を種々の且つ漸変する環境及び使用上の条件下において貯蔵できる密閉タンクを意味するものである。このタンクの一例は、自動車両に取り付けられるタンクである。
【0011】
本発明の方法に従って製造された燃料タンクは、プラスチック、即ち、少なくとも1種類の合成樹脂ポリマーで作られる。
【0012】
全ての種類のプラスチックが適している。特に適したプラスチックは、熱可塑性樹脂のカテゴリーから得られる。
【0013】
「熱可塑性樹脂」という用語は、熱可塑性エラストマーを含む任意の熱可塑性ポリマー並びにこれらの組成物を意味する。「ポリマー」という用語は、ホモポリマーとコポリマー(特に、2成分又は3成分コポリマー)の両方を意味している。かかるコポリマーの例は、非限定的に言えば、ランダムコポリマー、リニアブロックコポリマー、他のブロックコポリマー及びグラフトコポリマーである。
【0014】
融点が分解温度よりも低い任意の種類の熱可塑性ポリマー又はコポリマーが適している。少なくとも10℃にわたる融点を持つ合成熱可塑性樹脂が、特に適している。かかる材料の例としては、これらの分子量に多分散性を示す材料が挙げられる。
【0015】
特に、ポリオレフィン、熱可塑性ポリエステル、ポリケトン、ポリアミド及びこれらのコポリマーを用いるのがよい。また、ポリマー又はコポリマーの配合物を使用してもよいし、同様に、無機充填材、有機充填材及び/又は天然充填材とポリマー材料の配合物を使用してもよく、限定するわけではないが、かかる充填材は、例えば、カーボン、塩及び他の無機誘導体、天然繊維又はポリマー繊維である。また、上述したポリマー又はコポリマーのうち少なくとも1つを含む互いに接合された積み重ね状態の層から成る多層構造体を用いてもよい。
【0016】
用いられることが多いポリマーの1つは、ポリエチレンである。高密度ポリエチレン(HDPE)により優れた結果が得られた。好適例として、燃料タンクは、燃料を通さない樹脂、例えばEVOH(エチレン及び部分加水分解ビニルアセテートのコポリマー)の層を更に有する。変形例として、燃料タンクは、表面処理(フッ素化又はスルフォン化)されてもよく、その目的は、燃料タンクが燃料を通さないようにすることにある。
【0017】
本発明によれば、少なくとも2つのキャビティ又は凹部(外側部分)及び1つのコア(内側部分又は部品)を有する型内にパリソンを導入する。この型は、一般に、金属を用いており、好適例として、組み立てられた別々の金属ブロックを用いている。
【0018】
本発明の方法では、パリソンの2つの部分、即ち、燃料タンクの将来的な上壁及び下壁を固定するための、又は、これらの間のリンクを形成するための補強要素の少なくとも一部分を、コアによって固定する。便宜上、用いる用語を短縮するために、「補強要素」という用語を以下において用いるが、理解されるように、これは、かかる補強要素のほんの一部分であってもよい。この補強要素は、好ましくは、実質的に剛性であり、それほど変形可能ではない。
【0019】
したがって、本発明の方法は、コアを用いる。コアは、型のキャビティの間に挿入するのに適した寸法形状の部品を意味する。かかる部品は、例えば英国特許第1,410,215号明細書に記載されており、本発明の目的に関し、上記英国特許の内容を本明細書の一部分として援用する。コアは、鏡等の加熱部品を備えるのがよく、加熱部品は、一般的にコア等のそばで赤外線加熱によって予熱された溶着すべき付属品の一部分を高温状態に保つことを可能にする。このコアは、フィラメント等の加熱部品を更に備えるのがよく、加熱部品は、補強要素の配置中(以下参照)にパリソンと接触する一領域又は複数の領域に配置される。
【0020】
コアは又、パリソンを型のキャビティにしっかりと押し付けるための加圧ガスを型内に押し込むのにも役立つ。
【0021】
最後に、コアは又、プロセス制御を少なくとも部分的に行うのにも利用できる。このようにするため、例えば、カメラを型内に組み込んで、補強要素及び設けられている場合には任意その他の付属品の固定の質を、画像分析を介して見守ると共に監視することが可能である。パリソンへのこれら要素の取付けを良好に監視するために、力、走行距離、圧力及び温度等のパラメータを測定する1つ又は2つ以上のセンサを、コアに取り付けてもよい。
【0022】
本発明によれば、パリソン、即ち、いつでも成形可能な状態にある溶融状態又は軟化された状態のプラスチック構成要素は、好ましくは互いにほぼ同じ構造を有する少なくとも2つの別々の部分で構成される。これが意味することは、かかる2つの部分が多数の層を有しているけれども4以上、好ましくは、3以上のユニット互いに異なっていないこと、及び、互いに合致する層に含まれるポリマーの性質が、化学的観点及び溶着によって組み立てることができるかどうかという観点から見て、適合性又は相溶性があるということである。同じ数の層を有する構造、特に、同一の構造が好ましい。これら2つの別々のパリソン部分はそれぞれ、タンクの上壁及び下壁を形成するためのものである。
【0023】
本発明の方法では、タンクを少なくとも2つの部分として作られたパリソンから、単一の工程で単一部品に成形し、即ち、その工程の後で別々のシェルを組み立てる追加の工程を利用する必要なく、単一部品タンクが得られ、上記工程は、一般に、型を閉じたときに2つのパリソン部分を互いに溶着することにより達成される。詳細には、タンクを成形するのに、少なくとも1つの切欠きを有する管状パリソンをブロー成形し、即ち、欧州特許出願第1110697号明細書(その記載内容を本発明の目的に関し、本明細書に援用する)に記載されているように、上記管状パリソンを、加圧流体を用いて拡張させて型の壁にしっかりと押し付け、又は、シートを熱成形し、即ち、例えばシートの後方に吸引力を及ぼして真空を作ることにより、シートを型の壁にしっかりと押し付ける。
【0024】
本発明の方法では、パリソンの実際の成形、即ち、パリソンが実質的にタンクの形状をなすようにパリソンを変形させることは、主として、上記工程(c)の間に行われる。上述した溶着シームを作る上記工程(f)の間、タンクの寸法安定性を維持するために、圧力又は吸引力を単に維持する。
【0025】
ブロー成形タンク、即ち、型内に注入される加圧流体を用いてブロー成形する場合、好適例として、パリソンは、本出願人名義の欧州特許出願第1110697号明細書(その記載内容を本発明の目的に関し、本明細書に援用する)に記載されているように同一の押出加工円筒形パリソンのパターン付けの結果得られた2つの別々の部分から成る。単一のパリソンを押出加工するこの形態によれば、このパリソンを2つの直径方向反対側の線に沿ってその全長に沿って切断して2つの別々の部分(シート)を得る。2つの別々に押出加工され且つ厚さが一定であるシートによるブロー成形と比較すれば、この方式により、一般にはパンチの位置を調節できるダイを備えた、適当な押出装置(押出機)を用いて、厚さが変化する、即ち、厚さがパリソンの長さ方向に沿って一定ではないパリソンを用いることが可能である。かかるパリソンは、材料が型内で変形する非一定速度の結果として、パリソン上の或る特定の箇所において、ブロー成形作業中に生じる厚さの減少を考慮に入れている。
【0026】
変形例として、タンクは、2枚のシートを熱成形することにより、即ち、キャビティ型の後方に真空を生じさせることにより成形してもよい。かかる方法により、一般に、厚さの非一様な減少が殆ど無く又は全く無くなり、したがって、一定厚さのパリソン(例えば、押出加工シート)に対処できる。
【0027】
燃料タンクをブロー成形することが好ましい。この理由は、熱成形では、深さ方向の変形部、例えば、燃料タンクのコーナー部を形成することができるように、型を一般には60℃に加熱することが必要だからである。その結果、熱成形では、上記制約が存在しないブロー成形で必要なサイクル時間よりも長いサイクル時間が必要になる。
【0028】
ブロー成形を行うため、上記工程(c)及び(d)中、一般に、型のキャビティをコアの上で閉じ、即ち、キャビティをコアに接触させて、コアのいずれかの側にもシール領域を構成する。より正確には、これらキャビティがパリソンを支持するので、コアは、パリソンと接触状態にあり、したがって、パリソンは、コアとキャビティとの間でサンドイッチ状態になる。この場合、これは、型の1回目の閉鎖であり、コアは、キャビティの間に介在し且つキャビティと接触状態にあり、コア中に加圧ガス(一般的に、空気)を吹き込む。
【0029】
この場合、本発明の方法は、型の各開放前に実施されるガス抜き工程を更に有する。ガス抜き工程は、任意適当な仕方で実施できる。一般に、まず最初に、パリソンを針で刺すこと等によってパリソンに孔をあけ、次に、例えば弁を用いて、流体を型から排出する。
【0030】
タンクを熱成形により成形する場合、コアをキャビティにしっかりと押し付けるために型をコアの上に閉じる必要はなく、それは、熱成形が、コアを介するブロー成形によってではなく、これらキャビティから吸引力によって行われるからである。この場合、必要なことは、キャビティをコアの周りに、広い意味においては、コアの付近に位置決めすることだけである。
【0031】
本発明の方法の実施の際、コア上への型の1回目の閉鎖中、必要ならば、パリソンの部分の縁部が互いに溶着されることを阻止する器具が設けられることが好ましい。この器具は、有利には、コア内に組み込まれる。この目的のため、コアは、それを互いに溶着すべきパリソンの2つの部分の間に部分的に(一般には、その周囲の少なくとも一部分にわたって)挿入するのに適した寸法形状を有することが好ましい。
【0032】
工程(f)の間の溶着を容易にするため、必要ならば、型のキャビティは、型の1回目の閉鎖に係わる工程中、溶着領域を加熱できる熱調節装置を備えることが有利である。特に好適な例として、コアは、パリソンとの接触領域に熱調節装置を有し、このことは、パリソンが上述した溶着領域を有している場合に特に有利である。この形態は、内部ビードを減少させ、したがって、タンクの衝撃強さを向上させることによって、タンクの溶着シームの品質を一段と向上させることができる。かかる調節は、例えば、本出願人名義の仏国特許出願第04.13407号明細書に記載されており、本発明の目的に関し、その記載内容を本明細書に援用する。
【0033】
本発明によれば、型内に配置されたパリソンの中にコアを導入する前、コアに補強要素を取り付ける。補強要素をパリソンに取り付けるため、コアは、取り付けるべき補強要素を移動させ且つこれに圧力を加えることができる油圧ラムを有することが有利である。
【0034】
上述したように、補強要素は、任意既知の仕方でパリソンに取り付けられるのがよい。これは、補強要素をパリソンに直接的に溶着することによって行われてもよいし(固定領域における補強要素の構成材料がタンクの構成材料と相溶性がある場合)、本出願人名義の仏国特許出願第04.11550号明細書に記載されているようにステーキング(頭付け)によって行われてもよいし、クリップ留め/ねじ止めによって行われてもよく(この場合、最初、コアにより、クリップ又はねじ山を備えた要素をパリソンに固定し、次に、補強要素を上記要素にクリップ留め/ねじ止めする)、本発明の目的に関し、上記仏国特許出願の記載内容を本明細書に援用する。したがって、本発明の方法の1つの利点は、この方法が、種々の取り付け方法(溶着、ステーキング、クリップ留め等)に対処でき、したがって、補強要素に関して考えられる構成材料の選択を可能にするということにある。
【0035】
「補強要素」という表現は、燃料タンクを成形したときに燃料タンクの下壁、即ち、車両内において下方に面し且つ燃料の重量を受けて撓む方の壁と、燃料タンクの上壁、即ち、上方に面し且つ使用中にほとんど撓まない又は全く撓まない壁とを互いに連結する任意の物体を意味し、例えば、バー、ロッド、ケーブル、バッフル、ユニットである。
【0036】
補強要素は、この目的のために明示されて用いられる要素(ロッド、ケーブル等)であってもよいし、慣例的な使用方法又は動作において燃料タンクと一般に関連し且つ一方の壁から他方の壁まで延びるのに十分な大きさを有する任意の機能装置又は物体であってもよい。
【0037】
特に適した構造体の一例は、タンク用ポンプ/ゲージモジュールである。
【0038】
機能要素を補強要素とするこの形態では、本発明の方法の実施中、着目している機能要素の支持部だけをコア上に(したがって、パリソン上に)配置するのが有利である。その理由は、基準を満たさないタンクは粉砕されるので、高価であることがある機能要素も粉砕することはあまり経済的ではないからである。したがって、この場合、本発明の方法は、コアの使用により、機能要素の支持体をタンクの壁上にあらかじめ成形された形状物(クリップ)に溶着、ステーキング、クリップ留め等によって固定することが可能であり、機能要素を、タンクに設けられた開口部を通して後からタンク内に導入し、次に、一方で、機能要素を支持体に固定し、他方で、タンクの開口部に、例えばねじ山付きリングを用いて、固定する。かかる方式は、機能要素としてのポンプ/計器モジュールに特に適している。
【0039】
変形例として、補強要素は、この目的に特に使用される部品、したがって、小さい寸法のバー、ロッド、ケーブル等から成っていてもよく、以下の説明において、かかる部品を一般的な用語「ロッド」と称する。補強要素は、一般には、実質的に細長い形状のものであり且つ実質的に断面が一定の、好ましくは、丸形の要素である。
【0040】
HDPEのロッドに頼るのであれば、タンクも又HDPEを利用している場合に特に有利である。というのは、この場合、タンク製造の際に生じた廃棄物(スクラップ)を用いてロッドを作ることができるからであり、したがって、かかる廃棄物を経済的に使用することができる。したがって、より一般的に言えば、この形態では、類似したタンクの製造によって生じた廃棄物でロッドを作ることが有利である。
【0041】
ロッドの場合、これらロッドの数及び機械的強度は、所望の結果が生じるように自由に設定される。例えば、ロッドを組み立ててネットワークを形成してもよく、この場合、例えば、ロッドは、下壁と上壁を交互に連結して節のところで三角形を形成する。ロッドを溶着によってパリソンに直接固定できるように、ロッドの構成材料としてタンクの材料と適合性又は相溶性のある材料が有利に選択される。したがって、この特徴によれば、スクラップに頼ることが特に適している。
【0042】
上述したような「ロッド」の場合、ロッドを本発明において固定する実用的な一方法は、ロッドを2つに分割し、ロッドに1つのクリップを設け、コアを用いて且つ互いにクリップ留めしない状態でパリソンの部分に1つずつ固定し、クリップ留めしない。この場合、型からの取出し後のタンクの収縮により、2つの部分が自然にクリップ留めされるのに十分なものであるか、変形例として、外部圧力をタンクの壁に手で又は機械で付与して、クリップ留めを実施/促進するかのいずれかである。
【0043】
変形例として、ロッドが単一部品として作られている場合、工程(d)の間、単一部品をパリソンの2つの部分の一方に固定し、工程(f)の間、単一部品をパリソンの2つの部分の他方に固定する。しかしながら、この変形例は、成形後の収縮により、燃料タンクへのロッドの取り付け箇所のところに張力をもたらしやすいので幾分不利である。溶着取り付けの場合、コアは、ラムを備えるのが有利であり、ラムは、補強要素の第1の端部を溶着しながら補強要素の第2の端部(次に固定される端部)を高温状態に保つ加熱要素(鏡、フィラメント等)を有する。
【0044】
燃料タンクの壁と壁を連結する補強要素は、一般に、それが1つだけ存在している場合、燃料タンクの壁に実質的に垂直に取り付けられる。いくつかの補強要素、例えば数本のロッドに頼る場合、補強要素は傾斜させられるのがよい。当業者であれば、機械的強度の計算又はシミュレーションに基づいて、望ましい結果に従う補強要素の取り付け方、例えば、取り付け箇所及び向きを最適化しようとする。
【0045】
当業者は、補強要素の取り付け箇所のところで壁の湾曲が殆ど無い、又は、好ましくは全く無いようにすることを確保し、それにより、燃料タンクの空容積に悪影響を及ぼさないようにし、しかも、望ましくないデッドスポット及び/又は応力集中部を生じさせないようにする。したがって、この観点から、収縮後に現場で組み立てられる2部分補強要素、例えば上述したロッドが、良好な結果をもたらす。
【0046】
一般に、燃料タンクは、車両のシャーシにストラップ、一般的には金属製のストラップによって固定される。これらストラップは又、燃料タンクのクリープ強度を増大させる利点があるが、コストが比較的高いという欠点もある。その結果、ストラップを他の器具に交換する、例えばタンクの周囲に沿って設けられる固定用突出部に交換する要望がある。しかしながら、この場合、燃料タンクは、追加の補強要素を備えなければならないのに対して、本発明の目的は、この要望に特に適している。具体的に言えば、本発明では、互いに溶着される2つの部分の形態をなすパリソンが作られるので、一般に、溶着シームが得られ、溶着シームの過剰な材料、即ち、スプルーは、一般に、いわゆるトリミング作業中に除去される。この作業中に必要なことは、タンク固定用突出部としての役目を果たすことができる幾つかの部分又はパッドを残しておいておくことである。その結果、本発明の好ましい形態では、工程(f)における溶着により、溶着シームを形成し、工程(i)において、溶着シームは、燃料タンクを自動車両シャーシに取り付けるパッド又は突出部を残すように部分的に除去される。
【0047】
本発明は又、本発明の方法を用いて得ることができるプラスチック製の燃料タンクに関する。
【0048】
1つの側面によれば、本発明は、溶着により組み立てられた下壁及び上壁とを有するプラスチック製の燃料タンクであって、燃料タンクの内部に位置し且つ燃料タンクの下壁を上壁に連結する少なくとも1本のロッドを有することを特徴とする燃料タンクに関する。
【0049】
好適例として、このロッドは、実質的に等しい長さを有することが好ましい2つの部品で作られ、各部分は、2つの端部を有し、一方の端部は、燃料タンクの壁の一方に固定され、好ましくは溶着され、他方の端部は、もう一方のロッドにクリップ留めされる。
【0050】
別の側面によれば、本発明は、プラスチック製の燃料タンクであって、溶着によって組み立てられた下壁及び上壁と、燃料タンクの内部に位置し且つ燃料タンクの下壁を上壁に連結する少なくとも1つの機能要素と、を有することを特徴とする燃料タンクに関する。この機能要素は、本発明の方法の説明において上述したようなものである。
【0051】
最後に、別の最後の側面によれば、本発明は、プラスチック製の燃料タンクであって、溶着によって組み立てられた下壁及び上壁と、燃料タンクの内部に位置し且つ燃料タンクの下壁を上壁に連結する少なくとも1つの補強要素と、を有し、下壁及び上壁を互いに連結する溶着部は、溶着シームによって構成され、この溶着シームは、燃料タンクを特に自動車両シャーシに固定するための突出部を形成するように適所で途切れていることを特徴とする燃料タンクに関する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】1本のロッドが固定された燃料タンクの断面図である。
【図2】2本のロッドが固定された燃料タンクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1及び図2の目的は、本発明の範囲を何ら制限しようとしないで、本発明の幾つかの具体的な特徴を示すことにある。
【0054】
図1においては、単一のロッド3が、燃料4を収容したタンクの上壁1の一箇所を、タンクの下壁2の一箇所に連結している。このロッド3は、2つの箇所のところで溶着によって固定されており、ロッド3を、最初、コアを用いてパリソンの一方の側部に固定し、次に、型を閉じたときにパリソンの他方の側に固定する。その概略的な向きは、鉛直方向であるが、必ずしも鉛直方向に完全に一致させる必要はない。このロッド3の結果として、下壁2の撓み又は反りは、少なくとも部分的に上側壁部分1によって拘束されるので、制限される。
【0055】
図2においては、2本のロッド3は、三角形の隆起部を構成するようIに固定されている。最初、2本のロッドをそれらの一端のところが 「V」字形になるようにパリソンの一方の部分に杭状に固定する。次に、型の閉鎖時、ロッド3をパリソンの他方の部分の2つの箇所のところで溶着する。
【0056】
なお、本実施形態においては、以下の構成も好適である。
<燃料タンクの製造方法>
[構成1]
クリープ強さを向上させたプラスチック製燃料タンクの製造方法であって、
(a)2つの別々の部分を有するプラスチック製のパリソンを、開いた2つのキャビティ付きの型内に挿入する工程と、
(b)前記パリソンの前記2つの部分を固定する、又は、前記2つの部分の間のリンクを形成することができる補強要素の少なくとも一部分を支持するコアを、前記パリソンの内側に挿入する工程と、
(c)前記パリソンを前記コアを介してブロー成形することによって且つ/又は前記型のキャビティの後方に吸引力を生じさせることによって、前記パリソンを前記キャビティにしっかりと押し付ける工程と、
(d)前記コアを用いて、前記補強要素の前記一部分を前記パリソンの2つの部分のうちの少なくとも一方に固定する工程と、
(e)前記コアを引出す工程と、
(f)前記型を再び閉じ、それらの2つのキャビティを互いに合わせ、前記パリソンの前記2つの部分を前記キャビティの周囲に沿って把持して前記2つの部分を互いに溶着させる工程と、
(g)加圧流体を前記型内に注入し、且つ/又は、真空を前記型のキャビティの後方に生じさせて前記パリソンを前記型のキャビティにしっかりと押し付ける工程と、
(h)前記型を開いて前記燃料タンクを取出す工程と、を有する方法。
[構成2]
加圧流体を前記型内に注入することによって、前記燃料タンクを成形し、
前記パリソンは、押出加工された円筒形パリソンを切断することによって得られた2つの別々の部分で構成される、前記方法。
[構成3]
真空を前記型のキャビティの後方に生じさせることによって、前記燃料タンクを成形し、
前記パリソンは、2枚の押出成形されたシートで構成される、前記方法。
[構成4]
前記コアは、前記補強要素を前記パリソンに固定する油圧ラムを有する、前記方法。
[構成5]
前記補強要素は、前記燃料タンクの機能要素であり、その支持体だけを成形時に前記燃料タンク内に導入し、前記機能要素それ自体は、前記燃料タンクを前記型から取出した後、前記燃料タンクの壁に形成された開口部を通して前記燃料タンク内に導入される、前記方法。
[構成6]
前記機能要素は、ポンプ/計器モジュールである、前記方法。
[構成7]
前記補強要素は、少なくとも1本のロッドから成る、前記方法。
[構成8]
前記ロッドは、前記燃料タンクと類似した燃料タンクの製造によって生じた廃棄物から作られる、前記方法。
[構成9]
前記ロッドは、クリップ留め器具を備えた2つの部品に作られ、前記2つの部品はそれぞれ、互いにクリップ留めされない状態で、前記パリソンの前記2つの部分に互いに向かい合って固定され、
前記型からの取出し後における前記燃料タンクの収縮により、前記2つの部品を自然に互いにクリップ留めさせ、且つ/又は、前記燃料タンクの壁に外部圧力を加えて前記クリップ留めを実施し且つ促進させる、前記方法。
[構成10]
前記工程(f)における溶着により、溶着シームを形成し、この溶着シームを前記工程(i)中に部分的に除去し、前記燃料タンクを自動車両のシャーシに取り付けるためのパッド又は突出部を残す、前記方法。
<燃料タンク>
[構成11]
プラスチック製の燃料タンクであって、
溶着によって組み立てられた下壁及び上壁と、
前記燃料タンクの内部に位置し且つ前記下壁を前記上壁に連結する少なくとも1本のロッドと、
を有する燃料タンク。
[構成12]
プラスチック製の燃料タンクであって、
溶着によって組み立てられた下壁及び上壁と、
前記燃料タンクの内部に位置し且つ前記下壁を前記上壁に連結する少なくとも1つの機能要素と、
を有する燃料タンク。
[構成13]
プラスチック製の燃料タンクであって、
溶着によって組み立てられた下壁及び上壁と、
前記燃料タンクの内部に位置し且つ前記下壁を前記上壁に連結する少なくとも1つの補強要素と、を有し、
前記下壁及び前記上壁を互いに連結する溶着部は、溶着シームによって構成され、この溶着シームは、前記燃料タンクを特に自動車両シャーシに固定するための突出部を形成するように適所で途切れている、燃料タンク。
【符号の説明】
【0057】
1 上壁
2 下壁
3 ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリープ強さを向上させたプラスチック製燃料タンクの製造方法であって、
(a)2つの別々の部分を有するプラスチック製のパリソンを、開いた2つのキャビティ付きの型内に挿入する工程と、
(b)前記パリソンの前記2つの部分を固定する、又は、前記2つの部分の間のリンクを形成することができる補強要素の少なくとも一部分を支持するコアを、前記パリソンの内側に挿入する工程と、
(c)前記パリソンを前記コアを介してブロー成形することによって且つ/又は前記型のキャビティの後方に吸引力を生じさせることによって、前記パリソンを前記キャビティにしっかりと押し付ける工程と、
(d)前記コアを用いて、前記補強要素の前記一部分を前記パリソンの2つの部分のうちの少なくとも一方に固定する工程と、
(e)前記コアを引出す工程と、
(f)前記型を再び閉じ、それらの2つのキャビティを互いに合わせ、前記パリソンの前記2つの部分を前記キャビティの周囲に沿って把持して前記2つの部分を互いに溶着させる工程と、
(g)加圧流体を前記型内に注入し、且つ/又は、真空を前記型のキャビティの後方に生じさせて前記パリソンを前記型のキャビティにしっかりと押し付ける工程と、
(h)前記型を開いて前記燃料タンクを取出す工程と、
を有し、
前記パリソンの2つの部分は、前記工程(f)中に又は前記工程(h)後に、前記補強要素により又は前記補強要素の一部分により、連結され、前記パリソンの2つの部分がそれぞれ前記燃料タンクの上壁及び前記燃料タンクの下壁を構成し、
前記補強要素がロッドを備え、前記ロッドが、クリップ留め器具を備えた2つの部品に作られ、前記2つの部品はそれぞれ、互いにクリップ留めされない状態で、前記パリソンの一部分に互いに向かい合って固定され、
前記型からの取出し後における前記燃料タンクの収縮により、前記2つの部品を自然に互いにクリップ留めさせ、且つ/又は、前記燃料タンクの壁に外部圧力を加えて前記クリップ留めを実施し且つ促進させる方法。
【請求項2】
加圧流体を前記型内に注入することによって、前記燃料タンクを成形し、
前記パリソンは、押出加工された円筒形パリソンを切断することによって得られた2つの別々の部分で構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
真空を前記型のキャビティの後方に生じさせることによって、前記燃料タンクを成形し、
前記パリソンは、2枚の押出成形されたシートで構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コアは、前記補強要素の部品を前記パリソンに固定する油圧ラムを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ロッドは、前記燃料タンクと類似した燃料タンクの製造によって生じた廃棄物から作られる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(f)における溶着により、溶着シームを形成し、工程(i)中に、前記燃料タンクを自動車両のシャーシに取り付けるためのパッド又は突出部を残すように前記溶着シームが部分的に除去される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−158392(P2012−158392A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−65726(P2012−65726)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【分割の表示】特願2007−546044(P2007−546044)の分割
【原出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(507383057)イナジー・オートモーティブ・システムズ・リサーチ・(ソシエテ・アノニム) (65)
【Fターム(参考)】