説明

クリーム充填材組成物及びその製造方法

本発明は、クリーム充填材組成物に関し、それは、−室温で0のSFIを有する植物油、脂質フラクションの合計を基準として0〜5%w/wに相当する飽和脂肪フラクション及び脂質フラクションの合計を基準として0%〜1%w/wに相当する部分水素化脂肪フラクションからできている脂質フラクション、−粉末甘味料組成物、−小麦グルテン中の天然のグリアジン含有量と比較して増加したグリアジン含有量を有する小麦グルテンフラクションを含む。更に、本発明は、そのようなクリーム充填材組成物の製造方法及びそのようなクリーム充填材組成物を含む食品成分に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーム充填材組成物、そのようなクリーム充填材組成物の製造方法及びそのようなクリーム充填材組成物を含んで成る食品成分に関する。
【背景技術】
【0002】
サンドイッチ、クッキー用クリーム充填材組成物は、一般的にスクロース、又はスクロースと他の甘味料、フレイバー(又は香料)及び油又は脂肪との組み合わせからできている。これらの油、脂肪又は油/脂肪混合物(以下、油性組成物ともいう)は、クリームの官能特性(又は感覚刺激性)について、更にテクスチャー及び保存安定性についても極めて重要である。
【0003】
これらの特性を得るために、これらの油性組成物は、完全に又は部分的に水素化された種々の脂肪及び油を組み合わせることで配合される。その結果として、クリーム充填材の油性成分は、多量の飽和脂肪酸とトランス脂肪酸との組み合わせを含んでなる。そのようなクリーム充填材の典型例は、US 3,244,536、US 4,834,991 又は US 4,753,812 に記載されている。
【0004】
US 3,244,536 には、高含有量のC18脂肪酸を有する部分水素化脂肪である成分Aと、高比率でラウリン酸を含む植物油である成分Bとの組み合わせによって得られる充填材脂肪組成物が記載されている。その後、混合物はエステル交換に付される。成分Aの出発材料として、少なくとも50%のC18酸を含む限りいずれの動物脂肪又は植物油も使用することができる。成分Bとして、ラウリン酸を含むいずれの植物油も使用できる。ココナッツ油とパーム核油は、満足なものである。この充填材脂肪組成物は、短い塑性域、即ち、脂肪が柔軟で加工できる、そして依然として固体状態である広い温度範囲を示す。
【0005】
US 4,834,991 には、消費する際に、フレイバーの迅速な発露をもたらす優れた「放出性」を有する大豆油を含む充填材クリームが開示されている。充填材クリーム成分を混合し、空気を含ませ、冷却し、同時に約0.85〜約1.20の比重を得ることができる。得られる充填材クリームは、サンドイッチ、クリーム又は他の焼いた食品用充填材(フィラー、増量材、充填物、混ぜもの:filler)として使用される。
【0006】
US 4,753,812 には、明確なSFIプロフィール(profile)と融点を有する塑性脂肪と、明確なSFIプロフィールと融点を有する硬質バターから本質的になる脂肪マトリックスを含んで成るサンドイッチクリーム充填材組成物を開示する。組成物は、約10℃〜約32℃の広い温度範囲の間に、良好なスタンドアップ性(又は立ち性:stand-up)を有し、約37℃以上の温度で固形分を感知できないとして特徴付けられる。
【0007】
上述のUS特許出願の補強材(又は硬化剤)成分として用いられる製品、例えば脱脂粉乳又は大豆タンパク質は、高温で、充填材組成物の収量及び塑性を向上することに有効である。しかし、これらの充填材脂肪組成物は、飽和及び/又は部分的に水素化された脂肪を含んで成る。
【0008】
食品成分中に飽和及び/又は部分水素化脂肪を混合することは、近年、真に健康問題となっている。確かに、両方のタイプの脂肪は、致命的でない心臓発作及び冠状動脈性心臓病からの死と直接的に関連する。食物脂肪のタイプと量は、うつ病の発生に影響すると考えられている。更に、部分水素化脂肪に存在するトランス脂肪酸の存在も、糖尿病及び乳ガン等のいくつかのタイプのガンにかかるリスクを増加させるということも報告されている。
【0009】
従って、クリーム充填材組成物を含む、広い範囲の食品成分中のこれらの飽和又は部分水素化油性組成物の使用に対する関心が大きくなりつつある。
【0010】
その問題に関連する特許文献に記載されているように、クリーム充填材中の脂肪含有量及び/又はカロリー含有量を減らす試みが既に行われている。
【0011】
例えば、GB 1 458 568 の例では、水22%、砂糖45%及びショートニング33%を含むクリーム充填材が開示されている。このショートニングは、重大な量の水を含む安定なクリーム充填材の製造を可能にする乳化剤系を含む。
【0012】
EP 827 693 に開示されているクリーム充填材組成物は、実質的に非乳化形態であり、10〜20%の水、30〜60%の脂肪、乳タンパク質及び砂糖から成る。その結果、脂肪フラクションは、30℃で8%以上の固形分により特徴付けられる。
【0013】
しかし、クッキークリーム充填材中にあまりに多くの水が存在することは、クッキーをベトベトさせ、サクサク感を失わせる原因となり得る。
【0014】
DD 285 469 には、脂肪削減クリーム充填材が開示され、それは、脂肪成分と併用された、砂糖及び増粘剤の水性混合物から成る。
【0015】
US 5,939,127 には、低脂肪クリーム充填材が開示されており、脂肪成分は、グリセロールと併用された、脂肪代替物組成物によって置き換えられる。この脂肪代替物は、乳化剤とイヌリンの水性混合物である。
【0016】
US 5,626,903 では、脂肪削減が乳化剤系を用いることで実現されており、それによって、脂肪含有量を少なくとも16%以下に減少する。
【0017】
無水脂肪減少充填材組成物が、US 5,612,078 に開示され、それによって、脂肪の部分をポリオール(グリセロール)と特定の乳化剤で置き換える。
【0018】
上述の全ての引用した文献の、飽和及び/又は部分水素化油性組成物は、配合物の一部である。
【0019】
従って、全ての飽和及び/又は部分水素化脂肪が、不飽和又は多価不飽和脂肪又は油によって実質的に置き換えられることが、非常に望まれている。更に、従来技術の溶液は全て、栄養学上の、官能的(又は感覚的)、機能的、経済的及び/又はプロセス(加工又は製方)関連特性に関する、一又はそれ以上の短所を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、本発明の目的は、飽和脂肪と部分水素化脂肪を実質的に含まず、ほとんどもっぱら不飽和及び/又は多価不飽和脂肪酸を高含有量で有する天然植物油(又は植物性油脂)を含むクリーム充填材組成物を提供することであるが、
−クリーム充填材は、室温でコンシステンシー(堅さ、稠度、一致性又はばらつきのないこと:consistency)を維持し、消費する際に良好な官能特性をもたらすべきであり;
−泡立て空気を混入する際に、クリーム充填材に、軽いばらつきのないテクスチャー(食感、質感、感触又は組織:texture)を与えるために、充填材は、良好な泡立ち性とクリーム性を有さなければならず;
−クリーム充填材組成物は良好な保存安定性(又は貯蔵性)を有するべきである。
【0021】
飽和脂肪と部分水素化脂肪を実質的に含まないとは、下記の意味を有する:
脂質フラクション(画分もしくは区分:fraction)の合計を基準として、飽和脂肪フラクションは、0%〜5%w/wに相当し;及び
脂質フラクションの合計を基準として、部分水素化脂肪フラクションは、0%〜1%w/wに相当する。
【0022】
天然植物油とは、部分水素化に付されておらず、それによって、室温(25℃)で約0(ゼロ)のSFI(固体脂指数又は固体脂肪数:solid fat index)を示す植物油を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の目的は、
−室温で0のSFIを有する植物油、脂質フラクションの合計を基準として0〜5%w/wに相当する飽和脂肪フラクション及び脂質フラクションの合計を基準として0%〜1%w/wに相当する部分水素化脂肪フラクションからできている脂質フラクション、
−粉末甘味料(又はパウダー甘味料)組成物、及び
−小麦グルテン中の天然のグリアジン含有量と比較して増加したグリアジン含有量を有する小麦グルテンフラクション
を含んで成るクリーム充填材組成物を提供することによって達成された。
【0024】
本発明に関する好ましいクリーム充填材組成物では、クリーム充填材組成物は、
−室温で0のSFIを有する植物油、脂質フラクションの合計を基準として0〜5%w/wに相当する飽和脂肪フラクション及び脂質フラクションの合計を基準として0%〜1%w/wに相当する部分水素化脂肪フラクションからできている脂質フラクションを25〜60重量%;
−粉末甘味料組成物を40〜70重量%;
−小麦グルテン中の天然のグリアジン含有量と比較して増加したグリアジン含有量を有する小麦グルテンフラクションを1〜15重量%
を含んで成る。
【0025】
より好ましくは、本発明に関するクリーム充填材組成物は、
−室温で0のSFIを有する植物油、脂質フラクションの合計を基準として0〜5%w/wに相当する飽和脂肪フラクション及び脂質フラクションの合計を基準として0%〜1%w/wに相当する部分水素化脂肪フラクションからできている脂質フラクションを30〜50重量%;
−粉末甘味料組成物を45〜65重量%;
−小麦グルテン中の天然のグリアジン含有量と比較して増加したグリアジン含有量を有する小麦グルテンフラクションを3〜12重量%
を含んで成る。
【0026】
本発明に関するクリーム充填材組成物の有利な態様において、粉末甘味料組成物は、一又はそれ以上の炭水化物系甘味料を含んで成る。
【0027】
本発明に関するクリーム充填材組成物の別の有利な態様において、粉末甘味料組成物は、一又はそれ以上の強い甘味料である。
【0028】
本発明に関するクリーム充填材組成物の更に別の有利な態様において、粉末甘味料組成物は、一又はそれ以上の炭水化物系甘味料と強い甘味料の組み合わせを含んで成る。
【0029】
本発明に関するクリーム充填材組成物の小麦グルテンフラクションは、グリアジンに富むフラクションを含んで成ることが好ましく、グリアジン/グルテニン比は、溶媒分別(フラクショネーション:fractionation)法を用いて測定して、少なくとも2、より好ましくは少なくとも2.5、最も好ましくは少なくとも3である。
【0030】
本発明に関するクリーム充填材組成物の好ましい態様において、小麦グルテンフラクションは、下記の方法を用いて得られる:
グルテンを、連続的に又は不連続的に5〜30%の間の乾燥物質で、水中に分散させ、そのことによって、
・分散物のpHを、4.4〜4.8の間に調整(又はモニター)し、
・グルテン−水混合物をせん断作用に付し、
そのことによって、連続的に又は不連続的にグリアジンに富むフラクションとグルテニンに富むフラクションに、分散物を分別することが可能であり、そのことによって、少なくとも2.5のグリアジン/グルテニン比を有する一つのグリアジンに富むフラクションを得られ、0.8より小さいグリアジン/グルテニンの比を有する一つのグルテニンに富むフラクションを得られる。
【0031】
本発明に関するクリーム充填材組成物の第1の好ましい製造方法では、クリーム充填材組成物を、バッチ式で製造する。
【0032】
まずグリアジンに富むフラクションと粉末甘味料を混合し、その後連続的に混合しながら油を加えて、均一な粘性クリームを得ることによって、バッチ式製造を行ってもよい。
【0033】
また、まずグリアジンに富むフラクションと油とを混合し、その後混合しながら粉末甘味料を加えて均一にすることによって、バッチ式製造を行ってもよい。
【0034】
本発明に関するクリーム充填材組成物の第2の好ましい製造方法では、クリーム充填材組成物を連続的方法で製造する。
【0035】
例えば、粉末甘味料、グリアジンに富むフラクション及び油を、連続混合装置に連続的に加えることによって、連続製造を行う。
【0036】
更に、特有の特徴及び特質(又は特性)が、下記の説明と下記の例から明らかに成るであろうが、それらは、上述の説明及び添付した特許請求の範囲から現れる本発明の一般的範囲を何ら制限するものではないと理解するべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明のクリーム充填材組成物は、
−室温で0のSFIを有する植物油、脂質フラクションの合計を基準として0〜5%w/wに相当する飽和脂肪フラクションからできている脂質フラクション、
−粉末甘味料組成物、及び
−小麦グルテン中の天然のグリアジン含有量と比較して増加したグリアジン含有量を有する小麦グルテンフラクション
を含んで成ることを特徴とする。
【0038】
粉末甘味料組成物は、一又はそれ以上の炭水化物系甘味料を典型的に含んで成るが、強い甘味料も含んでよい。
【0039】
これらのクリーム充填材組成物で使用することができる最も重要な植物油は、例えば、大豆油、トウモロコシ油、コーンオイル、ひまわり油、菜種油(rapeseed oil)、カノーラ油(canola oil)、ピーナッツ油、落花生油、綿実油、オリーブ油及びベニバナ油、サフラワーオイル等であるが、これらは何ら限定するものではない。
【0040】
粉末甘味料組成物は、例えば、スクロース(又は砂糖)、グルコース(又はブドウ糖)、フルクトース(又は果糖)、マルチトール(maltitol)、ソルビトール、イソマルチトール(isomaltitol)、ラクチトール(lactitol)、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、ポリデキストロース、タガトース(tagatose)、マルトデキストリン(maltodextrine)、水素化又は非水素化澱粉加水分解物、水素化マルトデキストリン又はこれらの製品の二又はそれ以上の混合物を含んでよいが、これらに何ら限定するものではない。
【0041】
これらの炭水化物系甘味料を、更に強い甘味料、例えば、アスパルテーム、アセスルファムK、サッカリン、シクラメート(又はシクラミン酸塩)、アリテーム(alitame)、スクラロース、ステビオシド、ネオヘスペリジン(neohesperidine)等と組み合わせることができる。
【0042】
小麦グルテンフラクションは、典型的には、グリアジンに富む成分を含んで成り、グリアジン/グルテニン比は、WO 03/013266(参照:図2)に記載されているような「溶媒分別」法を用いて測定されるように、少なくとも2である。
【0043】
小麦グルテンフラクションのグリアジン/グルテニン比は、少なくとも2.5であることがより好ましく、少なくとも3であることが最も好ましい。
【0044】
この溶媒分別法は、種々の溶媒に小麦タンパク質類の溶解特性が異なることを利用して、グリアジン、グルテニン、アルブミン及びグロブリンを分離する。種々の溶媒中のタンパク質の分配(又は分布)は、ケルダール分析法(Kjeldahl analysis)によって定量する。
【0045】
装置
・40mlのポリプロピレン製遠心分離管
・遠心機(15000gで回転可能)
・化学天秤
・0.5M NaCl
・1.5%SDS溶液
・95%エタノール
・10℃の恒温室(incubation chamber)
・ケルダール装置(Kjeldahl apparatus)
・ケルダールタブレット(Kjeldahl tablet)
・300ml管用:タイプCT(5gのKSO+0.15gのCuSO・5HO+0.15gのTiO
・100ml管用:タイプCTQ(1.5gのKSO+0.045gのCuSO・5HO+0.045gのTiO
【0046】
手順
抽出手順を図2に概説する。全ての抽出は、室温で30分間行う。
・+/−40mlのPP遠心分離管に試料を秤量する。+/−150〜160mgのタンパク質と対応する処理する試料量は、小麦粉2.00g、グルテン200mgである。
・20mlの0.5MNaClを加える。室温(RT)で30分間攪拌する。抽出後、室温で15分間500gで遠心分離する。清浄なPP管に上澄み液を注意深くデカントする(又は静かに移す:decant)。残部(沈殿A)に、別の20mlの0.5MNaClを加え、抽出と遠心分離を繰り返す。この第2の上澄み液を第1の上澄み液と合した後、室温で15分間15000gで遠心分離する。上澄み液は、アルブミンとグロブリンを含む。
・残部(沈殿B)に、6mlの1.5%SDS溶液を加える。混合物を均質にして、沈殿Aと合わせる。室温で30分間抽出する。その後、14mlの無水エタノールを滴下して加え、混合物を室温で30分間撹拌する。室温で15分間、500gで遠心分離した後、沈殿と上澄み3を得る。この全部の手順を得られた沈殿について、繰り返して、沈殿Cと上澄み4を得る。
・上澄み3と4を小さなビーカー中で合わせて、10℃の恒温室内で60分間保管する。細かい沈殿が生成する。その後この混合物を、沈殿Cを含む遠心管に移す。直ちに、混合物を遠心機に移し、10℃で15分間、15000gで回転する。これによって、グリアジンを含む上澄みとグルテニンを含む沈殿を得る。
【0047】
ケルダール測定法:
アルブミン/グロブリン及びグリアジンを含む溶液(+/−40ml)を、定量的に分解フラスコ(destruction flask)(750ml)に移す。タブレット、14mlの濃硫酸及び3滴のオクタノール(消泡剤)を加え、試料を90分間(透明になるまで)分解する。濃縮液(約15ml)をケルダール管に移し、窒素をアミラム法0701(Amylum method 0701)に記載のように測定する。
グルテニンフラクションは、凍結乾燥し、窒素含量を乾燥生成物中で測定する。
【0048】
結果を、種々の種において見出されるたんぱく質の量として記録し、また、回収されたたんぱく質のパーセントとして示す。
【0049】
そのことによって、上記小麦グルテンフラクションを、WO 03/013266に記載された方法を用いて得ることが好ましい、即ち、
グルテンを、連続的に又は不連続的に5〜30%の間の乾燥物質で、水中に分散させ、そのことによって、
・分散物のpHを、4.4〜4.8の間に調整し、
・グルテン−水混合物をせん断作用に付し、
そのことによって、連続的に又は不連続的にグリアジンに富むフラクションとグルテニンに富むフラクションに、分散物を分別することが可能であり、そのことによって、少なくとも2.5のグリアジン/グルテニン比を有する一つのグリアジンに富むフラクションを得られ、0.8より小さいグリアジン/グルテニンの比を有する一つのグルテニンに富むフラクションを得られる
ことが好ましい。
【0050】
本発明の有利な要旨において、クリーム充填材組成物は、
−室温で0のSFIを有する植物油、脂質フラクションの合計を基準として0〜5%w/wに相当する飽和脂肪フラクションからできている脂質フラクションを25〜60重量%;
−粉末甘味料組成物を40〜70重量%;
−小麦グルテン中の天然のグリアジン含有量と比較して増加したグリアジン含有量を有する小麦グルテンフラクションを1〜15重量%
を含んで成るということを特徴とする。
【0051】
本発明のより有利な要旨において、クリーム充填材組成物は、
−室温で0のSFIを有する植物油、脂質フラクションの合計を基準として0〜5%w/wに相当する飽和脂肪フラクションからできている脂質フラクションを30〜50重量%;
−粉末甘味料組成物を45〜65重量%;
−小麦グルテン中の天然のグリアジン含有量と比較して増加したグリアジン含有量を有する小麦グルテンフラクションを3〜12重量%
含んで成ることを特徴とする。
【0052】
本発明に関する生産物(又は製品)は、バッチ式で又は連続的に製造できる。
【0053】
バッチ式の方法では、まずグリアジンに富むフラクションを甘味料粉末と混合することができる。その後、連続的に混合しながら油を加えて、均質な粘性なクリームを得ることができる。
別法では、まず、グリアジンに富むフラクションを油と混合し、その後甘味料化合物を加え均質になるまで混合する。
【0054】
連続方法は、例えば、連続混合装置(例えば、レーディッヒ型(Loedige-type)、VOMM型(VOMM-type)、デニッセン型(Denissen-type)混合機を例示できるが、これらに限定するものではない)内に、甘味料、グリアジンに富む生産物及び油を連続的に加えることを含んで成る。
【0055】
従って、得られる組成物は、サンドイッチクッキー用クリーム充填材として極めて適するようにする多くの機械特性を示す。重要な特性は、軽くばらつきのないテクスチャーを伴う、室温でのコンシステンシーと体温での「溶融」性である。更に、保存安定性も極めて重要である。
【0056】
本発明に関する方法のもう一つの長所は、US 4,753,812 及び US 4,834,991 に記載されているような(技術の状態を記載する文献に述べられているような)、従来の方法の現状と対比して、例えば、サンドイッチクッキー又は層状ウエハースクッキー用のクリーム充填材組成物を得るために、もはや加熱及び冷却/再結晶工程を必要としないという事実に関する。
【0057】
本発明は、本発明のクリーム充填材を含む食品成分にも関する。典型的な代表例は、例えば、サンドイッチクッキー(sandwich cookies)又は層状ウエハースクッキー(wafer cookies)である。
【実施例】
【0058】
例1〜2:
下記の例では、本発明に関するクリーム充填材組成物を、高グリアジン小麦グルテンフラクション(以下、グリアジンともいう)以外のタンパク質成分を含む組成物と比較する。テクスチャー分析機を用いて測定される圧縮力として、また時間の関数としての油の浸出として、例えば、保存安定性とテクスチャーのコンシステンシー等のクリーム充填材機能特性が、各々測定される。
【0059】
下記表1a及び1bに、種々のタイプのタンパク質を含む複数の組成物が記載されている。表1aは、標準的配合を有する組成物を開示する。このような標準的配合は、二つの文献出典に基づく。
−例えば、オレオ・クッキー(Oreo Cookies)用のクラフト・ゼネラル・フーズ(Kraft General Foods)の情報;
−小冊子「Secondary processing in biscuit manufacturing」 by Duncan Manley、date 1998、chapter 6「Cream sandwiching」。43頁にクリーム中に約30%脂肪を有する処方を用いることが通常であると述べられているが、20%ぐらいの低さ及び45%ぐらいの高さも認められる。
【0060】
表1bは、これらのオレオ・クッキーと比較して同様な組成物に関するが、本発明に関するグリアジンに富むフラクションを含む。記載の量は、重量部である。
【0061】
【表1a】

【0062】
【表1b】

【0063】
クリーム充填材組成物は、下記のように製造する:
まず、粉砂糖とタンパク質成分を、Kビーター(K beater)を備えたケンウッド混合機(Kenwood mixer)で乾燥混合する。その後、油の全部を一度に加える。最初の15秒間は、混合を低速で行い、次の3分間は、成分を最高速度で混合する。
【0064】
その後、得られたクリーム充填材組成物を、飽和及び/又は部分水素化脂肪/油を含む市販のクリーム充填材組成物と比較する。
【0065】
市販のクリーム充填材組成物は、市販の三つの製品:オレオズ(Oreo's)、プリンス−LU(Prince-LU)及びフロウ・フロウ・ウエハース(Frou Frou wafers)のクッキーの間に存在するクリーム充填材を回収することによって得られた。
【0066】
これらの種々の配合物を比較するために、下記の試験を行った。
−テクスチャーの分析:
製造したクリーム充填材を高さ12mmと直径5.4cmの寸法を有する小さなカップに入れる。測定する温度(室温)で、少なくとも1時間、試料の状態を調節する。直径5mmの円筒形プローブを、クリーム充填材の中に、5mm以上の距離を1mm/秒の速度で動かした。それによって、圧縮力(g)を、テクスチャーコンシステンシーの指標値として測定する。
−油保持安定性:
シリコン紙上に、クリーム充填材の層を、高さは2mmで広げる。直径32.2mmの縁の鋭い円筒形を有するディスクを切り抜き、シナジーペーパー(synergy paper)(半時間吸取紙試験、ブリッジ&カンパニー、印刷及び文房具:Half hour Blotter test paper, Bridge & Company, printers & stationers)(参照:図1)の中央に配置する。クリーム充填材を有するペーパーを25℃で保管し、油の広がりを所定の(又は特定の)時間に測定する。油の広がりを、四方向の広がりの平均値として測定する。その結果、油の広がりは、保存安定性と反比例する。
【0067】
表2は、クリーム充填材の圧縮力に関するデータと時間の関数としての油の広がりに関するデータを含む。市販のクリーム充填材の値を、表1aと表1bの製品組成物と比較する。
【0068】
【表2】

【0069】
大豆アイソレート、カゼイン塩、小麦グルテンを含む又はタンパク質を含まない比較例1〜4は、ばらつきのない(又はしっかりした)テクスチャーを与えなかった。それらは、オイル保持試験によっても示されるように、長期間の保存安定性を示さない。
本発明に関する例1及び2は、安定でばらつきのないクリーム充填材組成物をもたらすが、これは、液体、不飽和オイルに基づく。
【0070】
例3〜7:
本発明に関するこの一連の例では、種々の砂糖、オイル及びタンパク質含有量を示す多くの配合物を試験する。クリーム充填材の組成物を表3に示し、コンシステンシー値と保存安定性値を表4に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
例1〜2に記載した組成物と同様の試験条件下で、同様の試験方法を用いて、上述の配合物を試験した。
【0073】
【表4】

【0074】
上記から、充填材組成物に応じて、種々のコンシステンシーを得ることができることが明らかである。
更に、市販の配合物の安定性に匹敵する保存安定性を、本発明の配合物を用いて得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
(原文に記載なし。)
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
−室温で0のSFIを有する植物油、脂質フラクションの合計を基準として0〜5%w/wに相当する飽和脂肪フラクション及び脂質フラクションの合計を基準として0%〜1%w/wに相当する部分水素化脂肪フラクションからできている脂質フラクション、
−粉末甘味料組成物、及び
−小麦グルテン中の天然のグリアジン含有量と比較して増加したグリアジン含有量を有する小麦グルテンフラクション
を含んで成ることを特徴とするクリーム充填材組成物。
【請求項2】
−室温で0のSFIを有する植物油、脂質フラクションの合計を基準として0〜5%w/wに相当する飽和脂肪フラクション及び脂質フラクションの合計を基準として0%〜1%w/wに相当する部分水素化脂肪フラクションからできている脂質フラクションを25〜60重量%;
−粉末甘味料組成物を40〜70重量%;
−小麦グルテン中の天然のグリアジン含有量と比較して増加したグリアジン含有量を有する小麦グルテンフラクションを1〜15重量%
含んで成ることを特徴とする請求項1に記載のクリーム充填材組成物。
【請求項3】
−室温で0のSFIを有する植物油、脂質フラクションの合計を基準として0〜5%w/wに相当する飽和脂肪フラクション及び脂質フラクションの合計を基準として0%〜1%w/wに相当する部分水素化脂肪フラクションからできている脂質フラクションを30〜50重量%;
−粉末甘味料組成物を45〜65重量%;
−小麦グルテン中の天然のグリアジン含有量と比較して増加したグリアジン含有量を有する小麦グルテンフラクションを3〜12重量%
含んで成ることを特徴とする請求項2に記載のクリーム充填材組成物。
【請求項4】
粉末甘味料組成物は、一又はそれ以上の炭水化物系甘味料を含む請求項1〜3のいずれかに記載のクリーム充填材組成物。
【請求項5】
粉末甘味料組成物は、一又はそれ以上の強い甘味料である請求項1〜3のいずれかに記載のクリーム充填材組成物。
【請求項6】
粉末甘味料組成物は、一又はそれ以上の炭水化物系甘味料と強い甘味料の組み合わせである請求項1〜3のいずれかに記載のクリーム充填材組成物。
【請求項7】
小麦グルテンフラクションは、グリアジンに富むフラクションを含んで成り、グリアジン/グルテニン比は、溶媒分別法を用いて測定して少なくとも2である請求項1〜6のいずれかに記載のクリーム充填材組成物。
【請求項8】
小麦グルテンフラクションは、グリアジンに富むフラクションを含んで成り、グリアジン/グルテニン比は、溶媒分別法を用いて測定して少なくとも2.5である請求項7に記載のクリーム充填材組成物。
【請求項9】
小麦グルテンフラクションは、グリアジンに富むフラクションを含んで成り、グリアジン/グルテニン比は、溶媒分別法を用いて測定して少なくとも3である請求項8に記載のクリーム充填材組成物。
【請求項10】
小麦グルテンフラクションは、
グルテンを、連続的に又は不連続的に5〜30%の間の乾燥物質量で、水中に分散させ、そのことによって、
・分散物のpHを、4.4〜4.8の間に調整し、
・グルテン−水混合物をせん断作用に付し、
そのことによって、連続的に又は不連続的にグリアジンに富むフラクションとグルテニンに富むフラクションに、分散物を分別することが可能であり、そのことによって、少なくとも2.5のグリアジン/グルテニン比を有する一つのグリアジンに富むフラクションを得られ、0.8より小さいグリアジン/グルテニンの比を有する一つのグルテニンに富むフラクションを得られる
方法を用いて得ることができることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のクリーム充填材組成物。
【請求項11】
クリーム充填材組成物を、バッチ式で製造することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のクリーム充填材組成物を製造する方法。
【請求項12】
まずグリアジンに富むフラクションと粉末甘味料を混合し、その後連続的に混合しながら油を加えて、均一な粘性なクリームを得ることによって、バッチ式の製造を行う請求項11に記載の方法。
【請求項13】
まずグリアジンに富むフラクションと油とを混合し、その後混合しながら粉末甘味料を加えて均一にすることによって、バッチ式の製造を行う請求項11に記載の方法。
【請求項14】
クリーム充填材組成物を連続的方法で製造する請求項1〜10のいずれかに記載のクリーム充填材組成物の製造方法。
【請求項15】
粉末甘味料、グリアジンに富むフラクション及び油を、連続混合装置に連続的に加えることによって、連続製造を行う請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれかに記載のクリーム充填材組成物を含む食品成分。


【公表番号】特表2007−525147(P2007−525147A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512692(P2005−512692)
【出願日】平成15年12月30日(2003.12.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014985
【国際公開番号】WO2005/063049
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(500102011)テイト・アンド・ライル・ヨーロッパ・ナムローゼ・フェンノートシャップ (3)
【氏名又は名称原語表記】Tate & Lyle Europe N.V.
【Fターム(参考)】