説明

クリーンルーム用床パネルと床パネルシステム

【課題】本発明は、クリーンルーム用床パネルに関し、熱による温度上昇をバランス良く抑制することが課題である。
【解決手段】平板体1aのグレーチングであって、前記平板体1aの内部に、連続した冷媒用流路2と該冷媒用流路の端部に出入り口3,4とを設けたクリーンルーム用床パネル1とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和技術に係り、特にクリーンルーム等で使用される床パネルと顕熱処理装置における床パネルシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、クリーンルームにおける床は、図9に示すように、気流調整などの目的でグレーチングやパンチングパネルなどの床パネル10が使用される。この床パネル10は、図10(A),(B)に示すように、熱伝導率の高いアルミダイキャスト製で、強度を増すためにリブ11が設けられ、気流を通過させるための開口部12、床パネル10を固定するためのねじ穴13が各々設けられている。このような、床パネル10は、例えば、特許文献1に示すような構造で床として敷設されるものである。
【0003】
また、クリーンルーム内には、半導体ウェーハ製造装置等が多数有り、これらの装置から多くの熱が発生する。そこで、クリーンルーム内で発生する熱の処理を目的として、顕熱処理装置20が設けられる。この顕熱処理装置20は、熱の処理を行うコイル21と、コイルに空気を臆すための送風機22とが一体化されたものが用いられている。これらは、クリーンルーム内で発生する熱によって必要な熱処理能力や台数が決まり、床下やレタンスペースまたは天井内などに設置される。
【0004】
更に、クリーンルーム内の塵埃を処理するために、塵埃処理装置(FFU)30がクリーンルーム天井に設置されている。この塵埃処理装置30は、塵埃を取り除くフィルタ31と、クリーンルーム内に循環気流を形成するための送風機32が一体化されたものが用いられている。こうして、クリーンルーム内の空気は、塵埃装置処理装置30→クリーンルーム→床パネル→床下→顕熱処理装置20→レタンスペース→天井内→前記塵埃処理装置30と循環するものである。また、このような空気循環において、特許文献2に示すように、グレーチング床にファンを取り付けて、気流速度分布のバラツキを調整可能にするものも知られている。
【特許文献1】特開2000−120202号公報
【特許文献2】特開2002−257392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記顕熱処理装置20は、クリーンルーム内で発生する熱によって必要な熱処理能力や台数が決まるので、前記発生する熱が大きいと、顕熱処置装置20を大型化させたり、その台数を増加させたりして対応しているが、これでは、大きなスペースが必要となり、クリーンルームの有効スペースが削減されるばかりでなく、顕熱処理装置20の送風機22からの騒音が大きくなるという問題がある。本発明に係るクリーンルーム用床パネルは、このような課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、顕熱処理装置の削減とそれに伴うクリーンルームの有効スペースの拡大、および、顕熱処理装置からの発生騒音の削減を可能とする、熱処理能力を有する床パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクリーンルーム用床パネルの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、平板体のグレーチングであって、前記平板体の内部に、連続した冷媒用流路と該冷媒用流路の端部に出入り口部とを設けたことである。
【0007】
また、平板体のグレーチングに、床として敷設した場合の下面側に補強用のリブが設けられ、前記リブの内部にその長手方向に沿って冷媒用流路が設けられ、前記冷媒用流路同士が前記リブに直交する方向の連結手段により1本の連続した流路に形成されていることである。
【0008】
更に、本発明の要旨は、平板体に補強用のリブを下面に設けて成るグレーチングにおいて、前記リブの長手方向に沿ってその下面に、冷媒用流路が設けられた流路用部材が固着され、該流路用部材の端部に連結され前記冷媒用流路を連続させて連結する流路連結部材が設けられて成ることである。
【0009】
前記リブの側面に、冷却用のフィンを設けて成ることを含むものである。また、前記平板体の側面に、冷媒用流路の出入り口が凸凹に設けられ、その出入り口によって隣接する床パネルが首尾連接されて、前記冷媒用流路が連続するようになっていることを含むものである。
【0010】
本発明に係る床パネルシステムの要旨は、前記本発明に係る床パネルと、該床パネルの温度を測定する温度センサーと、前記床パネルに連結される顕熱処理装置と、該顕熱処理装置及び温度センサーに連結されるコントローラとで構成される床パネルシステムであって、床面の全部若しくは一部を構成するように前記床パネルが複数個連結されて形成されるパネル群が複数有り、それらのパネル群の群単位毎に冷媒用流路における冷媒の流量が前記コントローラによって調整されることである。
更に、前記パネル群の隅部に配置される冷媒入出力用の隅部床パネルであって、矩形状の平板体の側面において、顕熱処理装置に連結させる入口または出口が直交方向に首振り自在にして突設されていることを含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクリーンルーム用床パネルと床パネルシステムとによれば、床パネルを冷却部材として使用することができる。これにより、クリーンルーム内において、熱を発生させる半導体装置等が設置される場所に前記床パネルを敷設し、冷却が必要な場所へ迅速に対応させることができる。更に、補強用のリブにフィンを設けることで放熱効果が高まり、冷却能力が増すことになる。また、リブの下に、冷媒流路を設けた別体の部材を固着することで、冷媒用流路を廉価で容易に形成することができる。
【0012】
前記平板体の床パネルの側面に、冷媒用流路の出入り口が設けられて、隣接する床パネルと首尾連接できるようにすることで、床パネルの敷設作業が容易になる。
【0013】
本発明に係る床パネルシステムによれば、半導体装置等の熱源の配置に応じて、その下に配設される一群の床パネルの冷却能力を高めるようにすることができる。こうして、クリーンルーム内の熱バランスを偏り無く均質に調整できるようになる。
また、隅部床パネルがあることで、床パネルを敷設する際に、一群の床パネルの隅部に当該隅部床パネルを配設して、顕熱処理装置の供給管を容易に接続することができる。こうして、床パネルシステムの構築が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るクリーンルーム用床パネル1は、図1に示すように、平板体1aで通気用の開口部1bを複数併設した、軽量で熱伝導率の良いアルミニウム製のグレーチングであって、前記平板体1aの内部に、連続した冷媒用流路2と該冷媒用流路2の端部に出入り口3,4とを設けたものである。
【0015】
前記出入り口3,4に、従来例と同様にして顕熱処理装置20が冷媒供給・排出用の断熱性のパイプを介して接続されるものである。なお、図1(A)では、床パネル1として単独で斜視図に示したが、これを、床パネル1の複数枚を接続してなる、例えば、クリーンルームの床全体の一部を占める、半導体製造装置を載置するような局地的な面積を占めるパネル群として把握しても良い。
【0016】
また、前記平板体1aに冷媒用流路2を埋設させる製造方法として、金型の製作費用が嵩む場合には、図1(B)に示すように、補強リブ5に前記冷媒用流路5aを貫通させて設けるようにすることで、金型費用を抑えることができる。
【0017】
前記補強用のリブ5は、前記平板体1aに一体にして形成されるものであり、更に、前記リブ5の内部にその長手方向に沿って冷媒用流路5aが設けられ、前記冷媒用流路同士5aが、前記リブ5に直交する方向の連結手段6により1本の連続した流路に形成されているものである。
【0018】
前記連結手段6は、図1(C)に示すように、前記リブ5とは別体の連結部品であり、フレキシブルな金属製または合成樹脂製のホース等を用いるものである。その接続部分には、ねじで螺着させたり、ワンタッチロックなどで接続させたりするものである。
【0019】
また、前記リブ5には、他の実施例として、図2(A),(B)に示すように、当該リブ5の側面に気流の流れに沿って、冷却用のフィン5bを設けて成るようにすることができる。
【0020】
このほか、前記リブ5に冷媒用流路を設ける方法として、図3に示すように、平板体1aに一体に形成された前記リブ5とは別体に、当該リブ5と同じ幅で長手方向の長さもほぼ同じで、冷媒用流路用の凹部7aが設けられたアルミニウム製の流路用部材7を形成する。そして、これを前記リブ5の下面に固着するのである。
【0021】
これにより、前記凹部7aがリブ5の平坦な下面で閉蓋され、密閉された冷媒用流路が形成されるものである。このようにして形成した複数の流路用部材7の冷媒用流路(凹部7a)を、前記連結手段6等の流路連結部材で連結することで、当該冷媒用流路が一連に連結されるものである。
【0022】
このような床パネル1を床面に敷設する際の、パネル同士の接続作業の便宜のために、図4(A),(B)に示すように、平板体1aの側面に、冷媒用流路の出入り口8,9が凸凹に設けられる。この出入り口8,9によって、隣接する床パネル1c,1cが首尾連接されて、前記冷媒用流路2が連接方向に効率的に連続して形成される。
【0023】
また、前記床パネル1の連接方向に対して直交する方向にも接続する必要があるので、例えば、図5に示すように、連接方向を直交方向に偏向する偏向床パネル1d,1eを用意する。
【0024】
また、冷媒を顕熱処理装置20(図9参照)から導入するためには床下から断熱性供給ホース等で接続するので、入口9aを床下に向けなければならない。そこで、隅部床パネルとして、下向きの入口9aと水平な出口8を有した冷媒導入用の隅部床パネル1fを用意すると共に、この複数個の床パネルを連結して成るパネル群14から冷媒を排出させる為に、水平な入口9と下向きの出口8aを有する冷媒排出用の隅部床パネル1gを用意する。このような床パネルを用意することで、床面積の内の一部に、一群のパネル群14を構築することができる。なお、図5中の床パネル1hは、床パネル1cと対称形の床パネルを示している。
【0025】
前記隅部床パネル1f,1gにおいて、下向きの入口9a、下向きの出口8aが、例えば、使用条件によって水平状態に成るようにすることができれば便宜である。そこで、図6に示すように、前記入口9a、出口8aを、首振り自在にする構成する。それには、例えば、三次元で自由に回転する球座継手を利用したものや、直交するエルボを回転自在に接続することで達成できる。
【0026】
次に、上記床パネル1,1c,1h、偏向床パネル1d,1e、隅部床パネル1f,1g等を使って、例えば、クリーンルームにおいて、発熱する半導体製造装置等がある場合に、その付近を循環する空気を積極的に冷却することで、循環する空気全体の熱バランスを良くする床パネルシステムを構築する。
【0027】
この床パネルシステムは、図7に示すように、クリーンルームの床のうち、その一部を占める、前記床パネルが複数個連結されて形成されるパネル群14a,14b,14cと、該パネル群14a,14b,14c若しくはその付近の温度を測定する温度センサー15と、前記各床パネル14a,14b,14cに連結される顕熱処理装置20と、該顕熱処理装置20及び温度センサー15に連結されるコントローラ16とで構成される。
【0028】
前記温度センサー15は、パネル群14若しくはその付近に循環する空気の温度を測定するものであり、床パネル14の直下に配置しても良い。前記パネル群14a,14b,14cと顕熱処理装置20を連結する冷媒供給・排出用の断熱性ホースは床下に配設されるものである。
【0029】
前記コントローラ16は、前記各パネル群の群単位毎に冷媒用流路2における冷媒(例えば、冷水)の流量を調整するものである。このようにして、図8に示すように、クリーンルームの循環気流が前記床パネル1によって冷却されるので、クリーンルーム内において使用される半導体製造装置等の熱源の配置に対応させて、前記パネル群14を設け、循環気流の熱が一部に偏らないように、調整することができるようになる。
【0030】
他の実施例として、前記パネル群14の移動を容易にするために、例えば、従来のグレーチング床の下に、所要の間隙を置いて格子状のレールを配設し、そのレールの上に、複数個で一定面積に形成したパネル群14を移動自在に配置する。そして、前記パネル群14を水平に縦・横に移動させる駆動装置により、所望の位置に前記パネル群14を移動させるものである。クリーンルーム内の半導体製造装置等の熱源が頻繁に移動するようなことがあっても、迅速にパネル群14を前記駆動装置で移動させて、循環気流を冷却するように迅速に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るクリーンルーム用床パネル1の斜視図(A)、リブ5を有する床パネル1の断面図(B)、床パネル1の一部で冷媒流路の連結状態を示す概略説明図(C)である。
【図2】同本発明のクリーンルーム用床パネルにおける他の実施例に係る一部縦断面図(A)とその一部斜視図(B)とである。
【図3】同本発明のクリーンルーム用床パネル1の他の実施例を示す断面図である。
【図4】同クリーンルーム用床パネル1cの斜視図(A)と、連接する様子を示す説明図(B)とである。
【図5】同クリーンルーム用床パネルによるパネル群14の接続の様子を説明する平面状態の説明図である。
【図6】同パネル群14における隅部パネルにおいて、入口若しくは出口が直交方向に首振りする構成を示す説明図である。
【図7】本発明に係るクリーンルーム用床パネルを使用した床パネルシステムの概略構成を示す説明図である。
【図8】本発明のクリーンルーム用床パネル1による循環気流の冷却の概念を示す説明図である。
【図9】従来例に係るクリーンルームの循環気流の流れの様子を示す説明図である。
【図10】従来例におけるクリーンルーム用床パネル10の斜視図(A)と縦断面図(B)とである。
【符号の説明】
【0032】
1 クリーンルーム用床パネル、 1a 平板体、
1b 開口部、 1c 床パネル、
1d,1e 偏向床パネル、 1f,1g 隅部床パネル、
1h 床パネル、
2 冷媒用流路、
3,4 出入り口、
5 補強リブ、 5a 冷媒用流路、
5b フィン、
6 連結手段、
7 流路用部材、 7a 凹部、
8,8a 出口、
9,9a 入口、
10 床パネル、
11 リブ、
12 開口部、
13 ねじ穴、
14 パネル群、 14a,14b,14c パネル群、
15 温度センサー、
16 コントローラ、
20 顕熱処理装置、
21 コイル、
22 送風機、
30 塵埃処理装置、
31 フィルター、
32 送風機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板体のグレーチングであって、
前記平板体の内部に、連続した冷媒用流路と該冷媒用流路の端部に出入り口部とを設けたこと、
を特徴とするクリーンルーム用床パネル。
【請求項2】
平板体のグレーチングに、床として敷設した場合の下面側に補強用のリブが設けられ、
前記リブの内部にその長手方向に沿って冷媒用流路が設けられ、
前記冷媒用流路同士が前記リブに直交する方向の連結手段により1本の連続した流路に形成されていること、
を特徴とするクリーンルーム用床パネル。
【請求項3】
平板体に補強用のリブを下面に設けて成るグレーチングにおいて、前記リブの長手方向に沿ってその下面に、冷媒用流路が設けられた流路用部材が固着され、該流路用部材の端部に連結され前記冷媒用流路を連続させて連結する流路連結部材が設けられて成ること、
を特徴とするクリーンルーム用床パネル。
【請求項4】
平板体の側面に、冷媒用流路の出入り口が凸凹に設けられ、その出入り口によって隣接する床パネルが首尾連接されて、前記冷媒用流路が連続するようになっていること、
を特徴とする請求項1に記載のクリーンルーム用床パネル。
【請求項5】
リブの側面に、冷却用のフィンを設けて成ること、
を特徴とする請求項2または3に記載のクリーンルーム用床パネル。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の床パネルと、該床パネルの温度を測定する温度センサーと、前記床パネルに連結される顕熱処理装置と、該顕熱処理装置及び温度センサーに連結されるコントローラとで構成される床パネルシステムであって、床面の全部若しくは一部を構成するように前記床パネルが複数個連結されて形成されるパネル群が複数有り、それらのパネル群の群単位毎に冷媒用流路における冷媒の流量が前記コントローラによって調整されること、
を特徴とする床パネルシステム。
【請求項7】
パネル群の隅部に配置される冷媒入出力用の隅部床パネルであって、矩形状の平板体の側面において、顕熱処理装置に連結させる入口または出口が直交方向に首振り自在にして突設されていること、
を特徴とする請求項6に記載の床パネルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−285883(P2008−285883A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131450(P2007−131450)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】