説明

クリーンルーム用間仕切り壁

【課題】 高い施工性を備えるとともに、施工後には高い気密性を発揮することができるクリーンルーム用間仕切り壁を提供する。
【解決手段】 クリーンルーム用間仕切り壁Wは、上下方向に延在する複数の下地材1を備えている。この下地材1の表面に対して、複数の鋼板4が四方に張り巡らされた壁面が形成されている。壁面における縦目地では、左右に位置する鋼板4,4の側面同士が突き合わされて配設され、壁面における横目地では、上下に位置する鋼板4,4の一部が重ね合わされて配設されている。さらに、縦目地の裏面側に下地材1が配設され、縦目地における左右に位置する鋼板4,4と下地材1との間にガスケット6が介在されており、横目地における鋼板4の重ね合わせ位置にシーリング層が介在されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームに設けられる間仕切り壁であるクリーンルーム用間仕切り壁に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームにおいては、塵埃などの流入を防止する必要があることから、隣接する部屋などとの間における間仕切り壁として、高い気密性等が求められる。このような要求に応えるため、高い気密性を備えるクリーンルーム用間仕切り壁が求められている。
【0003】
この種のクリーンルーム用間仕切り壁としては、従来、大きく分けて2種類の構造がある。このうちの一つは石膏ボードを互い違いの2枚貼り、仕上げとして防塵壁紙を貼着する構造である。この構造において、下地材としては軽量鋼製間仕切り下地が用いられる。さらに、床、天井、壁の入角にシーリングを施すことにより、クリーンルームの気密性を保つものである。
【0004】
他の一つは、スチールサンドイッチパネルなどを用いた嵌合構造によるパネル式間仕切り壁がある(たとえば、特許文献1参照)。この種のパネル式間仕切り壁は、一定の気密性能を確保することができるものの、上記の石膏ボードを用いた間仕切り壁と比較すると性能に劣るものである。その反面、上記の石膏ボードを用いた間仕切り壁と比較して、施工性が高く、短期間で施工することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−329623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、石膏ボードを2枚貼りした従来の間仕切り壁では、壁紙として非常に薄いもの、たとえば0.2〜0.3mm程度のものが用いられていた。このため、傷を付けると塵埃が発生し、クリーンルームの性能に悪影響を与えるおそれがあるという問題があった。さらには、傷ついた後の補修にも手間が掛かるという問題があった。さらに、施工の際に手間が掛かったり、廃材が多く発生したりするという問題があった。
【0007】
一方、上記のパネル式間仕切り壁では、塵埃の発生の問題や施工性の低さといった問題は少ない。ところが、石膏ボードを用いた間仕切り壁よりも気密性能が劣るという問題がある。さらには、施工を行う際に特殊な技量を要することから専門業者でないと施工が困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、高い施工性を備えるとともに、施工後には高い気密性を発揮することができるクリーンルーム用間仕切り壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明に係るクリーンルーム用間仕切り壁は、上下方向に延在する複数の下地材を備え、複数の下地材に対して、複数の鋼板が四方に張り巡らされた壁面が形成されており、壁面における縦目地では、左右に位置する鋼板の側面同士が略突き合わされて配設され、壁面における横目地では、上下に位置する鋼板の一部が重ね合わされて配設されているとともに、縦目地の裏面側に下地材が配設され、縦目地における左右に位置する鋼板と下地材との間にパッキンが介在されており、横目地における鋼板の重ね合わせ位置にシーリング材が介在されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るクリーンルーム用間仕切り壁においては、複数の下地材に対して、複数の鋼板が四方に張り巡らされた壁面が形成されている。このため、塵埃の発生を無くすことができるとともに補修の手間を軽減することができる。さらには、施工の手間を小さくすることができるとともに、廃材の発生を少なくすることができる。さらに、縦目地における左右に位置する鋼板と下地材との間にパッキンが介在されており、横目地における鋼板の重ね合わせ位置にシーリング材が介在されている。このため、高い気密性を維持することができるとともに、特殊な技術を要することなく施工を行うことができる。その結果、高い施工性を備えるとともに、施工後には高い気密性を発揮することができる。なお、本発明における「略突き合わされ」とは、鋼板の側面同士が接触する状態で突き合わされている場合と、わずかな隙間、たとえば3〜5mm程度の隙間をあけて隣接されている場合を含むものである。
【0011】
また、鋼板と下地材とがビス止めされている態様とすることができる。
【0012】
このように、鋼板と下地材とがビス止めされていることにより、壁面を構築する際の手間をさらに小さくすることができる。その結果、高い施工性を備えるものとすることができる。
【0013】
さらに、左右方向に延在するH形鋼を備え、H形鋼におけるフランジが上下位置に配設され、H形鋼における上方フランジの上側および下方フランジの下側にそれぞれ下地材が配設されており、H形鋼と下地材との接合位置におけるH形鋼および下地材と鋼板との間に、板材が介在されている態様とすることができる。
【0014】
このように、左右方向に延在するH形鋼が設けられていることにより、壁面の強度を大きくすることができるが、H形鋼と下地材との接合位置では、H形鋼の存在によって下地材と鋼板との接合が難しくなる。ここで、本発明に係るクリーンルーム用間仕切り壁では、H形鋼および下地材と鋼板との間に、板材が介在されている。この板材が介在されていることにより、下地材と鋼板とを容易に接合することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るクリーンルーム用間仕切り壁によれば、高い施工性を備えるとともに、施工後には高い気密性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】クリーンルーム用間仕切り壁の要部分解斜視図である。
【図2】クリーンルーム用間仕切り壁の正面図である。
【図3】(a)は、クリーンルーム用間仕切り壁の部分拡大平面図、(b)は、そのビス止め構造を示す拡大平面図である。
【図4】(a)は、クリーンルーム用間仕切り壁の部分拡大断面図、(b)は、そのビス止め構造を示す拡大断面図である。
【図5】クリーンルーム用間仕切り壁における4枚の表面材が近接する部分の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0018】
図1は、本実施形態に係るクリーンルーム用間仕切り壁の要部分解斜視図、図2は、本実施形態に係るクリーンルーム用間仕切り壁の正面図である。図1および図2に示すように、本実施形態にクリーンルーム用間仕切り壁(以下「間仕切り壁」という)Wは、上下方向に延在する下地材1を備えている。下地材1は、断面略C字形状をなす棒状の部材であり、上下方向に沿って配設されている。間仕切り壁Wは複数の下地材1を備えている。ここでは、図2に示すように、柱部材H,Hの間における同一高さ位置に11本の下地材1が配設されている。
【0019】
また、複数の下地材1は、図1に示すように、その開口部が同一方向を向くように配置され、その上下方向途中位置には、左右に延在するH形鋼2が配設されている。また、H形鋼2に代えて角型鋼管等の既製鉄骨材を用いることもできる。このように、下地材1は、H形鋼2の上下位置に配設された状態となっている。H形鋼2におけるフランジには、このフランジの長手方向に沿って配置されたランナー3が設けられている。このランナー3によって、下地材1の取付位置の位置決めが行われている。また、H形鋼2は、間仕切壁Wの高さが一定以上となる場合に設けられることが多く、間仕切壁Wの高さによっては、H形鋼2を設けない態様とすることもできる。
【0020】
さらに、下地材1の表面側には、鋼板4が貼設されている。下地材1の表面側には、複数の鋼板4が上下左右の四方に張り巡らされている。この複数の鋼板4によって、間仕切り壁Wの壁面が形成されている。鋼板4としては、たとえば表面にガルバリウムがコーティングされたガルバリウム鋼板が用いられる。さらに、間仕切り壁Wにおける外周部には、三角シールが貼設されている。
【0021】
また、横方向に並ぶ4本の下地材1に対して1枚の鋼板4が設けられている。このうち、左右に位置する鋼板4同士については、図3(a)に示すように、左側に配置された左鋼板4Lと右側に配置された右鋼板4Rにおける互いの側面が突き合わされて配設されている。この左鋼板4Lと右鋼板4Rとが3mm程度の隙間を空けて突き合わされている部分が縦目地とされている。
【0022】
上下に位置する鋼板4同士については、図4(a)に示すように、下側に配置された下鋼板4Dの一部である上端部が、上側に配置された上鋼板4Uの下端部の前に位置するように重ねあわされて配設されている。この下鋼板4Dと上鋼板4Uとが重なり合う部分が横目地とされている。
【0023】
さらに、図1および図2に示すように、鋼板4は、ビス5によって下地材1に対してビス止めされている。ここで、縦目地の裏面側における左右に配置された鋼板4が付き合わされる位置には、下地材1が配置される位置関係となっている。ここで、図3(a)に示すように、1枚の鋼板4に対して4本の下地材1が重ね合わされる位置関係となっており、1枚の鋼板4のみが重ね合わされる下地材1に対しては、1本のビス5が固定されている。
【0024】
また、横目地における左右に配置された鋼板4L,4Rが付き合わされる位置における下地材1には、図3(b)に示すように、左右鋼板4L,4Rの端部を貫通するビス5が固定されている。さらに、上下に位置する鋼板4については、図4(a)に示すように、1本のビス5が下鋼板4Dの上端部および上鋼板4Uの下端部を貫通して下地材1に固定されている。
【0025】
また、下地材1のうち、縦目地における左右に位置する鋼板4の側面が突き合わされた位置に対応する下地材1の正面側には、本発明のパッキンとなるガスケット6が貼り付けられている。このガスケット6は、下地材1における正面側の左端部および右端部のそれぞれにおいて、長手方向に沿って配設されている。
【0026】
ガスケット6は、粘着層の表面に発泡性を有する汎用ゴムが取り付けられて構成されており、高い気密性を備えるものである。下地材1に鋼板4が固定された際に、図3(a)に示すように左右の鋼板4L,4Rと下地材1との間に、それぞれガスケット6が介在される。ガスケット6としては、エプトシーラー(日東電工社製)を好適に用いることができる。
【0027】
さらに、図4(b)に示すように、横目地における下鋼板4Dの上端部と上鋼板4Uの下端部との間には、シーリング7が介在されている。シーリング7は、粘着性を有しており、下鋼板4Dの上端部と上鋼板4Uの下端部とを重ねる前段階では、ゲル状とされ、下鋼板4Dの表面側上端部に設けられている。また、下鋼板4Dと上鋼板4Uとを重ねた際には、図5に示すように、下鋼板4Dと上鋼板4Uとの間における両者の重なり部分で広がってシーリング層7Aを形成し、下鋼板4Dと上鋼板4Uとの間の気密性を高めながら両者を接着する。
【0028】
また、図5に示すように、縦目地における左下鋼板4LDと左上鋼板4LUの重なり部分におけるシーリング層7Aは、左下鋼板4LDおよび左上鋼板4LUと下地材1との間に設けられた左ガスケット6Lと重なるようにして設けられている。同様に、横目地における右下鋼板4RDと右上鋼板4RUの重なり部分におけるシーリング層7Aは、右下鋼板4RDおよび右上鋼板4RUと下地材1との間に設けられた右ガスケット6Rと重なるようにして設けられている。
【0029】
さらに、図1および図2に示すように、縦目地における下地材1とH形鋼2との重なり部分の表面側には、板材8が設けられている。板材8は、たとえば鉄板によって構成されており、H形鋼2に設けられたランナー3に対して、ビス5によってビス止めされている。ガスケット6は、H形鋼2によって下地材1が分断されている位置においては、板材8の表面側に設けられている。このため、ガスケット6は、下地材1と板材8との間で連続的に形成されている。
【0030】
以上の構成を有する本実施形態に係る間仕切り壁Wにおいては、下地材1に対して、複数の鋼板4が四方に張り巡らされた壁面が形成されている。このように、鋼板4によって壁面が形成されていることから、塵埃の発生を防止することができるので、クリーンルーム性能の低下を来たさないようにすることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る間仕切り壁Wでは、縦目地における左右に位置する鋼板4R,4Lとシーリング材と下地材1との間にはガスケット6が介在されている。さらに、横目地における上下に位置する鋼板4U,4Dとはその一部が重なり合い、その重なり部分にはシーリング層7Aが形成されている。このため、クリーンルームの気密性を高いものとすることができるとともに、特殊な技術を要することなく、施工を行うことができる。
【0032】
さらに、縦目地と横目地との交差位置において、ガスケット6とシーリング層7Aとは、接するように施工されている。このため、縦目地と横目地との交差位置における気密性を高い状態とすることができ、間仕切り壁Wの全体でみて、高い気密性を発揮することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る間仕切り壁Wにおいては、水平方向に沿って配設されたH形鋼2に対して、下地材1が立設された状態で設けられている。このように、H形鋼2が設けられていることにより、間仕切り壁Wの強度を高いものとすることができる。しかも、下地材1として短尺の部材を用いることができるので、長尺の部材を用いる必要がなくなる。したがって、その分施工性を高いものとすることができる。
【0034】
さらに、本実施形態に係る間仕切り壁Wにおいては、鋼板4が下地材1に対してビス止めによって固定されている。このため、鋼板4を下地材1に対して確実に固定することができるとともに、鋼板4を施工する際の施工性を高いものとすることができる。
【0035】
また、本実施形態に係る間仕切り壁Wにおいて、H形鋼2と下地材1との接合部では、下地材1が長手方向に分断された状態となっている。このため、下地材1と鋼板4との接合が難しくなる。この点、H形鋼2と下地材1との接合部に板材8が設けられている。この板材8が設けられていることにより、板材8に対してビス5を用いたビス止めを行うことにより、下地材と鋼板とを容易かつ確実に接合することができる。
【0036】
さらに、本実施形態に係る間仕切壁Wにおいては、下地材1に鋼板4を貼設する際、たとえば図2の右側から左側に鋼板を貼っていく。ここで、左側の端部は予め想定して作成しておいた切物を先行貼りし、その後、右側から貼ってきた定尺物を重ね貼りする。このため、現場での加工を行わないようにすることができるので、廃材を発生させないようにすることができる。さらには、施工誤差を吸収することもできる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、鋼板4としてガルバリウム鋼板を用いているが、ステンレス鋼板など他の種類の鋼板を用いることもできる。また、上記実施形態では、下地材1はH形鋼2によって上下方向に分断されているが、間仕切り壁Wの高さが低い等の場合には、H形鋼を設けることなく、間仕切り壁Wの高さ方向に1本の下地材を設ける態様とすることもできる。さらに、上記実施形態では、下地材1と鋼板4とをビス止めによって固定しているが、その他の態様で固定することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1…下地材
2…H形鋼
3…ランナー
4…鋼板
4L…左鋼板
4R…右鋼板
4D…下鋼板
4U…上鋼板
4LD…左下鋼板
4LU…左上鋼板
4RD…右下鋼板
4RU…右上鋼板
5…ビス
6(6L,6R)…ガスケット
7…シーリング
7A…シーリング層
8…板材
H…柱部材
W…間仕切り壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在する複数の下地材を備え、前記複数の下地材に対して、複数の鋼板が四方に張り巡らされた壁面が形成されており、
前記壁面における縦目地では、左右に位置する鋼板の側面同士が略突き合わされて配設され、
前記壁面における横目地では、上下に位置する鋼板の一部が重ね合わされて配設されているとともに、
前記縦目地の裏面側に前記下地材が配設され、
前記縦目地における左右に位置する鋼板と前記下地材との間にパッキンが介在されており、
前記横目地における前記鋼板の重ね合わせ位置にシーリング材が介在されていることを特徴とするクリーンルーム用間仕切り壁。
【請求項2】
前記鋼板と前記下地材とがビス止めされている請求項1に記載のクリーンルーム用間仕切り壁。
【請求項3】
左右方向に延在するH形鋼を備え、前記H形鋼におけるフランジが上下位置に配設され、前記H形鋼における上方フランジの上側および下方フランジの下側にそれぞれ前記下地材が配設されており、
前記H形鋼と前記下地材との接合位置における前記H形鋼および前記下地材と前記鋼板との間に、板材が介在されている請求項1または請求項2に記載のクリーンルーム用間仕切り壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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