説明

クレーンの安全装置

【課題】 ブームの先端部付近の風速に応じたクレーン作業の実施又は中止の判断を、オペレータ以外でも行えるようにする。
【解決手段】 クローラクレーンのブーム5の先端部に風速計の発信器9aを設け、クレーン本体1の所要個所に三色灯10を外部に露出させた状態で設ける。更に、風速計の計測部9aからの入力を基にブーム5の先端部の風速が、クレーン作業を安全に行える風速、又は、クレーン作業に注意を払うべき風速、又は、クレーン作業には危険な風速のいずれであるかを判定する判定部と、それぞれの判定信号に応じて三色灯10の緑、黄、赤の各点灯部を点灯させる点灯制御器を備えてクレーンの安全装置を形成する。三色灯10の点灯色を基に、オペレータ以外の者に、ブーム5の先端部の風速が、クレーン作業に注意を払うべき風速や、クレーン作業が危険な風速になっていることを把握させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンによる作業を行う際に、ブームの先端部付近における風の影響を運転室の外部からでも判断できるようにするためのクレーンの安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンの1つとして、図5(イ)(ロ)に示す如き自走式のクローラクレーンが知られている。これは、クローラにて走行するようにしてある下部走行体2の上側に、運転室4を備えた上部旋回体3を旋回可能に設けてクレーン本体1が構成してある。
【0003】
上記上部旋回体3には、実施するクレーン作業の作業範囲に応じた長さ寸法のブーム(ポスト)5の基端部を起伏可能に取り付け、該ブーム5の先端部に、ブームフック(主フック)6が吊上げ下げ可能に装備してある。更に、必要に応じて、上記ブーム5の先端に、ジブ7の基端部を俯仰可能に連結し、該ジブ7の先端部にジブフック(副フック)8を吊上げ下げ可能に装備した構成としてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、上記のようなクローラクレーンにおいては、図示しない吊荷を実際に吊るブーム5の先端部が高所に配置されているため、該ブーム5の先端部付近の高所(上空)では、地上付近とは異なる強さの風が吹いていることがあり、たとえば、地上付近ではほとんど風が吹いていない状態であっても、ブーム5の先端部付近の高所(上空)に強い風が吹いていると、ブーム5自体に振れが生じる虞が懸念されると共に、該ブーム5の先端部のブームフック6や、上記ジブ7の先端部のジブフック8を用いて吊り下げた図示しない吊荷の暴れにつながる虞が懸念される。
【0005】
そのために、上記のようなクローラクレーンでは、ブーム5の先端側に、図示しない風速計の発信器(計測部)を設置すると共に、運転室4内に図示しない風速計の指示器(表示部)を設けてなる構成として、上記図示しない風速計の発信器によって計測されるブーム5の先端部付近の風速を、上記運転室4内の図示しない風速計の指示器で表示させることで、該クローラクレーンのオペレータが、上記ブーム5の先端部付近に吹いている風の状況を把握できるようにすることが行われるようになってきている(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
なお、図5(イ)(ロ)に示したようなクローラクレーンにおいては、モーメントリミッタ(過負荷防止装置)を装備することが広く一般的に行われている。
【0007】
更に、本出願人は、必要に応じて、クローラクレーンにおける運転室4の外部に、モーメントリミッタの外部警報用の緑(青)、黄、赤の三色灯を設けて、該三色灯を、上記モーメントリミッタにより検出されるクローラクレーンの負荷率に応じて、たとえば、負荷率が90%未満の正常時には緑を点灯させ、負荷率が90〜100%になると緑に代えて黄を点灯させ、更に、負荷率が100%を超えると黄に代えて赤を点灯させるようにした構成とすることで、運転室4のオペレータ以外の外部の作業者や監督者も、上記三色灯の点灯色を見ることで、上記クローラクレーンのモーメントリミッタにより検出されている負荷率が、正常な範囲、又は、負荷率が100%に近付いている注意すべき範囲、又は、負荷率が100%を超えた異常範囲のいずれにあるかを容易に且つリアルタイムに判断できるようにすることを提案している(たとえば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−126641号公報
【特許文献2】実開昭59−120792号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「全油圧クローラクレーンCCH900」,IHI建機株式会社,2008年12月,p.15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記特許文献2に示されたように、クローラクレーンにおけるブーム5の先端側に風速計の発信器を装備する構成は従来提案されていたが、風速計の指示器は運転室4内に設ける構成としてあるため、上記ブーム5の先端部付近に吹いている風の風速を正確に把握できるのは、運転室4にいるオペレータのみに限定され、他の作業者や管理者は、ブーム5の先端部付近の風速を正確に知ることができない。そのために、上記ブーム5の先端部付近の風速に応じてクレーン作業を実施するか、あるいは、中止するかの判断がオペレータに一任されることから、他の作業者や管理者は、該クレーン作業の実施又は中止の判断を迅速に行うことができず、しかも、オペレータの判断の正確性や妥当性を他の作業者や管理者が確認することが難しいというのが実状である。
【0011】
そこで、本発明は、上記クローラクレーンのような移動式クレーンにて、ブームの先端部付近に吹いている風の風速を、運転室のオペレータ以外の作業者や管理者も容易に把握することができて、クレーン作業の実施や中止の判断を迅速に行うことができると共に、その判断の正確性、妥当性を高めることができ、よって、クレーン作業の安全性をより高めることが可能なクレーンの安全装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、下部走行体と上部旋回体とからなるクレーン本体にブームを起伏可能に取り付けたクレーンにおける上記ブームの上端部に、風速計の計測部を設けると共に、上記クレーン本体の所要個所に、外部に露出された三色灯を設け、更に、上記風速計の計測部からの入力を基に上記ブームの先端部の風速が、クレーン作業を安全に行える風速、又は、クレーン作業に注意を払うべき風速、又は、クレーン作業には危険な風速のいずれかを判定するための判定部と、該判定部より入力される判定信号に応じて上記三色灯の点灯色を変化させる点灯制御器を備えてなる構成とする。
【0013】
又、上記構成において、三色灯を、緑、黄、赤の点灯部を備えた三色灯とし、且つ点灯制御器を、判定部よりブームの先端部の風速がクレーン作業を安全に行える風速であると判定された判定信号が入力されると、上記三色灯の緑の点灯部を点灯させ、上記判定部よりブームの先端部の風速がクレーン作業に注意を払うべき風速であると判定された判定信号が入力されると、上記三色灯の黄の点灯部を点灯させ、更に、上記判定部よりブームの先端部の風速がクレーン作業には危険な風速であると判定された判定信号が入力されると、上記三色灯の赤の点灯部を点灯させる機能を有してなるものとした構成とする。
【0014】
更に、上記各構成において、風速計の計測部からの入力を基に判定部で判定した上記ブームの先端部の風速が、クレーン作業を安全に行える風速、又は、クレーン作業に注意を払うべき風速、又は、クレーン作業には危険な風速のいずれであるかに応じて点灯色を変化させるようにしてある三色灯を、クレーンに装備したモーメントリミッタにより検出される負荷率の大小に応じて点灯色を変化させるための三色灯と兼用するようにした構成とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のクレーンの安全装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)下部走行体と上部旋回体とからなるクレーン本体にブームを起伏可能に取り付けたクレーンにおける上記ブームの上端部に、風速計の計測部を設けると共に、上記クレーン本体の所要個所に、外部に露出された三色灯を設け、更に、上記風速計の計測部からの入力を基に上記ブームの先端部の風速が、クレーン作業を安全に行える風速、又は、クレーン作業に注意を払うべき風速、又は、クレーン作業には危険な風速のいずれかを判定するための判定部と、該判定部より入力される判定信号に応じて上記三色灯の点灯色を変化させる点灯制御器を備えてなる構成、より具体的には、三色灯を、緑、黄、赤の点灯部を備えた三色灯とし、且つ点灯制御器を、判定部よりブームの先端部の風速がクレーン作業を安全に行える風速であると判定された判定信号が入力されると、上記三色灯の緑の点灯部を点灯させ、上記判定部よりブームの先端部の風速がクレーン作業に注意を払うべき風速であると判定された判定信号が入力されると、上記三色灯の黄の点灯部を点灯させ、更に、上記判定部よりブームの先端部の風速がクレーン作業には危険な風速であると判定された判定信号が入力されると、上記三色灯の赤の点灯部を点灯させる機能を有してなるものとした構成としてあるので、ブームの先端部付近に、地上とは異なる風が吹いているとしても、クレーンのオペレータ以外の作業者や監督者は、三色灯を見ることで、その点灯色が緑又は黄又は赤のいずれであるかを判断基準として、上記ブームの先端部付近における風速が、クレーン作業を安全に行える風速、又は、注意すればクレーン作業を実施可能な風速、又は、クレーン作業が危険な風速のいずれの状態かを容易に且つ速やかに知ることができる。
(2)したがって、上記クレーンのブームの先端部付近に吹いている風の風速を、クレーン作業の開始前にオペレータ以外の作業者や管理者も容易に把握することができるため、クレーン作業の実施や中止の判断を迅速に行うことができ、しかも、クレーン作業の実施や中止の判断を、上記オペレータ以外の作業者や管理者が行うこともできるようになることから、その判断の正確性、妥当性を高めることができて、クレーン作業の安全性をより高めることが可能になる。
(3)風速計の計測部からの入力を基に判定部で判定した上記ブームの先端部の風速が、クレーン作業を安全に行える風速、又は、クレーン作業に注意を払うべき風速、又は、クレーン作業には危険な風速のいずれであるかに応じて点灯色を変化させるようにしてある三色灯を、クレーンに装備したモーメントリミッタにより検出される負荷率の大小に応じて点灯色を変化させるための三色灯と兼用するようにした構成とすることにより、モーメントリミッタにより検出される負荷率の大小に応じて運転室の外部に設けた三色灯の点灯色を変化させるようにする形式を従来採用しているクレーンにも容易に適用することができ、しかも、上記ブームの先端部の風速に応じて点灯色を変化させるための三色灯を、上記モーメントリミッタの外部への警報用の三色灯と別に設ける場合に比して、部品点数及びコストの削減化を図る効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のクレーンの安全装置の実施の一形態として、クローラクレーンに適用した例を示す概略側面図である。
【図2】図1の安全装置の風速計の発信器から三色灯に至る結線の概要を示す図である。
【図3】図1の安全装置における三色灯の部分を拡大して示すもので、(イ)はブームの先端部の風速がクレーン作業を安全に行える風速である場合の点灯状態を、(ロ)はブームの先端部の風速がクレーン作業に注意を払うべき風速である場合の点灯状態を、(ハ)はブームの先端部の風速がクレーン作業には危険な風速である場合の点灯状態をそれぞれ示す図である。
【図4】本発明の実施の他の形態における風速計の発信器から三色灯に至る結線の概要を示す図である。
【図5】クローラクレーンの一例を示すもので、(イ)は概略側面図、(ロ)はブームの先端側を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1乃至図3(イ)(ロ)(ハ)は本発明のクレーンの安全装置の実施の一形態として、図5(イ)(ロ)に示したと同様のクローラクレーンに適用した例を示すもので、以下のような構成としてある。
【0019】
すなわち、図1に示す如く、図5(イ)(ロ)に示したと同様のクローラクレーンの構成において、ブーム5の先端部に、風速計の発信器(計測部)9aを設け、且つクレーン本体1における運転室4の外部の所要個所、たとえば、運転室4の後側の上部位置に、緑(青)、黄、赤の個別の点灯部10a,10b,10cを備えてなる三色灯10を設置する。
【0020】
更に、図2に示すように、上記風速計の発信器9aと、運転室4内の所要個所に設ける風速計の指示器(表示部)9bとを接続するハーネス11の途中位置より分岐させて設けた分岐ハーネス12を、風速の判定部13に接続すると共に、上記三色灯10の緑、黄、赤の各点灯部10a,10b,10cの点灯と消灯を制御するために三色灯10に接続してある点灯制御器14に、上記判定部13を接続して本発明のクレーンの安全装置を構成する。
【0021】
詳述すると、上記判定部13は、上記風速計の発信器9aより入力される信号を基に、上記ブーム5の先端部付近に吹いている風の風速v[m/s]を求めることができるようにしてある。
【0022】
更に、上記判定部13は、ブーム5の先端部付近の風速について、通常のクレーン作業を安全に実施可能な風速の上限値V1[m/s]、及び、風によるブーム5の振れや図示しない吊荷の暴れに注意すればクレーン作業を実施可能な風速の上限値V2[m/s]に関するデータを備えて、上記求められたブーム5の先端部付近の風速vが、クレーン作業を安全に実施可能な範囲の風速(v≦V1)、あるいは、風によるブーム5の振れや吊荷の暴れに注意を払いながらクレーン作業を実施すべき範囲の風速(V1<v≦V2)、あるいは、風によるブーム5の振れや吊荷の暴れが大となるためクレーン作業が危険になる範囲の風速(v>V2)のいずれであるかを判定して、その判定結果に応じた3種類の判定信号、すなわち、v≦V1の場合は安全判定信号Saを、又、V1<v≦V2の場合は注意判定信号Sbを、v>V2の場合は危険判定信号Scを、上記点灯制御器14へ向けて出力できるようにしてある。
【0023】
なお、上記クローラクレーンにて、ブーム5の振れや吊荷の暴れに影響する風速は、ブーム長やジブ長、及び、ブーム5やジブ7の角度姿勢に応じて変化する。そのため、上記判定部13には、上記ブーム5の長さ寸法や角度姿勢、及び、必要に応じて該ブームの先端側に連結してあるジブ7の長さ寸法や角度姿勢等の情報を予め入力するか、あるいは、上記ブーム5やジブ7の長さ寸法の上方は予め入力する一方、該ブーム5やジブ7の角度姿勢については図示しない角度検出装置でリアルタイムに検出した角度検出値を入力できるようにする等して、該判定部13にてクレーン作業の安全、注意、危険の各判定信号Sa,Sb,Scのうち、いずれの判定信号を出力するかの判定の基準となる上記V1[m/s],V2[m/s]の値を変化させるようにすればよい。
【0024】
上記判定部13は、上記したようなブーム5の先端部付近の風速についての判定と、その判定結果に応じた信号Sa,Sb,Scの点灯制御器14への出力を行う機能を備えていれば、たとえば、独立した装置としたり、上記風速計の指示器9bに内蔵させたり、あるいは、上記クローラクレーンに装備されている所要の制御機器に組み付ける等、その設置形式は自在に設定してよい。
【0025】
上記点灯制御器14は、上記判定部13より安全判定信号Saが入力される場合、すなわち、v≦V1の場合は、図3(イ)に示すように、上記三色灯10における緑の点灯部10aを点灯させるようにしてあり、又、上記判定部13より注意判定信号Sbが入力されるようになる、すなわち、V1<v≦V2になると、上記三色灯10にて、図3(ロ)に示すように、緑の点灯部10aに代えて黄の点灯部10bを点灯させるようにしてあり、更に、上記判定部13より危険判定信号Scが入力されるようになる、すなわち、v>V2になると、図3(ハ)に示すように、上記三色灯10の黄の点灯部10bに代えて赤の点灯部10cを点灯させる機能を備えた構成としてある。
【0026】
15はブーム5の基端寄りの所要個所に設けた上記風速計の発信器9aと指示器9bとを接続するハーネス11のコードリールであり、クローラクレーンのクレーン本体1に取り付けるブーム5の長さ寸法に応じた長さ寸法に応じて、該コードリール15により上記ハーネス11の巻出し、巻取りを行うことで、該ハーネス11の長さ寸法を、クローラクレーンのクレーン本体1に取り付けるブーム5の長さ寸法に応じた長さ寸法に調整できるようにしてある。
【0027】
その他、図5(イ)(ロ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0028】
以上の構成としてある本発明のクレーンの安全装置を装備したクローラクレーンを使用するときは、ブーム5の先端部付近に吹いている風の風速vが、風速計の発信器9aにより計測されて、運転室4内の風速計の指示器(表示部)9bにて表示されるため、該クローラクレーンのオペレータは、該風速計の指示器9bの表示に基づいて、上記ブーム5の先端部付近の風速を知ることができる。
【0029】
この際、上記ブーム5の先端部付近の風速vが、クレーン作業を安全に実施可能な範囲の風速(v≦V1)となっている場合は、上記風速計の発信器9aより入力される信号に基いて、上記判定部13より点灯制御器14へ安全判定信号Saが出力されることから、上記点灯制御器14により上記三色灯10の緑の点灯部10aが点灯されるようになる。
【0030】
又、上記ブーム5の先端部付近の風速vが、風によるブーム5の振れや吊荷の暴れに注意を払いながらであればクレーン作業が実施可能な範囲の風速(V1<v≦V2)となっている場合は、上記風速計の発信器9aより入力される信号に基いて、上記判定部13より点灯制御器14へ注意判定信号Sbが出力されることから、上記点灯制御器14により上記三色灯10の黄の点灯部10bが点灯されるようになる。
【0031】
更に、上記ブーム5の先端部付近の風速vが、風によるブーム5の振れや吊荷の暴れが大となるためクレーン作業が危険になる範囲の風速に達している(v>V2)場合は、上記風速計の発信器9aより入力される信号に基いて、上記判定部13より点灯制御器14へ危険判定信号Scが出力されることから、上記点灯制御器14により上記三色灯10の赤の点灯部10cが点灯されるようになる。
【0032】
したがって、上記クローラクレーンの運転室4にいるオペレータ以外の作業者や管理者は、上記三色灯10を見ることで、緑と黄と赤の点灯部10aと10bと10cのうちのいずれか点灯している色を判断基準として、上記ブーム5の先端部付近における風速vが、クレーン作業を安全に行える風速、又は、注意すればクレーン作業を実施可能な風速、又は、クレーン作業が危険な風速のいずれの状態であるかを容易に且つ速やかに知ることができるようになる。
【0033】
このように、本発明のクレーンの安全装置によれば、上記クローラクレーンのブーム5の先端部付近に吹いている風の風速vを、クレーン作業の開始前に運転室4のオペレータ以外の作業者や管理者も容易に把握することができるため、クレーン作業の実施や中止の判断を迅速に行うことができる。しかも、クレーン作業の実施や中止の判断を、クローラクレーンのオペレータ以外の作業者や管理者が行うこともできるようになるため、その判断の正確性、妥当性を高めることができる。よって、クレーン作業の安全性をより高いものとすることが可能になる。
【0034】
次に、図4は本発明の実施の他の形態として、本発明のクレーンの安全装置を、モーメントリミッタの外部警報用の三色灯を装備する形式のクレーンに適用する場合の例を示すもので、以下のような構成としてある。
【0035】
すなわち、図1乃至図3(イ)(ロ)(ハ)に示したと同様の構成において、運転室4の後側の上部位置に設置してある三色灯10を、モーメントリミッタ16の外部警報用の三色灯10として使用できるようにするために、図4に示すように、上記モーメントリミッタ16の出力側に、三色灯10の点灯制御器14を接続して、該点灯制御器14に、モーメントリミッタ16より、クローラクレーンの負荷率が90%未満の正常のときの安全信号Sdと、負荷率が90〜100%のときの注意信号Seと、負荷率が100%を超えるときの危険信号Sfが入力されるようにする。
【0036】
更に、上記点灯制御器14を、判定部13よりブーム5の上端部付近の風速に関する安全、注意、危険の各判定信号Sa,Sb,Scが入力されることに基づいて、上記三色灯10の緑と黄と赤の各点灯部10a,10b,10cをそれぞれ個別に点灯させる機能に加えて、上記モーメントリミッタ16より安全信号Sdが入力される場合は、図3(イ)に示したと同様に、上記三色灯10における緑の点灯部10aを点灯させ、又、上記モーメントリミッタ16より注意信号Seが入力される場合は、図3(ロ)に示したと同様に、上記三色灯10の黄の点灯部10bを点灯させ、更に、上記モーメントリミッタ16より危険信号Sfが入力される場合は、図3(ハ)に示したと同様に、上記三色灯10の赤の点灯部10cを点灯させる機能を備えた構成とする。これにより、上記点灯制御器14に、上記判定部13より安全判定信号Saが入力され、且つ上記モーメントリミッタ16より安全信号Sdが入力される場合は、該点灯制御器14では三色灯10の緑の点灯部10aを点灯させるようにしてあり、この状態から、点灯制御器14に対し、上記判定部13より注意判定信号Sbが入力されるか、又は、上記モーメントリミッタ16より注意信号Seが入力されるようになると、該点灯制御器14では三色灯10の黄の点灯部10bを点灯させるようにし、更に、上記点灯制御器14に対し、上記判定部13より危険判定信号Scが入力されるか、又は、上記モーメントリミッタ16より危険信号Sfが入力されるようになると、該点灯制御器14では三色灯10の赤の点灯部10cを点灯させるようにしてあるものとする。
【0037】
ところで、上記のようにすると、三色灯10の黄の点灯部10bや、赤の点灯部10cが点灯するようになった場合、その原因が、判定部13よりブーム5の上端部付近の風速に関する判定によるものか、あるいは、モーメントリミッタ16によるクローラクレーンの負荷率の検出によるものかの判別ができなくなる。
【0038】
そこで、本実施の形態では、上記判定部13より出力される安全、注意、危険の各判定信号Sa,Sb,Scを、上記点灯制御器14に加え、上記クローラクレーンにおける運転室4の外部の所要個所、たとえば、上記三色灯10の近傍に設置した外部スピーカ18に接続してある音声警報装置17にも入力できるようにした構成としてある。これにより、該音声警報装置17に、上記判定部13より注意判定信号Sbが入力されると、該音声警報装置17に接続してある上記外部スピーカ18より、ブーム5の先端部付近の風力がブーム5の振れや吊荷の暴れに注意を払いながらクレーン作業を行うべき風速になっていることに関する音声警報の出力を行わせるようにし、又、上記音声警報装置17に、上記判定部13より危険判定信号Scが入力されると、該音声警報装置17に接続してある上記外部スピーカ18より、ブーム5の先端部付近の風力がクレーン作業を行うには危険な風速に達していることに関する音声警報の出力を行わせるようにすることで、上記三色灯10における黄の点灯部10bや赤の点灯部10cが点灯した場合に、それがブーム5の先端部付近の風力の強さに起因するものか、あるいは、モーメントリミッタにより検出されるクローラクレーンの負荷率の大きさに起因するものかの判別を、運転室4のオペレータ以外の作業者や監督者が容易に行うことができるようにしてある。
【0039】
以上の構成としてある本実施の形態のクレーンの安全装置によっても、上記三色灯10にて点灯している点灯部10a,10b,10cの色と、上記外部スピーカ18からの音声出力に基いて、上記クローラクレーンの運転室4にいるオペレータ以外の作業者や管理者が、上記ブーム5の先端部付近における風速vが、クレーン作業を安全に行える風速、又は、注意すればクレーン作業を実施可能な風速、又は、クレーン作業が危険な風速のいずれの状態であるかを容易に且つ速やかに知ることができるため、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
上記図4の実施の形態においては、音声警報装置17に、上記判定部13よりブーム5の上端部付近の風速に関する安全、注意、危険の各判定信号Sa,Sb,Scを入力させる構成を示したが、上記音声警報装置17に、上記判定部13からの各判定信号Sa,Sb,Scに代えて、図4に二点鎖線で示す如く、上記モーメントリミッタ16からのクローラクレーンの負荷率に関する安全信号Sd、注意信号Se、危険信号Sfを入力させるようにして、モーメントリミッタにてクローラクレーンの負荷率が90〜100%になるときと、負荷率が100%を超えたときに、そのことに関する音声警報を、音声警報装置17に接続した外部スピーカ18より出力させるようにしてもよい。
【0041】
又、上記音声警報装置17に、上記判定部13よりブーム5の上端部付近の風速に関する安全、注意、危険の各判定信号Sa,Sb,Scと、上記モーメントリミッタ16からのクローラクレーンの負荷率に関する安全信号Sd、注意信号Se、危険信号Sfの双方を入力させるようにして、ブーム5の上端部付近の風速と、クローラクレーンの負荷率について、それぞれの状況に応じた音声警報を上記外部スピーカ18より出力させるようにしてもよい。
【0042】
更に、上記三色灯10の点灯制御器14に、上記判定部13よりブーム5の上端部付近の風速に関する注意判定信号Sb、危険判定信号Scが入力される場合と、上記モーメントリミッタ16よりクローラクレーンの負荷率に関する注意信号Se、危険信号Sfが入力される場合とで、上記三色灯10の黄の点灯部10b、赤の点灯部10cを、たとえば、常時点灯と点滅(断続点灯)のように点灯の仕方を変化させる機能を備えるようにしてあれば、上記音声警報装置17及び外部スピーカ18は省略してもよい。
【0043】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、風速計の発信器9aはブーム5の上端部付近に吹いている風の風力を計測できるようにしてあれば、ブーム5に対する取付位置は適宜変更してもよく、又、いかなる取付手段を採用してもよい。
【0044】
三色灯10は、クローラクレーンの運転室4の外部にいる作業者や監督者が見易い配置であれば、クレーン本体1のいかなる個所に設置するようにしてもよい。又、クレーン本体1の2個所以上の複数個所に上記三色灯10を設置するようにしてもよい。
【0045】
更に、上記三色灯10における緑(青)、黄、赤の各点灯部10a,10b,10cの上下方向の配列は適宜変更してもよい。更には、上記三色灯10の各点灯部は、緑(青)、黄、赤の三色とすることが好ましいが、色を適宜変更してもよい。
【0046】
上端部が高所位置に達するブーム5を備えてなり、且つ上記ブーム5の先端部付近の風速を地上から把握することが困難となる移動式クレーンであれば、クローラクレーン以外のいかなる形式の移動式クレーンに適用してもよい。
【0047】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 クレーン本体
2 下部走行体
3 上部旋回体
5 ブーム
9a 風速計の発信器
10 三色灯
10a 緑の点灯部
10b 黄の点灯部
10c 赤の点灯部
13 判定部
14 点灯制御器
16 モーメントリミッタ
Sa 安全判定信号(判定信号)
Sb 注意判定信号(判定信号)
Sc 危険判定信号(判定信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と上部旋回体とからなるクレーン本体にブームを起伏可能に取り付けたクレーンにおける上記ブームの上端部に、風速計の計測部を設けると共に、上記クレーン本体の所要個所に、外部に露出された三色灯を設け、更に、上記風速計の計測部からの入力を基に上記ブームの先端部の風速が、クレーン作業を安全に行える風速、又は、クレーン作業に注意を払うべき風速、又は、クレーン作業には危険な風速のいずれかを判定するための判定部と、該判定部より入力される判定信号に応じて上記三色灯の点灯色を変化させる点灯制御器を備えてなる構成を有することを特徴とするクレーンの安全装置。
【請求項2】
三色灯を、緑、黄、赤の点灯部を備えた三色灯とし、且つ点灯制御器を、判定部よりブームの先端部の風速がクレーン作業を安全に行える風速であると判定された判定信号が入力されると、上記三色灯の緑の点灯部を点灯させ、上記判定部よりブームの先端部の風速がクレーン作業に注意を払うべき風速であると判定された判定信号が入力されると、上記三色灯の黄の点灯部を点灯させ、更に、上記判定部よりブームの先端部の風速がクレーン作業には危険な風速であると判定された判定信号が入力されると、上記三色灯の赤の点灯部を点灯させる機能を有してなるものとした請求項1記載のクレーンの安全装置。
【請求項3】
風速計の計測部からの入力を基に判定部で判定した上記ブームの先端部の風速が、クレーン作業を安全に行える風速、又は、クレーン作業に注意を払うべき風速、又は、クレーン作業には危険な風速のいずれであるかに応じて点灯色を変化させるようにしてある三色灯を、クレーンに装備したモーメントリミッタにより検出される負荷率の大小に応じて点灯色を変化させるための三色灯と兼用するようにした請求項1又は2記載のクレーンの安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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