クレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法
【課題】クレーン付き作業台車を用いてモノレール敷設の工期の短縮及び工事費用の低減を実現する傾斜面へのモノレール構築方法を提供する。
【解決手段】ラックピニオン駆動方式で走行する作業台車10および資材運搬台車110を用いて傾斜面SにモノレールRを構築する方法であって、傾斜面Sの裾部からトラッククレーンで作業可能な高さの傾斜面位置にまで予めトラッククレーンを用いてモノレールRを敷設し、次いで、傾斜面Sの裾部から予め敷設したモノレール上にモノレール敷設用クレーンを搭載した作業台車10を走行させ、作業台車10を予め敷設したモノレールの先端まで走行させた後に、モノレール敷設用クレーンを操作して、その下手側のモノレール上の資材運搬台車110からモノレール材2を吊上げて、その上手側の傾斜面にモノレール材2を敷設して傾斜面上方位置にモノレール敷設工事を行う。
【解決手段】ラックピニオン駆動方式で走行する作業台車10および資材運搬台車110を用いて傾斜面SにモノレールRを構築する方法であって、傾斜面Sの裾部からトラッククレーンで作業可能な高さの傾斜面位置にまで予めトラッククレーンを用いてモノレールRを敷設し、次いで、傾斜面Sの裾部から予め敷設したモノレール上にモノレール敷設用クレーンを搭載した作業台車10を走行させ、作業台車10を予め敷設したモノレールの先端まで走行させた後に、モノレール敷設用クレーンを操作して、その下手側のモノレール上の資材運搬台車110からモノレール材2を吊上げて、その上手側の傾斜面にモノレール材2を敷設して傾斜面上方位置にモノレール敷設工事を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に山腹などの傾斜面においてモノレール車が走行するモノレールを敷設する方法は、大型トラックや大型トラッククレーンが通過できる作業用道路を作った後、トラックや傾斜地走行車でモノレール材を一定高さの傾斜面位置にまで搬送し、大型トラッククレーンでモノレール材を吊上げて支柱間に設置するようにしていた。そして、モノレールを敷設した後は、上記作業用道路を元の状態にもどしていた。
【0003】
一方、従来からモノレール車が走行する軌道の保守を行うクレーン装置を備えた軌道点検用作業車が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−22469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した方法では、大型トラックや大型トラッククレーンが通過できる作業用道路を作る必要があり、また、モノレールを敷設した後の作業用道路を元にもどす必要があり、工期が長びき、工事費用が増えてしまう問題があった。そして、それぞれの支柱間にモノレール材を敷設する場合には、大型トラッククレーンは整地されていないような足場の悪い不安定な傾斜面において大型トラックからモノレール材を荷卸して支柱間にモノレール材を吊上げて取り付ける作業を行う必要があり、安全上の問題もあった。そのため、大型トラッククレーンを安全に作業するための整地工数も必要となり、モノレール敷設の工期が長くなる問題があった。また、作業道路が作れず大型トラックや大型クレーンが進入することができない傾斜地ではモノレールの敷設を諦めざるを得なかった。
【0005】
一方、上記特許文献1に記載の軌道点検用作業車では、平地に敷設された軌道上で作業することを目的としており、傾斜面に敷設した軌道上で作業を行うことを考慮した構造ではなかった。すなわち、作業台車のクレーンは同クレーン基部を作業台車に一体的に設けるようにしており、仮に傾斜面の軌道上でクレーンを起伏しながら吊上げ作業を行う場合には、作業台車に走行方向に対して垂直方向の力が大きく作用し、作業台車が転覆する虞があった。
【0006】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、モノレール敷設を安全に行い、かつ、工期を短縮できるクレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ラックピニオン駆動方式で走行する作業台車および資材運搬台車を用いて傾斜面にモノレールを構築する方法であって、傾斜面の裾部から一定高さの傾斜面位置にまで予めモノレールを敷設し、次いで、傾斜面の裾部から予め敷設したモノレール上にモノレール敷設用クレーンを積載した作業台車を走行させ、作業台車を予め敷設したモノレール先端位置まで走行させた後に、モノレール敷設用クレーンを操作して、その下手側のモノレール上の資材運搬台車からモノレール材を吊上げて、その上手側の傾斜面にモノレール材を敷設して傾斜面上方位置にモノレール敷設工事を行い、このようにして順次各支柱間毎に下手側からモノレール材を吊上げて、上手側の傾斜面にそのモノレール材を敷設していくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本モノレール構築方法は、傾斜面の裾部から予めトラッククレーンを使用して敷設したモノレール上にモノレール敷設用クレーンを積載した作業台車を走行させ、予め敷設したモノレール先端位置まで走行させた後に停止し、モノレール敷設用クレーンを操作して、その下手側のモノレール上の資材運搬台車からモノレール材を吊上げて、その上手側の傾斜面にモノレール材を敷設して傾斜面上方位置にモノレール敷設工事を行うため、モノレール材を搬送する大型トラックやモノレール材を吊上げる大型トラッククレーンが通過できる作業用道路を裾部から頂部までの全長に亘って作る必要がなくなる効果がある。また、足場の悪い傾斜面での作業に関係なく資材運搬台車のモノレール材を作業台車のクレーンで支柱間に設置することができ、モノレール敷設工事の期間を短縮することができる。さらにまた、クレーン付き作業台車とモノレール材を搬送する資材運搬台車をそれぞれ別体とすることで、資材運搬台車は長さの異なる長尺なモノレール材を上手側の作業台車に必要に応じて反復搬送し、特に長さの異なるモノレール材を資材運搬台車で搬送する場合において、下手側の資材運搬台車は上手側のクレーン付き作業台車との車間距離を調整することで、資材運搬台車の荷台の長さを変更することなく、異なる長さのモノレール材を搬送することが可能となる。そして、作業台車のクレーンは基部を水平位置とする角度に変更自在な構造を備えており、モノレール材の吊上げ作業の工程を安全にかつ円滑に行うことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るクレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法は、傾斜面の裾部からトラッククレーンで作業可能な高さの傾斜面位置までトラッククレーンでモノレールを敷設し、次いで、傾斜面の裾部から予め敷設したモノレール上にモノレール敷設用クレーンを積載した作業台車を走行させ、予め敷設したモノレール先端の支柱位置まで走行させた後に停止させ、モノレール敷設用クレーンを操作して、その下手側のモノレール上の資材運搬台車からモノレール材を吊上げて、その上手側の傾斜面における支柱にモノレール材を敷設して傾斜面上方位置における支柱にモノレール敷設工事を行い、このようにして順次下手側からモノレール材を吊上げて、上手側の傾斜面にそのモノレール材を敷設していくものである。
【実施例】
【0010】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態のクレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法を行う傾斜面の概略を示す側面図、図2は本実施形態のクレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法の要部を示す側面図、図3はクレーン付き作業台車の使用状態を示す側面図、図4はクレーン付き作業台車の使用状態を示す正面図、図5はクレーン付き作業台車の使用状態を示す背面図、図6はクレーン付き作業台車の機枠を示す上面図、図7はクレーン付き作業台車の変形例を示す側面図、図8は資材運搬台車の使用状態を示す側面図、図9は資材運搬台車の使用状態を示す背面図、図10は資材運搬台車の機枠を示す上面図である。
【0011】
先ず、モノレールR構築方法で敷設するモノレール材2は、図4に示すように、走行方向に伸延した略正方形断面の上下角パイプ3,4を所定の間隔を保持して配置し、これら上下角パイプ3,4は所定間隔を保持するように複数の連結部材5で連結して、さらに、同モノレール材2の一側に側方に開口した山形鋼6をモノレール材2の長手方向に伸延させて固着し、同山形鋼6の下面に歯を下方向に突出させた走行用ラック7をモノレールRの長手方向に伸延させて固着し、所定の長さに形成された構成としている。本発明の特徴的な構成であるクレーン付き作業台車10および資材運搬台車110は、複数のモノレール材2を連設して構成したモノレールR上を走行するものである。
【0012】
本実施形態のモノレール構築方法に用いるモノレール敷設用クレーン付き作業台車および資材運搬台車の構成について詳細に説明する。
【0013】
本発明の特徴的な構成であるモノレール敷設用クレーン付き作業台車10は、図3および図4に示すように、矩形状の機台11をモノレールR上に沿って走行させる走行部12と、モノレールRの敷設方向と仮想水平方向との傾斜角に応じて水平角度を調整自在としたクレーン架台13と、発電機14を載置する発電機架台15と、クレーン架台13上に旋回自在かつ先端方向に伸縮自在に搭載した略L字状のクレーン16とを備えている。
【0014】
機台11は、図3、図4および図5に示すように、矩形状の走行・駆動部機枠24を備え、この走行・駆動部機枠24は、水平に構成された横枠体フレーム30を上下二段に積み重ね、各横枠体フレーム30,30の側部に縦枠体フレーム31を下方に伸延させて配設した機枠20を走行方向にそれぞれ配設することで構成している。図3中の連結フレーム21は、前後機枠20,20同士を連結するように配設している。
【0015】
前後走行部12,12は、走行モータ33,33を走行・駆動部機枠24に載置し、その走行モータ33の走行用出力軸(図示しない)の先端に減速機39を設けると共に、その減速機39の出力軸(図示しない)の先端に走行駆動用ピニオン40を配設している。
【0016】
図4および図5に示すように、この走行駆動用ピニオン40は、上記モノレールRに固着された走行用ラック7に噛合している。このようにして、走行モータ33からの動力を、減速機39を介して、走行駆動用ピニオン40に伝動伝達している。39aは減速機の出力軸の軸受ハウジングである。
【0017】
また、機台11の前後に一対の走行体41を有する。走行体41は、図4および図5に示すように、走行・駆動部機枠24に左右一対の走行ローラ取付部42a,42aを介して走行ローラ42,42を回転自在に取り付け、縦枠体フレーム31,31の左右側壁部31a,31aに左右側上部ガイドローラ取付部43a,43a及び左右側下部ガイドローラ取付部44a,44aを介してそれぞれ上下部左右一対の左右側上部ガイドローラ43,43及び左右側下部ガイドローラ44,44を回転自在にかつ左右に対向状態に取り付けている。そして、走行ローラ42,42は上角パイプ3の上面に当接させ、また、左右側上部ガイドローラ43,43は上角パイプ3の左右側面にそれぞれ当接させ、また、左右側下部ガイドローラ44,44は下角パイプ4の左右側面にそれぞれ当接させている。これにより、モノレールR上を機台11に設けた走行部12で走行可能としている。
【0018】
作業台車10を走行・停止させる操作をする走行用操作部(図示しない)が機台11に配設されている。走行用操作部の走行始動ボタン(図示しない)を押すと、発電機14より電力が走行部12の走行モータ33へ供給され、走行モータ33,33が駆動し、この駆動力は減速機39を介して、走行駆動用ピニオン40に伝動伝達される。また、走行用操作部には、走行部12の走行を停止する走行停止ボタン(図示しない)を設けるようにしている。
【0019】
図3に示すように、上記クレーン架台13は、走行・駆動部機枠24の上手側に突出した横フレーム50と同横フレーム50先端に回動自在に連設したクレーン台座51と同クレーン台座51を水平位置とする角度を自在に調整可能としたクレーン台座昇降機構52とを備えている。図6中、51fはクレーン台座51の骨格となるクレーン台座フレームである。
【0020】
また、図3および図4に示すように、クレーン台座51には、左右アーム77,77を介して連設した伸縮自在のアウトリガー78,78を配設し、アウトリガー78,78はモノレール材2の敷設作業開始する場合に支柱P先端に設けた歩道受梁Dおよび横梁Eに接地して固定することにより、クレーン16の転倒を防止し、クレーン16による吊下げ作業を安全に行えるようにしている。
【0021】
クレーン台座昇降機構52は、アジャストボルト53の先端部53aをクレーン台座51の裏面51bに回動自在に配設し、同アジャストボルト53に係合する係合部54を横フレーム50の中途位置に配設し上下方向へ移動可能とした構成としている。そして、クレーン台座昇降機構52は、アジャストボルト53を上下方向へ移動して係合部54で係合することによりクレーン台座51の角度を傾斜面Sに対して水平位置となるように調整可能としている。図中55は、横フレーム50先端部50aとクレーン台座51の上手側の裏面51bに配設し、同クレーン台座51の回動枢軸となる回動部である。
【0022】
また、横フレーム50の先端部50aには、補強フレーム56の一端を連設し、同補強フレーム56の他端を走行・駆動部機枠24の上手側下部に連設している。そして、クレーン架台13のクレーン台座51には、さまざまな種類のモノレールの資材を吊り上げるクレーン16を配設している。
【0023】
クレーン16は、先端方向に伸縮自在の伸縮ブーム60,60と同伸縮ブーム60,60を収納した先端ブーム61と同先端ブーム61を起伏自在に連動連設したクレーン本体62と、同クレーン本体62を左右旋回自在に連動連設した旋回機構63を備えている。クレーン16は、クレーン本体62の基部にクレーン操作部64を設けており、このクレーン操作部64を操作することによりクレーン16は、起伏自在、伸縮自在かつ左右旋回自在に可動することを可能としている。
【0024】
図3および図4に示すように、クレーン16の先端ブーム61の基端は、クレーン本体62上端と枢支されており、油圧シリンダー65により枢支部66,66を中心として起伏自在に構成されている。また、先端ブーム61は、2段式の伸縮ブーム60,60により伸縮自在に構成されており、内蔵シリンダー(図示しない)により伸縮作動を行うことを可能にしている。
【0025】
クレーン本体62には、ウインチ(図示しない)を装着し、伸縮ブーム60の先端に設けた懸架部67にワイヤ(図示しない)を懸架して、このワイヤを巻取り繰出し作動可能に構成している。ウインチは、減速機付きのウインチモータ(図示しない)と、回転自在に支持されるドラム(図示しない)とを備えている。ドラムは、ワイヤを巻き取るためのものである。
【0026】
クレーン操作部64を操作することによりウインチは、懸架部67にワイヤを懸架して下方に吊下し、ワイヤに下手側の資材運搬台車110に積載したモノレールの資材を巻きつけウインチを介して昇降自在に吊下する。
【0027】
また、クレーン基部71の下端には旋回機構63が設けられ、クレーン16は、旋回機構63に接続したクレーン操作部64を介して、クレーン本体62の全方向旋回を可能となるように構成されている。
【0028】
旋回機構63は、クレーン基部71下端の旋回ギア(図示しない)とクレーン本体62下端のギア(図示しない)とを噛合して、旋回モータ(図示しない)の回転に合わせて旋回ギアとギアが回転することによりクレーン本体62を旋回させて、下手側の資材運搬台車110に載置した資材を伸縮ブーム60先端に懸架したワイヤ68に吊下する。そして、上手側(前方)方向に旋回して油圧シリンダー65を伸長することにより資材を上手側の支柱P上方へ渡すことができるようにしている。
【0029】
前記クレーン架台13の下手側には、走行モータ33およびクレーン16へ電力を供給する発電機14を載置する発電機架台15を走行・駆動部機枠24に配設している。
【0030】
図3および図5に示すように、上記発電機架台15は、横フレーム50中央に回動自在に配設した発電機台座70と、同発電機台座70との水平位置の角度を自在に調整できる発電機台座昇降機構73とを備えている。図6中70fは、発電機台座70の骨格を形成する発電機台座フレームである。
【0031】
発電機台座昇降機構73は、アジャストボルト74の先端部74aを発電機台座70の裏面70bに回動自在に連設し、さらに、同アジャストボルト74に係合する係合部75を横フレーム50の下手側位置に配設し上下方向へ移動可能な構成としている。そして、発電機台座昇降機構73は、アジャストボルト74を上下方向へ移動して係合部75で係合することにより発電機台座70の角度位置を傾斜面に対して水平位置となるように調整可能としている。図3、図5および図6中76は、横フレーム50中央と発電機台座70の上手側の裏面70bに配設し、同発電機台座70の回動枢軸となる回動部である。
【0032】
発電機14は、発電機架台15の発電機台座70上に固定して、各走行モータ33およびクレーン16へ配線(図示しない)を介して電力を供給するようにしている。
【0033】
上述した作業台車10の変形例について、図7を用いて説明する。以下、変形例の作業台車は、上記作業台車と同一の構成について同一符号を付して重複説明を省略する。なお、クレーン台座昇降機構52の係合部54および発電機台座昇降機構73の係合部75の取付位置は、それぞれ上下方向を反転した位置に設けた構成としている。
【0034】
変形例の作業台車10は、傾斜面Sの傾斜角度が急勾配の場合において、クレーン台座51および発電機台座70を水平位置とする角度に調整することが可能な構成としている。
【0035】
具体的には、図7に示すように、クレーン台座昇降機構52は、上端をクレーン台座51の裏面に配設し、下端を新たに設けた側面視三角状の前補助台90に配設するようにしている。前補助台90は、走行・駆動部機枠24上の横フレーム50の長手方向に対し所定の角度で配設する構成としている。そして、前補助台90に設けたクレーン台座昇降機構52を上下方向に昇降動作した場合には、クレーン台座51を水平位置とする角度をより大きくとることが可能となり、急勾配な傾斜面Sにおいても作業台車10のクレーン16を安全かつ円滑に作動することが可能となる。
【0036】
発電機台座昇降機構73は上端を発電機台座70の裏面に配設し、下端を新たに設けた側面視三角状の後補助台91に配設するようにしている。後補助台91は、走行・駆動部機枠24上の横フレーム50の長手方向に対し所定の角度で配設する構成としている。そして、後補助台91に設けた発電機台座昇降機構73を上下方向に昇降動作した場合には、発電機台座70を水平位置とする角度をより大きくとることが可能となり、急勾配な傾斜面Sにおいても作業台車10の発電機14を安全に作動することが可能となる。
【0037】
クレーン台座昇降機構52および発電機台座昇降機構73を前後補助台90,91にそれぞれ設ける構成とすることで、各アジャストボルト53,74を長くすることなく、クレーン台座51および発電機台座70を水平位置とする角度へ調整することができる。
【0038】
図8および図9に示すように、クレーン付き作業台車10の下手側は、本発明の特徴的な構成である資材運搬台車110がモノレールR上に走行自在に設けられている。
【0039】
資材運搬台車110は、矩形状の機台111をモノレールR上に沿って走行させる走行部112と、機台111上に設けた荷台114と、同荷台114を下方より支持しつつ機台111に連設した支持フレーム113とを備えている。
【0040】
機台111は、図8および図9に示すように、矩形状の走行・駆動部機枠124で形成されて、この走行・駆動部機枠124は、水平に構成された横枠体フレーム130,130を上下二段に積み重ね、各横枠体フレーム130,130の側部に縦枠体フレーム131,131を下方に伸延させて配設した機枠120を走行方向にそれぞれ配設することで構成している。連結フレーム121は、前後機枠120,120同士を連結するように配設している。そして、両縦枠体フレーム131,131は、モノレールRが略中央に位置するように配置している。
【0041】
走行部112,112は、走行モータ133を機台111の横枠体フレーム130の上部130aに載置し、その走行モータ133の走行用出力軸134の先端に駆動スプロケット135を設けると共に、その駆動スプロケット135下方に所定離間した位置に、従動スプロケット137を配設している。そして、駆動スプロケット135と従動スプロケット137との間に伝動チェン136を巻回して連動連結している。
【0042】
従動スプロケット137の走行用駆動軸138には、走行駆動用ピニオン140を回転自在に設けている。この走行駆動用ピニオン140は、上記モノレールRに固着された走行用ラック7に噛合している。このようにして、走行モータ133からの動力を、駆動スプロケット135および従動スプロケット137を介して、走行駆動用ピニオン140に伝動伝達している。
【0043】
また、機台111の前後に一対の走行体141を有する。走行体141は、走行・駆動部機枠124に左右一対の走行ローラ取付部142a,142aを介して走行ローラ142,142を回転自在に取り付け、縦枠体フレーム131,131の左右側壁部131a,131aに左右側上部ガイドローラ取付部143a,143a及び左右側下部ガイドローラ取付部144a,144aを介してそれぞれ上下部左右一対の左右側上部ガイドローラ143,143及び左右側下部ガイドローラ144,144を回転自在にかつ左右に対向状態に取り付けている。そして、走行ローラ142,142は上角パイプ3の上面に当接させ、また、左右側上部ガイドローラ143,143は上角パイプ3の左右側面にそれぞれ当接させ、また、左右側下部ガイドローラ144,144は下角パイプ4の左右側面にそれぞれ当接させている。これにより、モノレールRを機台111に設けた走行部112で走行可能としている。
【0044】
資材運搬台車110の走行・停止を操作する走行用操作部(図示しない)が機台111に配設されている。走行用操作部の走行始動ボタン(図示しない)を押すと、発電機170より電力が走行部112の走行モータ133,133へ供給され、走行モータ133,133が駆動し、この駆動力は走行駆動用ピニオン140に伝動伝達される。また、走行用操作部には、走行部112の走行を停止する走行停止ボタン(図示しない)を設けるようにしている。
【0045】
荷台114は、矩形状の平板150と、この平板150裏面に連設した格子状の枠体151と、平板150の周囲を取り囲むように形成した柵状のフレーム152とを備えている。そして、荷台114は、水平状態となるように走行・駆動部機枠124に上記支持フレーム113を介して連設されている。
【0046】
さらに、荷台114と機台111との間に発電機170を搭載する発電機台座171を設けている。発電機台座171の一端は、荷台114の裏面114bに配設した機台111の上部111aに配設した支持フレーム113の中途部に連設され、一方、発電機台座171の他端は、荷台114の裏面114bより下方へ向けて配設した発電機台座支持フレーム172に連設される。図8中、156は一端を荷台114の裏面114bに配設して下方から支持し、他端を機台111に配設する支持フレームである。図9中、155は荷台114のフレーム152縁に取付け、荷台に資材を搭載するときに生じる同資材への破損を防止する保護枠である。
【0047】
上記のような構成とすることにより荷台114には、異なる長さの支柱P、異なる長さのモノレール材2や資材等を載置することが可能としている。
【0048】
本実施形態のクレーン付き作業台車を用いた傾斜面Sへのモノレール構築方法について説明する。
【0049】
図1に示すように、裾部Aから頂部Bまでの工区に所定の間隔ごとに支柱Pを固定するコンクリート製の基礎Fを施工している。各基礎F,Fには、支柱Pを固定するアンカーボルトF1を固着している。
【0050】
裾部Aにおいては、トラッククレーンを用いて作業を行うようにしている。このトラッククレーンが作業可能な範囲において、予め歩道受梁Dと横梁Eを取付けた支柱Pをトラッククレーンのクレーンで吊上げて、基礎F上に配設し、基礎FのアンカーボルトF1と支柱Pの基部P1をナット(図示しない)で嵌着固定する。
【0051】
次に、トラッククレーンのクレーンで資材置場からモノレール材2を吊上げて、両支柱P先端の受部Uとモノレール材2の足部2a,2aをボルトおよびナットで嵌着固定する。
【0052】
次にトラッククレーンのクレーンで予め歩道受台Hを取付けた歩道Iを吊上げて、この歩道受台Hを両支柱P,Pに取付けてある歩道受梁D上にボルトで嵌着固定し、両支柱P,P間に歩道Iを取付ける。次に手摺部Jを歩道Iに溶接するようにしている。
【0053】
そして、トラッククレーンのクレーンが作業可能な範囲において、支柱P、モノレール材2、歩道Iおよび手摺部Jの順に取り付けを行うようにしている。
【0054】
次にトラッククレーンのクレーンを用いて、モノレール敷設用クレーン付き作業台車10をモノレールR上に走行自在に取り付ける。さらに、このクレーン付き作業台車10の下手側に資材運搬台車110をモノレールR上に走行自在に取り付ける。そして、クレーン付き作業台車10および資材運搬台車110は、それぞれ発電機14,170を搭載しており、発電機より供給される電力で走行・駆動自在となるようにしている。
【0055】
図4および図5に示すように、クレーン付き作業台車10に配設した走行用操作部の走行始動ボタンを押すことにより、クレーン付き作業台車10がモノレールRに沿って走行する。すなわち、走行時には、それぞれの走行モータ33の動力が減速機39を介して、走行駆動用ピニオン40に伝動伝達される。そして、走行駆動用ピニオン40が駆動することにより、モノレールRの側部に配設された走行用ラック7に対して機台11が走行する。
【0056】
図1および図2に示すように、支柱P,P間における1スパン毎のモノレール材2の敷設を順次行う場合において、クレーン付き作業台車10は、完成工区T1におけるモノレールR上を裾部Aから頂部Bの中途部Cまで走行して、据え付けを完了したモノレールRの先端で停止するようにしている。
【0057】
図2および図4に示すように、クレーン付き作業台車10は、モノレールRの先端の支柱Pにおいて、クレーン基部71の左右アウトリガー78,78を下方へ伸ばし歩道受梁Dおよび横梁Eに固定する。すなわち、アウトリガー78,78を支柱Pの両側方位置の歩道受梁Dおよび横梁E上に接地することにより、クレーン16でモノレール材2等を吊り下げる場合に荷重を支柱Pに集中することができ、安全かつ安定した昇降作業を行うことが可能となる。
【0058】
資材運搬台車110は、荷台114上に支柱P、モノレール材2、歩道I、手摺部J等を積載する。荷台114上の積載物が水平位置となる同荷台構造とすることにより、クレーン付き作業台車10のクレーン16で積載物を吊下げる場合に、荷台114上の作業者が積載物をクレーン16へ固定する作業を安全に行うことができる。
【0059】
そして、図8および図9に示すように、資材運搬台車110に配設した走行用操作部の前進ボタンを押すことにより、資材運搬台車110がモノレールRに沿って自走し、クレーン付き作業台車10の下手側の位置で停止する。すなわち、走行時には、それぞれの走行モータ133の動力が駆動スプロケット135および従動スプロケット137を介して、走行駆動用ピニオン140に伝動伝達される。そして、走行駆動用ピニオン140が駆動することにより、モノレールRの側部に配設された走行用ラック7に対して機台11が走行する。
【0060】
図1および図2に示すように、このクレーン付き作業台車10の下手側には、支柱P、モノレール材2、歩道I、手摺部J等の組立資材を積載した資材運搬台車110がモノレールR上に停止している。資材運搬台車110は積載した組立資材の荷重を支柱Pに集中すべく、資材運搬台車110を支柱P上方位置におけるモノレールR上に停止している。なお、資材運搬台車110の停止位置は、支柱上方位置である必要はなく、支柱P,P間におけるモノレールR上位置であってもよい。
【0061】
図3、図4および図6に示すように、クレーン付き作業台車10のクレーン16が水平位置となるように、クレーン台座51に設けたクレーン台座昇降機構52のアジャストボルト53を上方へ伸長して固定する。
【0062】
また、図3、図5および図6に示すように、クレーン付き作業台車10の発電機14が水平位置となるように、発電機台座70に設けた発電機台座昇降機構73のアジャストボルト74を上方へ伸長して固定する。なお、裾部Aから頂部Bまで傾斜面Sの角度が変化している場合は、クレーン台座昇降機構52および発電機台座昇降機構73を伸縮調節することで、クレーン台座51および発電機台座70を水平位置とする角度へ変更でき、モノレール敷設作業の全ての工程においてクレーン付き作業台車10のクレーン16の駆動動作を安全かつ円滑にすることができる。
【0063】
発電機14からの電力供給を2つの走行モータ33,33からクレーン16へ切り替えて、クレーン16を駆動する。
【0064】
図2に示すように上手側のクレーン付き作業台車10のクレーン16は、伸縮ブーム60,60を下手側の資材運搬台車110上方まで伸長して、巻回していたワイヤ68を繰出した後に、このワイヤ68に支柱を固定し、ワイヤ68を所定の長さまで巻上げて、予め歩道受梁Dと横梁Eを取付けた支柱Pを吊上げる。そして、クレーン16を下手側から上手側へ旋回すると共に、クレーン16を起伏して、新たに取り付ける支柱Pを基礎F上に接地する。そして、支柱P基部P1と基礎FのアンカーボルトF1をナットで嵌着固定する。
【0065】
次にクレーン16は、下手側の資材運搬台車110からモノレール材2を吊上げて、クレーン付き作業台車10の上手側の支柱P,P間に同モノレール材2を配設する。モノレール材2の下手側および上手側それぞれの足部2a,2aと両支柱P先端の受部Uをボルトで嵌着固定している。
【0066】
次にクレーン16は、下手側の資材運搬台車110から予め歩道受台Hを取付けた歩道Iを吊上げて、この歩道Iを支柱P,Pに取付けてある歩道受梁D上にボルトで嵌着固定する。次に手摺部Jを歩道Iに溶接するようにしている。これら作業手順によって上手側下手側の支柱間のモノレール材2の敷設を1スパン分完成することが可能となる。
【0067】
さらに、上手側へ新たなモノレールを敷設する場合、すなわち次のスパン分の作業を行う場合は、クレーン付き作業台車10を新たに完成したモノレールR上を走行して、このモノレールRの先端で停止する。そして、クレーン付き作業台車10は、モノレールRの先端の支柱Pにおいて、再度、アウトリガー78,78を下方へ伸ばし歩道受梁D、横梁Eに接地して、クレーン16による吊り下げ作業を行う。上述したように資材運搬台車110をクレーン付き作業台車10の下手側まで走行して、停止するようにしている。次に資材運搬台車110の荷台114上に積載した支柱P、モノレール材2、歩道I、手摺部J等の組立資材を上手側のクレーン付き作業台車10のクレーン16を操作し、順次吊上げて組立て作業を行うようにしている。このようにして次のスパン分の作業を完成する。この1スパン毎の作業を切れ目なく連続して行うことにより、1つのモノレールを完成することができる。このようにして、モノレールの組立作業を短時間で開始して終了することができる。
【0068】
未完成工区T2において、上述したように同様の1スパン分毎の作業をクレーン付き作業台車10と資材運搬台車110を用いて繰返し行うことで、モノレール敷設工事を短期間で完成させることを可能としている。
【0069】
クレーン付き作業台車10がクレーン16による吊り下げ作業の準備を行っている期間において、別体の資材運搬台車110は、新たな組立資材を搬送するために裾部Aへ降りて、資材置き場から新たな組立資材を積載して、クレーン付き作業台車10の下手側まで走行して停止するようにしている。このときクレーン付き作業台車10と資材運搬台車110が別体となっているため、それぞれの装置が個別にモノレールR組み付けの準備を行うことができ、効率よく作業を遂行することができる。
【0070】
なお、資材運搬台車110は、異なる長さのモノレール材2等を搬送して、上手側に停止しているクレーン付き作業台車10へ搬送することができる。このとき、資材運搬台車110は、クレーン付き作業台車10との車間距離を調整することで異なる長さのモノレール材2を作業台車10の下手側近傍位置まで搬送することができる。
【0071】
モノレールRが裾部Aから頂部Bまで連設された段階で、モノレールに電力を供給する給電レールを配設するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施形態のクレーンを用いた傾斜面へのモノレール構築方法を行う傾斜面の概略を示す側面図である。
【図2】本実施形態のクレーンを用いた傾斜面へのモノレール構築方法の要部を示す側面図である。
【図3】作業台車の使用状態を示す側面図である。
【図4】作業台車の使用状態を示す正面図である。
【図5】作業台車の使用状態を示す背面図である。
【図6】作業台車の機枠を示す上面図である。
【図7】作業台車の変形例を示す側面図である。
【図8】資材運搬台車の使用状態を示す側面図である。
【図9】資材運搬台車の使用状態を示す背面図である。
【図10】資材運搬台車の機枠を示す上面図である。
【符号の説明】
【0073】
A 裾部
B 頂部
P 支柱
R モノレール
S 傾斜面
U 受部
10 作業台車
11 機台
12 走行部
13 支持フレーム
14 発電機
15 補助フレーム
16 クレーン
110 資材運搬台車
111 機台
112 走行部
113 支持フレーム
114 荷台
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に山腹などの傾斜面においてモノレール車が走行するモノレールを敷設する方法は、大型トラックや大型トラッククレーンが通過できる作業用道路を作った後、トラックや傾斜地走行車でモノレール材を一定高さの傾斜面位置にまで搬送し、大型トラッククレーンでモノレール材を吊上げて支柱間に設置するようにしていた。そして、モノレールを敷設した後は、上記作業用道路を元の状態にもどしていた。
【0003】
一方、従来からモノレール車が走行する軌道の保守を行うクレーン装置を備えた軌道点検用作業車が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−22469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した方法では、大型トラックや大型トラッククレーンが通過できる作業用道路を作る必要があり、また、モノレールを敷設した後の作業用道路を元にもどす必要があり、工期が長びき、工事費用が増えてしまう問題があった。そして、それぞれの支柱間にモノレール材を敷設する場合には、大型トラッククレーンは整地されていないような足場の悪い不安定な傾斜面において大型トラックからモノレール材を荷卸して支柱間にモノレール材を吊上げて取り付ける作業を行う必要があり、安全上の問題もあった。そのため、大型トラッククレーンを安全に作業するための整地工数も必要となり、モノレール敷設の工期が長くなる問題があった。また、作業道路が作れず大型トラックや大型クレーンが進入することができない傾斜地ではモノレールの敷設を諦めざるを得なかった。
【0005】
一方、上記特許文献1に記載の軌道点検用作業車では、平地に敷設された軌道上で作業することを目的としており、傾斜面に敷設した軌道上で作業を行うことを考慮した構造ではなかった。すなわち、作業台車のクレーンは同クレーン基部を作業台車に一体的に設けるようにしており、仮に傾斜面の軌道上でクレーンを起伏しながら吊上げ作業を行う場合には、作業台車に走行方向に対して垂直方向の力が大きく作用し、作業台車が転覆する虞があった。
【0006】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、モノレール敷設を安全に行い、かつ、工期を短縮できるクレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ラックピニオン駆動方式で走行する作業台車および資材運搬台車を用いて傾斜面にモノレールを構築する方法であって、傾斜面の裾部から一定高さの傾斜面位置にまで予めモノレールを敷設し、次いで、傾斜面の裾部から予め敷設したモノレール上にモノレール敷設用クレーンを積載した作業台車を走行させ、作業台車を予め敷設したモノレール先端位置まで走行させた後に、モノレール敷設用クレーンを操作して、その下手側のモノレール上の資材運搬台車からモノレール材を吊上げて、その上手側の傾斜面にモノレール材を敷設して傾斜面上方位置にモノレール敷設工事を行い、このようにして順次各支柱間毎に下手側からモノレール材を吊上げて、上手側の傾斜面にそのモノレール材を敷設していくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本モノレール構築方法は、傾斜面の裾部から予めトラッククレーンを使用して敷設したモノレール上にモノレール敷設用クレーンを積載した作業台車を走行させ、予め敷設したモノレール先端位置まで走行させた後に停止し、モノレール敷設用クレーンを操作して、その下手側のモノレール上の資材運搬台車からモノレール材を吊上げて、その上手側の傾斜面にモノレール材を敷設して傾斜面上方位置にモノレール敷設工事を行うため、モノレール材を搬送する大型トラックやモノレール材を吊上げる大型トラッククレーンが通過できる作業用道路を裾部から頂部までの全長に亘って作る必要がなくなる効果がある。また、足場の悪い傾斜面での作業に関係なく資材運搬台車のモノレール材を作業台車のクレーンで支柱間に設置することができ、モノレール敷設工事の期間を短縮することができる。さらにまた、クレーン付き作業台車とモノレール材を搬送する資材運搬台車をそれぞれ別体とすることで、資材運搬台車は長さの異なる長尺なモノレール材を上手側の作業台車に必要に応じて反復搬送し、特に長さの異なるモノレール材を資材運搬台車で搬送する場合において、下手側の資材運搬台車は上手側のクレーン付き作業台車との車間距離を調整することで、資材運搬台車の荷台の長さを変更することなく、異なる長さのモノレール材を搬送することが可能となる。そして、作業台車のクレーンは基部を水平位置とする角度に変更自在な構造を備えており、モノレール材の吊上げ作業の工程を安全にかつ円滑に行うことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るクレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法は、傾斜面の裾部からトラッククレーンで作業可能な高さの傾斜面位置までトラッククレーンでモノレールを敷設し、次いで、傾斜面の裾部から予め敷設したモノレール上にモノレール敷設用クレーンを積載した作業台車を走行させ、予め敷設したモノレール先端の支柱位置まで走行させた後に停止させ、モノレール敷設用クレーンを操作して、その下手側のモノレール上の資材運搬台車からモノレール材を吊上げて、その上手側の傾斜面における支柱にモノレール材を敷設して傾斜面上方位置における支柱にモノレール敷設工事を行い、このようにして順次下手側からモノレール材を吊上げて、上手側の傾斜面にそのモノレール材を敷設していくものである。
【実施例】
【0010】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態のクレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法を行う傾斜面の概略を示す側面図、図2は本実施形態のクレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法の要部を示す側面図、図3はクレーン付き作業台車の使用状態を示す側面図、図4はクレーン付き作業台車の使用状態を示す正面図、図5はクレーン付き作業台車の使用状態を示す背面図、図6はクレーン付き作業台車の機枠を示す上面図、図7はクレーン付き作業台車の変形例を示す側面図、図8は資材運搬台車の使用状態を示す側面図、図9は資材運搬台車の使用状態を示す背面図、図10は資材運搬台車の機枠を示す上面図である。
【0011】
先ず、モノレールR構築方法で敷設するモノレール材2は、図4に示すように、走行方向に伸延した略正方形断面の上下角パイプ3,4を所定の間隔を保持して配置し、これら上下角パイプ3,4は所定間隔を保持するように複数の連結部材5で連結して、さらに、同モノレール材2の一側に側方に開口した山形鋼6をモノレール材2の長手方向に伸延させて固着し、同山形鋼6の下面に歯を下方向に突出させた走行用ラック7をモノレールRの長手方向に伸延させて固着し、所定の長さに形成された構成としている。本発明の特徴的な構成であるクレーン付き作業台車10および資材運搬台車110は、複数のモノレール材2を連設して構成したモノレールR上を走行するものである。
【0012】
本実施形態のモノレール構築方法に用いるモノレール敷設用クレーン付き作業台車および資材運搬台車の構成について詳細に説明する。
【0013】
本発明の特徴的な構成であるモノレール敷設用クレーン付き作業台車10は、図3および図4に示すように、矩形状の機台11をモノレールR上に沿って走行させる走行部12と、モノレールRの敷設方向と仮想水平方向との傾斜角に応じて水平角度を調整自在としたクレーン架台13と、発電機14を載置する発電機架台15と、クレーン架台13上に旋回自在かつ先端方向に伸縮自在に搭載した略L字状のクレーン16とを備えている。
【0014】
機台11は、図3、図4および図5に示すように、矩形状の走行・駆動部機枠24を備え、この走行・駆動部機枠24は、水平に構成された横枠体フレーム30を上下二段に積み重ね、各横枠体フレーム30,30の側部に縦枠体フレーム31を下方に伸延させて配設した機枠20を走行方向にそれぞれ配設することで構成している。図3中の連結フレーム21は、前後機枠20,20同士を連結するように配設している。
【0015】
前後走行部12,12は、走行モータ33,33を走行・駆動部機枠24に載置し、その走行モータ33の走行用出力軸(図示しない)の先端に減速機39を設けると共に、その減速機39の出力軸(図示しない)の先端に走行駆動用ピニオン40を配設している。
【0016】
図4および図5に示すように、この走行駆動用ピニオン40は、上記モノレールRに固着された走行用ラック7に噛合している。このようにして、走行モータ33からの動力を、減速機39を介して、走行駆動用ピニオン40に伝動伝達している。39aは減速機の出力軸の軸受ハウジングである。
【0017】
また、機台11の前後に一対の走行体41を有する。走行体41は、図4および図5に示すように、走行・駆動部機枠24に左右一対の走行ローラ取付部42a,42aを介して走行ローラ42,42を回転自在に取り付け、縦枠体フレーム31,31の左右側壁部31a,31aに左右側上部ガイドローラ取付部43a,43a及び左右側下部ガイドローラ取付部44a,44aを介してそれぞれ上下部左右一対の左右側上部ガイドローラ43,43及び左右側下部ガイドローラ44,44を回転自在にかつ左右に対向状態に取り付けている。そして、走行ローラ42,42は上角パイプ3の上面に当接させ、また、左右側上部ガイドローラ43,43は上角パイプ3の左右側面にそれぞれ当接させ、また、左右側下部ガイドローラ44,44は下角パイプ4の左右側面にそれぞれ当接させている。これにより、モノレールR上を機台11に設けた走行部12で走行可能としている。
【0018】
作業台車10を走行・停止させる操作をする走行用操作部(図示しない)が機台11に配設されている。走行用操作部の走行始動ボタン(図示しない)を押すと、発電機14より電力が走行部12の走行モータ33へ供給され、走行モータ33,33が駆動し、この駆動力は減速機39を介して、走行駆動用ピニオン40に伝動伝達される。また、走行用操作部には、走行部12の走行を停止する走行停止ボタン(図示しない)を設けるようにしている。
【0019】
図3に示すように、上記クレーン架台13は、走行・駆動部機枠24の上手側に突出した横フレーム50と同横フレーム50先端に回動自在に連設したクレーン台座51と同クレーン台座51を水平位置とする角度を自在に調整可能としたクレーン台座昇降機構52とを備えている。図6中、51fはクレーン台座51の骨格となるクレーン台座フレームである。
【0020】
また、図3および図4に示すように、クレーン台座51には、左右アーム77,77を介して連設した伸縮自在のアウトリガー78,78を配設し、アウトリガー78,78はモノレール材2の敷設作業開始する場合に支柱P先端に設けた歩道受梁Dおよび横梁Eに接地して固定することにより、クレーン16の転倒を防止し、クレーン16による吊下げ作業を安全に行えるようにしている。
【0021】
クレーン台座昇降機構52は、アジャストボルト53の先端部53aをクレーン台座51の裏面51bに回動自在に配設し、同アジャストボルト53に係合する係合部54を横フレーム50の中途位置に配設し上下方向へ移動可能とした構成としている。そして、クレーン台座昇降機構52は、アジャストボルト53を上下方向へ移動して係合部54で係合することによりクレーン台座51の角度を傾斜面Sに対して水平位置となるように調整可能としている。図中55は、横フレーム50先端部50aとクレーン台座51の上手側の裏面51bに配設し、同クレーン台座51の回動枢軸となる回動部である。
【0022】
また、横フレーム50の先端部50aには、補強フレーム56の一端を連設し、同補強フレーム56の他端を走行・駆動部機枠24の上手側下部に連設している。そして、クレーン架台13のクレーン台座51には、さまざまな種類のモノレールの資材を吊り上げるクレーン16を配設している。
【0023】
クレーン16は、先端方向に伸縮自在の伸縮ブーム60,60と同伸縮ブーム60,60を収納した先端ブーム61と同先端ブーム61を起伏自在に連動連設したクレーン本体62と、同クレーン本体62を左右旋回自在に連動連設した旋回機構63を備えている。クレーン16は、クレーン本体62の基部にクレーン操作部64を設けており、このクレーン操作部64を操作することによりクレーン16は、起伏自在、伸縮自在かつ左右旋回自在に可動することを可能としている。
【0024】
図3および図4に示すように、クレーン16の先端ブーム61の基端は、クレーン本体62上端と枢支されており、油圧シリンダー65により枢支部66,66を中心として起伏自在に構成されている。また、先端ブーム61は、2段式の伸縮ブーム60,60により伸縮自在に構成されており、内蔵シリンダー(図示しない)により伸縮作動を行うことを可能にしている。
【0025】
クレーン本体62には、ウインチ(図示しない)を装着し、伸縮ブーム60の先端に設けた懸架部67にワイヤ(図示しない)を懸架して、このワイヤを巻取り繰出し作動可能に構成している。ウインチは、減速機付きのウインチモータ(図示しない)と、回転自在に支持されるドラム(図示しない)とを備えている。ドラムは、ワイヤを巻き取るためのものである。
【0026】
クレーン操作部64を操作することによりウインチは、懸架部67にワイヤを懸架して下方に吊下し、ワイヤに下手側の資材運搬台車110に積載したモノレールの資材を巻きつけウインチを介して昇降自在に吊下する。
【0027】
また、クレーン基部71の下端には旋回機構63が設けられ、クレーン16は、旋回機構63に接続したクレーン操作部64を介して、クレーン本体62の全方向旋回を可能となるように構成されている。
【0028】
旋回機構63は、クレーン基部71下端の旋回ギア(図示しない)とクレーン本体62下端のギア(図示しない)とを噛合して、旋回モータ(図示しない)の回転に合わせて旋回ギアとギアが回転することによりクレーン本体62を旋回させて、下手側の資材運搬台車110に載置した資材を伸縮ブーム60先端に懸架したワイヤ68に吊下する。そして、上手側(前方)方向に旋回して油圧シリンダー65を伸長することにより資材を上手側の支柱P上方へ渡すことができるようにしている。
【0029】
前記クレーン架台13の下手側には、走行モータ33およびクレーン16へ電力を供給する発電機14を載置する発電機架台15を走行・駆動部機枠24に配設している。
【0030】
図3および図5に示すように、上記発電機架台15は、横フレーム50中央に回動自在に配設した発電機台座70と、同発電機台座70との水平位置の角度を自在に調整できる発電機台座昇降機構73とを備えている。図6中70fは、発電機台座70の骨格を形成する発電機台座フレームである。
【0031】
発電機台座昇降機構73は、アジャストボルト74の先端部74aを発電機台座70の裏面70bに回動自在に連設し、さらに、同アジャストボルト74に係合する係合部75を横フレーム50の下手側位置に配設し上下方向へ移動可能な構成としている。そして、発電機台座昇降機構73は、アジャストボルト74を上下方向へ移動して係合部75で係合することにより発電機台座70の角度位置を傾斜面に対して水平位置となるように調整可能としている。図3、図5および図6中76は、横フレーム50中央と発電機台座70の上手側の裏面70bに配設し、同発電機台座70の回動枢軸となる回動部である。
【0032】
発電機14は、発電機架台15の発電機台座70上に固定して、各走行モータ33およびクレーン16へ配線(図示しない)を介して電力を供給するようにしている。
【0033】
上述した作業台車10の変形例について、図7を用いて説明する。以下、変形例の作業台車は、上記作業台車と同一の構成について同一符号を付して重複説明を省略する。なお、クレーン台座昇降機構52の係合部54および発電機台座昇降機構73の係合部75の取付位置は、それぞれ上下方向を反転した位置に設けた構成としている。
【0034】
変形例の作業台車10は、傾斜面Sの傾斜角度が急勾配の場合において、クレーン台座51および発電機台座70を水平位置とする角度に調整することが可能な構成としている。
【0035】
具体的には、図7に示すように、クレーン台座昇降機構52は、上端をクレーン台座51の裏面に配設し、下端を新たに設けた側面視三角状の前補助台90に配設するようにしている。前補助台90は、走行・駆動部機枠24上の横フレーム50の長手方向に対し所定の角度で配設する構成としている。そして、前補助台90に設けたクレーン台座昇降機構52を上下方向に昇降動作した場合には、クレーン台座51を水平位置とする角度をより大きくとることが可能となり、急勾配な傾斜面Sにおいても作業台車10のクレーン16を安全かつ円滑に作動することが可能となる。
【0036】
発電機台座昇降機構73は上端を発電機台座70の裏面に配設し、下端を新たに設けた側面視三角状の後補助台91に配設するようにしている。後補助台91は、走行・駆動部機枠24上の横フレーム50の長手方向に対し所定の角度で配設する構成としている。そして、後補助台91に設けた発電機台座昇降機構73を上下方向に昇降動作した場合には、発電機台座70を水平位置とする角度をより大きくとることが可能となり、急勾配な傾斜面Sにおいても作業台車10の発電機14を安全に作動することが可能となる。
【0037】
クレーン台座昇降機構52および発電機台座昇降機構73を前後補助台90,91にそれぞれ設ける構成とすることで、各アジャストボルト53,74を長くすることなく、クレーン台座51および発電機台座70を水平位置とする角度へ調整することができる。
【0038】
図8および図9に示すように、クレーン付き作業台車10の下手側は、本発明の特徴的な構成である資材運搬台車110がモノレールR上に走行自在に設けられている。
【0039】
資材運搬台車110は、矩形状の機台111をモノレールR上に沿って走行させる走行部112と、機台111上に設けた荷台114と、同荷台114を下方より支持しつつ機台111に連設した支持フレーム113とを備えている。
【0040】
機台111は、図8および図9に示すように、矩形状の走行・駆動部機枠124で形成されて、この走行・駆動部機枠124は、水平に構成された横枠体フレーム130,130を上下二段に積み重ね、各横枠体フレーム130,130の側部に縦枠体フレーム131,131を下方に伸延させて配設した機枠120を走行方向にそれぞれ配設することで構成している。連結フレーム121は、前後機枠120,120同士を連結するように配設している。そして、両縦枠体フレーム131,131は、モノレールRが略中央に位置するように配置している。
【0041】
走行部112,112は、走行モータ133を機台111の横枠体フレーム130の上部130aに載置し、その走行モータ133の走行用出力軸134の先端に駆動スプロケット135を設けると共に、その駆動スプロケット135下方に所定離間した位置に、従動スプロケット137を配設している。そして、駆動スプロケット135と従動スプロケット137との間に伝動チェン136を巻回して連動連結している。
【0042】
従動スプロケット137の走行用駆動軸138には、走行駆動用ピニオン140を回転自在に設けている。この走行駆動用ピニオン140は、上記モノレールRに固着された走行用ラック7に噛合している。このようにして、走行モータ133からの動力を、駆動スプロケット135および従動スプロケット137を介して、走行駆動用ピニオン140に伝動伝達している。
【0043】
また、機台111の前後に一対の走行体141を有する。走行体141は、走行・駆動部機枠124に左右一対の走行ローラ取付部142a,142aを介して走行ローラ142,142を回転自在に取り付け、縦枠体フレーム131,131の左右側壁部131a,131aに左右側上部ガイドローラ取付部143a,143a及び左右側下部ガイドローラ取付部144a,144aを介してそれぞれ上下部左右一対の左右側上部ガイドローラ143,143及び左右側下部ガイドローラ144,144を回転自在にかつ左右に対向状態に取り付けている。そして、走行ローラ142,142は上角パイプ3の上面に当接させ、また、左右側上部ガイドローラ143,143は上角パイプ3の左右側面にそれぞれ当接させ、また、左右側下部ガイドローラ144,144は下角パイプ4の左右側面にそれぞれ当接させている。これにより、モノレールRを機台111に設けた走行部112で走行可能としている。
【0044】
資材運搬台車110の走行・停止を操作する走行用操作部(図示しない)が機台111に配設されている。走行用操作部の走行始動ボタン(図示しない)を押すと、発電機170より電力が走行部112の走行モータ133,133へ供給され、走行モータ133,133が駆動し、この駆動力は走行駆動用ピニオン140に伝動伝達される。また、走行用操作部には、走行部112の走行を停止する走行停止ボタン(図示しない)を設けるようにしている。
【0045】
荷台114は、矩形状の平板150と、この平板150裏面に連設した格子状の枠体151と、平板150の周囲を取り囲むように形成した柵状のフレーム152とを備えている。そして、荷台114は、水平状態となるように走行・駆動部機枠124に上記支持フレーム113を介して連設されている。
【0046】
さらに、荷台114と機台111との間に発電機170を搭載する発電機台座171を設けている。発電機台座171の一端は、荷台114の裏面114bに配設した機台111の上部111aに配設した支持フレーム113の中途部に連設され、一方、発電機台座171の他端は、荷台114の裏面114bより下方へ向けて配設した発電機台座支持フレーム172に連設される。図8中、156は一端を荷台114の裏面114bに配設して下方から支持し、他端を機台111に配設する支持フレームである。図9中、155は荷台114のフレーム152縁に取付け、荷台に資材を搭載するときに生じる同資材への破損を防止する保護枠である。
【0047】
上記のような構成とすることにより荷台114には、異なる長さの支柱P、異なる長さのモノレール材2や資材等を載置することが可能としている。
【0048】
本実施形態のクレーン付き作業台車を用いた傾斜面Sへのモノレール構築方法について説明する。
【0049】
図1に示すように、裾部Aから頂部Bまでの工区に所定の間隔ごとに支柱Pを固定するコンクリート製の基礎Fを施工している。各基礎F,Fには、支柱Pを固定するアンカーボルトF1を固着している。
【0050】
裾部Aにおいては、トラッククレーンを用いて作業を行うようにしている。このトラッククレーンが作業可能な範囲において、予め歩道受梁Dと横梁Eを取付けた支柱Pをトラッククレーンのクレーンで吊上げて、基礎F上に配設し、基礎FのアンカーボルトF1と支柱Pの基部P1をナット(図示しない)で嵌着固定する。
【0051】
次に、トラッククレーンのクレーンで資材置場からモノレール材2を吊上げて、両支柱P先端の受部Uとモノレール材2の足部2a,2aをボルトおよびナットで嵌着固定する。
【0052】
次にトラッククレーンのクレーンで予め歩道受台Hを取付けた歩道Iを吊上げて、この歩道受台Hを両支柱P,Pに取付けてある歩道受梁D上にボルトで嵌着固定し、両支柱P,P間に歩道Iを取付ける。次に手摺部Jを歩道Iに溶接するようにしている。
【0053】
そして、トラッククレーンのクレーンが作業可能な範囲において、支柱P、モノレール材2、歩道Iおよび手摺部Jの順に取り付けを行うようにしている。
【0054】
次にトラッククレーンのクレーンを用いて、モノレール敷設用クレーン付き作業台車10をモノレールR上に走行自在に取り付ける。さらに、このクレーン付き作業台車10の下手側に資材運搬台車110をモノレールR上に走行自在に取り付ける。そして、クレーン付き作業台車10および資材運搬台車110は、それぞれ発電機14,170を搭載しており、発電機より供給される電力で走行・駆動自在となるようにしている。
【0055】
図4および図5に示すように、クレーン付き作業台車10に配設した走行用操作部の走行始動ボタンを押すことにより、クレーン付き作業台車10がモノレールRに沿って走行する。すなわち、走行時には、それぞれの走行モータ33の動力が減速機39を介して、走行駆動用ピニオン40に伝動伝達される。そして、走行駆動用ピニオン40が駆動することにより、モノレールRの側部に配設された走行用ラック7に対して機台11が走行する。
【0056】
図1および図2に示すように、支柱P,P間における1スパン毎のモノレール材2の敷設を順次行う場合において、クレーン付き作業台車10は、完成工区T1におけるモノレールR上を裾部Aから頂部Bの中途部Cまで走行して、据え付けを完了したモノレールRの先端で停止するようにしている。
【0057】
図2および図4に示すように、クレーン付き作業台車10は、モノレールRの先端の支柱Pにおいて、クレーン基部71の左右アウトリガー78,78を下方へ伸ばし歩道受梁Dおよび横梁Eに固定する。すなわち、アウトリガー78,78を支柱Pの両側方位置の歩道受梁Dおよび横梁E上に接地することにより、クレーン16でモノレール材2等を吊り下げる場合に荷重を支柱Pに集中することができ、安全かつ安定した昇降作業を行うことが可能となる。
【0058】
資材運搬台車110は、荷台114上に支柱P、モノレール材2、歩道I、手摺部J等を積載する。荷台114上の積載物が水平位置となる同荷台構造とすることにより、クレーン付き作業台車10のクレーン16で積載物を吊下げる場合に、荷台114上の作業者が積載物をクレーン16へ固定する作業を安全に行うことができる。
【0059】
そして、図8および図9に示すように、資材運搬台車110に配設した走行用操作部の前進ボタンを押すことにより、資材運搬台車110がモノレールRに沿って自走し、クレーン付き作業台車10の下手側の位置で停止する。すなわち、走行時には、それぞれの走行モータ133の動力が駆動スプロケット135および従動スプロケット137を介して、走行駆動用ピニオン140に伝動伝達される。そして、走行駆動用ピニオン140が駆動することにより、モノレールRの側部に配設された走行用ラック7に対して機台11が走行する。
【0060】
図1および図2に示すように、このクレーン付き作業台車10の下手側には、支柱P、モノレール材2、歩道I、手摺部J等の組立資材を積載した資材運搬台車110がモノレールR上に停止している。資材運搬台車110は積載した組立資材の荷重を支柱Pに集中すべく、資材運搬台車110を支柱P上方位置におけるモノレールR上に停止している。なお、資材運搬台車110の停止位置は、支柱上方位置である必要はなく、支柱P,P間におけるモノレールR上位置であってもよい。
【0061】
図3、図4および図6に示すように、クレーン付き作業台車10のクレーン16が水平位置となるように、クレーン台座51に設けたクレーン台座昇降機構52のアジャストボルト53を上方へ伸長して固定する。
【0062】
また、図3、図5および図6に示すように、クレーン付き作業台車10の発電機14が水平位置となるように、発電機台座70に設けた発電機台座昇降機構73のアジャストボルト74を上方へ伸長して固定する。なお、裾部Aから頂部Bまで傾斜面Sの角度が変化している場合は、クレーン台座昇降機構52および発電機台座昇降機構73を伸縮調節することで、クレーン台座51および発電機台座70を水平位置とする角度へ変更でき、モノレール敷設作業の全ての工程においてクレーン付き作業台車10のクレーン16の駆動動作を安全かつ円滑にすることができる。
【0063】
発電機14からの電力供給を2つの走行モータ33,33からクレーン16へ切り替えて、クレーン16を駆動する。
【0064】
図2に示すように上手側のクレーン付き作業台車10のクレーン16は、伸縮ブーム60,60を下手側の資材運搬台車110上方まで伸長して、巻回していたワイヤ68を繰出した後に、このワイヤ68に支柱を固定し、ワイヤ68を所定の長さまで巻上げて、予め歩道受梁Dと横梁Eを取付けた支柱Pを吊上げる。そして、クレーン16を下手側から上手側へ旋回すると共に、クレーン16を起伏して、新たに取り付ける支柱Pを基礎F上に接地する。そして、支柱P基部P1と基礎FのアンカーボルトF1をナットで嵌着固定する。
【0065】
次にクレーン16は、下手側の資材運搬台車110からモノレール材2を吊上げて、クレーン付き作業台車10の上手側の支柱P,P間に同モノレール材2を配設する。モノレール材2の下手側および上手側それぞれの足部2a,2aと両支柱P先端の受部Uをボルトで嵌着固定している。
【0066】
次にクレーン16は、下手側の資材運搬台車110から予め歩道受台Hを取付けた歩道Iを吊上げて、この歩道Iを支柱P,Pに取付けてある歩道受梁D上にボルトで嵌着固定する。次に手摺部Jを歩道Iに溶接するようにしている。これら作業手順によって上手側下手側の支柱間のモノレール材2の敷設を1スパン分完成することが可能となる。
【0067】
さらに、上手側へ新たなモノレールを敷設する場合、すなわち次のスパン分の作業を行う場合は、クレーン付き作業台車10を新たに完成したモノレールR上を走行して、このモノレールRの先端で停止する。そして、クレーン付き作業台車10は、モノレールRの先端の支柱Pにおいて、再度、アウトリガー78,78を下方へ伸ばし歩道受梁D、横梁Eに接地して、クレーン16による吊り下げ作業を行う。上述したように資材運搬台車110をクレーン付き作業台車10の下手側まで走行して、停止するようにしている。次に資材運搬台車110の荷台114上に積載した支柱P、モノレール材2、歩道I、手摺部J等の組立資材を上手側のクレーン付き作業台車10のクレーン16を操作し、順次吊上げて組立て作業を行うようにしている。このようにして次のスパン分の作業を完成する。この1スパン毎の作業を切れ目なく連続して行うことにより、1つのモノレールを完成することができる。このようにして、モノレールの組立作業を短時間で開始して終了することができる。
【0068】
未完成工区T2において、上述したように同様の1スパン分毎の作業をクレーン付き作業台車10と資材運搬台車110を用いて繰返し行うことで、モノレール敷設工事を短期間で完成させることを可能としている。
【0069】
クレーン付き作業台車10がクレーン16による吊り下げ作業の準備を行っている期間において、別体の資材運搬台車110は、新たな組立資材を搬送するために裾部Aへ降りて、資材置き場から新たな組立資材を積載して、クレーン付き作業台車10の下手側まで走行して停止するようにしている。このときクレーン付き作業台車10と資材運搬台車110が別体となっているため、それぞれの装置が個別にモノレールR組み付けの準備を行うことができ、効率よく作業を遂行することができる。
【0070】
なお、資材運搬台車110は、異なる長さのモノレール材2等を搬送して、上手側に停止しているクレーン付き作業台車10へ搬送することができる。このとき、資材運搬台車110は、クレーン付き作業台車10との車間距離を調整することで異なる長さのモノレール材2を作業台車10の下手側近傍位置まで搬送することができる。
【0071】
モノレールRが裾部Aから頂部Bまで連設された段階で、モノレールに電力を供給する給電レールを配設するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施形態のクレーンを用いた傾斜面へのモノレール構築方法を行う傾斜面の概略を示す側面図である。
【図2】本実施形態のクレーンを用いた傾斜面へのモノレール構築方法の要部を示す側面図である。
【図3】作業台車の使用状態を示す側面図である。
【図4】作業台車の使用状態を示す正面図である。
【図5】作業台車の使用状態を示す背面図である。
【図6】作業台車の機枠を示す上面図である。
【図7】作業台車の変形例を示す側面図である。
【図8】資材運搬台車の使用状態を示す側面図である。
【図9】資材運搬台車の使用状態を示す背面図である。
【図10】資材運搬台車の機枠を示す上面図である。
【符号の説明】
【0073】
A 裾部
B 頂部
P 支柱
R モノレール
S 傾斜面
U 受部
10 作業台車
11 機台
12 走行部
13 支持フレーム
14 発電機
15 補助フレーム
16 クレーン
110 資材運搬台車
111 機台
112 走行部
113 支持フレーム
114 荷台
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックピニオン駆動方式で走行する作業台車および資材運搬台車を用いて傾斜面にモノレールを構築する方法であって、
傾斜面の裾部から一定高さの傾斜面位置にまで予めモノレールを敷設し、
次いで、傾斜面の裾部から予め敷設したモノレール上にモノレール敷設用クレーンを積載した作業台車を走行させ、作業台車を予め敷設したモノレール先端位置まで走行させた後に、モノレール敷設用クレーンを操作して、その下手側のモノレール上の資材運搬台車からモノレール材を吊上げて、その上手側の傾斜面にモノレール材を敷設して傾斜面上方位置にモノレール敷設工事を行い、このようにして順次各支柱間毎に下手側からモノレール材を吊上げて、上手側の傾斜面にそのモノレール材を敷設していく
ことを特徴とするクレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法。
【請求項1】
ラックピニオン駆動方式で走行する作業台車および資材運搬台車を用いて傾斜面にモノレールを構築する方法であって、
傾斜面の裾部から一定高さの傾斜面位置にまで予めモノレールを敷設し、
次いで、傾斜面の裾部から予め敷設したモノレール上にモノレール敷設用クレーンを積載した作業台車を走行させ、作業台車を予め敷設したモノレール先端位置まで走行させた後に、モノレール敷設用クレーンを操作して、その下手側のモノレール上の資材運搬台車からモノレール材を吊上げて、その上手側の傾斜面にモノレール材を敷設して傾斜面上方位置にモノレール敷設工事を行い、このようにして順次各支柱間毎に下手側からモノレール材を吊上げて、上手側の傾斜面にそのモノレール材を敷設していく
ことを特徴とするクレーン付き作業台車を用いた傾斜面へのモノレール構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−7426(P2010−7426A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170889(P2008−170889)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000140731)株式会社嘉穂製作所 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000140731)株式会社嘉穂製作所 (12)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]