説明

クレーン警報システム

【課題】 クレーンでの作業中に、作業者に対して警報を確実に知らせることができるクレーン警報システムを提供する。
【解決手段】 先端部にフック13Cが吊り下げられているブーム13Aを備えるクレーン13に用いられるクレーン警報システムであって、ブーム13Aの動きが安全範囲を超えたときに、検出信号を出力する防止装置20と、防止装置20からの検出信号を受け取ると、警報信号を送信する警報装置30と、フック13Cに取り付けられ、警報信号を受信すると、警報を出力するクレーン側受信端末40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クレーンのブームの動きで、警報を作業者に知らせるクレーン警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンを用いた作業には各種あるが、クレーンのブームの先端部にあるフックに、機材や資材などの荷物を引っ掛け、この荷物を移動する作業が一般的である。つまり、クレーンのオペレータが、荷物の置かれている地点の上方にブームを動かす。次に、オペレータがフックを荷物まで降ろすと、玉掛け作業者が荷物のバランス等に配慮して、この荷物をフックに引っ掛ける。この後、オペレータはフックを上方に移動し、ブームを動かして荷物を目的地点まで移動する。そして、オペレータがフックを下方に下げると、別の作業者が荷物を目的地点に降ろす。この間、クレーンのブームは、オペレータの操作によって、伸縮や上下の移動を繰り返す。
【0003】
一方、クレーンのブームの作業範囲には、建物や送電線などが位置している場合がある。こうした場合、ブームが建物や送電線などのような建造物に接触して、玉掛け作業者や補助の作業者などが危険にさらされる可能性がある。このような危険性を防ぐために、例えば、大型のクレーンにはカメラが設置され、オペレータがモニタ画像を確認しながら作業を行う場合がある。また、GPS(Global Positioning System)を用いて、クレーンから送電線までの距離を確認し、危険性を防ぐ装置もある。
【0004】
さらに、フックを利用した警報装置がある(例えば、特許文献1参照。)。この警報装置では、クレーンのフックに警報ユニットが装着される。また、危険性の有無を監視する監視員が送信機を携帯する。そして、玉掛け作業者などの作業者に警報を知らせる必要がある場合に、監視員は、送信機を操作して、無線により警報ユニットのスピーカから警報音を出す。これにより、作業者は警報が出たことを認知する。
【特許文献1】特開平5−278991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、先に述べたカメラによる危険性の防止には次の課題がある。クレーンのオペレータは、通常、ブームの操作を行うので、モニタ画面を常に注視していることはない。このために、オペレータが警報を出すタイミングを見逃す可能性がある。また、GPSによる送電線までの距離確認を行う場合には次の課題がある。送電線は風などによって動揺することがある。この場合には、クレーンから送電線までの距離をGPSで確定することができなくなる。さらに、クレーンのフックから警報を出力する警報装置には次の課題がある。この警報装置では監視員が危険性ありと判断した場合に送信機を操作するので、監視員が警報を出すタイミングを見逃す場合がある。
【0006】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、クレーンでの作業中に、作業者に対して警報を確実に知らせることができるクレーン警報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、先端部にフックが吊り下げられているブームを備えるクレーンに用いられるクレーン警報システムであって、前記ブームの動きが安全範囲を超えたときに、検出信号を出力する防止装置と、前記防止装置からの検出信号を受け取ると、警報信号を送信する警報装置と、前記フックに取り付けられ、警報信号を受信すると、警報を出力するクレーン側受信端末とを備えることを特徴とするクレーン警報システムである。
【0008】
請求項1の発明では、ブームの動きが安全範囲を超えたことを、防止装置が検出すると、警報装置が警報信号を送信する。一方、クレーンにはフックが取り付けられ、さらに、フックには受信端末が取り付けられている。そして、受信端末は、警報装置からの警報信号を受信すると、警報を出力する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のクレーン警報システムにおいて、前記防止装置は、前記ブームの作業範囲を制限する作業範囲制限装置を備え、該作業範囲制限装置は、あらかじめ設定された作業範囲の境界を該ブームが越えると、検出信号を出力することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のクレーン警報システムにおいて、前記防止装置は、電線からの電界を感知する電界感知装置を備え、該電界感知装置は、前記ブームが電線に接近して電界を感知すると、検出信号を出力することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクレーン警報システムにおいて、作業用のヘルメットに取り付けられ、警報信号を受信すると、警報を出力する作業者側受信端末を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明は、ブームの動きが安全範囲を超えると、ブームの先端部のフックに取り付けられているクレーン側受信端末が警報を出す。フックに荷物を吊り下げた状態でクレーンが動いているときに、作業者はフックに吊り下げられた荷物を注視している。つまり、作業者の視野には、荷物と共に荷物を吊り下げているフックが入る。この結果、請求項1の発明により、作業者に対して、クレーン側受信端末が警報を確実に知らせることができる。さらに、ブームの動きが安全範囲を超えたことを、防止装置が検出したときに、警報装置が警報を自動で出力するので、確実に警報を出力することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、防止装置が作業範囲制限装置を備えるので、建物などの構築物にブームが接触する際に生じる危険性を、現場の作業者などに知らせることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、電界感知装置が電線からの電界を感知するので、送電線などの電線にブームが接触する際に生じる危険性を、現場の作業者などに知らせることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、ヘルメットには作業者側受信端末が設けられている。作業時に作業者はヘルメットを必ず被るので、作業者に対して警報を確実に伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0017】
(実施の形態1)
この実施の形態によるクレーン警報システムを図1および図2に示す。図1のクレーン警報システムは、クレーン車10に設けられている防止装置20および警報装置30を備えている。さらに、クレーン警報システムは、クレーン車10に設置されているクレーン側受信端末40と、ヘルメット110に装着されている作業者側受信端末50とを備えている。ヘルメット110は玉掛け作業者などの現場の作業者100が被る安全帽である。
【0018】
クレーン警報システムを備えるクレーン車10は、車両11に対して回転自在に本体12が設置されている。本体12には、クレーン13と操作室14とが設置され、クレーン13を駆動するための駆動装置が設けられている。操作室14はオペレータによって使用され、操作室14にはクレーン13を操作するための操作装置(図示を省略)が設けられている。なお、図1では、防止装置20と警報装置30とを操作室14の外側に描いているが、この実施の形態では、防止装置20と警報装置30とは操作室14の内部に設置されている。
【0019】
クレーン車10のクレーン13は伸縮式のブーム13Aを備えている。つまり、ブーム13Aは、引き込みと引き出しが自在な多段のブーム部分13A〜13Aから成り、先頭のブーム部分13Aには、ワイヤー13Bを介在してフック13Cが取り付けられている。ブーム13Aは、クレーン13の操作室14に設けられている操作装置(図示を省略)により、伸縮と傾斜が自在であり、フック13Cは上下移動が自在である。さらに、この操作装置により本体12が正逆両方向に回ることによって、ブーム13Aは回転が自在である。
【0020】
操作室14の操作装置は、ブーム13Aの長さを示すブーム長信号aと、ブーム13Aの仰角を表すブーム仰角信号bと、ブーム13Aの回転を表すブーム回転角信号cとを、防止装置20に送る。ブーム長信号aは、図3(a)に示すように、ブーム部分13A〜13Aの伸縮によるブーム13Aの長さLを表し、ブーム仰角信号bは、水平方向に対するブーム13Aの角度θ1を表す。ブーム回転角信号cは、図3(b)に示すように、基準位置Hからブーム13Aが回転した角度θ2を表す。また、操作装置は、後述する作業範囲制限信号dを防止装置20から受け取ると、防止装置20が監視対象とするブーム13Aの動き、例えば、ブーム13Aのブーム長が延びることを抑制する。
【0021】
防止装置20は、作業範囲制限装置21と電界感知装置22とを備えている。作業範囲制限装置21は、クレーン車10のブーム13Aの動きを制限する装置である。作業範囲制限装置21は、処理部21A、入力インターフェース(IF)21B、入力部21C、出力インターフェース(IF)21Dおよび表示部21Eを備えている。
【0022】
作業範囲制限装置21の入力インターフェース21Bは、操作室14の操作装置からブーム長信号a、ブーム仰角信号bおよびブーム回転角信号cを受け取り、これらの信号を処理部21Aに送る。入力部21Cは、オペレータによって操作されるタッチスイッチのような入力装置である。出力インターフェース21Dは、処理部21Aから作業範囲制限信号を受け取ると、この信号を出力する。つまり、出力インターフェース21Dは、作業範囲制限信号dを警報装置30に送る。なお、図示を省略しているが、出力インターフェース21Dは、作業範囲制限信号dをクレーン車10の操作装置に送る。表示部21Eは、作業範囲制限信号dの有無や、クレーン13の状態などを表示するLCD(液晶ディスプレイ)などの表示装置である。
【0023】
処理部21Aは、ブーム13Aの安全な動作範囲を作業安全範囲とし、この作業安全範囲を記憶している。例えば、鉄塔210などの構造物が近傍に建っている場所で作業をする場合には、鉄塔210などに接触することがないと想定された範囲が、作業安全範囲である。作業安全範囲は、作業地点で、前もってブーム13Aを鉄塔210の近傍まで動かし、このときのブーム長信号a、ブーム仰角信号bおよびブーム回転角信号cから得られる。なお、作業安全範囲は、オペレータの操作によって、入力部21Cから得ることも可能である。作業安全範囲は、例えば図4(a)に示すように、ブーム13Aの先端が、鉄塔210に接触する手前のブーム長L11、仰角θ11と、図4(b)に示すように、回転角θ21、θ22とで制限される範囲である。
【0024】
処理部21Aは、入力インターフェース21Bを経てクレーン車10から、ブーム長信号a、ブーム仰角信号bおよびブーム回転角信号cを常に受け取る。処理部21Aは、各信号a〜cを受け取ると、ブーム長信号aが表すブーム13Aのブーム長、ブーム仰角信号bが表すブーム13Aの仰角、ブーム回転角信号cが表す回転角と、作業安全範囲が表すブーム長、仰角および回転角とを比較する。そして、各信号a〜cが表すブーム長、仰角および回転角の少なくとも1つ、つまり、監視対象であるブーム13Aが作業安全範囲の境界に達していると、処理部21Aは、監視対象が作業安全範囲の境界に達していることを表す作業範囲制限信号を、出力インターフェース21Dに出力する。例えば、作業範囲制限信号は、現在地点で、ブーム13Aのブーム長が作業安全範囲の境界に達していることを現す。
【0025】
処理部21Aは、作業範囲制限信号を出力すると、表示部21Eを制御して、監視対象であるブーム13Aが作業安全範囲の境界に達したことを表示する。
【0026】
防止装置20の電界感知装置22は、鉄塔210に支持された送電線220が作業現場を通っている場合に、送電線220の電圧によって発生する電界を感知する装置であり、受信部22Aと判定部22Bと出力部22Cとを備えている。
【0027】
電界感知装置22の受信部22Aは、送電線220が発生する電界を受信する受信機である。このために、受信部22Aは、アンテナ22Aを備えている。アンテナ22Aは、例えば先頭部分のブーム部分13Aに取り付けられている。アンテナ22Aが送電線220の電界を受信すると、受信部22Aは、電界の強さを表す強度信号を判定部22Bに送る。
【0028】
判定部22Bは、送電線220に接近しても安全な電界の強さの範囲を、電界安全範囲として、あらかじめ記憶している。判定部22Bは、受信部22Aから強度信号を受け取ると、この信号が表す送電線220の電界の強度と、あらかじめ記憶している電界安全範囲とを比較する。そして、判定部22Bは、強度信号が表す電界の強さが電界安全範囲の境界に達していると判断すると、感知信号を出力部22Cに出力する。
【0029】
電界感知装置22の出力部22Cは、判定部22Bから感知信号を受け取ると、この信号を出力する。つまり、出力部22Cは感知信号eを警報装置30に送る。
【0030】
警報装置30は、作業範囲制限装置21や電界感知装置22から作業範囲制限信号d、感知信号eを受け取ると、警報を表す警報信号を無線で送信する装置である。警報装置30は、入力部30Aと処理部30Bと送信部30Cとを備えている。入力部30Aは、作業範囲制限信号dや感知信号eを受け取ると、これらの信号を処理部30Bに送る。処理部30Bは、
a.作業範囲制限信号dを受け取った
b.感知信号eを受け取った
c.作業範囲制限信号dと感知信号eの両方を受け取った
場合に、警報信号を送信部30Cに送る。つまり、処理部30Bは、作業範囲制限信号dおよび感知信号eの少なくとも一方を受け取ったときに、警報信号を出力する。送信部30Cは、処理部30Bから警報信号を受け取ると、この警報信号をアンテナ30C1から無線で送信する。
【0031】
クレーン側受信端末40は、クレーン車10のフック13Cに取り付けられている。クレーン側受信端末40は、警報装置30からの警報信号により、警報が出たことを作業者に知らせる装置である。クレーン側受信端末40は、図5に示すように、受信部41、制御部42、点灯表示部43、音響出力部44および電源部45を備えている。
【0032】
クレーン側受信端末40の受信部41は、受信用のアンテナ41Aを備え、アンテナ41Aが受信した無線信号の中から警報信号を探す。無線で送信された警報信号があると、受信部41は無線信号から警報信号を再生して制御部42に送る。制御部42は、警報信号を受け取ると、点灯表示部43と音響出力部44とを駆動する。点灯表示部43は、図6に示すように、発光ダイオード43Aを縦横に並べた発光体43Aを備えている。点灯表示部43は、制御部42の駆動によって、発光体43Aを点灯し、警報を知らせるための光を出す。音響出力部44は、スピーカ44Aを備えている。音響出力部44は、制御部42の駆動によって、警報を知らせるためのブザー音をスピーカ44Aから出す。電源部45は、受信部41〜音響出力部44に直流電圧を供給する。電源部45は、バッテリ45Aを備え、バッテリ45Aの電圧を所定電圧に変換して供給電圧とする。バッテリ45Aは長時間の使用に耐えるように、大型のものを使用している。
【0033】
受信部41〜電源部45は、収納ケース40に収められている。点灯表示部43の発光体43Aと音響出力部44のスピーカ44Aとは収納ケース40の表面側に設けられている。収納ケース40はバンド40などによって、クレーン13のフック13Cに固定される。フック13Cには電源供給が困難であるので、この実施の形態では、バッテリ45Aにより電源を供給する電源部45が用いられている。
【0034】
作業者側受信端末50は、作業者100が安全のために被るヘルメット110に取り付けられる。作業者側受信端末50は、クレーン側受信端末40と同じように、警報装置30からの警報信号により、警報が出たことを作業者に知らせる装置である。作業者側受信端末50は、図7に示すように、受信部51、制御部52、通報部53、音響出力部54および電源部55を備えている。なお、受信部51、制御部52および音響出力部54は、クレーン側受信端末40の受信部41、制御部42および音響出力部44と同じであるので、これらの説明を省略する。
【0035】
通報部53は、図8に示すように、バイブレータ53Aを備え、制御部52の駆動で、バイブレータ53Aの振動により警報を知らせる。電源部55は、受信部51〜音響出力部54に直流電圧を供給する。電源部55は、バッテリ55Aを備え、バッテリ55Aの電圧を所定電圧に変換して供給電圧とする。バッテリ5Aは、作業者100が携帯するときの負担にならないように、小型のものを使用している。
【0036】
受信部51〜電源部55は、収納ケース50に収められている。通報部53のバイブレータ53Aは、振動をヘルメット110に伝えるために、収納ケース50のヘルメット110側の部分に設けられている。また、音響出力部54のスピーカ54Aは、収納ケース50の表面側に設けられている。収納ケース40は接着剤やバンドなどによって、ヘルメット110に固定される。
【0037】
次に、この実施の形態によるクレーン警報システムの動作について説明する。鉄塔210などが設置されている現場で、例えば建設作業がある場合、作業を始める前に、クレーン車10のオペレータは作業安全範囲を調べる。つまり、オペレータは、クレーン13を操作してブーム13Aが鉄塔210に接触しないように、防止装置20の作業範囲制限装置21に対して作業安全範囲を設定する。この後、現場での作業が始まると、現場で玉掛け作業を行う作業者や他の作業者達は、作業者側受信端末50が取り付けられているヘルメット110を被って、作業現場で作業をする。
【0038】
こうして作業が行われているときに、クレーン車10のクレーン13が作業安全範囲の境界を越えると、作業範囲制限装置21が作業範囲制限信号dを出力する。また、鉄塔210が支持する送電線220にクレーン車10が接近すると、電界感知装置22が感知信号eを出力する。警報装置30は、作業範囲制限信号dおよび感知信号eの少なくとも一方を受け取ると、警報信号を無線で送信する。
【0039】
警報信号が送信されると、作業者100が被っているヘルメット110の作業者側受信端末50が警報信号を受信する。警報信号の受信により、作業者側受信端末50の通報部53がバイブレータ53Aによる振動で警報を作業者100に伝えると同時に、音響出力部54がブザー音により警報を伝える。これにより、作業者100は警報が出たことを認知することができる。したがって、クレーン車10が鉄塔210や送電線220に接近した場合に生じる危険性を、作業者100は事前に回避することができる。
【0040】
一方、警報信号が送信されると、クレーン13のフック13Cに設置されているクレーン側受信端末40が、警報信号を受信する。警報信号の受信により、クレーン側受信端末40は、警報を知らせるブザー音を音響出力部44から出す。作業者100は、ヘルメット110に装着されている作業者側受信端末50からの警報に、作業をしていて気付かない場合でも、警報が出たことを認知することができる。
【0041】
ところで、現場での騒音が激しい場合には、クレーン側受信端末40からのブザー音を作業者が聞き取れない場合がある。一方、クレーン車10が資材や機材などの荷物を移動しているときに、作業者は、クレーン13の先端に注目するよりは、フック13Cが吊り下げている荷物に注目している。このために、作業者の視野には、荷物と共にフック13Cが入ることになる。したがって、作業者は、ブザー音が聞こえなくても、クレーン側受信端末40の発光体43Aが発光すると、警報が出たことを認知することができる。
【0042】
こうして、この実施の形態によれば、クレーン車10を用いて作業を行っている場合に、クレーン車10が鉄塔210などの構造物や送電線220などの電線に接近しても、作業者100が被るヘルメット110に設置されている作業者側受信端末50と、クレーン車10のクレーン側受信端末40とが警報を知らせる。つまり、2つの受信端末により、作業者に警報を確実に伝えることができる。特に、現場での作業中は、吊り下げている荷物に作業者が注目しているので、騒音等で警報を知らせるブザー音が聞こえなかったときや、作業中でバイブレータの振動を感じなかったときでも、クレーン13のフック13Cに設置されているクレーン側受信端末40の発光体43Aが発光することにより、作業者に対して警報を確実に認知させることができる。
【0043】
(実施の形態2)
この実施の形態では、実施の形態1のクレーン警報システムを簡略化している。図9に示すように、この実施の形態によるクレーン警報システムは、実施の形態1の電界感知装置22を省略した構成である。つまり、防止装置20は作業範囲制限装置21だけを備える構成である。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。警報装置30は、作業範囲制限装置21から作業範囲制限信号dを受け取ったときに、クレーン側受信端末40と作業者側受信端末50とに警報信号を送信する。これにより、クレーン側受信端末40と作業者側受信端末50とは実施の形態1と同じように警報を出力する。
【0044】
この実施の形態によれば、鉄塔や建物などの各種の構造物にクレーン車10が接近すると、実施の形態1と同じように警報を出力することができる。
【0045】
(実施の形態3)
この実施の形態では、実施の形態1のクレーン警報システムを簡略化している。図10に示すように、この実施の形態によるクレーン警報システムは、実施の形態1の作業範囲制限装置21を省略した構成である。つまり、防止装置20は、電界感知装置22だけを備える構成である。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。警報装置30は、電界感知装置22から感知信号eを受け取ったときに、クレーン側受信端末40と作業者側受信端末50とに警報信号を送信する。これにより、クレーン側受信端末40と作業者側受信端末50とは実施の形態1と同じように警報を出力する。
【0046】
この実施の形態によれば、クレーン車10が送電線などの電線に接近すると、実施の形態1と同じように警報を出力することができる。
【0047】
以上、この発明の各実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は各実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、各実施の形態では、クレーンが伸縮式であったが、もちろん、折れ曲がり式などの各種のアームを持つクレーンに対しても、この発明を適用することができる。また、各実施の形態では、作業者側受信端末50をヘルメット110に設けたが、作業者側受信端末50を作業着になどに留めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態1によるクレーン警報システムの基本的な構成を示す構成図である。
【図2】作業範囲制限装置、電界感知装置および警報装置の構成を示す構成図である。
【図3】ブームの動きを説明する図であり、図3(a)はブームの長さと仰角を示す図、図3(b)はブームの回転角を示す図である。
【図4】ブームの作業安全範囲を説明する図であり、図4(a)はブームの長さと仰角を示す図、図4(b)はブームの回転角を示す図である。
【図5】クレーン側受信端末の構成を示す構成図である。
【図6】クレーン側受信端末の収納ケースを示す斜視図である。
【図7】作業者側受信端末の構成を示す構成図である。
【図8】作業者側受信端末の収納ケースを示す正面図である。
【図9】実施の形態2によるクレーン警報システムの構成を示す構成図である。
【図10】実施の形態3によるクレーン警報システムの構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0049】
10 クレーン車
20 防止装置
21 作業範囲制限装置
22 電界感知装置
30 警報装置
40 クレーン側受信端末
50 作業者側受信端末
a ブーム長信号
b ブーム仰角信号
c ブーム回転角信号
d 作業範囲制限信号(検出信号)
e 感知信号(検出信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にフックが吊り下げられているブームを備えるクレーンに用いられるクレーン警報システムであって、
前記ブームの動きが安全範囲を超えたときに、検出信号を出力する防止装置と、
前記防止装置からの検出信号を受け取ると、警報信号を送信する警報装置と、
前記フックに取り付けられ、警報信号を受信すると、警報を出力するクレーン側受信端末と、
を備えることを特徴とするクレーン警報システム。
【請求項2】
前記防止装置は、前記ブームの作業範囲を制限する作業範囲制限装置を備え、該作業範囲制限装置は、あらかじめ設定された作業範囲の境界を該ブームが越えると、検出信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のクレーン警報システム。
【請求項3】
前記防止装置は、電線からの電界を感知する電界感知装置を備え、該電界感知装置は、前記ブームが電線に接近して電界を感知すると、検出信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載のクレーン警報システム。
【請求項4】
作業用のヘルメットに取り付けられ、警報信号を受信すると、警報を出力する作業者側受信端末を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のクレーン警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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