クロスダイポールアンテナ及びそれを備えた非接触通信媒体
【課題】実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を容易に行うことが可能なダイポールアンテナと、そのダイポールアンテナを備えた非接触通信媒体を提供する。
【解決手段】平面視において、互いの中心点で交差する二つのダイポールアンテナ8を備えたクロスダイポールアンテナ4であって、各ダイポールアンテナ8は、一方の端部が中心点でICチップ2に接続される一対の放射素子12a,12bを備え、平面視で二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲んで全ての放射素子12を接続するループ線路10を備え、ループ線路10は、予め設定した虚部インピーダンスに応じた線幅及び路長で形成されている。
【解決手段】平面視において、互いの中心点で交差する二つのダイポールアンテナ8を備えたクロスダイポールアンテナ4であって、各ダイポールアンテナ8は、一方の端部が中心点でICチップ2に接続される一対の放射素子12a,12bを備え、平面視で二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲んで全ての放射素子12を接続するループ線路10を備え、ループ線路10は、予め設定した虚部インピーダンスに応じた線幅及び路長で形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、指向性が少なく、読み取りが可能な方向が多いRFIDタグのアンテナデザインに関するものであり、特に、回路的に独立した複数対のポートを有するICチップに適用するクロスダイポールアンテナと、そのクロスダイポールアンテナを備えた非接触通信媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リーダライタとタグ(非接触通信媒体)との間における情報の通信を、無線高周波信号を用いて行うシステムとして、RFID(無線周波数ID:Radio Frequency IDentification)システムがある。
このようなRFIDシステムとしては、例えば、特許文献1に記載されているように、一対のダイポールアンテナを備えているものがある。
【0003】
特許文献1に記載されている、一対のダイポールアンテナは、互いに十字に交差する給電点から伸びた線路と、この線路を折り曲げた先に三角形状に広がる線路を有している。また、一対のダイポールアンテナのそれぞれの全長は、使用波長λのλ/2よりも長くなっている。
このような一対のダイポールアンテナを用いて形成されたRFIDタグは、リーダライタ側が、直線偏波アンテナを用いて形成された構成であっても、RFIDタグの向きに因らず、無指向に近い読み取り性能を有している。
【0004】
また、特許文献1に記載されているRFIDシステムでは、一対のダイポールアンテナの、給電点から伸びた線路に接続された導電バーを有しており、この導電バーが給電点から伸びた線路に接続される位置を調整することにより、インピーダンスの調整を行っている。ここで、上述した三角形状に広がる線路は、その中心部分をくり抜き、くり抜いた周辺部分の輪郭部に存在する導体で形成してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−324709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているRFIDシステムでは、例えば、インピーダンスの整合を取る場合等に、一対のダイポールアンテナに対し、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整が困難であるという問題がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能なクロスダイポールアンテナと、そのクロスダイポールアンテナを備えた非接触通信媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、平面視において、互いの中心点で交差する複数のダイポールアンテナを備えたクロスダイポールアンテナであって、
前記各ダイポールアンテナは、一方の端部が前記中心点でICチップに接続される一対の放射素子を備え、
平面視で前記中心点を無端形状に囲んで全ての前記放射素子を接続するループ線路を備え、
前記ループ線路は、予め設定した虚部インピーダンスに応じた線幅及び路長で形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記ループ線路は、前記中心点を無端形状に囲む内部ループ線路と、当該内部ループ線路の外周側を無端形状に囲む外側ループ線路と、を備え、
前記内部ループ線路及び前記外側ループ線路は、それぞれ、全ての前記放射素子を接続していることを特徴とするものである。
【0009】
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した発明であって、前記放射素子は、前記内部ループ線路よりも前記中心点に近い内側放射素子部と、前記外側ループ線路よりも前記中心点から遠い外側放射素子部と、を備え、
前記内部ループ線路は、全ての前記内側放射素子部を接続し、
前記外側ループ線路は、全ての前記外側放射素子部を接続し、
前記内部ループ線路と前記外側ループ線路との間には、前記中心点を無端形状に囲む隙間が形成されており、
前記隙間は、予め設定した実部インピーダンスに応じた間隔で形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した発明であって、前記ループ線路は、前記内部ループ線路の一部と前記外側ループ線路の一部とを接続して共用線路とする偶数個のループ接続部を備え、
前記内部ループ線路または前記外側ループ線路は、平面視で前記ループ接続部により分割され、
前記内部ループ線路のうち隣り合う二つの前記ループ接続部により分割される部分には、少なくとも一つの前記内側放射素子部が接続され、
前記外側ループ線路のうち隣り合う二つの前記ループ接続部により分割される部分には、少なくとも一つの前記外側放射素子部が接続されることを特徴とするものである。
【0011】
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項3または請求項4に記載した発明であって、前記中心点を挟んで対向する一対の前記外側放射素子部を最短距離で結ぶ直線は、平面視で隣り合う二つの前記内側放射素子部間を二等分した線と重なっていることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項3から請求項5のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記クロスダイポールアンテナは、前記複数のダイポールアンテナを配置した平面と直交する方向に積層した複数の層で形成され、
前記内側放射素子部と前記外側放射素子部は、前記複数の層のうち異なる層に形成されていることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項7に記載した発明は、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した発明であって、全ての前記放射素子は、平面視で同一形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
次に、本発明のうち、請求項8に記載した発明は、請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記ループ線路は、平面視で前記中心点を通過する複数本の直線で前記クロスダイポールアンテナを偶数等分した各領域において同一形状に形成されており、
前記各領域には、前記一対の放射素子のうち一方のみが配置されていることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項9に記載した発明は、請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載したクロスダイポールアンテナと、前記ICチップと、を備えたことを特徴とする非接触通信媒体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ループ線路の線幅及び路長を調節して形成することにより、クロスダイポールアンテナの虚部インピーダンスを、実部インピーダンスへの影響を最小限に抑えつつ、予め設定した虚部インピーダンスに調整することが可能となる。すなわち、実部インピーダンスの値の変化を最小限に抑えつつ、虚部インピーダンスを、優先的に、予め設定した値に調整することが可能となる。
これにより、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能なクロスダイポールアンテナと、そのクロスダイポールアンテナを備えた非接触通信媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態の非接触通信媒体の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1中に円IIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
【図3】図2中に円IIIで囲んだ範囲の拡大図であり、ICチップの詳細な構成を示す図である。
【図4】ループ線路の線幅及び路長と、クロスダイポールアンテナの実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示す相関図である。
【図5】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態の非接触通信媒体の概略構成を示す平面図である。
【図7】図6中に四角形VIIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
【図8】内部ループ線路と外側ループ線路との間に形成されている隙間と、クロスダイポールアンテナの実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示す相関図である。
【図9】本発明の第二実施形態の変形例を示す図である。
【図10】本発明の第三実施形態の非接触通信媒体の概略構成を示す平面図である。
【図11】本発明の第四実施形態の非接触通信媒体の概略構成を示す平面図である。
【図12】図11中に四角形XIIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
【図13】ループ接続部の構成が異なる二種類のクロスダイポールアンテナに対する、クロスダイポールアンテナの実部インピーダンス及び虚部インピーダンスを、それぞれ示す相関図である。
【図14】本発明の第五実施形態の非接触通信媒体の概略構成を示す図であり、図14(a)は、非接触通信媒体の概略構成を示す平面図、図14(b)は、図14(a)のB‐B線断面図である。
【図15】本発明の第五実施形態の変形例を示す図である。
【図16】本発明の第五実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
(非接触通信媒体の構成)
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態の非接触通信媒体1の構成を説明する。
図1は、本実施形態の非接触通信媒体1の概略構成を示す平面図である。また、図2は、図1中に円IIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
図1及び図2中に示すように、非接触通信媒体1(インレット)は、ICチップ2と、クロスダイポールアンテナ4を備えている。
【0016】
ここで、上記のインレットとは、クロスダイポールアンテナ4を構成する金属コイルにICチップ2を実装した状態を示すものであり、一般的な製品形態としては最も基本的なものである。また、上記のインレットでは、金属コイル(クロスダイポールアンテナ4)及びICチップ2は、剥き出しの状態となっている。
ICチップ2は、例えば、非接触通信媒体1の取り付け対象に関する情報を、記憶可能に形成されている。なお、非接触通信媒体1の取り付け対象とは、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)等である。ここで、非接触通信媒体1の取り付け対象をDVDとした場合、非接触通信媒体1の取り付け対象に関する情報は、DVDの商品名や価格等となる。
【0017】
ここで、本実施形態では、一例として、非接触通信媒体1の構成を、クロスダイポールアンテナ4及びICチップ2が、基材6上に形成されている構成とした場合について説明する。
なお、基材6は、例えば、PET(polyethylene terephthalate)及び粘着層から形成されている。
【0018】
(クロスダイポールアンテナ4の構成)
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3及び図4を用いて、クロスダイポールアンテナ4の構成について説明する。
クロスダイポールアンテナ4は、複数のダイポールアンテナ8と、ループ線路10を備えている。
ここで、本実施形態では、一例として、ダイポールアンテナ8の数を二つとした場合について説明する。
各ダイポールアンテナ8は、例えば、金属(Cu、Ag、Al等)箔等、導電性の材料で形成されており、ICチップ2と電気的に接続されている。なお、本実施形態では、一例として、金属箔により各ダイポールアンテナ8を形成した場合を説明する。
【0019】
また、各ダイポールアンテナ8は、平面視において、互いの中心点で交差している。
ここで、本実施形態では、二つのダイポールアンテナ8が、互いの中心点で直交、すなわち、90[°]の角度で交差している場合について説明する。
また、各ダイポールアンテナ8は、一対の放射素子12a,12bを備えている。
各放射素子12は、一方の端部が、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点でICチップ2に接続されている。
【0020】
ここで、クロスダイポールアンテナ4が備える全ての放射素子12、すなわち、四つの放射素子12は、それぞれ、図3中に示すように、ICチップ2が備える複数のポート14のうち、独立した個別のポート14に接続されている。
なお、図3は、図2中に円IIIで囲んだ範囲の拡大図であり、ICチップ2の詳細な構成を示す図である。また、図3中では、説明のために、放射素子12の図示を省略している。また、図3中では、二つのダイポールアンテナ8のうち一方が備える放射素子12a,12bを接続するポート14を、「ポート14a」と示し、二つのダイポールアンテナ8のうち他方が備える放射素子12a,12bを接続するポート14を、「ポート14b」と示している。
【0021】
また、各放射素子12は、両端部間に、メアンダ状に連続する部分を有している。
また、クロスダイポールアンテナ4が備える全ての放射素子12、すなわち、四つの放射素子12は、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向から見て、同一形状に形成されている。
ループ線路10は、平面視、すなわち、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向から見て、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲んでいる。
【0022】
また、ループ線路10は、クロスダイポールアンテナ4が備える全ての放射素子12、すなわち、四つの放射素子12を接続している。
ここで、本実施形態では、一例として、ループ線路10の形状を、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を全周から等距離で無端形状に囲む円環状とした場合について説明する。
【0023】
また、ループ線路10は、平面視で、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を通過する二本の直線Lcpでクロスダイポールアンテナ4を四等分した各領域16a〜16dにおいて、同一形状に形成されている。
ここで、二本の直線Lcpでクロスダイポールアンテナ4を四等分した各領域16a〜16dは、一対の放射素子12a,12bのうち、一方のみが配置されている領域である。また、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を通過する二本の直線Lcpと、放射素子12の両端部間を結ぶ直線とのなす角度は、45[°]である。
【0024】
ループ線路10の線幅及び路長は、予め設定した、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンス(虚部入力インピーダンス)に応じた値に設定されている。
ここで、本実施形態のように、クロスダイポールアンテナ4の構成が、一対(二つ)のダイポールアンテナ8を備えている構成の場合、クロスダイポールアンテナ4は、四つの端子(二対の端子)を有することとなる。
【0025】
この場合、上述した「クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンス」は、二対の端子のうち、一方の対における値(虚部インピーダンス)となる。ここで、一対(二つ)のダイポールアンテナ8、すなわち、交差するダイポールアンテナ8の形状が、同じ形状である場合は、二対の端子における値(虚部インピーダンス)は同じ値となる。これは、後述する「実部インピーダンス」に関しても同様である。また、端子の数(対)が二つ以上であっても同様である。
【0026】
ここで、ループ線路10の「線幅」とは、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向から見た、ループ線路10の幅であり、図1中では、符号「W」で示している。なお、図1中における、ループ線路10の幅Wと、例えば、ダイポールアンテナ8の幅等、ループ線路10と他の構成との大小関係は、実際の大小関係とは異なる場合がある。これは、以降の図においても同様である。
また、ループ線路10の「路長」とは、円環状に形成したループ線路10の円周である。
【0027】
以下、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、ループ線路10の線幅及び路長について説明する。
図4は、ループ線路10の線幅及び路長と、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示す相関図であり、図4(a)は、ループ線路10の線幅及び路長と、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスとの関係を示す相関図、図4(b)は、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスとの関係を示す相関図である。
【0028】
なお、図4(a)中では、横軸にループ線路10の路長(ループ線路の路長)を示し、縦軸にクロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを示している。同様に、図4(b)中では、横軸にループ線路10の路長(ループ線路の路長)を示し、縦軸にクロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示している。
図4(a)中に示すように、例えば、ループ線路10の線幅Wを0.3[mm]とした場合、ループ線路10の路長を10[mm]とすると、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスは、約19[Ω]程度となる。
【0029】
この場合、図4(b)中に示すように、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスは、約104[Ω]程度となる。
ここで、図4(a)中に示すように、例えば、ループ線路10の路長を15[mm]とすると、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスは、約21[Ω]程度となる。すなわち、ループ線路10の路長を10[mm]から15[mm]へ変化させた際の、実部インピーダンスの変化量は、約2[Ω]程度となる。
【0030】
この場合、図4(b)中に示すように、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスは、約155[Ω]程度となる。すなわち、ループ線路10の路長を10[mm]から15[mm]へ変化させた際の、虚部インピーダンスの変化量は、約51[Ω]程度となる。
したがって、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ループ線路10の路長の変化に伴う実部インピーダンスの値の変化量が、ループ線路10の路長の変化に伴う虚部インピーダンスの値の変化量と比較して小さくなる。このため、ループ線路10の路長を変化させる際に、実部インピーダンスの値の変化を最小限に抑えつつ、虚部インピーダンスを、優先的に、予め設定した値に調整することが可能となる。
【0031】
以上により、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4を形成する際には、例えば、約104[Ω]程度の虚部インピーダンスを得たい場合は、ループ線路10の線幅Wを0.3[mm]と設定するとともに、ループ線路10の路長を10[mm]と設定して、ループ線路10を形成する。
したがって、本実施形態では、予め設定した所望の虚部インピーダンスに応じて、ループ線路10の線幅及び路長の値を設定する。
【0032】
なお、図4中では、ループ線路10の線幅Wを0.3[mm]とした場合における、ループ線路10の路長の変化に応じた、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示す点を、符号「○」により示している。同様に、図4中では、ループ線路10の線幅Wを0.4[mm]とした場合における、ループ線路10の路長の変化に応じた、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示す点を、符号「□」により示している。また、図4中では、ループ線路10の線幅Wを0.5[mm]とした場合における、ループ線路10の路長の変化に応じた、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示す点を、符号「△」により示している。
【0033】
(第一実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、平面視で二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲み、さらに、全ての放射素子12を接続するループ線路10を、予め設定した虚部インピーダンスに応じた線幅W及び路長で形成する。
このため、ループ線路10の線幅W及び路長を調節して、クロスダイポールアンテナ4を形成することにより、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを、実部インピーダンスへの影響を最小限に抑えつつ、予め設定した虚部インピーダンスに調整することが可能となる。
【0034】
その結果、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能なクロスダイポールアンテナ4を提供することが可能となる。
さらに、ループ線路10の路長を変化させる際に、実部インピーダンスの値の変化を最小限に抑えつつ、虚部インピーダンスを、優先的に、予め設定した値に調整することが可能となる。
これにより、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能となるため、クロスダイポールアンテナ4の設計効率を向上させることが可能となる。
【0035】
(2)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、平面視において、互いの中心点で交差する二つのダイポールアンテナ8が、一方の端部がICチップ2に接続される一対の放射素子12a,12bを備えている。
このため、単一のダイポールアンテナ8に存在するヌル(null)点、すなわち、電波が放射しない方向であり、単一のダイポールアンテナ8の軸方向に相当する点に対する指向性を、交差する二つのダイポールアンテナ8で補完することが可能となる。
その結果、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4を備えた非接触通信媒体1に対し、どの方向からでもデータの読み取りが可能となり、非接触通信媒体1の運用効率を向上させることが可能となる。
【0036】
(3)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、全ての放射素子12が、平面視で同一形状に形成されている。
このため、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点から放射素子12の他方の端部(外周側の端部)へ向かう四方向に対して、各ダイポールアンテナ8の指向性が全て対称となり、指向性の歪みを減少させることが可能となる。
その結果、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4を備えた非接触通信媒体1は、どの方向からでも安定性の高い通信距離における通信を行うことが可能となる。
【0037】
(4)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ループ線路10が、平面視で、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を通過する二本の直線Lcpでクロスダイポールアンテナ4を四等分した各領域16a〜16dにおいて、同一形状に形成されている。これに加え、各領域16a〜16dには、一対の放射素子12a,12bのうち一方のみが配置されている。
このため、四等分した各領域16a〜16dのうち一つのみについて、ループ線路10及び放射素子12に対する解析及び計算を行うことにより、クロスダイポールアンテナ4全体の特性を予測することが可能となる。
その結果、クロスダイポールアンテナ4全体に対する解析及び計算を行うこと無く、クロスダイポールアンテナ4全体の特性を予測することが可能となるため、クロスダイポールアンテナ4の設計効率を向上させることが可能となる。
【0038】
(5)本実施形態の非接触通信媒体1では、ICチップ2と、全ての放射素子12を接続するループ線路10を、予め設定した虚部インピーダンスに応じた線幅W及び路長で形成したクロスダイポールアンテナ4を備えて、非接触通信媒体1を形成している。
このため、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能なクロスダイポールアンテナ4を用いて、非接触通信媒体1を形成することが可能となる。
その結果、設計効率を向上させることが可能な非接触通信媒体1を提供することが可能となる。
【0039】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例を列挙する。
(1)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、全ての放射素子12を、平面視で同一形状に形成したが、これに限定するものではなく、全ての放射素子12のうち少なくとも一つを、平面視で他の放射素子12と同一ではない形状に形成してもよい。
(2)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ループ線路10を、平面視で、各領域16a〜16dにおいて同一形状に形成したが、これに限定するものではない。すなわち、ループ線路10を、平面視で、各領域16a〜16dにおいて同一ではない形状に形成してもよい。
【0040】
(3)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ダイポールアンテナ8の数を二つとしたが、これに限定するものではなく、ダイポールアンテナ8の数は、三つ以上であってもよい。要は、ダイポールアンテナ8の数は、複数本であればよい。
ここで、例えば、ダイポールアンテナ8の数を三つとした場合、これら三つのダイポールアンテナ8が、互いの中心点で交差する角度は、60[°]とすることが好適である。
【0041】
また、例えば、ダイポールアンテナ8の数を三つとした場合、放射素子12の数は六つとなり、ループ線路10を同一形状に形成する際に等分する領域は、三つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向から見て、三つのダイポールアンテナ8が交差する中心点を通過する三本の直線でクロスダイポールアンテナ4を六等分した六個の領域16となる。この場合、三つのダイポールアンテナ8が交差する中心点を通過する三本の直線と、放射素子12の両端部間を結ぶ直線とのなす角度は、30[°]とすることが好適である。
【0042】
(4)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ループ線路10の形状を、円環状としたが、ループ線路10の形状は、これに限定するものではなく、例えば、三角形や四辺形、五角形以上の多角形状や、多数の凹凸を有する歯車形状としてもよい。要は、ループ線路10の形状は、平面視で複数のダイポールアンテナ8が交差する中心点を無端形状に囲むとともに、全ての放射素子12を接続する形状であればよい。
(5)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、放射素子12を、両端部間にメアンダ状に連続する部分を有する構成としたが、放射素子12の構成は、これに限定するものではなく、例えば、図5中に示すように、両端部間が直線状であり、全体として直線である構成としてもよい。なお、図5は、本実施形態の変形例を示す図である。
また、放射素子12の構成は、図5中に示す直線状以外にも、例えば、両端部間にのこぎり波状等に連続する部分、すなわち、メアンダ状以外の形状に連続する部分を有する構成であってもよい。
【0043】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図5を参照しつつ、図6から図8を用いて、本実施形態の非接触通信媒体1の構成を説明する。
図6は、本実施形態の非接触通信媒体1の概略構成を示す平面図である。また、図7は、図6中に四角形VIIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
図6及び図7中に示すように、本実施形態の非接触通信媒体1は、クロスダイポールアンテナ4の構成、具体的には、放射素子12及びループ線路10の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成であるため、以下の説明は、放射素子12及びループ線路10を中心に記載する。
【0044】
放射素子12は、内側放射素子部12inと、外側放射素子部12outを備えている。
内側放射素子部12inは、放射素子12のうち、後述する内部ループ線路10inよりも、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点に近い部分を形成している。なお、図6中では、放射素子12aが備える内側放射素子部12inを、「内側放射素子部12ain」と示し、放射素子12bが備える内側放射素子部12inを、「内側放射素子部12bin」と示している。
【0045】
外側放射素子部12outは、放射素子12のうち、後述する外側ループ線路10outよりも、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点から遠い部分を形成している。なお、図6中では、放射素子12aが備える外側放射素子部12outを、「外側放射素子部12aout」と示し、放射素子12bが備える外側放射素子部12outを、「外側放射素子部12bout」と示している。
【0046】
ここで、本実施形態では、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を挟んで対向する一対の外側放射素子部12out(例えば、一対の外側放射素子部12aout)を最短距離で結ぶ直線が、平面視で、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を挟んで対向する一対の内側放射素子部12inが、(例えば、一対の内側放射素子部12ain)と重なっている。
ループ線路10は、内部ループ線路10inと、外側ループ線路10outを備えている。
内部ループ線路10inは、円環状に形成されており、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を、無端形状に囲んでいる。
【0047】
また、内部ループ線路10inは、全ての内側放射素子部12inを接続している。
外側ループ線路10outは、内部ループ線路10inよりも大径の円環状に形成されており、内部ループ線路10inの外周側を、無端形状に囲んでいる。具体的には、外側ループ線路10outは、その内径が内部ループ線路10inの外径よりも大きくなるように形成されている。
【0048】
また、外側ループ線路10outは、全ての外側放射素子部12outを接続している。
また、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outは、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を基準として、互いに同心円となるように配置されている。
したがって、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outは、周方向全体に沿って、等距離で離間しており、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間には、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲む隙間18が形成されている。
内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成された、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲む隙間18は、予め設定した実部インピーダンスに応じた間隔で形成されている。
【0049】
以下、図1から図7を参照しつつ、図8を用いて、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18について説明する。
図8は、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18と、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示す相関図である。なお、図8中では、横軸に内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18(隙間)を示し、左側の縦軸にクロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを示し、右側の縦軸にクロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示している。
【0050】
ここで、図8中には、ループ線路10の線幅Wを0.4[mm]とし、ループ線路10の路長を15[mm]とした場合における、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18と、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示している。
図8中に示すように、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18を増加させると、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスは低下し、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスは増加する。
【0051】
なお、図8中では、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18の変化に応じた、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを示す点を、符号「○」により示している。同様に、図8中では、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18の変化に応じた、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示す点を、符号「□」により示している。
【0052】
ここで、図8中に示すように、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18を、例えば、約0.4[μm]増加させると、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスは、約15[Ω]程度減少し、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスは、約6[Ω]程度増加する。
すなわち、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4を形成する際には、実部インピーダンスの変動に対する虚部インピーダンスの変動が少ない状態で、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18の間隔を設定することが可能となる。
したがって、本実施形態では、予め設定した所望の実部インピーダンスに応じて、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18の間隔を設定する。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0053】
(第二実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲む隙間18を、予め設定した実部インピーダンスに応じた間隔で形成している。
このため、実部インピーダンスの変動に対する虚部インピーダンスの変動が少ない状態で、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18の間隔を設定することが可能となる。
【0054】
その結果、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能なクロスダイポールアンテナ4を提供することが可能となる。
また、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能となるため、クロスダイポールアンテナ4の設計効率を向上させることが可能となる。
【0055】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、放射素子12の構成を、内側放射素子部12inと、外側放射素子部12outを備えた構成とし、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲む隙間18を形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図9中に示すように、放射素子12の構成を、上述した第一実施形態と同様の構成とし、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outが、それぞれ、全ての放射素子12を接続している構成としてもよい。なお、図9は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0056】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図9を参照しつつ、図10を用いて、本実施形態の非接触通信媒体1の構成を説明する。
図10は、本実施形態の非接触通信媒体1の概略構成を示す平面図である。
図10中に示すように、本実施形態の非接触通信媒体1は、クロスダイポールアンテナ4の構成、具体的には、放射素子12及びループ線路10の構成を除き、上述した第二実施形態と同様の構成であるため、以下の説明は、放射素子12及びループ線路10を中心に記載する。
【0057】
放射素子12は、上述した第二実施形態と同様、内側放射素子部12inと、外側放射素子部12outを備えている。なお、図10中では、放射素子12aが備える内側放射素子部12in及び外側放射素子部12outと、放射素子12bが備える内側放射素子部12in及び外側放射素子部12outを、図6と同様に示している。
ループ線路10は、上述した第二実施形態と同様、内部ループ線路10inと、外側ループ線路10outを備えている。
【0058】
ここで、本実施形態では、上述した第二実施形態と異なり、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を挟んで対向する一対の外側放射素子部12out(例えば、一対の外側放射素子部12aout)を最短距離で結ぶ直線Lminが、平面視で、隣り合う二つの内側放射素子部12ain,12bin間を二等分した線Ldivと重なっている。
すなわち、一対の外側放射素子部12outを最短距離で結ぶ直線Lminと内側放射素子部12ainとのなす角度θ1と、直線Lminと内側放射素子部12binとのなす角度θ2は、θ1=θ2の関係を満足している。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0059】
(第三実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、一対の外側放射素子部12outを最短距離で結ぶ直線Lminが、平面視で、隣り合う二つの内側放射素子部12ain,12bin間を二等分した線Ldivと重なっている。
このため、クロスダイポールアンテナ4の構成、具体的には、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outとの位置関係を変化させても、二つのダイポールアンテナ8の対称性を維持することが可能となる。
その結果、クロスダイポールアンテナ4の構成を変化させても、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4を備えた非接触通信媒体1が、どの方向からでも安定性の高い通信距離における通信を行うことが可能となるとともに、クロスダイポールアンテナ4の設計自由度を向上させることが可能となる。
【0060】
(第四実施形態)
以下、本発明の第四実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図10を参照しつつ、図11及び図12を用いて、本実施形態の非接触通信媒体1の構成を説明する。
図11は、本実施形態の非接触通信媒体1の概略構成を示す平面図である。また、図12は、図11中に四角形XIIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
図11及び図12中に示すように、本実施形態の非接触通信媒体1は、クロスダイポールアンテナ4の構成、具体的には、ループ線路10の構成を除き、上述した第二実施形態と同様の構成であるため、以下の説明は、ループ線路10を中心に記載する。
【0061】
ループ線路10は、偶数個のループ接続部20と、内部ループ線路10inと、外側ループ線路10outを備えている。
ここで、本実施形態では、一例として、ループ線路10が、八個のループ接続部20を備えている場合について説明する。
各ループ接続部20は、例えば、板状の金属箔から形成されている。なお、各ループ接続部20は、内部ループ線路10inや外側ループ線路10outに対して、個別に成形したものを組み合わせてもよく、また、一体に成形してもよい。
ここで、本実施形態では、一例として、各ループ接続部20が、外側ループ線路10outと一体に成形されている場合について説明する。
【0062】
また、各ループ接続部20は、ループ線路10の周方向(路長の長さ方向)全体に沿って、等距離で離間している内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に、互いに離間して配置されており、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとを連結して、内部ループ線路10inの一部と外側ループ線路10outの一部とを接続して共用線路としている。
【0063】
内部ループ線路10inの構成は、上述した第二実施形態と同様である。
外側ループ線路10outは、各ループ接続部20により、平面視で分割されている。
具体的には、外側ループ線路10outは、八個のループ接続部20のうち二個一組のループ接続部20により、平面視で四分割されている。
また、外側ループ線路10outのうち、隣り合う二つのループ接続部20により分割される部分には、一つの外側放射素子部12outが接続されている。
その他の構成は、上述した第二実施形態と同様である。
【0064】
(第四実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ループ線路10が備える各ループ接続部20が、内部ループ線路10inの一部と外側ループ線路10outの一部とを接続して共用線路としている。これに加え、各ループ接続部20が、外側ループ線路10outを平面視で分割しており、外側ループ線路10outのうち隣り合う二つのループ接続部20により分割される部分には、一つの外側放射素子部12outが接続されている。
【0065】
このため、各ループ接続部20により、外側ループ線路10outの一部を内部ループ線路10inと一体化させることが可能となり、例えば、図13中に示すように、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスの値を大幅に増加させることが可能となる。
ここで、図13は、ループ接続部20の構成が異なる二種類のクロスダイポールアンテナ4に対する、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンス及び虚部インピーダンスを、それぞれ示す相関図である。
【0066】
また、図13中では、横軸に、ループ接続部20の構成が異なる二種類のクロスダイポールアンテナ4を示している。具体的には、横軸の左側に、上述した第二実施形態のクロスダイポールアンテナ4、すなわち、ループ接続部20の構成が、上述したループ接続部20を備えていない構成のクロスダイポールアンテナ4(ループ接続部無)を示している。同様に、横軸の右側に、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4、すなわち、ループ接続部20の構成が、上述したループ接続部20を備えている構成のクロスダイポールアンテナ4(ループ接続部有)を示している。
【0067】
また、図13中では、左側の縦軸にクロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを示し、右側の縦軸にクロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示している。
ここで、図13中には、ループ線路10の線幅Wを0.4[mm]とし、ループ線路10の路長を15[mm]とし、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18を0.3[mm]とした場合における、ループ接続部20の構成が異なる二種類のクロスダイポールアンテナ4に対する、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示している。
また、図13中では、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを示す点を、符号「○」により示し、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示す点を、符号「□」により示している。
【0068】
そして、図13中に示すように、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4は、上述した第二実施形態のクロスダイポールアンテナ4と比較して、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスの値を大幅、具体的には、約80[Ω]程度増加させることが可能となる。これに対し、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスの値は、約20[Ω]程度の減少に抑えることが可能となる。
その結果、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4であれば、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスの値を大幅に増加させることが可能となるとともに、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスの値の減少を抑制することが可能となる。
【0069】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、外側ループ線路10outを、各ループ接続部20により、平面視で分割したが、これに限定するものではなく、内側ループ線路10を、各ループ接続部20により、平面視で分割してもよい。
この場合、内部ループ線路10inのうち、隣り合う二つのループ接続部20により分割される部分には、一つの内側放射素子部12inが接続される。また、この場合、外部ループ線路10の構成は、上述した第二実施形態と同様とする。
【0070】
(第五実施形態)
以下、本発明の第五実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図13を参照しつつ、図14を用いて、本実施形態の非接触通信媒体1の構成を説明する。
図14は、本実施形態の非接触通信媒体1の概略構成を示す図であり、図14(a)は、非接触通信媒体1の概略構成を示す平面図、図14(b)は、図14(a)のB‐B線断面図である。
図14中に示すように、本実施形態の非接触通信媒体1は、クロスダイポールアンテナ4の構成を除き、上述した第二実施形態と同様の構成であるため、以下の説明は、クロスダイポールアンテナ4を中心に記載する。
【0071】
クロスダイポールアンテナ4は、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向に積層した複数の層で形成されている。
ここで、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4は、図14(b)中に示すように、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outが、複数の層のうち異なる層に形成されている。
具体的には、クロスダイポールアンテナ4は、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向に積層した三層構造で形成されている。
【0072】
そして、内側放射素子部12inは、基材6の一方の面(図14(b)中では基材6の下側の面)に形成されて、三層のうち最下層に形成されている。
また、外側放射素子部12outは、基材6の他方の面(図14(b)中では基材6の上側の面)に形成されて、三層のうち最上層に形成されている。
したがって、基材6は、三層のうち中間層を形成している。
ここで、本実施形態では、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outが、平面視及び側面視(図14(b)中で紙面と直交する方向からの視点)で、重なっていない構成とする。
その他の構成は、上述した第二実施形態と同様である。
【0073】
(第五実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、クロスダイポールアンテナ4を、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向に積層した複数の層で形成し、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outを、複数の層のうち異なる層に形成している。
このため、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの距離を、ループ線路10の周方向(路長の長さ方向)全体に亘って減少させることが可能となるとともに、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outが接触することを防止することが可能となる。
【0074】
その結果、クロスダイポールアンテナ4の設計時において、入力インピーダンスの調整幅を増加させることが可能となるとともに、入力インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となる。
また、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを増加させることが可能となるとともに、入力インピーダンスの安定性低下を抑制することが可能となる。
【0075】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例を列挙する。
(1)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outが、平面視及び側面視で重なっていない構成としたが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、図15中に示すように、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outが、平面視及び側面視で重なっている構成としてもよい。なお、図15は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0076】
(2)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、クロスダイポールアンテナ4を、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向に積層した三層構造で形成したが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、図16中に示すように、クロスダイポールアンテナ4を、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向に積層した五層構造で形成してもよい。なお、図16は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0077】
この場合、クロスダイポールアンテナ4は、内側放射素子部12inが一方の面(図16中では下側の面)に形成される内側基材6inと、内側放射素子部12inと、外側放射素子部12outが一方の面(図16中では上側の面)に形成される外側基材6outと、外側放射素子部12outと、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outとの間に形成されて、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outとを接着する粘着層22を備える構成とする。
なお、上記の粘着層22は、例えば、ポリエステルポリウレタン系接着剤等を材料として形成する。
【符号の説明】
【0078】
1 非接触通信媒体(インレット)
2 ICチップ
4 クロスダイポールアンテナ
6 基材
8 ダイポールアンテナ
10 ループ線路
10in 内部ループ線路
10out 外側ループ線路
12 放射素子
12in 内側放射素子部
12out 外側放射素子部
14 ポート
16 直線Lcpでクロスダイポールアンテナ4を等分した領域
18 内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間
20 ループ接続部
22 粘着層
Lcp 二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を通過する直線
W ループ線路10の線幅
Lmin 二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を挟んで対向する一対の外側放射素子部12outを最短距離で結ぶ直線
Ldiv 隣り合う二つの内側放射素子部12ain,12bin間を二等分した線
θ1 直線Lminと内側放射素子部12ainとのなす角度
θ2 直線Lminと内側放射素子部12binとのなす角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、指向性が少なく、読み取りが可能な方向が多いRFIDタグのアンテナデザインに関するものであり、特に、回路的に独立した複数対のポートを有するICチップに適用するクロスダイポールアンテナと、そのクロスダイポールアンテナを備えた非接触通信媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リーダライタとタグ(非接触通信媒体)との間における情報の通信を、無線高周波信号を用いて行うシステムとして、RFID(無線周波数ID:Radio Frequency IDentification)システムがある。
このようなRFIDシステムとしては、例えば、特許文献1に記載されているように、一対のダイポールアンテナを備えているものがある。
【0003】
特許文献1に記載されている、一対のダイポールアンテナは、互いに十字に交差する給電点から伸びた線路と、この線路を折り曲げた先に三角形状に広がる線路を有している。また、一対のダイポールアンテナのそれぞれの全長は、使用波長λのλ/2よりも長くなっている。
このような一対のダイポールアンテナを用いて形成されたRFIDタグは、リーダライタ側が、直線偏波アンテナを用いて形成された構成であっても、RFIDタグの向きに因らず、無指向に近い読み取り性能を有している。
【0004】
また、特許文献1に記載されているRFIDシステムでは、一対のダイポールアンテナの、給電点から伸びた線路に接続された導電バーを有しており、この導電バーが給電点から伸びた線路に接続される位置を調整することにより、インピーダンスの調整を行っている。ここで、上述した三角形状に広がる線路は、その中心部分をくり抜き、くり抜いた周辺部分の輪郭部に存在する導体で形成してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−324709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているRFIDシステムでは、例えば、インピーダンスの整合を取る場合等に、一対のダイポールアンテナに対し、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整が困難であるという問題がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能なクロスダイポールアンテナと、そのクロスダイポールアンテナを備えた非接触通信媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、平面視において、互いの中心点で交差する複数のダイポールアンテナを備えたクロスダイポールアンテナであって、
前記各ダイポールアンテナは、一方の端部が前記中心点でICチップに接続される一対の放射素子を備え、
平面視で前記中心点を無端形状に囲んで全ての前記放射素子を接続するループ線路を備え、
前記ループ線路は、予め設定した虚部インピーダンスに応じた線幅及び路長で形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記ループ線路は、前記中心点を無端形状に囲む内部ループ線路と、当該内部ループ線路の外周側を無端形状に囲む外側ループ線路と、を備え、
前記内部ループ線路及び前記外側ループ線路は、それぞれ、全ての前記放射素子を接続していることを特徴とするものである。
【0009】
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した発明であって、前記放射素子は、前記内部ループ線路よりも前記中心点に近い内側放射素子部と、前記外側ループ線路よりも前記中心点から遠い外側放射素子部と、を備え、
前記内部ループ線路は、全ての前記内側放射素子部を接続し、
前記外側ループ線路は、全ての前記外側放射素子部を接続し、
前記内部ループ線路と前記外側ループ線路との間には、前記中心点を無端形状に囲む隙間が形成されており、
前記隙間は、予め設定した実部インピーダンスに応じた間隔で形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した発明であって、前記ループ線路は、前記内部ループ線路の一部と前記外側ループ線路の一部とを接続して共用線路とする偶数個のループ接続部を備え、
前記内部ループ線路または前記外側ループ線路は、平面視で前記ループ接続部により分割され、
前記内部ループ線路のうち隣り合う二つの前記ループ接続部により分割される部分には、少なくとも一つの前記内側放射素子部が接続され、
前記外側ループ線路のうち隣り合う二つの前記ループ接続部により分割される部分には、少なくとも一つの前記外側放射素子部が接続されることを特徴とするものである。
【0011】
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項3または請求項4に記載した発明であって、前記中心点を挟んで対向する一対の前記外側放射素子部を最短距離で結ぶ直線は、平面視で隣り合う二つの前記内側放射素子部間を二等分した線と重なっていることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項3から請求項5のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記クロスダイポールアンテナは、前記複数のダイポールアンテナを配置した平面と直交する方向に積層した複数の層で形成され、
前記内側放射素子部と前記外側放射素子部は、前記複数の層のうち異なる層に形成されていることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項7に記載した発明は、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した発明であって、全ての前記放射素子は、平面視で同一形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
次に、本発明のうち、請求項8に記載した発明は、請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記ループ線路は、平面視で前記中心点を通過する複数本の直線で前記クロスダイポールアンテナを偶数等分した各領域において同一形状に形成されており、
前記各領域には、前記一対の放射素子のうち一方のみが配置されていることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項9に記載した発明は、請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載したクロスダイポールアンテナと、前記ICチップと、を備えたことを特徴とする非接触通信媒体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ループ線路の線幅及び路長を調節して形成することにより、クロスダイポールアンテナの虚部インピーダンスを、実部インピーダンスへの影響を最小限に抑えつつ、予め設定した虚部インピーダンスに調整することが可能となる。すなわち、実部インピーダンスの値の変化を最小限に抑えつつ、虚部インピーダンスを、優先的に、予め設定した値に調整することが可能となる。
これにより、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能なクロスダイポールアンテナと、そのクロスダイポールアンテナを備えた非接触通信媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態の非接触通信媒体の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1中に円IIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
【図3】図2中に円IIIで囲んだ範囲の拡大図であり、ICチップの詳細な構成を示す図である。
【図4】ループ線路の線幅及び路長と、クロスダイポールアンテナの実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示す相関図である。
【図5】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態の非接触通信媒体の概略構成を示す平面図である。
【図7】図6中に四角形VIIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
【図8】内部ループ線路と外側ループ線路との間に形成されている隙間と、クロスダイポールアンテナの実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示す相関図である。
【図9】本発明の第二実施形態の変形例を示す図である。
【図10】本発明の第三実施形態の非接触通信媒体の概略構成を示す平面図である。
【図11】本発明の第四実施形態の非接触通信媒体の概略構成を示す平面図である。
【図12】図11中に四角形XIIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
【図13】ループ接続部の構成が異なる二種類のクロスダイポールアンテナに対する、クロスダイポールアンテナの実部インピーダンス及び虚部インピーダンスを、それぞれ示す相関図である。
【図14】本発明の第五実施形態の非接触通信媒体の概略構成を示す図であり、図14(a)は、非接触通信媒体の概略構成を示す平面図、図14(b)は、図14(a)のB‐B線断面図である。
【図15】本発明の第五実施形態の変形例を示す図である。
【図16】本発明の第五実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
(非接触通信媒体の構成)
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態の非接触通信媒体1の構成を説明する。
図1は、本実施形態の非接触通信媒体1の概略構成を示す平面図である。また、図2は、図1中に円IIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
図1及び図2中に示すように、非接触通信媒体1(インレット)は、ICチップ2と、クロスダイポールアンテナ4を備えている。
【0016】
ここで、上記のインレットとは、クロスダイポールアンテナ4を構成する金属コイルにICチップ2を実装した状態を示すものであり、一般的な製品形態としては最も基本的なものである。また、上記のインレットでは、金属コイル(クロスダイポールアンテナ4)及びICチップ2は、剥き出しの状態となっている。
ICチップ2は、例えば、非接触通信媒体1の取り付け対象に関する情報を、記憶可能に形成されている。なお、非接触通信媒体1の取り付け対象とは、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)等である。ここで、非接触通信媒体1の取り付け対象をDVDとした場合、非接触通信媒体1の取り付け対象に関する情報は、DVDの商品名や価格等となる。
【0017】
ここで、本実施形態では、一例として、非接触通信媒体1の構成を、クロスダイポールアンテナ4及びICチップ2が、基材6上に形成されている構成とした場合について説明する。
なお、基材6は、例えば、PET(polyethylene terephthalate)及び粘着層から形成されている。
【0018】
(クロスダイポールアンテナ4の構成)
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3及び図4を用いて、クロスダイポールアンテナ4の構成について説明する。
クロスダイポールアンテナ4は、複数のダイポールアンテナ8と、ループ線路10を備えている。
ここで、本実施形態では、一例として、ダイポールアンテナ8の数を二つとした場合について説明する。
各ダイポールアンテナ8は、例えば、金属(Cu、Ag、Al等)箔等、導電性の材料で形成されており、ICチップ2と電気的に接続されている。なお、本実施形態では、一例として、金属箔により各ダイポールアンテナ8を形成した場合を説明する。
【0019】
また、各ダイポールアンテナ8は、平面視において、互いの中心点で交差している。
ここで、本実施形態では、二つのダイポールアンテナ8が、互いの中心点で直交、すなわち、90[°]の角度で交差している場合について説明する。
また、各ダイポールアンテナ8は、一対の放射素子12a,12bを備えている。
各放射素子12は、一方の端部が、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点でICチップ2に接続されている。
【0020】
ここで、クロスダイポールアンテナ4が備える全ての放射素子12、すなわち、四つの放射素子12は、それぞれ、図3中に示すように、ICチップ2が備える複数のポート14のうち、独立した個別のポート14に接続されている。
なお、図3は、図2中に円IIIで囲んだ範囲の拡大図であり、ICチップ2の詳細な構成を示す図である。また、図3中では、説明のために、放射素子12の図示を省略している。また、図3中では、二つのダイポールアンテナ8のうち一方が備える放射素子12a,12bを接続するポート14を、「ポート14a」と示し、二つのダイポールアンテナ8のうち他方が備える放射素子12a,12bを接続するポート14を、「ポート14b」と示している。
【0021】
また、各放射素子12は、両端部間に、メアンダ状に連続する部分を有している。
また、クロスダイポールアンテナ4が備える全ての放射素子12、すなわち、四つの放射素子12は、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向から見て、同一形状に形成されている。
ループ線路10は、平面視、すなわち、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向から見て、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲んでいる。
【0022】
また、ループ線路10は、クロスダイポールアンテナ4が備える全ての放射素子12、すなわち、四つの放射素子12を接続している。
ここで、本実施形態では、一例として、ループ線路10の形状を、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を全周から等距離で無端形状に囲む円環状とした場合について説明する。
【0023】
また、ループ線路10は、平面視で、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を通過する二本の直線Lcpでクロスダイポールアンテナ4を四等分した各領域16a〜16dにおいて、同一形状に形成されている。
ここで、二本の直線Lcpでクロスダイポールアンテナ4を四等分した各領域16a〜16dは、一対の放射素子12a,12bのうち、一方のみが配置されている領域である。また、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を通過する二本の直線Lcpと、放射素子12の両端部間を結ぶ直線とのなす角度は、45[°]である。
【0024】
ループ線路10の線幅及び路長は、予め設定した、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンス(虚部入力インピーダンス)に応じた値に設定されている。
ここで、本実施形態のように、クロスダイポールアンテナ4の構成が、一対(二つ)のダイポールアンテナ8を備えている構成の場合、クロスダイポールアンテナ4は、四つの端子(二対の端子)を有することとなる。
【0025】
この場合、上述した「クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンス」は、二対の端子のうち、一方の対における値(虚部インピーダンス)となる。ここで、一対(二つ)のダイポールアンテナ8、すなわち、交差するダイポールアンテナ8の形状が、同じ形状である場合は、二対の端子における値(虚部インピーダンス)は同じ値となる。これは、後述する「実部インピーダンス」に関しても同様である。また、端子の数(対)が二つ以上であっても同様である。
【0026】
ここで、ループ線路10の「線幅」とは、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向から見た、ループ線路10の幅であり、図1中では、符号「W」で示している。なお、図1中における、ループ線路10の幅Wと、例えば、ダイポールアンテナ8の幅等、ループ線路10と他の構成との大小関係は、実際の大小関係とは異なる場合がある。これは、以降の図においても同様である。
また、ループ線路10の「路長」とは、円環状に形成したループ線路10の円周である。
【0027】
以下、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、ループ線路10の線幅及び路長について説明する。
図4は、ループ線路10の線幅及び路長と、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示す相関図であり、図4(a)は、ループ線路10の線幅及び路長と、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスとの関係を示す相関図、図4(b)は、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスとの関係を示す相関図である。
【0028】
なお、図4(a)中では、横軸にループ線路10の路長(ループ線路の路長)を示し、縦軸にクロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを示している。同様に、図4(b)中では、横軸にループ線路10の路長(ループ線路の路長)を示し、縦軸にクロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示している。
図4(a)中に示すように、例えば、ループ線路10の線幅Wを0.3[mm]とした場合、ループ線路10の路長を10[mm]とすると、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスは、約19[Ω]程度となる。
【0029】
この場合、図4(b)中に示すように、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスは、約104[Ω]程度となる。
ここで、図4(a)中に示すように、例えば、ループ線路10の路長を15[mm]とすると、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスは、約21[Ω]程度となる。すなわち、ループ線路10の路長を10[mm]から15[mm]へ変化させた際の、実部インピーダンスの変化量は、約2[Ω]程度となる。
【0030】
この場合、図4(b)中に示すように、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスは、約155[Ω]程度となる。すなわち、ループ線路10の路長を10[mm]から15[mm]へ変化させた際の、虚部インピーダンスの変化量は、約51[Ω]程度となる。
したがって、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ループ線路10の路長の変化に伴う実部インピーダンスの値の変化量が、ループ線路10の路長の変化に伴う虚部インピーダンスの値の変化量と比較して小さくなる。このため、ループ線路10の路長を変化させる際に、実部インピーダンスの値の変化を最小限に抑えつつ、虚部インピーダンスを、優先的に、予め設定した値に調整することが可能となる。
【0031】
以上により、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4を形成する際には、例えば、約104[Ω]程度の虚部インピーダンスを得たい場合は、ループ線路10の線幅Wを0.3[mm]と設定するとともに、ループ線路10の路長を10[mm]と設定して、ループ線路10を形成する。
したがって、本実施形態では、予め設定した所望の虚部インピーダンスに応じて、ループ線路10の線幅及び路長の値を設定する。
【0032】
なお、図4中では、ループ線路10の線幅Wを0.3[mm]とした場合における、ループ線路10の路長の変化に応じた、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示す点を、符号「○」により示している。同様に、図4中では、ループ線路10の線幅Wを0.4[mm]とした場合における、ループ線路10の路長の変化に応じた、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示す点を、符号「□」により示している。また、図4中では、ループ線路10の線幅Wを0.5[mm]とした場合における、ループ線路10の路長の変化に応じた、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示す点を、符号「△」により示している。
【0033】
(第一実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、平面視で二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲み、さらに、全ての放射素子12を接続するループ線路10を、予め設定した虚部インピーダンスに応じた線幅W及び路長で形成する。
このため、ループ線路10の線幅W及び路長を調節して、クロスダイポールアンテナ4を形成することにより、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを、実部インピーダンスへの影響を最小限に抑えつつ、予め設定した虚部インピーダンスに調整することが可能となる。
【0034】
その結果、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能なクロスダイポールアンテナ4を提供することが可能となる。
さらに、ループ線路10の路長を変化させる際に、実部インピーダンスの値の変化を最小限に抑えつつ、虚部インピーダンスを、優先的に、予め設定した値に調整することが可能となる。
これにより、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能となるため、クロスダイポールアンテナ4の設計効率を向上させることが可能となる。
【0035】
(2)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、平面視において、互いの中心点で交差する二つのダイポールアンテナ8が、一方の端部がICチップ2に接続される一対の放射素子12a,12bを備えている。
このため、単一のダイポールアンテナ8に存在するヌル(null)点、すなわち、電波が放射しない方向であり、単一のダイポールアンテナ8の軸方向に相当する点に対する指向性を、交差する二つのダイポールアンテナ8で補完することが可能となる。
その結果、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4を備えた非接触通信媒体1に対し、どの方向からでもデータの読み取りが可能となり、非接触通信媒体1の運用効率を向上させることが可能となる。
【0036】
(3)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、全ての放射素子12が、平面視で同一形状に形成されている。
このため、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点から放射素子12の他方の端部(外周側の端部)へ向かう四方向に対して、各ダイポールアンテナ8の指向性が全て対称となり、指向性の歪みを減少させることが可能となる。
その結果、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4を備えた非接触通信媒体1は、どの方向からでも安定性の高い通信距離における通信を行うことが可能となる。
【0037】
(4)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ループ線路10が、平面視で、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を通過する二本の直線Lcpでクロスダイポールアンテナ4を四等分した各領域16a〜16dにおいて、同一形状に形成されている。これに加え、各領域16a〜16dには、一対の放射素子12a,12bのうち一方のみが配置されている。
このため、四等分した各領域16a〜16dのうち一つのみについて、ループ線路10及び放射素子12に対する解析及び計算を行うことにより、クロスダイポールアンテナ4全体の特性を予測することが可能となる。
その結果、クロスダイポールアンテナ4全体に対する解析及び計算を行うこと無く、クロスダイポールアンテナ4全体の特性を予測することが可能となるため、クロスダイポールアンテナ4の設計効率を向上させることが可能となる。
【0038】
(5)本実施形態の非接触通信媒体1では、ICチップ2と、全ての放射素子12を接続するループ線路10を、予め設定した虚部インピーダンスに応じた線幅W及び路長で形成したクロスダイポールアンテナ4を備えて、非接触通信媒体1を形成している。
このため、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能なクロスダイポールアンテナ4を用いて、非接触通信媒体1を形成することが可能となる。
その結果、設計効率を向上させることが可能な非接触通信媒体1を提供することが可能となる。
【0039】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例を列挙する。
(1)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、全ての放射素子12を、平面視で同一形状に形成したが、これに限定するものではなく、全ての放射素子12のうち少なくとも一つを、平面視で他の放射素子12と同一ではない形状に形成してもよい。
(2)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ループ線路10を、平面視で、各領域16a〜16dにおいて同一形状に形成したが、これに限定するものではない。すなわち、ループ線路10を、平面視で、各領域16a〜16dにおいて同一ではない形状に形成してもよい。
【0040】
(3)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ダイポールアンテナ8の数を二つとしたが、これに限定するものではなく、ダイポールアンテナ8の数は、三つ以上であってもよい。要は、ダイポールアンテナ8の数は、複数本であればよい。
ここで、例えば、ダイポールアンテナ8の数を三つとした場合、これら三つのダイポールアンテナ8が、互いの中心点で交差する角度は、60[°]とすることが好適である。
【0041】
また、例えば、ダイポールアンテナ8の数を三つとした場合、放射素子12の数は六つとなり、ループ線路10を同一形状に形成する際に等分する領域は、三つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向から見て、三つのダイポールアンテナ8が交差する中心点を通過する三本の直線でクロスダイポールアンテナ4を六等分した六個の領域16となる。この場合、三つのダイポールアンテナ8が交差する中心点を通過する三本の直線と、放射素子12の両端部間を結ぶ直線とのなす角度は、30[°]とすることが好適である。
【0042】
(4)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ループ線路10の形状を、円環状としたが、ループ線路10の形状は、これに限定するものではなく、例えば、三角形や四辺形、五角形以上の多角形状や、多数の凹凸を有する歯車形状としてもよい。要は、ループ線路10の形状は、平面視で複数のダイポールアンテナ8が交差する中心点を無端形状に囲むとともに、全ての放射素子12を接続する形状であればよい。
(5)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、放射素子12を、両端部間にメアンダ状に連続する部分を有する構成としたが、放射素子12の構成は、これに限定するものではなく、例えば、図5中に示すように、両端部間が直線状であり、全体として直線である構成としてもよい。なお、図5は、本実施形態の変形例を示す図である。
また、放射素子12の構成は、図5中に示す直線状以外にも、例えば、両端部間にのこぎり波状等に連続する部分、すなわち、メアンダ状以外の形状に連続する部分を有する構成であってもよい。
【0043】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図5を参照しつつ、図6から図8を用いて、本実施形態の非接触通信媒体1の構成を説明する。
図6は、本実施形態の非接触通信媒体1の概略構成を示す平面図である。また、図7は、図6中に四角形VIIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
図6及び図7中に示すように、本実施形態の非接触通信媒体1は、クロスダイポールアンテナ4の構成、具体的には、放射素子12及びループ線路10の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成であるため、以下の説明は、放射素子12及びループ線路10を中心に記載する。
【0044】
放射素子12は、内側放射素子部12inと、外側放射素子部12outを備えている。
内側放射素子部12inは、放射素子12のうち、後述する内部ループ線路10inよりも、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点に近い部分を形成している。なお、図6中では、放射素子12aが備える内側放射素子部12inを、「内側放射素子部12ain」と示し、放射素子12bが備える内側放射素子部12inを、「内側放射素子部12bin」と示している。
【0045】
外側放射素子部12outは、放射素子12のうち、後述する外側ループ線路10outよりも、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点から遠い部分を形成している。なお、図6中では、放射素子12aが備える外側放射素子部12outを、「外側放射素子部12aout」と示し、放射素子12bが備える外側放射素子部12outを、「外側放射素子部12bout」と示している。
【0046】
ここで、本実施形態では、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を挟んで対向する一対の外側放射素子部12out(例えば、一対の外側放射素子部12aout)を最短距離で結ぶ直線が、平面視で、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を挟んで対向する一対の内側放射素子部12inが、(例えば、一対の内側放射素子部12ain)と重なっている。
ループ線路10は、内部ループ線路10inと、外側ループ線路10outを備えている。
内部ループ線路10inは、円環状に形成されており、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を、無端形状に囲んでいる。
【0047】
また、内部ループ線路10inは、全ての内側放射素子部12inを接続している。
外側ループ線路10outは、内部ループ線路10inよりも大径の円環状に形成されており、内部ループ線路10inの外周側を、無端形状に囲んでいる。具体的には、外側ループ線路10outは、その内径が内部ループ線路10inの外径よりも大きくなるように形成されている。
【0048】
また、外側ループ線路10outは、全ての外側放射素子部12outを接続している。
また、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outは、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を基準として、互いに同心円となるように配置されている。
したがって、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outは、周方向全体に沿って、等距離で離間しており、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間には、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲む隙間18が形成されている。
内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成された、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲む隙間18は、予め設定した実部インピーダンスに応じた間隔で形成されている。
【0049】
以下、図1から図7を参照しつつ、図8を用いて、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18について説明する。
図8は、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18と、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示す相関図である。なお、図8中では、横軸に内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18(隙間)を示し、左側の縦軸にクロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを示し、右側の縦軸にクロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示している。
【0050】
ここで、図8中には、ループ線路10の線幅Wを0.4[mm]とし、ループ線路10の路長を15[mm]とした場合における、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18と、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示している。
図8中に示すように、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18を増加させると、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスは低下し、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスは増加する。
【0051】
なお、図8中では、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18の変化に応じた、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを示す点を、符号「○」により示している。同様に、図8中では、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18の変化に応じた、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示す点を、符号「□」により示している。
【0052】
ここで、図8中に示すように、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18を、例えば、約0.4[μm]増加させると、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスは、約15[Ω]程度減少し、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスは、約6[Ω]程度増加する。
すなわち、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4を形成する際には、実部インピーダンスの変動に対する虚部インピーダンスの変動が少ない状態で、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18の間隔を設定することが可能となる。
したがって、本実施形態では、予め設定した所望の実部インピーダンスに応じて、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18の間隔を設定する。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0053】
(第二実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲む隙間18を、予め設定した実部インピーダンスに応じた間隔で形成している。
このため、実部インピーダンスの変動に対する虚部インピーダンスの変動が少ない状態で、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18の間隔を設定することが可能となる。
【0054】
その結果、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能なクロスダイポールアンテナ4を提供することが可能となる。
また、実部インピーダンスと虚部インピーダンスの独立した調整を、容易に行うことが可能となるため、クロスダイポールアンテナ4の設計効率を向上させることが可能となる。
【0055】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、放射素子12の構成を、内側放射素子部12inと、外側放射素子部12outを備えた構成とし、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を無端形状に囲む隙間18を形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図9中に示すように、放射素子12の構成を、上述した第一実施形態と同様の構成とし、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outが、それぞれ、全ての放射素子12を接続している構成としてもよい。なお、図9は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0056】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図9を参照しつつ、図10を用いて、本実施形態の非接触通信媒体1の構成を説明する。
図10は、本実施形態の非接触通信媒体1の概略構成を示す平面図である。
図10中に示すように、本実施形態の非接触通信媒体1は、クロスダイポールアンテナ4の構成、具体的には、放射素子12及びループ線路10の構成を除き、上述した第二実施形態と同様の構成であるため、以下の説明は、放射素子12及びループ線路10を中心に記載する。
【0057】
放射素子12は、上述した第二実施形態と同様、内側放射素子部12inと、外側放射素子部12outを備えている。なお、図10中では、放射素子12aが備える内側放射素子部12in及び外側放射素子部12outと、放射素子12bが備える内側放射素子部12in及び外側放射素子部12outを、図6と同様に示している。
ループ線路10は、上述した第二実施形態と同様、内部ループ線路10inと、外側ループ線路10outを備えている。
【0058】
ここで、本実施形態では、上述した第二実施形態と異なり、二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を挟んで対向する一対の外側放射素子部12out(例えば、一対の外側放射素子部12aout)を最短距離で結ぶ直線Lminが、平面視で、隣り合う二つの内側放射素子部12ain,12bin間を二等分した線Ldivと重なっている。
すなわち、一対の外側放射素子部12outを最短距離で結ぶ直線Lminと内側放射素子部12ainとのなす角度θ1と、直線Lminと内側放射素子部12binとのなす角度θ2は、θ1=θ2の関係を満足している。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0059】
(第三実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、一対の外側放射素子部12outを最短距離で結ぶ直線Lminが、平面視で、隣り合う二つの内側放射素子部12ain,12bin間を二等分した線Ldivと重なっている。
このため、クロスダイポールアンテナ4の構成、具体的には、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outとの位置関係を変化させても、二つのダイポールアンテナ8の対称性を維持することが可能となる。
その結果、クロスダイポールアンテナ4の構成を変化させても、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4を備えた非接触通信媒体1が、どの方向からでも安定性の高い通信距離における通信を行うことが可能となるとともに、クロスダイポールアンテナ4の設計自由度を向上させることが可能となる。
【0060】
(第四実施形態)
以下、本発明の第四実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図10を参照しつつ、図11及び図12を用いて、本実施形態の非接触通信媒体1の構成を説明する。
図11は、本実施形態の非接触通信媒体1の概略構成を示す平面図である。また、図12は、図11中に四角形XIIで囲んだ範囲及びその周辺の拡大図である。
図11及び図12中に示すように、本実施形態の非接触通信媒体1は、クロスダイポールアンテナ4の構成、具体的には、ループ線路10の構成を除き、上述した第二実施形態と同様の構成であるため、以下の説明は、ループ線路10を中心に記載する。
【0061】
ループ線路10は、偶数個のループ接続部20と、内部ループ線路10inと、外側ループ線路10outを備えている。
ここで、本実施形態では、一例として、ループ線路10が、八個のループ接続部20を備えている場合について説明する。
各ループ接続部20は、例えば、板状の金属箔から形成されている。なお、各ループ接続部20は、内部ループ線路10inや外側ループ線路10outに対して、個別に成形したものを組み合わせてもよく、また、一体に成形してもよい。
ここで、本実施形態では、一例として、各ループ接続部20が、外側ループ線路10outと一体に成形されている場合について説明する。
【0062】
また、各ループ接続部20は、ループ線路10の周方向(路長の長さ方向)全体に沿って、等距離で離間している内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に、互いに離間して配置されており、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとを連結して、内部ループ線路10inの一部と外側ループ線路10outの一部とを接続して共用線路としている。
【0063】
内部ループ線路10inの構成は、上述した第二実施形態と同様である。
外側ループ線路10outは、各ループ接続部20により、平面視で分割されている。
具体的には、外側ループ線路10outは、八個のループ接続部20のうち二個一組のループ接続部20により、平面視で四分割されている。
また、外側ループ線路10outのうち、隣り合う二つのループ接続部20により分割される部分には、一つの外側放射素子部12outが接続されている。
その他の構成は、上述した第二実施形態と同様である。
【0064】
(第四実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、ループ線路10が備える各ループ接続部20が、内部ループ線路10inの一部と外側ループ線路10outの一部とを接続して共用線路としている。これに加え、各ループ接続部20が、外側ループ線路10outを平面視で分割しており、外側ループ線路10outのうち隣り合う二つのループ接続部20により分割される部分には、一つの外側放射素子部12outが接続されている。
【0065】
このため、各ループ接続部20により、外側ループ線路10outの一部を内部ループ線路10inと一体化させることが可能となり、例えば、図13中に示すように、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスの値を大幅に増加させることが可能となる。
ここで、図13は、ループ接続部20の構成が異なる二種類のクロスダイポールアンテナ4に対する、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンス及び虚部インピーダンスを、それぞれ示す相関図である。
【0066】
また、図13中では、横軸に、ループ接続部20の構成が異なる二種類のクロスダイポールアンテナ4を示している。具体的には、横軸の左側に、上述した第二実施形態のクロスダイポールアンテナ4、すなわち、ループ接続部20の構成が、上述したループ接続部20を備えていない構成のクロスダイポールアンテナ4(ループ接続部無)を示している。同様に、横軸の右側に、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4、すなわち、ループ接続部20の構成が、上述したループ接続部20を備えている構成のクロスダイポールアンテナ4(ループ接続部有)を示している。
【0067】
また、図13中では、左側の縦軸にクロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを示し、右側の縦軸にクロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示している。
ここで、図13中には、ループ線路10の線幅Wを0.4[mm]とし、ループ線路10の路長を15[mm]とし、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間18を0.3[mm]とした場合における、ループ接続部20の構成が異なる二種類のクロスダイポールアンテナ4に対する、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンス及び虚部インピーダンスとの関係を示している。
また、図13中では、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを示す点を、符号「○」により示し、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスを示す点を、符号「□」により示している。
【0068】
そして、図13中に示すように、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4は、上述した第二実施形態のクロスダイポールアンテナ4と比較して、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスの値を大幅、具体的には、約80[Ω]程度増加させることが可能となる。これに対し、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスの値は、約20[Ω]程度の減少に抑えることが可能となる。
その結果、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4であれば、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスの値を大幅に増加させることが可能となるとともに、クロスダイポールアンテナ4の虚部インピーダンスの値の減少を抑制することが可能となる。
【0069】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、外側ループ線路10outを、各ループ接続部20により、平面視で分割したが、これに限定するものではなく、内側ループ線路10を、各ループ接続部20により、平面視で分割してもよい。
この場合、内部ループ線路10inのうち、隣り合う二つのループ接続部20により分割される部分には、一つの内側放射素子部12inが接続される。また、この場合、外部ループ線路10の構成は、上述した第二実施形態と同様とする。
【0070】
(第五実施形態)
以下、本発明の第五実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図13を参照しつつ、図14を用いて、本実施形態の非接触通信媒体1の構成を説明する。
図14は、本実施形態の非接触通信媒体1の概略構成を示す図であり、図14(a)は、非接触通信媒体1の概略構成を示す平面図、図14(b)は、図14(a)のB‐B線断面図である。
図14中に示すように、本実施形態の非接触通信媒体1は、クロスダイポールアンテナ4の構成を除き、上述した第二実施形態と同様の構成であるため、以下の説明は、クロスダイポールアンテナ4を中心に記載する。
【0071】
クロスダイポールアンテナ4は、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向に積層した複数の層で形成されている。
ここで、本実施形態のクロスダイポールアンテナ4は、図14(b)中に示すように、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outが、複数の層のうち異なる層に形成されている。
具体的には、クロスダイポールアンテナ4は、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向に積層した三層構造で形成されている。
【0072】
そして、内側放射素子部12inは、基材6の一方の面(図14(b)中では基材6の下側の面)に形成されて、三層のうち最下層に形成されている。
また、外側放射素子部12outは、基材6の他方の面(図14(b)中では基材6の上側の面)に形成されて、三層のうち最上層に形成されている。
したがって、基材6は、三層のうち中間層を形成している。
ここで、本実施形態では、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outが、平面視及び側面視(図14(b)中で紙面と直交する方向からの視点)で、重なっていない構成とする。
その他の構成は、上述した第二実施形態と同様である。
【0073】
(第五実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を記載する。
本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、クロスダイポールアンテナ4を、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向に積層した複数の層で形成し、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outを、複数の層のうち異なる層に形成している。
このため、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの距離を、ループ線路10の周方向(路長の長さ方向)全体に亘って減少させることが可能となるとともに、内部ループ線路10inと外側ループ線路10outが接触することを防止することが可能となる。
【0074】
その結果、クロスダイポールアンテナ4の設計時において、入力インピーダンスの調整幅を増加させることが可能となるとともに、入力インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となる。
また、クロスダイポールアンテナ4の実部インピーダンスを増加させることが可能となるとともに、入力インピーダンスの安定性低下を抑制することが可能となる。
【0075】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例を列挙する。
(1)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outが、平面視及び側面視で重なっていない構成としたが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、図15中に示すように、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outが、平面視及び側面視で重なっている構成としてもよい。なお、図15は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0076】
(2)本実施形態のクロスダイポールアンテナ4では、クロスダイポールアンテナ4を、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向に積層した三層構造で形成したが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、図16中に示すように、クロスダイポールアンテナ4を、二つのダイポールアンテナ8を配置した平面と直交する方向に積層した五層構造で形成してもよい。なお、図16は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0077】
この場合、クロスダイポールアンテナ4は、内側放射素子部12inが一方の面(図16中では下側の面)に形成される内側基材6inと、内側放射素子部12inと、外側放射素子部12outが一方の面(図16中では上側の面)に形成される外側基材6outと、外側放射素子部12outと、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outとの間に形成されて、内側放射素子部12inと外側放射素子部12outとを接着する粘着層22を備える構成とする。
なお、上記の粘着層22は、例えば、ポリエステルポリウレタン系接着剤等を材料として形成する。
【符号の説明】
【0078】
1 非接触通信媒体(インレット)
2 ICチップ
4 クロスダイポールアンテナ
6 基材
8 ダイポールアンテナ
10 ループ線路
10in 内部ループ線路
10out 外側ループ線路
12 放射素子
12in 内側放射素子部
12out 外側放射素子部
14 ポート
16 直線Lcpでクロスダイポールアンテナ4を等分した領域
18 内部ループ線路10inと外側ループ線路10outとの間に形成されている隙間
20 ループ接続部
22 粘着層
Lcp 二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を通過する直線
W ループ線路10の線幅
Lmin 二つのダイポールアンテナ8が直交する中心点を挟んで対向する一対の外側放射素子部12outを最短距離で結ぶ直線
Ldiv 隣り合う二つの内側放射素子部12ain,12bin間を二等分した線
θ1 直線Lminと内側放射素子部12ainとのなす角度
θ2 直線Lminと内側放射素子部12binとのなす角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において、互いの中心点で交差する複数のダイポールアンテナを備えたクロスダイポールアンテナであって、
前記各ダイポールアンテナは、一方の端部が前記中心点でICチップに接続される一対の放射素子を備え、
平面視で前記中心点を無端形状に囲んで全ての前記放射素子を接続するループ線路を備え、
前記ループ線路は、予め設定した虚部インピーダンスに応じた線幅及び路長で形成されていることを特徴とするクロスダイポールアンテナ。
【請求項2】
前記ループ線路は、前記中心点を無端形状に囲む内部ループ線路と、当該内部ループ線路の外周側を無端形状に囲む外側ループ線路と、を備え、
前記内部ループ線路及び前記外側ループ線路は、それぞれ、全ての前記放射素子を接続していることを特徴とする請求項1に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項3】
前記放射素子は、前記内部ループ線路よりも前記中心点に近い内側放射素子部と、前記外側ループ線路よりも前記中心点から遠い外側放射素子部と、を備え、
前記内部ループ線路は、全ての前記内側放射素子部を接続し、
前記外側ループ線路は、全ての前記外側放射素子部を接続し、
前記内部ループ線路と前記外側ループ線路との間には、前記中心点を無端形状に囲む隙間が形成されており、
前記隙間は、予め設定した実部インピーダンスに応じた間隔で形成されていることを特徴とする請求項2に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項4】
前記ループ線路は、前記内部ループ線路の一部と前記外側ループ線路の一部とを接続して共用線路とする偶数個のループ接続部を備え、
前記内部ループ線路または前記外側ループ線路は、平面視で前記ループ接続部により分割され、
前記内部ループ線路のうち隣り合う二つの前記ループ接続部により分割される部分には、少なくとも一つの前記内側放射素子部が接続され、
前記外側ループ線路のうち隣り合う二つの前記ループ接続部により分割される部分には、少なくとも一つの前記外側放射素子部が接続されることを特徴とする請求項3に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項5】
前記中心点を挟んで対向する一対の前記外側放射素子部を最短距離で結ぶ直線は、平面視で隣り合う二つの前記内側放射素子部間を二等分した線と重なっていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項6】
前記クロスダイポールアンテナは、前記複数のダイポールアンテナを配置した平面と直交する方向に積層した複数の層で形成され、
前記内側放射素子部と前記外側放射素子部は、前記複数の層のうち異なる層に形成されていることを特徴とする請求項3から請求項5のうちいずれか1項に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項7】
全ての前記放射素子は、平面視で同一形状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項8】
前記ループ線路は、平面視で前記中心点を通過する複数本の直線で前記クロスダイポールアンテナを偶数等分した各領域において同一形状に形成されており、
前記各領域には、前記一対の放射素子のうち一方のみが配置されていることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載したクロスダイポールアンテナと、前記ICチップと、を備えたことを特徴とする非接触通信媒体。
【請求項1】
平面視において、互いの中心点で交差する複数のダイポールアンテナを備えたクロスダイポールアンテナであって、
前記各ダイポールアンテナは、一方の端部が前記中心点でICチップに接続される一対の放射素子を備え、
平面視で前記中心点を無端形状に囲んで全ての前記放射素子を接続するループ線路を備え、
前記ループ線路は、予め設定した虚部インピーダンスに応じた線幅及び路長で形成されていることを特徴とするクロスダイポールアンテナ。
【請求項2】
前記ループ線路は、前記中心点を無端形状に囲む内部ループ線路と、当該内部ループ線路の外周側を無端形状に囲む外側ループ線路と、を備え、
前記内部ループ線路及び前記外側ループ線路は、それぞれ、全ての前記放射素子を接続していることを特徴とする請求項1に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項3】
前記放射素子は、前記内部ループ線路よりも前記中心点に近い内側放射素子部と、前記外側ループ線路よりも前記中心点から遠い外側放射素子部と、を備え、
前記内部ループ線路は、全ての前記内側放射素子部を接続し、
前記外側ループ線路は、全ての前記外側放射素子部を接続し、
前記内部ループ線路と前記外側ループ線路との間には、前記中心点を無端形状に囲む隙間が形成されており、
前記隙間は、予め設定した実部インピーダンスに応じた間隔で形成されていることを特徴とする請求項2に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項4】
前記ループ線路は、前記内部ループ線路の一部と前記外側ループ線路の一部とを接続して共用線路とする偶数個のループ接続部を備え、
前記内部ループ線路または前記外側ループ線路は、平面視で前記ループ接続部により分割され、
前記内部ループ線路のうち隣り合う二つの前記ループ接続部により分割される部分には、少なくとも一つの前記内側放射素子部が接続され、
前記外側ループ線路のうち隣り合う二つの前記ループ接続部により分割される部分には、少なくとも一つの前記外側放射素子部が接続されることを特徴とする請求項3に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項5】
前記中心点を挟んで対向する一対の前記外側放射素子部を最短距離で結ぶ直線は、平面視で隣り合う二つの前記内側放射素子部間を二等分した線と重なっていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項6】
前記クロスダイポールアンテナは、前記複数のダイポールアンテナを配置した平面と直交する方向に積層した複数の層で形成され、
前記内側放射素子部と前記外側放射素子部は、前記複数の層のうち異なる層に形成されていることを特徴とする請求項3から請求項5のうちいずれか1項に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項7】
全ての前記放射素子は、平面視で同一形状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項8】
前記ループ線路は、平面視で前記中心点を通過する複数本の直線で前記クロスダイポールアンテナを偶数等分した各領域において同一形状に形成されており、
前記各領域には、前記一対の放射素子のうち一方のみが配置されていることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載したクロスダイポールアンテナ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載したクロスダイポールアンテナと、前記ICチップと、を備えたことを特徴とする非接触通信媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−95226(P2012−95226A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242612(P2010−242612)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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