説明

クロストリジウム・ディフィシルに収束された抗体

本発明は、C.ディフィシルによる感染に特異的なおよびその感染またはワクチンに対する免疫を付与する抗体、それを同定する方法、医薬の製造方法、およびそれを使用する患者の処置方法に関する。同じく、患者にワクチン接種する方法、診断用試験方法、および診断用試験キットと共に、ワクチンの有効性を決定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロストリジウム・ディフィシルによる感染に特異的なおよびそれに対する免疫を付与する抗体またはC.ディフィシルに基づくワクチンでのチャレンジ後に生成された抗体、それを同定する方法、およびそれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
C.ディフィシルは、グラム陽性の嫌気性細菌であり、中程度の下痢から劇症の偽膜性大腸炎(PMC)の範囲の−総称して、C.ディフィシル抗生物質関連下痢(CDAD)と称される一連の疾患を引き起こす重要なヒト病原菌と考えられている。CDADは、特に高齢者において、かなりの罹患率および死亡率を伴う、一般的で、医原性の院内疾患である。二つの要因、抗生物質の投与による常在腸内細菌叢の抑制およびその細菌による2種の高分子量毒素、毒素Aおよび毒素Bの生成が、CDADの病原性において主要な役割を果たしているとされている。
【0003】
その細菌は、病院内に特有のものであり、研究では、急性期治療用病棟において抗生物質処置を受けた患者の約3分の1が、病院にいる間に、C.ディフィシルに感染することが示されている(Kyne, L.ら、2002, Clin. Infect. Dis. 34(3), pp346-53, PMID: 11774082)。これらの患者のうち、半数以上がCDADを発症し、残りは、症状のない保菌者であった。CDADは、患者の病院滞在時間を延長させる主要な要因であり、米国におけるこの疾患のコストは、十一億ドル/年を超えると推定されている(Kyne, L.ら、上記文献)。CDADを患う患者は、誘因抗生物質の中断と抗生物質メトロニダゾールおよびバンコマイシンの何れかでの処置を含む処置によく反応する。しかしながら、バンコマイシン等の使用は、いくつかの問題を伴うため、最後の手段の一つである。腎毒性、耳毒性、骨髄毒性、およびレッドマン(red man)症候群を引き起こすのみならず、この処置法での問題は、初期の発症を成功裡に処置したのちに、CDADがしばしば再発することであり、この再発は、重大な臨床上の問題を提起する。加えて、C.ディフィシルはメトロニダゾールに耐性になりつつあり、またバンコマイシンに対して一部耐性になりつつあるという兆候があり、CDADの処置において新規な代替法が必要であることを示している。
【0004】
その細菌の病原性株により生成される外毒素AおよびBは、細胞毒性、腸管毒性、および炎症性であり、この非侵襲性微生物の主要な病原性の要因であると考えられる。しかしながら、毒素産生株での感染が全て疾患を発症するものではなく、さらなる病原性要因の探索が推進されている。細菌表面に発現した抗原は、病原性要因の候補を提示し、また、そのようなタンパク質は、コロニー形成の第一ステップにおける腸の上皮層への接着または局所免疫のメディエーターとの相互作用等の必須の機能をおそらくは仲介するため、重要であると考えられている。他の多くの細菌に共通して、C.ディフィシルは、外側の細胞表面上で結晶性またはパラ結晶性表面層(S層)を発現する。そのようなS層は、細菌の外表面上に規則的に配列した格子を形成するタンパク質または糖タンパク質を含み、また、アエロマナス・サルモニシダ(Aeromanas salmonicida)およびカンピロバクター・フェタス(Campylobacter fetus)等の病原菌の病原性に必須であることが既に示されている。一つのS層を含む大部分の細菌とは対照的に、C.ディフィシルは、C.ディフィシル株の間で見かけ上の分子量が各々若干異なる糖タンパク質からなる、2種の重ね合わせられたパラ結晶性S層を含むことが知られている。C.ディフィシルの大部分の株は、32〜38kDaのもの(低分子量SLP)と42〜48kDaの二番目のもの(高分子量SLP)2個の主たるS層タンパク質(SLPs)を発現する。低分子量SLPは、免疫優位であるようであり、CDADを患う患者に最も一般的に認められる抗原であり、全C.ディフィシル細胞に対してウサギ中で育てられた抗血清による細菌のEDTA抽出物中で認められる唯一の抗原である(Calabi, E.ら、2001, Mol. Microbiol., 40(5) p1187-99, PMID: 11401722)。
【0005】
微生物感染の過程において、免疫系により種々の順応方策が用いられる。そのような方策の一つであって、おそらく間違いなく最も重要なものは、抗体応答の生成である。病原菌により提示される抗原を結合しうる抗体が生成され、結合し、補足活性化、マクロファージの動員、および微生物それ自体との直接的相互作用を介して微生物が殺される。所与の抗原を結合しうる抗体の治療有効性は変動し、これは、免疫系による抗体生成は、感染の過程で成熟し、感染を成功裡に撃退した患者の場合には、収束(focussed)されるという事実に反映される。
【0006】
抗体応答は、個々のB細胞は各々構造的に異なった抗体分子を生成するB細胞レパートリーにより発現される。このB細胞/抗体レパートリーの実際のサイズは未知であるが、所与の抗原に対する反応性のランダムクローナル頻度は、培養B細胞中、1/100,000中程度である(Nobrega, A.ら、Eur J Immunol. 1998 Apr;28(4):1204-15; PMID: 9565360)。感染の過程で、病原菌と結合しうる抗体は、多数生成される鍵抗体をもたらすB細胞集団における変化により、選択される。これらの変化の機構は、クローン性拡大、イソ型スィッチング、および免疫グロブリン可変領域の体細胞変異を包含する。病原体と多重に結合しうる抗体の発生をもたらすB細胞、B細胞レパートリーを歪曲させ、B細胞の比率を変化させる。
【0007】
C.ディフィシル感染症の処置/予防に対する抗生物質に基づかない治療法は、ワクチン接種および受動免疫化に基づく。ワクチン接種処置は、C.ディフィシル表面層タンパク質もしくは変異株もしくは同族体の免疫原性フラグメントをコードする核酸配列または(WO02/062379に開示のような)均等なポリペプチドフラグメントのいずれかを患者に投与することを含む。受動的免疫化は、病原体により生成される免疫原に特異的なモノクローナル抗体を患者に投与することにより、通常、達成される。一般に、(受動免疫治療は、ワクチン接種に応答できない免疫不全の患者および直ちに治療する必要がありワクチン接種の効果を待つことができない患者を処置するのに特に有効である。C.ディフィシル感染の場合には、(WO99/2030.4に開示のような)毒素中和ポリクローナル免疫グロブリンのまたは(WO96/07430に開示のような)細菌全体と毒素に対して育てられた抗体の患者への投与による。
【0008】
このように、従来技術から見ることができるように、患者を処置するために、免疫原をまず単離精製し、試験動物に投与し、免疫原に特異的な抗体を生成する細胞をクローン化する。次いで、そのクローンにより生成される抗体の範囲を、それらの治療有効性について試験し、選択された単一のモノクローナル抗体を、次いで、患者に投与して受動免疫治療を行う。
【0009】
しかしながら、C.ディフィシル感染を処置することを目的とする現在の受動免疫治療に伴ういくつかの問題がある。例えば、受動免疫治療は、C.ディフィシル感染の生存者およびワクチン接種された患者が存在することが必要とされる。各々のバッチの抗体は異なる可能性があり、免疫治療剤の標準化と投与に困難が伴う。さらに、外因性の病因物質(例えば、HIV、HBV、HCV,または未同定病因物質)の患者への不注意による投与の問題が現実的なものであり、最新の免疫治療剤のスクリーニングが必要である。最後に、C.ディフィシルが示す株の可変性は、所与の抗体がその菌のある株に対してのみ有用であり、他のものに対しては有用でないことを意味する。
【0010】
明らかに、含まれる技術はやや複雑で、不便で、費用がかかり、時間のかかるものである。一般に、それらは、免疫原を感染している病原体から単離して、抗体を発生させるために使用される。本当に、免疫原の単離は、特にそれが、生体外では合成できずかつ例えば、ワクチンとして使用するための抗原として単離および生成できない炭水化物または複合体非直鎖状エピトープ(すなわち、二級、三級および/または四級構造特徴を有するエピトープ)を含んでなる場合に、極めて困難で時間がかかる。C.ディフィシルのSLPは、種の間で分子量が異なる糖タンパク質を含む。例えば、特定の抗原が宿主の感染によってのみ発現されるネイセリア・ゴノルホエア(Neisseria gonorrhoeae)感染(淋病の病因菌)と一致して、C.ディフィシルエピトープは生体内でのみ生成され、生体外では合成されないということである。そのような抗原は、クリプト抗原の一般綱に分類される。さらに、C.ディフィシルは、抗原が使用中に簡単に分解し且つそれらが表示するエピトープが失われるので、作動しがたい非常に不安定な抗原を表示する。同定および/または生体内使用が非常に困難であるかあるいは不可能であるエピトープ/抗原のこの範囲について、本発明はこれらの欠点を克服するものであり、C.ディフィシルに感染した患者の抗体応答中にCDR領域がC.ディフィシルエピトープに応答して発生した抗体を提供することにより、解決をもたらすものである。
【0011】
さらに、従来技術は、一般に、抗原に特異的な一連の候補抗体をまず合成し、それらをそれらの結合特性について試験し、次いで、結合を最適化するために、候補の配列を改変することにより、抗体の親和性成熟の均等物を獲得しようとする必要がある。親和性成熟(すなわち、抗体結合の最適化)の完全な試みは、数千の様々な抗体を合成することを必要とし、それはこすとがかかり、また時間のかかることである。本発明の抗体は、抗原を提示する病原体で感染されたあるいは抗原でワクチン接種された患者から得られるので、全く当然のことながら、可変重鎖および可変軽鎖のそれらのCDR3領域(すなわち、CDR−H3およびCDR−L3領域)の配列により最も明確に示されるように、それらは既に親和性成熟を受けている。
【特許文献1】WO02/062379
【特許文献2】WO99/2030.4
【特許文献3】WO96/07430
【非特許文献1】Kyne, L.らの論文、2002, Clin. Infect. Dis. 34(3), pp346-53, PMID: 11774082
【非特許文献2】Calabi, E. らの論文、2001, Mol. Microbiol., 40(5) p1187-99, PMID: 11401722
【非特許文献3】Nobrega, A. らの論文、Eur J Immunol. 1998 Apr;28(4):1204-15; PMID: 9565360
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明により、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、および配列番号31よりなる群から選択されるCDR−H3配列を有する抗体またはその抗原結合性フラグメントが提供される。
【0013】
本発明により、また、配列番号32、配列番号33、および配列番号34よりなる群から選択されるCDR−L3配列を有する抗体またはその抗原結合性フラグメントが提供される。
【0014】
本発明により、同じく、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、および配列番号31よりなる群から選択されるCDR−H3配列ならびに配列番号32、配列番号33、および配列番号34よりなる群から選択されるCDR−L3配列を有する抗体またはその抗原結合性フラグメントが提供される。
【0015】
本発明により、また、感染中にクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)により生成される少なくとも一つの抗原に対してまたはワクチンに対して特異的な抗体の少なくともCDR3領域の候補配列の同定方法であって、
(i)クロストリジウム・ディフィシルに感染したまたはそのワクチンを投与された少なくとも一人の患者から単離されたB細胞で、そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の少なくともCDR3領域を配列決定する工程;ならびに
(ii)その少なくとも一人の患者からのそのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の配列決定された少なくともCDR3領域を関連付けて、クロストリジウム・ディフィシルにより生成される少なくとも一つの抗原に対してまたはワクチンに対して特異的な抗体の少なくともCDR3領域の一連の候補配列を同定する工程であって、その一連の候補CDR3配列の各々またはそれと少なくとも80%の相同性を有する配列が、工程(i)で決定された一連の配列において全体で少なくとも1%の頻度で出現する工程;
を含んでなる方法が提供される。
【0016】
そのような方法において、そのような方法においてB細胞源として使用される患者の例は、ヒトおよび他の動物、例えば、マウス、ウサギ、ラット、ヒヒ、サル、および類人猿である。
【0017】
本発明のある実施態様においては、工程(i)は、
(i)(a)クロストリジウム・ディフィシルに感染したまたはそのワクチンを投与された少なくとも一人の患者からB細胞を単離する工程;および
(ii)(b)そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の少なくともCDR3領域を配列決定する工程;
を含んでなる。
【0018】
工程(i)で決定された一連の配列において、全体として少なくとも1%の頻度で出現する配列が、候補CDR3配列またはそれと少なくとも80%の相同性、例えば85,90、95、96、97,98または99%の相同性を有する配列である。配列の相同性は、初期値のパラメーターでNational Center for Biotechnology Information, USA (www.ncbi.nlm.nih.gov)でのBLAST2プログラム(Tatusova TAら、FEMS Microbiol Lett. 1999 May 15; 174(2); 247-50; PMID: 10339815)を用いて決定される。
【0019】
例えば、工程(i)で決定された一連の配列において、全体として少なくとも1%の頻度で出現する配列が、候補CDR3配列またはそれから1または2アミノ酸が変化した配列である。一般に、主要な配列の頻度が80%より大きい相同性を示す任意の配列の頻度と共に加算され、1%以上の頻度を示す任意の配列が候補配列とされる。例えば、第一の配列が0.7%の頻度で出現し、それから単一のアミノ酸が各々変化した第一、第二、第三および第四配列がそれぞれ0.1%の頻度で出現し、したがって、全体の出現が1.1%であると、(0.7%の頻度で出現する)主要な抗体配列が、それ故、候補CDR3配列である。
【0020】
これは、抗体が選別により単離され、構造特異的な及び電荷特異的な状態で特定の(公知の)抗原と結合することを要する、ファージライブラリー等のベクター中の抗体のライブラリーを作製する従来技術の方法とは、根本的に異なる。その二つを比較することができる共通点は、ライブラリーの従来技術の作成方法と引き続く選別は、図書館に行き、本を取り出し、それが正しいものであることを願うようなものであると言えよう。比較して、本発明は、図書館に行き、図書館の全ての本を読み、一つの本が主要であること、つまり、その多数のコピーが存在すること、それが処置すべき疾患に関連すること、を見つけ出すようなものである。
【0021】
さらに、ライブラリーシステムの従来技術の使用は、多くの問題を有し、特に、ライブラリーで生成されたいくつかの抗体は、それらを発現する有機体の死を招く可能性があり、従って、簡単に検出することができない。これは、例えば、癌に特異的な抗体を探索する場合には特別な問題ではないが、宿主発現系(例えば、大腸菌)で生成されるものに相同的でありうる病原体からの抗原に特異的な抗体を探索する場合、重要な抗体は発現できない。例えば、大腸菌を例えばヒト交代のライブラリーを発現させるために使用すると、同じく、コドン使用法の問題、特定のアミノ酸に対してヒトで使用されるコドンは、しばしば、大腸菌または他の宿主系における同じアミノ酸に対して最適のものではないということに苦しむ。このことは、その配列中のコドンは大腸菌中では極めて非効率的であるので大腸菌中では読み通すことおよび完全に発現することが不可能であるため、重要な抗体は発現されない(あるいは少なくとも十分な量では発現されない)であろうことを意味する。ライブラリーをまず最初に配列決定しなくてはならないため、抗体ライブラリーのコドン最適化は明らかにオプションではなく、さもないとライブラリー使用の主たる長所を無効にしてしまう。本発明は患者から直接の抗体を配列決定するので、この問題を回避する。
【0022】
その関係付け工程(ii)は、クロストリジウム・ディフィシルに感染していないまたはそのワクチンを投与されていない患者での候補配列の出現に対する候補配列の出現を関連付けるものであり、非感染/ワクチン接種患者においてある配列またはそれらに対して80%の相同性を有する配列が全体として1%未満の頻度で出現する場合にのみ、その配列は候補配列であると決定される。
【0023】
微生物により生成される少なくとも一つの抗原が、当然のことながら、免疫原でありうる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、以前には入手できなかった感染に対する抗体応答を理解するユニークな機会を提供し、かつ、新規な診断機会および治療機会を提供する。
【0025】
特に、本発明の方法は、C.ディフィシルから抗原を単離する必要を回避するので、複雑な非直鎖状のエピトープ、炭水化物を含むエピトープ、またはクリプト抗原の同定に伴う困難を回避する。代わりに、その方法は、菌により生成される1以上の抗原に特異的な抗体の同定の決定を容易にする。以下に説明するように、本発明の方法は、治療上有効な抗体の同定を可能にし、且つ、抗体配列の最も重要な部分の同定を可能にする。所与の患者のB細胞がC.ディフィシルでの感染の過程での様々な時点でサンプリングされ、患者の免疫システムが菌に対する治療上有効量の抗体が産生されることに焦点が当てられるので、抗体配列への焦点化が認められ、VHおよび/またはVL配列のCDR部分内の可変領域および非可変領域の発達が認められる。さらに、本発明の方法は、年齢、性別および人種等の特定群の患者におけるC.ディフィシル感染の処置に最も好適な交替の同定を可能とする。同様に、C.ディフィシルでの感染から回復した患者の抗体配列と感染から回復していないものとの比較により、有効ではない抗体配列(これは双方の患者により産生されうる)を同定できる。
【0026】
少なくとも一人の患者から単離されたB細胞は、末梢B細胞リンパ球(PBL)であることができ、また、少なくとも一人の患者からの血液試料であることができる。B細胞はまた、他のソースから単離することもでき、本発明はそれらの使用に及ぶ。例えば、B細胞は、脾臓から単離できる。
【0027】
抗体CDR配列は、「実験」の項に詳述したように、標準的な手法およびその最初の部分および終わりの部分の定義を用いて決定される。
【0028】
以下に詳述するように、抗体配列は、C.ディフィシル感染した患者から決定される。これらの配列は、B細胞免疫グロブリンmRNAに由来し、それ故、発現された抗体およびその中のレパートリーを反映する。本発明に従って決定された配列は、全抗体分子の配列である必要はなく、それらは、抗体結合の原因となる領域を特定するVHおよび/またはVL配列を少なくとも含む。
【0029】
最初の配列決定により決定されたヌクレオチド配列から、標準的アルゴニズムおよびソフトウエアパッケージを用いて、VHおよび/またはVL領域に対する推定アミノ酸配列を決定できる(例えば、www.mrc-lmb.cam.ac.uk/pubseq/, the Staden package and Gap4 programs; Rodger Staden, David P Judge and James K. Bonfield. Managing Sequencing Projects in the GAP4 Environment. Introduction to Bioinformatics. A Theoretical and Practical Approach. Eds Stephen A. Krawetz and David D. Womble. Human Press Inc., Totawa, NJ 07512 (2003); Rodger Staden, David P. Judge and James K. Bonfield. Analysing Sequences Using the Staden Package and EMBOSS. Introduction to Bioinformatics. A Theoretical and Practical Approach. Eds Stephen A. Krawetz and David D. Womble. Human Press Inc., Totawa, NJ 07512 (2003))。これらはさらに特徴づけをして、VHおよび/またはVL配列のCDR(相補性決定領域)部分、特にCDR1、CDR2およびCDR3を決定できる。推定アミノ酸配列を決定し、CDR領域を同定する方法は、周知であり、いかに詳述する。
【0030】
VHおよび/またはVLアミノ酸配列と同様に、いくつかの付加的な情報が関連付け工程で使用できる:
(i)患者の感染の原因となるC.ディフィシルの株、
(ii)抗体試料がサンプリングされた、感染過程での時点、
(iii)患者の詳細、年齢、性別、および人種の一つ以上、
(iv)相補性決定領域(CDR)の範囲、つまり、直接的抗原結合/接触を受ける抗体の可変範囲。
【0031】
そこで、本発明に係る方法においては、少なくとも一人の患者がC.ディフィシルで感染している(またはワクチン接種後の)間の複数の時点でその少なくとも一人の患者から単離されたものであるB細胞を使用でき、関連付け工程(ii)は、B細胞が単離されたその少なくとも一人の患者がC.ディフィシルで感染している間の時点と関連付けるものである。
【0032】
同様に、本発明に係る方法においては、少なくとも二人の患者から単離されたものであり、そのうちの少なくとも一人がC.ディフィシルによる感染から回復したものであり、且つそのうちの少なくとも一人がクロストリジウム・ディフィシルによる感染から回復したものではないB細胞を使用でき、関連付け工程(ii)は、C.ディフィシルによる感染からその少なくとも二人の患者の回復に関連付けられるものである。
【0033】
同様に、本発明に係る方法においては、少なくとも二人の患者から単離されたものであり、その患者が、その少なくとも一つの抗原を生成するC.ディフィシルの株で感染したB細胞を使用でき、関連付け工程(ii)は、B細胞のその配列決定された少なくともVHおよび/またはVLをコードする領域を関連付けして抗体に対する一連の候補配列を同定し、その各々がC.ディフィシルの異なる株により生成される少なくとも一つの共通の抗原に特異的であるか、またはC.ディフィシルのその異なる株により生成される異なる抗原に特異的である。
【0034】
VHおよび/またはVL領域の配列決定は、また、周囲の抗体フレームワークを同定するために用いることができ、これは、抗体のイソ型を決定するために用いることができる。次いで、これは、関連付け工程において、特定の抗体イソ型が特に有用であるか否かを決定するために用いることができる。
【0035】
用語「治療」は、人体または動物体のすべての疾患または不調の症状を治癒、緩和、除去または減少させることあるいはそのすべての疾患または不調にかかる可能性を予防または減少させることを意図する全ての処置を意味する。
【0036】
本発明は、C.ディフィシル感染を処置する上で有用な抗体配列を同定するのに好適である。
【0037】
関連付け工程(ii)において上記の追加の情報分野を使用することにより、例えば、CDR配列のみ、所与に患者もしくは所与の感染にいずれかまたは双方からのCDR、所与の部位または患者群からのCDR、あるいは感染過程をとおして異なるサンプリング時間からのCDRを用いて、関連付けを行うことが容易である。
【0038】
これらの関連付けはCDR特異的である。その理由は、これらが抗体レパートリーの抗原結合および配列多様性の原因となる非常に可変性の領域であるからである(フレームワーク領域を同様に関連付け工程で使用して、抗体イソ型を明らかにすることができるが)。
【0039】
本発明は、広範囲な用途、例えば、抗体治療、およびワクチン研究に有用である。
抗体治療:
これは、非免疫個体(例えば、化学療法/放射線療法を受ける患者、臓器移植のための免疫抑制の患者、糖尿病、損傷等の潜在的な状態、また、非常に若いまたは非常に年老いていることによる免疫不全の患者)への抗体の受動移動を含む。
【0040】
本発明は、感染を克服した患者において過発現VHおよび/またはVL配列を探索することにより、免疫を付与する抗体の配列を決定するために使用できる。これらの保護抗体は、遺伝子レベルで再合成し、大腸菌(または他の発現系)で過発現し、精製することができる。得られる精製組換え抗体は、次いで、患者に、受動免疫療法として投与できる。抗体は、また、単に、製造すべき抗体の配列を供与するだけで、Operon Technologies Inc. USA (www.operon.com)等の商業的供給者から取り寄せることもできる。
【0041】
治療上有効な配列は、関連付け工程(ii)で使用できるいくつかの方法で同定することができる:
1)C.ディフィシル感染から回復した患者において抗体配列過発現を探索することによる―病原体結合しうる抗体を生成するB細胞はクローン性増殖を行い、それ故、高頻度の抗体配列は最もよく病原体に結合し、免疫を付与する。
【0042】
2)C.ディフィシル感染の過程の間、抗体レパートリーにおける変更に従うことによる。感染の間、抗体は、成熟過程を経て病原体結合を改善し、これは配列変更で特徴付けられる。また、B細胞のクローン性増殖は、感染が消える感染の最終段階でより優勢となる。レパートリーにおいて最も頻度の高い抗体が、免疫療法用の候補として選択される。成熟過程ののち、候補抗体は、鍵アミノ酸残基変更が抗原結合を改善することを示し、この情報が抗体設計の改善に使用できる。
【0043】
3)C.ディフィシル感染した異なる患者からのレパートリーの分析により、共通する同一の保護抗体を同定できる。これらの抗体は、異なる患者中でのそれらの出現がそれらに有利な強い肯定的な選択;従って、抗体ベースの免疫における重要な役割を示唆するので、免疫療法に対する魅力的な選択である。
【0044】
4)C.ディフィシルの異なる株で感染した患者からのレパートリーの分析。この状況においては、共通の抗体配列が双方の株に対するレパートリー中で見出された場合、双方の菌株の処置において有用である、すなわち、広いスペクトルを示す。
【0045】
5)配列の親和性成熟に対するレパートリーの分析。
【0046】
ワクチン研究:
ワクチン接種は、免疫系を病原体由来の抗原でプライミング(priming)することにより、感染に対して保護する。ワクチン接種は、病原体由来の抗原に、単回または繰り返し暴露することにより行われ、完全な感染過程の有害な効果なしに、抗体の成熟とB細胞のクローン性増殖が達成される。T細胞の関与も、患者のワクチン接種を行う上で非常に重要である。本発明は、実験的C.ディフィシルワクチンで免疫過程をモニターするために使用できる。対象者に実験的ワクチンが投与され、VHおよび/またはVL配列はから増殖され、抗体レパートリーは上記のように分析された。ワクチン接種過程の定性的および定量的な評価が可能である:
1)実験的C.ディフィシルワクチンを投与された患者群のVH/VLレパートリーを評価する。ワクチンに応答して得られた抗体の詳細な分子解析を行って、(a)保護抗体のクローン性増殖、(b)異なる集団における保護抗体の生成(例えば、異なる遺伝子的背景を持つ民族群、ならびに、例えば、年齢および性別群を変えて)および(c)ワクチンの長期間の効果、すなわち、長期間にわたる抗体応答―免疫系における長期間の抗体記憶ならびにあらゆる自己免疫異常、を決定できる。
【0047】
2)ワクチン接種が所与の抗体の頻度を増大させる結果となった場合、抗体配列を、クローン化し、発現させ、感染の動物モデルで使用することができる。抗体が保護的である場合、それは、それ自体で免疫治療として有用であるが、これはまた、ワクチンが、ヒト対象者を実験的感染に処することなく、おそらくは保護的であることをも示している。
【0048】
同じく本発明が提供するものは、少なくとも一つの抗原を生成するC.ディフィシル感染の処置用の医薬の製造方法であって、
(i)本発明に係る方法を行って、C.ディフィシルにより生成される少なくとも一つの抗原に特異的な抗体の一連の候補配列を同定する工程;および
(ii)C.ディフィシルにより生成される少なくとも一つの抗原に特異的なその候補配列を含んでなる少なくとも一つの抗体を合成する工程;
を含んでなる方法である。
【0049】
本発明に係る医薬および処置方法は、当業者に容易に明らかである。医薬は、薬学的に許容しうる担体、希釈剤または賦形剤を用いて調製できる(Remington's: The Science and Practice of Pharmacy (1995) Mack Publishing Company, Easton, PA, USA)。医薬および処置方法は、薬学的に有効量の抗体/抗原結合性フラグメントを用いて行われる。適切な用量は、当業者に容易に明らかであり、例えば、用量応答実験により容易に決定しうる。
【0050】
同じく本発明が提供するものは、少なくとも一つの抗原を生成するC.ディフィシルによる患者の感染の処置方法であって、
(i)本発明に係る方法を行って、C.ディフィシルにより生成される少なくとも一つの抗原に特異的な抗体の一連の候補配列を同定する工程;
(ii)C.ディフィシルにより生成されるその少なくとも一つの抗原に特異的なその候補配列を含んでなる少なくとも一つの抗体を合成する工程;および
(iii)その少なくとも一つの合成された抗体の治療有効量をその患者に投与する工程;
を含んでなる方法である。
【0051】
同じく本発明が提供するものは、C.ディフィシルにより生成される少なくとも一つの抗原に特異的な抗体に対する候補配列を同定するデータベースの作成方法であって、
(i)本発明に係る方法を行って、C.ディフィシルにより生成される少なくとも一つの抗原に特異的な抗体の一連の候補配列を同定する工程;および
(ii)そのデータベースにその方法で作成されたデータを格納する工程;
を含んでなる方法である。
【0052】
同じく本発明が提供するものは、C.ディフィシルにより生成される少なくとも一つの抗原に特異的な抗体に対する候補配列を同定するレポートの発生方法であって、
(i)本発明に係る方法を行って、C.ディフィシルにより生成される少なくとも一つの抗原に特異的な抗体の一連の候補配列を同定する工程;および
(ii)その方法で作成されたデータを含んでなるレポートを作成する工程
を含んでなる方法である。
【0053】
同じく本発明が提供するものは、ワクチンの有効性の決定方法であって、
(i)そのワクチンを投与された少なくとも一人の患者から単離されたB細胞で、そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の少なくともCDR3領域を配列決定する工程;ならびに
(ii)そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の配列決定された少なくともCDR3領域を関連付けて、そのワクチンに特異的な抗体の少なくともCDR3領域に対する一連の候補配列を同定する工程であって、その一連のCDR3候補配列の各々またはそれと少なくとも80%の相同性を有する配列が、工程(i)で決定された一連の配列において全体で少なくとも1%の頻度で出現するものである工程;
を含んでなる方法である。
【0054】
本発明のある実施態様においては、上記の工程(i)は、
(i)(a)そのワクチンを少なくとも一人の患者に投与する工程;
(ii)(b)その少なくとも一人の患者からB細胞を単離する工程;および
(iii)(c)そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の少なくともCDR3領域を配列決定する工程;
を含んでなる。
【0055】
関連付け工程(ii)は、そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の配列決定された少なくともCDR3領域を、そのワクチンでのワクチン接種が保護的免疫応答を促進することを意図されたC.ディフィシルで感染された少なくとも一人の患者から単離されたB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の配列決定された少なくともCDR3領域と関連付けることを含んでいてもい。
【0056】
上記のように、
(i)患者の感染の原因となるC.ディフィシルの株、
(ii)抗体試料がサンプリングされた、感染過程での時点、
(iii)患者の詳細、年齢、性別、および人種の一つ以上、
(iv)相補性決定領域(CDR)の範囲、つまり、直接的抗原結合/接触を受ける抗体の可変範囲、
を包含する、いくつかの付加的な情報を関連付け工程で使用できる。
【0057】
ワクチンを投与された患者から決定された抗体配列は、ワクチンが患者において保護的免疫応答を促進することを意図されたC.ディフィシルで感染された患者から単離された抗体配列と比較することができる。そこで、ワクチンが、C.ディフィシルそれ自体による感染に応答しても生成される抗体の発生をもたらしたか否かを決定できる。特に、その比較は、C.ディフィシルによる感染から回復した患者から決定された抗体配列を用いて行うことができる。
【0058】
特に、その方法は、そのワクチンでのワクチン接種が保護的免疫応答を促進することを意図されたC.ディフィシルに対する保護的免疫応答を促進することにおける、ワクチンの有効性を決定しうる。
【0059】
同じく本発明が提供するものは、ワクチンの有効性を同定するデータベースの作成方法であって、
(i)本発明に係る方法を行って、そのワクチンの有効性を同定する工程;および
(ii)そのデータベースにその方法で作成されたデータを格納する工程
を含んでなる方法である。
【0060】
同じく本発明が提供するものは、ワクチンの有効性を同定するレポートの発生方法であって、
(i)本発明に係る方法を行って、そのワクチンの有効性を同定する工程;および
(ii)その方法で作成されたデータを含んでなるレポートを作成する工程
を含んでなる方法である。
【0061】
同じく本発明が提供するものは、患者におけるクロストリジウム・ディフィシル感染を同定する診断用試験方法であって、
(i)その患者から単離されたB細胞で、そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の少なくともCDR3領域を配列決定する工程;
(ii)そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域のその配列決定された少なくともそのCDR3領域を、クロストリジウム・ディフィシルに特異的な抗体の少なくともCDR3領域に対する一連の配列と比較し、その一連のCDR3配列の各々またはそれと少なくとも80%の相同性を有する配列が、工程(i)で決定された一連の配列において全体で少なくとも1%の頻度で出現するか否かを決定する工程;ならびに
(iii)比較工程(ii)の結果を関連付けして、その患者にクロストリジウム・ディフィシル感染が存在するか否かを決定する工程;
を含んでなる方法である。
【0062】
同じく本発明が提供するものは、患者のクロストリジウム・ディフィシル感染への感受性を決定する診断用試験方法であって、
(i)その患者から単離されたB細胞で、そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の少なくともCDR3領域を配列決定する工程;
(ii)そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域のその配列決定された少なくともそのCDR3領域を、クロストリジウム・ディフィシルに特異的な抗体の少なくともCDR3領域に対する一連の配列と比較し、その一連のCDR3配列の各々またはそれと少なくとも80%の相同性を有する配列が、工程(i)で決定された一連の配列において全体で少なくとも1%の頻度で出現するか否かを決定する工程;ならびに
(iii)比較工程(ii)の結果を関連付けして、その患者のクロストリジウム・ディフィシル感染への感受性を決定する工程;
を含んでなる方法である。
【0063】
診断用試験方法は、例えば病院で患者のCDR3配列を配列決定して、どの患者がその菌による感染に感受性であるかを決定するために使用できる。試料中に抗体特異的なC.ディフィシルが存在すれば(CDR3領域の配列決定により決定される)、その患者は、その菌に対する保護的免疫応答を持つことができており、抗生物質での処置が必要ではないことをおそらくは示すであろう。対照的に、C.ディフィシル特異的抗体を生成しなかったと同定された患者は、免疫不全であり、従って、C.ディフィシル感染の過程で抗生物質処置の候補者であると同定できよう。
【0064】
同じく本発明が提供するものは、本発明に係る診断的試験方法を行うための診断用試験キットである。キットは、当業者が患者からCDR3配列を同定することを可能にする試薬(例えば、PCRプライマー)を含みうる。
【0065】
本発明で使用しうる抗体、特に合成抗体に関して(用語「抗体」は、文脈が他のように求めない限り、抗体の抗原結合性フラグメントを包含すると考えられる)、抗体は、抗体全体またはその抗原結合性フラグメントであり、一般に任意の免疫グロブリンのクラスに属しうる。そこで、例えば、それはIgM、IgGまたはIgA抗体でありうる。抗体またはフラグメントは、動物のもの、例えば、哺乳類起源のものであってもよく、例えば、マウス、ラット、ヒツジまたはヒト起源であってもよい。それは、天然の抗体またはそのフラグメント、あるいは、所望ならば、組換え抗体フラグメント、すなわち、組換えDNA法を用いて製造された抗体または抗体フラグメントであってもよい。
【0066】
特定の組換え抗体または抗体フラグメントとして、(1)少なくとも一部が異なる抗体由来のものである、抗原結合性部位を有するもの、例えば、一つの抗体の過可変性または相補性決定りょういきが第二の異なる抗体のフレームワークにグラフトされているもの(例えば、EP239400号明細書に記載のもの);(2)非Fv配列が他の異なる抗体の非Fv配列で置換された組換え抗体またはフラグメント(例えば、EP171496号、EP173494号およびEP194276号の各明細書に記載のもの);あるいは(3)実質的に天然免疫グロブリンの構造を有する組換え抗体またはフラグメントであって、ヒンジ領域が天然免疫グロブリンで見出されるものと異なる数のシステイン残基を有するが、組換え抗体またはフラグメントの表面ポケットにおける1以上のシステイン残基が天然免疫グロブリン中に存在する他のアミノ酸残基に代わって存在するもの(例えば、WO89/01782号およびWO89/01974号の各明細書に記載のもの)が挙げられる。
【0067】
Harlow, E. and Lane, D. ("Using Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1998)等のテキストの教示が、抗体、抗体フラグメント、それらの調製および使用をさらに詳述している。
【0068】
抗体または抗体フラグメントは、ポリクローナルまたはモノクローナル起源でありうる。それは、少なくとも一つのエピトープに特異的でありうる。
【0069】
抗原結合性抗体フラグメントとして、例えば、F(ab’)2、Fab’もしくはFabフラグメント等の抗原全体のタンパク質分解性開裂に由来するフラグメント、または組換えDNA法により得られるフラグメント、例えばFvフラグメントが挙げられる(例えば、WO89/02465号明細書に記載のもの)。
【0070】
本発明に係る組換え抗体を生成することが望まれる場合、これらは、例えば、EP171496号、EP173494号およびEP194276号の各明細書に記載の方法を使用して生成することができる。抗体フラグメントは、例えば、ペプシンまたはパパインでの酵素的消化による従来手法を使用して生成することができる。
【0071】
本発明に係る抗体は、従来法を用いて、検知可能標識で標識化してもよく、またはエフェクター分子、例えば薬物、例えば抗菌剤もしくは毒素もしくは酵素とコンジュゲートしてもよく、本発明は、そのような標識化抗体または抗体コンジュゲートを包含する。
【0072】
本明細書中で議論した文献の各々の内容は、それらの中に引用されている文献を含めて、それらの全体が、ここに参照として取り込まれる。
【0073】
「PMID:」参照番号が付与されている場合、これらは、US National Library of Medicineによりそれらに割り当てられたPubMed識別番号であり、それから各々の刊行物に対する完全な文献情報および要旨がwww.ncbi.nlm.nih.govで入手できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
本発明は、少なくとも一つの抗原に特異的な抗体に対する候補配列を同定し、ワクチンの有効性を決定する形態を、単に例として示す、添付した図面のいくつかの図を参照して、以下の記述からさらに明らかとなるであろう。
【0075】
実 験
以下の実験は、C.ディフィシル感染した患者に免疫を付与する抗体VHおよび/またはVL CDR配列の同定方法を詳述する。これらの配列は、次いで、合成抗体の製造に使用でき、これらの合成抗体は治療のために患者に投与するのに好適である。また、この方法で同定したVHおよびVL CDR3配列が詳述されている。
【0076】
同じく、患者における所望の免疫応答の発生におけるワクチンの有効性を決定する方法が詳述されている。
【0077】
他に特記しない限り、本明細書中に詳述した全ての方法は標準的な手順を用いて、適用可能な製造者の指示書に従って行われる。PCR、分子クローニング、操作と配列決定、抗体の製造、エピトープマッピングおよびミモトープ設計、細胞培養ならびにファージ提示を含む種々の手法についての標準的手順は、McPherson, M.J.ら、(1991, PCR: A practical approach, Oxford University Press, Oxford), Sambrook, J.およびRussell, D., ("Molecular Cloning: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, New York), HuynhおよびDavis (1985, "DNA Cloning Vol I - A Practical Approach", IRL Press, Oxford, Ed. D.M. Glover), Sanger, F.ら、(1977, PNAS USA 74(12): 5463-5467), Harlow, E.およびLane, D. ("Using Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1998), Jung, G.およびBeck-Sickinger, A.G. (1992, Angew. Chem. Int. Ed. Eng., 31: 367-486), Harris, M.A.およびRae, I.F. ("General Techniques of Cell Culture", 1997, Cambridge University Press, ISBN 0521 573645), "Pharge Display of Peptide and Proteins: A Laboratory Manual" (Eds. Kay, B.K., Winter, J., and McCafferty, J., Academic Press Inc., 1996, ISBN 0-12-402380-0)。
【0078】
他のもののうち、本明細書中で詳述された方法中で有用な試薬および装置は、Amersham (www.amersham.co.uk), Boehringer Mannheim (www.boehringer-ingeltheim.com), Clontech (www.clontech.com), Genosys (www.genosys.com), Millipore (www.millipore.com), Novagen (www.novagen.com), Perkin Elmer (www.perkinelmer.com), Pharmacia (www.pharmacia.com), Promega (www.promega.com), Qiagen (www.qiagen.com), Sigma (www.sigma-aldrich.com)およびStratagene (www.stratagene.com)のようなものから入手できる。
【0079】
種々の文法的形態の用語「抗体」は、本明細書中で、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、つまり、抗体結合部位またはパラトープを含む分子を指すように使用される。そのような分子は、また、免疫グロブリン分子の「抗原結合フラグメント」と称される。
【0080】
例示的な抗体分子は、完全な免疫グロブリン分子、実質的に完全な免疫グロブリン分子およびFab、Fab'、F(ab’)2、scFvおよびF(v)としてこの分野で公知のそれらの部分を包含する、パラトープを含む免疫グロブリン分子のそれらの部分である。
【0081】
用語「抗体結合部位」は、抗原に特異的に結合する(免疫反応する)重鎖および軽鎖可変性および過可変性領域からなる抗体分子の構造的部分を指す。
【0082】
抗体を生成するB細胞の同定および配列決定ならびに得られたデータの分析は、以下の基本的な工程を含む:
(1)ヒト患者のB細胞からのVHおよび/またはVLをコードする領域の単離。
(2)VHおよび/またはVLレパートリーのヌクレオチド配列の決定。
(3)VHおよび/またはVL一次アミノ酸配列の決定。
(4)コンピュータ内でのCDR領域の抽出―データベースへの加入。
(5)VHおよび/またはVLレパートリーにおける優位なCDRおよびフレームワークの検出。
(6)優位な抗体配列からの治療用組換え抗体の構築および製造。
【0083】
1.ヒト患者のB細胞からのVHおよび/またはVLをコードする領域の単離
この方法のために、C.ディフィシル感染したヒト患者を免疫されたB細胞のドナーとして選択した。選択の基準は:
(a)患者は、例えばウエスタンブロッティングにより検出可能な、C.ディフィシルに対する明白な抗体応答を示す必要がある。抗体の試料は、患者の血液試料から採集された。試料を希釈し、C.ディフィシル由来の抗原を使用して、ウエスタンブロッティングにより免疫反応について試験した。そのようなアッセイにおいて、強い抗体応答を示す患者は、抗ヒトポリクローナル検出抗体を用いて検出されるような、C.ディフィシル抗原の明白な認識/抗体結合を示す。
(b)患者は、C.ディフィシル感染の過程で生存し、これは、細菌を中和しうる抗体に対するB細胞応答を発生する機会を改善する。
【0084】
末梢B細胞リンパ球(PBL)を感染した患者血液試料から採集した。このヘパリン化した血液を、PBS(全部で20ml)中で希釈し、30mlの遠心管中で15mlFicol Hypaque(Pharmacia; 特記しない限り、全ての薬品および培地はSigma, UKから購入した)のクッション上に載せた。次いで、PBLを遠心分離(400xg、5分)で収集し、PBS中で洗浄し、再び遠心分離して取得した。RNAは、製造者の指示書どおりに従って、QuikPrep mRNA精製キット(Pharmacia)を使用して、PBLから調製した。単離されたmRNAは、逆転写反応を経て、cDNAを調製するために使用した(PromegacDNA合成キット)。これについて、2μgのmRNAを16μLのヌクレアーゼを含まない水中に再懸濁し、65℃に3分間加熱し(二次構造を変性し)、次いで、直ちに、氷上で1分間冷却した。mRNAは、次いで、以下の混合物に加えた:8μLの25mM MgCl2、4μLのdNTO混合物(各リボヌクレオチド三燐酸に関して10mM)、1μLのRNAsin40uμL-1の原液、1.2μLのAMV逆転写酵素(25uμL-1の原液)、6μLのcDNA10pmolμL-1のプライマー(図1−cDNA合成を参照)。
【0085】
抗原結合領域をコードするDNAは、次いで、患者のPBLから調製したcDNAを用いて、PCRにより増幅した。これのために、cDNAを以下のPCR反応で使用し、重鎖または軽鎖由来の抗体可変領域DNAを生成した(図1参照):2.5μLのcDNA、33μLの水、4μLのdNTP混合物(各デオキシヌクレオチド三燐酸に関して25mM)、5μLのTaq反応緩衝液(Perkin Elmer)、2.5μLの等モルプライマー混合物(各プライマーに関して最終濃度20pmol)、および0.5μLのTaqDNAポリメラーゼ(1uμL-1、Perkin Elmer Corp)。これらの反応で使用したフォワードおよびリバースプライマーは図1に記載されており、それらの各々のヌクレオチド配列は表1にリストされている。PCR反応条件は、94℃で1分、57℃で1分、且つ72℃で2分で、全体として30サイクルであり、サイクル1の前に延長された変性(94℃で5分)およびサイクル30の後に付加的な延長工程(72℃で10分)を伴う。PCRは、Perkin Elmer 9700 GeneAmp PCR機を使用して行った。5μLのPCR反応物を1%アガロースゲル上で流し、予期された393塩基対(bp)生成物の増幅をチェックした。残りの生成物を0.8%低融点(LMP)アガロースゲル上で流し、393バンドを清潔な外科用メスを用いて切り取った。DNAを、GeneClean II Kit(Anachem, Luton, UK)を用いて、アガロースゲルスライスから抽出した。
【0086】
PCRは、使用したPCRプライマーセットに応じて、二つのフラグメント型―各々VHおよびVL領域由来のものを与えた(抗体遺伝子用のプライマーセットおよびPCRスキームの詳細については、それぞれ、表1および図1参照)。
表1:VHおよびVL遺伝子フラグメントの発生および配列決定で使用されるプライマー。全ての配列は、5’から3’方向に与えられる。プライマーの使用は、上におよび図1に記載されている。
【0087】
【表1】

【0088】
VHおよび/またはVL遺伝子フラグメントは、クローニングベクターpGEM−T easy(Promega Corporation)にクローニングされて、DNA配列決定を容易にする。これのために、3μLのPCR生成物が、製造者の指示書に従って、QIA quick PCR精製スピンカラム(Qiagen, UK)を用いて、制限のために調製した。DNAは、40μLの緩衝液EB中でスピンカラムから溶出した。精製したPCR生成物(2μL)を1μLのpGEM−T easyベクター、6μLの水および1μLのDNAリガーゼと混合し、混合物を室温で1時間連結した。次いで、連結は、エレクトロポーレーションにより、エレクトロコンピーテントな大腸菌TG1細胞(Stratagene)に変換し、アンピシリン100μgml-1IPTG(100μM)とX−gal(0.006%w/v)を含有する寒天プレート上にプレートアウトした。コロニーを37℃で一晩生育させ、次いで、4℃で保存した。組換えコロニーは、この培地上で白色コロニーとして同定される。
【0089】
2.VHおよび/またはVLレパートリーのヌクレオチド配列の決定
DNAをまず、VHおよび/またはVL組換え大腸菌クローンから調製した。これのために、個々のコロニーを、各々、96穴プレートフォーマットを用いて、アンピシリン100μgml-1を追加した1.2mlのLBブロスに移した。培養物は、37℃で24時間生育させた。細菌細胞を、4,000xgで30分の遠心分離により取得し、上澄み液を捨てた。プラスミドDNAを、実質的に製造者の指示書に従って、Wizard SV 96プラスミド精製キット(Promega Corporation)を用いて調製した。プラスミドDNAの収率は、典型的には、1.2mlのスターター培地あたり5μgであった。
【0090】
DNA配列決定反応は、DYEnamic ET 染料ターミネーターサイクル配列決定キット(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて行った。精製プラスミドDNA(0.5μg)を、8μLのDYEnamic ETターミネーター試薬プレミックスおよび1μLのM13フォワードおよびリバースプライマー(5μM)と、20μLの合計反応用量で混合した。次いで、熱サイクリングを、以下のパラメーターで、GeneAmp PCR system 9700(Perkin Elmer)を用いて行った:95℃で20秒;50℃で15秒;60℃で1分;30サイクル)。反応を、96穴フォーマット非スカーテッドELISAプレート(AB Gene)を用いて行った。取り込まれなかった染料ターミネーターを、析出を用いて除去した。これのために、エタノール試料を、2μLの7.5M酢酸アンモニウムおよび55μLの100%エタノールと混合し、3000gで30分間遠心分離した。DNAペレットを70%エタノールで洗浄し、20μLのローディング溶液中に再懸濁した。反応物を、製造者の指示書に従って、MegaBACE 100 DNAシーケンサー(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて配列決定した(6kVで200分の電気泳動と共に、2kV注入電圧で30秒)。クロマトグラムを、終了および保管のために、.scfファイルフォーマットを用いて、エクスポートした。
【0091】
3.VHおよび/またはVL一次アミノ酸配列の決定
VHおよび/またはVLのDNA配列を、フォワードおよびリバースストランドの双方において決定し(M13フォワードおよびリバースプライマーを用いて)、相違点を際立たせ、高度の正確さを維持するために、比較した。これは、Staden プログラム一式(Staden, R. (1996) The Staden Sequence Analysis Package. Molecular Biotechnology 5, 233-241)を用いて行った。最初に、配列.scfファイルをベクター配列が取り除かれ、配列の質が評価される、PREGAPプログラムに入れた。DNA配列が不明瞭である悪い品質の配列は排斥され、再度配列決定された。フォワードおよびリバースストランドは、GAPプログラムを用いてマッチングされ、配列決定されたものを含む領域を際立たせ、解明した。VHおよび/またはVL配列のオリエンテーションが注目され、翻訳用にフォワードリーディングフレームオリエンテーションのみの生成が必要である場合に、逆補完された。VHおよびVL遺伝子配列が、次いで、アミノ酸配列に翻訳された。各配列には、一意の識別名(名称)が与えられた。
【0092】
4.コンピュータ内でのCDR領域の抽出―データベースへの加入
CDR領域を同定する一般的な教示は、www.bioinf.org.uk/abs/にある。
【0093】
以下のルールのセットが、抗体配列におけるCDRの定義を可能にする。これらの実質的に一定の特徴が出現しないまれな例が存在する(例えば、ヒト重鎖配列EUは、CDR−H3の後に、Trp-Glyを持たない)。Cys残基が最もよく保存された特徴である。
CDR−L1
開始 ほぼ残基24
前の残基 常にCys
後の残基 常にTrp。典型的には、Trp-Tyr-Gln、ただし、また、Trp-Leu-Gln、Trp-Phe-Gln、
Trp-Tyr-Leu
長さ 10〜17残基
CDR−L2
開始 CDR−L1の末尾の後の、常に16残基
前の残基 一般に、Ile-Tyr、ただし、また、Val-Tyr、Ile-Lys、Ile-Phe
長さ 常に7残基
CDR−L3
開始 ほぼ残基33
前の残基 常にCys
後の残基 常にPhe-Gly-Xaa-Gly(配列番号92)
長さ 7〜11残基
CDR−H1
開始 ほぼ残基26(常に、Cysの4つあと)
前の残基 常にCys-Xaa-Xaa-Xaa(配列番号93)
後の残基 常にTrp。典型的には、Trp-Val、ただし、また、Trp-Ile、Trp-Ala
長さ 10〜12残基
CDR−H2
開始 CDR−H1の末尾の後の、常に15残基
前の残基 典型的には、Leu-Glu-Trp-Ile-Gly(配列番号94)、ただし、いくつかの
変形物
後の残基 Lys/Arg-Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala-Thr/Ser/Ile/Ala
長さ 16〜19残基
CDR−H3
開始 CDR−H2の末尾の後の、常に33残基(常に、Cysの2つあと)
前の残基 常にCys-Xaa-Xaa(典型的には、Cys-Ala-Arg)
後の残基 常にTrp-Gly-Xaa-Gly(配列番号95)
長さ 3〜25残基
【0094】
5.VHおよび/またはVLレパートリーにおける優位なCDRおよびフレームワークの検出
データベースは、SQL Server Databaseソフトウエア(Microsoft)を用いて構築した。これは、SQLを用いてクエリーを行うデータベースを可能にし、また、CDR1、CDR2およびCDR3配列を、FASTAフォーマットにおいてデータベースVHおよび/またはVL配列の任意の範囲から抽出することを可能とした。抽出されたCDRは、次いで、同一または非常に類似のCDRをブロックに一緒にグループ化するような方法で、CLUSTAL Xを用いて、多重整列に付した(Thompson, J.D., Higgins, D.G.およびGibson, T.J. (1994) CLUSTAL W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighing, positions-specific gap penalties and weight matrix choice. Nucleic Acids Research, 22:4673-4680)。これから、繰り返し出現するCDRの頻度を決定し、免疫グロブリンレパートリー中のCDR優位性を確立した。あるいは、グラフィカル・インターフェースを、Pribiosys(proBionic EMEA, Amsterdam)を用いて、使用した。ProBiosysは、CLUSTAL.phyファイルから系統図を作成し、多数の整列した配列の中で、関係の迅速な視覚的解釈を可能とする。全過程は、データベースエントリーに加えられた検索および追加の情報に応じて、病気中の異なる時点でサンプリングされた同一の患者からのCDRについて、異なる感染症の患者からのCDRについて、あるいは性が一致した、年齢が一致した、または人種が一致した患者群からのものについて行われた。
【0095】
6.優位な抗体配列からの治療用組換え抗体の構築および製造
優位な抗体配列が所与のレパートリー中で認められると、その情報を、免疫を付与するCDRおよびフレームワークの存在を推論するのに用いることができる。選択されたVHおよび/またはVL配列を同定でき、その遺伝子配列は、合成オリゴヌクレオチドを用いて再合成できる。それはまた、タンパク質発現を改善するために、ヒト由来遺伝子配列を大腸菌用にコドンを最適化することを可能にするので、このことは重要である。優位なVHおよび/またはVL配列は、スペーサー(リンカー)配列を用いて、一緒にスプライシングできる(図2)。scFvと称するこの遺伝子カセットは、発現ベクターpET29b(Novagen)中に、末端NdeIおよびNotI制限部位を含むように、再合成できる。ScFvDNAは、NdeI(VHで切断)またはNotI(VLで切断)で、以下の反応を用いて切断できる:40μLのDNA(4μg)、10μLの制限酵素緩衝液D(Promega)、47μLの水および2μLのNdeIおよびNotI酵素(10uμl-1;Promega);37℃で4時間消化。次いで、DNAを0.7%アガロースTAEゲル上で分画でき、消化されたDNAをゲルから切り出し、製造者の指示書に完全に従って、Geneclean IIキット(Bio 101)を用いて、アガローススライスから精製できる。pET29bベクターDNAは、上記のように、NdeIおよびNotIで切断できる。1μgのベクターを、8.5μLの水に再懸濁した1μgの制限されたVL DNAと混合し、1μLの10x連結緩衝液(Boehringer Manheim)および0.5μLのDNAリガーゼ(3uμl-1;Boehringer Manheim)を添加して連結でき、引き続き、14℃で一晩連結反応を行う。
【0096】
全連結反応物を、エレクトロポーレーションにより、大腸菌TG2細胞(Stratagene, UK)に形質転換できる。形質転換体は、テトラサイクリン(25μgml-1−TG2染色体上のrecA::Tn10に選択的)およびカナマイシン(50μgml-1−pET29に選択的)を含む寒天プレート上でプレートアウトできる。個々のクローンから調製された組換えプラスミドDNAは、上記のように、NelIおよびNotIで消化することにより、scFv配列についてチェックできる。
【0097】
組換えscFvは、大腸菌JM109(DE3)中で過発現して精製でき、従って、生化学的および生物学的な特徴づけが可能となる。組換え体は、50μgml-1のカナマイシンを追加したLBプレート上に播くことができ、単一コロニーを用いて、50μgml-1のカナマイシンを有するLBブロスの10μLのスターター培地に接種できる。これのために、1Lの発現培養物を、カナマイシンの存在下に、300rpmで振盪しながら、37℃で4〜5時間かけて調製できる。OD600=1において、IPTGを用いて誘導を行うことができ、細胞は、激しく攪拌しながら、さらに3〜5時間増殖させることができる。次いで、細胞を遠心分離(4000xg、15分、4℃)により、取得できる。細胞ペレットを10mlの新鮮な(4℃)溶解緩衝液(下記)に再懸濁し、25ml X−プレスシステム(AB Biox)を用いて細胞破壊をする前に、−20℃で一晩保存できる。
溶解緩衝液
50nMトリスHCl pH8.0
1mM EDTA
100mM KCl
0.1mM AEBSF(アミノエチルベンゼンスルホン酸)
【0098】
溶解物は、オークリッジ管中で遠心分離できる(24300xg、4℃、30分)。ペレットを、Silversonラボブレンダーを用いて、氷上で20mlの氷冷溶解緩衝液に再懸濁できる。溶解物を、8個のオークリッジ管に分け、各々のアリコートを氷冷溶解緩衝液中30ml(合計120ml)に希釈できる。包接体をペレット化でき(24300xg、4℃、30分)、上澄み液を捨てる。各々の8ペレットを30mlの溶解緩衝液に再懸濁し、包接体再度遠心分離(24300xg、4℃、30分)することにより取得できる。この洗浄/遠心分離工程は、合計5回行って、包接体画分を精製できる。各ペレットは、15mlの氷冷水に再懸濁でき、包接体は−20℃で保存できる。
【0099】
リフォールディングのために、50mMトリスHClpH9.0中の2%(w/v)N−ラウリルザルコシン(NLS)の200ml溶液は、次のようにして調製できる。4gNLSを100mlの水に攪拌しながら溶解させる。10mlの1MトリスpH9.0原液を加えて、水で195mlにする。5mlの包接体スラリーを加えて、室温で30分間、激しく攪拌する。
【0100】
CuCl2を100μMの濃度に加える。これは、酸化用触媒として働く。リフォールディング反応物は、0.44μM vaccupボトルトップフィルターユニット(90mm径、Gellman Science)を通して真空濾過でき、ろ液を、PLGC10膜を取り付けたPellicon Labscale TFFシステム(Millipore)に移す。反応物を、タンジェンシャルフローを用いて、25mlに濃縮でき、透過物を捨てる(scFvは残留物に局在する)。溶液は、10mM酢酸アンモニウム(AAT)pH9.0の40xターンオーバー容量(1L)に対してダイアフィルトレーションできる。最後に、抗体の容積を、10mMAATpH9.0を用いて、50mlに希釈できる。典型的なタンパク質含有量は、1リットルあたり50mgまでの収量で、1〜2mgml-1であった。
【0101】
scFv精製のために、10mlベッド容量のNiNTAスーパーフローアガロースQiagenを、フローアダプターなしに、10mlのガラスカラム(Sigma)を用いて、製造者の指示書に従って、調製できる。カラムは、50ml緩衝液B(6M尿素、0.1MNa22PO4、10mMトリスHClpH8.0)で平衡化できる。リフォールディングされたscFv(上記のとおり)は、緩衝液B中で1/5に希釈でき、カラムに直接、ml/minで適用できる。50mlの緩衝液Bを、カラムに適用でき(流速5ml/min)、続いて、緩衝液C(緩衝液Bと同じ組成ながら、pH6.3)を適用できる。精製したscFvは、250mM高純度イミダゾールを追加した緩衝液BをA280<0.05まで適用することによりカラムから溶出できる。
【0102】
結果
C.ディフィシルに感染した患者から単離された末梢血リンパ球(PBL)からの抗体遺伝子の可変性重鎖(VH)および可変性軽鎖が、TAクローン化され、配列決定されている。各々の場合において、第三の相補性決定領域(すなわち、CDR−H3またはCDR−L3)が同定された。この領域は、双方とも、VH鎖の最も可変性の領域であり、その領域は、抗原結合を決定する上で最も重要なものとして同定されている。この理由で、この領域は各々のVH鎖に対する特徴部分として使用される。
【0103】
臨床情報
患者D01 ― 可変性重鎖(VH)および可変性軽鎖(VL)は、CDADの発症後10日で取られたPBLから配列決定された。Lab結果は、C.ディフィシル毒素が存在したことを確認した。
患者D02 ― VHおよびVLは、CDADの発症後10日で取られたPBLから配列決定された。Lab結果は、C.ディフィシル毒素が存在したことを確認した。試料を採った後の引き続く7週において、患者はそれ以上のC.ディフィシル感染を進展させず、感染に応答して生成した抗体が保護的であったことを示唆している。
患者D03 ― VHおよびVLは、CDADの発症後10日で取られたPBLから配列決定された。Lab結果は、C.ディフィシル毒素が存在したことを確認した。試料を採った後の引き続く3週において、患者はそれ以上のC.ディフィシル感染を進展させず、感染に応答して生成した抗体が保護的であったことを示唆している。
【0104】
配列決定結果
患者D01は、VHとVLの双方で高度の収束(focussing)を示した。三つの異なるCDR3配列が、配列決定されたVHの80%超を構成する。配列番号27のCDR3配列を有するVHが、この患者からの配列決定されたVHの57.8%を占める。配列番号28のCDR3配列を有するVHが、全てのVHの13.5%を占め、配列番号29のCDR3配列を有するVHが、この患者中の全ての配列決定されたVHの10%を占める。三つの異なるCDR3配列が、同じく、配列決定されたVLの多数を構成し、これらは、配列番号32、34および33のCDR3配列である(それぞれ、32.7%、15.3%および6.6%の頻度で出現)。
【0105】
類似性検索が、データベース(FABTECデータベース)内に含まれる他のVHおよび/またはVL配列に対して、これらの共通VHおよび/またはVL配列を用いて行われた。そのデータベースは、メチシリン抵抗性スタフィロコッカス・オウレウス(MRSA)、カンジダ・アルビカンス、シュードモナス・アエルギノーザ(嚢胞性線維症の原因菌)、ストレプトコッカス・オラリスおよびバンコマイシン抵抗性エンテロコッカス(VRE)に感染した患者から単離されたPBLのVHおよび/またはVLを含む。その感染症に対する抵抗性に関係し、且つ、それ故、それらの感染症に対する治療を行うために使用できる抗体配列を同定するために、その類似性検索を行った。これらの配列は、WO01/76627号明細書に基づいて作成されている。これらの全てに対して、単離されたVHおよび/またはVL配列は、感染の過程をとおして、抗体レパートリーのスキューイング(skewing)を示し、従って、成熟した、免疫を付与するVHおよび/またはVL配列の正体を明らかにしている。これは、典型的には、各VHおよび/またはVLに対して、5,000〜15,000配列を用いて行われている。健康な個体からのVHおよび/またはVLレパートリーもまた、比較の目的で、用いることができる。
【0106】
BLOSUM50マトリックスを用いて、70%より大きい類似性を有するCDR3を持つ抗体の群をピックアップすることが可能であった。配列番号27および28のCDR3配列(それぞれ、表2および表3)は、C.ディフィシルに感染した患者からの他のVHとのみ、70%より大きい配列類似性を示した。他の感染症(C.アルビカンス、MRSAおよびVRE)を有する個体からのVH配列は、類似のCDR3配列を示さなかった。
【0107】
以下の表において、Dで始まるライブラリーは、C.ディフィシルに感染した患者由来のものであり、Mで始まるライブラリーは、MRSAに感染した患者由来のものであり、Vで始まるライブラリーは、VREに感染した患者由来のものであり、また、Cで始まるライブラリーは、C.アルビカンスに感染した患者由来のものである。
【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

配列番号29のCDR3配列を持つVHは、他のC.ディフィシルに感染した患者およびMRSAに感染した患者からのVHと類似性を示した(表4)。
【0110】
【表4】

【0111】
患者D01のVLからのCDR3は、また、それらについて類似性探索が行われた。配列番号32および33を持つVL(それぞれ、表5および表6)は、C.ディフィシルに感染した患者からのCDR3配列と高度の相同性を示すが、異なる臨床的感染症の患者由来のCDR3には相同性を示さない。配列番号34のCDR3配列を持つVLは、C.ディフィシル、MRSAおよびVREに感染した患者から単離されたVLと類似性を示した(表7)。
【0112】
【表5】

【0113】
【表6】

【0114】
【表7】

【0115】
患者D02は、同じく、VHレパートリーで高度の収束を示しが、VLレパートリーでは収束はそれほど明確ではなかった。二つのタイプが、この患者のVHライブラリー中で優位である。配列番号30のCDR3配列を有するVHが、配列決定されたクローンの45.6%を占め、配列番号31のCDR3配列を有するものが、そのライブラリーの8.8%を占める。VLライブラリーにおいては、配列番号61、96および97のCDR3配列を有する最も高頻度に単離される三つのクローンが、それぞれ、4%、4%および4%の頻度で見出された。
【0116】
FABTECデータベースにおける類似性検索は、二つの共通のVH CDR3配列がC.ディフィシル患者に特異的であることを示した(表8および表9)。配列番号30のCDR3配列を有するVHは、そのライブラリー中の他の抗体およびライブラリーD03からの抗体と適合した(表8)。配列番号31のCDR3配列を有するVHは、ライブラリーD03からの抗体と適合した(表9)。
【0117】
【表8】

【0118】
【表9】

【0119】
VLのいくつかを用いる類似性検索は、配列のクラスター化を示した。患者D02からのVLの15%(ライブラリーD52)は、配列番号48のCDR3配列との高度の類似性を示し、患者D01からのVL(ライブラリーD51)も、この配列との高度の類似性を示し田(表10)。同様に、配列番号61のまわりのクラスターは、患者D02の配列決定されたVLの13%を占め、再び、これに類似のクローンが、また、患者D01中で見出される(表11)。これらのクローンのいずれもが、他の病原体に感染した患者から単離されたVL CDR3配列と全く類似性を示さない。BLOSUM50マトリックスを用いると、これら二つのクローンは、互いに、60%より大きい類似性を示すことが特記される。
【0120】
【表10】

【0121】
【表11】

【0122】
患者D03では、VHについて予備的な結果しか得られていないが、D01およびD02の双方と多くの類似の配列が示されており、報告する価値がある。49のVH配列からのデータのみが得られている。クローンの10%が配列番号27のCDR3配列を有しており、これは、患者D01中で最も共通な配列である。VHの8%が配列番号31のCDR3配列を有しており、これは、患者D02中で最も共通な配列である。VHのCDR3配列のライブラリー間比較(表12)は、1より多いC.ディフィシルに感染した患者中で出現する8つのCDR3配列を示した。配列番号27、28および37のCDR3配列は、患者D01およびD03において出現し、配列番号31,90,91,79および30のすべてのCDR3配列は、患者D02およびD03において出現する。これまでのところ、患者D01とD02は、共通のCDR3配列を全く示さない。VLは患者D01とD02からのみ配列決定されており、これらの患者は、同一のCDR3配列を全く分け合っていない。
【0123】
【表12】

【0124】
まとめ
C.ディフィシルに感染した患者中に多数の特定のVH CDR3配列が存在することは、scFvの一部としてのVHが有機体に対して保護的であることを示している。一人より多い患者により分け合われているCDR3配列は、特異的なC.ディフィシル配列を示す。患者内でしばしば体細胞変異により高度の相同性を持つ配列は、類似のただし微妙に異なる性質を持つ重要な配列を示していることも特記される。これらの個体からのVHのCDR3配列は、17個の潜在的に保護的なVHの同定に導いた。これらのVH CDR3配列は、配列番号30,79、28、91、41、39,38,27,36,36、40,37、90、29,44,45および43に対応する。
【0125】
VLの同様の解析により、44個の異なるVH CDR3配列が同定された。数が多いのは、少し異なる配列を有するVLに導く、抗体軽鎖での体細胞変異の割合が増加しているためである。これらのVL CDR3配列は、配列番号59、60、61、33、62、63、64、65,66、77、84、78、30、79、80、81、82、87、57、74、85、31、86、82、51、48、88、49、53、32、52、70、71、34、89、68、67、50,54、55、56、59,58、96および97に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】B細胞からのVHおよび/またはVL抗体遺伝子フラグメントの単離およびDNA配列決定に対する一般原理を示す。参照番号10は一次PCRを示し、参照番号20はTテイリング原理−ランダムオリエンテーションを用いるDNA配列決定ベクターへのクローニングを示し、参照番号30は、M13フォワードおよびリバースプライマーを用いるフォワードおよびリバースストランドのヌクレオチド配列の決定を示す。
【図2】再合成組換え抗体遺伝子カセットの図を示す。VHおよびVL領域は、グリセリン−セリンに富んだリンカーで結合している。各々の可変ドメインは、抗原結合に関与する三つの相補性決定領域(CDR)を含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、および配列番号31よりなる群から選択されるCDR−H3配列を有する抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
配列番号32、配列番号33、および配列番号34よりなる群から選択されるCDR−L3配列を有する抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、および配列番号31よりなる群から選択されるCDR−H3配列ならびに配列番号32、配列番号33、および配列番号34よりなる群から選択されるCDR−L3配列を有する抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
感染中にクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)により生成される少なくとも一つの抗原に対してまたはワクチンに対して特異的な抗体の少なくともCDR3領域の候補配列の同定方法であって、
(i)クロストリジウム・ディフィシルに感染したまたはそのワクチンを投与された少なくとも一人の患者から単離されたB細胞で、そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の少なくともCDR3領域を配列決定する工程;ならびに
(ii)その少なくとも一人の患者からのそのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の配列決定された少なくともCDR3領域を関連付けて、クロストリジウム・ディフィシルにより生成される少なくとも一つの抗原に対してまたはワクチンに対して特異的な抗体の少なくともCDR3領域の一連の候補配列を同定する工程であって、その一連の候補CDR3配列の各々またはそれと少なくとも80%の相同性を有する配列が、工程(i)で決定された一連の配列において全体で少なくとも1%の頻度で出現する工程;
を含んでなる方法。
【請求項5】
そのB細胞が末梢B細胞リンパ球および脾臓からのB細胞よりなる群から選択されるものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
その末梢B細胞リンパ球がその少なくとも一人の患者からの血液から単離されたものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
その少なくとも一つの抗原が免疫原である、請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
その少なくとも一人の患者が、クロストリジウム・ディフィシルによる感染に応答する顕著な抗体応答を示す、請求項4〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
その少なくとも一人の患者が、クロストリジウム・ディフィシルによる感染から回復した人である、請求項4〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
その関係付け工程(ii)が、その配列決定された少なくともVHおよび/またはVLCDR3領域からの推定アミノ酸配列を決定し、その推定アミノ酸配列を関係付けることを含んでなる、請求項4〜9にいずれかに記載の方法。
【請求項11】
その関係付け工程(ii)が、その少なくともVHおよび/またはVL領域に含まれる相補性決定領域を同定し、その相補性決定領域を関係付けることを含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
その相補性決定領域がCDR1、CDR2およびCDR3よりなる群から選択されるものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
その関係付け工程(ii)が、その少なくとも一人の患者に感染するクロストリジウム・ディフィシルの株、その少なくとも一人の患者がクロストリジウム・ディフィシルで感染している間にそのB細胞が単離される時点、その少なくとも一人の患者の年齢、その少なくとも一人の患者の性別、およびその少なくとも一人の患者の人種よりなる群の少なくとも一つとさらに関係付ける、請求項4〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
そのB細胞が、その少なくとも一人の患者がクロストリジウム・ディフィシルで感染している間に複数の時点で、その少なくとも一人の患者から単離されたものであり、その関連付け工程(ii)が、そのB細胞が単離されたその少なくとも一人の患者がクロストリジウム・ディフィシルで感染している間の時点と関連付けるものである、請求項4〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
そのB細胞が少なくとも二人の患者から単離されたものであり、そのうちの少なくとも一人がクロストリジウム・ディフィシルによる感染から回復したものであり、且つそのうちの少なくとも一人がクロストリジウム・ディフィシルによる感染から回復したものではなく、その関連付け工程(ii)がクロストリジウム・ディフィシルによる感染からその少なくとも二人の患者の回復に関連付けられるものである、請求項4〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
そのB細胞が少なくとも二人の患者から単離されたものであり、その患者が、その少なくとも一つの抗原を生成するクロストリジウム・ディフィシルの異なる株で感染しており、その関連付け工程(ii)が、B細胞のその配列決定された少なくともVHおよび/またはVLをコードする領域を関連付けして抗体に対する一連の候補配列を同定し、その各々がクロストリジウム・ディフィシルのその異なる株により生成される少なくとも一つの共通の抗原に特異的であるか、またはクロストリジウム・ディフィシルのその異なる株により生成される異なる抗原に特異的である、請求項4〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一つの抗原を生成するクロストリジウム・ディフィシルによる感染の処置用の医薬の製造方法であって、
(i)請求項4〜16のいずれかに記載の方法を行う工程;および
(ii)クロストリジウム・ディフィシルにより生成されるその少なくとも一つの抗原に特異的な少なくとも一つの候補配列を含んでなる少なくとも一つの抗体を合成する工程
を含んでなる方法。
【請求項18】
その合成された少なくとも一つの抗体を薬学的に許容しうる担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせる工程を含んでなる、請求項17に記載の医薬の製造方法。
【請求項19】
少なくとも一つの抗原を生成するクロストリジウム・ディフィシルによる患者の感染の処置方法であって、
(i)請求項4〜16のいずれかに記載の方法を行う工程;
(ii)クロストリジウム・ディフィシルにより生成されるその少なくとも一つの抗原に特異的な少なくとも一つの候補配列を含んでなる少なくとも一つの抗体を合成する工程;および
(iii)その少なくとも一つの生成された抗体の治療有効量をその患者に投与する工程
を含んでなる方法。
【請求項20】
クロストリジウム・ディフィシルにより生成されるその少なくとも一つの抗原に特異的な少なくとも一つの候補配列を同定するデータベースの作成方法であって、
(i)請求項4〜16のいずれかに記載の方法を行う工程;および
(ii)そのデータベースにその方法で作成されたデータを格納する工程
を含んでなる方法。
【請求項21】
クロストリジウム・ディフィシルにより生成されるその少なくとも一つの抗原に特異的な少なくとも一つの候補配列を同定するレポートの発生方法であって、
(i)請求項4〜16のいずれかに記載の方法を行う工程;および
(ii)その方法で作成されたデータを含んでなるレポートを作成する工程
を含んでなる方法。
【請求項22】
ワクチンの有効性の決定方法であって、
(i)そのワクチンを投与された少なくとも一人の患者から単離されたB細胞で、そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の少なくともCDR3領域を配列決定する工程;ならびに
(ii)そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の配列決定された少なくともCDR3領域を関連付けて、そのワクチンに特異的な抗体の少なくともCDR3領域に対する一連の候補配列を同定する工程であって、その一連のCDR3候補配列の各々またはそれと少なくとも80%の相同性を有する配列が、工程(i)で決定された一連の配列において全体で少なくとも1%の頻度で出現するものである工程;
を含んでなる方法。
【請求項23】
関連付け工程(ii)が、そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の配列決定された少なくともCDR3領域を、そのワクチンでのワクチン接種が保護的免疫応答を促進することを意図されたクロストリジウム・ディフィシルで感染された少なくとも一人の患者から単離されたB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の配列決定された少なくともCDR3領域と関連付けることを含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
その関係付け工程(ii)が、その少なくとも一人の患者に感染するクロストリジウム・ディフィシルの株、その少なくとも一人の患者がクロストリジウム・ディフィシルで感染している間にそのB細胞が単離される時点、その少なくとも一人の患者の年齢、その少なくとも一人の患者の性別、その少なくとも一人の患者の人種、およびその配列決定された少なくともVHおよび/またはVLをコードする領域の相補性決定領域よりなる群の少なくとも一つとさらに関係付ける、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
その方法が、そのワクチンでのワクチン接種が保護的免疫応答を促進することを意図されたクロストリジウム・ディフィシルに対する保護的免疫応答を促進することにおけるそのワクチンの有効性を決定する、請求項22〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
ワクチンの有効性を同定するデータベースの作成方法であって、
(i)請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法を行う工程;および
(ii)そのデータベースにその方法で作成されたデータを格納する工程
を含んでなる方法。
【請求項27】
ワクチンの有効性を同定するレポートの発生方法であって、
(i)請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法を行う工程;および
(ii)その方法で作成されたデータを含んでなるレポートを作成する工程
を含んでなる方法。
【請求項28】
患者におけるクロストリジウム・ディフィシル感染を同定する診断用試験方法であって、
(i)その患者から単離されたB細胞で、そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の少なくともCDR3領域を配列決定する工程;
(ii)そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域のその配列決定された少なくともそのCDR3領域を、クロストリジウム・ディフィシルに特異的な抗体の少なくともCDR3領域に対する一連の配列と比較し、その一連のCDR3配列の各々またはそれと少なくとも80%の相同性を有する配列が、工程(i)で決定された一連の配列において全体で少なくとも1%の頻度で出現するか否かを決定する工程;ならびに
(iii)比較工程(ii)の結果を関連付けして、その患者にクロストリジウム・ディフィシル感染が存在するか否かを決定する工程;
を含んでなる方法。
【請求項29】
患者のクロストリジウム・ディフィシル感染への感受性を決定する診断用試験方法であって、
(i)その患者から単離されたB細胞で、そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域の少なくともCDR3領域を配列決定する工程;
(ii)そのB細胞のVHおよび/またはVLをコードする領域のその配列決定された少なくともそのCDR3領域を、クロストリジウム・ディフィシルに特異的な抗体の少なくともCDR3領域に対する一連の配列と比較し、その一連のCDR3配列の各々またはそれと少なくとも80%の相同性を有する配列が、工程(i)で決定された一連の配列において全体で少なくとも1%の頻度で出現するか否かを決定する工程;ならびに
(iii)比較工程(ii)の結果を関連付けして、その患者のクロストリジウム・ディフィシル感染への感受性を決定する工程;
を含んでなる方法。
【請求項30】
請求項28〜29のいずれか1項に記載の診断的試験方法を行うための診断用試験キット。

【公表番号】特表2007−527370(P2007−527370A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506126(P2006−506126)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001619
【国際公開番号】WO2004/094474
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(500030172)ニュウテック ファーマ パブリック リミテッド カンパニー (6)
【Fターム(参考)】