クロストリジウム・ディフィシレ胞子の発芽および伸長を阻害するための方法および組成物
新規の胆汁酸、およびそれらの誘導体を含めたある特定の胆汁酸を用いて、C.ディフィシレ胞子の発芽および/またはC.ディフィシレ細胞の増殖を阻害することができる。本発明の方法および組成物は、限定はしないが、C.ディフィシレ大腸炎などのC.ディフィシレ関連疾患の予防及び治療に有用である。
【発明の詳細な説明】
【政府援助に関する記載】
【0001】
本発明は、米国立衛生研究所による助成金番号N01−AI30050に基づく政府援助によりなされた。米国政府は、本発明に特定の権利を有する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、C.ディフィシレ関連疾患の予防及び治療に関し、さらに詳細には、C.ディフィシレの胞子の発芽および/またはC.ディフィシレ細胞の増殖を阻害する方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile,C.ディフィシレ)はグラム陽性の嫌気性桿菌であり、先進工業国における入院している成人の下痢性疾患の細菌性の原因のもののうち最も高い頻度で認められているものの1つである。微生物は、院内で付着する場合があり、環境要因中に存在する。抗生物質起因性大腸炎および偽膜性大腸炎は、細胞毒素を産生するC.ディフィシレに関連することが多い。抗生物質起因性大腸炎に関連するC.ディフィシレ毒素の頻度は50〜80%であり、偽膜性大腸炎では90〜100%である。
【0004】
抗生物質起因性大腸炎および偽膜性大腸炎に利用可能な治療にもかかわらず、患者の20〜25%は再発を生じる。バンコマイシンおよびメトロニダゾールは効果的だが、治療された被験体には再発する傾向がある。他の治療法としては、毒素結合性ポリマーであるtolevemer(非特許文献1)、および駆虫薬であるニタゾキサニド(非特許文献2)が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Louie et al. (2006) Clin. Infect. Dis. 43:411
【非特許文献2】Med. Letter Drugs Ther. (2006) 48:89
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
再発が頻発することから、特にヒトにおける、C.ディフィシレ関連疾患のさらに効果的な治療および予防法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患の治療および予防に有用な、ある特定の胆汁酸およびそれらの塩、それらの製造方法、それらの使用方法、およびそれらの組成物を提供する。胆汁酸、それらの塩、および本発明の組成物は、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患の治療のための薬剤の調製に使用することができ、限定はしないが、C.ディフィシレ大腸炎が挙げられる。
【0008】
本発明のある態様は、式Iの化合物:
【化1】
【0009】
であり、ここで、
R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される。1つの実施の形態では、この態様は、さらに、これらの化合物の薬学的に許容される塩も包含する。
【0010】
本発明の別の態様は、式Iの化合物:
【化2】
【0011】
であり、ここで、
R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される。1つの実施の形態では、この態様は、さらに、これらの化合物の薬学的に許容される塩も包含する。
【0012】
本発明の追加の態様は、式Iの化合物:
【化3】
【0013】
であり、ここで、
R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され、ここで、R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5は、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5は、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。1つの実施の形態では、この態様は、さらに、これらの化合物の薬学的に許容される塩も包含する。
【0014】
本発明のある態様は、一次胆汁を二次胆汁へと代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含む、プロバイオティクス組成物である。ある特定の実施の形態では、少なくとも1つの細菌株は、クロストリジウム・シンデンス(Clostridium scindens)、クロストリジウム・レプタム(Clostridium leptum)、およびクロストリジウム・ヒラノニス(Clostridium hiranonis)(TO931としても知られる)から選択される。
【0015】
ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは、経口投与用に製剤される。ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは直腸投与用に製剤される。
【0016】
本発明のある態様は、哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する方法であって、式Iの化合物:
【化4】
【0017】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性がある哺乳動物被験体に投与し、被験体におけるC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害し、それによって、前記被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する、各工程を有してなり、ここで、
R1は、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は、−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R1は、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R4は−OHである。ある特定の実施の形態では、R4およびR5は、それぞれ、−OHである。
【0018】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0019】
ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される。
【0020】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される。
【0021】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5は、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5は−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0022】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患はC.ディフィシレ大腸炎である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患は偽膜性大腸炎である。
【0023】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質を投与されている、これから投与されようとしている、または最近投与された被験体である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質は、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択される。
【0024】
ある特定の実施の形態では、被験体は、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しない。
【0025】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、経口投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与である。
【0026】
1つの実施の形態では、被験体はヒトである。
【0027】
本発明のある態様は、哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を治療する方法である。本方法は、C.ディフィシレ関連疾患を有する哺乳動物被験体に、式Iの化合物:
【化5】
【0028】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与し、被験体におけるC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害し、それによって、前記被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する、
各工程を有してなり、ここで、
R1は、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2);−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖のC1〜C10アルキルであり;
R3は−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R1は、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R4は−OHである。ある特定の実施の形態ではR4およびR5は、それぞれ、−OHである。
【0029】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0030】
ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される。
【0031】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される。
【0032】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5は、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5は−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0033】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患はC.ディフィシレ大腸炎である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎である.
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を投与されている、または最近投与された被験体である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質は、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択される。
【0034】
ある特定の実施の形態では、被験体は、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しない。
【0035】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、経口投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与である。
【0036】
1つの実施の形態では、被験体はヒトである。
【0037】
本発明のある態様は、抗生物質の治療を受けている哺乳動物被験体における、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を発症する危険性を低減する方法である。本方法は、抗生物質の治療を受け、かつ、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体に、式Iの化合物:
【化6】
【0038】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与して、被験体におけるC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害し、それによって、前記被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を発症する危険性を低減する工程を有してなり、ここで、
R1は、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は、−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R1は、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R4は−OHである。ある特定の実施の形態ではR4およびR5は、それぞれ、−OHである。
【0039】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0040】
ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される。
【0041】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される。
【0042】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5は、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5は、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0043】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患はC.ディフィシレ大腸炎である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患は偽膜性大腸炎である。
【0044】
ある特定の実施の形態では、抗生物質は、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択される。
【0045】
ある特定の実施の形態では、被験体は、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しない。
【0046】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、経口投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は、経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与である。
【0047】
1つの実施の形態では、前記被験体はヒトである。
【0048】
本発明のある態様は、哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレの増殖を阻害する方法である。本方法は、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で、それらを必要とする哺乳動物被験体に投与して、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害する工程を含む。
【0049】
ある特定の実施の形態では、少なくとも1つの細菌株は、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニス(TO931としても知られる)から選択される。
【0050】
ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは、経口投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は、経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは、直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与を含む。
【0051】
1つの実施の形態では、前記被験体はヒトである。
【0052】
本発明のある態様は、哺乳動物被験体における、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する方法である。本方法は、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体に、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で投与して、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害し、それによって、被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する工程を含む。
【0053】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患はC.ディフィシレ大腸炎である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患は偽膜性大腸炎である。
【0054】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を最近投与された被験体である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質は、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択される。
【0055】
ある特定の実施の形態では、少なくとも1つの細菌株は、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニス(TO931としても知られる)から選択される。
【0056】
ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは、経口投与用に製剤され、例えば、1つの実施の形態では、投与は、経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与を含む。
【0057】
1つの実施の形態では、前記被験体はヒトである。
【0058】
本発明のある態様は、哺乳動物被験体における、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を治療する方法である。本方法は、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で、C.ディフィシレ関連疾患を有する哺乳動物被験体に投与し、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害し、それによって、前記C.ディフィシレ関連疾患を治療する工程を含む。
【0059】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患はC.ディフィシレ大腸炎である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎である。
【0060】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を最近投与された被験体である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質は、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択される。
【0061】
ある特定の実施の形態では、少なくとも1つの細菌株は、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニス(TO931としても知られる)から選択される。
【0062】
ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは、経口投与用に製剤され、例えば、1つの実施の形態では、投与は、経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与を含む。
【0063】
1つの実施の形態では、前記被験体はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】一般的な一次および二次胆汁酸の構造式。コール酸およびケノデオキシコール酸の一次胆汁塩は、典型的には、タウリンまたはグリシンと共役する(タウロコール酸およびグリココール酸のみを示)。通常の腸内細菌叢は、コール酸およびケノデオキシコール酸からタウリルおよびグリシル基を脱共役する。脱共役しされた一次胆汁塩は、細菌叢によって、それぞれデオキシコール酸およびリトコール酸へとさらに代謝される。
【図2】曝露時間の関数としてのタウロコール酸に対するC.ディフィシレ胞子の反応率を表すグラフ。C.ディフィシレ胞子は、0.1%のタウロコール酸を含む水に懸濁した。1、5、10、30、および60分に、胞子を逐次希釈し、タウロコール酸の非存在下、BHIS寒天上に塗布した(plated)。一晩増殖させた後、コロニーを数え、データをBHIS(TA)上に塗布した胞子のものと比較した。データは3つの独立した実験の平均であり、エラーバーは平均からの1標準偏差を表す。
【図3】C.ディフィシレ胞子の効率的な回収に必要とされるタウロコール酸の量を表すグラフ。C.ディフィシレ胞子を、濃度を増加させたタウロコール酸を含む水で培養し、逐次希釈し、タウロコール酸の非存在下、BHIS寒天上に塗布した(plated)。一晩増殖させた後、コロニーを数え、データをBHIS(TA)上に塗布した胞子のものと比較した。データは3つの独立した実験の平均であり、エラーバーは平均からの1標準偏差を表す。
【図4A】C.ディフィシレの発芽および増殖における一次胆汁塩の影響を示す一連のグラフ。(A)C.ディフィシレCD196胞子を精製し、BHIS単独(●)、緩衝液中、1%のタウロコール酸(▼)、または1%のタウロコール酸を含むBHIS(◆)、1%のグリココール酸(▲)、または1%のコール酸(■)に懸濁した。さまざまな時点における光学密度の、開始時の光学密度に対する比を、時間に対してプロットした。
【図4B】C.ディフィシレの発芽および増殖における一次胆汁塩の影響を示す一連のグラフ。(B)C.ディフィシレCD196胞子を精製し、グリシン緩衝液(1.3mM)(▲)、緩衝された1%のタウロコール酸(▼)、またはグリシン緩衝液+タウロコール酸(◆)に懸濁した。発芽をパネルAに関して測定した。
【図4C】C.ディフィシレの発芽および増殖における一次胆汁塩の影響を示す一連のグラフ。(C)C.ディフィシレUK14胞子を精製し、グリシン緩衝液(1.3mM)(▲)、緩衝された1%のタウロコール酸(▼)、またはグリシン緩衝液+タウロコール酸(◆)に懸濁した。発芽をパネルAに関して測定した。
【図4D】C.ディフィシレの発芽および増殖における一次胆汁塩の影響を示す一連のグラフ。(D)増殖期のC.ディフィシレ(実線)および増殖期のウェルシュ菌(C.perfringens)(破線)をBHIS単独(●)、BHIS(TA)(◆)、またはBHIS+0.1%のケノデオキシコール酸(×)で増殖させた。エラーバーは、平均からの1標準偏差を表す。
【図5A】C.ディフィシレの発芽および増殖におけるデオキシコール酸の影響を示す一対のグラフ。C.ディフィシレ胞子を精製し、BHIS単独(●)またはBHIS(TA)(◆)またはBHIS+1%のデオキシコール酸(▲)に懸濁した。
【図5B】C.ディフィシレの発芽および増殖におけるデオキシコール酸の影響を示す一対のグラフ。増殖期のC.ディフィシレ(実線)および増殖期のウェルシュ菌(C.perfringens)(破線)をBHIS単独(●)またはBHIS+0.1%のデオキシコール酸(▲)で増殖させた。エラーバーは、平均からの1標準偏差を表す。
【図6A】C.ディフィシレのコロニー形成のケノデオキシコール酸による阻害を示す一対の棒グラフ。ケノデオキシコール酸(CDCA)の存在下および非存在下における、タウロコール酸(TA)に応答したコロニー形成。
【図6B】C.ディフィシレのコロニー形成のケノデオキシコール酸による阻害を示す一対の棒グラフ。ケノデオキシコール酸(CDCA)の存在下および非存在下における、コール酸(CA)に応答したコロニー形成。各グラフにおけるY軸は、対数表示であることに留意されたい。
【図7】ケノデオキシコール酸によるC.ディフィシレの発芽阻害を表すグラフ。C.ディフィシレ胞子は、BHISのみ(●)、BHIS+0.1%CDCA(▼)、BHIS+0.1%TA(◆)、BHIS+0.1%TA/0.1%CDCA(■)またはBHIS+1.0%TA/0.1%CDCA(▲)に懸濁した。表示時点におけるOD600の、T0におけるOD600に対する比が、時間に対してプロットされている。データ点は、3つの独立した実験の平均であり、エラーバーは、平均からの1つの標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、以下の説明に記載された、または図面に例証された構成要素の構成及び配置の詳細への適用に限定されない。本発明は、他の実施の形態が可能であり、さまざま方法で実施または実行される。また、本明細書で用いられる語句および専門用語は、説明の目的であって、限定とみなされるべきではない。「含める」、「含む」、または「有する」、「含有する」、「包含する」、およびおよびそれらのバリエーションの使用は、本明細書では、その前に列挙される項目およびそれらの等価物ならびに追加の項目を網羅することを意味する。
【0066】
本発明は、少なくとも一部には、ある特定の胆汁酸およびそれらの塩がC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害するという発明者による驚くべき発見に基づいている。この特性を備えた胆汁酸およびそれらの塩は、12−デオキシ構造を有し、例えば、ケノデオキシコール酸およびその7β−ヒドロキシエピマーであるウルソデオキシコール酸が挙げられる。C.ディフィシレの胞子の発芽阻害は、結果的には、大腸の嫌気性環境で生じうる、増殖期のC.ディフィシレのその後の(downstream)発生および増殖を阻害する。したがって、本発明は、抗生物質関連性の下痢(C.ディフィシレ大腸炎としても知られる)および偽膜性大腸炎を含めたC.ディフィシレ関連疾患の予防および治療に有用な組成物および方法に関する。
【0067】
クロストリジウム・ディフィシレによる胞子形成は、院内感染性のC.ディフィシレ関連疾患の克服にとって、大変な障害である。胞子は、駆除するのが難しい汚染環境を作り出す、加熱、放射線、化学物質、および抗生物質に対して耐性である。しかしながら、病気を引き起こすには、胞子は、増殖性細胞として発芽および成長する必要がある。
【0068】
C.ディフィシレの増殖性細胞は、酸素に対して非常に敏感である。大腸の嫌気性環境の外で生き延びるには、細菌は、胞子の形態でなければならない。よって、その環境から得られる胞子の形態のC.ディフィシレが、病気を発症すると一般に考えられている。毒素は胞子ではなく細胞によって産生されることから、胞子は、恐らくは、消化管で発芽し、増殖性細胞として成長し、毒素を産生する。しかしながら、宿主が排泄するC.ディフィシレ細菌は、長期にわたって生存するためには胞子の形態の形態でなければならない。胞子形成の間の形態的変化はクロストリジウム属およびバシラス属とよく似ているが、クロストリジウム属の胞子形成および発芽は、モデル生物の枯草菌(Bacillus subtilis)のようには、よく研究されていない。簡単に説明すれば、胞子形成は、栄養制限条件下で開始され、細胞を2つの不均等な区画に分割する非対称に配置された分裂隔壁の形成につながり、その区画のそれぞれが染色体の1つのコピーを含む。大きいほうの母細胞区画は、次に、前胞子を飲み込み、前胞子の成熟を助ける。Hilbert et al. (2004) Microbiol. Mol. Biol. Rev. 68:234-262。ペプチドグリカン皮質および外被タンパク質の幾つかの層の添加は、母細胞の溶解による環境への放出より先に生じる。Henriques et al. (2007) Annu. Rev. Microbiol. 61:555-588。
【0069】
ひとたび母細胞から放出されると、胞子は代謝的に休眠状態ではあるが、多くのタイプの環境障害に対して非常に耐性である。条件が増殖に適するようになると、胞子は発芽し、増殖性細胞として成長する。枯草菌では、発芽は、L−アラニンまたはアスパラギン、グルコース、フルクトース、およびカリウムイオンの混合物によって誘発することができる。これらの環境信号を感知することに関与する受容体は、GerA、GerB、およびGerKである。Irie et al. (1996) J. Gen. Appl. Microbiol. 42:141-153; Moir et al. (1979) J. Gen. Microbiol. 124:165-180。発芽が感知された後、カルシウムジピコリネート(Ca2+−DPA)の大きな貯蔵(depot)が放出され、コアが水和され、皮質が分解されて、代謝が始まる。GerA、GerB、およびGerKの同族体は、幾つかのバシラス属および多くのクロストリジウム属に存在するが、C.ディフィシレには存在せず、C.ディフィシレがさまざまな種類の環境信号に応答することを示唆している。実際、さまざまな種類の胞子の発芽は、さまざまな発芽によって誘発される。例えば、巨大菌(Bacillus megaterium)の胞子では、L−プロリンは発芽するが、プリン・リボヌクレオシドおよびアミノ酸は、炭疽菌(Bacillus anthracis)の胞子の共同的発芽物質として作用する。
【0070】
C.ディフィシレ胞子の発芽および成長に関しては、1つには、遺伝的手段の欠如を理由として、以前は、掘り下げた研究はされていなかった。具体的には、発芽段階は、胞子の再水和およびCa2+−DPAの放出によって生じる光学密度の変化として古典的に定義され、依存性の現象としては研究されていなかった。先行研究は、胆汁塩であるタウロコール酸が、環境表面および排泄物から回収されたC.ディフィシレ胞子のコロニー形成を増進することを示した。Bliss et al. (1997) Diagn. Microbiol. Infect. Dis. 29:1-4; Weese et al. (2000) J. Vet. Diagn. Invest. 12:449-452; Wilson et al. (1982) J. Clin. Microbiol. 15:443-446。同様に、C.ディフィシレ胞子をリゾチームおよびチオグリコール酸で処理するとコロニー形成が増進されることが報告されている。Kamiya et al. (1989) J. Med. Microbiol. 28:217-221; Wilson (1983) J. Clin. Microbiol. 18:1017-1019。コロニー形成におけるこれらの影響は明らかであるが、処理が発芽に及ぼすかもしれない特異的効果が何であるかを識別することは困難である。
【0071】
胆汁は、肝臓で産生され、胆嚢に貯蔵される。消化を助けるため、胆嚢は胆汁を十二指腸内に分泌し、脂肪およびコレステロールの吸収を助ける。肝臓によって産生された一次胆汁は、主に、タウリンまたはグリシンと共役したコール酸およびケノデオキシコール酸からなる(図1)。Ridlon et al. (2006) J. Lipid Res. 47:241-259。回腸末端部を通過する間に、胆汁は活発に再吸収され、肝臓へと再利用される。しかしながら、400〜800mgの胆汁が、回腸から盲腸内へと毎日通過し、ここで、正常な、良性の細菌叢によって、生体内変換反応のための基質となる。Thomas et al. (2001) Gut 49:835-842; Vlahcevicet al. (1996) In D. Zakim and T. Boyer (ed.), Hepatology: a textbook of liver disease, 3rd ed. W. B. Saunders Company, Philadelphia, PA。
【0072】
ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)を含めた細菌の多くの異なる種は、一次胆汁塩から共役アミノ酸を取り除く胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)を、それらの細胞表面に発現する。この加水分解反応は、共役した一次胆汁塩が、本質的にはヒト盲腸において検出されない程度まで、完了するまで継続すると思われる。一部のクロストリジウム属はBSHを発現するが、C.ディフィシレについてはいずれにも記載されておらず、他の属のBSHと同族のオープンリーディングフレーム生成物は存在しない。
【0073】
非共役の一次胆汁塩は、結腸において、わずかな比率の細菌種に取り込まれる。Ridlon et al. (2006) J. Lipid Res. 47:241-259。これらの種の1つである、クロストリジウム・シンデンスは、非共役の一次胆汁塩をサイトゾル内に能動的にに輸送し、一連の酵素反応を通じて、コール酸およびケノデオキシコール酸を、それぞれ、二次胆汁塩であるデオキシコール酸およびリトコール酸に転換する(図1)。Mallonee et al. (1996) J. Bacteriol. 178:7053-7058; Wells et al. (2000) Appl. Environ. Microbiol. 66:1107-1113; White et al. (1980) Steroids 35:103-109。これらの二次胆汁塩は、細菌から細胞外環境へと分泌され、最終的には宿主によって排泄される。
【0074】
本明細書では「C.ディフィシレ関連疾患」とは、C.ディフィシレによる、腸管における、望まれていない増殖、毒素の産生、または組織浸潤を含む、任意の疾患のことをいう。C.ディフィシレ関連疾患は、医薬業界において周知であり、具体的には、抗生物質関連性の下痢(C.ディフィシレ大腸炎としても知られる)、偽膜性大腸炎、およびC.ディフィシレ関連性の中毒性巨大結腸症が挙げられる。C.ディフィシレ大腸炎は、一般に、少なくとも1種類のC.ディフィシレ毒素の存在に関連した、おびただしい水様下痢性の病気のことをいう。偽膜性大腸炎とは、C.ディフィシレによる、血性の下痢、熱、および腸壁の浸潤によってさらに特徴づけられる、重症型のC.ディフィシレ大腸炎のことをいう。C.ディフィシレ毒素の検出試験が出現する前は、ほとんどの場合、大腸内視鏡検査またはS状結腸鏡検査によって診断されていた。結腸または直腸の表面における「偽膜」の出現は、病態の診断である。偽膜は、主に、炎症性デブリおよび白血球で構成される。
【0075】
本発明に従った有用な化合物は、式Iの胆汁酸:
【化7】
【0076】
およびその薬学的に許容される塩であり、ここで、
R1は、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、
ここで:
R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は、−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される。
【0077】
1つの実施の形態では、R1は、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0078】
1つの実施の形態では、R1は、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択される。
【0079】
1つの実施の形態では、R4は、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択される。
【0080】
1つの実施の形態では、R5は、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択される。
【0081】
1つの実施の形態では、R1は−CO2(R2)であり、ここで、R2はメチルであり;R4およびR5は、それぞれ、−Oアシルであり、ここで、アシルはC(=O)CH3である。
【0082】
1つの実施の形態では、R1は−CO2(R2)であり、ここで、R2はメチルであり;R4およびR5は、それぞれ、−OHである。
【0083】
1つの実施の形態では、R4は−OHである。
【0084】
1つの実施の形態では、R4およびR5は、それぞれ、−OHである。
【0085】
1つの実施の形態では、式Iの化合物はケノデオキシコール酸である。
【0086】
1つの実施の形態では、式Iの化合物はウルソデオキシコール酸である。
【0087】
1つの実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。
【0088】
1つの実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OH;R5は、−OHである。
【0089】
1つの実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。
【0090】
1つの実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。
【0091】
1つの実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;R3は、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0092】
1つの実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;R3は、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0093】
1つの実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;R3は−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5は−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5は、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0094】
上述のように、個別の化合物に加えて、本発明に従った、前述の化合物のそれぞれの薬学的に許容される塩もまた有用である。薬学的に許容される塩について、以下にさらに開示する。
【0095】
本発明の目的では、化学元素は、化学および物理ハンドブック、第75版、CASバージョンの内表紙の元素周期表に従って識別され、特定の官能基は、一般に、そこに記載されるように定義される。さらには、有機化学の一般的原理、ならびに、特定の官能基および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999; Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001; Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989; Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載されている。
【0096】
本発明の化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体の形態で存在して差し支えない。本発明は、本発明の範囲内に含まれる、シスおよびトランス異性体、RおよびS型のエナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含めた、これらすべての化合物を意図している。
【0097】
ジアステレオマーは、具体的には、1つの立体中心の配置のみが異なるジアステレオマーである、エピマーも含む。
【0098】
異性体/エナンチオマーまたはエピマーが好ましい場合には、一部の実施の形態では、実質的に、対応するエナンチオマーまたはエピマーを含まないものが提供されて差し支えなく、これは、「光学的に豊富」とも称されうる。本明細書では「光学的に豊富」とは、1つのエナンチオマーまたはエピマーの割合が非常に大きい状態で化合物が構成されることを意味する。ある特定の実施の形態では、本発明の化合物は、少なくとも約90重量%が、好ましいエナンチオマーまたはエピマーで構成される。他の実施の形態では、化合物は、少なくとも約95重量%、98重量%、または99重量%が、好ましいエナンチオマーまたはエピマーで構成される。好ましいエナンチオマーまたはエピマーは、キラル高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)およびキラル塩の形成および結晶化を含めた、当業者に既知の任意の方法によって、ラセミ混合物から単離されて差し支えなく、あるいは非対称の合成によって調製されてもよい。例えば、Jacques et al., Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience, New York, 1981); Wilen et al., Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw−Hill, NY, 1962); Wilen, Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)を参照のこと。
【0099】
本発明の化合物および組成物において、「アルキル」という用語は、単一の水素原子の除去による、1〜20個の炭素原子を含む炭化水素部分に由来する、直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基を含む、脂肪族基のラジカルのことをいう。ある特定の実施の形態では、「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基を含めた、飽和脂肪族基のラジカルのことをいう。一部の実施の形態では、本発明に用いられるアルキル基は、1〜20個の炭素原子を含む。ある特定の実施の形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に10個以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖ではC1〜C10、分岐鎖ではC3〜C10)、さらに好ましくは、6個以下であり、さらに好ましくは4個以下である。アルキルラジカルの例としては、限定はしないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、sec−ペンチル、イソ−ペンチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。直鎖アルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、およびn−デシルが挙げられる。「メチル」という用語は、1価のラジカルである−CH3のことをいう。分岐鎖アルキル基としては、具体的には、限定はしないが、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、およびイソヘキシルが挙げられる。
【0100】
ある特定の実施の形態では、「アルキル」という用語は、1つ以上の置換基を有するアルキル基、すなわち、置換アルキル基のことをいう。アルキル基の置換基としては、限定はしないが、結果的に安定した部分を形成する、本明細書に記載される任意の置換基が挙げられる(例えば、脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど。ここで、それぞれの基は、さらに置換されていてもいなくてもよい)。
【0101】
「脂肪族」という用語は、本明細書では、飽和および不飽和の両方の、直鎖(すなわち、非分岐鎖)、分岐鎖、非環式、および環式(すなわち、炭素環式)の炭化水素を含み、これらは、随意的に、1つ以上の官能基で置換されている。当業者に認識されるように、本明細書では「脂肪族」は、限定はしないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルの部分を含むことが意図されている。よって、本明細書では「アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環式のアルキル基を含む。同様の規則が「アルケニル」、「アルキニル」などの他の一般的用語にも適用される。さらには、本明細書では、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などの用語は、置換および非置換の両方の基を包含する。ある特定の実施の形態では、本明細書では、「脂肪族」とは、1〜20個の炭素原子を有する、それらの脂肪族基(環式、非環式、置換、非置換、分岐または非分岐)を指すのに用いられる。脂肪族基の置換基としては、限定はしないが、結果的に安定した部分を形成する、本明細書に記載される任意の置換基が挙げられる(例えば、脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど。ここで、それぞれの基は、さらに置換されていてもいなくてもよい)。
【0102】
「シアノ」という用語は、本明細書では、化学式(−CN)の基のことをいう。
【0103】
「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、本明細書では、フッ素(フルオロ、−F)、塩素(クロロ、−Cl)、臭素(ブロモ、−Br)、およびヨウ素(ヨード、−I)から選択される原子のことを称する。
【0104】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」とは、−OH基のことをいう。「アルコキシ」とは−OR基のことをいい、ここで、Rは、先に定義したアルキル基である。「アミノ」とは−NH2基のことをいう。「アルキルアミノ」とは−NHRまたは−NRR'基のことをいい、ここでRおよびR'は、独立して、先に定義したアルキル基またはシクロアルキル基から選択される。
【0105】
「アシル」とは、−C(=O)R基のことをいい、ここでRは、Hまたは先に定義したアルキルである。
【0106】
「胆汁塩」には、以下に示す、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、およびウルソデオキシコール酸を含めた化合物が含まれる。
【化8】
【0107】
本明細書では、規定される場合、または文脈によってそうでないことが必須でありうる場合を除いて、本発明の「胆汁塩」は、遊離のカルボン酸および対応するカルボン酸塩の両方を包含し、逆の場合もまた同様である。例えば、「コール酸(塩)」という用語は、遊離酸(コール酸)、ならびに対応するカルボン酸塩(コール酸塩)の両方を称しうる。同様に、「リトコール酸(塩)」という用語は、遊離酸(リトコール酸)ならびに対応するカルボン酸塩(リトコール酸塩)の両方を称しうる。同様に、「ケノデオキシコール酸(塩)」という用語は、遊離酸(ケノデオキシコール酸)ならびに対応するカルボン酸塩(ケノデオキシコール酸塩)の両方を称しうる。限定することは意味しないが、「ウルソデオキシコール酸(塩)」という用語は、遊離酸(ウルソデオキシコール酸)ならびに対応するカルボン酸塩(ウルソデオキシコール酸塩)の両方を称しうる。
【0108】
限定はしないが、上述のものを含めた任意の胆汁塩の「共役」には、カルボン酸塩またはカルボン酸の官能基を、グリシン、タウリン、またはそれらの誘導体のアミノ基に由来するアミドペプチド結合へと変換することも含まれる。同様に、得られたアミド結合の「脱共役」には、グリシン、タウリン、またはそれらの誘導体を開裂または除去して、元の胆汁塩カルボン酸を生成することが含まれる。ケノデオキシコール酸の代表的な共役および脱共役を以下に示す。
【化9】
【0109】
「置換」または「〜で置換した」には、これらの置換が、置換原子および置換基の許容される価数に従い、置換が、例えば、転位、環化、脱離などによって自然に変換を被らない、結果的に安定な化合物を生じるという暗黙の条件が含まれることが理解されよう。
【0110】
本明細書では、「置換した」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことが意図されている。幅広い態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。例証される置換基としては、例えば、上述のものなどが挙げられる。適切な有機化合物について、許容される置換基は、1つ以上であって差し支えなく、同一であっても異なっていてもよい。本発明の目的では、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/または、ヘテロ原子の価数を満たす、本明細書に記載される有機化合物の任意の許容される置換基を有しうる。本発明は、有機化合物の許容される置換基によって、いかなる方法によっても制限されることは意図されていない。
【0111】
本発明のある特定の化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体の形態で存在しうる。本発明は、本発明の範囲内に含まれる、シスおよびトランス異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含めた、これらすべての化合物を意図している。追加の非対称の炭素原子は、アルキル基などの置換基に存在して差し支えない。これらすべての異性体、ならびにそれらの混合物は、本発明に含まれることが意図されている。ある特定の実施の形態では、本発明は、本明細書に概説される任意の構造で表される化合物に関し、ここで、化合物は単一の立体異性体である。
【0112】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが望ましい場合には、非対称の合成、またはキラル補助基を用いた誘導によって調製することができ、ここで、得られたジアステレオマー混合物は分離され、補助基は純粋な所望のエナンチオマーを提供するために開裂される。あるいは、分子がアミノ基などの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含む場合には、ジアステレオマー塩は、適切な光学的に活性な酸または塩基を用いて形成され、続いて、ジアステレオマーを分割し、当技術分野で周知の分別結晶法またはクロマトグラフ法によって形成し、その後、純エナンチオマーを回収する。
【0113】
本発明のある特定の態様は、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体における、C.ディフィシレ関連疾患の発症に対する予防に効果的な方法である。本明細書では、「C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体」とは、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に、曝露されようとしている、曝露されている、または曝露されたが、C.ディフィシレ関連疾患はまだ発症していない被験体である。1つの実施の形態では、「被験体がC.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性」は、C.ディフィシレ大腸炎の発症に関連した少なくとも1種類の薬剤または条件に、曝露されようとしている、曝露されている、または曝露されたが、C.ディフィシレ大腸炎はまだ発症していない被験体である。1つの実施の形態では、「被験体がC.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性」は、偽膜性大腸炎の発症に関連した少なくとも1種類の薬剤または条件に、曝露されようとしている、曝露されている、または曝露されたが、偽膜性大腸炎はまだ発症していない被験体である。
【0114】
本明細書では「C.ディフィシレ関連疾患の発症に対する少なくとも1つの薬剤または条件」とは、C.ディフィシレ関連疾患の発症に対する抗生物質および抗生物質による治療のことをいう。C.ディフィシレ関連疾患の発症に対する抗生物質として、具体的には、限定はしないが、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン系の抗生物質、およびセファロスポリン系の抗生物質が挙げられる。
【0115】
フルオロキノロン系の抗生物質として、具体的には、限定はしないが、バロフロキサシン、シプロフロキサシン、ジフロキサシン、エンロフロキサシ、フレロキサシン、ガチフロキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、マルボフロキサシン、モキシフロキシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オルビフロキサシン、パズフロキサシン、ペルフロキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、およびトスフロキサシンが挙げられる。
【0116】
セファロスポリン系の抗生物質として、具体的には、限定はしないが、セファセトリル、セファクロメジン、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロラム、セファロリジン、セファロチン、セハパロール、セファピリン、セファトリジン、セファザフル、セファゼドン、セファゾリン、セフブペラゾン、セフカネル、セフカペン、セフクリジン、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェドロロール、セフェムピドン、セフェピム、セフェタメト、セフェトリゾール、セフィビトリル、セフィキシム、セフルプレナム、セフマチレン、セフメノキシム、セフメピジウム、セフメタゾール、セフミノックス、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォセリス、セフォタキシム、セフォテタン、セフォベシン、セフォキサゾール(cefoxazole)、セフォキシチン、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピロム、セフポドキシム、セフプロジル、セフキノム、セフラジン、セフロチル、セフロキサジン、セフスミド、セフタロリン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾル、セフチブテン、セフチオフル、セフチオレン(ceftiolene)、セフチオキシド、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフラセチム(cefuracetime)、セフロキシム、セフゾナム、およびロラカルベフが挙げられる。
【0117】
C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されようとしている被験体は、これらの薬剤または条件に曝露されることが予期されている被験体である。例えば、1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されようとしている被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質を服薬することまたは前記抗生物質で治療されることが予期されている被験体である。
【0118】
C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されている被験体は、これらの薬剤または条件に現在曝露されている被験体である。例えば、1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されている被験体は、現在、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質を服薬している、または前記抗生物質で治療されている被験体である。
【0119】
C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されている被験体は、これらの薬剤または条件に曝露されたが、現在は曝露されていない被験体である。例えば、1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されている被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質を用いた一連の治療を最近完了した被験体である。1つの実施の形態では、「最近完了した」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で60日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近完了した」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で30日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近完了した」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で14日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近完了した」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で7日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。
【0120】
したがって、一部の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体は、式Iの化合物またはそれらの治療的に許容される塩を投与され、それと同時に、被験体がC.ディフィシレ関連疾患の発症に対する少なくとも1つの薬剤または条件に現在、曝露されている。C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する、本発明の化合物および薬剤のための投薬スケジュールは、全く同一でありうるが、もしそれらが重複するならば、必ずしも同一である必要はない。
【0121】
1つの実施の形態では、本発明の化合物の投与は、被験体がC.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されるのに伴って、または曝露されている期間中に開始することができ、その後、被験体がC.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露される期間を過ぎて継続することもできる。
【0122】
1つの実施の形態では、本発明の化合物の投与は、被験体がC.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露される期間の72時間前に始めることができ、次いで、被験体がC.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されている期間中、および期間経過後も継続できる。
【0123】
本発明のある特定の態様は、C.ディフィシレ関連疾患を有する哺乳動物被験体における、C.ディフィシレ関連疾患の治療に効果的な方法である。本明細書では、「C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体」とは、C.ディフィシレ関連疾患の少なくとも1つの他覚的徴候を有する被験体である。1つの実施の形態では、「C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体」とは、C.ディフィシレ関連疾患を有する疑いのある被験体である。1つの実施の形態では、「C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体」とは、C.ディフィシレ関連疾患を有すると診断された被験体である。1つの実施の形態では、「C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体」とは、C.ディフィシレ大腸炎を有すると診断された被験体である。1つの実施の形態では、「C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体」とは、偽膜性大腸炎を有すると診断されたが、まだ偽膜性大腸炎は進行していない被験体である。
【0124】
1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に、現在、曝露されている被験体である。例えば、1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1種類の抗生物質を現在服薬している被験体である。
【0125】
1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に、最近、曝露された被験体である。例えば、1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1種類の抗生物質を最近投与された被験体である。1つの実施の形態では、「最近投与された」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で60日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近投与された」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で30日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近投与された」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で14日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近投与された」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で7日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。
【0126】
C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、本発明の化合物を、C.ディフィシレ関連疾患の治療に適した別の薬剤と同時に服薬することができる。例えば、被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の治療を目的として、本発明の化合物およびバンコマイシンまたはメトロニダゾールなどの抗生物質を投与されうる。本発明の化合物およびC.ディフィシレ関連疾患の治療に適した他の薬剤の投薬スケジュールは、全く同一でありうるが、それらが重複することを条件として、必ずしも同一である必要はない。
【0127】
胆汁塩の他の徴候
ウルソデオキシコール酸、他の胆汁酸、およびそれらの塩は、胆汁塩の欠乏、肝疾患、胆石、嚢胞性線維症に関連した消化管の合併症、アルコール誘発性の二日酔い、薬物中毒、胆嚢手術後の結腸癌、および腸における脂肪および脂質の消化不良に関連した欠乏を含めた、C.ディフィシレ関連疾患以外の病状を治療するために、しばしば、被験体に投与される。米国特許第5,415,872号明細書。これらの病状のためのウルソデオキシコール酸の通常の経口投与量は、1日に1回または2回、2〜15mg/kg体重である。ウルソデオキシコール酸の高投与量は、しばしば、下痢を含めた望ましくない副作用に関連している。
【0128】
本発明の1つの実施の形態では、被験体は、胆汁酸またはそれらの塩が治療に適応される、C.ディフィシレ関連疾患以外にこれらの病状を有しない。すなわち、1つの実施の形態では、本発明の被験体は、ほかに、胆汁塩の欠乏、肝疾患、胆石、嚢胞性線維症に関連する消化管の合併症、アルコール誘発性の二日酔い、薬物中毒、胆嚢手術後の結腸癌、および腸における脂肪および脂質の消化不良に関連した欠乏を有しない。
【0129】
本発明の1つの実施の形態では、被験体は、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性を除き、胆汁酸またはそれらの塩が治療に適応される、他の病状を有しない。すなわち、1つの実施の形態では、本発明の被験体は、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性はあるが、ほかに、胆汁塩欠乏、肝疾患、胆石、嚢胞性線維症に関連する消化管の合併症、アルコール誘発性の二日酔い、薬物中毒、胆嚢手術後の結腸癌、および腸における脂肪および脂質の消化不良に関連した欠乏を有しない。
【0130】
本発明のさまざまな実施の形態では、本発明の胆汁酸またはそれらの塩は、もっぱら、C.ディフィシレ関連疾患の予防、C.ディフィシレ関連疾患の発症の危険性の低減、またはC.ディフィシレ関連疾患の予防の目的で、投与される。
【0131】
製剤化−単独または組合せ
1つの実施の形態では、本発明の胆汁酸またはそれらの塩は、単一の胆汁酸またはその塩である。例えば、1つの実施の形態では、被験体に投与される式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの塩であり、本質的には他の胆汁酸またはそれらの塩を含まない。
【0132】
1つの実施の形態では、本発明の胆汁酸またはそれらの塩は、主に、単一の胆汁酸またはそれらの塩を含むように製剤化される。この実施の形態によれば、単一の胆汁酸またはそれらの塩は、特定の胆汁塩製剤の少なくとも75パーセント、少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、または少なくとも95パーセントを占める。例えば、1つの実施の形態では、被験体に投与される式Iの化合物は、少なくとも80パーセントのケノデオキシコール酸またはそれらの塩である。別の例として、1つの実施の形態では、被験体に投与される式Iの化合物は、少なくとも95パーセントのケノデオキシコール酸またはそれらの塩である。
【0133】
1つの実施の形態では、本発明の胆汁酸またはそれらの塩は、胆汁酸またはそれらの塩の組合せとして製剤化される。例えば、1つの実施の形態では、被験体に投与される式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの塩および、少なくとも1種類の追加の胆汁酸またはそれらの塩を含む。例えば、1つの実施の形態では、被験体に投与される式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの塩および、ウルソデオキシコール酸またはそれらの塩を含む。胆汁酸またはそれらの塩は、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、またはそれ以上の種類の胆汁酸およびそれらの塩を含みうる。
【0134】
本発明のさまざまな実施の形態では、本発明の化合物は、単に、C.ディフィシレ関連疾患の予防、C.ディフィシレ関連疾患の発症の危険性の低減、またはC.ディフィシレ関連疾患の予防の目的のためだけに、被験体に投与される。
【0135】
抗発芽
本発明のさまざまな態様は、インビボを含めた、C.ディフィシレの胞子の発芽の阻害を引き起こす方法である。上記のように、今回、ある特定の胆汁酸、例えば式Iの化合物およびそれらの塩が、C.ディフィシレの胞子の発芽を阻害することが発見された。本明細書では、「C.ディフィシレの胞子の発芽の阻害」とは、対照と比較して測定可能な量または測定可能な程度、C.ディフィシレの胞子の発芽を低減することを意味する。しかしながら、測定可能な量または測定可能な程度は、必ずしも完全または100パーセントである必要はない場合がありうる。例えば、1つの実施の形態では、「C.ディフィシレの胞子の発芽の阻害」とは、対照と比較して少なくとも10パーセント、C.ディフィシレの胞子の発芽を低減することを意味する。他の実施の形態では、「C.ディフィシレの胞子の発芽の阻害」とは、対照と比較して、少なくとも20パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセント、少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、または少なくとも90パーセント、C.ディフィシレの胞子の発芽を低減することを意味する。
【0136】
本発明のさまざまな態様は、インビボを含めた、C.ディフィシレの増殖の阻害を引き起こす方法である。上記のように、ある特定の胆汁酸、例えば式Iの化合物およびそれらの塩がC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害することが発見された。また上記のように、胞子発芽を阻害することによって、増殖期のC.ディフィシレのその後の発生および増殖も阻害することが可能である。さらには、抗発芽活性を有するある特定の化合物は、増殖期のC.ディフィシレの増殖も阻害することができる。例えば、ケノデオキシコール酸およびウルソデオキシコール酸は、C.ディフィシレの抗発芽作用に加えて、増殖期のC.ディフィシレの増殖を阻害することもできる。本明細書では、「C.ディフィシレの増殖の阻害」とは、対照と比較して、測定可能な量または測定可能な程度、C.ディフィシレの増殖を低減することを意味する。しかしながら、測定可能な量または測定可能な程度は、必ずしも完全または100パーセントである必要はない場合もありうる。例えば、1つの実施の形態では、「C.ディフィシレの増殖の阻害」とは、C.ディフィシレby対照と比較して、C.ディフィシレの増殖を少なくとも10パーセント低減することを意味する。他の実施の形態では、「C.ディフィシレの増殖の阻害」とは、対照と比較して、少なくとも20パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセント、少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、または少なくとも90パーセント、C.ディフィシレの増殖を低減することを意味する。
【0137】
ケノデオキシコール酸などの本明細書に記載する胆汁塩、およびタウリンおよびサルコシンメチルエステルなどの共役試薬の多くは、Sigma−Aldrich社などの供給元から市販され、次のものが挙げられる:ケノデオキシコール酸ナトリウム(CAS番号:2646−38−0;Sigma−Aldrich社カタログ#C8261);ウルソデオキシコール酸(Sigma−Aldrich社カタログ#U5127);コール酸ナトリウム(CAS番号:206986−87−0;Sigma−Aldrich社カタログ#270911);デオキシコール酸ナトリウム(CAS番号:302−95−4;Sigma−Aldrich社カタログ#D6750);タウリン(CAS番号:107−35−7;Sigma−Aldrich社カタログ#T0625);サルコシンメチルエステルHCl(CAS番号:13515−93−0;Sigma−Aldrich社カタログ#84570)。
【0138】
本発明によれば有用でありうる追加の胆汁塩は、ステラロイド社(Steraloids Inc.,米国ロードアイランド州ニューポート所在)およびVWR社(米国ペンシルベニア州ウェストチェスター所在)などの追加の供給元から市販されている。例えば、次の化合物は、ステラロイド社から市販されている:5β−コラン酸−n−(2−スルホエチル)−アミド(カタログ番号C0835−000);5β−コラン酸−3α,7α−ジオール3−酢酸メチルエステル(カタログ番号C0950−000);5β−コラン酸−3α,7α−ジオール二酢酸メチルエステル(3α,7α−ビス(アセチルオキシ)−5β−コラン−24−酸メチル)(CAS番号2616−71−9;カタログ番号C0964−000);5β−コラン酸−3α,7α−ジオールメチルエステル(カタログ番号C0975−000);および5β−コラン酸−3α,7β−ジオールメチルエステル(ウルソデオキシコール酸メチルエステル)(カタログ番号C1040−000)。次の化合物は、VRW社から市販されている:ウルソデオキシコール酸(CAS番号128−13−2;カタログ番号B20490−03);ウルソデオキシコール酸、ナトリウム塩(カタログ番号104626);ケノデオキシコール酸(カタログ番号22877―0050);およびタウロウルソデオキシコール酸、ナトリウム塩(CAS番号14605−22−2;カタログ番号002161)。
【0139】
鉛化合物の同定および発症
ケノデオキシコール酸(CDCA)などの最初の活性化合物を始めとして、市販の構造群に関係がある、構造活性相関(SAR)の研究のためのさまざまな化合物を入手することができる。この初期の商用ライブラリは、SARを調査し、モデルを開発して、合成のさらなる取り組みに向かわせるのに利用することができる。モデルに基づいて、生物活性を増大し、望まれていない潜在的な毒物学的および物理化学的特性を低下するために、大まかにヒットした周辺の小規模ライブラリにおいて、医薬品化学の幾つかの反復ラウンドを行うことができる。最初の試みは、生物活性の改善およびSAR傾向の発現、ならびに標的との追加の相互作用のための、大まかにヒットした構造における核心を突き止めることに焦点を合わせる。この最初の作業プロセスにおいて、活性に必要とされる最小限のファーマコフォアを特定し、幅広いSARを得ることを試みることができる。
【0140】
最初のライブラリセットを試験した後、生物活性情報を使用して、それぞれの化学的改良をランク付けし、各ライブラリ系列のSAR傾向を構築し始めることができる。この情報を利用し、第2系列の化合物を調製して、SAR傾向を改善することができる。加えて、それらが生じたときには、活性、溶解性、ADME(吸収、分散、代謝、排出)などの特別な懸念に対処することができる。
【0141】
すべての問題に対処し、適切な薬物動態学的(PK)特性を有する、強力な選択的阻害剤を創生するためには、この合成−試験−合成プロトコルを数回、反復する必要がある。これらの問題の多くは、同時に調節することができるが、これが可能でない場合、一般に、優先順位は:第1に、明らかな問題のある官能性の除去;第2に、医薬品化学の簡略化のためのコアとなる化学構造の改良;第3に、有効性の増加;第4に、すべての他の問題、の順でありうる。プログラムは、プロセスにおいて判明した情報に基づいて開発されることから、これらは、改良されうる一般的な指標である。
【0142】
合成化学の努力と平行して、提案されたライブラリと同様に、CDCAと構造的に類似した任意の市販の化合物をサーチするための、継続的な取り組みが行われうる。基準に当てはまる化合物を購入し、試験することができる。このチャネルを通じて得られた情報を利用して、SARモデルを改善し、さらに前途有望な構造に向けた直接的合成を補助することができる。
【0143】
最終的に、各ライブラリ系列は、典型的には、選択された基準に基づいて、化合物を進めるか、保留するか、または中断するかという、継続か中止かの決断に達する。結局、1つの系列のみが、その時点までに得られたデータのすべてに基づいた、前臨床候補の段階に進みうる。
【0144】
インビボ活性、インビトロ活性、およびPKおよびADMEの閾値を含めた化合物の評価のための基準の確立は、上述したのと同様の方法で達成することができる。現行のデータ、密接に関係する類似体、および任意の先行文献の前例を用いて、これらの数的指標の許容値を規定することができる。好ましい実施の形態では、生物活性は、最終的にはマイクロモル以下の範囲に達するべきであり、PK/ADMEは、任意の既知の薬物を比較されなければならない。
【0145】
継続か中止かの決定は、上記基準のすべての集合、ならびに、SAR、化学的実現可能性、および任意の早期の利用可能な毒性データの理解に基づいていて差し支えない。これらの数的指標は、上述のコンセンサスを形成しうる。
【0146】
本明細書に記載の式IのR1、R4、およびR5は、生物活性に関与する最小限のファーマコフォアを特定するために系統的に研究されうる、ケノデオキシコール酸の3つの構造部分に対応する。
【0147】
多くの市販のCDCA類似体は、単一に留まらない複数の構造的変化を有し、したがって、幅広いSARを供給することができる。多数の市販のCDCA類似体の試験を通じて作り出された広いSARを利用して、特定の類似体の今後の合成を誘導することができる。
【0148】
試験目的では、アッセイは、一般に、再現可能であるべきであり、計画の開始後は、変更すべきではない。陽性および陰性対照は毎回行うべきである。対照が所定の範囲内に入らない場合には、その回のすべてのデータは疑わしいと考えるべきである。
【0149】
理想的には、初期のスクリーニングは可能な限り多くの外的要因から分離されるシステムにおける、化合物とその標的の直接的な所望される相互作用を測定すべきである。例えば、試験は、本明細書に記載の胞子発芽アッセイおよび/またはコロニー形成アッセイを介して進められる。初期スクリーニングは、単一の濃度で行われうるが、限定された数の濃度で行うことも可能である。最終的には、目標は、多数の化合物を迅速かつ安価に試験し、前進する可能性のほとんどない化合物を即座に排除し、成功の可能性が最も高いものに重点的に取り組むことである。初期検査にただ1つのアッセイを用いる場合には、ヒットした化合物を、確認目的で二次的アッセイにおいて試験すべきである。すべてのアッセイの結果を比較し、所定の基準に基づいて、ヒットした化合物(すなわち、鉛化合物)を確定する。
【0150】
第1のアッセイによるヒット化合物は、それらの用量反応を測定することによって、二次的アッセイにおいて妥当であることが確認されうる。これは、例えば、IC50、EC50、または最小阻止濃度(MIC)の形態であって差し支えない。これは、非特異的な結合剤または洗浄剤などの化合物を排除する役割をすることから、重要なステップである。阻害曲線についての良好なS字形状は、妥当な用量反応を示唆している。さらに進めるために、IC50(EC50)の基準が確立されて差し支えない。
【0151】
有効なヒット化合物を選択性アッセイにおいてスクリーニングし、オフターゲット活性または似た標的に対する非特異的反応性を見つけ出すことができる。この選択性のアッセイは、第1のスクリーニングアッセイと同様の方法でセットすることができる。文献の再検討は、潜在的なオフターゲットの反応性を明確にする補助となりうる。さらに進めるために、選択性の基準を確立して差し支えない。
【0152】
例えば濁度のアッセイを利用して、媒体での希釈において沈殿しないことを確実にするために、選択された化合物の溶解性を決定して差し支えない。前のアッセイのいずれかで溶解性が問題であると見なされる場合には、このアッセイを先に行うことができることに留意されたい。
【0153】
プロバイオティクス
本発明のある特定の態様は、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスに関する。肝臓における合成によって形成される胆汁酸を「一次」胆汁酸といい、細菌によって作られるものを「二次」胆汁酸と呼ぶ。結果として、ケノデオキシコール酸は一次胆汁酸であり、リトコール酸は二次胆汁酸である。ヒトでは、両方とも一次胆汁酸である、タウロコール酸およびグリココール酸は、通常、すべての胆汁酸のおよそ80パーセントを占める。二次胆汁酸であるデオキシコール酸(デゾキシコール酸としても知られる)は、胞子発芽を促進するが、C.ディフィシレの増殖を阻害することも報告されている。Wilson (1983) J. Clin. Microbiol. 18:1017-1019; Sorg et al. (2008) J. Bacteriol. 190:2505-2512。
【0154】
本明細書では、「プロバイオティクス」とは、宿主の健康および幸福感において有益な効果を有する微生物細胞の調製である。この定義は、微生物細胞を含むが、ある特定の抗生物質など、これら微生物細胞の単離した代謝産物は含まない。消化管に取り込まれるプロバイオティクスは、腸内細菌叢に影響を与え、宿主における有益な役割をしうる。
【0155】
特定の理論または作用機序に縛られることは意味しないが、本発明者らは、抗生物質治療は、一次胆汁酸を、発芽を阻害するおよび/または増殖を阻害する二次胆汁酸に変換することに関与する腸内細菌叢を全滅させ、それによって、C.ディフィシレの発芽を許し、結腸の嫌気性環境に入り、増殖期の状態のC.ディフィシレをコロニー化し、再生することにより、C.ディフィシレ関連疾患を発症させると考えている。よって、式Iの化合物およびそれらの塩などの抗発芽物質の代替として、またはそれらの投与に加えて、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを投与することにより、増殖期のC.ディフィシレの増殖を制限することが可能である。
【0156】
一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝できる細菌の菌株としては、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム(ATCC 29065)、およびクロストリジウム・ヒラノニス(TO931としても知られる)が挙げられる。C.シンデンス(ATCC 35704)およびC.レプタム(ATCC 29065)は、米国バージニア州マナッサス所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手できる。クロストリジウム・ヒラノニス(C. hiranonis)(TO931)は、Wells JE et al. (2003) Clin. Chim. Acta. 331:127-34に記載されるように、またはバージニア・コモンウェルス大学(Virginia Commonwealth University)のPhillip B. Hylemon教授から入手して差し支えない。
【0157】
本発明の1つの実施の形態では、ヒトまたは動物の消化管への経口投与に適した薬学的に許容されるキャリアに、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株、例えば、C.シンデンスを含む治療組成物が提供される。別の実施の形態では、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株、例えば、C.シンデンスは、胞子の形態で治療組成物中に含まれる。別の実施の形態では、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株、例えば、C.シンデンスは、乾燥または凍結乾燥した細胞集団の形態で組成物中に含まれる。
【0158】
本発明のプロバイオティクス製剤は、栄養補助食品として投与してもよい。これらの製剤は、従来の充填剤および増量剤、例えば米粉などを含みうる。便利なことに、プロバイオティクス製剤は経口摂取して差し支えない。1つの実施の形態では、栄養補助食品として効果的な、および、腸管に有益な細菌を維持または回復するための用量率は、1日あたり約5ミリグラム〜約4000ミリグラムの範囲である。
【0159】
細菌は、それらに生存能力があることを条件に、胞子または増殖期の細菌として提供することができる。典型的な用量は、1日あたり1×103〜1×1014個の生存能力のある、増殖期の細菌または胞子を含む。
【0160】
1つの実施の形態では、細菌は、プロバイオティクス組成物中に、およそ1×103〜1×1014コロニー形成単位(CFU)/gの濃度、好ましくは、およそ1×105〜1×1012CFU/gの濃度で存在するのに対し、他の好ましい実施の形態では、濃度は、およそ1×109〜1×1013CFU/g、およそ1×105〜1×107CFU/g、またはおよそ1×108〜1×109CFU/gである。
【0161】
1つの実施の形態では、腸管内に、少なくとも正常な量の細菌を達成するために、十分な量の細菌が投与される。
【0162】
米国特許第5,733,568号明細書は、抗生物質に関連するまたは他の急性および慢性の下痢、ならびに、皮膚および膣内イースト菌感染症の治療のためのマイクロカプセル化した乳酸菌の利用について教示している。マイクロカプセル化とは、細菌(bacillus)の不活化を防ぎ、それを腸に送達し、前記下痢に見られる乳糖不耐症を回避することをいう。
【0163】
本発明の医薬組成物は、それを必要としている患者の腸管の所望の領域に送達するために、腸溶コーティングまたはマイクロカプセル化していることが好ましい。組成物の腸溶コーティングは、具体的には、吸着剤および細菌源を、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換が生じうる腸管の所望の領域に送達するように設計される。これは、pH7.5以上で分解し、溶解する腸溶コーティング材を介して達成されることが好ましい。これらの特徴を有する腸溶コーティングの例としては、限定はしないが、ゼイン、ポリグリコ乳酸(polyglycolactic acid)、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体、および同様のコーティング材料が挙げられる。
【0164】
あるいは、安定かつpH1.5〜2.5の胃液に耐性であり、製剤の保存寿命を短縮させることがないように、生産工程において水を低減した、乾燥プロバイオティクス製剤を調製することもできる。これらの製剤は、相対湿度が20%(±5%)に制御された低湿度室で調製されうる。24〜29インチのHgにおいて、約40〜70℃の温度でトレイ内の粉末を乾燥することができる、真空乾燥機(例えば、Lab-Line Instruments、Inc.社(米国イリノイ州メルローズパーク所在)製のラボライン(LabLine)モデル#3620)を使用することができる。
【0165】
適切な液体またはゲル性のキャリアは当技術分野で周知である(例えば、水、生理食塩水、尿素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなど)。水性のキャリアは、ほぼ中性のpHであることが好ましい。
【0166】
1つの実施の形態では、組成物の経口送達は、ミルクセーキまたはヨーグルトなど、食べるのが簡単な食品と混合された2〜4オンスのエマルションまたはペーストを介して達成される。マイクロカプセル化した細菌のプロバイオティクスは、例えば、飲み込むことができるゼラチンカプセルまたは錠剤中に、他の薬学的に活性な薬剤と一緒に、または別々に投与することができる。
【0167】
本発明のさまざまな実施の形態では、本発明のプロバイオティクスは、単に、C.ディフィシレ関連疾患の予防、C.ディフィシレ関連疾患の発症の危険性の低減、またはC.ディフィシレ関連疾患の治療の目的のためだけに投与される。
【0168】
プロバイオティクスには少なくとも1つの細菌株を含まれるため、プロバイオティクスは、一般に、被験体の消化管においてプロバイオティクス細菌を殺してしまうか、またはその繁殖を阻害するであろう抗生物質の同時投与なしで投与される。例えば、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質治療の完了後に、本発明のプロバイオティクスを投与されうる。別の例として、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質治療の完了後に、発明のプロバイオティクスを投与されうる。
【0169】
1つの実施の形態では、被験体におけるC.ディフィシレ関連疾患を予防する、本発明の方法は、被験体に、本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスの両方を投与することを含む。本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスは、同時にまたはいずれかの順番で連続して、与えることができる。本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスの投薬スケジュールは、もしそれらが重複するならば、全く同一でありうるが、必ずしも同一である必要はない。上述の通り、プロバイオティクスは、一般に、被験体の消化管におけるプロバイオティクス細菌を殺すか、またはその繁殖を阻害するであろう抗生物質の同時投与なしに投与される。
【0170】
1つの実施の形態では、被験体におけるC.ディフィシレ関連疾患を治療する本発明の方法は、本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスの両方を被験体に投与することを含む。本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスは、同時にまたはいずれかの順番で連続して、与えることができる。本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスの投薬スケジュールは、もしそれらが重複するならば、全く同一でありうるが、必ずしも同一である必要はない。上述の通り、プロバイオティクスは、一般に、被験体の消化管におけるプロバイオティクス細菌を殺すか、またはその繁殖を阻害するであろう抗生物質の同時投与なしに投与される。
【0171】
薬学的に許容される塩
本明細書に述べたように、本化合物のある特定の実施の形態は、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含んでいてもよく、したがって、薬学的に許容される酸と共に、薬学的に許容される塩を形成することができる。この点において「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の比較的非毒性の無機および有機酸付加塩のことをいう。これらの塩は、投与媒体または製剤の製造工程において、または遊離の塩基の形態の精製した本発明の化合物を、適切な有機または無機酸と単独で反応させ、その後の生成の間に形成される塩を単離することによって、その場で(in situ)調製することができる。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが挙げられる。例えば、Berge et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと。
【0172】
対象とする化合物の薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性の有機または無機酸から得られる、前記化合物の従来の非毒性の塩または第4級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の非毒性の塩として、塩酸塩、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸に由来するもの;および、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製される塩が挙げられる。
【0173】
他の事例では、本発明の化合物は、1種類以上の酸性官能基を含んでもよく、したがって、薬学的に許容される塩基とともに薬学的に許容される塩を形成できる。これらの事例では、「薬学的に許容される塩」という用語は、発明の化合物の比較的非毒性の無機および有機の塩基付加塩のことをいう。投与媒体または製剤の製造工程において、または、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩を、アンモニア、または薬学的に許容される第1級、第2級または第3級の有機アミンと反応させることによってなど、遊離酸の形態の精製化合物を適切な塩基と独立して反応させることによって、これらの塩も、同様に、その場で(in situ)調製することができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる。例えば、Berge et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと。
【0174】
製剤
本発明の実施に有用な組成物は、非経口投与または腸内投与用、または局所または局部的な投与用の、薬学的に許容されるキャリアと一緒に、医薬組成物として製剤化することができる。例えば、本発明の実施に有用な組成物は、固体または液体の形態の経口製剤として、または、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、または局所用の製剤として、投与することができる。局所送達のためには経口製剤が好ましい。
【0175】
化合物および組成物は、典型的には、薬学的に許容されるキャリアと共に投与される。「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、本明細書では、ヒトまたはイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、またはヤギなどの他の哺乳動物に投与するのに適切な、1種類以上の相溶性の固体または半固体または液体の充填剤、希釈剤、または封入物質を意味する。「キャリア」という用語は、適用を促進するために活性成分と組み合わせる、天然または合成の、有機または無機の成分を意味する。キャリアは、お互いに、所望の薬学的有効性または安定性を実質的に損なうであろう相互作用が存在しないような方法で、本発明の製剤に混合することができる。経口および直腸製剤にとって適切なキャリアは、米国ペンシルベニア州イーストン所在のRemington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)に見出すことができる。
【0176】
経口投与のための薬学的に許容されるキャリアとしては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、トローチ剤、および顆粒が挙げられる。固体製剤の場合には、キャリアは、ショ糖、乳糖またはデンプンなど、少なくとも1種類の不活性希釈剤を含みうる。これらのキャリアには、通常の実施のように、希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウムなどの平滑剤も含めることができる。カプセル、錠剤、トローチ剤および丸剤の場合には、キャリアには緩衝剤も含めることができる。錠剤、丸剤および顆粒などのキャリアは、消化管における医薬組成物の放出の時期および/または位置を調節するコーティングを、錠剤、丸剤または顆粒の表面に用いて調製ことができる。一部の実施の形態では、キャリアは、消化管の特定の領域に対する活性組成物を標的とし、当技術分野で知られるなどのように、特定の領域に活性成分を保持する。あるいは、コーティング化合物は、プレス加工して、錠剤、丸剤、または顆粒にすることもできる。薬学的に許容されるキャリアとしては、水などの当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含む、例えばエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤など、経口投与用の液体の剤形が挙げられる。これらの不活性希釈剤に加えて、組成物には、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤などの追加の不活性成分、および甘味剤および他の香味剤も含めることができる。
【0177】
本発明の医薬品製剤は、粒子で提供してもよい。粒子とは、本明細書では、末梢性オピオイド・アンタゴニストまたは本明細書に記載される他の治療薬の全部または一部で構成されうる、ナノ粒子またはマイクロ粒子(また場合によっては、より大きい粒子)を意味する。粒子は、コーティングによって取り囲まれたコアに、限定はしないが、腸溶コーティングなどの治療薬を含みうる。治療薬はまた、粒子全体に分散されていてもよい。治療薬は、粒子内に吸着されていてもよい。粒子は、どのような放出速度であってもよく、0次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、持続放出、即時放出、およびそれらの任意の組合せなどが挙げられる。粒子は、治療薬に加えて、薬学および医学の分野で日常的に使用される任意の材料であって差し支えなく、限定はしないが、浸食性、非浸食性、微生物分解性、または微生物非分解性の物質またはそれらの組合せが挙げられる。粒子は、溶液または半固体の状態の拮抗薬を含むマイクロカプセルであってもよい。粒子は、事実上、任意の形態でありうる。
【0178】
非微生物分解性および微生物分解性のポリマー材料は、両方とも、治療薬を送達するための粒子の製造に使用することができる。これらのポリマーは、天然または合成のポリマーでありうる。ポリマーは、放出が所望される時間に基づいて選択される。特定の対象とする生体接着性ポリマーは、参照することによりその教示が本明細書に援用される、H.S. Sawhney, C.P. Pathak and J.A. Hubell in Macromolecules, (1993) 26:581-587に記載される生体浸食性のハイドロゲルを含む。これらとしては、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、およびポリ(アクリル酸オクタデシル)が挙げられる。
【0179】
酸の形態で用いられる場合、本発明の化合物は、酸の薬学的に許容される塩の形態で用いることができる。溶媒、水、緩衝液、アルカノール、シクロデキストリンおよびアラルカノール(aralkanol)などのキャリアを使用することができる。他の非毒性の助剤としては、例えば、ポリエチレングリコールまたは湿潤剤が挙げられる。
【0180】
本発明に記載される薬学的に許容されるキャリアおよび化合物は、患者に投与するための単位投与量に製剤化される。単位投与量における活性成分の投与量レベル(すなわち、本発明の化合物)は、所望の投与方法に従って治療効果を達成するのに効果的な活性成分の量をもたらすように変動しうる。したがって、選択される投与量レベルは、主に、活性成分の性質、投与経路、および所望の治療継続期間に応じて決まる。必要に応じて、単位投与量は、活性化合物の一日の所要量が単回投与になるようにするか、または、例えば1日2〜4回の投与など複数回投与に分けることができる。
【0181】
本発明の医薬品製剤は、単独で、または抗生物質を含めた他の薬剤と一緒に用いる場合には、治療的に有効な量で投与される。治療的に有効な量とは、ヒト被験体などの被験体の治療に効果的な薬物のレベルを確立する量である。有効量とは、所望の生物学的効果を達成するのに必要な単回または複数回投与の量を意味する。被験体に投与する場合、有効量は、評価項目として選択される特定の効果;治療する病状の重症度;年齢、健康状態、および体重を含めた個別の患者パラメータ;併用療法;治療頻度;および投与方法
に応じて決まる。これらのパラメータは当業者には周知であり、わずかな日常の実験のみで対処することができる。
【0182】
送達経路
一般に、本発明の方法に用いられる化合物および組成物は、経腸投与することができる。1つの実施の形態では、本発明の方法に用いられる化合物および組成物は、経口投与することができる。1つの実施の形態では、本発明の方法に用いられる化合物および組成物は、直腸投与できる。
【0183】
活性成分は、単回投与されて差し支えなく、あるいは、ある時間間隔で投与されるように、多くの小用量に分けることもできる。正確な用量および治療継続期間は治療する疾患の関数であり、既知の試験プロトコルを用いて、またはインビボまたはインビトロの試験データに由来する外挿法によって、経験的に決定されうることが理解されよう。例えば、用量および治療継続期間は、C.ディフィシレ関連疾患の1つ以上の動物モデルを使用して得られたインビボデータに由来する外挿法によって決定することができる。濃度および用量値も、軽減されるべき病状の重症度に応じて変動しうることに留意すべきである。任意の特定の被験体では、特定の投与計画は、個別の必要性および投与する人物または組成物の投与を管理する人物の専門的な判断に従って、経時的に調製することができ、本明細書に記載される濃度範囲は単なる典型例であって、本願の特許請求の範囲に記載される範囲または実施を制限することは意図されていないことも理解されるべきである。
【0184】
経口投与が望ましい場合には、活性化合物は、胃の酸性環境から保護する組成物で提供されるべきである。例えば、組成物は、胃ではその完全性を維持し、腸において活性化合物を放出する、腸溶コーティングで製剤化することができる。組成物は、制酸薬または胃の酸性環境から保護する他の成分と組み合わせて製剤化してもよい。
【0185】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用のキャリアを含み、錠剤に圧縮されるか、またはゼラチンカプセルに封入されて差し支えない。経口治療のための投与では、活性化合物または化合物は、賦形剤と併せて、錠剤、カプセル、またはトローチ剤の形態で使用することができる。薬学的に相溶性の結合剤および補助物質を、組成物の一部に含めることができる。
【0186】
錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、次の原料または同様の性質の化合物を含みうる:限定はしないが、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤;微結晶性セルロース、デンプン、または乳糖などの賦形剤;限定はしないが、アルギン酸およびコーンスターチなどの崩壊剤;限定はしないがステアリン酸マグネシウムなどの滑剤;限定はしないがコロイド様の二酸化ケイ素などのギルダント(gildant);ショ糖またはサッカリンなどの甘味剤;およびペパーミント、サリチル酸メチル、または果実の香味などの香味剤。
【0187】
投与単位形態がカプセルの場合には、上記種類の材料に加えて、脂肪油などの液体キャリアを含めることができる。加えて、投与単位形態には、投与単位の物理的形状を改変するさまざまな他の材料を含めることができ、例えば、糖衣および他の腸溶剤が挙げられる。本化合物はまた、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハース、チューインガムなどの成分として投与することもできる。シロップには、活性化合物に加えて、甘味剤およびある特定の保存料としてのショ糖、染料および着色料、ならびに香味剤を含めることができる。
【0188】
活性材料はまた、所望の活性を損なわない他の活性材料、または所望の活性を補足する材料と混合することもできる。
【0189】
腸溶コーティングされた錠剤は、当業者に周知である。加えて、酸性の胃から保護するために、それぞれコーティングされた小球を充填したカプセルも、当業者に周知である。
【0190】
経口投与形態は、一般に、1日に1〜4回、患者に投与される。本発明の方法に用いられる化合物は、1日3回以下で投与されることが好ましく、1日1〜2回投与されることがさらに好ましい。
【0191】
経口投与する場合、胞子の発芽、または増殖を阻害するための治療に有効な投与量は、約1mg/kg体重/日〜約100mg/kg体重/日である。1つの実施の形態では、経口投与量は、約1mg/kg体重/日〜約50mg/kg体重/日である。1つの実施の形態では、経口投与量は、約5mg/kg体重/日〜約50mg/kg体重/日である。患者の治療は単回投与で開始されうるが、その用量は、患者の病状の変化に伴い、経時的に変動しうることが理解されよう。
【0192】
「直腸投与」に適合させた製剤は、坐剤または浣腸剤として提供してもよい。坐剤として提示されるこれらの製剤は、薬物を、普通の温度では固体であるが、直腸温度では液体であり、したがって、直腸において溶融して薬物を放出する、適切な刺激性の少ない賦形剤と混合することによって調製することができる。これらの材料は、ココアバターおよびポリエチレングリコールである。
【0193】
本明細書では、「被験体」は哺乳動物として定義され、実例として、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウマ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、および齧歯動物を含む。1つの実施の形態では、被験体はヒトである。
【0194】
本発明は、さらに、次の実施例によって例証されるが、決してさらなる限定と解釈されるべきではない。本願全体にわたって引用されるすべての参考文献(非特許文献、特許公報、出願公開公報、および同時係属の特許出願を含む)の全ての内容は、参照することによって本明細書に明確に取り込まれる。
【実施例】
【0195】
菌株および増殖条件
C.ディフィシレCD196およびウェルシュ菌(C.perfringens)SM101については、先に説明した。Popoff et al. (1988) Infect. Immun. 56:2299-2306; Zhao et al. (1998) J. Bacteriol. 180:136-142。C.ディフィシレUK14は、英国バッキンガムシャー州エールズベリー所在のストーク・マンデヴィル・ホスピタル(Stoke-Mandeville Hospital)におけるC.ディフィシレの流行的発生の際に単離された(Meridian Biosciences社の菌株番号:SM8−6865)。すべての菌株は、Coy Laboratory社製の嫌気性チャンバ内、嫌気性条件下、37℃で、BHIS(ブレインハートインフュージョン培地[Difco社製]に酵母エキス[5mg/ml]およびL−システイン[0.1%]を補充したもの)で増殖させた。
【0196】
C.ディフィシレ胞子の調製
前述のようにBHIS上でC.ディフィシレの胞子形成を誘発した。Haraldsen et al. (2003) Mol. Microbiol. 48:811-821。簡潔に言えば、BHIS培地で一晩、C.ディフィシレを培養し、新鮮な培地において、600nm(OD600)における光学密度が0.2になるまで希釈した。6−ウェルの組織培養皿の各ウェルに、この懸濁液の一部、150μlを、5mlのBHIS寒天上に塗布した。培養液を4〜7日間、嫌気的に培養した。胞子のコロニー形成を判定するため、胞子と増殖性細胞の混合群を含む、プレートから得られたサンプルを、BHISに再懸濁し、60℃まで20分間加熱し、増殖性細胞を死滅させた後に、冷却し、希釈し、BHIS培地に塗布した。発芽アッセイに使用するため、Akoachereおよび同僚が記載したのと同様の方法で胞子を精製した。Akoachere et al. (2007) J. Biol. Chem. 282:12112-12118。6−ウェル皿の各ウェルを氷冷した滅菌水であふれさせることによって、増殖性細胞と胞子の混合物を回収した。氷冷した水で5回洗浄した後、細菌を、20%(重量/体積)のHistoDenz(Sigma社、米国ミズーリ州セントルイス所在)に懸濁した。この懸濁液を、遠心分離管中の50%(重量/体積)のHistoDenz溶液の上に層状に重ね、遠心分離管を15,000×gで15分間遠心分離し、増殖性細胞から胞子を分離した。遠心分離管の底から回収した、精製胞子を、氷冷した水で2回洗浄し、微量のHistoDenzを除去して、水に再懸濁した。
【0197】
C.ディフィシレ胞子の胆汁塩に対するインビトロ応答
C.ディフィシレ胞子のタウロコール酸に対する応答時間を判定するため、胞子を上述のように調製した。60℃で20分間培養することによって、増殖期の細菌を加熱殺菌した。加熱処理された胞子を水で3回洗浄して微量の栄養物を除去し、その後のコロニー形成を可能にするため嫌気性チャンバに戻した。胞子を水に再懸濁し、タウロコール酸、グリココール酸、コール酸、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、またはケノデオキシコール酸(Sigma社(米国ミズーリ州セントルイス所在)製)のいずれかを0.1%まで加えた。さまざまな時点において、サンプルを取り出し、逐次希釈し、BHIS寒天上に塗布した。サンプルの1つは、タウロコール酸の添加の前に取り出し、BHISおよびBHIS(TA)(BHIS+0.1%のタウロコール酸)上に塗布した。後者のプレートは、それぞれ、コロニー形成のための陰性および陽性対照の役割をする。一晩増殖させた後、コロニー数を数え(コロニー形成単位、CFU)、その数をBHIS(TA)で得られた数と比較した。
【0198】
C.ディフィシレ胞子によるコロニー形成の誘発に必要とされるタウロコール酸の量を判定するため、上述のように、胞子を調製し、加熱し、洗浄した。加熱処理したC.ディフィシレ胞子を、さまざまな濃度のタウロコール酸を含む水に再懸濁した。10分間の培養の後、懸濁液をBHISで逐次希釈し、BHIS寒天上に塗布した。一晩増殖させた後、コロニー数を数え、その数を、BHIS(TA)の一晩の増殖で得られた数と比較した。
【0199】
C.ディフィシレの胞子の発芽
BHIS単独または1%の胆汁塩(タウロコール酸、グリココール酸、コール酸、またはデオキシコール酸)を含むBHISにおいてOD600が0.3〜0.4になるまで、精製C.ディフィシレ胞子を希釈することによってC.ディフィシレの胞子の発芽を測定した。完全合成培地における実験では、塩混合物[0.3mMの(NH4)2SO4、6.6mMのKH2PO4、15mMのNaCl、59.5mMのNaHCO3、および35.2mMのNa2HPO4]を用いて、胞子と推定上の発芽を緩衝した。Karlsson et al. (1999) Microbiology 145:1683-1693。直後(時間0)および室温で培養する間のさまざまな時点において、OD600を決定した。ゼロ時間における光学密度に対するさまざまな時点における光学密度の比を、時間に対してプロットした。
【0200】
統計分析
上記の全てのアッセイを3回ずつ行い、データは、3つの独立した実験から得られた平均および標準偏差として報告した。
【0201】
実施例1
タウロコール酸の曝露は、インビトロにおけるC.ディフィシレ胞子のによるコロニー形成を促進する:
BHIS寒天プレートに0.1%のタウロコール酸を含めて、C.ディフィシレ胞子の回収をおよそ105倍に強化した。タウロコール酸への曝露の長さを調べるためには、コロニー形成の増大が必要とされ、胞子および増殖期の細菌を60℃で20分間加熱し、水で3回洗浄して、発芽に作用しうる微量の栄養物を除去した。次に、胞子を嫌気性チャンバに戻し、水中、0.1%のタウロコール酸で処理した(図2)。指示された時間(times)で、サンプルを取り出し、BHI培地で希釈し、BHIS寒天(タウロコール酸なし)に塗布した。サンプルの1つは、インビトロでタウロコール酸と共に培養したが、BHIS(TA)に直接塗布した。このサンプルは、100%回復の参照としての役割をする。図2に示すように、タウロコール酸へのわずか1分間の曝露の結果、胞子の回復は0.0025%〜約1%増加した。さらなる培養は、C.ディフィシレ胞子によるコロニー形成を大幅には増進しなかった。これらの結果は、C.ディフィシレ胞子がタウロコール酸に対して非常に迅速に応答することを示しており、タウロコール酸が発芽しうることを示唆している。
【0202】
実施例2
タウロコール酸の濃度におけるC.ディフィシレ胞子のコロニー形成の依存性:
0.1%のタウロコール酸に応答したコロニー形成能力は、胞子をBHIS(TA)に直接塗布した場合の能力には届かなかったことから、さまざまな濃度のタウロコール酸に応答する胞子のインビトロでの回復について試験した。胞子を上述のように調製し、水で洗浄して微量の栄養物を取り除き、0.001%〜10%の範囲の濃度のタウロコール酸と共に10分間培養し、タウロコール酸を含まないBHIS寒天上に塗布した。胞子のコロニー形成能力を、BHIS(TA)上に直接塗布した胞子のものと比較した。0.001%のタウロコール酸と一緒に胞子を培養した結果、全胞子数の約0.0002%しか、コロニー形成しなかった(図3)。このコロニー形成の効率は、任意のタウロコール酸の不存在下で通常観察され、約10倍変動しうる(図2)。タウロコール酸の濃度の上昇に伴い、C.ディフィシレ胞子のコロニー形成率も増大した(図3)。10%のタウロコール酸における10分間の培養の結果、コロニー形成率は、0.1%のタウロコール酸への連続曝露で見られる形成率の60%であった(図3)。この結果は、低濃度のタウロコール酸への連続曝露がコロニー形成をさらに著しく増強する、または、胞子が固体表面と接触する場合にタウロコール酸の効果が増強される、あるいはその両方であることを示唆している。
【0203】
実施例3
一次胆汁塩への応答におけるC.ディフィシレの発芽:
枯草菌および他の種において、胞子の発芽を増強すると、Ca2+−DPAの放出および胞子の再水和に起因して、結果として、明るい位相の(屈折性の)胞子から暗い位相の胞子に変化する。Moir et al. (1990) Annu. Rev. Microbiol. 44:531-553。この遷移は発芽の第一段階であり、培養液の光学密度の低下として測定することができ、発芽を規定するのに用いることができる。タウロコール酸が胞子発芽の速度または範囲を増大することによってコロニー形成を増強したか否かを確認するため、1%のタウロコール酸を加えたリン酸緩衝液(pH7.2)で、または緩衝液単独で、C.ディフィシレ胞子を培養した。1パーセントのタウロコール酸を選択したのは、この濃度で、インビトロにおける曝露の間に全胞子数の約30%のコロニーが形成できたからである(図3)。一定間隔で、OD600を測定し、時間に対してプロットした。この測定により、タウロコール酸はC.ディフィシレの胞子の発芽を誘発しなかった(図4A)。BHIS培地における胞子の発芽が、コロニー形成能力を得る前に、阻止されるか否かを確認するため、胞子をBHIS培地に懸濁し、培養液の光学密度をモニターした。光学密度の大幅な低下は見られなかったことから(図4A)、胞子はBHIS単独では発芽しないことが示唆された。この結果は、C.ディフィシレ胞子が、追加の試薬なしには、標準的な培地において、コロニーを効率的に形成しないという以前の観察結果と一致している。Wilson et al. (1982) J. Clin. Microbiol. 15:443-446。1%のタウロコール酸をBHISに添加した結果、開始時の値の約85%に至る、光学密度の急激な低下、ならびに、開始時の値の約80%に至る、継続的な低下を生じた(図4A)。これは、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の胞子の発芽に見られるものと似ており;発芽率は、C.ディフィシレの方が高いように思われる。Broussolle et al. (2002) Anaerobe 8:89-100。これらの結果は、BHIS培地のタウロコール酸および未知の成分が、C.ディフィシレ胞子を共同的発芽させ;共同的発芽物質のいずれも、単独では発芽を活性化しないことを示唆している。
【0204】
実施例4
一次胆汁塩への応答におけるC.ディフィシレ胞子の発芽およびコロニー形成:
タウロコール酸は、肝臓によって産生され、消化を助けるために分泌される一次胆汁塩である。コロニー形成における他の一次胆汁塩の効果を検査するため、0.1%のコール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、またはタウロコール酸を加えたBHIS寒天上に胞子を塗布した。面白いことに、コール酸誘導体(コール酸、グリココール酸、およびタウロコール酸)だけが、C.ディフィシレ胞子による効率的なコロニー形成を促進した(表1)。ケノデオキシコール酸およびケノデオキシコール酸の7β−エピマーであるウルソデオキシコール酸は、このアッセイでは効果はなかった(表1)。次に、一次胆汁塩であるコール酸およびグリココール酸を、発芽誘発能力について、タウロコール酸と比較した。グリココール酸またはコール酸を添加したBHISにおけるC.ディフィシレ胞子の培養では、アッセイを6時間行った場合でさえも、培養液の光学密度には有意な低下は見られなかった(図4A)。よって、グリココール酸およびコール酸は、プレートにおける胞子のコロニー形成を高めるが、発芽自体は、用いたアッセイによって促進されない。
【表1】
【0205】
実施例5
グリシンはC.ディフィシレ胞子を共同的発芽させる:
タウロコール酸と共に発芽を誘発するBHISの成分を特定するため、培地をBHIと酵母エキスに分けた。タウロコール酸の存在下では、BHIおよび酵母エキスの両方が、C.ディフィシレの胞子の発芽を誘発した。Karlssonらが記載する既知組成培地(Karlsson et al. (1999) Microbiology 145:1683-1693)を用いて、具体的な化合物または発芽を誘発する化合物を特定した。胞子を、タウロコール酸を加えた完全合成培地に懸濁した場合、培養液の光学密度はBHIS(TA)の場合と同程度まで低下した。この培地を構成物質とサブ構成物質に分け、グリシンを加えた緩衝液に懸濁した胞子は、タウロコール酸の存在下では発芽するが、不存在下では発芽しないことが分かった(図4B)。これらの結果は、グリシンおよびタウロコール酸が共同的に発芽させることを示唆している。
【0206】
グリシンおよびタウロコール酸が、C.ディフィシレの別の菌株についても、共同的発芽物質の役割をするか否かを検査するため、英国のストーク・マンデヴィル・ホスピタル(Stoke-Mandeville Hospital)における発生の際に単離した別の菌株であるUK14についても調べた。C.ディフィシレUK14胞子をグリシンまたはタウロコール酸を単独で加えた緩衝液に懸濁した場合、培養液の光学密度に少しの低下が観察された(図4C)。グリシンおよびタウロコール酸が両方とも存在する場合には、発芽率は増強された(図4C)。これらの結果は、C.ディフィシレCD196において、タウロコール酸とグリシンが、C.ディフィシレ胞子の共同的発芽物質として作用するという結果を裏付けるものであった。
【0207】
実施例6
C.ディフィシレ増殖性細胞の増殖における一次胆汁塩の効果:
C.ディフィシレの増殖性細胞の一次胆汁塩の存在下における増殖能力を調査した。予想通り、C.ディフィシレは、0.1%のタウロコール酸、グリココール酸、またはコール酸を含有するBHISにおいて、BHIS培地単独の場合と同程度まで増殖できた(図4D)。C.ディフィシレは、ケノデオキシコール酸の存在下では増殖することができなかった。したがって、表1のデータによって実証された非増殖は、ケノデオキシコール酸による増殖阻害によって説明することができる。C.ディフィシレとは対照的に、ウェルシュ菌(C.perfringens)SM101は、0.1%のタウロコール酸または0.1%のケノデオキシコール酸のいずれの存在下でも増殖することはできなかった(図4D)。Heredia et al. (1991) FEMS Microbiol. Lett. 84:15-22。しかしながら、ウェルシュ菌(C.perfringens)SM101は、グリココール酸およびコール酸の存在下で、野生型のレベルまで増殖することができた。これらの結果は、C.ディフィシレが、タウロコール酸を発芽として感知することに加えて、タウロコール酸の毒性効果に耐えるための機構を発達させうることを示唆している。
【表2】
【0208】
ケノデオキシコール酸は、C.ディフィシレおよびウェルシュ菌(C.perfringens)の増殖性細胞の増殖を阻害した。ケノデオキシコール酸への一時的な暴露がC.ディフィシレ胞子によるコロニー形成を誘発するか否かを試験するため、胞子を、0.1%のケノデオキシコール酸を含む水に10分間懸濁し、BHIS培地で逐次希釈し、ケノデオキシコール酸を含まないBHIS寒天上に塗布した。ケノデオキシコール酸への曝露は、C.ディフィシレ胞子によるコロニー形成を誘発しなかった(表2)。これらの結果は、C.ディフィシレ胞子のみが、BHISにおいて発芽し、コール酸誘導体(タウロコール酸、グリココール酸、およびコール酸)に応答してコロニーを形成することを示唆している。
【0209】
実施例7
デオキシコール酸はC.ディフィシレのコロニー形成を誘発するが増殖を防ぐ:
デオキシコール酸の発芽またはC.ディフィシレ胞子の回復を誘発する能力について検査した。リトコール酸は水に不溶性であることから、検査できなかった。C.ディフィシレ胞子を0.1%のデオキシコール酸と共にインビトロで培養し、逐次希釈し、BHIS寒天上に塗布した場合、コロニー形成能力は、タウロコール酸と共に培養した胞子のものと差異はなかった(表2)。これらの結果は、デオキシコール酸、同様の他のコール酸誘導体が、C.ディフィシレ胞子によるコロニー形成を誘発することを示唆している(表1および2)。1%のデオキシコール酸を添加したBHISにおけるC.ディフィシレ胞子の培養の結果、OD600は少し降下したが、60分後、BHIS単独における胞子のODの変化より顕著ではなかった(図5A)。
【0210】
C.ディフィシレは、デオキシコール酸の存在下では増殖しない。Wilson (1983) J. Clin. Microbiol. 18:1017-1019。この効果を定量化するため、デオキシコール酸を加えたBHISにおけるC.ディフィシレおよびウェルシュ菌(C.perfringens)の増殖を測定した。C.ディフィシレは、タウロコール酸を添加した培地において良好に増殖したが、デオキシコール酸の存在下では、C.ディフィシレおよびウェルシュ菌(C.perfringens)のいずれも増殖しなかった(図5B)。
【0211】
実施例8
ケノデオキシコール酸はタウロコール酸およびコール酸に応答するC.ディフィシレ胞子のコロニー形成を阻害する:
C.ディフィシレ胞子を調製し、水中、タウロコール酸(TA)またはケノデオキシコール酸(CDCA)またはその両方に10分間曝露した後、連続希釈し、タウロコール酸を添加していないBHIS寒天上に塗布した。BHIS(TA)上に塗布した胞子は、100%のコロニー形成(CFU)のための陽性対照としての役割をした。別の実験において、C.ディフィシレ胞子を調製し、水中、コール酸(CA)またはケノデオキシコール酸(CDCA)またはその両方に10分間曝露した後、連続希釈し、タウロコール酸を添加していないBHIS寒天上に塗布した。結果を図6に示す。図6Aに見られるように、ケノデオキシコール酸は、タウロコール酸で処理した胞子のコロニー形成(発芽)を阻害した。図6Bに見られるように、ケノデオキシコール酸は、コール酸で処理した胞子のコロニー形成(発芽)を阻害した。これらの結果は、ケノデオキシコール酸が、タウロコール酸およびコール酸に応答するC.ディフィシレ胞子のコロニー形成(発芽)を阻害することを示唆している。
【0212】
実施例9
ケノデオキシコール酸はC.ディフィシレ胞子の抗発芽物質である:
C.ディフィシレ胞子を、BHIS単独(●)、BHIS+0.1%CDCA(▼)、BHIS+0.1%TA(◆)、BHIS+0.1%TA/0.1%CDCA(■)またはBHIS+1.0%TA/0.1%CDCA(▲)に懸濁した。光学密度を時間の関数として測定した。光学密度の低下は発芽を示唆する。結果を図7に示す。図7に見られるように、さまざまな時点におけるOD600のT0におけるOD600に対する比は、0.1%TAまたは1.0%TA/0.1%CDCAで処理した胞子で、大幅に低下し、発芽が示唆された。対照的に、0.1%CDCAまたは0.1%TA/0.1%CDCAで処理した胞子では、さまざまな時点におけるOD600のT0におけるOD600に対する比は、BHIS単独に懸濁した胞子と同様に、ほとんど変化しないままであった。これらの結果は、ケノデオキシコール酸がC.ディフィシレ胞子の抗発芽物質であり、タウロコール酸と拮抗することによって、発芽を阻害することができることを示唆している。
【0213】
実施例10
胆汁塩カルボン酸のアミノ誘導体への代表的な変換:
胆汁塩カルボン酸のアミノ誘導体への代表的な合成変換をスキーム1に示す。限定はしないが、ケノデオキシコール酸(I)などの酸は、アセトン還流下、ジメチル硫酸塩(Me2SO4)および重炭酸ナトリウム(NaHCO3)を用いて、メチルエステルに変換される。第2級アルコールのシリル保護は、水素化ナトリウム(NaH)およびジメチルホルムアミド(DMF)の存在下、(2−クロロエチル)トリメチルシラン(Me3SiCH2CH2Cl)を含めた、多数のこれらの試薬を用いて達成され、その結果、エステル(II)をもたらす。メチルエステルの第1級アルコールへの還元は、テトラヒドロフラン(THF)中の水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)を用いて達成される。得られたアルコールの臭素化は、ジクロロメタン(CH2Cl2)中の三臭化リン(PBr3)を用いてもたらされ、臭化アルキル(III)を生じる。臭化アルキル(III)のSN2置換は、限定はしないが、NaHを加えたDMF中、サルコシンメチルエステル(N−メチルグリシンメチルエステル)など、第1級または第2級アミンを用いて行われうる。得られたメチルエステルの鹸化は、メタノール(MeOH)中、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて行い、シリル保護基の開裂は、THFの還流下、テトラブチルアンモニウムフルオリドを用いて達成され、ジヒドロキシカルボン酸(IV)を生じる。
【化10】
【0214】
実施例11
胆汁塩カルボン酸のアミド誘導体への代表的な変換:
ケノデオキシコール酸を含めた胆汁塩カルボン酸の、アミド誘導体への代表的な合成変換を、スキーム2に示す。ケノデオキシコール酸(I)および、サルコシンメチルエステルを含めた第1級または第2級アミンは、DMFおよびトリエチルアミン(Et3N)中、O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム−ヘキサフルオロ−フォスフェート(HBTU)などの標準的なペプチドカップリング試薬を用いて、アミドに変換される。得られたメチルエステルのカルボン酸(V)への鹸化は、メタノール中、水酸化ナトリウムを用いて行われる。
【化11】
【0215】
実施例12
胆汁塩カルボン酸のN−アルキル誘導体への代表的な変換:
胆汁誘導体のN−アルキル化は、インビボにおける、アミド結合の脱共役またはカルボン酸への開裂を阻害することが示された。ラットでは、タウロウルソデオキシコール酸の脱共役(24時間後100%)と比較して、N−エチル−タウロウルソデオキシコール酸の脱共役(72時間後、3.4±2.1%)が阻害された。Angelico et al. (1995) Hepatology 22:887-95。ヒトでは、コリルサルコシン、すなわちグリココール酸のN−メチル誘導体は、肝酵素または微生物由来酵素によって生体内変換されなかったことから、脱共役に対して耐性であることが示された。Schmassmann et al. (1993) Gastroenterology 104:1171-81。
【化12】
【0216】
実施例13
ケノデオキシコール酸のインビボ投与は、C.ディフィシレ大腸炎の発現を低減する:
ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、イヌ、またはブタを、治療群および対照群の2つの群に分ける。両群の動物を、高用量のクリンダマイシンまたはセファロスポリンを用いて、5〜14日間、治療する。治療群の動物はまた、抗生物質を与える全期間中、強制飼養することにより、ケノデオキシコール酸を、10〜30mg/kg体重/日、与えられる。すべての動物を、C.ディフィシレ毒素を含む下痢の発生についてモニタリングすることによって、C.ディフィシレ大腸炎の発症をモニタリングする。対照群と比較して治療群におけるC.ディフィシレ大腸炎の発症の低減は、ケノデオキシコール酸が、C.ディフィシレ大腸炎を発症する危険性がある、動物におけるC.ディフィシレ大腸炎の発症を、低減することを示唆している。
【0217】
実施例14
C.シンデンスのインビボ投与はC.ディフィシレ大腸炎の発症を低減する:
ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、イヌ、またはブタを、治療群および対照群の2つの群に分ける。両群の動物を、高用量のクリンダマイシンまたはセファロスポリンを使用して2〜14日間、治療する。治療群の動物はまた、抗生物質を与える期間を決定後、24時間以内に強制飼養を開始することにより、マイクロカプセル化したC.シンデンスを、10〜30mg/kg体重/日、与えられる。すべての動物を、C.ディフィシレ毒素を含む下痢の発生についてモニタリングすることによって、C.ディフィシレ大腸炎の発症をモニタリングする。対照群と比較して治療群におけるC.ディフィシレ大腸炎の発症の低減は、C.シンデンスが、C.ディフィシレ大腸炎を発症する危険性がある、動物におけるC.ディフィシレ大腸炎の発症を、低減することを示唆している。
【0218】
実施例15
ケノデオキシコール酸の誘導体によるC.ディフィシレ胞子の発芽のインビトロ阻害:
光学密度の測定に基づいた以下に記載する、各種の濃度のケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、およびそれらの誘導体を用いて、実施例3に記載したのと同様のインビトロ実験を行い、C.ディフィシレ胞子発芽の阻害剤の活性および結合定数を決定する。
【0219】
さまざまな濃度のタウロコール酸(2mM、5mM、10mM、20mMまたは50mM)を含むBHIS培地を調製し、阻害剤を加えた。阻害剤を含まない溶液を対照として使用し、阻害剤の不存在下におけるタウロコール酸のKmを決定した。胞子を加え、時間に対するOD600における変化として発芽を測定した。データをプロットし、プロットの線形範囲の傾斜を使用して、各条件下の発芽の最高速度を決定した。タウロコール酸濃度の逆数に対する発芽の最高速度の逆数をプロットした(ラインウェーバー・バークプロット)。このグラフから、タウロコール酸のKm(最高発芽速度の半分の速度が観察された濃度)を推定し、次式:
Ki=[I]/((Kobs/Km)−1)
を用いて、阻害剤の結合定数(Ki−胞子についての化合物の親和力;数値が低くなるほど、相互作用が密接になる)を決定するのに使用した:
ここで、[I]は、使用した阻害剤の濃度であり、Kobsは、阻害剤の存在下におけるタウロコール酸についての観察された結合定数であり、Kmは、阻害剤の不存在下における、タウロコール酸についての結合定数である。結果を表3に示す。
【表3】
【0220】
37DAME(3α,7α−ジアセトキシ−5β−コラン−24−酸メチル5 β−コラン酸−3α,7α−ジオール二酢酸メチルエステル(3α,7α-ビス(アセチルオキシ)-5β-コラン-24-酸メチル5 β−コラン−24−酸−3α,7α−ジオールメチルエステル3,7−ジアセテート)(CAS番号2616−71−9;ステラロイドカタログ番号c0964−000))が、ケノデオキシコール酸よりも0.04mM、すなわち、約1log低いKiを有し、C.ディフィシレ胞子の発芽を阻害することが観察された。すなわち、37DAMEが、ケノデオキシコール酸よりも約10倍強力なC.ディフィシレ胞子の発芽阻害剤であることが観察された。加えて、37DAMEが、ケノデオキシコール酸よりも約7〜8倍大きい、C.ディフィシレ胞子についての親和性を有することが判明した。
【0221】
この特定の実験では、5β−コラン酸3α−オル−アセテートおよびタウロケノデオキシコール酸のいずれも、C.ディフィシレ胞子の発芽阻害は観察されなかった。
【0222】
実施例16
5β−コラン酸−3α,7α−ジオールメチルエステルから始める、ある特定の胆汁誘導体の典型的な合成経路:
対象とする胆汁誘導体の多くは、標準的な方法を用いて、5β−コラン酸−3α,7α−ジオールメチルエステル(例えば、ステラロイドカタログ番号C0975−000)を出発原料として調製される。
【化13】
【0223】
胆汁塩エステルのアミド誘導体への代表的な合成変換をスキーム3に示す。例えば、限定はしないがメチルケノデオキシコール酸などのジオールは、ジメチルホルムアミド(DMF)中、t−ブチルジメチルクロロシラン(TBDMS)およびイミダゾールに曝露される際に、対応するジシリルエーテルに変換されうる。その後の、テトラヒドロフラン(THF)および水中、水酸化リチウム(LiOH)を用いたメチルエステルの加水分解は、対応するカルボン酸を生じ、これを、THF中、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HATU)などのペプチドカップリング試薬およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)などの第3級アミンの存在下、第1級または第2級アミン、例えば3−アミノプロピオン酸メチルなどを用いて、対応するアミドに変換することができる。シリルエーテルの開裂は、THF中、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)を用いて達成することができる。得られたジオール官能基のアルキル化は、DMF中、水素化ナトリウム(NaH)の存在下、臭化エチルなどのハロゲン化アルキルを用いて達成することができる。アミド態窒素のアルキル化は、DMF中、水素化ナトリウム(NaH)の存在下、ヨウ化メチル(MeI)を用いて達成することができ、アミドBBを生じる。
【0224】
あるいは、アミド態窒素のアルキル化は、TBDMSシリルエーテルの開裂の前に達成することもでき、図示するように、アミドAAを与える。
【0225】
実施例17
ある特定の胆汁塩スルホン酸誘導体の典型的な合成経路:
5β−コラン酸−3α,7α−ジオールメチルエステルから出発
対象とする多くの胆汁塩スルホン酸誘導体は、標準的な方法を用いて、5β−コラン酸−3α,7α−ジオールメチルエステル(例えば、ステラロイド,カタログ番号C0975−000)から出発して調製される。
【化14】
【0226】
胆汁塩エステルからタウリン系アミド誘導体への代表的な合成変換をスキーム4に示す。例えば、限定はしないが、メチルケノデオキシコール酸などのジオールは、DMF中、TBDMSおよびイミダゾールに曝露する際に、対応するジシリルエーテルに変換されうる。その後の、THFおよび水中、LiOHを用いたメチルエステルの加水分解は、対応するカルボン酸を生じ、THFなどの溶媒中、HATUなどのペプチドカップリング試薬およびDIEAなどの第3級アミンの存在下、タウリン(2−アミノエタンスルホン酸)などの第1級または第2級アミンを用いて、対応するアミドへと変換することができる。シリルエーテルの開裂は、THF中のTBAFを用いて達成することができる。スルホン酸官能基のアルキル化は、MeOH中のオルトギ酸トリメチル(HC(OMe)3)を用いて達成することができる。その後のアミド態窒素のアルキル化は、DMF中、NaHの存在下、MeIを用いて達成することができ、タウリン系のアミド誘導体CCを生じる。
【0227】
実施例18
ある特定の胆汁塩スルホン酸誘導体の典型的な合成経路:
5β−コラン酸−3α,7α−ジオールn−(2−スルホエチル)−アミドナトリウム塩から出発:
対象とする多くの追加の胆汁塩スルホン酸誘導体は、標準的な方法を用いて、5β−コラン酸−3α,7α−ジオールn−(2−スルホエチル)−アミドナトリウム塩(例えば、ステラロイドカタログ番号C0992−000)から出発して調製される。
【化15】
【0228】
タウリン系のアミド誘導体の代表的な合成変換をスキーム5に示す。例えば、タウリン系のアミド誘導体のジオール官能基は、DMF中、TBDMSおよびイミダゾールに曝露する際に、対応するジシリルエーテルに変換することができる。スルホン酸官能基のアルキル化は、MeOH中のオルトギ酸トリメチルを用いて達成することができる。その後のアミド態窒素のアルキル化は、DMF中、NaHの存在下、MeIを用いて達成することができる。シリルエーテルの開裂は、THF中のTBAFを用いて達成することができ、タウリン系のアミド誘導体DDを生じる。
【0229】
実施例19
7位のエピマー化のための典型的な合成経路:
さまざまなエピマーが、本発明に有用であると考えられるが、例えば、ケノデオキシコール酸およびその7β−エピマーのウルソデオキシコール酸が挙げられる。エピマーは、標準的な化学的手法に従って調製することができ、例えば、次の通りである:
【化16】
【0230】
胆汁誘導体のエピマー化は、スキーム6に図示するように、光延反応条件下で達成することができる。スキーム6に示すように、トリフェニルホスフィン(PPh3)、ジエチルアゾジカルボン酸塩(DEAD)、およびギ酸(HCO2H)のTHF溶液にアルコールを加え、対応するギ酸エステルを得る。ギ酸エステルを水性炭酸カリウム(K2CO3)で加水分解して、開始時のアルコールとは逆の配置のアルコールEEを得て差し支えない。あるいは、アミド態窒素は、ギ酸エステルの加水分解の前に、最初に、DMF中、NaHの存在下、MeIでアルキル化し、アルコールFFを得ることもできる。
【0231】
このように、本発明の少なくとも1つの実施の形態の幾つかの態様について説明してきたが、さまざまな調整、変更、および改善が当業者に容易に想起されることが認識されるべきである。このような調整、変更、および改善は、本開示の一部であることが意図されており、本発明の精神および範囲内にあることが意図されている。したがって、前述の説明および図面は、単なる例に過ぎない。
【政府援助に関する記載】
【0001】
本発明は、米国立衛生研究所による助成金番号N01−AI30050に基づく政府援助によりなされた。米国政府は、本発明に特定の権利を有する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、C.ディフィシレ関連疾患の予防及び治療に関し、さらに詳細には、C.ディフィシレの胞子の発芽および/またはC.ディフィシレ細胞の増殖を阻害する方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile,C.ディフィシレ)はグラム陽性の嫌気性桿菌であり、先進工業国における入院している成人の下痢性疾患の細菌性の原因のもののうち最も高い頻度で認められているものの1つである。微生物は、院内で付着する場合があり、環境要因中に存在する。抗生物質起因性大腸炎および偽膜性大腸炎は、細胞毒素を産生するC.ディフィシレに関連することが多い。抗生物質起因性大腸炎に関連するC.ディフィシレ毒素の頻度は50〜80%であり、偽膜性大腸炎では90〜100%である。
【0004】
抗生物質起因性大腸炎および偽膜性大腸炎に利用可能な治療にもかかわらず、患者の20〜25%は再発を生じる。バンコマイシンおよびメトロニダゾールは効果的だが、治療された被験体には再発する傾向がある。他の治療法としては、毒素結合性ポリマーであるtolevemer(非特許文献1)、および駆虫薬であるニタゾキサニド(非特許文献2)が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Louie et al. (2006) Clin. Infect. Dis. 43:411
【非特許文献2】Med. Letter Drugs Ther. (2006) 48:89
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
再発が頻発することから、特にヒトにおける、C.ディフィシレ関連疾患のさらに効果的な治療および予防法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患の治療および予防に有用な、ある特定の胆汁酸およびそれらの塩、それらの製造方法、それらの使用方法、およびそれらの組成物を提供する。胆汁酸、それらの塩、および本発明の組成物は、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患の治療のための薬剤の調製に使用することができ、限定はしないが、C.ディフィシレ大腸炎が挙げられる。
【0008】
本発明のある態様は、式Iの化合物:
【化1】
【0009】
であり、ここで、
R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される。1つの実施の形態では、この態様は、さらに、これらの化合物の薬学的に許容される塩も包含する。
【0010】
本発明の別の態様は、式Iの化合物:
【化2】
【0011】
であり、ここで、
R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される。1つの実施の形態では、この態様は、さらに、これらの化合物の薬学的に許容される塩も包含する。
【0012】
本発明の追加の態様は、式Iの化合物:
【化3】
【0013】
であり、ここで、
R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され、ここで、R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5は、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5は、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。1つの実施の形態では、この態様は、さらに、これらの化合物の薬学的に許容される塩も包含する。
【0014】
本発明のある態様は、一次胆汁を二次胆汁へと代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含む、プロバイオティクス組成物である。ある特定の実施の形態では、少なくとも1つの細菌株は、クロストリジウム・シンデンス(Clostridium scindens)、クロストリジウム・レプタム(Clostridium leptum)、およびクロストリジウム・ヒラノニス(Clostridium hiranonis)(TO931としても知られる)から選択される。
【0015】
ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは、経口投与用に製剤される。ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは直腸投与用に製剤される。
【0016】
本発明のある態様は、哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する方法であって、式Iの化合物:
【化4】
【0017】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性がある哺乳動物被験体に投与し、被験体におけるC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害し、それによって、前記被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する、各工程を有してなり、ここで、
R1は、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は、−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R1は、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R4は−OHである。ある特定の実施の形態では、R4およびR5は、それぞれ、−OHである。
【0018】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0019】
ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される。
【0020】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される。
【0021】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5は、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5は−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0022】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患はC.ディフィシレ大腸炎である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患は偽膜性大腸炎である。
【0023】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質を投与されている、これから投与されようとしている、または最近投与された被験体である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質は、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択される。
【0024】
ある特定の実施の形態では、被験体は、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しない。
【0025】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、経口投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与である。
【0026】
1つの実施の形態では、被験体はヒトである。
【0027】
本発明のある態様は、哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を治療する方法である。本方法は、C.ディフィシレ関連疾患を有する哺乳動物被験体に、式Iの化合物:
【化5】
【0028】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与し、被験体におけるC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害し、それによって、前記被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する、
各工程を有してなり、ここで、
R1は、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2);−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖のC1〜C10アルキルであり;
R3は−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R1は、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R4は−OHである。ある特定の実施の形態ではR4およびR5は、それぞれ、−OHである。
【0029】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0030】
ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される。
【0031】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される。
【0032】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5は、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5は−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0033】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患はC.ディフィシレ大腸炎である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎である.
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を投与されている、または最近投与された被験体である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質は、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択される。
【0034】
ある特定の実施の形態では、被験体は、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しない。
【0035】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、経口投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与である。
【0036】
1つの実施の形態では、被験体はヒトである。
【0037】
本発明のある態様は、抗生物質の治療を受けている哺乳動物被験体における、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を発症する危険性を低減する方法である。本方法は、抗生物質の治療を受け、かつ、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体に、式Iの化合物:
【化6】
【0038】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与して、被験体におけるC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害し、それによって、前記被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を発症する危険性を低減する工程を有してなり、ここで、
R1は、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は、−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R1は、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。ある特定の実施の形態では、R4は−OHである。ある特定の実施の形態ではR4およびR5は、それぞれ、−OHである。
【0039】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物は、ウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0040】
ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される。
【0041】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される。
【0042】
ある特定の実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R3は−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5は、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5は、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0043】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患はC.ディフィシレ大腸炎である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患は偽膜性大腸炎である。
【0044】
ある特定の実施の形態では、抗生物質は、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択される。
【0045】
ある特定の実施の形態では、被験体は、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しない。
【0046】
ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、経口投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は、経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、式Iの化合物またはそれらの塩は、直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与である。
【0047】
1つの実施の形態では、前記被験体はヒトである。
【0048】
本発明のある態様は、哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレの増殖を阻害する方法である。本方法は、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で、それらを必要とする哺乳動物被験体に投与して、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害する工程を含む。
【0049】
ある特定の実施の形態では、少なくとも1つの細菌株は、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニス(TO931としても知られる)から選択される。
【0050】
ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは、経口投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は、経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは、直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与を含む。
【0051】
1つの実施の形態では、前記被験体はヒトである。
【0052】
本発明のある態様は、哺乳動物被験体における、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する方法である。本方法は、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体に、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で投与して、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害し、それによって、被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する工程を含む。
【0053】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患はC.ディフィシレ大腸炎である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患は偽膜性大腸炎である。
【0054】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を最近投与された被験体である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質は、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択される。
【0055】
ある特定の実施の形態では、少なくとも1つの細菌株は、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニス(TO931としても知られる)から選択される。
【0056】
ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは、経口投与用に製剤され、例えば、1つの実施の形態では、投与は、経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与を含む。
【0057】
1つの実施の形態では、前記被験体はヒトである。
【0058】
本発明のある態様は、哺乳動物被験体における、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を治療する方法である。本方法は、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で、C.ディフィシレ関連疾患を有する哺乳動物被験体に投与し、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害し、それによって、前記C.ディフィシレ関連疾患を治療する工程を含む。
【0059】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患はC.ディフィシレ大腸炎である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎である。
【0060】
ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を最近投与された被験体である。ある特定の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質は、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択される。
【0061】
ある特定の実施の形態では、少なくとも1つの細菌株は、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニス(TO931としても知られる)から選択される。
【0062】
ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは、経口投与用に製剤され、例えば、1つの実施の形態では、投与は、経口投与を含む。ある特定の実施の形態では、プロバイオティクスは直腸投与用に製剤される。例えば、1つの実施の形態では、投与は直腸投与を含む。
【0063】
1つの実施の形態では、前記被験体はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】一般的な一次および二次胆汁酸の構造式。コール酸およびケノデオキシコール酸の一次胆汁塩は、典型的には、タウリンまたはグリシンと共役する(タウロコール酸およびグリココール酸のみを示)。通常の腸内細菌叢は、コール酸およびケノデオキシコール酸からタウリルおよびグリシル基を脱共役する。脱共役しされた一次胆汁塩は、細菌叢によって、それぞれデオキシコール酸およびリトコール酸へとさらに代謝される。
【図2】曝露時間の関数としてのタウロコール酸に対するC.ディフィシレ胞子の反応率を表すグラフ。C.ディフィシレ胞子は、0.1%のタウロコール酸を含む水に懸濁した。1、5、10、30、および60分に、胞子を逐次希釈し、タウロコール酸の非存在下、BHIS寒天上に塗布した(plated)。一晩増殖させた後、コロニーを数え、データをBHIS(TA)上に塗布した胞子のものと比較した。データは3つの独立した実験の平均であり、エラーバーは平均からの1標準偏差を表す。
【図3】C.ディフィシレ胞子の効率的な回収に必要とされるタウロコール酸の量を表すグラフ。C.ディフィシレ胞子を、濃度を増加させたタウロコール酸を含む水で培養し、逐次希釈し、タウロコール酸の非存在下、BHIS寒天上に塗布した(plated)。一晩増殖させた後、コロニーを数え、データをBHIS(TA)上に塗布した胞子のものと比較した。データは3つの独立した実験の平均であり、エラーバーは平均からの1標準偏差を表す。
【図4A】C.ディフィシレの発芽および増殖における一次胆汁塩の影響を示す一連のグラフ。(A)C.ディフィシレCD196胞子を精製し、BHIS単独(●)、緩衝液中、1%のタウロコール酸(▼)、または1%のタウロコール酸を含むBHIS(◆)、1%のグリココール酸(▲)、または1%のコール酸(■)に懸濁した。さまざまな時点における光学密度の、開始時の光学密度に対する比を、時間に対してプロットした。
【図4B】C.ディフィシレの発芽および増殖における一次胆汁塩の影響を示す一連のグラフ。(B)C.ディフィシレCD196胞子を精製し、グリシン緩衝液(1.3mM)(▲)、緩衝された1%のタウロコール酸(▼)、またはグリシン緩衝液+タウロコール酸(◆)に懸濁した。発芽をパネルAに関して測定した。
【図4C】C.ディフィシレの発芽および増殖における一次胆汁塩の影響を示す一連のグラフ。(C)C.ディフィシレUK14胞子を精製し、グリシン緩衝液(1.3mM)(▲)、緩衝された1%のタウロコール酸(▼)、またはグリシン緩衝液+タウロコール酸(◆)に懸濁した。発芽をパネルAに関して測定した。
【図4D】C.ディフィシレの発芽および増殖における一次胆汁塩の影響を示す一連のグラフ。(D)増殖期のC.ディフィシレ(実線)および増殖期のウェルシュ菌(C.perfringens)(破線)をBHIS単独(●)、BHIS(TA)(◆)、またはBHIS+0.1%のケノデオキシコール酸(×)で増殖させた。エラーバーは、平均からの1標準偏差を表す。
【図5A】C.ディフィシレの発芽および増殖におけるデオキシコール酸の影響を示す一対のグラフ。C.ディフィシレ胞子を精製し、BHIS単独(●)またはBHIS(TA)(◆)またはBHIS+1%のデオキシコール酸(▲)に懸濁した。
【図5B】C.ディフィシレの発芽および増殖におけるデオキシコール酸の影響を示す一対のグラフ。増殖期のC.ディフィシレ(実線)および増殖期のウェルシュ菌(C.perfringens)(破線)をBHIS単独(●)またはBHIS+0.1%のデオキシコール酸(▲)で増殖させた。エラーバーは、平均からの1標準偏差を表す。
【図6A】C.ディフィシレのコロニー形成のケノデオキシコール酸による阻害を示す一対の棒グラフ。ケノデオキシコール酸(CDCA)の存在下および非存在下における、タウロコール酸(TA)に応答したコロニー形成。
【図6B】C.ディフィシレのコロニー形成のケノデオキシコール酸による阻害を示す一対の棒グラフ。ケノデオキシコール酸(CDCA)の存在下および非存在下における、コール酸(CA)に応答したコロニー形成。各グラフにおけるY軸は、対数表示であることに留意されたい。
【図7】ケノデオキシコール酸によるC.ディフィシレの発芽阻害を表すグラフ。C.ディフィシレ胞子は、BHISのみ(●)、BHIS+0.1%CDCA(▼)、BHIS+0.1%TA(◆)、BHIS+0.1%TA/0.1%CDCA(■)またはBHIS+1.0%TA/0.1%CDCA(▲)に懸濁した。表示時点におけるOD600の、T0におけるOD600に対する比が、時間に対してプロットされている。データ点は、3つの独立した実験の平均であり、エラーバーは、平均からの1つの標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、以下の説明に記載された、または図面に例証された構成要素の構成及び配置の詳細への適用に限定されない。本発明は、他の実施の形態が可能であり、さまざま方法で実施または実行される。また、本明細書で用いられる語句および専門用語は、説明の目的であって、限定とみなされるべきではない。「含める」、「含む」、または「有する」、「含有する」、「包含する」、およびおよびそれらのバリエーションの使用は、本明細書では、その前に列挙される項目およびそれらの等価物ならびに追加の項目を網羅することを意味する。
【0066】
本発明は、少なくとも一部には、ある特定の胆汁酸およびそれらの塩がC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害するという発明者による驚くべき発見に基づいている。この特性を備えた胆汁酸およびそれらの塩は、12−デオキシ構造を有し、例えば、ケノデオキシコール酸およびその7β−ヒドロキシエピマーであるウルソデオキシコール酸が挙げられる。C.ディフィシレの胞子の発芽阻害は、結果的には、大腸の嫌気性環境で生じうる、増殖期のC.ディフィシレのその後の(downstream)発生および増殖を阻害する。したがって、本発明は、抗生物質関連性の下痢(C.ディフィシレ大腸炎としても知られる)および偽膜性大腸炎を含めたC.ディフィシレ関連疾患の予防および治療に有用な組成物および方法に関する。
【0067】
クロストリジウム・ディフィシレによる胞子形成は、院内感染性のC.ディフィシレ関連疾患の克服にとって、大変な障害である。胞子は、駆除するのが難しい汚染環境を作り出す、加熱、放射線、化学物質、および抗生物質に対して耐性である。しかしながら、病気を引き起こすには、胞子は、増殖性細胞として発芽および成長する必要がある。
【0068】
C.ディフィシレの増殖性細胞は、酸素に対して非常に敏感である。大腸の嫌気性環境の外で生き延びるには、細菌は、胞子の形態でなければならない。よって、その環境から得られる胞子の形態のC.ディフィシレが、病気を発症すると一般に考えられている。毒素は胞子ではなく細胞によって産生されることから、胞子は、恐らくは、消化管で発芽し、増殖性細胞として成長し、毒素を産生する。しかしながら、宿主が排泄するC.ディフィシレ細菌は、長期にわたって生存するためには胞子の形態の形態でなければならない。胞子形成の間の形態的変化はクロストリジウム属およびバシラス属とよく似ているが、クロストリジウム属の胞子形成および発芽は、モデル生物の枯草菌(Bacillus subtilis)のようには、よく研究されていない。簡単に説明すれば、胞子形成は、栄養制限条件下で開始され、細胞を2つの不均等な区画に分割する非対称に配置された分裂隔壁の形成につながり、その区画のそれぞれが染色体の1つのコピーを含む。大きいほうの母細胞区画は、次に、前胞子を飲み込み、前胞子の成熟を助ける。Hilbert et al. (2004) Microbiol. Mol. Biol. Rev. 68:234-262。ペプチドグリカン皮質および外被タンパク質の幾つかの層の添加は、母細胞の溶解による環境への放出より先に生じる。Henriques et al. (2007) Annu. Rev. Microbiol. 61:555-588。
【0069】
ひとたび母細胞から放出されると、胞子は代謝的に休眠状態ではあるが、多くのタイプの環境障害に対して非常に耐性である。条件が増殖に適するようになると、胞子は発芽し、増殖性細胞として成長する。枯草菌では、発芽は、L−アラニンまたはアスパラギン、グルコース、フルクトース、およびカリウムイオンの混合物によって誘発することができる。これらの環境信号を感知することに関与する受容体は、GerA、GerB、およびGerKである。Irie et al. (1996) J. Gen. Appl. Microbiol. 42:141-153; Moir et al. (1979) J. Gen. Microbiol. 124:165-180。発芽が感知された後、カルシウムジピコリネート(Ca2+−DPA)の大きな貯蔵(depot)が放出され、コアが水和され、皮質が分解されて、代謝が始まる。GerA、GerB、およびGerKの同族体は、幾つかのバシラス属および多くのクロストリジウム属に存在するが、C.ディフィシレには存在せず、C.ディフィシレがさまざまな種類の環境信号に応答することを示唆している。実際、さまざまな種類の胞子の発芽は、さまざまな発芽によって誘発される。例えば、巨大菌(Bacillus megaterium)の胞子では、L−プロリンは発芽するが、プリン・リボヌクレオシドおよびアミノ酸は、炭疽菌(Bacillus anthracis)の胞子の共同的発芽物質として作用する。
【0070】
C.ディフィシレ胞子の発芽および成長に関しては、1つには、遺伝的手段の欠如を理由として、以前は、掘り下げた研究はされていなかった。具体的には、発芽段階は、胞子の再水和およびCa2+−DPAの放出によって生じる光学密度の変化として古典的に定義され、依存性の現象としては研究されていなかった。先行研究は、胆汁塩であるタウロコール酸が、環境表面および排泄物から回収されたC.ディフィシレ胞子のコロニー形成を増進することを示した。Bliss et al. (1997) Diagn. Microbiol. Infect. Dis. 29:1-4; Weese et al. (2000) J. Vet. Diagn. Invest. 12:449-452; Wilson et al. (1982) J. Clin. Microbiol. 15:443-446。同様に、C.ディフィシレ胞子をリゾチームおよびチオグリコール酸で処理するとコロニー形成が増進されることが報告されている。Kamiya et al. (1989) J. Med. Microbiol. 28:217-221; Wilson (1983) J. Clin. Microbiol. 18:1017-1019。コロニー形成におけるこれらの影響は明らかであるが、処理が発芽に及ぼすかもしれない特異的効果が何であるかを識別することは困難である。
【0071】
胆汁は、肝臓で産生され、胆嚢に貯蔵される。消化を助けるため、胆嚢は胆汁を十二指腸内に分泌し、脂肪およびコレステロールの吸収を助ける。肝臓によって産生された一次胆汁は、主に、タウリンまたはグリシンと共役したコール酸およびケノデオキシコール酸からなる(図1)。Ridlon et al. (2006) J. Lipid Res. 47:241-259。回腸末端部を通過する間に、胆汁は活発に再吸収され、肝臓へと再利用される。しかしながら、400〜800mgの胆汁が、回腸から盲腸内へと毎日通過し、ここで、正常な、良性の細菌叢によって、生体内変換反応のための基質となる。Thomas et al. (2001) Gut 49:835-842; Vlahcevicet al. (1996) In D. Zakim and T. Boyer (ed.), Hepatology: a textbook of liver disease, 3rd ed. W. B. Saunders Company, Philadelphia, PA。
【0072】
ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)を含めた細菌の多くの異なる種は、一次胆汁塩から共役アミノ酸を取り除く胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)を、それらの細胞表面に発現する。この加水分解反応は、共役した一次胆汁塩が、本質的にはヒト盲腸において検出されない程度まで、完了するまで継続すると思われる。一部のクロストリジウム属はBSHを発現するが、C.ディフィシレについてはいずれにも記載されておらず、他の属のBSHと同族のオープンリーディングフレーム生成物は存在しない。
【0073】
非共役の一次胆汁塩は、結腸において、わずかな比率の細菌種に取り込まれる。Ridlon et al. (2006) J. Lipid Res. 47:241-259。これらの種の1つである、クロストリジウム・シンデンスは、非共役の一次胆汁塩をサイトゾル内に能動的にに輸送し、一連の酵素反応を通じて、コール酸およびケノデオキシコール酸を、それぞれ、二次胆汁塩であるデオキシコール酸およびリトコール酸に転換する(図1)。Mallonee et al. (1996) J. Bacteriol. 178:7053-7058; Wells et al. (2000) Appl. Environ. Microbiol. 66:1107-1113; White et al. (1980) Steroids 35:103-109。これらの二次胆汁塩は、細菌から細胞外環境へと分泌され、最終的には宿主によって排泄される。
【0074】
本明細書では「C.ディフィシレ関連疾患」とは、C.ディフィシレによる、腸管における、望まれていない増殖、毒素の産生、または組織浸潤を含む、任意の疾患のことをいう。C.ディフィシレ関連疾患は、医薬業界において周知であり、具体的には、抗生物質関連性の下痢(C.ディフィシレ大腸炎としても知られる)、偽膜性大腸炎、およびC.ディフィシレ関連性の中毒性巨大結腸症が挙げられる。C.ディフィシレ大腸炎は、一般に、少なくとも1種類のC.ディフィシレ毒素の存在に関連した、おびただしい水様下痢性の病気のことをいう。偽膜性大腸炎とは、C.ディフィシレによる、血性の下痢、熱、および腸壁の浸潤によってさらに特徴づけられる、重症型のC.ディフィシレ大腸炎のことをいう。C.ディフィシレ毒素の検出試験が出現する前は、ほとんどの場合、大腸内視鏡検査またはS状結腸鏡検査によって診断されていた。結腸または直腸の表面における「偽膜」の出現は、病態の診断である。偽膜は、主に、炎症性デブリおよび白血球で構成される。
【0075】
本発明に従った有用な化合物は、式Iの胆汁酸:
【化7】
【0076】
およびその薬学的に許容される塩であり、ここで、
R1は、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、
ここで:
R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3は、−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される。
【0077】
1つの実施の形態では、R1は、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0078】
1つの実施の形態では、R1は、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択される。
【0079】
1つの実施の形態では、R4は、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択される。
【0080】
1つの実施の形態では、R5は、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択される。
【0081】
1つの実施の形態では、R1は−CO2(R2)であり、ここで、R2はメチルであり;R4およびR5は、それぞれ、−Oアシルであり、ここで、アシルはC(=O)CH3である。
【0082】
1つの実施の形態では、R1は−CO2(R2)であり、ここで、R2はメチルであり;R4およびR5は、それぞれ、−OHである。
【0083】
1つの実施の形態では、R4は−OHである。
【0084】
1つの実施の形態では、R4およびR5は、それぞれ、−OHである。
【0085】
1つの実施の形態では、式Iの化合物はケノデオキシコール酸である。
【0086】
1つの実施の形態では、式Iの化合物はウルソデオキシコール酸である。
【0087】
1つの実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OHであり;R5は−OHである。
【0088】
1つの実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−OH;R5は、−OHである。
【0089】
1つの実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。
【0090】
1つの実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2はメチルまたはエチルであり;R3は−CO2Hまたは−SO3Hであり;R4は−Hであり;R5は−OHである。
【0091】
1つの実施の形態では、R1は−CONHCH2CH2(R3)であり;R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;R3は、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0092】
1つの実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;R3は、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0093】
1つの実施の形態では、R1は−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;R2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;R3は−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され;R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで、R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5は−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5は、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される。
【0094】
上述のように、個別の化合物に加えて、本発明に従った、前述の化合物のそれぞれの薬学的に許容される塩もまた有用である。薬学的に許容される塩について、以下にさらに開示する。
【0095】
本発明の目的では、化学元素は、化学および物理ハンドブック、第75版、CASバージョンの内表紙の元素周期表に従って識別され、特定の官能基は、一般に、そこに記載されるように定義される。さらには、有機化学の一般的原理、ならびに、特定の官能基および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999; Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001; Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989; Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載されている。
【0096】
本発明の化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体の形態で存在して差し支えない。本発明は、本発明の範囲内に含まれる、シスおよびトランス異性体、RおよびS型のエナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含めた、これらすべての化合物を意図している。
【0097】
ジアステレオマーは、具体的には、1つの立体中心の配置のみが異なるジアステレオマーである、エピマーも含む。
【0098】
異性体/エナンチオマーまたはエピマーが好ましい場合には、一部の実施の形態では、実質的に、対応するエナンチオマーまたはエピマーを含まないものが提供されて差し支えなく、これは、「光学的に豊富」とも称されうる。本明細書では「光学的に豊富」とは、1つのエナンチオマーまたはエピマーの割合が非常に大きい状態で化合物が構成されることを意味する。ある特定の実施の形態では、本発明の化合物は、少なくとも約90重量%が、好ましいエナンチオマーまたはエピマーで構成される。他の実施の形態では、化合物は、少なくとも約95重量%、98重量%、または99重量%が、好ましいエナンチオマーまたはエピマーで構成される。好ましいエナンチオマーまたはエピマーは、キラル高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)およびキラル塩の形成および結晶化を含めた、当業者に既知の任意の方法によって、ラセミ混合物から単離されて差し支えなく、あるいは非対称の合成によって調製されてもよい。例えば、Jacques et al., Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience, New York, 1981); Wilen et al., Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw−Hill, NY, 1962); Wilen, Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)を参照のこと。
【0099】
本発明の化合物および組成物において、「アルキル」という用語は、単一の水素原子の除去による、1〜20個の炭素原子を含む炭化水素部分に由来する、直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基を含む、脂肪族基のラジカルのことをいう。ある特定の実施の形態では、「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基を含めた、飽和脂肪族基のラジカルのことをいう。一部の実施の形態では、本発明に用いられるアルキル基は、1〜20個の炭素原子を含む。ある特定の実施の形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に10個以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖ではC1〜C10、分岐鎖ではC3〜C10)、さらに好ましくは、6個以下であり、さらに好ましくは4個以下である。アルキルラジカルの例としては、限定はしないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、sec−ペンチル、イソ−ペンチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。直鎖アルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、およびn−デシルが挙げられる。「メチル」という用語は、1価のラジカルである−CH3のことをいう。分岐鎖アルキル基としては、具体的には、限定はしないが、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、およびイソヘキシルが挙げられる。
【0100】
ある特定の実施の形態では、「アルキル」という用語は、1つ以上の置換基を有するアルキル基、すなわち、置換アルキル基のことをいう。アルキル基の置換基としては、限定はしないが、結果的に安定した部分を形成する、本明細書に記載される任意の置換基が挙げられる(例えば、脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど。ここで、それぞれの基は、さらに置換されていてもいなくてもよい)。
【0101】
「脂肪族」という用語は、本明細書では、飽和および不飽和の両方の、直鎖(すなわち、非分岐鎖)、分岐鎖、非環式、および環式(すなわち、炭素環式)の炭化水素を含み、これらは、随意的に、1つ以上の官能基で置換されている。当業者に認識されるように、本明細書では「脂肪族」は、限定はしないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルの部分を含むことが意図されている。よって、本明細書では「アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環式のアルキル基を含む。同様の規則が「アルケニル」、「アルキニル」などの他の一般的用語にも適用される。さらには、本明細書では、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などの用語は、置換および非置換の両方の基を包含する。ある特定の実施の形態では、本明細書では、「脂肪族」とは、1〜20個の炭素原子を有する、それらの脂肪族基(環式、非環式、置換、非置換、分岐または非分岐)を指すのに用いられる。脂肪族基の置換基としては、限定はしないが、結果的に安定した部分を形成する、本明細書に記載される任意の置換基が挙げられる(例えば、脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど。ここで、それぞれの基は、さらに置換されていてもいなくてもよい)。
【0102】
「シアノ」という用語は、本明細書では、化学式(−CN)の基のことをいう。
【0103】
「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、本明細書では、フッ素(フルオロ、−F)、塩素(クロロ、−Cl)、臭素(ブロモ、−Br)、およびヨウ素(ヨード、−I)から選択される原子のことを称する。
【0104】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」とは、−OH基のことをいう。「アルコキシ」とは−OR基のことをいい、ここで、Rは、先に定義したアルキル基である。「アミノ」とは−NH2基のことをいう。「アルキルアミノ」とは−NHRまたは−NRR'基のことをいい、ここでRおよびR'は、独立して、先に定義したアルキル基またはシクロアルキル基から選択される。
【0105】
「アシル」とは、−C(=O)R基のことをいい、ここでRは、Hまたは先に定義したアルキルである。
【0106】
「胆汁塩」には、以下に示す、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、およびウルソデオキシコール酸を含めた化合物が含まれる。
【化8】
【0107】
本明細書では、規定される場合、または文脈によってそうでないことが必須でありうる場合を除いて、本発明の「胆汁塩」は、遊離のカルボン酸および対応するカルボン酸塩の両方を包含し、逆の場合もまた同様である。例えば、「コール酸(塩)」という用語は、遊離酸(コール酸)、ならびに対応するカルボン酸塩(コール酸塩)の両方を称しうる。同様に、「リトコール酸(塩)」という用語は、遊離酸(リトコール酸)ならびに対応するカルボン酸塩(リトコール酸塩)の両方を称しうる。同様に、「ケノデオキシコール酸(塩)」という用語は、遊離酸(ケノデオキシコール酸)ならびに対応するカルボン酸塩(ケノデオキシコール酸塩)の両方を称しうる。限定することは意味しないが、「ウルソデオキシコール酸(塩)」という用語は、遊離酸(ウルソデオキシコール酸)ならびに対応するカルボン酸塩(ウルソデオキシコール酸塩)の両方を称しうる。
【0108】
限定はしないが、上述のものを含めた任意の胆汁塩の「共役」には、カルボン酸塩またはカルボン酸の官能基を、グリシン、タウリン、またはそれらの誘導体のアミノ基に由来するアミドペプチド結合へと変換することも含まれる。同様に、得られたアミド結合の「脱共役」には、グリシン、タウリン、またはそれらの誘導体を開裂または除去して、元の胆汁塩カルボン酸を生成することが含まれる。ケノデオキシコール酸の代表的な共役および脱共役を以下に示す。
【化9】
【0109】
「置換」または「〜で置換した」には、これらの置換が、置換原子および置換基の許容される価数に従い、置換が、例えば、転位、環化、脱離などによって自然に変換を被らない、結果的に安定な化合物を生じるという暗黙の条件が含まれることが理解されよう。
【0110】
本明細書では、「置換した」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことが意図されている。幅広い態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。例証される置換基としては、例えば、上述のものなどが挙げられる。適切な有機化合物について、許容される置換基は、1つ以上であって差し支えなく、同一であっても異なっていてもよい。本発明の目的では、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/または、ヘテロ原子の価数を満たす、本明細書に記載される有機化合物の任意の許容される置換基を有しうる。本発明は、有機化合物の許容される置換基によって、いかなる方法によっても制限されることは意図されていない。
【0111】
本発明のある特定の化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体の形態で存在しうる。本発明は、本発明の範囲内に含まれる、シスおよびトランス異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含めた、これらすべての化合物を意図している。追加の非対称の炭素原子は、アルキル基などの置換基に存在して差し支えない。これらすべての異性体、ならびにそれらの混合物は、本発明に含まれることが意図されている。ある特定の実施の形態では、本発明は、本明細書に概説される任意の構造で表される化合物に関し、ここで、化合物は単一の立体異性体である。
【0112】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが望ましい場合には、非対称の合成、またはキラル補助基を用いた誘導によって調製することができ、ここで、得られたジアステレオマー混合物は分離され、補助基は純粋な所望のエナンチオマーを提供するために開裂される。あるいは、分子がアミノ基などの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含む場合には、ジアステレオマー塩は、適切な光学的に活性な酸または塩基を用いて形成され、続いて、ジアステレオマーを分割し、当技術分野で周知の分別結晶法またはクロマトグラフ法によって形成し、その後、純エナンチオマーを回収する。
【0113】
本発明のある特定の態様は、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体における、C.ディフィシレ関連疾患の発症に対する予防に効果的な方法である。本明細書では、「C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体」とは、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に、曝露されようとしている、曝露されている、または曝露されたが、C.ディフィシレ関連疾患はまだ発症していない被験体である。1つの実施の形態では、「被験体がC.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性」は、C.ディフィシレ大腸炎の発症に関連した少なくとも1種類の薬剤または条件に、曝露されようとしている、曝露されている、または曝露されたが、C.ディフィシレ大腸炎はまだ発症していない被験体である。1つの実施の形態では、「被験体がC.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性」は、偽膜性大腸炎の発症に関連した少なくとも1種類の薬剤または条件に、曝露されようとしている、曝露されている、または曝露されたが、偽膜性大腸炎はまだ発症していない被験体である。
【0114】
本明細書では「C.ディフィシレ関連疾患の発症に対する少なくとも1つの薬剤または条件」とは、C.ディフィシレ関連疾患の発症に対する抗生物質および抗生物質による治療のことをいう。C.ディフィシレ関連疾患の発症に対する抗生物質として、具体的には、限定はしないが、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン系の抗生物質、およびセファロスポリン系の抗生物質が挙げられる。
【0115】
フルオロキノロン系の抗生物質として、具体的には、限定はしないが、バロフロキサシン、シプロフロキサシン、ジフロキサシン、エンロフロキサシ、フレロキサシン、ガチフロキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、マルボフロキサシン、モキシフロキシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オルビフロキサシン、パズフロキサシン、ペルフロキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、およびトスフロキサシンが挙げられる。
【0116】
セファロスポリン系の抗生物質として、具体的には、限定はしないが、セファセトリル、セファクロメジン、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロラム、セファロリジン、セファロチン、セハパロール、セファピリン、セファトリジン、セファザフル、セファゼドン、セファゾリン、セフブペラゾン、セフカネル、セフカペン、セフクリジン、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェドロロール、セフェムピドン、セフェピム、セフェタメト、セフェトリゾール、セフィビトリル、セフィキシム、セフルプレナム、セフマチレン、セフメノキシム、セフメピジウム、セフメタゾール、セフミノックス、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォセリス、セフォタキシム、セフォテタン、セフォベシン、セフォキサゾール(cefoxazole)、セフォキシチン、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピロム、セフポドキシム、セフプロジル、セフキノム、セフラジン、セフロチル、セフロキサジン、セフスミド、セフタロリン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾル、セフチブテン、セフチオフル、セフチオレン(ceftiolene)、セフチオキシド、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフラセチム(cefuracetime)、セフロキシム、セフゾナム、およびロラカルベフが挙げられる。
【0117】
C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されようとしている被験体は、これらの薬剤または条件に曝露されることが予期されている被験体である。例えば、1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されようとしている被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質を服薬することまたは前記抗生物質で治療されることが予期されている被験体である。
【0118】
C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されている被験体は、これらの薬剤または条件に現在曝露されている被験体である。例えば、1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されている被験体は、現在、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質を服薬している、または前記抗生物質で治療されている被験体である。
【0119】
C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されている被験体は、これらの薬剤または条件に曝露されたが、現在は曝露されていない被験体である。例えば、1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されている被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質を用いた一連の治療を最近完了した被験体である。1つの実施の形態では、「最近完了した」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で60日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近完了した」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で30日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近完了した」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で14日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近完了した」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で7日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。
【0120】
したがって、一部の実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体は、式Iの化合物またはそれらの治療的に許容される塩を投与され、それと同時に、被験体がC.ディフィシレ関連疾患の発症に対する少なくとも1つの薬剤または条件に現在、曝露されている。C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する、本発明の化合物および薬剤のための投薬スケジュールは、全く同一でありうるが、もしそれらが重複するならば、必ずしも同一である必要はない。
【0121】
1つの実施の形態では、本発明の化合物の投与は、被験体がC.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されるのに伴って、または曝露されている期間中に開始することができ、その後、被験体がC.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露される期間を過ぎて継続することもできる。
【0122】
1つの実施の形態では、本発明の化合物の投与は、被験体がC.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露される期間の72時間前に始めることができ、次いで、被験体がC.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に曝露されている期間中、および期間経過後も継続できる。
【0123】
本発明のある特定の態様は、C.ディフィシレ関連疾患を有する哺乳動物被験体における、C.ディフィシレ関連疾患の治療に効果的な方法である。本明細書では、「C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体」とは、C.ディフィシレ関連疾患の少なくとも1つの他覚的徴候を有する被験体である。1つの実施の形態では、「C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体」とは、C.ディフィシレ関連疾患を有する疑いのある被験体である。1つの実施の形態では、「C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体」とは、C.ディフィシレ関連疾患を有すると診断された被験体である。1つの実施の形態では、「C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体」とは、C.ディフィシレ大腸炎を有すると診断された被験体である。1つの実施の形態では、「C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体」とは、偽膜性大腸炎を有すると診断されたが、まだ偽膜性大腸炎は進行していない被験体である。
【0124】
1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に、現在、曝露されている被験体である。例えば、1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1種類の抗生物質を現在服薬している被験体である。
【0125】
1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1つの薬剤または条件に、最近、曝露された被験体である。例えば、1つの実施の形態では、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する少なくとも1種類の抗生物質を最近投与された被験体である。1つの実施の形態では、「最近投与された」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で60日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近投与された」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で30日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近投与された」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で14日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。1つの実施の形態では、「最近投与された」とは、被験体が、本発明に従った化合物または組成物の投与の前に、少なくとも1日、最長で7日間の抗生物質を用いた治療を完結したことを意味する。
【0126】
C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、本発明の化合物を、C.ディフィシレ関連疾患の治療に適した別の薬剤と同時に服薬することができる。例えば、被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の治療を目的として、本発明の化合物およびバンコマイシンまたはメトロニダゾールなどの抗生物質を投与されうる。本発明の化合物およびC.ディフィシレ関連疾患の治療に適した他の薬剤の投薬スケジュールは、全く同一でありうるが、それらが重複することを条件として、必ずしも同一である必要はない。
【0127】
胆汁塩の他の徴候
ウルソデオキシコール酸、他の胆汁酸、およびそれらの塩は、胆汁塩の欠乏、肝疾患、胆石、嚢胞性線維症に関連した消化管の合併症、アルコール誘発性の二日酔い、薬物中毒、胆嚢手術後の結腸癌、および腸における脂肪および脂質の消化不良に関連した欠乏を含めた、C.ディフィシレ関連疾患以外の病状を治療するために、しばしば、被験体に投与される。米国特許第5,415,872号明細書。これらの病状のためのウルソデオキシコール酸の通常の経口投与量は、1日に1回または2回、2〜15mg/kg体重である。ウルソデオキシコール酸の高投与量は、しばしば、下痢を含めた望ましくない副作用に関連している。
【0128】
本発明の1つの実施の形態では、被験体は、胆汁酸またはそれらの塩が治療に適応される、C.ディフィシレ関連疾患以外にこれらの病状を有しない。すなわち、1つの実施の形態では、本発明の被験体は、ほかに、胆汁塩の欠乏、肝疾患、胆石、嚢胞性線維症に関連する消化管の合併症、アルコール誘発性の二日酔い、薬物中毒、胆嚢手術後の結腸癌、および腸における脂肪および脂質の消化不良に関連した欠乏を有しない。
【0129】
本発明の1つの実施の形態では、被験体は、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性を除き、胆汁酸またはそれらの塩が治療に適応される、他の病状を有しない。すなわち、1つの実施の形態では、本発明の被験体は、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性はあるが、ほかに、胆汁塩欠乏、肝疾患、胆石、嚢胞性線維症に関連する消化管の合併症、アルコール誘発性の二日酔い、薬物中毒、胆嚢手術後の結腸癌、および腸における脂肪および脂質の消化不良に関連した欠乏を有しない。
【0130】
本発明のさまざまな実施の形態では、本発明の胆汁酸またはそれらの塩は、もっぱら、C.ディフィシレ関連疾患の予防、C.ディフィシレ関連疾患の発症の危険性の低減、またはC.ディフィシレ関連疾患の予防の目的で、投与される。
【0131】
製剤化−単独または組合せ
1つの実施の形態では、本発明の胆汁酸またはそれらの塩は、単一の胆汁酸またはその塩である。例えば、1つの実施の形態では、被験体に投与される式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの塩であり、本質的には他の胆汁酸またはそれらの塩を含まない。
【0132】
1つの実施の形態では、本発明の胆汁酸またはそれらの塩は、主に、単一の胆汁酸またはそれらの塩を含むように製剤化される。この実施の形態によれば、単一の胆汁酸またはそれらの塩は、特定の胆汁塩製剤の少なくとも75パーセント、少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、または少なくとも95パーセントを占める。例えば、1つの実施の形態では、被験体に投与される式Iの化合物は、少なくとも80パーセントのケノデオキシコール酸またはそれらの塩である。別の例として、1つの実施の形態では、被験体に投与される式Iの化合物は、少なくとも95パーセントのケノデオキシコール酸またはそれらの塩である。
【0133】
1つの実施の形態では、本発明の胆汁酸またはそれらの塩は、胆汁酸またはそれらの塩の組合せとして製剤化される。例えば、1つの実施の形態では、被験体に投与される式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの塩および、少なくとも1種類の追加の胆汁酸またはそれらの塩を含む。例えば、1つの実施の形態では、被験体に投与される式Iの化合物は、ケノデオキシコール酸またはそれらの塩および、ウルソデオキシコール酸またはそれらの塩を含む。胆汁酸またはそれらの塩は、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、またはそれ以上の種類の胆汁酸およびそれらの塩を含みうる。
【0134】
本発明のさまざまな実施の形態では、本発明の化合物は、単に、C.ディフィシレ関連疾患の予防、C.ディフィシレ関連疾患の発症の危険性の低減、またはC.ディフィシレ関連疾患の予防の目的のためだけに、被験体に投与される。
【0135】
抗発芽
本発明のさまざまな態様は、インビボを含めた、C.ディフィシレの胞子の発芽の阻害を引き起こす方法である。上記のように、今回、ある特定の胆汁酸、例えば式Iの化合物およびそれらの塩が、C.ディフィシレの胞子の発芽を阻害することが発見された。本明細書では、「C.ディフィシレの胞子の発芽の阻害」とは、対照と比較して測定可能な量または測定可能な程度、C.ディフィシレの胞子の発芽を低減することを意味する。しかしながら、測定可能な量または測定可能な程度は、必ずしも完全または100パーセントである必要はない場合がありうる。例えば、1つの実施の形態では、「C.ディフィシレの胞子の発芽の阻害」とは、対照と比較して少なくとも10パーセント、C.ディフィシレの胞子の発芽を低減することを意味する。他の実施の形態では、「C.ディフィシレの胞子の発芽の阻害」とは、対照と比較して、少なくとも20パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセント、少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、または少なくとも90パーセント、C.ディフィシレの胞子の発芽を低減することを意味する。
【0136】
本発明のさまざまな態様は、インビボを含めた、C.ディフィシレの増殖の阻害を引き起こす方法である。上記のように、ある特定の胆汁酸、例えば式Iの化合物およびそれらの塩がC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害することが発見された。また上記のように、胞子発芽を阻害することによって、増殖期のC.ディフィシレのその後の発生および増殖も阻害することが可能である。さらには、抗発芽活性を有するある特定の化合物は、増殖期のC.ディフィシレの増殖も阻害することができる。例えば、ケノデオキシコール酸およびウルソデオキシコール酸は、C.ディフィシレの抗発芽作用に加えて、増殖期のC.ディフィシレの増殖を阻害することもできる。本明細書では、「C.ディフィシレの増殖の阻害」とは、対照と比較して、測定可能な量または測定可能な程度、C.ディフィシレの増殖を低減することを意味する。しかしながら、測定可能な量または測定可能な程度は、必ずしも完全または100パーセントである必要はない場合もありうる。例えば、1つの実施の形態では、「C.ディフィシレの増殖の阻害」とは、C.ディフィシレby対照と比較して、C.ディフィシレの増殖を少なくとも10パーセント低減することを意味する。他の実施の形態では、「C.ディフィシレの増殖の阻害」とは、対照と比較して、少なくとも20パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセント、少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、または少なくとも90パーセント、C.ディフィシレの増殖を低減することを意味する。
【0137】
ケノデオキシコール酸などの本明細書に記載する胆汁塩、およびタウリンおよびサルコシンメチルエステルなどの共役試薬の多くは、Sigma−Aldrich社などの供給元から市販され、次のものが挙げられる:ケノデオキシコール酸ナトリウム(CAS番号:2646−38−0;Sigma−Aldrich社カタログ#C8261);ウルソデオキシコール酸(Sigma−Aldrich社カタログ#U5127);コール酸ナトリウム(CAS番号:206986−87−0;Sigma−Aldrich社カタログ#270911);デオキシコール酸ナトリウム(CAS番号:302−95−4;Sigma−Aldrich社カタログ#D6750);タウリン(CAS番号:107−35−7;Sigma−Aldrich社カタログ#T0625);サルコシンメチルエステルHCl(CAS番号:13515−93−0;Sigma−Aldrich社カタログ#84570)。
【0138】
本発明によれば有用でありうる追加の胆汁塩は、ステラロイド社(Steraloids Inc.,米国ロードアイランド州ニューポート所在)およびVWR社(米国ペンシルベニア州ウェストチェスター所在)などの追加の供給元から市販されている。例えば、次の化合物は、ステラロイド社から市販されている:5β−コラン酸−n−(2−スルホエチル)−アミド(カタログ番号C0835−000);5β−コラン酸−3α,7α−ジオール3−酢酸メチルエステル(カタログ番号C0950−000);5β−コラン酸−3α,7α−ジオール二酢酸メチルエステル(3α,7α−ビス(アセチルオキシ)−5β−コラン−24−酸メチル)(CAS番号2616−71−9;カタログ番号C0964−000);5β−コラン酸−3α,7α−ジオールメチルエステル(カタログ番号C0975−000);および5β−コラン酸−3α,7β−ジオールメチルエステル(ウルソデオキシコール酸メチルエステル)(カタログ番号C1040−000)。次の化合物は、VRW社から市販されている:ウルソデオキシコール酸(CAS番号128−13−2;カタログ番号B20490−03);ウルソデオキシコール酸、ナトリウム塩(カタログ番号104626);ケノデオキシコール酸(カタログ番号22877―0050);およびタウロウルソデオキシコール酸、ナトリウム塩(CAS番号14605−22−2;カタログ番号002161)。
【0139】
鉛化合物の同定および発症
ケノデオキシコール酸(CDCA)などの最初の活性化合物を始めとして、市販の構造群に関係がある、構造活性相関(SAR)の研究のためのさまざまな化合物を入手することができる。この初期の商用ライブラリは、SARを調査し、モデルを開発して、合成のさらなる取り組みに向かわせるのに利用することができる。モデルに基づいて、生物活性を増大し、望まれていない潜在的な毒物学的および物理化学的特性を低下するために、大まかにヒットした周辺の小規模ライブラリにおいて、医薬品化学の幾つかの反復ラウンドを行うことができる。最初の試みは、生物活性の改善およびSAR傾向の発現、ならびに標的との追加の相互作用のための、大まかにヒットした構造における核心を突き止めることに焦点を合わせる。この最初の作業プロセスにおいて、活性に必要とされる最小限のファーマコフォアを特定し、幅広いSARを得ることを試みることができる。
【0140】
最初のライブラリセットを試験した後、生物活性情報を使用して、それぞれの化学的改良をランク付けし、各ライブラリ系列のSAR傾向を構築し始めることができる。この情報を利用し、第2系列の化合物を調製して、SAR傾向を改善することができる。加えて、それらが生じたときには、活性、溶解性、ADME(吸収、分散、代謝、排出)などの特別な懸念に対処することができる。
【0141】
すべての問題に対処し、適切な薬物動態学的(PK)特性を有する、強力な選択的阻害剤を創生するためには、この合成−試験−合成プロトコルを数回、反復する必要がある。これらの問題の多くは、同時に調節することができるが、これが可能でない場合、一般に、優先順位は:第1に、明らかな問題のある官能性の除去;第2に、医薬品化学の簡略化のためのコアとなる化学構造の改良;第3に、有効性の増加;第4に、すべての他の問題、の順でありうる。プログラムは、プロセスにおいて判明した情報に基づいて開発されることから、これらは、改良されうる一般的な指標である。
【0142】
合成化学の努力と平行して、提案されたライブラリと同様に、CDCAと構造的に類似した任意の市販の化合物をサーチするための、継続的な取り組みが行われうる。基準に当てはまる化合物を購入し、試験することができる。このチャネルを通じて得られた情報を利用して、SARモデルを改善し、さらに前途有望な構造に向けた直接的合成を補助することができる。
【0143】
最終的に、各ライブラリ系列は、典型的には、選択された基準に基づいて、化合物を進めるか、保留するか、または中断するかという、継続か中止かの決断に達する。結局、1つの系列のみが、その時点までに得られたデータのすべてに基づいた、前臨床候補の段階に進みうる。
【0144】
インビボ活性、インビトロ活性、およびPKおよびADMEの閾値を含めた化合物の評価のための基準の確立は、上述したのと同様の方法で達成することができる。現行のデータ、密接に関係する類似体、および任意の先行文献の前例を用いて、これらの数的指標の許容値を規定することができる。好ましい実施の形態では、生物活性は、最終的にはマイクロモル以下の範囲に達するべきであり、PK/ADMEは、任意の既知の薬物を比較されなければならない。
【0145】
継続か中止かの決定は、上記基準のすべての集合、ならびに、SAR、化学的実現可能性、および任意の早期の利用可能な毒性データの理解に基づいていて差し支えない。これらの数的指標は、上述のコンセンサスを形成しうる。
【0146】
本明細書に記載の式IのR1、R4、およびR5は、生物活性に関与する最小限のファーマコフォアを特定するために系統的に研究されうる、ケノデオキシコール酸の3つの構造部分に対応する。
【0147】
多くの市販のCDCA類似体は、単一に留まらない複数の構造的変化を有し、したがって、幅広いSARを供給することができる。多数の市販のCDCA類似体の試験を通じて作り出された広いSARを利用して、特定の類似体の今後の合成を誘導することができる。
【0148】
試験目的では、アッセイは、一般に、再現可能であるべきであり、計画の開始後は、変更すべきではない。陽性および陰性対照は毎回行うべきである。対照が所定の範囲内に入らない場合には、その回のすべてのデータは疑わしいと考えるべきである。
【0149】
理想的には、初期のスクリーニングは可能な限り多くの外的要因から分離されるシステムにおける、化合物とその標的の直接的な所望される相互作用を測定すべきである。例えば、試験は、本明細書に記載の胞子発芽アッセイおよび/またはコロニー形成アッセイを介して進められる。初期スクリーニングは、単一の濃度で行われうるが、限定された数の濃度で行うことも可能である。最終的には、目標は、多数の化合物を迅速かつ安価に試験し、前進する可能性のほとんどない化合物を即座に排除し、成功の可能性が最も高いものに重点的に取り組むことである。初期検査にただ1つのアッセイを用いる場合には、ヒットした化合物を、確認目的で二次的アッセイにおいて試験すべきである。すべてのアッセイの結果を比較し、所定の基準に基づいて、ヒットした化合物(すなわち、鉛化合物)を確定する。
【0150】
第1のアッセイによるヒット化合物は、それらの用量反応を測定することによって、二次的アッセイにおいて妥当であることが確認されうる。これは、例えば、IC50、EC50、または最小阻止濃度(MIC)の形態であって差し支えない。これは、非特異的な結合剤または洗浄剤などの化合物を排除する役割をすることから、重要なステップである。阻害曲線についての良好なS字形状は、妥当な用量反応を示唆している。さらに進めるために、IC50(EC50)の基準が確立されて差し支えない。
【0151】
有効なヒット化合物を選択性アッセイにおいてスクリーニングし、オフターゲット活性または似た標的に対する非特異的反応性を見つけ出すことができる。この選択性のアッセイは、第1のスクリーニングアッセイと同様の方法でセットすることができる。文献の再検討は、潜在的なオフターゲットの反応性を明確にする補助となりうる。さらに進めるために、選択性の基準を確立して差し支えない。
【0152】
例えば濁度のアッセイを利用して、媒体での希釈において沈殿しないことを確実にするために、選択された化合物の溶解性を決定して差し支えない。前のアッセイのいずれかで溶解性が問題であると見なされる場合には、このアッセイを先に行うことができることに留意されたい。
【0153】
プロバイオティクス
本発明のある特定の態様は、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスに関する。肝臓における合成によって形成される胆汁酸を「一次」胆汁酸といい、細菌によって作られるものを「二次」胆汁酸と呼ぶ。結果として、ケノデオキシコール酸は一次胆汁酸であり、リトコール酸は二次胆汁酸である。ヒトでは、両方とも一次胆汁酸である、タウロコール酸およびグリココール酸は、通常、すべての胆汁酸のおよそ80パーセントを占める。二次胆汁酸であるデオキシコール酸(デゾキシコール酸としても知られる)は、胞子発芽を促進するが、C.ディフィシレの増殖を阻害することも報告されている。Wilson (1983) J. Clin. Microbiol. 18:1017-1019; Sorg et al. (2008) J. Bacteriol. 190:2505-2512。
【0154】
本明細書では、「プロバイオティクス」とは、宿主の健康および幸福感において有益な効果を有する微生物細胞の調製である。この定義は、微生物細胞を含むが、ある特定の抗生物質など、これら微生物細胞の単離した代謝産物は含まない。消化管に取り込まれるプロバイオティクスは、腸内細菌叢に影響を与え、宿主における有益な役割をしうる。
【0155】
特定の理論または作用機序に縛られることは意味しないが、本発明者らは、抗生物質治療は、一次胆汁酸を、発芽を阻害するおよび/または増殖を阻害する二次胆汁酸に変換することに関与する腸内細菌叢を全滅させ、それによって、C.ディフィシレの発芽を許し、結腸の嫌気性環境に入り、増殖期の状態のC.ディフィシレをコロニー化し、再生することにより、C.ディフィシレ関連疾患を発症させると考えている。よって、式Iの化合物およびそれらの塩などの抗発芽物質の代替として、またはそれらの投与に加えて、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを投与することにより、増殖期のC.ディフィシレの増殖を制限することが可能である。
【0156】
一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝できる細菌の菌株としては、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム(ATCC 29065)、およびクロストリジウム・ヒラノニス(TO931としても知られる)が挙げられる。C.シンデンス(ATCC 35704)およびC.レプタム(ATCC 29065)は、米国バージニア州マナッサス所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手できる。クロストリジウム・ヒラノニス(C. hiranonis)(TO931)は、Wells JE et al. (2003) Clin. Chim. Acta. 331:127-34に記載されるように、またはバージニア・コモンウェルス大学(Virginia Commonwealth University)のPhillip B. Hylemon教授から入手して差し支えない。
【0157】
本発明の1つの実施の形態では、ヒトまたは動物の消化管への経口投与に適した薬学的に許容されるキャリアに、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株、例えば、C.シンデンスを含む治療組成物が提供される。別の実施の形態では、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株、例えば、C.シンデンスは、胞子の形態で治療組成物中に含まれる。別の実施の形態では、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株、例えば、C.シンデンスは、乾燥または凍結乾燥した細胞集団の形態で組成物中に含まれる。
【0158】
本発明のプロバイオティクス製剤は、栄養補助食品として投与してもよい。これらの製剤は、従来の充填剤および増量剤、例えば米粉などを含みうる。便利なことに、プロバイオティクス製剤は経口摂取して差し支えない。1つの実施の形態では、栄養補助食品として効果的な、および、腸管に有益な細菌を維持または回復するための用量率は、1日あたり約5ミリグラム〜約4000ミリグラムの範囲である。
【0159】
細菌は、それらに生存能力があることを条件に、胞子または増殖期の細菌として提供することができる。典型的な用量は、1日あたり1×103〜1×1014個の生存能力のある、増殖期の細菌または胞子を含む。
【0160】
1つの実施の形態では、細菌は、プロバイオティクス組成物中に、およそ1×103〜1×1014コロニー形成単位(CFU)/gの濃度、好ましくは、およそ1×105〜1×1012CFU/gの濃度で存在するのに対し、他の好ましい実施の形態では、濃度は、およそ1×109〜1×1013CFU/g、およそ1×105〜1×107CFU/g、またはおよそ1×108〜1×109CFU/gである。
【0161】
1つの実施の形態では、腸管内に、少なくとも正常な量の細菌を達成するために、十分な量の細菌が投与される。
【0162】
米国特許第5,733,568号明細書は、抗生物質に関連するまたは他の急性および慢性の下痢、ならびに、皮膚および膣内イースト菌感染症の治療のためのマイクロカプセル化した乳酸菌の利用について教示している。マイクロカプセル化とは、細菌(bacillus)の不活化を防ぎ、それを腸に送達し、前記下痢に見られる乳糖不耐症を回避することをいう。
【0163】
本発明の医薬組成物は、それを必要としている患者の腸管の所望の領域に送達するために、腸溶コーティングまたはマイクロカプセル化していることが好ましい。組成物の腸溶コーティングは、具体的には、吸着剤および細菌源を、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換が生じうる腸管の所望の領域に送達するように設計される。これは、pH7.5以上で分解し、溶解する腸溶コーティング材を介して達成されることが好ましい。これらの特徴を有する腸溶コーティングの例としては、限定はしないが、ゼイン、ポリグリコ乳酸(polyglycolactic acid)、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体、および同様のコーティング材料が挙げられる。
【0164】
あるいは、安定かつpH1.5〜2.5の胃液に耐性であり、製剤の保存寿命を短縮させることがないように、生産工程において水を低減した、乾燥プロバイオティクス製剤を調製することもできる。これらの製剤は、相対湿度が20%(±5%)に制御された低湿度室で調製されうる。24〜29インチのHgにおいて、約40〜70℃の温度でトレイ内の粉末を乾燥することができる、真空乾燥機(例えば、Lab-Line Instruments、Inc.社(米国イリノイ州メルローズパーク所在)製のラボライン(LabLine)モデル#3620)を使用することができる。
【0165】
適切な液体またはゲル性のキャリアは当技術分野で周知である(例えば、水、生理食塩水、尿素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなど)。水性のキャリアは、ほぼ中性のpHであることが好ましい。
【0166】
1つの実施の形態では、組成物の経口送達は、ミルクセーキまたはヨーグルトなど、食べるのが簡単な食品と混合された2〜4オンスのエマルションまたはペーストを介して達成される。マイクロカプセル化した細菌のプロバイオティクスは、例えば、飲み込むことができるゼラチンカプセルまたは錠剤中に、他の薬学的に活性な薬剤と一緒に、または別々に投与することができる。
【0167】
本発明のさまざまな実施の形態では、本発明のプロバイオティクスは、単に、C.ディフィシレ関連疾患の予防、C.ディフィシレ関連疾患の発症の危険性の低減、またはC.ディフィシレ関連疾患の治療の目的のためだけに投与される。
【0168】
プロバイオティクスには少なくとも1つの細菌株を含まれるため、プロバイオティクスは、一般に、被験体の消化管においてプロバイオティクス細菌を殺してしまうか、またはその繁殖を阻害するであろう抗生物質の同時投与なしで投与される。例えば、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質治療の完了後に、本発明のプロバイオティクスを投与されうる。別の例として、C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体は、C.ディフィシレ関連疾患の発症に関連する抗生物質治療の完了後に、発明のプロバイオティクスを投与されうる。
【0169】
1つの実施の形態では、被験体におけるC.ディフィシレ関連疾患を予防する、本発明の方法は、被験体に、本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスの両方を投与することを含む。本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスは、同時にまたはいずれかの順番で連続して、与えることができる。本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスの投薬スケジュールは、もしそれらが重複するならば、全く同一でありうるが、必ずしも同一である必要はない。上述の通り、プロバイオティクスは、一般に、被験体の消化管におけるプロバイオティクス細菌を殺すか、またはその繁殖を阻害するであろう抗生物質の同時投与なしに投与される。
【0170】
1つの実施の形態では、被験体におけるC.ディフィシレ関連疾患を治療する本発明の方法は、本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスの両方を被験体に投与することを含む。本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスは、同時にまたはいずれかの順番で連続して、与えることができる。本発明の化合物および本発明のプロバイオティクスの投薬スケジュールは、もしそれらが重複するならば、全く同一でありうるが、必ずしも同一である必要はない。上述の通り、プロバイオティクスは、一般に、被験体の消化管におけるプロバイオティクス細菌を殺すか、またはその繁殖を阻害するであろう抗生物質の同時投与なしに投与される。
【0171】
薬学的に許容される塩
本明細書に述べたように、本化合物のある特定の実施の形態は、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含んでいてもよく、したがって、薬学的に許容される酸と共に、薬学的に許容される塩を形成することができる。この点において「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の比較的非毒性の無機および有機酸付加塩のことをいう。これらの塩は、投与媒体または製剤の製造工程において、または遊離の塩基の形態の精製した本発明の化合物を、適切な有機または無機酸と単独で反応させ、その後の生成の間に形成される塩を単離することによって、その場で(in situ)調製することができる。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが挙げられる。例えば、Berge et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと。
【0172】
対象とする化合物の薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性の有機または無機酸から得られる、前記化合物の従来の非毒性の塩または第4級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の非毒性の塩として、塩酸塩、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸に由来するもの;および、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製される塩が挙げられる。
【0173】
他の事例では、本発明の化合物は、1種類以上の酸性官能基を含んでもよく、したがって、薬学的に許容される塩基とともに薬学的に許容される塩を形成できる。これらの事例では、「薬学的に許容される塩」という用語は、発明の化合物の比較的非毒性の無機および有機の塩基付加塩のことをいう。投与媒体または製剤の製造工程において、または、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩を、アンモニア、または薬学的に許容される第1級、第2級または第3級の有機アミンと反応させることによってなど、遊離酸の形態の精製化合物を適切な塩基と独立して反応させることによって、これらの塩も、同様に、その場で(in situ)調製することができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる。例えば、Berge et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと。
【0174】
製剤
本発明の実施に有用な組成物は、非経口投与または腸内投与用、または局所または局部的な投与用の、薬学的に許容されるキャリアと一緒に、医薬組成物として製剤化することができる。例えば、本発明の実施に有用な組成物は、固体または液体の形態の経口製剤として、または、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、または局所用の製剤として、投与することができる。局所送達のためには経口製剤が好ましい。
【0175】
化合物および組成物は、典型的には、薬学的に許容されるキャリアと共に投与される。「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、本明細書では、ヒトまたはイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、またはヤギなどの他の哺乳動物に投与するのに適切な、1種類以上の相溶性の固体または半固体または液体の充填剤、希釈剤、または封入物質を意味する。「キャリア」という用語は、適用を促進するために活性成分と組み合わせる、天然または合成の、有機または無機の成分を意味する。キャリアは、お互いに、所望の薬学的有効性または安定性を実質的に損なうであろう相互作用が存在しないような方法で、本発明の製剤に混合することができる。経口および直腸製剤にとって適切なキャリアは、米国ペンシルベニア州イーストン所在のRemington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)に見出すことができる。
【0176】
経口投与のための薬学的に許容されるキャリアとしては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、トローチ剤、および顆粒が挙げられる。固体製剤の場合には、キャリアは、ショ糖、乳糖またはデンプンなど、少なくとも1種類の不活性希釈剤を含みうる。これらのキャリアには、通常の実施のように、希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウムなどの平滑剤も含めることができる。カプセル、錠剤、トローチ剤および丸剤の場合には、キャリアには緩衝剤も含めることができる。錠剤、丸剤および顆粒などのキャリアは、消化管における医薬組成物の放出の時期および/または位置を調節するコーティングを、錠剤、丸剤または顆粒の表面に用いて調製ことができる。一部の実施の形態では、キャリアは、消化管の特定の領域に対する活性組成物を標的とし、当技術分野で知られるなどのように、特定の領域に活性成分を保持する。あるいは、コーティング化合物は、プレス加工して、錠剤、丸剤、または顆粒にすることもできる。薬学的に許容されるキャリアとしては、水などの当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含む、例えばエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤など、経口投与用の液体の剤形が挙げられる。これらの不活性希釈剤に加えて、組成物には、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤などの追加の不活性成分、および甘味剤および他の香味剤も含めることができる。
【0177】
本発明の医薬品製剤は、粒子で提供してもよい。粒子とは、本明細書では、末梢性オピオイド・アンタゴニストまたは本明細書に記載される他の治療薬の全部または一部で構成されうる、ナノ粒子またはマイクロ粒子(また場合によっては、より大きい粒子)を意味する。粒子は、コーティングによって取り囲まれたコアに、限定はしないが、腸溶コーティングなどの治療薬を含みうる。治療薬はまた、粒子全体に分散されていてもよい。治療薬は、粒子内に吸着されていてもよい。粒子は、どのような放出速度であってもよく、0次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、持続放出、即時放出、およびそれらの任意の組合せなどが挙げられる。粒子は、治療薬に加えて、薬学および医学の分野で日常的に使用される任意の材料であって差し支えなく、限定はしないが、浸食性、非浸食性、微生物分解性、または微生物非分解性の物質またはそれらの組合せが挙げられる。粒子は、溶液または半固体の状態の拮抗薬を含むマイクロカプセルであってもよい。粒子は、事実上、任意の形態でありうる。
【0178】
非微生物分解性および微生物分解性のポリマー材料は、両方とも、治療薬を送達するための粒子の製造に使用することができる。これらのポリマーは、天然または合成のポリマーでありうる。ポリマーは、放出が所望される時間に基づいて選択される。特定の対象とする生体接着性ポリマーは、参照することによりその教示が本明細書に援用される、H.S. Sawhney, C.P. Pathak and J.A. Hubell in Macromolecules, (1993) 26:581-587に記載される生体浸食性のハイドロゲルを含む。これらとしては、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、およびポリ(アクリル酸オクタデシル)が挙げられる。
【0179】
酸の形態で用いられる場合、本発明の化合物は、酸の薬学的に許容される塩の形態で用いることができる。溶媒、水、緩衝液、アルカノール、シクロデキストリンおよびアラルカノール(aralkanol)などのキャリアを使用することができる。他の非毒性の助剤としては、例えば、ポリエチレングリコールまたは湿潤剤が挙げられる。
【0180】
本発明に記載される薬学的に許容されるキャリアおよび化合物は、患者に投与するための単位投与量に製剤化される。単位投与量における活性成分の投与量レベル(すなわち、本発明の化合物)は、所望の投与方法に従って治療効果を達成するのに効果的な活性成分の量をもたらすように変動しうる。したがって、選択される投与量レベルは、主に、活性成分の性質、投与経路、および所望の治療継続期間に応じて決まる。必要に応じて、単位投与量は、活性化合物の一日の所要量が単回投与になるようにするか、または、例えば1日2〜4回の投与など複数回投与に分けることができる。
【0181】
本発明の医薬品製剤は、単独で、または抗生物質を含めた他の薬剤と一緒に用いる場合には、治療的に有効な量で投与される。治療的に有効な量とは、ヒト被験体などの被験体の治療に効果的な薬物のレベルを確立する量である。有効量とは、所望の生物学的効果を達成するのに必要な単回または複数回投与の量を意味する。被験体に投与する場合、有効量は、評価項目として選択される特定の効果;治療する病状の重症度;年齢、健康状態、および体重を含めた個別の患者パラメータ;併用療法;治療頻度;および投与方法
に応じて決まる。これらのパラメータは当業者には周知であり、わずかな日常の実験のみで対処することができる。
【0182】
送達経路
一般に、本発明の方法に用いられる化合物および組成物は、経腸投与することができる。1つの実施の形態では、本発明の方法に用いられる化合物および組成物は、経口投与することができる。1つの実施の形態では、本発明の方法に用いられる化合物および組成物は、直腸投与できる。
【0183】
活性成分は、単回投与されて差し支えなく、あるいは、ある時間間隔で投与されるように、多くの小用量に分けることもできる。正確な用量および治療継続期間は治療する疾患の関数であり、既知の試験プロトコルを用いて、またはインビボまたはインビトロの試験データに由来する外挿法によって、経験的に決定されうることが理解されよう。例えば、用量および治療継続期間は、C.ディフィシレ関連疾患の1つ以上の動物モデルを使用して得られたインビボデータに由来する外挿法によって決定することができる。濃度および用量値も、軽減されるべき病状の重症度に応じて変動しうることに留意すべきである。任意の特定の被験体では、特定の投与計画は、個別の必要性および投与する人物または組成物の投与を管理する人物の専門的な判断に従って、経時的に調製することができ、本明細書に記載される濃度範囲は単なる典型例であって、本願の特許請求の範囲に記載される範囲または実施を制限することは意図されていないことも理解されるべきである。
【0184】
経口投与が望ましい場合には、活性化合物は、胃の酸性環境から保護する組成物で提供されるべきである。例えば、組成物は、胃ではその完全性を維持し、腸において活性化合物を放出する、腸溶コーティングで製剤化することができる。組成物は、制酸薬または胃の酸性環境から保護する他の成分と組み合わせて製剤化してもよい。
【0185】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用のキャリアを含み、錠剤に圧縮されるか、またはゼラチンカプセルに封入されて差し支えない。経口治療のための投与では、活性化合物または化合物は、賦形剤と併せて、錠剤、カプセル、またはトローチ剤の形態で使用することができる。薬学的に相溶性の結合剤および補助物質を、組成物の一部に含めることができる。
【0186】
錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、次の原料または同様の性質の化合物を含みうる:限定はしないが、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤;微結晶性セルロース、デンプン、または乳糖などの賦形剤;限定はしないが、アルギン酸およびコーンスターチなどの崩壊剤;限定はしないがステアリン酸マグネシウムなどの滑剤;限定はしないがコロイド様の二酸化ケイ素などのギルダント(gildant);ショ糖またはサッカリンなどの甘味剤;およびペパーミント、サリチル酸メチル、または果実の香味などの香味剤。
【0187】
投与単位形態がカプセルの場合には、上記種類の材料に加えて、脂肪油などの液体キャリアを含めることができる。加えて、投与単位形態には、投与単位の物理的形状を改変するさまざまな他の材料を含めることができ、例えば、糖衣および他の腸溶剤が挙げられる。本化合物はまた、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハース、チューインガムなどの成分として投与することもできる。シロップには、活性化合物に加えて、甘味剤およびある特定の保存料としてのショ糖、染料および着色料、ならびに香味剤を含めることができる。
【0188】
活性材料はまた、所望の活性を損なわない他の活性材料、または所望の活性を補足する材料と混合することもできる。
【0189】
腸溶コーティングされた錠剤は、当業者に周知である。加えて、酸性の胃から保護するために、それぞれコーティングされた小球を充填したカプセルも、当業者に周知である。
【0190】
経口投与形態は、一般に、1日に1〜4回、患者に投与される。本発明の方法に用いられる化合物は、1日3回以下で投与されることが好ましく、1日1〜2回投与されることがさらに好ましい。
【0191】
経口投与する場合、胞子の発芽、または増殖を阻害するための治療に有効な投与量は、約1mg/kg体重/日〜約100mg/kg体重/日である。1つの実施の形態では、経口投与量は、約1mg/kg体重/日〜約50mg/kg体重/日である。1つの実施の形態では、経口投与量は、約5mg/kg体重/日〜約50mg/kg体重/日である。患者の治療は単回投与で開始されうるが、その用量は、患者の病状の変化に伴い、経時的に変動しうることが理解されよう。
【0192】
「直腸投与」に適合させた製剤は、坐剤または浣腸剤として提供してもよい。坐剤として提示されるこれらの製剤は、薬物を、普通の温度では固体であるが、直腸温度では液体であり、したがって、直腸において溶融して薬物を放出する、適切な刺激性の少ない賦形剤と混合することによって調製することができる。これらの材料は、ココアバターおよびポリエチレングリコールである。
【0193】
本明細書では、「被験体」は哺乳動物として定義され、実例として、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウマ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、および齧歯動物を含む。1つの実施の形態では、被験体はヒトである。
【0194】
本発明は、さらに、次の実施例によって例証されるが、決してさらなる限定と解釈されるべきではない。本願全体にわたって引用されるすべての参考文献(非特許文献、特許公報、出願公開公報、および同時係属の特許出願を含む)の全ての内容は、参照することによって本明細書に明確に取り込まれる。
【実施例】
【0195】
菌株および増殖条件
C.ディフィシレCD196およびウェルシュ菌(C.perfringens)SM101については、先に説明した。Popoff et al. (1988) Infect. Immun. 56:2299-2306; Zhao et al. (1998) J. Bacteriol. 180:136-142。C.ディフィシレUK14は、英国バッキンガムシャー州エールズベリー所在のストーク・マンデヴィル・ホスピタル(Stoke-Mandeville Hospital)におけるC.ディフィシレの流行的発生の際に単離された(Meridian Biosciences社の菌株番号:SM8−6865)。すべての菌株は、Coy Laboratory社製の嫌気性チャンバ内、嫌気性条件下、37℃で、BHIS(ブレインハートインフュージョン培地[Difco社製]に酵母エキス[5mg/ml]およびL−システイン[0.1%]を補充したもの)で増殖させた。
【0196】
C.ディフィシレ胞子の調製
前述のようにBHIS上でC.ディフィシレの胞子形成を誘発した。Haraldsen et al. (2003) Mol. Microbiol. 48:811-821。簡潔に言えば、BHIS培地で一晩、C.ディフィシレを培養し、新鮮な培地において、600nm(OD600)における光学密度が0.2になるまで希釈した。6−ウェルの組織培養皿の各ウェルに、この懸濁液の一部、150μlを、5mlのBHIS寒天上に塗布した。培養液を4〜7日間、嫌気的に培養した。胞子のコロニー形成を判定するため、胞子と増殖性細胞の混合群を含む、プレートから得られたサンプルを、BHISに再懸濁し、60℃まで20分間加熱し、増殖性細胞を死滅させた後に、冷却し、希釈し、BHIS培地に塗布した。発芽アッセイに使用するため、Akoachereおよび同僚が記載したのと同様の方法で胞子を精製した。Akoachere et al. (2007) J. Biol. Chem. 282:12112-12118。6−ウェル皿の各ウェルを氷冷した滅菌水であふれさせることによって、増殖性細胞と胞子の混合物を回収した。氷冷した水で5回洗浄した後、細菌を、20%(重量/体積)のHistoDenz(Sigma社、米国ミズーリ州セントルイス所在)に懸濁した。この懸濁液を、遠心分離管中の50%(重量/体積)のHistoDenz溶液の上に層状に重ね、遠心分離管を15,000×gで15分間遠心分離し、増殖性細胞から胞子を分離した。遠心分離管の底から回収した、精製胞子を、氷冷した水で2回洗浄し、微量のHistoDenzを除去して、水に再懸濁した。
【0197】
C.ディフィシレ胞子の胆汁塩に対するインビトロ応答
C.ディフィシレ胞子のタウロコール酸に対する応答時間を判定するため、胞子を上述のように調製した。60℃で20分間培養することによって、増殖期の細菌を加熱殺菌した。加熱処理された胞子を水で3回洗浄して微量の栄養物を除去し、その後のコロニー形成を可能にするため嫌気性チャンバに戻した。胞子を水に再懸濁し、タウロコール酸、グリココール酸、コール酸、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、またはケノデオキシコール酸(Sigma社(米国ミズーリ州セントルイス所在)製)のいずれかを0.1%まで加えた。さまざまな時点において、サンプルを取り出し、逐次希釈し、BHIS寒天上に塗布した。サンプルの1つは、タウロコール酸の添加の前に取り出し、BHISおよびBHIS(TA)(BHIS+0.1%のタウロコール酸)上に塗布した。後者のプレートは、それぞれ、コロニー形成のための陰性および陽性対照の役割をする。一晩増殖させた後、コロニー数を数え(コロニー形成単位、CFU)、その数をBHIS(TA)で得られた数と比較した。
【0198】
C.ディフィシレ胞子によるコロニー形成の誘発に必要とされるタウロコール酸の量を判定するため、上述のように、胞子を調製し、加熱し、洗浄した。加熱処理したC.ディフィシレ胞子を、さまざまな濃度のタウロコール酸を含む水に再懸濁した。10分間の培養の後、懸濁液をBHISで逐次希釈し、BHIS寒天上に塗布した。一晩増殖させた後、コロニー数を数え、その数を、BHIS(TA)の一晩の増殖で得られた数と比較した。
【0199】
C.ディフィシレの胞子の発芽
BHIS単独または1%の胆汁塩(タウロコール酸、グリココール酸、コール酸、またはデオキシコール酸)を含むBHISにおいてOD600が0.3〜0.4になるまで、精製C.ディフィシレ胞子を希釈することによってC.ディフィシレの胞子の発芽を測定した。完全合成培地における実験では、塩混合物[0.3mMの(NH4)2SO4、6.6mMのKH2PO4、15mMのNaCl、59.5mMのNaHCO3、および35.2mMのNa2HPO4]を用いて、胞子と推定上の発芽を緩衝した。Karlsson et al. (1999) Microbiology 145:1683-1693。直後(時間0)および室温で培養する間のさまざまな時点において、OD600を決定した。ゼロ時間における光学密度に対するさまざまな時点における光学密度の比を、時間に対してプロットした。
【0200】
統計分析
上記の全てのアッセイを3回ずつ行い、データは、3つの独立した実験から得られた平均および標準偏差として報告した。
【0201】
実施例1
タウロコール酸の曝露は、インビトロにおけるC.ディフィシレ胞子のによるコロニー形成を促進する:
BHIS寒天プレートに0.1%のタウロコール酸を含めて、C.ディフィシレ胞子の回収をおよそ105倍に強化した。タウロコール酸への曝露の長さを調べるためには、コロニー形成の増大が必要とされ、胞子および増殖期の細菌を60℃で20分間加熱し、水で3回洗浄して、発芽に作用しうる微量の栄養物を除去した。次に、胞子を嫌気性チャンバに戻し、水中、0.1%のタウロコール酸で処理した(図2)。指示された時間(times)で、サンプルを取り出し、BHI培地で希釈し、BHIS寒天(タウロコール酸なし)に塗布した。サンプルの1つは、インビトロでタウロコール酸と共に培養したが、BHIS(TA)に直接塗布した。このサンプルは、100%回復の参照としての役割をする。図2に示すように、タウロコール酸へのわずか1分間の曝露の結果、胞子の回復は0.0025%〜約1%増加した。さらなる培養は、C.ディフィシレ胞子によるコロニー形成を大幅には増進しなかった。これらの結果は、C.ディフィシレ胞子がタウロコール酸に対して非常に迅速に応答することを示しており、タウロコール酸が発芽しうることを示唆している。
【0202】
実施例2
タウロコール酸の濃度におけるC.ディフィシレ胞子のコロニー形成の依存性:
0.1%のタウロコール酸に応答したコロニー形成能力は、胞子をBHIS(TA)に直接塗布した場合の能力には届かなかったことから、さまざまな濃度のタウロコール酸に応答する胞子のインビトロでの回復について試験した。胞子を上述のように調製し、水で洗浄して微量の栄養物を取り除き、0.001%〜10%の範囲の濃度のタウロコール酸と共に10分間培養し、タウロコール酸を含まないBHIS寒天上に塗布した。胞子のコロニー形成能力を、BHIS(TA)上に直接塗布した胞子のものと比較した。0.001%のタウロコール酸と一緒に胞子を培養した結果、全胞子数の約0.0002%しか、コロニー形成しなかった(図3)。このコロニー形成の効率は、任意のタウロコール酸の不存在下で通常観察され、約10倍変動しうる(図2)。タウロコール酸の濃度の上昇に伴い、C.ディフィシレ胞子のコロニー形成率も増大した(図3)。10%のタウロコール酸における10分間の培養の結果、コロニー形成率は、0.1%のタウロコール酸への連続曝露で見られる形成率の60%であった(図3)。この結果は、低濃度のタウロコール酸への連続曝露がコロニー形成をさらに著しく増強する、または、胞子が固体表面と接触する場合にタウロコール酸の効果が増強される、あるいはその両方であることを示唆している。
【0203】
実施例3
一次胆汁塩への応答におけるC.ディフィシレの発芽:
枯草菌および他の種において、胞子の発芽を増強すると、Ca2+−DPAの放出および胞子の再水和に起因して、結果として、明るい位相の(屈折性の)胞子から暗い位相の胞子に変化する。Moir et al. (1990) Annu. Rev. Microbiol. 44:531-553。この遷移は発芽の第一段階であり、培養液の光学密度の低下として測定することができ、発芽を規定するのに用いることができる。タウロコール酸が胞子発芽の速度または範囲を増大することによってコロニー形成を増強したか否かを確認するため、1%のタウロコール酸を加えたリン酸緩衝液(pH7.2)で、または緩衝液単独で、C.ディフィシレ胞子を培養した。1パーセントのタウロコール酸を選択したのは、この濃度で、インビトロにおける曝露の間に全胞子数の約30%のコロニーが形成できたからである(図3)。一定間隔で、OD600を測定し、時間に対してプロットした。この測定により、タウロコール酸はC.ディフィシレの胞子の発芽を誘発しなかった(図4A)。BHIS培地における胞子の発芽が、コロニー形成能力を得る前に、阻止されるか否かを確認するため、胞子をBHIS培地に懸濁し、培養液の光学密度をモニターした。光学密度の大幅な低下は見られなかったことから(図4A)、胞子はBHIS単独では発芽しないことが示唆された。この結果は、C.ディフィシレ胞子が、追加の試薬なしには、標準的な培地において、コロニーを効率的に形成しないという以前の観察結果と一致している。Wilson et al. (1982) J. Clin. Microbiol. 15:443-446。1%のタウロコール酸をBHISに添加した結果、開始時の値の約85%に至る、光学密度の急激な低下、ならびに、開始時の値の約80%に至る、継続的な低下を生じた(図4A)。これは、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の胞子の発芽に見られるものと似ており;発芽率は、C.ディフィシレの方が高いように思われる。Broussolle et al. (2002) Anaerobe 8:89-100。これらの結果は、BHIS培地のタウロコール酸および未知の成分が、C.ディフィシレ胞子を共同的発芽させ;共同的発芽物質のいずれも、単独では発芽を活性化しないことを示唆している。
【0204】
実施例4
一次胆汁塩への応答におけるC.ディフィシレ胞子の発芽およびコロニー形成:
タウロコール酸は、肝臓によって産生され、消化を助けるために分泌される一次胆汁塩である。コロニー形成における他の一次胆汁塩の効果を検査するため、0.1%のコール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、またはタウロコール酸を加えたBHIS寒天上に胞子を塗布した。面白いことに、コール酸誘導体(コール酸、グリココール酸、およびタウロコール酸)だけが、C.ディフィシレ胞子による効率的なコロニー形成を促進した(表1)。ケノデオキシコール酸およびケノデオキシコール酸の7β−エピマーであるウルソデオキシコール酸は、このアッセイでは効果はなかった(表1)。次に、一次胆汁塩であるコール酸およびグリココール酸を、発芽誘発能力について、タウロコール酸と比較した。グリココール酸またはコール酸を添加したBHISにおけるC.ディフィシレ胞子の培養では、アッセイを6時間行った場合でさえも、培養液の光学密度には有意な低下は見られなかった(図4A)。よって、グリココール酸およびコール酸は、プレートにおける胞子のコロニー形成を高めるが、発芽自体は、用いたアッセイによって促進されない。
【表1】
【0205】
実施例5
グリシンはC.ディフィシレ胞子を共同的発芽させる:
タウロコール酸と共に発芽を誘発するBHISの成分を特定するため、培地をBHIと酵母エキスに分けた。タウロコール酸の存在下では、BHIおよび酵母エキスの両方が、C.ディフィシレの胞子の発芽を誘発した。Karlssonらが記載する既知組成培地(Karlsson et al. (1999) Microbiology 145:1683-1693)を用いて、具体的な化合物または発芽を誘発する化合物を特定した。胞子を、タウロコール酸を加えた完全合成培地に懸濁した場合、培養液の光学密度はBHIS(TA)の場合と同程度まで低下した。この培地を構成物質とサブ構成物質に分け、グリシンを加えた緩衝液に懸濁した胞子は、タウロコール酸の存在下では発芽するが、不存在下では発芽しないことが分かった(図4B)。これらの結果は、グリシンおよびタウロコール酸が共同的に発芽させることを示唆している。
【0206】
グリシンおよびタウロコール酸が、C.ディフィシレの別の菌株についても、共同的発芽物質の役割をするか否かを検査するため、英国のストーク・マンデヴィル・ホスピタル(Stoke-Mandeville Hospital)における発生の際に単離した別の菌株であるUK14についても調べた。C.ディフィシレUK14胞子をグリシンまたはタウロコール酸を単独で加えた緩衝液に懸濁した場合、培養液の光学密度に少しの低下が観察された(図4C)。グリシンおよびタウロコール酸が両方とも存在する場合には、発芽率は増強された(図4C)。これらの結果は、C.ディフィシレCD196において、タウロコール酸とグリシンが、C.ディフィシレ胞子の共同的発芽物質として作用するという結果を裏付けるものであった。
【0207】
実施例6
C.ディフィシレ増殖性細胞の増殖における一次胆汁塩の効果:
C.ディフィシレの増殖性細胞の一次胆汁塩の存在下における増殖能力を調査した。予想通り、C.ディフィシレは、0.1%のタウロコール酸、グリココール酸、またはコール酸を含有するBHISにおいて、BHIS培地単独の場合と同程度まで増殖できた(図4D)。C.ディフィシレは、ケノデオキシコール酸の存在下では増殖することができなかった。したがって、表1のデータによって実証された非増殖は、ケノデオキシコール酸による増殖阻害によって説明することができる。C.ディフィシレとは対照的に、ウェルシュ菌(C.perfringens)SM101は、0.1%のタウロコール酸または0.1%のケノデオキシコール酸のいずれの存在下でも増殖することはできなかった(図4D)。Heredia et al. (1991) FEMS Microbiol. Lett. 84:15-22。しかしながら、ウェルシュ菌(C.perfringens)SM101は、グリココール酸およびコール酸の存在下で、野生型のレベルまで増殖することができた。これらの結果は、C.ディフィシレが、タウロコール酸を発芽として感知することに加えて、タウロコール酸の毒性効果に耐えるための機構を発達させうることを示唆している。
【表2】
【0208】
ケノデオキシコール酸は、C.ディフィシレおよびウェルシュ菌(C.perfringens)の増殖性細胞の増殖を阻害した。ケノデオキシコール酸への一時的な暴露がC.ディフィシレ胞子によるコロニー形成を誘発するか否かを試験するため、胞子を、0.1%のケノデオキシコール酸を含む水に10分間懸濁し、BHIS培地で逐次希釈し、ケノデオキシコール酸を含まないBHIS寒天上に塗布した。ケノデオキシコール酸への曝露は、C.ディフィシレ胞子によるコロニー形成を誘発しなかった(表2)。これらの結果は、C.ディフィシレ胞子のみが、BHISにおいて発芽し、コール酸誘導体(タウロコール酸、グリココール酸、およびコール酸)に応答してコロニーを形成することを示唆している。
【0209】
実施例7
デオキシコール酸はC.ディフィシレのコロニー形成を誘発するが増殖を防ぐ:
デオキシコール酸の発芽またはC.ディフィシレ胞子の回復を誘発する能力について検査した。リトコール酸は水に不溶性であることから、検査できなかった。C.ディフィシレ胞子を0.1%のデオキシコール酸と共にインビトロで培養し、逐次希釈し、BHIS寒天上に塗布した場合、コロニー形成能力は、タウロコール酸と共に培養した胞子のものと差異はなかった(表2)。これらの結果は、デオキシコール酸、同様の他のコール酸誘導体が、C.ディフィシレ胞子によるコロニー形成を誘発することを示唆している(表1および2)。1%のデオキシコール酸を添加したBHISにおけるC.ディフィシレ胞子の培養の結果、OD600は少し降下したが、60分後、BHIS単独における胞子のODの変化より顕著ではなかった(図5A)。
【0210】
C.ディフィシレは、デオキシコール酸の存在下では増殖しない。Wilson (1983) J. Clin. Microbiol. 18:1017-1019。この効果を定量化するため、デオキシコール酸を加えたBHISにおけるC.ディフィシレおよびウェルシュ菌(C.perfringens)の増殖を測定した。C.ディフィシレは、タウロコール酸を添加した培地において良好に増殖したが、デオキシコール酸の存在下では、C.ディフィシレおよびウェルシュ菌(C.perfringens)のいずれも増殖しなかった(図5B)。
【0211】
実施例8
ケノデオキシコール酸はタウロコール酸およびコール酸に応答するC.ディフィシレ胞子のコロニー形成を阻害する:
C.ディフィシレ胞子を調製し、水中、タウロコール酸(TA)またはケノデオキシコール酸(CDCA)またはその両方に10分間曝露した後、連続希釈し、タウロコール酸を添加していないBHIS寒天上に塗布した。BHIS(TA)上に塗布した胞子は、100%のコロニー形成(CFU)のための陽性対照としての役割をした。別の実験において、C.ディフィシレ胞子を調製し、水中、コール酸(CA)またはケノデオキシコール酸(CDCA)またはその両方に10分間曝露した後、連続希釈し、タウロコール酸を添加していないBHIS寒天上に塗布した。結果を図6に示す。図6Aに見られるように、ケノデオキシコール酸は、タウロコール酸で処理した胞子のコロニー形成(発芽)を阻害した。図6Bに見られるように、ケノデオキシコール酸は、コール酸で処理した胞子のコロニー形成(発芽)を阻害した。これらの結果は、ケノデオキシコール酸が、タウロコール酸およびコール酸に応答するC.ディフィシレ胞子のコロニー形成(発芽)を阻害することを示唆している。
【0212】
実施例9
ケノデオキシコール酸はC.ディフィシレ胞子の抗発芽物質である:
C.ディフィシレ胞子を、BHIS単独(●)、BHIS+0.1%CDCA(▼)、BHIS+0.1%TA(◆)、BHIS+0.1%TA/0.1%CDCA(■)またはBHIS+1.0%TA/0.1%CDCA(▲)に懸濁した。光学密度を時間の関数として測定した。光学密度の低下は発芽を示唆する。結果を図7に示す。図7に見られるように、さまざまな時点におけるOD600のT0におけるOD600に対する比は、0.1%TAまたは1.0%TA/0.1%CDCAで処理した胞子で、大幅に低下し、発芽が示唆された。対照的に、0.1%CDCAまたは0.1%TA/0.1%CDCAで処理した胞子では、さまざまな時点におけるOD600のT0におけるOD600に対する比は、BHIS単独に懸濁した胞子と同様に、ほとんど変化しないままであった。これらの結果は、ケノデオキシコール酸がC.ディフィシレ胞子の抗発芽物質であり、タウロコール酸と拮抗することによって、発芽を阻害することができることを示唆している。
【0213】
実施例10
胆汁塩カルボン酸のアミノ誘導体への代表的な変換:
胆汁塩カルボン酸のアミノ誘導体への代表的な合成変換をスキーム1に示す。限定はしないが、ケノデオキシコール酸(I)などの酸は、アセトン還流下、ジメチル硫酸塩(Me2SO4)および重炭酸ナトリウム(NaHCO3)を用いて、メチルエステルに変換される。第2級アルコールのシリル保護は、水素化ナトリウム(NaH)およびジメチルホルムアミド(DMF)の存在下、(2−クロロエチル)トリメチルシラン(Me3SiCH2CH2Cl)を含めた、多数のこれらの試薬を用いて達成され、その結果、エステル(II)をもたらす。メチルエステルの第1級アルコールへの還元は、テトラヒドロフラン(THF)中の水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)を用いて達成される。得られたアルコールの臭素化は、ジクロロメタン(CH2Cl2)中の三臭化リン(PBr3)を用いてもたらされ、臭化アルキル(III)を生じる。臭化アルキル(III)のSN2置換は、限定はしないが、NaHを加えたDMF中、サルコシンメチルエステル(N−メチルグリシンメチルエステル)など、第1級または第2級アミンを用いて行われうる。得られたメチルエステルの鹸化は、メタノール(MeOH)中、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて行い、シリル保護基の開裂は、THFの還流下、テトラブチルアンモニウムフルオリドを用いて達成され、ジヒドロキシカルボン酸(IV)を生じる。
【化10】
【0214】
実施例11
胆汁塩カルボン酸のアミド誘導体への代表的な変換:
ケノデオキシコール酸を含めた胆汁塩カルボン酸の、アミド誘導体への代表的な合成変換を、スキーム2に示す。ケノデオキシコール酸(I)および、サルコシンメチルエステルを含めた第1級または第2級アミンは、DMFおよびトリエチルアミン(Et3N)中、O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム−ヘキサフルオロ−フォスフェート(HBTU)などの標準的なペプチドカップリング試薬を用いて、アミドに変換される。得られたメチルエステルのカルボン酸(V)への鹸化は、メタノール中、水酸化ナトリウムを用いて行われる。
【化11】
【0215】
実施例12
胆汁塩カルボン酸のN−アルキル誘導体への代表的な変換:
胆汁誘導体のN−アルキル化は、インビボにおける、アミド結合の脱共役またはカルボン酸への開裂を阻害することが示された。ラットでは、タウロウルソデオキシコール酸の脱共役(24時間後100%)と比較して、N−エチル−タウロウルソデオキシコール酸の脱共役(72時間後、3.4±2.1%)が阻害された。Angelico et al. (1995) Hepatology 22:887-95。ヒトでは、コリルサルコシン、すなわちグリココール酸のN−メチル誘導体は、肝酵素または微生物由来酵素によって生体内変換されなかったことから、脱共役に対して耐性であることが示された。Schmassmann et al. (1993) Gastroenterology 104:1171-81。
【化12】
【0216】
実施例13
ケノデオキシコール酸のインビボ投与は、C.ディフィシレ大腸炎の発現を低減する:
ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、イヌ、またはブタを、治療群および対照群の2つの群に分ける。両群の動物を、高用量のクリンダマイシンまたはセファロスポリンを用いて、5〜14日間、治療する。治療群の動物はまた、抗生物質を与える全期間中、強制飼養することにより、ケノデオキシコール酸を、10〜30mg/kg体重/日、与えられる。すべての動物を、C.ディフィシレ毒素を含む下痢の発生についてモニタリングすることによって、C.ディフィシレ大腸炎の発症をモニタリングする。対照群と比較して治療群におけるC.ディフィシレ大腸炎の発症の低減は、ケノデオキシコール酸が、C.ディフィシレ大腸炎を発症する危険性がある、動物におけるC.ディフィシレ大腸炎の発症を、低減することを示唆している。
【0217】
実施例14
C.シンデンスのインビボ投与はC.ディフィシレ大腸炎の発症を低減する:
ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、イヌ、またはブタを、治療群および対照群の2つの群に分ける。両群の動物を、高用量のクリンダマイシンまたはセファロスポリンを使用して2〜14日間、治療する。治療群の動物はまた、抗生物質を与える期間を決定後、24時間以内に強制飼養を開始することにより、マイクロカプセル化したC.シンデンスを、10〜30mg/kg体重/日、与えられる。すべての動物を、C.ディフィシレ毒素を含む下痢の発生についてモニタリングすることによって、C.ディフィシレ大腸炎の発症をモニタリングする。対照群と比較して治療群におけるC.ディフィシレ大腸炎の発症の低減は、C.シンデンスが、C.ディフィシレ大腸炎を発症する危険性がある、動物におけるC.ディフィシレ大腸炎の発症を、低減することを示唆している。
【0218】
実施例15
ケノデオキシコール酸の誘導体によるC.ディフィシレ胞子の発芽のインビトロ阻害:
光学密度の測定に基づいた以下に記載する、各種の濃度のケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、およびそれらの誘導体を用いて、実施例3に記載したのと同様のインビトロ実験を行い、C.ディフィシレ胞子発芽の阻害剤の活性および結合定数を決定する。
【0219】
さまざまな濃度のタウロコール酸(2mM、5mM、10mM、20mMまたは50mM)を含むBHIS培地を調製し、阻害剤を加えた。阻害剤を含まない溶液を対照として使用し、阻害剤の不存在下におけるタウロコール酸のKmを決定した。胞子を加え、時間に対するOD600における変化として発芽を測定した。データをプロットし、プロットの線形範囲の傾斜を使用して、各条件下の発芽の最高速度を決定した。タウロコール酸濃度の逆数に対する発芽の最高速度の逆数をプロットした(ラインウェーバー・バークプロット)。このグラフから、タウロコール酸のKm(最高発芽速度の半分の速度が観察された濃度)を推定し、次式:
Ki=[I]/((Kobs/Km)−1)
を用いて、阻害剤の結合定数(Ki−胞子についての化合物の親和力;数値が低くなるほど、相互作用が密接になる)を決定するのに使用した:
ここで、[I]は、使用した阻害剤の濃度であり、Kobsは、阻害剤の存在下におけるタウロコール酸についての観察された結合定数であり、Kmは、阻害剤の不存在下における、タウロコール酸についての結合定数である。結果を表3に示す。
【表3】
【0220】
37DAME(3α,7α−ジアセトキシ−5β−コラン−24−酸メチル5 β−コラン酸−3α,7α−ジオール二酢酸メチルエステル(3α,7α-ビス(アセチルオキシ)-5β-コラン-24-酸メチル5 β−コラン−24−酸−3α,7α−ジオールメチルエステル3,7−ジアセテート)(CAS番号2616−71−9;ステラロイドカタログ番号c0964−000))が、ケノデオキシコール酸よりも0.04mM、すなわち、約1log低いKiを有し、C.ディフィシレ胞子の発芽を阻害することが観察された。すなわち、37DAMEが、ケノデオキシコール酸よりも約10倍強力なC.ディフィシレ胞子の発芽阻害剤であることが観察された。加えて、37DAMEが、ケノデオキシコール酸よりも約7〜8倍大きい、C.ディフィシレ胞子についての親和性を有することが判明した。
【0221】
この特定の実験では、5β−コラン酸3α−オル−アセテートおよびタウロケノデオキシコール酸のいずれも、C.ディフィシレ胞子の発芽阻害は観察されなかった。
【0222】
実施例16
5β−コラン酸−3α,7α−ジオールメチルエステルから始める、ある特定の胆汁誘導体の典型的な合成経路:
対象とする胆汁誘導体の多くは、標準的な方法を用いて、5β−コラン酸−3α,7α−ジオールメチルエステル(例えば、ステラロイドカタログ番号C0975−000)を出発原料として調製される。
【化13】
【0223】
胆汁塩エステルのアミド誘導体への代表的な合成変換をスキーム3に示す。例えば、限定はしないがメチルケノデオキシコール酸などのジオールは、ジメチルホルムアミド(DMF)中、t−ブチルジメチルクロロシラン(TBDMS)およびイミダゾールに曝露される際に、対応するジシリルエーテルに変換されうる。その後の、テトラヒドロフラン(THF)および水中、水酸化リチウム(LiOH)を用いたメチルエステルの加水分解は、対応するカルボン酸を生じ、これを、THF中、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HATU)などのペプチドカップリング試薬およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)などの第3級アミンの存在下、第1級または第2級アミン、例えば3−アミノプロピオン酸メチルなどを用いて、対応するアミドに変換することができる。シリルエーテルの開裂は、THF中、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)を用いて達成することができる。得られたジオール官能基のアルキル化は、DMF中、水素化ナトリウム(NaH)の存在下、臭化エチルなどのハロゲン化アルキルを用いて達成することができる。アミド態窒素のアルキル化は、DMF中、水素化ナトリウム(NaH)の存在下、ヨウ化メチル(MeI)を用いて達成することができ、アミドBBを生じる。
【0224】
あるいは、アミド態窒素のアルキル化は、TBDMSシリルエーテルの開裂の前に達成することもでき、図示するように、アミドAAを与える。
【0225】
実施例17
ある特定の胆汁塩スルホン酸誘導体の典型的な合成経路:
5β−コラン酸−3α,7α−ジオールメチルエステルから出発
対象とする多くの胆汁塩スルホン酸誘導体は、標準的な方法を用いて、5β−コラン酸−3α,7α−ジオールメチルエステル(例えば、ステラロイド,カタログ番号C0975−000)から出発して調製される。
【化14】
【0226】
胆汁塩エステルからタウリン系アミド誘導体への代表的な合成変換をスキーム4に示す。例えば、限定はしないが、メチルケノデオキシコール酸などのジオールは、DMF中、TBDMSおよびイミダゾールに曝露する際に、対応するジシリルエーテルに変換されうる。その後の、THFおよび水中、LiOHを用いたメチルエステルの加水分解は、対応するカルボン酸を生じ、THFなどの溶媒中、HATUなどのペプチドカップリング試薬およびDIEAなどの第3級アミンの存在下、タウリン(2−アミノエタンスルホン酸)などの第1級または第2級アミンを用いて、対応するアミドへと変換することができる。シリルエーテルの開裂は、THF中のTBAFを用いて達成することができる。スルホン酸官能基のアルキル化は、MeOH中のオルトギ酸トリメチル(HC(OMe)3)を用いて達成することができる。その後のアミド態窒素のアルキル化は、DMF中、NaHの存在下、MeIを用いて達成することができ、タウリン系のアミド誘導体CCを生じる。
【0227】
実施例18
ある特定の胆汁塩スルホン酸誘導体の典型的な合成経路:
5β−コラン酸−3α,7α−ジオールn−(2−スルホエチル)−アミドナトリウム塩から出発:
対象とする多くの追加の胆汁塩スルホン酸誘導体は、標準的な方法を用いて、5β−コラン酸−3α,7α−ジオールn−(2−スルホエチル)−アミドナトリウム塩(例えば、ステラロイドカタログ番号C0992−000)から出発して調製される。
【化15】
【0228】
タウリン系のアミド誘導体の代表的な合成変換をスキーム5に示す。例えば、タウリン系のアミド誘導体のジオール官能基は、DMF中、TBDMSおよびイミダゾールに曝露する際に、対応するジシリルエーテルに変換することができる。スルホン酸官能基のアルキル化は、MeOH中のオルトギ酸トリメチルを用いて達成することができる。その後のアミド態窒素のアルキル化は、DMF中、NaHの存在下、MeIを用いて達成することができる。シリルエーテルの開裂は、THF中のTBAFを用いて達成することができ、タウリン系のアミド誘導体DDを生じる。
【0229】
実施例19
7位のエピマー化のための典型的な合成経路:
さまざまなエピマーが、本発明に有用であると考えられるが、例えば、ケノデオキシコール酸およびその7β−エピマーのウルソデオキシコール酸が挙げられる。エピマーは、標準的な化学的手法に従って調製することができ、例えば、次の通りである:
【化16】
【0230】
胆汁誘導体のエピマー化は、スキーム6に図示するように、光延反応条件下で達成することができる。スキーム6に示すように、トリフェニルホスフィン(PPh3)、ジエチルアゾジカルボン酸塩(DEAD)、およびギ酸(HCO2H)のTHF溶液にアルコールを加え、対応するギ酸エステルを得る。ギ酸エステルを水性炭酸カリウム(K2CO3)で加水分解して、開始時のアルコールとは逆の配置のアルコールEEを得て差し支えない。あるいは、アミド態窒素は、ギ酸エステルの加水分解の前に、最初に、DMF中、NaHの存在下、MeIでアルキル化し、アルコールFFを得ることもできる。
【0231】
このように、本発明の少なくとも1つの実施の形態の幾つかの態様について説明してきたが、さまざまな調整、変更、および改善が当業者に容易に想起されることが認識されるべきである。このような調整、変更、および改善は、本開示の一部であることが意図されており、本発明の精神および範囲内にあることが意図されている。したがって、前述の説明および図面は、単なる例に過ぎない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
であって、ここで:
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3が、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される、
化合物。
【請求項2】
式Iの化合物:
【化2】
であって、ここで:
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、
ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3が、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される、
化合物。
【請求項3】
式Iの化合物:
【化3】
であって、ここで:
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、
ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3が−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され;
ここで:
R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5が−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;
R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5が、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される、
化合物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項5】
一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含む、プロバイオティクス組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの細菌株が、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニスからなる群より選択されることを特徴とする請求項5記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項7】
前記プロバイオティクスが、経口投与用に製剤されることを特徴とする請求項5記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項8】
前記プロバイオティクスが直腸投与用に製剤されることを特徴とする請求項5記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項9】
哺乳動物被験体における、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する方法であって、
C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体に、式Iの化合物:
【化4】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与して、被験体におけるC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害し、それによって、被験体における、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防することを含み、ここで:
R1が、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3が、−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される、
クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する方法。
【請求項10】
R1が、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
R4がOHであることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項12】
R4およびR5が、それぞれ−OHであることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項13】
式Iの化合物がケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項14】
式Iの化合物が、ウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項15】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項16】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項17】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項18】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5は、−OHである
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項19】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項20】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項21】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され、
ここで:
R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5が、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;
R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5が、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項22】
前記C.ディフィシレ関連疾患がC.ディフィシレ大腸炎であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項23】
前記C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項24】
前記C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体が、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を投与されている、投与されようとしている、または最近投与された被験体であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項25】
前記C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質が、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択されることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記被験体が、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しないことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項27】
前記投与が経口投与であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項28】
前記投与が直腸投与であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項29】
前記被験体がヒトであることを特徴とする請求項9〜28いずれか1項記載の方法。
【請求項30】
哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を治療する方法であって、
C.ディフィシレ関連疾患を有する哺乳動物被験体に、式Iの化合物:
【化5】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与し、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害し、それによって、前記C.ディフィシレ関連疾患を治療することを含み、ここで:
R1は、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され、
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、
ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり、
R3が−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される、
方法。
【請求項31】
R1が、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
R4が−OHであることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項33】
R4およびR5が、それぞれ−OHであることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項34】
式Iの化合物が、ケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項35】
式Iの化合物が、ウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項36】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項37】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項38】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項39】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5は、−OHである
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項40】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項41】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項42】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され、
ここで:
R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5が、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;
R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5が−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項43】
前記C.ディフィシレ関連疾患がC.ディフィシレ大腸炎であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項44】
前記C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項45】
前記C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体が、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を投与されている、または最近投与された被験体であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項46】
前記C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する前記抗生物質が、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択されることを特徴とする請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記被験体が、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しないことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項48】
前記投与が経口投与であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項49】
前記投与が直腸投与であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項50】
前記被験体がヒトであることを特徴とする請求項30〜49いずれか1項記載の方法。
【請求項51】
抗生物質の治療を受けている哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を発症する危険性を低減する方法であって、
抗生物質の治療を受けており、かつ、およびC.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体に、式Iの化合物:
【化6】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与し、前記被験体におけるC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害し、それによって、前記被験体において、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を発症する危険性を低減することを含み、ここで:
R1が、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3が、−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される、
方法。
【請求項52】
R1が、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択されることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項53】
R4が−OHであることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項54】
R4およびR5が、それぞれ、−OHであることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項55】
式Iの化合物がケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項56】
式Iの化合物がウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項57】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項58】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項59】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項60】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項61】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項62】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項63】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され、
ここで:
R4が−Hまたは−OHのいずれかであるときには、R5が、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;
R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるときには、R5が−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項64】
前記C.ディフィシレ関連疾患がC.ディフィシレ大腸炎であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項65】
前記C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項66】
前記抗生物質が、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択されることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項67】
前記被験体が、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しないことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項68】
前記投与が経口投与であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項69】
前記投与が直腸投与であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項70】
前記被験体がヒトであることを特徴とする請求項51〜69いずれか1項記載の方法。
【請求項71】
哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレの増殖を阻害する方法であって、
前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害するために、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で、それらを必要とする哺乳動物被験体に投与することを含む、方法。
【請求項72】
哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する方法であって、
一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体に投与して、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害し、それによって、被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防することを含む、方法。
【請求項73】
前記C.ディフィシレ関連疾患がC.ディフィシレ大腸炎であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体が、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を最近投与された被験体であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項76】
前記C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する前記抗生物質が、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択されることを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項77】
前記少なくとも1つの細菌株が、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニスからなる群より選択されることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項78】
前記投与が経口投与であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項79】
前記投与が直腸投与であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項80】
前記被験体がヒトであることを特徴とする請求項72〜79いずれか1項記載の方法。
【請求項81】
哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を治療する方法であって、
一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で、C.ディフィシレ関連疾患を有する哺乳動物被験体に投与し、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害し、それによって前記C.ディフィシレ関連疾患を治療することを含む、方法。
【請求項82】
前記C.ディフィシレ関連疾患がC.ディフィシレ大腸炎であることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項83】
前記C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎であることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項84】
C.ディフィシレ関連疾患を有する前記被験体が、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を最近投与された被験体であることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項85】
前記C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する前記抗生物質が、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択されることを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記少なくとも1つの細菌株が、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニスからなる群より選択されることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項87】
前記投与が経口投与であることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項88】
前記投与が直腸投与であることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項89】
前記被験体がヒトであることを特徴とする請求項81〜88のいずれか1項記載の方法。
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
であって、ここで:
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3が、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される、
化合物。
【請求項2】
式Iの化合物:
【化2】
であって、ここで:
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R4およびR5は、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、
ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3が、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される、
化合物。
【請求項3】
式Iの化合物:
【化3】
であって、ここで:
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、
ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3が−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され;
ここで:
R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5が−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;
R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5が、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される、
化合物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項5】
一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含む、プロバイオティクス組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの細菌株が、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニスからなる群より選択されることを特徴とする請求項5記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項7】
前記プロバイオティクスが、経口投与用に製剤されることを特徴とする請求項5記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項8】
前記プロバイオティクスが直腸投与用に製剤されることを特徴とする請求項5記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項9】
哺乳動物被験体における、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する方法であって、
C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体に、式Iの化合物:
【化4】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与して、被験体におけるC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害し、それによって、被験体における、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防することを含み、ここで:
R1が、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3が、−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される、
クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する方法。
【請求項10】
R1が、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
R4がOHであることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項12】
R4およびR5が、それぞれ−OHであることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項13】
式Iの化合物がケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項14】
式Iの化合物が、ウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項15】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項16】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項17】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項18】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5は、−OHである
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項19】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項20】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項21】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され、
ここで:
R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5が、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;
R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5が、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項22】
前記C.ディフィシレ関連疾患がC.ディフィシレ大腸炎であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項23】
前記C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項24】
前記C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体が、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を投与されている、投与されようとしている、または最近投与された被験体であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項25】
前記C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質が、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択されることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記被験体が、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しないことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項27】
前記投与が経口投与であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項28】
前記投与が直腸投与であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項29】
前記被験体がヒトであることを特徴とする請求項9〜28いずれか1項記載の方法。
【請求項30】
哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を治療する方法であって、
C.ディフィシレ関連疾患を有する哺乳動物被験体に、式Iの化合物:
【化5】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与し、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害し、それによって、前記C.ディフィシレ関連疾患を治療することを含み、ここで:
R1は、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され、
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、
ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり、
R3が−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される、
方法。
【請求項31】
R1が、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
R4が−OHであることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項33】
R4およびR5が、それぞれ−OHであることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項34】
式Iの化合物が、ケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項35】
式Iの化合物が、ウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項36】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項37】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項38】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項39】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5は、−OHである
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項40】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項41】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項42】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され、
ここで:
R4が−Hまたは−OHのいずれかであるとき、R5が、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;
R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるとき、R5が−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択されることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項43】
前記C.ディフィシレ関連疾患がC.ディフィシレ大腸炎であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項44】
前記C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項45】
前記C.ディフィシレ関連疾患を有する被験体が、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を投与されている、または最近投与された被験体であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項46】
前記C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する前記抗生物質が、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択されることを特徴とする請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記被験体が、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しないことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項48】
前記投与が経口投与であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項49】
前記投与が直腸投与であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項50】
前記被験体がヒトであることを特徴とする請求項30〜49いずれか1項記載の方法。
【請求項51】
抗生物質の治療を受けている哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を発症する危険性を低減する方法であって、
抗生物質の治療を受けており、かつ、およびC.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体に、式Iの化合物:
【化6】
またはそれらの薬学的に許容される塩を有効量で投与し、前記被験体におけるC.ディフィシレの胞子の発芽を阻害し、それによって、前記被験体において、クロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を発症する危険性を低減することを含み、ここで:
R1が、−CO2H、−CO2(R2)、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、−CON(R2)CH2CH2(R3)、−NH2、−NH(R2)、および−N(R2)2からなる群より選択され;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−NH2、−NH(R2)、−N(R2)2、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され、ここで:
R2が、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキルであり;
R3が、−CO2H、−SO3H、−CONH2、−SO2NH2、−CO2(R2)、および−SO3(R2)からなる群より選択される、
方法。
【請求項52】
R1が、−CO2H、−CONH2、−CON(R2)2、−CONHCH2CH2(R3)、および−CON(R2)CH2CH2(R3)からなる群より選択され;
R4およびR5が、それぞれ独立して、−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択されることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項53】
R4が−OHであることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項54】
R4およびR5が、それぞれ、−OHであることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項55】
式Iの化合物がケノデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項56】
式Iの化合物がウルソデオキシコール酸またはそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項57】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項58】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−OHであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項59】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項60】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R2がメチルまたはエチルであり;
R3が−CO2Hまたは−SO3Hであり;
R4が−Hであり;
R5が−OHである
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項61】
R1が−CONHCH2CH2(R3)であり;
R3が、−CONH2、−SO2NH2、および−CO2(R2)からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項62】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が、−CONH2および−SO2NH2からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項63】
R1が−CON(R2)CH2CH2(R3)であり;
R3が−SO3(R2)および−CO2(R2)からなる群より選択され、
ここで:
R4が−Hまたは−OHのいずれかであるときには、R5が、−H、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択され;
R4が−O(R2)または−Oアシルのいずれかであるときには、R5が−H、−OH、−O(R2)、および−Oアシルからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項64】
前記C.ディフィシレ関連疾患がC.ディフィシレ大腸炎であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項65】
前記C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項66】
前記抗生物質が、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択されることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項67】
前記被験体が、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与を必要とする他の症状を有しないことを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項68】
前記投与が経口投与であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項69】
前記投与が直腸投与であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項70】
前記被験体がヒトであることを特徴とする請求項51〜69いずれか1項記載の方法。
【請求項71】
哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレの増殖を阻害する方法であって、
前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害するために、一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で、それらを必要とする哺乳動物被験体に投与することを含む、方法。
【請求項72】
哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防する方法であって、
一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で、C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある哺乳動物被験体に投与して、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害し、それによって、被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を予防することを含む、方法。
【請求項73】
前記C.ディフィシレ関連疾患がC.ディフィシレ大腸炎であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記C.ディフィシレ関連疾患を発症する危険性のある被験体が、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を最近投与された被験体であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項76】
前記C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する前記抗生物質が、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択されることを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項77】
前記少なくとも1つの細菌株が、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニスからなる群より選択されることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項78】
前記投与が経口投与であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項79】
前記投与が直腸投与であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項80】
前記被験体がヒトであることを特徴とする請求項72〜79いずれか1項記載の方法。
【請求項81】
哺乳動物被験体におけるクロストリジウム・ディフィシレ関連疾患を治療する方法であって、
一次胆汁塩を二次胆汁塩に代謝することができる少なくとも1つの細菌株を含むプロバイオティクスを有効量で、C.ディフィシレ関連疾患を有する哺乳動物被験体に投与し、前記被験体におけるC.ディフィシレの増殖を阻害し、それによって前記C.ディフィシレ関連疾患を治療することを含む、方法。
【請求項82】
前記C.ディフィシレ関連疾患がC.ディフィシレ大腸炎であることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項83】
前記C.ディフィシレ関連疾患が偽膜性大腸炎であることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項84】
C.ディフィシレ関連疾患を有する前記被験体が、C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する抗生物質を最近投与された被験体であることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項85】
前記C.ディフィシレ関連疾患の発病に関連する前記抗生物質が、アンピシリン、アモキシシリン、クリンダマイシン、フルオロキノロン、およびセファロスポリンから選択されることを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記少なくとも1つの細菌株が、クロストリジウム・シンデンス、クロストリジウム・レプタム、およびクロストリジウム・ヒラノニスからなる群より選択されることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項87】
前記投与が経口投与であることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項88】
前記投与が直腸投与であることを特徴とする請求項81記載の方法。
【請求項89】
前記被験体がヒトであることを特徴とする請求項81〜88のいずれか1項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【公表番号】特表2012−507521(P2012−507521A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534525(P2011−534525)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/005929
【国際公開番号】WO2010/062369
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511109227)タフツ ユニヴァーシティー (1)
【氏名又は名称原語表記】TUFTS UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/005929
【国際公開番号】WO2010/062369
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511109227)タフツ ユニヴァーシティー (1)
【氏名又は名称原語表記】TUFTS UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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