説明

クロスヘッド

【課題】本発明は、コア又はダイの下部に設けたセパレータの第1分岐体とダイ又はコアに設けた第2分岐体を用いることにより、パリソンを二分して一対のシートを形成することを目的とする。
【解決手段】本発明によるクロスヘッドは、コア(9)又はダイ(8)に設けたセパレータ(5,5a)の第1分岐体(33)をコア(9)又はダイ(8)に設けた第2分岐体(40)に接触させることにより、コア(9)とダイ(8)間の樹脂流路(30)から垂下するパリソン(3)を二分して一対のシート(7)を形成する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスヘッドに関し、特に、コア又はダイの下部に設けた一対のセパレータの第1分岐体とダイ又はコアに設けた第2分岐体を用いることにより、パリソンを二分して一対のシートを形成するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、自動車用プラスチック燃料タンクは、ガス透過性や各種機能を満足するため、タンク内部にインサート部品を装着するためのスペースを確保するため、従来の円筒状のパリソンではなく、シート状の樹脂やパリソンに切れ目を入れるなどして成形している。
前述のように、パリソンに切れ目を入れてパリソンから一対のシートを得るための従来技術としては、例えば、図4に示される第1従来例の特許文献1の構成を挙げることができる。
すなわち、図4において符号1で示されるものはアキュムレータであり、この押出装置1の下部の輪状吐出口2から下方へ吐出されるパリソン3は、この押出装置1の下方へ位置するホルダ4上のボディ5により二分割され、このボディ5の両側に位置する被動ロール6を介して下方へ垂下し、一対のシート7として得ることができる。
【0003】
また、第2従来例の特許文献2のプラスチックシートの製造装置においては、図5に示されるように、押出装置1のダイ8から垂下するパリソン3は、ダイ8の下方に位置するカッタ5によって切断されて一枚のシート7に展開部材9を介して展開されている。
【0004】
また、第3従来例の特許文献3の中空成形方法においては、図6及び図7に示されるように、押出装置1のダイ8内のコア9を経て吐出されるパリソン3は、コア9の流路規制分岐部材5により分岐された一対のシート7として被動ロール6を介して下方へ垂下し、一対の金型20,21間で部品22と共にインサート成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4,295,213号公報
【特許文献2】特開平6−218792号公報
【特許文献3】特公平4−2087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のパリソンからのシートの製造装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図4の特許文献1の構成の場合、クロスヘッドである押出装置1からパリソン3が排出された後に、刃であるボディ5によって二分割に切断されるため、重力が切断のための力になるが、切断デバイスであるボディ5の摩擦が抵抗となり、良好な切断が得られないことがある。
そのため、一対の被動ロール6により切断を補助しなければならなかった。
また、パリソンがボディ5に付着することのないように、ボディ5を冷却しなければならなかった。
また、ボディ5を冷却したために、パリソン3の温度が低くなりすぎると、逆に、パリソン3を加熱しなければ切断できなくなることになっていた。
【0007】
また、図5の特許文献2の構成の場合、上下方向の肉厚を連続的に変化させながらシートを形成することができるが、切断刃の位置及び状態によっては切断できない場合があった。また、ダイ8の下方にカッタ5及び展開部材9を設けなければならず、パリソン3が排出された後からの切断となり、前述の特許文献1と同様の課題が存在していた。
また、パリソン3を切断するための構造が複雑となり、中空成形機の全体形状を小型化することが困難であった。
【0008】
また、図6及び図7に示される特許文献3の構成の場合、コア9の外周にカッタ5が突出して形成されているため、このカッタ5は厚さを厚くすることができず、パリソン3の厚さを可変とした場合には追従することができず、コア9を種々交換する必要があった。
本発明は、コア又はダイの下部に設けた一対のセパレータの第1分岐体とダイ又はコアに設けた第2分岐体を用いることにより、コアが上下動した場合でも第2分岐体と第1分岐体は互いに摺動し、安定して一対のシートを切断できるようにしたクロスヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるクロスヘッドは、ダイ内に上下動自在に配設されたコアと、前記ダイとコア間に形成された輪状吐出口と、前記コア又はダイの下部に設けられ前記輪状吐出口から吐出されるパリソンを二分したシートに形成するための一対のセパレータとからなり、前記各セパレータの第1分岐体は付勢体を介して前記ダイ又はコア側に固定された第2分岐体へ常時付勢され、前記第1、第2分岐体は互いに接触して上下方向に相対摺動できるようにした構成であり、また、前記コアの上下動により前記輪状吐出口の半径方向幅が変化し、前記パリソンの肉厚が変化した場合でも、前記セパレータによる前記パリソンの切断が行われる構成であり、また、前記パリソンの切断は、前記第1分岐体又は/及び前記第2分岐体によって行われる構成であり、また、前記各セパレータは、前記コアの直径方向に沿って互いに対向配置されている構成であり、また、前記各セパレータは、前記コアの下部の凹部又は前記ダイの下部の凹部に設けられている構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるクロスヘッドは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ダイ内に上下動自在に配設されたコアと、前記ダイとコア間に形成された輪状吐出口と、前記コア又はダイの下部に設けられ前記輪状吐出口から吐出されるパリソンを二分したシートに形成するための一対のセパレータとからなり、前記各セパレータの第1分岐体は付勢体を介して前記ダイ又はコア側に固定された第2分岐体へ常時付勢され、前記第1、第2分岐体は互いに接触して上下方向に相対摺動できるように構成されていることにより、クロスヘッドの輪状吐出口から吐出されたままのパリソンを温度が低下しない状態で一対のセパレータにより切断され、良好な切断状態の一対のシートを得ることができる。
また、前記コアの上下動時においても、常時、セパレータの第1分岐部がダイ又はコアに設けた第2分岐部に接して摺動しているため、パリソンの肉厚の変化に拘わらず切断することができる。
また、クロスヘッドの下部から押し出されたパリソンを切断刃によって切断するのではなく、押し出される前に分岐しているため、切断刃の状態、位置に左右されることなく安定かつ綺麗に溶融樹脂をシート状に形成できる。
また、第2分岐体はコアがダイに対して上下方向に移動する寸法に対応できる形状なので、コアをダイに対して上下方向に移動させることによって樹脂流路の幅寸法を変化させ、樹脂肉厚を連続的に変化させながら安定かつ綺麗に溶融樹脂をシート状に形成できる。
また、コアがダイに対して上下方向に移動する寸法に対応できる第2分岐体を備えることによって、コアをダイに対して上下方向に移動させる際に、第1分岐体を押し当てる時に付勢体が伸びることなく、一定の押力で維持できるため、安定かつ綺麗に溶融樹脂をシート状に形成できる。
また、第2分岐体は第2分岐体の取付板によってダイ又はコアの下面に取り付け、第1分岐体は筒状ホルダによって凹部が刻まれたコア又はダイの内部に取り付ける構造になっているので、既設機でもダイ、コアを交換、改造するだけで、安定かつ綺麗に溶融樹脂をシート状に形成できる。
また、交換、改造後は、第2分岐体は取付板によって後付け構造なので、ダイ又はコアはそのままでコア又はダイを交換するだけで溶融樹脂をパリソン状、シート状の2パターン使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるクロスヘッドのコア変化を示す断面図である。
【図2】図1の表面図である。
【図3】図1の他の形態を示す断面図である。
【図4】第1従来例を示す斜視図である。
【図5】第2従来例を示す斜視図である。
【図6】第3従来例を示す斜視図である。
【図7】図6のコアを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、コア又はダイの下部に設けた一対のセパレータの第1分岐体とダイ又はコアに設けた第2分岐体を用いることにより、パリソンを二分して一対のシートを形成するようにしたクロスヘッドを提供することを目的とする。
【実施例】
【0013】
以下、図面と共に本発明によるクロスヘッドの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1及び図2において、符号1で示されるものは概略で示すクロスヘッドであり、このクロスヘッド1の輪状をなすダイ8の内側にはコア9が図示しないアクチュエータを介して矢印Aの方向に沿って上下動できるように構成され、中心線のPを中心として、左半分はコア9が最上位置に上昇した場合を示し、右半分はコア9が最下位置に下降した場合を示している。
【0014】
前記クロスヘッド1のダイ8の内壁8aとコア9の外壁9aとの間には、多層状等の溶融樹脂を下方へ吐出するための樹脂流路30が形成され、この樹脂流路30の下部には、パリソン3を吐出するための輪状吐出口2が形成されている。
前記輪状吐出口2の半径方向幅2Aは、前記コア9の上下動により連続的に変化し、図1の中心線Pから左半分の領域においては、コア9が最も上昇しているため、この半径方向幅2Aは最小となり、図1の中心線Pから右半分の領域においては、コア9が最も下降しているため、この半径方向幅2Aは最大となるように構成されている。尚、この半径方向幅2Aは吐出されるパリソン3及びシート3aの厚さと同一である。
【0015】
前記コア9の下部には、コア9の直径方向に沿って凹部31が形成され、この凹部31内には一対のセパレータ5,5aが互いに直径方向に沿って互いに対向配置されている。
前記各セパレータ5,5aは、筒状ホルダ32と、その先端側に第1分岐体33を有する長手状のセパレータ体34と、前記筒状ホルダ32の段部32aとセパレータ体34の段部34aとの間に設けられた等からなる付勢体35と、からなり、この付勢体35の付勢力によって前記第1分岐体33がダイ8の下部に設けられ突起40Aを有する第2分岐体40の端面40aに接触面50で示すように常時直接接触するように付勢されている。尚、この接触面50は突起40Aの部分も含んで直線状で垂直に形成されている。
【0016】
前記付勢体35は、セパレータ体34の外周に位置するコイルスプリング、ゴムスプリング、蛇腹状体あるいはリニアアクチュエータ等を用いることができ、図1のように、コア9が上下動してパリソン3の肉厚を調整する場合も、前記第1分岐体33はダイ8の第2分岐体40に接して摺動し、パリソン3の肉厚の大小に拘わらず、パリソン3を直径方向に沿って二分することができるように構成されている。尚、前記各分岐体33,40は、平板状に形成され、樹脂流路30内の溶融状のパリソン3をクロスヘッド1の輪状吐出口2から下方へ出る前(すなわち、クロスヘッド1内)に切断するように構成されている。
【0017】
前記各第2分岐体40は、ダイ8の下面8bに垂直配置で設けられ、各第2分岐体40の外端40aは、前記ダイ8の外周8cに複数のボルト41によって着脱自在に設けられた取付板42によって保持されており、前記各第1分岐体33の上面33aは、パリソン3を分岐、すなわち、切断しやすいように両面テーパ状となるように構成されている。
尚、図1で示されるように、コア9が最も上昇した時は、第1分岐体33が第2分岐体40の端面40aに対して摺動しつつ上昇し、パリソン3の切断は各分岐体33,40により行われ、前記コア9が最も下降し、第1分岐体33が第2分岐体40と同一水平位置に並んだ時は、第2分岐体40のみが樹脂流路30内に位置するため、パリソン3は第2分岐体40のみで分岐、すなわち、切断されることにより、一対のシート3,3aを得ることができる。
【0018】
次に、本発明による前述のクロスヘッド1を用いてパリソン3から一対のシート3,3aを得る場合について述べる。
まず、図示しない押出機から押出された溶融樹脂(単層又は多層)は、樹脂流路30を経て輪状吐出口2からパリソン3として下方へ吐出される際に、前記各セパレータ5,5aの第1分岐体33又は第2分岐体40又はその両方によりパリソン3が直径方向に沿って切断されるため、クロスヘッド1の下部から吐出される時は、一対のシート7が形成される。
従って、パリソン3は、クロスヘッド1内、すなわち、樹脂流路30内の温度が高い状態のままで切断されるため、極めて円滑に切断動作が行われる。
【0019】
また、前記ダイ8は、コア9に対して水平方向に移動することができるように構成され、パリソン3の断面形状を偏芯させ、厚みバランスを変化することにより、シート3,3aの厚さを種々の形状又は肉厚とすることができる。
従って、クロスヘッド1の下部から押し出されたパリソン3を切断刃によって切断するのではなく、押し出される前に各分岐体33,34によって分岐しているため、切断刃の状態、位置に左右されることなく安定かつ綺麗に溶融樹脂をシート状に形成できる。
また、第2分岐体40はコア9の第1がダイ8に対して接触したままで上下方向に移動すなわち摺動する寸法に対応できる形状であるため、コア9をダイ8に対して上下方向に移動させることによって樹脂流路30の幅寸法を変化させ、樹脂肉厚を連続的に変化させながら安定かつ綺麗に溶融樹脂をシート状に形成できる。
また、コア9がダイ8に対して上下方向に移動する寸法に対応できる第2分岐体40を備えることによって、コア9をダイ8に対して上下方向に移動させる際に、第1分岐体33を押し当てる時にバネが伸びることなく、一定の押力で維持できるため、安定かつ綺麗に溶融樹脂をシート状に形成できる。
また、第2分岐体40は第2分岐体40の取付板42によってダイ8下面8bに取り付け、第1分岐体33は筒状ホルダ32によって凹部31が刻まれたコア9の内部に取り付ける構造になっているので、既設機でもダイ8、コア9を交換、改造するだけで、安定かつ綺麗に溶融樹脂をシート状に形成できる。
また、交換、改造後は、第2分岐体40は取付板42によって後付け構造であるため、ダイ8はそのままでコア9のみを交換するだけで溶融樹脂をパリソン状、シート状の2パターンの成形用として使用することができる。
また、前記第1分岐体33を付勢体35で付勢するためのセパレータ5,5aは、前述の実施例ではコア9に設けられているが、他の形態として、図3に示されるように、このセパレータ5,5aをダイ8に取付け、第2分岐体40をコア9の下部に取付けた場合も前述と同様の作用効果を得ることができ、各分岐体33と40は互いに相対摺動する。
また、前述のように、各セパレータ5,5aをダイ8の下部に取付ける場合は、ダイ8の下部に前記凹部60を設けて取付け、第2分岐体40をコア9の下部の凹部31に設ける構成となる。
また、第1分岐体33と第2分岐体40の接触面50に曲部を付けることによってずれないようにすることができる。
また、筒状ホルダ32に付勢体35、接触面50に曲部、取付板42に長穴(図示せず)を形成することによってコア9をXY軸方向へずらしてパリソン3の肉厚制御を行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によるクロスヘッドは、第1分岐体と第2分岐体を用いることにより、クロスヘッドの中でパリソンを切断することができ、新設だけでなく、既存のクロスヘッドにも後付けでセパレータを設けることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 クロスヘッド
2 輪状吐出口
2A 半径方向幅
3 パリソン
5,5a セパレータ
7 シート
8 ダイ
8a 内壁
8b 下面
9 コア
9a 外壁
P 中心線
30 樹脂流路
31 凹部
32 筒状ホルダ
33 第1分岐体
34 セパレータ体
35 付勢体
40 第2分岐体
41 ボルト
42 取付板
50 接触面
60 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイ(8)内に上下動自在に配設されたコア(9)と、前記ダイ(8)とコア(9)間に形成された輪状吐出口(2)と、前記コア(9)又はダイ(8)の下部に設けられ前記輪状吐出口(2)から吐出されるパリソン(3)を二分したシート(7)に形成するための一対のセパレータ(5,5a)とからなり、
前記各セパレータ(5,5a)のセパレータ体(34)の第1分岐体(33)は付勢体(35)を介して前記ダイ(8)又はコア(9)側に固定された第2分岐体(40)へ常時付勢され、前記第1、第2分岐体(33,40)は互いに接触して上下方向に相対摺動できるように構成されていることを特徴とするクロスヘッド。
【請求項2】
前記コア(9)の上下動により前記輪状吐出口(2)の半径方向幅(2A)が変化し、前記パリソン(3)の肉厚が変化した場合でも、前記セパレータ(5,5a)による前記パリソン(3)の切断が行われることを特徴とする請求項1記載のクロスヘッド。
【請求項3】
前記パリソン(3)の切断は、前記第1分岐体(33)又は/及び前記第2分岐体(40)によって行われることを特徴とする請求項1又は2記載のクロスヘッド。
【請求項4】
前記各セパレータ(5,5a)は、前記コア(9)の直径方向に沿って互いに対向配置されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のクロスヘッド。
【請求項5】
前記各セパレータ(5,5a)は、前記コア(9)の下部の凹部(31)又は前記ダイ(8)の下部の凹部(60)に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のクロスヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240361(P2012−240361A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114591(P2011−114591)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(390023917)八千代工業株式会社 (186)
【Fターム(参考)】