クロスローラガイド
【課題】 角柱状ガイドレールの高さを冗長することなくガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を向上させることのできるクロスローラガイドを提供する。
【解決手段】 角柱状ガイドレール105a,106aにおけるV溝の谷部に形成したリテーナ収容溝1,2にリテーナ104の幅方向の縁部を突入させてリテーナ104を摺動自在に保持することによってガイドローラ103の上下にリテーナ104の幅方向の端部が突出する不都合を解消し、角柱状ガイドレール105a,105bの高さの範囲でガイドローラ103の大型化を許容する。
【解決手段】 角柱状ガイドレール105a,106aにおけるV溝の谷部に形成したリテーナ収容溝1,2にリテーナ104の幅方向の縁部を突入させてリテーナ104を摺動自在に保持することによってガイドローラ103の上下にリテーナ104の幅方向の端部が突出する不都合を解消し、角柱状ガイドレール105a,105bの高さの範囲でガイドローラ103の大型化を許容する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスローラガイドの改良、特に、クロスローラガイドの最大外形となる角柱状ガイドレールの高さを冗長することなくガイドローラの大型化を実現するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個のガイドローラと、これらのガイドローラを回転自在に保持するための板状のリテーナと、ガイドローラを挟んで平行に配置された一対の角柱状ガイドレールからなる少なくとも二組のガイドレールセットを備えたクロスローラガイドが、例えば、非特許文献1,非特許文献2に開示されるように既に公知となっている。
【0003】
この種のクロスローラガイドの一般的な構成例を図5に示す。図5は各種の測定器や精密工作機械等のベース100上に載置されたテーブル101の直線移動をガイドするためのクロスローラガイド102の一例について示した正断面図である。
【0004】
クロスローラガイド102は、図5に示されるように、複数個のガイドローラ103と、ガイドローラ103を回転自在に保持するための板状のリテーナ104と、ガイドローラ103およびリテーナ104を挟むようにして平行に配置された一対の角柱状ガイドレール105,106からなる二組のガイドレールセット107によって構成される。
【0005】
図5に示される通り、各組のガイドレールセット107のうち、角柱状ガイドレール105が固定側であるベース100の両側にV溝を外側に向けて固着される一方、角柱状ガイドレール106が可動側であるテーブル101の両側にV溝を内側に向けて固着されており、角柱状ガイドレール105,106間に介装されたガイドローラ103が角柱状ガイドレール105に対する角柱状ガイドレール106の直線移動を許容することによって、図5中のベース100に対するテーブル101の紙面垂直方向の直線移動が円滑にガイドされるようになっている。
【0006】
一組のガイドレールセット107を取り出して其の構造の詳細を図6,図7,図8に示す。
【0007】
図6(a)は一組のガイドレールセット107を示した正面図、また、図6(b)は其の平面図である。図6(c)はガイドローラ103を取り付けたリテーナ104をガイドレールセット107から取り出してリテーナ104に対するガイドローラ103の取り付け状態を示した右側面図であり、図6(d)は角柱状ガイドレール105,106の長手方向に直交する平面でガイドレールセット107を割って其の内部構造を示した断面図である。また、図7はリテーナ104を拡大して各部を詳細に示した図であり、図8はリテーナ104に対するガイドローラ103の取り付け状態を詳細に示した図である。
【0008】
図6(c)に示されるリテーナ104は、多数のガイドローラ103を保持することによってガイドレールセット107の組立時におけるガイドローラ103の脱落を防止する機能を有し、特に、これらのガイドローラ103を一定の間隔を置いて回転自在に保持することによって、角柱状ガイドレール105,106の相対移動に際し、隣接するガイドローラ103同士の衝接や此れに伴うガイドローラ103の損傷を防止する機能を備える。
【0009】
このリテーナ104には、図7に示されるように、ガイドローラ103を取り付けるための同形同寸法のポケット加工部108がプレス等の板金加工を利用して多数穿設され、その上下には、ポケット加工部108に取り付けられたガイドローラ103の端面を支持するための舌片状突起109,110が同じくプレス加工等で一体に形成されている。
【0010】
より具体的には、各ポケット加工部108における舌片状突起109,110は、其の一方がリテーナ104の表面側に突出すると共に他方がリテーナ104の裏面側に突出し、且つ、隣接するポケット加工部108同士では其の突出方向が交互に逆向きとなるようにして、約1/2直角の角度で屈曲されている。
【0011】
つまり、図7に示されるようなリテーナ104において、左から数えて奇数番目に位置するポケット加工部108の一方の舌片状突起109が図8(a)に示されるようにしてリテーナ104の表面側に突出し、他方の舌片状突起110が図8(a)に示されるようにしてリテーナ104の裏面側に突出しているとすれば、左から数えて偶数番目に位置するポケット加工部108の一方の舌片状突起109が図8(b)に示されるようにしてリテーナ104の裏面側に突出し、他方の舌片状突起110が図8(b)に示されるようにしてリテーナ104の表面側に突出する構造である。
【0012】
また、ポケット加工部108に取り付けられる各ガイドローラ103は、例えば、図8(a)に示されるように、各個体毎に軸方向の長さd1と直径d2とが略一致しており、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さd1と直径d2が共通している。つまり、ガイドローラ103の軸方向の長さd1に相当する値と直径d2に相当する値をDとすれば、全てのガイドローラ103の軸方向の長さがDであり、同時に、全てのガイドローラ103の直径もDである。よって、このガイドローラ103を其の回転軸CLを含む平面で割った時の断面形状は、図8(a)あるいは図8(b)に示される通りの正方形状の矩形断面となる。
【0013】
リテーナ104のポケット加工部108は図7に示す通り全体として樽型に形成され、樽型部分の最大幅が前述の寸法Dつまりガイドローラ103の直径Dよりも僅かに大きく形成されている。
【0014】
従って、図8(a)に示されるようなガイドローラ103の端面を図7の紙面に対して平行にした状態つまりガイドローラ103の回転軸CLをリテーナ104の面に対して垂直とした状態で、ガイドローラ103をポケット加工部108に挿入することが可能である。
【0015】
一例として、リテーナ104上の左端部に位置するポケット加工部108にガイドローラ103を挿入した状態を図7中の二点鎖線で示す。
【0016】
図7からも明らかなように、この状態では、リテーナ104を仮想の切断面とするガイドローラ103の断面形状は完全な円であり、図7におけるガイドローラ103の左右方向への不用意な位置ずれは、ポケット加工部108における左右の円弧部分によって防止されることになる。
【0017】
そして、この状態からガイドローラ103の回転軸CLを図8(a)中の反時計方向に向けて傾けていくと、リテーナ104を仮想の切断面とするガイドローラ103の断面形状は、其の横幅を寸法Dに保持したまま図7中の上下方向に徐々に寸法を伸ばして、上下方向に長い楕円形状に変化していく。
【0018】
これに対し、全体として樽型に形成されたポケット加工部108の形状は、厳密には、リテーナ104の面に対して直交し且つポケット加工部108における舌片状突起109,110を結ぶ直線を含む平面内でガイドローラ103の回転軸CLをリテーナ104の面に対して1/2直角だけ傾けた際にリテーナ104を仮想の切断面として形成されるガイドローラ103の断面形状に比べて僅かに大きく形成されているだけであるから、図8(a)のようにガイドローラ103の回転軸CLをリテーナ104の面に対して1/2直角だけ傾けた状態から更に図8(a)中の反時計方向に回転軸CLを傾けようとすると、図7に示されるポケット加工部108の四隅111がガイドローラ103の外周面に干渉して、ガイドローラ103の其れ以上の姿勢変化を規制する。つまり、図8(a)に示されるガイドローラ103の反時計方向への倒れ込みは、ポケット加工部108の四隅111がガイドローラ103の外周面に当接することによって防止されている。
【0019】
また、これとは逆に、図8(a)に示される姿勢から時計方向に向けてガイドローラ103の回転軸CLを傾けようとした場合には、図8(a)に示される通り、ポケット加工部108の舌片状突起109,110がガイドローラ103の両端面を支えることで、ガイドローラ103の姿勢変化が規制される。
【0020】
結果的に、図7におけるガイドローラ103の左右方向への位置ずれと、図8(a)におけるガイドローラ103の回転軸に生じる不用意な姿勢変化、ならびに、リテーナ104の法線方向に対するガイドローラ103の位置ずれは、ポケット加工部108の四隅111がガイドローラ103の外周面に当接すること、および、ポケット加工部108の舌片状突起109,110がガイドローラ103の両端面を支えることによって防止され、この状態を維持して、ポケット加工部108の内部にガイドローラ103が回転自在に保持される。
【0021】
なお、前述のようにしてガイドローラ103をポケット加工部108に挿入し、ガイドローラ103の回転軸CLを図8(a)中の反時計方向に傾斜させてリテーナ104に組み付ける際には、ポケット加工部108の舌片状突起109,110がガイドローラ103の外周面に干渉することになるが、舌片状突起109,110は其れ自体が弾性変形可能であるから、組み付け作業に際して舌片状突起109,110を弾性変形させる必要が生じるといった煩雑さは伴うものの、リテーナ104に対するガイドローラ103の取り付け作業自体は可能である。
【0022】
既に述べた通り、隣接するポケット加工部108同士では舌片状突起109,110の突出方向が交互に逆向きとなっているので、リテーナ104上の左端部から数えて奇数番目に位置するポケット加工部108におけるガイドローラ103の取り付け状態は図8(a)に示されるようなものとなり、また、偶数番目に位置するポケット加工部108におけるガイドローラ103の取り付け状態は図8(b)に示されるようなものとなる。
【0023】
即ち、リテーナ104は、図6(c)に示されるように、各ガイドローラ103が一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラ103の回転軸CLが図8(a)および図8(b)に示されるように1直角相当の捩れの関係となるようにして、各ガイドローラ103の各々を回転自在に保持しており、各ガイドローラ103は、各回転軸CLを含みガイドローラ103の並びの方向と直交する各ガイドローラ103の矩形断面における対角線の両端部に相当する位置、つまり、図8(a)および図8(b)中で二点鎖線によって示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において上下方向に延びる対角線の両端部に相当する位置で、リテーナ104によって回転自在に保持されていることになる。
【0024】
このようにしてリテーナ104に取り付けられた多数のガイドローラ103は、図6(d)に示されるように、其の外周面と端面を角柱状ガイドレール105,106のV溝の斜面に当接させるようにして、リテーナ104と共に角柱状ガイドレール105,106の間に組み込まれる。
【0025】
角柱状ガイドレール105,106の両端部には脱落防止用ネジ112が螺合され、脱落防止用ネジ112の頭部が角柱状ガイドレール105,106のV溝の両端部を塞ぐので、角柱状ガイドレール105,106の間に組み込まれたリテーナ104やガイドローラ103がV溝の端部から脱落することはない。
【0026】
ベース100やテーブル101に対するガイドレールセット107の取り付け状態は図5に示す通りである。
【0027】
そして、最終的に、ガイドレールセット107を構成する角柱状ガイドレール105,106のうち外側に位置する角柱状ガイドレール106の片方、例えば、図5の例では右側に位置する角柱状ガイドレール106を、テーブル101の側壁に螺合された予圧ネジ113で押圧することによって角柱状ガイドレール105,106のV溝をガイドローラ103に圧接し、ガイドローラ103の外周面と端面を角柱状ガイドレール105,106のV溝の斜面に一定の力で当接させて、不用意なガタツキを解消する。
【0028】
角柱状ガイドレール105に対する角柱状ガイドレール106の移動可能範囲、つまり、ベース100に対するテーブル101の移動可能範囲を図9に示す。
【0029】
ガイドローラ103およびリテーナ104と角柱状ガイドレール105,106によって構成されるクロスローラガイド102の構成は以上に述べた通りであるが、この種のクロスローラガイド102では、リテーナ104の構造上、図5に示す角柱状ガイドレール105,106の高さH、つまり、V溝を形成した面と隣接する角柱状ガイドレールの2つの外周面である上面と下面との間の離間距離Hの短縮や、クロスローラガイド102の耐荷重性能の向上に必要とされるガイドローラ103の大型化が難しいといった問題がある。
【0030】
通常、プレス等の板金加工を利用して金属板に単純なポケット加工部を穿孔する際に必要とされる外周部残し代の幅は、材料となる板金の厚みと同等の値tである。
しかし、図7に示されるようなポケット加工部108においては其の上下に舌片状突起109,110を形成する必要があり、更に、この舌片状突起109,110に対して図8(a)あるいは図8(b)に示されるような曲げ加工を重複して施す必要があるので、この曲げ加工に際して作用する外力等でリテーナ104の外周部に歪が生じるのを防止する必要上、外周部残し代の幅を通常の値tよりも大き目の値t’としなければならない。
【0031】
従って、角柱状ガイドレール105,106の高さHが制限されている状況下つまりリテーナ104の幅を大きくできない状況下では、ガイドローラ103の小型化を迫られてクロスローラガイド102の耐荷重性能が低下してしまう。
また、十分な耐荷重性能が要求される状況下ではガイドローラ103の大型化が前提となるので、必然的にリテーナ104の幅も大きくなってしまい、角柱状ガイドレール105,106の高さHが冗長されてクロスローラガイドが大型化してしまうといった不都合が生じる。
【0032】
【非特許文献1】日本トムソン株式会社、総合カタログ CAT−1521 1、p495,501−505
【非特許文献2】THK株式会社、直動システム 総合カタログ 製品諸元、No.401、pf8−9,f10−15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
そこで本発明の課題は、前記従来技術の不都合を改善し、角柱状ガイドレールの高さを冗長することなくガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を向上させることのできるクロスローラガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明のクロスローラガイドは、各個体毎に軸方向の長さと直径とが略一致し、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さと直径が共通する複数個のガイドローラと、
各ガイドローラが一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラの回転軸が1直角相当の捩れの関係となるようにして、前記各ガイドローラの各々を、少なくとも、前記各回転軸を含み前記一直線の方向と直交する各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部に相当する位置で回転自在に保持するポケット加工部を備えた板状のリテーナと、
対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された一対の角柱状ガイドレールからなる少なくとも二組のガイドレールセットを備え、
前記各角柱状ガイドレールにおけるV溝の斜面を前記各ガイドローラの外周面と端面に当接させるようにして前記一対の角柱状ガイドレールの間に前記各ガイドローラを配置したクロスローラガイドであり、
前記課題を達成するため、特に、
前記各角柱状ガイドレールにおけるV溝の谷部の各々に、前記リテーナの幅方向の縁部を摺動自在に突入させるためのリテーナ収容溝を設け、
前記リテーナの幅方向の縁部を前記リテーナ収容溝に突入させて取り付けたことを特徴とする構成を有する。
【0035】
角柱状ガイドレールにおけるV溝の谷部に形成したリテーナ収容溝にリテーナの幅方向の縁部を突入させてリテーナを摺動自在に保持する構成、即ち、V溝を形成した角柱状ガイドレールの面に隣接する角柱状ガイドレールの2つの外周面の離間距離である角柱状ガイドレールの高さ方向に対して直交させるかたちでリテーナを取り付ける構成を適用したので、ガイドローラの上下にリテーナの幅方向の端部を突出させる必要がなくなり、V溝を形成した面と隣接する角柱状ガイドレールの2つの外周面である上面と下面の離間距離つまり角柱状ガイドレールの高さに応じ、クロスローラガイドの取り付け対象となる装置のベースやテーブルにガイドローラが干渉しない範囲でガイドローラを大型化することが可能となった。
従って、角柱状ガイドレールの高さを従来品と同等とした場合ではガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を従来品に比べて向上させることができ、また、必要とされる耐荷重性能が従来品と同等でよければ、角柱状ガイドレールの高さを短縮化してクロスローラガイドを従来品よりも小型化することができる。
【0036】
このような構成を適用した場合には、ガイドローラの軸方向の長さと直径をD,リテーナがガイドローラを回転自在に保持するために必要とされるガイドローラとリテーナとの間の間隙寸法をS,リテーナに板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅の値をt’,V溝を形成した面と隣接する角柱状ガイドレールの2つの外周面の離間距離つまり角柱状ガイドレールの高さをHとして、
前記離間距離すなわち角柱状ガイドレールの高さHの寸法を、D√2≦H<S+2t’+D√2とすることが望ましい。
【0037】
特に、角柱状ガイドレールの高さの寸法HをD√2に近似する値とした場合においてガイドローラの直径Dの値が最大となり、クロスローラガイドの耐荷重性能が最も向上する。
角柱状ガイドレールの高さHの寸法をH<S+2t’+D√2と規定するのは、角柱状ガイドレールの対向面の間にリテーナを配置したクロスローラガイドにおいて理論的に達成可能なガイドローラの直径Dの最大寸法を除外するための措置である。
【0038】
また、一対の角柱状ガイドレールの対向面の間にリテーナを配置したクロスローラガイドにおいて角柱状ガイドレールの高さを冗長することなくガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を向上させるためには、
リテーナの表裏を平坦化すると共に、
ガイドローラの軸方向の長さと直径をD,リテーナがガイドローラを回転自在に保持するために必要とされるガイドローラとリテーナとの間の間隙寸法をS,リテーナに板金加工によるポケット加工を施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅を板厚と同等の値t,リテーナに板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅の値をt’,リテーナの幅をH’として、
リテーナの幅H’の寸法を、S+2t+D√2≦H’<S+2t’+D√2とすると共に、V溝を形成した面と隣接する各角柱状ガイドレールの2つの外周面の離間距離すなわち角柱状ガイドレールの高さの寸法を前記リテーナの幅H’の寸法と同等以上とした構成を適用することができる。
【0039】
リテーナの表裏を平坦化して舌片状突起の形成に必要とされる曲げ加工を廃し、ガイドローラの上下に突出するリテーナの突出量つまりポケット加工部の周りに必要とされる外周部残し代を板厚と同等の値tにまで縮小することによってガイドローラの大型化が可能となった。
従って、角柱状ガイドレールの高さを従来品と同等とした場合ではガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を従来品に比べて向上させることができ、また、必要とされる耐荷重性能が従来品と同等でよければ、角柱状ガイドレールの高さを短縮化してクロスローラガイドを従来品よりも小型化することができる。
【0040】
このような構成を適用した場合は、リテーナにガイドローラを取り付けるために形成されたポケット加工部において、ガイドローラの回転軸を含みガイドローラの並びの方向と直交する各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部に相当する位置に、
リテーナの厚み方向に沿ってリテーナの一面からリテーナの厚みの中央部まで延びるストレート面と、該ストレート面に連絡してリテーナの他面まで延びながらポケット加工部の中央部に向かう方向に傾斜するテーパ面とを備えた突起部を設け、
各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部を、前記リテーナの一面側から突起部に向けて押圧具を押し付けることによって前記ストレート面に形成された塑性変形部と前記突起部のテーパ面とによって回転自在に保持した構成とすることが望ましい。
【0041】
リテーナのポケット加工部に形成された突起部のテーパ面と突起部のストレート面に形成された塑性変形部によってガイドローラを回転自在に保持することができるので、クロスローラガイドの組立時におけるガイドローラの脱落が防止され、クロスローラガイドの組立作業が容易となる。
また、ガイドローラの端面を支える従来型の舌片状突起に代え、リテーナのポケット加工部に形成された塑性変形部によってガイドローラを回転自在に保持するようにしているので、ポケット加工部の外周部残し代の幅を板厚と同等の値tに維持したままガイドローラを回転自在に保持することが可能となり、ガイドローラの上下に突出するリテーナの突出量の冗長が免れる。
【発明の効果】
【0042】
本発明のクロスローラガイドによれば角柱状ガイドレールの高さを冗長することなくガイドローラを大型化することができるので、角柱状ガイドレールの高さを従来品と同等とした場合ではガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を従来品に比べて向上させることができ、また、必要とされる耐荷重性能が従来品と同等でよければ、角柱状ガイドレールの高さを短縮化してクロスローラガイドを従来品よりも小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0044】
図1は角柱状ガイドレールにおけるV溝の谷部に形成したリテーナ収容溝にリテーナの幅方向の縁部を突入させて摺動自在に保持するようにした一実施形態のクロスローラガイドから一組のガイドレールセット107aを取り出し、その構成について示した正断面図である。
【0045】
図1に示されるガイドレールセット107aは、複数個のガイドローラ103と、ガイドローラ103を回転自在に保持するポケット加工部を備えた板状のリテーナ104、および、対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された一対の角柱状ガイドレール105a,106aによって構成される。
【0046】
ガイドローラ103およびリテーナ104の構造とリテーナ104のポケット加工部108に対するガイドローラ103の取り付け構造、ならびに、測定器や精密工作機械等のベース100やテーブル101に対するガイドレールセット107aの取り付け構造に関しては、図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102の場合と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。また、二組のガイドレールセット107aの取り付け対象となるベース100やテーブル101の構造に関しては図5を援用して説明するものとする。
【0047】
リテーナ104に取り付けられる複数個のガイドローラ103は、図8(a)あるいは図8(b)に示されるものと同様、各個体毎に軸方向の長さと直径とが略一致し、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さと直径が共通している。図8(a)に示す通り、ここでは全てのガイドローラ103に共通する軸方向の長さと直径をDとして規定する。
【0048】
リテーナ104は、図1において各ガイドローラ103が紙面垂直方向に一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラ103の回転軸CLが1直角相当の捩れの関係となるようにして、各ガイドローラ103の各々を回転自在に保持しており、各ガイドローラ103は、各回転軸CLを含みガイドローラ103の並びの方向と直交する各ガイドローラ103の矩形断面における対角線の両端部に相当する位置、つまり、図1中に示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において左右方向に延びる対角線の両端部に相当する位置で、リテーナ104のポケット加工部108によって回転自在に保持されている。
【0049】
具体的には、リテーナ104の面に対する各ガイドローラ103の回転軸CLの傾斜角度は図1中で反時計方向に1/2直角、または、時計方向に1/2直角であって、図1の紙面垂直方向に相互に隣接する各ガイドローラ103間の回転軸CLの捩れ角が1直角となる。
【0050】
図1に示した実施形態のリテーナ104は図7に示したリテーナ104と基本的に同様の構成であるが、ガイドローラ103を回転自在に保持するためのリテーナ構造に関しては既に様々なものが公知となっており、ガイドローラ103を回転自在に保持できる限り、リテーナ自体の構造に関しては特に拘る必要はない。
【0051】
各角柱状ガイドレール105a,106aは対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置され、図1に示す通り、各角柱状ガイドレール105a,106aにおけるV溝の斜面を各ガイドローラ103の外周面と端面に当接させるようにして角柱状ガイドレール105a,106aの間にガイドローラ103が挟み込まれる。
【0052】
また、この実施形態においては、特に、各角柱状ガイドレール105a,106aにおけるV溝の谷部の各々に、リテーナ104の幅方向の縁部を摺動自在に突入させるためのリテーナ収容溝1,2が設けられており、ガイドローラ103を回転自在に保持したリテーナ104の幅方向の縁部がリテーナ収容溝1,2によって摺動自在に保持されている。
【0053】
図5に示される従来型の各角柱状ガイドレール105,106においてもV溝の谷部の各々に溝が形成されているが、これらの溝はガイドローラ103の端面と外周面の間の境界領域部分に形成されるシャープコーナーがV溝の底に干渉するのを回避するための逃ガシ加工部として形成されたものに過ぎず、本実施形態におけるリテーナ収容溝1,2とでは其の用途と深さが全く相違する。
【0054】
図1ではリテーナ収容溝1,2とリテーナ104の幅方向の縁部との嵌合関係を明確にする必要上、リテーナ収容溝1,2の内壁部とリテーナ104の縁部との間に形成される間隙を大きくデフォルメして記載しているが、実際には、リテーナ収容溝1,2の幅は前述した逃ガシ加工部として機能する溝の幅と概ね同等である。
従って、各角柱状ガイドレール105a,106aにリテーナ収容溝1,2を設けることによってガイドローラ103の外周面や端面とV溝の斜面との間の当接面積が減少するといった問題は生じない。
【0055】
ガイドローラ103の軸方向の長さと直径は共にDであり、リテーナ104の面に対するガイドローラ103の回転軸CLの傾斜角度が1/2直角であるから、図1中に示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において上下方向に延びる対角線の長さはD√2である。
【0056】
従って、V溝を形成した面と隣接する角柱状ガイドレール105a,106aの2つの外周面の離間距離つまり角柱状ガイドレール105a,106aの高さをHとすれば、D√2≦Hの範囲でガイドローラ103の大型化が可能であり、特に、H=D√2としてガイドローラ103の直径Dおよび軸方向の長さDの値を最大とした場合に其の耐荷重性能が最も向上する。
【0057】
このように、角柱状ガイドレール105a,106aのV溝の谷に形成したリテーナ収容溝1,2にリテーナ104の幅方向の縁部を突入させてリテーナ104を摺動自在に保持する構成を適用すれば、ガイドローラ103の上下にリテーナ104の幅方向の端部を突出させる必要がなくなるので、角柱状ガイドレール105a,106aの高さHに応じ、クロスローラガイドの取り付け対象となる装置のベース100やテーブル101にガイドローラ103が干渉しない範囲、つまり、図1に示されるガイドローラ103の見かけ上の高さが角柱状ガイドレール105a,106aの高さHを超えない範囲で、ガイドローラ103を大型化することが可能となる。
【0058】
よって、角柱状ガイドレール105a,106aの高さを図6(d)に示されるような従来品と同等とした場合ではガイドローラ103を大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を従来品に比べて向上させることができ、また、必要とされる耐荷重性能が従来品と同等でよければ、角柱状ガイドレール105a,106aの高さを図6(d)に示されるような従来型の角柱状ガイドレール105,106よりも短縮化してクロスローラガイドを従来品よりも小型化(薄型化)することができる。
【0059】
角柱状ガイドレール105a,106aの高さHについてはD√2を超える限りにおいて上限の制限はないが、図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102、つまり、角柱状ガイドレール105,106の対向面の間にリテーナ104を配置したクロスローラガイドにおいては、リテーナ104がガイドローラ103を回転自在に保持するために必要とされるガイドローラ103とリテーナ104との間の間隙寸法をSとし、板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施してリテーナ104に舌片状突起109,110を形成する際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅の値をt’とした場合において、リテーナ104の幅を最小でS+2t’+D√2まで短縮することが可能であるから、角柱状ガイドレール105a,106aのV溝の谷に形成したリテーナ収容溝1,2にリテーナ104の幅方向の縁部を突入させてリテーナ104を摺動自在に保持するとした本実施形態の構成がガイドローラ103の大型化や角柱状ガイドレール105a,106aの高さの短縮化に関して顕著な効果を発揮するのは、具体的には、高さH,ローラ径D,間隙寸法S、および、ポケット加工と曲げ加工を重複して施す際に必要とされる外周部残し代の幅t’の関係において、D√2≦H<S+2t’+D√2の関係が満たされる範囲に制限される。
【0060】
図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102における角柱状ガイドレール105,106の高さHxと本実施形態の構成を適用した場合の角柱状ガイドレール105a,106aの高さHとの関係の一例を図10に示す。図10ではローラ径Dのガイドローラ103を実装する際に最低限度必要とされる角柱状ガイドレールの高さHx(従来型)と同じくローラ径Dのガイドローラ103を実装する際に最低限度必要とされる角柱状ガイドレールの高さH(本実施形態)を対応させ、ローラ径Dをパラメータとして両者の関連を示している。
例えば、要求される耐荷重の実現に必要とされるローラ径Dを3mmとした場合では、高さHxが8mm、また、高さHが4.5mmとなるから、本実施形態の構成を適用することで3.5mm分の高さの短縮が可能となる。
また、角柱状ガイドレール105,106の高さHxと角柱状ガイドレール105a,106aの高さHを共に8mmに制限した場合では、従来型の構成ではD=3mmのガイドローラ103を取り付けるのが限界であるが、本実施形態の構成を適用した場合ではD=4mmのガイドローラ103を取り付けることが可能となり、角柱状ガイドレールの高さを変えなくても耐荷重性能を向上させられることが分る。
【0061】
図2は一対の角柱状ガイドレールの対向面の間にリテーナを配置したクロスローラガイドにおいてリテーナの表裏を平坦化してガイドローラの上下に突出するリテーナの突出量を最小化した一実施形態のクロスローラガイドから一組のガイドレールセット107bを取り出し、その構成について示した正断面図である。
【0062】
図2に示されるガイドレールセット107bは、複数個のガイドローラ103と、ガイドローラ103を回転自在に保持する板状のリテーナ104b、および、対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された一対の角柱状ガイドレール105,106によって構成される。
【0063】
ガイドローラ103および角柱状ガイドレール105,106の構造、ならびに、測定器や精密工作機械等のベース100やテーブル101に対するガイドレールセット107bの取り付け構造に関しては、図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102の場合と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。また、二組のガイドレールセット107bの取り付け対象となるベース100やテーブル101の構造に関しては図5を援用して説明するものとする。
【0064】
リテーナ104bに取り付けられる複数個のガイドローラ103は、図8(a)あるいは図8(b)に示されるものと同様、各個体毎に軸方向の長さと直径とが略一致し、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さと直径が共通している。前述した実施形態と同様、ここでは全てのガイドローラ103に共通する軸方向の長さと直径をDとして規定する。
【0065】
リテーナ104bは、図2において各ガイドローラ103が紙面垂直方向に一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラ103の回転軸CLが1直角相当の捩れの関係となるようにして、各ガイドローラ103の各々を回転自在に保持しており、各ガイドローラ103は、各回転軸CLを含みガイドローラ103の並びの方向と直交する各ガイドローラ103の矩形断面における対角線の両端部に相当する位置、つまり、図2中に示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において上下方向に延びる対角線の両端部に相当する位置で、リテーナ104bによって回転自在に保持されている。
【0066】
具体的には、リテーナ104bの面に対する各ガイドローラ103の回転軸CLの傾斜角度は図2中で時計方向に1/2直角、または、反時計方向に1/2直角であって、図2の紙面垂直方向に相互に隣接する各ガイドローラ103間の回転軸CLの捩れ角が1直角となる。
【0067】
リテーナ104bの構造とリテーナ104bに対するガイドローラ103の取り付け構造について図3,図4を参照して説明する。
【0068】
図3(a)はガイドローラ103の回転軸CLを含みガイドローラ103の並びの方向と直交する平面でリテーナ104bを割ってガイドローラ103の取り付けの完了したリテーナ104bを示した側断面図であり、図3(b)はガイドローラ103の取り付けの完了したリテーナ104bの一部を示した平面図である。また、図4(a)はガイドローラ103を取り付ける前のリテーナ104bについて図3(a)と同じ断面を取って示した図であり、図4(b)および図4(c)は図4(a)と同じ断面を取ってガイドローラ103をリテーナ104bに取り付ける工程について示した図である。
【0069】
このリテーナ104bには、図3(b)に示されるように、ガイドローラ103を取り付けるための同形同寸法のポケット加工部108bがプレス等の板金加工を利用して多数穿設され、更に、ポケット加工部108bの上下、つまり、図3(a)中に示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において上下方向に延びる対角線の両端部に相当する位置には、図4(a)に示されるように、リテーナ104bの厚み方向に沿ってリテーナ104bの一面からリテーナ104bの厚みの中央部まで延びるストレート面3aと、該ストレート面3aに連絡してリテーナ104bの他面まで延びながらポケット加工部108bの中央部に向かう方向に傾斜するテーパ面3bを有する突起部3が一体的に形成されている。
【0070】
図3(b)に示す通り、ポケット加工部108b毎に設けられた全ての突起部3のストレート面3aはリテーナ104bの同一面側、つまり、図3(b)で言えば表面側に位置し、また、全ての突起部3のテーパ面3bはリテーナ104bの他面側、つまり、図3(b)で言えば裏面側に位置する。
【0071】
ポケット加工部108bの上下に設けられた突起部3,3のストレート面3a,3a間の離間距離は、図3(a)中に示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において上下方向に延びる対角線の長さ、つまり、D√2に比べて僅かに長い。ここで、ポケット加工部108b内にガイドローラ103を回転自在に保持するために必要とされるガイドローラ103とリテーナ104bとの間の間隙寸法をSとすれば、ポケット加工部108bの上下に設けられた突起部3,3のストレート面3a,3a間の離間距離は概ねS+D√2である。また、ポケット加工部108bの上下に設けられた突起部3,3のテーパ面3b,3bの先端部の間の離間距離は、D√2に比べて僅かに短い。
【0072】
従って、図4(b)に示されるように、リテーナ104bの面に対するガイドローラ103の回転軸CLの傾斜角度を1/2直角とした状態でポケット加工部108bにガイドローラ103を挿入することが可能である。
このようにしてポケット加工部108bにガイドローラ103を挿入した段階で、ガイドローラ103の両端に位置する外周面と端面との境界領域部分の片側が図4(b)に示されるようにして突起部3,3のテーパ面3b,3bによって支えられる。
【0073】
図8に示したリテーナ104とは相違し、舌片状突起109,110を弾性変形させながらガイドローラ103を取り付ける必要がなく、単にガイドローラ103をポケット加工部108bに差し込めばよいので、ガイドローラ103の取り付け作業は極めて容易である。
【0074】
次いで、この状態を保持したまま、リテーナ104bの一面つまり図4(b)においては左側の面からポンチ等の押圧具5,5を突起部3,3に向けて押し付けることにより、突起部3,3のストレート面3a,3aの周辺を塑性変形させて、塑性変形部6,6を形成する。
【0075】
この結果、ガイドローラ103の両端に位置する外周面と端面との境界領域部分、言い換えれば、ガイドローラ103の矩形断面における上下方向の対角線の両端部の左右両側が、図4(c)あるいは図3(a)に示されるようにして突起部3,3のテーパ面3b,3bと塑性変形部6,6によって支えられ、ポケット加工部108b内にガイドローラ103が回転自在に保持された状態となる。
【0076】
リテーナ104bは、図7に示した従来型のリテーナ104における舌片状突起109,110のようなものは備えておらず、また、リテーナ104bの表裏は完全に平坦であって曲げ加工が不要であるから、図3(b)に示す通り、ポケット加工部108bの周りに必要とされる外周部残し代の幅は、単純なポケット加工部を穿孔する際に必要とされる通常の外周部残し代と同等の値、つまり、材料となる板金の厚みと同等の値tで済む。
【0077】
この実施形態においては、ガイドローラの軸方向の長さと直径がD、また、リテーナ104bがガイドローラ103を回転自在に保持するために必要とされる間隙寸法がSであるから、リテーナ104bの幅をH’とすれば、図2に示される通り、リテーナの幅H’はS+2t+D√2にまで短縮することが可能である。
【0078】
リテーナ104bの幅H’に関してはS+2t+D√2を超える限りにおいて上限の制限はないが、図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102、つまり、ポケット加工と曲げ加工を重複して施すことで形成される舌片状突起109,110を備えたクロスローラガイドにおいては、板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施すことによってリテーナ104に舌片状突起109,110を形成する際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅をt’(但し、t’>t)として、リテーナ104の幅を最小でS+2t’+D√2まで短縮することが可能であるから、リテーナ104bの表裏を平坦化して舌片状突起109,110の形成に必要とされる曲げ加工を廃することによってポケット加工部108bの周りに必要とされる外周部残し代を縮小するとした本実施形態の構成がガイドローラ103の大型化や角柱状ガイドレール105,106の高さの短縮化に関して顕著な効果を発揮するのは、具体的には、リテーナ104bの幅H’,ローラ径D,間隙寸法S,ポケット加工のみを行う際に必要とされる外周部残し代の幅t、および、ポケット加工と重複して曲げ加工を行う際に必要とされる外周部残し代の幅t’の関係において、S+2t+D√2≦H’<S+2t’+D√2の関係が満たされる範囲に制限される。
【0079】
このようにして組み立てられたリテーナ104bは、対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された角柱状ガイドレール105,106の対向面の間に図2に示されるようにして配置され、リテーナ104bに取り付けられた多数のガイドローラ103の外周面と端面が角柱状ガイドレール105,106のV溝に当接する。
【0080】
V溝を形成した面と隣接する角柱状ガイドレール105,106の2つの外周面の離間距離つまり角柱状ガイドレール105,106の高さHは、クロスローラガイドの取り付け対象となる装置のベース100やテーブル101にリテーナ104bが干渉するのを防止する必要上、リテーナの幅H’を僅かに上回ることが望ましいが、実際には、ガイドレールセット107bの組立が完了してベース100やテーブル101に対する取り付けが終った時点では、ガイドローラ103が図2の紙面垂直方向に沿って完全な一直線上に並び、前述した間隙寸法Sの影響により、リテーナ104bが多数のガイドローラ103に図2に示されるようにして吊り下げられた状態でガイドローラ103と一体的に直線移動することになるので、リテーナ104bの上端部がテーブル101に干渉することは考えにくく、また、仮に、リテーナ104bの下端部がベース100に摺接したとしても其の際に作用する押圧力はリテーナ104bの自重によるものだけであるから、これによってベース100が損傷するようなことはない。
【0081】
従って、角柱状ガイドレール105,106の高さHは実質的にはリテーナの幅H’と同等であってもよく、結果的に、角柱状ガイドレール105,106の高さHはS+2t+D√2程度にまで短縮することが可能である。
【0082】
このように、ポケット加工部108bの周りに必要とされる外周部残し代を縮小してリテーナ104bに必要とされる幅を減らすことによって、ガイドローラ103の大型化あるいは角柱状ガイドレール105,106の高さの短縮を実現することができる。
【0083】
従って、角柱状ガイドレール105,106の高さを図6(d)に示されるような従来品と同等とした場合ではガイドローラ103を大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を従来品に比べて向上させることができ、また、必要とされる耐荷重性能が従来品と同等でよければ、角柱状ガイドレール105,106の高さを図6(d)に示されるような従来型の角柱状ガイドレール105,106よりも短縮化してクロスローラガイドを従来品よりも小型化(薄型化)することができる。
【0084】
図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102における角柱状ガイドレール105,106の高さHxと本実施形態の構成を適用した場合の角柱状ガイドレール105,106の高さHとの関係の一例を図11に示す。図11ではローラ径Dのガイドローラ103を実装する際に最低限度必要とされる角柱状ガイドレールの高さHx(従来型)と同じくローラ径Dのガイドローラ103を実装する際に最低限度必要とされる角柱状ガイドレールの高さH(本実施形態)を対応させ、ローラ径Dをパラメータとして両者の関連を示している。
例えば、要求される耐荷重の実現に必要とされるローラ径Dを3mmとした場合では、高さHxが8mm、また、高さHが5mmとなるから、本実施形態の構成を適用することで3mm分の高さの短縮が可能となる。
また、角柱状ガイドレール105,106の高さHxと角柱状ガイドレール105,106の高さHを共に8mmに制限した場合では、従来型の構成ではD=3mmのガイドローラ103を取り付けるのが限界であるが、本実施形態の構成を適用した場合ではD=4mmのガイドローラ103を取り付けることが可能となり、角柱状ガイドレールの高さを変えなくても耐荷重性能を向上させられることが分る。
【0085】
更に、前述した各実施形態において角柱状ガイドレールの高さを従来品と同等に保持してガイドローラ103を大型化させた場合では、ガイドローラ103の大型化に伴う耐荷重性能の向上に合わせ、テーブル101の予圧ネジ113を利用して与える予圧を高めに設定することができるので、V溝間で転動するガイドローラ103のガタツキを確実に防止してテーブル101の送り精度を高めることができ、同時に、テーブル101の上下方向に作用する衝撃に対する耐性も向上する。
【0086】
以上、ガイドレールセット107a,107bの取り付け例として、内側の角柱状ガイドレール105,105aをベース100の側に固定し、外側の角柱状ガイドレール106,106aをテーブル101に固定したものについて述べたが、当然、内側の角柱状ガイドレール105,105aをテーブル101の側に固定し、外側の角柱状ガイドレール106,106aをベース100に固定した構成を適用することも可能である。
【0087】
特に、2組のクロスローラガイドを上下方向に重合してテーブルをガイドする構成、例えば、X−Yテーブル等においては、ガイドローラ103の直径Dを維持して角柱状ガイドレールの高さをHxからHに短縮した場合の小型化(薄型化)の効果が大である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】角柱状ガイドレールにおけるV溝の谷部に形成されたリテーナ収容溝にリテーナの幅方向の縁部を突入させて摺動自在に保持するようにした一実施形態のクロスローラガイドから一組のガイドレールセットを取り出し、その構成について示した正断面図である。
【図2】一対の角柱状ガイドレールの対向面の間にリテーナを配置したクロスローラガイドにおいてリテーナの表裏を平坦化してガイドローラの上下に突出するリテーナの突出量を最小化した一実施形態のクロスローラガイドから一組のガイドレールセットを取り出し、その構成について示した正断面図である。
【図3】幅を軽減するために必要とされるリテーナの構造について示した図で、図3(a)はガイドローラの回転軸を含みガイドローラの並びの方向と直交する平面でリテーナを割ってガイドローラの取り付けの完了したリテーナを示した側断面図、また、図3(b)はガイドローラの取り付けの完了したリテーナの一部を示した平面図である。
【図4】リテーナに対するガイドローラの取り付け構造について示した図で、図4(a)はガイドローラを取り付ける前のリテーナについて示した断面図、図4(b)および図4(c)はガイドローラをリテーナに取り付ける際の作業工程について示した断面図である。
【図5】クロスローラガイドの一般的な構成例を示した正断面図である。
【図6】一組のガイドレールセットを取り出して構造の詳細を示した図で、図6(a)は一組のガイドレールセットの正面図、図6(b)は其の平面図、図6(c)はガイドローラを取り付けたリテーナをガイドレールセットから取り出してリテーナに対するガイドローラの取り付け状態を示した右側面図、図6(d)は角柱状ガイドレールの長手方向に直交する平面でガイドレールセットを割って其の内部構造を示した断面図である。
【図7】リテーナを拡大してリテーナの各部を詳細に示した図である。
【図8】リテーナに対するガイドローラの取り付け状態を詳細に示した図で、具体的には、図8(a)がリテーナの一端部から数えて奇数番目に位置するガイドローラの取り付け状態、また、図8(b)がリテーナの一端部から数えて偶数番目に位置するガイドローラの取り付け状態である。
【図9】固定側ガイドレールに対する可動側ガイドレールの移動可能範囲、つまり、ベースに対するテーブルの移動可能範囲を示した平面図である。
【図10】リテーナ収容溝にリテーナの幅方向の縁部を突入させて摺動自在に保持するようにした実施形態の角柱状ガイドレールの高さHと従来型の角柱状ガイドレールの高さHxとの関係をローラ径Dをパラメータとして示した図表である。
【図11】ガイドローラの上下に突出するリテーナの突出量を最小化した実施形態の角柱状ガイドレールの高さHと従来型の角柱状ガイドレールの高さHxとの関係をローラ径Dをパラメータとして示した図表である。
【符号の説明】
【0089】
1,2 リテーナ収容溝
3 突起部
3a ストレート面
3b テーパ面
5 押圧具(ポンチ)
6 塑性変形部
100 ベース
101 テーブル
102 クロスローラガイド
103 ガイドローラ
104,104b リテーナ
105,105a 角柱状ガイドレール
106,106a 角柱状ガイドレール
107,107a,107b ガイドレールセット
108,108b ポケット加工部
109,110 舌片状突起
111 ポケット加工部の四隅
112 脱落防止用ネジ
CL 回転軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスローラガイドの改良、特に、クロスローラガイドの最大外形となる角柱状ガイドレールの高さを冗長することなくガイドローラの大型化を実現するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個のガイドローラと、これらのガイドローラを回転自在に保持するための板状のリテーナと、ガイドローラを挟んで平行に配置された一対の角柱状ガイドレールからなる少なくとも二組のガイドレールセットを備えたクロスローラガイドが、例えば、非特許文献1,非特許文献2に開示されるように既に公知となっている。
【0003】
この種のクロスローラガイドの一般的な構成例を図5に示す。図5は各種の測定器や精密工作機械等のベース100上に載置されたテーブル101の直線移動をガイドするためのクロスローラガイド102の一例について示した正断面図である。
【0004】
クロスローラガイド102は、図5に示されるように、複数個のガイドローラ103と、ガイドローラ103を回転自在に保持するための板状のリテーナ104と、ガイドローラ103およびリテーナ104を挟むようにして平行に配置された一対の角柱状ガイドレール105,106からなる二組のガイドレールセット107によって構成される。
【0005】
図5に示される通り、各組のガイドレールセット107のうち、角柱状ガイドレール105が固定側であるベース100の両側にV溝を外側に向けて固着される一方、角柱状ガイドレール106が可動側であるテーブル101の両側にV溝を内側に向けて固着されており、角柱状ガイドレール105,106間に介装されたガイドローラ103が角柱状ガイドレール105に対する角柱状ガイドレール106の直線移動を許容することによって、図5中のベース100に対するテーブル101の紙面垂直方向の直線移動が円滑にガイドされるようになっている。
【0006】
一組のガイドレールセット107を取り出して其の構造の詳細を図6,図7,図8に示す。
【0007】
図6(a)は一組のガイドレールセット107を示した正面図、また、図6(b)は其の平面図である。図6(c)はガイドローラ103を取り付けたリテーナ104をガイドレールセット107から取り出してリテーナ104に対するガイドローラ103の取り付け状態を示した右側面図であり、図6(d)は角柱状ガイドレール105,106の長手方向に直交する平面でガイドレールセット107を割って其の内部構造を示した断面図である。また、図7はリテーナ104を拡大して各部を詳細に示した図であり、図8はリテーナ104に対するガイドローラ103の取り付け状態を詳細に示した図である。
【0008】
図6(c)に示されるリテーナ104は、多数のガイドローラ103を保持することによってガイドレールセット107の組立時におけるガイドローラ103の脱落を防止する機能を有し、特に、これらのガイドローラ103を一定の間隔を置いて回転自在に保持することによって、角柱状ガイドレール105,106の相対移動に際し、隣接するガイドローラ103同士の衝接や此れに伴うガイドローラ103の損傷を防止する機能を備える。
【0009】
このリテーナ104には、図7に示されるように、ガイドローラ103を取り付けるための同形同寸法のポケット加工部108がプレス等の板金加工を利用して多数穿設され、その上下には、ポケット加工部108に取り付けられたガイドローラ103の端面を支持するための舌片状突起109,110が同じくプレス加工等で一体に形成されている。
【0010】
より具体的には、各ポケット加工部108における舌片状突起109,110は、其の一方がリテーナ104の表面側に突出すると共に他方がリテーナ104の裏面側に突出し、且つ、隣接するポケット加工部108同士では其の突出方向が交互に逆向きとなるようにして、約1/2直角の角度で屈曲されている。
【0011】
つまり、図7に示されるようなリテーナ104において、左から数えて奇数番目に位置するポケット加工部108の一方の舌片状突起109が図8(a)に示されるようにしてリテーナ104の表面側に突出し、他方の舌片状突起110が図8(a)に示されるようにしてリテーナ104の裏面側に突出しているとすれば、左から数えて偶数番目に位置するポケット加工部108の一方の舌片状突起109が図8(b)に示されるようにしてリテーナ104の裏面側に突出し、他方の舌片状突起110が図8(b)に示されるようにしてリテーナ104の表面側に突出する構造である。
【0012】
また、ポケット加工部108に取り付けられる各ガイドローラ103は、例えば、図8(a)に示されるように、各個体毎に軸方向の長さd1と直径d2とが略一致しており、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さd1と直径d2が共通している。つまり、ガイドローラ103の軸方向の長さd1に相当する値と直径d2に相当する値をDとすれば、全てのガイドローラ103の軸方向の長さがDであり、同時に、全てのガイドローラ103の直径もDである。よって、このガイドローラ103を其の回転軸CLを含む平面で割った時の断面形状は、図8(a)あるいは図8(b)に示される通りの正方形状の矩形断面となる。
【0013】
リテーナ104のポケット加工部108は図7に示す通り全体として樽型に形成され、樽型部分の最大幅が前述の寸法Dつまりガイドローラ103の直径Dよりも僅かに大きく形成されている。
【0014】
従って、図8(a)に示されるようなガイドローラ103の端面を図7の紙面に対して平行にした状態つまりガイドローラ103の回転軸CLをリテーナ104の面に対して垂直とした状態で、ガイドローラ103をポケット加工部108に挿入することが可能である。
【0015】
一例として、リテーナ104上の左端部に位置するポケット加工部108にガイドローラ103を挿入した状態を図7中の二点鎖線で示す。
【0016】
図7からも明らかなように、この状態では、リテーナ104を仮想の切断面とするガイドローラ103の断面形状は完全な円であり、図7におけるガイドローラ103の左右方向への不用意な位置ずれは、ポケット加工部108における左右の円弧部分によって防止されることになる。
【0017】
そして、この状態からガイドローラ103の回転軸CLを図8(a)中の反時計方向に向けて傾けていくと、リテーナ104を仮想の切断面とするガイドローラ103の断面形状は、其の横幅を寸法Dに保持したまま図7中の上下方向に徐々に寸法を伸ばして、上下方向に長い楕円形状に変化していく。
【0018】
これに対し、全体として樽型に形成されたポケット加工部108の形状は、厳密には、リテーナ104の面に対して直交し且つポケット加工部108における舌片状突起109,110を結ぶ直線を含む平面内でガイドローラ103の回転軸CLをリテーナ104の面に対して1/2直角だけ傾けた際にリテーナ104を仮想の切断面として形成されるガイドローラ103の断面形状に比べて僅かに大きく形成されているだけであるから、図8(a)のようにガイドローラ103の回転軸CLをリテーナ104の面に対して1/2直角だけ傾けた状態から更に図8(a)中の反時計方向に回転軸CLを傾けようとすると、図7に示されるポケット加工部108の四隅111がガイドローラ103の外周面に干渉して、ガイドローラ103の其れ以上の姿勢変化を規制する。つまり、図8(a)に示されるガイドローラ103の反時計方向への倒れ込みは、ポケット加工部108の四隅111がガイドローラ103の外周面に当接することによって防止されている。
【0019】
また、これとは逆に、図8(a)に示される姿勢から時計方向に向けてガイドローラ103の回転軸CLを傾けようとした場合には、図8(a)に示される通り、ポケット加工部108の舌片状突起109,110がガイドローラ103の両端面を支えることで、ガイドローラ103の姿勢変化が規制される。
【0020】
結果的に、図7におけるガイドローラ103の左右方向への位置ずれと、図8(a)におけるガイドローラ103の回転軸に生じる不用意な姿勢変化、ならびに、リテーナ104の法線方向に対するガイドローラ103の位置ずれは、ポケット加工部108の四隅111がガイドローラ103の外周面に当接すること、および、ポケット加工部108の舌片状突起109,110がガイドローラ103の両端面を支えることによって防止され、この状態を維持して、ポケット加工部108の内部にガイドローラ103が回転自在に保持される。
【0021】
なお、前述のようにしてガイドローラ103をポケット加工部108に挿入し、ガイドローラ103の回転軸CLを図8(a)中の反時計方向に傾斜させてリテーナ104に組み付ける際には、ポケット加工部108の舌片状突起109,110がガイドローラ103の外周面に干渉することになるが、舌片状突起109,110は其れ自体が弾性変形可能であるから、組み付け作業に際して舌片状突起109,110を弾性変形させる必要が生じるといった煩雑さは伴うものの、リテーナ104に対するガイドローラ103の取り付け作業自体は可能である。
【0022】
既に述べた通り、隣接するポケット加工部108同士では舌片状突起109,110の突出方向が交互に逆向きとなっているので、リテーナ104上の左端部から数えて奇数番目に位置するポケット加工部108におけるガイドローラ103の取り付け状態は図8(a)に示されるようなものとなり、また、偶数番目に位置するポケット加工部108におけるガイドローラ103の取り付け状態は図8(b)に示されるようなものとなる。
【0023】
即ち、リテーナ104は、図6(c)に示されるように、各ガイドローラ103が一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラ103の回転軸CLが図8(a)および図8(b)に示されるように1直角相当の捩れの関係となるようにして、各ガイドローラ103の各々を回転自在に保持しており、各ガイドローラ103は、各回転軸CLを含みガイドローラ103の並びの方向と直交する各ガイドローラ103の矩形断面における対角線の両端部に相当する位置、つまり、図8(a)および図8(b)中で二点鎖線によって示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において上下方向に延びる対角線の両端部に相当する位置で、リテーナ104によって回転自在に保持されていることになる。
【0024】
このようにしてリテーナ104に取り付けられた多数のガイドローラ103は、図6(d)に示されるように、其の外周面と端面を角柱状ガイドレール105,106のV溝の斜面に当接させるようにして、リテーナ104と共に角柱状ガイドレール105,106の間に組み込まれる。
【0025】
角柱状ガイドレール105,106の両端部には脱落防止用ネジ112が螺合され、脱落防止用ネジ112の頭部が角柱状ガイドレール105,106のV溝の両端部を塞ぐので、角柱状ガイドレール105,106の間に組み込まれたリテーナ104やガイドローラ103がV溝の端部から脱落することはない。
【0026】
ベース100やテーブル101に対するガイドレールセット107の取り付け状態は図5に示す通りである。
【0027】
そして、最終的に、ガイドレールセット107を構成する角柱状ガイドレール105,106のうち外側に位置する角柱状ガイドレール106の片方、例えば、図5の例では右側に位置する角柱状ガイドレール106を、テーブル101の側壁に螺合された予圧ネジ113で押圧することによって角柱状ガイドレール105,106のV溝をガイドローラ103に圧接し、ガイドローラ103の外周面と端面を角柱状ガイドレール105,106のV溝の斜面に一定の力で当接させて、不用意なガタツキを解消する。
【0028】
角柱状ガイドレール105に対する角柱状ガイドレール106の移動可能範囲、つまり、ベース100に対するテーブル101の移動可能範囲を図9に示す。
【0029】
ガイドローラ103およびリテーナ104と角柱状ガイドレール105,106によって構成されるクロスローラガイド102の構成は以上に述べた通りであるが、この種のクロスローラガイド102では、リテーナ104の構造上、図5に示す角柱状ガイドレール105,106の高さH、つまり、V溝を形成した面と隣接する角柱状ガイドレールの2つの外周面である上面と下面との間の離間距離Hの短縮や、クロスローラガイド102の耐荷重性能の向上に必要とされるガイドローラ103の大型化が難しいといった問題がある。
【0030】
通常、プレス等の板金加工を利用して金属板に単純なポケット加工部を穿孔する際に必要とされる外周部残し代の幅は、材料となる板金の厚みと同等の値tである。
しかし、図7に示されるようなポケット加工部108においては其の上下に舌片状突起109,110を形成する必要があり、更に、この舌片状突起109,110に対して図8(a)あるいは図8(b)に示されるような曲げ加工を重複して施す必要があるので、この曲げ加工に際して作用する外力等でリテーナ104の外周部に歪が生じるのを防止する必要上、外周部残し代の幅を通常の値tよりも大き目の値t’としなければならない。
【0031】
従って、角柱状ガイドレール105,106の高さHが制限されている状況下つまりリテーナ104の幅を大きくできない状況下では、ガイドローラ103の小型化を迫られてクロスローラガイド102の耐荷重性能が低下してしまう。
また、十分な耐荷重性能が要求される状況下ではガイドローラ103の大型化が前提となるので、必然的にリテーナ104の幅も大きくなってしまい、角柱状ガイドレール105,106の高さHが冗長されてクロスローラガイドが大型化してしまうといった不都合が生じる。
【0032】
【非特許文献1】日本トムソン株式会社、総合カタログ CAT−1521 1、p495,501−505
【非特許文献2】THK株式会社、直動システム 総合カタログ 製品諸元、No.401、pf8−9,f10−15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
そこで本発明の課題は、前記従来技術の不都合を改善し、角柱状ガイドレールの高さを冗長することなくガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を向上させることのできるクロスローラガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明のクロスローラガイドは、各個体毎に軸方向の長さと直径とが略一致し、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さと直径が共通する複数個のガイドローラと、
各ガイドローラが一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラの回転軸が1直角相当の捩れの関係となるようにして、前記各ガイドローラの各々を、少なくとも、前記各回転軸を含み前記一直線の方向と直交する各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部に相当する位置で回転自在に保持するポケット加工部を備えた板状のリテーナと、
対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された一対の角柱状ガイドレールからなる少なくとも二組のガイドレールセットを備え、
前記各角柱状ガイドレールにおけるV溝の斜面を前記各ガイドローラの外周面と端面に当接させるようにして前記一対の角柱状ガイドレールの間に前記各ガイドローラを配置したクロスローラガイドであり、
前記課題を達成するため、特に、
前記各角柱状ガイドレールにおけるV溝の谷部の各々に、前記リテーナの幅方向の縁部を摺動自在に突入させるためのリテーナ収容溝を設け、
前記リテーナの幅方向の縁部を前記リテーナ収容溝に突入させて取り付けたことを特徴とする構成を有する。
【0035】
角柱状ガイドレールにおけるV溝の谷部に形成したリテーナ収容溝にリテーナの幅方向の縁部を突入させてリテーナを摺動自在に保持する構成、即ち、V溝を形成した角柱状ガイドレールの面に隣接する角柱状ガイドレールの2つの外周面の離間距離である角柱状ガイドレールの高さ方向に対して直交させるかたちでリテーナを取り付ける構成を適用したので、ガイドローラの上下にリテーナの幅方向の端部を突出させる必要がなくなり、V溝を形成した面と隣接する角柱状ガイドレールの2つの外周面である上面と下面の離間距離つまり角柱状ガイドレールの高さに応じ、クロスローラガイドの取り付け対象となる装置のベースやテーブルにガイドローラが干渉しない範囲でガイドローラを大型化することが可能となった。
従って、角柱状ガイドレールの高さを従来品と同等とした場合ではガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を従来品に比べて向上させることができ、また、必要とされる耐荷重性能が従来品と同等でよければ、角柱状ガイドレールの高さを短縮化してクロスローラガイドを従来品よりも小型化することができる。
【0036】
このような構成を適用した場合には、ガイドローラの軸方向の長さと直径をD,リテーナがガイドローラを回転自在に保持するために必要とされるガイドローラとリテーナとの間の間隙寸法をS,リテーナに板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅の値をt’,V溝を形成した面と隣接する角柱状ガイドレールの2つの外周面の離間距離つまり角柱状ガイドレールの高さをHとして、
前記離間距離すなわち角柱状ガイドレールの高さHの寸法を、D√2≦H<S+2t’+D√2とすることが望ましい。
【0037】
特に、角柱状ガイドレールの高さの寸法HをD√2に近似する値とした場合においてガイドローラの直径Dの値が最大となり、クロスローラガイドの耐荷重性能が最も向上する。
角柱状ガイドレールの高さHの寸法をH<S+2t’+D√2と規定するのは、角柱状ガイドレールの対向面の間にリテーナを配置したクロスローラガイドにおいて理論的に達成可能なガイドローラの直径Dの最大寸法を除外するための措置である。
【0038】
また、一対の角柱状ガイドレールの対向面の間にリテーナを配置したクロスローラガイドにおいて角柱状ガイドレールの高さを冗長することなくガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を向上させるためには、
リテーナの表裏を平坦化すると共に、
ガイドローラの軸方向の長さと直径をD,リテーナがガイドローラを回転自在に保持するために必要とされるガイドローラとリテーナとの間の間隙寸法をS,リテーナに板金加工によるポケット加工を施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅を板厚と同等の値t,リテーナに板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅の値をt’,リテーナの幅をH’として、
リテーナの幅H’の寸法を、S+2t+D√2≦H’<S+2t’+D√2とすると共に、V溝を形成した面と隣接する各角柱状ガイドレールの2つの外周面の離間距離すなわち角柱状ガイドレールの高さの寸法を前記リテーナの幅H’の寸法と同等以上とした構成を適用することができる。
【0039】
リテーナの表裏を平坦化して舌片状突起の形成に必要とされる曲げ加工を廃し、ガイドローラの上下に突出するリテーナの突出量つまりポケット加工部の周りに必要とされる外周部残し代を板厚と同等の値tにまで縮小することによってガイドローラの大型化が可能となった。
従って、角柱状ガイドレールの高さを従来品と同等とした場合ではガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を従来品に比べて向上させることができ、また、必要とされる耐荷重性能が従来品と同等でよければ、角柱状ガイドレールの高さを短縮化してクロスローラガイドを従来品よりも小型化することができる。
【0040】
このような構成を適用した場合は、リテーナにガイドローラを取り付けるために形成されたポケット加工部において、ガイドローラの回転軸を含みガイドローラの並びの方向と直交する各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部に相当する位置に、
リテーナの厚み方向に沿ってリテーナの一面からリテーナの厚みの中央部まで延びるストレート面と、該ストレート面に連絡してリテーナの他面まで延びながらポケット加工部の中央部に向かう方向に傾斜するテーパ面とを備えた突起部を設け、
各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部を、前記リテーナの一面側から突起部に向けて押圧具を押し付けることによって前記ストレート面に形成された塑性変形部と前記突起部のテーパ面とによって回転自在に保持した構成とすることが望ましい。
【0041】
リテーナのポケット加工部に形成された突起部のテーパ面と突起部のストレート面に形成された塑性変形部によってガイドローラを回転自在に保持することができるので、クロスローラガイドの組立時におけるガイドローラの脱落が防止され、クロスローラガイドの組立作業が容易となる。
また、ガイドローラの端面を支える従来型の舌片状突起に代え、リテーナのポケット加工部に形成された塑性変形部によってガイドローラを回転自在に保持するようにしているので、ポケット加工部の外周部残し代の幅を板厚と同等の値tに維持したままガイドローラを回転自在に保持することが可能となり、ガイドローラの上下に突出するリテーナの突出量の冗長が免れる。
【発明の効果】
【0042】
本発明のクロスローラガイドによれば角柱状ガイドレールの高さを冗長することなくガイドローラを大型化することができるので、角柱状ガイドレールの高さを従来品と同等とした場合ではガイドローラを大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を従来品に比べて向上させることができ、また、必要とされる耐荷重性能が従来品と同等でよければ、角柱状ガイドレールの高さを短縮化してクロスローラガイドを従来品よりも小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0044】
図1は角柱状ガイドレールにおけるV溝の谷部に形成したリテーナ収容溝にリテーナの幅方向の縁部を突入させて摺動自在に保持するようにした一実施形態のクロスローラガイドから一組のガイドレールセット107aを取り出し、その構成について示した正断面図である。
【0045】
図1に示されるガイドレールセット107aは、複数個のガイドローラ103と、ガイドローラ103を回転自在に保持するポケット加工部を備えた板状のリテーナ104、および、対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された一対の角柱状ガイドレール105a,106aによって構成される。
【0046】
ガイドローラ103およびリテーナ104の構造とリテーナ104のポケット加工部108に対するガイドローラ103の取り付け構造、ならびに、測定器や精密工作機械等のベース100やテーブル101に対するガイドレールセット107aの取り付け構造に関しては、図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102の場合と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。また、二組のガイドレールセット107aの取り付け対象となるベース100やテーブル101の構造に関しては図5を援用して説明するものとする。
【0047】
リテーナ104に取り付けられる複数個のガイドローラ103は、図8(a)あるいは図8(b)に示されるものと同様、各個体毎に軸方向の長さと直径とが略一致し、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さと直径が共通している。図8(a)に示す通り、ここでは全てのガイドローラ103に共通する軸方向の長さと直径をDとして規定する。
【0048】
リテーナ104は、図1において各ガイドローラ103が紙面垂直方向に一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラ103の回転軸CLが1直角相当の捩れの関係となるようにして、各ガイドローラ103の各々を回転自在に保持しており、各ガイドローラ103は、各回転軸CLを含みガイドローラ103の並びの方向と直交する各ガイドローラ103の矩形断面における対角線の両端部に相当する位置、つまり、図1中に示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において左右方向に延びる対角線の両端部に相当する位置で、リテーナ104のポケット加工部108によって回転自在に保持されている。
【0049】
具体的には、リテーナ104の面に対する各ガイドローラ103の回転軸CLの傾斜角度は図1中で反時計方向に1/2直角、または、時計方向に1/2直角であって、図1の紙面垂直方向に相互に隣接する各ガイドローラ103間の回転軸CLの捩れ角が1直角となる。
【0050】
図1に示した実施形態のリテーナ104は図7に示したリテーナ104と基本的に同様の構成であるが、ガイドローラ103を回転自在に保持するためのリテーナ構造に関しては既に様々なものが公知となっており、ガイドローラ103を回転自在に保持できる限り、リテーナ自体の構造に関しては特に拘る必要はない。
【0051】
各角柱状ガイドレール105a,106aは対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置され、図1に示す通り、各角柱状ガイドレール105a,106aにおけるV溝の斜面を各ガイドローラ103の外周面と端面に当接させるようにして角柱状ガイドレール105a,106aの間にガイドローラ103が挟み込まれる。
【0052】
また、この実施形態においては、特に、各角柱状ガイドレール105a,106aにおけるV溝の谷部の各々に、リテーナ104の幅方向の縁部を摺動自在に突入させるためのリテーナ収容溝1,2が設けられており、ガイドローラ103を回転自在に保持したリテーナ104の幅方向の縁部がリテーナ収容溝1,2によって摺動自在に保持されている。
【0053】
図5に示される従来型の各角柱状ガイドレール105,106においてもV溝の谷部の各々に溝が形成されているが、これらの溝はガイドローラ103の端面と外周面の間の境界領域部分に形成されるシャープコーナーがV溝の底に干渉するのを回避するための逃ガシ加工部として形成されたものに過ぎず、本実施形態におけるリテーナ収容溝1,2とでは其の用途と深さが全く相違する。
【0054】
図1ではリテーナ収容溝1,2とリテーナ104の幅方向の縁部との嵌合関係を明確にする必要上、リテーナ収容溝1,2の内壁部とリテーナ104の縁部との間に形成される間隙を大きくデフォルメして記載しているが、実際には、リテーナ収容溝1,2の幅は前述した逃ガシ加工部として機能する溝の幅と概ね同等である。
従って、各角柱状ガイドレール105a,106aにリテーナ収容溝1,2を設けることによってガイドローラ103の外周面や端面とV溝の斜面との間の当接面積が減少するといった問題は生じない。
【0055】
ガイドローラ103の軸方向の長さと直径は共にDであり、リテーナ104の面に対するガイドローラ103の回転軸CLの傾斜角度が1/2直角であるから、図1中に示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において上下方向に延びる対角線の長さはD√2である。
【0056】
従って、V溝を形成した面と隣接する角柱状ガイドレール105a,106aの2つの外周面の離間距離つまり角柱状ガイドレール105a,106aの高さをHとすれば、D√2≦Hの範囲でガイドローラ103の大型化が可能であり、特に、H=D√2としてガイドローラ103の直径Dおよび軸方向の長さDの値を最大とした場合に其の耐荷重性能が最も向上する。
【0057】
このように、角柱状ガイドレール105a,106aのV溝の谷に形成したリテーナ収容溝1,2にリテーナ104の幅方向の縁部を突入させてリテーナ104を摺動自在に保持する構成を適用すれば、ガイドローラ103の上下にリテーナ104の幅方向の端部を突出させる必要がなくなるので、角柱状ガイドレール105a,106aの高さHに応じ、クロスローラガイドの取り付け対象となる装置のベース100やテーブル101にガイドローラ103が干渉しない範囲、つまり、図1に示されるガイドローラ103の見かけ上の高さが角柱状ガイドレール105a,106aの高さHを超えない範囲で、ガイドローラ103を大型化することが可能となる。
【0058】
よって、角柱状ガイドレール105a,106aの高さを図6(d)に示されるような従来品と同等とした場合ではガイドローラ103を大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を従来品に比べて向上させることができ、また、必要とされる耐荷重性能が従来品と同等でよければ、角柱状ガイドレール105a,106aの高さを図6(d)に示されるような従来型の角柱状ガイドレール105,106よりも短縮化してクロスローラガイドを従来品よりも小型化(薄型化)することができる。
【0059】
角柱状ガイドレール105a,106aの高さHについてはD√2を超える限りにおいて上限の制限はないが、図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102、つまり、角柱状ガイドレール105,106の対向面の間にリテーナ104を配置したクロスローラガイドにおいては、リテーナ104がガイドローラ103を回転自在に保持するために必要とされるガイドローラ103とリテーナ104との間の間隙寸法をSとし、板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施してリテーナ104に舌片状突起109,110を形成する際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅の値をt’とした場合において、リテーナ104の幅を最小でS+2t’+D√2まで短縮することが可能であるから、角柱状ガイドレール105a,106aのV溝の谷に形成したリテーナ収容溝1,2にリテーナ104の幅方向の縁部を突入させてリテーナ104を摺動自在に保持するとした本実施形態の構成がガイドローラ103の大型化や角柱状ガイドレール105a,106aの高さの短縮化に関して顕著な効果を発揮するのは、具体的には、高さH,ローラ径D,間隙寸法S、および、ポケット加工と曲げ加工を重複して施す際に必要とされる外周部残し代の幅t’の関係において、D√2≦H<S+2t’+D√2の関係が満たされる範囲に制限される。
【0060】
図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102における角柱状ガイドレール105,106の高さHxと本実施形態の構成を適用した場合の角柱状ガイドレール105a,106aの高さHとの関係の一例を図10に示す。図10ではローラ径Dのガイドローラ103を実装する際に最低限度必要とされる角柱状ガイドレールの高さHx(従来型)と同じくローラ径Dのガイドローラ103を実装する際に最低限度必要とされる角柱状ガイドレールの高さH(本実施形態)を対応させ、ローラ径Dをパラメータとして両者の関連を示している。
例えば、要求される耐荷重の実現に必要とされるローラ径Dを3mmとした場合では、高さHxが8mm、また、高さHが4.5mmとなるから、本実施形態の構成を適用することで3.5mm分の高さの短縮が可能となる。
また、角柱状ガイドレール105,106の高さHxと角柱状ガイドレール105a,106aの高さHを共に8mmに制限した場合では、従来型の構成ではD=3mmのガイドローラ103を取り付けるのが限界であるが、本実施形態の構成を適用した場合ではD=4mmのガイドローラ103を取り付けることが可能となり、角柱状ガイドレールの高さを変えなくても耐荷重性能を向上させられることが分る。
【0061】
図2は一対の角柱状ガイドレールの対向面の間にリテーナを配置したクロスローラガイドにおいてリテーナの表裏を平坦化してガイドローラの上下に突出するリテーナの突出量を最小化した一実施形態のクロスローラガイドから一組のガイドレールセット107bを取り出し、その構成について示した正断面図である。
【0062】
図2に示されるガイドレールセット107bは、複数個のガイドローラ103と、ガイドローラ103を回転自在に保持する板状のリテーナ104b、および、対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された一対の角柱状ガイドレール105,106によって構成される。
【0063】
ガイドローラ103および角柱状ガイドレール105,106の構造、ならびに、測定器や精密工作機械等のベース100やテーブル101に対するガイドレールセット107bの取り付け構造に関しては、図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102の場合と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。また、二組のガイドレールセット107bの取り付け対象となるベース100やテーブル101の構造に関しては図5を援用して説明するものとする。
【0064】
リテーナ104bに取り付けられる複数個のガイドローラ103は、図8(a)あるいは図8(b)に示されるものと同様、各個体毎に軸方向の長さと直径とが略一致し、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さと直径が共通している。前述した実施形態と同様、ここでは全てのガイドローラ103に共通する軸方向の長さと直径をDとして規定する。
【0065】
リテーナ104bは、図2において各ガイドローラ103が紙面垂直方向に一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラ103の回転軸CLが1直角相当の捩れの関係となるようにして、各ガイドローラ103の各々を回転自在に保持しており、各ガイドローラ103は、各回転軸CLを含みガイドローラ103の並びの方向と直交する各ガイドローラ103の矩形断面における対角線の両端部に相当する位置、つまり、図2中に示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において上下方向に延びる対角線の両端部に相当する位置で、リテーナ104bによって回転自在に保持されている。
【0066】
具体的には、リテーナ104bの面に対する各ガイドローラ103の回転軸CLの傾斜角度は図2中で時計方向に1/2直角、または、反時計方向に1/2直角であって、図2の紙面垂直方向に相互に隣接する各ガイドローラ103間の回転軸CLの捩れ角が1直角となる。
【0067】
リテーナ104bの構造とリテーナ104bに対するガイドローラ103の取り付け構造について図3,図4を参照して説明する。
【0068】
図3(a)はガイドローラ103の回転軸CLを含みガイドローラ103の並びの方向と直交する平面でリテーナ104bを割ってガイドローラ103の取り付けの完了したリテーナ104bを示した側断面図であり、図3(b)はガイドローラ103の取り付けの完了したリテーナ104bの一部を示した平面図である。また、図4(a)はガイドローラ103を取り付ける前のリテーナ104bについて図3(a)と同じ断面を取って示した図であり、図4(b)および図4(c)は図4(a)と同じ断面を取ってガイドローラ103をリテーナ104bに取り付ける工程について示した図である。
【0069】
このリテーナ104bには、図3(b)に示されるように、ガイドローラ103を取り付けるための同形同寸法のポケット加工部108bがプレス等の板金加工を利用して多数穿設され、更に、ポケット加工部108bの上下、つまり、図3(a)中に示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において上下方向に延びる対角線の両端部に相当する位置には、図4(a)に示されるように、リテーナ104bの厚み方向に沿ってリテーナ104bの一面からリテーナ104bの厚みの中央部まで延びるストレート面3aと、該ストレート面3aに連絡してリテーナ104bの他面まで延びながらポケット加工部108bの中央部に向かう方向に傾斜するテーパ面3bを有する突起部3が一体的に形成されている。
【0070】
図3(b)に示す通り、ポケット加工部108b毎に設けられた全ての突起部3のストレート面3aはリテーナ104bの同一面側、つまり、図3(b)で言えば表面側に位置し、また、全ての突起部3のテーパ面3bはリテーナ104bの他面側、つまり、図3(b)で言えば裏面側に位置する。
【0071】
ポケット加工部108bの上下に設けられた突起部3,3のストレート面3a,3a間の離間距離は、図3(a)中に示すガイドローラ103の正方形状の矩形断面において上下方向に延びる対角線の長さ、つまり、D√2に比べて僅かに長い。ここで、ポケット加工部108b内にガイドローラ103を回転自在に保持するために必要とされるガイドローラ103とリテーナ104bとの間の間隙寸法をSとすれば、ポケット加工部108bの上下に設けられた突起部3,3のストレート面3a,3a間の離間距離は概ねS+D√2である。また、ポケット加工部108bの上下に設けられた突起部3,3のテーパ面3b,3bの先端部の間の離間距離は、D√2に比べて僅かに短い。
【0072】
従って、図4(b)に示されるように、リテーナ104bの面に対するガイドローラ103の回転軸CLの傾斜角度を1/2直角とした状態でポケット加工部108bにガイドローラ103を挿入することが可能である。
このようにしてポケット加工部108bにガイドローラ103を挿入した段階で、ガイドローラ103の両端に位置する外周面と端面との境界領域部分の片側が図4(b)に示されるようにして突起部3,3のテーパ面3b,3bによって支えられる。
【0073】
図8に示したリテーナ104とは相違し、舌片状突起109,110を弾性変形させながらガイドローラ103を取り付ける必要がなく、単にガイドローラ103をポケット加工部108bに差し込めばよいので、ガイドローラ103の取り付け作業は極めて容易である。
【0074】
次いで、この状態を保持したまま、リテーナ104bの一面つまり図4(b)においては左側の面からポンチ等の押圧具5,5を突起部3,3に向けて押し付けることにより、突起部3,3のストレート面3a,3aの周辺を塑性変形させて、塑性変形部6,6を形成する。
【0075】
この結果、ガイドローラ103の両端に位置する外周面と端面との境界領域部分、言い換えれば、ガイドローラ103の矩形断面における上下方向の対角線の両端部の左右両側が、図4(c)あるいは図3(a)に示されるようにして突起部3,3のテーパ面3b,3bと塑性変形部6,6によって支えられ、ポケット加工部108b内にガイドローラ103が回転自在に保持された状態となる。
【0076】
リテーナ104bは、図7に示した従来型のリテーナ104における舌片状突起109,110のようなものは備えておらず、また、リテーナ104bの表裏は完全に平坦であって曲げ加工が不要であるから、図3(b)に示す通り、ポケット加工部108bの周りに必要とされる外周部残し代の幅は、単純なポケット加工部を穿孔する際に必要とされる通常の外周部残し代と同等の値、つまり、材料となる板金の厚みと同等の値tで済む。
【0077】
この実施形態においては、ガイドローラの軸方向の長さと直径がD、また、リテーナ104bがガイドローラ103を回転自在に保持するために必要とされる間隙寸法がSであるから、リテーナ104bの幅をH’とすれば、図2に示される通り、リテーナの幅H’はS+2t+D√2にまで短縮することが可能である。
【0078】
リテーナ104bの幅H’に関してはS+2t+D√2を超える限りにおいて上限の制限はないが、図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102、つまり、ポケット加工と曲げ加工を重複して施すことで形成される舌片状突起109,110を備えたクロスローラガイドにおいては、板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施すことによってリテーナ104に舌片状突起109,110を形成する際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅をt’(但し、t’>t)として、リテーナ104の幅を最小でS+2t’+D√2まで短縮することが可能であるから、リテーナ104bの表裏を平坦化して舌片状突起109,110の形成に必要とされる曲げ加工を廃することによってポケット加工部108bの周りに必要とされる外周部残し代を縮小するとした本実施形態の構成がガイドローラ103の大型化や角柱状ガイドレール105,106の高さの短縮化に関して顕著な効果を発揮するのは、具体的には、リテーナ104bの幅H’,ローラ径D,間隙寸法S,ポケット加工のみを行う際に必要とされる外周部残し代の幅t、および、ポケット加工と重複して曲げ加工を行う際に必要とされる外周部残し代の幅t’の関係において、S+2t+D√2≦H’<S+2t’+D√2の関係が満たされる範囲に制限される。
【0079】
このようにして組み立てられたリテーナ104bは、対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された角柱状ガイドレール105,106の対向面の間に図2に示されるようにして配置され、リテーナ104bに取り付けられた多数のガイドローラ103の外周面と端面が角柱状ガイドレール105,106のV溝に当接する。
【0080】
V溝を形成した面と隣接する角柱状ガイドレール105,106の2つの外周面の離間距離つまり角柱状ガイドレール105,106の高さHは、クロスローラガイドの取り付け対象となる装置のベース100やテーブル101にリテーナ104bが干渉するのを防止する必要上、リテーナの幅H’を僅かに上回ることが望ましいが、実際には、ガイドレールセット107bの組立が完了してベース100やテーブル101に対する取り付けが終った時点では、ガイドローラ103が図2の紙面垂直方向に沿って完全な一直線上に並び、前述した間隙寸法Sの影響により、リテーナ104bが多数のガイドローラ103に図2に示されるようにして吊り下げられた状態でガイドローラ103と一体的に直線移動することになるので、リテーナ104bの上端部がテーブル101に干渉することは考えにくく、また、仮に、リテーナ104bの下端部がベース100に摺接したとしても其の際に作用する押圧力はリテーナ104bの自重によるものだけであるから、これによってベース100が損傷するようなことはない。
【0081】
従って、角柱状ガイドレール105,106の高さHは実質的にはリテーナの幅H’と同等であってもよく、結果的に、角柱状ガイドレール105,106の高さHはS+2t+D√2程度にまで短縮することが可能である。
【0082】
このように、ポケット加工部108bの周りに必要とされる外周部残し代を縮小してリテーナ104bに必要とされる幅を減らすことによって、ガイドローラ103の大型化あるいは角柱状ガイドレール105,106の高さの短縮を実現することができる。
【0083】
従って、角柱状ガイドレール105,106の高さを図6(d)に示されるような従来品と同等とした場合ではガイドローラ103を大型化してクロスローラガイドの耐荷重性能を従来品に比べて向上させることができ、また、必要とされる耐荷重性能が従来品と同等でよければ、角柱状ガイドレール105,106の高さを図6(d)に示されるような従来型の角柱状ガイドレール105,106よりも短縮化してクロスローラガイドを従来品よりも小型化(薄型化)することができる。
【0084】
図5〜図8を参照して背景技術の項で説明した従来型のクロスローラガイド102における角柱状ガイドレール105,106の高さHxと本実施形態の構成を適用した場合の角柱状ガイドレール105,106の高さHとの関係の一例を図11に示す。図11ではローラ径Dのガイドローラ103を実装する際に最低限度必要とされる角柱状ガイドレールの高さHx(従来型)と同じくローラ径Dのガイドローラ103を実装する際に最低限度必要とされる角柱状ガイドレールの高さH(本実施形態)を対応させ、ローラ径Dをパラメータとして両者の関連を示している。
例えば、要求される耐荷重の実現に必要とされるローラ径Dを3mmとした場合では、高さHxが8mm、また、高さHが5mmとなるから、本実施形態の構成を適用することで3mm分の高さの短縮が可能となる。
また、角柱状ガイドレール105,106の高さHxと角柱状ガイドレール105,106の高さHを共に8mmに制限した場合では、従来型の構成ではD=3mmのガイドローラ103を取り付けるのが限界であるが、本実施形態の構成を適用した場合ではD=4mmのガイドローラ103を取り付けることが可能となり、角柱状ガイドレールの高さを変えなくても耐荷重性能を向上させられることが分る。
【0085】
更に、前述した各実施形態において角柱状ガイドレールの高さを従来品と同等に保持してガイドローラ103を大型化させた場合では、ガイドローラ103の大型化に伴う耐荷重性能の向上に合わせ、テーブル101の予圧ネジ113を利用して与える予圧を高めに設定することができるので、V溝間で転動するガイドローラ103のガタツキを確実に防止してテーブル101の送り精度を高めることができ、同時に、テーブル101の上下方向に作用する衝撃に対する耐性も向上する。
【0086】
以上、ガイドレールセット107a,107bの取り付け例として、内側の角柱状ガイドレール105,105aをベース100の側に固定し、外側の角柱状ガイドレール106,106aをテーブル101に固定したものについて述べたが、当然、内側の角柱状ガイドレール105,105aをテーブル101の側に固定し、外側の角柱状ガイドレール106,106aをベース100に固定した構成を適用することも可能である。
【0087】
特に、2組のクロスローラガイドを上下方向に重合してテーブルをガイドする構成、例えば、X−Yテーブル等においては、ガイドローラ103の直径Dを維持して角柱状ガイドレールの高さをHxからHに短縮した場合の小型化(薄型化)の効果が大である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】角柱状ガイドレールにおけるV溝の谷部に形成されたリテーナ収容溝にリテーナの幅方向の縁部を突入させて摺動自在に保持するようにした一実施形態のクロスローラガイドから一組のガイドレールセットを取り出し、その構成について示した正断面図である。
【図2】一対の角柱状ガイドレールの対向面の間にリテーナを配置したクロスローラガイドにおいてリテーナの表裏を平坦化してガイドローラの上下に突出するリテーナの突出量を最小化した一実施形態のクロスローラガイドから一組のガイドレールセットを取り出し、その構成について示した正断面図である。
【図3】幅を軽減するために必要とされるリテーナの構造について示した図で、図3(a)はガイドローラの回転軸を含みガイドローラの並びの方向と直交する平面でリテーナを割ってガイドローラの取り付けの完了したリテーナを示した側断面図、また、図3(b)はガイドローラの取り付けの完了したリテーナの一部を示した平面図である。
【図4】リテーナに対するガイドローラの取り付け構造について示した図で、図4(a)はガイドローラを取り付ける前のリテーナについて示した断面図、図4(b)および図4(c)はガイドローラをリテーナに取り付ける際の作業工程について示した断面図である。
【図5】クロスローラガイドの一般的な構成例を示した正断面図である。
【図6】一組のガイドレールセットを取り出して構造の詳細を示した図で、図6(a)は一組のガイドレールセットの正面図、図6(b)は其の平面図、図6(c)はガイドローラを取り付けたリテーナをガイドレールセットから取り出してリテーナに対するガイドローラの取り付け状態を示した右側面図、図6(d)は角柱状ガイドレールの長手方向に直交する平面でガイドレールセットを割って其の内部構造を示した断面図である。
【図7】リテーナを拡大してリテーナの各部を詳細に示した図である。
【図8】リテーナに対するガイドローラの取り付け状態を詳細に示した図で、具体的には、図8(a)がリテーナの一端部から数えて奇数番目に位置するガイドローラの取り付け状態、また、図8(b)がリテーナの一端部から数えて偶数番目に位置するガイドローラの取り付け状態である。
【図9】固定側ガイドレールに対する可動側ガイドレールの移動可能範囲、つまり、ベースに対するテーブルの移動可能範囲を示した平面図である。
【図10】リテーナ収容溝にリテーナの幅方向の縁部を突入させて摺動自在に保持するようにした実施形態の角柱状ガイドレールの高さHと従来型の角柱状ガイドレールの高さHxとの関係をローラ径Dをパラメータとして示した図表である。
【図11】ガイドローラの上下に突出するリテーナの突出量を最小化した実施形態の角柱状ガイドレールの高さHと従来型の角柱状ガイドレールの高さHxとの関係をローラ径Dをパラメータとして示した図表である。
【符号の説明】
【0089】
1,2 リテーナ収容溝
3 突起部
3a ストレート面
3b テーパ面
5 押圧具(ポンチ)
6 塑性変形部
100 ベース
101 テーブル
102 クロスローラガイド
103 ガイドローラ
104,104b リテーナ
105,105a 角柱状ガイドレール
106,106a 角柱状ガイドレール
107,107a,107b ガイドレールセット
108,108b ポケット加工部
109,110 舌片状突起
111 ポケット加工部の四隅
112 脱落防止用ネジ
CL 回転軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各個体毎に軸方向の長さと直径とが略一致し、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さと直径が共通する複数個のガイドローラと、
各ガイドローラが一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラの回転軸が1直角相当の捩れの関係となるようにして、前記各ガイドローラの各々を、少なくとも、前記各回転軸を含み前記一直線の方向と直交する各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部に相当する位置で回転自在に保持するポケット加工部を備えた板状のリテーナと、
対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された一対の角柱状ガイドレールからなる少なくとも二組のガイドレールセットを備え、
前記各角柱状ガイドレールにおけるV溝の斜面を前記各ガイドローラの外周面と端面に当接させるようにして前記一対の角柱状ガイドレールの間に前記各ガイドローラを配置したクロスローラガイドにおいて、
前記各角柱状ガイドレールにおけるV溝の谷部の各々に、前記リテーナの幅方向の縁部を摺動自在に突入させるためのリテーナ収容溝を設け、
前記リテーナの幅方向の縁部を前記リテーナ収容溝に突入させて取り付けたことを特徴とするクロスローラガイド。
【請求項2】
前記ガイドローラの軸方向の長さと直径をD,前記リテーナが前記ガイドローラを回転自在に保持するために必要とされるガイドローラとリテーナとの間の間隙寸法をS,前記リテーナに板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅の値をt’,前記V溝を形成した面と隣接する前記各角柱状ガイドレールの2つの外周面の離間距離をHとして、
前記離間距離Hの寸法を、D√2≦H<S+2t’+D√2としたことを特徴とする請求項1記載のクロスローラガイド。
【請求項3】
各個体毎に軸方向の長さと直径とが略一致し、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さと直径が共通する複数個のガイドローラと、
各ガイドローラが一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラの回転軸が1直角相当の捩れの関係となるようにして、前記各ガイドローラの各々を、少なくとも、前記各回転軸を含み前記一直線の方向と直交する各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部に相当する位置で回転自在に保持するポケット加工部を備えた板状のリテーナと、
対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された一対の角柱状ガイドレールからなる少なくとも二組のガイドレールセットを備え、
前記各角柱状ガイドレールにおけるV溝の斜面を前記各ガイドローラの外周面と端面に当接させるようにして前記一対の角柱状ガイドレールの間に前記各ガイドローラを配置すると共に前記一対の角柱状ガイドレールの対向面の間に前記リテーナを配置したクロスローラガイドにおいて、
前記リテーナの表裏を平坦化すると共に、
前記ガイドローラの軸方向の長さと直径をD,前記リテーナが前記ガイドローラを回転自在に保持するために必要とされるガイドローラとリテーナとの間の間隙寸法をS,前記リテーナに板金加工によるポケット加工を施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅を板厚と同等の値t,前記リテーナに板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅の値をt’,前記リテーナの幅をH’として、
前記リテーナの幅H’の寸法を、S+2t+D√2≦H’<S+2t’+D√2とすると共に、前記V溝を形成した面と隣接する前記各角柱状ガイドレールの2つの外周面の離間距離を前記リテーナの幅H’の寸法と同等以上としたことを特徴とするクロスローラガイド。
【請求項4】
前記リテーナに前記ガイドローラを取り付けるために形成されたポケット加工部において前記対角線の両端部に相当する位置に、
リテーナの厚み方向に沿ってリテーナの一面からリテーナの厚みの中央部まで延びるストレート面と、該ストレート面に連絡してリテーナの他面まで延びながらポケット加工部の中央部に向かう方向に傾斜するテーパ面とを備えた突起部が設けられ、
各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部が、前記リテーナの前記一面側から前記突起部に向けて押圧具を押し付けることによって前記ストレート面に形成された塑性変形部と前記突起部のテーパ面とによって回転自在に保持されていることを特徴とする請求項3記載のクロスローラガイド。
【請求項1】
各個体毎に軸方向の長さと直径とが略一致し、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さと直径が共通する複数個のガイドローラと、
各ガイドローラが一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラの回転軸が1直角相当の捩れの関係となるようにして、前記各ガイドローラの各々を、少なくとも、前記各回転軸を含み前記一直線の方向と直交する各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部に相当する位置で回転自在に保持するポケット加工部を備えた板状のリテーナと、
対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された一対の角柱状ガイドレールからなる少なくとも二組のガイドレールセットを備え、
前記各角柱状ガイドレールにおけるV溝の斜面を前記各ガイドローラの外周面と端面に当接させるようにして前記一対の角柱状ガイドレールの間に前記各ガイドローラを配置したクロスローラガイドにおいて、
前記各角柱状ガイドレールにおけるV溝の谷部の各々に、前記リテーナの幅方向の縁部を摺動自在に突入させるためのリテーナ収容溝を設け、
前記リテーナの幅方向の縁部を前記リテーナ収容溝に突入させて取り付けたことを特徴とするクロスローラガイド。
【請求項2】
前記ガイドローラの軸方向の長さと直径をD,前記リテーナが前記ガイドローラを回転自在に保持するために必要とされるガイドローラとリテーナとの間の間隙寸法をS,前記リテーナに板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅の値をt’,前記V溝を形成した面と隣接する前記各角柱状ガイドレールの2つの外周面の離間距離をHとして、
前記離間距離Hの寸法を、D√2≦H<S+2t’+D√2としたことを特徴とする請求項1記載のクロスローラガイド。
【請求項3】
各個体毎に軸方向の長さと直径とが略一致し、且つ、全ての固体を通じて軸方向の長さと直径が共通する複数個のガイドローラと、
各ガイドローラが一定の間隔を置いて一直線上に並び、且つ、相互に隣接する各ガイドローラの回転軸が1直角相当の捩れの関係となるようにして、前記各ガイドローラの各々を、少なくとも、前記各回転軸を含み前記一直線の方向と直交する各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部に相当する位置で回転自在に保持するポケット加工部を備えた板状のリテーナと、
対向する面の各々にV溝を形成して平行に配置された一対の角柱状ガイドレールからなる少なくとも二組のガイドレールセットを備え、
前記各角柱状ガイドレールにおけるV溝の斜面を前記各ガイドローラの外周面と端面に当接させるようにして前記一対の角柱状ガイドレールの間に前記各ガイドローラを配置すると共に前記一対の角柱状ガイドレールの対向面の間に前記リテーナを配置したクロスローラガイドにおいて、
前記リテーナの表裏を平坦化すると共に、
前記ガイドローラの軸方向の長さと直径をD,前記リテーナが前記ガイドローラを回転自在に保持するために必要とされるガイドローラとリテーナとの間の間隙寸法をS,前記リテーナに板金加工によるポケット加工を施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅を板厚と同等の値t,前記リテーナに板金加工によるポケット加工と曲げ加工を重複して施す際に必要とされる最小限度の外周部残し代の幅の値をt’,前記リテーナの幅をH’として、
前記リテーナの幅H’の寸法を、S+2t+D√2≦H’<S+2t’+D√2とすると共に、前記V溝を形成した面と隣接する前記各角柱状ガイドレールの2つの外周面の離間距離を前記リテーナの幅H’の寸法と同等以上としたことを特徴とするクロスローラガイド。
【請求項4】
前記リテーナに前記ガイドローラを取り付けるために形成されたポケット加工部において前記対角線の両端部に相当する位置に、
リテーナの厚み方向に沿ってリテーナの一面からリテーナの厚みの中央部まで延びるストレート面と、該ストレート面に連絡してリテーナの他面まで延びながらポケット加工部の中央部に向かう方向に傾斜するテーパ面とを備えた突起部が設けられ、
各ガイドローラの矩形断面における対角線の両端部が、前記リテーナの前記一面側から前記突起部に向けて押圧具を押し付けることによって前記ストレート面に形成された塑性変形部と前記突起部のテーパ面とによって回転自在に保持されていることを特徴とする請求項3記載のクロスローラガイド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−247725(P2007−247725A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70036(P2006−70036)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(592004404)中央精機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(592004404)中央精機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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