説明

クロマキー処理装置及びクロマキー処理方法

【課題】 デュアルリンクにおいても高品質なクロマキー処理を実現する。
【解決手段】 それぞれクロマキー回路とオート・クロマキー決定回路を備えた第1,第2のクロマキー処理部20A,20Bの各オート・クロマキー決定回路で並列にクロマ値を決定し、同一の画像フレームからそれぞれクロマキー処理を開始し、第1のクロマキー処理部20Aのオート・クロマキー決定回路で決定したクロマ値を共通クロマ値として通信路を介して第2のクロマキー処理部20Bのクロマキー回路に供給し、上記第1,第2のクロマキー処理部20A,20Bの各クロマキー回路により同一の画像フレームから上記共通クロマ値によるクロマキー処理を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を加工するクロマキー処理装置及びクロマキー処理方法に関し、特に、デュアルリンクに対応したクロマキー処理装置及びクロマキー処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テレビジョン放送局や映像編集の現場においては、エフェクトスイッチャーと呼ばれる映像合成装置を用いて、キーイングと呼ばれる特殊効果が施されている。キーイングとは、背景映像(画面を構成する主な映像信号)のうち、キーソース信号(信号レベルが所定の閾値以上である部分を、映像を重畳する領域として指定する映像信号)によって指定される領域に、キーフィル信号(背景映像に前景として重ねる映像信号)を重畳する処理である。
【0003】
クロマキー処理は、対象とするビデオ信号において、指定したクロマ(色)成分と一致する領域に、前景となるビデオ信号(キーフィル)を合成する(置き換える)処理である。
【0004】
オート・クロマキー動作は、対象となるビデオ信号の一部領域を、操作者が画像を見ながら画像上で指定し、その一部領域の色の値を元に、指定するクロマ(色)を自動的に決定する動作である。
【0005】
色の決定は、例えば、指定した一部領域内の画素の色の値を平均して決定する。この色の決定処理は、ビデオ信号の値を読み取って演算するため、ビデオ信号を処理している回路に付加した回路で行う必要がある。この回路は、オート・クロマキー決定回路と呼ばれる。
【0006】
また、3G−SDIにおいて、信号振幅、信号の立ち上がり/立ち下がり時間などの物理層についての規格は、SMPTE424Mで規格化されており、また、データ・フォーマットおよびマッピングについてはSMPTE425Mで規格化されている。
【0007】
SMPTE425Mで規定されているデータ・フォーマットならびにマッピング方式は、HD−SDIを倍速にしたもの(1080p50/59.94/60)もあるが、12ビット伝送のものやデュアルリンク(Dual Link)HD−SDIを3G−SDIに変換するもの、2系統のHD−SDIを3G−SDIに変換するものがある。SMPTE424Mは、シリアル伝送の電気的な仕様について規定している。また、2本のデータ・ストリームを1本のデータ・ストリームにまとめる際の規則を規定している。規格化されている項目は、SD−SDIやHD−SDIと同じように、振幅、立ち上がり/立ち下り時間、立ち上がり/立ち下り時間差、DC オフセット、リターン・ロスなどである。
【0008】
【特許文献1】特開2000−197072号公報
【特許文献2】特開2007−13466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、回路を構成する素子(デバイス)の信号処理速度には限界があり、より高速な処理を行うことは不可能か、より高価(価格が2倍以上)である素子が必要になる。
【0010】
デュアルリンクを使うことで、安価な素子を2系統分用意するだけで済み、結果として安価となる。
【0011】
また、高速な処理を行う回路は、高周波回路に特有の問題が発生するため、基板として設計すること自体に困難がある。
【0012】
このため、半分の処理速度の基板のほうが設計が容易であり、結果として安価となる。
【0013】
さらに、ビデオ信号としては、インターレース方式であるかプログレッシブ方式であるかの違いのみの2種類の信号形式が標準規格として存在し、インターレース方式のビデオ信号を処理する回路をデュアルリンク方式で動作させることでプログレッシブ方式のビデオ信号を処理させることができる。
【0014】
このため、同じ機器・基板を、運用時の用途に応じて2種類の信号フォーマットで使用することができるので、経済的である。
【0015】
また製造面でも、1種類の回路・基板を製造するだけで2種類の信号フォーマットに対応できるので、量産効果も期待でき、経済的である。
【0016】
従来、デュアルリンクにおいては、オート・クロマキー決定回路は上記処理回路の一部であるので2系統分、設けられる。
【0017】
そして、デュアルリンクであるので、全く同じに制御され、並行して動作することになる。
【0018】
本発明の目的は、上述の如き従来の実情に鑑み、デュアルリンクにおいても高品質なクロマキー処理を実現することにある。
【0019】
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
デュアルリンクでは、入力されるビデオ信号を偶数番目の走査線と奇数番目の走査線との2つの信号に分割し、上記2つの信号を2つの同一構成の処理回路を用いて並列に処理し、上記2つの処理回路の出力を1つのビデオ信号に統合して出力することができる。2つの処理回路は個々には従来のインターレース方式の処理のままとすると作成が容易なので、インターレース方式のフィールドの偶数番目と奇数番目を2つの処理回路で逆にして、動作させると、丁度そのままで偶数ラインと奇数ラインを常に処理できるようになる。2つの処理回路の制御は、基本的に同じであるが、扱う走査線が偶数番目か奇数番目かを考慮し、処理内容に応じて工夫して制御を変えることで、最終的な出力ビデオ信号の品質を上げる。
【0021】
すなわち、本発明は、デュアルリンクに対応したクロマキー処理装置であって、クロマキー回路とオート・クロマキー決定回路を備えた2つの画像処理回路と、これら2つの画像処理回路をつなぐ通信路とを備え、一方の画像処理回路のオート・クロマキー決定回路で決定したクロマ値を上記通信路を介して他方の画像処理回路上のクロマキー回路に供給し、上記一方の画像処理回路と上記他方の画像処理回路がクロマキー処理を開始する画像フレームを同一にする制御を行うことを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、デュアルリンクに対応したクロマキー処理方法であって、それぞれクロマキー回路とオート・クロマキー決定回路を備えた2つの画像処理回路の各オート・クロマキー決定回路で並列にクロマ値を決定し、同一の画像フレームからそれぞれクロマキー処理を開始し、一方の画像処理回路のオート・クロマキー決定回路で決定したクロマ値を共通クロマ値として通信路を介して他方の画像処理回路上のクロマキー回路に供給し、上記2つの画像処理回路の各クロマキー回路により同一の画像フレームから上記共通クロマ値によるクロマキー処理を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、それぞれクロマキー回路とオート・クロマキー決定回路を備えた2つの画像処理回路の各オート・クロマキー決定回路で並列にクロマ値を決定し、同一の画像フレームからそれぞれクロマキー処理を開始し、一方の画像処理回路のオート・クロマキー決定回路で決定したクロマ値を共通クロマ値として通信路を介して他方の上記画像処理回路上のクロマキー回路に供給し、上記2つの画像処理回路の各クロマキー回路により同一の画像フレームから上記共通クロマ値によるクロマキー処理を開始することにより、デュアルリンクにおいても高品質なクロマキー処理を実現することができ、最終出力画像の品質を向上させることができる。また、クロマキー処理を開始する時点で、画像の走査線毎に処理の開始タイミングが異なる現象を防止でき、ちらつきがなく、品質が向上する。さらに、クロマキー処理を開始する迄の遅延を最小にでき、かつ品質が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0025】
本発明は、例えば図1に示すように、画像再生装置1や撮像装置2からデュアルリンクで供給される画像信号に第1のクロマキー処理部20Aと第2のクロマキー処理部20Bでクロマキー処理を施してモニター装置3、4にデュアルリンクで出力する画像処理システム5におけるエフェクトスイッチャー装置100に適用される。
【0026】
図1では、第1のクロマキー処理部20AがリンクA側を処理し、第2のクロマキー処理部20BがリンクB側を処理するように、入出力の接続がなされる様子の概略を図示している。また第2のクロマキー処理部20Bは、以下で説明する本発明の特徴となる動作を除くと、第1のクロマキー処理部20Aの制御にリンクして制御されることを、リンクの矢印で示している。
【0027】
このエフェクトスイッチャー装置100は、例えば図2に示すように、入力ラインL1〜L9に入力された映像信号を選択するマトリクススイッチャ部10、上記入力ラインL1〜L9に入力された映像信号が上記マトリクススイッチャ部10を介して供給される第1の画像処理部20A、上記入力ラインL1〜L9に入力された映像信号が上記マトリクススイッチャ部10を介して供給される第2の画像処理部20B、これらを制御する制御部30などからなる主ユニット40と、上記主ユニット40の上記制御部30に通信路50を介して接続された選択入力部60とを備える。以下では、本発明の特徴を説明するために、特にクロマキー処理に注目するため、画像処理部のことをクロマキー処理部とも呼称して説明していく。
【0028】
このエフェクトスイッチャー装置100において、上記入力ラインL1〜L9には、キーソース信号またはキーフィル信号となる映像信号がデュアルリンク方式で入力される。
【0029】
上記マトリクススイッチャ部10は、上記入力ラインL1〜L9に入力される映像信号のうちの1つをキーソース信号として上記第1のクロマキー処理部20Aに供給するキーソース信号選択入力バス11Aに接続されたスイッチからなるキーソース交点列12Aとを備える。また、このマトリクススイッチャ部10は、上記入力ラインL1〜L9に入力される映像信号のうちの1つをキーフィル信号として上記第1のクロマキー処理部20Aに供給するキーフィル信号選択入力バス13Aに接続されたスイッチからなるキーフィル交点列14Aを備える。また、このマトリクススイッチャ部10は、上記入力ラインL1〜L9に入力される映像信号のうちの1つを第1の背景信号として上記第1のクロマキー処理部20Aに供給する第1の背景信号選択入力バス15Aに接続されたスイッチからなる第1の背景交点列16Aを備える。また、このマトリクススイッチャ部10は、上記入力ラインL1〜L9に入力される映像信号のうちの1つを第2の背景信号として上記第1のクロマキー処理部20Aに供給する第2の背景信号選択入力バス17Aに接続されたスイッチからなる第2の背景交点列18Aを備える。また、このマトリクススイッチャ部10は、上記入力ラインL1〜L9に入力される映像信号のうちの1つをキーソース信号として上記第2のクロマキー処理部20Bに供給するキーソース信号選択入力バス11Bに接続されたスイッチからなるキーソース交点列12Bを備える。また、このマトリクススイッチャ部10は、上記入力ラインL1〜L9に入力される映像信号のうちの1つをキーフィル信号として上記第2のクロマキー処理部20Bに供給するキーフィル信号選択入力バス13Bに接続されたスイッチからなるキーフィル交点列14Bを備える。また、このマトリクススイッチャ部10は、上記入力ラインL1〜L9に入力される映像信号のうちの1つを第1の背景信号として上記第2のクロマキー処理部20Bに供給する第1の背景信号選択入力バス15Bに接続されたスイッチからなる第1の背景交点列16Bを備える。さらに、このマトリクススイッチャ部10は、上記入力ラインL1〜L9に入力される映像信号のうちの1つを第2の背景信号として上記第2のクロマキー処理部20Bに供給する第2の背景信号選択入力バス17Bに接続されたスイッチからなる第2の背景交点列18Bを備える。
【0030】
上記第1の画像処理部20Aは、キー処理回路21Aと合成回路22Aからなる。
【0031】
上記キー処理回路21Aは、上記キーソース信号選択入力バス11Aと上記キーフィル信号選択入力バス13Aに接続されている。そして、このキー処理回路21Aは、上記入力ラインL1〜L9に入力される映像信号から選択されたキーソース信号とキーフィル信号が上記キーソース信号選択入力バス11Aと上記キーフィル信号選択入力バス13Aを介して入力される。そして、このキー処理回路21Aは、上記制御部30からの制御信号に応じたキー信号を入力されたキーソース信号によって生成する処理を行う。詳しくは後述する。そして、このキー処理回路21Aは、上記キー信号と上記キーフィル信号を上記合成回路22Aに供給する。
【0032】
また、上記合成回路22Aは、上記キー処理回路21Aに接続されているとともに、上記第1の背景信号選択入力バス15Aと上記第2の背景信号選択入力バス17Aに接続されている。この合成回路22Aには、上記キー処理回路21Aからキー信号とキーフィル信号が入力される。また、この合成回路22Aには、上記入力ラインL1〜L9に入力される映像信号から選択された第1の背景信号と第2の背景信号が上記第1の背景信号選択入力バス15Aと上記第2の背景信号選択入力バス17Aを介して入力される。そして、この合成回路22Aは、上記キー処理回路21Aから与えられるキー信号で示される領域は上記第1の背景信号又は上記第2の背景信号に置き換えてキーフィル信号を合成するキーイング処理を行う。
【0033】
上記2の画像処理部20Bも、画像処理部20Aと同様の構成・機能である。
【0034】
上記キー処理回路21Aは、例えば図3の(A)、(B)に、その構成例を示すように、オート・クロマキー決定回路23A、クロマキー回路24A、キーフィル信号加工回路25Aを備える。上記キー処理回路21Bについても、上記キー処理回路21Aと同様に構成され、オート・クロマキー決定回路23B、クロマキー回路24B、キーフィル信号加工回路25Bを備える。
【0035】
図3の(A)に示す構成例において、オート・クロマキー決定回路23A(23B)は、キーソース信号選択入力バス11A(11B)から入力されるキーソース信号に対して、制御部30の制御により、指定された画面上の位置範囲の画素のクロマ値を取得する。それら複数のクロマ値を平均して、クロマキー処理に用いる。なお、平均する処理は、ハードウエア回路で行ってもよく、あるいはマイクロコンピュータを内蔵して、ソフトウェアにより平均値を求めても良い。
【0036】
クロマキー回路24A(24B)は、キーソース信号選択入力バス11A(11B)から入力されるキーソース信号について、指定されたクロマ値と同じか、あるいは指定されたクロマ値との差が設定された範囲内にある画素について、背景が見えるようにキーソースの値を小さな値(ゼロ)にして、その他の領域については、キーフィル信号が見えるようにキーソースの値を大きな値(1)にして、キー信号線に出力する。
【0037】
キーフィル信号加工回路25A(25B)は、キー信号線からのキー信号とキーフィル信号選択入力バス13A(13B)からのキーフィル信号を受けて、キーフィル信号をキーイングの画質を向上させるように加工する。なお、本発明の特徴とは関係ないので、詳細な説明は省略する。
【0038】
キー信号線と加工キーフィル信号線は、合成回路22A(22B)に接続されている。
【0039】
図3の(B)に示す構成例は、オート・クロマキー決定回路23A(23B)にキーフィル信号選択入力バス13A(13B)からのキーフィル信号が接続されている構成である。通常、クロマキー処理においてはキーソース信号とキーフィル信号に同じ画像信号を用いるので、この構成でも、同様にして、同様の機能を果たすことができる。
【0040】
キー処理回路21Bについても、構造は図3の(A)、(B)を参照して説明したのとまったく同様である。
【0041】
以上の説明では、キー信号が二値で、背景信号かキーフィル信号かを指定するように説明をしたが、より詳しくは、キー信号が二値ではなく濃度を示し、キーフィル信号を背景信号に重ねる濃度を多値で示す。したがって、背景が見えたまま、キーフィル信号が半透過的に見える様な部分を持つ画像処理を行うことも可能である。
【0042】
クロマキー処理の場合は、半透過的な部分をなくしたほうが効果的である場合が多い。半透過的な部分をもうける場合は、例えば、指定されたクロマ値からの外れ方が小さい(差異が設定された範囲内にある)画素について、外れ方(差異)に応じて濃度を決めるように、クロマキー回路24A(24B)を機能させる。
【0043】
さらに、上記制御部30は、マイクロコンピュータからなり、上記選択入力部60から上記通信路50を介して与えられる上記選択入力信号に応じた制御信号を生成して、制御線35を介して上記マトリクススイッチャ部10、上記第1のクロマキー処理部20A及び上記第2のクロマキー処理部20Bの各動作を制御する。
【0044】
上記選択入力部60は、ボタン配置部61、キーボード62、マウスなどのポインティングデバイス63、グラフィカルディスプレイ64などが接続されたマイクロコンピュータ65からなる。ボタン配置部61のボタンで入力の選択が操作されると、主ユニットのマトリクススイッチャ部10では、対になる入力をA側とB側でそれぞれ選択する様に動作する。例えば、入力L1が第一画像信号のリンクA側で、入力L2が第一画像信号のリンクB側である場合、第1の背景に対して第一画像信号の選択が操作されると、第1の背景交点列16AにおいてL1を選択し、第2の背景交点列16BにおいてL2を選択する動作を行う。他の入力対や交点列についても、同様の動作を行う。なお、同じ装置でインターレース方式の画像を扱う場合は、このような対でのスイッチングを行わず、操作と一対一の対応で、スイッチングを行うだけで良い。
【0045】
合成回路22Aはまた、第1の背景信号選択入力バス15Aと第2の背景信号選択入力バス17Aとから、背景信号の入力を受け、選択入力部60からの指示に従い、いずれかの背景信号を用いるか、あるいは指示された比率で指示された合成方法で2つの背景信号を合成して、キーイング処理に用いる合成後の背景信号とする。上記比率は、選択入力部のフェーダーレバーなどで手動で指示されたり、自動遷移(自動進行)動作の場合は、時間とともに変化して、一方の背景信号から他方の背景信号へ切り替わる様に制御される。上記合成方法は、例えばミックスとして、上記比率で2つの背景信号を各画素毎に重み付け加算(例えば、比率が30%ならば、第1の背景信号の値に0.3を乗算した値と、第2の背景信号の値に0.7を乗算した値とを、加算する)を行う。あるいは別の上記合成方法としては、ワイプとして、図2のワイプキー波形生成回路(WKG:Wipe Key Generator)26Aから供給されるワイプ用キー信号によって、第1の背景信号に第2の背景信号をキーイングで重ねる処理を行う。ワイプキー波形生成回路6の生成するキー信号は、上記比率とともに変化するものであり、自動遷移ならば進行の時刻tを入力パラメータとしてワイプの境界線を決める様に生成する。自動遷移でない場合は、tの代わりに指示された比率を用いる。
【0046】
以上は、合成回路22Bの場合も、同様である。
【0047】
このエフェクトスイッチャー装置100では、上記選択入力部60が上記主ユニット40の上記制御部30と通信路50を介して通信を行い、対象となるビデオ信号の一部領域を、操作者が画像を見ながら画像上で指定することにより、その一部領域の色の値を元に、指定するクロマ(色)を決定するオート・クロマキー動作を次のように実行する。
【0048】
ここで、このエフェクトスイッチャー装置100において実行されるクロマキー処理の通信のシーケンスの一例を図4に示す。
【0049】
この図4に示すクロマキー処理の通信のシーケンスにおいて、このエフェクトスイッチャー装置100は、上記制御部30からサンプリング範囲を指定してクロマキー処理を上記第1のクロマキー処理部20Aに指示すると、上記第1のクロマキー処理部20Aはサンプリング範囲のクロマ値を決定して、決定したクロマ値を上記第2のクロマキー処理部20Bに送信する。そして、上記第1のクロマキー処理部20Aは、決定したクロマ値を用いてクロマキー処理を開始し、また、上記第2のクロマキー処理部20Bは、受信したクロマ値を用いてクロマキー処理を開始する。
【0050】
すなわち、例えば図5の(A)のフローチャートに示すように、上記第1のクロマキー処理部20Aは、先ず、上記オート・クロマキー決定回路23Aが、上記制御部30から、画面中の色サンプリング位置指定を受信し(ステップS1)、次に、ハードウエアにより指定位置(範囲)のクロマ値を取得し(ステップS2)、クロマ値の平均値を決定する(ステップS3)。そして、上記第1のクロマキー処理部20Aの上記オート・クロマキー決定回路23Aは、決定したクロマ値の平均値を上記第2のクロマキー処理部20Bに送信してから(ステップS4)、規定フィールド待って(ステップS5)、上記決定したクロマ値の平均値をクロマキー信号として上記クロマキー回路24Aに与えて、クロマキー処理を開始させる(ステップS6)。
【0051】
そして、図5の(B)のフローチャートに示すように、上記第2のクロマキー処理部20Bは、上記第1のクロマキー処理部20Aの上記オート・クロマキー決定回路23Aから決定したクロマ値の平均値を受信する(ステップS11)、と、規定フィールド待って(ステップS12)、上記受信したクロマ値の平均値をクロマキー信号として上記クロマキー回路24Bに与えて、クロマキー処理を開始させる(ステップS13)。なお、この規定フィールドの数値は、先に図5の(A)に示したフローチャートにおけるステップS5の説明に記述した規定フィールドの数値と比べて、クロマ値の平均値を上記クロマキー処理部20Aから上記クロマキー処理部20Bに送信するのに要するフィールド数分だけ、少ない。すなわち、送信元である上記クロマキー処理部20Aは、送信に要するフィールド数だけ、余分に待つことで、クロマキー処理を開始するタイミングは、クロマキー処理部20A(ステップS6)とクロマキー処理部20B(ステップS13)とで、同じタイミングとなる。
【0052】
また、このエフェクトスイッチャー装置100において実行されるクロマキー処理の通信のシーケンスの他の一例を図6に示す。
【0053】
この図6に示すクロマキー処理の通信のシーケンスでは、上記制御部30からサンプリング範囲を指定してクロマキー処理を上記第1のクロマキー処理部20Aに指示すると、上記第1のクロマキー処理部20Aはサンプリング範囲のクロマ値を決定して、決定したクロマ値を上記制御部30に送信する。上記第1のクロマキー処理部20Aからクロマ値を受信した上記制御部30は、上記第1のクロマキー処理部20Aに上記クロマ値を送信してクロマキー処理の開始を指示するとともに、上記第2のクロマキー処理部20Bに上記クロマ値を送信してクロマキー処理の開始を指示する。そして、上記第1のクロマキー処理部20Aと上記第2のクロマキー処理部20Bは、シンク割り込みを待って、受信したクロマ値を用いてクロマキー処理を同時に開始する。
【0054】
すなわち、例えば図7の(A)のフローチャートに示すように、上記第1のクロマキー処理部20Aは、先ず、上記オート・クロマキー決定回路23Aが、上記制御部30から、画面中の色サンプリング位置指定を受信し(ステップS21)、次に、ハードウエアにより指定位置(範囲)のクロマ値を取得し(ステップS22)、クロマ値の平均値を決定し、(ステップS23)、決定したクロマ値の平均値を上記制御部30に送信する(ステップS24)。そして、上記第1のクロマキー処理部20Aのクロマキー回路24Aは、上記制御部30からのクロマキー指示を待ち(ステップS25)、上記制御部30からのクロマキー指示とクロマ値を受信して、次のフィールドからクロマキー処理を開始する(ステップS26)。
【0055】
そして、図7の(B)のフローチャートに示すように、上記第2のクロマキー処理部20Bのクロマキー回路24Bは、上記制御部30からのクロマキー指示とクロマ値を受信して(ステップS31)、次のフィールドからクロマキー処理を開始する(ステップS32)。通信の頻度は、フィールドごとに最低一回以上行うようにするので、クロマキー処理の開始が必要以上に遅れたり、開始タイミングがずれたりすることはない。
【0056】
さらに、このエフェクトスイッチャー装置100において実行されるクロマキー処理の通信のシーケンスのさらに他の一例を図8に示す。
【0057】
この図8に示すクロマキー処理の通信のシーケンスでは、上記制御部30からサンプリング範囲を指定してクロマキー処理が上記第1のクロマキー処理部20Aと上記第2のクロマキー処理部20Bに指示され、上記第1のクロマキー処理部20Aと上記第2のクロマキー処理部20Bはサンプリング範囲のクロマ値を決定する。そして、上記第1のクロマキー処理部20Aは、決定したクロマ値を上記制御部30に送信するとともに、シンク割り込みを待って、決定したクロマ値を用いてクロマキー処理を開始する。また、上記第2のクロマキー処理部20Bは、シンク割り込みを待って、決定したクロマ値を用いてクロマキー処理を開始する。上記第1のクロマキー処理部20Aからクロマ値を受信した上記制御部30は、上記第1のクロマキー処理部20Aに上記クロマ値を送信してクロマキー処理の開始を指示するとともに、上記第2のクロマキー処理部20Bに上記クロマ値を送信してクロマキー処理の開始を指示する。そして、上記第1のクロマキー処理部20Aと上記第2のクロマキー処理部20Bは、シンク割り込みを待って、受信したクロマ値を用いてクロマキー処理を同時に開始する。
【0058】
上記図8に示すクロマキー処理の通信のシーケンスにしたがって実行されるクロマキー処理では、その状態遷移図を図9に示すように、待機状態(ST1)、サンプリング範囲のクロマ値を決定するサンプリング処理状態(ST2)、決定したクロマ値を用いる単独クロマキー動作状態(ST3)、受信したクロマ値を用いる受信値クロマキー動作状態(ST4)をとる。
【0059】
上記待機状態(ST1)からサンプリング処理状態(ST2)への状態遷移は、サンプリング範囲を指定したクロマキー処理の指示を受信することにより発生し、サンプリング処理状態(ST2)から上記単独クロマキー動作状態(ST3)への状態遷移は、シンク割り込みによって発生する。また、上記単独クロマキー動作状態(ST3)から上記受信値クロマキー動作状態(ST4)への状態遷移は、クロマキー処理の指示を受信することにより発生し、上記単独クロマキー動作状態(ST3)から上記待機状態(ST1)への状態遷移は、クロマキー処理の終了指示を受信することにより発生する。さらに、上記待機状態(ST1)から上記受信値クロマキー動作状態(ST4)への状態遷移は、クロマキー処理の指示を受信することにより発生し、上記受信値クロマキー動作状態(ST4)上記待機状態(ST1)への状態遷移は、クロマキー処理の終了指示を受信することにより発生する。
【0060】
以上の説明では、クロマキー処理を行う回路が一対の場合について説明したが、1つの装置に複数の対のクロマキー処理を行う回路を有する場合でも、対ごとに以上で説明したような動作をさせることで、それぞれ高品質なデュアルリンク方式のクロマキー処理を実現できる。
【0061】
また、オート・クロマキー決定回路で決定したクロマ値を選択入力部に送信して、グラフィカルディスプレイなどに表示可能とするのは、従来のエフェクトスイッチャー装置と同様である。この場合、選択入力部に送信するクロマ値は、最終的に対の両方のクロマキー処理部が使用する値、すなわち、クロマキー処理部の間で送信された、共通の値とするのが、当然、妥当である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明を適用したエフェクトスイッチャー装置を備えるデュアルリンクの画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】上記エフェクトスイッチャー装置の構成を示すブロック図である。
【図3】キー処理回路の構成例を示すブロック図である。
【図4】上記エフェクトスイッチャー装置において実行されるクロマキー処理の通信のシーケンスの一例を示すシーケンス図である。
【図5】図3に示したシーケンスにしたがったクロマキー処理を実行する場合に上記エフェクトスイッチャー装置の第1のクロマキー処理部及び第2のクロマキー処理部の動作を示すフローチャートである。
【図6】上記エフェクトスイッチャー装置において実行されるクロマキー処理の通信のシーケンスの他の一例を示すシーケンス図である。
【図7】図6に示したシーケンスにしたがったクロマキー処理を実行する場合に上記エフェクトスイッチャー装置の第1のクロマキー処理部及び第2のクロマキー処理部の動作を示すフローチャートである。
【図8】上記エフェクトスイッチャー装置において実行されるクロマキー処理の通信のシーケンスのさらに他の一例を示すシーケンス図である。
【図9】図8に示したシーケンスにしたがったクロマキー処理を実行する場合の上記エフェクトスイッチャー装置の第1のクロマキー処理部及び第2のクロマキー処理部の状態遷移図である。
【符号の説明】
【0063】
L1〜L9 入力ライン、10 マトリクススイッチャ部、11A,11B キーソース信号選択入力バス、12A,12B キーソース交点列、13A,13B キーフィル信号選択入力バス、14A,14B キーフィル交点列、15A,15B 第1の背景信号選択入力バス、16A,16B 第1の背景交点列、17A,17B 第2の背景信号選択入力バス、18A,18B 第2の背景交点列、20A 第1のクロマキー処理部、20B 第2のクロマキー処理部、21A,21B キー処理回路、22A,22B 合成回路、23A,23B オート・クロマキー決定回路、24A,24B クロマキー回路、30 制御部、35 制御線、40 主ユニット、50 通信路、60 選択入力部、61 ボタン配置部、62 キーボード、63 ポインティングデバイス、64 グラフィカルディスプレイ、100 エフェクトスイッチャー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれクロマキー回路とオート・クロマキー決定回路を備えた2つの画像処理回路と、
上記2つの画像処理回路をつなぐ通信路とを備え、
一方の画像処理回路のオート・クロマキー決定回路で決定したクロマ値を上記通信路を介して他方の画像処理回路上のクロマキー回路に供給し、上記一方の画像処理回路と上記他方の画像処理回路がクロマキー処理を開始する画像フレームを同一する制御を行うデュアルリンクに対応したクロマキー処理装置。
【請求項2】
上記2つの画像処理回路の各動作を制御する制御部を備え、
上記一方の画像処理回路のオート・クロマキー決定回路で決定したクロマ値を上記制御部を介して上記他方の画像処理回路上のクロマキー回路に供給する請求項1記載のクロマキー処理装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記一方の画像処理回路のオート・クロマキー決定回路で決定したクロマ値を受信すると、受信したクロマ値を上記2つの画像処理回路に送信してクロマキー処理を開始させる請求項2記載のクロマキー処理装置。
【請求項4】
それぞれクロマキー回路とオート・クロマキー決定回路を備えた2つの画像処理回路の各オート・クロマキー決定回路で並列にクロマ値を決定し、
同一の画像フレームからそれぞれクロマキー処理を開始し、
一方の画像処理回路のオート・クロマキー決定回路で決定したクロマ値を共通クロマ値として通信路を介して上記画像処理回路上のクロマキー回路に供給し、
上記2つの画像処理回路の各クロマキー回路により同一の画像フレームから上記共通クロマ値によるクロマキー処理を開始するデュアルリンクに対応したクロマキー処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−253387(P2009−253387A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95446(P2008−95446)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】